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日本工業規格

JIS

 Z

8502

-1994

(ISO 10075 :

 1991

)

人間工学−精神的作業負荷に

関する原則−用語及び定義

Ergonomic principles related to mental work-load

−General terms and definitions

日本工業規格としてのまえがき 

この規格は,1991 年第 1 版として発行された ISO 10075 (Ergonomic principles related to mental work-load−

General terms and definiitions)

を翻訳し,技術的内容を変更することなく作成した日本工業規格であるが,

規格票の様式を一般の用語規格にあわせて変更している。

序文 

この規格は,ISO 6385 : 1981 (Ergonomic principles in the design of work systems)  の 3.73.9 に,精神的作業

負荷に関する特別な面について追加するものであり,この領域で特に考えなければならない重要な用語及

びその概念について規定する。

1.

適用範囲

この規格は,精神的負荷及び精神的負担を含む精神的作業負荷の分野における用語を定義し,これらに

含まれる概念の間の関係について規定する。

この規格は,精神的作業負荷に関する作業条件の設計に適用して,人間工学の分野のほか,一般の鉱工

業分野において,専門家と実務家との間の専門用語の相互理解を促進することを目的としている。

他の規格で規定している,又は規定することになる,測定方法及び課業設計 (task design) の原則につい

ては規定しない。

2.

一般的な概念

身体的活動が主となる活動であっても,活動は,すべて精神的負荷

1)

を負わせるものである。この場合

の“精神的負荷”は,人間に作用を及ぼし,かつ,精神的に効果を与えるすべての外部の影響をも指すた

めに用いる用語である。精神的負荷は,人間の精神的負担を増減させる作用がある。精神的負担によって

直接的に生じる影響としては,一方には促進的効果があり,他方には精神疲労及び/又は疲労様状態があ

る。精神的負担の間接的な影響として,練習及び訓練効果もあるであろう。ここで述べる精神的負担の影

響は,個人的及び状況的な事前条件によって形態及び強さが異なるかもしれない。

この規格では,

“精神的”という表現を,人間の体験及び行動の過程についていう場合に用いる。この意

                                                        

1

)

附属書 の A.4 参照。


2

Z 8502-1994 (ISO 10075 : 1991)

味での“精神的”は,人間の認知,情報,情動的な過程を表す。このような各側面は,相互に関係があり,

現実には分離して取り扱うことはできず,また,そうすべきでもないので,精神的という言葉を用いる。

3.

定義

3.1

精神的負荷

番号

用語

定義

対応英語

3.1

精神的負荷

外部から人間に対して作用を及ぼし,かつ,精神的
に効果を与える

2)

評価可能な影響の全体。

mental stress

3.2

精神的負担

番号

用語

定義

対応英語

3.2

精神的負担

精神的負荷によって個々の人の内部に直ちに起こる
効果(長期にわたる影響ではない。

)であって,各人

の対処様式を含み,個人の習慣及びそのときの事前

条件 (precondition)

2

に依存するもの。

mental strain

3.3

精神的負担の影響

3)

3.3.1

促進的効果

番号

用語

定義

対応英語

3.3.1.1

ウォーミングアップ効

ある活動を始めたすぐ後に,当初に要した努力に比
べて,その活動を行うために必要な努力が少なくて
すむようになるような,精神的負担によって普通に

起こる影響。

warming-up effect

3.3.1.2

活性化

精神的及び身体的機能の効率に差がある内部状態。

備考  精神的負担は,その持続期間と強さとによ

って,活性化の程度に違いを起こす。活性
化が最適であるような領域が存在する。す

なわち,低くも高くもなく,機能の最高の
効率が保証される領域がある。あまり急激
な負担の増大は,好ましくない過剰な活性

化をもたらすことを留意することが望ま
しい。

activation

3.3.2

減退的効果  減退的効果は,回復の時間的パタン及び回復の方法によって区別するとよい。

また,症状によっても区別される。回復にかかる時間,又は回復のための活動の多様性の点で,効果の

減退は,より普通であることもあり,より特殊であることもある。

番号

用語

定義

対応英語

3.3.2.1

精神疲労

先行する精神的負担の強さ,持続期間及び時間的パ
タンに依存する,精神的及び身体的機能の効率の一
時的な減退。精神疲労の回復は,活動の変化よりも

むしろ回復作用によって達成される。

備考  この機能の効率の低下は,例えば,疲労感,

努力の割に成果が上がらない,過誤の種

類・発生頻度などによって明らかになる。
この減退の程度は,個人の事前の状態によ
っても決まる。

mental fatigue

                                                        

2)

附属書 参照。

3)

次に示す用語の配列順序は,機能上の関係付けを少しも意味しない。


3

Z 8502-1994 (ISO 10075 : 1991)

番号

用語

定義

対応英語

3.3.2.2

疲労様状態

状況がほとんど変化しないために生じる精神的負担

の影響を受けている個人の状態。この状態は,課業
及び/又は環境・状況が変わればすぐに消失する。
この状態には,単調感,注意力の低下及び心的飽和

がある。

備考  精神疲労と同様に疲労感は,通常,疲労様

状態でも生じる。しかし,疲労様状態は,

一時的であるという点で,精神疲労とは異
なる。このような疲労様状態には,特に著
しい個人差がみられる。

fatigue-like status

3.3.2.2.1

単調感

長時間の,単一の,繰り返しの課業又は活動の間に
起こりやすい,活性化の減退がゆっくり進行する状

態であり,主として,眠気,疲労感,遂行能力の低
下及び変動,適応能力及び責任感の低下,並びに心
拍変動の増加を伴うもの。

monotony

3.3.2.2.2

注意力の低下

ほとんど変化がない監視業務で,

(例えば,レーダス

クリーン又は計器盤の監視中に)発見の能力がゆっ

くり低下していく状態。

備考  単調感と注意力の低下との違いは,原因と

なる環境による違いであり,影響の違いで

はない。

reduced vigilance

3.3.2.2.3

心的飽和

反復的な課業又は状況に対し神経的に不安定になっ

て,強い感情的な拒否を示す状態であり,経験的に
は,

“はかどらない”又は“うまくいかない”という

ような状態。

備考  心的飽和のこのほかの症状として,怒り,

遂行能力の低下,及び/又は疲労感,並び
に逃避傾向がある。単調感及び注意力の低

下とは対照的に,心的飽和の場合には,活
性化の水準は変化しないか,又はかえって
上昇し,否定的な感情が伴う。

mental satiation

3.3.3

その他の効果

番号

用語

定義

対応英語

3.3.3.1

練習効果

精神的負担に繰り返し対処した後,学習の過程に伴

って生じた,個人の遂行能力の持続的な変化。

practice effect


4

Z 8502-1994 (ISO 10075 : 1991)

附属書 A(規定) 

用語及び概念の追加説明 

A.1

図 A.1 は,精神的負荷及び個別の要因と,実際の精神的負担及び直接の効果との関係を説明したもの

である。ここに示したものは,単純化してあり,可能性がある繰り返しの効果は無視してある。また,個

別の要因の違いとともに,精神的負荷を生じる条件の違いによってグループ分けした。各グループに対し

て単なる例を掲げたが,すべてを網羅したものではない。掲げた例の順序には何の序列もない。

A.2

この規格に挙げた負担の影響のほかにも,精神的負担の影響は存在する。例えば,けん(倦)怠感,

負荷が大きすぎるという感覚があるが,これらは個人差が大きく,また,研究の結論がまだ得られていな

いため,この規格では取り扱わない。過度に高い,又は低い精神的負担に繰り返しさらされたときの好ま

しくない長期的な影響についても同様である。

A.3

個人の事前の活動又は初期状態によって,同じ状況下でも,精神的負荷が精神的負担を増加させるこ

ともあれば減少させることもある。例えば,本を読むことは,精神的負荷を与えて,精神的負担の増加を

引き起こすが,長時間の白熱した討論の後に気分転換として同じ情報を読めば,精神的負荷は,精神的負

担を減少させるかも知れない。

A.4

専門家が用いる専門語と日常生活で用いる語には意味の違いがあるため,言語上の困難が生じるかも

しれない。一般用語の負荷にはやや否定的な意味合いがあるが,この規格では,負荷は,全く中立的な意

味で用いており,個人が外部から受けて,精神的な影響を被る,評価可能なすべての要因を含むものとし

ている。したがって,専門用語としての“精神的負荷”の中には,日常会話の用法で“負担からの解放”

と表現されるような外部影響も含まれている。


5

Z 8502-1994 (ISO 10075 : 1991)

図 A.1  精神的な作業負荷における負荷−負担の関係


6

Z 8502-1994 (ISO 10075 : 1991)

JIS Z 8502

  原案作成委員会  構成表

氏名

所属

(委員長)

林      喜  男

武蔵工業大学工学部

堀  野  定  雄

神奈川大学工学部

内  村  喜  之

近畿大学九州工学部

○  長  澤  有  恒

日本大学生産工学部

○  肝  付  邦  憲

千葉工業大学

○  青  木  和  夫

日本大学理工学部

○  高  木  譲  一

工業技術院標準部

江  川  義  之

産業安全研究所

○  中  込  常  雄

中込技術士事務所

池  田      博

日本光電工業株式会社

富  沢  方  成

株式会社アイメック

中  野  義  彦

沖電気工業株式会社情報通信システム事業本部

○  森  川      治

生命工学工業技術研究所人間情報部

○  谷  井  克  則

生命工学工業技術研究所人間環境システム部

重  松  正  矩

東京農工大学工学部

○  矢  頭  攸  介

青山学院大学理工学部

吉  田      燦

日本大学理工学部

小  林  康  人

富士通株式会社総合デザイン研究所

小  川  克  彦

日本電信電話株式会社ヒューマンインターフェイス研究所

石  川  文  武

蚕糸・昆虫農業技術研究所

松  井      勇

日本大学生産工学部

田  辺  新  一

お茶の水女子大学

○  斉  藤      進

産業医学総合研究所

(事務局)

○  梶  山  麻  美

日本人間工学会(日本総合技術研究所)

備考  ○印は分科会委員を兼ねる。

文責  青木  和夫  日本大学理工学部