Z 8202-10 : 2000 (ISO 31-10 : 1992)
(1)
まえがき
この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,通商産業大臣が制定した日
本工業規格である。これによって JIS Z 8202-1985 は廃止され,JIS Z 8202-0∼JIS Z 8202-10,JIS Z 8202-12
及び JIS Z 8202-13 に置き換えられる。
今回の改正では,日本工業規格と国際規格との対比,国際規格に一致した日本工業規格を作成するため
に,ISO 31-10 : 1992, Quantities and units−Part 10 : Nuclear reactions and ionizing radiations を基礎として用い
た。
なお,ISO 31-11 : 1992, Quantities and units−Part 11 : Mathematical signs and symbols for use in the physical
sciences and technology
は,JIS Z 8201(数学記号)として制定されている。
JIS Z 8202
の規格群には,次の部編成がある。
第 0 部:一般原則
第 1 部:空間及び時間
第 2 部:周期現象及び関連現象
第 3 部:力学
第 4 部:熱
第 5 部:電気及び磁気
第 6 部:光及び関連する電磁放射
第 7 部:音
第 8 部:物理化学及び分子物理学
第 9 部:原子物理学及び核物理学
第 10 部:核反応及び電離性放射線
第 12 部:特性数
第 13 部:固体物理学
日本工業規格
JIS
Z
8202-10
: 2000
(ISO
31-10
: 1992
)
量及び単位−
第 10 部:核反応及び電離性放射線
Quantities and units
−
Part 10 : Nuclear reactions and ionizing radiations
序文 この規格は,1992 年に第 2 版として発行された ISO 31-10, Quantities and units−Part 10 : Nuclear
reactions and ionizing radiations
及び Amendment 1 (1998) を翻訳し,技術的内容を変更することなく作成し
た日本工業規格である。ただし,追補 (Amendment) については,編集し,一体とした。
なお,この規格で点線の下線を施してある箇所は,原国際規格にはない事項である。
0.1
表の配列 この規格の量及び単位の表は,量を左のページに,また,単位を対応する右のページに
配列する。
2
本の実線の間にあるすべての単位は,左のページの対応する実線の間の量に属する。
ISO 31
のいずれかの部の改正(1992 年版)で番号が変更になった場合には,左のページの量を表す新し
い番号の下に括弧を付けて ISO 31 の旧規格の番号を示す。
なお,ISO 31 の旧規格にその項目がない場合には,ダッシュ (−) でそのことを示す。
0.2
量の表 この規格で扱う分野において最も重要な量は,それらの記号とともに多くの場合,定義も
示す。ただし,これらの定義は,単にその量を特定するためであり,完全なものではない。
特に,定義上ベクトル表示式が必要な場合,幾つかの量については,そのベクトル的特性にもふれてい
るが,完全性又は一貫性を意図するものではない。
多くの場合,ある量に対しては一つの名称と一つの記号とを示す。一つの量に対して,二つ以上の名称
又は二つ以上の記号を併記し,特別な区別を付けていない場合には,互いに対等な関係にある。2 種類の
斜体文字がある場合(例えば,
ϑ
,
θ
;
ϕ
,
φ
;g,g)には,いずれか一方だけを示してあるが,他方は対等
に使用できないという意味ではない。一般に,このような別の字体に異なる意味をもたせることは推奨で
きない。括弧内の記号は,
“予備の記号”である。したがって,特別の関係のもとで主要記号が別の意味合
いで用いられている場合には,これら予備の記号が用いられる。
0.3
単位の表
0.3.1
一般 量に対する単位には,その記号及び定義を示す。詳細については,JIS Z 8202-0 を参照。
備考 ISO 31-0, Quantities and units−Part 0 : General principles からの引用事項は,この規格の規定
事項と同等である。
単位は,次のように配列してある。
2
Z 8202-10 : 2000 (ISO 31-10 : 1992)
a) SI
単位の名称は,大きい文字(本体通常の文字よりも大きい)で示す。また,SI 単位は,国際度量衡
総会 (CGPM) で採択されたものである。SI 単位の 10 の整数乗倍そのものは明示していないが,SI 単
位とその 10 の整数乗倍を用いることを推奨する。
b)
実用上の重要さ又は特殊な分野での有用さから,SI 単位と併用してよい SI 以外の単位の名称は通常
の大きさの文字(本体通常の文字の大きさ)で示す。
これらの単位は,SI 単位と点線で区別してある。
c)
当分の間 SI 単位と併用してよい SI 以外の単位の名称は,
“換算率及び備考”欄に,小さい文字(本体
通常の文字よりも小さい)を用いて示す。
d) SI
単位と併用してはならない SI 以外の単位の名称は,JIS Z 8202 の幾つかの部の
附属書だけに示す。
これらの
附属書は参考であり,規定の一部ではない。
なお,これらの単位は,次の三つのグループに分けて配列してある。
1) CGS
単位系の特殊な名称
2)
フート,ポンド及び秒に基づく単位,並びにそれに関連する幾つかの単位の名称
3)
その他の単位の名称
0.3.2
次元 1 の量の単位に関する注意事項 次元 1 のいかなる量に対しても一貫性のある単位は,数 1,
記号 1 である。そのような量の値を表すときには,一般に単位記号 1 は明示しない。
例 屈折率 n=1.53×1=1.53
この単位の 10 の整数乗倍を示すときには,接頭語を用いてはならない。接頭語の代わりに 10 の累乗を
用いる。
例 レイノルズ数 Re=1.32×10
3
平面角は,通常,二つの長さの比で,また,立体角は二つの面積の比で表されることを考慮して,国際
度量衡総会 (CGPM) は 1995 年に,国際単位系におけるラジアン rad 及びステラジアン sr を“無次元”の
組立単位に属することとした。これは,平面角及び立体角という量が次元 1 の組立量となることを意味す
る。単位,ラジアン及びステラジアンは省略してもよく,また,異なった性質であるが,同じ次元をもつ
量の間を容易に区別するための組立単位として,使用することができる。
0.4
数値に関する表現 “定義”欄の数値は,すべて正確である。
“換算率及び備考”欄の数値が正確である場合には,数値の後に“正確に”と括弧付きで付記してある。
0.5
特記事項 この規格では,“粒子”という用語は静止質量をもつ粒子だけでなく,静止質量をもたな
い粒子も意味する。
この規格で扱う幾つかの量は,エネルギー,速度,立体角などを対象としたスペクトル密度関数である。
記号の一部として下付き添字の E,
υ
,
Ω
を用いるのは,量が E,
υ
,
Ω
のそれぞれについての微分係数の次
元をもつことを示すためである。スペクトル密度関数は,分布関数ともいう。スペクトル密度関数となっ
ている物理量の名称は,
“スペクトル密度関数”という語を“スペクトル”で置き換えて短縮するものとす
る。一般に,これらの分布関数は備考欄での言及にとどめる(10-12,10-29,10-31,10-32 を参照)
。
断面積の場合,これらの分布関数のあるものは特別な名称が付けられて個々の項目として表に記載され
ている。
3
Z 8202-10 : 2000 (ISO 31-10 : 1992)
1.
適用範囲 この規格は,核反応及び電離性放射線に関する量並びに単位の名称及び記号について規定
する。また,必要な場合には,換算率を示す。
2.
引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の一部を構成する。こ
れらの引用規格は,その最新版を適用する。
JIS Z 8202-6
量及び単位−第 6 部:光及び関連する電磁放射
備考 ISO 31-6, Quantities and units−Part 6 : Light and related electromagnetic radiations がこの規格と
一致している。
JIS Z 8202-9
量及び単位−第 9 部:原子物理学及び核物理学
備考 ISO 31-9, Quantities and units−Part 9 : Atomic and nuclear physics が,この規格と一致している。
3.
名称及び記号 核反応及び電離性放射線に関する量並びに単位の名称及び記号を,次に示す。
核反応及び電離性放射線
量
番号
量
記号
定義
備考
10-1 Q
値
Q
核反応において,生成物の運動エ
ネルギー及び放射エネルギーの和
か ら 反 応 物 の そ れ ら を 引 い たも
の。
発熱核反応では Q>0。吸熱核反応では
Q<0。ベータ壊変については,JIS Z
8202-9
を参照。
10-2
共鳴エネルギー
E
r
,E
res
核反応において,共鳴を起こす入
射粒子の標的に準拠した座標系内
での運動エネルギー。
10-3.1
断面積,ミクロ断
面積
σ
特定された標的粒子又は,特定さ
れた種類のエネルギーをもった入
射荷電粒子若しくは非荷電粒子に
よって発生する特定された反応又
は過程について,断面積はこの標
的粒子に対するこの反応若しくは
過程の起こる確率を入射粒子フル
エンスで除した量。
過程の種類は,下付き添字で指定する。
例
吸収断面積
σ
a
,散乱断面積
σ
s
,
核分裂断面積
σ
f
10-3.2
全断面積
σ
tot
,
σ
T
特定された種類及びエネルギーを
もった入射粒子と標的粒子との間
のさまざまな反応又は過程に対応
する断面積の総和
狭い単向入射粒子束の場合には,その入
射束から入射粒子を除去するのに要す
る有効断面積。10-16 の備考を参照。
単位
核反応及び電離性放射線
番号
単位の名称
単位記号
定義
換算率及び備考
10-1.a
ジュール J
10-1.b
電子ボルト eV
1eV
=(1.602 177 33
±0.000 000 49)×10
-19
J(
1
)
10-1
の量は,通常,電子ボルトで表す。
注(
1
)
CODATA Bulletin 63 (1986)
10-2.a
ジュール J
10-2.b
電子ボルト eV
1eV
=(1.602 177 33
±0.000 000 49)×10
-19
J(
1
)
10-2
の量は,通常,電子ボルトで表す。
10-3.a
平方メートル
m
2
バーン (b),1b=10
-28
m
2
4
Z 8202-10 : 2000 (ISO 31-10 : 1992)
核反応及び電離性放射線(続き)
量
番号
量
記号
定義
備考
10-4
角度断面積
σ
Ω
立体角素分の中に粒子を放出又は
散乱させる断面積を,この立体角
素分で除したもの。
σ
=∫
σ
Ω
d
Ω
10-5
エネルギー断面積
σ
E
放出又は散乱された粒子のエネル
ギーがそのエネルギー分布のエネ
ルギー素分の中にあるような過程
の断面積を,このエネルギー素分
で除したもの。
σ
=∫
σ
E
dE
10-6
エネルギー角度断
面積
σ
Ω
,
E
エネルギーがその分布のエネルギ
ー素分の中にあるとき,そのエネ
ルギーを使って立体角素分の中に
粒子を放出又は散乱させるのに要
する断面積を,これらの二つの素
分の積 d
Ω
dE
で除したもの。
σ
=∬
σ
Ω
,
E
d
Ω
dE
10-4
,10-5,10-6 の量は,微分断面積と
も呼ぶ。JIS Z 8202 の他の部で使用して
いる規定に従って,角度及びスペクトル
(エネルギー)断面積は下付き添字で示
す。入ってくる又は出ていく粒子に関す
る情報は,括弧内に示す。
例
σ
Ω
,
E
(nE
0
, pE
ϑ
)
又は
σ
Ω
,
E
(nE
0
, p)
又は
σ
Ω
,
E
(n, p)
入射してくるエネルギーE
0
をもった中
性子が散乱角
ϑ
方向での立体角素分 d
Ω
内にエネルギーの間隔 (E, E+dE) をも
つ陽子の放出を引き起こすとき,その過
程についての断面積は
σ
Ω,
E
(nE
0
, pE
ϑ
)
d
Ω
dE
である。
入ってくる又は出ていく粒子を示すた
めには,下付き添字を用いることがあ
る。この場合,角度又はスペクトルの性
質を示す下付き添字
Ω
又は E を上付き添
字で示してもよい。
例
)
(
0
,
P
n,
E
E
Ω
σ
又は
E
Ω,
P
n,
σ
ただし,下付き添字
Ω
又は E が断面積の
記号からすべて省略された場合には,断
面積の角度又はスペクトル(エネルギ
ー)についての特徴を表す記号の表記
は,外に出ていく粒子に対する括弧の中
に示された変数
ϑ
又は E に起こる事象に
限定することと理解する。
例
σ
n, p
(E
0
, E
ϑ
)
又は
σ
n, p
(E
ϑ
)
そのときは,これらの変数を省略しては
ならない。
10-7.1
体積断面積,マク
ロ断面積
Σ
所与の体積中のすべての原子にわ
たって特定された種類の反応又は
過程の断面積の和を,その体積で
除したもの。
10-7.2
全体積断面積,全
マクロ断面積
Σ
tot
,
Σ
T
所与の体積中のすべての原子に対
する断面積の総和を,その体積で
除したもの。
Σ
=n
1
σ
1
+…+n
i
σ
i
+…
n
i
は数密度,
σ
i
はタイプ i の原子に対す
る断面積。媒質の標的粒子が静止してい
る場合,
Σ
=1/l で,l は平均自由行程
(10-39 を参照)
。10-13 の備考欄を参照。
10-8
粒子フルエンス
Φ
空間の与えられた点で,それを含
む小さな球体へ入射する粒子の数
を,その球体の断面積で除したも
の。
粒子という部分は,通常,それを特徴づ
ける名称で置き換える(以下、共通)
。
例
陽子フルエンス
10-9
粒子フルエンス率
(粒子束密度)
ϕ
t
Φ
d
d
=
ϕ
10-31
も参照。分布関数についても“備
考”に示されている。
単位
核反応及び電離性放射線(続き)
番号
単位の名称
単位記号
定義
換算率及び備考
10-4.a
平方メートル毎ス
テラジアン
m
2
/sr
5
Z 8202-10 : 2000 (ISO 31-10 : 1992)
単位
核反応及び電離性放射線(続き)
番号
単位の名称
単位記号
定義
換算率及び備考
10-5.a
平方メートル毎ジ
ュール
m
2
/J
10-6.a
平方メートル毎ス
テラジアン毎ジュ
ール
m
2
/ (sr
・J)
10-7.a
毎メートル
m
-1
10-8.a
毎平方メートル
m
-2
10-9.a
毎平方メートル毎
秒
m
-2
/s
核反応及び電離性放射線(続き)
量
番号
量
記号
定義
備考
10-10
エネルギーフルエ
ンス
Ψ
空間の与えられた点で,それを含
む小さな球体に入射するすべての
粒子の静止エネルギーを除いたエ
ネルギーの総和を,その球体の断
面積で除したもの。
10-11
エネルギーフルエ
ンス率,エネルギ
ー束密度
ψ
t
Ψ
d
d
=
ψ
10-12
粒子流密度
J,(S)
ベクトル量。どのような面に対し
ても,それを通過するこの量の垂
直 成 分 の そ の 面 に つ い て の 積分
は,微小時間間隔にその面を通過
する正味の粒子数 I を,その時間間
隔で除したものに等しい。
∫J・e
n
dA
=dI/dt
e
n
dA
がベクトル面積の素分である
場合。
電流密度の記号 J と混同するおそれが
ある場合には,S を用いるほうがよい。
中性子流密度は,一般に記号 J を用い
る。速さ及びエネルギーに関係したそれ
ぞれの分布関数 J
v
及び J
E
とは,次の関
係で結合される。
J=∫J
v
dv
=∫J
E
dE
10-13
(全)線減弱係数
µ
,
µ
l
µ
=−(1/J) dJ/dx
J は,x 軸方向に平行な粒子束の粒
子流密度。
µ
は,粒子束から粒子を取り去るのに要
する全マクロ断面積
Σ
tot
に等しい。
10-14
(全)質量減弱係
数
µ
m
線減弱係数をその物質の密度で除
したもの。
µ
m
=
µρ
10-15
モル減弱係数
µ
c
µ
c
=
µ
/c
c はその物質のモル濃度。
10-16
原子減弱係数
µ
a
,
µ
at
µ
a
=
µ
/n
n はその物質の原子数密度(10-27
参照)
。
µ
a
は,粒子束から粒子を取り去るのに要
する全断面積
σ
tot
に等しい。
10-17
半価層
d
1/2
一方向ビームの粒子流密度が初期
値の 2 分の 1 に減弱する深さを表
す量。
指数関数的減弱について,
d
1/2
=(1n2) /
µ
である。吸収線量率の減弱
などの他の量の減弱についても半価層
を用いる。
10-18
(全)線阻止能
S,S
l
x 軸方向に動くエネルギーE の電離
性荷電粒子については,
S=−dE/dx
阻止能ともいう。衝突損失及び放射損失
の両方が含まれる。基準物質の全線阻止
能に対する対象物質の全線形阻止能の
比を相対線阻止能という。
10-54
も参照。
6
Z 8202-10 : 2000 (ISO 31-10 : 1992)
核反応及び電離性放射線(続き)
量
番号
量
記号
定義
備考
10-19
(全)原子阻止能
S
a
S
a
=S/n
n は,物質中の原子数密度。
単位
核反応及び電離性放射線(続き)
番号
単位の名称
単位記号
定義
換算率及び備考
10-10.a
ジュール毎平方メ
ートル
J/m
2
10-11.a
ワット毎平方メー
トル
W/m
2
10-12.a
毎平方メートル毎
秒
m
-2
/s
10-13.a
毎メートル
m
-1
10-14.a
平方メートル毎キ
ログラム
m
2
/kg
10-15.a
平方メートル毎モ
ル
m
2
/mol
10-16.a
平方メートル
m
2
10-17.a
メートル m
10-18.a
ジュール毎メート
ル
J/m
10-18.b
電子ボルト毎メー
トル
eV/m
1eV/m
=(1.602 177 33
±0.000 000 49)×10
-19
J/m(
1
)
10-19.a
ジュール平方メー
トル
J
・m
2
10-19.b
電子ボルト平方メ
ートル
eV
・m
2
1eV
・m
2
=(1.602 177 33
±0.000 000 49)×10
-19
J
・m
2
(
1
)
核反応及び電離性放射線(続き)
量
番号
量
記号
定義
備考
10-20
(全)質量阻止能
S
m
線阻止能をその物質の密度で除し
た量。
S
m
=S/
ρ
基準物質の質量阻止能に対するある物
質の質量阻止能の比を,相対質量阻止能
という。
10-21
平均線飛程
R,R
l
特定の条件下で粒子が与えられた
物質に浸透する距離を,等しい初
期エネルギー値をもつ粒子群につ
いて平均したもの。
10-22
平均質量飛程
R
ρ
,(R
m
)
平均線飛程にその物質の密度を乗
じた量。
R
ρ
=R
・
ρ
10-23
比電離
N
il
電離性荷電粒子の行程のある線素
分中で生成される同一の符号をも
つ電気素量の数をその線素分で除
したもの。
二次電離性粒子などによる電離も含ま
れる。
10-24
全電離
N
i
電離性荷電粒子がその全行程に沿
って生成した同一の符号をもつ電
気素量の数の合計を示す量。
N
i
=∫N
il
dl
10-23
の備考参照。
7
Z 8202-10 : 2000 (ISO 31-10 : 1992)
核反応及び電離性放射線(続き)
量
番号
量
記号
定義
備考
10-25
W 値
W
i
電離性荷電粒子の初期運動エネル
ギーを,その粒子の生成する全電
離量で除したもの。
ある場合に平均エネルギー毎生成イオ
ン対数と呼ばれる量 S
l
/N
il
は,W
i
と混同
してはいけない。
10-26
易動度
µ
媒質内の荷電粒子が電界によって
与 え ら れ る 平 均 の ド リ フ ト 速度
を,電界の強さで除したもの。
10-27
イオン数密度,イ
オン密度
n
+
,n
-
体積素分中の陽イオン又は陰イオ
ンの数を,その体積素分で除した
もの。
n は,粒子の数密度を表す一般的記号。
10-28
再結合係数
α
再結合の法則における係数。
−
+
−
+
=
−
=
−
n
n
t
n
t
n
α
d
d
d
d
10-29
中性子数密度
n
体積素分中の自由中性子の数を,
その体積素分で除したもの。
速さ及びエネルギーに対する分布関数
n
v
及び n
E
と n の関係は,次の式となる。
n=∫n
v
dv
=∫n
E
dE
10-30
中性子速度
v
中性子の速度の大きさ
単位
核反応及び電離性放射線(続き)
番号
単位の名称
単位記号
定義
換算率及び備考
10-20.a
ジュール平方メー
トル毎キログラム
J
・m
2
/kg
10-20.b
電子ボルト平方メ
ートル毎キログラ
ム
eV
・m
2
/kg
1eV
・m
2
/kg
=(1.602 177 33
±0.000 000 49)×10
-19
J
・m
2
/kg(
1
)
10-21.a
メートル m
10-22.a
キログラム毎平方
メートル
kg/m
2
10-23.a
毎メートル
m
-1
10-24.a
無名数の 1
量の値は,数値だけで表示。
序文の 0.3.2 を参照。
10-25.a
ジュール J
10-25.b
電子ボルト eV
1eV
=(1.602 177 33
±0.000 000 49)×10
-19
J(
1
)
10-26.a
平方メートル毎ボ
ルト毎秒
m
2
/ (V
・s)
10-27.a
毎立方メートル
m
-3
10-28.a
立方メートル毎秒
m
3
/s
10-29.a
毎立方メートル
m
-3
10-30.a
メートル毎秒 m/s
核反応及び電離性放射線(続き)
量
番号
量
記号
定義
備考
10-31
中性子フルエンス
率(中性子束密度)
ϕ
空間の与えられた点において,短
い時間間隔内でその点を含む小球
に入射する中性子の数を,その球
の断面積及び時間間隔で除したも
の。
10-8
も参照。速さ及びエネルギーに対
する分布関数
ϕ
v
及び
ϕ
E
と
ϕ
との関係は。
次の式となる。
ϕ
=∫
φ
v
dv
=∫
ϕ
E
dE
ϕ
v
=n
v
v 及び
ϕ
=n<v>。<v>は平均中性子
速度。
8
Z 8202-10 : 2000 (ISO 31-10 : 1992)
核反応及び電離性放射線(続き)
量
番号
量
記号
定義
備考
10-32
拡散係数,中性子
数密度に対する拡
散係数
D,D
n
J
x
=−D
n
∂
n/
∂
x
J
x
は中性子流密度の x 成分,n は中
性子数密度。
速さに対する分布関数 J
v, x
と J
x
との関係
式は,次の式となる。
J
x
=∫J
v
,
x
dv
。10-12 参照。
10-33
中性子フルエンス
率に対する拡散係
数(中性子束密度
に 対 す る 拡 散 係
数)
D
ϕ
,(D)
J
x
=−D
ϕ
∂
ϕ
/
∂
x
J
x
は中性子流密度の x 成分,
ϕ
は中
性子フルエンス率。
与えられた速さの中性子について,
J
v, x
=−D
n
(v)
∂
n
v
/
∂
x
=−D
φ
(v)
∂
φ
v
/
∂
x
vD
φ
(v)
=D
n
(v)
10-34
中性子源密度
S
体積素分中の中性子生成率をその
体積素分で除したもの。
速さ及びエネルギーに対する分布関数
S
v
及び S
E
と S との関係は,次の式で示
される。
S=∫S
v
dv
=∫S
E
dE
10-35
減速密度
q
微小時間間隔内に与えられたエネ
ルギーの値以下に減速する中性子
数密度を,その時間間隔で除した
もの。
10-36
共鳴を逃れる確率
p
無限の媒質において,減速してい
る中性子が吸収されずに共鳴エネ
ルギーの特定の範囲のすべて又は
一部を通過する確率。
10-37
レサジー
u
運動エネルギーE の中性子のレサ
ジーの定義は,次の式による。
u=1n (E
0
/E)
E
0
は,基準エネルギー。
10-38
平均対数エネルギ
ー減衰率,衝突当
たりの平均レサジ
ー増加。
ξ
中性子と運動エネルギーが中性子
の運動エネルギーに比較して無視
できるほど小さい原子核の弾性衝
突におけるレサジーの増加量の平
均値。
10-39
平均自由行程
l,
λ
二つの連続する特定の反応又は過
程 の 間 に 粒 子 が 移 動 す る 平 均距
離。
10-7
の備考を参照。
単位
核反応及び電離性放射線(続き)
番号
単位の名称
単位記号
定義
換算率及び備考
10-31.a
毎平方メートル毎
秒
m
-2
/s
10-32.a
メートル 2 乗毎秒
m
2
/s
10-33.a
メートル m
10-34.a
毎秒毎立方メート
ル
s
-1
/m
3
10-35.a
毎立方メートル毎
秒
m
-3
/s
10-36.a
無名数の 1
量の値は,数値だけで表示。
序文の 0.3.2 を参照。
10-37.a
無名数の 1
量の値は,数値だけで表示。
序文の 0.3.2 を参照。
9
Z 8202-10 : 2000 (ISO 31-10 : 1992)
単位
核反応及び電離性放射線(続き)
番号
単位の名称
単位記号
定義
換算率及び備考
10-38.a
無名数の 1
量の値は,数値だけで表示。
序文の 0.3.2 を参照。
10-39.a
メートル m
核反応及び電離性放射線(続き)
量
番号
量
記号
定義
備考
10-40.1
減速面積
L
s
2
,L
sl
2
均質な無限の媒質において,中性
子源とそれから発生した中性子が
所与のエネルギーに達する点まで
の距離の二乗平均値の 1/6。
フェルミ年齢理論が適用可能な場合,こ
れは,
“フェルミ年齢”
τに等しい。
10-40.2
拡散面積
L
2
均質で無限の媒質において,中性
子が特定の分類に入る点とその分
類から外れる点までの距離の二乗
平均値の 1/6。
10-40.3
移動面積
M
2
核分裂エネルギーから熱エネルギ
ーへの減速面積と熱中性子の拡散
面積との和。
10-41.1
減速距離
L
s
,L
sl
減速面積の平方根。
10-41.2
拡散距離
L
拡散面積の平方根。
10-41.3
移動距離
M
移動面積の平方根。
10-42.1
核分裂当たりの中
性子収量
ν
中性子の分裂ごとに放出される即
発中性子と遅発中性子を含む核分
裂中性子数の平均。
それぞれ
ν
係数及び
η
係数ともいう。
η
/
ν
は,燃料原料中の中性子に対して,
核分裂のマクロ断面積に対する吸収の
マクロ断面積の比に等しい。
10-42.2
吸収当たりの中性
子収量
η
核分裂性核種又は特定される核燃
料において中性子の吸収されるご
とに放出される即発中性子と遅発
中性子を含む核分裂中性子数との
平均。
10-43
高速核中性子分裂
係数
ε
無限の媒質において,あらゆるエ
ネルギーをもった中性子に起因す
る核分裂によって生成される中性
子の平均数に対する熱中性子だけ
に起因する核分裂によって生成さ
れる中性子の平均数の比。
10-44
熱中性子利用率
f
無限の媒質において,核分裂性核
種又は特定される核燃料に規定と
して核燃料に吸収される熱中性子
の数に対する吸収されるすべての
熱中性子の数の比。
10-45
漏れない確率
Λ
中性子が減速の過程で又は熱中性
子として拡散する間に原子核反応
炉から漏出しない確率。
10-46.1
増倍率
k
ある時間の間に生成される核分裂
中性子又は核分裂依存の中性子の
総数に対する同じ時間の間に吸収
及び漏えい(洩)によって失われ
る中性子の総数の比。
10
Z 8202-10 : 2000 (ISO 31-10 : 1992)
核反応及び電離性放射線(続き)
量
番号
量
記号
定義
備考
10-46.2
無限媒質増倍率
k
∞
無限の媒質又は無限に繰り返され
る格子についての増倍率。
熱中性子炉については,k∞=
ηε
pf。
10-46.3
有効増倍率
k
eff
有限の媒質の増倍率。
k
eff
=k
∞
Λ
単位
核反応及び電離性放射線(続き)
番号
単位の名称
単位記号
定義
換算率及び備考
10-40.a
平方メートル
m
2
10-41.a
メートル m
10-42.a
無名数の 1
量の値は,数値だけで表示。
序文の 0.3.2 を参照。
10-43.a
無名数の 1
量の値は,数値だけで表示。
序文の 0.3.2 を参照。
10-44.a
無名数の 1
量の値は,数値だけで表示。
序文の 0.3.2 を参照。
10-45.a
無名数の 1
量の値は,数値だけで表示。
序文の 0.3.2 を参照。
10-46.a
無名数の 1
量の値は,数値だけで表示。
序文の 0.3.2 を参照。
核反応及び電離性放射線(続き)
量
番号
量
記号
定義
備考
10-47
反応度
ρ
eff
eff
1
k
k
−
=
ρ
10-48
原子炉時定数
T
原子炉における中性子フルエンス
率が,それが指数関数的に e 倍に
増加又は e
-1
倍に減少させるのに要
する時間。
原子炉周期ともいう。
10-49
放射能,壊変率
A
短い時間の間に放射性核種のある
量について生じる特殊なエネルギ
ー状態からの自発核遷移の数につ
いての期待値を,その時間で除し
たもの。
A=−dN/dt
指数関数的な壊変については,A=
λ
,
N
λ
は壊変定数(JIS Z 8202-9 の 9-36 を
参照)
。
10-50.1
エネルギー分与
ε
与えられた体積の物質に対する電
離性放射線によるエネルギー分与
は,その体積へ入ってくる直接的
電離性(荷電)粒子と間接的電離
性(非荷電)粒子に対するすべて
のエネルギーの和とその体積から
出ていくそれらの粒子に対するす
べてのエネルギーの和から,その
体積内で起こる核反応又は素粒子
反応によって生じるあらゆる静止
質量の増加に等価なエネルギーを
差し引いたものである。
10-50.2
平均エネルギー分
与
ε
エネルギー分与の期待値。
この量は,積分吸収線量と呼ばれること
がある。
11
Z 8202-10 : 2000 (ISO 31-10 : 1992)
核反応及び電離性放射線(続き)
量
番号
量
記号
定義
備考
10-51.1
質量エネルギー分
与
z
あらゆる電離性放射線によって照
射される物体の微小部分へのエネ
ルギー分与を,その微小部分の質
量で除したもの。
ε
=∫zdm
10-51.2
吸収線量
D
あらゆる電離性放射線によって照
射される物体の微小部分への平均
エネルギー分与を,この部分の質
量で除したもの。
ε
=∫Ddm
dm
は、照射される物体の質量素分。
10-52
線量当量
H
組織内の対象とする点における D,
Q, N の積。D は吸収線量,Q は線
質係数,
N はそれ以外のすべての修
正係数の積。
H=D・Q・N
Q 及び N については,CIPM(1984 年)
の勧告 1 及び ICRU(国際放射線単位測
定委員会)報告書第 33 号(1980 年)を
参照。
10-53
吸収線量率
D&
t
D
D
d
d
=
&
単位
核反応及び電離性放射線(続き)
番号
単位の名称
単位記号
定義
換算率及び備考
10-47.a
無名数の 1
量の値は,数値だけで表示。
序文の 0.3.2 を参照。
10-48.a
秒 s
10-49.a
ベクレル Bq
1Bq
=1s
-1
ベクレルは,放射能に対する SI 単位と
して与えられる毎秒を意味する固有の
名称である。
キュリー (Ci),1Ci=3.7×10
10
Bq
(正確
に)
10-50.a
ジュール J
10-51.a
グレイ Gy
1Gy
=1J/kg
グレイは,これらの量に対する SI 単位
として与えられるジュール毎キログラ
ムを意味する固有の名称である。
ラド (rad),1rad=10
-2
Gy
10-52.a
シーベルト Sv
1Sv
=1J/kg
シーベルトは,線量当量に対する SI 単
位として与えられるジュール毎キログ
ラムを意味する固有の名称である。
レム (rem),1rem=10
-2
Sv
10-53.a
グレイ毎秒 Gy/s
1Gy/s
=1W/kg 10-51.a の
備考を参照。
核反応及び電離性放射線(終わり)
量
番号
量
記号
定義
備考
10-54
線エネルギー転移
L
電離性荷電粒子が物体中を微小距
離通過する際にその物体のその粒
子による局所でのエネルギー分与
を,その距離で除したもの。
“局所的エネルギー分与”という用語に
包括される意味の範囲が,例えば,特定
された極大エネルギー値以下での衝突
によって生じるエネルギーの転移だけ
を考えるという限定がない限り,この物
理量は完全に定義されない。線エネルギ
ー転移は,ときには LET と略される。
12
Z 8202-10 : 2000 (ISO 31-10 : 1992)
核反応及び電離性放射線(終わり)
量
番号
量
記号
定義
備考
10-55
カーマ
K
間接的電離性(非荷電)粒子につ
いて,物体の微小部分内で電離さ
れたすべての荷電粒子の初期運動
エネルギーの総和を,その部分の
質量で除したもの。
カ ー マ と い う 名 称 は , Kinetic Energy
Released in MAtter
(物体内で放出される
運動エネルギー)に由来する。
10-56
カーマ率
K&
t
K
K
d
d
=
&
10-57
質量エネルギー転
移係数
µ
tr
/
ρ
間接的電離性(非荷電)粒子線に
ついて,
µ
tr
/
ρ
=
K&/
ψ
,
ψ
はエネルギ
ーフルエンス率。
µ
en
/
ρ
=(
µ
tr
/
ρ
) (1
−G) この量は,質量エ
ネルギー吸収係数という。G は,制動放
射のために失われる二次荷電粒子のエ
ネルギーの一部。10-14 も参照。
10-58
照射線量
X
X
線又はガンマ線の放射について,
空気中のある部分内にある光子に
よ っ て 遊 離 さ れ た す べ て の 電子
(電子及び陽電子)が空気中で静
止させられる際に生じる同じ符号
をもつイオンの電荷の総量を,そ
の 空 気 の 部 分 の 質 量 で 除 し たも
の。
空気中のある部分で遊離された二次電
子による制動放射の吸収によって発生
する電離は含まれない。この量を光子照
射質量という量(JIS Z 8202-6 の 6-28
を参照。)及び露光量という量(JIS Z
8202-6
の 6-35 を参照。
)と混同してはな
らない。
10-59
線量率
X&
t
X
X
d
d
=
&
単位
核反応及び電離性放射線(終わり)
番号
単位の名称
単位記号
定義
換算率及び備考
10-54.a
ジュール毎メート
ル
J/m
10-54.b
電子ボルト毎メー
トル
eV/m
1eV/m
=(1.602 177 33
±0.000 000 49×10
-19
J/m(
1
)
10-55.a
グレイ Gy
1Gy
=1J/kg 10-51.a の備考を参照。
10-56.a
グレイ毎秒 Gy/s
1Gy/s
=1W/kg 10-51.a の備考を参照。
10-57.a
平方メートル毎キ
ログラム
m
2
/kg
10-58.a
クーロン毎キログ
ラム
C/kg
レントゲン (R),
1R
=2.58×10
-4
C/kg
(正確に)
10-59.a
クーロン毎キログ
ラム毎秒
C/ (kg
・s) 1C/
(kg
・s)=1A/kg
13
Z 8202-10 : 2000 (ISO 31-10 : 1992)
JIS Z 8202
原案作成委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
○
今 井 秀 孝
通商産業省工業技術院計量研究所計測システム部
(委員)
○
今 村 徹
通商産業省工業技術院計量研究所力学部
大 嶋 清 治
通商産業省工業技術院標準部
小 川 実 吉
横河電機株式会社センサー事業部フィールド機器MK部
宇賀神 守
日本電信電話株式会社技術部
桑 田 浩 志
トヨタ自動車株式会社設計管理部
○
小 泉 袈裟勝
日本計量機器工業連合会顧問
佐 藤 義 雄
文部省初等中等教育局
畠 山 昭士郎
清水建設株式会社技術研究所建設技術研究部
馬 場 秀 俊
通商産業省機械情報産業局
○
増 井 敏 郎
財団法人日本計量協会参与
村 井 喜 一
株式会社大林組土木技術本部
森 下 昇
日本鋼管株式会社鉄鋼技術センター鉄鋼技術総括部
○
山 本 弘
愛知時計電機株式会社東京支店
○
渡 辺 英 雄
通商産業省工業技術院計量研究所計測システム部
吉 田 邦 夫
社団法人日本ガス協会技術部
千 坂 文 武
通商産業省工業技術院機械技術研究所
村 田 重 夫
通商産業省工業技術院物質工学工業技術研究所
遠 藤 忠
通商産業省工業技術院電子技術総合研究所基礎計測部
吹 上 浩 朗
電気事業連合会工務部
(事務局)
山 村 修 造
財団法人日本規格協会技術部
木 村 茂
財団法人日本規格協会技術部
備考 ○印は,分科会を兼ねる。