Z 8202-2 : 2000 (ISO 31-2 : 1992)
(1)
まえがき
この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,通商産業大臣が制定した日
本工業規格である。これによって JIS Z 8202-1985 は廃止され,JIS Z 8202-0∼JIS Z 8202-10,JIS Z 8202-12
及び JIS Z 8202-13 に置き換えられる。
今回の改正では,日本工業規格と国際規格との対比,国際規格に一致した日本工業規格を作成するため
に,ISO 31-2 : 1993, Quantities and units−Part 2 : Periodic and related phenomena を基礎として用いた。
なお,ISO 31-11 : 1992, Quantities and units−Part 11 : Mathematical signs and symbols for use in the physical
sciences and technology
は,JIS Z 8201(数学記号)として制定されている。
JIS Z 8202
の規格群には,次に示す部編成がある。
第 0 部:一般原則
第 1 部:空間及び時間
第 2 部:周期現象及び関連現象
第 3 部:力学
第 4 部:熱
第 5 部:電気及び磁気
第 6 部:光及び関連する電磁放射
第 7 部:音
第 8 部:物理化学及び分子物理学
第 9 部:原子物理学及び核物理学
第 10 部:核反応及び電離性放射線
第 12 部:特性数
第 13 部:固体物理学
日本工業規格
JIS
Z
8202-2
: 2000
(ISO 31-2
: 1992
)
量及び単位−
第 2 部:周期現象及び関連現象
Quantities and units
−
Part 2 : Periodic and related phenomena
序文 この規格は,1992 年に第 2 版として発行された ISO 31-2, Quantities and units−Part 2 : Periodic and
related phenomena
及び Amendment 1 (1998) を翻訳し,技術的内容を変更することなく作成した日本工業規
格である。ただし,追補 (Amendment) については,編集し,一体とした。
なお,この規格で点線の下線を施してある箇所は,原国際規格にはない事項である。
0.1
表の配列 この規格の量及び単位の表は,量を左のページに,また,単位を対応する右のページに
配列する。
2
本の実線の間にあるすべての単位は,左のページの対応する実線の間の量に属する。
ISO 31
のいずれかの部の改正(1992 年版)で番号が変更になった場合には,左のページの量を表す新し
い番号の下に括弧を付けて ISO 31 の旧規格の番号を示す。
なお,ISO 31 の旧規格にその項目がない場合には,ダッシュ (−) でそのことを示す。
0.2
量の表 この規格で扱う分野において最も重要な量は,それらの記号とともに多くの場合,定義も
示す。ただし,これらの定義は,単にその量を特定するためであり,完全なものではない。
特に,定義上ベクトル表示式が必要な場合,幾つかの量については,そのベクトル的特性にもふれてい
るが,完全性又は一貫性を意図するものではない。
多くの場合,ある量に対しては一つの名称と一つの記号とを示す。一つの量に対して,二つ以上の名称
又は二つ以上の記号を併記し,特別な区別を付けていない場合には,互いに対等な関係にある。2 種類の
斜体文字がある場合(例えば,
ϑ
,
θ
;
ϕ
,
φ
;g,g)には,いずれか一方だけを示してあるが,他方は対
等に使用できないという意味ではない。一般に,このような別の字体に異なる意味をもたせることは推奨
できない。括弧内の記号は,
“予備の記号”である。したがって,特別の関係のもとで主要記号が別の意味
合いで用いられている場合には,これら予備の記号が用いられる。
0.3
単位の表
0.3.1
一般 量に対する単位には,その記号及び定義を示す。詳細については,JIS Z 8202-0 を参照。
備考 ISO 31-0, Quantities and units−Part 0 : General principles からの引用事項は,この規格の規定事項
と同等である。
単位は,次のように配列してある。
a) SI
単位の名称は,大きい文字(本体通常の文字よりも大きい)で示す。また,SI 単位は,国際度量衡
総会 (CGPM) で採択されたものである。SI 単位の 10 の整数乗倍そのものは明示していないが,SI 単
2
Z 8202-2 : 2000 (ISO 31-2 : 1992)
位とその 10 の整数乗倍を用いることを推奨する。
b)
実用上の重要さ又は特殊な分野での有用さから,SI 単位と併用してよい SI 以外の単位の名称は通常
の大きさの文字(本体通常の文字の大きさ)で示す。
これらの単位は,SI 単位と点線で区別してある。
c)
当分の間 SI 単位と併用してよい SI 以外の単位の名称は,
“換算率及び備考”欄に,小さい文字(本体
通常の文字よりも小さい)を用いて示す。
d) SI
単位と併用してはならない SI 以外の単位の名称は,JIS Z 8202 の幾つかの部の
附属書だけに示す。
これらの
附属書は参考であり,規定の一部ではない。
なお,これらの単位は,次の三つのグループに分けて配列してある。
1) CGS
単位系の特殊な名称
2)
フート,ポンド及び秒に基づく単位並びにそれに関連する幾つかの単位の名称
3)
その他の単位の名称
0.3.2
次元 1 の量の単位に関する注意事項 次元 1 のいかなる量に対しても一貫性のある単位は,数 1,
記号 1 である。そのような量の値を表すときには,一般に単位記号 1 は明示しない。
例 屈折率 n=1.53×1=1.53
この単位の 10 の整数乗倍を示すときには,接頭語を用いてはならない。接頭語の代わりに 10 の累乗を
用いる。
例 レイノルズ数 Re=1.32×10
3
平面角は,通常,二つの長さの比で,また,立体角は二つの面積の比で表されることを考慮して,国際
度量衡総会 (CGPM) は 1995 年に,国際単位系におけるラジアン rad 及びステラジアン sr を“無次元”の
組立単位に属することとした。これは,平面角及び立体角という量が次元 1 の組立量となることを意味す
る。単位,ラジアン及びステラジアンは省略してもよく,また,異なった性質であるが,同じ次元をもつ
量の間を容易に区別するための組立単位として,使用することができる。
0.4
数値に関する表現 “定義”欄の数値は,すべて正確である。
“換算率及び備考”欄の数値が正確である場合には,数値の後に“正確に”と括弧付きで付記してある。
0.5
対数関数的量及び単位に関する特記事項 時間の関数としての高調波減衰振動は,実数表示か又は
複素数表示の実数部のいずれかで表す。
)
Re(
)
cos(
)
(
)
(
t
j
t
Ae
t
Ae
t
F
ω
δ
δ
ω
+
−
−
=
=
e
(自然対数の底)を指数関数の底として用いる場合にだけ,
δ及びωを含む単純な関係式が得られる。
減衰係数
δ及び角周波数ωに対する一貫性がある SI 単位は,秒のマイナス一乗 1/s である。単位δt 及びωt
を表すのにそれぞれ固有の名称ネーパ Np 及びラジアン rad を採用すると,
δ及びωの単位は,それぞれネ
ーパ毎秒 Np/s 及びラジアン毎秒 rad/s となる。ネーパ及びラジアンは,
“無次元”単位 1 の固有の名称であ
る。ネーパは対数量を表す単位として,また,ラジアンは平面角及び三角関数の位相を表す単位として使
用する。
対応する空間の関数としても,同様に表す。
)
Re(
)
cos(
)
(
x
ax
Ae
x
Ae
x
F
γ
β
−
−
=
=
,
β
α
γ
j
+
=
ここに,
αの単位はネーパ毎メートル Np/m,βの単位はラジアン毎メートル rad/m である。
この規格及び
JIS Z 8202-7
では,場の量のレベルは,二つの振幅の比の自然対数 L
F
=1n (F/F
0
)
で定義さ
れ,表される。したがって,次元 1 の量である。ネーパの単位(数 1)は,F/F
0
=e となる場合の場の量の
レベルである。
3
Z 8202-2 : 2000 (ISO 31-2 : 1992)
工率はしばしば振幅の二乗に比例するので,工率の量のレベルを場の量のレベルと等しい状況を作るた
めに,工率の量のレベルの定義 L
p
= (1/2) ln (P/P
0
)
に係数 1/2 を導入する。
実際には,一貫性のない単位 (non-coherent unit),度…° (1°=
π
/180 rad)
が,しばしば角度に対して用
いられる。同様に,常用対数(底 10)を元にした一貫性のない単位,ベル B [1 B= (1/2) ln 10 Np
≈
1.151 293
Np]
が,対数関数的量を表すのに用いられる。
また,ベルの代わりにその 1/10 の分量であるデシベル dB が通常用いられる。
1.
適用範囲
この規格のこの部は,周期現象及び関連現象に関する量並びにその量に対する単位の名称
及び記号について規定する。
また,必要な場合には,換算率を示す。
2.
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す
る。この引用規格は,その最新版(追補を含む。
)を適用する。
IEC 27-1
, Letter symbols to be used in electrical technology
−Part 1 : General
3.
名称及び記号
周期現象及び関連現象に関する量並びに単位の名称及び記号を,次に示す。
4
Z 8202-2 : 2000 (ISO 31-2 : 1992)
周期現象及び関連現象
量
番号
量
記号
定義
備考
2-1
周期
T
繰返し現象の 1 回に要する時間
2-2
指数関数的に変化す
る量の時定数
τ
初 期 変 化 率を 維 持 する と した場 合
に,量が限界値に達するまでの時間
ある量が次に示す時間の関数で表される
とき,
F (t)
=A+Be
-t/
τ
τ
を時定数という。
2-3.1
周波数
f, v
f
=1/T
2-3.2
振動数,回転速度
n
回転数を時間で除したもの
2-4
角周波数,角振動数,
円振動数
ω
ω
=
2
πσ
2-5
波長
λ
周期的波動の伝ぱ方向における引き
続く同一位相の 2 点間の距離
2-6
波数
σ
σ
=1/
λ
2-7
(2-6.2)
角波数,波長定数,
位相定数
k
k
=2
π
f
波数及び角波数に対応するベクトル量
σ
及
び
k
は,それぞれ波動ベクトル及び伝ぱベ
クトルと呼ばれる。
2-8.1
(
−)
位相速度
c, v
c
φ
, v
φ
f
k
c
λ
ω
=
=
電磁波の速度とその他の速度とを同時に
表す場合には,前者には c を,後者には v
を用いる。
2-8.2
(
−)
群速度
c
g
, v
g
dk
d
c
g
ω
=
2-9
(2-7.1)
場の量のレベル
L
F
L
F
=l
n
(F/F
0
)
=1
ここに,F 及び F
0
は同じ種類の二つ
の振幅であり,F
0
が基準振幅である。
2-10
(2-8.1)
工率の量のレベル
L
P
)
/
ln(
2
1
0
P
P
L
P
=
ここに,P 及び P
0
は同じ種類の二つ
の工率であり,P
0
が基準工率である。
P/P
0
= (F/F
0
)
2
ならば
L
P
=L
F
同様の名称,記号及び定義が,振幅の一次
関数又は二次関数で表される他の量を基
準にしたレベルにも適用される。レベルの
基準となる量は,名称及び記号の添字によ
って,例えば,電場の強さ L
E
のように指定
しなければならない。基準が同一の F
0
であ
る二つの場のレベル間の差を,場のレベル
差;
∆L
F
=ln(F
1
/F
0
)
−ln (F
2
/F
0
)
=ln (F
1
/F
2
)
と
呼ぶ。これは,F
0
に無関係である。工率レ
ベル差に対しても類似の関係が成立する。
5
Z 8202-2 : 2000 (ISO 31-2 : 1992)
単位
周期現象及び関連現象
番号
単位の名称
単位記号
定義
換算率及び備考
2-1.a
秒 s
2-2.a
秒 s
2-3.a
ヘルツ Hz
1
Hz
=1 s
−1
2-3.b
毎秒
s
−1
1 Hz
は,周期が 1 秒の周期現象の周波数。
“回毎分” (r/min) 及び“回毎秒” (r/s) と
いう表現が回転機関の仕様書に回転速度
として広く用いられている。英語の rev/min
及び rpm(回毎分)
,並びに rev/s 及び rps
(回毎秒)
,また,仏語の tr/min(回毎分)
及び tr/S(回毎秒)のような言葉に依存し
た略語は推奨できない。(
1
)
注(
1
)
IEC 27-1
も参照。
2-4.a
ラジアン毎秒 rad/s
2-4.b
毎秒
s
−1
序文
の 0.3.2 を参照。
2-5.a
メートル m
オングストローム (
Å),1 Å=10
−10
m
(正
確に)
2-6.a
毎メートル
m
−1
2-7.a
ラジアン毎メートル
rad/m
2-7.b
毎メートル
m
−1
序文
の 0.3.2 を参照。
2-8.a
メートル毎秒 m/s
2-9.a
ネーパ Np
1
Np
は,ln (F/F
0
)
=1 であるときの,
場の量のレベル。
2-9.b
ベル B
1
B
は,2lg (F/F
0
)
=1 であるときの,
場の量のレベル。
序文
の 0.5 を参照。
デシベル (dB) が広く用いられる。一般に,
L
F
=ln (F/F
0
) Np
=2 lg (F/F
0
) B
=20 1g
(F/F
0
) dB
1 dB
= (ln 10) /20 Np(正確に)=0.115 129
3 Np
2-10.a
ネーパ Np
1
Np
は, (1/2) ln (P/P
0
)
=1 であると
きの,パワーの量のレベル。
2-10.b
ベル B
1
B
は,lg (P/P
0
)
=1 であるときの,
パワーの量のレベル。
序文
の 0.5 を参照。
デシベル (dB) が広く用いられている。一
般に,L
P
= (1/2) ln (P/P
0
) Np
=lg (P/P
0
) B
=
10 lg (P/P
0
) dB
。
1 dB
= (ln 10) /20 Np(正確に)=0.115 129
3 Np
6
Z 8202-2 : 2000 (ISO 31-2 : 1992)
周期現象及び関連現象(続き)
量
番号
量
記号
定義
備考
2-11
(2-9.1)
減衰係数
δ
ある量が時間の関数,F (t) =Ae
−
δt
cos
[
ω
(t
−t
0
)]
で表されるとき,
δ
を減衰
係数という。
τ=1/
δ
を振幅の時定数(緩和時間)といい,
ω
(t
−t
0
)
の量を位相という。
2-12
(2-10.1)
対数減衰率
∧
減衰係数と周期との積
2-13.1
(2-11.1)
減衰定数
α
2-13.2
(2-11.2)
位相定数
β
ある量が距離 x の関数,F (x) =Ae
−
ax
cos [
β
(x
−
x
0
)]
で表されるとき,
αを
減衰定数,
β
を位相定数という。
量 1/
α
を減衰長といい,量
β
(x
−x
0
)
を位相
という。
2-13.3
(2-11.3)
伝ぱ定数(伝搬定数)
γ
γ
=
α
+j
β
k’
=−j
γ
は,複素角波数である。
7
Z 8202-2 : 2000 (ISO 31-2 : 1992)
単位
周期現象及び関連現象(続き)
番号
単位の名称
単位記号
定義
換算率及び備考
2-11.a
毎秒
s
−1
2-11.b
ネーパ毎秒 Np/s
序文
の 0.5 を参照。
2-12.a
ネーパ Np
序文
の 0.5 を参照。
2-13.a
毎メートル
m
−1
序文
の 0.5 を参照。
α
及び
β
は,それぞれ Np/m 及び rad/m で表
されることが多い。
JIS Z 8202
原案作成委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
○
今 井 秀 孝
通商産業省工業技術院計量研究所計測システム部
(委員)
○
今 村 徹
通商産業省工業技術院計量研究所力学部
大 嶋 清 治
通商産業省工業技術院標準部
小 川 実 吉
横河電機株式会社センサー事業部フィールド機器 MK 部
宇賀神 守
日本電信電話株式会社技術部
桑 田 浩 志
トヨタ自動車株式会社設計管理部
○
小 泉 袈裟勝
日本計量機器工業連合会顧問
佐 藤 義 雄
文部省初等中等教育局
畠 山 昭士郎
清水建設株式会社技術研究所建設技術研究部
馬 場 秀 俊
通商産業省機械情報産業局
○
増 井 敏 郎
財団法人日本計量協会参与
村 井 喜 一
株式会社大林組土木技術本部
森 下 昇
日本鋼管株式会杜鉄鋼技術センター鉄鋼技術総括部
○
山 本 弘
愛知時計電機株式会社東京支店
○
渡 辺 英 雄
通商産業省工業技術院計量研究所計測システム部
吉 田 邦 夫
社団法人日本ガス協会技術部
千 坂 文 武
通商産業省工業技術院機械技術研究所
村 田 重 夫
通商産業省工業技術院物質工学工業技術研究所
遠 藤 忠
通商産業省工業技術院電子技術総合研究所基礎計測部
吹 上 浩 朗
電気事業連合会工務部
(事務局)
山 村 修 造
財団法人日本規格協会技術部
木 村 茂
財団法人日本規格協会技術部
備考
○印は,分科会を兼ねる。