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C 5900:2019  

(1) 

目 次 

ページ 

序文 ··································································································································· 1 

1 適用範囲························································································································· 1 

2 引用規格························································································································· 1 

3 用語及び定義 ··················································································································· 1 

3.1 基本用語及びその定義 ···································································································· 1 

3.2 部品の用語及びその定義 ································································································· 5 

3.3 性能パラメータ及びその定義 ··························································································· 8 

4 定格などの標準 ··············································································································· 12 

4.1 標準的環境条件 ············································································································ 12 

4.2 定格などに用いる数値 ··································································································· 12 

4.3 温度 ··························································································································· 12 

5 規格体系························································································································ 12 

6 基本的光学特性 ··············································································································· 12 

C 5900:2019  

(2) 

まえがき 

この規格は,産業標準化法第16条において準用する同法第12条第1項の規定に基づき,一般財団法人

光産業技術振興協会(OITDA)及び一般財団法人日本規格協会(JSA)から,産業標準原案を添えて日本

産業規格を改正すべきとの申出があり,日本産業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本

産業規格である。これによって,JIS C 5900:2013は改正され,この規格に置き換えられた。 

この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。 

この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意

を喚起する。経済産業大臣及び日本産業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実

用新案権に関わる確認について,責任はもたない。 

注記 工業標準化法に基づき行われた申出,日本工業標準調査会の審議等の手続は,不正競争防止法

等の一部を改正する法律附則第9条により,産業標準化法第12条第1項の申出,日本産業標準

調査会の審議等の手続を経たものとみなされる。 

  

日本産業規格          JIS 

C 5900:2019 

光伝送用受動部品通則 

Generic specification of fiber optic passive devices 

序文 

この規格は,1987年に制定され,その後4回の改正を経て今日に至っている。前回の改正は,2013年に

行われたが,その後の関連する規格の改正に対応するために改正した。 

なお,対応国際規格は現時点で制定されていない。 

適用範囲 

この規格は,石英系光ファイバを用いた光伝送に使用する光受動部品の通則であり,光伝送用受動部品

の用語,定格などの一般的な共通事項について規定する。 

注記 この規格は,次に掲げる光受動部品の規格の共通事項を規定している。 

JIS C 5910-1 波長選択性のない光ブランチングデバイス−第1部:通則 

JIS C 5912 波長スイッチ通則 

JIS C 5914 光サーキュレータ通則 

JIS C 5916 光伝送用分散補償器通則 

JIS C 5920-1 光伝送用パワー制御受動部品−第1部:通則 

JIS C 5925-1 光伝送用WDMデバイス−第1部:通則 

JIS C 5926-1 光伝送用光フィルタ−第1部:通則 

JIS C 5930-1 光伝送用スイッチ−第1部:通則 

JIS C 5932-1 光アイソレータ−第1部:通則 

引用規格 

次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの

引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。 

JIS C 61300-1 光ファイバ接続デバイス及び光受動部品−基本試験及び測定手順−第1部:通則 

JIS Z 8601 標準数 

用語及び定義 

この規格及び光受動部品の規格で用いる主な用語及び定義は,次による。 

3.1 

基本用語及びその定義 

3.1.1 

接続形態(connecting) 

光伝送用部品間,光ファイバ間又は光ファイバと光伝送用部品との間を接続し,その間に光を伝送する

C 5900:2019  

  

ための構造的形態。 

注記 光コネクタプラグ形,光コネクタレセプタクル形及び光ファイバピッグテール形がある。 

3.1.2 

光コネクタプラグ形接続形態(plugged connecting) 

光コネクタプラグによる接続形態。 

注記 光コネクタプラグとは,光伝送用部品間,光ファイバ間又は光ファイバと光伝送用部品との間

を接続するために,光ファイバの端末部に取り付けるもので,光ファイバを保持固定するフェ

ルールをもつ部品をいう。 

3.1.3 

光コネクタレセプタクル形接続形態(receptacle connecting) 

光コネクタレセプタクルによる接続形態。 

注記 光コネクタレセプタクルとは,光伝送用部品間,光ファイバ間又は光ファイバと光伝送用部品

との間を接続するために光伝送用部品に取り付けるもので,光コネクタプラグとかん(嵌)合

する構造をもち,内部のスリーブによってフェルールの位置を決める機能をもつ部品をいう。 

3.1.4 

光ファイバピッグテール形接続形態(pigtailed connecting) 

光ファイバピッグテールによる接続形態。 

注記 光ファイバピッグテールとは,片端に光コネクタ又は光伝送用部品が取り付けてあり,他端は

光コネクタ又は光伝送用部品を取り付けず,裸の状態になっている光ファイバをいう。 

3.1.5 

端子(port) 

光伝送用部品で,光ファイバ及び他の光伝送用部品と接続し,光の入射,出射又はその両方が可能な部

分。 

3.1.6 

入力端子(input port) 

光の入射に用いる端子。 

3.1.7 

出力端子(output port) 

光の出射に用いる端子。 

3.1.8 

定格(rating) 

光伝送用部品を適正な状態で動作させるために必要な基本的条件。 

3.1.9 

公称値(nominal value) 

光伝送用受動部品の規格値を代表する数値。 

3.1.10 

基準状態(standard condition) 

光伝送用受動部品の性能を評価する場合に基準とする環境状態。 

3.1.11 

周囲温度(ambient temperature) 

C 5900:2019  

光伝送用受動部品の周囲の温度。規定がない限り周囲の空気温度をいう。 

3.1.12 

性能(performance) 

使用目的を遂行するための能力。 

3.1.13 

特性(characteristic) 

光伝送用部品の性能のうち特に取り上げられた性能で,ある条件で定量的又は定性的に表すことができ

るもの。 

3.1.14 

伝達を意図する(conducting) 

光の入力,出力又はその両方が可能なn個(n≧1)の端子をもつ光伝送用受動部品のある特定の使用状

態で,ある端子iに光パワー(Pi in)を入射したとき,ある端子jから出射する光パワー(Pj out)が,Pj out

=Pi in(i≠j)であることを望む(連体修飾)。部品の構造・機能上の理由からPj out=Pi inにはなり得ない場

合であっても,Pj out=Pi inに近いことを望むことも含む。 

3.1.15 

分岐を意図する(splitting) 

端子に入射した光パワーを2個以上の端子から出射するとき,出射する全光パワーの合計が,入力光パ

ワーに近いことを望む(連体修飾)。 

3.1.16 

結合を意図する(coupling) 

2個以上の端子に入射した光パワーを一つの端子から出射するとき,入射する全光パワーの合計が,出

力光パワーに近いことを望む(連体修飾)。 

3.1.17 

阻止を意図する(isolated) 

端子iに光パワーPi inを入射したとき,端子jから出射する光パワーPj outが0であることを望む(連体修

飾)。 

3.1.18 

減衰を意図する(attenuating) 

端子iに光パワーPi inを入射したとき,端子jから出射する光パワーPj outが,0<Pj out<Pi in(i≠j)を満た

す一定の値であることを望む(連体修飾)。 

3.1.19 

伝達係数(transfer matrix coefficient) 

入力光パワーに対する出力光パワーの比。 

注記 総端子数n個の光伝送用受動部品で,端子iだけに波長λ,光パワーPi inの光を入射し,かつ,

端子jから出射する光パワーがPj outであるとき,入力光パワーに対する出力光パワーの比をこ

の光伝送用受動部品の端子iから端子jへの伝達係数といい,tij(λ)=Pj out/Pi in(ただし,i=1,2,

…,n及びj=1,2,…,n。)で表す。総端子数n個の光伝送用受動部品におけるn2個の伝達係

数を総称して,その光伝送用受動部品の伝達係数ということがある。 

3.1.20 

伝達行列(transfer matrix) 

C 5900:2019  

  

伝達係数tijを要素とする正方行列。ここで,iは入射する端子を表し,jは出射する端子を表す。光伝送

用受動部品の波長依存性を示す場合,その伝達行列全体に波長λを添字として付し,Tn (λ)と示すこともで

きる。 

例1 n=3の場合 

λ

λ

λ

λ

λ

λ

λ

λ

λ

λ

λ

=

=

33

32

31

23

22

21

13

12

11

33

32

31

23

22

21

13

12

11

3

)

(

)

(

)

(

)

(

)

(

)

(

)

(

)

(

)

(

)

(

t

t

t

t

t

t

t

t

t

t

t

t

t

t

t

t

t

t

T

伝達係数の波長依存性を示す必要がない場合は,波長λを省略することができる。 

例2 

33

32

31

23

22

21

13

12

11

33

32

31

23

22

21

13

12

11

,

)

(

,

)

(

t

t

t

t

t

t

t

t

t

t

t

t

t

t

t

t

t

t

T

T

t

t

n

n

ij

ij

λ

λ

λ

光伝送用受動部品の入出力端子間に線形結合関係が成立するときは,各端子への入力光パワーP1 in,P2 in,

…,Pn inと各端子間の出力光パワーP1 out,P2 out,…,Pn outとの間には,次の式が成立する。 

=

in

n

n

n

tn

n

P

P

P

T

P

P

P

Μ

Μ

i

2

i1

out

out

2

out

1

注記 Tnの転置行列をTntで表す。 

3.1.21 

対数伝達行列(logarithmic transfer matrix) 

対数伝達係数aijを要素とする正方行列。ここで,iは入射する端子を表し,jは出射する端子を表す。一

般に,対数伝達行列の要素は,次のようになる。 

aij = −10 log 10 tij 

ここに, 

tij: 伝達係数 

aij: 端子iから入射した光が端子jから出射するときに

受ける光損失 

3.1.22 

偏光状態(state of polarization) 

偏光の振動状態の分類。直線,だ(楕)円及び円がある。 

3.1.23 

分波(wavelength demultiplexing) 

複数の波長を含んだ光を,波長に応じて複数の端子から出射する(連体修飾)。 

3.1.24 

合波(wavelength multiplexing) 

波長の異なる光を複数の端子に入射し,一つの端子から出射する(連体修飾)。 

3.1.25 

波長選択性(wavelength-selective) 

分波する及び/若しくは合波する,又はあらかじめ定められた波長帯域の光だけを伝達する機能。 

C 5900:2019  

3.1.26 

端子構成(port configuration) 

光受動部品の端子(全端子数n)を,次に記載する全ての関係を満たす,端子数Mの端子群及び端子数

Nの端子群の二つの端子群(M+N=n)に分割した場合の端子の接続関係を示す概念。M×Nで表す。 

a) 端子数Mの端子群のいずれの端子も,同じ端子群のその他の端子に対して,伝達,減衰,分岐又は結

合を意図する関係にない。 

b) 端子数Nの端子群のいずれの端子も,同じ端子群のその他の端子に対して,伝達,減衰,分岐又は結

合を意図する関係にない。 

c) 端子数Mの端子群のいずれの端子も,端子数Nの端子群のいずれの端子に対しても,伝達,減衰,分

岐又は結合を意図する関係になり得る。 

d) 端子数Nの端子群のいずれの端子も,端子数Mの端子群のいずれの端子に対しても,伝達,減衰,分

岐又は結合を意図する関係になり得る。 

特に断りがない場合,M≦Nとする。 

注記1 入力端子群(端子数M)及び出力端子群(端子数N)の端子構成の表記方法として用いる場

合,M>Nであっても,M×Nと表すことがある。 

注記2 波長選択ブランチングデバイスの端子構成の表記方法として用いる場合,伝達,減衰,分岐

又は結合を意図する関係にあるとは,いずれかの通過帯域(パスバンド)において伝達する

ことを意味する。 

注記3 光スイッチの端子構成の表記方法として用いる場合,伝達,減衰,分岐又は結合を意図する

関係にあるとは,ある状態において伝達することを意味する。 

3.1.27 

非相反性(non-reciprocal) 

2端子間の光の伝達特性が,光の入出力方向によって異なる機能。 

注記1 非相反性の反対語は,相反性である。 

注記2 非相反性素子を含む例としては,入力端子と出力端子とを反転すると伝達しない光受動部品

である光アイソレータ,光サーキュレータなどがある。また,入力端子と出力端子とを反転

しても伝達でき,かつ,両方向に用いる光受動部品は,相反性素子だけの組合せからできて

いる。 

注記3 同時に一つの端子を入力端子及び出力端子として用いる適用方法を,双方向(bi-directional)

という。双方向の反対語は一方向(uni-directional)である。双方向と両方向とを誤用しない

ように注意する。双方向は適用方法を示す用語であり,両方向は光受動部品の機能を表す用

語である。 

3.2 

部品の用語及びその定義 

3.2.1 

光伝送用部品(fiber optic component) 

光ファイバを用いた光伝送に使用し,かつ,1本以上の光ファイバと接続でき,光ファイバからの光の

入力,光ファイバへの光の出力,又はその両方が可能である部品。 

注記 光伝送用部品は,IEC TS 62538で定義するoptical deviceに該当する。optical deviceは,optical 

element,optical component,optical assembly,optical sub-assembly及びoptical moduleを含む。 

C 5900:2019  

  

3.2.2 

光伝送用受動部品(fiber optic passive component) 

入射する光に対してエネルギーの変換機能をもたず,接続した全ての光ファイバから入射する光パワー

の総量よりも,全ての光ファイバへ出射する光パワーの総量が大きくならない光伝送用部品。 

3.2.3 

光伝送用パワー制御受動部品(fiber optic power control device) 

一対の光の入力及び出力端子をもち,あらかじめ波長に依存しない伝達係数を制御することによって,

出力端子から出射する光パワーを制御する光伝送用受動部品。 

注記 伝達係数の制御は,あるパワーを超えた光を入射したときに行う場合及び全ての入射光の光パ

ワーに対し制御する場合に行う。 

3.2.4 

光減衰器(optical attenuator) 

光の入力,出力又はその両方が可能な2個の端子をもち,減衰を意図する光伝送用受動部品。 

3.2.5 

光アイソレータ(optical isolator) 

入力端子及び出力端子をもち,入力端子から出力端子へは伝達を意図し,出力端子から入力端子へは阻

止を意図する非相反性の光伝送用受動部品。 

3.2.6 

光サーキュレータ(optical circulator) 

光の入力,出力又はその両方が可能な3個以上の端子をもち,入力光及び出力光が,入出力端子に対し,

循環関係をもった非相反性の光伝送用受動部品。例えば,第1端子の入力光が第2端子に出射し,第2端

子の入力光が第3端子に出射する。 

3.2.7 

分散補償器(chromatic dispersion compensator) 

波長分散をもつ2端子光伝送用受動部品。一般に,光路中に発生する分散値又は分散スロープを補償す

るために用いる。 

3.2.8 

光変調器(optical modulator) 

光の入力,出力又はその両方が可能な2個の端子をもち,外部からの信号に応じて光を変調し,出射す

る機能をもつ光伝送用部品。 

注記 変調には,強度変調,位相変調,周波数変調などがある。 

3.2.9 

偏光子(polarizer) 

光の入力,出力又はその両方が可能な2個の端子をもち,入力光に対し,偏光特性をもつ光を出射する

光伝送用受動部品。 

3.2.10 

偏光制御器(polarization controller) 

光の入力,出力又はその両方が可能な2個の端子をもち,入力光の偏光状態を制御し,これを出射する

光伝送用受動部品。 

C 5900:2019  

3.2.11 

偏光スクランブラ(polarization scrambler) 

光の入力,出力又はその両方が可能な2個の端子をもち,入力光の偏光状態をランダムに変化させ,こ

れを出射する光伝送用受動部品。 

3.2.12 

偏光解消子(depolarizer) 

光の入力,出力又はその両方が可能な2個の端子をもち,偏光特性をもつ光を入射し,偏光特性をもた

ない自然光に近い光を出射する光伝送用受動部品。 

3.2.13 

波長選択性のない光ブランチングデバイス,光カプラ,光スプリッタ(non-wavelength-selective branching 

device,optical coupler,optical splitter) 

特定の波長域において波長選択性のない,3個以上の端子をもつ両方向受動部品であって,1個又は2

個以上の入力端子からの入力を,1個又は2個以上の出力端子に,増幅,切替え又は変調することなしに,

分岐又は結合させる機能を提供するもの。 

3.2.14 

波長選択光ブランチングデバイス,光合波器,光分波器,光合分波器,WDMデバイス[wavelength-selective 

branching device,wavelength multiplexer,wavelength demultiplexer,wavelength multiplexer/demultiplexer,

wavelength division multiplexing (WDM) device] 

光の入力,出力又はその両方が可能な3個以上の端子をもち,光の波長に依存してあらかじめ定められ

た割合で,端子に光を出射する光伝送用受動部品。波長選択光ブランチングデバイスは,光に対して増幅,

その他の能動機能をもたず,二つ以上の異なる波長範囲において異なる2対の端子間で伝達を意図する光

伝送用受動部品。 

注記1 波長選択光ブランチングデバイスは,波長選択性がない光ブランチングデバイスに対比する

用語であり,IEC用語の階層構造に由来している。一般的には,WDMデバイスを用いる。 

注記2 光合波器及び光分波器は,直接的には合波する及び分波する機能をもつ光伝送用受動部品を

指すが,波長選択光ブランチングデバイスは,非相反性がなく両方向性のため,光伝送用受

動部品の用途を示す場合に用いる。 

3.2.15 

光スイッチ(optical switch) 

光の入力,出力又はその両方が可能な2個以上の端子をもち,かつ,ある端子に入射した光パワーを他

の端子から出射するか,又はいずれの端子からも出射しないかの二つ以上の定常的な状態をとることがで

き,これらの状態の間を外部からの駆動手段に応じて切り換えることができる光伝送用受動部品。 

注記 光の入力,出力又はその両方が可能な2個の端子をもち,伝達を意図する状態及び阻止を意図

する状態の両方をとることができる光スイッチを,光シャッタともいう。 

3.2.16 

波長スイッチ(wavelength switch) 

二つ以上の定められた波長範囲において動作し,一つ以上の波長範囲の光に対して,波長範囲ごとに伝

達を意図する状態又は阻止を意図する状態の制御を行う光スイッチ。 

3.2.17 

光フィルタ(optical filter) 

C 5900:2019  

  

複数の定められた波長範囲の光を,伝達,阻止又は定められた減衰量に減衰し,信号のスペクトル強度

分布を変更する,1個又は2個の入出力端子をもつ光伝送用受動部品。伝達を意図する波長範囲,阻止を

意図する波長範囲又は減衰を意図する波長範囲は,それぞれ複数あってもよい。 

注記 使用波長範囲を複数の波長範囲に分けた場合,それぞれの波長範囲の光を,伝達,減衰又は複

数の異なる定められた減衰量に減衰することで信号のスペクトル強度分布を変更する。 

3.2.18 

ファイバ・ブラッグ・グレーティング,FBG(fiber Bragg grating) 

光ファイバコア部分に光ファイバ軸方向の周期的な屈折率変化を形成した光伝送用受動部品。 

注記 長手方向に周期が変わる屈折率変化をもつものを,チャープFBGという。 

3.2.19 

エタロン(etalon) 

平行に置いた一対のミラーで構成する光キャビティからなる光受動部品。 

3.2.20 

GTエタロン(Gires-Tournois etalon) 

平行に置いた一対のミラーからなり,入出力端子側のミラーは,ハーフミラー,もう一方は,全反射ミ

ラーで構成しているエタロン。GT(Gires-Tournois)干渉計ともいう。 

3.2.21 

FPエタロン(Fabry-Perot etalon) 

平行に置いた一対のハーフミラーからなり,両ミラーがそれぞれ,入力端子側及び出力端子側に配置さ

れるエタロン。FP(Fabry-Perot)干渉計ともいう。 

3.2.22 

光キャビティ(optical cavity) 

平行に置いた一対のミラーからなり,ミラー間の多重反射による干渉によって,ある損失波長特性をも

つ光受動部品。 

3.3 

性能パラメータ及びその定義 

3.3.1 

使用温度(operating temperature) 

光伝送用部品を適正な状態で使用できる周囲温度。放熱する光伝送用部品の場合,ケース温度を指すこ

とがある。 

3.3.2 

使用温度範囲(operating temperature range) 

使用温度の範囲。 

3.3.3 

光損失(optical attenuation) 

ある特定の使用状態で,一つの端子に入射する光パワーと同一又は別の端子から出射する光パワーとの

比をデシベル(dB)で表した値。次の式によって算出する。 

ただし,i=1,2,…,n及びj=1,2,…,n。 

in

out

10

log

10

i

j

P

P

a−

=

C 5900:2019  

ここに, 

a: 光損失(dB) 

Pi in: i番目の端子に入射する光パワー(W) 

Pj out: j番目の端子から出射する光パワー(W) 

3.3.4 

挿入損失(insertion loss) 

一つの端子とそれに対し伝達を意図する端子との間の光損失をデシベル(dB)で表した値。正の値とす

る。入射する端子とそれに対する端子との一対で定義する。光受動部品に対して挿入損失を規定する場合,

一般に,伝達を意図する全ての端子間の通過帯域(パスバンド)内の最大値とする。 

3.3.5 

減衰量(attenuation) 

一つの端子とそれに対し減衰を意図する端子との間の光損失をデシベル(dB)で表した値。正の値とす

る。 

3.3.6 

アイソレーション(isolation) 

一つの端子と阻止を意図する端子との間の光損失をデシベル(dB)で表した値。正の値とする。阻止の

関係にある端子対のうち,ある状態において,伝達を意図する関係となる端子対で定義する。光受動部品

に対してアイソレーションを規定する場合,一般に,阻止の関係にある全ての組合せの端子対におけるア

イソレーションの最小値とする。 

注記1 光アイソレータ及び光サーキュレータでは,伝達を意図する二つの端子間の,逆方向の光損

失をいう。波長選択光ブランチングデバイスでは,あるチャネルで伝達を意図する二つの端

子間の,阻止を意図するチャネルにおける光損失をいう。 

注記2 波長選択光ブランチングデバイスの特殊な例として,波長アド・ドロップでは,アド端子群

とドロップ端子群とが,全てのチャネルで阻止の関係にある。この場合のアイソレーション

を,アド・ドロップアイソレーションという。 

3.3.7 

クロストーク(crosstalk) 

選択された一つの出力を意図する端子に対して,阻止を意図する光パワーと,伝達を意図する光パワー

との比をデシベル(dB)で表した値。負の値とする。光受動部品に対してクロストークを規定する場合,

一般に,全ての出力を意図する端子のクロストークの最大値とする。 

3.3.8 

ディレクティビティ(directivity) 

阻止の関係にある端子対のうち,あらゆる状態においても伝達を意図する関係にならない端子対間の光

損失をデシベル(dB)で表した値。正の値とする。3端子以上の光受動部品に対して定義する。光受動部

品に対してディレクティビティを規定する場合,一般に,ディレクティビティを定義する全ての端子間の

ディレクティビティの最小値とする。波長選択光ブランチングデバイスにおいて,アド・ドロップ端子間

には,ディレクティビティを適用しない。2×2バイパス光スイッチにも適用しない。 

注記1 光サーキュレータでは,挿入損失及びアイソレーションの関係にない端子間の光損失をいう。

波長選択光ブランチングデバイス及び波長選択性のない光ブランチングデバイスでは,全て

の使用波長範囲において,伝達を意図する関係にない端子対の光損失をいう。 

注記2 アイソレーションは,阻止を意図する端子間で定義するのに対し,ディレクティビティは,

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明示的には阻止を意図していないが,阻止の関係であることを望む端子間で定義する。明示

的に阻止を意図していないとは,漏れ光及び/又は迷光の阻止を期待することである。 

3.3.9 

反射減衰量(return loss) 

一つの端子に入射する光パワーと,同じ端子から出射する光パワーとの比をデシベル(dB)で表した値。

正の値とする。 

1

2

10

log

10

P

P

rl−

=

ここに, 

rl: 反射減衰量(dB) 

P1: 端子に入射する光パワー(W) 

P2: 同じ端子から出射する光パワー(W) 

3.3.10 

使用波長(operating wavelength) 

光伝送用受動部品の所期の性能を満たす代表的な波長。 

3.3.11 

チャネル(channel) 

光伝送用受動部品の所期の性能を満たす代表的な波長又は周波数。 

注記 チャネルの番号を自然数で表すことがある。 

3.3.12 

使用波長範囲(operating wavelength range) 

所期の性能を満たす使用波長を含む波長範囲。伝達,阻止,分岐,結合及び減衰を意図する端子間の全

ての波長範囲を含む。複数の波長範囲がある場合は,全ての波長範囲を含む。 

3.3.13 

通過帯域,パスバンド(passband) 

使用波長範囲のうち,伝達を意図する一つの波長範囲。 

注記 使用波長範囲の中に,複数のパスバンドを含む場合がある。 

3.3.14 

通過帯域リップル,パスバンドリップル(passband ripple) 

通過帯域における挿入損失の最大最小差。複数の通過帯域をもつ光受動部品においては,通過帯域の最

大値を示す。 

3.3.15 

波長依存性(wavelength dependence) 

入力光の波長による光学特性の差異。 

3.3.16 

波長依存性損失,WDL(wavelength dependent loss) 

入力光の波長による挿入損失の最大値と最小値との差。一般に,通過帯域(パスバンド)ごとに規定す

る。 

3.3.17 

波長分散(chromatic dispersion) 

群遅延の波長又は周波数に対する微分値。 

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注記1 波長分散は,一般に,使用波長によって異なる値となる。 

注記2 代表的な単位は,ピコ秒毎ナノメートル(ps/nm)又はピコ秒毎ギガヘルツ(ps/GHz)。 

注記3 ピコ秒毎ギガヘルツ(ps/GHz)の単位は,通常使われていないが,システムへの影響を考慮

すると,定義として優れている。 

3.3.18 

偏光依存性(polarization dependence) 

入力光の偏光状態による光学特性の差異。 

3.3.19 

偏光依存性損失,PDL(polarization dependent loss) 

入力光の偏光状態によって変化する挿入損失の変動分。伝達を意図する端子対に適用する。 

3.3.20 

偏波モード分散,PMD(polarization mode dispersion) 

光信号が,光ファイバ,光部品,サブシステムなどを通過する場合に起きる,二つの主偏光状態(principal 

states of polarization:PSP)間の群遅延差。 

3.3.21 

群遅延(group delay) 

光伝送用部品内でパルスが遅れる時間。 

注記 群遅延は,一般に,使用波長によって異なる値となる。 

3.3.22 

分散スロープ(chromatic dispersion slope) 

波長分散の波長又は周波数に対する微分値。 

注記1 分散スロープは,一般に,使用波長によって異なる値となる。 

注記2 代表的な単位は,ピコ秒毎平方ナノメートル(ps/nm2)又はピコ秒毎平方ギガヘルツ(ps/GHz2)。 

注記3 ピコ秒毎平方ギガヘルツ(ps/GHz2)の単位は,通常使われていないが,システムへの影響を

考慮すると,定義として優れている。 

3.3.23 

反射率(reflectance) 

一つの端子に入射する光パワーと,同じ端子から出射する光パワーとの比を百分率(%)又は比で表し

た値。 

3.3.24 

透過率(transmittance) 

一つの端子とそれに対する端子との間の光の透過率を百分率(%)又は比で表した値。 

3.3.25 

モード依存性(launch mode dependence) 

マルチモード形光ファイバを用いる光伝送用部品で起こる,励振モードによる光学特性の差異。 

3.3.26 

モード遅延時間差(differential mode delay) 

マルチモード形光ファイバを用いる光伝送用部品内の励振モードによるパルスが遅れる時間。 

3.3.27 

最大入力パワー(maximum input power) 

background image

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光伝送用部品が,損傷又は特性劣化を起こさない入力光パワーの最大値。 

3.3.28 

消光比(extinction ratio) 

光伝送用部品の一対の入出力端子間において,伝達を意図する状態と阻止を意図する状態との光損失の

比をデシベル(dB)で表した値。正の値とする。 

注記 強度光変調器では,オン/オフ(on/off)の変調時の光損失の比を,オン/オフ(on/off)消光

比という。偏波面保存光ファイバを用いた光部品では,偏光消光比という。 

定格などの標準 

4.1 

標準的環境条件 

標準的環境条件は,JIS C 61300-1の箇条5(標準的環境条件)による。温度条件だけで,標準的環境条

件としてもよい。 

4.2 

定格などに用いる数値 

定格などに用いる数値は,JIS Z 8601による。 

4.3 

温度 

使用温度範囲及び定格を定める場合の温度は,表1の温度から選ぶ。 

表1−温度 

単位 ℃ 

選ぶ温度 

−65 

−5 

27 

 85 

200 

−55 

  0 

30 

100 

250 

−40 

40 

125 

315 

−25 

20 

55 

155 

400 

−10 

23 

70 

175 

規格体系 

箇条1(適用範囲)の注記に記載する個別の光伝送用受動部品の規格体系は,次のとおりである。現在,

次の規格体系に従っていない規格は,それらの規格の改正のときに順次修正する。 

− JIS C XXXX-1 第1部:通則 

− JIS C XXXX-2 第2部:試験方法 

− JIS C XXXX-3以降 第3部以降:通則に記載する分類例に従って規定する個別の製品規格 

基本的光学特性 

光伝送用受動部品の基本的な光学特性は,次の項目とする。 

a) 挿入損失 

b) アイソレーション 

c) 反射減衰量 

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参考文献 

IEC TS 62538,Categorization of optical devices 

IEC TS 62627-09,Fibre optic interconnecting devices and passive components−Vocabulary for passive optical 

devices