K 5603:2017
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 1
3 用語及び定義 ··················································································································· 2
4 記号,略号及び単位 ·········································································································· 2
5 測定原理························································································································· 3
6 測定装置························································································································· 4
6.1 測定装置の構成 ············································································································· 4
6.2 日射照射装置 ················································································································ 4
6.3 恒温室(屋外側流路) ···································································································· 5
6.4 計測ユニット ················································································································ 5
7 試験方法························································································································· 5
7.1 サンプリング ················································································································ 5
7.2 試験用試料の検分及び調製 ······························································································ 5
7.3 試験の一般条件 ············································································································· 5
7.4 屋外側表面熱伝達率の設定及び照射日射強度の調整 ······························································ 6
7.5 検定方法 ······················································································································ 7
7.6 測定 ···························································································································· 8
7.7 算出方法 ······················································································································ 9
8 試験報告書 ····················································································································· 10
8.1 試験報告書の内容 ········································································································· 10
8.2 不確かさの推定 ············································································································ 11
附属書A(規定)屋外側表面熱伝達率の設定 ············································································ 12
附属書B(規定)試験体の両表面の温度差によって通過する熱量の熱収支理論計算 ·························· 15
附属書C(参考)報告書の様式例 ··························································································· 18
附属書D(参考)塗膜の見掛けの熱抵抗 ·················································································· 19
附属書E(参考)測定の不確かさの計算例················································································ 22
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まえがき
この規格は,工業標準化法第12条第1項の規定に基づき,一般社団法人日本塗料工業会(JPMA),一
般財団法人日本塗料検査協会(JPIA),及び一般財団法人日本規格協会(JSA)から団体規格(JPMS 29:2016)
を基に作成した工業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の
審議を経て,経済産業大臣が制定した日本工業規格である。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格に従うことは,次の者の有する特許権等の使用に該当するおそれがあるので,留意する。
a) 特許番号
特許第5589151号
登録日
平成26年8月1日
発明の名称
熱特性評価方法および装置
権利者
一般社団法人日本塗料工業会
一般財団法人日本塗料検査協会
b) 特許番号
特許第5809765号
登録日
平成27年9月18日
発明の名称
熱特性評価方法および装置
権利者
一般社団法人日本塗料工業会
一般財団法人日本塗料検査協会
上記の特許権等の権利者は,非差別的かつ合理的な条件でいかなる者に対しても当該特許権等の実施の
許諾等をする意思のあることを表明している。ただし,この規格に関連する他の特許権等の権利者に対し
ては,同様の条件でその実施が許諾されることを条件としている。
この規格に従うことが,必ずしも,特許権の無償公開を意味するものではないことに注意する必要があ
る。
この規格の一部が,上記に示す以外の特許権等に抵触する可能性がある。経済産業大臣及び日本工業標
準調査会は,このような特許権等に関わる確認について,責任はもたない。
なお,ここで“特許権等”とは,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権をいう。
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日本工業規格 JIS
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塗膜の熱性能−
熱流計測法による日射吸収率の求め方
Thermal performance of paint film-
Determination of solar absorptance with a heat flow meter
序文
塗膜の熱性能に関しては,既にJIS K 5602(塗膜の日射反射率の求め方)で塗膜の日射反射率が,さら
に,JIS K 5675(屋根用高日射反射率塗料)において塗料として要求される性能が光学的な方法で規定さ
れている。この規格は,日射吸収によって発生する熱量から日射吸収率を測定評価するために作成した日
本工業規格である。
なお,対応国際規格は現時点で制定されていない。
1
適用範囲
この規格は,建築物の屋根及び外壁,構造物,機器並びに設備に用いられ,屋外で日射照射を受ける場
所で使用される塗膜の日射吸収率の熱流計測法について規定する。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS A 0202 断熱用語
JIS A 1412-1 熱絶縁材の熱抵抗及び熱伝導率の測定方法−第1部:保護熱板法(GHP法)
JIS A 1412-2 熱絶縁材の熱抵抗及び熱伝導率の測定方法−第2部:熱流計法(HFM法)
JIS A 4710 建具の断熱性試験方法
JIS C 1602 熱電対
JIS C 8904-9 太陽電池デバイス−第9部:ソーラシミュレータの性能要求事項
JIS H 4000 アルミニウム及びアルミニウム合金の板及び条
JIS K 5500 塗料用語
JIS K 5600-1-2 塗料一般試験方法−第1部:通則−第2節:サンプリング
JIS K 5600-1-3 塗料一般試験方法−第1部:通則−第3節:試験用試料の検分及び調製
JIS K 5600-1-6 塗料一般試験方法−第1部:通則−第6節:養生並びに試験の温度及び湿度
JIS K 5600-4-5 塗料一般試験方法−第4部:塗膜の視覚特性−第5節:測色(測定)
JIS K 5602 塗膜の日射反射率の求め方
JIS R 3106 板ガラス類の透過率・反射率・放射率・日射熱取得率の試験方法
JIS R 3107 板ガラス類の熱抵抗及び建築における熱貫流率の算定方法
2
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3
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS A 0202,JIS A 1412-1,JIS A 4710,JIS C 1602,JIS C 8904-9,
JIS H 4000,JIS K 5500,JIS K 5600-4-5,JIS K 5602,JIS R 3106,及びJIS R 3107によるほか,次による。
3.1
照射日射吸収熱量
試験体に垂直に入射する日射について,屋外側空気温度と室内側温度との差によって生じる試験体を通
過する熱量(貫流熱)をゼロにした場合の,試験体を通過する熱量と,試験体の対流熱伝達による熱量と,
試験体の放射熱伝達による熱量との和。
3.2
塗膜の日射吸収率
試験体に垂直に入射する日射について,試験体に吸収されて室内側に熱伝導される熱流束と,試験体の
対流熱伝達によって屋外側に伝達される熱流束と,試験体の放射熱伝達によって屋外側に伝達される熱流
束との和の,入射する日射の放射束に対する比。
3.3
照射日射侵入熱量
試験体に垂直に入射する日射について,屋外側空気温度と室内側温度との差によって生じる試験体を通
過する熱量(貫流熱)をゼロにした場合の,日射吸収による試験体を通過する熱量。
3.4
塗膜の日射侵入比
試験体に垂直に入射する日射について,試験体に吸収されて室内側に熱伝導される熱流束の,入射する
日射の放射束に対する比。
3.5
実用標準板
測定装置を使用者が検定するときに用いる標準板。
3.6
一次標準板
測定装置の製造業者が装置を校正するときに用いる標準板。
4
記号,略号及び単位
この規格で用いる記号,略号及び単位を表1に示す。
3
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表1−記号,略号及び単位
記号及び略号
項目
単位
AW
試験体の面積
m2
hCV
屋外側対流表面熱伝達率
W/(m2・K)
hr
屋外側放射表面熱伝達率
W/(m2・K)
hse
屋外側表面熱伝達率
W/(m2・K)
ISolar
照射日射強度
W/m2
QCV
試験体の対流熱伝達による熱量
W
Qr
試験体の放射熱伝達による熱量
W
QSolar
照射日射熱量
W
QW
試験体の両表面の温度差によって通過する熱量
W
QW/AW,qW
試験体の両表面の温度差によって通過する熱流束
W/m2
Qα
照射日射吸収熱量
W
Qη
照射日射侵入熱量
W
Qη/AW
照射日射侵入熱流束
W/m2
Tex
屋外側空気絶対温度
K
Tg
バッフル板の表面絶対温度
K
Tp
塗膜の表面絶対温度
K
WW
試験体幅
m
α
塗膜の日射吸収率
−
εg
バッフル板の修正放射率
−
εp
塗膜の修正放射率
−
ηp
塗膜の日射侵入比
−
θex
屋外側空気温度
℃
θex,A
屋外側上流空気温度
℃
θex,A'
屋外側下流空気温度
℃
θin
室内側温度
℃
vex,A
屋外側上流風速
m/s
σ
ステファン・ボルツマン定数5.67×10−8[W/ (m2・K4)]
−
5
測定原理
人工太陽(日射照射装置)による日射を塗膜面に照射し,建築物内外に実際に生じる熱移動を想定した
現象から各諸特性を設定又は測定することによって熱流束を算出する。日射遮蔽性としての塗膜の日射吸
収率(α)は,照射日射吸収熱量(Qα)と照射日射熱量(QSolar)とで,式(1)によって求める。同時に,塗
膜を横並びで評価するための,塗膜の日射侵入比(ηp)を求めるものである。
Solar
α
Q
Q
=
α
················································································· (1)
照射日射吸収熱量(Qα)は,試験体の両表面の温度差によって通過する熱量(QW)と,試験体の対流熱
伝達による熱量(QCV)と,試験体の放射熱伝達による熱量(Qr)との和で,式(2)によって求められる(図
1参照)。
r
CV
W
α
Q
Q
Q
Q
+
+
=
····································································· (2)
照射日射熱量(QSolar)は,放射強度計によって照射日射強度(ISolar)を測定し,式(3)によって求められ
る。
W
Solar
Solar
A
I
Q
×
=
········································································ (3)
屋外側空気温度と室内側温度との差によって生じる試験体を通過する熱量をゼロにした場合,試験体の
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両表面の温度差によって通過する熱量(QW)は,照射日射侵入熱量(Qη)に等しく,式(4)となる。
W
η
Q
Q=
·················································································· (4)
塗膜の日射侵入比(ηp)は,照射日射侵入熱量(Qη)と照射日射熱量(QSolar)とで,式(5)によって求め
られる。
Solar
η
P
Q
Q
=
η
················································································ (5)
照射日射がある場合の試験体の熱移動の内訳は,図1を参照する。
図1−試験体の熱移動の内訳
6
測定装置
6.1
測定装置の構成
測定装置は,日射照射装置,恒温室及び計測ユニットで構成する。日射照射装置で射出された光は,光
導入窓及びバッフル板を通過し,試験体に照射される。試験体に吸収された熱は,熱流計及び熱流計と熱
抵抗が同等な補助板を移動し,加熱・冷却熱板に吸収される。測定装置の全体構成は,図2を参照。
図2−測定装置の全体構成
6.2
日射照射装置
日射照射装置に用いる光源は,JIS C 8904-9に規定する等級B-B-B以上のキセノンランプ又はメタルハ
ライドランプを用い,次による。
日射照射装置
恒温室
計測ユニット
加熱・冷却熱板
屋外側仕切板
熱流計
補助板
気流発生装置
試験体
屋外側流路
光導入窓
バッフル板(高透過ガラス)
基材
熱流計
加熱・冷却熱板
QCV
Qr
QW
QSolar
塗膜
屋外側仕切板
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a) 最大入射角 試験体への最大入射角は,10°以内とする。
b) 有効照射面 有効照射面の幅は,試験体幅(WW)の寸法の105 %以上となるようにする。
6.3
恒温室(屋外側流路)
屋外側流路を模擬した恒温室は,光導入窓,バッフル板,気流発生装置などで構成し(図2参照),次に
よる。
a) 光導入窓 屋外側流路を通して試験体に照射光を入射するために光導入窓を設置する。
b) バッフル板 高透過ガラス製とする。高透過ガラスの仕様は,次による。
1) JIS R 3106による日射透過率が88.0 %以上のもの。
2) JIS R 3106の付表2(日射透過率,日射反射率及び日射吸収率を計算するための重価係数)の波長
のうち,380〜2 100 nmの範囲で分光透過率の最大値と最小値との差が0.05以下のもの。
c) 気流発生装置 バッフル板と試験体との間の屋外側表面熱伝達率を維持するために,バッフル板と試
験体との間に平行流となる気流を与えることができる,温度制御のためのファン・ヒーターを附属し
たもの。
d) 屋外側流路の底面及び側面 屋外側流路の底面及び側面の表面の色は黒とし,JIS K 5600-4-5によっ
て測定したときL*は10以下とする。
6.4
計測ユニット
計測ユニットは,熱流計,室内側を模擬した加熱・冷却熱板,補助板などで構成し(図2参照),次によ
る。
a) 熱流計 試験体の裏側中央には,JIS A 1412-2の附属書C(熱流計の校正及び装置の設計)及び附属
書D(熱流計)に規定する熱流計を用いる。熱流計は,試験体の裏側中央に貼付する。また,熱流計
の周囲には補助板を貼付する。
b) 加熱・冷却熱板 加熱・冷却熱板は,次による。
1) 作用面の温度分布は,0.5 ℃以内とする。
2) 作用面は,熱伝導率の大きな金属で,真の平面に対して0.025 %以内の平面度で仕上げる。
c) 温度センサ JIS C 1602に規定するT熱電対と同等なものとするが,素線径は,0.2 mm以下とする。
表面温度を測定する場合は,熱電対は接着剤又は粘着剤を用いて貼付する。
なお,空気温度の測定には,素線径0.32 mmの熱電対を用いてもよい。
d) 放射強度計 サーモパイル式放射強度計を用いる。
e) 補助板 熱流計と熱抵抗が同等なものを用いる。
7
試験方法
7.1
サンプリング
サンプリングは,JIS K 5600-1-2による。
7.2
試験用試料の検分及び調製
試験用試料の検分及び調製は,JIS K 5600-1-3による。
7.3
試験の一般条件
試験の一般条件は,次による。
a) 試験の場所 養生及び試験を行う場所は,JIS K 5600-1-6の4.1[標準条件(可能な場合常に使用する
べき条件)]に規定する標準条件[温度23±2 ℃,相対湿度(50±5)%]で,直射日光を受けず,養
生及び試験にガス,蒸気,ほこりなどによる影響がなく,通風の少ない室内とする(以下,標準状態
6
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という。)。
b) 試験体の作製 基材に試験用塗料を塗って乾燥したものを試験体とし,試験体の枚数は,1枚とする。
試験体の作製は,次による。
1) 基材 試験体に用いる基材は,寸法180 mm×180 mm×1 mmの黒色塗装したアルミニウム板を用い
る。
基材の仕様は,表2による。
表2−基材の仕様
構成
項目
仕様
被塗物
アルミニウム板
JIS H 4000に規定するアルミニウム 99.50 %以上のアル
ミニウム板(A1050P H24,厚さ1.0 mm)
黒色塗装
塗料用顔料
カーボンブラック(CAS番号1333-86-4)
日射反射率(300〜2 500 nm)
10 %以下(JIS K 5602)
修正放射率
0.88±0.02
(JIS R 3106の箇条7及びJIS R 3107の付表1)
乾燥膜厚
20±5 μm
表面粗さ
Rzjis 2 μm以下
表面の色(L*)
10以下(JIS K 5600-4-5)
2) 塗装及び乾燥 製造業者の定める塗装仕様によって,基材に試験用塗料を塗装し,その後,標準状
態で7日間乾燥する。ただし,塗装仕様に塗装方法(必要な場合,下塗り及び中塗りを含む),塗料
のうすめ方,乾燥膜厚及び塗付け量及び乾燥方法(下塗り又は中塗りの塗装間隔を含む)が示され
た塗料を用いる。また,受渡当事者間の協定がある場合は,乾燥期間を変更してもよい。
7.4
屋外側表面熱伝達率の設定及び照射日射強度の調整
7.4.1
屋外側表面熱伝達率の設定
屋外側表面熱伝達率は,附属書Aによって14±1 W/(m2・K)に校正する。測定時に用いる屋外側放射表面
熱伝達率(hr)及び屋外側対流表面熱伝達率(hCV)は,附属書Aによって設定した値とする。
7.4.2
照射日射強度の調整
照射日射強度は,計測ユニットを取り外し,6.4 d)の放射強度計を試験体収容用の開口に照射日射の光源
と正対させて設置し,日射照射装置のランプ電力を調節し,表4の環境条件にする。測定位置は,試験体
収容用の開口の中央に位置する(図A.1参照)。試験体表面と異なる位置に設置してある受光器は,測定の
ときに照射日射強度を常時監視する目的で用いるので,放射強度計と同じ値を示すように調整するが,十
分な受光視野をもち,かつ,照射日射強度の調整で使用された日射照射装置で調整されていなければなら
ない。(図3参照)。
なお,照射日射強度は,日射照射装置(図2参照)のキセノンアークランプ,フィルターなどの劣化及
び汚染によって大きく低下するので,少なくとも3か月に1回は,照射日射強度を測定する。
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図3−測定装置の放射強度計及び受光器の位置
7.5
検定方法
7.5.1
実用標準板
実用標準板は,試験体と同じ大きさとする。表4に規定する環境条件で実用標準板の両表面の温度差に
よって通過する熱量が正しい値になることを確認するために用いる。実用標準板は,7.3 b) 1)の基材の塗装
面に,更に表3の仕様で塗装が施されたものとする。
実用標準板の上塗りの仕様は表3,実用標準板の構成は図4による。
表3−実用標準板の上塗りの仕様
項目
仕様
塗料用顔料
カーボンブラック(CAS番号1333-86-4)
日射反射率(300〜2 500 nm)
5 %以下(JIS K 5602)
修正放射率
0.88±0.02
(JIS R 3106の箇条7及びJIS R 3107の付表1)
上塗りと下塗りとの合計乾燥膜厚
50±5 μm(ただし,下塗りは20 μm以下)
表面粗さ
Rzjis 2 μm以下
表面の色(L*)
5 以下(JIS K 5600-4-5)
鏡面光沢度(60°)
90±5
上塗り
下塗り
黒色塗装
アルミニウム板
図4−実用標準板の構成
7.5.2
環境条件
環境条件は,表4による。気流発生装置の運転条件は,附属書Aによって屋外側表面熱伝達率を調整し
たときの条件で一定とする。
なお,結露などの影響が生じないよう恒温室の相対湿度は,50 %RH以下とする。
恒温室
計測ユニット
日射照射装置
屋外側仕切板
バッフル板(高透過ガラス)
気流発生装置
放射強度計
屋外側流路
光導入窓
受光器
基材 実用標準板
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表4−環境条件
項目
日射時の条件
屋外側空気温度θex
℃
23±0.5
室内側温度(加熱・冷却熱板の温度)θin
℃
23±0.5
屋外側表面熱伝達率hse
W/(m2・K)
14±1
照射日射強度ISolar
W/m2
1 000±50
7.5.3
検定
7.5.1に規定する実用標準板を用いて,7.5.2に規定する環境条件で,実用標準板の両表面の温度差によっ
て通過する熱量を測定する。この測定値が附属書Bに記載する,通過する熱量の熱収支理論計算で求めた,
実用標準板の両表面の温度差によって通過する熱量に対して,±5 %に入っていることを確認する。
なお,実用標準板からの全表面熱伝達熱量(塗膜表面から屋外側空気に伝達する対流伝達による熱量と
塗膜表面からの屋外側放射伝達による熱量との和)は,7.4.1で設定した屋外側放射表面熱伝達率(hr)及
び屋外側対流表面熱伝達率(hCV)を用い,測定した各部温度(実用標準板の表面,バッフル板の表面温度
及び屋外側空気温度)から算出する。
7.6
測定
7.6.1
測定項目
測定項目は,次による。
a) 試験体の両表面の温度差によって通過する熱流束 QW/AW(qW)
b) 照射日射熱流束 QSolar/AW
c) バッフル板の表面温度 θg
d) 屋外側空気温度 θex
e) 塗膜の表面温度 θp
f)
室内側温度 θin
7.6.2
測定方法
試験体の両表面の温度差によって通過する熱流束が一方向に単調に変化することなく10回測定し,偏差
が平均値の±5 %になった後に,7.6.1の全ての測定項目について,測定装置で10分間以上,かつ,40回
以上測定し,平均値を求める。試験体の両表面の温度差によって通過する熱流束,照射日射熱流束,及び
各部の温度の測定位置を図5に示す。
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平面図
A-A' 断面図
図5−測定項目の測定位置
7.7
算出方法
算出方法は,次による。
a) 試験体の両表面の温度差によって通過する熱量(QW) 7.6.1 a)で測定した試験体の両表面の温度差に
よって通過する熱流束(qW)を基に,式(6)によって求める。
b) 試験体の対流熱伝達による熱量(QCV) 屋外側対流表面熱伝達率(hCV)の設定値及び7.6.1のd)及
びe)の測定結果を基に,式(7)によって求める。
c) 試験体の放射熱伝達による熱量(Qr) 屋外側放射表面熱伝達率(hr)の設定値及び7.6.1のc)及びe)
の測定結果を基に,式(8)によって求める。
W
W
W
A
q
Q
×
=
············································································ (6)
(
)
W
p
ex
CV
CV
A
h
Q
×
−
=
θ
θ
································································ (7)
(
)
W
p
g
r
r
A
h
Q
×
−
=
θ
θ
····································································· (8)
ここに,
AW: 試験体の面積(m2)
hCV: 屋外側対流表面熱伝達率 [W/(m2・K)]
hr: 屋外側放射表面熱伝達率 [W/(m2・K)]
QCV: 試験体の対流熱伝達による熱量(W)
Qr: 試験体の放射熱伝達による熱量(W)
QW: 試験体の両表面の温度差によって通過する熱量(W)
θp: 塗膜の表面温度(℃)
θex: 屋外側空気温度(℃)
θg: バッフル板の表面温度(℃)
d) 塗膜の日射吸収率(α) 照射日射吸収熱量(試験体の両表面の温度差によって通過する熱量と試験
体の対流熱伝達による熱量と試験体の放射熱伝達による熱量との和)の照射日射熱量に対する比で,
式(9)によって求める。塗膜の日射吸収率は,四捨五入によって小数点以下2桁で表し,報告する。
Solar
r
CV
W
Solar
α
Q
Q
Q
Q
Q
Q
α
+
+
=
=
···························································· (9)
ここに,
Qα: 照射日射吸収熱量(W)
QSolar: 照射日射熱量(W)
QW: 試験体の両表面の温度差によって通過する熱量(W)
QCV: 試験体の対流熱伝達による熱量(W)
Qr: 試験体の放射熱伝達による熱量(W)
試験体
A'
A
室内側温度
バッフル板の表面温度
照射日射熱流束
塗膜の表面温度
屋外側空気温度
塗膜の表面温度
照射日射熱流束
10
K 5603:2017
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
e) 照射日射侵入熱量(Qη) 屋外側空気温度と室内側温度との差によって試験体を通過する熱量をゼロ
にした場合,試験体の両表面の温度差によって通過する熱量(QW)に等しく,式(10)となる。
W
W
W
η
A
Q
A
Q=
·············································································· (10)
ここに,
AW: 試験体の面積(m2)
Qη/AW: 照射日射侵入熱流束(W/m2)
QW/AW: 試験体の両表面の温度差によって通過する熱流束(W/m2)
f)
塗膜の日射侵入比(ηP) 塗膜の日射侵入比(ηP)は,照射日射侵入熱量(Qη)の照射日射熱量(QSolar)
に対する比であり,式(11)によって求める。
Solar
η
P
Q
Q
η=
···············································································(11)
ここに,
ηp: 塗膜の日射侵入比
Qη: 照射日射侵入熱量(W)
QSolar: 照射日射熱量(W)
8
試験報告書
8.1
試験報告書の内容
試験報告書には,次の事項を記載する。
a) 規格番号及び測定名
b) 測定を行った組織名
c) 測定年月日
d) 環境条件
e) 試験体に関する必要な事項
f)
測定結果及び算出結果 次の事項を記載する。
1) 試験体の両表面の温度差によって通過する熱流束 QW/AW 単位:W/m2
2) 照射日射侵入熱流束 Qη/AW 単位:W/m2
3) 塗膜の日射侵入比 ηp
4) 照射日射吸収熱流束 Qα/AW 単位:W/m2
5) 塗膜の日射吸収率α
g) 環境条件 次の事項を記載する。
1) 照射日射強度ISolar 単位:W/m2
2) 屋外側表面熱伝達率hse 単位:W/(m2・K)
3) 屋外側放射表面熱伝達率 hr 単位:W/(m2・K)
4) 屋外側空気温度 θex 単位:℃
5) 室内側温度 θin 単位:℃
h) 塗装仕様 次の事項を記載する。
1) 塗付け量 単位:kg/m2
2) 希釈溶剤の有無及び希釈率 単位:%
3) 乾燥膜厚 単位:μm
4) 塗装方法
5) 乾燥方法
11
K 5603:2017
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
6) 複数塗りの場合は,塗装間隔
7) 乾燥期間
注記 この規格とこの規格では規定していない光学特性との比較が可能な報告書の様式例は,附属書
Cを参照する。
なお,附属書Cに記載している,塗膜の見掛けの熱抵抗は,附属書Dを参照する。
8.2
不確かさの推定
測定の不確かさを評価する場合には,次による。
a) 測定装置に関わる不確かさ(測定装置の機器及び測定方法の校正の不確かさを含む。)
b) 日射照射装置の点灯条件に関わる不確かさ
c) 測定方法に関わる不確かさ(測定方法の校正の不確かさを含む。)
注記1 不確かさを求める場合は,ISO/IEC Guide 98-3[1],及びTS Z 0033[2]を参照する。
測定の不確かさを記載する場合は,8.1の試験報告書の内容と合わせて記載し,約95 %信頼の水準
にふさわしい拡張不確かさとともに報告する。
注記2 測定の不確さの計算例を,附属書Eに示す。
12
K 5603:2017
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書A
(規定)
屋外側表面熱伝達率の設定
A.1
一般
この附属書は,屋外側表面熱伝達率の設定について規定する。
A.2 屋外側表面熱伝達率の設定
A.2.1 校正
校正は,次による。
a) 一次標準板 一次標準板は,試験体と同じ大きさとする。一次標準板は,表A.2に規定する環境条件
で,一次標準板の両表面の温度差によって通過する熱量を正しい値に調整するために用いる。一次標
準板は,7.3 b) 1)の基材の塗装面に,更に表A.1の上塗りの仕様で塗装が施されたものとする。
表A.1−一次標準板の上塗りの仕様
項目
仕様
塗料用顔料
カーボンブラック(CAS番号1333-86-4)
日射反射率(300〜2 500 nm)
5 %以下(JIS K 5602)
修正放射率
0.88±0.02
(JIS R 3106の箇条7及びJIS R 3107の付表1)
上塗りと下塗りとの合計乾燥膜厚
ただし,下塗りは20 μm以下
表面粗さ
Rzjis 2 μm以下
表面の色(L*)
5 以下(JIS K 5600-4-5)
鏡面光沢度(60°)
90±5
b) 環境条件 屋外側空気温度(θex),室内側温度(加熱・冷却熱板の温度)(θin)及び照射日射強度(ISolar)
を表A.2に規定する環境条件に設定する。
なお,結露などの影響が生じないよう恒温室の相対湿度は,50 %RH以下とする。
表A.2−環境条件
項目
環境条件
屋外側空気温度θex
℃
23±0.5
室内側温度(加熱・冷却熱板の温度)θin
℃
33±0.5
照射日射強度ISolar
W/m2
0
c) 温度,風速及び照射日射の測定位置 温度,風速及び照射日射の測定位置は,次による。
1) 一次標準板の屋外側及び室内側表面温度の測定点は,中心の1点とする(図A.1参照)。
2) バッフル板の表面温度の測定は,1)と同じ測定位置とする。
3) 屋外側上流空気温度(θex,A)及び屋外側下流空気温度(θex,A')の測定位置は,屋外側仕切板表面か
ら約12.5 mm,加熱・冷却熱板の端面から約50 mm離れた位置とし,室内側温度の測定位置は,加
熱・冷却熱板の中央とする(図A.1参照)。屋外側空気温度は式(A.1)から求めた温度とする。
13
K 5603:2017
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
2
A'
ex,
A
ex,
ex
θ
θ
θ
+
=
····································································· (A.1)
ここに,
θex: 屋外側空気温度(℃)
θex,A: 屋外側上流空気温度(℃)
θex,A': 屋外側下流空気温度(℃)
4) 屋外側上流風速(vex,A)の測定位置は,屋外側仕切板表面から約12.5 mm,屋外側上流空気温度(θex,A)
測定の温度センサ位置から約15 mm外側に離れた位置とする。
平面図
A-A' 断面図
×:温度センサ
○:放射強度計
△:風速計
図A.1−温度及び風速の測定位置
d) 校正方法 一次標準板を用いて,屋外側表面熱伝達率(hse)を14±1 W/(m2・K)になるように,気流発
生装置によって屋外側流路の風速を調整して校正する。
なお,a)に規定する一次標準板を用いて,b)に規定する環境条件で,一次標準板の両表面の温度差
によって通過する熱量を測定する。この測定値が照射日射吸収熱量から一次標準板表面の表面熱伝達
熱量を差し引いて算出した一次標準板の両表面の温度差によって通過する熱量に対して,±5 %に入
っていることを確認する。
A.2.2 屋外側表面熱伝達率の算出方法
算出方法は次による。
a) 屋外側放射表面熱伝達率(hr) 屋外側放射表面熱伝達率(hr)は,式(A.2)によって求める。ただし,
一次標準板の表面と相対するバッフル板との表面間の形態係数は,一次標準板及びバッフル板は,同
じ恒温室内(図2参照)にあることから等温とみなすことができるので1とする。また,放射熱授受
の大半が一次標準板と平行するバッフル板との間で行われているとみなす。
b) 一次標準板の放射熱伝達による熱量(Qr,s) 照射日射がない条件での一次標準板の放射熱伝達による
熱量(Qr,s)は,式(A.3)によって求める。
c) 一次標準板の対流熱伝達による熱量(QCV,s) 照射日射がない条件での一次標準板の対流熱伝達によ
る熱量(QCV,s)は,式(A.4)によって求める。
d) 屋外側対流表面熱伝達率(hCV) 屋外側対流表面熱伝達率(hCV)は,一次標準板の表面温度及び屋
加熱・冷却熱板
屋外側仕切板
試験体(180 mm×180 mm)
200 mm
×○
気流方向
×A'
A×△
×△
×
×○
バッフル板
屋外側流路
一次標準板
×
25
12.5
気流方向
×
約500 mm
14
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外側空気温度を測定し,式(A.5)によって求める。
e) 屋外側表面熱伝達率(hse) 屋外側表面熱伝達率(hse)は,式(A.6)によって求める。
)
(
)
(
g
s
p,
2
g
2
s
p,
g
s
p,
g
s
p,
g
s
p,
r
T
T
T
T
h
+
×
+
×
×
×
−
+
×
=
σ
ε
ε
ε
ε
ε
ε
···························· (A.2)
(
)
W
s
p,
g
r
s
r,
A
T
T
h
Q
×
−
=
······························································· (A.3)
s
r,
s
W,
s
CV,
Q
Q
Q
−
=
····································································· (A.4)
s
W,
s
p,
ex
CV
CV
)
(
A
T
T
Q
h
×
−
=
······························································ (A.5)
CV
r
se
h
h
h
+
=
·········································································· (A.6)
ここに,
εp,s: 一次標準板の修正放射率
εg: バッフル板の修正放射率
σ: ステファン・ボルツマン定数5.67×10−8[W/ (m2・K4)]
Tp,s: 一次標準板の表面絶対温度(K)
Tg: バッフル板の表面絶対温度(K)
AW,s: 一次標準板面積(m2)
QCV,s: 一次標準板の対流熱伝達による熱量(W)
Qr,s: 一次標準板の放射熱伝達による熱量(W)
Tex: 屋外側空気絶対温度(K)
QW,s: 一次標準板の両表面の温度差によって通過する熱量(W)
照射日射がない条件での一次標準板の熱移動の内訳は,図A.2を参照する。
図A.2−照射日射がない条件での一次標準板の熱移動の内訳
Qr,s
QW,s :一次標準板の両表面の温度差によって通過する熱
量(W)
QCV,s :一次標準板の対流熱伝達による熱量(W)
Qr,s :一次標準板の放射熱伝達による熱量(W)
熱流計
バッフル板
加熱・冷却熱板
補助板
QW,s
一次標準板
QCV,s
屋外側仕切板
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附属書B
(規定)
試験体の両表面の温度差によって通過する熱量の熱収支理論計算
B.1
一般
この附属書は,試験体の両表面の温度差によって通過する熱量の熱収支理論計算について記載する。
B.2
熱収支理論計算
照射日射がない条件及び照射日射がある条件での試験体の熱移動について,熱収支理論計算式を式(B.1)
〜式(B.9)に示す。
B.2.1 照射日射がない条件での試験体の熱移動
B.2.1.1 試験体の熱移動
照射日射がない条件での試験体の熱移動の内訳は,図B.1を参照する。照射日射がないときの試験体の
両表面の温度差によって通過する熱量(QW)は,式(B.1)によって求める。
図B.1−照射日射がない条件での試験体の熱移動の内訳
r
r'
CV
W
Q
Q
Q
Q
−
+
−
=
································································ (B.1)
B.2.1.2 試験体表面での対流熱伝達による熱量
照射日射がない条件での試験体の対流熱伝達による熱量は,式(B.2)によって求める。
(
)
p
ex
CV
W
CV
T
T
h
A
Q
−
×
×
=
·························································· (B.2)
ここに,
QCV: 試験体の対流熱伝達による熱量(W)
AW: 試験体の面積(m2)
hCV: 屋外側対流表面熱伝達率[W/(m2・K)]
Tex: 屋外側空気絶対温度(K)
Tp: 塗膜の表面絶対温度(K)
B.2.1.3 射出及び反射された長波放射のうち,試験体に吸収される熱量
照射日射がない条件での試験体,バッフル板及び屋外流路の各面から射出及び反射された長波放射のう
ち,試験体に吸収される熱量は,式(B.3)〜式(B.6)によって求める。
4
p
p
p
W
r',1
T
A
Q
×
×
×
×
=
σ
ε
α
························································· (B.3)
4
g
g
g
g
,2
r'
T
A
Q
×
×
×
×
=
σ
ε
α
························································· (B.4)
QW :試験体の両表面の温度差によって通過する熱
量(W)
QCV :試験体の対流熱伝達による熱量(W)
Qr' :試験体,バッフル板,屋外流路の各面から射
出及び反射された長波放射のうち,試験体に
吸収される熱量(W)
Qr :試験体の放射熱伝達による熱量(W)
熱流計
バッフル板
加熱・冷却熱板
塗膜
QCV
Qr
Qr'
基材
QW
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4
s
s
s
s
,3
r'
T
A
Q
×
×
×
×
=
σ
ε
α
·························································· (B.5)
,3
r'
,2
r'
,1
r'
r'
Q
Q
Q
Q
+
+
=
································································ (B.6)
ここに,
Qr': 試験体,バッフル板,屋外流路の各面から射出及び反射さ
れた長波放射のうち,試験体に吸収される熱量(W)
Qr',1: 試験体から射出及び反射された長波放射のうち,試験体に
吸収される熱量(W)
Qr',2: バッフル板から射出及び反射された長波放射のうち,試験
体に吸収される熱量(W)
Qr',3: 屋外流路から射出及び反射された長波放射のうち,試験体
に吸収される熱量(W)
αp: 塗膜の放射吸収係数4.39×10−2
αg: バッフル板の放射吸収係数6.24×10−1
αs: 屋外側流路側面の放射吸収係数2.43×10−1
AW: 試験体の面積(m2)
Ag: バッフル板の面積(m2)
As: 屋外側流路側面の面積(m2)
εp: 塗膜の修正放射率
εg: バッフル板の修正放射率
εs: 屋外側流路側面の修正放射率
Tp: 塗膜の表面絶対温度(K)
Tg: バッフル板の表面絶対温度(K)
Ts: 屋外側流路側面の表面絶対温度(K)
σ: ステファン・ボルツマン定数5.67×10−8[W/ (m2・K4)]
B.2.1.4 試験体から長波放射で射出される熱量
照射日射がない条件での試験体から長波放射で射出される熱量は,式(B.7)によって求める。
4
p
p
W
r
T
A
Q
×
×
×
=
σ
ε
································································ (B.7)
ここに,
Qr: 試験体の放射熱伝達による熱量(W)
AW: 試験体の面積(m2)
εp: 塗膜の修正放射率
Tp: 塗膜の表面絶対温度(K)
B.2.2 照射日射がある条件での試験体の熱移動
B.2.2.1 試験体の熱移動
照射日射がある条件での試験体の熱移動の内訳は,図B.2を参照する。照射日射があるときの試験体の
両表面の温度差によって通過する熱量(QW)は,式(B.8)によって求める。
図B.2−照射日射がある条件での試験体の熱移動の内訳
QW:試験体の両表面の温度差によって通過する熱
量(W)
QCV :試験体の対流熱伝達による熱量(W)
Qr':試験体,バッフル板,屋外流路の各面から射
出及び反射された長波放射のうち,試験体に
吸収される熱量(W)
Qr:試験体の放射熱伝達による熱量(W)
Qα:照射日射吸収熱量(W)
熱流計
バッフル板
加熱・冷却熱板
塗膜
QCV
Qr
Qr'
Qα
基材
QW
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α
r
r'
CV
W
Q
Q
Q
Q
Q
+
−
+
−
=
··························································· (B.8)
B.2.2.2 試験体の日射吸収による熱量
照射日射がある条件での試験体の日射吸収による熱量は,式(B.9)によって求める。
−
×
×
=
100
1
p
Solar
W
α
ρ
I
A
Q
·························································· (B.9)
ここに,
Qα: 照射日射吸収熱量(W)
AW: 試験体の面積(m2)
ISolar: 照射日射強度(W/ m2)
ρp: 塗膜の日射反射率(%)
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附属書C
(参考)
報告書の様式例
この附属書は,この規格とこの規格では規定していない光学特性との比較が可能な,報告書の様式例に
ついて記載する。測定結果報告の様式例を,表C.1に示す。
表C.1−測定結果報告
品名
規格番号及び
測定名
試験機関名
測定年月日
製造業者名
測定項目
結果
単位
試験方法
熱特性
試験体の両表面の温度差によって通過する
熱流束 QW/AW
W/m2
JIS K 5603
照射日射侵入熱流束 Qη/AW
W/m2
塗膜の日射侵入比 ηp
−
照射日射吸収熱流束 Qα/AW
W/m2
塗膜の日射吸収率 α
−
環境条件
照射日射強度
W/m2
屋外側表面熱伝達率
W/(m2・K)
屋外側放射表面熱伝達率
W/(m2・K)
屋外側空気温度
℃
室内側温度
℃
塗膜の見掛けの熱抵抗
[(m2・K)/W] JIS K 5603の附属書D
光学特性
日射反射率
%
JIS K 5602
修正放射率
−
JIS R 3106,JIS R 3107
塗膜の色
−
JIS K 5600-4-5 L*a*b*
塗装仕様
記載事項
塗装工程
下塗り
上塗り(1回目)
上塗り(2回目)
品 名
品 名
品 名
混合比
塗付け量 kg/m2
希釈剤
希釈率 %
乾燥膜厚 μm
塗装方法
乾燥方法
乾燥温度 ℃
乾燥時間 時間
塗装回数 回
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附属書D
(参考)
塗膜の見掛けの熱抵抗
D.1 一般
この附属書は,塗膜の見掛けの熱抵抗の測定について記載する。
D.2 試験の一般条件
試験の一般条件は,7.3による。
D.3 試験装置
試験装置は,箇条6に規定する測定装置を用いる。
D.4 屋外側表面熱伝達率の設定
屋外側表面熱伝達率は,附属書Aによって14±1 W/(m2・K)に校正する。測定時に用いる屋外側放射表面
熱伝達率(hr)及び屋外側対流表面熱伝達率(hCV)は,附属書Aによって設定した値とする。
D.5 検定方法
a)に示す実用標準板を用いて,b)に示す環境条件で測定し,実用標準板の両表面の温度差によって通過
する熱量を測定する。この測定値が附属書Bの通過する熱量の熱収支理論計算によって求めた,実用標準
板の両表面の温度差によって通過する熱量に対して,±5 %に入っていることを確認する。
なお,実用標準板からの全表面熱伝達熱量(塗膜表面から屋外側空気に伝達する対流伝達による熱量と
塗膜表面からの屋外側放射伝達による熱量との和)は,7.4.1で設定した屋外側放射表面熱伝達率(hr)及
び屋外側対流表面熱伝達率(hCV)を用い,測定した各部温度(実用標準板の表面,バッフル板の表面温度,
屋外側空気温度)から算出する。
a) 実用標準板 実用標準板は,7.5.1による。
b) 環境条件 表D.1に規定する環境条件で気流発生装置の運転条件は,附属書Aによって屋外側表面熱
伝達率を設定したときの条件で一定とする。
なお,結露などの影響が生じないよう恒温室の相対湿度は,50 %RH以下とする。
表D.1−環境条件
項目
環境条件
屋外側空気温度θex
℃
23±0.5
室内側温度(加熱・冷却熱板の温度)θin
℃
43±0.5
屋外側表面熱伝達率hse
W/(m2・K)
14±1
照射日射強度ISolar
W/m2
0
D.6 測定
D.6.1 測定項目
7.3 a)の試験の場所及びD.5 b)の環境条件で試験体ごとに測定を行う。塗膜の見掛けの熱抵抗を求めるた
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
めに必要な測定項目は,次による。
a) 試験体の両表面の温度差によって通過する熱流束 QW/AW(qW)
b) バッフル板の表面温度 θg
c) 屋外側空気温度 θex
d) 塗膜の表面温度 θp
e) 室内側温度 θin
D.6.2 測定方法
始めに,試験体の見掛けの熱抵抗(R)は,JIS R 1611[3]に規定する試験方法で求めておく。熱流計の見
掛けの熱抵抗(RTH)は,材料仕様書から求めておく。
試験体の両表面の温度差によって通過する熱流束が一方向に単調に変化することなく10回測定し,偏差
が平均値の±5 %になった後に,D.6.1の全ての測定項目について,測定装置で10分間以上,かつ,40回
以上測定し,平均値を求める。試験体の両表面の温度差によって通過する熱流束,照射日射熱流束,及び
各部の温度の測定位置を図D.1に示す。
平面図
A-A' 断面図
図D.1−測定項目の測定位置
D.6.3 算出方法
塗膜の見掛けの熱抵抗(Rp)は,式(D.1)及び式(D.2)によって求める。塗膜の見掛けの熱抵抗は,四捨五
入によって小数点以下2桁で表し,報告する。
(
)
ex
in
W
W
1
θ
θ−
=AQ
R
···································································· (D.1)
TH
AL
ex
p
R
R
R
R
R
−
−
−
=
····························································· (D.2)
ここに,
R: 試験体の見掛けの熱抵抗[(m2・K)/W]
QW: 試験体の両表面の温度差によって通過する熱量(W)
θex: 屋外側空気温度(℃)
θin: 室内側温度(加熱・冷却熱板温度)(℃)
AW: 試験体の面積(m2)
Rex: 見掛けの屋外側表面熱抵抗[(m2・K)/W]
RAL: アルミニウム板の見掛けの熱抵抗[(m2・K)/W]
試験体
A'
A
室内側温度
バッフル板の表面温度
照射日射熱流束
塗膜の表面温度
屋外側空気温度
塗膜の表面温度
照射日射熱流束
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
RTH: 熱流計の見掛けの熱抵抗[(m2・K)/W]
Rp: 塗膜の見掛けの熱抵抗[(m2・K)/W]
照射日射がない条件での試験体の熱移動の内訳は,図D.2を参照する。
QW: 試験体の両表面の温度差によって通過
する熱量(W)
QCV: 試験体の対流熱伝達による熱量(W)
Qr: 試験体の放射熱伝達による熱量(W)
図D.2−照射日射がない条件での試験体の熱移動の内訳
加熱・冷却熱板
熱流計
QCV
Qr
QW
基材
塗膜
屋外側仕切板
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書E
(参考)
測定の不確かさの計算例
E.1
一般
測定装置で測定された試験体の塗膜の日射吸収率の不確かさは,測定装置,測定条件,測定手順及び試
験体特性に依存する。
特定の測定装置の不確かさを解析することによって,測定の不確かさを確認し,定量化することができ
る。
塗膜の日射吸収率の測定結果に関わる不確かさに対する評価手順を測定した塗膜の日射吸収率とともに
確定し,報告するのが望ましい。
E.2
基本的な測定の不確かさ
基本的な測定に関わる個々の不確かさは,不確かさの構成要素として適用できる。
基本的な測定の不確かさを増やすために不確かさの各々の測定構成要素は,他の不確かさと組み合わせ
る。塗膜の日射吸収率の測定結果に不確かさ伝ぱ(播)を考慮する前に,測定装置に関連する構成要素の
不確かさを調査するのが望ましい。
不確かさ構成要素は,製造業者によって供給される仕様又は一部の国家標準にトレーサブルな校正デー
タを使用している校正結果によって得ることができる。
表E.1−不確かさ構成要素
不確かさの構成要素
記号
単位
長さ
ΔL
m
温度
Δθ
℃
照射日射強度
ΔISolar
W/m2
熱流計
ΔQ
W/m2
E.3
塗膜の日射吸収率の不確かさ伝ぱ(播)
表E.1に記載する各々の不確かさ構成要素を日射熱取得率の全体の不確かさに組み込む。
結果(R)が式(E.1)で与えられる量xi(i=1, 2,…, n)に基づくと仮定する。
)
(ix
R
R=
,i=1, 2,…, n ···························································· (E.1)
各々同じ信頼水準P(例えば,P=95 %)で,xiは不確かさΔPxiとなる。
i
i
i
Δx
x
x
±
=
··········································································· (E.2)
結果(R)の不確かさは,式(E.3)によって求める。
2
1
∑
∂∂
=
=
i
i
n
i
Δx
x
R
ΔR
···························································· (E.3)
この手順を使用することで一部の中間的な構成要素に対する不確かさと最終的な塗膜の日射吸収率に対
する不確かさとを得ることができる。
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
E.4
不確かさの決定例
塗膜の日射吸収率(α)は,本文式(1)によって求める。また,式(1)に必要となる照射日射吸収熱量(Qα)
は,式(2)によって求める。
ここで,塗膜の日射吸収率に対する不確かさを算出する。
表E.1の不確かさ構成要素を用いて検討した標準不確かさの例を,表E.2に示す。
表E.2−不確かさ構成要素及び標準不確かさ
不確かさ構成要素
記号
標準不確かさ
単位
長さ
Δd
±0.000 4
m
温度
Δθ
±0.21
℃
温度差
Δδθ
±0.22
K
照射日射強度
ΔISolar
±0.34 %
W/m2
熱流計
ΔQ
±1.02 %
W/m2
塗膜の日射吸収率(α)のある測定結果によって算出した不確かさの例を,表E.3に示す。
表E.3−塗膜の日射吸収率の測定のバジェットシート
項目
測定値
感度係数
標準不確かさ
単位
QSolar
32.40
0.020
0.000 1
W
QW
30.30
0.107
0.010 1
W
QCV
−1.03
0.001
0.001 5
W
Qr
−0.02
0.002
0.001 5
W
α
0.90
−
0.013 2
−
拡張不確かさは,測定の不確かさに包含係数k=2を乗じて求め,0.026(=0.013×2)となる。
よって,表E.3から塗膜の日射吸収率(α)及びP=95 %の信頼水準の不確かさは,次のとおりとなる。
α=0.90±0.026,(P=95 %)
この値は,不確かさ範囲(0.874〜0.926)の中にあって,測定された値から2.8 %となる。
参考文献
[1] ISO/IEC Guide 98-3,Uncertainty of measurement−Part 3: Guide to the expression of uncertainty in
measurement (GUM:1995)
[2] TS Z 0033 測定における不確かさの表現のガイド
[3] JIS R 1611 ファインセラミックスのフラッシュ法による熱拡散率・比熱容量・熱伝導率の測定方法