Z8826:2005
(1)
まえがき
この規格は,工業標準化法第 12 条第 1 項の規定に基づき,社団法人日本粉体工業技術協会(APPIE)/財団
法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があり,日本工業
標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本工業規格である。
制定に当たっては,日本工業規格と国際規格との対比,国際規格に一致した日本工業規格の作成及び日
本工業規格を基礎にした国際規格原案の提案を容易にするために,ISO 13321:1996,Particle size analysis −
Photon correlation spectroscopy を基礎として用いた。
この規格の一部が,技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の
実用新案登録出願に抵触する可能性があることに注意を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会
は,このような技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の実用新
案登録出願にかかわる確認について,責任はもたない。
JIS Z 8826
には,次に示す附属書がある。
附属書 A(規定)平均粒子径及び多分散指数の計算方法
附属書 B(参考)測定結果の報告書の推奨例
附属書 C(参考)理論的背景
附属書 D(参考)一般的な光子相関法の装置及び推奨する仕様項目
附属書 E(参考)推奨する試料調製方法
附属書 F(参考)参考文献
附属書 1(参考)JIS と対応する国際規格との対比表
Z8826:2005
(2)
目 次
ページ
序文
1
1.
適用範囲
1
2.
定義
1
3.
記号
1
4.
原理
2
5.
装置
2
5.1
レーザ
2
5.2
試料ホルダ
2
5.3
レーザビームストッパ
2
5.4
受光光学系及び検出器
2
5.5
相関計
2
5.6
演算装置
2
6.
準備
3
6.1
装置の設置
3
6.2
試料の調製
3
7.
測定手順
4
8.
校正及びバリデーション
5
9.
再現性
6
10.
測定結果の報告
6
附属書 A(規定)平均粒子径及び多分散指数の計算方法
8
附属書 B(参考)測定結果の報告書の推奨例
10
附属書 C(参考)理論的背景
13
附属書 D(参考)一般的な光子相関法の装置及び推奨される仕様項目
16
附属書 E(参考)推奨する試料調製方法
18
附属書 F(参考)参考文献
23
附属書 1(参考)JIS と対応する国際規格との対比表
24
日本工業規格
JIS
Z
8826
:2005
粒子径解析−光子相関法
Particle size analysis
Photon correlation spectroscopy
序文 この規格は,1996 年に第 1 版として発行された ISO 13321:1996,Particle size analysis−Photon
correlation spectroscopy を翻訳し,技術的内容を変更して作成した日本工業規格である。
なお,この規格で点線の下線を施してある箇所は,原国際規格を変更している事項である。変更の一覧
表をその説明を付けて,
附属書 1(参考)に示す。
1.
適用範囲 この規格は,液体(以下,分散媒という。)中に分散した粒子の平均粒子径及び粒子径分布
の広がりを測定するための光子相関法について規定する。この規格は,数 nm から約 1 µm まで,又は沈降
の影響が認められるまでの粒子に適用する。データ解析手順(
附属書 A 参照)では,粒子は均質で,かつ,
球形とする。
備考1. この技術は,準弾性光散乱法(QELS)及び動的光散乱法(DLS)の一種である。
参考 QELS 又は DLS には,この規格で定める光子相関法以外に,周波数解析法などがある。
2.
この規格の対応国際規格を,次に示す。
なお,対応の程度を表す記号は,ISO/IEC Guide 21 に基づき,IDT(一致している)
,MOD
(修正している)
,NEQ(同等でない)とする。
ISO 13321:1996
,Particle size analysis−Photon correlation spectroscopy (MOD)
参考 この規格は,希薄な粒子濃度の分散液に対応する規定である。濃い粒子濃度に対応する規
格は,別途検討されている。
2.
定義 この規格で用いる主な用語の定義は,次による。
2.1
平均粒子径(average particle diameter)
PCS
x
散乱光強度基準による調和平均粒子径(直径)
。
附属
書 A の式(A.3)による。単位は,ナノメートル(nm)とする。
2.2
多分散指数(polydispersity index)PI 粒子径分布の広がりを示す無次元指標。 附属書 A の式(A.4)
による。
2.3
散乱体積(scattering volume)V 受光光学系と入射レーザ光で決まる観測体積。この値は,装置の
製造業者から提供される仕様に記述されていることがある。一般的には,10
-6
cm
3
のオーダである。
2.4
カウントレート(count rate) 受光光学系で検出される 1 秒間当たりの光子パルス数。検出した散
乱光強度に比例する。単位は,cps (count per second)とする。
3.
記号 この規格で用いる主な記号は,次による。
B 散乱光強度の自己相関関数の切片[附属書 A の式(A.5)参照]
2
Z 8826
:2005
B
max
受光光学系の設定によって決まる切片 B の最大値。この値は,装置の製造業者から提供される仕
様に記述されていることがある。また,8. に規定の方法で決めることができる。
c
粒子濃度
G
2
(τ) 散乱光強度の自己相関関数
n
分散媒の屈折率
N
v
散乱体積中の粒子個数
η
分散媒の粘性係数
Γ
減衰定数
λ
0
真空中におけるレーザの波長(He-Ne レーザの場合は,632.8 nm)
φ
粒子体積分率
ρ
粒子密度
θ
散乱角
µ
2
2 次のキュムラント
τ
相関時間
4.
原理 粒子が適切な濃度で分散媒中に分散した試料に,単色,かつ,可干渉なレーザ光を照射する。
粒子によって散乱した光をある散乱角
(代表的には 90 度)
で受光し,
その散乱光強度信号を相関計に送る。
相関計で処理したデータに基づいて算出された散乱光強度の自己相関関数から,キュムラント法によって
平均粒子径及び多分散指数が得られる。
参考 光子相関法による粒子径測定の理論的な背景を,附属書 C に示す。
5.
装置 光子相関法による一般的な測定装置の主要な構成を,次に示す。
参考 この規格に合致する市販装置又は自作装置が利用できる。異なる製造業者の装置間だけでなく,
同じ製造業者の異なる型番間でも,ハードウェア,ソフトウェア又はその双方に数多くの差異
が存在する。そのため,測定装置に推奨される仕様項目を,
附属書 D に示す。
5.1
レーザ 単色,かつ,可干渉のレーザ。入射光軸と受光光学系の軸とのなす面に垂直な電界成分を
もつ偏光(垂直偏光)となるように設置する。
5.2
試料ホルダ ±0.3 ℃以内の精度で温度を測定及び制御できる試料ホルダ。
5.3
レーザビームストッパ 入射光が観測部を通過した後で,試料ホルダの内壁面によって反射及び/
又は散乱することを防ぐための部品。
5.4
受光光学系及び検出器 ある単一散乱角(例えば,90 度)で,試料からの散乱光を集光し,光子パ
ルス(ディジタル信号)に変換する光学系及び検出器。検光子を含む場合は,垂直偏光の透過率が最大に
なるように検光子を設置する。
5.5
相関計 ある時間内に入ってくる光子パルス数を加乗算することによって,自己相関関数を算出す
る装置。
参考 光子相関計には,演算をハードウェアによって行うものと,ソフトウェアで行うものがある。
相関計に要求される相関時間は,測定対象の緩和時間に依存するが,多くの場合マイクロ秒か
ら秒の範囲に収まる。
5.6
演算装置 相関計で算出された自己相関関数から,粒子径分布を求めるために用いるデータ処理装
置。
3
Z 8826
:2005
6.
準備
6.1
装置の設置 清浄な環境中で,過剰な電気的雑音及び機械的振動がなく,直射日光の当たらない環
境に装置を設置する。有機溶媒を屈折率調整液及び/又は分散媒として使用する場合,設置場所の衛生及
び安全に関する法規を遵守し,十分に換気しなければならない。光学系の頻繁な調整を回避するために,
装置は堅ろうな机又は作業台上に設置する。
備考 別の方法として,光学ベンチを装置に内蔵してもよい。
警告 光子相関法の装置は,眼に永久的な損傷を与える可能性のある低出力又は中出力のレーザを装
備している。レーザ光を直接又はその反射光を決して直視してはならない。反射率の高い表面
でレーザ光を遮らない。
参考 JIS C 6802 (レーザ製品の安全基準)
6.2
試料の調製
6.2.1
試料は,分散媒及びその中によく分散した粒子からなる。分散媒は,次の要件をすべて満たすもの
とする。
a)
使用するレーザの波長に対して透明(非吸収)である。
b)
装置に用いられている材質に悪影響を与えない。
c)
粒子に対して溶解,膨潤,凝集などの影響を与えない。
d)
粒子と異なった屈折率をもつ。
e)
屈折率及び粘性係数が,0.5 % 以内の精度で既知である。
f)
十分にろ過されている。
水は,しばしば分散媒として用いられる。新鮮な蒸留水(石英ガラス製蒸留装置を用いて作る。
)又は脱
塩し,ろ過した水(例えば,孔径 0.2 µm のろ紙を用いる。
)の使用が推奨される。粒子が強く帯電して,
長距離の粒子間相互作用が測定結果に影響する場合は,その影響を低減させるために,微量の塩(例えば,
塩化ナトリウム濃度;10
-2
mol/L 程度)を加えてもよい。
参考 水に混入した粒子状物質を更に除去するには,孔径の小さいろ紙を使用するか又はろ過操作を
繰り返すとよい。
短時間(例えば,0.1 秒)で計測した場合のカウントレートにおいて,異常に強い信号を伴う大きな揺ら
ぎが記録されるときは,粒子状物質の混入を示している。試料を通過するレーザ光中に輝点が出現する場
合も,一般に,混入物のある分散媒であることを示唆している。このような分散媒は,使用前に更に清浄
化(ろ過及び/又は蒸留)しなければならない。
参考 推奨する試料の調製方法を,附属書 E に示す。
分散媒単体からの散乱光信号は,認められないか又は非常に弱くなければならない。
6.2.2
粒子濃度は,ある範囲内でなければならない。
濃度の下限は,次の二つの条件から決定する。
1)
分散した粒子を含む試料からのカウントレートは,分散媒単体からのカウントレートより最低 10
倍以上高くなければならない。
2)
散乱体積中の粒子個数は,約 1 000 個以上が望ましい。
備考 粒子個数は,平均粒子径,粒子体積分率,及び散乱体積から次の式(1)によって推定可
能である。
3
PCS
π
6
x
V
N
V
φ
=
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(1)
4
Z 8826
:2005
散乱体積は,通常 10
-6
cm
3
のオーダである。この式は,単一の大きさの粒子分散試料だけに適用
する。多分散粒子試料の場合には,散乱体積中の実際の粒子個数は,この式で求めた値よりもかな
り多くなることがある。個数濃度が大きく,次の 3)から 5)の単散乱の要件を満たさないときは,更
に希釈が必要となるかもしれない。その場合には,散乱体積を大きくするために,受光検出器の制
限視野又は入射レーザのビーム径を大きくする必要があるかもしれない。その結果,測定される切
片 B の値が小さくなる可能性がある。このためこのような対策は,校正及びバリデーションの目的
に使用すべきではない。
濃度の上限は,主に,多重散乱が観測されない,すなわち,単散乱だけが観測されるという条件から決
定する。多重散乱が顕著に影響していないことは,次の三つの検査によって確かめられる。
3)
試料は,不透明であってはならず,透明,ごくわずかに曇っている又は濁っているように見えなけ
ればならない。装置に試料を入れる前に,常にこの確認をしなければならない。
4)
測定した切片 B の値は,最大切片 B
max
の 0.8 倍以上でなければならない。
5)
試料を通過するレーザ光を間接的に観測できる装置では,明りょう(瞭)な 1 本の光線に見えなけ
ればならない。ビーム周囲の光輪の広がり又はレーザ光の明らかな吸収があってはならない。
備考 可能であれば,次の付加的な検査を推奨する。分光光度計を利用すれば,レーザの波長で
光路長 1 cm に対する試料の吸光度を多重散乱の指標に用いることが可能である。吸光度が
0.04 より大きいと,多重散乱の影響が現れることがある。
直径約 500 nm 以下の粒子が,体積分率
φ
=10
-5
〜10
-4
で分散した試料は,上の要求事項を満たしている
[分散した粒子の単位体積当たりの質量濃度 c は,体積分率
φ
と粒子密度 ρ の積である(c
=
ρ
φ
)。]。多分
散粒子及び/又は粒子径が大きい粒子の場合には,受光検出器の制限視野又は入射レーザ光のビーム径を
大きくし,散乱体積を大きくしなければ,要求事項 2),3)及び 4)を満たす濃度を見出せないこともある。
このような場合,測定される切片 B は,要求事項 4)を満たさなくなることがある。1 µm 以上の粒子では,
要求事項 2),3)及び 4)は,特殊な場合にだけ成立する。
7.
測定手順 測定手順では,装置の説明書を熟知した使用者が,適切に設置及び調整された装置を用い
る場合を想定している。
7.1
装置の電源を入れ,暖気運転をする。
通常,レーザの強度が安定し,試料ホルダが所定の温度に達するまで,約 30 分が必要である。
7.2
適切な分散媒を選定し,分散媒だけの試料からのカウントレートの値を記録する
7.3
粒子が分散した試料を装置内に入れ,試料ホルダと試料の温度とが平衡になるまで待つ。温度を±
0.3 ℃以内の精度で制御し,測定しなければならない。
備考 1 cm 角の測定セルでは,温度差 3 ℃の試料液体を熱拡散だけで平衡とするには約 10 分かかる
ことがある。水に分散した試料の場合,試料温度が平衡に達していないと,1 ℃当たり 2 %の
粒子径の誤差が生じる。
もう一つの方法は,室温で測定を行うことである。この場合は,試料ホルダの温度を室温の±0.3 ℃以
内に設定すれば,試料を試料ホルダに挿入して直ちに測定できる。又は装置の試料ホルダの温度から±
0.3 ℃以内に温度調整した浴槽を用いて,試料の温度をあらかじめ平衡にさせておくことである。この場
合,屈折率調整液を使用する装置では,その液を汚染しないように,測定セル外壁に付着した液体を測定
前に除去する。
5
Z 8826
:2005
7.4
試料番号,レーザ波長,散乱角(必要な場合),測定温度,粒子濃度,分散媒の屈折率及び粘性係数,
並びに関連する詳細事項を記録する。
7.5
予備測定を実施して,粒子濃度が低すぎないか[6.2.2 の 1)及び 2)を参照]又は高すぎないか[6.2.2
の 3),4)及び 5)を参照]を調べる。カウントレートが 5 000 cps(カウント/秒)から 1 000 000 cps の範囲に
あるかを調べる。もしこれらの要求事項を満たさなければ,粒子濃度を変えるか,可能であれば入射レー
ザ光強度を変えて測定を繰り返す。
7.6
各試料に対して,最低 60 秒間の測定を少なくとも 6 回実施して結果を記録する。カウントレートが
20 000 cps 未満の試料の場合,測定時間の秒数は,1 200 000 をカウントレートで除して得た数値以上でな
ければならない。
7.7
測定ごとに平均粒子径
PCS
x
と多分散指数 PI を記録する。
測定値の平均値は,次の式(2)によって計算する。
å
=
=
N
i
i
x
N
x
1
1
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(2)
ここに,
N
:
測定回数
i
x
:
i
番目の測定で得られた平均粒子径
PCS
x
又は多分
散指数
PI
の数値(
i = 1….N
)
標準偏差は,次の式(3)によって計算する。
(
)
å
=
−
−
−
=
N
i
i
N
x
x
N
s
1
2
1
1
1
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(3)
7.8
測定値に粒子濃度依存性が見られた場合には,無限希釈濃度へ外挿した平均粒子径及び/又は多分
散指数の値(又は最低粒子濃度での測定値)を採用する。
備考 6.2.2 の 3),4)及び 5)の要求事項を満たせば,多重散乱による影響を除くことができる。しかし,
特に(平均粒子径
100 nm
以下の)微小な粒子で体積分率が
0.01
以上である場合,粒子間相互
作用が,平均粒子径の推定値に影響を及ぼす。このため未知の分散系に対して,7.5 から 7.7 の
操作を最低でも粒子濃度差が
2
倍以上となる数種類の濃度に対して繰り返して実施することを
推奨する。
7.9
測定終了時に,試料中に顕著な沈でん物が認められないことを確認する。沈でん物が認められた場
合は,凝集又は析出が生じた試料であるか,光子相関法による測定に適していない試料である可能性があ
る。
8.
校正及びバリデーション 光子相関法による粒子径の測定は,基本原理に基づく絶対的な方法である
ので,校正は不要である。しかしながら,装置を設置したとき及びその後の一定時間の経過ごとに,又は
装置の動作に疑いがある場合には,粒子径が既知の粒子を用いて,性能の確認を行うことが望ましい。
粒子径が既知の粒子として,光子相関法による測定で平均粒子径が約
100 nm
と値付けされた,粒子径
分布の狭いポリスチレンラテックス粒子を使用する。この粒子の平均粒子径の測定値は,値付けされた粒
子径の
2 %
以内でなければならず,その再現性については,
100
PCS
1
x
s
N
−
が
2 %
未満でなければなら
ない。また,多分散指数の測定値は,
0.1
未満でなければならない。
6
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:2005
参考 ポリスチレンラテックス粒子は,JIS Z 8901 の試験用粒子
1
に規定されている。国家標準機関
へのトレーサビリティーがあるポリスチレンラテックス粒子は市販され,誤差範囲を含んで値
付けされている。試料の推奨する調製方法を,
附属書 E に示す。
自己相関関数の切片の最大値
B
max
は,粒子径約
100 nm
のポリスチレンラテックス粒子の分散液を用い
て,次のように決定できる。
a)
切片の最大値
B
max
が得られるように受光装置の制限視野を選択する。
b) 6.2.2
の条件 1),2),3)及び 5)を満たす少なくとも二つの粒子濃度において,切片の値
B
を決定する(
附
属書 A 参照)。
c)
切片
B
の値が粒子濃度に依存する場合は,無限希釈濃度へ外挿した値を
B
max
とする。
9.
再現性 平均粒子径の再現性は,
100
PCS
1
N
x
s
−
が
5 %
未満でなければならない。
10.
測定結果の報告 平均粒子径
PCS
x
及び多分散指数
PI
を報告する。これらのデータは,一つの試料に
対して少なくとも
6
回の繰返し測定の平均値と標準偏差でなければならず,
附属書 A に示した方法によっ
て計算しなければならない。平均粒子径及び多分散指数の平均値が粒子濃度に依存する場合には,これら
の値は,無限希釈に外挿した値又は最低粒子濃度で得られた値を採用しなければならない。
次の事項についても報告する。
a)
試料を識別できる情報。可能ならば,粒子の形状及び均質性に関する情報。
b)
装置の型番及び製造番号,自作装置の場合には,その詳細。
備考 レーザ光源については,型番,波長,出力及び垂直偏光について記載することが望ましい。
c)
分散条件
−
分散媒名及びその清浄化/ろ過手順
−
粒子濃度
−
分散剤名及びその濃度
−
分散手順
−
超音波分散条件:周波数,出力
d)
測定条件
−
測定した粒子濃度の水準数
−
粒子濃度及び平均粒子径
PCS
x
から推定した,散乱体積中の粒子個数
−
装置の光学系における自己相関関数の切片の値の最大値
B
max
備考 この値は,既知の粒子を用いて決定することができる(8.及び附属書 A 参照)。
−
自己相関関数の切片
B
及び
max
B
B
の値
−
分散媒だけで測定したカウントレート
−
分散媒の粘性係数及び屈折率
−
試料の温度
−
試料測定中のカウントレートの平均値
−
測定回数及び測定時間
−
近似計算の残差[
附属書 A,式
(A.6)
を参照]
e)
別の散乱角又は多角度で測定を行った場合には,その結果又はコメント。別のデータ解析法及び別の
粒子径測定法を実施した場合には,その結果。
7
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:2005
f)
測定者
−
施設名及び場所
−
測定実施者名
−
測定日
参考 試験結果の報告書の推奨例を,附属書 B に示す。
8
Z 8826
:2005
附属書 A(規定)平均粒子径及び多分散指数の計算方法
この規格では,いわゆるキュムラント法を用いて,粒子径分布を表現する二つのパラメータ,すなわち,
平均粒子径
PCS
x
及び多分散指数
PI
を求める。
参考
キュムラント法は,
附属書 F の文献[
3
]を参照。
この解析の原理は,実測された散乱光強度の自己相関関数
( )
τ
2
G
を,式
(A.0)
によって近似することであ
る。
( )
(
)
[
]
2
2
2
2
exp
1
τ
µ
τ
Γ
τ
+
−
+
≅
B
A
G
(A.0)
ここに,
A
:
時間に依存しない定数
B
:
装置定数
〈
Γ
〉: 平均減衰定数
参考
この式の誘導を,
附属書 C に示す。
線形回帰を行うために,この式を,次のように変形する。
( )
( )
[
]
2
2
2
2
ln
2
1
ln
2
1
τ
µ
τ
Γ
τ
τ
+
−
≅
−
=
AB
A
G
y
又は
( )
2
2
1
0
j
j
j
a
a
a
y
τ
τ
τ
+
−
=
(
j = 1
,
2
,
3…..
m ) (A.1)
ここに,
j
:
相関計の遅延チャンネルの番号
参考
相関計の遅延チャンネル数
m
は,異なる相関時間のデータの数に対応する。
y(τ
j
)
は,各遅延チ
ャンネル(相関時間
τ
j
)における相関関数の測定値である。
ベースライン又は相関時間が十分大きいときの値
A
は,測定中の平均カウントレートから,又は相関時
間
τ
≫
25 /
〈
Γ
〉における
G
2
(
τ)
の推定値から求めることができる。ベースライン
A
を両方法で推定し,そ
の大きい方の値を採用することを推奨する。しかしながら,この二つの推定値の差が,小さい方の値の
10
−
3
倍より大きい場合には,これ以上の解析を行うことは,適切ではない。
解析の対象とする
y
j
=
y (τ
j
)
の値の範囲は,
[
G
2
(
τ
1
)
−
A ]>[ G
2
(
τ
j
)
−
A ]>[ G
2
(
τ
1
)
−
A ] /100
を満足し,少
なくとも一つの
[
G
2
(
τ
j
)
−
A ]
は,
[
G
2
(
τ
1
)
−
A ] /50
より小さくなければならない。解析対象範囲の
[
G
2
(
τ
j
)
−
A ]
は,すべて正である必要がある。さもなければ,これ以上の解析を行うことはできない。
最後に,この範囲に入る
y
j
の値の数
m
は,
20
以上でなければならない。
式(
A.2
)で与えられる値
s
が最小となるように,パラメータ
a
0
,
a
1
及び
a
2
を最小二乗法によって決定
することで,
y (τ
j
)
を式(
A.0
)によって近似できる。
(
)
å
=
−
+
−
=
m
j
j
j
j
j
a
a
a
y
w
s
1
2
2
2
1
0
τ
τ
(A.2)
式(
A.2
)中の重み係数
w
j
は,
G
2
(
τ
j
)
を
y(τ
j
)
の値に非線形変換することを考慮すると,次の式になる。
9
Z 8826
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( )
( )
2
2
2
2
1
j
j
m
j
j
m G
A
w
G
A
τ
τ
=
é
ù
−
ë
û
=
é
ù
−
ë
û
å
光子相関法による平均粒子径
PCS
x
は,
a
1
から,次の式によって求める。
(
)
2
0
1
PCS
2
nsin
4
3
1
ú
û
ù
ê
ë
é
=
λ
θ
π
πη
kT
a
x
(A.3)
ここに,
k
:
ボルツマン定数
T
:
絶対温度
多分散指数
PI
は,
a
1
及び
a
2
から次の式によって求める。
PI
=
2
a
2
/
a
1
2
(A.4)
切片
B
の値は,
a
0
及び
A
から次の式によって求める。
B =
[
exp
(
2
a
0
)
]
/
A (A.5)
この値は,与えられた実験条件において得られる最大値
B
max
と比較する。
B / B
max
<
0.8
となれば,その
測定結果は破棄しなければならない。
近似計算の残差は,式(
A.6)
によって与えられ,近似の良し悪しの指標として用いることができる。
s/ (m
−
4) (A.6)
10
Z 8826
:2005
附属書 B(参考)測定結果の報告書の推奨例
この附属書は、本体に関する事項を補足するもので、規定の一部ではない。
B.1
試料の識別
a)
試料の詳細説明:
..................................................................................................................................................
..................................................................................................................................................................................
b)
分散粒子(該当する□にチェックを入れる。
)
:
均質で球形
□
不均質で球形
□
均質で非球形
□
不均質,かつ,非球形
□
形状及び/又は均質性が未知
□
B.2
装置の型番及び製造番号
a)
型番及び製造番号(自作装置の場合,詳細な説明)
:
.......................................................................................
.................................................................................................................................................................................
b)
レーザ光源
型番:
…………………………………..........................………………….
波長:
…………………………………………..........................……... nm
出力:
…………………………………………………....................... mW
偏光方向:垂直方向
□
散乱角:
…………………………........................................................
°
B.3
分散方法
a)
分散媒:
………………………………………………………........................
b)
清浄化/ろ過方法:
…………………………………………........................
c)
分散手順:
分散時の粒子濃度:
………………………………………….....................
分散剤 □
分散剤名:
.................................................................................................
分散剤濃度:
.............................................................................................
超音波照射 □
周波数:
......................................................................................... kHz
出力:
................................................................................................ W
照射時間:
.......................................................................................... s
沈殿物: あり □ なし □
特記事項:
……………………………………………………………......
B.4
測定条件
11
Z 8826
:2005
a)
試料温度(±
0.3
以内)
:
…………………..…………………................…
℃
b)
分散媒の粘度:
……………………...............…………..…………… mPa
・
s
c)
分散媒の屈折率:
...................…………………………………………………
d)
分散媒のカウントレート:
..................................................................... cps
e)
切片の最大値
B
max
:
...........................................................................................
f)
粒子密度(既知の場合)
:……........…………………………............… g/cm
3
g)
粒子屈折率(既知の場合)
:
.........................…………………………………
h)
測定した濃度の水準数:
……………...........................………………………
i)
各濃度ごとに,次の項目を記述:
粒子濃度の水準
No.
:
....................................................................................
粒子質量濃度:
..................................................................................... g/cm
3
粒子体積分率:
...............................................................................................
散乱体積(
V
)
:
....................................................................................... cm
3
試料のカウントレート:
....................................................................... cps
(分散媒のカウントレートの
10
倍以上,かつ,
5 000
〜
1 000 000 cps
の範囲内である。
)
.
散乱体積
V
中の推定粒子数(
1 000
個超え)
:
.......................................
試料概観(不透明な試料は不可)
:透明 □ 青みがかった発色光 □ わずかな濁り □
試料中のレーザ光透過状態(ビーム周囲の光輪又はビームの明らかな吸収がない。
)
:
明らかな一本の光線 □
光路長
1 cm
における吸光度
(
既知の場合)
:
...........................................
一回の測定時間(
60 s
以上)
:
................................................................. s
測定回数(
6
回以上)
:
.................................................................................
PCS
x
(nm)
と
PI
の表
測定 No.
PCS
x
(nm)
PI
B/B
max
s/(m-4)
1
2
3
4
5
6
・
・
・
備考 B/B
max
は,0.8 以上。
B.5
その他の結果(必要な場合)
他の角度における光子相関法測定結果(詳細)
:
.....................................................................................................
…………………...............................................................................................................................................................
他の測定法による結果(詳細)
:
…………………….................................................................................................
12
Z 8826
:2005
……………………………………………………………...........................................................................................
B.6
測定者
施設名及び場所:
……………………………………..............................….....
測定実施者名:
..............................................................…………............….....
測定日:
…………………………………………………...................................
B.7
特記事項
…………………………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………….……………………………………………………
B.8
結果のまとめ
試料:
…………………………………………………………….……………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………………………
濃度水準
No.1
粒子体積分率:
…………………………………………………
平均粒子径
PCS
x
:
……………..………………………… nm
及び
標準偏差:
…………………………….………….nm
多分散指数
PI
:
…………………………………………………
及び
標準偏差:
……………………………………………
濃度水準
No. 2
粒子体積分率:
…………………………………………………
平均粒子径
PCS
x
:
…………………...……………….…...nm
及び
標準偏差:
…………………………………….......nm
多分散指数
PI
:
…………………………………………………
及び
標準偏差:
……………………………………………
濃度水準
No. …..
……………………………………………………………………….
……………………………………………………………………….
PCS
x
と
PI
が粒子濃度依存性を示す場合,無限希釈濃度に外挿した結果(又は最も低濃度での結果)
平均粒子径
PCS
x
(φ
→
0)
:
……....……...…………………nm
及び標準偏差:
………………………………………… nm
多分散指数
PI (φ
→
0)
:
…………………………..........………
及び標準偏差:
……………………………………………
13
Z 8826
:2005
附属書 C(参考)理論的背景
この附属書は、本体に関する事項を補足するもので、規定の一部ではない。
光子相関法の測定では,測定対象となる分散液に単色,かつ,可干渉な光(例えば,真空中で
λ
0
の単一
波長をもつレーザ光)を照射する。分散した粒子は,ブラウン運動(熱運動)しているため個々の粒子か
らの散乱光の位相が変動する。それらの和(干渉結果)として,観測される散乱光強度
I(t)
は,時間的に
揺らぐ。そのため,この散乱光強度の揺らぎを時系列データとして解析すると,分散した粒子の運動に関
する情報が得られる。光子相関法では,この解析を,散乱光強度の時間自己相関関数
G
2
(
τ)
を算出する相関
計で行う。
( )
( ) (
)
τ
τ
+
t
I
t
I
G
×
=
2
(C.1)
この相関関数は,時間差(相関時間)
τ
にだけ依存し,測定を始める時刻
t
には依存しない。記号〈
….
〉
は積
I(t)
×
I(t + τ)
の時間平均値である。
散乱体積
V
中でブラウン運動している多数の単分散粒子に対して,
G
2
(
τ)
は基本的に相関時間τの指数減
衰関数である。
( )
(
)
[
]
τ
Γ
τ
2
exp
1
2
−
+
=
B
A
G
(C.2)
式(
C.2
)中の
A
は,原理的には平均散乱光強度
( )
t
I
の
2
乗に比例し,時間に依存しない定数で,この
規格ではベースラインと呼んでいる。
B
は
B
≦
1
の装置定数と考えることができる。この規格では,
B
を自
己相関関数の切片と呼んでいる。減衰定数
Γ
は,ブラウン運動している均質な球形粒子の並進拡散係数
D
と次のように関係付けられる。
2
Dq
=
Γ
(C.3)
ここに,
q
:
散乱ベクトルの絶対値
)
2
sin(
4
0
/
n
q
θ
λ
π
=
(C.4)
散乱ベクトル
qρ
は,入射光ベクトル
i
k
ρ
と散乱光ベクトル
s
k
r
との差ベクトル
s
i
q k
k
= −
r
r
r
と定義される。
i
k
ρ
及び
s
k
r
の絶対値は,ともに
0
2 n
π λ
に等しい。
光子相関法では,拡散係数
D
から間接的に粒子径を求めることができる。粘性係数
η
の分散媒中に分散
された球形粒子では,相互作用がなければ拡散係数
D
は,ストークス
-
アインシュタイン式によって粒子
径
x
と関係付けられる。
x
kT
D
πη
3
=
(C.5)
ここに,
k
:
ボルツマン定数
T
:
絶対温度
この規格で決められた粒子濃度条件では,散乱体積中の粒子個数の揺らぎ,多重散乱及び/又は粒子間
相互作用の影響が,回避又は最小限に抑えられることが保証されている。粒子個数の揺らぎによる影響を
避けるために,この規格では散乱体積中に最低
1 000
個の粒子が存在することを要求している
[
6.2.2
の
b
)
14
Z 8826
:2005
2)
を参照
]
。
備考 最低
1 000
個の粒子という基準は,単一粒子径の粒子だけに適合する。多分散粒子試料の場合
には,散乱体積中に
x
PCS
より小さい粒子が非常に数多く存在するかもしれない。
多重散乱の影響(粒子濃度に比例する。
)は,濃度に上限を設けることで最小限に抑えられる。この規格
では,一般的な粒子濃度の上限を定義するのではなく,多重散乱の影響が検出される濃度を,粒子濃度を
変えて見いだすことを提案している[6.2.2 の 3)
,4) 及び 5)]
。粒子間相互作用の影響を避けるため,幾つ
かの粒子濃度で測定することを推奨する。系統的な粒子濃度依存性が観測される場合は,得られた結果を
無限希釈濃度に外挿することを推奨する(7.8 参照)
。前述の式の使用は,原則的には均質な球形粒子に限
定されるが,粒子が並進,かつ,回転運動を伴って拡散する非球形及び/又は不均質な粒子についても測
定は可能であり,これらの式を用いて解析することができる。この場合,式(
C.3
)から式(
C.5
)及び式
(
C.10
)は,球相当径として定義される。
多分散試料の場合,式(
C.2
)は次の式によって書ける。
( )
( )
[
]
τ
τ
2
1
2
1
Bg
A
G
+
=
(C.6)
ここで,散乱光電場の自己相関関数
( )
τ
1
g
の値は,規格化された減衰定数の分布関数
G(Γ)
を用いて,式
(C.7)
によって表される。
( )
( ) (
)
ò
∞
−
=
0
1
d
exp
Γ
τ
Γ
Γ
τ
G
g
(C.7)
ここに,
( )
1
d
0
=
ò
∞
Γ
Γ
G
式(C.7)の G(Γ)dΓ は,減衰定数が Γ から Γ+dΓ の範囲にある粒子の散乱強度の全散乱光強度に対する
割合に比例する量である。
次のような種類の多分散性から減衰定数の分布が生じる。
1)
粒子径の多分散性。すなわち,すべての粒子が同じ形及び組成,例えば,均質な等方性の球形粒子
であるが,個々の粒子の大きさだけが異なる場合。
2)
形の多分散性。すなわち,粒子の形が異なる場合,例えば,体積と組成が同じで,球状,円盤状及
び棒状の粒子の混合物。
3)
粒子の均質性の多分散性。すなわち,粒子によって組成が異なる場合,例えば,均質球及び積層球
の混合物。
4) 1)
から 3)の多分散性が複合している場合。
この規格による粒子径解析では,1)の多分散性を対象とする。
この規格では,減衰定数の分布を次の二つのパラメータで表す。
a)
平均減衰定数〈
Γ
〉
。
( )
ò
∞
=
0
d
Γ
Γ
Γ
Γ
G
(C.8)
b)
無次元の多分散指数 PI,すなわち,分布の広がりの尺度。
2
2
PI
Γ
µ
=
(C.9)
ここに,
15
Z 8826
:2005
(
)
( )
ò
∞
−
=
0
2
2
d
Γ
Γ
Γ
Γ
µ
G
平均減衰定数〈Γ〉及び標準偏差 σ のガウス分布をもつ減衰定数分布,すなわち
( )
(
)
ú
ú
û
ù
ê
ê
ë
é
−
=
2
2
exp
2
1
σ
Γ
Γ
π
σ
Γ
2
−
G
に対して,PI は,
〈Γ〉及び σ で表現できる。
2
2
2
2
2
PI
Γ
σ
Γ
µ
=
=
ストークス-アインシュタイン式における粒子径は,減衰定数に反比例[式(C.3)及び式(C.5)参照]
するので,式(C.8)は,この規格において平均粒子径 x
PCS
を定義するためにも使用できる。
( )
[
]
ò
∞
÷
ø
ö
ç
è
æ
=
0
PCS
1
d
1
1
x
x
G
x
x
Γ
(C.10)
式(C.10)中の G[Γ(x)]d(1/x)は,粒子径が x から x + dx の範囲にある粒子の散乱光強度の割合を示すの
で,式(C.10)を通して定義された平均粒子径 x
PCS
は,散乱光基準の調和平均径である。
この平均粒子径は,一般に質量平均粒子径より大きい値であることに注意を要する。 また,この平均粒
子径は,例えば,JIS Z 8825-1(粒子径解析−レーザー回折法−第 1 部:測定原理)で決定される平均粒子
径と一致しない場合もある。
与えられた減衰定数分布 G (Γ)は,レーザ光波長,偏光状態及び散乱角に依存することにも注意する[式
(C.3)及び式(C.4)を参照]。このため,同じ試料であっても x
PCS
及び PI は,これらの測定条件に依存する。
そこで,この規格では,散乱角を 90°に固定し,かつ固定波長(λ
0
=632.8 nm,He-Ne レーザ)の垂直偏
光光源を使用するか,又はできる限り sin (θ/2) / λ
0
の値を一定に保つような散乱角及び波長の組合せを推奨
する。粒子径が 30 nm 以下の分布をもつ試料では,x
PCS
及び PI は,レーザの波長及び散乱角にほとんど依
存しない。したがって,このような試料に対しては,他の波長の高出力レーザの使用を推奨する(例えば,
488 nm 又は 514.5 nm の波長で動作する Ar イオンレーザ)。
キュムラント法〔
附属書 F (参考)の文献 [3] 参照〕では,式(C.7)中の係数 exp ( - Γ τ )を exp ( -〈Γ〉
τ )に対して展開し,減衰時間の多項式を導く。この多項式の 2 次項までをとると,式(C.6)は,次のよう
に近似できる。
( )
(
)
(
)
[
]
2
2
2
1
2
-
exp
1
τ
µ
τ
Γ
τ
+
+
=
B
A
G
(C.11)
又は
( )
(
)
[
]
2
2
2
2
-
exp
1
τ
µ
τ
Γ
τ
+
+
=
B
A
G
(C.12)
この式は,平均減衰定数〈Γ〉
,µ
2
及び
附属書 A で述べられた平均粒子径 x
PCS
並びに多分散指数 PI を決
定する基本式となる。
更に詳しい情報は,
附属書 F を参照。
16
Z 8826
:2005
附属書 D(参考)一般的な光子相関法の装置及び推奨する仕様項目
この附属書は、本体に関する事項を補足するもので、規定の一部ではない。
一般的な測定装置の構成を,
図 D.1 に示す。
図 D.1 一般的な光子相関法の装置構成
多くの光子相関法の装置では,波長が 632.8 nm の単色,かつ,可干渉な He-Ne レーザが光源として用い
られている。半導体レーザ又は固体レーザが用いられている装置もある。一般的に,レーザ出力としては
2〜5 mW が使用されている。30 nm より小さな粒子径をもつ粒子の測定では,15 〜25 mW の He-Ne レー
ザ,又は 488 nm 若しくは 514.5 nm の Ar イオンレーザのような高出力のレーザの使用が有効である。しか
し,出力 25 mW 以上のレーザを使用すると,試料内の熱対流の影響が大きくなり,データ解析に大きな誤
差を生じる場合がある。
レンズは,通常,観測体積にレーザ光を集光するために装備されている。試料を通過したレーザ光は,
レーザビームストッパで大きく減光される。
透過光強度を測定できる装置もある。
角度 θ
(一般的には 90°)
に散乱した光は,適切な光学系を用いて検出器に導かれる。散乱角を変えて測定できるように,受光光学
系及び検出器が移動可能なゴニオメータのアーム上に設置された装置もある。そのような装置において,
光源が He-Ne レーザの場合は,散乱角を 90°に設定することを推奨する。他の波長のレーザ光源では,角
度 θ は,次の要求を満すように設定することが望ましい。
( )
8
632
2
2
2
sin
0
.
λ
θ
×
=
レーザ
レンズ
試料
レーザビームストッパ
受光
光学系
検出器
散乱角,θ
散乱光
演算装置
相関計
試料ホルダ
測定セル
17
Z 8826
:2005
附属書 E(参考)推奨する試料調製方法
この附属書は、本体に関する事項を補足するもので、規定の一部ではない。
E.1
一般 試料の調製は,溶媒の清浄化,セル洗浄,溶液/懸濁液の調製の三つの手順がある。この附属
書の E.2,E.3 には溶媒の清浄化について,また,E.4 にはセル洗浄について詳細に記載する。溶液・懸濁
液の調製は,試料の種類によって異なるため,この附属書では,E.5 に一般的な指針について記述し,E.6
にポリスチレンラテックス粒子の水懸濁液の調製を詳細に記述する。
光子相関法による測定の主な問題の一つはダストである。ダストとは,測定に影響を与える好ましくな
い散乱体に付けられた一般名である。ダストの存在は,平均粒子径の結果に対して重大な偏りを与える。
ダストは,ろ過又は蒸留によって溶媒から除去できるし,また,遠心分離によって低減できる。ろ過は,
廉価な使い捨てフィルタを利用することで最も簡便な方法となる。ろ紙を一度通しただけではすべてのダ
ストを除去できない場合は,何回もろ過を行うことが必要であり,多段ろ過によって効果的にダストを除
去できる。しかし,液の脱イオン化又は微量な不純物を除去するためには,蒸留が必要になることもある。
一方,遠心分離を行う場合には,セルを保護する適切な手段を施すことが必要となる。この方法は,試料
がろ過できない場合に使われるが,時間が経つと沈降していたダストが上昇して,レーザ光の光路に入る
ことがある。
次の項では,溶媒を清浄化するための方法を幾つか記述する。まず最も簡単な方法から試し,最適な方
法を選ぶべきである。分散した粒子を変化させずに,ダストを含まない試料を調製することができれば,
次に記載した以外の方法を用いて差し支えないことはいうまでもない。
E.2
ろ過
E.2.1
水 少量の水のろ過には,口径
25 mm
,孔径
0.2 µm
の使い捨てろ紙を取り付けた容積
20 mL
の注射
器を利用する。ルアーロック付きの注射器を選ぶ。もし注射針が必要ならば,孔径が大きなもの(
18
ゲー
ジ)を使用する。小さな孔径の針先から水を噴霧すると,水が液滴となり表面積が増加するため,空気中
の多くのダストが液中に取り込まれるので,静かに流出させ,噴霧してはならない。
ろ過の初期段階でろ紙を目詰まりさせる粗い粒子を除去するために,注射器及び注射針を数回洗浄し洗
い流す。可能なら,残留物(ポリマコーティング剤など)が付着しているろ紙を使用しない。このような
残留物を除去するために,使用前には数回洗浄し洗い流す。水が多くのダストを含む場合は,予備ろ過を
行うことも考慮する。予備ろ過は,孔径の小さなろ紙の寿命を長くする。
大量の液体をろ過するときには,大きなろ過面積をもつ孔径
0.2 µm
のろ紙を装填した直径
47 mm
又は
それ以上のろ紙ホルダを使用する。ろ紙ホルダを水供給口に接続する。ろ紙上に付着した粒子を除去する
ため,最低
20 mL
の水をろ紙に通す。これは,ろ紙表面の残留物を洗い落とすが,ろ紙の寿命も低下させ
る。ろ過の間は,空気と水の接触面積が大きくならないように,容器の内壁に沿って水を滴らせる。
図 E.1 及び図 E.2 は,この二つの方法を図示している。
18
Z 8826
:2005
約
300 nm
より大きな粒子及び幅広い粒子径分布をもつ試料では,平均粒子径は
sin(θ/2)/λ
0
の値に依存す
ることがあるので注意を要する。検出器の前に検光子を装備した装置もある。
検出器からの信号は,増幅とディジタル化(
2
値化)の後に,ディジタル形式で(パルス列として)相
関計に送り出される。演算装置は,通常,測定制御,記録,信号処理及び結果の計算をするために用いら
れる。
製造業者は,次に示す光子相関法の装置の仕様項目を提示することが望ましい(自作装置に関しては,
項目 2)〜6)を示すことが望ましい。
)
。
1)
一般
−
定格電圧
−
質量
−
寸法
−
安全及び健康に関する注意
2)
レーザ光源
−
型番
−
波長,
nm
表示
−
出力,
mW
表示
−
偏光の状態(この規格の目的では,垂直偏光が使用される。
)
3)
受光光学系
−
散乱角。受光する散乱角範囲を含む(可能であれば)
。
−
散乱角
90
°での散乱体積の大きさ
−
自己相関関数の切片の最大値
B
max
の値
光学系の条件を変えることができる装置(例えば,検出器の前に設置された制限視野を選択できる装置)
では,上記に示された三つの仕様に対応する固定の検出条件(制限視野など)を明示することが望ましい。
4)
検出器
−
型番
5)
相関計
6)
演算装置
19
Z 8826
:2005
図 E.1 少量の水のろ過
図 E.2 大量の水のろ過
E.2.2
有機溶媒 使用する溶媒が,プラスチックろ紙ホルダ及びろ紙材質に影響を与えないならば,水に
対して述べた E.2.1 と同じ浄化方法を用いる。もし影響を与えるならば,ろ紙ホルダをステンレス製のろ
紙ホルダ及び使用する溶媒に適した材質のろ紙に交換する。溶媒に適したろ紙の選択指針は,ろ紙の製造
業者から入手できる。
少量の溶媒をろ過するときには,ガラス製の注射器に接続された直径
13 mm
又は
25 mm
のステンレス
20
Z 8826
:2005
製のろ紙ホルダ及びろ紙を使用する。溶媒に溶解しない材質の
O
リングを選ぶことも忘れてはならない。
ろ紙に穴を開けないように,先の平らなピンセットを用いてろ紙を扱う。
図 E.3 水の浄化:脱イオン,蒸留及びろ過
E.3
清浄化
E.3.1
水 光散乱に影響を与えるのは,液体の中に存在するダストだけではない。残留金属イオンは,散
乱物体に化学的及び形状的な影響を与える場合がある。イオンは,試料を安定化する場合もあるが,凝集
を起こさせることもある。粒子の形状は,拡散係数,したがって光子相関法による測定結果に影響するこ
ともある。
純水製造装置が市販されている。それらの装置は,イオンを除去し,微量な有機物を吸着し,
0.2 µm
の
粒子までろ過できる交換式のカートリッジから構成されている。この装置は,簡便に利用でき,小形で,
安全で,かつ,維持管理が簡単である。
別の方法を
図 E.3 に示す。イオン交換カラム,沸騰フラスコ(石英ガラス製),凝縮器,容器及び孔径
0.2 µm
のろ紙から構成する。イオン交換カラム入口への配管,冷却水の配管を除いて,すべてポリテトラ
フルオロエチレン(
PTFE
)製チューブを使用する。いずれの接続部にもグリスを使用してはならない。
E.3.2
有機溶媒 図 E.3 に示すものと同様な系を構成する。非極性溶媒では,通常,イオン交換カラムは
不要である。プラスチック製ろ紙ホルダとろ紙を適切なものと交換する。溶媒と接触するチューブをすべ
て
PTFE
製チューブ(第
2
候補は,ふっ素系ゴム)に交換する。可燃性の溶媒を蒸留するときには十分に
注意する。
21
Z 8826
:2005
E.4
測定セルの洗浄 溶媒の浄化と同様に,必要なセル洗浄の程度は測定条件によって異なる。個別に包
装された使い捨ての清浄なセルを用いる場合は一番簡単で,ろ過された清浄な圧縮空気でダストを吹き飛
ばすだけでよい。セルの先端部分をもち,光が通過するセル壁に指紋を付けてはならない。
E.4.1
洗剤と洗浄水 さらに厳密なセルの洗浄法を,次に示す。まず,水道水でセルを十分すすぐ。セル
の内側と外側を,研磨剤を含まない洗剤で洗う。このとき,わずか数
µm
の引っかききずが問題となるの
で,ブラシは使用せず,洗剤と水をセルに入れ,セルを勢いよく振る。
さらに十分に洗浄するには,小形の超音波洗浄槽(
40 W
で十分)中の希薄な洗剤を溶かした清浄水(洗
浄液)にセルを入れる。数分間,超音波洗浄を行う。可能なら加熱する。セルにきずが付くのを避けるた
め,セル同士及びセルと洗浄槽の壁が当たらないようにする。超音波洗浄槽の洗浄液は,頻繁に交換する。
水道水で十分に水洗後,ろ過した水で数回すすぐ。セルの内側にダストが付着しないように,カバーを
するか,又はセルを逆さまにして乾燥させる。
E.4.2
酸 試料粒子がときどきセル壁に吸着することがある。また,油や微生物などが付着して,洗剤及
び水だけでは完全に洗浄できないことがある。セルに付着した水が一様に乾燥しない場合,及びセルから
水が一様な液膜となって流れない場合は,次の洗浄処理を試す。
濃硫酸にセルを
1
時間浸す。
PTFE
で被覆されたピンセットを用いて,セルを取り出す。水道水ですす
ぎ,超音波洗浄を行った後,ろ過した水で数回すすぐ。覆いをかけて,乾燥する。
ラテックス試料がセル表面に付着したまま乾燥させると,ガラス又は石英セルの表面に強固な膜ができ
ることがある。この膜を除去するにも,濃硫酸による洗浄が極めて有効である。
E.5
溶液・懸濁液の調製 最も重要なことは,すべて(セルとそのふた,希釈瓶とそのふた,分注用のピ
ペット又は注射器,緩衝液,界面活性剤溶液調製用のガラス器具など)を,浄化及びろ過した溶媒ですす
ぐことである。また,緩衝液,界面活性剤溶液は,清浄化及びろ過した溶媒で調製する。
使い捨てのプラスチック製ピペットからダストを除去するには,通常は圧縮空気を使うだけで十分であ
るが,覆いをかけずに放置して油及びダストが付着したガラス製ピペットに対しては,この方法では不十
分である。
ダストの再混入を防止するために,試料調製の最終段階で使用する溶媒が,室内の空気と接触する機会
を最小にする。室内空気との接触を可能な限り避けるため,直接接続して溶媒を供給する。光を散乱する
バクテリアが増殖するので,ろ過水は,長時間保存してはならない。可能であれば少量の新鮮な溶液を毎
日調製するか,不可能な場合は,使用前にろ過する。
可能なら,フラスコ,瓶又はセル中に溶液を噴霧することを避ける。溶媒が,清浄で滑らかな表面をつ
たって流れるようにすることで,再混入するダストを減らすことができる。
一度調製した試料は,決して強く振ってはならない。試料を振るとダストを含む空気が取り込まれると
ともに,空気が溶液に溶け込む。目に見えない小さな気泡は,測定したい試料粒子よりも,大きな散乱を
与える。試料をゆっくりと回すのが最善である。濃縮された試料の液滴に希釈液を加える方が,希釈液に
液滴を滴下するより,一様な濃度の試料液を迅速に作ることができる。
真の分子溶液を作るときには,専門の文献を参考にする。光散乱を発生させ,誤った結果を導き出すゲ
ル及びその他の超分子には注意する必要がある。
粒子が凝集したままで,あきらかに均一な懸濁液にならないときには,数滴のエタノールを試料に滴下
してぬらした後,水に分散させる。
界面活性剤は過剰に使用しない。臨界ミセル濃度(一般的には
10
-4
〜
10
-5
vol
%)を超えると,界面活性
22
Z 8826
:2005
剤は凝集を促進する場合もある。
E.6
ラテックス懸濁液の調製 光子相関法の測定を初めて行う場合は,電子顕微鏡又は光子相関法で測定
された粒子径が約
100 nm
で,狭い粒子径分布をもつポリスチレンラテックス粒子を選ぶとよい。この試
料の水懸濁液はよく光を散乱するので,装置の調整にも用いることができる。また,最大切片
B
max
を決定
することもできる[8. b)を参照]
。
この目的に使用できるポリスチレン粒子は,市販されている。購入後
1
年以上経過した試料は,使用し
てはならない。これらのラテックス試料は,室温で密閉容器中に保存する。
NaCl
濃度
10
-2
mol/L
の溶液
200 mL
を調製する。使い捨ての孔径
0.2 µm
のフィルタを,この溶液をろ過
するために使用する。このろ過した溶液で,容積
25 mL
の容器及びねじ込み式のふた,使用する試料セル
及びそのふたを十分にすすぐ。使用するまでこれらには覆いをかける。
市販のラテックス試料は,プラスチック製の小さい絞り出し容器に入っていて,通常は界面活性剤が含
まれているので,調製の際にはこれ以上界面活性剤を加える必要はない。ラテックス粒子の濃度は,通常,
2
〜
10 %
(
m/m
)の範囲にある。この場合,容器へ約
4
滴ほど滴下し,ろ過した
10
-2
mol/L
の
NaCl
溶液約
20 mL
を加える。この結果得られる試料は,少し濁った状態で,
5 mW
の
He-Ne
レーザでの測定に適する。
レーザが,高出力の場合には,ラテックス試料を
1
滴だけ滴下するか,又は
2
段階で希釈を行う。
容器中の試料に対し,
10
秒程度の発振を数秒おきに繰り返して,合計約
2
分間超音波分散させる。
測定セルをすすぐ。E.4.1 で述べた洗剤と水による方法を適用する。すべての器具にすりきずを付けない
ように注意する。まず,水道水で十分すすいだ後,ろ過した水ですすぐ。セルのふたをすすぐ。試料を容
器からセルの中へ静かに注ぎ,ふたをする。
もしセルの外側がぬれていたら,試料ホルダへセルを装てんする前に乾かす。すりきずを付けるような
タオルでセルをふいてはならない。セルを吸着紙で軽くたたいて乾かす,又は吸着紙,できれば光学ガラ
ス用の吸着紙の上で,セルをゆっくりと回して水分をぬぐう。
レーザ光路にセルを置く。この規格の 7.の手順を行う。光散乱による明りょう(瞭)な一本の光線がセ
ル中に観察されることが望ましい。この光線が太くぼやけているならば,試料は濃すぎるので,さらに希
釈する。もしこの光線が極端に不明りょうなときには,すなわち,ろ過水中とあまり変わらないようであ
れば,試料は薄すぎるので,ラテックスをもっと加える。不規則な強い散乱光が容易に観測されるなら,
容器及び水をさらに注意深く洗浄・清浄化して,新しい試料を調製する。
23
Z 8826
:2005
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24
Z 8826
:2005
附属書 1(参考)JIS と対応する国際規格との対比表
JIS Z 8826
:2004 粒子経解析−光子相関法
ISO 13321:1996
粒子経解析−光子相関法
(Ⅰ) JIS の規定
(Ⅲ) 国際規格の規定
(Ⅳ) JIS と国際規格との技術的差異の項目ごと
の評価及びその内容
表示箇所:本体,附属書
表示方法:点線の下線
項目
番号
内容
(Ⅱ)
国 際 規
格番号
項目番号
内容
項目ごとの評
価
技術的差異の内容
(Ⅴ) JIS と国際規格との技術的差異の理
由及び今後の対策
1.適用範囲
液体中に分散した粒子の
平均粒子径及び粒子径分
布の広がりを測定するた
めの光子相関法を規定。
ISO
13321
1
JIS
と同じ。
一致
−
2.定義
平均粒子径,多分散指数,
散乱体積及びカウントレ
ートの定義を規定。
2
平均粒子径,多分散指数
及び散乱 体積の定 義を
規定。
追加
JIS
の散乱体積の定義に,
ISO
規格の備考 4 に記載の
散乱体積が装置の製造業
者から提供される使用に含
まれる場合があること を追
加。
定義用語にカウントレート
を追加。
散乱体積の ISO 規格の定義では,一
般的には,10
-6
cm
3
としているが,
現在ではさらに小さくなっているた
め。
カウントレートは,専門用語である
ので追加。
ISO
規格の修正を求める。
3.記号
14 種の記号を定義。
3
13 種の記号を定義。
追加
B
max
の説明に,製造業者の仕
様に値が記述されているこ
とがあること及び 8.に規定
した方法で決められること,
を追加。
相関時間 τ を追加。
ISO
規格は,6.2.2 の 4) で B
max
の決
め方の記述しているが,それを記号
説明に入れたほうが分かりやすいた
め移動。
ISO
規格には τ の説明がない。ISO
規格に修正を求める。
4.原理
粒子によるレーザ光の散
乱を受光し,相関計によ
る処理したデータに基づ
き平均粒子径及び多分散
指数が得られる。
4
JIS
と同じ。
一致
−
−
25
Z 8826
:2005
(Ⅰ) JIS の規定
(Ⅲ) 国際規格の規定
(Ⅳ) JIS と国際規格との技術的差異の項目ごと
の評価及びその内容
表示箇所:本体,附属書
表示方法:点線の下線
項目
番号
内容
(Ⅱ)
国 際 規
格番号
項目
番号
内容
項目ごと
の評価
技術的差異の内容
(Ⅴ) JIS と国際規格との技術的差異の理
由及び今後の対策
5.装置
装置の構成は,レーザ,試
料ホルダ,レーザビームス
トッパ,光学系及び検出器,
相関計並びに演算装置。
各構成装置の説明を記述。
ISO
13321
5
装置の構成は,JIS と同じ。
レーザ,試料ホルダ並びに
光学系及び検出器の説明は
あるが,レーザビームスト
ッパ,相関計及び演算装置。
については説明なし。
追加
JIS
では,レーザビームストッ
パ,相関計,演算装置について
も装置の説明を記述。
ISO
規格には,説明を記述していな
い構成装置がある。ISO 規格にすべ
ての構成装置の説明を記述すること
を求める。
6.準備
6.1 装 置
の設置
装置の設置環境に関する注
意事項を規定。
6
6.1
JIS
と同じ。
一致
6.2 試 料
の調製
分散媒の要件及び適正濃度
条件を規定。
6.2
JIS
とほぼ同じであるが,
濃度の上限値の決め方とし
て,製造者の仕様又は,8.
によることを指示。
削除/追加
ISO
規格からの削除部分は,JIS
の”3.記号”で規定。
変更部分は,ISO 規格の 6.2.1
の 塩 化 ナ ト リ ウ ム 濃 度 ;
10
-3
mol/L を JIS では,例えば,
塩化ナトリウム濃度;10
-2
mol/L
に変更。
削除部分は,濃度上限値の物理的意
味が,あいまいなので,JIS では記
号で決め方を説明した。ISO 規格も
JIS
方式とするよう に修正 を求め
る。
変更部分は,ISO 規格の値はミスプ
リントと考えられる。変更によって
附属書 E(参考)の E.6 中の NaCl
濃度と整合する。ISO 規格の修正を
求める。
7. 測 定 手
順
電源投入から測定終了まで
の 9 段階を規定。
7
JIS
とほぼ同じ。
変更
推定される標準偏差を求める式
が異なる。
ISO
規格の式に誤りがある。ISO 規
格の修正を求める。
8. 校 正 及
び 確認
校正は不要。確認は,粒子
径が既知の粒子で行う。
8
校正は不要。確認は,粒子
径が既知のの粒子で行う。
一致
9. 併 行 精
度
平 均 粒 子 径 の 併 行 精 度 は
5 %未満と規定。
9
JIS
と同じ。
一致
−
10.試験報
告書
平 均 粒 子 径 及 び 多 分 散 指
数。粒子情報,装置,分散
条件,測定条件,散乱角,
測定者
10
JIS
と同じ。
一致
−
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26
Z 8826
:2005
(Ⅰ) JIS の規定
(Ⅲ) 国際規格の規定
(Ⅳ) JIS と国際規格との技術的差異の項目ごと
の評価及びその内容
表示箇所:本体,附属書
表示方法:点線の下線
項目
番号
内容
(Ⅱ)
国 際 規
格番号
項目番号
内容
項目ごとの評
価
技術的差異の内容
(Ⅴ) JIS と国際規格との技術的差異の理
由及び今後の対策
附属書 A
(規定)
平均粒子径及び多分散指
数の計算方法
ISO
13321
Annex A
(規定)
JIS
とほぼ同じ。
追加
ISO
規格は,附属書 C(参考)
の式(C.12)を引用している
が,JIS ではこれを式(A.0)
として記述。
ISO
規格の式(A.2)にミス
プリントがある。JIS はこれ
を訂正して規定。
附属書 A は規定であるので,附属書
C(参考)中の式を引用して論ずる
のは分かりにくい。ISO 規格の附属
書 A に附属書 C の式(C.12)を記述
するよう,修正を求める。
ISO 規格の式(A.2)の訂正を求める。
附属書 B
(参考)
試験報告書の推奨例
Annex B
(参考)
JIS
とほぼ同じ。
一致
JIS
では, B.3 分散条件 の
記述に番号を付け,
更に詳細
にした。また,測定条件を
10.試験報告書 に合わせ
るとともに,測定 No による
平均粒子径及び多分散指数
の結果を表にまとめた。
ISO
規格は,規格本体との整合性が
良くないので,JIS では修正した。
JIS
の方式を ISO 規格に推奨する。
附属書 C
(参考)
理論的背景
Annex C
(参考)
JIS
と同じ。
一致
−
附属書 D
(参考)
一般的な光子相関法の装
置及び推奨される仕様項
目
Annex D
(参考)
一般的な 光子相関 法の
装置及び 推奨され る仕
様項目
削除
JIS
では,装置仕様中の検出
器の項で, ダークカウント
及び 最小パルス対分散
能
を削除。
ISO
規格には,規格本体で記述され
ていないこれらの仕様が存在し,整
合性がとれていないので,JIS では
削除した。ISO 規格に修正を求める。
附属書 E
(参考)
推奨する試料調整方法
Annex D
(参考)
JIS
と同じ。
一致
−
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Z 8826
:2005
(Ⅰ) JIS の規定
(Ⅲ) 国際規格の規定
(Ⅳ) JIS と国際規格との技術的差異の項目ごと
の評価及びその内容
表示箇所:本体,附属書
表示方法:点線の下線
項目
番号
内容
(Ⅱ)
国 際 規
格番号
項目番号
内容
項目ごとの評
価
技術的差異の内容
(Ⅴ) JIS と国際規格との技術的差異の理
由及び今後の対策
附属書 F
(参考)
参考文献
ISO
13321
Annex C
(参考 e)
参考文献
−
参考文献として,ISO 規格は
7 文献を紹介。JIS では更に
7 文献を追加している。
ISO
規格の紹介文献は特定研究室の
ものに偏っているので,JIS に追加
した文献のうち,古いものを外して
代表的な新しい文献に変更すること
を求める。
JIS と国際規格との対応の程度の全体評価:MOD
備考1. 項目ごとの評価欄の記号の意味は,次のとおりである。
― 一致………技術的差異がない。
― 削除………国際規格の規定項目又は規定内容を削除している。
― 追加………国際規格にない規定項目又は規定内容を追加している。
― 変更………国際規格の規定内容を変更している。
― 選択………国際規格の規定内容と別の選択肢がある。
2.
JIS
と国際規格との対応の程度の全体評価欄の記号の意味は,次のとおりである。
― IDT………国際規格と一致している。
― MOD……国際規格を修正している。
― NEQ………技術的内容及び構成において,国際規格と同等でない。
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