2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
C 5310-1997
電子機器用電源変圧器品目別通則
Generic specification of transformers for electronic equipment
1. 適用範囲 この規格は,主として,電子機器に用いる電源変圧器(以下,変圧器という。)の電圧,電
流,電力などの定格,性能,寸法,その他の事項を定める場合及びこれらを分類する場合の基準について
規定する。
備考1. この規格に示す電圧及び電流は,規定がない限り実効値とする。
2. この規格の引用規格を,次に示す。
JIS C 5311 電子機器用電源変圧器試験方法
JIS Z 8601 標準数
IEC 742 Isolating transformers and safety isolating transformers−Requirements.
IEC 1007 Transformers and inductors for use in electronic and telecommunication equipment−Measuring
methods and test procedures.
2. 用語の定義 この規格で用いる主な用語の定義は,次による。
(1) 定格出力容量 定格周波数,定格入力電圧で負荷側に連続して供給できる最大皮相電力。
2次巻線が2個以上ある場合は定格巻線出力の総和とする。
(2) 定格入力電圧 変圧器が適正な状態で,動作するように設計され使用できる電源電圧。
(3) 定格出力電圧 定格周波数,定格入力電圧で負荷側に連続して供給できる端子電圧。
(4) 定格出力電流 定格周囲温度で,連続して負荷できる電流の最大値。
(5) 定格周波数 変圧器が適正な状態で動作するように設計され使用できる電源の周波数。
(6) 定格巻線出力容量 定格周波数,定格入力電圧で,2次側の各巻線から負荷側に連続して供給できる
最大皮相電力。
(7) 定格負荷 変圧器の2次巻線から定格出力電圧及び定格出力電流を供給している状態のときの2次巻
線に接続されている負荷。
(8) 2次巻線端子電圧 定格周波数で,1次巻線に定格入力電圧を加え,すべての2次巻線に定格出力電流
を流したときの各2次巻線の端子電圧。
(9) 電圧偏差 1次巻線に定格周波数,定格入力電圧を印加し,定格出力電流を流すとき,2次巻線端子電
圧から定格出力電圧を引いた値と定格出力電圧との比(百分率)。
(10) 電圧変動率 無負荷電圧と2次巻線端子電圧の差の2次巻線端子電圧に対する比(百分率)。
備考 これはIEC 742と同式を採用している。
(11) 無負荷電圧 定格周波数で,1次巻線に定格入力電圧を加え,すべての2次巻線を開放したとき,各2
次巻線に誘起する電圧。
(12) 無負荷電流 定格周波数で,1次巻線に定格入力電圧を加え,すべての2次巻線を開放したとき,1
2
C 5310-1997
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次巻線に流れる電流。
(13) 無負荷損失 定格周波数で,1次巻線に定格入力電圧を加え,すべての2次巻線を開放したとき消費
される電力。
(14) 全損失 定格周波数で,1次巻線に定格入力電圧を加え,すべての2次巻線に定格出力電流を流した
とき,変圧器内で消費される電力。
(15) 効率 2次巻線端子電圧と定格出力電流との積と全損失の和に対する2次巻線端子電圧と定格出力電
流との積の比(百分率)。
(16) 1次巻線 電源側の回路に接続される巻線。入力巻線,又は電源側巻線ともいう。
(17) 2次巻線 負荷側の回路に接続される巻線。出力巻線,又は負荷側巻線ともいう。
(18) タップ 電圧を変える目的で巻線に設けられた口出し。
(19) 中性点端子 中性点端子は,次による。
(a) 諸定数が等しくなるように構成されている二つの巻線の極性の異なる端末を接続したとき,その点
に接続した端子。
(b) 星形結線又は千鳥形結線の巻線の共通接続点に接続した端子。
(20) タップ電圧 規定の端子とタップの端子間の電圧で,定格電圧以外のもの。
(21) 中性点電圧不平衡度(δ) 単相変圧器の中性点端子と両側端子間の各出力電圧をU1,U2とするとき次
式で得られる値。
(a) δa=
2
1
2
1
U
U
U
U
+
−
×100 (%) ···············································JIS C 5310
(b) δb=
1
2
1
U
U
U−
×100 (%) ················································ IEC 1007
ここで, U1≧U2とし,特に規定がない場合は(a)による。
(22) 極性 基準の巻線に対する他の巻線の誘起電圧の方向。その方向が同一の場合は加極性,逆の場合は
減極性という。
(23) 使用温度範囲 変圧器を連続動作(定格出力で)の状態で使用できる周囲温度の範囲。
(24) 巻線の温度上昇 変圧器を連続動作(定格出力で)させたときの各巻線の測定温度と周囲温度との差。
3. 形名
3.1
形名の構成 形名の構成は,次のような配列による。
例
3.2
記号
3.2.1
変圧器 変圧器を表す記号は,TPとする。
3.2.2
相数及び周波数 相数及び周波数を表す記号は,1数字で表し表1のとおりとする。
3
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表1 相数及び周波数
記号
相数
周波数
Hz
1
単相
50又は60
2
400
3
三相
50又は60
4
400
4
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3.2.3
形状 形状を表す記号は,1数字で表し表2のとおりとする。
表2 形状
記号
形状
参考図
1
金属ケースと端子間が磁器,ガラスなどで絶縁され
た完全密閉構造になっているもの。
2
金属ケース入りであるが完全密閉構造ではないもの。
3
開放形で,取付面に対して鉄心の面が平行であるもの。
4
開放形で,取付面に対して鉄心の面が直角で,かつ,
横長形状のもの。
5
開放形で,取付面に対して鉄心の面が直角で,かつ,
縦長形状のもの。
6
合成樹脂のケースを用いたもの,合成樹脂で型成形
されたもの又は合成樹脂でコーティングされている
もの。
7
1〜6の形状に属さないもの。
5
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3.2.4
取付方法 取付方法を表す記号は,1数字で表し表3のとおりとする。
表3 取付方法
記号
取付方法
参考図
1
リード,ピンなどによって取り付けるもの。主と
してプリント配線板用。
2
スタッドによって取り付けるもの。
3
ねじ穴によって取り付けるもの。
4
丸穴,長穴又はかけ穴によって取り付けるもの。
5
つめによって取り付けるもの。
6
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3.2.5
取付位置と端子との関係 取付位置と端子との関係を表す記号は,1数字で表し表4のとおりとす
る。
表4 取付位置と端子との関係
記号
取付位置と端子との関係
参考図
1
上部配線形
(取付面と反対の側で配線を行うもの。)
2
下部配線形
(取付面と同じ側で配線を行うもの。)
3
横配線形
(取付面と直角の側で配線を行うもの。)
4
上下配線形
(取付面と同一及び反対の両側で配線を行うもの。)
5
その他(1〜4に属さないもの。)
7
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3.2.6
端子の種類 端子の種類を表す記号は,1数字で表し表5のとおりとする。
表5 端子の種類
記号
端子の種類
構造
参考図
1
ねじ
絶縁物にねじ止め又は埋め込まれた
ねじによって配線を締め付け接続す
るもの。
2
棒
絶縁物に埋め込まれた金属の棒,板又
は管に配線をはんだ付け又はラッピ
ングして接続するもの。
3
ラグ
絶縁物に取り付けたラグに配線をは
んだ付けして接続するもの。
(角形又はへん平丸形を含む。)
4
リード
すずめっき軟銅線などのリード線が
引き出されていて,プリント配線板な
どにはんだ付けが可能なもの。
5
絶縁リード
フレキシブルな絶縁より線などを変
圧器の外部に引き出したもの。
(コネクタ及び圧着端子が先端にあ
るものを含む。)
6
無はんだ
絶縁物に取り付けたタブ端子に圧着
端子を挿入して使用するもの。
7
その他
1〜6に属さないもの。
8
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3.2.7
定格出力 定格出力を表す記号は,1英文字で表し表6のとおりとする。
表6 定格出力
単位 VA
記号
定格出力容量の範囲
A
10以下
B
10を超え
16以下
C
16を超え
25以下
D
25を超え
40以下
E
40を超え
63以下
F
63を超え 100以下
G
100を超え 160以下
H
160を超え 250以下
K
250を超え 400以下
L
400を超え 630以下
M
630を超え1 000以下
N
1 000を超えるもの
3.2.8
その他必要な事項 その他必要な事項を表す記号は,英文字又は数字とし,3.2.1〜3.2.7で表せな
い事項を表す場合に適用し,個別規格に規定する。
4. 標準状態及び基準状態
4.1
標準状態 標準状態は,次による。
温度
15〜35℃
相対湿度
25〜75%
気圧
86〜106kPa
4.2
基準状態 基準状態は,次による。
温度
20℃
気圧
101.3kPa
5. 定格
5.1
定格周波数定格周波数は,表7による。
表7 定格周波数
単位 Hz
定格周波数
50, 60, 400
5.2
相数相数は,表8による。
表8 相数
相数
単相,三相
5.3
定格入力電圧 定格入力電圧は,表9による。
表9 定格入力電圧
単位 V
定格入力電圧
100, 200
9
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5.4
入力タップ電圧 入力タップ電圧は,表10による。
表10 入力タップ電圧
単位 V
定格入力電圧
入力タップ電圧
100
95, 105
90, 100
200
190, 210
180, 220
5.5
定格出力電圧 定格出力電圧は,ボルト (V) 又はキロボルト (kV) で表し,表11による。
表11 定格出力電圧
定格出力電圧
電圧 V
1, 1.25, 1.6, 2, 2.5, 3.15, 4, 5, 6.3, 8, 10, 11.2, 12.5, 14, 16, 18, 20, 22.4, 25, 28, 31.5, 35.5, 40, 45, 50, 56, 63,
71, 80, 90, 100, 112, 125, 140, 160, 180, 200, 224, 250, 280, 315, 355, 400, 450, 500, 560, 630, 710, 800, 900
kV
1, 1.12, 1.25, 1.4, 1.6, 1.8, 2, 2.24, 2.5, 2.8, 3.15, 3.55, 4, 4.5, 5, 5.6, 6.3, 7.1, 8, 9
5.6
定格出力電流 定格出力電流は,ミリアンペア (mA) 又はアンペア (A) で表し,表12による。
表12 定格出力電流
定格出力電流
電流 mA
1, 1.6, 2.5, 4.0, 6.3, 10, 12.5, 16, 20, 25, 31.5, 40, 50, 63, 80, 100, 125, 160, 200, 250, 315, 400, 500, 630, 800
A
1, 1.25, 1.6, 2, 2.5, 3.15, 4, 5, 6.3, 8, 10, 12.5, 16, 20, 25, 31.5, 40, 50, 63, 80, 100
5.7
使用温度範囲 使用温度範囲は,表13に示す最低使用温度と最高使用温度との組合せとする。
表13 使用温度範囲
単位 ℃
最低使用温度
−10, −25, −40
最高使用温度
40, 55, 70, 85, 100
6. 性能
6.1
電気的性能
6.1.1
絶縁抵抗 巻線間及び巻線・鉄心間の絶縁抵抗は,表14による。
なお,試験電圧は個別規格による。
表14 絶縁抵抗
単位 MΩ
絶縁抵抗
100, 500, 1 000
6.1.2
耐電圧 巻線間及び巻線・鉄心間の耐電圧の試験電圧は,表15による。試験周波数は50Hz又は
60Hzとし,印加時間は1分間とする。
表15 耐電圧
単位 V
最高使用電圧
耐電圧
30以下
500
30を超え115以下
1 000
115を超え250以下
1 500
250を超えるもの
(最高使用電圧)×2+1 000
6.1.3
許容最高温度 許容最高温度は,絶縁の種類によって表16による。
10
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
なお,温度上昇限度は最高使用温度と巻線の温度上昇の和が許容最高温度を超えないこととし,その値
は個別規格による。
表16 許容最高温度
単位 ℃
絶縁の種類
許容最高温度
A種
100
E種
115
B種
120
F種
140
H種
165
6.2
その他の性能項目 個別規格に規定するその他の性能項目は,表17から選ぶ。
表17 その他の性能項目
電気的性能
層間耐電圧
無負荷損失
電圧偏差
中性点電圧不平衡度
電圧変動率
過電圧
過負荷
温度上昇
機械的性能
端子強度
耐振性
耐候性
耐熱性
耐寒性
耐湿性
7. 寸法
7.1
寸法の標準 変圧器の主要寸法は,主材料である鉄心寸法に関連させて規則的な数列から選ぶ。
なお,取付寸法に関連する以外の寸法は,JIS Z 8601のR20によることが望ましい。
7.2
取付寸法変圧器の取付寸法は,JIS Z 8601によることが望ましい。ただし,主材料である鉄心寸法
に関連があるものは,規則的な数列から選ぶこととする。
また,許容差はできる限り表18から選ぶ。
表18 取付寸法の許容差
単位 mm
寸法区分
取付構造
つめ
スタッド,ねじ穴,丸穴
長穴,かけ穴
16以下 0.5, 0.7
0.5, 0.7
16を超え 50以下 0.5, 0.7, 1.0
0.5, 0.7
1.0, 1.5
50を超え 160以下
−
0.5, 0.7, 1.0 (1.5)
1.5, 2.0, 3.0
160を超えるもの
−
1.0, 1.5, 2.0 (3.0)
2.0, 3.0
備考 スタッド取付構造のうち鉄心締め付けねじによるものには,括弧内の数値
を適用してもよい。
8. 試験方法 試験方法は,JIS C 5311による。
11
C 5310-1997
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
9. 表示
9.1
形名などの表示 変圧器には,本体の適切なところに次の事項を表示しなければならない。
(1) 形名
(2) 製造業者名又はその略号
(3) 製造年月又はその略号(ロット番号でもよい。)
(4) その他必要な事項
9.2
端子の表示端子の表示を必要とする場合は,1次巻線(入力巻線)から一連番号の数字によって表示
し,番号順に接続したとき加極性になるようにしなければならない。
なお,巻線以外の静電しゃへい端子はSとし,接地端子はEとする。
JIS C 5310原案作成委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
五 味 勇 二
財団法人日本電子部品信頼性センター
(委員)
恩 蔵 幸 博
財団法人日本品質保証機構
栗 原 正 英
社団法人日本プリント回路工業会
中 西 忠 雄
防衛庁装備局
岩 田 武
永 松 荘 一
通商産業省機械情報産業局
藤 井 隆 宏
工業技術院標準部
斉 藤 哲 也
ソニー株式会社
佐 藤 充 夫
沖電気工業株式会社
西 林 和 男
株式会社東芝
勝 田 明 彦
株式会社ケンウッド
三 宅 敏 明
松下電器産業株式会社
堀 部 勇
日本電気株式会社
菊 地 清 秋
三菱電機株式会社
中 村 正
日本開閉器工業株式会社
高 木 祐 司
アルプス株式会社
野 原 明
帝國通信工業株式会社
田 坂 昌 穂
ヒロセ電機株式会社
篠 原 洸
株式会社タムラ製作所
浦 部 志 郎
松下電子部品株式会社
川 島 明 理
株式会社長野日本無線
(事務局)
塚 田 潤 二
社団法人日本電子機械工業会
高 梨 健 一
社団法人日本電子機械工業会