サイトトップへこのカテゴリの一覧へ

C 5516:2015 (IEC 60118-15:2012) 

(1) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

目 次 

ページ 

序文 ··································································································································· 1 

1 適用範囲························································································································· 1 

2 引用規格························································································································· 2 

3 用語及び定義 ··················································································································· 2 

4 制限······························································································································· 3 

5 セットアップ ··················································································································· 3 

5.1 システム概要 ················································································································ 3 

5.2 推定挿入利得(EIG) ····································································································· 5 

5.3 カプラ利得 ··················································································································· 6 

6 測定装置························································································································· 6 

6.1 音響的要求事項 ············································································································· 6 

6.2 試験信号 ······················································································································ 7 

6.3 イヤホンカプラ及び接続 ································································································· 9 

7 試験条件························································································································ 10 

7.1 補聴器のプログラミング ································································································ 10 

7.2 プログラミングにおける装用者の設定(エンドユーザ設定) ················································· 10 

7.3 典型的な補聴器装用者のオージオグラム············································································ 10 

8 測定及び分析 ·················································································································· 12 

8.1 測定 ··························································································································· 12 

8.2 分析 ··························································································································· 13 

9 データの提示 ·················································································································· 19 

9.1 LTASS利得(LTASS EIG又はLTASSカプラ利得) ···························································· 19 

9.2 パーセンタイル利得(パーセンタイルEIG又はパーセンタイルカプラ利得) ··························· 20 

9.3 利得の表示の解釈 ········································································································· 21 

9.4 必須のデータ ··············································································································· 21 

附属書A(参考)国際音声試験信号(ISTS) ············································································ 23 

参考文献 ···························································································································· 26 

C 5516:2015 (IEC 60118-15:2012) 

(2) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

まえがき 

この規格は,工業標準化法第12条第1項の規定に基づき,一般社団法人日本補聴器工業会(JHIMA)

及び一般財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出

があり,日本工業標準調査会の審議を経て,厚生労働大臣及び経済産業大臣が制定した日本工業規格であ

る。 

この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。 

この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意

を喚起する。厚生労働大臣,経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の

特許出願及び実用新案権に関わる確認について,責任はもたない。 

  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格          JIS 

C 5516:2015 

(IEC 60118-15:2012) 

音声に近い試験信号による補聴器の信号処理特性の

測定方法 

Methods for characterising signal processing in hearing aids with a 

speech-like signal 

序文 

この規格は,2012年に第1版として発行されたIEC 60118-15を基に,技術的内容及び構成を変更する

ことなく作成した日本工業規格である。 

なお,この規格で点線の下線を施してある参考事項は,対応国際規格にはない事項である。 

実際の使用時における補聴器の特性評価は,JIS C 5512に従って定めた評価と明確に異なる可能性があ

る。JIS C 5512では音声と異なる試験信号を用い,補聴器は,一般には,典型的な使用時の設定とは異な

る特定の設定に調整する。 

この規格では,推奨する音声に似た試験信号である国際音声試験信号(ISTS)を記述し,この信号を用

いて,ある範囲のオージオグラムに対して実際の使用者の設定か,又は製造業者の推奨する設定のいずれ

かに調整した補聴器の特性を測定する方法を規定する。この規格では,補聴器とは,物理的な補聴器とそ

れに附属するフィッティングソフトウェアとの組合せをいう。 

適用範囲 

この規格は,通常の音声を代表するように設計した試験信号であるISTSを,気導補聴器の信号処理特

性の測定方法とともに規定する。この測定は推定挿入利得(EIG)を求めるために行われる。製造,供給

及び配送時に補聴器の特性を評価するために,JIS C 5512の附属書JAによる2 cm3カプラを用いてカプラ

利得を求める手順も規定する。 

注記1 この規格の対応国際規格では,IEC 60318-5が引用されているが,この規格では,引用規格

の代わりにJIS C 5512の附属書JAを引用した。 

手順では音声に近い試験信号を用い,補聴器の設定は個々の使用者向けにプログラムした設定か,又は

水平形,高音漸傾形及び高音急墜形のオージオグラムの範囲の典型的な使用者向けに製造業者が推奨する

設定のいずれかとし,測定した特性が典型的な使用者の設定で補聴器を付けた人が受ける特性と比較でき

るようにする。 

この規格の目的は,ある補聴器について,規定する手順に従い,規格の要求事項に適合する装置を用い

て得た測定が実質的に同じ結果となることを保証することである。 

非線形処理技術を応用した補聴器では,信号処理の特性の測定結果は,使用した試験信号に対してだけ

有効である。異なる試験信号又は試験条件を必要とする測定は,この規格の適用範囲外である。 

この規格の規定に適合することは,測定の結果の誤差を試験機関における測定の実際の拡張不確かさを

用いて広げたものが,この規格の6.1によって指定する許容範囲に完全に収まっている場合にだけ実証さ

C 5516:2015 (IEC 60118-15:2012) 

  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

れる。 

補聴器の音響性能について,使用者個人の耳に補聴器を音響的につなぎ,個人の解剖学的個体差による

音響的影響を考慮に入れる測定方法は,実耳測定として知られているが,この規格の範囲外である。 

注記2 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。 

IEC 60118-15:2012,Electroacoustics−Hearing aids−Part 15: Methods for characterising signal 

processing in hearing aids with a speech-like signal(IDT) 

なお,対応の程度を表す記号“IDT”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“一致している”

ことを示す。 

引用規格 

次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの

引用規格のうちで,西暦年を付記してあるものは,記載の年の版を適用し,その後の改正版(追補を含む。)

は適用しない。西暦年の付記がない引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。 

JIS C 1514 オクターブ及び1/Nオクターブバンドフィルタ 

注記 対応国際規格:IEC 61260,Electroacoustics−Octave-band and fractional-octave-band filters(IDT) 

JIS C 5512 補聴器 

注記 対応国際規格:IEC 60118-7,Electroacoustics−Hearing aids−Part 7: Measurement of the 

performance characteristics of hearing aids for production, supply and delivery quality assurance 

purposes及びIEC 60318-5,Electroacoustics−Simulators of human head and ear−Part 5: 2 cm3 

coupler for the measurement of hearing aids and earphones coupled to the ear by means of ear inserts

(IDT) 

IEC 60118-8:2005,Electroacoustics−Hearing aids−Part 8: Methods of measurement of performance 

characteristics of hearing aids under simulated in situ working conditions 

IEC 60318-4,Electroacoustics−Simulators of human head and ear−Part 4: Occluded-ear simulator for the 

measurement of earphones coupled to the ear by means of ear inserts 

用語及び定義 

この規格で用いる主な用語及び定義は,次による。 

3.1 

音圧レベル(sound pressure level) 

20 μPaを基準とするデシベル(dB)で表した音圧のレベル。 

3.2 

パーセンタイル音圧レベル(percentile sound pressure level) 

提示された測定時間にわたり125 msの時間間隔で測定した音圧レベルが,ある割合を下回るところの音

圧レベル。dB単位で表す。 

注記1 例えば,30パーセンタイル音圧レベルは,測定した音圧レベルの30 %がその音圧レベルを

下回る。測定した音圧レベルのうち残りの70 %は,その音圧レベルを上回る。 

注記2 99パーセンタイルは,音圧レベルのピーク値を示すものと解釈できる。 

注記3 ここで用いるパーセンタイルの定義は,一般の統計学に準じる。この定義は音響学など他の

科学分野と異なる場合がある。 

C 5516:2015 (IEC 60118-15:2012) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

3.3 

国際音声試験信号,ISTS(international speech test signal,ISTS) 

この規格で定義する音声に近い試験信号。 

3.4 

長時間平均音声スペクトル,LTASS(long term average speech spectrum,LTASS) 

1/3オクターブバンドで測定した音声の音圧レベルを,長時間にわたり平均化したもの。 

注記 この規格では,時間の長さを45秒としている。 

3.5 

密閉形擬似耳,OES(occluded ear simulator,OES) 

IEC 60318-4で定義された擬似耳。 

3.6 

推定挿入利得,EIG(estimated insertion gain of a hearing aid,EIG) 

ある人の集団で共通に得られるであろう,実耳挿入利得の推定値。 

注記 この推定値は,密閉形擬似耳又はJIS C 5512の附属書JAで定義された2 cm3カプラを用いた

補聴器利得の測定値に基づいて推定される。 

3.7 

カプラ利得(coupler gain of a hearing aid) 

JIS C 5512の附属書JAで定義した2 cm3カプラによって測定された補聴器の利得。 

3.8 

LTASS利得(LTASS gain of a hearing aid) 

ISTSの,LTASSに対するEIG又はカプラ利得。 

3.9 

パーセンタイル利得(percentile gain of a hearing aid) 

ISTSの,ある1/3オクターブバンド内の音圧レベル分布のうちの,あるパーセンタイルに対するEIG又

はカプラ利得。 

制限 

この規格は,補聴器の特性評価のための技術方法を提供するものであり,挿入利得測定のための臨床的

な手順を定めるものではないが,この規格の測定結果は補聴器装用状態に関する結果の理解を高めるため

にEIGで表す。 

頭部,胴体,耳介,外耳道及び鼓膜の解剖学的な多様性のほかに,装用時と擬似耳又はカプラの使用の

違いとによって,EIGは個々人で得られる補聴器装用状態での(実耳装用での)結果と著しく異なる場合

があることに注意する。 

セットアップ 

5.1 

システム概要 

試験方法の目的は,ある人の集団で共通に得られるであろう,挿入利得の推定値を得ることである。生

産・供給及び配送のために補聴器を評価する場合は,JIS C 5512の附属書JAで規定する2 cm3カプラによ

るカプラ利得を用いる場合もある。 

この規格は,1/3オクターブバンドにおける補聴器利得の測定のためにISTSを採用し,LTASSに対する

C 5516:2015 (IEC 60118-15:2012) 

  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

利得(LTASS利得)の概念,及び125 msの区分でISTSの1/3オクターブバンド帯域レベルのあるパーセ

ンタイルに相当する時間をそろえた利得の概念を導入する。各帯域の中で,LTASS利得は試験時間にわた

り平均した利得である。各帯域で,あるパーセンタイルでのパーセンタイル利得は,そのパーセンタイル

で与えられる音圧レベルをもつISTSの分布の中の各125 ms区間について求められ,これらの利得が試験

時間にわたり平均化される。 

この規格の方法によると,ISTSのLTASSと30,65及び99パーセンタイル値とに対する,EIG(推奨)

及び2 cm3カプラ利得(任意)が得られる。 

EIG測定においては,ISTSは,試験される補聴器の種類に対するマイクロホン位置効果によってスペク

トルが整形される。補聴器の出力は密閉形擬似耳で測定することが望ましいが,2 cm3カプラ音圧レベルに

密閉形擬似耳と2 cm3カプラとの差を加えることで推定してもよい。EIG(LTASS利得又はいろいろなパ

ーセンタイル音圧レベルでの音声利得から計算する。)は,補聴器の出力の帯域レベルから,対応するISTS

の帯域レベルと擬似裸耳利得(マネキン非密閉耳利得minikin unoccluded ear gain)(IEC 60118-8:2005の附

属書B)とを差し引くことで得られる。 

2 cm3カプラ利得の測定では,補聴器の入力はISTSで,その出力は2 cm3カプラの音圧レベルである。 

図1及び図2に測定方法の概要を示す。 

a) 図1は,IEC 60318-4による密閉形擬似耳(OES)又はJIS C 5512の附属書JAによる2 cm3カプラを

用い,IEC 60118-8の自由音場−補聴器マイクロホン変換(マイクロホン位置効果)を適用してEIG

を決定するために,8.1.2によって補聴器のレスポンスを測定する手順を図示する。 

注記 図の右側の流れ図は国際音声試験信号(ISTS)に必要な補正を施した上でスピーカから再生

し,補聴器に入力される位置での音(入力信号)を録音する手順を示している。左側の流れ

図は入力信号が供試補聴器によって増幅された音(出力信号)を録音する手順を示している。

録音した入力信号と出力信号とを用いて,8.2及び図6によって分析を行う。 

b) 図2は,JIS C 5512の附属書JAによる2 cm3カプラを用い,カプラ利得を決定するために8.1.3によ

って補聴器のレスポンスを測定する手順を図示する。 

注記 図の右側と左側との流れ図の関係は,図1と同様である。 

background image

C 5516:2015 (IEC 60118-15:2012) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

5.2 

推定挿入利得(EIG) 

注記1 擬似耳は,IEC 60318-4に従い,2 cm3カプラは,JIS C 5512の附属書JAに従っている。 
注記2 縦線をもつブロックは,実際の測定の構成の物理的な部分である。横線をもつブロックは,ソフトウェアに

よる事前及び事後処理のステップである。 

図1−EIGの測定手順 

ISTS 

試験箱の 
音場補正 

マイクロホン 

位置効果の補正 

スピーカ 
から出力 

スピーカ 

から補聴器 

への伝搬 

補聴器で 

受音 

擬似耳又は 

2 cm3カプラ 

へ出力 

カプラ内 

マイクロホン 

で録音 

分析に用いる 

出力信号 

ISTS 

試験箱の 
音場補正 

スピーカ 
から出力 

スピーカ 

から補聴器 

への伝搬 

参照用 

マイクロホン 

で録音 

分析に用いる 

入力信号 

background image

C 5516:2015 (IEC 60118-15:2012) 

  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

5.3 

カプラ利得 

注記1 2 cm3カプラは,JIS C 5512の附属書JAに従っている。 
注記2 縦線をもつブロックは,実際の測定の構成の物理的な部分である。横線をもつブロックは,ソフトウェアに

よる事前及び事後処理のステップである。 

図2−カプラ利得の測定手順 

測定装置 

6.1 

音響的要求事項 

音響的な測定は,JIS C 5512に規定する試験装置,試験条件及び音響試験箱の要求事項によるほか,次

による。 

ISTS 

試験箱の 
音場補正 

スピーカ 
から出力 

スピーカ 

から補聴器 

への伝搬 

補聴器で 

受音 

2 cm3カプラ 

へ出力 

カプラ内 

マイクロホン 

で録音 

分析に用いる 

出力信号 

ISTS 

試験箱の 
音場補正 

スピーカ 
から出力 

スピーカ 

から補聴器 

への伝搬 

参照用 

マイクロホン 

で録音 

分析に用いる 

入力信号 

C 5516:2015 (IEC 60118-15:2012) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

a) 使用する試験箱は,200 Hz〜8 kHzの周波数において実質的に自由音場を提供しなければならない。 

b) 補聴器は,正面から音が入射する(IEC 61669に定義する方位角と仰角とが0度となる)ように置か

なければならない。補聴器の種類によってこれが適切ではない場合は,実際の入射条件を示すことが

望ましい。 

c) 補聴器の基準点における入力音圧レベルは,基準マイクロホンを用いる音圧法又は置換法を用いて一

定に保つ。 

d) 使用する1/3オクターブバンドフィルタは,250 Hz〜6.3 kHzの公称中心周波数をもつものとする。フ

ィルタは,JIS C 1514のクラス2の要求事項を満たさなければならない。 

e) 音響試験箱中の環境騒音及び機械的振動などの妨害音のレベルは,測定結果に0.5 dB以上影響しない

よう十分に低いものとする。このことは,信号音源のスイッチを切ったときに,補聴器の出力レベル

が10 dB以上低下することで証明される。 

f) 

補聴器の基準点における音圧レベルは,200 Hz〜2 kHzの範囲では±1.5 dB以内,及び2 kHz〜8 kHz

の範囲では±2.5 dB以内の正確さとする。 

g) 試験信号の測定に使用するマイクロホンの自由音場感度は,付随する増幅器及び読み出し装置ととも

に,1 kHzにおける自由音場感度に対して,200 Hz〜5 kHzの範囲では±1 dB以内,及び5 kHz〜8 kHz

の範囲では±2 dB以内で周波数には依存しないものとする。規準マイクロホンシステムの圧力感度こ

う(較)正は,250 Hz〜1 250 Hzの間の1周波数(1 kHzが望ましい。)でのこう(較)正によるもの

とする。こう(較)正の拡張不確かさは1 dB以内とする。 

h) カプラマイクロホンの相対的な圧力感度は,付随する増幅器,読み出し装置とともに,1 kHzにおけ

る圧力感度に対して,200 Hz〜5 kHzの範囲では±1 dB以内,及び5 kHz〜8 kHzの範囲では±2 dB以

内で周波数には依存しないものとする。カプラマイクロホンシステムの圧力感度こう(較)正は,250 

Hz〜1 250 Hzの間の1周波数(1 kHzが望ましい。)でのこう(較)正によるものとする。こう(較)

正の拡張不確かさは1 dB以内とする。 

6.2 

試験信号 

6.2.1 

国際音声試験信号(ISTS)の仕様 

ISTSを,この規格の測定のための試験信号として用いる。この信号は,著作権をもつ欧州補聴器製造業

者協会によって開発された。それは,16ビット又は24ビットの音声ファイル(“.wav”形式のファイル)

として,この組織から無料で利用できる。 

ISTSは,アラビア語,英語,フランス語,ドイツ語,標準中国語及びスペイン語の女性の話者の録音を

基に作成した。録音は,短い区間に切断され,ランダムな順序で再構成されている。ISTSの説明は,附属

書A及び参考文献[1]に記載している。ISTSの主な特徴は,次のとおりである。 

a) 信号の帯域幅は100 Hz〜16 kHzである。この規格の測定においては公称中心周波数が0.25 kHz〜6.3 

kHzの全ての1/3オクターブ帯域を含む帯域幅だけが関係する。 

b) 表1及び図3に音声のLTASSを示す。それは参考文献[2]で報告された女性の話者の平均LTASSであ

る。音響的な再生の精度は,公称中心周波数が0.25 kHz〜6.3 kHzの全ての1/3オクターブ帯域につい

て±3 dB以内でなければならない。 

c) 表1及び図3に,1/3オクターブ帯域における125 ms時間ブロックでの音圧レベル分布の30,65及び

99パーセンタイルを示す。音響的な再生の精度は,公称中心周波数が0.25 kHz〜6.3 kHzの全ての1/3

オクターブ帯域において±3 dB以内とする。 

d) 全持続時間は60秒である。より長い持続時間は,60秒の信号を連結させることで60秒の整数倍に増

background image

C 5516:2015 (IEC 60118-15:2012) 

  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

やすことが可能となる。信号の終点と始点との移行は一致させる。 

e) 公称の全音圧レベルは200 Hz〜5 kHzの帯域で定義される。このレベルは,1 mの距離での通常の会

話音声のレベルと考えられる65 dBである。 

注記 ISTSが65 dB以外の音圧レベルで用いるときは,発話努力が異なるレベルに対応しないので,

その信号は,本当の小さい声又は大きい声を表すものではない。 

図3−1/3オクターブ周波数帯域別に見た,ISTSの30,65,99パーセンタイル及びLTASS(dB) 

 0.25    0.5    1      2      4     8     16 

background image

C 5516:2015 (IEC 60118-15:2012) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

表1−1/3オクターブ周波数帯域別のISTSの30,65,99パーセンタイル及びLTASS(dB) 

ISTSの各1/3オクターブバンドの音圧レベル(dB) 

kHz 

0.25 0.315 0.40 0.50 0.63 0.80 1.00 1.25 1.60 2.00 2.50 3.15 4.00 5.00 6.30 8.00 10.00 12.50 16.00 

99 

パーセン

タイル 

68.8 65.7 66.5 67.5 67.4 64.4 60.3 59.1 58.1 55.8 53.9 54.0 51.6 51.1 53.2 51.5 50.1 49.7 48.0 

65 

パーセン

タイル 

47.9 48.2 55.3 53.4 52.6 47.6 43.7 41.8 42.8 40.6 39.5 38.6 37.0 35.5 30.9 33.5 36 33.6 32.3 

30 

パーセン

タイル 

34.7 37.7 40.6 42.7 37.2 32.6 30.9 29.9 29.7 28.4 29.6 28.3 27.7 24.2 20.8 23.3 26.1 25.0 22.6 

LTASS 55.9 53.1 56.7 56.7 55.4 53.0 49.3 47.3 46.7 43.8 42.3 41.7 40.3 39.6 40.2 39.9 40.0 37.8 36.1 

6.2.2 

EIG決定のための試験信号の整形 

従来の測定方法で加える入力音信号は,通常,自由音場環境下で指定される。適用範囲の箇条で説明し

たように,EIGの方法は,人の測定で得られる結果に相当する測定結果を与える。すなわち,補聴器を人

に装着したときには,自由音場環境は,もはや適合しない。 

EIG測定のために,自由音場−補聴器マイクロホン変換(マイクロホン位置効果)を試験信号に適用し

なければならない。最も典型的なほとんどの種類の補聴器に適用される自由音場−補聴器マイクロホン変

換のためのデータは,IEC 60118-8:2005の表A.1に規定されている。これらのデータに従って試験信号を

整形しない場合には,実際に使用されるデータセットについて明示しなければならない。実際の補聴器の

種類に適切な変換データだけを使用する。規定した入力信号全体の音圧レベルは,整形する前に達成しな

ければならない。 

カプラ利得の測定においては,自由音場での入力信号が補聴器に直接加えられる。したがって,試験信

号の変換は不要である。 

6.3 

イヤホンカプラ及び接続 

6.3.1 

EIG 

補聴器出力の測定のためには,IEC 60318-4に適合した密閉形擬似耳が推奨するカプラである。IEC 

60318-4の密閉形擬似耳は,実耳に相当する検査時の補聴器のインピーダンス終端を備えている。 

補聴器を密閉形擬似耳に接続するために,IEC 60318-4による適切な擬似耳アダプタを使用する。 

密閉形擬似耳を使用しない場合には,その代わりにJIS C 5512の附属書JAに従う2 cm3カプラを使用

する。HA-1カプラはITE(耳あな型)補聴器に使用する。HA-2カプラはBTE(耳かけ型)補聴器に使用

する。HA-1カプラは,外耳道内にレシーバをもつもの又は細いチューブで結合するBTE(耳かけ型)補

聴器にも使用される。 

2 cm3カプラとOESによる測定との比較した結果は,お互いに異なり,その補正を2 cm3カプラに適用

しなければならない。8.2.3を参照。残る違いは,主に補聴器のレシーバの負荷に起因するものである。 

使用したカプラ及びアダプタは,明記しなければならない。使用した設定は,完全な測定一式を再現す

るために十分な詳細を明示する。 

6.3.2 

カプラ利得 

カプラ利得を用いる場合には,JIS C 5512の附属書JAに従った2 cm3カプラを使用する。HA-1カプラ

はITE(耳あな型)補聴器に使用する。HA-2カプラはBTE(耳かけ型)補聴器に使用する。HA-1カプラ

10 

C 5516:2015 (IEC 60118-15:2012) 

  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

は,外耳道内にレシーバをもつもの又は細いチューブで結合するBTE(耳かけ型)補聴器にも使用される。 

使用したカプラは,明記しなければならない。使用した設定は,完全な測定一式を再現するために十分

な詳細を明示する。 

試験条件 

7.1 

補聴器のプログラミング 

補聴器の設定は,ある補聴器装用者に対する補聴器の性能を評価するために,その補聴器装用者に合わ

せてプログラムする。 

もう一つの方法として,7.3で定義するオージオグラムから補聴器の適応聴力範囲内にあるものを一つ選

択することによって,典型的な補聴器装用者に合わせてプログラムする。その典型的な補聴器装用者を定

義する全ての関連情報を提供しなければならない。プログラミングは,製造業者が供給するソフトウェア

を使用して,その典型的な補聴器装用者のために典型的で最適な設定にする。 

指定したソフトウェアによるプログラミングに影響を与える全ての関連するパラメータ,機能,及び装

用者の設定(エンドユーザ設定,7.2による。)は,測定した補聴器の設定を再現できるように情報提供す

ることが望ましい。 

測定の都合上,装用者の設定の変更が必要と考えられる場合には,その変更を明示する。 

7.2 

プログラミングにおける装用者の設定(エンドユーザ設定) 

7.2.1 

補聴器の機能 

補聴器の全ての設定は,雑音抑制アルゴリズム,フィードバック抑制システム,残響抑制などを含めて

装用者の設定にすることが望ましい。 

場合によっては特別な補聴器の設定を使用することがある。これは,試験の状態が補聴器の正常な動作

に影響を与える場合である。例えば,ベント,指向性又は音響環境によってパラメータ又は機能が自動的

に変化するときに関連する補聴器の設定である。利得圧縮の特性,雑音抑制のパラメータ,最大利得の設

定又はその他に関連した特定の設定オプションの効果を実証するためにも,特別な設定を使うことがある。

周波数転位(周波数圧縮)のような機能は,解釈が困難な測定結果が得られる可能性があるので無効にす

ることが望ましい。全ての場合で,特別な設定は明確に記載しなければならない。 

7.2.2 

プログラミングにおけるベントの選択 

補聴器のプログラミングにおいて,プログラミングソフトウェアが,装用者のベントサイズの指定を必

要とする場合がある。そのような場合には,ベントを閉鎖した条件で補聴器をプログラムすることを推奨

する。 

その際,補聴器がオープンベント用にプログラムされている場合には,実際にはクローズドベントを用

いて測定したことを明示する。この場合,測定結果は,プログラムしたフィッティングと完全には一致し

ない。 

7.2.3 

指向性 

指向性マイクロホンをもつ補聴器は,可能であれば無指向性に設定することが望ましい。 

無指向性を選択することが可能でない場合には,そのことを明示しなければならない。これらは補聴器

の指向性システムに左右される測定であると解釈するよう注意することが望ましい。 

7.3 

典型的な補聴器装用者のオージオグラム 

典型的な補聴器装用者のための補聴器のプログラミングにおいては,次に定義するオージオグラム群の

中から,補聴器の適応聴力範囲内にあるオージオグラムを一つ選択するのが望ましい。 

background image

11 

C 5516:2015 (IEC 60118-15:2012) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

水平形及び高音漸傾形の標準的なオージオグラム群を,表2及び図4に示す。高音急墜形の標準的なオ

ージオグラム群を,表3及び図5に示す。 

聴力レベルHLは,HL=(HL0.5k+HL1k+HL2k+HL4k) / 4で算出する。 

ここで,HLxkはx kHzにおける聴力レベルを意味する。 

オージオグラム群の導出法は,参考文献[3]に記載している。 

まれにしか見られない,多くの変化をもつ他の形のオージオグラムは指定しない(例えば,低音障害形,

クッキーバイト形,混合性,伝音性など)。上記に指定したオージオグラムのいずれも適切でない場合,製

造業者は,はっきりと定義できるならば他のオージオグラムを指定してもよい。 

表2−水平形及び高音漸傾形の基準のオージオグラム 

No HL 250 Hz 375 Hz 500 Hz 750 Hz 1 000 Hz 1 500 Hz 2 000 Hz 3 000 Hz 4 000 Hz 6 000 Hz 

N1 

16 

10 

10 

10 

10 

10 

10 

15 

20 

30 

40 

N2 

31 

20 

20 

20 

22.5 

25 

30 

35 

40 

45 

50 

N3 

46 

35 

35 

35 

35 

40 

45 

50 

55 

60 

65 

N4 

63 

55 

55 

55 

55 

55 

60 

65 

70 

75 

80 

N5 

76 

65 

67.5 

70 

72.5 

75 

80 

80 

80 

80 

80 

N6 

89 

75 

77.5 

80 

82.5 

85 

90 

90 

95 

100 

100 

N7 103 

90 

92.5 

95 

100 

105 

105 

105 

105 

105 

105 

図4−水平形及び高音漸傾形の基準のオージオグラム 

background image

12 

C 5516:2015 (IEC 60118-15:2012) 

  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

表3−高音急墜形の基準のオージオグラム 

No HL 250 Hz 375 Hz 500 Hz 750 Hz 1 000 Hz 1 500 Hz 2 000 Hz 3 000 Hz 4 000 Hz 6 000 Hz 

S1 

23 

10 

10 

10 

10 

10 

10 

15 

30 

55 

70 

S2 

49 

20 

20 

20 

22.5 

25 

35 

55 

75 

95 

95 

S3 

63 

30 

30 

35 

47.5 

60 

70 

75 

80 

80 

85 

図5−高音急墜形の基準のオージオグラム 

測定及び分析 

8.1 

測定 

8.1.1 

一般的事項 

6.2で規定した60秒のISTSを測定のために用いる。 

最初の15秒は,補聴器を安定させるために用いる。製造業者は必要ならば全信号の整数倍を加えてより

長い安定時間を指定してもよいが,測定時間(45秒),すなわち,分析される時間信号は固定とする。 

測定は,公称中心周波数が250 Hz〜6.3 kHzの1/3オクターブバンドに対して行う。入力信号は,6.2で

示すような音声に近い試験信号で,音圧レベルは通常の音声のレベルに相当する65 dBとする。6.2による

同じ信号を用いるが,音圧レベルを80 dBにまで増幅した大声についても測定を行う。 

任意で6.2による同じ信号を用い,55 dBの音圧レベルの小声で測定してもよい。しかし,この低い音圧

レベルは測定システムのノイズフロアと重なる可能性があるので注意する。 

上記で指定した音圧レベルに加え,6.2で示すのと同じ入力信号の減衰又は増幅によって他のレベルの信

号を使用してもよい。 

13 

C 5516:2015 (IEC 60118-15:2012) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

注記 6.2のISTSは,65 dBの通常の会話レベルの音声を表すよう作られている。試験信号を80 dB

に増幅,又は55 dBに減衰した場合,試験信号は発話努力が異なるため,大声又は小声の全て

の特性とは一致しない。しかし,増幅又は減衰は音声の異なったレベルに対して補聴器を特徴

付ける上で十分であると考えられる。 

8.1.2 

EIG 

EIGは,次の手順で測定する。 

a) 200 Hz〜8 kHzの帯域幅で試験箱内における補聴器入力を均一にする(イコライジングを行う。)。 

b) 6.2.2による整形をしていないISTSを用いて,補聴器入力部における全音圧レベルを65 dBに設定す

る。 

c) 整形をしていないISTSの最後の45秒を録音する。補聴器はスイッチを切るか取り除く。この録音は

繰り返し測定でも同じままであり,再利用することができる。 

d) 試験装置のレベルを変更することなく,6.2.2で規定するとおりにISTSを整形し,補聴器への入力信

号とする。 

e) 分析のために密閉形擬似耳(OES)又は2 cm3カプラで補聴器の出力の最後の45秒を録音する。 

f) 

ステップb) における全音圧レベルを80 dBに設定し,この試験を繰り返す。任意の55 dBの場合も同

様。 

8.1.3 

2 cm3カプラ利得(任意) 

2 cm3カプラにおける利得は,次の手順で測定する。 

a) 200 Hz〜8 kHzの帯域幅で試験箱内の補聴器の入力を均一にする。 

b) 整形していないISTSを用いて,補聴器入力部における全音圧レベルを65 dBに設定する。 

c) 入力信号の最後の45秒を録音する。補聴器はスイッチを切るか取り除く。この録音は繰り返し測定で

も同じままであり,再利用することができる。 

d) 2 cm3カプラで補聴器の出力の最後の45秒を分析のために録音する。 

e) ステップb) における全音圧レベルを80 dBに設定し,この試験を繰り返す。任意の55 dBの場合も同

様。 

8.2 

分析 

8.2.1 

一般的事項 

8.1.2及び8.1.3で測定され録音された入力信号及び補聴器出力信号は,試験信号のLTASSと30,65及

び99パーセンタイル値とに対するEIG又は2 cm3カプラ利得を得るために分析する。分析方法の概要を,

図6に示す。 

background image

14 

C 5516:2015 (IEC 60118-15:2012) 

  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

注記 カプラ補正値は表4による。擬似裸耳利得はIEC 60118-8:2005の附属書Bによる。 

図6−分析の概要 

遅延時間の 

算出及び 

出力信号の 
遅延の補正 

分析用に録音 
した入力信号 

結果の表示 

分析用に録音 
した出力信号 

0.25〜6.3 kHzの 

各1/3オクターブバンド 

に対する繰り返し 

入力信号の 

1/3オクター 

ブバンド 

フィルタ出力 

出力信号の 

1/3オクター 

ブバンド 

フィルタ出力 

125 msの時 

間区間ごと 
の入力信号 
レベル算出 

入力信号の 

LTASSの 

算出 

30,65,99 % 

レベルに 
該当する 

入力信号の 
時間区間の 

特定 

125 msの時 

間区間ごと 
の出力信号 
レベル算出 

出力信号の 

LTASSの 

算出 

2 cm3カプラ 

からEIGを算出する 

場合のカプラ補正値に 

よる補正 

2 cm3カプラ 

からEIGを算出する 

場合のカプラ補正値に 

よる補正 

入力信号の 
時間区間に 

対応する 

出力信号の 
時間区間の 

特定 

30,65,99 %と 

LTASSとに対 

する利得の算出 

EIGを算出 

する場合の擬似裸耳利

得の減算 

次の1/3 

オクターブバンド 

の処理 

出力 

入力 

入力 

出力 

入力 

出力 

background image

15 

C 5516:2015 (IEC 60118-15:2012) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

8.2.2 

補聴器の処理遅れの補償 

デジタル補聴器の処理遅れのため,録音された入力及び出力信号は,分析の前に時間軸を合わせる必要

がある場合もある。すなわち,出力は入力信号に時間合わせを行う。処理遅れ時間が10 ms以上あるとき

は,時間調整が必要である。LTASSの決定のためには,時間調整は必要ない。遅れを決定するためには,

広帯域の相互相関法に基づく方法を推奨する。使用した時間調整,すなわち,出力をどれだけずらしたか

は,再現の目的のために指定し,10 ms以内の精度でなければならない。指定される時間シフトは補聴器

によるものだけを表しており,使用する測定システムによるものでないことは重要である。図7に,補聴

器出力信号y(t) が移動しなければならない時間量を示す。τshiftは,相互相関が最大の絶対値になる時間を

表す。 

図7−出力信号(y)の入力信号(x)に対する時間位置合わせ 

8.2.3 

EIGの決定に2 cm3カプラを使用した場合の補正 

EIGの決定のためには,2 cm3カプラで測定された出力音圧レベルは,表4の値を2 cm3カプラで測定さ

れた音圧レベルに加えることで擬似鼓膜面音圧レベルに補正する。表4は,1/3オクターブ帯域の中心周

波数別に推奨される補正値を示し,HA-1及びHA-2カプラの両方に適用する。補正値は参考文献[4]による。 

表4−2 cm3カプラを用いた場合に推奨されるカプラ補正値 

周波数(kHz) 

0.25 0.315 0.40 0.50 0.63 0.80 1.00 1.25 1.60 2.00 2.50 3.15 4.00 5.00 6.30 

カプラ補正値(dB)  4 

4.2 

4.3 

4.5 

5.2 

6.1 

6.6 

9.3 

10.5 12.2 13.6 14.7 

8.2.4 

国際音声試験信号(ISTS)の長時間平均音声スペクトル(LTASS)に対する推定挿入利得(LTASS 

EIG)の計算 

ISTSの,長時間平均音声スペクトル(LTASS)に対する推定挿入利得(LTASS EIG)は,次のように計

算を行う。 

a) それぞれの1/3オクターブバンドにおいて,8.1.2 c) で録音した入力信号の最後の45秒間のLTASSを

決定する。 

b) それぞれの1/3オクターブバンドにおいて,8.1.2 e) で録音した出力信号の最後の45秒間の音圧レベ

ルを決定する。この出力が2 cm3カプラで記録される場合には,8.2.3に記載したカプラ補正値を加え

る。 

c) それぞれの1/3オクターブバンドにおいて,b) で決定した出力音圧レベルからa) で決定した入力音

16 

C 5516:2015 (IEC 60118-15:2012) 

  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

圧レベルを差し引く。 

d) それぞれの1/3オクターブバンドにおいて,c) で決定される利得からその帯域の擬似裸耳利得(IEC 

60118-8:2005の附属書B)を差し引くことによってLTASS EIGを算出する。 

8.2.5 

国際音声試験信号(ISTS)の長時間平均音声スペクトル(LTASS)に対する2 cm3カプラ利得(LTASS

カプラ利得)の計算(任意) 

ISTSの,長時間平均音声スペクトル(LTASS)に対する2 cm3カプラ利得(LTASSカプラ利得)は,次

のように計算を行う。 

a) それぞれの1/3オクターブバンドにおいて,8.1.3 c) で録音した入力信号の最後の45秒の音圧レベル

を決定する。 

b) それぞれの1/3オクターブバンドにおいて,8.1.3 d) で録音した出力信号の最後の45秒の音圧レベル

を決定する。 

c) それぞれの1/3オクターブバンドにおいて,b) で決定した出力音圧レベルからa) で決定した入力音

圧レベルを差し引くことで,LTASSカプラ利得を算出する。 

8.2.6 

パーセンタイル計算のための録音した信号の区分 

それぞれの1/3オクターブバンドにおいて,8.1.2 c) 又は8.1.3 c) で録音した試験信号と8.1.2 e) 又は8.1.3 

d) で録音した出力信号との音圧レベルを,図8に示すように信号の最後の45秒間にわたり62.5 ms±2 ms

ごとに125 ms±3 msの時間区分で決定する。 

各1/3オクターブバンドにおいて,試験信号のレベルの分布を,信号の最後の45秒間の全ての時間区分

について計算する。この分布から,試験信号の30,65及び99パーセンタイル音圧レベルを決定する。 

background image

17 

C 5516:2015 (IEC 60118-15:2012) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

図8−録音信号の分割 

8.2.7 

ISTSの30,65及び99パーセンタイル(レベル)に対するEIGの算出(パーセンタイル別EIG) 

ISTSの30,65及び99パーセンタイル(レベル)に対するEIGは,次によって算出する。 

a) 8.1.2 e) による出力信号を2 cm3カプラを用いて記録した場合には,出力信号の全時間区分に8.2.3に

よるカプラ補正値を加算して補正する。 

b) 8.1.2 c) で録音した入力信号の各1/3オクターブバンドに対して,音圧レベルが30パーセンタイル±3 

dB以内である時間区分を特定する。 

c) b) で特定した各時間区分ごとに,8.1.2 e) 又は8.2.7 a) のうちの該当する方によって得た出力信号の

対応する1/3オクターブバンドの対応する時間区分を特定する。 

d) b) で特定した各時間区分ごとに,入力信号の1/3オクターブバンド音圧レベルを,c) で特定した対応

する出力信号のバンドレベルから差し引く。 

e) それぞれの1/3オクターブバンドにおいて,b) で特定した全時間区分に対して,d) の結果の平均値

を求める。 

注記 この結果は利得をデシベルで平均したものになる。一般にオージオグラムと比較されるEIG

又はカプラ利得の測定に関連があるとき,利得をdB単位(線形の音圧又はエネルギー量の

代わりに)で平均化するのが望ましい方法と考えられている。 

f) 

各1/3オクターブバンドに対して,そのバンドに対するe) の結果から擬似裸耳利得(IEC 60118-8:2005,

の附属書B)を差し引くことによってEIGを算出する。 

background image

18 

C 5516:2015 (IEC 60118-15:2012) 

  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

g) 65及び99パーセンタイル(レベル)に対してb)〜f) を繰り返す。 

図9の説明図を参照。 

8.2.8 

ISTSの30,65及び99パーセンタイル(レベル)に対する2 cm3カプラ利得(パーセンタイルカ

プラ利得)の算出(任意) 

ISTSの30,65及び99パーセンタイル(レベル)に対するカプラ利得は,次によって算出する。 

a) 8.1.3 c) で録音した入力信号の各1/3オクターブバンドに対して,音圧レベルが30パーセンタイル±3 

dB以内である時間区分を特定する。 

b) a) で特定した各時間区分ごとに,8.1.3 d) で録音した出力信号の対応する1/3オクターブバンドの対

応する時間区分を特定する。 

c) a) で特定した各時間区分ごとに,試験信号の1/3オクターブバンド音圧レベルを,b) で特定した対応

する出力信号のバンド音圧レベルから差し引く。 

d) それぞれの1/3オクターブバンドにおいて,a) で特定した全時間区分に対して,c) の結果を平均する

ことによって30パーセンタイルに対するカプラ利得を得る。 

注記 この結果は利得をデシベルで平均したものになる。一般にオージオグラムと比較されるEIG

又はカプラ利得の測定に関連があるとき,利得をdB単位(線形の音圧又はエネルギー量の

代わりに)で平均化するのが望ましい方法と考えられている。 

e) 65及び99パーセンタイル(レベル)に対してa)〜d) を繰り返す。 

図9の説明図を参照。 

図9−65パーセンタイルに対する“時間を同期させた利得”を得る方法の説明図 

上段図において,入力の65パーセンタイル±3 dB以内である時間区分を特定し,それらを下段図の出

力信号の対応する時間区分と関連付ける。特定した時間区分ごとに,出力レベルと入力レベルとの差をと

ることによって利得を算出する。 

background image

19 

C 5516:2015 (IEC 60118-15:2012) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

データの提示 

9.1 

LTASS利得(LTASS EIG又はLTASSカプラ利得) 

LTASS利得は,65 dB及び80 dBの二つの入力信号レベルで測定され,同一のグラフに表示されなけれ

ばならない。これに加え,55 dBの音圧での測定は任意であり,測定したときにだけ提示すればよい。有

効な測定(例えば,環境騒音の影響がない。)を表すデータ点だけが示される。図10の例では,入力音圧

レベルを55 dB,65 dB及び80 dBとして測定したLTASS利得を示している。 

図10−3種類の入力音圧レベルにおけるLTASS利得 

圧縮を実証する比較目的のためには,55 dB及び80 dBの入力音圧レベルのLTASS利得が,65 dB音圧

レベルと対比して示される。図11の例を参照。 

図11−入力音圧レベル65 dBにおけるLTASS利得と対比した3種類の入力レベルに対する 

LTASS利得(相対値) 

background image

20 

C 5516:2015 (IEC 60118-15:2012) 

  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

9.2 

パーセンタイル利得(パーセンタイルEIG又はパーセンタイルカプラ利得) 

30,65及び99パーセンタイルにおいて測定されたパーセンタイル利得は,同じグラフで示される。有

効な測定(例えば,環境騒音の影響がない。)を表すデータ点だけが示される。入力音圧レベルごとに別の

グラフに表示する。参考のため,LTASS利得を含めることができる。図12に,音圧レベル65 dBのISTS

入力信号を用いて測定したパーセンタイル利得の例を示す。 

図12−65 dBの入力音圧レベルにおける,3種類のパーセンタイルに対するパーセンタイル利得及び 

対応するLTASS利得 

圧縮を実証する比較目的のためには,入力信号の30,65及び99パーセンタイルのパーセンタイル利得

が,LTASS利得と対比して示される。図13の例を参照。 

図13−65 dBの入力音圧レベルにおける,LTASS利得と比較した3種類のパーセンタイルに対する 

パーセンタイル利得(相対値) 

21 

C 5516:2015 (IEC 60118-15:2012) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

9.3 

利得の表示の解釈 

9.3.1 

LTASS利得の表示 

最も重要な利得の表示は,65 dB音圧レベルのLTASS利得で,会話をやり取りする通常のレベルの音声

の利得を示す。80 dBにおけるLTASS利得は,大きいレベルの音声の利得を示す。55 dB(任意)における

LTASS利得は,小さいレベルの利得を示す。 

補聴器のフィッティングではほとんどの場合,小さい音声に対する利得は,通常又は大きなレベルと比

較してより利得が大きくなるようにプログラムされ,聴力損失をもつ人に小さい音声が,より聴こえるよ

うにする。追加の利得の量は,異なる分析帯域で変化するかもしれない。大きな音声に対する利得は,大

抵は,通常又は小さいレベルと比較したときに利得を小さくするようにプログラムされており,増幅され

た音声を快適に保ち及び/又は聴こえの障害となる過度な出力音のレベルになるのを防ぐ。減少した利得

の範囲は,異なる分析帯域で変化することがある。 

圧縮形の補聴器は,異なる入力レベルで異なるLTASS利得を示す。圧縮比が大きくなるほど,より大き

なLTASS利得の広がりになる。測定の際に補聴器の時定数(アタック及び/又はリリースタイム)が安定

時間よりも長いとき,このゆっくりした圧縮の効果を正しく示すことができない場合がある。そのような

状況では,圧縮機能が安定するまで試験信号を繰り返す。 

線形利得をもつ補聴器は,全ての音声のレベルにおいて同じLTASS利得を示す。 

9.3.2 

パーセンタイル利得の表示 

パーセンタイル利得の表示は,音声の内部構造に対する増幅度を示す。録音の一部分は,会話の間隙及

び息継ぎの間の非常に低いレベルを含む。最も静かな音声の成分は,30パーセンタイル音のレベルで代表

され,非常に大きいかピークに近いレベルの成分は,99パーセンタイル音のレベルで代表されると推測さ

れる。65パーセンタイル音圧レベルは,音声成分の中央値に近いレベル付近と合致する。極端に小さいレ

ベル(例えば,15パーセンタイル以下)では,音は,暗騒音及び音声生成と関連した雑音(例えば,呼吸)

に最も関連がある。この理由で,音声エネルギー区分の中央点は,65パーセンタイル付近での表示が選択

されてきた。 

パーセンタイル利得及びLTASS利得の表示の両方は,相補的であり,補聴器の音声の増幅を十分に特徴

付けるのに必要となる。音圧レベル65 dBにおけるLTASS表示は,表示間の比較を可能にするために基準

として使用される。 

速い時定数(アタック及び/又はリリースタイム)をもつ圧縮補聴器は,三つの全てのパーセンタイル

レベルで異なるパーセンタイル利得を示す。圧縮比が大きいほど,利得の隔たりは大きくなる。より短い

(より速い)時定数の場合,異なるパーセンタイルの利得のより大きな広がりがみられる。音声の内部構

造が変化して,音声の細かい構造のうち,小さい部分及び大きな部分が異なって増幅されることを意味す

る。 

時定数が125 msの分析窓と比べて非常に長い(遅い)とき,パーセンタイル利得の差は,異なるパーセ

ンタイル間で,ないか小さい。その場合,音声の細かい構造のうち,小さい部分及び大きな部分が同じよ

うな利得で増幅される。線形の利得をもつ補聴器は,全ての異なるパーセンタイルレベルで同一のパーセ

ンタイル利得を示す。 

9.4 

必須のデータ 

測定結果の提示で,次のデータが提供されるか参照されなければならない。 

a) 測定の種類は,EIG(推奨)又はカプラ利得。5.1を参照。 

b) 機器の種類,フィッティングソフトウェア,オージオグラム(標準的なオージオグラムの参照又は実

22 

C 5516:2015 (IEC 60118-15:2012) 

  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

際に用いられたオージオグラムデータの指定)及び全ての追加変数の指定。 

c) ベント設定(密閉とは異なる場合)及びマイクロホンの指向性(無指向性とは異なる場合)は指定さ

れなければならない。7.2.2及び7.2.3を参照。 

d) カプラの種類の指定。6.3を参照。 

e) EIGの測定を適用するとき,用いた自由音場−補聴器のマイクロホン変換の補正について参照又は指

定を行う。IEC 60118-8:2005の附属書Aを参照。 

f) 

パーセンタイル利得を測定するとき,補聴器の処理遅延の検証について記載する。遅延が10 ms以上

である場合,適用された時間調整について記載する。8.2.2を参照。 

g) 提示された全てのデータポイントについて,雑音レベルが測定されたレベルより10 dB以上低いこと

の検証に関する記載。幾つかのデータポイントがこれを満足していない場合には,これらのポイント

は示された全てのデータの有効性を実現するために削除することが望ましい。 

23 

C 5516:2015 (IEC 60118-15:2012) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書A 

(参考) 

国際音声試験信号(ISTS) 

A.1 ISTSの全体の仕様 

ISTSは,次の設計仕様に基づいて開発された。 

a) 音声試験信号は,通常の音声に似ていなければならないが,理解できてはならない。 

b) 音声試験信号は,最も多く話されているアラビア語,英語,標準中国語及びスペイン語を含み,フラ

ンス語及びドイツ語で補完した六つの異なる言語を基にしたものである。 

c) 音声試験信号は,女性の語音で表現されなければならない。なぜならば,女声のパラメータは男性及

び子供の声の中間であり,既存の語音検査で最も多く使われているからである。 

d) 音声試験信号は,100 Hz〜16 kHzの帯域幅をもたなければならない。 

e) 音声試験信号は,参考文献[2]で規定する国際的な女性の長時間平均音声スペクトル(ILTASS)を複製

したものとする。偏差は1 dB以内でなければならない。 

f) 

音声試験信号のレベルは,全音圧レベルが65 dBに相当しなければならない。このレベルは,200 Hz

〜5 kHzの帯域幅内で測定したものでなければならない。 

g) 1/3オクターブバンドで測定された周波数依存レベルの30〜99パーセンタイル間のレベル差は,連続

した語音のそれに相当し,参考文献[5]及び参考文献[2]から得られる値に相当しなければならない。 

h) 音声試験信号は,語音の有声音及び無声音の両方の要素を模擬した成分を含まなければならない。有

声音の要素は,女性の語音として適切な倍音構造,及び基本周波数値をもつものでなければならない。 

i) 

音声試験信号は,1/3オクターブバンドで測定したとき,4 Hz付近が最大になる通常の語音に相当す

る変調スペクトルをもたなければならない。 

j) 

音声試験信号は,例えば,ホルマント推移に由来する語音の自然な短時間(125 ms区間)のスペクト

ル変化を模擬しなければならない。 

k) 音声試験信号は,実際の語音の共変調パターンをもたなければならない。共変調パターンは,異なる

1/3オクターブバンドの包絡線で相関があるとき生成される。 

l) 

音声試験信号は,通常の連続した語音に生じる通常の(短い)間を含まなければならない。 

m) 音声試験信号の持続時間は60秒とする。 

ISTSは,European Hearing Instrument Manufacturers Association, EHIMA(欧州補聴器製造業者協会)のウ

ェブサイト<www.EHIMA.com>から自由に入手できる。 

A.2 ISTSの設計 

A.2.1 語音の録音 

六つの異なる母語(アメリカ英語,アラビア語,標準中国語,フランス語,ドイツ語及びスペイン語)

の21人の女性の話者が,数回,自然な発音で“北風と太陽”(参考文献[6])を朗読した。録音は,変更を

加えたオフィス空間(500 Hzにおける残響時間0.5秒)で,Neumann KM184指向性マイクロホンを用い,

サンプリング周波数44.1 kHz,24ビットの分解能で行われた。 

各言語において,一人の話者の一つの録音が選択された。選択基準は,話者の出身地,声質(例えば,

24 

C 5516:2015 (IEC 60118-15:2012) 

  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

しわがれ度),基本周波数の中央値であった。録音された語音素材は,参考文献[2]に従って100 Hz〜16 kHz

の間の女性の音声の国際長時間平均音声スペクトルでフィルタ処理され,語音素材の均質性を最適化した

ものである。さらに,長い語音の休止(100 msを超える。)の間の語音持続時間の分布は編集され,録音

の混合に必要なこの分布にある確率関数が当てはめられた。この分布関数では,語音休止の持続時間は650 

msに制限された。 

A.2.2 録音の区分け 

録音は自動的な手続きを用いて次のように断片化された。持続時間500 msの最初の区分が各録音から取

り出された。これらの500 msの区分の中の最後の400 msについて10 ms間隔でパワーが分析された。そ

れから最小のパワーをもつ10 ms間隔が選択された。その間隔の中で最小絶対値が選択された。 

最初の500 ms区分の先頭からこの最小絶対値までの録音を新しい区分とした。この最小絶対値の直後に

次の500 ms区分が始まる。母音及び関連する音素の範囲内でできるだけ切断しないようにするために自動

区分を手動で修正した。結果として生じる区分は100 msと600 msとの間の長さとなった。 

自然な状況を確保するために,100 ms以上の長さをもつ音声内の無音部分は,前の発声部分と同じ区分

の中に維持された。次に続く“開始の区分”と同様に,長い無音部分を含む区分はマークされた。 

A.2.3 区分の混合 

10秒及び15秒の持続時間をもつ区間を作るために,区分はでたらめな順序でお互いに接合された。こ

の手順の間,聞き取れるアーティファクトを回避するために,区分の両端の1 ms部分はハニング窓で修正

された。さらに,言語は区分ごとに変化するようにし,各言語は六つの連続した区分の中で一度選択され

た。 

各区分は,10秒又は15秒の区間の中で一度用いられた。基本周波数の区分間の段差を最小とするため

に,基本周波数は各区分の最初と最後の50 msで分析された。二つの有声の区分が互いに接続されたとき,

基本周波数の変化は10 Hz以内とした。もしこの基準に合わない場合には,他の区分が選択された。二つ

の無声区分及び有声区分と無声区分との組合せは常に可能とした。 

語音の持続時間が上記の確率分布に基づいて計算される値を上回ったとき,100 ms以上の無音部分をも

つ区分が選択された。この制限は語音の区切りの間の自然な間隔を保証する。各語音の区切りの後に,異

なる言語から“開始の区分”が選択される。各10秒及び15秒の区間の最後には,無音部分を含む区分が

選択され,各区間に必要な持続時間に合わせて制限された。全ての生成された区間は再び,参考文献[2]に

記載される国際的な女声のスペクトルでフィルタ処理された。 

60秒の持続時間をもつISTSは,10秒及び15秒の区間で構成される。5 msステップ(5 ms及び55 ms

でない)の他の持続時間は可能である。補聴器の測定のためには,信号処理アルゴリズムを信号に適応さ

せるために,15秒間を費やすことが望ましい。その後,45秒間の測定を行うことが望ましい。測定結果の

おおまかな推定を可能とするために,測定時間を10秒に制限することも可能である。 

A.3 ISTSの分析 

上記の手順で構成されるISTSは,様々な評価基準で分析され,原録音と比較された。全ての関連する

基準で自然な会話とISTSが一致することが示された。ISTSの最も重要な結果を,次にまとめる。 

a) 長時間のスペクトル:ISTSの長時間スペクトル及び10秒と15秒の区間のスペクトルは,参考文献[2]

の女声の国際長時間音声スペクトルとの差異が1 dB未満である。 

b) 短時間スペクトル:ISTSの短時間スペクトルは,異なる言語の原録音でも観測されるような,数段階

の基本周波数の跳躍を示す。 

background image

25 

C 5516:2015 (IEC 60118-15:2012) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

c) 基本周波数:ISTSの基本周波数の中央値は196 Hzであるが,原録音の話者は203 Hzである。これは

十分に類似しているとみなされる。ISTSの基本周波数の標準偏差は,原録音と同様に44 Hzである。 

d) 変調スペクトル:1/3オクターブバンドでフィルタ処理された原録音とISTSとの変調スペクトルは,

両者とも2 Hz〜8 Hzの範囲内で最大を示す。系統的な偏差は観測されなかった。 

e) 共変調分析:共変調は,1/3オクターブバンドでフィルタ処理された信号の包絡線の相関で分析され

た。相互相関の強さは,1/3オクターブバンドの間隔が増すにつれて減少する。これは原録音と同じ

ようにISTSにも当てはまる。 

f) 

休止持続時間:音声の休止及びその持続時間の分布は,原録音に対応する。しかしながら,ISTSの持

続時間が短いと,原録音と比較してより不均一な広がりを僅かに生じる。休止持続時間と信号持続時

間との比率は1対6である。 

g) パーセンタイル分布:信号は1/3オクターブバンドでフィルタ処理され,そのレベルは,125 ms(50 %

オーバラップ)の窓で計算された。各帯域のレベル分布(図A.1を参照)から,99,65及び30パー

センタイルのレベルが算出された(図3を参照)。99パーセンタイルと30パーセンタイルとの差は,

20 dBと30 dBとの間になる。これは,ISTSを構成する六つの言語の原録音に対応する。 

図A.1−五つの1/3オクターブ帯域におけるISTSの50 %オーバラップさせた125 ms区分のレベル分布 

h) 無声音部分の割合:無声音部分の割合は,ISTSで44 %であり,したがって,原音声の録音の平均値

35 %を僅かに超える。 

i) 

瞬間的な振幅の分布:ISTSの瞬間的な振幅の分布は,原音声の録音に非常に似ている。 

j) 

波高率:ISTSの波高率(クレストファクタ)は17で,原音声の録音の18と非常に似ている。 

設計及び分析の,より詳細な記載については参考文献[1]を参照。 

26 

C 5516:2015 (IEC 60118-15:2012) 

  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

参考文献 

[1] Holube, I., Fredelake, S., Vlaming M., and Kollmeier B. Development and Analysis of an International Speech 

Test Signal (ISTS), International Journal of Audiology, 49: 891-903 (2010) 

[2] Byrne, D., Dillon, H., Tran, K., Arlinger, S., Wibraham, K., Cox, R., Hagerman, B., Hetu, R., Kei, J., Lui, C., 

Kiessling, J. Kotby, M. N., Nasser, N. H. A., El Kholy, W. A. H., Nakanishi, Y., Oyer, H., Powell, R., Stephens, 

D., Meredith, R., Sirimanna, T., Tavartkiladze, G., Fronlenkov, G. I., Westerman, S., and Ludvigsen, C. An 

international comparison of long-term average speech spectra, J. Acoust. Soc. Am. 96, 2108-2120 (1994) 

[3] Bisgaard N., Vlaming M.S.M.G., and Dahlquist M. Standard Audiograms for the IEC 60118-15 Measurement 

Procedure, Trends in Amplification 14(2) 113-120 (2010) 

[4] Sachs, R.M. and Burkhard, M.D. Earphone Pressure Response in Ears and Couplers. Report no. 20021-2 for 

Knowles Electronics, Inc. (1972) 

[5] Cox, R. M., Matesich, J. S., & Moore, J. N. Distribution of short-term rms levels in conversational speech, 

Journal of the Acoustical Society of America, 84(3), 1100-1104 (1988) 

[6] Handbook of the International Phonetic Association, Cambridge University Press (1999) 

[7] IEC 61669,Electroacoustics−Equipment for the measurement of real-ear acoustical characteristics of hearing 

aids 

[8] American National Standard S3.22, Specification of Hearing Aid Characteristics (2007) 

[9] IEC 60118-0,Hearing aids. Part 0: Measurement of electroacoustical characteristics (1983)  

Amendment 1 (1994)