令和2年10月20日,産業標準化法第17条又は第18条の規定に基づく確認公示に際し,産業標準化法の用語に合わせ,規格中“日本工業
規格”を“日本産業規格”に改めた。
日本産業規格 JIS
K 5902-1969
ロジン
Colophonium
1. 適用範囲 この規格は,生松やにから製造したロジンについて規定する。
2. 種類 ロジンはつぎのように2級に分け,色の明るさを示す番号を級のあとにつけるものとする。
1級 1〜5号
2級 1〜8号
3. 品質 ロジンは,表1および表2の規定に合格しなければならない。
表1
種類
1級
2級
外観
透明体
透明体
色数(表2)
1〜5号
1〜8号
軟化点(環球法) (℃)
75以上
70以上
酸価
165以上
160以上
けん化価
170〜185
165〜185
不けん化物 (%)
8以下
11以下
灰分 (%)
0.02以下
0.05以下
溶剤不溶分 (%)
0.05以下
0.1以下
表2
種類
1号
2号
3号
4号
5号
6号
7号
8号
色数
10以下 10をこえ
17以下
17をこえ
20以下
20をこえ
25以下
25をこえ
35以下
35をこえ
50以下
50をこえ
60以下
60をこえ
70以下
4. 試料採取方法 ロジンは製造のバッチごとに分け,おのおののバッチから容器を1個ランダムに抜取
って,これをそのバッチの代表とする。抜取った容器の上・中・下各部分からほぼ等量ずつ塊状(1)のまま
採って約200gとし,中身が光のあたらない容器に入れ,密せんして試験をする場所へ送る。
注(1) 塊状の大きさは20〜30gとする。
5. 試験方法
5.1
試験の準備 試験を行なう直前に試料を粉砕し,じゅうぶんに混和したのち試験を行なう。
2
K 5902-1969
5.2
色数 試料25gを採り,トルエン(JIS K 8680特級)約20mlを加え,80℃をこえない水浴中で軽く
振り動かして溶かし,これを室温まで急冷する。さらにトルエンを加えて全量を50mlとし,これと色数
標準液(2)とをそれぞれ径の等しい無色透明で肉の薄い別々の試験管15mm (JIS R 3503) に深さ約60mmま
で入れ,これらを接して並べ,拡散昼光のもとで側面からすかして見て色を比べ,明るい方を色数が小さ
いとする。この試験は,試料溶液を作ったのちただちに行なうものとする。
注(2) 色数標準液の作り方 よう素(JIS K 8920特級)約1gをよう化カリウム(JIS K 8913特級)10%
溶液約100mlに溶かし,これをチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定して,よう素の濃度を決定する。
つぎにこの溶液を一定量ずつメスフラスコに分け採り,水で薄めて溶液100ml中のよう素の
含有量を10mg,17mg,20mg,25mg,35mg,50mg,60mgおよび70mgとし,これらをそれぞ
れ色数10,17,20,25,35,50,60および70の標準液とする。色数標準液は,試験のたびに
新しいものを用いる。
5.3
軟化点 試料をできるだけ低温ですみやかに融解し,これを平らな金属板の上に置いた環(3)の中に
あわができないように注意して満たす。冷えたのち,少し加熱した小刀で環の上端を含む平面から盛り上
った部分を切り去る。
つぎにガラス容器(径85mm以上,高さ127mm以上)の中に支持器(4)を入れ,あらかじめ沸騰させて
から冷やした水を深さ90mm以上となるまで注ぐ。つぎに鋼球(径9.5mm,重量3.5g)と試料を満たした
環とを互いに接触しないようにして水中に浸し,水の温度を20±5℃に15分間保つ。つぎに環中の試料の
表面の中央に鋼球をのせ,これを支持器の上の定位置に置く。
つぎに環の上端から水面までの距離を50mmに保ち,温度計(5)を置き,温度計の水銀球の中心の位置を
環の中心と同じ高さとし,容器を加熱する。
加熱に用いるブンゼンバーナーの炎は,容器の底の中心と縁との中間にあたるようにし,加熱を均等に
する。
加熱が始まってから40℃に達したのちの水温の上昇する割合は,毎分5.0±0.5℃でなければならない。
試料がしだいに軟化して環から流れ落ち,ついに底板に接触したときの温度を読み,これを軟化点とする。
軟化点の測定は同時に2個以上行ない,その平均値をとるものとする。
注(3) 環は黄銅製で,寸法は表3のとおりとする。
表3
単位mm
高さ
6.4±0.1
内径
底部
15.9±0.1
頂部
17.5+0.1
外径
20.5+0.5
注(4) 支持器(図1)は環を水平に保ち,環の上面を容器の上端から下に80mm以上隔るようにし,環の下面は底板か
ら25.4±0.2mm上にあるようにして,環の中心と温度計との距離は17mm以下であるような構造のものとする。
(5) 温度計は棒状水銀温度計であって,表4の規定に合格しなければならない。
3
K 5902-1969
表4
液体
水銀
球の直径
5〜6mm
毛細管に満たす気体 窒素
球の長さ
10〜15mm
目盛範囲
−20〜+100℃
水銀球の下端から最低
目盛線までの距離
75〜100mm
細分目盛
0.5℃
温度計の上端から最高
目盛線までの距離
20〜45mm
全長
280〜300mm
水銀球の下端から
浸点までの距離
60mm
みきの直径
6〜7mm
許容差
0.5deg
図1
5.4
酸価 試料約2gを三角フラスコ300mlに正確にはかり採り,エチルアルコール・ベンゼン混合液
(6)50mlに溶かし,フェノールフタレインを指示薬としてN/2エチルアルコール性水酸化カリウム溶液(7)
で滴定し,30秒間微紅色の消失しないときを中和の終点とし,つぎの式によって酸価Aを算出する。
S
F
B
A
28.05
×
×
=
ここに
B: N/2エチルアルコール性水酸化カリウム溶液使用量 (ml)
F: N/2エチルアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
S: 試料 (g)
注(6) エチルアルコール・ベンゼン混合液の作り方 エチルアルコール(95容量%)(JIS K 8102 1級)
1容とベンゼン(JIS K 8858 1級)2容とを混合し,フェノールフタレインを指示薬として加え,
N/10水酸化カリウム溶液で中和する。
(7) N/2エチルアルコール性水酸化カリウム溶液の作り方 水酸化カリウム(JIS K 8574特級)約
32gを少量の水に溶かし,これにエチルアルコール(JIS K 8102 1級)を加えて1lとし,その
力価を標定する。
4
K 5902-1969
5.5
けん化価 試料約2gを平底フラスコ300mlに正確にはかり採り,エチルアルコール・ベンゼン混合
液(6)50mlに溶かしたのちエチルアルコール性水酸化カリウム溶液(8)25mlを加え,還流冷却器をとりつけ
て水浴上で30分間わずかに沸騰する程度に加熱する。液があたたかいうちにフェノールフタレインを指示
薬としてN/2硫酸(9)で滴定する。
この試験と同時に空試験を行ない,つぎの式によってけん化価Aを算出する。
(
)
S
F
C
B
A
28.05
×
×
−
=
ここに
B: 空試験に用いたN/2硫酸の量 (ml)
C: 本試験に用いたN/2硫酸の量 (ml)
F: N/2硫酸の力価
S: 試料 (g)
注(8) エチルアルコール性水酸化カリウム溶液の作り方 水酸化カリウム(JIS K 8574 特級)約32g
を少量の水に溶かし,これにエチルアルコール(JIS K 8102 1級)を加えて1lとし,不溶物があ
れば1〜2時間静置したのちこして除く。
(9) N/2硫酸の作り方 ビーカー500mlに水約200mlを採り,これに硫酸(JIS K 8951 1級)約26.3g
を少量ずつ加え,室温に冷やしてから水で薄めて1lとし,その力価を標定する。
5.6
不けん化物 試料5.00±0. 01gを三角または平底フラスコ100〜200mlに正確にはかり採り,エチル
アルコール性水酸化カリウム溶液(10)15mlを加え,還流冷却器を付けて水浴上で時々振り動かしながら1
時間30分静かに煮沸する。このようにして作ったせっけんに水50mlを加えて溶かしたのち分液漏斗300
〜500mlに移し,フラスコはエチルエーテル (JIS K 8103) 40mlで洗い,分液漏斗に加える。分液漏斗をよ
く振り動かしたのち静置し,分離した下層のせっけん液を別の分液漏斗300〜500mlに移す。
この際エチルエーテル抽出物の損失を防ぐために,せっけん液の数滴がストップコックの上に残るよう
にする。さらに前と同様にせっけん液にエチルエーテル30mlを加え抽出を行なう。分離したせっけん液
は使用したフラスコにぬきとり,エチルエーテル抽出液は初めの分液漏斗に加える。つぎにせっけん液を
さらにフラスコから分液漏斗に移し,再びエチルエーテル30mlで抽出を行ない,せっけん液はフラスコ
にぬきとり,エチルエーテル抽出液は初めの分液漏斗に加え合わせる。
この際加え合わせたエチルエーテル抽出液の下に分離したせっけん液はぬきとって,フラスコのせっけ
ん液に加え合わせる。フラスコのせっけん液をさらに分液漏斗に移し,エチルエーテル30mlで第4回目
の抽出を行なう。分離したせっけん液はぬき捨て,エチルエーテル抽出液は初めの分液漏斗に加え合わせ
る。この際せっけん液が分離していれば,注意してできるだけぬき捨てる。
つぎにエチルエーテル抽出液に水2mlを加え,内容物がうずまくようにして静かに振り動かし,静置し
て分離した水はぬき捨てる。このような洗浄法を再び水5mlで1回,水30mlずつで2回繰返して行なう。
このようにして洗浄したエチルエーテル抽出液を重量既知の三角フラスコ200〜300mlに入れ,分液漏斗
はエチルエーテル15mlで洗い,洗液はフラスコに加える。つぎにフラスコを水浴上で加熱し,エチルエ
ーテルを蒸発留出する。この際水滴がフラスコ中に残っている場合は,エチルアルコール数mlを加え,
再び水浴上で蒸発を繰返し,透明な乾燥残留物が得られるまで行なう。
つぎに残留物を100〜105℃に調節した乾燥器に入れて30分間乾燥し,デシケーターに入れて常温に冷
却したのち重さをはかる。
フラスコの内容物を中性のイソプロピルアルコール (JIS K 8839) 50mlに溶かし,フェノールフタレイン
5
K 5902-1969
を指示薬としてN/10エチルアルコール性水酸化カリウム溶液(11)で滴定し,30秒間微紅色の消失しないと
きを中和の終点とし,つぎの式によって不けん化物 (%) Aを小数以下1位まで算出する。
(
)100
0.302×
×
×
×
−
S
F
D
C
B
A=
ここに
B: 乾燥残留物 (g)
C: N/10エチルアルコール性水酸化カリウム溶液使用量 (ml)
D: N/10エチルアルコール性水酸化カリウム溶液の規定度 (1/10)
F: N/10エチルァルコール性水酸化カリウム溶液の力価
S: 試料 (g)
注(10) エチルアルコール性水酸化カリウム溶液の作り方 水酸化カリウム(JIS K 8574 特級)約160g
を少量の水に溶かし,これにエチルアルコール(JIS K 8102 1級)を加えて1lとする。
(11) N/10エチルアルコール性水酸化カリウム溶液の作り方 水酸化カリウム (JIS K 8574) 特級
6.4gを少量の水に溶かし,これにエチルアルコール(JIS K 8102 1級)を加えて1lとし,その
力価を標定する。
5.7
灰分 試料約10gを正確にはかり,これを重さのわかっている磁製るつぼに採り,きわめて小さい
炎で加熱して試料を燃焼し,炭化させたのち500〜600℃の電気炉中で強熱して灰化するか,またはバーナ
ーで強熱して灰化し,デシケーターに入れ約30分間冷やしたのち重さをはかる。ひょう量は1回だけでや
めずに,強熱以下の操作を恒量になるまで繰返して行なう。
最後に,るつぼの増量からつぎの式によって灰分 (%) Aを算出する。
100
×
S
B
A=
ここに
B: るつぼの増量 (g)
S: 試料 (g)
5.8
溶剤不溶分 粉砕した試料約20gを三角フラスコ300mlに正確にはかり採り,エチルアルコール・
ベンゼン混合液(6)150mlを加え,時々振り動かして溶かし,ただちに重さのわかっている石綿グーチるつ
ぼ(12)でろ過する。
つぎにエチルアルコール・ベンゼン混合液で洗い,100〜105℃で60分間乾燥したのちデシケーターに入
れ,約30分間冷やしたのち重さをはかる。ひょう量は1回だけでやめずに,乾燥以下の操作を恒量になる
まで繰返して行なう。
るつぼまたはガラスフィルターの増量から,つぎの式によって溶剤不溶分 (%) Aを算出する。
100
×
S
B
A=
ここに
B: るつぼの増量 (g)
S: 試料 (g)
注(12) 石綿グーチるつぼの作り方 石綿は繊維の長い上質のものを用い,これに塩酸(比重1.18)を
加えて約10時間水浴上で熱し,鉄分その他の可溶性分を溶かしてできた黄色の液を捨て,再び
塩酸を加えて同様に処理し,上澄液が無色になるまで繰返す。つぎにブフナー漏斗形ガラスろ
過器3G3 (JIS R 3503) を用いて吸引しながらこす。この石綿を少量の水で潤し,容量25mlのる
つぼに入れ約3mmの厚さにし,その上にろ過板を置き,なお,その上に1mmの厚さに石綿を敷
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いたものを石綿グーチるつぼとする。これを105〜110℃に調節した乾燥器中でかわかし,デシ
ケーターに入れて冷やしたのち重さをはかる。この乾燥とひょう量とを繰返しで恒量になった
ときの重さを石綿グーチるつぼの重さとする。
6. 表示 ロジンの容器には,製造バッチの番号を明らかに表示しなけれはならない。