Z 8909-2:2008
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目 次
ページ
序文
1
1 適用範囲
1
2 引用規格
1
3 用語及び定義
1
4 原理
2
5 試験の手順
2
6 試験装置
2
6.1 一般
2
6.2 暴露試験容器
2
6.3 加熱装置
2
6.4 試験ガス供給袋
2
6.5 水分注入容器
2
6.6 ガス分析計
3
6.7 ガス処理装置
3
6.8 真空ポンプ
3
6.9 連成計
3
6.10 温度計
3
6.11 試験ガス調整装置
3
6.12 配管など
3
7 試験方法
3
7.1 試験条件
3
7.2 試験
3
8 試験報告
5
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まえがき
この規格は,工業標準化法第 12 条第 1 項の規定に基づき,社団法人日本粉体工業技術協会(APPIE)及び
財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があり,日本
工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本工業規格である。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実用新案登録出願に
抵触する可能性があることに注意を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許
権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実用新案登録出願に係る確認について,責任は
もたない。
JIS Z 8909 の規格群には,次に示す部編成がある。
JIS
Z
8909-1 第 1 部:集じん性能
JIS
Z
8909-2 第 2 部:耐久性試験方法
JIS
Z
8909-3 第 3 部:耐熱性試験方法
日本工業規格
JIS
Z
8909-2
:2008
集じん用ろ布の試験方法−
第 2 部:耐久性試験方法
Test method of filter media for dust collection
Part 2: Test on durability under simulated running conditions
序文
この規格は,製品規格である JIS Z 8908 に適用する試験方法規格として制定する。試験は,静的応力の
下で,窒素酸化物(以下,NO
X
という。
)
,硫黄酸化物(以下,SO
X
という。
)
,塩化水素(以下,HCl とい
う。
)などの腐食性ガス,水分などにさらされたときの集じん用ろ布の耐久性を,引張強度低下を測定する
ことによって相対的に比較することを意図したものである。すべての老化試験と同様に,耐久性試験は,
同じ用途の品物の比較の手段として考えるべきであり,絶対的な基準としてみなすものではない。試験に
よって得られた結果は,製品の耐用期間を予測するものとして使用するのは適切ではない。
警告 この規格の使用者は,通常の試験室業務に習熟している必要がある。この規格は,その使用者のす
べての安全問題については記述していない。適切な安全及び保全対策をとり,関連する国の規制を
確実に遵守することは,規格使用者の義務である。
1
適用範囲
この規格は,乾式ろ過集じん装置に用いる集じん用織布及び不織布の耐久性能を評価するために行う,
試験方法について規定する。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。
)を適用する。
JIS B 9909 集じん装置の仕様の表し方
JIS L 1096 一般織物試験方法
JIS R 3420 ガラス繊維一般試験方法
JIS Z 8908 集じん用ろ布
3
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS Z 8908 によるほか,次による。
3.1
引張強さ保持率 (tensile strength retention)
処理前のろ布引張強さに対する,処理後のろ布引張強さの比率。
2
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3.2
試験ガス (test gas)
試験に用いるろ布の物性に変化をもたらす影響力のあるガス。
3.3
暴露試験 (exposure test)
設定した雰囲気内で一定時間ろ布を滞留させて物性変化を調べる試験。
4
原理
ろ布試験試料を,特定の条件に設定した試験ガスに暴露する。ろ布の特定条件下での耐久性の評価は,
暴露試験前後における試験試料の引張強さ及び引張強さ保持率によって評価する。
5
試験の手順
ろ布の耐久性試験は,次の a)〜d) の手順によって行う。
a) 試験試料の準備
b) 暴露試験容器の確認
c) 暴露試験の実施
d) 暴露試料の物性測定
6
試験装置
6.1 一般 試験装置は,図 1 及び図 2 に示す暴露試験容器,加熱装置,試験ガス供給袋,水分注入容器,
ガス分析計,ガス処理装置,真空ポンプ,連成計,温度計,配管など,及び図 3 に示す試験ガス調整
装置から構成する。
各部は,6.2〜6.12 による。
6.2
暴露試験容器 暴露試験容器は,次による(図 2 参照)。
− 充てんしたガスを,外部に漏えいさせないためシール性を確保し,その内部は,試験ガスを吸収しな
い耐食性に優れた材料とする。
− 試料ホルダを暴露試験容器の内部にもち,試料ホルダは十分な剛性があり,耐食性に優れた材料で表
面を滑らかに仕上げる。
− 暴露試験容器内部の高さは,340 mm 以上とする。
試料ホルダに架ける試料セット及び試験試料の例を,次に示す(
図 4 参照)。
− 上下のロッドは,360 mm の長さをもつ耐食性の金属の丸棒を用い,その 1 本の質量は 0.8 kg とする。
− 分銅は,長さ 360 mm,取付用のフック部を含めて質量 2.4 kg とする。
− 試料は,上下のホルダに架けた状態で長さ 280 mm,幅は 320 mm とする。
6.3
加熱装置 暴露試験容器を収容し,加熱する装置である。加熱装置の温度制御は,試験温度に対し
て±1 ℃の範囲で行えるものとする。
6.4
試験ガス供給袋 試験ガス調整装置を用いて,試験目的に合わせて調整した試験ガスを充てんした
ガス供給袋。
3
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6.5
水分注入容器 注射器などの水分注入容器からなる。
6.6
ガス分析計 暴露試験容器内の試験ガス濃度の確認に使用する。排出ガスを浄化するためのガス吸
収剤を充てんしたガス処理装置をガス分析計の後に連結する。
6.7
ガス処理装置 暴露試験容器から排出する試験ガスに含まれる腐食性ガスを処理する装置。試験ガ
スに適合する吸収剤などを選択し,充てんして使用する。
6.8
真空ポンプ 暴露試験容器の試験ガスを吸引及び排気するために使用する。真空ポンプの前に,排
出するガスの吸収剤を充てんしたガス処理装置を置く。
6.9
連成計 暴露試験容器の圧力を測定する。耐熱形のものを使用する。
6.10 温度計 暴露試験容器及び加熱装置の温度を測定する。
6.11 試験ガス調整装置 図 3 に示す様に、ガスボンベ,ガス流量計,ガス分析計及びガス処理装置からな
る。試験目的に合わせてあらかじめ試験ガスを混合し,調整して試験ガス供給袋に充てんする。
6.12 配管など 暴露試験容器と計測器などとを接続する配管・弁類は,耐圧,耐熱及び耐食性を考慮した
材質とする。
7
試験方法
7.1
試験条件
7.1.1
試験ガスの組成
ろ布を暴露する試験ガス組成の参考例を,次に示す。
a) 特定の試験ガスに対する影響を個別に試験する場合
− NO
X
の影響を試験する場合 NO
1
000
ppm+酸素 10 %
− SO
X
の影響を試験する場合 SO
2
1 000 ppm+水分 20 %
− HCl の影響を試験する場合 HCl
2
000
ppm+水分 20 %
b) 特定の混合試験ガスを暴露する場合 試験ガス組成は,一酸化窒素(NO) 1 000 ppm,二酸化硫黄 (SO
2
)
1 000 ppm,塩化水素(HCl)2 000 ppm,酸素(O
2
)10 %及び水分 20 %を混合
7.1.2
試験温度
試験温度は,通常 200 ℃±10 ℃とする。ただし,受渡当事者間の協定によってこの値を増減してもよ
い。
7.1.3
試験中にろ布に加える力
試験中,試験試料に加える力は,代表値として 33.3 N とする。ただし、 受渡当事者間の協定によって
この値を増減してもよい。
7.1.4
試験時間
試験時間は 200 時間以上とする。ただし、受渡当事者間の協定によってこの値以上に変更してもよい。
7.2
試験
試験は,次による。
a) 試験試料の準備 暴露試験装置に装着する試験試料は,同種のろ布材料だけを用いて製作する。上下
の 2 本のロッドを通すように,
図 4 に例示するような寸法にミシン糸でろ布を縫製する。ミシン糸は,
耐食性のあるふっ素繊維ミシン糸(1 350 dtex,引張強さ 43 N など)を使用し,縫製は(6±1)目/
25.4 mm などのピッチで行う。暴露試験容器内面の高さは,340 mm 以上とする。縫製した試験試料の
たて,よこの長さ及び質量を測定する。
b) 暴露試験容器の確認 暴露試験容器の性能を把握するために,窒素ガス及び試験ガスを使ってブラン
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ク試験を行う。
暴露試験容器を密閉し,容器内の空気を真空ポンプによって絶対圧 5 kPa 以下になるまで排気した
後,窒素ガスを充てんして大気圧にする。その後,3 時間以内に加熱装置を加熱して設定温度にし,
20 時間放置後にガス分析を行い記録する。次に,容器内を真空ポンプによって絶対圧 5 kPa 以下にな
るまで排気した後,あらかじめ調合した試験ガスを充てんして大気圧にする。20 時間放置後にガス分
析を行い記録する。暴露試験容器を常温まで冷却する。
注記 加熱装置を室温まで冷却する場合,暴露試験容器内の圧力が負圧にならないように窒素ガス
を適時充てんし正圧を保持する。
c) 暴露試験の実施
1) 試験試料の装着 試験試料に上下のロッドを通し,分銅をつり下げ,試料への載荷が均等になるよ
うにして暴露試験容器のロッド受けに取り付ける(
図 2 及び図 4 参照)。
2) 試験ガスの調整 ガスボンベ,ガス流量計,ガス分析計を使い,試験目的に合致するガス組成に混
合して,試験ガスを試験ガス供給袋に充てんする(
図 3 参照)。
3) 暴露試験容器の加熱 暴露試験容器を密閉し,容器内の空気を真空ポンプによって絶対圧 5 kPa 以
下になるまで排気した後,試験ガス又は窒素ガスを充てんして大気圧にする。その後,加熱装置を
起動して試験温度に設定する(3 時間以内)
。
4) 試験開始 暴露試験容器内温度が試験温度に到達後,暴露試験容器内を真空ポンプで排気し,内部
の圧力を絶対圧 5 kPa 以下にする。真空ポンプ停止後にガス供給袋から試験ガスを導入し,大気圧
にする。水分を混合する場合は,試験ガス導入時に水分注入容器から必要量を注入する。以上の操
作が終了した時点を試験開始時刻とする。
5) 試験ガス濃度の調節 試験ガス濃度を一定に維持するため,定期的に暴露試験容器内の試験ガスを
交換する。ガス交換は,暴露容器を真空ポンプで絶対圧 5 kPa 以下に排出した後,新しい試験ガス
を導入する。12 時間暴露までは 3 時間ごとに行い,次の 100 時間暴露までは 12 時間ごとに行い,
以降は 24 時間ごとに行う。
このとき,排出したガスを採取し,分析することが望ましい。この分析操作は,1 時間以内に完
了し,試験ガス濃度の調節操作に要した時間は暴露試験時間から除外する。
6) 試験終了後の冷却 所定時間に達した時点で,暴露試験容器内の試験ガスをガス処理装置を通過さ
せた後,真空ポンプで絶対圧 5 kPa 以下になるまで排気し,その後に窒素ガスを充てんする。加熱
装置を室温まで冷却したのち,試験試料を取り出し,乾燥デシケータ内で保管する。
注記 加熱装置を室温まで冷却する場合,暴露試験容器内の圧力が負圧にならないように窒素ガ
スを適時充てんし正圧を保持する。
d) 暴露試料の物性測定
1) 質量及び長さの測定 JIS L 1096 に準じた方法で,暴露試験前後の試験試料の質量及び縫い目の間
隔を測定し記録する。試験前後の質量及び長さの変化率を記録する。
2) 引張強さ保持率の測定 暴露試験前後の試験試料を JIS Z 8908 の 5.2 f)(引張強さ及び伸び率)に
指定されている大きさに切り分け,JIS L 1096 に従って引張強さを測定し,たて(MD)方向及びよこ
(CD)方向それぞれ 3 個以上の引張強さ及び引張強さ保持率を求める。試験試料の幅は,JIS Z 8908
の 5.2 f) 及び JIS R 3420 によって,織布の場合 30 mm,不織布の場合 50 mm 及びガラス繊維織布の
場合 25 mm とする。
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試験報告
試験結果の報告には,次の事項を記入する。
a) 試験年月日及び試験場所
b) ろ布の表示項目(JIS Z 8908 による。)
c) 試験条件 試験ガス組成,試験温度及び暴露試験時間
d) 試験結果
− 引張強さ及び引張強さ保持率
− 質量及びその保持率
− 長さ及びその(たて,よこ)保持率
なお,試験結果の報告は,
表 1 に基づき記入する。
図 1−ろ布耐久性試験装置図
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図 2−暴露試験容器図
図 3−試験ガス調整装置図
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単位 mm
図 4−試料セット及び試験試料の寸法例
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表 1−試験結果の報告
試験の名称:
試験場所:
試験担当者名:
試験番号:
試験年月日:
試験試料の内容
JIS 表示記号:
繊維の種類:
製造業者:
表面加工:
品番:
目付(g・m
−
2
):
材質:
厚さ(mm):
通気性(m・s
−
1
):
試験の条件
試験ガス組成:
試験温度(℃):
ガス暴露時間:
試験中のろ布荷重:
試験結果
測定項目
試験前
試験後
保持率(%)
たて
引張強さ(N)
よこ
たて
寸法(mm)
よこ
質量(g)
注記