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Z 8521 : 1999 (ISO 9241-11 : 1998)

(1) 

まえがき

この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,通商産業大臣が制定した日

本工業規格である。

JIS Z 8521

には,次に示す附属書がある。

附属書 A(参考)  利用の状況の指定例

附属書 B(参考)  使用性尺度の例

附属書 C(参考)  使用性要求仕様の例

附属書 D(参考)  他の規格との関連

附属書 E(参考)  参考文献


日本工業規格

JIS

 Z

8521

: 1999

 (I

9241-11

: 1998

)

人間工学−視覚表示装置を用いる

オフィス作業

−使用性についての手引

Ergonomics

−Office work with visual display terminals (VDTs)

−Guidance on usability

序文  この規格は,1998 年に第 1 版として発行された ISO 9241-11,Ergonomic requirements for office work

with visual display terminals (VDTs)

−Part 11 : Guidance on usability を翻訳し,技術的内容及び規格票の様式を

変更することなく作成した日本工業規格である。

なお,この規格で点線の下線を施してある部分は,原国際規格にはない事項である。

使用性を考慮し,視覚表示装置(Visual display termina1 以下,VDT という。

)を利用した作業(以下,VDT

作業という。

)を設計及び評価する目的は,利用者が目標を達成し,個々の利用の状況において要求に応え

るのを可能にすることである。この規格は,利用者の作業成績及び満足度という見方から使用性を測定す

ることの効用を述べる。利用者の作業成績及び満足度は,意図した目標達成の程度,意図した目標を達成

するのに費やした資源,利用者が製品の使用で満足した度合いによって測る。

この規格では,VDT 作業の使用性が利用の状況に左右されること,及び使用性がどこまで達成されるかは,

ある製品を利用する具体的状況によって左右される点を重視している。利用の状況は,利用者,仕事,設

備(ハードウエア,ソフトウエア及び資材)

,及び製品の使用性に影響を及ぼす可能性をもつ作業システム

の物理的,並びに社会的環境から成り立っている。利用者の作業成績及び満足度の尺度は,作業システム

全体を評定するものであり,関心の中心課題が一つの製品である場合には,これらの尺度は,その製品の

ある特定の利用の状況における使用性について情報を与える。例えば,利用者訓練の量,照明の改善など

の作業システムのその他の構成要素の変化の影響もまた,利用者の作業成績及び満足度によって測定する

ことができる。

使用性という用語は,ときには,より狭くその製品を使いやすいものにする製品の属性を指すのに用いら

れることもある(

附属書 参照)。VDT 作業の使用性に寄与するハードウエア,ソフトウエア及び環境の

属性に関しての要求事項及び勧告,並びにその基礎となる人間工学上の原則については,ISO 9241 の他の

部に述べられている。


2

Z 8521 : 1999 (ISO 9241-11 : 1998)

1.

適用範囲  この規格は,使用性を定義するとともに,利用者の作業成績及び満足度の尺度という点か

ら VDT 作業の使用性を指定又は評価しようとする際に,考慮すべき情報を識別する方法について規定す

る。また,製品(ハードウエア,ソフトウエア又はサービス)の利用の状況及び必要となる使用性の尺度

を明示的に記述する方法に関しての手引を示す。この手引は,具体的手法を利用する上での要求事項とい

う形ではなく,全般的な原則及び技法という形で示す。

この規格中の手引は,購買,設計,開発,評価及び使用性に関する情報の交換に用いてもよい。また,

製品の使用性を指定し評価する方法についての手引も含める。一般的利用を意図した製品にも,特定の組

織で調達又は開発される製品にも適用する。

この規格は,作業システムのある要素が,作業システム全体にどれほど影響を及ぼすかを測るのに,利

用者の作業成績及び満足度の尺度をどのように用いるかについても規定する。

なお,この手引は,使用性を測る手続を含むが,そのための活動すべてを詳細には規定しない。

この規格は,VDT を用いたオフィス作業に対して適用する。さらに,利用者が目標達成のために製品と

やりとりするようなその他の場合に適用してもよい。

この規格中の手引は,ISO 9241 の第 12 部から第 17 部までと組み合わせて個々の勧告の適用可能性を決

める上での補助として用いてもよい。

参考1.  ISO 9241の第12部から第17部では,ある利用の状況で適用できる勧告を与えている。

2.

利用者に基づいた測定手法を詳細指定することは,この規格の範囲を超えているが,

附属書

B

及び

附属書 の文献中に関連情報が見られる。

3.

この規格は,使用性を中心主題としており,ISO 6385 て述へられている人間工学上の設計の

全目標を包括的に扱うものてはないが,設計時に使用性を考慮することは,安全,衛生及び

成績に対する使用上の悪影響を減らすなどの人間工学上の目的に積極的に役立つことと思わ

れる。

4.

この規格は,システム開発の過程については扱わず,会話形システムの人間中心の設計手順

は,今後の標準化の課題であろう。

2.

引用規格  次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す

る。この引用規格は,その最新版を適用する。

ISO 6385 : 1981

  Ergonomic principles in the design of work systems

3.

定義  この規格で用いる主な用語の定義は,次による。

3.1

使用性  (usability)  ある製品が,指定された利用者によって,指定された利用の状況下で,指定され

た目的を達成するために用いられる際の,有効さ,効率及び利用者の満足度の度合い。

備考  使用性の他の扱い方については,附属書 D(参考)を参照。

3.2

有効さ (effectiveness)  利用者が,指定された目標を達成する上での正確さ及び完全さ。

3.3

効率  (effinciency)  利用者が,目標を達成する際に正確さと完全さに関連して費やした資源。

3.4

満足度  (satisfaction)  不快さのないこと,及び製品使用に対しての肯定的な態度。

3.5

利用の状況  (context of use)  利用者,仕事,装置(ハードウエア,ソフトウエア及び資材),並びに

製品が使用される物理的及び社会的環境。

3.6

作業システム  (work system)  ある目標を達成することを目指した利用者,設備,仕事,物理的及び

社会的環境から成るシステム。


3

Z 8521 : 1999 (ISO 9241-11 : 1998)

参考  利用の状況は,作業システムの使用性を指定又は測定しようとするときに,与件として扱われ

る作業システムの要素から構成される。

3.7

利用者  (user)  製品とやりとりする人間。

3.8

目標  (goal)  意図している結果。

3.9

仕事  (task)  目標達成のために必要となる活動。

参考1.  活動には身体的なものも認知的なものもある。

2.

職務上の責務が目標や仕事を決める場合もある。

3.10

製品  (product)  使用性を指定又は評価しようとする装置(ハードウエア,ソフトウエア及び資材)

の部分。

3.11

尺度  (measure)  測定の結果得られた値,及びその値を得るのに使われた手続。

4.

根拠及び効用(参考)  使用性は,その製品の利用者がどこまで有効に,効率的に,満足度をもって

働くことができるかに関係するので,製品の設計において重要な考慮事項となる。

特定の利用の状況で利用者の利益となることが分かっている特徴と属性とを組み込むことによって,製

品の使用性は改善できる。達成された使用性の水準を決定するためには,その製品を用いて作業する利用

者の作業成績及び満足度を測定する必要がある。

利用者,目標,仕事の特性及び利用の状況を構成するその他の要素間の相互作用が複雑であることを考

えると,使用性の測定は格別に重要となる。ある製品が異なる状況で利用されたときには,使用性の水準

が有意に異なる場合もある。

製品の設計及び開発の一部として使用性を扱う場合には,使用性の尺度及び利用の状況の検証可能な記

述も含めて,使用性の要求仕様を系統立てて明確にすることが必要となる。これらは,設計結果を検証す

るための基盤となる設計目標を与える。

この規格で採用されたアプローチは,次のような利点をもっている。

・  製品の使用性を指定,設計又は評価する際に,考慮すべき使用性の側面,及び利用の状況の構成要

素を明確に示す枠組みを与えること。

・  ある製品のある状況下での使用性の度合いを測るのに,利用者の作業成績(有効さ及び効率)及び

満足度を利用できること。

・  同一の状況で技術的特性の異なる製品を用いた場合に,製品間の使用性の相対比較をする基盤を,

利用者の作業成績及び満足度の測定値が与えること。

・  ある製品に対する使用性を,定義,文書化及び検証できること(例えば,品質計画の一部として)。

5.

製品の使用性の指定及び測定

5.1

使用性指定の枠組み

5.1.1

目的  この枠組みは,使用性を構成するもの及びそれらの間の関係について規定する。

5.1.2

使用性を構成するもの  使用性を指定又は測定するためには,目標を明確化すること,並びに有効

さ,効率及び満足度,そして利用の状況を構成するものを,測定可能,かつ,検証可能な属性をもつ下位

要素へと分解することを必要とする。これら構成要素とその間の関係は,

図 による。


4

Z 8521 : 1999 (ISO 9241-11 : 1998)

図 1  使用性の枠組み

5.1.3

必要となる情報  使用性を指定又は測定する際に,次の情報を必要とする。

・  意図している目標の記述

・  利用者,仕事,設備及び環境から成り立っている利用の状況の構成要素の記述。これは既存の状況

を書き表したものであったり,

想定する状況の詳細化であったり,状況のどんな側面が該当するか,

どの程度詳細にするかは,直面している事柄の範囲に依存するので,状況の記述には,使用性に有

意な影響を及ぼすような状況の側面が再現できるのに十分な詳しさを必要とする。

・  意図した状況における有効さ,効率,満足度の目標とする値,又は現状の値

5.2

目標の記述  製品を利用する目標を記述することが望ましい。目標を,更に下位目標へと分解する

場合もあり,下位目標では,全体目標を構成する要素及びその目標を満たすか否かの判定基準を明確にす

る。例えば,電話による販売員の目標を“客の注文を扱う。

”とし,この全体目標を,例えば,次のような

下位目標に分解する。

・  “客からの注文すべての正確な記録をする。

・  “出された注文に関する客の問合わせに応じて迅速に情報を与える。

全体目標を設定する水準は,考察対象とし,かつ,利用の状況を与える作業システム境界の関数とする。

上の例では,考察対象の作業システムは,電話で注文を受ける事務員とする。

5.3

利用の状況

5.3.1

利用者の記述  利用者の該当する適切な特性を記述する。これらには,知識,技能,経験,教育,

訓練,身体的属性,並びに運動及び感覚能力などを含む。

参考  経験の度合いが異なる,又は果たす役割が異なるなどの,色々な種類の利用者の特性を明確に

する必要が生じる場合もある。

5.3.2

仕事の記述  仕事とは,目標を達成するために行われる活動とする。使用性に影響を及ぼす可能性

がある仕事の特性,例えば,仕事の頻度及び所要時間を記述することが望ましい。

製品との詳細なやりとりを設計又は評価する基盤として状況の記述が利用される場合には,仕事の活動

及び手順の詳細な記述が要求されることもあり,これには活動及び作業段階の人と技術的資源との間での

割振りの記述を含む。仕事を,製品及びシステムから与えられる機能及び特徴の観点からだけで記述しな

いことが望ましい。仕事を行う上での活動及び作業段階の記述はすべて,達成しようとする目標に関連付


5

Z 8521 : 1999 (ISO 9241-11 : 1998)

けることが望ましい。

使用性を評価する目的では,通常は仕事全体の重要な側面を代表するように,主要な仕事の一群を選び

出す。

利用者が行う仕事及びその下位作業の識別は,タスク分析(

附属書 中の文献参照)によって行っても

よい。

5.3.3

設備の記述  設備の該当する適切な特性を記述する。

参考 VDT に関連するハードウエア,ソフトウエア及び資材の記述は,その中の幾つかが使用性の指

定又は評価の焦点となるような一群の製品(又はシステム構成要素)を用いて行う場合もある

し,またハードウエア,ソフトウエア,資材の一群の属性又は性能特性を用いて行う場合もあ

る。

5.3.4

環境の記述  物理的及び社会的環境の該当する適切な特性を記述する。記述する側面は,周辺の技

術的環境の属性(例えば,ローカルエリアネットワーク)

,物理的環境の属性[例えば,作業場所,じゅう

(什)器]

,周辺環境(例えば,温度,湿度)

,社会的及び文化的環境(例えば,作業慣行,組織構造,態

度)などとする。

5.3.5

例  附属書 は,利用の状況の各要素を使用性に関連する特性という観点から記述する方法の実

例を示す。

5.4

使用性の尺度

5.4.1

尺度の選択  有効さ,効率及び満足度のそれぞれに,少なくとも一つの尺度を与えることを通常必

要とする。

尺度の選択及び各尺度の詳細さの度合いは,測定にかかわる関係者の目的に依存する。目標に対しての

各尺度の相対的重要度を考慮することが望ましい。

有効さ及び効率について客観的尺度を得ることが不可能な場合には,利用者の直感に基づいた主観的尺

度を,有効さ及び効率の指示値としてもよい。

参考1.  使用性の構成要素の相対的重要さは,利用の状況と使用性を記述しようとする目的に依存す

るので,尺度を選ぶ,又は組み合わせる上での一般的原則はない。

2.

測定にかかわる関係者の利用が頻繁でない場合には,学習及び再学習にかかわる尺度には大

きな重要度を与える。

5.4.2

有効さ  有効さの尺度は,利用者の目標又はその下位の目標を,それら目標が達成される正確さ及

び完全さに関連づけるものとする。

例えば,要求された目標が,指定した書式で 2 ページの文書を正確に複製することであれば,正確さは,

誤ったつづりの個数及び指定書式から外れた箇所の数で,そして完全さは,転記の済んだ語数を原文書中

の語数で割った値でそれぞれ指定し,測定できるものとする。

5.4.3

効率  効率の尺度は,達成された有効さと,資源の消費とを関連づけるものとする。考慮すべき資

源としては,精神的又は身体的労力,時間,資材,金銭的費用などを含む。例えば,人の効率は,有効さ

を人の労力で割ったものとして,時間的効率は,有効さを時間で割ったものとして,経済的効率は,有効

さを費用で割ったものとして測定できるものとする。求める目標が,ある報告書を何部か複写することで

あれば,効率は,正しく印刷できた部数をその仕事に費やした資源,例えば,労働時間,費やされた手順,

消費された資材で割ることによって指定又は測定できるものとする。

5.4.4

満足度  満足度とは,利用者に不快を感じさせない度合い,及び製品使用への利用者の態度を測る

ものとする。


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Z 8521 : 1999 (ISO 9241-11 : 1998)

満足度は,感じられた不快さ,製品への好感度,製品利用における満足度,種々の仕事を行う際の作業

負荷の受忍度,特定の使用性目標(効率又は学習性など)を満たす度合いなどについての主観的評定によ

って指定又は測定されるものとする。

参考  他の満足度の尺度として,使用中の肯定的及び否定的意見の数が用いられる場合がある。欠勤

率,過大な又は過小な利用者の認知的若しくは生理的負担の観測,他職務への転出要求の頻度

などの長期的尺度を参考にする場合もある。

5.4.5

別例  使用性を評定するのに利用できる尺度の例を,附属書 及び附属書 中に示す。

5.5

尺度の解釈  ある使用性測定の結果を,著しく異なる種類の利用者,仕事,環境をもつ他の状況へ

と一般化する際には慎重であることが望ましい。

参考  使用性の尺度が,短期間で得られたものならば,その値には,例えば,ときたま生じるシステ

ムエラーのような,頻度は低いが使用性に有意な影響を与えかねない事態が考慮されていない

場合もある。

はん(汎)用の製品の場合には,予想される状況及び行われるはずの仕事を含むような数種の代表的状

況下で使用性を指定又は測定する。

参考  これら状況下では,使用性に差が生じる場合がある。

6.

設計段階での使用性の指定及び評価

6.1

製品に対しての利用の状況の指定  全体的な製品の要求事項を個別的な使用性要求仕様を作り上げ

るのに先立って指定する際に,利用者の特性,目標,及び仕事とその仕事を行う環境についての情報は,

重要な情報を提供する。

6.2

製品に対しての使用性要求仕様の指定  組織の必要性に適合する製品を入手しようとする組織は,

開発に先立って,製品が満たすべき及び受入れ試験実施の基準となる使用性要求仕様を指定するための枠

組みとして,この規格中の情報を用いることができる。使用性を測定する具体的な状況,及び有効さ,効

率,満足度の尺度として選んだもの,並びにこれら尺度に基づいて設定された受入れ基準を,それぞれ明

確にすることが望ましい(

附属書 に例を示す。)。

6.3

製品開発  使用性の定義及びそれを考える枠組みを用いて,製品開発部門に共通した使用性概念の

理解を形成することができる。また,製品開発部門が,製品の使用性と関連する幅広い問題に取り組む助

けとしてもよい。

開発者は,この規格中の手引を,製品の目標とする使用性を指定する上での助けとして用いてもよい(

属書 C)。開発過程の種々の段階で,開発者は,達成された使用性を目標値に照らしながら測定することが

できる。

参考  この情報は,使用性を向上させるために設計変更が必要かについて,及び使用性と他の要求事

項との間で何らかの折り合いを付けるべきかについての客観的な判断を可能にする。

6.4

製品属性の指定と評価  利用の状況についての手引は,製品の特定の属性に関し一層正確な判定が

行えるように,利用者,仕事及び環境を明確化するのに用いてもよい。

6.5

使用性の測定  この規格は,使用性の測定を支援する情報を提供するものとする。

参考  例えば,利用者特性の記述は,評価に参加させる利用者を選択する上で助けとなる。明示され

た利用者の目標は,使用性を試験したり検討するために適切な仕事を選び出す上で助けとなる。

その環境を模擬して試験結果に妥当性をもたせるように測定を行おうとする場合には,製品を利用しそ

うな環境の特性を記述する。


7

Z 8521 : 1999 (ISO 9241-11 : 1998)

この規格は,また,使用性の尺度を生み出す基盤を提供する。製品の開発者が,有効さ,効率,及び/

又は満足度の適切な尺度を作り上げてもよい(

附属書 参照)。

6.6

使用性の品質計画への利用  6.16.5 に列挙した活動は,品質計画の一部として,使用性を定義し,

文書化し,検証する上での基盤を提供する。

図 は,これらの活動とその結果得られる文書との関係の概

要を示す。

参考  これらは品質計画の中に(例えば,ISO 9000-3 中に示すように)含める場合もある。

図 2  品質計画

6.7

製品の比較評価  この規格中の手引は,入手可能な製品の中から選択する際の補助として利用して

もよい。使用性の要求事項を,意図した目標,利用の状況の観点から指定し,有効さ,効率及び満足度の

どのような尺度を使うかを指定してあれば,この規格中の手引を試験条件や評価基準を指定するのに利用

してもよい。試験条件は,全体的な利用の状況の重要な側面を代表するものであることが望ましい。

6.8

他の規格との併用  この規格中の手引は,行うべき設計上の決定に関連する目標及び利用の状況を

見極めるための枠組みを提供する。

附属書 は,ISO 9241 の他の部及び他の規格との関係についての情報

を更に含む。

参考  ISO 9241 の他の部,例えば,ISO 9241-14 には,特定の利用の状況において適用可能な勧告が

盛られている。

7.

作業システムの指定及び測定

7.1

使用性との関係  ねらいとするものが作業システム全体の改善であれば,その作業システムのすべ

ての部分が設計又は評価の対象とする。

有効さ,効率及び満足度の尺度を,作業システムの各要素の評価に利用してもよい。

参考  例えば,与えるべき利用者教育の量,照明の変化,仕事の組み立て直しが検討すべき事項であ

る場合などである。どの場合でも,設計又は評価の対象である構成要素は変化する可能性をも

つとされる。

一方,作業システムのその他の要素は,固定したものとして扱う。ある製品が関心の焦点である場合に

は,これらの尺度は,作業システムのそれ以外の部分で与えられる特定の利用の状況における製品の使用


8

Z 8521 : 1999 (ISO 9241-11 : 1998)

性に関しての情報を与えるものとする。

7.2

適用の例

7.2.1

ある作業システム全体の設計  ある作業システム全体を設計する際に,ある製品の利用の状況中の

構成要素,例えば,OS の版,照明,利用者教育の量を変更することで,使用性を最適化できる場合があ

る。この場合,OS の新版,別種の照明,利用者教育量の変更の効果を指定し評価するために,有効さ,

効率及び満足度の尺度を用いることができる。

7.2.2

診断的評価  作業システムが満足できない場合,利用の状況のいろいろな構成要素の貢献を系統立

てて調査することが望ましい。直接的な貢献及び利用の状況の間の相互作用の両面を問題の主因を決める

のに考慮することが望ましい。この手続きはまた,作業システム全体に改善をもたらすにはどの構成要素

を変化させるのが適切かを見分けるのに利用してもよい。

参考  利用の状況に関連した診断的な活動は,問題が製品に起因するのか,それとも作業システムの

他の要素に起因するのかを決定するためにしばしば必要となる。


9

Z 8521 : 1999 (ISO 9241-11 : 1998)

附属書 A(参考)  利用の状況の指定例

表 A.1E.2.2 及び E.2.18 に基づく)は,利用の状況が,使用性と関連をもつ属性を用いてどのように指

定されるかの例を与えている。ある特定の状況で利用される製品は,

表 A.1 中のような見出しのもとに指

定することができる。指定は,関連する特性の形で述べられているものも,具体例もある。カスタム化可

能な製品のある例を指定する場合には,製品の既定の特性に対して行われた適応を指定することが望まし

い。

使用性を検証可能及び再現可能であるように記述するには,ある具体的状況で再現できるような使用性

の尺度を必要とする。使用性の評価が,実際に利用される条件下で行われるのでなければ,評価を行う場

合の状況中に,現実の,又は想定した利用の状況のどの属性を,表現すべきかを決定することが必要とな

る。使用性を指定又は評価する場合には,現実の,又は想定した利用の状況の重要な側面を代表する状況

を選ぶ。製品の使用性に著しい影響を及ぼすと判断された属性に,格別の配慮をすることが望ましい。

A.1

中の属性すべてがどんな場合にも関連をもつというわけではないし,また,別の属性を追加する必要

も生じる。


10

Z 8521 : 1999 (ISO 9241-11 : 1998)

表 A.1  利用の状況の属性の例

利用者

仕事

設備

利用者の種類

仕事の構成

基本的記述

主な利用者

仕事の名称

製品名称

2

次的な及び間接的利用者

仕事の頻度

製品説明

仕事の期間

主適用領域

技能と知識

事象の頻度

主要機能

製品についての技能/知識

仕事の融通性

システムについての技能/知識  生理的及び精神的負担

仕様書

仕事の経験

仕事の依存性

ハードウエア

組織上の経験

仕事の結果

ソフトウエア

訓練水準

誤りに起因する危険

資材

入力装置の技能

安全性に直結する要求 サービス

資格

その他の項目

言語的技能

一般的知識

個人的特性

年齢

性別

生理的能力

生理的限界及び障害

知的能力

態度

動機

環境

組織的環境

技術的環境

物理的環境

構造

構成

作業場所状態

勤務時間

ハードウエア

気候的環境

協同作業

ソフトウエア

音響環境

職務機能

参照資料

温熱環境

作業慣行

視覚環境

援助

環境の不安定性

中断

管理構造

作業場所設計

伝達構造

場所と什器

利用者の姿勢

態度及び文化

位置

コンピュータ利用の方針

組織目標

作業場所の安全

職場での関係

衛生災害

防護衣及び器具

職務設計

職務の柔軟性

成績監視

成績通知

仕事の速さ

自律性

自主性


11

Z 8521 : 1999 (ISO 9241-11 : 1998)

附属書 B(参考)  使用性尺度の例

B.1

全体的使用性  有効さ,効率及び満足度の使用性尺度を,全体目標(例えば,手紙作成)に対して指

定する場合も,より狭い目標(例えば,検索,置換を行う)に対して行う場合もある。

使用性の尺度を最重要の利用者目標に対して選ぶことは,多くの機能を無視することにはなるが,もっ

とも実務的な取組み方であろう。適切な尺度の例を

附属書表 B.1 に与える。

附属書表 B.1  使用性尺度の例

使用性の目標

有効さの尺度

効率の尺度

満足度の尺度

全体的使用性

達成された目標の割合 
仕事の完了に成功した利用者

の割合

完了した仕事の平均的正確さ

仕事の完了に要した時間 
単位時間に完了した仕事 
仕事を行う金銭的費用

満足度の評定尺度 
自主的使用の頻度 
不満の頻度

B.2

製品の望ましい性質に対する尺度  使用性に寄与する製品の望ましい性質に対して更に尺度が必要と

なる場合もある。これらの性質と,各性質に対する尺度の例を,

附属書表 B.2 に与える。表 B.1 の尺度も,

もし該当する場合には,

附属書表 B.2 の使用性目標として利用することができる。

附属書表 B.2  製品の望ましい性質に対する尺度の例

日指す使用性

有効さの尺度

効率の尺度

満足度の尺度

訓練を受けた利用者の要求

行われた重要な仕事の数

利用された関連機能の割合

熟練利用者と比べての相対的

効率

主要機能に関しての満足度の

評定尺度

初めての利用についての要求  最初の試行でうまく完了した

仕事の割合

最初の利用で要した時間

1

)

最初の利用での相対的効率

自主的な利用の割合

時々の,又は時間を置いた後

での利用についての要求

指定した不使用期間後にうま

く完了した仕事の割合

機能の再学習にかかった時

1

)

繰り返される誤りの数

再利用の頻度

支援必要性の最小化

文書参照の回数

支援呼び出しの回数

ヘルプ利用の回数

生産的な時間

1

)

基準に達するまでの学習に要

した時間

1

)

支援機能についての満足度の

評定尺度

学習性

学習した機能の数

基準に達する学習ができた利

用者の割合

基準までの学習に要した時

1

基準までの再学習に要した時

1

学習時の相対的効率

学習の容易さの評定尺度

誤りの許容度

システムによって訂正された

又は報告された誤りの割合

許容された利用者誤りの数

誤り訂正に要した時間

誤り処理についての評定尺度

視認性

通常の視距離で正しく読めた

語の割合

指定字数を正しく読むのに要

した時間

目の不快さについての評定尺

1

)

これらの例では,指定した有効さの水準との関連で資源を測定することが望ましい。


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Z 8521 : 1999 (ISO 9241-11 : 1998)

B.3

使用性の判定基準を選ぶ  使用性を判定するための尺度の基準値をどう選ぶかは,製品についての要

求事項及び基準設定を行う組織の必要性に依存する。使用性目標は,主目標(例えば,手紙作成)

,若しく

は下位目標(例えば,検索,置換)又は二次的目標(例えば,学習性,又は適応性)と関連する場合があ

る。使用性目標を最も重要な利用者目標に絞ることは,多くの機能を無視することになるが,もっとも実

際的な取組み方と思われる。特定の下位目標に向けて使用性目標を設定すると,開発過程の早期に評価が

可能となる。

使用性の最低限の受容水準及び目標とする水準の両方を指定する必要が生じる場合もある。

ある利用者群に対しての判定基準値を設定する場合には,基準は平均として設定される(仕事の平均終

了時間は 10 分を超えない)場合も,個別に設定される(例えば,すべての利用者は 10 分以内に仕事を終

了)場合も,ある割合の利用者に対して設定される(9 割の利用者が仕事を 10 分以内に終了)場合もある。

B.4

尺度の種類  使用性の尺度は,製品又は作業システムとやりとりした利用者の結果を反映するデータ

に立脚したものであることが望ましい。客観的方法,例えば,出来高,作業の速さ,ある事態の発生の測

定などでデータを収集することが可能な場合もある。その反対に,利用者による感じ,信念,態度及び好

みの表明などの主観的応答からデータを集める場合もある。主観的尺度は,直接的に満足度と連係させる

ことができる一方,客観的尺度は,有効さ,効率の直接的な指摘を与える。

使用性の各要素に関連するデータは,客観的な測定値又は主観的な測定値から得られることに留意する

のが望ましい。例えば,満足度は,利用者行動の客観的な尺度から推測もできるし,有効さ及び効率の見

積もりは,利用者が作業及び結果について表明した主観的意見から導出することもできる。

ある製品が実際に用いられている場合には,達成される使用性の度合いを予測する上で収集されたデー

タが妥当かどうかは,利用者,仕事,利用の状況がどの程度実際の状況をよく反映するかということ,及

び選んだ尺度の性質とに依存する。一方の極では,製品の使用性評価の基盤として,実際の作業状況を用

いる現場での測定を行う場合もあるし,それとは対極的に,関連する使用の状況の側面を典型的で,かつ,

統制したやり方で実験室的に再現しながら製品のある側面を評価する場合もある。

実験室的アプローチの利点は,使用性の到達水準に決定的な影響をもたらすと期待される要因をより統

制しやすく,より精度の高い測定が行えることである。短所は,人為的な実験室的状況が非現実的な結果

を生み出す場合がある点である。

実使用現場と実験室との両極端間の種々の段階で,調査すべき問題及び試験に利用できる製品の完成度

に応じて,評価は行うことができる。試験環境及び尺度をどう選ぶかは,測定活動の目的及び活動と設計

サイクルとの関係に依存する。

B.5

有効さと効率の尺度

B.5.1

有効さの測定  有効さとは,利用者が指定された目標を達成する上での正確さと完成度として定義

される。

正確さと完成度を測るには,目標がうまく達成されたかを判定する操作的な仕様を作り上げる必要があ

る。これは得られる結果の質と量,例えば,文書の要求された形式,及び処理した文書の数と長さを用い

て表現することもある。

正確さは,指定された基準にどこまで結果の質が対応しているかをもって測り,そして完成度は,目標

とした質に対しての達成された質の割合で測ることができる。

単一の有効さの尺度が必要な場合,正確さと完成度の尺度を組み合わせることもできる。例えば,完成


13

Z 8521 : 1999 (ISO 9241-11 : 1998)

度と正確さを百分率として算出し,両者を乗じた値を有効さの百分比値とすることも考えられる  [E.2.2

E.2.19]

。正確さと完成度との兼ね合いをとることが適切でない場合には,二つの尺度を独立に考慮するこ

とが望ましい。

B.5.2

効率の測定  効率は,達成された有効さの尺度と,費やされた資源とを関連づけることで測定され

る。例えば,時間的な効率は,指定目標を達成する際の有効さの尺度と,その目標達成に要した時間との

比として定義される。これによって,ある特定の状況における時間的効率の絶対尺度が得られる。同様な

計算を,精神的,肉体的エネルギー,資材,金銭的費用の使用面での効率に関して行うこともできる。

B.5.2.1

作業負担  作業負担は,仕事の生理的及び精神的側面の両方を含む。効率の尺度に,速い入力及び

活動の時間の長さによって生じる生理的な負担を考慮に入れることが望ましい。

仕事の遂行で費やされる認知的資源も,また,測定可能な場合がある。認知的な作業負担の影響は,過

大及び過小な負担の両方が効率の低下及び安全衛生の問題を引き起こす場合があるという点で,特殊な性

質をもっている。過小な精神的労力を必要とする仕事は,けん(倦)怠及び覚せい(醒)水準の低下につ

ながるために効率の低下を生じる可能性がある。特に後者は,直接有効さを低下させる。そのような場合

には,有効さも効率も負担を増やすことによって高められる。過大な認知的負担もまた,それが情報の見

落としを生じさせ,結果として誤りを生じさせる場合には有効さを低下させる結果となる。このことは,

安全が不可欠である(例えば,航空管制やプロセス制御)場合には特に重大な問題である。認知段階負担

の尺度は,この種の問題を予測するのに用いられる場合がある。

認知的作業負担を測り,効率への影響を査定できるような質問紙調査の例については,E.2.7E.2.14

E.2.21

を参照。

B.6

満足度の尺度  満足度(不快さのなさ,及びその製品の利用に対する肯定的な態度として定義される。)

は,製品とのやりとりに対しての利用者の反応である。満足度は,主観的尺度又は客観的尺度で評定され

る。客観的尺度は,利用者行動(例えば,姿勢,身体の動き,欠勤の度数)の観察に基づく場合もあれば,

利用者の生理学的応答の監視に基づく場合もある。

満足度の主観的尺度は,利用者の反応,態度又は意見の主観的表明の強さを定量化したものによって生

成される。この定量化の手法は,例えば,利用者にある時点での感じの強さに対する数値を示してもらう,

利用者に製品を好みの順序で順位づけてもらう,

質問紙調査に基づいた態度尺度を用いるなど多様である。

態度尺度は,適切に開発されたものの場合には,手早く利用でき,信頼度が分かり,適用に特殊な技能

を必要としないなどの利点をもつ。計量心理学手法を用いて開発された態度質問紙調査は,信頼性と妥当

性について既知の定量的推測が可能であり,虚応答,正負の回答偏向,社会的要望のような要因に耐える。

それらはまた,得られた結果を確立した規範に照らして過去に得た応答と比較することも可能にする。コ

ンピュータ利用システムに関する満足度を測定する質問紙調査の例としては,E.2.9E.2.10 及び E.2.12 

参照。


14

Z 8521 : 1999 (ISO 9241-11 : 1998)

附属書 C(参考)  使用性要求仕様の例

この例は,開発チームが開発過程において使用性を系統立てて考えていく助けとするためには,どのよ

うに使用性要求仕様を書けばよいかを示す。使用性の要求仕様は,想定する目標と利用の状況を指定し,

そして開発している製品に対しての有効さ,効率及び満足度の尺度と判定基準を指定する。

仕様決定は,どんな要因が関連するかを考慮する上でこの規格によって与えられる枠組みに基づいてい

る。仕様は,利用の状況と使用性の尺度に関して必要な最小限の情報を与える二つの部分をもつ(5.1.3 

照)

。仕様書の様式は,この規格の 5.25.35.4 の構成に近い形とする。書式は決定的なものではなく,

関連情報が十分正確な形で与えられていさえすれば,適当に適応させてよい。

使用性の要求仕様を作成するのにかかわるチームは,使用性工学に経験をもつ人間工学の専門家の外に,

マーケティング,製品管理,ソフトウエア開発などの他の関連分野の専門家が通常含まれる。代表的最終

利用者の参加も望ましい。

[仕様書内容についての備考は斜字体で与える。

製品名称と用途 

[この節では,製品を指定し,その全体的な用途を述べる。製品とその名称はこの例用に考案したもの

である。

この仕様書は,Video phone professional viewing terminal (VidiPro) についての使用性要件を指定する。

VidiPro

の用途は,音声と映像情報を組み合わせて,遠隔通信の有効さを向上させることである。

利用の状況 

この節では,この規格の

5.3

の手引に従った情報を与える。製品の使用性にとって重要な利用の状況の

側面を記述する。例えば,

利用者の指定

 

利用者は,事務用電話のほとんどに共通した機能になじんでいると仮定する。利用者のある者は,した

がって,

VidiPro

をうまく利用できるようになる前に,この知識を身に付ける必要がある。しかし,テレビ

電話についての技能又は知識システム知識,仕事の経験は仮定しない。そしてこのことを明確に述べる。

環境の仕様

 

ISDN

の接続口と電源について言及する。これがないと

VidiPro

は全く利用できない。

装置の仕様

 

VidiPro

の重要部分を列挙する。装置が多数のハードウェア及び/又はソフトウェア構成要素から成り,

どれもが必要な場合には,これは重要である。

仕事の仕様

 

VidiPro

のような製品は,多くの用途に用いられる。しかし,その製品は,利用者がある特定の目標を達

成するのを助けることを意図しており,この点について述べる。

VidiPro

の使用性が問題となる具体的仕事,設置,画像取り込み設定,プログラミング,長時間利用につ

いて述べる。表示の視認性については,使用牲の条件なので詳細に述べる。

利用者の仕様  VidiPro は,附属書表 C.1 で与えられる特徴をもつ人によって利用されることを意図してい


15

Z 8521 : 1999 (ISO 9241-11 : 1998)

る。

附属書表 C.1

属性

要件

技能と知識

製品の経験

保留,転送,一斉呼び出し機能をもつ事務用電話の利用

システムの知識

要求されない

仕事の経験

要求されない

組織の経験

要求されない

訓練

要求されない

キーボード及び入力技能 電話のキーパッドの使用

資格

要求されない

言語能力 11 歳程度の読解力

生理的属性

視覚

標準視力検査による(矯正)通常視力

1

)

聴覚

標準の集団検診による正常聴力

2

)

手先の器用さ

片手の通常の器用さ(VidiPro は,片手で扱える)

1

)

表示上で,ヘルプ,そのほかの情報を読むため。

2

)

映像機能の操作には聴力は必要としない。

環境の仕様  次の接続が必要である。

・ ISDN の接続口

・ 230V±10%の電源

使用性の目標を満たすためには,VidiPro は,関連する人間工学規格,特に

・  ISO 9241-5,作業場所及び姿勢の要求事項

・  ISO 9241-6,環境の要求事項

に準拠した環境で利用されることが望ましい。

設備の仕様  VidiPro の主要ハードウエア要素は,ISDN 端末,マルチプレキサ,ビデオ codec,CCD カメ

ラ,20cm カラーCRT である。

仕事の仕様  VidiPro の想定主要目標は,オフィス環境にある対象(スケッチ,印刷物,地図,写真,模型)

を共に見せながら,二人の利用者に音声で会話させることである。

二次的目標としては,オフィス環境における一般的な音声及び映像通信が含まれる。VidiPro は,ほかの

環境(例えば,住宅内)で,個人間の通信を補強するのにもまた,利用される。

使用性の要求仕様は,次の具体的仕事に対して適用される。

・  設置:VidiPro を作動可能とする,すなわち,発信,受信,プログラム可能とする。

・  映像取込み準備:映像情報を共有できるように映像を取り込む。

・  プログラミング:VidiPro の標準設定又は格納情報を変える。

例としては一斉呼び出しの設定,及び番号簿への名前と番号の入力。

・  長時間利用:オフィス環境で長時間にわたって対象の映像を共有しながら会話。

製品の望ましい性質に対しての使用性要求事項には更に,

・  視認性:画面に表示されるシステムのメッセージや指示を読む。


16

Z 8521 : 1999 (ISO 9241-11 : 1998)

特定の状況での使用性の測り方の指定 

[この節では,上に挙げた重要な仕事のそれぞれに対して,尺度とその尺度の判定基準の両方を定義す

ることでその製品の便用性の目標,ねらい,目的を指定する。想定に利用の状況記述が全般的であるのを

補うために,各仕事に対する具体的な利用の状況に関しての付加的情報を与える。この規格の

5.4

の手引

に従って,有効さ,効率,満足度のそれぞれに対して少なくとも一つの尺度とその判定値を与える。

選んだ尺度及び指定した判定値は,開発チームが利用者の必要と要求を考慮しながら設定した優先順位

に依存する。この例では,設置の効率についての判定基準は,

10

分以内に設置作業が終了することとして

指定した(この規格は,特定の判定値に関しての手引は与えない。)

この規格の手引に従った仕様を作成することで関係者たちに製品がどんなときに使い物になるか,及び

製品の評価時にこの使用性の水準が達成されたかを検討する方法が明らかになる。

設置

仕事: VidiPro を作動可能とする,すなわち発信,受信,プログラムができるようにする。

具体的状況: VidiPro の開こん(梱)から始める。ほかに支援やツールは与えない。利用者は,

一回で手順を完了するものとする。

有効さ:正確さ:全部品は,正しく接続される。

完全さ:VidiPro は,電源と ISDN 線に接続される。

効率:  設置は,10 分以内に完了する。

満足度: 設置手法に関し不満を漏らす利用者は,10%以内。

映像取込み(最初の利用)

仕事:映像を双方で見られるように準備する。

具体的状況: 標準のオンライン及びオフラインの利用者の手引が利用できる。

利用者は手順を一回で完了する。

有効さ:正確さと完全さ: 呼び出した相手がカメラ視野内で対象(例えば,A4 文書)を見ること

ができる。

効率:映像取込みは,2 分で完了する。

満足度:取込み手順についての利用者の不満の報告は,10%以内。

プログラミング(最初の利用)

仕事:

VidiPro

の標準設定又は格納情報を変更する。

1)

一斉呼び出しを設定する。

2)

番号簿に名前と番号を入れる。

具体的状況: 標準のオンライン及びオフラインの利用者の手引が利用できる。

利用者は,手順を一回で完了する。

有効さ:正確さ:入力した情報に誤りがない。

完全さ:入力又は削除した情報に漏れがない。

効率: 同報設定は,2 分以内にプログラムできる。

番号簿への新たな名前と番号の入力は,3 分以内。

満足度: プログラミング手順に関して,利用者の不満の報告は,10%以内。

頻繁な利用

仕事:  オフィス環境で頻繁に対象映像を見ながら音声で通話。


17

Z 8521 : 1999 (ISO 9241-11 : 1998)

具体的状況: 利用者は,月に少なくとも 60 回映像を共有するのに VidiPro を利用。

有効さ:正確さ:間違った相手先への接続は,2%以内。

完全さ:意図した呼び出しの少なくとも 95%が成功。

効率:  平均映像取込み時間は,30 秒を超えない。

満足度: 少なくとも 90%の利用者が,代替手段(例えば,電話と FAX)より VidiPro を好む。

視認性

仕事:画面に表示されるシステムのメッセージや指示を読む。

具体的状況:照度は,50 から 5 000lux。

有効さ:正確さ:システムのメッセージや指示中の語の少なくとも 98%が,通常の視距離で正しく

読める。


18

Z 8521 : 1999 (ISO 9241-11 : 1998)

附属書 D(参考)  他の規格との関連

D.1  ISO/IEC 9126

での使用性の定義  使用性という用語は,ある製品が容易に利用できる度合いを表すの

にしばしば使われる。これは ISO/IEC 9126 の中でのソフトウエア品質としての次の使用性の定義と対応

する。

“ソフトウエアの一群の属性で,利用に必要な労力,及び利用者達による利用の明示された又は暗黙の

評定に関係するもの。

しかしながら,ある製品で使用性のために必要とされる属性は,利用者,仕事,環境の特質に依存する。

製品には固有の使用性はない。あるのは,ある特定の状況で使いこなせるかだけである。使用性は,ある

製品それだけを切り離して調べたのでは評定できない。

したがって,製品の使用性を測定するのに考えられる方法は,次の三つである。

1)

特定の利用の状況で必要となる製品の特徴を分析する。

使用性は,ある特定の状況で使用性のために要求される製品特性を査定することで測ることができ

る。適切な特徴は,ISO 9241 の他の部に指定されている。しかし,ISO 9241 は,部分的な手引だけを

与える。ISO 9241 に沿った多くの設計案の中でも,使用性の差異は生じる。

2)

やりとりの過程を分析する。

使用性は,ある利用者がある製品を用いてある仕事を行っている間のやりとりをモデル化すること

で測ることができる。しかし,現在の解析的アプローチでは,あまり精度の高い使用性の推定はでき

ない。やりとりは,人間の脳内の動的な過程だから直接的には研究できない。

3)

製品を特定の状況で利用した結果の有効さと効率を分析し,その製品の満足度を測ることによる。

これらは,使用性の構成部分の直接的な尺度である。製品がある特定の状況で使いやすければ,使

用性の尺度はより高いものとなる。

この規格で定義されている使用性は,ISO/IEC 9126 で定義されている使用性とは別のソフトウエア品質,

例えば,機能性,信頼性,コンピュータの効率にも依存することを心にとどめることが望ましい。これら

のソフトウエア品質は,すべて作業システムの質に貢献する。

作業システムの質という観点から定義された使用性は,現実の製品の利用に影響を及ぼすすべての要因

に依存する。それらの要因には,作業慣行のような組織上の要因,製品の場所又は外観,文化的要素や好

みを含む利用者間の個人差などがある。この幅広い取組み方は,製品設計の真の目標に集中させ,現実の

技術的,物理的,組織的環境下で,現実の仕事を行う現実の利用者の要求にかなうという利点をもつ。こ

れは,ISO 9241-1 で述べられている ISO 9241 の目的に沿っている。

D.2  ISO 9241

の他の部との併用

D.2.1

利用の状況と使用性との関連  利用の状況のどの構成要素(利用者,設備,仕事,環境)を,製品

の使用性を変化させるために操作してもよい。ユーザインタフェースは,良い対話設計の実施  (ISO 

9241-10

-12-17)  に従うことで改善される。さらに,利用者と利用の状況の他の要素との適合は,選抜・

訓練のような手段を通じて改善される場合もある。仕事を適切に設計してもよい  (ISO 9241-2JIS Z 8512)。

照明,騒音,作業場所設計のような作業環境の側面を改善してもよい  (ISO 9241-3-9)。しかし,ある

製品の使用性を評価する場合の焦点は,ある状況に向けての製品の最適化である。

ソフトウエア設計者は,ISO 9241-10-12-17 の指針や要求事項に従って,適切な使用性上の属性を設


19

Z 8521 : 1999 (ISO 9241-11 : 1998)

計案へと組み込む前に,想定する利用者,仕事,環境をこの規格を用いて明確にする必要がある。しかし,

ISO 9241

は,製品を使いやすくする一般原則の適用の仕方を余さずに与えているわけではないので,これ

だけで製品が要求された使用性の水準に達する保証はない。

D.2.2  ISO 9241-10

との併用  ある製品の設計又は評価に,ISO 9241-10 中の各設計原則を適用する仕方は,

利用の状況に依存する。設計又は評価に対して対話の原則を適用する前に,想定する利用者,仕事,環境

の関連特性を明確にすることが必要である。利用の状況のすべての局面を各対話原則に対して考慮するこ

とが望ましいのではあるが,

“仕事への適合性”は,仕事の特性と密接に関連した設計課題を扱っている。

この原則の適用には,ある種の利用者がその利用者組織の目標を果たすために行う仕事に対しての格別な

配慮が望ましい。

“学習への適合”

“個人化への適合”

“利用者の期待との一致”は,利用者特性と密接に

関連する設計課題を扱っている。これらの原則の適用時には,想定した仕事をある特定の状況下で行う場

合の種々の想定利用者の必要性に対して格段の配慮が望ましい。

対話の原則“学習への適合”は,製品の学習を促進する属性に触れている。具体的状況での実際の学習

可能性は,一人の利用者の使用性の時間変化を比較することで,又は製品の使用性を経験者と未経験者で

比較することで測定できる。

対話の原則“個人化への適合”は,ある仕事についての利用者の必要性への適応を促進する製品の属性

に触れている。種々の利用者による種々の仕事に対しての使用の柔軟さは,多数の状況下で使用性を測る

ことで査定できる。

対話の原則は,ソフトウエアの特性という見方で述べられている。原則のあるものは,製品の望ましい

性質である目標の達成,誤りの許容度,学習性といった使用性目標に関連している(

附属書 参照)。


20

Z 8521 : 1999 (ISO 9241-11 : 1998)

附属書 E(参考)  参考文献

E1 ISO

規格

E.1.1  ISO 9000-3, Quality management and quality assurerance standards

−Part 3 : Guidelines for the application

of ISO 9001 : 1994 to the development, supply, installation and maintenance of software

E.1.2  ISO/IEC 9126 Information technology

−Software product evaluation−Quality characteristics and guidelines

for their use

備考  JIS X 0129  ソフトウェア製品の評価−品質特性及びその利用要領がこの規格に一致する。

E.1.3  ISO 13407, Human-centred design process for interactive systems

E.1.4  ISO/IEC 14598-1, Information technology

−Software product evaluation−Part 1 : General overview

E.2

関連刊行物

E.2.1  Bevan N (1995) Measuring usability as quality of use. Journal of Software Quality, 4, 115-130.

E.2.2  Bevan N and Macleod M (1994) Usability measurement in context. Behaviour and Information Technology,

13, 132-145.  

E.2.3  Bevan N. and Azuma M (1997) Quality in use : incorporating human factors into the software engineering

lifecycle. In : proceedings ISESS ’97, Third International Software Engineering Standards Symposium, June 1-6,

1997, Walnut Creek, California, USA. IEEE Computer Society.  

E.2.4  Chin, J. P., Diehl, V. A., and Norman, K. L. (1988). Development of an instrument measuring user satisfaction

of the human-computer interface. Proc. ACM CHI’ 88 Conf. (Washington, DC 15-19 May), 213-218.  

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University Press.

日本人間工学会 JIS Z 8521  原案作成委員会  構成表

氏名

所属

(委員長)

矢  頭  攸  介

青山学院大学

浅  輪  武  生

富士通株式会社

岩  崎  あゆ子

株式会社日本総合技術研究所

大  山      裕

日本電気株式会社

岡  本  郁  子

日本アイ・ビー・エム株式会社

楠  井  洋  一

株式会社東芝

小松原      仁

日本色彩研究所

中  込  常  雄

中込技術士事務所

西  出  徹  雄

工業技術院標準部

中  野  義  彦

沖電気工業株式会社

浜  田      洋

日本電信電話株式会社

林      喜  男

武蔵工業大学

堀  野  定  雄

神奈川大学

三  樹  弘  之

沖電気工業株式会社

森  川      治

生命工学工業技術研究所

山  村  修  蔵

日本規格協会

山  本  敏  男

エイジッド

(事務局)

森  み  ど  り

神奈川大学

備考  ○印は,分科会委員を兼ねる。