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日本工業規格

JIS

 W

0904

-1995

航空宇宙用機器の浸透探傷検査方法

Liquid penetrant inspection for aerospace use

1.

適用範囲

1.1

適用範囲  この規格は,非多孔質の金属及び非金属製の航空宇宙機器用構成部品に対して浸透探傷

検査を実施する場合の最小限の要求事項について規定する。

備考  この規格の中で  {  }  を付けて示してある単位及び数値は,メートル系従来単位によるもので

あって,参考として併記するものである。

参考  この規格の内容は,MIL-STD-6866 (Inspection, Liquid Penetrant)  に相当する。

1.2

適用対象  この規格で規定する浸透探傷検査方法は,工程中検査,最終検査及び整備検査(運用中

検査)に適用する。この検査方法は,検査対象構成部品の表面に開口しているか,又は表面につながって

いる不連続部を検出するためのものである。

1.3

種類  浸透探傷検査方法は,MIL-I-25135 で規定する材料(以下,浸透探傷剤ともいう。)の種類に

従って分類する。

1.3.1

浸透液系  この規格に基づいて使用する浸透液系は,次のタイプ,方法及び感度レベルのものでな

ければならない。

参考  浸透液系は,同一製造業者から供給され,組み合わせて使用する場合にはその一組の浸透液と

乳化剤とで構成し,乳化剤を使用しない場合には,浸透液だけで構成する。

タイプ  タイプ I−蛍光浸透液系

        タイプ II−染色浸透液系

        タイプ III−染色及び蛍光複式浸透液系

方法  方法 A−水洗性浸透液系を使用する方法

      方法 B−後乳化性浸透液系(親油性乳化剤)を使用する方法

      方法 C−溶剤除去性浸透液系を使用する方法

      方法 D−後乳化性浸透液系(親水性乳化剤)を使用する方法

感度  感度レベル 1−低感度

      感度レベル 2−中感度

      感度レベル 3−高感度

      感度レベル 4−超高感度

1.3.2

現像剤  現像剤は,次のフォームのものでなければならない。

フォーム a−乾式粉末現像剤

フォーム b−水溶性現像剤

フォーム c−水懸濁性現像剤

フォーム d−非水性(速乾性)現像剤


2

W 0904-1995

フォーム e−特定用途の現像剤

1.3.3

溶剤性除去剤  溶剤性除去剤は,次のクラスのものでなければならない。

クラス (1) −ハロゲン化除去剤

クラス (2) −非ハロゲン化除去剤

クラス (3) −特定用途の除去剤

2.

関連規格

2.1

この規格の関連規格を次に示す。これらの規格を使用するときは,特に指示がない限り,入札又は

見積りの依頼日に効力がある版による。

仕様書

Military Specification

MIL-I-25135

  Inspection Materials, Penetrants

MIL-P-47158

  Penetrant Inspection, Soundness Requirements for Materials, Parts and Weldments

規格

Military Standard

MIL-STD-410

  Nondestructive Testing Personnel Qualification and Certification

JIS W 0905  航空宇宙用非破壊検査員の技量認定基準)

MIL-STD-792

  Identification Marking Requirements for Special Purpose Components

MIL-STD-45662

  Calibration Systems Requirements

2.2

その他の関連文書を次に示す。

American Society for Testing and Materials (ASTM)  

ASTM D 95

  Water in Petroleum Products and Bituminous Materials by Distillation, Standard Test

Method for

ASTM D 2512

  Compatibility of Materials with Liquid Oxygen (Impact Sensitivity Threshold and

Pass-Fail Technique), Standard Test Method for

2.3

適用優先順位  この規格の要求事項とここに記載する関連規格の要求事項とが相違するときは,こ

の規格の要求事項を優先させなければならない。

3.

用語の定義

3.1

背景 (background)   指示模様が現れる構成部品の表面。

3.2

紫外線照射装置 (black light)   近紫外線波長範囲 (320∼400nm)  の電磁波を放射する照射装置。

3.3

紫外線フィルタ  (black light filter)    近紫外線を透過し,その他の波長範囲の電磁波を吸収するフィ

ルタ。

3.4

しみ出し (bleedout)   不連続部内に閉じ込められた浸透液が表面ににじみ出て指示模様を形成す

る作用。

3.5

構成部品 (component)   システムを構成する部品又は要素であって,図面で示されていて,その図

面で指示された状態に組立て又は加工されたもの。

3.6

汚染要因物 (contaminant)   試験面上又は検査材料中に存在する異物で,浸透探傷剤の性能に悪影

響を与えるもの。

3.7

契約機関 (contracting agency)   (削除)


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W 0904-1995

3.8

暗順応 (dark adaptation)   暗所での視覚力を増大させる眼の調節作用。

3.9

欠陥 (defect)   構成部品に対して規定された合格判定基準を超える 1 個又は 1 群の不連続部。

3.10

現像剤 (developer)   試験面に適用して浸透液のしみ出しを促進し,指示模様のコントラストを増

大させる材料。

3.11

乾式現像剤 (dry developer)   供給状態のままで使用する自由流動性をもつ細かい粉末状の現像剤。

3.12

非水性(速乾性)現像剤 (nonaqueous developer)   揮発性溶剤(水以外)中に溶解又は懸濁した状

態で供給され,急速に乾燥して吸着性(又は吸収性)の被覆になる現像剤。

3.13

水溶性現像剤  [wet (aqueous) soluble developer]    通常は乾燥濃縮物として供給され,水に完全に溶

解し,乾燥すると吸着性(又は吸収性)の被覆になる現像剤。

3.14

水懸濁性現像剤  [wet (aqueous) suspendible developer]    通常は乾燥粉末状濃縮物として供給され,

水に懸濁し,乾燥すると吸着性(又は吸収性)の被覆になる現像剤。

3.15

排液時間 (drain time)   滞留時間の一部分で,余分な浸透液又は乳化剤を構成部品から滴下させて

取り除く時間。

3.16

乾燥炉 (drying oven)   水洗水又は水性現像剤を構成部品から速やかに蒸発させるために使用する

加熱槽。

3.17

滞留時間 (dwell time)   浸透液,乳化剤,除去剤又は現像剤が構成部品と接触している総経過時間。

水性現像剤及び非水性現像剤の滞留時間は,構成部品上で現像剤が乾燥してからの時間とする。

3.18

乳化剤 (emulsifier)   構成部品の表面に付着している余分な浸透液を乳化して水洗性にする液。

3.19

親水性乳化剤 (hydrophilic emulsifier)   水溶性の乳化剤。

3.20

親油性乳化剤 (lipophilic emulsifier)   油溶性であって水溶性でない乳化剤。

3.21

エッチング (etching)   化学的又は電気化学的な方法で表層部を一様に除去すること(ケミカルミリ

ングともいう。

3.22

評価 (evaluation)    指示模様を判断した後に,構成部品の合否を決定するために行う検討。

3.23

蛍光 (fluorescence)   物質が近紫外線を吸収することによって,それを吸収している間だけ放出す

る可視放射。

3.24

調達機関  (government procurement agency)    (削除)

3.25

水噴霧ノズル (hydro-air nozzle)   水と圧縮空気とを混合して吹き出すノズル。

3.26

指示模様 (indication)   浸透液がしみ出した結果として現れる模様。

3.27

工程中 (in-process)   構成部品が,最終形態になる前の製造中の段階にあること。

3.28

運用中 (in-service)   構成部品が,その意図する機能を発揮するために使用されているか,又は保管

中の状態にあること。

3.29

検査 (inspection)   浸透探傷処理工程の終了後,適切な照明の下で行う構成部品の目視検査。

3.30

判断 (interpretation)   指示模様の発生原因及びその種類を判定すること。

3.31

線状指示模様 (linear indication)   長さが幅の 3 倍以上ある指示模様。

3.32

非破壊検査施設 (NDT facility)   非破壊検査役務を提供することを業務とする機関。

3.33

浸透液 (penetrant)   表面に開口した不連続部内に入り込む能力をもっている溶液。

3.34

後乳化性浸透液  (post emulsifiable penetrant)    浸透液を水洗性にするために乳化剤を別に使用する

必要がある浸透液。


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3.35

溶剤除去性浸透液 (solvent removable penetrant)   表面に付着している余分な浸透液を,溶剤で除

去する工程に使用する浸透液。この溶剤での除去工程には,後乳化性浸透液又は水洗性浸透液も使用する

ことができる。

3.36

水洗性浸透液 (water-washable penetrant)   乳化剤を含有しているか又はその他の方法によって,水

で除去することができる浸透液。

3.37

後清浄 (postcleaning)   評価が終わった後,残留している浸透探傷剤を除去すること。

3.38

前清浄 (precleaning)   浸透探傷検査の直前に行う構成部品の清浄化。

3.39

主契約者 (prime contractor)   (削除)

3.40

欠陥指示模様 (relevant indication)   真の不連続部を示す指示模様。

参考  不連続部以外の原因によって現れる指示模様を凝似指示模様 (nonrelevant indication) という。

3.41

再処理 (reprocess)   清浄化した後,浸透液,乳化剤(必要なとき)及び現像剤(必要なとき)を再

び適用し並びに所要の処理を再実施すること。

3.42

溶剤性除去剤 (solvent remover)   表面に付着している余分な浸透液を除去するために使用する揮

発性溶剤。

4.

一般要求事項

4.1

検査の責任  契約書又は注文書で特に指示がない限り,受注者には,この規格で規定するすべての

検査要求事項を実施する責任がある。受注者は,構成部品が機能及び信頼性の要求事項を満足しているこ

とを保証するために必要とする場合には,この規格で規定する最小限の要求事項よりも厳しい要求事項を

指定しなければならない。特に指示された場合を除き,供給業者は,ここに規定する検査要求事項を実施

するのに適したものであれば,自己の設備を用いても又は他のどのような設備を利用してもよい。発注者

は,供給品及び役務が,規定の要求事項に適合していることを保証するために必要とみなす場合には,こ

の規格で定めるどのような検査をも実施する権利をもつ。

4.2

指定  この規格による検査を必要とする場合には,注文書,契約書その他の適切な文書に,構成部

品の合否を判定する基準を示さなければならない。このような基準の例を MIL-P-47158 に示してあるが,

それ以外の基準を用いてもよい。図面その他の適用文書に,構成部品全体(区域指定を行ってもよい。

)に

対する合格判定基準を示さなければならない。契約書で個別に許可しない限り,抜取検査を認めてはなら

ない。

4.3

検査員の技量認定  この規格に従って合否の決定を行う検査員は,MIL-STD-410 (JIS W 0905)  に従

い,浸透探傷検査に関して,少なくともレベル II の技量認定を取得していなければならない。この規格で

規定する探傷工程を実施する検査員は,MIL-STD-410 (JIS W 0905)  に従い,浸透探傷検査に関して,少な

くともレベル I の技量認定を取得していなければならない。レベル I の検査員がこの探傷工程を担当する

場合には,レベル II 以上の検査員の直接の監督又は監視の下で実施しなければならない。

4.4

材料

4.4.1

認定材料  浸透探傷検査には,MIL-I-25135 の規定に適合する認定材料を使用しなければならない。

MIL-I-25135

の要求事項に適合しない材料は,発注者の特別承認を得た場合に限り使用してもよい。


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W 0904-1995

4.4.2

液体酸素と両立できる材料  液体酸素でぬらされ,十分に後清浄ができない表面に対しては,

ASTM D 2512

で規定する衝撃感度試験に 95J (70lbf・ft) {9.7kgf・m}  以上で合格した浸透探傷剤を使用しな

ければならない。この浸透探傷剤の使用方法は,材料供給業者の指示書に従わなければならず,また,そ

の浸透探傷剤が MIL-I-25135 の要求事項を満足していない場合には,発注者の承認を受けなければならな

い。

4.5

装置及び設備

4.5.1

工程  浸透探傷検査工程で用いる装置は,均一な制御された操作ができるように構成し配置されて

いなければならない。装置は,この規格の要求事項だけでなく,国及び地方自治体の安全要求事項をすべ

て満足していなければならない。

4.5.2

観察  観察場所は,常に清浄に保たなければならない。染色浸透探傷検査(タイプ II)の場合には,

照明装置は,検査対象構成部品の表面に,少なくとも 1 000lx (100lm/ft

2

)

の白色光を放射するものでなけれ

ばならない。定置式蛍光浸透探傷検査(タイプ I)の場合には,周囲の背景の白色光は 20lx (2lm/ft

2

)

以下

でなければならず,また,紫外線照射装置は,紫外線フィルタ又は管球の前面から 38cm (15in) の距離で

測って,その放射照度が 800

µW/cm

2

以上となるものでなければならない。可搬式蛍光浸透探傷装置を用い

る場合の観察場所は,検査中,暗色布,写真用暗幕その他の方法を用いて背景の白色光を最低可視レベル

に下げ,しかも紫外線の強さを適切に保たなければならない。

4.6

手順書  すべての浸透探傷検査は,検査対象構成部品に対して,この規格の要求事項を履行させる

ような個々の手順書に従って実施しなければならない。検査手順は,多くの構成部品に対して類似なもの

であるから,種々の構成部品に共通な細目を記述した基本手順書を利用してもよい。個別手順書と基本手

順書とのどちらか,又はその組合せの中で,最小限,次の情報を示す必要がある。

(a)

前清浄及びエッチング工程の詳細(使用材料,乾燥諸元及び処理時間を含む。

。もし,これらの作業

を検査員以外の者が行う場合には,その作業に関する詳細を別の文書で規定してもよいが,そのとき

は,手順書の中にその文書を引用しておかなければならない。

(b)

必要とする浸透探傷剤の種類(MIL-I-25135 の分類による。

(c)

浸透探傷剤に必要なすべての処理諸元(滞留時間,適用方法,乾燥時間,濃度,温度,及び必要に応

じ浸透液の過剰乾燥又は構成部品の過熱を防止するための制御方法を含む。

(d)

検査及び評価に必要なすべての要求事項[照明の強さ(検査場所及び周囲の両方)

,合格判定基準並び

に表示(5.9 参照)の方法及び場所を含む。

(e)

その手順に従って検査する構成部品又は構成部品上の区域の指定。

(f)

後清浄に必要なすべての手順。もし,後清浄作業を検査員以外の者が行う場合には,その作業に関す

る詳細を別の文書で規定してもよいが,そのときは,手順書の中にその文書を引用しておかなければ

ならない。

4.7

検査の実施順序  最終浸透探傷検査は,表面につながる不連続部を生じさせる原因になり得る作業

が,すべて完了した後に実施しなければならない。このような作業には,研削,溶接,矯正,機械加工,

熱処理などがある。

4.7.1

表面の処理  最終浸透探傷検査は,表面を汚しはするが,それ自体は表面に不連続部を生じさせる

原因にならないような処理の前に実施してもよい。このような処理には,液体ホーニング (vapor blasting),

ばり取り,研磨,バフ研磨,サンドブラスト,ラップ仕上げ,ショットピーニングなどがある。このよう

な処理作業の後に最終浸透探傷検査を実施する場合には,その前清浄作業にエッチングを含める必要があ

る。


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4.7.2

表面被覆  最終浸透探傷検査は,塗料,プライマー,陽極処理,めっき,遮熱材などの表面皮覆を

施す前に実施しなければならない。化成皮膜については,その皮膜を施すための表面調整にエッチングが

含まれているならば,最終浸透探傷検査は,その化成皮膜を施した後に実施してもよい。クロムめっき面

は,個別に要求された場合にだけ,最終研削後に検査しなければならない。運用中の構成部品は,特に指

示がない限り,表面被覆を除去して,エッチングを行った後に検査しなければならない。

4.8

材料及び工程の制限  すべての検査要求事項に対して,すべての感度レベル,浸透探傷剤及び工程

が適用できるとは限らない。感度レベルは,意図する検査目的に対して適切なものでなければならない。

発注者が離反を承認しない限り,以下に記載する選択基準(強制又は禁止)が適用される。

(a)

フォーム a(乾式粉末)及びフォーム b(水溶性)の現像剤は,タイプ II(染色)浸透液系に使用して

はならない。ただし,このことは,MIL-I-25135 に従って,ある特定のタイプ II 浸透液系と組み合わ

せて認定されたフォーム e 現像剤の使用を禁止しようとするものではない。

(b)

タイプ II の浸透探傷検査は,航空宇宙用製品の最終受入検査に用いてはならない。さらに,タイプ II

の浸透探傷検査は,同一面に対しては,タイプ I の浸透探傷検査の前に用いてはならない。ただし,

このことは,検査した表面が,以後の工作又は成形作業で除去される場合でも,工程中検査としてタ

イプ II の浸透探傷検査を用いることを除外しようとするものではない。

(c)

タービンエンジンの重要構成部品の整備検査又はオーバホール検査は,タイプ I,方法 D(親水性乳

化剤を使用する後乳化性浸透液)の工程,及び感度レベル 3 又は 4 の浸透探傷剤だけを用いて行わな

ければならない。

(d)

現像剤を使用しない浸透探傷検査は,該当する感度レベルの要求事項を,現像剤なしで満足して,

MIL-I-25135

の認定を取得した浸透液系を使った場合に限り許される。しかし,運用中検査の場合に

は,常に現像剤を使用しなければならない。

4.9

記録  すべての浸透探傷検査の結果は,記録しなければならない。これらの記録は,すべて識別し

てファイルし,要請に応じて発注者が利用できるようにしておかなければならない。

また,記録は,検査した個々の部品又はロットを追跡できるようになっていなければならない。

検査記録は,最低限,次の事項を含んでいなければならない。

使用した個々の手順書の引用

欠陥指示模様の位置,種類及び処置

検査員の署名及び技量認定レベル並びに検査日

5.

個別要求事項

5.1

表面調整  検査しようとするすべての表面は,清浄で乾燥していて,汚れ,油脂,塗料などの被覆,

腐食生成物,スケール,金属付着物,溶接フラックス,化学残留物,その他浸透液が不連続部内に入り込

むのを妨げたり,染色性能を抑制したり,容認できない背景を生成したりする可能性がある異物が付着し

ていてはならない。個々の構成部品に対して選定した清浄化方法(エッチングを含む。

)は,除去しようと

する汚染要因物に対して適切なものであって,しかも,その構成部品又はその構成部品の意図する機能に

有害なものであってはならない。

5.1.1

溶剤による清浄化  油脂及びワックスを除去するため並びに浸透探傷検査前の最終清浄化手段と

して,溶剤による清浄化法(蒸気脱脂及び超音波洗浄を含む。

)を用いなければならない。

5.1.2

化学的清浄化  塗料,ワニス,スケール,炭素,その他溶剤による清浄化法では除去できない汚染

要因物を除去するには,化学的清浄化法を用いなければならない。


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5.1.3

機械的清浄化  溶剤による清浄化法又は化学的清浄化法では除去できないような汚れその他の汚

染要因物を除去するには,機械的清浄化法を用いなければならない。

5.1.4

エッチング  過去に実施した清浄化,表面の処理又は実際の使用によって浸透探傷検査の有効性を

低下させるような表面状態を生成している徴候が認められる場合には,特に指示がない限り,エッチング

を実施しなければならない。エッチングの工程は,検査対象構成部品の損傷を防止するように選定し,制

御しなければならない。精密公差穴,精密公差面,合せ面,その他エッチングによって,構成部品又は組

立品の機能が低下するような部位には,エッチングを行う必要はない。その面が,部品若しくは構成部品

の最終形態では残らない場合,又は最終浸透探傷検査の前にエッチングを実施する場合には,中間検査で

は,エッチングを行う必要はない。

5.2

浸透液の適用及び滞留  特に指示がない限り,構成部品の全表面を浸透液で覆わなければならない。

浸透液で覆ってはならない面は,マスキングするなどの方法で保護しなければならない。浸透液は,吹付

け,浸せき又ははけ塗りによって,所要の範囲が一様に覆われるように適用しなければならない。構成部

品,浸透液及び周囲の温度は,特に指示がない限り,すべて 4∼49℃ (40∼120°F)  の範囲内になければな

らない。

浸透液の滞留時間は,特に指示がない限り,最小 10 分間としなければならない。滞留時間中,必要があ

れば,浸透液が局部的にたまらないように,構成部品を回転させるなどして動かすこと。滞留時間が 2 時

間を超えるときは,乾燥しないように,必要に応じて浸透液を再適用しなければならない。浸透液を浸せ

き法で適用する場合には,構成部品の浸せき時間は,総滞留時間の

2

1

以下でなければならない。

5.3

浸透液の除去

5.3.1

方法 の工程  水洗性浸透液は,手動若しくは自動の水スプレーによるか又は手作業の布ぶきに

よって除去しなければならない。水に浸してかくはん(攪拌)することは,感度レベル 1 又は 2 の工程に

対してだけ行っても差し支えない。

5.3.1.1

手動スプレー  最大水圧は,275kPa (40psi) {2.8kgf/cm

2

}

,水温は 10∼38℃ (50∼100°F)  としな

ければならない。可能な場合には,スプレーノズルと部品との間を,最小 30cm (12in) 離した粗い吹付け

としなければならない。水噴霧ノズルは,感度レベル 1 又は 2 の工程に対してだけ許され,付加空気圧,

最大 172kPa (25psi) {1.75kgf/cm

2

}

で使用しなければならない。

洗浄は,過剰洗浄にならないことを保証するために,適切な照明の下で行わなければならない。洗浄時

間は,過剰洗浄を防止するよう最小限にとどめなければならない。もし,過剰洗浄になったときは,構成

部品を十分に乾燥させて再処理しなければならない。水洗後,構成部品から水を滴下させ,また,置き方

を変えたり,吸い上げたり,清浄な吸収材で吸い取ったり,ろ過した工場圧縮空気を 170kPa (25psi)

{1.73kgf/cm

2

}

未満の圧力で吹き付けたりして,局部的にたまりが残らないようにしなければならない。

5.3.1.2

自動スプレー  自動スプレー法による場合の洗浄諸元は,この規格の要求事項を満足するような

ものでなければならない。水温は 10∼38℃ (50∼100°F)  に保たなければならない。

5.3.1.3

手作業の布ぶき  糸くずがない清浄な乾燥した布又は吸収性があるタオルを用いて,余分な浸透

液をぬぐい取る。次いで,水で湿らせた布又はタオルを用いて,なおも表面に残っている浸透液を取り除

く。表面に水を大量に流しかけたり,水をたっぷり含んだ布又はタオルを用いたりしてはならない。

構成部品を適切な照明の下で調べて,

表面の浸透液が適切に除去されたことを確認しなければならない。

もし,過剰に除去されていたときは,構成部品を清浄化して再処理しなければならない。

表面は,

清浄な乾燥したタオル若しくは布で水を吸い取るか又は蒸発させて乾燥させなければならない。


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5.3.2

方法 の工程  親油性乳化剤を使用する後乳化性浸透液系は,乳化剤を適用して適当な滞留時間

を経過させた後,水に浸すか水スプレーで水洗するかして除去しなければならない。

5.3.2.1

親油性乳化剤の適用及び滞留  親油性乳化剤は,浸せき又は流しかけによって適用しなければな

らない。吹付け又ははけ塗りで適用してはならないし,また,構成部品の表面に適用している間は,かく

はんしてはならない。最大滞留時間は,特に指示がない限り,タイプ I 浸透液系に対しては 3 分間,タイ

プ II 浸透液系に対しては 30 秒間としなければならない。実際の滞留時間は,構成部品上に容認できる背

景を形成するのに必要な最小時間としなければならない。

5.3.2.2

水洗  適当な乳化剤滞留時間の後,水に浸すか水スプレーを行うかして乳化を停止させなければ

ならない。浸透液及び乳化剤の混合物を水スプレーによって除去する場合には,5.3.1 で規定する諸元を適

用する。かくはん浸せきによって水洗する場合には,浸せき時間は,乳化した浸透液を除去するのに必要

な最小時間としなければならない。

水洗後,適切な照明の下で構成部品を調べる。背景の浸透液が過剰な状態になっている構成部品は,清

浄化して再処理しなければならない。

水洗に使用する水は,乾燥したとき,構成部品上に残留物を残すような汚染要因物を含んでいてはなら

ない。水洗後,構成部品から水を滴下させ,また,置き方を変えたり,吸い上げたり,清浄な吸収材で吸

い取ったり,ろ過した工場圧縮空気を 170kPa (25psi) {1.73kgf/cm

2

}

未満の圧力で吹き付けたりして,局部

的にたまりが残らないようにする。もし,過乳化が認められたときは,構成部品を清浄化して再処理しな

ければならない。

5.3.3

方法 の工程  溶剤除去性浸透液は,まず,糸くずがない清浄な乾燥した布又は吸収性があるタ

オルを用いて,余分な浸透液をぬぐい取る。次いで,溶剤で湿らせた糸くずがない布又はタオルを用いて,

なおも表面に残っている浸透液を取り除く。構成部品の表面に溶剤を大量に流しかけたり,溶剤をたっぷ

り含んだ布又はタオルを用いたりしてはならない。

構成部品と,布又はタオルを適切な照明の下で調べて,表面の浸透液が適切に除去されたことを確認し

なければならない。もし,過剰に除去されていたときは,構成部品を清浄化して再処理しなければならな

い。

表面は,糸くずがない乾燥した布若しくはタオルで水を吸い取るか,又は蒸発させて乾燥させなければ

ならない。

5.3.4

方法 の工程  親水性後乳化剤を使用する浸透液系は,前水洗してから親水性乳化剤を適用し,

次いで後水洗を行って除去しなければならない。

5.3.4.1

前水洗  前水洗は,表面に付着している浸透液を,おおまかに取り除くのに必要な最小時間だけ

行わなければならない。水洗諸元は,5.3.1 を適用しなければならない。

5.3.4.2

親水性乳化剤の適用及び滞留  親水性乳化剤は,浸せき,流しかけ,泡立て又は吹付けによって

適用しなければならない。浸せきによって適用する場合には,濃度は,浸透液系供給業者が指定する値を

超えないようにし,しかも,体積比で 35%以下でなければならない。浸せきによる場合には,乳化剤又は

部品を緩やかに動かさなければならない。滞留時間は,浸透液を適切に除去するのに必要な最小時間とし

なければならないが,特に指示がない限り,2 分間を超えてはならない。吹付けによって適用する場合に

は,濃度は 5%を超えてはならない。


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5.3.4.3

後水洗  親水性乳化剤を適用して滞留させた後,検者対象構成部品を水洗しなければならない。

使用する水は,乾燥後に構成部品上に残留物を残す可能性がある汚染要因物を含んでいてはならない。吹

付けによる場合の水洗諸元は,5.3.1 を適用しなければならない。過剰除去の徴候があったときは,構成部

品を清浄化して再処理しなければならない。

背景の浸透液が過剰な状態になっている場合には,

親水性乳化剤の許容最大滞留時間を超えないならば,

乳化剤を追加適用(拾い塗り)して取り除いてもよい。親水性乳化剤を拾い塗りした部分は,それを適用

して滞留させた後,追加水洗する必要がある。もし,親水性乳化剤を念入りに拾い塗りしても容認できる

背景を形成しないときは,構成部品を清浄化して再処理しなければならない。手動水洗の場合には,浸透

液の適切な除去を保証するため,適切な照明を用いる必要がある。

5.4

乾燥

5.4.1

実施順序  構成部品は,乾式現像剤又は非水性現像剤を適用するときはその前に,現像剤を用いな

いときは検査前に,乾燥させなければならない。水溶性現像剤又は水懸濁性現像剤を適用する場合にも,

その前に構成部品を乾燥させるとよい。水性現像剤(水溶性及び水懸濁性)を適用した場合には,その後

で構成部品を乾燥させなければならない。

5.4.2

乾燥諸元  構成部品は,室温の下で自然乾燥させるか又は乾燥炉に入れて乾燥させなければならな

い。乾燥炉の温度は 70℃ (160°F)  以下でなければならず,また,乾燥時間は,構成部品が適切に乾燥す

るのに必要な時間を超えてはならない。構成部品は,局部的に水がたまっていたり,水溶液又は懸濁液が

たまっている状態で乾燥炉に入れてはならない。

5.5

現像  この規格の要求事項による浸透探傷検査には,特に指示がない限り,現像剤を使用しなけれ

ばならない。ただし,標準の乾式現像剤を使用しないで,MIL-I-25135 の認定を取得したタイプ I 浸透液

系は,現像剤なしで使用してもよい。現像剤を使用しない場合の浸透液の滞留時間は,最小 10 分間,最大

2

時間としなければならない。現像状態に関係なく,現像剤の最大滞留時間内に検査できなかった構成部

品は,清浄化して再処理しなければならない。

5.5.1

乾式現像剤  構成部品は,現像剤を適用する前に乾燥させなければならない。乾式現像剤は,検査

しようとする全表面に付着するような方法で適用しなければならない。乾式現像剤の滞留時間は,最小 10

分間,最大 4 時間としなければならない。余分な乾式現像剤は,滞留時間後,軽くたたいて取り除くのが

よい。

乾式現像剤は,タイプ II 浸透液系に使用してはならない。

5.5.2

非水性現像剤  構成部品は,現像剤を適用する前に乾燥させなければならない。非水性現像剤は,

吹付けだけによって適用しなければならない。タイプ I 浸透液系に対しては,現像剤は,検査しようとす

る全表面に,均一な薄い被覆を形成するように適用しなければならない。タイプ II 浸透液系に対しては,

現像剤は,浸透液の指示模様に対して,適当な色対比を与えるような,均一な白い被覆を形成するように

全表面に適用しなければならない。現像剤被覆の均一性及び厚さは,タイプ I 及びタイプ II のどちらの浸

透液系に対しても重要である。タイプ I 浸透液系の場合に,もし,現像剤被覆が厚過ぎて,金属面が完全

に隠れてしまうようならば,構成部品を清浄化して再処理しなければならない。

非水性現像剤の滞留時間は,最小 10 分間,最大 1 時間としなければならない。懸濁性がある非水性現像

剤を適用する際は,現像剤の容器を頻繁に揺り動かさなければならない。


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5.5.3

水性現像剤(水溶性及び水懸濁性)  水性現像剤は,構成部品の水洗後に適用しても,又は構成部

品が乾燥してから適用してもよい。水溶性現像剤は,特に指示がない限り,タイプ II の浸透液系又はタイ

プ I,方法 A の浸透液系に使用してはならない。水懸濁性現像剤は,特に指示がない限り,タイプ I の浸

透液系に使用してはならない。

水性現像剤は,吹付け,流しかけ又は浸せきによって適用しなければならない。適用した現像剤をこね

回してはならず,また,現像剤は,検査しようとする全表面を完全に覆っていなければならない。構成部

品は,5.4.2 の要求事項に従って,自然乾燥させるか又は乾燥炉に入れて乾燥させなければならない。水性

現像剤の滞留時間は,構成部品が乾燥してから,最小 10 分間,最大 2 時間とする。

5.6

検査  観察場所は 4.5.2 の該当要求事項を満足しなければならない。構成部品は,現像剤の最大滞留

時間内に検査し,もし,個別手順書で要求されるときは,現像剤の滞留時間中,一定時間ごとに,現像状

態をモニタしなければならない。現像剤の最大滞留時間内に検査できなかった構成部品は,清浄化して再

処理しなければならない。

5.6.1

タイプ の工程  検査員は,構成部品を検査する前に,少なくとも 1 分間暗順応させなければなら

ず,また,フォトクロミックレンズ又は永久着色レンズを使用してはならない。紫外線照射装置は,構成

部品表面に,最小 1200

µW/cm

2

の放射照度を与えるように使用し,しかも,構成部品の検査を妨げないよ

うな位置に置かなければならない。

蛍光を発するすべての部分について判断しなければならない。指示模様が現れないか又は擬似指示模様

しか示さない構成部品は,合格とする。欠陥指示模様を示す構成部品は,該当する合格判定基準に従って

評価しなければならない。背景が過剰に蛍光を発する構成部品は,

清浄化して再処理しなければならない。

5.6.2

タイプ II の工程  すべての指示模様について判断しなければならない。指示模様が現れないか又

は擬似指示模様しか示さない構成部品は,合格とする。欠陥指示模様を示す構成部品は,該当する合格判

定基準に従って評価しなければならない。背景が過剰状態になっている構成部品は,清浄化して再処理し

なければならない。

5.6.3

評価  個別手順書で許容される場合には,溶剤で湿らせた布で指示模様をぬぐい取り,その部分を

乾燥させて再現像した後,指示模様を評価してもよい。その場合の再現像時間は,最初の現像時間と同程

度としなければならない。もし,指示模様が再び現れないときは,最初の指示模様は誤りであったとみな

す。この手順は,最初に生じたどの指示模様に対しても,2 回実施してもよい。

個別手順書で許容されない限り,割れ,重なり及びしわを示す欠陥指示模様は,不合格の理由としなけ

ればならない。構成部品に対する個別の合格判定基準を超える欠陥指不模様も,不合格の理由としなけれ

ばならない。

5.6.3.1

機械作業による評価  個別検査手順書で許容される場合には,不連続部の深さ及び範囲を判定す

るため,研磨(動力又は手動)

,研削などの承認された手順によって,指示模様を除去してもよい。この機

械作業の後,その部分を清浄化し,エッチングして再検査する。再検査に用いる工程は,最初の工程と少

なくとも同程度の感度のものでなければならない。

5.7

後清浄  構成部品は,もし,現像剤その他の浸透探傷剤の残留物が,以後の作業又は構成部品の意

図する機能に有害であるならば,検査後に清浄化してそれを除去しなければならない。


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5.8

品質保証条項  この箇条は,浸透探傷剤及び浸透探傷装置が容認できる性能水準を発揮することを

保証するために必要な管理について規定する。ここで要求している点検の頻度は,1 日 1 交替の完全操業

で設備稼動することを前提にしたものである。それよりも稼動率が低い設備においては,毎日及び週 1 回

と規定した点検については,頻度を減らしてもよいが,検査前には実施しなければならない。それ以外の

頻度の点検については,全時間稼動の場合と同じ頻度で実施することが望ましい。非破壊検査施設は,こ

れらの工程管理作業を自身で実施しても,又は独立した試験所に実施を依託してもよい。

5.8.1

紫外線照射装置  すべての紫外線照射装置は,毎日及び管球交換後に,出力を点検しなければなら

ない。非破壊検査施設が,点検間隔の延長を正当とする計画書を作成して,発注者の承認を得た場合には,

それよりも長い点検間隔を用いてもよい。

容認できる最小強度は,管球又は紫外線フィルタの前面から,少なくとも 38cm (15in)  の距離で測って,

800

µW/cm

2

の放射照度が得られるものでなければならない。紫外線照射装置の反射板及び紫外線フィルタ

は,清浄で完全であるかどうかを毎日点検しなければならない。破損したり汚れている反射板又はフィル

タは交換又は是正しなければならない。

5.8.2

白色灯  染色浸透探傷装置(タイプ II)の観察場所は,週 1 回点検して,作業位置(例えば,作業

台又は机の上面)で最小 1 000lx (100lm/ft

2

)

の白色光照度があることを確認しなければならない。

5.8.3

浸透液系の性能  浸透液系は,毎日その性能を点検しなければならない。この点検は,既知欠陥標

準片を使用して行わなければならない。すなわち,その浸透液系を,該当する処理諸元で使用して既知欠

陥標準片を処理し,それで得られた欠陥指示模様を,同じ未使用の浸透液系を用いて得られた欠陥指示模

様と対比する。この対比は,以前に得られた欠陥指示模様の写真その他の記録と比較しても,又は未使用

の浸透液系を用いて処理した類似の既知欠陥標準片を使用して行ってもよい。

使用中の浸透液系の性能が,未使用の浸透液系の性能未満に低下していたときは,使用中の浸透液系の

品質を,

該当する試験で点検して,

この規格による浸透探傷検査を実施する前に是正しなければならない。

5.8.3.1

既知欠陥標準片  既知欠陥標準片の選定と保守手順とは,発注者の承認を受けなければならない。

標準片が内臓している欠陥は,浸透液系の性能が,不満足であることを実証できる能力をもつものでなけ

ればならない。保守手順は,標準片を使用しない間の清浄化が適切であること,及び標準片が使用に適さ

なくなるような物理的変化を検出できることを保証するようなものでなければならない。

5.8.4

浸透探傷剤  浸透探傷剤を使用に供する前に,それが MIL-I-25135 の要求事項に適合することを立

証しなければならない。MIL-I-25135 の規定に適合しない材料の使用は,特定用途のために MIL-I-25135

の材料が適切でない場合に限り許され,しかも,発注者の承認を受けなければならない。

作業者は,使用中のすべての浸透探傷剤の性能,色,臭気,濃度又は外観の変化に注意し,品質が劣化

しているかもしれないと思われる理由がある場合には,適切な点検及び試験を実施しなければならない。

浸透探傷検査は,浸透探傷剤の品質が,容認できるものであることが確認できた後に限り,この規格に従

って実施しなければならない。

5.8.4.1

浸透液  使用中の浸透液に対しては,以下に規定する点検を,少なくとも月 1 回実施しなければ

ならない。ただし,蛍光輝度については,最小限 3 か月に 1 回実施すればよい。性能が不満足であったと

きは,使用中の浸透液を交換するか又は是正処置をとらなければならない。

5.8.4.1.1

蛍光輝度  使用中の浸透液の蛍光輝度試験は,MIL-I-25135 に従い,未使用の浸透液の試料を,

対比基準として使って実施しなければならない。蛍光輝度の値が,未使用の浸透液の輝度の 90%未満であ

ったときは,不満足なものとする。


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5.8.4.1.2

水分含有量(方法 の浸透液だけ)  使用中の方法 A の浸透液については,ASTM D 95 に従

って水分含有量を測定しなければならない。水分が体積比で 5%を超えるときは,不満足なものとする。

5.8.4.1.3

除去性(方法 の浸透液だけ)  使用中の方法 A の浸透液については,MIL-I-25135 に従い,

未使用の浸透液の試料を,対比基準として使って除去性を試験しなければならない。除去性が対比基準よ

りも明らかに低いときは,使用中の浸透液を交換しなければならない。

5.8.4.1.4

感度  使用中の浸透液の感度は,5.8.3 の手順に従って点検しなければならない。この点検で,

乳化剤及び現像剤を必要とする浸透液系の場合には,使用中の浸透液に対して,乳化剤及び現像剤は,未

使用のものを用いる。この点検で得られた結果を,すべて未使用の浸透液・乳化剤・現像剤を用いて得ら

れた結果と対比する。使用中の浸透液の感度が,対比基準よりも明らかに低いときは,不満足なものとす

る。

5.8.4.2

乳化剤  使用中の乳化剤に対しては,以下に規定する点検を実施しなければならない。性能が不

満足であったときは,使用中の乳化剤を交換するか又は是正処置をとらなければならない。

5.8.4.2.1

除去性  使用中の乳化剤の除去性は,MIL-I-25135 に従い,週 1 回点検しなければならない。

使用中の乳化剤を未使用の浸透液に適用して,その結果を,未使用の乳化剤を未使用の浸透液に適用した

結果と対比する。使用中の乳化剤の除去性が,対比基準よりも低いときは,不満足なものとする。

5.8.4.2.2

水分含有量(親油性乳化剤)  月 1 回,ASTM D 95 に従って水分含有量を点検しなければなら

ない。水分が 5%を超えるときは,不満足なものとする。

5.8.4.2.3

濃度(親水性乳化剤)  親水性乳化剤の浸せき溶液については,週 1 回,屈折計を使用して濃

度を点検しなければならない。濃度が,未使用溶液の最初の値から 3%を超えて変化していたときは,不

満足なものとする。吹付けで適用する場合には,週 1 回屈折計を使用してスプレー濃度を点検し,その浸

透液系に対する指定濃度を超えていてはならない。

5.8.4.3

現像剤  使用中の現像剤に対しては,以下に規定する点検を,それぞれ指定するとおりに実施し

なければならない。性能が不満足であったときは,使用中の現像剤を交換するか又は是正処置をとらなけ

ればならない。

5.8.4.3.1

乾式現像剤  乾式現像剤は,毎日点検し,綿毛状にふわふわしていて固まっていないことを確

認しなければならない。固まった乾式現像剤は,不満足なものとする。繰返し使用する乾式現像剤につい

ては,その試料を,平らな面に薄く散布したとき,直径 10cm (4in) の円内に 10 個以上の蛍光点が認めら

れる場合は,不満足なものとする。

5.8.4.3.2

水性現像剤(水溶性及び水懸濁性)  水性現像剤は,毎日,蛍光性(該当するとき)及び被覆

範囲を点検しなければならない。幅約 8cm (3in),長さ約 25cm (10in)  の清浄なアルミニウムパネルを現像

剤に浸せきした後,取り出して乾燥し,紫外線照射装置(該当するとき)の下で観察する。パネルが,一

様にぬれていないとき又は蛍光が認められたときは,不満足なものとする。

また,週 1 回,浮きばかりを使用して濃度を点検し,現像剤供給業者が推奨する濃度を維持しなければ

ならない。

5.8.5

検査場所  定置式蛍光浸透探傷装置(タイプ I)を用いる場合の検査場所は,週 1 回,清浄さ,蛍

光汚染の有無及び背景上の残留白色光について点検しなければならない。背景の白色光は,20lx (2lm/ft

2

)

下でなければならず,また,検査場所は,乱雑であったり蛍光汚染があってはならない。

5.8.6

操作圧力及び温度  指示計及び制御装置は,勤務交替の始業時ごとに点検し,設定が適正であるこ

とを確認しなければならない。誤った設定値を示している指示計は,正しい設定値に調整しなければなら

ない。指示計及び制御装置は,MIL-STD-45662 に規定した間隔で校正しなければならない。


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W 0904-1995

5.9

表示  特に指示がない限り,浸透探傷検査を行って,この規格の要求事項と,契約書又は注文書の

受入要求事項とに適合していると認められた個々の構成部品には,以下に規定するとおりに表示を施さな

ければならない。表示は,構成部品又はその意図する機能に無害であって,以後の取扱いによって除去さ

れたり汚れたり読めなくなったりしないような方法で,しかもそのような場所に施さなければならない。

もし,このような表示を施しても以後の工程で除去される場合には,構成部品に添付する記録票に表示し

なければならない。

表示の方法は,以下に規定するとおりとし,その優先順位は記載順とする。表示は,MIL-STD-792 の規

定に適合しなければならない。

5.9.1

刻印  適用する仕様書又は図面で明らかに許されている場合には,刻印を用いなければならない。

表示は,部品番号又は検査印に隣接した箇所に施さなければならない。

5.9.2

エッチング  部品に刻印が許されない場合には,エッチングによって表示を施してもよい。適切な

エッチング剤を適切な方法で用いなければならない。化学的又は電気化学的以外のエッチング方法を用い

てもよい。

5.9.3

着色  エッチング又は刻印が許されない場合には,着色又はインクスタンプによって識別を施して

もよい。

5.9.4

その他の識別方法  構成部品の構造,仕上げ又は機能上の要求事項によって,エッチング,着色又

は刻印を用いることができない場合には,札を付けるなどの他の識別方法によってもよい。ボルト又はナ

ットのような品目は,包装ごとによく見えるように表示して識別してもよい。

5.9.5

記号  浸透探傷検査に合格した個々の構成部品は,次のとおり表示しなければならない。

(a)

エッチング又は刻印による場合には,記号を用いなければならない。刻印には,施設識別記号,及び

検査の年(西暦年)の下 2 けたの数字を含めてもよい。

(1)

特殊用途のものを除き,全数検査で合格したことを示すには,記号 P を用いる。

(2)

抜取検査で合格になったロットのすべての構成部品には,記号 P をだ円で囲んだ表示を施す。

(b)

着色による場合は,全数検査で合格した構成部品にはマルーン色の染料,抜取検査で合格したことを

示すには黄色の染料を用いなければならない。

6.

注記

6.1

用途  浸透探傷検査方法は,融合不良,腐食,割れ,重なり,湯境及び気孔のような,表面に開口

している不連続部を検出するためのものである。

6.2

非金属構成部品  ある種の洗浄剤,浸透液及び現像剤は,プラスチックのような非金属材料に有害

な影響を与えることがある。浸透探傷検査を行うのに先立ち,洗浄剤又は浸透探傷剤が,検査対象構成部

品に無害であることを確認するための試験を行うことが望ましい。

熱可塑性材料製の構成部品については,

高温を用いるときにも注意を払わなければならない。


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昭和 63 年度航空規格原案作成委員会  構成表

氏名

所属

(委員長)

竹  中  規  雄

日本大学理工学部

(副委員長)

播  磨  克  彦

富士重工業株式会社航空機工場

今  野  秀  洋

通商産業省機械情報産業局

飛  田      勉

工業技術院標準部

北  田  彰  良

運輸省航空局技術部

北  村      孝

海上保安庁装備技術部

石  川  安  男

防衛庁装備局

山  根  皓三郎

科学技術庁航空宇宙技術研究所

久木田  実  守

社団法人日本航空技術協会

白  浜  洋  海

日本航空株式会社技術研究所

福  西  嘉  夫

全日本空輸株式会社整備本部技術部

山  内      清

株式会社日本エアシステム整備本部技術部

藤  嶋  敏  夫

航空規格調査会

前  田  辰  三

三菱重工業株式会社名古屋航空機製作所

(主査)

足  立  三  郎

川崎重工業株式会社航空機事業本部航空機技術本部

池  山  和  生

石川島播磨重工業株式会社航空宇宙事業本部技術開

発事業部基本設計部

植  田  隆  之

住友精密工業株式会社航機技術部

本  間  邦  彦

三菱電機株式会社鎌倉製作所

鈴  木  清  造

株式会社東芝小向工場

立  石      弘

株式会社島津製作所航空機器事業部

幸  田  慶  治

横浜ゴム株式会社航空部品事業部第二技術部

(事務局)

冨  田      泉

社団法人日本航空宇宙工業会

平  島  猷  三

社団法人日本航空宇宙工業会