W 1108 : 2000 (ISO 8080 : 1985)
(1)
まえがき
この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,通商産業大臣が制定した日
本工業規格である。
日本工業規格
JIS
W
1108
:
2000
(I
8080
:
1985
)
航空宇宙−チタン及びチタン合金の
陽極処理−硫酸法
Aerospace
−Anodic treatment of titanium and
titanium alloys
−Sulfuric acid process
序文 この規格は,1985 年に第 1 版として発行された ISO 8080 を翻訳し,技術的内容及び規格票の様式
を変更することなく作成した日本工業規格である。
この規格は,チタン及びチタン合金に施す硫酸法による非封孔陽極酸化皮膜の生成及び試験に適用するこ
とを意図したものである。
1.
適用範囲 この規格は,チタン及びチタン合金に施す非封孔陽極酸化皮膜の生成及び試験に関する要
求事項を規定する。この陽極酸化皮膜は,硫酸法によって生成する。
この皮膜は,固体皮膜潤滑剤と併用して,チタン製ファスナのかじり防止,より卑な金属がチタンと接
触したときに生じる異種金属接触腐食からの限定的な保護,又は他の承認された用途のために使用する。
備考 この規格の対応国際規格を次に示す。
ISO 8080 : 1985, Aerospace
−Anodic treatment of titanium and titanium alloys−Sulfuric acid process
2.
技術的要求事項
2.1
工程の詳細
2.1.1
陽極処理溶液は,工業用硫酸を用いて H2SO4 が 200∼400g/l である公称組成にした水溶液とする。
溶液は,選定した公称組成の±10%以内の組成を維持しなければならない。塩化物含量は,NaCl に換算し
て 0.2g/l を超えてはならない。購入者の同意があり,得られた皮膜がこの規格の他のすべての要求事項を
満たす場合には,溶液の化学組成を変更してもよい。
2.1.2
溶液中の溶解金属の含量は,チタンで定量して 20g/l を超えてはならない。
2.1.3
溶液は,21+2℃の温度で使用する。温度制御装置は,溶液の温度を設定温度の±2℃以内に維持で
きるものでなければならない。
2.1.4
溶液は,耐食鋼製タンク,又は適切な耐酸性材料でライニングした鋼製タンクに入れる。
鉛製ライニングである場合を除き,ライニングしたタンクには,溶液を汚染しない金属製の補助陰極板
が必要である。
2.1.5
可変直流 (D.C.) 電源並びに関連制御装置,及び印加電圧・電流を読む計器が必要である。
2.1.6
部品をつるすのに使用するワイヤ,フック,クランプ,ラックなどのすべての固定具は,チタン製
又はチタン合金製でなければならない。
2.1.7
酸洗い溶液は,次の濃度で硝酸及びふっ化水素酸を混合したものとする。
2
W 1108 : 2000 (ISO 8080 : 1985)
HNO
3
(69 質量%)を,280∼560g/l
HF
(70 質量%)を,15∼25g/l
2.2
陽極処理の準備
2.2.1
グリース,オイル及び識別表示 (mill marking) などの汚染物質を全表面から確実に除去するために,
部品を完全にアルカリ洗浄する。
2.2.2
塩素系溶剤及びメチルアルコールを脱脂に使用してはならない。
2.2.3
部品を確実につり下げ装置に取り付ける。接触面をできるだけ小さくし,可能な場合には,皮膜処
理する必要のない面で固定する。部品の全表面に皮膜を作る場合には,図面上に示された位置を接触部分
にする。
2.2.4
処理中に気体のたまりを最少にするように部品の方向を決める。
2.2.5
アルカリ洗浄後に,硝酸・ふっ化水素酸の酸洗い溶液中で反応ガス発生後 5∼20 秒間部品をエッチ
ングし,その後,冷たい流水で完全にすすぐ。前述した処理を行った後にも清浄な金属表面が見えないほ
ど汚れのひどい部品は,エッチング前に微細なアルミナによるグリットブラスト,又は酸化性アルカリ溶
液の中で前処理を行う必要がある。
2.3
陽極処理手順
2.3.1
部品を陽極処理溶液に浸す。部品を陽極に,タンク又は補助電極板を陰極にする。電圧を 15∼20V
に上げて,電流を 15 分間又は望ましい着色状態になるまで流す。始めの電流密度は,約 0.2A/dm
2
にする。
その後の陽極処理サイクルの大部分では,約 0.05A/dm
2
に下がる。
2.3.2
複雑な形状の部品を陽極処理するときには,くぼみや貫通していない穴に気体がたまるのを最少に
するために,溶液をかき混ぜる。必要な場合には,部品の向きを定期的に変えて,皮膜のできていない部
分を電解液に接触させ,くぼみや止まり穴の中の電解液と,気体との境界に生じる浸食を防ぐ。
2.3.3
陽極処理サイクルの終了後,冷たい流水で部品を完全にすすぎ,その後,清浄な温水ですすいで,
次に乾燥させる。
2.3.4
次工程で表面処理をする場合には,部品を汚さない方法で取扱い及び保管をする。
3.
品質保証条項
3.1
検査の責任 特に協議しない限り,加工者には,この規格の品質保証に関するすべての要求事項を
実施する責任がある。
3.2
外観検査
3.2.1
皮膜は,滑らかで密着しており,きめ及び外観が均質で,一様の青紫色を呈しなければならない。
皮膜は,
(固定具との)接触点以外には,不連続があってはならない。
3.2.2
陽極処理皮膜が,焼け若しくは粉ふき部,はがれやすい皮膜,皮膜割れ若しくはすりきずのような
不連続,黄色,又は,部品の機能・性能に有害となるようなその他の損傷若しくは不完全を示している部
品は,不合格であると判断する。そのような部品は,品質保証責任部門と協議のうえ,再度酸洗いをし,
再処理を実施してもよい。
3.2.3
契約書又は発注書に要求されている場合には,部品の色は,検査する部品と同一の合金で,同じ熱
処理,及び表面仕上げをした管理用見本の色と,同等でなければならない。
3.3
承認
3
W 1108 : 2000 (ISO 8080 : 1985)
3.3.1
見本にする皮膜を生成させた部品及びパネルは,量産部品の供給前に,発注者及び必要であれば品
質保証責任部門によって承認されなければならない。ただし,その承認が免除された場合には,その限り
でない。
3.3.2
品質管理手順及び試験のすべてについての文書を取りそろえ,発注者の要請があれば提示できるよ
うにしておかなければならない。
3.3.3
加工者は,承認された管理用見本に使用したものと同じ製造手順,諸工程及び検査方法を量産部品
に適用する。発注者の再承認がなければ,この手順から逸脱してはならない。
4.
包装及び引渡し
4.1
包装 陽極処理を施した部品は,出荷及び/又は保管中の取扱い不良,屋外放置又は何らかの偶発事
故による損傷から保護できる方法で包装する。
4.2
引渡し 陽極処理を施した部品には,運送者の受取り及び引渡し地点までの安全輸送を保証するた
めに,産業界で広く行われている適正な標準的要領に従って,運送及び引渡しの準備をする。こん包は,
輸送方法に適応した運送約款及び規定に適合させる。
4
W 1108 : 2000 (ISO 8080 : 1985)
規格原案作成委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
松 木 正 勝
日本工業大学
(副委員長)
渡 辺 晃
日本飛行機株式会社技術本部
(委員)
久 郷 達 也
通商産業省機械情報産業局
津 金 秀 幸
通商産業省工業技術院標準部
平 沢 愛 祥
運輸省航空局
後 藤 忠 司
海上保安庁装備技術部
中 西 忠 雄
防衛庁装備局
伊 藤 誠 一
科学技術庁航空宇宙技術研究所
守 田 正 公
社団法人日本航空技術協会
中 込 常 雄
日本工業標準調査会
久木田 実 守
株式会社富士キメラ総研
塩 田 克 彦
日本航空株式会社技術研究部
吉 井 正 洋
株式会社日本エアシステム整備本部
服 部 博
石川島播磨重工業株式会社航空宇宙事業本部
麹 盛 謙 二
川崎重工業株式会社航空宇宙事業本部
香 坂 哲 也
株式会社島津製作所航空機器営業部
多和田 孝 造
帝人製機株式会社航空機技術部
曽 我 章
日本航空電子工業株式会社航機事業部
今 村 和 夫
富士重工業株式会社航空宇宙事業本部
清 田 紀 男
三菱電機株式会社鎌倉製作所
太 田 明
三菱重工業株式会社名古屋航空宇宙システム製作所
宇田川 知 行
横河電機株式会社航空宇宙特機事業部
播 磨 克 彦
アエロスペック研究会
山 田 秀次郎
社団法人日本航空宇宙工業会
(事務局)
高 崎 信 之
社団法人日本航空宇宙工業会調査部
航空専門委員会 構成表(順不同)
氏名
所属
(委員会長)
東 口 實
東京工科大学
岩 村 敬
運輸省航空局
海老原 正 夫
科学技術庁航空宇宙技術研究所
榊 達 郎
社団法人日本航空技術協会
山 田 秀治郎
社団法人日本航空宇宙工業会
森 迫 勝
石川島播磨重工業株式会社
宮 崎 崇 男
富士重工業株式会社
香 春 民 生
日本航空株式会社
諏訪部 洋 光
全日本空輸株式会社
大 宮 英 明
三菱重工業株式会社
土 屋 美 則
東芝株式会社
金 子 敦
川崎重工業株式会社
宮 脇 紘 一
株式会社日本エアシステム
小 泉 一 哉
社団法人日本航空技術協会
穐 山 貞 治
工業技術院標準部
(事務局)
池 川 澄 夫
工業技術院標準部