C 5630-28:2020 (IEC 62047-28:2017)
(1)
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 1
3 用語及び定義 ··················································································································· 1
4 振動試験の装置 ················································································································ 2
4.1 一般 ···························································································································· 2
4.2 振動発生装置 ················································································································ 3
4.3 取付ブラケット ············································································································· 3
4.4 振動測定器又は加速度測定器 ··························································································· 3
4.5 出力測定器 ··················································································································· 3
4.6 データ記録器 ················································································································ 3
5 供試用のMEMSエレクトレット振動発電デバイス ································································· 3
5.1 一般 ···························································································································· 3
5.2 電気的出力 ··················································································································· 3
6 試験条件························································································································· 3
6.1 振動周波数 ··················································································································· 3
6.2 振動加速度 ··················································································································· 4
6.3 波形 ···························································································································· 4
6.4 外部負荷 ······················································································································ 4
6.5 試験時間 ······················································································································ 4
6.6 試験環境 ······················································································································ 4
7 測定手順························································································································· 4
7.1 一般 ···························································································································· 4
7.2 振動周波数応答 ············································································································· 4
7.3 振動加速度応答 ············································································································· 4
7.4 測定条件及び外部負荷の電気的特性··················································································· 4
8 試験報告························································································································· 5
附属書A(参考)エレクトレットを用いた振動発電デバイスの測定の一例 ······································· 6
参考文献 ···························································································································· 12
C 5630-28:2020 (IEC 62047-28:2017)
(2)
まえがき
この規格は,産業標準化法第12条第1項の規定に基づき,一般財団法人マイクロマシンセンター(MMC)
及び一般財団法人日本規格協会(JSA)から,産業標準原案を添えて日本産業規格を制定すべきとの申出
があり,日本産業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本産業規格である。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本産業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
JIS C 5630の規格群には,次に示す部編成がある。
JIS C 5630-1 第1部:マイクロマシン及びMEMSに関する用語
JIS C 5630-2 第2部:薄膜材料の引張強さ試験方法
JIS C 5630-3 第3部:薄膜材料の標準試験片
JIS C 5630-6 第6部:薄膜材料の軸荷重疲労試験方法
JIS C 5630-12 第12部:MEMS構造体の共振振動を用いた薄膜材料の曲げ荷重疲労試験方法
JIS C 5630-13 第13部:MEMS構造体のための曲げ及びせん断試験による接合強度試験方法
JIS C 5630-18 第18部:薄膜曲げ試験方法
JIS C 5630-19 第19部:電子コンパス
JIS C 5630-20 第20部:小型ジャイロ
JIS C 5630-26 第26部:マイクロトレンチ構造及びマイクロニードル構造の寸法,形状表示及び計測
法
JIS C 5630-28 第28部:MEMSエレクトレット振動発電デバイスの性能試験方法
JIS C 5630-30 第30部:MEMS圧電薄膜の電気機械的変換特性の測定方法
日本産業規格 JIS
C 5630-28:2020
(IEC 62047-28:2017)
マイクロマシン及びMEMS−
第28部:MEMSエレクトレット振動発電デバイス
の性能試験方法
Semiconductor devices-Micro-electromechanical devices-
Part 28: Performance testing method of vibration-driven MEMS electret
energy harvesting devices
序文
この規格は,2017年に第1版として発行されたIEC 62047-28を基に,技術的内容及び構成を変更する
ことなく作成した日本産業規格である。
なお,この規格で点線の下線を施してある参考事項は,対応国際規格にはない事項である。
1
適用範囲
この規格は,MEMSエレクトレット1) 振動発電デバイスの用語及びその定義,並びに民生用,産業用又
はあらゆる用途のエレクトレット振動発電デバイスの特性パラメーターを決めるための性能試験方法につ
いて規定する。
この規格は,トラップ電荷をもつ誘電体材料で覆われた電極が間隔1 000 μm以下の対向電極をもつ振動
発電デバイスに適用する。対象としているエレクトレット振動発電デバイスは,エッチング,フォトリソ
グラフィー又はデポジション技術を含むMEMS工程によって製造されたものである。
注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
IEC 62047-28:2017,Semiconductor devices−Micro-electromechanical devices−Part 28: Performance
testing method of vibration-driven MEMS electret energy harvesting devices(IDT)
なお,対応の程度を表す記号“IDT”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“一致している”こ
とを示す。
注1) エレクトレットとは,振動発電デバイス及びマイクロフォンなどに応用される,半永久的な電
荷をもつ誘電体(絶縁体)のことである。
2
引用規格
この規格には,引用規格はない。
3
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,次による。
2
C 5630-28:2020 (IEC 62047-28:2017)
3.1
振動周波数(vibration frequency)
MEMSエレクトレット振動発電デバイスに加えられる振動周波数。
3.2
振動加速度(vibration acceleration)
MEMSエレクトレット振動発電デバイスに加えられる加速度。
3.3
振幅(amplitude)
MEMSエレクトレット振動発電デバイスに加えられる振動の最大振れ幅。
3.4
振動方向(vibration direction)
MEMSエレクトレット振動発電デバイスに加えられる振動の方向。
4
振動試験の装置
4.1
一般
図1は,MEMSエレクトレット振動発電デバイスの試験装置の基本構成であり,指定の周波数及び指定
の加速度条件下で振動動作が可能な試験装置を示している。図1で示した機能ブロック又はコンポーネン
トの詳細を,4.2〜4.6で説明する。
1 DUT:供試デバイス
5 振動測定器
2 振動発生装置
6 外部負荷及び出力測定器
3 振動制御器
7 データ記録器
4 取付ブラケット
図1−MEMSエレクトレット振動発電デバイス用の試験装置
3
C 5630-28:2020 (IEC 62047-28:2017)
4.2
振動発生装置
振動発生装置は,指定された周波数で,指定された振動方向に沿った振動加速度を発生できなければな
らない。また,動作させる方向に対して垂直な方向の振動振幅は十分に小さいことが望ましい。
振動加速度制御は,次のいずれかの方法で行うことができる。
a) 定振幅制御 与えられた振動周波数の振動振幅を測定及び制御することによって,振動加速度を一定
に維持する。
b) 定加速度制御 与えられた振動周波数の振動加速度を直接測定及び制御することによって,振動加速
度を一定に維持する。
4.3
取付ブラケット
供試MEMSエレクトレット振動発電デバイスを正しく駆動させるために,取付ブラケットで供試デバイ
スを振動発生装置に固定しなければならない。さらに,振動発生装置による振動発生方向は,供試デバイ
スに定められた振動方向から角度±2°の誤差範囲になければならない。
4.4
振動測定器又は加速度測定器
振動測定器又は加速度測定器は,ブラケット又は供試デバイスの振動振幅又は振動加速度を計測できる
ものでなければならない。
4.5
出力測定器
出力測定器は,外部負荷に発生する電位差及びMEMSエレクトレット振動発電デバイスの出力電力を
3 %以内の誤差で測定できるものでなければならない。出力測定器のサンプリング周波数は,出力電圧の
波形を捕らえられる十分高い周波数でなければならない。それに加えて,電気出力と供試デバイスとの間
の配線は,寄生容量を最小化できるように十分に短くしなければならない。
4.6
データ記録器
MEMSエレクトレット振動発電デバイスの試験システムは,箇条8に記載の計測データを記録するデー
タ記録器を含むものでなければならない。
5
供試用のMEMSエレクトレット振動発電デバイス
5.1
一般
供試用のMEMSエレクトレット振動発電デバイスの試験では,取付方法及び振動の方向を表記しなけれ
ばならない。さらに,供試デバイスは,取付ブラケットによって振動発生装置の上に取り付けた状態で,
定められた振動周波数及び振動加速度で駆動しなければならない。
5.2
電気的出力
供試デバイスは振動発生装置による加振によって,電気的出力をもたなければならない。
6
試験条件
6.1
振動周波数
振動周波数は,試験の実施中一定に保たなければならない。振動周波数を変えるときは,条件設定前に
振動印加動作を停止しなければならない。周波数掃引の場合,発電特性への影響が最小に抑えられるよう
に,掃引速度は十分に低く設定しなければならない。低周波数から高周波数まで又はそれとは逆方向の双
方向の掃引データを記録しなければならない。試験振動周波数範囲には,共振周波数を含めなければなら
ない。
注記 共振周波数は,仕様書に指定された周波数又は掃引周波数の発電のピーク出力の周波数である。
4
C 5630-28:2020 (IEC 62047-28:2017)
6.2
振動加速度
振動加速度は,試験の実施中に一定に保たなければならない。
6.3
波形
振動の波形は,正弦波とする。
6.4
外部負荷
外部負荷は,抵抗値が既知の抵抗器を使用しなければならない。外部負荷及び出力測定器の寄生容量も
測定しなければならない。
6.5
試験時間
試験時間は,発電の電気的出力を安定化させるために,振動周波数の周期及び振動加速度と比較して十
分長い時間にしなければならない。
6.6
試験環境
温度及び相対湿度は,試験の期間中一定に保つのがよい。
7
測定手順
7.1
一般
次の測定手順及び測定条件は,図1に示すMEMS発電デバイス用の振動試験機器に適用する。
7.2
振動周波数応答
振動周波数応答の測定手順のステップは,次のとおりである。
a) 周囲温度及び相対湿度を指定の値に設定する。
b) 振動発生装置の上に取付ブラケットを付けたDUTを固定する。
c) 外部負荷をDUTの出力端子間に接続する。
d) DUTを装着した振動発生装置に入力電圧を印加して,正弦波の振動を発生させてDUTを振動させる。
e) DUTへ印加される振動周波数及び振動振幅を測定する。
f)
DUTの出力電圧及び出力電力を測定する。
7.3
振動加速度応答
振動加速度応答の測定手順のステップは,次のとおりである。
a) 周囲温度及び相対湿度を指定の値に設定する。
b) 加振器上に取付ブラケットを付けたDUTを固定する。
c) 外部負荷をDUTの出力端子間に接続する。
d) DUTを装着した振動発生装置に適切な入力電圧を印加して,正弦波の振動を発生させてDUTを与え
られた周波数で振動させる。
e) DUTの加速度を測定する。
f)
DUTの出力電圧及び出力電力を測定する。
7.4
測定条件及び外部負荷の電気的特性
図1に示した測定条件及び外部負荷の電気的特性は,次のとおりである。
a) 周囲温度及び相対湿度を指定の値に設定する。
b) 図1に示した外部負荷及び出力測定器の抵抗値及び寄生容量値を測定する。
外部負荷としての抵抗器の種類は,抵抗値,寄生容量値,及びDUTを組み込む装置又はシステムを考
慮して指定するのがよい。
5
C 5630-28:2020 (IEC 62047-28:2017)
8
試験報告
試験報告は,少なくとも次の情報を含まなければならない。
a) 必須記載事項
1) この規格の番号
2) 供試デバイスの形状,質量及び寸法
3) 試験装置
4) 出力測定器及びデータ記録器の細目
5) 振動発生装置上のエネルギー発電デバイスの固定方法
6) 試験条件
− 振動周波数
− 振動加速度
− 外部負荷
− 寄生容量
− 試験時間
− 試験環境(温度及び相対湿度)
7) 試験結果
− 出力電圧
− 出力電力
b) 任意記載事項
1) 試験の目的
2) 供試デバイスの構造
3) 発電原理
エレクトレットを用いた振動発電デバイスの測定の一例を,附属書Aに記載する。
6
C 5630-28:2020 (IEC 62047-28:2017)
附属書A
(参考)
エレクトレットを用いた振動発電デバイスの測定の一例
A.1 一般
この附属書は,エレクトレットを用いた振動発電デバイスの測定の一例を示している。A.2〜A.5は,エ
レクトレット発電の原理及び測定方法を示している。
A.2 エレクトレットを用いた振動発電デバイスの計算用モデル
図A.1に面内振動型エレクトレット振動発電デバイスの基本構成を示す(参考文献[1]及び[2]を参照)。
X(t) は,規定した時間tに依存して,振動する対向電極とエレクトレットとがオーバーラップする領域
の長さである。図A.1に規定しているように,出力電圧である対向電極とベース電極との間の電位差V(t) は,
配線された外部抵抗の両端電圧(すなわち,対向電極とベース電極との電極間電圧)として観測すること
ができる。DUTへ加わる振動によって,振動子上の対向電極が振動し,これに誘起される電流I(t) によっ
て電位差V(t) が発生する。
ここで,V(t) とX(t) との関係は,式(A.1)〜式(A.5)を用いて得られる。
1
ベース電極上に取り付けられた
エレクトレット
8 Ce:エレクトレット表面とベー
ス電極との間の容量
15 d:エレクトレットフィルムの厚
さ
2
R:指定された外部抵抗器
9 w:対向電極の幅
16 ε1:空隙の比誘電率
3
X(t):エレクトレットと対向電極
とのオーバーラップ領域の長さ
10 Ec:対向電極とガード電極との
間の静電界
17 ε2:エレクトレットの比誘電率
4
V(t):対向電極とベース電極との
間の電位差
11 Ea:対向電極とエレクトレット
表面との間の静電界
18 ベース電極:エレクトレットの
底面の電極
5
I(t):DUT部分の機械的な振動に
よって誘起される電流
12 Eb:エレクトレット表面とベー
ス電極との間の静電界
19 対向電極:エレクトレットと空
隙を介して対向する電極
6
Cp:DUTの寄生容量
13 g:対向電極とエレクトレットと
の間隔(空隙の間隔)
20 ガード電極:望ましくないフリ
ンジ場を最小化するための追加
電極
7
Cg:エレクトレット表面と対向
電極との間の容量
14 σ:表面電荷密度
図A.1−面内振動型エレクトレット振動発電デバイス(DUT)の基本構成
7
C 5630-28:2020 (IEC 62047-28:2017)
図A.1に示す構成において,奥行方向は無限な構造体であるとし,一次元静電場であると仮定して次の
定式化を行う。σ,d,g及びεは,表面電荷密度,エレクトレットフィルムの厚さ,対向電極とエレクト
レットとの間隔(空隙の間隔),及びエレクトレット材料の比誘電率を示している。ガード電極は,フリン
ジ場及び寄生容量Cpを減らすために設けられている。外部負荷は,純抵抗Rであり,寄生容量の値は,
時間的な変動はないとみなす。エレクトレット表面にガウスの法則を適用すると,式(A.1)が得られる。
−ε2ε0Eb+ε1ε0Ea=σ ·································································· (A.1)
ここに,
Eb: エレクトレット表面とベース電極との間の静電界
Ea: 対向電極とエレクトレット表面との間の静電界
σ: (エレクトレット表面の)表面電荷密度
ε1: 空隙の比誘電率
ε2: エレクトレットの比誘電率
ε0: 真空の誘電率
キルヒホッフの法則を使うと,式(A.2)及び式(A.3)が得られる。
V(t)+dEb+gEa=0 ··································································· (A.2)
V(t)+(d+g)Ec=0 ···································································· (A.3)
式(A.3)において,
Ec: 対向電極とガード電極との間の静電界
電荷保存則に伴って,誘導電流I(t) は,式(A.4)によって得られる。
()
()
{
}
[
]()
0
2
i
1i
=
+
−
+
t
I
t
X
w
b
t
bX
dt
d
σ
σ
············································ (A.4)
式(A.4)において,
σi1: エレクトレットとオーバーラップしている対向電極
上に誘起される電荷
σi2: ガード電極とオーバーラップしている対向電極上に
誘起される電荷
b: 電極の奥行き深さ
誘起された電荷は,式(A.5)によって与えられる。
σi1=−ε1ε0Ea,及びσi2=−ε1ε0Ec ················································· (A.5)
式(A.1),式(A.2),式(A.3)及び式(A.5)を式(A.4)に代入することによって,出力電圧V(t) を得るための微
分方程式が数学的に得られる。対向電極に正弦波振動が加えられた場合は,オーバーラップ領域の長さ
X(t) も与えられた振幅及び周波数を伴った正弦波関数となる。
図A.2は,エレクトレットと対面する位置に分割された2枚の対向電極をもつ別の構成を示す(参考文
献[3]を参照)。この構成では,一対の対向電極が固定され,エレクトレット電極が振動する。誘起電流は,
一対の対向電極間に接続された負荷抵抗に流れる。寄生容量として主に寄与するのは,隣接する一対の対
向電極間の容量となる。
8
C 5630-28:2020 (IEC 62047-28:2017)
1
ベース電極上に取り付けられた
エレクトレット
8 Ce:エレクトレット表面とベー
ス電極との間の容量
15 ε1:空隙の比誘電率
2
R:外部抵抗器
9 w:対向電極の幅
16 ε2:エレクトレットの比誘電率
3
X(t):エレクトレットと対向電極
とのオーバーラップ領域の長さ
10 Ea:対向電極とエレクトレット
表面との間の静電界
17 ベース電極:エレクトレットの
底面の電極
4
V(t):対向電極とベース電極との
間の電位差
11 Eb:エレクトレット表面とベー
ス電極との間の静電界
18 対向電極:エレクトレットと空
隙を介して対向する電極
5
I(t):DUT部分の機械的な振動に
よって誘起される電流
12 g:対向電極とエレクトレットと
の間隔(空隙の間隔)
6
Cp:DUTの寄生容量
13 σ:表面電荷密度
7
Cg:エレクトレット表面と対向
電極との間の容量
14 d:エレクトレットフィルムの厚
さ
図A.2−エレクトレットと対面する位置に分割された2枚の対向電極をもつ
面内振動型振動発電デバイス(DUT)の構成
図A.3は,エレクトレット層がくし(櫛)型電極の側壁に形成された,くし(櫛)型電極構造面内振動
型エレクトレット振動発電デバイスの構成及び動作を示す(参考文献[4]を参照)。振動方向に依存して,
オーバーラップ領域又は空隙間隔の変動によって,容量が変動する。
9
C 5630-28:2020 (IEC 62047-28:2017)
1 DUT:くし(櫛)型電極構造面
内振動型エレクトレット振動発
電デバイス
3 アンカー:基板上に固定するスプ
リングの片方の端部
5 固定電極:基板上に固定された
電極
2 スプリング:重さを支えるDUT
の柔軟な部分
4 エレクトレット:静電誘導のため
に電荷を注入した誘電体フィルム
6 可動電極:振動下で移動する電
極
図A.3−くし(櫛)型電極構造面内振動型エレクトレット振動発電デバイス
A.3 くし(櫛)型電極構造面内振動型エレクトレット振動発電デバイスの一例
図A.4に,くし(櫛)型電極をもつエレクトレット振動発電デバイスの試作品の一例を示す(参考文献
[4]を参照)。振動発電デバイスは,SOIウエハの70 μm厚のシリコン層に微細加工を施して作成する。こ
の機能をもつ10 mm×10 mm及び厚さ0.6 mmのシリコンチップが,プリント回路基板(32 mm×32 mm)
に貼り付けられ,電気的配線は,ワイヤーボンディングでなされている。外部の振動が加えられたときに,
荷電されたエレクトレットをもつ隣接するくし(櫛)歯部のオーバーラップ領域が変動し,その結果外部
電流が誘起される。くし(櫛)歯部のペア数は,1 035となっている。
図A.4−プリント回路基板上に実装された
くし(櫛)型電極構造面内振動型エレクトレット振動発電デバイスの試作例
2
6
4
5
3
1
1
10
C 5630-28:2020 (IEC 62047-28:2017)
図A.5に,エレクトレット振動発電デバイス用の出力検知器を示す(参考文献[4]を参照)。
1
DUT:エレクトレット振動発電
デバイス
7 V(t):対向電極とベース電極との
間の電位差
13 A/Dコンバータ:電圧測定用の
アナログデジタル変換器
2
I0:DUTの一部の機械的振動に
よる内部誘起電流
8 出力検知器:DUT用の読み出し
回路
14 エレクトレット:静電誘導のた
めに電荷を注入した誘電体フィ
ルム
3
Ip:内部寄生容量への電流損
9 R:指定された値(例えば,2.5
MΩ)の電圧分割用の外部抵抗器
15 ベース電極:エレクトレットの
底面の電極
4
I(t):DUTの一部の機械的振動に
よる誘起電流
10 r:指定された値(例えば,30 kΩ)
の電圧分割用の抵抗器
16 対向電極:エレクトレットと空
隙を介して対向する電極
5
Cp:DUTの内部寄生容量
11 U(t):電圧分割用抵抗器の両端の
電位差
17 電圧分割器:出力検知器のボル
テージフォロワの読み出し回路
部分
6
Cpe:A/Dコンバータの外部寄生
容量
12 ボルテージフォロワ:高入力イ
ンピーダンスのバッファアンプ
図A.5−エレクトレット振動発電デバイス用の出力検知器
A.4 実験的な準備及び手順
振動発生器は,金属ねじで固定された振動発電デバイスへ正弦波状の振動を加える装置である。その振
動加速度は,加速度測定器で測定する。振動制御器は,振動発電デバイスを異なった振動周波数で動作さ
せて周波数及び加速度を調整する。図A.5は,電圧分割回路と,一般的に高入力インピーダンスをもつオ
ペアンプとで構成される高インピーダンスボルテージフォロワによる出力検知器を示す。出力電圧は,30
kΩの抵抗器を通して16ビットのA/D変換器によって50 kHzのサンプリング周波数にて測定する。整合
時のインピーダンスに相当する最適外部負荷は,約2.5 MΩであり,実際の外部負荷の値は,2.53 MΩで
あった。ケーブル及びその接続端子を含めたA/D変換器の寄生容量は,600 pFになるが,66.7:1電圧分
割器が使用される場合,その寄生容量による影響は,ほぼ無視できる。
外部負荷を一定に保って,外部加速度を一定に保持しながら振動周波数を変化させる。予備試験に基づ
き,周波数掃引中の不必要な効果を最小化するために低周波数掃引比を0.5オクターブ/min(周波数とし
ては2分間に2倍)に設定する。
11
C 5630-28:2020 (IEC 62047-28:2017)
A.5 実験結果
図A.6 a) 及び図A.6 b) に実験結果を示す(参考文献[4]を参照)。800 Hzの振動周波数及び加速度1 g(=
9.8 m/s2)において,±1.5 Vの出力電圧が得られた。周波数が掃引されているときは,対象とした振動発
電デバイスの中にヒステリシスはなく,800 Hzで最大電力出力0.68 μWが得られた。
a) 800 Hzの振動周波数及び加速度1 gにおける電圧波形
b) 出力電力対1 gにおける振動周波数
図A.6−実験結果
Sweep up
周波数掃引(上昇時)
周波数掃引(下降時)
周波数 (Hz)
700
0.0
0.2
0.4
0.6
0.8
750
800
850
900
出
力
電
力
(
μ
W
)
5
4
3
2
1
0
0
-1
-2
1
2
出
力
電
圧
(
V
)
時間 (ms)
12
C 5630-28:2020 (IEC 62047-28:2017)
参考文献
[1] Suzuki, Y., Electrostatic/Electret-based Harvesters, in Micro Energy Harvesting, eds. Briand, D., Yeatman, E.,
and Roundy, S., Wiley-VCH, pp. 149-174 (2015)
[2] Suzuki, Y., Recent Progress in MEMS Electret Generator for Energy Harvesting, IEEJ Trans. Electr. Electr. Eng.,
Vol. 6, No. 2, pp. 101-111 (2011)
[3] Chen, R., and Suzuki, Y., Suspended Electrodes for Reducing Parasitic Capacitance in Electret Energy
Harvesting Devices, J. Micromech. Microeng., Vol. 23, Issue 12, 125015 (2013)
[4] Fu, Q., and Suzuki, Y., A Design Method of In-plane MEMS Electret Energy Harvester with Comb Drives, J.
Phys.: Conf. Ser., Vol. 557, No. 012011 (2014)
[5] IEC 60749-12:2002,Semiconductor devices−Mechanical and climatic test methods−Part 12: Vibration,
variable frequency