C 5600:2006
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法第14条によって準用する第12条第1項の規定に基づき,電子情報通信学会
(IEICE)から,工業標準原案を具して日本工業規格を改正すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の審
議を経て,経済産業大臣が改正した日本工業規格である。
これによって,JIS C 5600:1977は改正され,この規格に置き換えられる。
この規格の一部が,技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の
実用新案登録出願に抵触する可能性があることに注意を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会
は,このような技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の実用新
案登録出願にかかわる確認について,責任をもたない。
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1. 適用範囲 ························································································································ 1
2. 用語及び定義 ·················································································································· 1
a) 一般用語 ························································································································ 2
b) 基礎用語 ······················································································································· 3
1) 原子,粒子及び電子 ········································································································· 3
2) 粒子の性質 ···················································································································· 10
3) 物質の構成 ···················································································································· 14
4) 固体の電子構造 ·············································································································· 18
5) 粒子系,光,電磁波及び音波 ···························································································· 20
6) 量子効果 ······················································································································· 27
7) 放射線·························································································································· 29
c) 固体の基本的性質 ··········································································································· 30
1) 電気的性質 ···················································································································· 30
2) 光学的性質 ···················································································································· 35
3) 磁気的性質 ···················································································································· 39
4) 誘電的性質 ···················································································································· 44
5) その他(熱的,応力的及び複合的) ··················································································· 46
d) 材料の性質 ··················································································································· 48
1) 導体····························································································································· 48
2) 半導体·························································································································· 50
3) 誘電体(ガラスを含む) ·································································································· 57
4) 磁性体·························································································································· 58
5) 超電導体 ······················································································································· 60
6) 気体及び液体(放射関係など) ························································································· 62
7) 液晶,有機材料関係 ········································································································ 65
e) デバイスの基礎 ·············································································································· 67
1) デバイスの構成基礎 ········································································································ 67
2) 電子デバイス,ICなど ···································································································· 70
3) 光デバイス,OEICなど ·································································································· 76
4) 気体レーザー関係 ··········································································································· 80
f) 関連事項(雑音,その他) ······························································································· 84
2
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
C 5600:2006
電子技術基本用語
Glossary of basic terms used in electrotechnology
序文 この規格は,1971年に日本工業規格として制定され、1977年に改正されたものであるが、その後の
技術の進歩にともない規定内容を見直したものである。
1. 適用範囲 この規格は,電子技術に用いる主な基本用語とその定義について規定する。
備考 この規格の対応国際規格を,次に示す。
なお,対応の程度を表す記号は,ISO/IEC Guide 21に基づき,IDT(一致している),MOD
(修正している),NEQ(同等でない)とする。
IEC 60050: International Electrotechnical Vocabulary(MOD)
2. 用語及び定義 用語及び定義は,次による。
なお,表の参考欄に,対応英語及び関連するIEC 60050の用語の項目番号を示す。
備考1. 用語欄に二つ以上の用語を並べてある場合は,通常,その順位に従って優先使用する。
2. 用語欄の括弧付きの用語は,例えば,2-1-65の“[ドリフト]移動度”のかぎ括弧付きのよう
に,混乱を生じない場合はかぎ括弧内を省略してもよいことを,また,2-1-53の“散乱(粒
子の)”の括弧付きのように,“粒子”に適用する場合の定義であることを示す。
3. 参考欄の関連IEC 60050番号及び用語は,次による。
a) IEC 60050にこの規格と同一の用語(英語又は日本語)があり,その意味もこの規格に
近いものはその項目番号(例えば,811-28-01)だけを記載した。
b) IEC 60050にこの規格と類似の用語があり,その意味がこの規格に関連するものは,IEC
の項目番号とともに用語(英語若しくは日本語,又は両者)を記載した。
c) IEC 60050に関連する用語がない場合には空欄とした。
3
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
a) 一般用語
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
1-1
エレクトロニク
ス
科学技術の一部門で,真空,ガス,半導体などの
中の導電現象の研究及び同現象を応用した装置
並びにその応用技術及び工学。
electronics
811-28-01
1-2
マイクロエレク
トロニクス,
超小形電子技術
一般に得られるよりも小形化の程度が進んだ電
子回路を実現,又はその利用に関連した技術の総
称。
備考 関連用語として“超小形電子工学”,“超
小形電子方式”,“超小形電子系”,“超
小形電子回路”,“超小形構成部分”な
どがある。
microelectronics
521-10-01
1-3
真空マイクロエ
レクトロニク
ス
電界放出現象,PNダイオードなど冷陰極の作用
に関し,かつ,微細加工技術によって微細化及び
高密度集積化によって得られた真空技術と集積
回路技術との複合によるマイクロエレクトロニ
クス。
vacuum
microelectronic
s
811-28-02
(551-01-01)
1-4
パワーエレクト
ロニクス
電源技術に関するエレクトロニクスの一分野。
通信機器のディジタル化,情報処理量の増大,並
びに小形化,軽量化を参考として,スイッチング
電源にトランジスタ,MOSFETなどを利用したこ
とから急速に発展した。高周波化,小形化の要求
に応じトランス,コンデンサなどの受動部品をも
併せて混成集積回路などの考えも利用している。
このため,スイッチング損失を極度に低減し得る
回路技術が発展した。中・小容量領域では高周波
スイッチング技術を利用したスイッチング形整
流器にバイポーラパワートランジスタ,インシュ
レーテットトランジスタ,静電誘導形トランジス
タなどが用いられている。 これらを含めた分野
を,パワーエレクトロニクスとする。
power
electronics
1-5
モレキュラーエ
レクトロニク
ス,
分子エレクトロ
ニクス
エレクトロニクスの一分野であって,単に電磁現
象だけでなく,あらゆる物性現象(光現象,熱現
象など)での利用を考えて機能ブロックを実現す
るための技術,又は工学。 この機能ブロックは,
入出力特性だけが対応電子回路のそれと等価で,
その各部は空間的にも機能的にも対応電子回路
のそれと対応しない。
例 ポリふっ化ビニリデンの圧電,焦電用セ
ンサなど。
molecular
electronics
4
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
1-6
オプトエレクト
ロニクス
エレクトロニクスの一分野であって,光学現象及
び電磁現象の双方を共に利用して情報の処理(計
測,伝送,制御,記憶,表示など)に関連した技
術又は工学。
optoelectronics
121-12-88
optoelectronic,
オプトエレク
トロニック,
731-01-59
opto-electronic
1-7
量子エレクトロ
ニクス
原子,分子及び 原子核と電磁波との相互作用を
通信,制御,計測などに利用する工学の一分野。
quantum
electronics
1-8
フォトニクス
光子又は光波の使い方及び管理に関する科学及
び技術であり,光信号や光パワーの検出,増幅,
変調,蓄積,画像処理などの科学技術を含む。
photonics
1-9
クライオエレク
トロニクス
極低温における固体中の電子の振舞いを利用す
るエレクトロニクスの一分野。
例 ジョセフソン効果を利用したデバイス
は,多くの応用分野をもつ。
cryoelectronics
1-10
バイオニクス
生物の優れた機能を工学的方法によって分析し,
その機構を工学に応用しようとする分野。
備考 生物の情報処理機構,運動機構,エネ
ルギー変換機構,制御機構など。
bionics
1-11
ロボトロニクス
コンピュータに連動し,その管理を受けてロボッ
トが巧みに行う電子技術。
robotronics
1-12
ソニクス
音波又は振動を用いて処理,加工,計測,解析な
どを行う技術。
sonics
1-13
ウルトラソニク
ス
ソニクスの一種であって,超音波振動を利用する
もの。
ultrasonics
1-14
エレクトロアコ
ースティクス,
電気音響学
音響機械系の動作方程式が同一形式の電気系の
ものを,元の音響機械系の等価回路と考えて,こ
の等価回路を解くことで,すでに完成している電
気回路のデータを,音響機械系の動作解析又は設
計に利用する方法である。
electroacoustics
b) 基礎用語
1) 原子,粒子及び電子
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
2-1-1
原子
1個又は複数の陽子と中性子からなる原子核と,
その周囲に存在する,陽子と同じ数の電子とで構
成される粒子。 物質を構成する要素である。
atom
393-01-18
(111-14-09)
5
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
2-1-2
原子核
原子の中心部であって,陽子と中性子との結合し
たものから構成され,正電荷を帯び,原子の大部
分の質量を占める。ただし,水素原子核では単に
1個の陽子だけで構成される。
[atomic] nucleus
111-14-10,
393-01-20,
881-02-42
2-1-3
核種
質量数と原子番号とによって特徴付けられる原
子の種類。
nuclide
111-14-19,
393-01-19,
881-02-35
2-1-4
素粒子
これ以上分割できないと考えられる究極の粒子。
強い相互作用をするハドロン(陽子,中性子,中
間子 など),強い相互作用をしないレプトン(電
子,ニュートリノなど)及び相互作用を媒介する
ゲージ粒子(光子など)の 3種類に大きく分けら
れる。
elementary
particle
111-14-02,
393-01-01,
881-02-45
2-1-5
電気素量
電子,プロトン及びポジトロンがもつ電荷の大き
さで,荷電粒子のもつ電気量の最小単位。すべて
の電気量はこの整数倍で表せる。その大きさは,
e = 1.602 177 3 ×
19
10−(C)。
elementary
(electric)
charge
111-14-08
elementary
(electric)
charge,
393-04-06
elementary
(electric)
charge,
881-04-11
elementary
charge
2-1-6
電子
素粒子の一つで,負の電気素量-e =-1.602 177
3×
19
10− (C),静止質量m 0 = 9.109 389 7×
31
10−(kg)
(陽子の約1/1 840)をもつ。
electron
111-14-11,
393-01-07,
881-02-57
2-1-7
スピン
素粒子又は素粒子で構成される量子力学系のも
つ基本的な量で,粒子の自転に基づく角運動量。
その固有値 (1/2)ηをもつ模型で理解される。 た
だし,
π
h/2
=
η
,h :プランク定数である。
spin
111-14-05
2-1-8
電子対
二つの原子に共有されたスピンの向きが互いに
逆方向である2個の電子の対。
electron pair
2-1-9
不対電子
電子対を作っていない電子。奇電子ともいう。
unpaired
electron
2-1-10 電子の静止質量
慣性系: 静止している電子の質量で,その値は,
m0 =9.109 389 7×10-31 (kg)。
相対論: 一般に速さvで運動している粒子の質量
は,
2
0
1
)
v/c
(
/
m
m
−
=
で表される(m0: 静
止質量, c: 光速)。
素粒子系: 静止エネルギーEをc2(c: 光速)で
除した値。
rest mass of
electron
111-13-17
rest mass,
静止質量,
393-04-08
2-1-11
比電荷
荷電粒子の電荷の大きさと質量との比。電子の比
電荷は,1.758 819×10-11 (C/kg)。
specific charge
6
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
2-1-12 電子ボルト
真空中で 1 (V) の 電位差を通過するときに電子
が得る運動エネルギーに等しいエネルギーの単
位。
electronvolt
393-04-21,
881-04-12
2-1-13 質量数
原子の原子核を構成する核子の数。
mass number
111-14-17,
393-04-01,
881-02-49
2-1-14 陽子
正電荷1.602 177 3×10-19(C)と静止質量 1.672 623
1× 10-27 (kg) をもつ安定な素粒子をいい,水素原
子の原子核を構成する。
proton
111-14-13,
393-01-10,
881-02-51
2-1-15 トリトン
三重水素の原子核3H 。 三重陽子ともいい,1個
の陽子と 2個の中性子とが結合したもの。
triton
393-01-30,
881-02-64
2-1-16 中性子
電荷はもたず,静止質量 1.674 928 6×10-27 (kg) を
もつ素粒子。 ベータ崩壊の平均寿命は,約 1 000
(s)。
neutron
111-14-15,
393-01-11,
881-02-52
2-1-17 陽電子
正の素電荷,電子と同一の静止質量をもつ素粒
子。
positron
111-14-12,
393-01-08,
881-02-58
2-1-18 重陽子
重水素の原子核で,質量数2 の水素の同位体。
deuteron
393-01-29,
881-02-63
2-1-19 核子
原子核を構成する陽子又は中性子の総称。
備考 陽子と中性子とは,ともにスピン1/2
でほぼ等しい静止質量をもち,弱い相
互作用によって相互に変態する。
nucleon
111-14-16,
393-01-12,
881-02-48
2-1-20 中間子
寿命の短い強い相互作用をする種々のボーズ粒
子の総称をいい,高エネルギー核反応で生成され
る。 荷電しているものとしていないものとがあ
り,静止質量は,電子と陽子との間にあり,高エ
ネルギー核反応で生成される。
備考 一般には,スピン0 の粒子に限定され
る。 π−,K−,η−,ρ−,ω−,φ−
中間子などがある。
meson
393-01-14
meson,
393-01-15
P meson;
pion,
393-01-16
K meson; kaon,
881-02-68
π(p) meson;
pion
2-1-21 μ粒子
±e の電荷,電子の質量の約207 倍の質量,1/2
のスピン,2.2 μsの平均寿命をもつ素粒子。
muon
393-01-13,
881-02-67
2-1-22 ニュートリノ
電荷をもたず,1/2 のスピン,静止質量がゼロ又
は電子の静止質量の1/1 000 以下の弱い相互作用
しかしない安定な素粒子。
neutrino
393-01-09,
881-02-69
2-1-23 原子量
12Cの12(g) 中に含まれる原子の数と同数のその
原子の集団の質量を,グラム単位で示した数値。
atomic mass
unit,
atomic weight
881-04-06
2-1-24 分子量
質量数12 の炭素の同位体12Cの12(g) 中に含ま
れる原子の数と同数の分子の集団の質量とをグ
ラム単位で示した数値。
molecular
weight
7
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
2-1-25 グラム原子
元素の量を表す単位。質量をグラム単位で表した
数値が,その元素の原子量に等しくなる量。1グ
ラム原子は,原子の1モルに相当する。
gram atom
2-1-26 グラム分子
化学物質の量を表す単位。質量をグラム単位で表
した数値が,その化学物質の分子量に等しくなる
量。1グラム分子は,分子の 1モルに相当する。
gram molecule
2-1-27 原子番号
原子核のもつ陽子の個数。
atomic number
111-14-18,
393-04-02,
881-02-50
2-1-28 同位体
原子番号は同じであるが,異なる質量数をもつ核
種。
isotope
111-14-20,
393-01-21,
881-02-37
2-1-29 同重体
質量数が等しく,原子番号の異なる核種。
isobar
393-01-22,
881-02-41
2-1-30 電子殻
原子を一体近似で扱う場合,主量子数n,副量子
数lがともに等しい軌道関数をもつ電子の集ま
り。nが同じでlの異なる準位が接近している場
合には,それらをひとまとめにして電子殻という
こともある。
electron shell
2-1-31 外殻電子
エネルギー準位の高い,原子の外側の電子殻にあ
る電子。
outer-shell
electron
2-1-32 内殻電子
外殻電子以外の電子殻にある電子。
inner-shell
electron
2-1-33 価電子
原子構造の電子配置において外部の電子殻を占
める電子をいい,通常,最外殻のs電子とp電子
とを指す。
valence electron
111-14-24
2-1-34 束縛電子
原子,分子などに束縛されて,電界の下で自由に
移動できない電子。
bound electron
111-14-23
2-1-35 自由電子
原子に束縛されずに,原子核の引力から抜け出
し,物質内又は真空中を動くことのできる電子。
free electron
111-14-22
2-1-36 電子ガス
金属内の自由電子を気体とみなす場合の呼称。
electron gas
111-14-28
2-1-37 電子密度
単位体積中の電子数,又は電子の波動関数で表さ
れる確率密度。
electron
density,
electron
concentration
705-06-05
2-1-38 電子温度
電子の運動エネルギーを,kT(k: ボルツマン定
数)に等しいとおいたときの温度 T。
electron
temperature
2-1-39 電子軌道
原子又は分子の電子がそのエネルギー,角運動量
に応じて描く軌道。
electron orbit
2-1-40 ボーア半径
ボーアとゾンマーフェルトの考えに基づくボー
ア原子モデルによる水素原子の基底状態の電子
が描く円軌道の半径。大きさは 0.052 8 (nm)。
Bohr radius
8
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
2-1-41 励起
原子,原子核,分子,電子,イオンなどの粒子又
はそれらで構成される固体,液体,気体に外部か
らエネルギーを与えてエネルギーの低い状態か
ら高い状態へ遷移させること。
excitation
393-03-33,
845-04-17,
881-02-71
2-1-42 内殻励起
原子の内殻にある電子をエネルギーの高い状態
に励起すること。
inner-shell
excitation
2-1-43 特性X線
原子の内殻の電子が,外部から十分大きなエネル
ギーを得て外部に飛び出し,そのときできたホー
ルに外側の軌道の電子が遷移するときに放出さ
れる,その軌道エネルギーの差に相当するエネル
ギーの電磁波(X線)。軌道電子のエネルギーが
元素によって固有なので,特性X線は元素に固有
である。
characteristic
radiation
393-02-16,
881-02-21
2-1-44 連続X線
連続的なエネルギースペクトルをもつX 線。
備考 特性X線を除く。
continuous X
radiation
393-02-17
2-1-45 オージェ効果
励起状態の電子が他の電子にエネルギーを与え
ることによってエネルギーの低い状態に緩和す
ること。 エネルギーを与えられ励起された電子
を“オージェ電子”(Auger electron) という。(一
般に,原子の場合は,励起され原子の外に飛び出
した原子をオージェ電子といい,半導体では,伝
導帯や不純物準位にある電子が励起されホット
になった電子をオージェ電子という。)。
Auger effect
393-03-40,
881-03-43
2-1-46 基底状態
ある量子力学系の定常状態のうち,最低のエネル
ギー状態。
ground state
111-14-29
2-1-47 励起状態
基底状態より高いエネルギー量子状態。
excited state
111-14-30
2-1-48 閉殻
パウリの原理で許される最大個数の電子を収容
した電子殻。
closed shell
2-1-49 原子価
ある元素の原子1個が結合する水素原子の数。
水素原子と結合しない場合は,他の元素を媒介と
して求められる相応の数。
valence
2-1-50 荷電粒子
電荷を帯びている粒子。
例 イオン,陽子,中間子,電子,正孔。
charged particle
2-1-51 イオン
電荷をもっている原子,原子団又は分子。
ion
111-14-26,
393-01-34,
705-06-01,
881-02-70
2-1-52 イオン化
中性の原子,原子団及び分子が電子を失い陽イオ
ンになること,又は電子を与えられて陰イオンと
なること。陽イオンになるために必要なエネルギ
ーをイオン化エネルギー,陰イオンになるときに
放出されるエネルギーを,電子親和力という。 ま
た,イオン化前の中性原子数に対するイオン化し
たイオン数の割合をイオン化率という。
ionization
111-14-27
電離;
イオン化,
393-03-01
(111-14-27)
電離,
705-06-02
電離
9
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
2-1-53 散乱(粒子の)
ある粒子が同種又は異種の粒子と衝突してその
運動方向が変化する現象。 ただし,衝突の前後
で粒子の種類又は数が変化しない場合をいう。
scattering (of a
particle)
393-03-07,
881-03-14
2-1-54 衝突
二つの粒子が互いに近距離力の範囲に接近又は
接触し,極めて短時間で,互いに相互作用し,運
動量又はエネルギー条件を変化させる現象。
collision
393-03-41,
881-03-51
2-1-55 散乱確率
粒子が単位時間に散乱中心に散乱される頻度。
scattering rate
2-1-56 衝突確率
粒子が単位時間に衝突中心に衝突する頻度。
collision rate
2-1-57 断面積
入射粒子又は波とターゲットとの間の衝突,散乱
などのある特定の相互作用の確率を表す指標で,
ターゲット当たりの相互作用確率を入射粒子又
は波の流束密度で除した商。 相互作用の確率P
は,ターゲットの密度Nと流束の速度vとの積に
比例する。その比例係数をSとすると [P=S(Nv)],
S は面積の次元をもちこれを相互作用の断面積
と定義する。このように定義した断面積Sは,タ
ーゲットの面積Sの範囲に飛び込んできた粒子が
ターゲットと相互作用するとした考えと一致す
る。
cross-section
111-14-55
cross-section
(of interaction)
(相互作用の)
断面積,
393-04-42,
881-04-03
2-1-58 弾性散乱
散乱の前後で,系全体の運動エネルギーと粒子の
内部エネルギーとの両者が保存される散乱。
elastic scattering
393-03-10,
881-03-17
2-1-59 弾性衝突
衝突の前後で,系全体の運動エネルギーと粒子の
内部エネルギーとの両者が保存される衝突。
elastic collision
393-03-42,
881-03-52
2-1-60 非弾性散乱
散乱の前後で,系全体の運動エネルギーが失わ
れ,そのエネルギーが粒子の内部エネルギーの増
加となる散乱。
inelastic
scattering
393-03-11,
881-03-18
2-1-61 非弾性衝突
衝突の前後で系全体の運動エネルギーが失われ,
そのエネルギーが粒子の内部エネルギーの増加
となる衝突。
inelastic
collision
393-03-43,
881-03-53
2-1-62 伝導電流
外部電界の印加によって荷電粒子が移動するこ
とによって生じる電流。
conduction
current
212-01-17,
521-02-15
2-1-63 ドリフト(粒子
の)
多数の粒子が存在する拡散系で,ランダムな熱運
動をする粒子の位置平均が外部電界を受けて移
動する現象。
drift (of a
particle)
2-1-64 ドリフト速度
外部電界によって荷電粒子がドリフトによって
移動する速度。
drift velocity
10
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
2-1-65 [ドリフト]移動
度
荷電粒子が外部電界を受けてドリフトする速度
が電界と比例関係にあるときの速度を電界で除
した商で,荷電粒子の動きやすさを表す物理量。
備考 ドリフト速度をvd ,電界をε,移動
度をμとするとき,
vd =με
参考 普通,単に移動度といえばドリフト移
動度をさすが,特にホール移動度と区
別するときにドリフト移動度という。
(drift) mobility
111-14-53
移動度,
394-19-05
(荷電粒子の)
移動度,
521-02-58
drift
mobility
(of a charge
carrier),
881-02-77
mobility (of a
particle),
521-09-04
Hall mobility
2-1-66 ドリフト電流
外部電界の下で,荷電粒子のドリフトによって流
れる電流。
drift current
2-1-67 拡散
多数の粒子系で,ある平衡状態からずれた粒子が
密度分布のこう配に応じて平衡状態へと移る粒
子の移動過程。
diffusion
111-14-66,
521-02-59
diffusion (in a
semiconductor)
2-1-68 拡散係数
拡散の速さを示す物理量で,単位時間,単位面積
当たり粒子の流れ(流束)を粒子密度のこう配で
除した商。
C
D
Φ
∇
−
=
,Φ:粒子の流束,C: 粒
子密度,D: 拡散係数
diffusion
coefficient,
diffusion
constant
521-02-61
diffusion
constant
(of
charge carriers)
2-1-69 拡散の長さ
粒子の拡散過程において,粒子密度が1/eに減衰
する長さ。半導体中の少数キャリヤの拡散の長さ
は,拡散係数と寿命の積の平方根で表される。
diffusion length
393-05-05
拡散距離,
521-02-61
diffusion length
(of
minority
carriers)
2-1-70 拡散電流
荷電粒子の拡散によって流れる電流。
diffusion current
2-1-71 アインシュタイ
ンの関係式
半導体内のキャリヤの移動度μと拡散係数Dの
関係とを表す式。 拡散速度は,キャリヤの移動
度が大きいほど速く,その関係は次式による。
e
kT
D=
μ
ここに,k : ボルツマン定数
T : 絶対温度
e: 電気素量
Einstein
relationship
2-1-72 緩和
非平衡状態にある系が,その系の内部運動によっ
て平衡状態に戻ること。
relaxation
11
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
2-1-73 平均寿命 (粒子
の)
素粒子,原子,分子,電子,イオンなどの粒子が
ある不安定な励起状態に留まっている平均の時
間。 定義に 1/e 及び 1/2(半減期)の 2種類が
ある。 普通,個々の粒子の寿命は異なるが,あ
る不安定な状態にある多数の粒子の数は,時間と
ともに指数関数的に減少し,その寿命の平均値
は,不安定な状態にある粒子数が 1/e になる時間
である。 放射性原子核の崩壊など,また,時間
に対し指数関数的に減少しない系では,その状態
の粒子数が 1/2 になる時間(半減期)で定義する。
mean life (of a
particle)
111-14-14,
393-04-18,
881-04-18
2-1-74 平均自由行程
運動するある特定のタイプの粒子が,特定のタイ
プの散乱(衝突)から次の散乱(衝突)までの時
間に走行する距離の平均。
mean free path
111-14-5,
393-04-91,
881-04-40
2-1-75 活性化エネルギ
ー
ある状態からそれよりエネルギーの高い遷移状
態を経て次の状態に移る過程において,遷移状態
のエネルギーとはじめの状態とのエネルギーの
差。
activation
energy
(521-02-05
impurity
activation
energy)
2) 粒子の性質
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
2-2-1
[マクスウェル・]
ボルツマン統
計
ある一つの系の非常に小さい有限な体積内で,位
置座標及び速度座標又はエネルギー座標の平均
値によって定義される非量子化系の巨視状態の
存在確率を扱う統計理論。
(Maxwell-)
Boltzmann
statistics
521-01-03
2-2-2
[マクスウェル・]
ボルツマン分
布
熱平衡状態における非量子化系のあるエネルギ
ー状態を粒子が占める確率を表す分布。その確率
)
(E
f
は,次の式で表す。
−
=
kT
E
A
f
exp
(E)
ここに,T : 絶対温度
k : ボルツマン定数
E: 非量子状態のエネルギー
A : 定数
(Maxwell-)
Boltzmann
distribution
2-2-3
ボルツマン因子
ボルツマン統計に従う粒子がエネルギーEの熱
平衡状態に存在する確率と比例する因子。
exp
)
(E/kT
−
で表される。
Boltzmann
factor
2-2-4
ボルツマン[方
程]式
粒子系のエントロピーが,その巨視状態の確率の
自然対数に比例することを述べる関係式。その比
例定数が,ボルツマン定数である。
Boltzmann
equation
12
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
2-2-5
統計学的重み
巨視状態に含まれる微視状態の数。 その統計学
的な重みが極大であるような巨視状態が平衡状
態である。
statistical weight
2-2-6
フェルミ[・ディ
ラック]統計
パウリ原理を考慮した粒子の量子化した系にお
ける巨視状態の確率を扱う統計理論。
Fermi(-Dirac)
statistics
521-01-15
2-2-7
フェルミ[・ディ
ラック]分布
固体中の電子はフェルミ[・ディラック]統計に
従い,あるエネルギーの量子状態を電子が占める
確率を表す分布。 その確率
)
(E
f
は,次の式で表
す。
)
F
(
exp
1
1
)
(
kT
E
E
E
f
−
+
=
ここに,T: 絶対温度
k : ボルツマン定数
E :量子状態のエネルギー
EF : フェルミ準位
Fermi(-Dirac)
distribution
(521-01-16
Fermi-Dirac
function)
2-2-8
フェルミ準位
固体において,絶対零度で電子で占有されている
量子状態と占有されていない量子状態とを分け
るエネルギー準位。このエネルギーでフェルミ分
布関数が 1/2 の値をとる。
Fermi level
111-14-38,
521-01-17
2-2-9
縮退(統計学の)
ボーズ統計,フェルミ統計に従う粒子が,古典力
学に従う粒子とは違ったその統計特有の性質を
表す状態。 低温で粒子密度が大きい場合に,そ
の特徴が大きく現れる。
degeneration (in
statistics)
2-2-10 縮退ガス,
縮退気体
ボーズ統計,フェルミ統計の効果を明確に示す気
体。
備考 ガスには,極低温の水素ガス,金属内
や高濃度ドープ半導体の電子が相当す
る。
degenerate gas
2-2-11
ボーズ[・アイン
シュタイン]分
布
ボーズ[・アインシュタイン]統計に従う粒子の
分布。あるエネルギー量子状態を電子が占める確
率は,次の式で表す。
1
1
)
(
−
=
kT
E
exp
A
E
f
ここに,T : 絶対温度
k : ボルツマン定数
E : 量子状態のエネルギー
A : 係数である。
Bose(-Einstein)
distribution
2-2-12 フェルミ粒子,
フェルミオン
フェルミ統計に従う粒子。スピンが半奇数の粒
子,例えば,電子,陽子,中性子など。
Fermi particle,
fermion
2-2-13 ボーズ粒子,
ボゾン
ボーズ統計に従う粒子。 スピンが偶数の粒子で,
例えば,光子, 2H,4He など。
Bose particle,
boson
13
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
2-2-14 ボーア原子
ボーアとゾンマーフェルドの概念に基づく原子
の模型であって,原子に束縛された電子はとびと
びの円又はだ円の軌道に沿って原子核の周りを
運動する。 原子の各自由度に対応する一連のエ
ネルギー状態が存在し,これらが原子によって放
出されるスペクトルの系列を決定する。
Bohr atom
521-01-06
2-2-15 ブラソフ式
プラズマに関するボルツマン輸送方程式の修正
式。粒子は相互に誘導する空間電荷電界を通して
だけ相互作用し,衝突は無視すると仮定したも
の。
Vlasov equation
2-2-16 量子化
古典的な物理量を量子論的な物理量に置き換え
ること。
quantization
2-2-17 エネルギー準位
原子,分子などの量子力学系の定常状態でとる
種々のエネルギーの値。
energy level
111-14-21
(521-01-12),
845-04-16
2-2-18 量子数
原子の自由度を特徴付ける数。 原子の電子に対
しては,主量子数n,方位量子数l,磁気量子数
l
m,スピン量子数sなどが,ある。
quantum number 521-01-07
quantum
number (of an
electron in a
given atom)
2-2-19 主量子数
原子内の電子のエネルギー準位の主要な変化を
特徴付ける正の整数。波動関数の節面(波動関数
が0となる面)の数に1を加えた整数に等しく,
通常,nで表す。
備考 ボーア(Bohr)モデルによれば,主量子数
は電子軌道の半径を特徴付けると考え
られる。電子に働く力が原子核からの
クーロン引力だけの場合は,そのエネ
ルギーはnだけで表される。水素原子
以外の原子の電子のエネルギーは,n
だけでなく,方位量子数lにも依存す
る。
principal
quantum
number
521-01-08
principal (first)
quantum
number
2-2-20 方位量子数,
軌道量子数
軌道運動している電子の軌道角運動量の大きさ
を与える量子数。 通常,lで表す(多粒子系でL
は)。 球対称の場の中では,軌道角運動量 lの2
乗の固有値は,
)1
(
2
+
l
l
η
で与えられる。 lは 0
からn−1(nは主量子数)までのすべての整数値
をとり,nが 同じ場合には,l が大きい方がエ
ネルギーは大きい。 l= 0,1,2,3,4,5,6…
に 応じた固有状態を s,p,d,f,g,h…で表す (多
粒子系では S,P,D,F,G,H…)。
azimuthal
quantum
number,
orbital quantum
number
521-01-09
orbital (second)
quantum
number
14
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
2-2-21 スピン軌道相互
作用
電子の軌道磁気モーメントとスピン磁気モーメ
ント間の相互作用。 軌道角運動量をl ,スピン
角運動量をs とすると,スピン軌道相互作用エネ
ルギーは ls
λで表される。比例定数 λは,スピ
ン軌道相互作用定数と呼ばれる。
spin-orbit
interaction
2-2-22 パウリの原理
量子化した系における各電子状態には,0個,1
個又は2個の電子しか入ることができないという
原理。2個の電子の場合には,反対方向のスピン
をもつ。パウリの排他原理,パウリの排他律又は
単に排他原理若しくは排他律ともいう。
Pauli principle,
Pauli-Fermi
exclusion
principle
521-01-14
2-2-23 ボーズ[・アイン
シュタイン]統
計
整数のスピンをもつ粒子 (光子,2H,4He)は,
各々の一粒子状態を占有する粒子数は 0 から ∞
までの任意の数が可能で,このような粒子が従う
統計。
Bose(-Einstein)
statistics
2-2-24 磁気量子数
軌道角運動量l のz(任意)方向成分z
lの大きさ
を与える量子数。通常,
l
mで表す(多粒子系では
L
M)。 球対称場では,zlの 固有値は
η
l
m とな
る。
l
m の値は,l−,
)1
(−
−l
,・・・,0,・・・,
)1
(−
l
,l の
1
2+
l
個ある。 各状態は,通常,縮
退しているが,磁界をかけると
l
mに比例したエネ
ルギーの変化を受けて縮退がとれる。
magnetic
quantum
number
2-2-25 スピン[量子数]
電子を,自転軸の周りを回転している小さな荷電
球と考えたときの,角運動量を与える量子数。 通
常,sで表す(多粒子系ではS)。 スピン角運動
量sの2乗
2
sの固有値は,
)1
(
2
+
s
s
η
で与えられ
る。 sの z(任意)方向成分szの固有値は,
η
s
m
と表される。
s
mをスピン磁気量子数といい,電
子に対しては,s=1/2,s
m=±1/2 である。
spin (quantum
number)
521-01-10
spin (quantum
number)
2-2-26 全角運動量量子
数,
内量子数
軌道角運動量lとスピン角運動量sの和である全
角運動量
s
l
j
+
=
の大きさを与える量子数。 通
常,jで表す(多粒子系ではJ)。全角運動量 j
の2乗の固有値は
)1
(
2
+
j
j
η
で与えられる。j
は,
|
|
s
l−
から
s
l+までの値を取る。jの z(任
意)方向成分
zjの大きさを与える量子数を内磁気
量子数といい,通常,
j
mで表す(多粒子系では
J
M)。スピン軌道相互作用を考慮した系では,
l
m,
s
mの代わりに,j,
j
mが よい量子数とな
る。
参考 内部量子数ともいうことがある。
total angular
momentum
quantum
number,
inner quantum
number
521-01-11
15
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
3) 物質の構成
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
2-3-1 結晶
構成原子が空間的に周期的な配列をもつ固体物
質。 狭義には,単結晶のこと,広義には,小さ
な単結晶からなる多結晶をも含める。
crystal
521-02-45
ideal crystal
2-3-2
結晶成長
固相,液相,又は気相状態の結晶原料から単結晶
又は多結晶を成長させること。
crystal growth
[521-03-01
growing by
Czochralski's
method;
growing by
pulling (of a
single crystal),
521-03-02
growing by zone
melting (of a
single crystal)]
2-3-3
エピタキシャル
成長,
エピタキシ
基板結晶上に気相又は液相で原料を供給し,基板
結晶と結晶軸とをそろえて結晶を成長すること。
参考 気相で原料を供給する気相エピタキ
シ,液相で原料を供給する液相エピタ
キシ,非結晶の固体を結晶化させる固
相エピタキシなどがある。
epitaxial
growth,
epitaxy
521-03-12
2-3-4
配位結合
共有結合の一種で,一方の原子にある電子対が相
手の原子と共有されることでできる共有結合。
coordinate bond
2-3-5
面心格子
単純格子に,各面の対角線の交点に格子点を付け
加えた格子。面心立法及び面心斜方格子がある。
face-centered
lattice
2-3-6
結晶軸
結晶面や物理的性質の対称性がよく現れる結晶
の座標軸。
crystal axis
2-3-7
逆格子
空間格子の基本ベクトルと相反系の関係にある
ベクトルを基本ベクトルとする空間格子。空間格
子の基本ベクトルを
ia
)3
2
1
(
,
,
i=
,その逆格子の
基本ベクトルを
jb
,
,
,
j
)3
2
1
(
=
とするとき,
j
ib
a
.
j
i
j
i
ij
ij
}
{
)
(0
)
(1
2
≠
=
=
=
δ
πδ
三次元格子に対する具体的表現は,
=
1b
π
2
)
(
)
(
3
2
1
3
2
a
a
a
a
a
×
×
=
2
b
π
2
)
(
)
(
3
2
1
1
3
a
a
a
a
a
×
×
=
3b
π
2
)
(
)
(
3
2
1
2
1
a
a
a
a
a
×
×
reciprocal lattice
16
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
2-3-8
ミラー指数
結晶面(格子面)又はその方向を表示する記号。
三つの結晶軸の基本ベクトルの大きさが a,b,c
である結晶の,ある結晶面の結晶軸との交点が
c
n
b
n
a
n
c
b
a
,
,
であるとき,
c
b
a
n
/
,
n
/
,
n
/
1
1
1
の
比を互いに素な整数
l
k
h,
,
で表し,これをこの面
のミラー指数といい,この面を
)
(
l
k
h
のように表
す。
Miller indices
2-3-9
双晶
2個の結晶が,ある特定面又は軸に関して対称性
をもって結合している結晶。
twin
2-3-10 イオン伝導
イオンの空間的移動によって生じる電気伝導。
イオン結晶など電子密度,正孔密度の非常に小さ
い固体中,電解質溶液中,イオン化した気体中に
おいて流れる電流の主要伝導機構。
ionic conduction
521-02-21
2-3-11
単結晶
全体にわたって構成原子が,空間的に周期的配列
をもつ固体物質。
single crystal
2-3-12 多結晶
比較的小さな単結晶がその結晶軸方向をそろえ
ずに多数集合して構成される固体物質。
polycrystal
2-3-13 結晶粒
多結晶を構成する小さな単結晶の粒。
grain
2-3-14 結晶粒界
結晶粒同士の結合境界。
grain boundary
2-3-15 アモルファス,
非晶質
広義には,原子の空間配列に周期性をもたない固
体物質で,結晶の反意語に用いられる。 狭義に
は,短距離的には周期性を示すが,長距離的には
周期性をもたない原子構造の固体物質。
amorphous,
noncrystal
2-3-16 [化学]結合
分子又は固体(結晶,非晶質)を構成する原子 又
はイオン間の結合。
(chemical) bond
2-3-17 イオン結合
正負の電荷をもつイオン間の静電引力による化
学結合。 一般に,電気陰性度の差の大きい原子
間にイオン結合が多い。
ionic bond
2-3-18 金属結合
金属を構成する原子間の結合で,電子が多数の原
子に共有されることによってエネルギーが低下
するという原因で生じる結合。
metallic bond
2-3-19 共有結合
2個の原子が結合電子対を共有することによって
形成される結合。各原子の半分満たされた軌道間
で強い共有結合ができやすい。
covalent bond
2-3-20 交換相互作用
異なる 1 電子軌道関数を占める電子のスピン間
に働く相互作用。
exchange
interaction
2-3-21 配位
一つの原子又はイオンの周りに化学結合で他の
原子,分子,イオンが配列する状態。 このよう
な原子集団を錯体といい,配位結合している原子
又は原子団を 配位子 (ligand),その数を 配位数
(coordination number,ligancy) という。
coordination
2-3-22 分子結合,
ファン・デル・ワ
ールス結合
満ちた電子殻をもつ原子,分子間で,電子分布の
揺らぎのために生じる双極子によって引き合う
ことによって生じる結合。
molecular bond,
van der Waals
bond
17
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
2-3-23 水素結合
電気陰性度の大きい原子が 同一又は他の電気陰
性度の大きい原子と水素原子とを介在して安定
化する結合。両側の原子と水素原子とで電子を共
有することによって,両側の電子は負に,水素原
子は正に荷電している。 代表例は水分子である。
hydrogen bond
2-3-24 空間格子,
結晶格子
結晶構造の原子配列の空間的周期性の基本要素
を取り出して構成した周期的点の三次元的配列。
どの点をとってもその周囲が他の点の周囲と全
く同じになっている。
space lattice,
crystal lattice
2-3-25 単位格子
空間格子を構成する最小の単位の格子。いろいろ
な選び方が可能である。
unit cell
2-3-26 格子定数
単位格子の各りょう(稜)の長さと相互間のなす
角度。
lattice constant
2-3-27 格子点
空間格子を形成する立体の頂点。 単結晶は,格
子点に1個又は複数個の原子,イオン及び 分子
が配列することによって構成される。
lattice point
2-3-28 ブラヴェ格子
ブラヴェ が選んだ単位格子。空間格子を単純格
子,体心格子,面心格子及び底心格子に分け,こ
れを基準として14種の単位格子に分類される。
Bravais lattice
2-3-29 単純格子
6個の平行四辺形からなる6面体の頂点に格子点
がある格子。 単純立方,単純正方,単純六方,
単純ひし(菱)面体,単純斜方,単純単斜,単純
三斜格子がある。
simple lattice
2-3-30 体心格子
単純格子に,相対する頂点を結ぶ対角線の交点
(格子の中心)に格子点を付け加えた格子。体心
立方,体心正方及び 体心斜方格子がある。
body-centered
lattice
2-3-31 底心格子
単純格子に,底面と相対する上面のそれぞれ対角
線の交点に格子点を付け加えた格子。 底心斜方
及び底心単斜格子がある。
base-centered
lattice
2-3-32 結晶構造
結晶の三次元的周期配列構造をその対称性に着
目して分類したもの。合計230 種の構造が考えら
れる。代表例として,金属結晶の最密構造,ダイ
ヤモンド,シリコン,ゲルマニウムなどのダイヤ
モンド構造 (diamond structure),ひ化ガリウムなど
のせん(閃)亜鉛鉱構造 (zinc blende structure)が
ある。
crystal structure
2-3-33 最密構造
半径が同じ球を最も密に積み重ねたときの球の
中心を格子点とする結晶構造。 球の積み重ね方
には,第3層が第 1層と同一の配置のもの(ABAB
配置,又は立方最密構造という。)と 第3層が第
1層とは異なる配置(ABCABC 配置又は 六方最
密構造という。)の 2種類の構造がある。
close-packed
structure
2-3-34 準結晶
2個以上の相異なる単位格子からなる積層構造で
あって,その構造全体については厳密な周期性は
ないが,ある方向には周期性をもつもの。
quasi crystal
18
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
2-3-35 格子欠陥
空間格子の規則的周期配列の一部分が理想的な
完全結晶の配列から外れて乱れたり,又は不純物
原子が入り込んでできる格子配列の局所的な(数
原子間の距離)周期性からのずれや空格子点,又
はその空格子点や格子間に入った不純物原子。
その形状に従って,点欠陥,線欠陥及び 体積欠
陥に分類される。
lattice defect,
lattice
imperfection
2-3-36 結晶欠陥
結晶内の理想的な完全結晶から外れた領域。格子
欠陥はもとより,マクロな微小析出物,不純物ク
ラスターなどを包含する一般的な表現。
crystal defect
2-3-37 点欠陥
点状の格子欠陥をいい,空格子点,格子位置異種
原子,格子間同種原子,異種原子などがある。
point defect
2-3-38 空格子点,
原子空孔
格子点に原子がなく空となっている点欠陥。
(atomic)
vacancy
2-3-39 格子間原子
本来の格子点でない格子間に入り込んだ同種又
は異種原子。
interstitial atom
2-3-40 フレンケル欠陥
結晶格子点にある原子が,格子間に移動した結果
できた空格子点と格子間原子との対の欠陥。
Frenkel defect
2-3-41 ショットキー欠
陥
結晶格子点にある原子が,結晶の表面の格子位置
に移動して,その結果できる単独の空格子点。
Schottky defect
2-3-42 転位
結晶内部の面のすべりの生じた領域と生じてい
ない領域との境界として現れる線状の格子欠陥
をいい,刃状転位(はじょうてんい,edge
dislocation) と,らせん転位(らせんてんい,screw
dislocation) とがある。
dislocation
561-05-09
2-3-43 バーガースベク
トル
格子内のある面に沿って転位が発生していると
き,その面の片側の格子が他方の側の格子に対し
て相対的に起こしている変位を表すベクトル。
Burgers vector
2-3-44 積層欠陥
一つの原子面がある原子面の上に誤った順番で
積み重なることによって生じる面欠陥。 しかし,
この不整面の両側の格子は完全である。
stacking fault
2-3-45 インターカレー
ション
層状物体の層間に電子供与体又は電子受容体電
荷の移動によって挿入される現象。
intercalation
19
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
4) 固体の電子構造
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
2-4-1
エネルギーバン
ド,
エネルギー帯
結晶中の電子が,占有可能なほぼ連続的に並んだ
一連のエネルギー準位で構成される帯(許容帯)。
それぞれの許容帯は,電子の占有が禁止されてい
るエネルギー帯(禁制帯)でもって隔てられる。
共有結合性の強い固体では,アモルファス状態で
も結晶に対応したバンド構造がみられるが,許容
帯と禁制帯との境界が明りょうではない。
energy band
111-14-34
エネルギー帯,
521-02-25
energy band;
Bloch band,
521-02-26
energy band
(in a
semiconductor)
2-4-2
バンド構造エン
ジニアリング
2種類以上の半導体の固溶体(合金半導体,又は
混晶半導体)の組成を制御するか,又は超格子構
造の組成及び膜厚の制御によって,目的とするデ
バイスに最適なバンド構造を選び作ること。バン
ドギャップエンジニアリングともいう。
band structure
engineering
2-4-3
許容帯
結晶の電子が占有することの可能なエネルギー
バンド。
allowed band,
permitted band
111-14-35,
521-02-29
2-4-4
禁制帯
二つの許容帯を分離する電子の占有が不可能な
エネルギー帯。一般に,ここには不純物,欠陥な
どが存在しない限り,電子のエネルギー準位は含
まれない。
forbidden band
111-14-36,
521-02-30
2-4-5
充満帯
許容帯のうち,絶対零度において電子によって完
全に満たされたバンド。
filled band
521-02-32
2-4-6
価電子帯
価電子によって占有されている許容帯。バンドギ
ャップを挟んでこれよりすぐ上のエネルギーに
ある許容帯が伝導帯である。絶対零度では,価電
子帯は電子で完全に占有されており,価電子が伝
導帯に励起されて価電子が欠けると価電子帯に
自由正孔が,伝導帯に伝導電子が生じる。
valence band
111-14-39,
521-02-23
2-4-7
空帯
結晶のエネルギーバンドにおいて,絶対零度でエ
ネルギー準位が電子に占有されていない空の許
容帯。
empty band
521-02-33
2-4-8
伝導帯
完全に満ちていないバンド中の電子,又は空帯へ
熱的若しくは光の吸収によって励起された電子
は,結晶中を自由に動けるため電気伝導に寄与す
る。 この意味で,完全に満ちていないバンド及
び空帯を伝導帯と呼ぶ。
conduction band
111-14-40,
521-02-22
2-4-9
バンドギャップ
エネルギー,
エネルギーギャ
ップ
結晶中の隣接した許容帯間のエネルギー間隔。
通常は,伝導帯最下端と価電子帯最上端とのエネ
ルギー差。
band gap
energy,
energy gap
111-14-37
エネルギーギ
ャップ,
521-02-24
20
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
2-4-10 結晶運動量
結晶内電子の状態を指定する波数ベクトルをk
とし,
k
p
η
=
で定義される運動量p(ここに
:
h
,
/
h
π
2
=
η
プランク定数)。結晶運動量を用
いることによって,外力が与えられた場合の運動
を自由粒子に対するニュートンの運動方程式と
同じ形式で記述できる。
crystal
momentum
2-4-11
ブリルアン帯域
結晶のユニットセルの大きさa に対応する周期
性
)
2(
a
/
π
の基本領域
)
(
a
/
,
a
/
π
π
−
。結晶中
を伝搬する電子波,格子波などの状態を波動ベク
トルで表すと同様の周期性の基本領域をもつ。
Brillouin zone
2-4-12 直接遷移形バン
ド構造
伝導帯の最下端と価電子帯の最上端とが,ともに
ブリルアン帯域の中心 [Γ(ガンマ)点と呼ば
れ,波数ベクトルがゼロの点]にあるエネルギー
バンド構造。
参考 電子及び正孔の発光再結合の際,フォ
ノンの放出又は吸収を伴わずに光子だ
けを放出し,そのために発光遷移確率
が大きい。
direct transition
band structure
2-4-13 間接遷移形バン
ド構造
価電子帯の最上端が,Γ(ガンマ)点にあるのに
対して,伝導帯の最下端がΓ(ガンマ)点以外に
あるエネルギーバンド構造。
参考 電子及び正孔の発光再結合の際,光子
の放出以外にフォノンの放出又は吸収
を必要とするので,発光遷移確率が小
さい。
indirect
transition band
structure
2-4-14 状態密度
量子化された状態の数を,単位体積当たり,単位
エネルギー(又は波数空間での単位体積)当たり
の値で表したもの。エネルギー又は波数(運動量)
の関数として状態密度を表したものを,状態密度
関数と呼ぶ。
density of state,
state density
2-4-15 実効状態密度,
有効状態密度
伝導帯中の電子密度n,又は価電子帯中の正孔密
度pを,ボルツマン近似の下で表したときの係数
c
N(電子),
v
N(正孔)。
[
]
kT
/
E
E
N
n
)
(
exp
c
F
c
−
=
,
[
]
kT
/
E
E
e
N
p
)
(
xp
F
v
v
−
=
ここに,
F
E: フェルミ準位
c
E: 伝導帯の下端のエネルギー
v
E: 価電子帯の上端のエネルギ
ー
k : ボルツマン定数
T: 絶対温度
effective density
of state
2-4-16 局在準位
伝導電子のように,結晶全体に平面波状態で拡が
っているブロッホ状態に対し,不純物若しくは欠
陥に捕獲されている電子又は表面準位のように,
限られた空間にだけ存在する電子状態。
localized level
21
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
2-4-17 表面準位
半導体などにおいて波動関数が表面近傍に局在
する電子状態。表面では結晶の周期性が失われる
ため,禁制帯中に新たな電子状態が現れる。また,
表面への不純物原子の吸着や,原子配列の乱れな
どによっても準位が発生する。
surface level
521-02-42
2-4-18 真空準位
真空中に孤立静止した荷電粒子のエネルギー準
位。
参考 固体中の電子は,真空準位以上のエネ
ルギーをもつと固体から外部真空空間
に飛び出すことができる。
vacuum level
2-4-19 仕事関数
固体表面から1個の電子を取り出すのに必要な最
小のエネルギー。固体中のフェルミ準位と真空準
位とのエネルギー差で与えられる。
work function
111-14-52
2-4-20 電子親和力
陰イオンから電子を引き離すのに必要な仕事。電
子親和力は,金属では仕事関数に一致する。半導
体では真空準位と伝導帯下端とのエネルギー差。
参考 一般の半導体では,真空準位のほうが
エネルギーが高く,電子親和力の値は
正であるが,ダイヤモンドのように負
の電子親和力をもつ物質もある。
electron affinity
2-4-21 表面ポテンシャ
ル (半導体に
おける)
半導体内部に対する半導体表面でのエネルギー
帯の曲がりを定量的に示すために電圧の単位で
表した量。半導体内部の真性準位を基準として測
った半導体表面における真性準位で定義する。
surface potential
(in a
semiconductor)
5) 粒子系,光,電磁波及び音波
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
2-5-1
光束
標準的な視感度をもった観察者によって評価さ
れた放射束。単位は,ルーメン(lm)である。
luminous flux
723-08-27
2-5-2
照度
光が照射される面における光束密度。 光束をF,
面積をSとしたとき
S
F/d
d
。単位はルクス (lx)
である。
illuminance,
luminous flux
density
845-01-25
2-5-3 光度
光源からある特定の方向に放射される光束Fを,
その方向の単位立体角ω当たりの値
)
(dF/dωで表
したもの。単位は,カンデラ (cd) である。 1/683
(W/sr) を1 (cd) とする。
luminous
intensity
723-08-28
光束密度,
845-01-31
22
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
2-5-4
色度
色刺激又は心理物理的に表示される色の感覚の
うち,明るさに対応する次元を除いた測色的性
質。 色の色相(hue:赤 黄,緑,青,紫などの色
感覚の属性とそれを尺度化したもの)と彩度(色
の純度及び飽和度)からなる。 三つの色度座標
分の一つをもう一つの座標分に対してプロット
して得られる平面図表を色度図と呼ぶ。
chromaticity
723-08-33,
845-03-34
2-5-5
明度
物体表面の相対的明るさに関する色感覚の属性,
及びそれを同一条件で照明した白色面を基準と
して尺度化したもの。
lightness
845-02-31
2-5-6
偏波,
偏光
電磁波の電界ベクトル,又は一般的に横波の変位
ベクトルが,空間の特定の点において伝搬方向と
直角の平面内において時間的に規則的に変化す
ること,又はその軌跡。電磁波が光の周波数にあ
るときには,偏光ともいう。
polarization,
polarized light
705-01-13
polarization (of
an
electromagneti
c wave)
(電磁波の) 偏
波,
726-04-01
polarization (of
a wave or field
vector),
845-01-10
polarized
radiation
2-5-7
偏光度
物質によって散乱される光,又はルミネッセンス
は,一般に入射光と異なる偏光状態になり,入射
光と同じ偏光状態の成分の強度をI,これと直交
する偏光状態の成分の強度を
⊥
Iとして,
)
(
)
(
⊥
⊥
+
−
=
I
I
/
I
I
P
,によって偏光状態の
変化を表した量。
degree of
polarization
2-5-8
消光(複屈折にお
ける)
結晶板の複屈折による干渉を偏光子と検光子で
検出する際,結晶板のある回転角に対して透過光
がゼロになる現象。
extinction (in
birefringence )
2-5-9
消光 (ルミネセ
ンスにおける)
励起電子が非発光的に基底状態に戻り,発光が抑
制されること。
quenching (in
luminescence)
2-5-10 屈折率
自由空間における波の位相速度と与えられた媒
質中における位相速度との比。吸収を伴う媒質に
対しては複素数で与えれれる複素屈折率が用い
られる。
index of
refraction ,
refractive
index ,
refractivity
731-03-11,
705-03-21
(702-02-19
MOD)
refractive
index,
845-04-101
23
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
2-5-11
反射率,
反射係数
異なる媒質間の境界で反射する波のエネルギー
(又は粒子束)と入射する波のエネルギー(又は
粒子束)との比。 反射係数という場合には,反
射する波の振幅と入射する波の振幅との比で,こ
の場合は,位相関係も含む。
reflectivity,
reflection
coefficient
705-04-16
(amplitude)
reflection
factor,
731-03-25
(705-04-17
MOD)
power reflection
coefficient;
reflectance,
反射率,
845-04-86
reflectivity
2-5-12 透過率,
透過係数
ある厚さの媒質,又は異なる媒質間の境界に波動
若しくは粒子が入射したとき,その入射エネルギ
ー(又は粒子束)に対する透過エネルギー(又は
粒子束)の割合。透過係数という場合には,透過
した波の振幅と入射する波の振幅との比で,この
場合は,位相関係も含む。
transmittance,
transmission
coefficient
731-03-31,
845-04-59
2-5-13 吸収係数
波動や粒子の吸収に関する減衰定数をいい,波動
又は粒子束が媒質中の dx の厚さの層を進むと
き,αd x の割合でエネルギー又は粒子数が吸収に
よって減衰するときのαをいう。αが場所 xによ
らない一定値のときは,x に対して波動のエネル
ギー,粒子数はexp(−αx) に従がって減衰する。
又は
x
α′
−
10
で表す場合もある。 光の吸収におい
ては入射光の強度
0Iと透過光の強度Iとの比の
対数が媒質の厚さdに比例するというランベル
トの法則から,
d
I
/
I
ln
α
=
)
(0
又は
d
I
/
I
log
α′
=
)
(0
から求められる。
absorption
coefficient
393-04-51,
881-04-26
2-5-14 散乱(波の)
媒質の不均一性や異方性,他の媒質の影響などに
よって,電磁波,音波などの波動の伝搬方向,周
波数,偏波面などが不規則に変化する現象。
scattering (of a
wave)
393-03-07,
705-04-46,
731-03-35,
801-23-26,
881-03-14
2-5-15 レイリー散乱
大きさが波長の約10分の1以下の粒子によって
起こる,波長変化を伴わない光の散乱。 散乱光
強度は,波長の4乗に逆比例する。
Rayleigh
scattering
731-03-37
2-5-16 ミー散乱
粒子の大きさが,波長に比べて無視できない場合
の,光の散乱。
Mie scattering
2-5-17 回折
入射波動が障害物によってその振幅又は位相が
変化し,幾何光学では予測できない方向に進行方
向が変化すること。
diffraction
705-04-44,
731-03-34,
801-23-25,
845-01-13
24
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
2-5-18 フラウンホーフ
ァー[の]回折
回折物体から実効的に無限遠方にある観測され
る平行光線の回折。
Fraunhofer
diffraction
(731-03-94
far-field
diffraction
pattern;
Fraunhofer
diffraction
pattern,
ファーフィー
ルド回折パ
ターン)
2-5-19 フレネル[の]回
折
光源,観測点の少なくとも一方が回折を起こす物
体(例ば,開口)に対し有限の距離にあって,入
射又は回折波を平面波とみなせない場合の,光の
回折をいう。フラウンフォーファの回折の対語。
Fresnel
diffraction
(731-03-91
near-field
diffraction
pattern;
Fresnel
diffraction
pattern,
ニアフィール
ド回折パター
ン)
2-5-20 分光[法]
波動や粒子の性質を,波長,エネルギー,運動量,
周波数,温度,電圧などをパラメータとして分析
すること,又はその手法。物質が放出又は吸収す
る光のスペクトルから物質のエネルギー準位,遷
移確率などを研究する学問分野を,分光学
(spectroscopy)という。
spectrum
analysis,
spectroscopy
25
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
2-5-21 伝搬係数,
伝搬定数
媒質又は線路の伝送特性で,ある周波数の波動が
媒質又は線路に沿って伝わるときの性質を複素
数で表したもの。波動が長さlだけ伝搬するとき
exp[
]l
j)
(
β
α+
−
の因子がかかる。この
β
α
τ
j
+
=
を伝搬定数といい,実数部αは,減衰定数,虚数
部βは,位相定数と呼ばれる。
propagation
constant
101-15-15
(705-02-24
MOD)
propagation
coefficient,
伝搬係数,
702-02-13
propagation
coefficient;
propagation
constant
(USA),
伝搬係数,
726-05-09
propagation
coefficient;
propagation
constant
(USA),
731-03-41
(702-02-13)
propagation
coefficient,
伝搬定数
2-5-22 位相速度
伝ぱする正弦波の波面の等位相面が進行する速
度。
備考 位相速度の大きさは,角周波数を波数
で除した値に等しい。
phase velocity
101-15-10,
705-02-16
位相速度(ベク
トル),
705-02-17,
726-05-13,
801-23-20
2-5-23 群速度
理想的には,振幅が等しく周波数又は位相速度が
わずかに異なる二つの正弦波の重合せによって
表される,信号の進行する速度。
備考 群速度の大きさは,角周波数の波数に
関する微分に等しい。波動のエネルギ
ーは位相速度ではなく群速度で伝えら
れる。
group velocity
101-15-12,
702-02-22,
705-02-21
群速度(ベクト
ル),
731-03-29,
801-23-21
26
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
2-5-24 分散
電磁波,音波,電子線などの波動や粒子線などを,
周波数,エネルギー,速度などの成分に分けるこ
と。又は,波動における位相速度が周波数に依存
すること。
dispersion
705-04-29
dispersion (of an
electromagneti
c wave)
(電磁波の)分
散,
731-03-74,
801-23-22,
845-04-104
2-5-25 分散関係
波動の運動に関する性質で,周波数と波動ベクト
ルとの関係。
dispersion
relation
2-5-26 収差
結像光学系(電子光学系なども含む。)が,ガウ
ス結像の条件を満たさないために生じる欠陥。単
色光に対する光線収差と波長分散に基づく色収
差とに大別する。
(optical)
aberration
2-5-27 コヒーレンス
二つ若しくはそれ以上の波動の対応する成分の
位相の間,又は一つの波動のある一成分の位相の
間に,時間的若しくは空間的な一定の関係が保た
れていること。したがって,相互に干渉を起こす
(可干渉性)。
coherence
101-15-23,
705-01-43
(721-01-09),
731-01-09
(705-01-43)
2-5-28 干渉
二つ又はそれ以上の波が同じ場所にきたとき,合
成波の振幅が成分波の位相の差によって変化す
る現象。
interference
702-08-32
位相妨害,
731-03-05,
801-23-13,
845-01-12
2-5-29 レーザビーム
細く方向性をもったコヒーレントな光。
laser beam
2-5-30 スペックル
レーザのように干渉性のよい光が粗い面で散乱
されたり不均一な物質を透過したときに生じる
はん点状の明暗模様。
speckle
2-5-31 モード,
姿態
マクスウェル方程式の解の一つで,振動系におけ
る特定の振動形式に相当する状態を示し,それぞ
れ固有の振動数をもつもの。
mode
705-01-12
(electromagnet
ic) mode,
(電磁界)モー
ド,
731-03-04
2-5-32 エバネッセント
フィールド,
エバネッセント
界
電磁界の各成分の大きさの距離依存性をみると
き,各成分が同時刻にすべての点で相互に同じ位
相を示しながら,その振幅が数波長の間にほとん
どゼロに減衰する電磁界で,その減衰は吸収によ
らないもの。エバネッセントフィールドはエネル
ギーを運ばず,したがって波ではない。電磁波が
屈折率の高い媒質から低い媒質に全反射角以上
の角度で入射するときに,屈折率の低い媒質中に
境界から数波長の領域にエバネッセントフィー
ルドが存在する。
evanescent field
705-04-70,
731-03-52
27
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
2-5-33 位相共役波
高次の非線形誘導分極によって,入射電界の位相
を反転させた波面の光の発生が可能となること。
時間反転波ともいわれる。
phase conjugate
wave
2-5-34 平面波
等位相面が 一群の平行平面である波動。波の振
幅が
)}
(
exp{
ωt
r
k
j
−
の形で表される。ここで,
kは波数ベクトル,rは位置ベクトル,ωは角周
波数,tは時刻である。
plane wave
101-15-05,
705-03-32,
731-03-03
(705-01-32
MOD)
2-5-35 球面波
等位相面が同心球を形成するような波動。波の振
幅が,
/|r|
ωt
r
k
j
)}
(
exp{
−
の形で表される。こ
こで,kは波数ベクトル,rは位置ベクトル,ω
は角周波数,tは時刻である。
spherical wave
705-01-36,
801-23-07
2-5-36 波束
局在した波を記述する波動関数。いろいろな周波
数の正弦波が重畳されて構成されている。電子,
光子などを波動として扱うときに用いられる。
wave packet
2-5-37 フォトン,
光子
プランク定数hと電磁波の周波数νとの積ν
hに
等しいエネルギーの素粒子。
photon
111-14-06,
393-01-06,
731-01-02,
881-02-04
2-5-38 フォノン,
音[響]量子
弾性振動(格子振動,広義の音波)を量子化して
考えた準粒子。格子振動に関係するフォノンで
は,隣接原子の変位が同相である音響フォノン
(acoustic phonon)と,逆相に変位する光学フォノン
(optical phonon)とがある。
phonon
111-14-07
音子:フォノン
2-5-39 超音波
人の可聴周波数を超える音波で,通常は20 kHz
以上の音波をいう。
ultrasonic
(wave)
(801-21-04
ultrasound)
2-5-40 ソリトン
粒子のように振る舞う孤立波。 局在しない波で,
その性質(波形,速度など)を変えることなく伝
搬し,互いに衝突するときはその個性を失わずに
通り抜けていく波。
soliton
2-5-41 電子ビーム
細く方向のそろった,ほぼ同じ速度をもつ電子の
集団。
electron beam
841-08-02
2-5-42 電子波
電子の量子力学的な波動状態。
electron wave
2-5-43 電子放出
固体又は液体内の電子が温度上昇や入射光若し
くは電子との衝突又は高電圧の印加によって,そ
のエネルギーを増加し,固体又は液体面にある電
位の障壁を超えて外部に放出すること。
electron
emission
111-14-46,
121-13-04,
531-12-01
2-5-44 熱電子放出
電子が熱エネルギーによって固体又は液体面か
ら放出することをいい,その電子を熱電子とい
う。
thermionic
emission
111-14-47,
121-12-05,
393-02-80,
531-12-04,
881-02-94
2-5-45 電界放出
放出面上の高電界にだけ基づく電子放出。
field emission
111-14-49,
121-13-07,
531-12-06
28
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
2-5-46 光電子放出
光の入射によって,その入射面から電子が放出さ
れること。その電子を光電子という。
photoelectric
emission,
photoemission
111-14-48,
121-13-06,
531-12-05
2-5-47 一次電子
固体に電子を入射させ二次電子放出をさせると
きの入射電子。
primary electron
2-5-48 二次電子
電子,イオン,紫外線,X線などの高エネルギー
ビームが物質表面を衝撃することによって,その
表面から放出する電子。一次電子が表面から反射
したものも含める。
secondary
electron
393-02-44,
881-03-37
2-5-49 一次電子放出
一次電子が放出されること。熱,光電子,及び電
界による放出がある。
primary electron
emission
111-14-50,
121-13-08,
531-12-07
2-5-50 二次電子放出
二次電子が放出されること。
secondary
electron
emission
111-14-51,
121-13-09,
531-12-08
2-5-51 反射電子
電子線がある媒質から他の媒質に入射した結果,
何らかの不連続的変化のある境界,周期性をもっ
た結晶の格子面などによって進行方向を変え,も
との媒質中を新たな方向に沿って進行する電子。
reflected
electron
2-5-52 冷陰極
加熱することなく電子放出の起こる陰極。
cold cathode
531-21-10,
841-08-05
2-5-53 熱陰極
熱電子放出を主要な機能とする陰極。
hot cathode
531-21-13,
841-08-06
2-5-54 イオンビーム
ほぼ運動速度のそろったイオンの集団が,小さな
径で決まった方向に流れているもの。 液体金属
イオン源を用いた輝度の高いイオンビームは集
光性に優れ,集束イオンビームと呼ばれる。
ion beam
2-5-55 二次イオン
一次イオンが物質表面を衝撃することによって,
その表面から物質の構成元素がイオン化して真
空中に放出したイオン。
secondary ion
6) 量子効果
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
2-6-1
量子サイズ効果
電子のド・ブロイ波長と同程度以下の寸法を
もつ構造において,そこに閉じ込められた電
子の性質に起因して起こる効果。
quantum size
effect
2-6-2
量子構造
量子サイズ効果を実現するため,電子のド・
ブロイ波長と同程度以下の寸法からなる固体
の構造。 電子の閉じ込め方向が 1,2及び 3
次元の場合について,それぞれ量子井戸,量
子細線及び量子箱と呼ばれている。
quantum
structure
29
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
2-6-3
ひずみ量子井戸
量子井戸において特に,井戸層及び障壁層の
格子定数が互いに異なる量子井戸。
strained
quantum well
2-6-4
超格子
結晶系において,結晶格子の周期と異なる人
工的な空間変調を加えた系の総称。結晶組成
や不純物添加の異なる数十nm以下の層を交
互に積層した構造が,この代表例である。
superlattice
2-6-5
波動関数
物質中の電子の振舞いを定在波によって記述
するための関数。電子の存在確率は,波動関
数の自乗に比例する。
wave function
2-6-6
ド・ブロイ波
電子などの質量をもつ粒子の波動性。 別名,
物質波という。半導体の中の電子のド・ブロ
イ波長は,数十nmである。
de Broglie
wave
2-6-7
トンネル効果
粒子がもつ運動エネルギーよりも大きなエネ
ルギー障壁をその粒子が通り抜ける現象。 古
典理論では不可能で,量子力学で説明できる
現象。 粒子の波動としての性質に起因し,
トンネルの確率は粒子の質量及び 障壁の形
状に依存する。
備考 超電導体では,単一電子のトンネル
[ギーバー(Giaever)効果]とクーパ
ー対のトンネル(ジョセフソン効
果)とがある。
tunnel effect
121-13-21,
521-02-78
tunnel effect (in
a PN junction)
2-6-8
共鳴トンネル効果
トンネル現象の一種。トンネルする粒子のエ
ネルギーと同一レベルのエネルギー準位が障
壁層の対向側に存在すると,この特定のエネ
ルギー準位でトンネル確率が急激に増加する
現象。
resonant tunnel
effect
2-6-9
フランツ・ケルデ
ィッシュ効果
高電界印加で電界こう配をもつ半導体におい
て,光吸収及びトンネル効果によって,バン
ドギャップより小さな光子エネルギーで価電
子帯の電子が伝導帯へ遷移することが可能と
なるために,基礎吸収端の低エネルギー側に
光吸収がすそを引く現象。
Franz-Keldysh
effect
2-6-10
電子波干渉
電子の波動としての性質に起因する干渉現
象。
electron wave
interference
2-6-11
ブロッホ振動
結晶内の電子が散乱を受けないとすれば,直
流電界によって加速される場合でも,電子は
一方向に連続して加速されるものではなく,
速度を周期的に反転して実空間のある限られ
た範囲を往復運動し続ける振動現象。
Bloch
oscillation
2-6-12
量子閉じ込めシュ
タルク効果
量子井戸に垂直に電界を印加したとき,エキ
ントンによる吸収スペクトルの吸収端が低エ
ネルギー側にシフトする現象。
quantum
confined
Stark effect
30
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
2-6-13
二次元電子ガス
固体の伝導帯から真空準位までのエネルギーで
定義される,電子親和力の異なる物質の接合界
面(ヘテロ界面)における,界面に沿って,二
次元的に局在した電子系。磁界の印加によって,
電気伝導に量子ホール効果又はジュブニコフ・
ドハース効果をもたらす。
two-dimension
al electron
gas
2-6-14
コンプトン効果
X線を固体に照射したとき,自由で静止してい
るとみなされる電子との弾性散乱によって,照
射X線よりも波長の長い散乱X線が生じる効
果。
備考 光の粒子説によって説明され,照射X
線のエネルギー及び運動量の一部が
電子に与えられ,残りが散乱X線と
なる。
Compton
effect
393-03-22
2-6-15
量子効率(半導体
発光・受光素子
の)
単位時間当たりの,入出力にかかわるキャリヤ
数と光子数との比。 発光の場合は入力されたキ
ャリヤ数に対する出力光の光子数の比。受光の
場合は,入力した光の光子数に対する出力され
たキャリヤ数の比。
quantum
efficiency (of
semiconductor
luminescent
devices and
optical
receivers)
531-44-20,
731-06-34,
845-05-67
7) 放射線
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
2-7-1
α線
α壊変を行う放射性核種から放出されるヘリウ
ム-4の原子核の粒子線で,+ 2の電荷をもつ。
alpha
radiation,
alpha rays
393-02-06,
881-02-66
2-7-2
β線
原子核から放出される陰電子及び陽電子の流
れ。
beta radiation,
beta rays
393-02-07,
881-02-60
2-7-3
γ線
原子核のエネルギー転移に際して放射される波
長の短い電磁波をいい,高エネルギーの光子で
ある。
gamma
radiation,
gamma rays
393-02-08
放射,
881-02-17
2-7-4
放射線
放射性崩壊によって物質から放射されるα線,β
線などの粒子線及びX線,γ線などの電磁波の
総称。広義には,すべての電磁波及び粒子線を
指す。
radiation
393-02-01,
702-02-06,
841-01-50,
845-01-01
(electromagnetic
) radiation,
881-02-01
31
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
2-7-5
宇宙線
宇宙空間から地球に降り注いでいる高エネルギ
ーの粒子線及び電磁波の総称。
cosmic
radiation,
cosmic ray
393-02-11
2-7-6
中性子線
中性子の流れ。
neutron ray
2-7-7
放射能
核種が自発的に放射線を出して放射性壊変をす
る性質。
radioactivity
393-02-26
2-7-8
照射(線量)
X線又はγ線の電離能力に基づいて測られる放
射線の量。X線,γ線の照射によって質量dmの
空気中で放出された二次電子などが空気中で完
全に阻止されて生成される正又は負の電荷をも
つイオンの総電荷量の絶対値dQとするとき,
照射線量は,
dm
dQ
X=
で与えられる。
exposure
393-04-62
exposure,
照射,
881-12-29
2-7-9
吸収線量
物質に実際に吸収される単位質量当たりの放射
線のエネルギー量。
参考 単位は Gy(グレイ)で,1 (Gy) は,
1 (J ·kg-1)に相当する。
absorbed dose
393-04-69,
881-12-06
c) 固体の基本的性質
1) 電気的性質
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
3-1-1
輸送現象
粒子のエネルギー,運動量,物質などの輸送
とそれに関連した現象の総称。半導体におい
ては,キャリヤの移動によって,生じる電荷
の輸送(電気伝導),熱の輸送(熱伝導)など
を指す。
transport
phenomenon
3-1-2
電気伝導
物質に外部電界を印加することによって,電
荷が移動して電流が流れる現象。 電荷を運ぶ
キャリヤの種類に応じて,電子伝導,正孔伝
導又はイオン伝導という。
electric
conduction
3-1-3
導電率,
(電気)伝導率,
(電気)伝導度
物質の電流の流れやすさを表す尺度で,単位
電界を印加したときに流れる電流密度。 電流
密度をj,電界をE,導電率をσとするとオ
ームの法則が成り立つ範囲では
E
j/
=
σ
と
なる。単位は(S/m)。
conductivity
121-12-03
32
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
3-1-4
コンダクタンス
物体の電流の流れやすさを表す量で,単位電
圧を印加したときに流れる電流。
GV
I=
(I :
電流,V :電圧,G : コンダクタンス)でG
の単位は,
A/V
S=
。 物体の形状に依存し,
一様な断面 A,長さl,導電率 σの物体では,
l
A
G
/
σ
=
。
conductance
131-01-14
3-1-5
抵抗率,
比抵抗
物体の電流の流れ難さを表す尺度で,導電率
の逆数。 単位は(Ωm)。
resistivity,
specific
resistance
121-12-04
3-1-6
抵抗
物体の電流の流れ難さを表す量で,コンダク
タンスの逆数。 単位(Ω=1/S) 。
resistance
131-01-13
3-1-7
シート抵抗
厚さの薄いシート状の物体の面に平行な方向
の電流の流れ難さを表す量で,正方形のシー
トの相対する辺の間の抵抗。 単位 はΩであ
るが,抵抗と区別するためにΩ/□ と書くこと
もある。 厚さdのシートが 抵抗率ρの一様
な物質からなるとき,シート抵抗 はρs=ρ/d
で表される。
sheet
resistance
3-1-8
広がり抵抗
径の小さな金属線を試料面に接触させたとき
の抵抗。金属細線から試料への電流通路の広
がりの形状が広がり抵抗に関係し,接触部の
金属線の径,接触形状及び試料の抵抗率で決
まる。
備考 接触部が円形平面(半径 a)で試
料の厚さがaに比べて十分大きい
場合,広がり抵抗RsはRs=ρ/4aで与
えられる。ここにρは接触部近辺の
平均抵抗率である。
spreading
resistance
3-1-9
集中抵抗
小さな接触面を電流が流れるときに,電流通
路が狭い部分に制限されることによって生じ
る抵抗。
constriction
resistance
3-1-10
接触抵抗
二つの物体を接触させたときに,2物体間に生
じる抵抗。2物体の材料特性のほか,接触形状,
接触面積及び界面介在物に依存する。
contact
resistance
581-03-11
3-1-11
ジュール熱
物体に電流が流れるときに,その抵抗によっ
て発生する熱。発生する熱量は,電流の2乗,
及び物体の抵抗に比例し,これをジュールの
法則という。
Joule heat
(815-06-40
Joule heating,
ジュール発熱)
3-1-12
電気双極子
有限の距離にある正負の電荷の対。 距離 λ
離れた±qの電荷による双極子において,
λ
q
=
μ
を双極子モーメントという。
electric dipole
121-11-33
33
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
3-1-13
ショットキー効果
金属と絶縁体又は半導体との間に高電界を印
加したときに,鏡像力の効果で金属から絶縁
体又は半導体へのエネルギー障壁が減少する
効果,又は,その結果,熱電子放出及び 光電
子放出が増加する効果。ショットキーが,熱
電子放出において陽極プレート電圧の増加に
よって飽和電流が増加することを発見したの
にちなんで,名付けられた。
Schottky effect
531-12-12
3-1-14
ホール効果
物質に電流を流し,電流に垂直に磁界を印加
したとき,両者に垂直な方向に起電力が現れ
る現象。 電流密度をj,磁界の磁束密度をB,
発生する横方向電界を
H
Eとすると,
)
(
H
H
B
j
R
E
×
=
x軸方向に長さ方向の軸をもつ直方体形状の
試料のx軸の正方向に一様な電流IXを流し,y
軸の正方向に一様な磁束密度By がある場合
には,z軸の正方向に
y
y
x
H
H
λ
B
I
R
V
×
=
の電圧が現れる。ここに,λyは,y方向(磁
界方向)の試料の幅(厚さ)である。
H
Rを
ホール係数 [SI 単位: (m3/C)],z 方向に現れる
電圧をホール電圧という。P形半導体の場合
)
pe
/(
R
1
H=
,N形の半導体の場合
)
ne
/(
R
1
H
−
=
(p : 正孔密度,n : 電子密度,
e : 電気素量)となる。
Hall effect
121-12-81,
521-09-01
3-1-15
ホール移動度
ホール効果の測定から求めた移動度で,電気
伝導度をσ,ホール係数を
H
Rとき次式で与え
られる。
H
H
R
σ
μ=
Hall mobility
521-09-04
3-1-16
磁気抵抗(半導体,
金属における)
半導体又は金属の電気抵抗が磁界を印加した
ときに変化する量。変化量は,一般には正で
あるが,負のときは特に負磁気抵抗という。
magnetoresista
nce (in a
semiconductor
and a metal)
121-12-83
3-1-17
ランダウ準位
量子論で,直流磁界に垂直な面内の電子の量
子的準位。エネルギーは量子化され,次の式
で与えられる。
c
/
n
E
ω
η
)2
1
( +
=
,n: 整数
ここに,
c
ω:サイクロトロン角周波数
Landau level
34
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
3-1-18
固体プラズマ
固体中で,少なくとも一方が動くことのでき
る正及び負の荷電粒子対が,電気的にほぼ中
性で高密度で存在する系。金属や半導体中で
の電子とイオン,半導体中の電子と正孔など
の系が代表例である。個々の粒子の運動より
粒子集団の運動に着目するときに用いられる
用語。
solid-sate plasma
3-1-19
プラズモン
プラズマ振動を,量子論的に粒子的描像で表
したもの。
plasmon
3-1-20
ポーラロン
結晶内を運動する電子が,クーロン力によっ
て周囲の結晶格子に分極を起こし,それによ
る格子の変形を伴って運動する状態。 格子変
形によって電子のエネルギーバンド構造が変
形を受け,一般に電子の有効質量は大きくな
る。
polaron
3-1-21
なだれ(雪崩),
アバランシェ
1個の電荷が格子との衝突により多数のキャ
リヤに増える増倍現象。PN接合のなだれ(雪
崩)は,大きな逆バイアスが印加され接合の
空乏領域の高電界で加速され高エネルギーと
なったキャリヤが格子原子に衝突してイオン
化し,新たに電子,正孔対を発生する現象が
なだれ(雪崩)的に生じ,多数のキャリヤが
生成され,大きな電流が流れる。
avalanche
121-13-10
avalanche:
(electronic)
avalanche
電子なだれ
3-1-22
温かいキャリヤ
電界によって中程度に加速されたキャリヤ。
その移動度(μ)の電界(ε)依存性は,次の式で
表す。
)
1(
2
0
ε
β
μ
μ
−
=
。
ここに,
0
μ: 低電界での移動度
β: 定数。
warm carrier
3-1-23
熱いキャリヤ,
ホットキャリヤ
電界によって大きく加速され,そのキャリヤ
温度が格子温度より高いキャリヤ。その移動
度(μ)の電界(ε)依存性は,次の式で表す。
2
1
0
)
(
/
s
/
v
ε
μ
μ=
ここに,
s
v: 音速
0
μ: 低電界での移動度。
hot carrier
35
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
3-1-24
空間電荷制限電流
電流を運ぶキャリヤ自身による空間電荷が作
る電界のために,電極から空間に放出される
キャリヤの放出速度が制限されることで決ま
る電流。半導体においては,電極から比較的
高抵抗の半導体層に放出されるキャリヤによ
って生じる空間電荷によって空間電荷制限電
流が,熱電子管においては,熱陰極から真空
への電子放出によって生じる空間電荷によっ
て空間電荷制限電流が流れる。
space-charge
limited
current
3-1-25
サイクロトロン運
動
直流磁界中に,これに垂直に荷電粒子が入射
したときの,磁界に垂直な面内で起こる円運
動。 荷電粒子の電荷をq,質量をM,磁束
密度を B とすると,その角周波数
c
ω は,
M
/
qB
c=
ω
で与えられ,入射速度vに無関
係であるが,その半径(サイクロトロン半径)
c
c
/
v
r
ω
=
は,vに 比例して大きくなる。 角
周波数
c
ωで円運動する荷電粒子は,これと
同じ振動数で運動面内で振動する電磁波を共
鳴的に吸収する。この現象をサイクロトロン
共鳴という。
cyclotron
motion
(705-06-09
gyro-frequency:
cyclotron
frequency,
ジャイロ周波
数,
サイクロトロ
ン周波数)
3-1-26
クーロン遮へい
(蔽)
自由に運動のできる正負の荷電粒子からなる
系で,あるイオンのクーロン力がその回りの
電荷によって遮へい(蔽)されて,その中心
からある距離以上には及ぼされないこと。遮
へい(蔽)距離は,電荷密度の平方根に反比
例して短くなる。 電解質,ガスプラズマ及び
半導体プラズマの場合,デバイ長 (Debye
length) と呼び,金属プラズマの場合トーマ
ス・フェルミ遮へい(蔽)距離 (Thomas-Fermi
screening length) という。
Coulomb
screening
3-1-27
バリスティック伝
導
固体中で,キャリヤがフォノン,不純物など
との衝突をしないで運動することによって現
れる伝導。 通常の伝導に見られる光学フォノ
ンとの衝突によるキャリヤ速度の飽和がなく
なり,飽和速度以上のドリフト速度が得られ
る。
ballistic
conduction
3-1-28
不純物伝導
不純物を添加した半導体で,不純物原子に局
在する電子又は正孔が近くの不純物原子に
次々と移動することによって生じる伝導。不
純物濃度が高くなるとバンドギャップ内に不
純物バンドが形成され,そこをキャリヤが伝
導する。
impurity
conduction
36
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
3-1-29
モット遷移
非金属−金属遷移。半導体中の不純物伝導に
おいて,不純物濃度が少ないときには局在し
た不純物準位間の伝導でこれは活性化エネル
ギーをもつ非金属伝導であるが,不純物濃度
を増して不純物バンドを形成すると,活性化
エネルギーをもたない金属的伝導になる。
Mott transition
3-1-30
ホッピング伝導
バンドギャップ内の孤立した状態間を電子が
熱的励起によってホッピングして移動するこ
とによって生じる電気伝導。
hopping
conduction
3-1-31
負性抵抗
電圧が増加すると電流が減少する特性を示す
負の微分抵抗。
参考 例として,GaAs のドリフト速度が
高電界で電界の増加とともに減少
する結果,この負性抵抗を示す。
negative
resistance
521-05-03
negative
differential
resistance
region
3-1-32
高電界ドメイン
固体中で電荷分布のずれによって生じた高電
界領域。 負性抵抗を示す材料では,いったん,
電子分布のずれが形成されると,それが成長
し,陰極から陽極へと伝搬する。
high field
domain
3-1-33
変形ポテンシャル
結晶の圧縮又は膨張による体積変化,格子振
動などの原因で格子定数が変化した際に変形
したポテンシャル。エネルギーバンド構造が
変化しバンド端のポテンシャルエネルギーが
変化する。半導体中の伝導電子のフォノン散
乱に関して,有効質量近似での変形ポテンシ
ャル近似がよい結果を与える。
deformation
potential
3-1-34
飽和ドリフト速度
低電界では電界に比例して増加するキャリヤ
のドリフト速度が,高電界ではキャリヤが光
学フォノンとの散乱によってエネルギーを失
うために飽和するときの速度。
saturated drift
velocity
2) 光学的性質
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
3-2-1
バンド内遷移
同じバンド内での電子の遷移。
intraband
transition
3-2-2
着色中心
イオン結晶の欠陥に電子又は正孔が捕獲され
てある特定の波長の光の吸収を伴う構造。 陰
イオンの空孔に電子が捕らえられ,一般に可視
部に吸収帯があるものをF中心という。F 中心
による吸収帯をF 帯という。
color center
37
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
3-2-5
光電効果
物質が光を吸収して自由電子を放出する現象。
生じた自由電子を光電子というが,これが,物
質内に存在して電気伝導度を増したり,起電力
を発生させる現象を内部光電効果,光電子が物
質の外に放出される現象を外部光電効果とい
う。単に,光電効果というときは後者を指す。
photoelectric
effect
393-03-24,
521-01-20,
531-44-01,
731-01-61,
881-02-84,
121-12-93
photoelectronic
effect,
531-44-02,
731-01-63
photo-emissive
effect,
external
photoelectric
effect
3-2-6
光弾性
弾性体に変形を与えると複屈折などの性質を
示して光学的異方体となる性質。
photoelasticity
3-2-7
光電流
電界を印加した物質又は光検出器に光を照射
したときに,外部回路に流れる電流。
photocurrent
531-44-05,
731-06-32
(845-05-52
MOD),
845-05-52
3-2-8
暗電流
光電流に対して,光を照射していないときに流
れる電流。
dark current
531-44-06,
731-06-33
(845-05-53
MOD),
845-05-53
3-2-9
フォトンドラッグ
半導体内のキャリヤが光の運動量によって引
きずられて電流を誘起する現象。電流の方向は
光の偏波特性に強く依存し,光の進行方向だけ
でなく垂直方向にも電流は誘起される。
photon drag
3-2-10
フォノンドラッグ
金属又は半導体内で,フォノンが電子に引きず
られて流れることによって熱電能に寄与する
現象。低温における半導体で特に著しい。
phonon drag
3-2-11
光起電力効果
物質に光子が吸収されることによって,内部に
起電力が発生する現象。半導体PN接合及び整
流性を示す金属/半導体接合においては,半導
体のバンドギャップ以上のエネルギーの光子
の吸収によって発生した電子と正孔とが分離
されることによって起電力が発生する。
photovoltaic
effect
121-12-91,
521-01-21,
531-44-33,
731-01-64
3-2-12
バンド間遷移
異なったバンド間での電子の遷移。
interband
transition
38
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
3-2-15
励起子,
エキシトン
価電子帯の正孔との伝導帯の電子とがそのク
ーロン力によって束縛状態を作っているよう
な電子・正孔対。
exciton
3-2-16
モット・ワニエ励
起子,
モット・ワニエエ
キシトン
電子と正孔との束縛が弱い励起子で,その波動
関数の広がりが格子間隔よりずっと広いもの。
半導体中に主に見られる。弱く束縛された励起
子ともいう。
Mott-Wannier
exciton
3-2-17
フレンケル励起
子,
フレンケルエキシ
トン
電子と正孔との束縛が強い励起子で,電子と正
孔とがともに原子又はそのごく近傍に局在す
るもの。イオン結晶及び 分子性結晶に主に見
られる。強く束縛された励起子ともいう。
Frenkel
exciton
3-2-18
遷移
量子力学系が,ある定常状態から他の定常状態
に移る現象。
transition
3-2-19
禁止遷移
パウリの排他原理で禁止される遷移。
forbidden
transition
3-2-20
許容遷移
パウリの排他原理で許容される遷移。
allowed
transition
3-2-21
光学遷移
光子の吸収又は放出を伴う遷移。
optical
transition
3-2-22
発光遷移
高いエネルギー状態から低いエネルギー状態
へ遷移する際に,光子の放出を伴う遷移。
radiative
transition
3-2-23
非発光遷移
高いエネルギー状態から低いエネルギー状態
へ遷移する際に,光子の放出を伴わない遷移。
その放出されるエネルギーは,電子,フォノン
の運動エネルギーなどとして与えられる。
nonradiative
transition
3-2-24
発光,
ルミネセンス
外部からの熱以外の励起によって高いエネル
ギー状態に励起された物質が,低いエネルギー
状態へと光学遷移するときに生じる光の放出
現象又はその放出光。
備考 蛍光とりん光とに分類されるが,そ
の定義は明確でない。 蛍光を,発光
と同義に用いることが多い。
luminescence
845-04-18,
881-02-80
3-2-25
発光中心
発光のもととなる不純物原子,欠陥などの点欠
陥。
emission
center
39
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
3-2-26
蛍光,
フルオレセンス
発光(ルミネセンス)の一種で,本来は,励起
を遮断した後に残光がないと知覚される発光
をいい,残光があると知覚されるりん光と区別
される。現在では,発光(ルミネセンス)と同
義で使われることが多い。
参考 実際には,蛍光とりん光のどちらに
おいても残光時間は存在し,残光時
間の長短でおよその区別をする考え
もあるが,その境界はあいまいであ
り,むしろ,発光の機構の違いによ
ってりん光と区別することが多い。
fluorescence
394-18-84,
845-04-20,
881-02-80
3-2-27
りん光,
フォスフォレセン
ス
発光(ルミネセンス)の一種で,本来は,励起
を遮断した後に残光があると知覚される発光。
参考 3-2-26蛍光参照。
phosphorescen
ce
394-18-84,
845-04-23,
881-02-80
3-2-28
フォトルミネセン
ス
発光(ルミネセンス)の一種で,励起が光のエ
ネルギーによって行われるもの。
photo-
luminescence
845-04-19
3-2-29
エレクトロルミネ
センス
発光(ルミネセンス)の一種で,広義には,電
気的に発光体を励起して生じる発光を指し,電
界で加速された電子との衝突によって発光中
心が励起され,又は衝突電離で発生された 電
子・正孔対の再結合で生じる電界発光と,PN
接合への少数キャリヤの注入によって生じる
電子・正孔対の再結合とで発光する電流注入発
光。
参考 狭義には,電界発光を意味すること
が多い。
electro-
luminescence
731-01-60,
845-04-24
3-2-30
カソードルミネセ
ンス
発光(ルミネセンス)の一種で,励起が電子ビ
ームのエネルギーで行われるもの。
cathode-
luminescence
845-04-25
3-2-31
励起子吸収
励起子準位は伝導帯の下端から束縛エネルギ
ー[数 (meV)]だけ下のエネルギーギャップ内に
生じるが,価電子帯の上端からこの励起子準位
に電子が遷移することによる光の吸収。
exciton
absorption
3-2-32
自由キャリヤ吸収
伝導帯内の電子のバンド内遷移による光の吸
収。 普通,赤外領域に吸収スペクトルがある。
free carrier
absorption
3-2-33
非線形分極
誘電体や磁性体に電界,磁界,又はその他の力
が働くときに生じる電気分極や磁化において,
その力に比例せず 2乗以上の高次の依存性を
示す分極。
nonlinear
polarization
3-2-34
光整流作用
非線形光学媒質に振動する光電界を印加する
ときに直流の分極が生じる効果。
optical
rectification
3-2-35
高調波
ある基本周波数の電磁界の波を非線形媒質に
加えたときに発生するその基本周波数の整数
倍の周波数の電磁界の波。
harmonics
3-2-36
複屈折
光学的異方性物質に光が入射して屈折すると
きに二つの屈折光が現れる現象。単結晶で,等
方的媒質と同様にスネルの法則を満たして屈
折する光を常光線,もう一方を異常光線とい
う。
double
refraction,
birefringence
731-03-27
40
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
3-2-37
光電子増倍
物体に光を照射して生じた自由電子(キャリ
ヤ)の増倍。光電効果によって物体の外に放出
された光電子を 二次電子増倍させるもの,半
導体の逆バイアスされたPN接合で光吸収で生
じたキャリヤをアバランシェ増倍させるもの
とがある。
photo-
multiplication
3-2-38
デンバー効果
半導体に光を局所的に照射することによって
半導体内に電子・正孔対の濃度分布を生じさせ
るときに,その拡散係数の違いによって両者の
濃度分布に違いを生じ,その結果発生する空間
電荷分布によって定常状態で起電力が発生す
る現象。
備考 半導体表面に光を照射し,表面近傍
に電子・正孔対を発生させる場合に
は,深さ方向に電子,正孔の異なっ
た濃度分布が生じ,深さ方向に起電
力が発生する。
Dember effect
3) 磁気的性質
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
3-3-1
磁性
物質に外部から磁界をかけると磁界とその構
成要素の磁気モーメントとの相互作用によっ
て,その物質全体としての特有の磁気的な性
質を示す現象。
備考 磁性を示す物質は反磁性体,常磁性
体,強磁性体,反強磁性体などに分
類できる。
magnetism
121-11-75
磁気: 磁性
3-3-2
磁化
磁気的な分極で,特に磁性体の分極によって
生じた単位体積当たりの磁気モーメント。磁
気モーメントをM,磁束密度を B,磁界の強
さを H ,真空の透磁率μ0とすると,
B =μ0 H + M
の関係を満足する。
magnetization
121-11-52
3-3-3
強磁性
強い磁性の総称をいい,フェロ磁性とフェリ
磁性がこの分類に入る。外部磁界が存在しな
くても,その内部でスピンが規則的に配列す
るため,磁化を形成する。
ferromagnet-
ism
121-12-41
3-3-4
フェロ磁性
強磁性の一種で,スピンが平行に配列し,強
い自発磁化を形成する性質。
ferromagnet-
ism
121-12-41
3-3-5
フェリ磁性
強磁性の一種で,スピンが反平行に配列して
いるが,プラス向きのスピンの方がマイナス
向きのスピンよりも数及び/又は大きさについ
て優越しているため,差引き自発磁化を生じ
る性質。
ferrimagnetism
121-12-43
41
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
3-3-6
反強磁性
フェリ磁性と同様に,スピンが反平行に配列
しているが,それが互いに完全に打ち消しあ
って強い磁性が現れない場合の磁性。
antiferromagn-
etism
121-12-42
3-3-7
弱磁性
常磁性及び反磁性を指し,電子スピン間の相
互作用が弱くスピンの自発的配向がないため
に,弱く磁化される性質。
feeble
magnetism
3-3-8
常磁性
無秩序に配列した磁気モーメントが,外部磁
界を加えると熱運動に抗してわずかに磁界の
方向に傾き,全体として磁界方向に弱く磁化
される性質。
paramagnetism
121-12-40
3-3-9
反磁性
磁界を加えると磁界と反対方向に磁化される
磁性をいい,磁界による電子の軌道運動の変
化が,磁界と反対方向の磁気モーメントを生
じるために起こる。
diamagnetism
121-12-38
3-3-10
メタ磁性
反強磁性体,常磁性体などが,弱い磁界のも
とでは磁化は磁界に比例するが,ある強さ以
上の磁界では急激に磁化が増大して,強磁性
体と同程度の飽和磁化を生じる現象。
metamagnetism
121-12-50
3-3-11
磁気飽和
磁界による強磁性体又はフェリ磁性体の磁気
分極若しくは磁化が最大値に達して,磁界を
それ以上大きくしても変化しない状態。
magnetic
saturation
121-12-59
3-3-12
飽和磁化
強磁性体を外部磁界によって飽和にまで磁化
したときの自発磁化の値。
saturation
magnetization
221-01-04
3-3-13
残留磁化
磁性体に作用する磁界をゼロにしたときに残
る磁化。
remanent
magnetization,
residual
magnetization
121-12-65
remanent
(magnetic)
polarization,
121-12-66
残留磁気,
221-02-40
3-3-14
自発磁化
強磁性体が,外部磁界を受けない状態で形成
している磁化。また,反磁性体では,その部
分格子がもつ磁化をいう。
spontaneous
magnetization
221-02-41
3-3-15
磁化過程
磁性体に磁界を作用させて磁化を増加させる
過程。
magnetization
process
3-3-16
磁化容易軸
強磁性体の中で磁気異方性エネルギーが極小
になり,自発磁化が安定に向く方向。
Axis of easy
magnetization
3-3-17
磁荷,
磁気量
磁石の磁極が互いに及ぼす磁気力の大きさを
基に定義した磁気的な量。磁荷q とq' との間
には クーロン力F が働き,次の式で表す。
2
r
'q q
F
0
4πμ
=
ここに,r :磁荷q とq'間の距離
0
μ:真空の透磁率。
magnetic
charge,
quantity of
magnetism
42
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
3-3-18
磁極
磁荷の集中した場所。 磁極には正負の別があ
り,一個の磁石の中の全磁気量は0 であるか
ら,磁石には必ず正負両極の磁極が存在する。
magnetic poles
3-3-19
磁界,
磁場
磁石相互間,電流相互間,又は磁石と電流と
の間に働く力の場。磁束密度 B ,磁界の強さ
H ,透磁率μとし,B =μH の関係式で表せる。
magnetic field
121-11-69,
221-01-01
3-3-20
磁化率
磁化 M と磁界 H との関係 M =κH を表す
κ のこと。等方性物質ではスカラー,異方性
物質ではテンソルである。
magnetic
susceptibility
121-12-37,
815-08-11
3-3-21
初期磁化率
磁化曲線が直線でない強磁性体などの磁性体
の磁化してない状態に小さな外部磁界を加え
るとき,原点付近で磁化 M と磁界 H とは比
例関係 M =χH を示ときのχ。
initial
susceptibility
221-03-19
3-3-22
磁束密度
運動している荷電粒子(電荷e ,速度 v )は,
磁界の中で e (v x B ) の 形で表せる力を
受けるときに決まるベクトル量 B。
magnetic flux
density
121-11-19
3-3-23
磁束
磁場中のある一定面積を通りぬける磁力線の
垂直成分を足し合わせたもの。任意の(開い
た)曲面S の各点における法線方向の単位ベ
クトルをn ,磁束密度をB とするとき,
Φ= ∫S B · n dS を曲面Sを貫く磁束をいう。
magnetic flux
121-11-21
3-3-24
透磁率
磁束密度Bと磁界 H との関係式 B =μ H に
おけるμ。
(absolute)
permeability
121-11-14
magnetic
constant:
permeability of
vacuum,
121-12-28
透磁率,
705-03-14
absolute
permeability of
vacuum:
magnetic
constant,
705-03-15
3-3-25
初期透磁率
磁化曲線が直線でない強磁性体などの磁性体
の磁化してない状態に小さな外部磁界を加え
るとき,始め,磁束密度 B と磁界 H とは比
例関係 B =μH を示すが,このときのμ。
initial
permeability
221-03-09
3-3-26
渦電流
物質内の閉じたパスを流れる誘導電流。時間
的に変化する磁束によって導体内部に電磁誘
導によって環状の電圧が誘導され,その結果
渦電流が生じる。
eddy currents
121-12-32,
815-04-53
3-3-27
起磁力
閉曲線に沿って磁界を線積分した値。
magneto-
motive force
121-11-60
磁気起電力
43
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
3-3-28
磁気異方性
常磁性体の磁化率,強磁性体の磁化,又は,
反強磁性体の部分格子の磁化が結晶格子の対
称性を反映して,結晶軸に関して方向依存性
をもつときの性質。
magnetic
anisotropy
221-01-08
3-3-29
磁化曲線,
磁気ヒステリシス
曲線
磁性体の磁化の強さ M と磁界の強さ H と
の関係を表す曲線。普通,強磁性体の磁化曲
線を指す。一般にヒステリシスを示し,磁化
の強さが磁界の強さによって一義的に定まら
ず,以前の磁化状態に関係する。
magnetization
curve,
magnetic
hysteresis
curve
121-12-58
magnetizing
curve,
磁化曲線,
121-12-61
(magnetization)
hysteresis
loop,
ヒステリシス
曲線
3-3-30
保磁力
磁気飽和状態の強磁性体に磁化に逆向きの磁
界を作用させて,磁束密度,磁気分極,又は
磁化をゼロにするために必要な磁界の強さ。
coercive
force,
coercive
(magnetic)
field strength
121-12-68,
221-02-35
3-3-31
磁区
強磁性体の内部で,原子の磁気モーメントが
平行にそろって,自発磁化が一定の方向をと
っている小領域。
magnetic
domain,
(Weiss)
domain
121-12-53
3-3-32
磁壁
強磁性体の磁区の間の境界を指し,その境界
領域で磁気モーメントの方向がある磁区内の
方向から隣の磁区内の方向に次第に変化する
こと。
domain wall
212-02-44
(121-12-54)
3-3-33
磁気回路
電流回路との類推関係で考え,磁束の集中す
る強磁性体を導体とみて,その回路において
磁束を電流,起磁力を起電力,磁気抵抗を電
気抵抗に対比したもの。,オームの法則やキル
ヒホッフの法則が成立する。
magnetic
circuit
131-01-45
3-3-34
磁気抵抗 (磁気回
路の)
磁気回路において電気抵抗に相当する量をい
い,リラクタンス(reluctance)ともいう。
magnetic
resistance
(of a
magnetic
circuit)
3-3-35
磁気転移
物質の相転移のうち,磁気的状態間の相転移
をいい,磁気変態ともいう。
magnetic
transition
3-3-36
磁気余効
磁性体の磁化が外部磁界の変化にただちに追
従できず,時間的遅れが生じる現象。
magnetic
after-effect
212-02-58
3-3-37
磁気共鳴
磁気モーメントをもつ粒子が静磁界中にある
場合,振動磁界又は電磁波を印加したときに
生じる共鳴現象。
magnetic
resonance
44
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
3-3-38
磁気緩和
外部磁界のもとで熱平衡状態にある物質の磁
気モーメント系に対して,外部磁界を急に変
えたときに,系が新しい熱平衡に達するまで
に時間的遅れが起こる現象。
magnetic
relaxation
212-02-57
3-3-39
キュリー温度
物質の強磁性と非強磁性との間の遷移を起こ
す温度。
Curie
temperature
121-12-51,
841-01-41
Curie point
3-3-40
キュリーの法則
常磁性体の磁化率 χが絶対温度 T に反比例
するという法則をいい,χ=C/T と表せる。こ
こに,C はキュリー定数である。
Curie's law
3-3-41
キュリー・ワイス
の法則
強磁性体,反強磁性体などが磁気転移温度以
上で示す常磁性の磁化率
絶対温度 T との
間に χ=C/(T-Θ) の関係が成立するという法
則。ここに,C はキュリー定数,Θ は漸近キ
ュリー点である。
Curie-Weiss'
law
3-3-42
ネール温度
低温で反強磁性である磁性体が高温で常磁性
となるときの磁気転移温度。
Néel
temperature
121-12-52
3-3-43
核磁気共鳴
原子核のスピンによる磁気共鳴をいい,核ス
ピン共鳴ともよばれる。
nuclear
magnetic
resonance
891-04-59,
393-03-47
3-3-44
異方性磁界
磁気異方性の効果と等価な磁界。
anisotropy
magnetic
field
3-3-45
磁化困難軸
自発磁化の不安定方向。
axis of hard
magnetization
3-3-46
バルクハウゼン効
果
磁界を連続的に増加していくときに,強磁性
体が磁壁の不連続移動に伴い磁化するため
に,磁束密度が不連続に変化すること。 電気
回路ではこの効果によって雑音が生じる。
Barkhausen
effect,
Barkhausen
jump
212-02-47
3-3-47
電流磁気効果
導体中の電流が磁界によって影響を受ける現
象の総称をいい,ホール効果,磁気抵抗効果
などがある。
galvanomagnetic
effect
45
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
3-3-48
磁気定数,
真空透磁率
電磁気的量と機械的量とを結びつけるスカラ
ー定数
0
μをいい,
d
|
I
I
|
F
2
1
0
2
=
π
μ
λ
の関係式から得られる。 ここに,
λ/
F
は,
真空中に距離d の間隔で置かれた,断面積が
非常に小さく,それぞれI 1,I 2 の電流が流れ
る二本の平行な直線導体の間に働く単位長さ
当たりの力。
備考1. 真空中では磁気定数と磁界の強
さの積は磁束密度に等しい。
B = μ0 H
2. 磁気定数は,電気定数(真空の誘
電率) ε0,真空中の光速 c0 と
1
2
0
0
0
c
=
ε
μ
の関係がある。
3. 磁気定数
0
μの値は正確に
4π×10-7 (m kg s-2 A-2 )= 1.256
637 061 4… (μH/m) に等しい。
magnetic
constant,
permeability
of vacuum
121-11-14
magnetic
constant:
permeability
of vacuum,
705-03-14
magnetic
constant;
absolute
permeability of
vacuum
3-3-49
磁気双極子モーメ
ント
磁気量の双極子モーメント,すなわち磁気双
極子の強さを表す量。厳密には磁気双極子モ
ーメント(magnetic dipole moment)という。磁性
体の磁気モーメント m は単位体積当たりの
磁化 M の体積積分
m = ∫ M dV
で表される。 磁性体を,これに等価な電流 I
が流れる微小電流ループ(面積ベクトル S )
で表すとき, m = I S の関係がある。
備考
j = μ0 m
を,磁気モーメントと定義することもある。
magnetic
moment
121-11-55,
221-01-07
4) 誘電的性質
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
3-4-1
分極
電荷又は磁荷の分布が変化して双極子モーメン
トが変化する現象,又は生じた双極子モーメン
トの単位体積当たりの値。
備考 偏極ともいう。 電気の場合は誘電分
極又は電気分極,磁気の場合は磁気
分極又は磁化という。
polarization
121-11-37
electric
polarization,
電気分極,
121-11-54
magnetic
polarization,
46
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
磁気分極
3-4-2
分極率
電界の中におかれた原子又は分子に誘起される
双極子モーメントp と電界の強さEとの比で,
一般的には p =α Eで定義されるαをいう。
polarizability
3-4-3
分極電荷
誘電分極 P によって生じる電荷をいう。
polarized
charge
3-4-4
分極電流
誘電分極 P の時間的変化による局所的な電流。 polarization
current
3-4-5
誘電分極
電気的な分極で,電気分極ともいう。特に誘電
体(絶縁体)の分極によって生じた単位体積当
たりの双極子モーメント P を指すことが多く,
電界をE ,電束密度をD とすると,次の式で
表す。
P = D ‒ε0E
dielectric
polarization
3-4-6
電束密度
強さEの電界が誘電体に作用するとき,誘電体
の分極をPとすれば
D = ε0 E + P
で与えられる D を電束密度という。ただし,ε0
は真空の誘電率。
electric flux
density
121-11-40
3-4-7
変位電流
電束密度の時間的変化に起因して流れると考え
た電流。 電束密度を D ,時間を t とすると,
変位電流密度 j は,次の式で表す。
t
D
j
∂
∂
=
参考 真電荷の移動による電流密度と変位
電流密度とを加えた電流密度ベクト
ルの発散はゼロとなり,わき出しの
ない場を作り,常に閉じている。
displacement
current
121-11-43,
(121-11-42
変位電流密度)
3-4-8
自発分極
電界をかけない状態で誘電体が形成している誘
電分極をいう。
spontaneous
polarization
3-4-9
電磁誘導
一つの閉じた回路(二次回路)の近くで,電流
の流れている他の回路(一次回路)又は磁石を
動かせば 二次回路に電流が流れる現象 。
electromagneti
c induction
121-11-30
3-4-10
誘電率
電束密度 D と電界 E との関係D = ε E を与
えるεをいう。
(absolute)
permittivity,
dielectric
constant
121-12-12,
212-01-21
(121-01-36)
705-03-32
3-4-11
誘電分散
誘電体にある周波数以上の交流電界を印加する
とき,誘電体双極子の回転又は反転が電界の変
化に追従できず,そのために誘電率の減少が生
じる現象。
dielectric
dispersion
3-4-12
誘電吸収
誘電体にある周波数以上の交流電界が印加され
て誘電分散を生じたとき,周波数が高くなった
ため誘電体に吸収されるエネルギーが大きくな
る。このエネルギー吸収を,誘電吸収という。
dielectric
absorption
47
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
3-4-13
誘電余効
誘電体の誘電分極が,外部電界の変化に追従で
きずに時間的遅れをもつ現象。
dielectric
after-effect
3-4-14
誘電損失
誘電体に交流電界を加えたときにエネルギーが
熱として失われる現象,又はその量をいう。
dielectric loss
121-12-11,
212-01-25,
841-06-02
3-4-15
誘電緩和
誘電体中の電荷が中和して消失する現象。
dielectric
relaxation
3-4-16
誘電緩和時間
誘電体中に発生した電荷が中和して消失するま
での時間。
dielectric
relaxation
time
5) その他(熱的,応力的及び複合的)
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
3-5-1
熱容量
物体の温度を単位温度だけ上昇させるのに必要
な熱量。一様な物体では,熱容量は比熱と質量
との積で得られる。
heat capacity
(841-01-32)
3-5-2
比熱
単位質量の物質の温度を,単位温度だけ上げる
のに必要な熱量。
specific heat
841-01-33
specific
heat
capacity
3-5-3
熱伝導
物質の移動なしに熱が物体の高温部から低温部
へ移動する現象。
heat
conduction,
thermal
conduction
841-01-43
thermal
conduction
3-5-4
弾性率
弾性体の応力とひずみとの比を表す定数。ヤン
グ率,剛性率,体積弾性率などがある。
modulus of
elasticity
3-5-5
ヤング率
弾性率の一種で,伸び弾性率ともいう。一様な
太さの棒の一端を固定し,他端を軸方向に引く
(又は押す)場合,棒の断面に働く応力をT,
単位長さ当たりの伸び(又は縮み)をεとすれ
ば,比例限界内で T = E ε という関係が成り立
つ。 この比例定数 E は物質固有の定数で,こ
れをヤング率という。
Young's
modulus
3-5-6
剛性率
弾性率の一種。ずれ弾性率または剪(せん)断
弾性率ともいう。弾性体の正四角柱の底面とそ
の平行面とに大きさτでその方向が反対のずれ
shear modulus
48
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
応力を働かせると,断面が頂角 90°±Θ のひし
形にひずみ,比例限界内で τ= nΘという比例関
係が成り立つ。 その係数 n は物質固有の定数
で,これを剛性率という。
3-5-7
ポアソン比
一様な太さの棒の両端に力を加えて引き伸ばす
(又は押し縮める)と,棒の横方向には逆に縮
む(又は伸びる)が,棒の軸方向の単位長さ当
たりの伸びをα,横方向の単位長さ当たりの縮
みをβとするとき,σ =β/αは弾性の比例限界内
で物質固有の定数であり,このσを,ポアソン
比という。
Poisson's ratio
3-5-8
降伏応力
物体に弾性限界を越えて応力が働くとき,応力
の増加がほとんどないままで塑性ひずみが急激
に増加するとき(これを,降伏という。)の応力
の大きさ。降伏点ともいう。
yield stress
3-5-9
熱膨張率
圧力一定のもとで物体が熱膨張するとき,その
比率の温度変化に対する割合を示す量。
thermal
expansion
coefficient
3-5-10
熱応力
2種類以上の材料がある温度で応力がない状態
で密着して接合している場合に温度を変化させ
たときに,各材料の熱膨張係数が異なるために
発生する応力。
thermal stress
3-5-11
熱電効果
金属又は半導体中の熱の流れと電流とが相互に
影響を及ぼし合う効果の総称。ゼーベック効果,
ペルチェ効果,トムソン効果などがある。
thermoelectric
effect
(121-12-73
thermoelectric,
熱電
)
3-5-12
ゼーベック効果
接触電位差が温度に依存する熱電効果。
備考 異なる二つの物質から成る閉回路で
は,二つの接合部の温度が異なると,
ゼーベック効果によって電流が生じ
る。
Seebeck effect
121-12-79
3-5-13
ペルチェ効果
異種の導体(又は半導体)の接点に電流を通す
とき,接点でジュール熱以外に熱の発生又は吸
収が起こる現象。
Peltier effect
121-12-80
3-5-14
焦電効果
結晶の一部を熱したときに,表面に電荷を生じ
る現象。
pyroelectric
effect
3-5-15
ピエゾ効果,
圧電効果
物質に外力を加えて応力変形を与えると誘電分
極を生ずる現象(一次ピエゾ効果),又は逆に,
外部電界によって誘電分極を生じさせると,物
質に外部電界に比例した機械的変形を生じる現
象(二次ピエゾ効果)。
piezoelectric
effect
121-12-86
3-5-16
電気ひずみ
誘電体に電界をかけたときにわずかな変形(ひ
ずみ)を生ずる現象又はその変形をいう。圧電
気の逆効果によるものは電界Eの1次関数であ
るが,これを除いてE 2 に比例するものだけを
電気ひずみということもある。
備考 電歪(でんわい)ともいう。
electrostriction
121-12-26
3-5-17
磁気ひずみ
強磁性体に外部から磁界を印加して磁化すると
き弾性ひずみが発生する現象又はそれによる磁
magnetostric-
tion
121-12-75
49
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
性体形状の可逆的変形。 強磁性では磁区が自然
磁化の方向に 10-5 〜 10-6 程度ひずんでいる
が,外部磁界を加えると磁化の方向が回転する
ことによって磁区のひずみの方向,大きさが変
化し,試料に変形を生じる。
備考 磁歪(じわい)ともいう。
3-5-18
ひずみ抵抗効果
抵抗体に引張り又は圧縮応力を加えるとその抵
抗値が変化する現象。抵抗体を線条にするとき
のひずみ感度をη,抵抗値をR,線の長さをL
とするとき,
η = (ΔR/R)/(ΔL/L)
となる。
strain
resistance
effect
3-5-19
電気光学効果
透明な固体又は液体に電界を加えたとき,光学
的性質が変化する現象。 屈折率変化が電界の強
さに比例するときをポッケルス効果といい,電
界の2乗に比例するときをカー効果という。
electro-optic
effect
731-01-42
3-5-20
ポッケルス効果
電気光学効果の一種で,透明な等方的な媒質の
屈折率が外部の電界の強さに比例する異方性を
示す効果。これに対して,電界の2乗に比例す
る電気複屈折をカー効果という。
Pockels effect
121-12-94
3-5-21
カー効果
電気光学効果の一種で,透明な等方的な媒質の
屈折率が外部電界の2乗に比例した異方性(電
気複屈折)を示す効果(電気光学的カー効果)。
これに対して,電界に比例する電気複屈折をポ
ッケルス効果という。
Kerr effect
121-12-95
(electro-optic)
Kerr effect,
(電気光学的)
カー効果
3-5-22
磁気光学効果
分子又は結晶の光学的性質に対して磁界が及ぼ
す効果の総称。 ゼーマン効果,ファラデー効果,
磁気複屈折,磁気円2色性,磁気的カー効果,
磁気振動吸収などがある。
magneto-optic
effect
731-01-43
3-5-23
磁気的カー効果
磁気光学効果の一種で,磁界内の物質表面又は
磁性体表面で直線偏光が反射するとき,光の偏
光面が回転する現象。
magnetic Kerr
effect
121-12-97
3-5-24
ファラデー効果,
ファラデー回転
磁気光学効果の一種で,磁界中におかれた透明
媒質中を直線偏光が磁界と平行に伝ぱするとき
偏光面が回転する現象。
Faraday
effect,
Faraday
rotation
121-12-100
(221-05-02
MOD),
221-05-02,
726-16-04
3-5-25
音響光学効果
結晶に音波によるひずみを加えることで屈折率
が変化する効果。光の変調に利用できる。
acoustooptic
effect
731-01-41
d) 材料の性質
1) 導体
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
4-1-1
導体
導電率(電気伝導率)又は熱伝導率の大きい
conductor
121-12-02
50
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
物質。金属は自由電子又は正孔密度が高く,
導電率,熱伝導率ともに大きい物質である。
伝導体,良導体ともいう。
conductor
(general
sense):
conducting
medium,
導体,
521-02-16
4-1-2
半金属
伝導帯と価電子帯とがわずかに重なってい
る物質で,絶対零度でも自由電子,自由正孔
をもつが,その数は金属に比べて非常に少な
い。
例 グラファイト,ひ素,アンチモン,
ビスマスの単結晶。
semimetal
4-1-3
残留抵抗率,
残留比抵抗
金属の抵抗率は温度の減少とともに減少す
るが,絶対零度で残る金属の抵抗率。
備考 マティーセンの規則の定義におけ
る ρi に相当する。
residual
resistivity
815-04-63
4-1-4
マティーセンの規
則
金属の抵抗率 ρ が欠陥に起因する温度に依
存しない抵抗率ρi とフォノン散乱に起因す
る温度上昇とともに増加する抵抗率ρL(T )
との和
ρ = ρi + ρL(T)
で表されるという規則。ここに ρL(0)=0 であ
る。
Matthiessen's
law
4-1-5
抵抗器
電気回路又は電子回路において,抵抗をもつ
物質を利用し,その両端に電圧を加えたとき
の電流の制限又は電圧の降下を生じさせる
ための素子。
resistor
4-1-6
接着
同種又は異種の固体の面が それ自体又は介
在物質との間の化学的若しくは物理的な力
又はその両者によって結合した状態。
adhesion
4-1-7
はんだ
~450 ℃ 未満の低い融点をもつ溶接用溶加
剤。 軟ろうともいう。
solder,
soft solder
4-1-8
ろう
~450 ℃ 以上の高い融点をもつ溶接用溶加
剤。硬ろうともいう。
brazing filler
metal,
hard solder
4-1-9
ろう付け(一般)
はんだ,又は硬ろうを用いて,母材をできる
だけ溶融せずに行う溶接方法。
brazing
(general),
soldering
851-01-02
4-1-10
硬ろう付け,
ろう付け
硬ろうを用いて母材をできるだけ溶融せず
に行う溶接方法。
hard soldering,
brazing
851-01-03
4-1-11
ろう接
母体金属よりも低融点の非鉄金属又は合金
を溶融することで二つの金属を一体に結合
すること。
brazing and
soldering
4-1-12
はんだ付け,
軟ろう付け
はんだを用いて母材をできるだけ溶融せず
に行う溶接方法。ろう接の一種。
備考 “はんだ”の由来は,福島県の半
田鉱山での産出又はマレー諸島バ
soldering,
soft
soldering
51
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
ンダ島ともいわれている。
4-1-13
めっき
物質の表面に化学的,電気化学的などの方法
によって金属膜を被着させること。
plating
4-1-14
溶接
2個以上の金属を,接合される金属間に連続
性があるように,熱,圧力,又はその双方を
加えて,それらの金属を溶融させ溶かし混ぜ
合わせて一体とすること。接合のとき接合面
にフィラー(充てん剤)を用いることも用い
ないこともある。
備考 接合部に電流を流してのジュール
熱の加熱と圧力とによる電気抵抗
溶接,単なる加熱と圧力の鍛接,
又は圧力だけによる圧接がある。
welding
851-01-01
4-1-15
アモルファス金属
非晶質状態の金属。 結晶粒又は光子欠陥が
ないため,高強度,高耐食,高透磁率などの
性質を生じる。
amorphous
metal
4-1-16
表面実装技術,
SMT
部品穴をを用いた挿入形実装方法とは反対
に,回路基板上で部品と同一面ではんだ付け
を行うことによる基板上への部品実装技術。
回路基板(プリント基板も含まれる。)上へ
の導体パターンの表面に,部品の電気的接続
が行われる。
surface-mount
technology,
SMT
(541-04-01
surface
mounting)
4-1-17
表面実装デバイ
ス,
SMD
回路基板の表面に,表面実装技術によって搭
載された電子デバイス又は機械的部品。
surface-mount
device,
SMD
4-1-18
表皮効果
導体内を流れる高周波の電流が導体の表面
付近だけを流れ,内部には流れない現象。
skin effect
121-13-18,
841-01-24
2) 半導体
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
4-2-1
半導体
室温での導電率が金属と絶縁体との中間[お
よそ 105〜10-8 (S/m)]にある物質。およそ2
〜3 (eV) 以下のバンドギャップをもち,絶対
零度では自由電子(正孔)をもたないために
絶縁体であるが,温度の上昇とともに自由電
子(正孔)密度が増加し,室温では電気伝導
をもつようになる。また,不純物のドーピン
グで N形,P形 の伝導の形の制御ができる。
参考 導電率の温度係数が金属は負であ
るのに対し,半導体及び費絶縁体
は正である。しかし,半導体と絶
縁体との間の厳密な区別は難し
い。例えば,ダイヤモンドは,純
粋なものは絶縁体であるが,不純
semiconductor
121-12-06,
394-10-01,
521-02-01
52
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
物を入れ半導体化することができ
る。
4-2-2
単元素半導体
単一の元素の原子の化学結合で構成される
半導体。
single-element
semiconductor
521-02-02
4-2-3
化合物半導体
2種類以上の元素の原子の化学結合によって
構成される半導体。一般には元素比は一定で
あるが,元素比に自由度がある混晶半導体も
これに含める。
compound
semiconductor
521-02-03
4-2-4
混晶半導体
複数の元素の原子で構成され,その元素の組
成比がある制限の下に連続的に変化できる
結晶半導体。
参考 IV 族原子の混晶Si1-xGex (0 ≤x
≤1),III-V 族の混晶 AlxGa1-x
AsyP1-y (0 ≤x ≤1,0 ≤y ≤1),II-VI
族の混晶 CdxZn1-x Te (0 ≤x ≤1) な
どがある。
mixed crystal
semiconductor
4-2-5
非縮退半導体
不純物半導体で,フェルミ準位がエネルギー
ギャップ中のにあり,その位置が両バンド端
から 少なくとも 2kBT (kB: ボルツマン定
数,T : 絶対温度)以上離れている半導体。 キ
ャリヤ密度の表式のためにボルツマン統計
の近似を用いることができる。
nondegenerate
semiconductor
521-02-12
4-2-6
縮退半導体
不純物半導体でドナーやアクセプタ密度が
大きいためにフェルミ準位がエネルギーギ
ャップ中のバンド端に近いところか又はバ
ンドの中に位置し,キャリヤ密度の表式のた
めにボルツマン統計の近似を用いることが
できず,フェルミ統計を用いる必要のある半
導体。
degenerate
semiconductor
521-02-13
4-2-7
キャリヤ,
電荷キャリヤ
真空,固体,気体又は 液体中を移動して電
荷を運び電流を生じさせる電子,正孔,イオ
ンなどの荷電粒子。半導体においては,伝導
帯の自由電子と価電子帯の正孔とを指す。
参考 厳密には電荷キャリヤ(charge
carrier)というべきで,一般には,
キャリヤガスなどのように何かを
運ぶものという意味である。
carrier,
charge carrier
111-14-44
電荷担体,
394-18-71
(111-14-44)
電荷キャリヤ,
521-02-51
4-2-8
有効質量,
実効質量
結晶中の伝導電子はその波動性のため,原子
の作る周期的なポテンシャル,電子間相互作
用,電子−格子相互作用などの影響を受け
る。したがって,運動に現れる質量は,真空
中の値とは異なる。 電子エネルギーをE ,
波数ベクトルを k ,プランク定数をh とす
ると,有効質量m*は,
effective mass
53
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
β
α
αβ
k
k
E
*
m
∂
∂
∂
=
−
2
2
1
η
(α,β =x,y,z)
によって与えられる。
4-2-9
伝導電子(半導体
の),
自由電子(半導体
の)
一般には,真空中の電子のように自由に運動
することのできる電子をいい,半導体では,
伝導帯中を自由に運動し伝導に寄与する電
子を指す。
備考 半導体の伝導現象を議論するとき
には,単に電子というと伝導帯中
の自由電子を指す。
conduction
electron (in a
semiconductor),
free electron (in
a semiconductor)
111-14-41,
521-02-14
4-2-10
正孔,
ホール
半導体の価電子帯中の価電子が抜けて生じ
た孔(ホール)を仮想の正電荷 +e (電気素
量)をもつ荷電粒子と考えたもの。
備考 ホールの発生によって残りの価電
子は運動が可能となり電荷を運ぶ
ことができるようになる。その電
流の表式は,ホールが +e の電荷
をもち,これが電荷を運ぶと考え
た場合と同じになる。
(positive) hole
111-14-42,
394-18-72,
521-02-17
4-2-11
軽い正孔
エネルギーの波数依存の異なる2種類の価電
子帯のうち,波数依存の大きい価電子帯に属
する有効質量の小さい正孔。
light hole
4-2-12
重い正孔
エネルギーの波数依存の異なる 2種類の価
電子帯のうち,波数依存の小さい価電子帯に
属する有効質量の大きい正孔。
heavy hole
4-2-13
真性半導体
理想的には,内部に不純物,欠陥を含まない
半導体で,熱平衡状態のキャリヤが,価電子
帯から伝導帯への価電子の熱励起だけによ
って生じる電子及び正孔で構成されるもの。
電子密度と正孔密度とが等しい。
参考 現在の技術では,不純物の混入又
は欠陥の生成が避けられず,完全
な真性半導体を作ることは困難で
ある。
intrinsic
semiconductor
394-10-02,
521-02-07
intrinsic
semiconductor;
semiconductor
type I,
真性半導体;
I 形半導体
4-2-14
真性キャリヤ密度
真性半導体では電子密度と正孔密度とは等
しいが,その密度をいう。
intrinsic carrier
density,
intrinsic carrier
concentration
4-2-15
真性準位
真性半導体のフェルミ準位。ほぼ,バンドギ
ャップの真中に位置する。
intrinsic level
4-2-16
不純物 (半導体中
の)
単元素半導体中にあっては構成元素以外の
原子,化合物半導体にあっては構成元素以外
の原子又は構成元素の化学量論比から増減
した原子。一般に,キャリヤ密度又は移動度
impurities (in a
semiconductor)
521-02-04
54
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
に影響を与える。
4-2-17
不純物半導体,
外因性半導体
内部に含まれる不純物,欠陥のイオン化によ
って生じた電子又は正孔がキャリヤ発生の
主体となる半導体。
impurity
semiconductor,
extrinsic
semiconductor
394-10-04,
521-02-08
4-2-18
多数キャリヤ
不純物半導体の熱平衡状態のキャリヤ(電子
及び正孔)のうち,密度の大きい方のキャリ
ヤ。
majority carrier
521-02-52
4-2-19
少数キャリヤ
不純物半導体の熱平衡状態のキャリヤ(電子
及び正孔)のうち,密度の小さい方のキャリ
ヤ。
minority carrier
521-02-53
4-2-20
N形半導体
電子が多数キャリヤである不純物半導体。
N-type
semiconductor
394-10-05,
521-02-09
N-type
semiconductor;
electron
semiconductor
,
N 形半導体,
電子過剰半導
体
4-2-21
P形半導体
正孔が多数キャリヤである不純物半導体。
P-type
semiconductor
394-10-06,
521-02-10,
P-type
semiconductor;
hole
semiconductor
P形半導体,
正孔過剰半導
体
4-2-22
ドナー
N形半導体を作るための不純物元素で,半導
体中でイオン化して伝導帯に電子を供与し
伝導電子を作り,自らは正に帯電する不純物
及び欠陥。
donor
521-02-38
4-2-23
アクセプタ
P形半導体を作るための不純物元素で,半導
体中でイオン化して価電子帯から価電子を
授受し正孔を作り,自らは負に帯電する不純
物及び欠陥。
acceptor
521-02-39
4-2-24
不純物準位
半導体中の不純物の作るエネルギー準位。
impurity level
521-02-36
4-2-25
ドナー準位
ドナーの作るエネルギー準位。
donor level
521-02-40
4-2-26
アクセプタ準位
アクセプタとして働く不純物のエネルギー
準位。通常,バンドギャップ中の価電子帯上
端に近い位置にある。
acceptor level
521-02-41
4-2-27
浅い準位
不純物準位のうち,伝導帯の下端又は価電子
帯の上端から 室温の kBT(kB: ボルツマン定
shallow level
55
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
数,T: 絶対温度)の程度離れたエネルギー
ギャップ中の浅いところに位置し,室温でほ
ぼ100 %イオン化してドナー又はアクセプ
タとして働くもの。
4-2-28
深い準位
不純物準位のうち,伝導帯,価電子帯のバン
ド端から室温の kBT(kB : ボルツマン定数,
T : 絶対温度)から十分離れたエネルギーギ
ャップ中の深いところに位置し,主にキャリ
ヤの捕獲又は再結合中心として働くもの。
deep level
4-2-29
(不純物)補償
ドナーとアクセプタとが共存するときに,ド
ナーが電子を供与する働きとアクセプタが
正孔を供与する働きとが,部分的又は完全に
互いに相殺すること。
(impurity)
compensation
521-03-06
4-2-30
質量作用の法則
(半導体におけ
る)
熱平衡状態で電子密度と正孔密度との積が
一定(n0p0=ni2,n0: 熱平衡状態の電子密度,
p0:熱平衡状態の正孔密度,ni : 真性密度)と
なる法則。
参考 質量作用の法則と電荷の中性条件
によって,熱平衡状態にある不純
物半導体では,
0
0
p
n
n
i>>
>>
(N
形半導体),又は
0
0
n
n
p
i>>
>>
(P形半導体)と
なる。
law of mass
action (in a
semiconductor)
4-2-31
ドーピング
半導体結晶内部にドナー又はアクセプタ不
純物を導入すること。半導体では,P形,N
形の制御並びにそのキャリヤ密度の制御に
用いる。
doping
521-03-05
doping (of a
semiconductor)
4-2-32
真性伝導
半導体において,不純物,欠陥に基づくキャ
リヤによる伝導が無視でき,バンド間の熱励
起によって生じた真性キャリヤによる伝導
が主体の伝導。
intrinsic
conduction
521-02-20
4-2-33
不純物領域
不純物半導体において,ドナー又はアクセプ
タが完全にイオン化していず,温度の増加と
ともにイオン化が進みキャリヤ密度が増加
する比較的低温の温度領域。
impurity region
4-2-34
飽和領域
ドナー又はアクセプタがすべてイオン化し
てキャリヤ密度の温度依存のない温度領域。
saturation region
4-2-35
真性(温度)領域
高温において,価電子帯から伝導帯への熱励
起によって生成されるキャリヤ密度が,飽和
領域の不純物,欠陥によるキャリヤ密度を越
え,真性伝導が主体となる高温温度領域。
参考 不純物半導体においても高温では
真性伝導が主体となり,P形及び
N形の特性が失われる。
intrinsic
(temperature)
region
4-2-36
キャリヤの発生
熱励起,光などの外部エネルギーによる励起
generation of
56
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
でキャリヤが発生すること。
carriers
4-2-37
再結合 (電子・正
孔対の)
伝導帯中の1個の電子と価電子帯中の1個の
正孔とが結合し消滅すること。
備考 一般には,通常安定な粒子の分解
により生じた高エネルギー状態に
ある正負の粒子対が,再び結合し
て(必ずしも元の相手の必要はな
い。)安定状態に戻ることをいう。
電子と正孔とが他の不純物又は欠
陥準位を介さずに再結合すること
を直接再結合といい,他の不純物
又は欠陥準位を介して再結合する
ことを間接再結合という。
参考 再結合するときに放出されるエネ
ルギーは,光子,フォノンの発生
に使われたり,又は他のキャリヤ
の励起に使われる。
recombination
(of an
electron-hole
pair)
111-14-60,
393-03-04,
881-02-76
4-2-38
発生中心
半導体の不純物又は欠陥中心で,バンドギャ
ップ中にそのエネルギー準位を作り,この準
位を介して電子及び正孔との発生を促進す
るもの。
参考 エネルギー準位がバンドギャップ
の中央付近にあるときに,キャリ
ヤ発生が最も促進される。
generation
center
4-2-39
再結合中心
半導体中の不純物又は欠陥中心で,バンドギ
ャップ中にそのエネルギー準位を作り,この
準位を介して電子と正孔との再結合を促進
するもの。
参考 エネルギー準位がバンドギャップ
の中央付近にあるときに,再結合
が最も促進される。
recombination
center
4-2-40
トラップ,
捕獲中心
伝導帯の電子,又は価電子帯の正孔を捕獲す
る不純物又は欠陥中心。
trap,
capture center
521-02-63
4-2-41
表面再結合
半導体の表面又は他の物質との界面に生じ
た表面(界面)準位を介して行う,電子と正
孔との再結合。
surface
recombination
4-2-42
表面再結合速度
表面再結合の速さを表す物理量で,単位面
積,単位時間当たりに表面再結合で消滅する
過剰キャリヤ数をU 個/(s・m2),表面の過剰
キャリヤ密度を c(1/m3) とするとき,表面再
結合速度 s (m/s) は,s = U/c で 与えられる。
surface
recombination
velocity
521-02-56
4-2-43
キャリヤの消滅
電子と正孔との再結合,トラップへの捕獲な
どによってキャリヤが消滅すること。
extinction of
carriers
4-2-44
過剰少数キャリヤ
密度
熱平衡の少数キャリヤ密度を越える少数キ
ャリヤ密度。
excess minority
carrier density
(521-02-54
excess carrier)
57
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
4-2-45
少数キャリヤの注
入
PN 接合又は金属/半導体接合への電圧印加
によって,N形又は P形半導体にそれぞれ少
数キャリヤである正孔,又は電子が拡散注入
されること。
minority carrier
injection
4-2-46
少数キャリヤの寿
命
半導体中に生成又は注入された過剰少数キ
ャリヤが多数キャリヤと再結合し消滅する
までの平均時間。多数キャリヤ密度が一定と
みなせるときには,少数キャリヤの寿命は一
定で,過剰少数キャリヤ密度が 1/e になる時
間に対応し,過剰少数キャリヤ密度の減少速
度は,過剰少数キャリヤ密度と少数キャリヤ
の寿命の逆数との積で表される。
minority carrier
lifetime
521-02-57
bulk lifetime (of
minority
carriers)
4-2-47
捕獲断面積
電子又は正孔の捕獲確率の大きさを表す断
面積。
capture
cross-section
4-2-48
フォノン散乱
フォノンとの相互作用によって生じるキャ
リヤの散乱。
phonon
scattering
4-2-49
不純物散乱
中性不純物又はイオン化不純物との相互作
用によって生じるキャリヤの散乱。
impurity
scattering
4-2-50
合金散乱
混晶半導体(合金半導体)において原子組成
比が場所によって一様でなく,クラスターな
ど局所的空間不均一分布が存在することに
よって生じる散乱。
alloy scattering
4-2-51
キャリヤ・キャリ
ヤ散乱
キャリヤ同志の相互作用によって生じる散
乱。 同種キャリヤ間(電子-電子,正孔-正孔)
の散乱と 異種キャリヤ間(電子-正孔)の散
乱との両者がある。
carrier-carrier
scattering
4-2-52
発光再結合
発光を伴って行う再結合。
radiative
recombination
4-2-53
非発光再結合
発光を伴わずに行う再結合。
nonradiative
recombination
58
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
3) 誘電体(ガラスを含む)
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
4-3-1
誘電体
静電界を加えるとき誘電分極を生じる
が,直流電流を生じない物質。交流電界
を加えるときは,ある特定周波数領域で,
変位電流より小さな交流電流を誘起す
る。
備考1. 正弦波の下では,等方性媒
質では次の関係を満たすと
き誘電体である。
r
0
ε
ω
ε
γ
>>
ここに,γ:導電率
ε0:電気定数
ω:角周波数
εr:比誘電率の実数部分
2. 異方性媒質では,ある特定
の方向にだけ誘電体である
場合がある。
dielectric
121-12-10
(705-03-07
MOD)
dielectric
medium;
dielectric
(noun),
誘電体,
212-01-04,
705-03-07
dielectric
(medium)
4-3-2
強誘電体
電界を加えない状態で自発的な誘電分極
をもつ誘電体。誘電分極の方向はある領
域の範囲内でほぼ同方向を向いており,
誘電分極と電界との間にはヒステリシス
特性が観測される。
ferroelectric
121-12-23,
[121-12-24
強誘電体の
ferroelectric
(adj)]
4-3-3
反強誘電体
結晶の中の二つの部分格子が反対方向に
自発分極を起こし,それが打ち消し合っ
て結晶全体としての自発分極がゼロにな
る物質。
antiferroelectric,
antiferroelectric
substance
4-3-4
絶縁体
電気又は熱を伝えない物質。実際上は,
電気伝導率及び/又は熱伝導率が十分小
さい物質をいう。
insulator
121-12-05
insulating
medium;
insulant,
212-01-01
insulating
material
4-3-5
絶縁破壊
絶縁体に作用する電界がある限度以上に
なると,ほとんど不連続的に絶縁性を失
って大電流を通すようになる現象。
dielectric
breakdown
212-01-29
(electric)
breakdown,
604-03-37
breakdown
4-3-6
セラミックス
成形,焼成などの工程を経て得られる非
金属無機材料をいう。
ceramic
212-05-24
4-3-7
ガラス状態
液体を結晶化させることなく冷却して,
その粘度が固体と同じ程度の大きさに達
vitreous state
59
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
した非晶質(無定形)状態をいう。
4-3-8
ガラス
一般にはガラス状態にある物質をいう
が,通常はけい酸塩ガラス,ほうけい酸
ガラスなどを指す。
glass
212-05-25
4-3-9
結晶性ガラス
ガラスの粉末とアルミナ,コーデュライ
トなどの粉末とを混合した特殊な組成の
ガラスを溶融・成形した後で,よく制御
された条件の元で再加熱して元の形を変
えることなく規則正しい構造をもつ微結
晶体に作ったもの。
crystallized glass
4-3-10
非晶質ガラス
ガラスのうち,結晶化ガラス以外のもの
を特に指す。
amorphous glass
4-3-11
ガラス転移
通常のガラスは高温では液体であるが,
温度の降下によってある温度範囲で急激
にその粘度を増し,ほとんど流動性を失
って非晶質固体となる。このような変化
をガラス転移といい,このときの温度を
ガラス転移温度という。
glass transition
4-3-12
熱刺激電流
光又は電界によって励起又は分極された
荷電粒子が低温で凍結され,次いで,励
起を除いた状態にして温度上昇させる過
程で熱的に凍結が解放されて生じる変位
電流。
thermally activated
current
4-3-13
熱刺激発光
光又は電界によって,励起又は分極され
た荷電粒子が低温で凍結され,次いで,
励起を除いた状態にして温度上昇させる
過程で,熱的に凍結が解放されて生じる
発光。
thermally activated
luminescence,
thermolumine-scence
845-04-30
4) 磁性体
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
4-4-1
磁性体
磁界の作用で磁気モーメントを生じる,又は変
化する物質。
magnetic
substance
121-12-27
4-4-2
永久磁石
残留磁化及び保磁力が大で,外部からの磁気的
かく乱によっても残留磁化の強さが容易に変わ
らない強磁性体。
permanent
magnet
151-01-38
4-4-3
磁石合金
永久磁石に使用される合金で,鋼を主体として
開発され,磁石鋼とも呼ばれる。 磁石合金の中
には,Fe,Co,W,Cr,Cを主成分としたKS
鋼,Fe,Al,C を主成分としたMT鋼,Fe,Ni,
Alを主成分としたMK鋼,Fe,Al,Ni ,Coを
magnetic alloy
60
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
主成分としたアルニコなどが代表的である。
4-4-4
パーマロイ
ニッケルを主成分とした代表的な高透磁率合金
の商品名。
Permalloy
4-4-5
フェライト
MII O・Fe2O3 形 (MII : Mn,Fe,Co,Ni,Cu,
Zn,Mg,Cd など) のスピネル形磁性酸化物を
いい、フェリ磁性又は反フェリ磁性を示す。抵
抗率が高く,高周波用磁心材料として主にznフ
ェライトとの固溶体が実用される。
ferrite
121-12-49,
221-01-16
4-4-6
希土類磁石
鉄族遷移金属と希土類金属との化合物からなる
永久磁石の総称。サマリウム-コバルト,ネオジ
ウム-鉄-ほう素が代表的 。
rare earth
magnet
4-4-7
ホイスラー合金
F.ホイスラーが発明した銅合金で,その代表的
な組成は,銅の他Al:10〜25 %,Mn:18〜26 %
であり,強磁性でない元素を組み合わせて強磁
性を示す合金が得られる場合もある点が特徴で
ある。
Heusler alloy
4-4-8
磁性薄膜
種々の磁性体を蒸着,スパッタリング,電着な
どの方法でガラス,プラスチックなど,又は単
結晶の基板上に薄膜成長させたもの 。
magnetic thin
film
4-4-9
磁性流体
界面活性剤を用いて安定に分散させた磁性体微
粒子を,流体媒体に高濃度に懸濁させたもの。
magnetic fluid
4-4-10
磁気記録
録音,録画及びそれらを再生させる手段として
磁性体及び外部磁界を用いる記録方式。
magnetic
recording
806-15-01
4-4-11
磁気バブル
膜面の垂直方向に磁化容易軸をもつ磁性薄膜の
面に垂直な方向に,適切な強さの磁界を加えた
ときに生じる小さな円柱状の磁区。
参考 液相 エピタキシーによって GGG
(Gadolinium Gallium Garnet) の単結
晶板上に成長させた希土類鉄ガーネ
ット膜がこのような性質を示す。
magnetic
bubble
4-4-12
磁気増幅器
強磁性体の磁化の飽和を利用して電流を増幅す
る装置。
magnetic
amplifier
351-18-52
4-4-13
アモルファス磁性
材料
超高速で急冷することによってアモルファス化
した磁性合金をいい,磁気異方性が小さいため
高磁化率,低保磁力が実現でき,耐食性及び機
械強度に優れる。
amorphous
magnetic
materials
4-4-14
インバー
ニッケル鋼の一種で,Fe,Ni,Mn,C の合金か
らなり,線膨張係数がFeやNiの約1/10と小さ
いことが特徴で,制御機器や精密機器に使用さ
れる。
Invar
4-4-15
ソフト磁性材料
磁化率が高く保磁力が小さい磁性材料。変圧器,
コイルなどの磁心材料として用いられる。
soft magnetic
materials
4-4-16
ハード磁性材料
磁気的に硬い材料,すなわち磁化しにくく,ま
た,一度磁化するとその残留磁化を再度ゼロに
するための外部磁界(保磁力)が大きい磁性材
料。
hard magnetic
materials
61
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
5) 超電導体
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
4-5-1
超電導
多くの金属,ある種の金属酸化物などの物質
が,適切な条件下でその直流電気抵抗がゼロ
になり,かつ,完全反磁性を示す現象。 ま
た,このような性質を超電導性という。
備考 適切な条件とは,温度,磁界の強
さ及び電流密度がある値以下のと
きを示す。
Superconductiv-
ity
815-01-02
4-5-2
超電導体
温度,磁界の強さ及び電流密度がある値以下
のときにゼロ抵抗となる性質を示す物質。
superconductor
121-12-07
超電導体,
815-001-06
超電導体
4-5-3
第1種超電導体
軟超電導体とも呼ばれ,外部からの磁界に対
しては完全反磁性を示し,超電導状態が破れ
る臨界磁界になるまで磁界(磁束)は内部に
侵入せず,臨界磁界以上の磁界がかかると超
電導状態が破れ磁束が内部に侵入する超電
導材料。
type I
superconductor,
soft
superconductor
815-01-22
4-5-4
第2種超電導体
硬超電導体とも呼ばれ,2 段階の臨界磁界を
もち,下部臨界磁界以上の磁界をかけても,
上部臨界磁界以下であれば,磁束線は超電導
体の内部にまだらに入っており,常伝導領域
と超電導領域との混合状態となる超電導材
料。
type II
superconductor,
hard
superconductor
815-01-25
4-5-5
酸化物超電導材料
超電導を示すセラミック材料の一種。主な材
料としてはY 系,Bi系,Tl系などがある。
superconduct-
ing oxide
4-5-6
金属超電導材料
酸化物超電導材料が発見される以前に主流
であった超電導を示す材料系をいい,代表的
な材料として,NiTi,Nb3Sn,Nb3Al などが
ある。
metallic
superconductor
4-5-7
超電導膜
超電導を示す膜。ジョセフソン素子,LSI 用
の配線などのデバイス化をねらいとする。
備考 超電導薄膜は,およそ1 μm 以下
の厚さの膜をいい,MgO,LaAlO3,
SrTiO3 などの格子定数のずれが
小さく反応性が少ない基板を用
い,スパッタリング法,レーザ蒸
着法,CVD 法などで超電導材料
を薄膜成長させて作製する。 超電
導厚膜は,およそ 1 μm から 10
μm の厚さの膜をいい,スクリー
ン印刷,ドクターブレード法,デ
ィップコート法などを用いて作製
superconducting
film
815-04-29
62
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
する。
4-5-8
臨界磁界,
臨界磁場
超電導状態を維持できる最大の磁界(磁場)。
備考 臨界磁界は,温度の関数である。
critical (magnetic)
field strength
815-01-09
4-5-9
臨界温度,
超電導臨界温度
ゼロ磁界,ゼロ電流密度のときに,それ以下
の温度で超電導体の電気抵抗がゼロになり
超電導状態が発現するときのその絶対温度。
critical
temperature
815-01-09
4-5-10
臨界電流密度
抵抗ゼロを維持できる最大の電流密度であ
り,外部からの導入電流と遮へい(蔽)電流
に当てはまる。
critical current
density
815-03-03
4-5-11
永久電流
超電導状態にあり,超電導体のリングを減衰
することなく流れる電流。
persistent current
815-01-13
4-5-12
クーパー対
超電導体の束縛された2個の電子対を指す。
反平行スピンをもつ2個の電子がフォノンを
なかだちとしてクーロン反発力に打ち勝つ
だけの相互引力作用が生じ,2 個の電子が束
縛状態となる。
なお,クーパー対が相互に位相同期した集
団領域の距離を“コヒーレンス長”(coherence
length)という。
Cooper pair
121-13-22,
815-01-26
4-5-13
BCS理論
クーパ対を臨界温度以下の温度で形成し,巨
視的な数の電子対が同一の重心運動を行う
として超電導を説明した対理論。BCS は,
提唱者のBardeen,Cooper,Schriefferの3人
の頭文字。
BCS theory
815-01-27
4-5-14
ジョセフソン接合
二つの超電導体が絶縁体膜,通常の伝導体
膜,又は小さな断面積若しくは点接触の超電
導体ブリッジで隔てられた,クーパー対が適
当な条件下で通過できる接合。
Josephson
junction
121-13-23,
815-01-37
4-5-15
ジョセフソン効果
二つの超電導体が薄い絶縁膜で隔てられた
サンドイッチ構造のジョセフソン接合にお
いて,絶縁膜をクーパー対がトンネル効果で
通過し電力消費を伴わずに電流を生じるマ
クロな量子効果(直流ジョセフソン効果),
及び,接合に電圧Uがかかるときには,周波
数 f = 2eU/h (h:プランク定数,e:素電荷)
の交流電流が生じるマクロな量子効果(交流
ジョセフソン効果)。
Josephson effect
(121-13-25
direct-current
Josephson
effect,
815-01-38
DC Josephson
effect,
121-13-26
alternate-current
Josephson
effect,
815-01-39
AC Josephson
effect)
4-5-16
マイスナー効果
超電導状態にある金属では臨界 磁界を越え
ない外部磁界を加えても内部では磁束がゼ
ロであり,磁力線が内部に入らない現象。
Meissner effect
815-01-12
63
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
4-5-17
超電導量子干渉
計,
SQUID
インダクタンスの小さな超電導 ループ中に
1 個又は2個のジョセフソン接合を含む干渉
計。 脳磁図などの超高感度磁界検出に利用
される。
superconductive
quantum
interference
device,
SQUID
815-07-46
超電導量子干
渉計
4-5-18
近接効果
超電導体又は 常伝導金属の接合の電気的干
渉によって,超電導体境界クーパー対密度を
減少させ,クーパー対の波動関数が金属側へ
漏れ出す効果。
proximity
effect
(121-13-19
proximity
effect,
815-04-58
proximity
coupling
current)
4-5-19
磁束量子
磁束の量子単位をいい,h/2eに等しい。 こ
こに,h はプランク定数,e は素電荷である。
この値は,およそ,2.067 830 215×1015 (Wb)
に等しい。 超電導体の環を貫く磁束は,環
を流れるクーパー対の波動関数の一価性の
ために磁束量子の整数倍の値に量子化され
る。
fluxoid
quantum,
flux quantum
121-11-22
fluxoid
quantum,
815-01-14
flux quantum
4-5-20
侵入深さ(超電導
体における)
超電導体の磁界侵入を打ち消す遮へい(蔽)
電流が流れている深さ。
penetration
depth (in a
superconductor)
4-5-21
超流体
粘性係数が 0で,エントロピーを運ばないよ
うな超流動を示す流体。 現在のところ,超
流動を示す物質は,液体Heだけである。
参考 超流動性を示さない,すなわち有
限の粘性率をもちエントロピーを
運ぶ液体を,常流体という。
superfluid
(815-06-17
superfluid
helium: He II,
4-5-22
ピン止め(磁束の)
超電導体内の量子化磁束が格子欠陥,析出不
純物,粒界などによって捕捉され,ローレン
ツ力が働いても動かないこと。
pinning (of a
magnetic flux)
6) 気体及び液体(放電関係など)
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
4-6-1
プラズマ
全体的にほとんど同じ数の正負の自由電荷(正
イオン,電子)及び中性の原子又は分子で構成
される伝導性のあるイオン化したガス。 マクロ
には電気的に中性である。
plasma
111-14-65,
705-06-04,
531-13-14,
841-09-01
4-6-2
プラズマ振動
プラズマ中の電子の集団運動による振動で,電
荷のじょう乱を遮へい(蔽)するために電子が
動くとき,中性の状態より行きすぎて,再び引
plasma
oscillation
[705-06-10
plasma
frequency
64
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
き返す運動を繰り返すために発生する振動をい
い,縦波すなわち疎密波として伝ぱする。
(electronic)
(電子)プラズ
マ周波数)]
4-6-3
無衝突プラズマ
粒子が相互に誘起した空間電荷電界を通して相
互作用するが,直接の衝突が無視しうるプラズ
マ。
collisionless
plasma
4-6-4
衝突支配形プラズ
マ
衝突による相互作用によって種々の散逸過程が
生じるプラズマ。
collision
dominated
plasma
4-6-5
衝突周波数
電子がイオン化した媒質又はプラズマ中を通過
するときに受ける単位時間当たりの平均の衝突
数。
collision
frequency
705-06-08
(電子)衝突周
波数
4-6-6
運動量移行周波数
プラズマ中で,ある種類の荷電粒子とほかの,
又は同じ種類の粒子との単位時間内の平均の衝
突数。
momentum-tr-
ansfer
collision
frequency
4-6-7
電離係数,
イオン化係数
気体中で電子が電界によって加速され,気体分
子の電離に必要なエネルギーを得て衝突して電
離するときの,電子が電界方向に単位長さ移動
する間に起こす衝突電離の平均回数。
ionization
coefficient
111-14-58
4-6-8
クーロン衝突
電子・電子,イオン・イオン,電子・イオンな
どの荷電粒子間に比較的長距離まで働くクーロ
ン相互作用による粒子の衝突 。
Coulomb
collision
4-6-9
サイクロトロン共
鳴
静磁界中の荷電粒子の運動は,磁界に垂直な方
向に関してみると周期が一定の円運動(サイク
ロトロン運動)をしているが,ここに周回の角
周波数に等しい電磁波が入射すると,共鳴して
電磁波が吸収される現象。
cyclotron
resonance
4-6-10
ラーマー角周波数
荷電粒子が磁界中で行う円運動の角周波数。 そ
の値ωは,粒子の電荷をq,質量を m,磁束密
度の大きさをB とすると,ω =qB
mで表せる。
Larmor
frequency
4-6-11
グロー放電
電子管の比較的低圧ガス中での放電 。拡散,グ
ロー及び ガスのイオン化電圧よりも非常に高
い陰極付近の電圧降下(陰極降下)などで特徴
付けられ,電子は主として陰極からの 2次電子
放出によって供給される。
glow discharge
121-13-13,
531-13-04,
845-07-12
4-6-12
コロナ放電
電圧こう配がある特定の値を超えたときに,高
電圧で周りの空気のイオン化によって生じる,
導体の表面と近隣に生じる青みがかった紫色の
グロー放電。
corona
discharge
531-13-06
4-6-13
陽光柱
グロー放電管の中で,ファラデー暗部と陽極間
とに生じるグローをいい,しばしばせん(閃)
光となる。
positive glow
4-6-14
陰極降下
気体放電で陰極付近に空間電荷によって生じる
大きい電位降下。
cathode fall,
cathode drop
845-07-13
65
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
4-6-15
ペニングイオン化
励起状態の原子又は分子X* と別の原子又は分
子Mとが低エネルギーで, X* + M → X + M+ +
e- の過程によって,Xが基底状態に落ちると同
時にMがイオン化する現象。
Penning
ionization
4-6-16
アーク放電
気体内の電極間での直流放電で,陰極からの熱
電子放出又は電界放出による低エネルギー電子
によって高電流密度が維持され,比較的低い陰
極降下を生じる放電。
備考 陰極からの二次電子放出は小さい。
arc discharge
531-13-05,
845-07-16
4-6-17
自続放電
気体の放電において,2極間の電圧がある値以
上で外部からの荷電粒子の供給がなくても維持
される放電。低電圧領域では,外部からの荷電
粒子の供給にほぼ比例して電流が流れ,これを
非自続放電という。
self-maintain-
ed discharge
531-13-12a
4-6-18
再結合 (気体の)
電子,正イオン,又は負イオンのような電荷を
もつ粒子の結合と,結果として生じる電気的中
和。
recombination
(in gas)
4-6-19
電荷交換反応
2粒子間の衝突による一方の粒子から他方への
電荷の移動。
charge
exchange
reaction
4-6-20
両極性拡散
電子,イオンなどの荷電粒子のプラズマ中の拡
散。電子又はイオンは独立には拡散せず,局所
的な電気的中和化の結果として生じる。
ambipolar
diffusion
4-6-21
電離度
中性の原子又は分子が電子を失って陽イオンに
なる数の粒子総数に対する割合。
degree of
ionization
705-06-06
degree
of
ionization (of a
plasma),
(プラズマの)
電離度
4-6-22
デバイ長
荷電粒子の電界が,逆符号の電荷をもつ粒子に
よって遮へい(蔽)される特性距離。
Debye length
4-6-23
イオンシース
放電のポテンシャルとは違うポテンシャルをも
つ,表面上又は表面近くに形成されたイオンの
(若しくは電子の)薄い層。
ion sheath
4-6-24
異常拡散
プラズマが不安定なとき,プラズマが磁力線を
横切って拡散していく現象。その速度は,古典
的拡散に比較して,高い。
anomalous
diffusion
4-6-25
プラズマの閉じ込
め
プラズマを電磁界などの外的作用によって有限
領域内に閉じ込めること。 プラズマ粒子数を
N (個)とし,単位時間に損失するプラズマ粒
子数を G (個/s)とするとき,G = N /τで定義
される時間 τ(s) をプラズマ閉じ込め時間とい
う。
plasma
confinement
66
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
4-6-26
プラズマ分散式
プラズマ中の角周波数と波の運動,又は不安定
性の波動ベクトルとの関係を示す式。
plasma
dispersion
relation
4-6-27
イオン音波
プラズマ中の集団の振動に基づく静電波。この
波は中性気体中の音波と類似の縦波であるが,
粒子間衝突に基づく音波とは違って,粒子間の
クーロン力と電子の熱運動とが本質的な役割を
なす。
ion acoustic
wave
7) 液晶,有機材料関係など
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
4-7-1
液晶
結晶と液体との中間にある温度範囲内で存在す
る,ある程度の秩序をもった状態。
liquid crystal
4-7-2
ネマチック液晶
等方性液体を急冷したときに見られる,糸状模
様に基づいて命名された液晶の一種。液晶中,
最も液体に近い乱れた構造をもつ。
nematic liquid
crystal
4-7-3
スメクチック液晶
棒状の分子がその長軸を平行に配列して層を形
成した液晶。
smectic liquid
crystal
4-7-4
コレステリック液
晶
ネマチック液晶を形成する分子の一部又は全部
が光学活性をもち,分子配列にねじれが加わっ
て全体としてらせん構造をとった液晶。
cholesteric
liquid crystal
4-7-5
ディスコチック液
晶
円板状分子とみなされるベンゼンの六置換エス
テルなどが示すサーモトロピック液晶(温度変
化によって出現する液晶)の総称。
discotic liquid
crystal
4-7-6
高分子液晶
液晶性の低分子構造を高分子の主鎖又は側鎖に
適切に配した液晶。
polymer liquid
crystal,
liquid crystal
polymer
4-7-7
レジスト
半導体製造工程において,エッチング,イオン
注入など,微細加工プロセスで加工すべき基板
にパターンを形成するための感光材。紫外線,
X線,電子線などの放射線の照射によって引き
起こされる化学反応を利用して形成される。
resist
4-7-8
逆浸透膜
半透膜の一方に浸透圧より高い圧力を加えるこ
とで,通常の浸透とは逆に溶液中の溶媒分子が
半透膜を通って純容媒中へ移行できる半透膜の
こと。物質の分離に応用できる。
reverse
osmosis
membrane
67
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
4-7-9
結晶性高分子
かなりの秩序をもった分子配列を示し,X線回
析によって明りょうな結晶構造が認められる高
分子物質。
crystalline
polymer
4-7-10
エレクトレット
外部電界が存在しない状態でも半永久的に分極
を保持することができる誘電体。
electret
4-7-11
樹脂
複雑な有機酸及びその誘電体からなる物質。も
ろい無定形の固体又は半固体で,水には溶けず,
アルコール,エーテルなどにはよく溶ける。
resin
212-04-01
4-7-12
導電性高分子
電気伝導性をもつ高分子。 異種元素又は分子が
添加されているものとないものとの2種類に大
別される。
electrically
conducting
polymer
4-7-13
ポリイミド
耐熱性高分子の代表。耐熱性高分子とは一般に
300 ℃ 以上の高温で連続して使用に耐える高
分子物質。
polyimide
4-7-14
重合
1種類の単位化合物の分子が 2個以上結合して
単位化合物の整数倍の分子量をもつ化合物を生
成する化学反応。
polymerization
4-7-15
共重合
2種又はそれ以上の単位化合物を用い,それら
を成分として含む重合体を与える重合反応。
copolymeriza-
tion
4-7-16
縮合
2個以上の分子又は同一分子内の 二つ以上の
部分が新しい結合を作る反応。
condensation
4-7-17
重縮合
縮合反応の繰返しによる重合体生成反応。
polycondensa-
tion
4-7-18
光分解
光の照射によって結合が開裂して物質が分解を
起こす現象。
photolysis
4-7-19
二色性
a) 一軸結晶において,光の吸収の異方性が原
因で光学軸方向とこれに垂直な方向とで色
が異なる性質。一般に,物質が透過光の色
を種々の伝ぱ方向によって異にする性質を
多色性という。
b) 着色溶液の透過光の色が,溶液の濃度又は
液層の厚さによって変化する現象。
dichroism
68
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
e) デバイスの基礎
1) デバイスの構成基礎
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
5-1-1
接合
異なる電気特性又は異なる伝導タイプの
半導体間が,接する遷移領域。同種の半導
体間の接合をホモ接合,異種の半導体間の
接合をヘテロ接合という。接合に生じる一
方向のキャリヤの移動を妨げるポテンシ
ャル障壁で,キャリヤの運動を制御する特
徴をもつ,デバイスの基本構造の一つ。
junction
394-18-60,
521-02-70
5-1-2
PN接合
P形半導体とN形半導体との間の遷移領
域。 種々の半導体デバイスを構成する基
本的な構造。 熱平衡状態において,双方
のフェルミ準位が一致するように電位障
壁が形成される。
PN junction
394-18-61
(521-02-73)
5-1-3
ホモ接合
キャリヤ密度又は伝導タイプの異なる同
種の半導体の接合。
homojunction
731-06-12
5-1-4
ヘテロ接合
異種の二つの半導体の接合。
heterojunction
731-06-13
5-1-5
空乏層
半導体の各種接合において,自由キャリヤ
密度がイオン化したドナー。アクセプタの
正味の固定電荷密度を中和するに不十分
なほど小さい領域。
depletion layer
521-02-77
depletion layer
(of a
semiconductor)
5-1-6
空間電荷
電子又はイオンに起因する空間の電荷。
space charge
393-01-40,
531-12-14,
881-02-93
5-1-7
空間電荷領域
PN接合部分の電気的に中性なP領域とN
領域とに挟まれた,キャリヤの空乏化によ
ってイオン化不純物による電荷が現れて
いる領域。
space charge region
521-02-74
space
charge
region,
521-02-75
space
charge
region (of a PN
junction)
5-1-8
拡散電位,
内蔵電位
接合を挟んだ中性領域の間の内部電位の
差。 接合を構成する二つの領域では電子
の化学ポテンシャルが異なるため,熱平衡
状態では内部電位に差が生じることによ
って拡散が平衡に達する。
diffusion voltage,
built-in voltage
5-1-9
接触
二つの異なる物質が接し界面を形成する
こと。一般に,両者のフェルミ準位に差が
あるため熱平衡状態では電位差が生じる
(接触電位差)。半導体デバイスの電極は,
金属と半導体,又は半導体間の接触であ
る。
contact
69
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
5-1-10
ポテンシャル障壁
接触している 二つの物質間,又は同じ物
質の異なる電気的性質をもつ領域の間の
ポテンシャルの差。 相互の自由キャリヤ
の拡散によって空間電荷領域が形成され
るために,ポテンシャル差が生じる。
potential barrier
121-13-20
(electric)
potential
barrier,
521-02-68,
521-02-69
potential barrier
(of
a
PN
junction)
5-1-11
ショットキー障壁
金属・半導体接触界面において生じるポテ
ンシャル障壁。金属側からみた大きさをシ
ョットキー障壁高さという。
Schottky barrier
5-1-12
ショットキー接
触,
ショットキー接合
金属と半導体とが接触した界面で,ショッ
トキー障壁の高さが大きく,整流作用を示
すもの。 また,半導体側に空乏層が伸び
るためショットキー接合とも呼ばれる。こ
の特性は,金属と半導体との仕事関数の差
に大きく左右される。
Schottky contact,
Schottky junction
5-1-13
オーム性接触
金属と半導体とが接触した界面で,電流−
電圧特性が直線性を示すもの。実用的な観
点からは,半導体電極のうち,そこでの電
力損失が無視できるくらい小さな接触抵
抗値をもつものをいうことが多い。
ohmic contact
5-1-14
整流作用
交流入力を直流出力に変換する作用。
参考 2端子素子(ダイオード)にお
いて,印加電圧の一方の方向
(順方向)には電流が流れやす
く,他の方向(逆方向)には流
れにくい特性を示す素子。例え
ば,PN 接合ダイオードは整流
作用を示す代表例である。
rectification
5-1-15
降伏
素子,又は材料の電流-電圧特性において,
電圧のわずかな増大に対して電流が急し
ゅん(峻)に増大すること。
参考 PN接合では,印加する逆方向
電圧を増加していくと,ある電
圧以上でアバランシェ(アバラ
ンシェ降伏)又はトンネル現象
(トンネル降伏,ツェナー降
伏)が生じ,電流が急激に流れ
始める。
breakdown
121-13-15,
212-01-29,
394-18-68
breakdown (of a
reverse biased
PN junction),
521-05-04
breakdown (of a
reverse biased
PN junction)
70
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
5-1-16
降伏電圧
降伏が生じる電圧の大きさ。
breakdown voltage
212-01-30
5-1-17
MIS[構造]
金属 (metal)と半導体 (semiconductor) と
の間に薄い絶縁物 (insulator) を挿入した
構造。
参考 電界効果トランジスタ,電界発
光素子,ジョセフソン素子など
に用いられる。
metal-insulator-
semiconductor
(structure),
MIS (structure)
5-1-18
MOS[構造]
MIS構造のうち,絶縁物が半導体を構成す
る原子の酸化物 (oxide) であるもの。
metal-oxide-
semiconductor
(structure),
MOS (structure)
5-1-19
パッシベーショ
ン,
表面不活性化
半導体の界面を,安定化するために表面を
シリコン酸化膜などのような物質で被覆
して,不活性にすること。
備考 このような目的で半導体表面
に形成された膜を“パッシベー
ション膜”という。表面を保護
する目的でも使われ,“表面保
護膜”ともいう。
参考 回路を保護するための表面保
護膜に対して使われることが
ある。
passivation,
surface passivation
521-03-13
surface
passivation
5-1-20
反転層
半導体表面に電界をかけたとき,多数キャ
リヤが内部に,少数キャリヤが表面に集ま
ることによって,半導体表面の伝導形が実
質的に内部とは逆転した領域。 MIS形素
子において電流のチャネルとして利用さ
れる。
inversion layer
394-18-75
逆転層
5-1-21
チャネル
電界効果トランジスタなどのユニポーラ
デバイスにおいて,ソースからドレインに
至るキャリヤの流れる半導体薄層通路を
いい,そのコンダクタンスがゲート電圧で
制御される。
channel
521-07-06
channel (of a
field effect
transistors)
5-1-22
[素子間]分離
集積回路の構成部分同士が相互の影響を
受けないようにすること。
備考 分離には,半導体集積回路の各
素子を PN接合で分離する“接
合分離”,絶縁層,例えばSiO2
などによって分離する“絶縁層
分離(酸化膜分離ともいう。)”,
単結晶と多結晶との境界の絶
縁性を利用し,多結晶によって
半導体集積回路の各素子を電
気的に分離する“多結晶分離”
などがある。
isolation,
junction isolation,
dielectric isolation,
polycrystalline
isolation
71
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
5-1-23
擬フェルミ準位,
イムレフ
電圧印加又は 光照射下のような非熱平衡
状態における電子密度,正孔密度を,ボル
ツマン近似の下での熱平衡状態の式を用
いて,次の式のように表記したときのEFn
(電子)及び,E Fp(正孔)。
]
)
exp[(
B
i
Fn
i
T
k
/
E
E
n
n
−
=
]
)
(
exp[
B
i
Fp
i
T
k
/
E
E
n
p
−
−
=
ここに,n : 非熱平衡における電子
密度
p : 非熱平衡における正孔
密度
n1 : 真性キャリヤ密度
Ei: 真性準位,kB : ボルツ
マン定数
T : 絶対温度
イムレフ(imref) は,Fermiを逆につづった
造語である。
quasi Fermi level,
imref
2) 電子デバイス,IC など
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
5-2-1
ダイオード
二つの(di)電極(electrode)をもつ電子デバイス。
性質などを示す接頭語を付けて呼ばれる。
例 ショットキーダイオード,ガンダイオ
ード,フォトダイオード,レーザダイ
オードなど。
diode
5-2-2
バリスタ
variable resistor からの造語であり,抵抗値が電
圧によって非直線的に変化する性質を利用した
半導体素子。普通のバリスタは臨界電圧以下で
は抵抗が非常に大きく,それ以上では抵抗が急
激に減少する。この性質からサージ電圧を減衰
するための防護素子として用いられる。
varistor
151-01-31
5-2-3
サーミスタ
温度変化に対して極めて大きな抵抗値変化を示
すことを利用した半導体素子。
備考 抵抗温度係数が正のものを PTC
(positive temperature coefficient)サーミ
スタ,負のものをNTC (negative
temperature coefficient)サーミスタと
いう。
thermistor
151-01-32,
521-04-13,
726-21-08
72
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
5-2-4
トランジスタ
端子を三つ以上備えた半導体能動素子の一般的
名称。transfer resistor を縮めた造語。 電子と正
孔とがともに動作に関与するバイポーラ形と,
いずれか一方だけが関与するユニポーラ形に大
別できる。
備考 バイポーラトランジスタやIGBTな
どはバイポーラ形,MOSFET,HEMT,
TFTなどはユニポーラ形のトランジ
スタである。
transistor
521-04-25
5-2-5
PN接合ダイオー
ド
PN接合からなる整流特性を示す2端子素子。
PN-junction
diode
5-2-6
ショットキー[バ
リア]ダイオー
ド
金属と半導体接触(ショットキー接触)とから
なるダイオード。
Schottky
(barrier)
diode
5-2-7
定電圧ダイオード
ダイオードの逆方向降伏現象を利用して,印加
電圧が一定値以上にかからないように設計され
たダイオード。
voltage
regulating
diode
5-2-8
トンネルダイオー
ド
P,Nともに不純物が高密度にドープされたPN
接合ダイオードで,順方向バイアス印加時に量
子力学的トンネル効果によってN形の負性抵抗
を示す2端子素子。
tunnel diode
521-04-04
5-2-9
ガンダイオード
GaAsのように特異な伝導帯構造をもつ半導体
において,高電界を印加すると電子遷移に基づ
き負性抵抗が現れる。これを利用したマイクロ
波帯の発振・増幅用の2端子素子。
Gunn diode
5-2-10
走行時間素子
走行領域の長さを適切にとることによって,電
子が注入されてから端子電流が流れるまでの位
相差を付け,交流的に負性抵抗を実現する半導
体素子。 衝突電離・なだれ(雪崩)増倍によっ
て電子注入を行うインパット (IMPATT : impact
ionization avalanche transit time) ダイオードが代
表的な素子。
transit time
device
5-2-11
バイポーラトラン
ジスタ
二つ以上の接合をもち,電子と正孔とがともに
動作に関与する3端子のデバイス。エミッタ,
ベース,コレクタと呼ばれる三つの領域からな
り,NPN又はPNPの2種類がある。
bipolar
transistor
521-04-26
bipolar junction
transistor
73
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
5-2-12
ヘテロ接合バイポ
ーラトランジス
タ,
HBT
エミッタにバンドギャップの広い半導体を用
い,ベース・エミッタヘテロ接合に形成され
た電位障壁を利用することで,ベースからエ
ミッタへの少数キャリヤ注入を抑制して,エ
ミッタ効率を 1 に 近付け,高い電流増幅率
を実現したバイポーラトランジスタ。
参考 例えば,ベースにGaAsを,エミッ
タにはベースより広いバンドギャ
ップをもつAlGaAs半導体を用いる
ことで,ベース抵抗とベース・エミ
ッタとの間の接合容量が小さなト
ランジスタを実現できる。高周波性
能,温度特性などの面で優れてい
る。
heterojunction
bipolar
transistor,
HBT
5-2-13
電界効果トランジ
スタ,
FET
電流通路(チャネル)のコンダクタンスを,
ゲート電極から横方向の電界によって制御す
るトランジスタ。
備考 ゲート構造によって,“接合形FET
(JFET: junction FET)”,“金属・酸化
物・半導体FET[MOSFET: metal
oxide semiconductor FET]”,“金属・
半導体
FET(MESFET:
metal
semiconductor FET)”(“ショットキ
ーバリアゲートFET”ともいう。)
などに分けられる。
field effect
transistor,
FET
521-04-30
5-2-14
MOSFET
MOS構造の金属(ゲート)直下の酸化膜・半
導体界面の反転層をチャネルとし,ここのキ
ャリヤ数をゲート電圧で制御することによっ
てチャネルの面に沿ったコンダクタンスを制
御する電界効果トランジスタ。
備考 チャネル反転層がN形のものを
N-MOSFET,P 形のものを
P-MOSFETという。
metal-oxide-
semiconductor
field effect
transistor,
MOSFET
521-04-33
5-2-15
高電子移動度トラ
ンジスタ,
HEMT
電界効果トランジスタの一つで,ヘテロ接合
と変調ドープ技術とを利用してチャネルでの
キャリヤ散乱を減らすことによって,高速化
及び 低雑音化を図ったもの。
備考 “変調ドープFET (MODFET:
modulation doped FET)”,“2次元電
子ガス
FET
(2DEGFET:
2
dimensuional electron gas FET)”とも
呼ばれる。
high electron
mobility
transistor,
HEMT
5-2-16
薄膜トランジス
タ,
TFT
絶縁体基板上に半導体薄膜を形成し,その膜
内にチャネルを設けて,絶縁ゲート電界効果
トランジスタとしたもの。
thin film
transistor,
TFT
74
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
5-2-17
絶縁ゲートバイポ
ーラトランジス
タ,
IGBT
パワーエレクトロニクス用デバイスの一つ。
MOS FETの耐圧を上げるには,ドレインの不
純物濃度を下げる必要があるが,一方でオン
抵抗は大きくなる。このトレードオフを解消
するためにドレインに相当する領域にPN整
合を設け,オン状態においてこの接合が順バ
イアスされると導電率変調が生じオン抵抗が
低減できる。
insulated gate
bipolar
transistor,
IGBT
5-2-18
静電誘導トランジ
スタ,
SIT
電界効果トランジスタの一つで,ゲート電極
の埋め込み,チャネルの縦形化などによって
極限まで短チャネル化を図り大きな電流駆動
能力をもたせたデバイス。
static induction
transistor,
SIT
5-2-19
サイリスタ
三つ又はそれ以上のPN接合部からなり,S字
形の負性抵抗を示す素子。ゲートに電圧をか
けることによってオフからオンの状態に切り
換える。 ゲートからキャリヤを強制的に引き
出すことによってオンからオフの状態に制御
できるようにしたものをゲート・ターン・オ
フサイリスタ(GTO: gate-turn-off thyristor)と呼
ぶ。
thyristor
521-04-38
5-2-20
集積回路,
IC
数多くの超小形素子が一つの基板上に一体的
に作り込まれている回路。
integrated
circuit,
IC
521-10-04,
(521-10-06
semiconductor
integrated
circuit)
5-2-21
モノリシック集積
回路
1個の半導体のチップ内に作られた集積回路。 monolithic
integrated
circuit
5-2-22
CMOS
基本的なインバータ回路がP-MOSとN-MOS
の1対で構成され,両者が入力に対して互い
に相補的にスイッチングする構造の回路構成
方式。
備考 “相補形MOS”ともいう。
complement-
ary
metal-oxide-
semiconductor,
CMOS
5-2-23
BiMOS
バイポーラ素子とMOS素子とを同一チップ
上に混載して,互いの長所を生かす回路構成
方式。
備考 “バイポーラMOS”ともいう。
bipolar
metal-oxide-
semiconductor,
BiMOS
5-2-24
BiCMOS
バイポーラ素子とCMOS素子とを混載した回
路構成方式。
bipolar
complementary
metal-oxide-
semiconductor,
BiCMOS
75
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
5-2-25
論理IC
組合せ論理又は順序論理を実現するための半
導体集積回路。はん(汎)用のマイクロプロ
セッサ,特定用途向け集積回路(ASIC:
application specific integrated circuit) などがあ
る。
logic integrated
circuit
5-2-26
メモリIC
一つの基本セルに1ビットの情報を記憶でき
るようにし,それを複数配列した集積回路。
記憶情報の読出しと書込みがほぼ同程度の時
間でできるRAM: random access memory,固定
情報の読出ししかできないROM; read only
memory,電気的に書き換え可能なROMであ
るEPROM: erasable and programmable ROMな
どがある。
memory
integrated
circuit
5-2-27
混成集積回路,
ハイブリッドIC
二つ以上の異種の集積回路の組合せ,又は一
つ以上の独立したデバイス若しくは部品と一
つ以上の集積回路とからなる回路。
参考 JIS D 0103 参照。
hybrid integrated
circuit
5-2-28
マルチチップモジ
ュール,
MCM
複数個の LSI チップなどをセラミック基板
などに直接実装し,一つの機能にまとめたモ
ジュール又はパッケージ。各モジュールの寸
法,端子などの大きさや形を標準化し,製作,
組立を容易にし,実装密度及び性能の向上が
図れる。
備考 広義には,ハイブリッドIC も含ま
れる。
multichip
module,
MCM
5-2-29
モノリシックマイ
クロ波集積回
路,
MMIC
1個の半導体チップ内に複数の素子,高周波用
平面回路などの配線が一体的に作り込まれ,
主としてマイクロ波以上の周波数帯で機能す
る集積回路。
monolithic
microwave
integrated
circuit,
MMIC
5-2-30
電流増幅率
バイポーラトランジスタにおいて,ベース電
流に対するコレクタ電流の比。 エミッタ電流
に対するコレクタ電流の比は電流伝送率と呼
ぶ。
current gain
5-2-31
エミッタ (注入)
効率
バイポーラトランジスタにおいて,全エミッ
タ電流 I E を,エミッタ/ベース界面におい
てエミッタからベースへ注入されるキャリヤ
による電流 (I E → B ) とベースからエミッタ
へ注入されるキャリヤによる電流 (I B→ E )
との和で表したときの,I E→B /IE。
emitter
efficiency
76
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
5-2-32
(ベース) 到達率,
輸送効率
バイポーラトランジスタにおいて,エミッタ
からベースに注入されるキャリヤによる電流
を IE→ B ,注入されたキャリヤがベース領域
の多数キャリヤと再結合せずにベース/コレク
タ界面に到達しコレクタ領域へ流れ込むこと
による電流をI B→ Cとするときの,I B →C /
IE→B 。
transport factor
5-2-33
コレクタ効率,
コレクタ増倍率
バイポーラトランジスタにおいて,エミッタ
からベースに注入されベース/コレクタ界面に
到達したキャリヤがコレクタ領域に流れ込む
ことによる電流を I B→C,全コレクタ電流をI
C とするときの,I C /I B→C を。ベース/コレク
タ間の逆バイアスで生じた空乏層の高電界領
域をドリフトする間にアバランシェ増倍が起
こり,1より大きくなることがある。
collector
efficiency
5-2-34
相互コンダクタン
ス,
トランスコンダク
タンス
トランジスタにおいて,入力であるゲート電
圧に対する出力の電流の関係を与えるアドミ
タンスの実部。 通常は,電界効果トランジス
タのゲート電圧VG とドレイン電流 ID の関
係を与える曲線の傾斜から相互コンダクタン
ス g mは,次の式で与えられる。
G
D
V
I
gm
∂
∂
=
mutual
conductance,
Transconductan-
ce
521-07-20
transconduct-
ance (of a
field-effect
transistor,
531-17-14
mutual
conductance)
5-2-35
チャネルコンダク
タンス
電界効果トランジスタにおける出力端子から
みた小信号コンダクタンス。 ゲート電圧が一
定のときの,ドレイン電圧VD に対するドレイ
ン電流 I Dの変化率。次の式で定義される。
D
D
D
V
I
g
∂
∂
=
ドレインコンダクタンスとも呼ばれる。
channel
conductance
5-2-36
少数キャリヤ蓄積
効果
順バイアス印加の注入で少数キャリヤが蓄積
されたPN接合を逆バイアスにスイッチする
とき,蓄積された少数キャリヤの拡散が止ま
り定常状態に落ち着くまでに,定常状態より
大きな逆電流が流れる現象。キャリヤの蓄積
効果が継続する時間を蓄積時間といい,入力
パルスの立ち下がり部分が最大振幅の10 %
に下降した時点から,出力パルスの立ち下が
り部分が最大振幅の10 %まで降下するまで
の遅れ時間で定義される。
minority
carrier
storage effect
5-2-37
遮断周波数
2ポート回路の周波数特性において,ある特性
量の出力対入力の比が低周波における値の規
定値にまで減少する周波数。バイポーラトラ
cut-off
frequency
151-01-66,
521-05-16
77
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
ンジスタでは電流増幅率が直流における値か
ら3 dB低下する周波数で定義される。
5-2-38
最大発振周波数
トランジスタの入出力端の整合をとったとき
の動作最大電力利得が,1になる周波数。
maximum
oscillation
frequency
5-2-39
しきい電圧
電界効果トランジスタのゲートに電圧を印加
していったとき,半導体表面で反転層が形成
されチャネルが導通し始める電圧値。
threshold voltage 521-07-19
threshold
voltage (of an
enhancement
type
field-effect
transistor)
5-2-40
ピンチオフ
電界効果トランジスタのドレイン電圧を上げ
ていったとき,チャネルのドレイン端で反転
層が消失し始める電圧。ピンチオフ電圧以上
のドレイン電圧の領域では,電圧に関係なく
ドレイン電流はほぼ一定となる。
pinch-off
3) 光デバイス,OEICなど
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
5-3-1
発光ダイオード,
LED
PN 接合を設けた半導体に電流を流し,電子と
正孔の発光再結合とによって自然放出光を放
出するダイオード。
参考 光の波長は半導体材料のバンドギ
ャップで決まり,そのスベクトルは
レーザに比べて広い。
light emitting
diode,
LED
731-06-04
発光ダイオー
ド: LED
5-3-2
レーザダイオー
ド,
LD
PN接合と光の共振器とを設けた半導体に電
流を流すことによって,レーザ光線を発生さ
せるPN接合ダイオード。
参考 実用上,発振効率のよい活性層をク
ラッド層で挟んだダブルヘテロ接
合構造のものが使われる。 発光す
る方向によって,活性層に平行な方
向に発光する端面発光形と垂直な
方向に発光する面発光形とに分類
される。 発振スペクトルの単峰性
を得るため,素子内に回折格子を設
けた“分布帰還形 (DFB: distributed
feedback) レーザ”,“分布反射形
(DBR: distributed Bragg reflection)
レーザ (DBRレーザ)”などがある
(JIS Z 8120参照)。
laser diode,
LD
injection
laser
diode:
731-06-09
5-3-3
スーパールミネセ
ンス
適度な線幅の狭線化,適度な指向性をもつ程
度の自然放出の増幅。
superlumines-
cence,
731-06-02
78
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
備考 帰還をかけず,したがって明確な発
振モードをもたない点で,レーザと
区別される。
superradiance
5-3-4
スーパールミネセ
ントダイオード
レーザダイオードと同様な構造であるが,共
振器構造をもたないように,片側の端面の反
射率を抑えた発光素子。高出力でインコヒー
レントな光を指向性よく放射できる。
superlumines-
cent diode
731-06-07
superlumines-
cent LED:
superradiant
diode:SRD,
スーパールミ
ネセンスダ
イオード
5-3-5
量子井戸レーザ
半導体レーザの一種で,発光する領域に量子
井戸構造を利用した素子。バルクのレーザと
比較して,しきい電流値の低減化,高出力な
どの利点がある。
quantum well
laser
5-3-6
フォトダイオー
ド,
PD
PN接合又はショットキー接合に入射した光
によって生じた電子・正孔が空乏層の電界に
よって分離されて生じる電流を利用して光を
検出するダイオード。
参考 通常,接合に逆方向電圧を印加した
状態で使われる。バイポーラトラン
ジスタと同じ構造で,ベース領域を
受光部にして,光照射によって発生
する多数のキャリヤの蓄積に基づ
く大きな電流利得を利用したもの
も多く使われている。 これはベー
ス電極をもたず,2端子で用いられ
るが,構造上,フォトトランジスタ
と呼ばれる(JIS Z 8120 参照)。
photodiode,
PD
521-04-22,
731-06-28,
845-05-39
5-3-7
PIN フォトダイオ
ード
フォトダイオードの一種で,P層とN 層との
間に不純物の濃度の低いi層を設け,通常の
PN 接合形フォトダイオードより高速応答性,
受光感度の向上を図った受光素子。
PIN
photodiode
731-06-29
PIN 形フォト
ダイオード:
PIN-PD
5-3-8
アバランシェフォ
トダイオード,
APD
フォトダイオードの一種で,PN結合又はショ
ットキー接合の逆方向に高電圧を印加し,ア
バランシェ降伏領域で用いることによって増
幅作用を付加し,高速,高感度な特性を図っ
た受光素子。
avalanche
photodiode,
APD
731-06-30
5-3-9
フォトカップラ
発光素子と受光素子とを組み合わせて,電気
信号を入力(発光素子)側から出力(受光素
子)側へ光に変えて送り,入出力間を電気的
に絶縁した構造の素子。
photocoupler
5-3-10
光変調器
光(主にレーザ光)を変調する素子の総称。
変調作用に応じて,強度変調器,位相変調器,
周波数変調器に分類される。材料としては,
optical
modulator
79
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
誘電体,半導体又は 磁性体が用いられる。
5-3-11
方向性(光)結合器
光の電界の結合度を制御することによって,
空間的に光の進行方向をスイッチできる素
子。材料としては,誘電体又は 半導体が用い
られる。
(optical)
directional
coupler
704-02-07,
731-05-11
5-3-12
光ファイバ
誘電体材料で作られた,フィラメント状の光
導波路。
optical fiber
731-02-01
5-3-13
シリカ系光ファイ
バ
酸化シリコンを素材とする光ファイバをい
い,主に光通信用に用いられている。透過光
の波長域は0.8〜1.6 μmの近赤外線領域にあ
る。
silica optical
fiber
5-3-14
ふっ化物光ファイ
バ
ZrF4などのふっ化物を主成分とする光ファイ
バの総称。代表例としては,ZBLAN(Zr-Ba-La-
Al-Na:F)ファイバがある。透過光波長域は1 〜
4 μm である。
fluoride optical
fiber
5-3-15
カルコゲン化合物
光ファイバ
S,Se,Te などの元素からなるカルコゲン化
合物ガラスを主成分とする光ファイバ。As40
S60などがあり,1 〜 8 μm の広い透過波長域
をもつ。
chalcogenide
optical fiber
5-3-16
プラスチックファ
イバ
プラスチックを主成分とする光ファイバの総
称。 PMMA(ポリメチルメタアクリレート)
をコア材とする構成が主流である。
plastic fiber
5-3-17
光集積回路,
光IC
光導波路上で種々の機能を,すべて光で実現
するための集積回路の総称。
optical
integrated
circuit,
integrated
optical circuit
731-06-43
5-3-18
光・電子集積回路,
OEIC
光素子と電子素子とを,同一基板上に集積化
を行った回路の総称。 発光素子,受光素子及
び駆動用電子素子,更には光導波路,光演算
回路などの一体化されたものなどが代表例。
optoelectronic
integrated
circuit,
OEIC
5-3-19
光スイッチ
光をスイッチングする素子の総称。機能によ
って,空間光スイッチ,波長光スイッチなど
に分類される。
optical switch
5-3-20
半導体光増幅器
半導体を用いた光の増幅器。 構成は半導体レ
ーザと似ているが,光の共振器がなく,活性
領域に入射した光は半導体内の電流注入など
による利得を得て,増幅・出射される。
semiconductor
optical
amplifier
5-3-21
光ファイバ増幅器
光ファイバを用いた光の増幅器の総称。光フ
ァイバの中に希土類元素を添加し,その元素
を別の光源で励起することによる誘導放出現
象を利用して,入射光を増幅し出射する。 エ
ルビウム(Er)を添加したシリカ系光ファイバ
は1.55 μm 波長の増幅器としての代表例であ
る。
optical fiber
amplifier
80
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
5-3-22
光ディスク
光で情報の記録・読出しが可能な記録媒体の
総称。レーザスポットの照射をし,照射部分
の反射率などを相変化などの現象により変質
させて記録する。 このスポットエリアの光学
特性の差異をレーザビームで読み出す。
参考 機能により,再生専用形,追記形及
び書換え形に分類される。再生専用
形は,コンパクトディスクやビデオ
ディスクとして,追記形及び書換え
形は,文書・画像ファイル用に,用
いられている。記録媒体としては,
穴空け形,相変化形,相互拡散形な
どに分類される。
optical disk
5-3-23
光磁気ディスク
磁性薄膜を記録媒体として,レーザ光で情報
の記録再生を行う光ディスクの一種。記録で
は,レーザによる熱磁気記録を行い,再生で
は,カー効果を利用している。
magneto-optic
disk
5-3-24
音響光学素子
音波の伝搬による屈折率の周期的変化などを
利用し,光変調器などに用いる素子。
acoustooptic
device
5-3-25
アイソレータ
二つのポートをもち,一方向にだけ信号を通
過させることのできる素子。光アイソレータ
では磁気光学効果などを用いる。
isolator
726-17-19,
731-05-17
5-3-26
磁気光学素子
磁界印加による光の偏光面の回転などを利用
し,光アイソレータ,光メモリなどに用いら
れる素子。
magneto-optic
device
5-3-27
EL 素子
広義には電気入力で光を放出する素子全体を
いう。一般的には,電界発光素子を意味し,
電界印加によって半導体又は有機物の発光セ
ンターを励起して発光する素子。
electrolumine-
scent device
5-3-28
固体撮像素子
撮像素子の中で,光を電荷に変換する部分が
固体で構成されている素子。 電荷結合素子,
光導電・光起電力素子などがその代表例であ
る。
備考 イメージ管とも呼ばれる。また,電
荷結合素子(Charge Coupled Device)
は,CCDと略称される。
solid state
imaging device
5-3-29
太陽電池
光電変換素子の中でも,太陽光のエネルギー
を電気エネルギーに変換するPN 接合をもつ
光電変換素子。太陽光のスペクトル範囲で,
変換効率を高めるように設計される。 主に,
Si,GaAs などが用いられる。
solar cell
5-3-30
光論理素子
光の入力と出力との間で論理・演算動作が可
能となる光素子。 光双安定素子,光しきい値
素子,ダイナミック光メモリなどがある。
optical logic
device
5-3-31
空間光変調器
時系列信号を空間情報に変換できる素子又は
spatial light
81
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
二次元光空間の入力光を二次元のまま処理,
演算する素子。結晶又は非線系光学材料が用
いられる。
modulator
5-3-32
光電管
光電効果による光電子放出を利用し,光の強
度測定,検出などに用いる電子管。
photoelectric
tube
5-3-33
光電子増倍管
入力光を光電面で受け,その光電子を 二次電
子増倍管によって増幅する,高速,高感度な
光検出の多段電流増幅光電管。
photomultipl-
ier tube
394-10-19
photomultiplier
tube: multiplier
phototube:
PMT
(abbreviation),
881-13-61
5-3-34
光導波路
光パワーを導くためにつくられた伝送線路。
optical
waveguide
731-01-45
4) 気体レーザ関係
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
5-4-1
レーザ
光共振器内にある媒質に外部エネルギーを与え
て反転状態に保ち,誘導放出と増幅によって正
帰還を起こさせ,コヒーレントな光の発振を行
う装置。laser の 語源はlight amplification by
stimulated emission of radiation(誘導放出による
光の増幅)からの造語である。
laser
731-06-08,
845-04-39
5-4-2
エキシマレーザ
多くは希ガスを含む短波長レーザで,二つの原
子間で寿命の短い励起分子(エキシマ)準位が
存在し,急速に解離する基底準位への遷移に基
づくレーザ。
excimer laser
5-4-3
自由電子レーザ
誘導コンプトン散乱又は誘導制動放射に基づく
レーザで,相対論的な高速電子を空間的に周期
的な静磁界中を伝搬させ,電子の運動エネルギ
ーを直接光子のエネルギーに変換してコヒーレ
ントな光を得る装置。 電子の速度及び磁界の周
期と強さを変えることによって,出力光の波長
が可変である。
free electron
laser
5-4-4
ガスレーザ
活性媒質が気体であるレーザ。気体は光励起,
高周波放電又は管内の電極間に放電電流を流し
て励起される。光及び放電の働きは,媒質を励
起し反転分布を得ることである。コヒーレンス
がよく,高出力発振を特長とする。
gas laser
5-4-5
カラーセンターレ
ーザ
イオン結晶に電子線又はX線照射で生じる着色
中心の吸収帯を利用したレーザ。
color center
laser
82
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
5-4-6
波長可変レーザ
広帯域にわたり連続的に発振波長を可変となる
レーザ。このためには,レーザ利得スペクトル
の広い媒質を光共振器内に置くとともに,スペ
クトル選択素子を光共振器内に挿入する。 これ
には,色素レーザ,チタンサファイアレーザ,
半導体レーザなどがある。
wavelength
tunable laser
5-4-7
ファブリペロー共
振器
高反射率の鏡を2枚対向させた形で,レーザ発
振を起こすための共振器。
Fabry-Pérot
resonator
5-4-8
空間周波数
像又は物体を構成する周期的な構造の細かさを
表す量。 単位は単位長さ当たりの周期の数で表
し,本/mmで表す。
spatial
frequency
5-4-9
光子統計
光を光子の集合とみなし,その性質を取り扱う
統計。
photon
statistics
5-4-10
自己位相変調
媒質の屈折率が,時間変化するパルス光の強度
とともに増加する一時的な変調作用。それによ
って,パルスの前端は低周波側にシフトし,後
端は高周波側にシフトする。
self-phase
modulation
5-4-11
自己相関関数
特性関数
)
(t
f
に対してτを時間遅れパラメー
タとすると
)
(
)
(
τ
−
t
f
t
f
積の時間平均を自己
相関関数といい,その値
)
(τ
C
は,
∫−
∞
→
−
=
T
T
T
dt
t
f
t
f
T
C
)
(
)
(
2
1
lim
)
(
τ
τ
に等しい。
autocorrelation
function
5-4-12
チャーピング,
チャープ
キャリヤ周波数が時間とともに増加又は減少す
ること。
chirping
731-06-26
5-4-13
非線形光学
入射光の振幅に比例せず,2次以上の高次の効
果が生じる光学現象を扱う学問分野。 この分野
にフォトリフラクティブ効果,光パラメトリッ
ク発振などが含まれる。
nonlinear
optics
5-4-14
光パラメトリック
発振
非線形光学効果を利用し角周波数ω1のレーザ
光からω1 = ω2 + ω3 を満たす角周波数ω2とω3
の光が発生する現象。2次の非線形光学媒質を
ファブリペロー共振器の中に置き,外から角周
波数 ω1のレーザでポンピングすると,媒質は,
ω1 = ω2 + ω3 を満たすシグナルω2とアイドラー
ω3の周波数の光に対して,パラメトリック増幅
作用が生じ,しきい値を超えるとシグナル光と
アイドラー光とが発振する。これによって,波
長可変レーザが実現できる。
optical
parametric
oscillation
5-4-15
光偏向
電気信号によって光ビームの伝搬方向を変える
こと。
light
deflection,
optical
deflection
531-14-08
deflection
5-4-16
フォトリフラクテ
ィブ効果
屈折率変化が光で誘起される効果。多くの電気
光学効果媒質に見られる効果で,誘起された屈
photorefractive
effect
83
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
折率変化は,光の照射が消えた後もしばらく残
存する。
5-4-17
フォトンエコー
ある時間間隔 τ で 二つのレーザパルスが非線
形媒質に入射すると,光波の干渉によって第2
パルスからτだけ遅れてコヒーレントな光パル
スが生成されること。
photon echo
5-4-18
自然放出
外部電磁界の存在に依存しない速度で起こる励
起状態にある系からの光放出。
spontaneous
emission
731-06-01
5-4-19
誘導放出
励起状態にある系と入射電磁波との相互作用の
結果として起こる,同じ周波数の電磁波の放出。
stimulated
emission
731-06-03,
845-04-38
5-4-20
アインシュタイン
のA係数,B係
数
A係数: 原子又は分子が自然に上準位から下準
位へ光放出を伴って遷移する速度を支配する比
例定数をいい,単位時間当たりの遷移数を上準
位の原子数で除したものに等しい。
B係数: 原子又は分子が上準位から下準位へ光
放出を伴って誘導遷移する速度を支配する比例
定数をいい,単位時間当たりの遷移数を,単位
体積,単位波数当たりの誘導遷移を含む放出光
エネルギーと上準位の原子数との積で除したも
のに等しい。
Einstein's A,B
coefficients
5-4-21
光共振器
光の領域の周波数をもつ電磁波に対する共振
器。これに,ファブリペロー共振器などが含ま
れる。
optical
resonator,
laser
resonator
5-4-22
ガウスビーム
波面がビームのどの点でもほとんど球状で,波
面の横方向電界がビームの軸からの距離のガウ
ス関数である電磁波のビーム。
Gaussian beam
731-01-34
5-4-23
Qスイッチ
レーザ共振器のQ値を急速に変化すること。 こ
れによって,高出力パルスが発生できる。
備考 Q値は,共振器の蓄積エネルギーを
毎秒失われるエネルギーで除した値
に光の角周波数を乗じたもの。
Q-switch
5-4-24
キャビティダンピ
ング
共振器内に光エネルギーをためておいて,共振
器のQ値を高い状態から,低い状態へ急激に下
げることによって,光エネルギーをパルスとし
て外部に取り出すこと。
cavity
dumping
5-4-25
電気双極子遷移
電気双極子で近似された原子,分子などと電磁
波との相互作用によって生じる光学的遷移。
electric dipole
transition
5-4-26
磁気双極子遷移
磁気双極子で近似された,原子,分子などと電
磁波との相互作用によって生じる光学的遷移。
magnetic
dipole
transition
5-4-27
自然幅
遷移の起こるエネルギー準位の有限な寿命に起
因する吸収又は発光のスペクトルの線幅。
natural
linewidth
5-4-28
スポットサイズ
ビーム半径ともいい,ガウスビームの太さを表
す量。 ガウスビームで光の振幅が光軸上の値の
spot size
84
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
1/eになる光軸からの距離。
5-4-29
縦緩和
占有粒子数の差が熱平衡状態に近づくときのエ
ネルギー緩和。スピン−格子緩和(spin-lattice
relaxation)ともいう。
longitudinal
relaxation
5-4-30
横緩和
エネルギー分布を変えずに,量子状態の位相が
変化する緩和。スピン−スピン緩和(spin-spin
relaxation)ともいう。
transverse
relaxation
5-4-31
反転分布
ある原子,分子系において,より高いエネルギ
ー状態が,より低いエネルギー状態よりも多く
の分布数をもっている状態。
population
inversion
5-4-32
ビームの発散角
ビーム強度が中心値の 1/e2 になる対称2点間
のビームの広がりの全角。
divergence
angle of beam
5-4-33
ブリュースタ角
誘電体平面境界で反射する光に関し,電界ベク
トルが入射面内にある光の反射率がゼロになる
入射角。 反射光は入射面に垂直な成分だけにな
り直線偏光になる。
備考 媒質1から2へ入射する光のブリュ
ースタ角 θBは,
)
(
1
2
B
n
/
n
arctan
=
θ
ここに,
1n,
2
nは,それぞれ,媒
質1,2の屈折率である。
Brewster's
angle
705-04-20
Brewster angle,
ブルースター
角,
731-03-24
(705-04-20
MOD)
Brewster's
angle,
ブリュースタ
角
5-4-34
ホールバーニング
不均一拡がりのスペクトルをもつ媒質に狭帯域
の強い光が入射し,媒質のスペクトルに狭い周
波数の範囲に限られた減衰又は利得の飽和が生
じたときのスペクトルのへこみ(穴)。
hole burning
5-4-35
ホログラフィー
波の振幅と位相の分布とを書き込み,再生する
技術。三次元の光画像生成の方法として広く使
われる。光画像生成では,対象物からのコヒー
レントな反射光と同じ光源から直接来る光,又
は鏡からの反射光との干渉パターンを写真板に
記録することで行われる。
holography
5-4-36
ポンピング
1) 光の増幅,発振を行わせるため原子,分子
などを励起し,反転分布を形成すること。
2) パラメトリック増幅系に特定の周波数の励
起光エネルギーを注入すること。
pumping
5-4-37
モード同期
レーザが多モード発振するとき,各モード間の
周波数の差が等しくて一定の位相関係をもつよ
うになること。
mode locking
5-4-38
ラビ周波数
2準位原子に共鳴したレーザ光を入射すると,
上準位及び下準位の占有粒子数は,周期的,か
つ,相補的に増加又は減少を繰り返すときのこ
の周波数をいう。共鳴時には,光の電界を E,
原子の双極子モーメントを d とすると,dE/2h
Rabi frequency
85
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
で与えられる。ここに,h は,プランク定数で
ある。
f)
関連事項(雑音,その他)
番号
用語
定義
参考
対応英語
関連IEC 60050
番号及び用語
6-1
雑音
1) 広い周波数範囲にわたり,ランダムに生じ
る,指示値,表示値又は供給値の好ましく
ない変化。
2) 信号に重畳し測定値又は供給値をあいまい
にする妨害。
3) 系に加わる不規則な信号。負荷変動や動特
性の微小変化による好ましくない乱れ。
4) 周期性がなく,部分音に分解できない音。
noise
101-14-63
(702-08-03
MOD),
303-08-09,
702-08-03
noise
(in
telecommunica
tion),
801-21-08
6-2
ランダム雑音
与えられた時点での値が,予測できない雑音。
random noise
161-02-14,
702-08-38,
801-21-09
6-3
白色雑音
周期性をもたず一定の連続スペクトルをもち,
所定の周波数範囲内で1オクターブ当たりに含
まれる成分の強さが,周波数位置に関係なく一
定である雑音。
参考 白色雑音を −3 dB/oct。の低域通過
フィルタを通せばピンク雑音が得ら
れる。
white noise,
flat random
noise
702-08-39,
801-21-10
6-4
1/f 雑音
パワースペクトル密度が周波数に反比例して増
加する雑音をいい,半導体素子においてはその
表面状態に依存することが多い。
備考 低周波において顕著。表面の清浄度,
環境に影響される。
1/f noise
531-15-07,
702-08-48
6-5
散弾雑音,
ショット雑音
1) 電子管において電子放出の不連続,不規則
に基づく雑音。その周波数分布は,極めて
高いところまでほぼ一様である。
2) 半導体に電界を印加して電流を流すとき,
キャリヤの数及びドリフト速度のいずれも
の揺らぎによって生じる雑音。
shot noise
531-15-05,
702-08-46,
731-06-39
6-6
フリッカ雑音
1) 半導体素子のポテンシャル障壁の揺らぎに
よるキャリヤ密度の変調による雑音。
2) 電子管の陰極表面の活性中心の不規則な変
化(生成又は消滅)による雑音(通常10 kHz
以下で問題となる。ほぼ周波数に反比例し
て大きくなる。)。
flicker noise
531-15-06,
702-08-47
86
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
6-7
熱雑音
半導体,抵抗体などでキャリヤの熱伝導の揺ら
ぎによって端子の両端に現れる不規則な電位差
による雑音。ΔV 2 = 4 k T R Δf で表される。 た
だし,ΔV は素子の両端に現れる電位差で,こ
れを雑音電圧といい,単位は (V), k :ボルツマ
ン定数 (J/K),R: 素子の抵抗値 (Ω), T : 絶対
温度 (K),Δf : 測定周波数帯域幅 (Hz)。
thermal noise,
Johnson noise
531-15-03,
702-08-45
6-8
電流雑音
抵抗器を流れる電流にほぼ比例する雑音。炭素
皮膜抵抗器や体抵抗器に見られる。熱雑音の数
倍の大きさがある。
参考 炭素皮膜抵抗器や体抵抗器では,炭
素粒子同士の接触による電流雑音が
特に多く,これを接触雑音ともいう。
current noise
6-9
接触雑音
不完全な接触によって発生する電気的雑音。
contact noise
6-10
量子雑音
電磁放射,特に光放射の粒子的性質に起因する
雑音で,量子力学の不確定性原理に基づく。
備考 通常の温度では,量子雑音は光放射
のような非常に高い周波数の電磁波
においてだけ,重要である。
quantum
noise,
photon noise
702-08-49,
731-01-65
(702-08-49
MOD)
6-11
雑音指数
四端子回路網において,入力端子における信号
と雑音の有効電力をSi ,N i,出力端子における
それを S o,No とするとき,(Si /N i)/(S o /N o)に
よって与えられる値をいう。
noise figure
6-12
人工知能
認識能力,学習能力,抽象的思考能力,環境適
応能力などを人工的に実験したもの。多くの場
合,コンピュータを使用する。推論,判断など
の知的機能を人工的に実現したもの。データを
蓄えるデータベース部,集めた知識から結論を
引き出す推論部とから成り立つ(学習機能をも
つものもある。)。
artificial
intelligence
(351-11-26
artificial
intelligence
(in automatic
control)
6-13
ニューラルネット
ワーク
人間の神経細胞又はその結合状態を参考にし
て,ニューロンを模倣した素子を回路網状に接
続し,パターン認識,情報処理,連想メモリな
どへの利用を目的とした回路網。
neural network
6-14
ニューラルチップ
脳の神経回路網を模倣した,ニューラルネット
ワークを実行するために用いられるLSI(実現
のための LSI には,ディジタル回路,アナログ
回路,光技術を用いる。)。
neural chips
6-15
ニューロン
細経の核と,その周辺の細胞質を含む細胞体と,
そこから伸びる樹状突起及び軸索とからなる,
神経細胞。
neuron
891-02-05
ニューロン:軸
索
6-16
カオス
不規則で複雑であるが,しかしある簡単な規則
が背面にある現象。
chaos
6-17
ファジー論理
論理演算における論理で,真を 1,偽を0とす
る代わりに(0,1)の区間の任意の実数を真理値
として考えたもの。 例えば,0.6 を真理値とす
fuzzy logic
87
C 5600:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
るもの。 そのため,通常の種々の論理操作をそ
のあいまいの程度とともに計算できる。
6-18
ファジー推論
あいまいさを含んだ法則を用いて行う推論。
fuzzy
reasoning
6-19
ファジーチップ
ファジー推論を高速に実行させるために作られ
た大規模集積回路。
fuzzy chip
関連規格 JIS D 0103 自動車部品−電気装置の機器・部品−名称
JIS Z 8120 光学
IEC 60050 International Electrotechnical Vocabulary
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。