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W 0402-1992

(1) 

目次

ページ

1.

  適用範囲

1

1.1

  適用範囲

1

1.2

  適用

1

1.3

  飛行機の分類

1

1.4

  飛行状態カテゴリ

2

1.5

  飛行性のレベル

3

2.

  関連規格

3

3.

  要求事項

4

3.1

  一般要求事項

4

3.2

  縦の飛行性

8

3.3

  横−方向の飛行性

18

3.4

  種々の飛行性

30

3.5

  主操縦系統の特性

34

3.6

  二次操縦系統の特性

36

3.7

  大気のじょう乱

38

3.8

  じょう乱モデルの使用に関する要求事項

47

4.

  品質保証

49

4.1

  適合性の実証

49

4.2

  飛行機の状態

51

4.3

  設計及び試験の条件

51

4.4

  特殊設備における試験

59

5.

  引渡し準備

59

6.

  注記

59

6.1

  用途

59

6.2

  用語の定義

59

6.3

  表 5 の Fs/n 限界の解釈

69

6.4

  ゲインスケジュール

69

6.5

  エンジンの影響

69

6.6

  空力弾性,操縦装置及び構造振動の影響

70

6.7

  レベルの適用

70

6.8

  関連文書

70


日本工業規格

JIS

 W

0402

-1992

飛行機の飛行性

Flying qualities of piloted airplanes

1.

適用範囲

1.1

適用範囲  この規格は,飛行機の飛行中及び地上における飛行性及び操作性に対する要求事項につ

いて規定する。ただし,垂直離着陸機又は短距離離着陸機では,V

con

MIL-F-83300 参照)未満の対気速

度の飛行には適用しない。設計の手法や操縦系統の機械化には関係なく,適切に任務を遂行し飛行安全性

を与える飛行性を保証することを目的とする。この規格は,また,設計トレードオフ,解析及び試験にお

いて,これらの特性を導くために使用できるような構成となっている。

備考  この規格の中で  {  }  を付けて示してある単位及び数値は,メートル系従来単位によるもので

あって参考として併記したものである。

参考  この規格の内容は,MIL-F-8785C に相当する。

1.2

適用  提案又は契約されるすべての飛行機について,その飛行性は,この規格の条項に従わなけれ

ばならない。要求事項は,機体と関連する部分系統との組合せに対して,規定のとおり適用する。安定増

大装置や操縦性増強装置を飛行機に備えている場合には,それを含める。

また,自動操縦装置も MIL-F-9490 (JIS W 0701)  又は MIL-C-18244 のどちらかに規定する該当する範囲

まで考慮する。要求事項は,本質的に縦揺れ,偏揺れ及び横揺れのモーメントを生じさせる操縦室操作に

関する諸量を用いて記述する。この方法は,特殊な目的のために行うその他の操縦モードを除外すること

を意味するものではない。発注者は,用途や特定の設計によりよく適合させるため,追加又は代替の要求

事項を課してもよい。

1.3

飛行機の分類  この規格の目的に沿って,飛行機を次のクラスの一つに分類しなければならない。

クラス I  小形軽飛行機

例: 軽多用途機

初級練習機

軽観測機

クラス II  中級重量,低・中級運動性をもつ飛行機

例: 重多用途機,救難機

軽・中形の輸送機,貨物機,給油機

早期警戒機,電子対策機,空中司令・管制・通信中継機

対潜機

偵察機

重攻撃機

クラス II 用練習機


2

W 0402-1992

クラス III  大形,大重量,低・中級運動性をもつ飛行機

例: 大重量の輸送機,貨物機,給油機

しょう(哨)戒機,早期警戒機,電子対策機,空中司令・管制・通信中継機

クラス III 用練習機

クラス IV  高運動性飛行機

例: 戦闘機,迎撃機

戦術偵察機

観測機

クラス IV 用練習機

発注者は,飛行機をこれらのクラスの一つに指定し,そのクラスの要求事項を適用しなければならない。

クラスを指定していない要求事項は,すべてのクラスに適用しなければならない。発注者は,運用任務か

ら考えて必要とされるときは,あるクラスの飛行機に,他のクラスの飛行機に対して通常規定される要求

事項から選び出したものを満足するように要求してもよい。

1.3.1

陸上機又は艦載機の明示  クラス名の後の文字“−L”は,飛行機が陸上機であることを示し,

“−

C

”は,同様に艦載機であることを示す。要求事項にこのような区別をしていない場合は,その要求事項

は,陸上機にも艦載機にも適用しなければならない。

1.4

飛行状態カテゴリ  飛行状態は,要求事項の記述の中で引用する三つのカテゴリにまとめる。これ

らの飛行状態は,すべての任務に関連して,どのような飛行においても相前後する飛行状態間で切れ目が

なく,また,遷移が滑らかであるように考慮しなければならない。ある場合には,要求事項の中で定めた

特定の飛行状態に対して,要求事項を指示することがある。飛行状態又はカテゴリを示してない要求事項

は,三つのカテゴリ全部に適用しなければならない。ほとんどの飛行機の任務は,次の飛行状態で示され

る。

非発着時飛行状態  カテゴリ A−急激な運動,正確な追跡又は精密な飛行経路制御を要する非発着時飛行

状態。このカテゴリに入るものは,次のとおりとする。

(a)

空対空戦闘 (CO)

(b)

地上攻撃 (GA)

(c)

ウエポン投下・発射 (WD)

(d)

空中回収 (AR)

(e)

偵察 (RC)

(f)

空中給油(受給機) (RR)

(g)

地形追随 (TF)

(h)

対潜捜索 (AS)

(i)

密集編隊飛行 (FF)

カテゴリ B−精密な飛行経路制御が必要なことがあるが,通常は,緩やかな運動を行い正確な追跡なし

で達成される非発着時飛行状態。このカテゴリに入るものは,次のとおりとする。

(a)

上昇 (CL)

(b)

巡航 (CR)

(c)

ロイター (LO)

(d)

空中給油(給油機) (RT)

(e)

降下 (D)  


3

W 0402-1992

(f)

緊急降下 (ED)

(g)

緊急減速 (DE)

(h)

空中投下 (AD)

発着時飛行状態  カテゴリ C−発着時飛行状態は,通常,緩やかな運動によって達成され,普通は精密な

飛行経路制御を必要とする。このカテゴリに入るものは,次のとおりとする。

(a)

離陸 (TO)

(b)

カタパルト離陸 (CT)

(c)

進入 (PA)

(d)

ウエーブオフ,着陸復航 (WO)

(e)

着陸 (L)

必要な場合には,発注者は,飛行状態のカテゴリの変更若しくは追加又は特殊の状態(例えばズーム上

昇)に対する要求事項の作成を行う。

1.5

飛行性のレベル  3.の要求事項は,可能な限り,規定する安定性又は操縦性パラメータの三つの数値

を用いて記述した。それぞれの数値は,飛行機が設計された運用任務を達成する能力に関連する 3 段階の

合格レベルのうちの一つを満足させるための最低条件である。レベルは,次のとおりとする。

レベル 1

任務飛行状態に対して明らかに適切な飛行性。

レベル 2

任務飛行状態を達成するのに適切な飛行性であるが,操縦士の作業負担がいくらか増加する

か,若しくは任務の効果が低下するか,又はこれらの両方が起こる。

レベル 3

飛行機を安全に操縦できるような飛行性であるが,操縦士の作業負担が過大であるか,若し

くは任務の効果が不適切であるか,又はこれらの両方である。カテゴリ A の飛行状態は,

安全に終わらせることができ,カテゴリ B と C の飛行状態を完遂できる。

2.

関連規格

2.1

この規格の関連規格を次に示す。これらの規格を使用するときは最新版による。

仕様書 

Military Specification

MIL-D-8708

  Demonstration Requirements for Airplanes

MIL-A-8861

  Airplane Strength and Rigidity Flight Loads

JIS W 0607  飛行機の強度及び剛性,飛行荷重)

MIL-F-9490

  Flight Control Systems−Design, Installation and Test of, Piloted Aircraft, General

Specification for

JIS W 0701  航空機操縦系統−設計,装備及び試験通則)

MIL-C-18244

  Control and Stabilization Systems, Automatic, Piloted Aircraft, General Specification

for

MIL-F-18372

  Flight Control Systems, Design, Installation and Test of, Aircraft (General Specification

for)

MIL-W-25140

  Weight and Ballance Control Data (for Airplanes and Rotorcraft)

MIL-F-83300

  Flying Qualities of Piloted V/STOL Aircraft

MIL-S-83691

  Stall/Post−Stall/Spin Flight Test Demonstration Requirements for Airplanes


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W 0402-1992

規格 

Military Standard 

MIL-STD-756

  Reliability Prediction

3.

要求事項

3.1

一般要求事項

3.1.1

運用任務  発注者は,この規格の飛行性要求事項を満足させるように飛行機を設計する際に,受注

者が考慮すべき運用任務を指定する。これらの任務には,離陸,離陸中断,着陸及び進入復行などすべて

の関連飛行状態及び課業を含める。運用任務には,乗員の能力向上や訓練を含むように意図した運用の全

スペクトルを含める。

3.1.2

重量状態  受注者は,各飛行状態について重心とそれに対応する重量の包囲線を定めなければなら

ない。これらの包囲線には,MIL-W-25140 に定義する重心前方限界と後方限界を含めなければならない。

更に,受注者は,3.1.6.2 の故障状態で考慮すべき各飛行状態に対して,燃料使用順序制御系統やつり下げ

搭載物などのような系統や構成部品の故障によって生じる最大重心移動量を定めなければならない。これ

らの包囲線に発注者が指定する増大余裕を加えた範囲内及び上述の重心移動量に対して,この規格を適用

しなければならない。

3.1.3

慣性モーメント及び慣性乗積  受注者は,3.1.2 のすべての重量状態に関連する飛行機の慣性モー

メントと慣性乗積を定めなければならない。この規格の要求事項は,このように定めたすべての慣性モー

メントと慣性乗積に対して適用しなければならない。

3.1.4

外部搭載物  この規格の要求事項は,運用任務に必要な外部搭載物のすべての組合せに適用しなけ

ればならない。外部搭載物が飛行機の重量,慣性モーメント,重心位置及び空力特性に及ぼす影響を,各

任務飛行状態に対して考慮しなければならない。搭載物が消耗し得る荷重を含む場合は,この規格の要求

事項は,搭載物重量状態範囲全体に適用する。飛行性設計に関して考慮すべき外部搭載物及びこれら搭載

物の組合せは,発注者が指定するものとする。検討すべき外部搭載物の組合せを決定する際に,対称な組

合せとともに非対称組合せも考慮しなければならない。

3.1.5

形態  この規格の要求事項は,1.4 の該当する飛行状態で要求されるか又は遭遇するすべての形態

に適用しなければならない。ある(乗員が)選択した形態は,乗員が使用できる種々のセレクタや操作装

置(ただし,縦,横及び方向の操縦装置,並びにスロットル及びトリムの操作装置は除く。

)の設定位置や

調節によって定まる。

例: フラップ操作装置の設定位置やヨーダンパのオン又はオフ)

審査のために選択された形態は,性能と任務達成のために必要な形態で構成しなければならない。調査

すべき追加の形態は,発注者がこれを定めてもよい。

3.1.6

飛行機の状態  飛行機の状態は,飛行機の構成部品や系統のそれぞれの機能状態,スロットル設定

位置,重量,慣性モーメント,重心位置及び外部搭載物全量と共に,選択した形態によって定める。トリ

ムの設定位置と縦,横及び方向の操縦装置の位置とは,それらをしばしば要求事項で規定するので,飛行

機の状態の指定には含めない。

3.1.6.1

飛行機の正規状態  受注者は,それぞれの該当する飛行状態に関連する飛行機の正規(構成部品

や系統に故障がない。

)状態を記述するため,すべての関係項目を定め,表にしなければならない。この表

は,一定の様式とし,しかも,6.2 に規定する用語記号体系を使用しなければならない。

ある項目,例えば重量,慣性モーメント,重心位置,翼の後退角又はスラスト設定などは,ある飛行状


5

W 0402-1992

態の間に,ある範囲の値にわたり連続的に変動することがある。受注者は,この連続的変動を当該パラメ

ータの有限個の数値によって置き換えなければならない。その際,これらの数値には,それぞれ個別の状

態として取り扱われ,しかも問題になっている飛行状態中に遭遇する最も過酷な値と極値とを含めなけれ

ばならない。

3.1.6.2

飛行機の故障状態  受注者は,すべての飛行機の故障状態を定め,表にしなければならない。こ

れらの故障状態は,飛行機の構成部品や系統の 1 個以上の機能不良を想定して飛行機の正規状態を変更し

て構成する。例えば,選択した形態と実際の形態が一致しない状態などである。3.1.2 に定める重心包囲線

の外側の重心位置を生じる機能不良も含めなければならない。

故障の各モードも考慮しなければならない。

どのような飛行状態中に起こる故障も,

その後引き続くすべての飛行状態の中で考慮しなければならない。

3.1.6.2.1

飛行機の特殊故障状態  ある種の構成部品,系統又はそれらの組合せには,指定された飛行中

の故障の確率が非常に小さいものがある。したがって,これらの故障の確率は,どのような精度ででも予

測することは非常に困難なことがある。この種の特殊故障状態は,故障状態を特殊故障とみなすことの正

当性を受注者が提案し発注者が承認した場合,3.の要求事項との適合に際し考慮する必要はない。

3.1.7

運用飛行包囲線  運用飛行包囲線は,飛行機が 3.1.1 の任務を達成するために運用できなければな

らない速度,高度及び荷重倍数で示した境界を規定するものである。各適用飛行状態に対する包囲線は,

発注者の指導と承認を得て設定しなければならない。特定の指導がない場合は,受注者は,適用飛行状態

に対して

表 の代表的条件を使用しなければならない。


6

W 0402-1992

表 1  運用飛行包囲線

対気速度

高度

荷重倍数

飛 行 状
態 カ テ
ゴリ

飛行状態

n

0min

 (M

0min

)

V

0max

 (M

0max

)

h

0min

h

φmax

n

0min

n

0max

空対空戦闘 (CO)

1.4V

s

V

MAT

 MSL

戦闘上昇限度

−1.0

n

L

地上攻撃 (GA)

1.3V

s

V

MRT

 MSL

中間

−1.0

n

L

ウエポン投下・発射

 (WD)

V

range

V

MAT

 MSL

戦闘上昇限度 0.5 *(

1

)

空中回収 (AR)

1.2V

s

V

MRT

 MSL

戦闘上昇限度 0.5

n

L

偵察 (RC)

1.3V

s

V

MAT

 MSL

戦闘上昇限度

(

1

)

(

1

)

空中給油(受給機) (RR)

1.2V

s

V

MRT

 MSL

戦闘上昇限度 0.5

2.0

地形追随 (TF)

V

range

V

MAT

MSL

3 050m (10 000ft)

0

3.5

対潜捜索 (AS)

1.2V

s

V

MRT

 MSL

中間

0

2.0

A

密集編隊飛行 (FF)

1.4V

s

V

MAT

 MSL

戦闘上昇限度

−1.0

n

L

上昇 (CL)

0.85V

R/C

 1.3V

R/C

 MSL

巡航上昇限度 0.5

2.0

巡航 (CR)

V

range

V

NRT

 MSL

巡航上昇限度 0.5

2.0

ロイター (LO)

0.85V

end

 1.3V

end

 MSL

巡航上昇限度 0.5

2.0

空中給油(給油機) (RT)

1.4V

s

V

MAT

 MSL

巡航上昇限度 0.5

2.0

降下 (D)

1.4V

s

V

MAT

 MSL

巡航上昇限度 0.5

2.0

緊急降下 (ED)

1.4V

s

V

max

 MSL

巡航上昇限度 0.5

2.0

緊急減速 (DE)

1.4V

s

V

max

 MSL

巡航上昇限度 0.5

2.0

B

空中投下 (AD)

1.2V

s

200kt

MSL

3 050m (10 000ft)

0

2.0

離陸 (TO)

最小正規離陸速度

V

max

MSL

3 050m (10 000ft)

0.5

2.0

カタパルト離陸 (CT)

最小カタパルト端

対気速度

V

0min

+30kt MSL

0.5

n

L

進入 (PA)

最小正規進入速度

V

max

MSL

3 050m (10 000ft)

0.5

2.0

ウェーブオフ, 
着陸復航 (WO)

最小正規進入速度

V

max

MSL

3 050m (10 000ft)

0.5

2.0

C

着陸 (L)

最小正規着陸速度

V

max

MSL

3 050m (10 000ft)

0.5

2.0

(

1

)

*印は,運用任務に対して適当な値。

3.1.8

実用飛行包囲線  各飛行機の正規状態に対して,受注者は,発注者の承認に基づき,任務要求事項

とは別に,飛行機の限界から求められる速度,高度及び垂直加速度の組合せを示す実用飛行包囲線を設定

しなければならない。各適用飛行状態と飛行機の正規状態に対しては,実用飛行包囲線の境界は,対応す

る運用飛行包囲線と一致するか又はその外側にあり,どのような場合にも,実用飛行包囲線の境界は,運

用飛行包囲線の内側にあってはならない。実用飛行包囲線の境界は,3.1.8.13.1.8.23.1.8.3 及び 3.1.8.4

で論ずる考慮事項に基づかなければならない。

3.1.8.1

最大実用速度  各高度に対する最大実用速度,V

max

又は M

max

は,次のうちの最小のものとする。

(a)

最大許容速度

(b)

耐え難いバフェットや構造振動に遭遇する速度未満でこれに安全な余裕を取った速度。

(c)

すべての高度で V

MAT

から最大増強スラスト (MAT) で急降下(すべての角度で)を行ったときの各高

度における最大対気速度。ただし,操縦不能その他の危険な挙動又は耐え難いパフェットからの安全

な余裕を損なうことなく,また,構造限界を超えないで,平均海面 (MSL) 上 610m (2 000ft) 以上の

高度で回復ができること。

3.1.8.2

最小実用速度  各高度に対する最小実用速度,V

min

又は M

min

は,次のうちの最大のものとする。

(a) 1.1V

s


7

W 0402-1992

(b)  V

s

+10kt 等価対気速度

(c)

その速度未満では,飛行機の機首上げ縦の操縦能力とトリムが一杯でも直線定常飛行を維持するのに

十分でない速度。

(d)

緊急定格スラスト (MRT) で水平飛行が維持できる最低速度。

カテゴリ C 飛行状態に対しては,

(e)

視界の悪化又は尾翼や後部胴体が地面に接触するような極端な縦揺れ姿勢によって制限される速度。

3.1.8.3

最大実用高度  与えられた速度に対する最大実用高度 h

max

は,最大増強スラスト (MAT) による

非加速飛行において 30m/min (100ft/min)  の上昇率を維持できる最大高度とする。

3.1.8.4

実用荷重倍数  最大及び最小実用荷重倍数 (+)  ,(−)  は,いくつかの重要な高度に対して速

度の関数として設定しなければならない。特定の速度と高度で 1G 飛行するようトリムしたとき,最大(最

小)実用荷重倍数は,次のもののうち代数学的最小(最大)値とする。

(a)

正(負)の構造制限荷重倍数。

(b)

失速警報に対する揚力係数の最小許容値  (3.4.2.1.1.2)  に対応する定常荷重倍数。

(c)

縦の操縦装置が最大の機首上げ(機首下げ)位置にあるときの定常荷重倍数。

(d)

耐え難いバフェット又は構造振動に遭遇するまでに安全な余裕をもった荷重倍数。

3.1.9

許容飛行包囲線  受注者は,飛行機の運用が許容でき,しかも可能であるすべての範囲を囲み,

3.1.10.3.3

と矛盾しない許容飛行包囲線を規定しなければならない。この包囲線は,速度,高度及び荷重倍

数で境界を規定するものとする。

3.1.10

レベルの適用  1.5 に示す飛行性のレベルは,飛行機に異常な条件の下での運用を要求する可能性

があるものとして,この規格で用いる。異常は,運用飛行包囲線の外側の飛行や飛行機の構成部品の故障

やその両方の結果として起こることがある。このような異常には,3.1.10.13.1.10.3.3 に規定するとおり飛

行性の程度を落としたレベルに適合することを許容する(4.1.1 も参照)

3.1.10.1

飛行機の正規状態に対する要求事項  飛行機の正規状態  (3.1.6.1)  に対する最小要求飛行性は,

表 に示すとおりとする。

表 2  飛行機の正規状態に対するレベル

運用飛行包囲線内

実用飛行包囲線内

レベル 1

レベル 2

3.1.10.2

飛行機の故障状態に対する要求事項  飛行機に故障状態が起こった場合  (3.1.6.2)  ,3.1.10.1 に規

定するものよりも低いレベルに入る確率が十分に小さいときにだけ,飛行性の低下を許容する。発注者の

設定した間隔で,受注者は,入手できる最も正確なデータに基づいて,各飛行機の故障状態の 1 飛行当た

りの発生確率と,その故障状態が運用飛行包囲線内と実用飛行包囲線内で飛行性に及ぼす影響を決定しな

ければならない。これらの決定は,MIL-STD-756 に基づかなければならない。ただし,次の(a)(b)の仮

定をおく。

(a)

飛行機の構成部品と系統すべてが,その飛行機の設計で受注者を考慮すべき 1 飛行当たり最長運用任

務時間に等しい時間作動しているとする。

(b)

個々の故障が,考慮している飛行包囲線内で(飛行性の見地から)最も過酷と考えられる点で発生す

るとする。

これらの故障状態の確率と影響から,受注者は,一つ以上の故障により一つ以上の飛行性がレベル 2 に

落ちる 1 飛行当たりの総合確率を決定しなければならない。受注者は,また,一つ以上の飛行性がレベル

3

に落ちる確率を決定しなければならない。これらの確率は,

表 に規定する値より小さくなければなら


8

W 0402-1992

ない。

どのような場合にも,故障状態(承認された特殊故障状態を除く。

)は,どのような飛行性パラメータを

もレベル 3 の限界以下に低下させてはならない。

表 3  飛行機の故障状態に対する許容レベル

遭遇の確率

故障後許容レベル

運用飛行包囲線内

実用飛行包囲線内

故障後許容レベル 2 <10

2

/

飛行

故障後許容レベル 3 <10

4

/

飛行 <10

2

/

飛行

3.1.10.2.1

特定故障に対する要求事項  例えば推進系統や操縦系統の故障のような特定の故障の影響につ

いての要求事項は,その発生の確率のいかんにかかわらず,その特定の故障が起こったものとして満足さ

せなければならない。

3.1.10.3

例外

3.1.10.3.1

地上の運用及び発着時飛行状態  離陸,着陸及び地上走行に関するある種の要求事項は,V

s

おけるか又は地上におけるように,運用飛行包囲線,実用飛行包囲線及び許容飛行包囲線の外側の運用を

含むことがある。このような条件で要求事項を示す場合は,この条件が運用飛行包囲線内にあるものとし

て,レベルを適用しなければならない。

3.1.10.3.2

レベルを規定していない場合  運用及び実用飛行包囲線内では,特定のレベルで識別していな

いすべての要求事項は,構成部品及び系統の故障というあらゆる条件の下で満足させなければならない。

ただし,承認された飛行機の特殊故障状態は除外する(3.1.6.2.1 参照)

3.1.10.3.3

実用飛行包囲線外の飛行  構成部品又は系統のどのような故障にもかかわらず,操縦士の非常

に優れた熟練や技量がなくても,許容飛行包囲線内のすべての点から実用飛行包囲線内へ容易に,しかも

安全に復帰できなければならない。

また,大迎え角飛行,急降下特性,急降下回復装置及び危険な飛行条件に関する要求事項も,適用しな

ければならない。

3.1.11

主観的要求事項の解釈  この規格の数箇所で,好ましくない飛行特性,実際的な時間遅れ,普通の

操縦士技量及び高度の過度の損失又は速度の過大な増加などの主観的用語を使用しているが,これは絶対

的な定量的基準が不当に制限的になるところに幅をもたせるためである。このように書かれた要求事項に

適合していることを最終的に決定するのは,発注者とする(1.5 参照)

3.1.12

定量的要求事項の解釈  この規格の数値的要求事項は,一般に飛行機についての線形数学的記述で

示してある。ある種の要因(例えば,操縦系統の非線形性及び高次特性又は空力的非線形性)は,航空機

の応答を線形模型の応答とは著しく異なるものにする可能性がある。受注者は,実際の航空機の応答と最

も類似した応答をもった等価な従来形系統を定めなければならない。これによって,線形系統のパラメー

タ(振動数,減衰比及びモード位相角など)で示す 3.の数値的要求事項は,実際の高次の系統の特定モー

ドにではなく,等価な系統のパラメータに対して適用する。発注者は,等価な航空機と実際の航空機とで

応答が適切に類似しているかどうかを判定しなければならない。

3.2

縦の飛行性

3.2.1

速度に関する縦の安定性


9

W 0402-1992

3.2.1.1

縦の静安定  レベル 1 及び 2 に対しては,操縦室操縦装置を固定した状態と自由にした状態で,

飛行機がトリム状態から乱されたとき,速度が非振動的に発散する傾向があってはならない。トリム速度

の±15%又は±50kt 等価対気速度のいずれか小さい速度域で(実用飛行包囲線の境界によって制限される

場合を除く。

(a)

トリマとスロットル操作装置を乗員がトリム設定位置から動かさず,

(b)

飛行経路に垂直な 1G 加速度,及び

(c)

一定高度

の条件で,縦揺れ操だ力と縦揺れ操だ位置が速度に対して円滑に変動し,しかも局部的グラジエントが

安定しているとき,この要求事項は満足されたとみなす。

又は,もし速度に関する安定性が操縦系統によって与えられている場合には,縦揺れ操だ力と操だ角の

グラジエントが零であっても,この要求事項は,満足されたものとみなす。

レベル 3 に対しては,特定の場合に対して許される最大の不安定性に関する発注者の承認に基づいて,

この要求事項は緩めてもよい。どのような場合でも,振幅倍増に要する時間は,6 秒以上でなければなら

ない。一つ以上のその他のレベル 3 の飛行性がある場合,その特性の組合せの飛行安全性が発注者を満足

させるまで実証されない限り,縦の静不安定は許可しないものとする。

ここで安定なグラジエントとは,直線定常飛行を異なる速度で維持するのに必要な縦揺れ操だ角と操だ

力の増加分が,速度変化を生じるのに必要なそれと同じ向きにあることを意味する。すなわち,より速い

速度で飛行するためには飛行機の機首下げ操だを要し,より遅い速度で飛行するためには飛行機の機首上

げ操だを要することを意味する。また,グラジエントという用語には,対気速度に対する操だ力又は操だ

位置を示す曲線で,始動力(ブレークアウト力)範囲の部分を含めない。

3.2.1.1.1

遷音速飛行における要求緩和  飛行機の発散運動又は縦揺れ操だ力及び操だ位置の速度に対す

る傾斜の逆転があっても,それが緩やかで操縦士に好ましくないものでなければ,3.2.1.1 の要求事項は,

遷音速域では緩和してもよい。しかし,どのような場合でも,3.2.1.1 の要求事項は次のものを超えて緩和

してはならない。

(a)

レベル 1 及び 2−中央操縦かん式操縦装置に対しては,

局部的な力のグラジエントは 0.01M 当たり 13N

{1.4kgf} (3lbf)

を超えて不安定であってはならず,また,力の変化が不安定の方向に 44N {4.5kgf}

(10lbf)

を超えてはならない。操縦輪式操縦装置について対応する限界は,それぞれ 0.01M 当たり 22N

{2.3kgf} (5lbf)

と 67N {6.8kgf} (15lbf)  とする。

(b)

レベル 3−中央操縦かん式操縦装置に対しては,局部的な力のグラジエントが 0.01M 当たり 27N

{2.7kgf} (6lbf)

を超えて不安定であってはならず,また,力が不安定の方向に 89N {9.1kgf} (20lbf)  を

超えてはならない。操縦輪式操縦装置について対応する限界は,それぞれ 0.01M 当たり 44N {4.5kgf}

(10lbf)

と 130N {14kgf} (30lbf)  とする。

この要求緩和は,長時間の遷音速運用を必要とするあらゆる飛行状態において,レベル 1 に対しては適

用しない。

3.2.1.1.2

急激な速度変化中の縦揺れ操だ力の変動  出力変化,減速装置の作動並びに急旋回及び引上げ

(pull-up)

の最も厳しい組合せによって,飛行機が運用速度範囲と遷音速域において,急激に加速や減速を

したとき,関連するトリム変化の大きさと速さが非常に大きくて通常の操縦士の技量によって所望の荷重

倍数を維持することが困難であってはならない。

3.2.1.2

フゴイド安定  飛行機がじょう乱を受けた後に安定した速度状態に落ち着こうとするときに起

こる長周期速度振動は,次の要求事項を満足しなければならない。


10

W 0402-1992

(a)

レベル 1

ζ

p

≧0.04

(b)

レベル 2

ζ

p

≧0

(c)

レベル 3  T

2

≧55s

これらの要求事項は,縦の操縦装置自由及び固定の状態について適用する。これらは,3.2.1.1.1 で静安

定要求事項の緩和を許す場合,遷音速では満足させる必要はない。

3.2.1.3

飛行経路安定  飛行経路安定は,縦の操縦装置だけを使用して(乗員がスロットル設定を変えな

いで)対気速度を変える場合の飛行経路角の変化で定義する。着陸進入飛行状態に対しては,真対気速度

に対する飛行経路角の曲線は,V

0min

において負又は次のものより小さい正の局部傾斜をもたなければなら

ない。

(a)

レベル 1  0.06°/kt

(b)

レベル 2  0.15°/kt

(c)

レベル 3  0.24°/kt

スラスト設定は,V

0min

における正規の進入滑空経路に対して必要な設定でなければならない。V

0min

より

5kt

遅い速度での真対気速度に対する飛行経路角の曲線の傾斜は,図示のとおり,V

0min

における傾斜より

0.05

°/kt を超えて大きくてはならない。

3.2.2

縦の運動特性

3.2.2.1

短周期応答  ほぼ一定の速度で起こり,また,急速な縦揺れ操だ入力によって生じ得る迎え角の

短周期応答は,3.2.2.1.1 と 3.2.2.1.2 の要求事項を満足しなければならない。これらの要求事項は,操縦室

操縦装置を自由及び固定にして,運用上経験することのあるどのような大きさの応答にも適用する。振動

の振幅が非線形の場合は,

要求事項は,

振動の各周期に対して適用しなければならない。

3.2.2.1.1

と 3.2.2.1.2

の数値要求事項を満足するとともに,受注者は,飛行機が大気のじょう乱中で適切な応答特性をもつこと

を示さなければならない(3.7 と 3.8 参照)

3.2.2.1.1

短周期振動数及び加速感度  等価短周期非減衰固有振動数

ω

nsp

は,

図 1及び に示す限界内

になければならない。垂直力を直接制御する適切な手段を備えている場合,

図 

ω

nsp

と n/

αの下限は,発

注者の承認があれば,緩和してもよい。


11

W 0402-1992

図 1  短周期振動数要求事項−カテゴリ 飛行状態


12

W 0402-1992

図 2  短周期振動数要求事項−カテゴリ 飛行状態


13

W 0402-1992

図 3  短周期振動数要求事項−カテゴリ 飛行状態


14

W 0402-1992

3.2.2.1.2

短周期減衰  等価短周期減衰比

ζ

sp

は,

表 の限界内になければならない。

表 4  短周期減衰比の限界

カテゴリ A 及び C 飛行状態 カテゴリ B 飛行状態

レベル

最小

最大

最小

最大

1 0.35

1.30

0.30  2.00

2 0.25

2.00

0.20  2.00

3 0.15(

1

)

− 0.15(

1

)

(

1

)

発注者の承認があれば,6 000m (20 000ft)  を超える
高度で,軽減してもよい。

3.2.2.1.3

残留振動  静穏な大気中でのどのような持続残留振動も,飛行機の運用中に操縦士が所要の課

業 (task) を実施する能力を妨げてはならない。レベル 1 及び 2 に対しては,操縦席での±0.05G を超える

垂直加速度の振動は,どのような飛行状態に対しても過大とみなし,また,精密な姿勢制御が必要なカテ

ゴリ A 飛行状態に対して±0.17 度  (±3mil)  を超える縦揺れ振動も過大とみなす。これらの要求事項は,

縦の操縦装置を固定及び自由として適用しなければならない。

3.2.2.2

定速運動飛行時の操縦感覚及び安定性  一定速度で行う定常旋回飛行と引上げ (pullup) におい

ては,操縦装置を固定又は自由な状態で,飛行機の縦揺れ姿勢又は迎え角が非振動的に発散する傾向があ

ってはならない。前記の条件において,垂直荷重倍数と縦揺れ角速度の変化を維持するのに必要な操だ力

と操縦装置の変位の増加分は,この変化を起こすのに必要な向きと同じ向き(後向きで正,前向きで負と

する。

)になければならない。この要求事項は,3.1.8.4 で規定した実用荷重倍数までの範囲にわたり,すべ

ての局部グラジエントに適用する。

3.2.2.2.1

運動飛行時の操だ力  一定速度の定常旋回飛行,引上げ及び押下げ (pushover) において,定常

垂直加速度に対する縦揺れ操だ力の変動には,次の荷重倍数範囲内で好ましくない非線形性があってはな

らない。

クラス

最小

最大

I

,II 及び III 0.5

IV 0

0.5 [n

0

(

+)  +1]  又は 3 の

どちらか小さい方

この範囲の外側では,局部グラジエントと運動中の平均グラジエントとの差が後者の 50%を超える場合

は,線形性からのずれが過大であるとみなす。ただし,0.85n

L

より大きい荷重倍数では,力のグラジエン

トは,より大きく増加してもよい。すべての力の局部グラジエントは,

表 の限界内になければならない。

更に,高振動数と低減衰の組合せに対して,F

s

/n

z

は,

表 のレベル 1 の上部限界近くにあるのがよい。グ

ラジエントという用語には,力対 n

z

の曲線で始動力(ブレークアウト力)内の部分を含めない。

サイドスティック式操縦装置に対して容認できる力のグラジエントの範囲は,操縦装置の変位グラジエ

ントと実施すべき課業 (task) とに関連して変動するので,受注者は,操だ力グラジエントが適切な飛行性

をもたらすものであることを示さなければならない。


15

W 0402-1992

表 5  縦揺れ運動操だ力グラジエント限界 

操縦かん式操縦装置

最大グラジエント  (F

s

/n)

max

最小グラジエント  (F

s

/n)

min

レベル

÷

ø

ö

ç

è

æ

þ

ý

ü

î

í

ì

G

lbf

G

kgf

G

N

÷

ø

ö

ç

è

æ

þ

ý

ü

î

í

ì

G

lbf

G

kgf

G

N

1

÷

ø

ö

ç

è

æ

þ

ý

ü

î

í

ì

α

α

α

/

240

/

109

/

070

1

n

n

n

,

ただし

120 {13} (28.0)

以下か

÷÷ø

ö

ççè

æ

þ

ý

ü

î

í

ì

1

56

1

25

1

250

L

L

L

n

n

n

以上(

1

)

÷÷ø

ö

ççè

æ

þ

ý

ü

î

í

ì

1

21

1

5

.

9

1

93

L

L

L

n

n

n

及び 13 {1.4} (3.0) のう

ち大きい方

2

÷

ø

ö

ç

è

æ

þ

ý

ü

î

í

ì

α

α

α

/

360

/

160

/

600

1

n

n

n

,

ただし

190 {19} (42.5)

以下か

÷÷ø

ö

ççè

æ

þ

ý

ü

î

í

ì

1

85

1

39

1

380

L

L

L

n

n

n

以上(

1

)

÷÷ø

ö

ççè

æ

þ

ý

ü

î

í

ì

1

18

1

2

.

8

1

80

L

L

L

n

n

n

及び 13 {1.4} (3.0) のう

ち大きい方

3

250 {25.4} (56.0)

÷÷ø

ö

ççè

æ

þ

ý

ü

î

í

ì

1

12

1

4

.

5

1

53

L

L

L

n

n

n

及び 8.9 {0.91} (2.0)  のう

ち大きい方

(

1

)  n

L

<3

に対して,  (F

s

/n)

max

は,レベル1では120 {13} (28.0)  ,レベル2では190 {19} (42.5)  とする。

操縦輪式操縦装置

最大グラジエント  (F

s

/n)

max

最小グラジエント  (F

s

/n)

min

レベル

÷

ø

ö

ç

è

æ

þ

ý

ü

î

í

ì

G

lbf

G

kgf

G

N

÷

ø

ö

ç

è

æ

þ

ý

ü

î

í

ì

G

lbf

G

kgf

G

N

1

÷

ø

ö

ç

è

æ

þ

ý

ü

î

í

ì

α

α

α

/

500

/

230

/

200

2

n

n

n

,

ただし

530 {54} (120.0)

以下か又は

÷÷ø

ö

ççè

æ

þ

ý

ü

î

í

ì

1

120

1

54

1

530

L

L

L

n

n

n

以上

÷÷ø

ö

ççè

æ

þ

ý

ü

î

í

ì

1

35

1

16

1

160

L

L

L

n

n

n

及び 27 {2.7} (6.0) のう

ち大きい方

2

÷

ø

ö

ç

è

æ

þ

ý

ü

î

í

ì

α

α

α

/

775

/

352

/

450

3

n

n

n

,

ただし

810 {83} (182.0)

以下か又は

÷÷ø

ö

ççè

æ

þ

ý

ü

î

í

ì

1

182

1

83

1

810

L

L

L

n

n

n

以上

÷÷ø

ö

ççè

æ

þ

ý

ü

î

í

ì

1

30

1

14

1

130

L

L

L

n

n

n

及び 27 {2.7} (6.0) のう

ち大きい方

3

1070 {109} (240.0)

22 {2.3} (5.0)

3.2.2.2.2

運動飛行時の操縦装置の動き  すべての種類の縦の操縦装置に対しては,運動飛行における操

縦装置の動きは,好ましくないほどに大き過ぎたり小さ過ぎたりしてはならない。カテゴリ A 飛行状態に

ついては,一定速度での縦の操縦装置変位の単位長さ当たりの縦揺れ操だ力平均グラジエントは,レベル

1

及び 2 に対して,操縦輪式及び中央操縦かん式操縦装置では 8.8N/cm {0.89kgf/cm} (5lbf/in)  以上,サイド

スティック式操縦装置では 1 度当たり 8.9N {0.91kgf} (2lbf)  以上でなければならない。


16

W 0402-1992

3.2.2.3

縦の操縦士誘起振動 (PIO)   操縦士誘起振動 (PIO) ,すなわち,操縦士が飛行機を操縦しよう

とする努力の結果生じる操縦意図に反した持続振動又は制御不能な振動の傾向があってはならない。機体

と操縦系統とを組み合わせた系の縦揺れ姿勢の動的応答は,縦揺れ運動振幅,縦揺れ角速度又は垂直加速

度によって急激に変化してはならない。ただし,これが PIO を生じないことを示すことができるときは,

この限りではない。どのような実用荷重倍数から始まっても,飛行機の予想されるすべての運動振幅と振

動数について,3.2.2.3.1 と 3.2.2.3.2 の要求事項を満足させなければならない。

3.2.2.3.1

運動飛行時の動的操だ力  縦揺れ操だ力に対する操縦士席での垂直加速度の周波数応答は,

1.0rad/s

を超えるすべての角振動数に対して,応答の逆数の大きさが次の値より大きくなければならない。

単位は 1G 当たり N {kgf} (lbf)  とする。

レベル 1

レベル 2

レベル 3

片手操縦装置

÷÷ø

ö

ççè

æ

þ

ý

ü

î

í

ì

1

14

1

4

.

6

1

62

L

L

L

n

n

n

÷÷ø

ö

ççè

æ

þ

ý

ü

î

í

ì

1

12

1

4

.

5

1

53

L

L

L

n

n

n

÷÷ø

ö

ççè

æ

þ

ý

ü

î

í

ì

1

8

1

6

.

3

1

36

L

L

L

n

n

n

両手操縦装置

÷÷ø

ö

ççè

æ

þ

ý

ü

î

í

ì

1

30

1

14

1

130

L

L

L

n

n

n

÷÷ø

ö

ççè

æ

þ

ý

ü

î

í

ì

1

25

1

11

1

110

L

L

L

n

n

n

÷÷ø

ö

ççè

æ

þ

ý

ü

î

í

ì

1

17

1

7

.

7

1

76

L

L

L

n

n

n

3.2.2.3.2

操縦感覚  操縦士操縦装置の変位は,操縦士操縦入力の周波数範囲全域にわたり,操だ力に先

行してはならない。更に,急激な運動中に発生した縦揺れ操だ力のピーク値は,好ましくないほどに軽く

てはならず,また,運動開始時の操だ力の立ち上がりは,垂直加速度の立ち上がりより先行しなくてはな

らない。

3.2.3

縦の操縦性

3.2.3.1

非加速飛行時の縦の操縦性  すべての実用高度での直線非加速飛行において,V

s

と V

max

の間のす

べての速度の達成が縦の操縦能力によって制限されてはなら s ない。

3.2.3.2

運転飛行時の縦の操縦性  運用飛行包囲線内では,縦揺れ操縦だけで,次の範囲の荷重倍数を得

ることが可能でなければならない。

レベル 1 及びレベル 2 n

0

 (

−)  ∼n

0

 (

+)

レベル 3

n=0.5G から次の小さい方

(a)

  n

0

 (

+)

 2.0,

n

0

 (

+)  ≦3G に対し

(b)

n

= 0.5

[n

0

 (

+)  +1]  ,  n

0

 (

+) >3G に対し

この運動能力は,1G トリム速度,及びトリムとスロットル設定を乗員が変更しない状態でトリム速度の

前後の±15%又は±50kt 等価対気速度のどちらか小さい方の範囲で(運用飛行包囲線の境界によって制限

される場合を除く。

)要求する。実用及び許容飛行包囲線内では,それぞれ 3.2.3.5 と 3.2.3.6 の急降下回復

要求事項を満足させなければならない。

3.2.3.3

離陸時の縦の操縦性  縦の操縦能力は,飛行機の離陸性能を制限してはならず,更に離陸中に望

ましくない過大な機首上げ姿勢を防止するのに十分なものでなければならない。満足な離陸は,離陸中の

トリムの操作や操縦士による複雑で巧みな操縦操作に依存してはならない。前輪式飛行機に対しては,

0.9V

min

において,V

min

での離陸が行える縦揺れ姿勢を得ることが可能でなければならない。尾輪式飛行機

に対しては,クラス I 飛行機に関しては 0.5V

s

での,クラス II,III 及び IV 飛行機に関しては V

s

での水平ス

ラスト線の姿勢までのどのような縦揺れ姿勢も維持できなければならない。これらの要求事項は,硬い表

面をもつ滑走路上で満足させなければならない。飛行機に未舗装飛行場から運用される任務要求事項をも

たせる場合には,これらの要求事項は,そのような飛行場で満足させなければならない。


17

W 0402-1992

3.2.3.3.1

カタパルト離陸時の縦の操縦性  カタパルト離陸用に設計された飛行機においては,縦の操縦

能力は,最小安全発進速度  (minimum safe launching speed)  からそれより 30kt 速い発進速度までの範囲の速

度でのカタパルト離陸において,飛行機が望ましくない姿勢にまでピッチアップ又はピッチダウンするの

を抑えるのに十分なものでなければならない。満足なカタパルト離陸は,操縦士による複雑で巧みな操縦

操作に依存してはならない。

3.2.3.3.2

離陸時の縦の操だ力及び操だ量  トリムを所定の位置に設定した状態で,カタパルト又は補助

ロケットによるような短距離離陸及び補助離陸を含み飛行機が設定されたすべての種類の離陸中に必要な

縦揺れ操だ力は,次の限界内になければならない。

前輪式及び自転車式着陸装置付き飛行機

クラス I,IV-C

……

引き

89N {9.1kgf} (20lbf)

押し

44N {4.5kgf} (10lbf)

クラス II-C,IV-L

……

引き

130N {14kgf} (30lbf)

押し

44N {4.5kgf} (10lbf)

クラス II-L,III

……

引き

220N {23kgf} (50lbf)

押し

89N {9.1kgf} (20lbf)

尾輪式飛行機

クラス I,II-C,IV

……

引き

89N {9.1kgf} (20lbf)

押し

44N {4.5kgf} (10lbf)

クラス II-L,III

……

引き

160N {16kgf} (35lbf)

押し

67N {6.8kgf} (15lbf)

これらの離陸中の縦揺れ操だ量は,ストッパからストッパまでの全操だ量の 75%を超えてはならない。

ここで離陸という用語には,地上滑走,ローテーション及びリフトオフ,それに続く V

max

 (TO)

までの加

速並びに補助推力の停止によって生じる過渡現象を含む。離陸出力は,V

0min

 (TO)

から V

max

 (TO)

までの速

度で着陸装置と高揚力装置を正規の方法で引き込んで,V

max

 (TO)

に達するまで維持しなければならない。

3.2.3.4

着陸時の縦の操縦性  縦の操縦装置は,地上に近い所の着陸飛行状態で十分に有効で,静穏な大

気中で,

(a)

水平飛行で幾何学的制限接地姿勢を保持できるか,又は

(b)

  V

s

 (L)

又は保証着陸速度のどちらか低い方の速度を得ることができなければならない。

この要求事項は,

進入飛行状態で推奨進入速度にトリムした飛行機について満足させなければならない。

3.2.3.4

と 3.2.3.4.1 の要求事項は,レベル 1 及び 2 に対して規定し,また,3.4.10 の要求事項は,レベル 3

に対して規定する。

3.2.3.4.1

着陸時の縦の操だ力  3.2.3.4 の要求事項を満足させるのに必要な縦揺れ操だ力は,引きの力で

あって,次の値を超えてはならない。

クラス I,II-C,IV

………

160N {16kgf} (35lbf)

クラス II-L,III

………

220N {23kgf} (50lbf)


18

W 0402-1992

3.2.3.5

急降下時の操だ力−実用飛行包囲線内  実用飛行包囲線内のあらゆる速度で水平飛行にトリム

された飛行機については,実用飛行包囲線内の内側のすべての到達可能な速度へ急降下する場合の操だ力

は,中央操縦かん式操縦装置に対しては押しで 220N {23kgf} (50lbf)  又は引きで 44N {4.5kgf} (10lbf)  ,操

縦輪式操縦装置に対しては押しで 330N {34.0kgf} (75lbf)  又は引きで 67N {6.8kgf} (15lbf)  を超えてはなら

ない。同じような急降下ではあるが急降下に入った後にトリムを取り直したときは,通常の操縦技量で,

中央操縦かん式操縦装置に対しては押し又は引きで 44N {4.5kgf} (10lbf)  ,操縦輪式操縦装置に対しては押

し又は引きで 89N {9.1kgf} (20lbf)  の限界内に力を維持できなければならない。

トリム系統を操作するとき操縦輪の操作から片手を放す必要がある場合は,力の限界は,中央操縦かん

式操縦装置に対するものと同じでなければならない。これらの急降下からの回復に要する力は,速度が引

き起こし中に変わっても,3.2.2.2.1 に規定するグラジエントに従わなければならない。

3.2.3.6

急降下時の縦の操だ力−許容飛行包囲線内  V

MAT

での水平飛行にトリムされていたが急降下に

おいてトリムを取り直した飛行機が,許容飛行包囲線の内側ですべての到達可能な速度へ急降下する場合,

縦揺れ操だ力は押しで 220N {23kgf} (50lbf)  又は引きで 160N {16kgf} (35lbf)  の限界内に保持できなければ

ならない。これらの急降下からの回復に要する力は,530N {54kgf} (120lbf)  を超えてはならない。トリム

や減速装置などは,通常の操縦技量以上の技量を必要としないときは,回復のための補助として使用して

もよい。

3.2.3.7

横滑り時の縦の操縦性  横滑りがない直線水平飛行をするようにトリムされた飛行機に関して

は,どちらの方向にも 220N {23kgf} (50lbf) までのペダル力での定常横滑りを行ったときに一定速度を保

持するのに要する縦揺れ操だ力は,垂直加速度が 1G の変化を生じるような縦揺れ操だ力を超えてはなら

ない。しかし,どのような場合にも,縦揺れ操だ力は,次の値を超えてはならない。

中央操縦かん式操縦装置  ………

引きで 44N {4.5kgf} (10lbf)  ,

押しで 13N {1.4kgf} (3lbf)

操縦輪式操縦装置

………

引きで 67N {6.8kgf} (15lbf)  ,

押しで 44N {4.5kgf} (10lbf)

横滑りによる縦揺れ操だ力の変動があるときは,横滑りの増加に伴い引く力が増加し,しかも,力の変

化の大きさと方向が右横滑りと左横滑りで同様であることが望ましい。これらの要求事項は,レベル 1 及

び 2 に対して規定する。レベル 3 に対しては,上記の横滑りに伴う制御できない縦揺れ運動があってはな

らない。

3.3

横−方向の飛行性

3.3.1

横−方向モードの特性

3.3.1.1

横−方向振動(ダッチロール)  偏揺れじょう乱入力の結果として起こる横−方向振動の振動数

ω

nd

と減衰比

ζ

d

は,

表 に示す最小値より大きくなければならない。この要求事項は,運用上経験すること

があるどのような大きさの振動においても,操縦室操縦装置を固定及び自由にした状態で,トリムされた

飛行と運動飛行とにおいて満足させなければならない。振動が振幅に関して非線形のときは,この要求事

項は,振動の各周期に対して適用しなければならない。静穏な大気中で,残留振動は,振幅が十分に小さ

くて揺れが不快なものでなく,しかも,任務遂行を妨げるほどではないときだけ許容してもよい。カテゴ

リ A 飛行状態に対しては,角度の偏差は±0.17 度  (±3mil)  未満でなければならない。


19

W 0402-1992

表 6  最小ダッチロール振動数及び減衰比

飛行性
レベル

飛行状態 
カテゴリ

飛行機の

クラス

最小

ζ

d

(

1

)

最小

ζ

d

ω

nd

(

1

)

rad/s

最小

ω

nd

rad/s

A

(CO 及び GA) IV

0.4

− 1.0

I, IV

0.19

0.35

1.0

A

II, III

0.19

0.35

0.4(

2

)

B

全部 0.08  0.15  0.4(

2

)

I, II-C, IV

0.08

0.15

1.0

1

C

II-L, III

0.08

0.10

0.4(

2

)

2

全部

全部 0.02  0.05  0.4(

2

)

3

全部

全部 0

− 0.4(

2

)

(

1

)

支配的減衰要求事項は,

ζ

d

のより大きい値が得られる方とする。ただし,クラ

ス III に対しては,

ζ

d

=0.7が要求する最大値である。

(

2

)

クラス III の飛行機では,3.3.23.3.2.4.13.3.5 及び 3.3.9.4 の要求事項を満足し

ているときは,発注者の承認に従って,最小

ω

nd

の要求事項を除外してもよい。

ω

2

nd

|

φ

/

β

|

d

が 20 (rad/s)

2

を超えるときには,

ζ

d

ω

nd

の最小値は,上記の

ζ

d

ω

nd

の最小値より次の値だけ大きな

値を適用する。

レベル 1

………

∆ζ

d

ω

nd

=0.014 (

ω

2

nd

|

φβ

|

d

−20)

レベル 2

………

∆ζ

d

ω

nd

=0.009 (

ω

2

nd

|

φβ

|

d

−20)

レベル 3

………

∆ζ

d

ω

nd

=0.005 (

ω

2

nd

|

φβ

|

d

−20)

3.3.1.2

ロールモード  ロールモードの時定数

τ

R

は,

表 に示す該当値以下でなければならない。

表 7  最大ロールモード時定数(秒)

レベル

飛行状態 
カテゴリ

クラス

1 2 3

I, IV

1.0

1.4

A

II, III

1.4

3.0

B

全部 1.4

3.0

I, II-C, IV

1.0

1.4

C

II-L, III

1.4

3.0

10

3.3.1.3

スパイラル安定性  スパイラル安定性,操縦系統の特性及び速度に伴う横揺れモーメントの変化

の連成した影響は,20°までのバンク角のじょう乱を受けた後バンク角が 2 倍となる時間は,

表 に示す

値を超えなければならない。この要求事項は,操縦装置を自由にして,翼が水平で偏揺れ角速度が零の飛

行にトリムした飛行機で満足させなければならない。

表 8  スパイラル安定性−振幅が 倍となるまでの最小時間

飛行状態カテゴリ レベル 1

レベル 2

レベル 3

A

及び C 12s

8s 4s

 B

20s

8s

4s

3.3.1.4

ロール−スパイラル連成振動  穏やかな運動を超えた運動(例えば,CO や GA)を含む飛行状態

に対して,飛行機の特性は,操縦士の横揺れ操だに応答してロール−スパイラル連成モードを示すもので

あってはならない。角振動数と減衰比の積が次の要求値を超えるときは,カテゴリ B 及び C 飛行状態に対

して,ロール−スパイラル連成モードを許容する。

レベル

ζ

RS

ω

nRS

, rad/s

1 0.5

2 0.3


20

W 0402-1992

3 0.15

3.3.2

横−方向動応答特性  横−方向動応答特性は,大気のじょう乱に対する応答,並びに左右両方向へ

の指定した横揺れ及び旋回運動中に起こる許容横揺れ角速度及びバンク角振動,横滑り量,横揺れ操だ力

及び偏揺れ操だ力で表す。3.3.2.23.3.2.3 及び 3.3.2.4 の要求事項は,3.3.4 と 3.3.4.1 の横揺れ性能要求事項

を満足させるのに必要な大きさまでのすべての大きさの横揺れ操だに適用する。

3.3.2.1

大気じょう乱に対する横−方向の応答

ω

nd

,

ζ

d

,

τ

R

, |

φ

/

β

|

d

,

p/

β

,突風応答感度及び操縦系統の非

線形性が,大気じょう乱中における応答と操縦性の特性に与える複合的影響を考慮しなければならない

3.8.3 参照)

。特に,横滑りにより大きい横揺れモーメントを発生するような飛行機に関しては,横突風

に対する横揺れ角加速度,横揺れ角速度及び横揺れ角の応答を調査しなければならない。

3.3.2.2

横揺れ角速度の振動  方向の操縦装置自由で横揺れステップ操だの後,生じる横揺れ角速度は,

最初のピークの次の最初の最小値において最初のピークの横揺れ角速度と同じ符号で,しかも次の百分率

以上でなければならない。

レベル

飛行状態カテゴリ

百分率

1 A

及び C 60

 B 25

2 A

及び C 25

 B 0

すべてのレベルに対して,バンク角の変化は,横揺れ操だと同じ方向になければならない。横揺れ操だ

は,バンク角が少なくとも 90°変化するまで固定したままでなければならない。

3.3.2.2.1

小入力に対する横揺れ角速度の追加要求事項  方向の操縦装置自由で横揺れステップ操だを行

った後のパラメータ

av

osc

P

P

の値は,レベル 1 及び 2 に対して

図 に示す限界内になければならない。この要求

事項は,1.7T

d

秒の間に 60°のバンク角変化を生じさせる大きさまでの横揺れステップ操だに適用する。

図 4  横揺れ角速度振動限界


21

W 0402-1992

3.3.2.3

バンク角の振動  方向の操縦装置自由で横揺れインパルス操だを行った後のパラメータ

av

osc

φ

φ

の値

は,レベル 1 及び 2 に対して

図 に示す限界内になければならない。インパルスは,操縦士の力の限界内

及び横の操縦系統の操だ速度限界内で可能な限り急激なものでなければならない。

図 5  バンク角振動限界

3.3.2.4

横滑り  方向の操縦装置自由で横揺れステップ操だを行った後,横滑り角の増加分

∆β

のパラメー

タ K6.2.6 参照)に対する比は,ここに規定する値より小さくなければならない。横揺れ操だは,バンク

角が少なくとも 90°変化するまで固定したままでなければならない。

逆横滑り

順横滑り

レベル

飛行状態

カテゴリ

右横揺れ操だで 
右横滑りを起こす

右横揺れ操だで 
左横滑りを起こす

A 6

°

2

°

1

B

及び C 10°

3

°

2

全部 15°

4

°

3.3.2.4.1

小入力に対する横滑りの追加要求事項  方向の操縦装置自由で横揺れステップ操だを行った後

の横滑りの大きさは,レベル 1 及び 2 に対して,

図 に示す限界内になければならない。この要求事項は,

T

d

又は 2 秒のどちらか長い方の時間内に,60°のバンク角変化を生じる大きさまでの横揺れステップ操だ

に適用しなければならない。


22

W 0402-1992

図 6  横滑り量限界

3.3.2.5

横揺れ時の横滑りの制御  3.3.4 に示す横揺れ運動において,ただしすべてのクラスの飛行機に対

して釣り合わせ操だを許した上で,方向操縦能力は,クラス IV の飛行機では飛行状態カテゴリ A,レベル

1

で 220N {23kgf} (50lbf) ,その他のすべてのクラス,飛行状態カテゴリ及びレベルの組合せでは 440N

{45kgf} (100lbf)

以下のペダル力で,横滑りを零に保持するのに適切なものでなければならない。

3.3.2.6

釣合い旋回  クラス IV の飛行機ではバンク角 60°,クラス I 及び II の飛行機ではバンク角 45°,

並びにクラス III の飛行機ではバンク角 30°をとり,ペダル力は 180N {18kgf} (40lbf)  を超えないで,いず

れの方向にも定常釣合い旋回を保持できなければならない。

また,同じバンク角で,方向の操縦装置自由で,横揺れ操縦かん操だ力が 22N {2.3kgf} (5lbf)  を超えな

いで又は横揺れ操縦輪操だ力が 44N {4.5kgf} (10lbf)  を超えないで,定常旋回が可能でなければならない。

これらの要求事項は,主翼水平直線飛行にトリムした飛行機について,レベル 1 及び 2 の飛行性を定める

ものである。

3.3.3

操縦士誘起振動 (PIO)   操縦士が飛行機を操縦しようとする努力の結果生じる操縦意図に反した

持続振動又は制御できない横−方向振動を生じる傾向があってはならない。

3.3.4

横揺れ操縦能力  与えられた時間でのバンク角の変化

φ

t

で表した横揺れ性能を,クラス I とクラス

II

の飛行機については

表 9a,クラス IV の飛行機については 3.3.4.1 及びクラス III の飛行機については 3.3.4.2

に規定する。バンクした状態の飛行からの横揺れに対しては,初期条件は釣合い,すなわち,横加速度が

零でなければならない。この要求事項は,特に指示がある場合を除き,定常バンク角からと水平飛行から

の両方で始まった左右への横揺れ操だに適用する。入力は,急激なものでなければならない。

また,時間は,操だ力を加え始めたときから測定する。縦の操縦装置は,運動全体を通じて固定してお

かなければならない。レベル 1 のクラス IV の飛行機,並びにカテゴリ C 飛行状態にあるレベル 1 及び 2

のすべての艦載機に対して方向の操縦ペダルは,自由にしておかなければならない。しかし,他方,方向

の操縦ペダルの入力が単純で,横揺れ操縦入力と容易に調和し,しかもその飛行機のクラスと任務とに要

する操縦技量と矛盾しないときは,横揺れ角速度を阻害する横滑りを減ずるために,方向の操縦ペダルを

使用してもよい(ただし,横揺れ角速度を増大するような横滑りは起こしてはならない。

。飛行状態が TO

(離陸)のときは,バンクに要する時間は,最大認可着陸重量までの重量に対して,離陸時の横揺れ慣性

モーメントと着陸時の最大横揺れ慣性モーメントとの比に比例して増加してもよい。


23

W 0402-1992

表 9a  クラス 及び II の飛行機の横揺れ性能 

次のバンク角変化を達成するのに要する時間(秒)

カテゴリ A

カテゴリ B

カテゴリ C

クラス

レベル

60

°

45

°

60

°

45

°

30

°

25

°

I

1  1.3  1.7  1.3

I

2  1.7  2.5  1.8

I

3  2.6  3.4  2.6

II

−L

1

 1.4  1.9

1.8

II

−L

2

 1.9  2.8

2.5

II

−L

3

 2.8  3.8

3.6

II

−C

1

 1.4  1.9  1.0

II

−C

2

 1.9  2.8  1.5

II

−C

3

 2.8  3.8  2.0

3.3.4.1

クラス IV の飛行機の横揺れ性能  クラス IV の飛行機について

φ

t

で表した横揺れ性能を,

表 9b

に規定する。追加又は代替の横揺れ性能要求事項を,3.3.4.1.1 と 3.3.4.1.2 に規定する。この要求事項は,

表 9b に優先させる。クラス IV の飛行機の横揺れ性能は,次の対気速度範囲で規定する。

速度範囲

等価対気速度範囲

記号

レベル 1 に対して

レベル 2 及び 3 に対して

VL

V

0min

≦V<V

min

+20kt

V

min

≦V≦V

min

+20kt

L

V

min

+20kt(

1

)

V<1.4V

min

V

min

+20kt≦V<1.4V

min

M 1.4V

0min

≦V<0.7V

max

(

2

)

 1.4V

min

≦V<0.7V

max

H 0.7V

max

(

2

)

≦V≦V

0max

 0.7V

max

≦V≦V

max

(

1

)

又は V

0min

のどちらか大きい方

(

2

)

又は V

0max

のどちらか小さい方

表 9b  クラス IV の飛行機の横揺れ性能 

次のバンク角変化を達成するのに要する時間(秒)

カテゴリ A

カテゴリ B

カテゴリ C

レベル

速度範囲

30

° 50° 90° 90° 30°

VL 1.1

2.0

1.1

L 1.1     1.7

1.1

M

1.3 1.7  1.1

1

H

1.1

  1.7  1.1

VL 1.6

2.8

1.3

L 1.5     2.5

1.3

M

1.7 2.5  1.3

2

H

1.3

  2.5  1.3

VL 2.6

3.7

2.0

L 2.0     3.4

2.0

M

2.6 3.4  2.0

3

H

2.6

  3.4  2.0

3.3.4.1.1

飛行状態 CO における横転性能  飛行状態 CO にあるクラス IV の飛行機の横転性能は,1G で

開始した 360°横転については

φ

t

で表して

表 9c に,また,0.8n

0

 (

−)  と 0.8n

0

 (

+)  の間の荷重倍数で開始し

た横転については

表 9d に規定する。


24

W 0402-1992

表 9c  飛行状態 CO の横転性能(360°横転) 

次のバンク角変化を達成するのに要する時間(秒)

レベル  速度範囲

30

° 90° 180°

360

°

VL

1.0

 

L

  1.4 2.3 4.1

M

  1.0 1.6 2.8

1

H

  1.4 2.3 4.1

VL

1.6

 

L

1.3

 

M

  1.3 2.0 3.4

2

H

  1.7 2.6 4.4

VL

2.5

 

L

2.0

 

M

1.7

3.0

3

H

2.1

表 9d  飛行状態 CO の横転性能

次のバンク角変化を達成するのに要する時間(秒)

レベル  速度範囲

30

° 50° 90° 180°

VL

1.0

 

L

1.1

M

1.1

2.2

1

H

1.0

VL

1.6

 

L

1.3

 

M

1.4

2.8

2

H

1.4

VL

2.5

 

L

2.0

 

M

1.7

3.4

3

H

1.7

3.3.4.1.2

飛行状態 GA における横転性能  多量の外部搭載物を積載して飛行状態 GA にあるクラス IV の

飛行機に対する横転性能要求事項は,

発注者の承認を得て

表 9b に規定する要求事項から緩和してもよい。

しかし,契約書に規定されているどのような外部積荷に対しても,横転性能は,0.8n

0

 (

−)  と 0.8n

0

 (

+)  の

間の荷重倍数で開始した横転については,

φ

t

で規定した

表 9e の値以上でなければならない。

契約書で規定されているどのような非対称搭載状態に対しても,横揺れ操縦能力は,適切な操縦余裕

3.4.10 参照)をもって,3.2.3.2 に規定する最大荷重倍数で翼を水平に保持するのに十分なものでなけれ

ばならない。


25

W 0402-1992

表 9e  飛行状態 GA の横転性能 

次のバンク角変化を達成するのに要する時間(秒)

レベル  速度範囲

30

° 50° 90° 180°

VL

1.5

 

L

1.7

M

1.7

3.0

1

H

1.5

VL

2.8

 

L

2.2

 

M

2.4

4.2

2

H

2.4

VL

4.4

 

L

3.8

 

M

3.4

6.0

3

H

3.4

3.3.4.1.3

横揺れ応答  カテゴリ A 飛行状態にある操縦かん式操縦装置を備えたクラス IV 飛行機の横揺

れ操だ力に対する横揺れ応答は,レベル 1 に対し 1N 当たり 3.4°/s{1kgf 当たり 33°/s}

(1lbf 当たり 15°

/s

)以下,また,レベル 2 に対し 1N 当たり 5.6°/s{1kgf 当たり 55°/s}

(1lbf 当たり 25°/s)以下でなけ

ればならない。

カテゴリ C 飛行状態では,横揺れ感度は,レベル 1 に対しては 1N 当たり 1.7°/s{1kgf 当たり 17°/s}

(1lbf 当たり 7.5°/s)以下,レベル 2 に対しては 1N 当たり 2.8°/s{1kgf 当たり 28°/s}

(1lbf 当たり 12.5°

/s

)以下でなければならない。3.3.4.1.3 と 3.3.4.3 の要求事項が矛盾する場合は,3.3.4.1.3 の要求事項を優先

させなければならない。ここでの感度には,始動力(ブレークアウト力)を含めない。

3.3.4.2

クラス III の飛行機の横揺れ性能  クラス III の飛行機について

φ

t

で表した横揺れ性能を,次の対

気速度範囲で

表 9f に規定する。

速度範囲

対気速度範囲

記号

レベル 1 に対して

レベル 2 及び 3 に対して

L

V

0min

≦V<1.8V

min

V

min

≦V<1.8V

min

M 1.8V

min

(

1

)

≦V<0.7V

max

(

2

)

 1.8V

min

≦V<0.7V

max

H 0.7V

max

(

2

)

≦V≦V

0max

 0.7V

max

≦V≦V

max

(

1

)

又は V

0

min

のどちらか大きい方

(

2

)

又は V

0

max

のどちらか小さい方

表 9f  クラス III の飛行機の横揺れ性能 

30

°のバンク角変化を達成するのに要する時間(秒)

レベル

速度範囲

カテゴリ A

カテゴリ B

カテゴリ C

L 1.8 2.3 2.5

M 1.5 2.0 2.5

1

H 2.0 2.3 2.5

L 2.4 3.9 4.0

M 2.0 3.3 4.0

2

H 2.5 3.9 4.0

3

全部

3.0 5.0 6.0


26

W 0402-1992

3.3.4.3

横揺れ操だ力  3.3.43.3.4.1 及び 3.3.4.2 に規定する横揺れ性能を得るのに必要な操縦かん又は操

縦輪の操だ力は,

表 10 の最大値以下又は始動力(ブレークアウト力)に次の値を加えた値以上でなければ

なない。

(a)

レベル 1

………

表 10 の値の

4

1

(b)

レベル 2

………

表 10 の値の

8

1

(c)

レベル 3

………  ゼロ

表 10  横揺れ最大操だ力

最大操縦かん操だ力 最大操縦輪操だ力

レベル

クラス

飛行状態
カテゴリ

N {kgf} (lbf)

N {kgf} (lbf)

I, II

−C, IV

A, B

89 {  9.1 } (20)

  180 {18  } (40)

C

89 {  9.1 } (20)

89 {  9.1 } (20)

II

−L, III

A, B

110 {11  } (25)

  220 {23  } (50)

1

C

110 {11  } (25)

  110 {11  } (25)

I, II

−C, IV

A, B

130 {14  } (30)

  270 {27  } (60)

C

89 {  9.1 } (20)

89 {  9.1 } (20)

II

−L, III

A, B

130 {14  } (30)

  270 {27  } (60)

2

C

130 {14  } (30)

  130 {14  } (30)

3

全部

全部

160 {16  } (35)

  310 {32  } (70)

3.3.4.4

横揺れ応答の線形性  横揺れ操だ量又は操だ力に対する横揺れ応答の変化に,好ましくない非線

形性があってはならない。

また,小操だ量又は小操だ力に対して,応答が過敏であったり鈍感過ぎたりしてはならない。

3.3.4.5

操縦輪操だ量  操縦輪式操縦装置を備えた飛行機に対しては,3.3.4 と 3.3.4.2 に規定する横揺れ

性能要求事項を満足させるのに必要な操縦輪の操だ量は,どちらの方向にも 60°を超えてはならない。完

全に機力化した系統に対しては,この要求事項は,80°に緩和してもよい。

3.3.5

方向操縦特性  方向の安定性と操縦特性は,操縦士が偏揺れモーメントを釣り合わせたうえで,更

に,偏揺れと横滑りを制御できるものでなければならない。偏揺れ操だペダル力に対する感度は,方向操

縦性及び操だ力の要求事項を満足させることができ,更に,不当に大きいペダル力は要しないが満足な釣

合い操だを達成できるように十分高くなければならず,しかも,たまたま不適正な釣合い操縦入力が入っ

ても,飛行性を著しく低下させないように十分に低くなければならない。

3.3.5.1

速度変化をする場合の方向操縦性  始め対称出力で方向をトリムした場合,プロペラ機の速度に

よるトリム変化は,トリムを変更することなく,レベル 1 及び 2 に対しては 440N {45kgf} (100lbf) 以下,

レベル 3 に対しては 800N {82kgf} (180lbf)  以下の偏揺れ操だペダル力で,トリム速度の±30%又は±100kt

等価対気速度のどちらか小さい方の速度範囲(実用飛行包囲線の境界によって制限される場合を除く。

)で

主翼水平直線飛行が保持できるものでなければならない。その他の飛行機については,偏揺れ操だペダル

力は,

レベル 1 及び 2 に対して規定条件で 180N {18kgf} (40lbf)  ,

レベル 3 に対しては 800N {82kgf} (180lbf)

を超えてはならない。

3.3.5.1.1

非対称重量状態での方向操縦性  運用飛行包囲線内のどのような速度においても,契約書に規

定された各非対称重量状態で始めに方向トリムした場合には,トリムを変更することなく,レベル 1 及び

2

に対しては 440N {45kgf} (100lbf)  以下,レベル 3 に対しては 800N {82kgf} (180lbf)  以下の偏揺れ操だペ

ダル力で,運用飛行包囲線の内側の全域にわたり直線飛行経路を保持できなければならない。


27

W 0402-1992

3.3.5.2

ウエーブオフ(着陸復航)時の方向操縦性  クラス IV のプロペラ機とすべてのプロペラ艦載機

については,スラスト,形態及び対気速度の変化に対する応答は,V

0min

 (PA)

でトリムした場合,440N

{45kgf} (100lbf)

を超えない偏揺れ操だペダル力で,V

s

 (PA)

まで減速した速度から開始するウエーブオフ

(着陸復航)の間中,操縦士が直線飛行を維持できるものでなければならない。その他の飛行機について

は,偏揺れ操だペダル力は,規定の条件に対して 180N {18kgf} (40lbf) を超えてはならない。前記の要求

事項は,

レベル 1 及び 2 に適用する。

すべての飛行機に対して,

レベル 3 の要求事項は,

800N {82kgf} (180lbf)

を超えない偏揺れ操だペダル力で,これらの条件で直線飛行を保持できることとする。すべてのレベルに

対して,5°までのバンク角を許容する。

3.3.6

定常横滑り時の横−方向特性  3.3.6.13.36.3.1 及び 3.3.7.1 の要求事項は,主翼水平直線飛行にト

リムされた飛行機に関して方向の操縦装置を使用して行われる定常,ゼロ偏揺れ角速度横滑りにおける特

性によって示したものである。3.3.6.13.3.6.3 の要求事項は,次の事項によって生じるか,又は制限され

る角度までの横滑り角に対して適用する。

(a)

偏揺れ操縦ペダル力一杯の操だ量又は

(b)

  1 100N {110kgf} (250lbf)

の偏揺れ操だペダル力又は

(c)

最大の横揺れ操だ量又は最大操縦だ面だ角。

ただし,ウェーブオフ(着陸復行)中の単発プロペラ機については,主翼水平直線飛行状態からの横滑

り 10°の変化に対する操だ量を超えて,主翼水平直線飛行に必要な方向と反対の方向の偏揺れ操縦ペダル

操だ量を考慮する必要はない。

3.3.6.1

定常横滑り時の偏揺れモーメント  3.3.6 に規定する横滑りにおいては,右偏揺れ操縦ペダル操だ

量及び操だ力が左横滑りを生じ,左偏揺れ操縦ペダル操だ量及び操だ力が右横滑りを生じなければならな

い。レベル 1 及び 2 に対しては,次の要求事項を適用しなければならない。偏揺れ操縦ペダル操だ量に伴

う横滑り角の変化は,+15°と−15°の間の横滑り角に対しては,原則的に線形でなければならない。そ

れより大きい横滑り角では,横滑りの増加には常に偏揺れ操縦ペダル操だ量の増加を必要としなければな

らない。偏揺れ操だペダル力に伴う横滑り角の変化は,+10°と−10°の間の横滑り角に対しては,原則

的に線形でなければならない。この範囲外の横滑り角では,ペダル力の軽減は容認できるが,ペダル力は,

ゼロまで減少してはならない。

3.3.6.2

定常横滑り時の横方向の力  3.3.6 の横滑りでは,右バンク角の増加は,右横滑りの増加を伴い,

左バンク角の増加は,左横滑りの増加を伴わなければならない。

3.3.6.3

定常横滑り時の横揺れモーメント  3.3.6 の横滑りでは,左横揺れ操だ量及び操だ力が左横滑りを

伴い,右横揺れ操だ量及び操だ力が右横滑りを伴わなければならない。レベル 1 及び 2 に対しては,横滑

り角に関する横揺れ操だ量及び操だ力の変化は,原則的に線形でなければならない。

3.3.6.3.1

ウエーブオフ(着陸復航)に対する例外  任務の遂行の妨げとならず,しかも,3.3.6.3 に規定

する方向と反対方向に対して,操縦士に利用可能な横の操縦能力の 50%以上及び横揺れ操だ力 44N

{4.5kgf} (10lbf)

以上を必要としないならば,ウエーブオフ(着陸復航)に対し必要に応じて 3.3.6.3 の要求

事項を除外してもよい。

3.3.6.3.2

正の有効上反角限界  レベル 1 及び 2 に対して,正の有効上反角(右横滑りに対する右横揺れ

操縦,左横滑りに対する左横揺れ操縦)は,実際の使用で経験することがある横滑りに対して,操縦士に

利用可能な横の操縦能力の 75%を超える量を必要としたり,44N {4.5kgf} (10lbf)  以上の横揺れ操縦かん操

だ力又は 89N {9.1kgf} (20lbf)  以上の横揺れ操縦輪操だ力を必要とするほど大き過ぎてはならない。


28

W 0402-1992

3.3.7

横風時の横−方向操縦性  表 11 に規定する速度までの左又は右からの 90°の横風を受けた場合で

も,普通の操縦熟練度及び技量によって離陸と着陸が可能でなければならない。横揺れ操だ力は,3.3.4.3

に規定する限界内になければならず,

また,

偏揺れ操だペダル力は,

レベル 1 に対して 440N {45kgf} (100lbf)

又はレベル 2 及び 3 に対して 800N {82kgf} (180lbf)  を超えてはならない。この要求事項は,通常,3.3.7.1

と 3.3.7.2 の規定と適合することによって満足させることができる。

表 11  横風速度

レベル

クラス

横風

I 20kt

II

,III 及び IV 30kt

1

及び 2

水上機 20kt

3

全部

レベル 1 及び 2 の

値の

2

1

3.3.7.1

横風時の最終進入  横風着陸装置を装備した陸上機又は大きいクラブ姿勢 (large crabbed attitude)

で着陸するように造られた陸上機を除くすべての飛行機については,偏揺れ及び横揺れ操縦能力は,動力

進入において,

3.3.7

に規定する値を超えない偏揺れ操だペダル力によって,

少なくとも 10°の横滑り

3.3.6

参照)を十分に起こせるものでなければならない。レベル 1 に対しては,横揺れ操縦は,44N {4.5kgf} (10lbf)

の力か,又は操縦士が利用できる操縦能力の 75%を超えてはならない。レベル 2 及び 3 に対しては,横揺

れ操だ力は,89N {9.1kgf} (20lbf)  を超えてはならない。

3.3.7.2

横風時の離陸滑走及び着陸滑走  偏揺れ及び横揺れ操縦能力は,その他の正規の操縦手段と連携

して,

地上又はその他の着陸表面上で直線経路を保持するのに適切でなければならない。

この要求事項は,

操縦室操だ力が 3.3.7 に規定する値を超えることなく,静穏大気中及び

表 11 に規定する値までの横風に対

して適用する。

3.3.7.2.1

寒冷及び湿潤気候での運用  3.3.7.2 の要求事項は,すべての飛行機に対して湿潤滑走路上で適

用し,また,雪氷滑走路条件での運用を意図する飛行機に対しては,そのような滑走路上で適用する。も

し,これらの不利な滑走路条件で規定に適合していることが実証されないときは,クラス IV の飛行機に

対しては 50kt を超えるすべての対気速度で,また,その他のすべての飛行機に対しては 30kt を超えるす

べての対気速度で,空力操縦装置だけを用いて,方向操縦性を保持しなければならない。極めて滑りやす

い滑走路については,飛行機を滑走路から吹き放す傾向の力が飛行機の全重量を支えて抵抗するタイヤと

滑走路との摩擦力を超えるような横風成分には,この要求事項を適用する必要はない。

3.3.7.2.2

艦載機  すべての艦載機は,V

s

 (L)

の少なくとも 10%の風速の 90°の横風がある中での離陸及

び着陸中に,30kt 以上の対気速度で,車輪ブレーキを使用せずに地上で直線経路を保持できなければなら

ない。操縦室操だ力は,3.3.7 に規定のとおりでなければならない。

3.3.7.3

地上走行風速限界  クラス I の飛行機に対しては 35kt の風,クラス II, III 及び IV の飛行機に対し

ては 45kt の風に対し,どのような角度でも地上走行ができなければならない。

3.3.8

急降下時の横−方向操縦性  3.2.3.5 と 3.2.3.6 の急降下と引起こしを通じて,偏揺れ及び横揺れ操

縦能力は,トリムを変更することなく,主翼水平で横滑りゼロを維持するのに適切なものでなければなら

ない。実用飛行包囲線内では,横揺れ操だ力は,プロペラ機については 89N {9.1kgf} (20lbf)  ,その他の飛

行機については 44N {4.5kgf} (10lbf)  を超えてはならない。偏揺れ操だペダル力は,プロペラ機に対しては

800N {82kgf} (180lbf)

,その他の飛行機に対しては 220N {23kgf} (50lbf)  を超えてはならない。


29

W 0402-1992

3.3.9

非対称的スラスト状態での横−方向操縦性  スラストの非対称喪失は,エンジンの故障,インレッ

トアンスタート,プロペラの故障又はプロペラ駆動装置の故障を含む多くの原因によって起こることがあ

る。どのような原因からであろうとスラストが突然に非対称的に喪失しても,飛行機は,

表 11 の横風を不

利な方向から受ける状態で,安全に操縦可能でなければならない。3.3.9.13.3.9.4 の要求事項は,吸気口

又は排気口を含む推進系統のどのような単独故障又は性能不良が 1 以上のエンジン又はプロペラのスラス

トの喪失を生じたときでも,その故障した推進系統が動力を与えるか又は駆動するすべての部分系統に及

ぼす故障又は性能不良の影響もまた考慮して,適切な飛行状態に対し適用する。

3.3.9.1

離陸滑走中のスラストの喪失  最も危険な原因によってスラストが突然喪失した後,操縦士が離

陸表面上で飛行機の操縦を維持できなければならない。その後,偏揺れ操だペダル力が 800N {82kgf}

(180lbf)

を超えないで,最初に意図した経路から 9m (30ft)  を超えて離れることなく,離陸表面上で直線経

路を取り,更に維持することができなければならない。

離陸を継続する場合に対しては,断念速度(飛行機が運用すべく設計された最短滑走路に基づく。

)から

最大離陸速度までの速度でスラストを喪失したときに対し,離陸表面に対する摩擦又は縦,横及び方向の

操縦装置若しくはスロットルの使用に依存しない操縦装置だけを使用し,運転可能なエンジンは離陸スラ

ストを維持して,要求事項を満足させなければならない。離陸中断に対しては,最大離陸速度未満のすべ

ての速度で要求事項を満足させなければならない。ただし,離陸を継続する場合に対して許される操縦に

加えて,前輪操向や差動ブレーキのような操作装置を使用してもよい。スラストの故障の場合に通常作動

する自動装置は,どちらの場合にも使用してよい。

3.3.9.2

離陸後のスラストの喪失  離陸中に V

min

 (TO)

から V

max

 (TO)

までの速度で最も危険な要因によ

ってスラストが突然非対称的に喪失した後,選定した形態を変化させることなく直線飛行を達成し,

更に,

その後上昇を通じて直線飛行を維持できなければならない。非対称スラストで直線飛行を維持するのに必

要な偏揺れ操縦ペダル力は,800N {82kgf} (180lbf)  を超えてはならない。横揺れ操だ力は,作動エンジン

の離陸スラストを維持したまま,

また,

対称スラストをもつ離陸に対して正規の設定にトリムした状態で,

3.3.9.3

に規定する力の限度値か又は利用できる操縦能力の 75%を超えてはならない。スラスト故障の場合

に通常作動する自動装置を使用してもよい。更に,その飛行機は,不作動エンジンと反対側に 5°までバ

ンクしてもよい。

3.3.9.3

過渡効果  スラストの突然の非対称喪失の後の飛行機の運動は,操縦士の是正措置によって危険

な状態を避けることができるものでなければならない。少なくとも 1 秒の現実的な時間遅れ(3.4.9 参照)

を考慮しなければならない。

3.3.9.4

非対称スラスト−方向の操縦装置自由  方向静安定は,最も危険な原因によってスラストを非対

称に喪失し,

他のエンジンは正規定格スラストを出力する状態で,

1.4V

min

を超えるすべての速度において,

方向の操縦ペダル自由の飛行機を定常直線飛行で方向釣合いができるものでなければならない。トリム設

定は,エンジン故障が起こる前の状態で主翼水平の直線飛行に必要な設定でなければならない。横揺れ操

だ力は,レベル 1 及び 2 に対しては,3.3.4.2 に規定するレベル 2 の上限を,レベル 3 に対してはレベル 3

の上限を超えてはならない。

3.3.9.5

2

エンジン不作動  どのエンジンが初めに故障しても,最大航続距離が得られる 1 エンジン不作

動速度で,残りの最も危険なエンジンが故障した場合,過渡運動を停止でき,更にその後,その速度から

両エンジン故障時の最大航続距離を得られる速度まで直線飛行を維持できなければならない。更に,V

0min

(CL)

を超えるどのような実用速度ででも,2 基の危険側エンジンの突然の同時故障の後に安全に直線飛行

を回復できなければならない。


30

W 0402-1992

3.4

種々の飛行性

3.4.1

危険な飛行条件  飛行機を飛行させるべきではない危険な条件が存在することがある。これらの飛

行条件に近づく場合には,明白に識別できる方法によって操縦士が切迫した危険を認識し,予防措置を取

ることが可能でなければならない。切迫した危険な飛行条件に対するすべての警報が適切であるかどうか

は機能上の効果と信頼性を考慮して,発注者が最終的に決定する。

3.4.1.1

警報及び表示  危険な状態への接近に対する警報又は表示は,明白で紛らわしくないものでなけ

ればならない。例えば,操縦士は,失速警報(機首を下げるか又は速度を増加することが必要である。

マッハバフェット

(速度を減少する必要を示す。

及び飛行機の普通の振動

(操縦士の操作が不必要である。

の間の区別が容易にできなければならない。

3.4.1.2

表示,警報,防止及び回復のための装置  特殊な装置を採用することよりもむしろ,適切な空力

設計や質量分布によって,危険な飛行条件を排除し,この規格の要求事項を満足させることを意図してい

る。特殊な装置は,発注者が必要性,設計基準,起こり得る特殊故障状態(3.1.6.2.1 参照)及び装置自体

を承認したときにだけ使用してもよい。少なくとも,これらの装置は,必要なときは常に機能を発揮すべ

きであり,運用飛行包囲線の内側での飛行を制限してはならない。このような装置の正規な作動や不用意

な作動が飛行機に危険を及ぼしてはならない。レベル 1 及び 2 に対しては,誤作動が可能であってはなら

ない。装置の機能故障を操縦士に表示しなければならない。

3.4.2

大迎え角飛行  3.4.23.4.2.2.2 の要求事項は,失速警報,失速,制御された飛行からのデパーチャ,

ポストストールジャイレーション (PSG) ,きりもみ,回復及び関連ある特性に関するものである。これら

の要求事項を一般に実用飛行包囲線の外側の速度と迎え角に適用する。これらの要求事項は,安全性と,

大迎え角特性による任務限界が存在しないこととを保証することを意図している。

3.4.2.1

失速  失速は,それぞれ 6.2.2 と 6.2.5 に記載する対気速度と迎え角で定義する。失速は,通常,

大迎え角によって発生する空気流のはがれに起因する現象であるが,この現象の代わりに使用可能な迎え

角の何らかの制限によって決定してもよい。失速要求事項は,直線非加速飛行並びに n

L

までの到達可能な

垂直加速度をもつ施回及び引き起こし時におけるすべての飛行機の正規状態に適用する。個々に,6.2.2 

示す形態,スロットル設定及びトリム設定に関連する飛行機正規状態を調査しなければならない。

また,この要求事項は,失速特性に影響を及ぼす飛行機故障状態にも適用する。

3.4.2.1.1

失速への接近  失速が近づいた場合は,操縦室操縦装置の振動,飛行機のバフェッティング若

しくは振動又はその両方の組合せからなる容易に感知できる警報を伴わなければならない。この警報は,

3.4.2.1.1.1

と 3.4.2.1.1.2 に規定する範囲内で始まらなければならないが,運用飛行包囲線の内側で始まって

はならない。迎え角の増加に伴うバフェッテイング強さの増加は,操縦士が認知できるほど十分に顕著で

なければならない。警報は,迎え角が警報開始時の迎え角より小さい値に減少するまで,継続しなければ

ならない。失速までのすべての迎え角において,操縦室操縦装置は,通常の意味での有効性を維持しなけ

ればならず,また,小さい操縦入力によって制御された飛行からデパーチャを生じてはならない。失速前

の意図しない振動が操縦士に好ましくないものであってはならない。

3.4.2.1.1.1

飛行経路に垂直な 1G 飛行における失速警報速度  失速が徐々に近づく場合には,飛行経路に

垂直な 1G 飛行における失速警報の開始は,次の限界の間で起こらなければならない。


31

W 0402-1992

飛行状態

開始最小速度

開始最大速度

進入 1.05V

s

又は V

s

+5kt

のどちらか大きい方

1.10V

s

又は V

s

+10kt

のどちらか大きい方

その他のすべての場合 1.05V

s

又は V

s

+5kt

のどちらか大きい方

1.15V

s

又は V

s

+15kt

のどちらか大きい方

3.4.2.1.1.2

加速失速の警報範囲  失速が徐々に近づく場合には,失速警報の開始は,飛行機正規状態に

対応する運用飛行包囲線外で,更に,その飛行機状態で次の範囲,すなわち,その対気速度での失速時揚

力係数の百分率内で起こらなければならない。

飛行状態

開始最小揚力係数

開始最大揚力係数

進入

C

Lstall

の 82%

C

Lstall

の 90%

その他のすべての場合

C

Lstall

の 75%

C

Lstall

の 90%

3.4.2.1.2

失速特性  3.4.2.1 の非加速失速において,失速時に,クラス I,II 及び III の飛行機については

20

°以内,また,クラス IV の飛行機については 30°以内に維持するように操縦できないような横揺れ,

偏揺れ又は機首下げを示してはならない。非加速失速又は加速失速においては,ピッチアップの傾向がな

いことが望ましい。非加速失速においては,縦揺れ操だ力の逆転が起こらず,更に,危険な,回復できな

い状態か又は好ましくない飛行条件が生じないならば,穏やかな機首上げ傾向は,容認してもよい。

もし飛行機の運用有効性を危うくせず,しかも

(a)

飛行機に適切な失速警報があり,

(b)

縦揺れ操縦の効きがピッチアップを速やかに停止し,迎え角を減少することができるものであり,

(c)

失速,失速への接近又は回復におけるどのような時点でも,飛行機のどの部分も構造制限荷重を超え

ないならば,

穏やかな機首上げの傾向は,加速失速においても容認してよい。この要求事項は,突然に入った失速を

含むすべての失速に適用する。

3.4.2.1.3

失速の防止及び回復  失速警報の開始時に縦の操縦装置だけを適度に使用して,失速を防止で

きなければならない。3.4.4.1 の値を超えない操縦室操だ力によって縦,横及び方向の操縦装置を単純に使

用して失速から回復し,しかも過大に高度を失ったり速度を増大したりしないでも水平飛行に戻ることが

できなければならない。速度が増加し始め,また,失速時より小さい迎え角に戻るまで,スロットルは固

定のままにしておかなければならない。ただし,この適用がエンジンの運転限界を超えない場合に限る。

3.4.2.1

の直線飛行失速においては,飛行機が 1.4V

s

以下の対気速度にトリムされているとき,縦揺れ操縦

能力は,どのような到達可能な迎え角からも回復するのに十分なものでなければならない。

3.4.2.1.3.1

1

エンジン不作動失速  多発機においては,臨界エンジンが不作動でも失速から安全に回復で

きなければならない。この要求事項は,残りのエンジンが次の状態までについて適用する。

飛行状態

スラスト

離陸 (TO)

離陸

上昇 (CL)

正規上昇

進入 (PA)

正規進入

ウエーブオフ,着陸復航 (WO)

ウェーブオフ


32

W 0402-1992

3.4.2.2

ポストストールジャイレーション及びきりもみ  ポストストールジャイレーション及びきりも

みについての要求事項は,姿勢の急変 (upset) ,減速並びにそのクラス及び飛行状態カテゴリに該当する

極端な運動から入ることができるすべてのモードの運動に適用する。

クラス I 及び IV の飛行機に対しては,

背面飛行から入る場合も含めなければならない。迎え角と横滑り角としては,最大操縦能力までの迎え角

と横滑り角,及び動的飛行状態で起こり得る迎え角と横滑り角までを考慮すべきである。ただし,構造上

の考慮により制限される場合を除く。

すべてのクラスと飛行状態カテゴリについて,1 臨界エンジンの作動,不作動を問わず,MAT(最大増

強スラスト)以下のスラスト設定を含めなければならない。この要求事項は,承認された特殊故障状態を

除くすべての飛行機の正規状態と,安定増大・操縦性増強系統のすべての状態に対して有効である。操縦

性の喪失,きりもみ若しくはジャイレーション,回復又はそれに続く急降下引起こしの間に,搭載物を投

下してはならない。しかし,増大・増強系統の自動切離しは,そうすることが必要であり,しかも他のど

の よ う な 要 求 事 項 を も 満 足 す る こ と を 妨 げ な い な ら ば , 許 容 で き る 。 増 大 増 強 系 統 の 再 連 結

(re-engagement)

は,回復後の飛行中に可能でなければならない。

3.4.2.2.1

操縦飛行からのデパーチャ  すべてのクラスの飛行機は,制御された飛行からのデパーチャ,

ポストストールジャイレーション及びきりもみに対し非常に大きい抵抗性をもたなければならない。飛行

機は,

操縦士の単純な操縦操作で速やかに阻止できないような意図しない運動を示してはならない。

更に,

発注者は,ある種の練習機にはきりもみを起こし,しかも必ず回復できなければならないことを指定して

もよい。

3.4.2.2.2

ポストストールジャイレーション及びきりもみからの回復  MIL-A-8861  (JIS W 0607)  に従い,

きりもみに耐える構造に設計しなければならない飛行機については,次の要求事項を適用する。正しい回

復技法は,操縦士が容易に確認でき,しかも遭遇する運動のもとで単純で容易に実行できなければならな

い。どのような運動でも,3.4.4.1 の操だ力を超えず,構造限界を超えないで安全に必ず回復でき,更に,

引起こしができなければならない。操縦士に運動の方向を決定させることなく,また,きりもみを発展さ

せる傾向がなく,すべてのポストストールジャイレーションと初期のきりもみから,単一の技法によって

速やかに回復できなければならない。

また,ポストストールジャイレーションと初期のきりもみからの回復に用いる同じ技法又は少なくとも

両立できる技法が,きりもみの回復に対して有効であるのが望ましい。起こり得るすべてのモードのきり

もみについて,それからの回復は,回復操作の開始から測定して次に規定する施転以内で達成できなけれ

ばならない。

クラス

飛行状態

回復に必要な旋転

I

カテゴリ A 及び B

1

I

進入 (PA)

1

その他のクラス

進入 (PA)

1

その他のクラス

カテゴリ A 及び B

2

きりもみの逆転や有害なモード変化を避けるのに,操縦士の正確な操縦のタイミング又は操だ量に依存

してはならない。すべての飛行機がすべての達成可能な姿勢と運動から容易に回復できることが望ましい。

この箇条の要求事項に適合することを要求されていない飛行機の失速後の特性は,解析と模型試験で決定

しなければならない。


33

W 0402-1992

3.4.3

横揺れ運動時の相互連成  クラス I 及び IV の飛行機については,方向の操縦装置自由,縦の操縦

装置固定で,直線飛行,施回又は 0G から 0.8n

L

までの範囲の押下げ苦しくは引上げから入った 360°まで

の最大性能横転で生じた偏揺れ又は縦揺れ運動及び横滑り又は迎え角の変化が,構造限界を超えたり,操

縦できない運動やロール自転などの他の危険な飛行状態を生じたりしてはならない。

360

°までの角度の横転や与えられた角度で止める横転を含む戦闘形運動では,偏揺れや縦揺れが運動の

戦術的有効性を害するほど過酷であってはならない。これらの要求事項は,レベル 1 及び 2 の運用を定義

する。クラス II 及び III の飛行機については,これらの要求事項は,120°までの横転や与えられたバンク

角で止める横転に適用する。

3.4.4

操縦性の調和  縦揺れ及び横揺れ操縦の操だ力及び操だ量の感度並びに始動力は,1 操縦軸への意

図する入力が他の操縦軸への不用意な入力を生じないように,両立できるものでなければならない。

3.4.4.1

操だ力の釣合い  飛行機にとって通常の運動を実施するのに必要な操縦室操だ力は,このような

力を組み合わせて作る操縦士の能力に関係した大きさをもつのがよい。次の操だ力のレベルは,操縦士が

同時に力を加える能力と両立できる限界値と考えられている。

操縦装置の種類

方向

220N {23kgf}

110N {11kgf}

操縦かん(サイドステッ

ク又は中央操縦かん)

(50lbf) (25lbf)

330N {34.0kgf}

180N {18kgf}

操縦輪

(75lbf) (40lbf)

780N

{79kgf}

ペダル

(175lbf)

3.4.5

バフェット  運用飛行包囲線の境界内では,飛行機の意図する任務を遂行するのにその有効性を減

退させるおそれのある好ましくないバフェットがあってはならない。

3.4.6

搭載物の投下  どのような搭載物の意図した投下も,レベル 1 及び 2 に対して好ましくない飛行特

性を生じてはならない。搭載物の意図した投下は,決して危険な又は耐え得ない飛行特性を生じてはなら

ない。この要求事項は,通常又は緊急の搭載物の投下が許容できるすべての飛行状態と搭載物積載状態と

に適用する。

3.4.7

武器の投下及び特殊装備の影響  貨物扉,武器ポッド,燃料補給装置,救難用具などの可動部分の

作動,又は火器の発射,搭載武器投下,貨物の投下若しくは回収が,これらと関連するどのような飛行条

件下でもバフェット,トリム変化又は飛行機の任務有効性を害するその他の特性を生じてはならない。こ

れらの要求事項は,レベル 1 及び 2 について満足させなければならない。

3.4.8

故障後の過渡状態  飛行機の系統又は構成部品の突然の故障による飛行機の運動は,操縦士の是正

措置によって,

危険な状態を避け得るものでなければならない。規定に適合していることを確認する際に,

故障と操縦士の是正措置の開始との間の現実的な時間遅れを組み入れなければならない。この時間遅れに

は,故障の発生と,故障が起こったことを操縦士に明確に示す手掛かりとなる加速度・速度・変位・音の

発生との時間の間隔に加えて,操縦士が状況を判断し是正措置を開始するのに要する時間を含めるのがよ

い。

3.4.9

故障  どのような構成部品や系統の単一故障でも,危険な又は耐え難い飛行性を生じてはならない。

ただし,特殊故障状態(3.1.6.2.1 参照)は,この限りではない。乗員の動作や決心を必要としたり制限し

たりする故障が起こったときにはいつでも,関係ある乗員に即刻,容易に判断できる表示を与えなければ

ならない。


34

W 0402-1992

3.4.10

操縦性の余裕  操縦のオーソリティ,作動速度及びヒンジモーメントの能力は,すべての取り得る

迎え角(正負両方とも)と横滑りの組合せ範囲全域にわたり,安全性を保証するのに十分なものでなけれ

ばならない。この要求事項は,操縦だ面固定不安定領域,慣性の組合せ,燃料の揺動,対称及び非対称搭

載物の影響(3.1.4 参照)

,失速・ポストストール・きりもみ特性(3.4.23.4.2.2.2 参照)

,大気のじょう乱

3.8 参照)並びに飛行機故障状態(3.1.10.1 と 3.1.10.2,その故障状態に該当する運動飛行を含めること。

などの要因による関連の影響を含めて,操縦不能の防止やすべての運動についてのどのような状態からの

回復にも適用する。

制限装置 (limiter) の有効度及び動作の確実性,重心制御装置の機能不良又は管理不良,並びに推進系統,

操縦系統その他の関連系統の故障による過渡現象についても考慮しなければならない。

3.4.11

直接力操縦装置  直接垂直力操縦及び直接横力操縦用装置の使用によって,最大使用可能限度まで

のどのような操縦量に対しても,好ましくない姿勢変化を生じてはならない。この要求事項は,レベル 1

及び 2 の飛行性に対して満足させなければならない。

3.5

主操縦系統の特性

3.5.1

一般的特性  この規格で使用するとき,主操縦系統という用語には,縦,横及び方向の操縦装置,

安定増大装置並びにそれらが作動させるすべての機構及び装置を含む。この 3.5 の要求事項は,飛行性に

直接に関係ある主操縦系統に関連する。これらの要求事項は,例えば MIL-F-9490  (JIS W 0701)  や

MIL-C-18244

などの適用操縦系統設計仕様書の要求事項に追加するものである。

3.5.2

機械的特性  操縦系統(サーボ弁やアクチュエータを含む。)の重要な機械的特性には,摩擦及び

予荷重(プリロード)

,ロストモーション,たわみ性,質量不釣合及び慣性,非線形ギアリング並びにレー

トリミット (rate limiting) がある。これらの特性のいくつかについての要求事項は,3.5.2.13.5.2.4 に示す。

しかし,個々のこれらの要求事項を満足させても,必ずしも全系統が適切であることを保証するものでは

ない。機械的特性は,操縦系統の非機械的部分及び機体の動特性と適合していなければならない。

3.5.2.1

操縦装置のセンタリング及び始動力(ブレークアウト力)  縦,横及び方向の操縦装置は,どの

ような正規トリム設定でも飛行中に正のセンタリングを示さなければならない。絶対的センタリングは必

要でなくても,センタリング,始動力(ブレークアウト力)

,安定性及び操だ力グラジエントの連成効果が,

正確な追尾がやりにくいなどの好ましくない飛行特性を生じてはならず,又は操縦装置自由でトリム状態

から大きく離れるのを許容してはならない。摩擦,予荷重(プリロード)などを含む始動力(ブレークア

ウト力)は,

表 12 の限界内になければならない。表 12 の値は,レベル 1 及び 2 に対して飛行中に操縦だ

面を動かし始めるのに必要な操縦室操だ力を示す。レベル 3 については,上限は 2 倍とする。

表 12  許容始動力ブレークアウト力

N {kgf} (lbf)

クラス I,II-−C,IV

クラス II−L,III

操縦装置

最小

最大

最小

最大

操縦かん  2.2 {0.23} (0.5)

13 {1.4} (3)

2.2 {0.23} (0.5)

22 {2.3} (5)

操縦輪

2.2 {0.23} (0.5)

18 {1.8} (4)

2.2 {0.23} (0.5)

31 {3.2} (7)

操縦かん  2.2 {0.23} (0.5)

8.9 {0.91} (2)

2.2 {0.23} (0.5)

18 {1.8} (4)

操縦輪

2.2 {0.23} (0.5)

13 {1.4} (3)

2.2 {0.23} (0.5)

27 {2.7} (6)

方向

ペダル

4.4 {0.45} (1)

31 {3.2} (7)

4.4 {0.45} (1)

62 {6.4} (14)

地上での測定と飛行中の測定の間の定性的一致が確立できれば,通常は,実際の飛行中の測定の代わり

に,地上での始動(ブレークアウト力)の測定で十分である。


35

W 0402-1992

3.5.2.2

操縦室操縦装置の遊び  操縦室のそれぞれの操縦装置における遊び(すなわち,飛行中に操縦だ

面を動かさないすべての操縦室操縦装置の動き)によって,特に小振幅の操縦入力に対して,好ましくな

い飛行特性を生じてはならない。

3.5.2.3

操縦装置の変位速度  飛行機が要求される運用上の運動を実施する能力は,3.7 で規定する大気

のじょう乱中で,操縦だ面変位速度によって制限されてはならない(3.8.3.13.8.3.2 及び 3.4.10 参照)

。機

力又は補力操縦装置では,この要求事項との適合性を立証するときに,操縦士の操縦技量とともに,エン

ジン回転速度と,主及び二次操縦装置のデューティサイクルの影響を含めなければならない。

3.5.2.4

調整可能な操縦装置  操縦室操縦装置が操縦士の身体の寸法や乗心地に合わせて調整可能な場

合は,6.2 に定義する操だ力は,平均調整時を基準とする。その他のどのような調整時を基準とする操だ力

も,平均調整時を基準とする操だ力から 10%を超えて異なってはならない。

3.5.3

動特性  すべての振幅の操縦入力について,操縦室操縦装置操だ量と操だ力に対する飛行機の応答

は,線形か又は滑らかに変化するものでなければならない。飛行中の操縦だ面の応答は,操縦室操縦入力

に対して

表 13 に規定する振動数以下の振動数において,表 13 に規定する角度を超えて遅れてはならない。

表 13  操縦だ面許容遅れ

許容遅れ(度)

操縦装置

上限角振動数 (rad/s)

ω

nsp

と 2.0 のどちらか大きい方。

レベル

カテゴリ A 及び

C

飛行状態

カテゴリ B 
飛行状態

横及び方向

ω

nd

,1/

τ

R

及び 2.0 のうち最大のもの。

1 15  30

2 30  45

3 60  60

更に,飛行機の応答運動は,操縦士の操だによるステップ操縦入力に対して,

表 14 に示す値より長い時

間遅れを示してはならない。

表 14  飛行機応答許容時間遅れ

レベル

許容時間遅れ(秒)

1 0.10

2 0.20

3 0.25

そのうえ,操縦室操縦装置に対する航空機の応答に相当する等価系から得る等価時間遅れの値は,

表 14

の値を超えてはならない。

3.5.3.1

減衰  すべての操縦系統の振動は,十分に減衰させなければならない。ただし,それらの振動が,

急激な運動や大気のじょう乱中の飛行において,操縦室操縦装置や機体の好ましくない振動を生じない程

度の振幅,振動数及び位相である場合は,この限りではない。

3.5.4

増大系統  安定増大及び操縦増強用の系統や装置が作動して,好ましくない飛行特性や操作性を生

じてはならない。

3.5.5

故障  次の事象によって,危険な又は耐え得ない飛行性を生じてはならない。

(a)

単一故障後の増大系統機能の全面的又は部分的な喪失。

(b)

故障直後か又はその後代替操縦モードへ移行するとき故障で誘起された過渡運動とトリム変化。

(c)

故障後に必要か又は推奨される形態変更。

3.5.5.1

故障の過渡現象  操縦装置を自由にした状態で,3.5.5 に記載した故障によって起こる飛行機の運

動は,故障後少なくとも 2 秒間は,次の限界を超えてはならない。限界は,故障の過渡現象が収まった後

の飛行性のレベルに従って示す。


36

W 0402-1992

レベル 1 及び 2

(故障後)

操縦席で±0.5G の垂直方向又は横方向加速度変化及び±10°/s の横揺れ角速

度。ただし,失速迎え角も構造限界も超えてはならない。更に,カテゴリ A 飛

行状態に対しては,1.5m (5ft)  の垂直方向又は横方向の移動,±2°のバンク角。

レベル 3

(故障後)

危険な姿勢又は構造限界に達しない範囲。更に,回復不可能な危険な飛行経路

へ移行しない範囲。

3.5.5.2

故障によるトリム変位  3.5.5 に述べた故障に対して姿勢と横滑りを維持するのに必要な操だ力

の変化は,故障後少なくとも 5 秒間,次の限界を超えてはならない。

縦揺れ

89N {  9.1  kgf} (20lbf)

横揺れ

44N {  4.5  kgf} (10lbf)

偏揺れ

220N { 23

kgf} (50lbf)

3.5.6

代替操縦モードへの切替え  操縦士が主操縦系統のどの部分であれ意図的にエンゲージ又はディ

スエンゲージしても,その結果生じる過渡運動やトリム変化は,危険な飛行性を生じないものでなければ

ならない。

3.5.6.1

切替え過渡現象  操縦装置が自由な状態で,3.5.6 に述べた状態によって生じる過渡現象は,切替

え後少なくとも 2 秒間は,次の限界を超えてはならない。

運用飛行包囲線内  操縦席で±0.1G の垂直方向又は横方向加速度と±3°/s の横揺れ。

実用飛行包囲線内  操縦席で±0.5G,  ±5°/s の横揺れ,±5°の横滑りと構造限界のいずれか小さい

方。

これらの要求事項は,飛行機の正規状態にだけ適用する。

3.5.6.2

トリム変化  3.5.6 で述べた状態に対して,姿勢と横滑りを維持するのに要する操だ力の変化は,

切替え後少なくとも 5 秒間は,次の限界を超えてはならない。

縦揺れ

  89N {  9.1  kgf} (20lbf)

横揺れ

  44N {  4.5  kgf} (10lbf)

片揺れ

220N { 23  kgf} (50lbf)

これらの要求事項は,飛行機の正規状態にだけ適用する。

3.6

二次操縦系統の特性

3.6.1

トリム系統  運用飛行包囲線内全域にわたり,直線飛行において,トリム装置は,すべての操縦室

操だ力をレベル 1 及び 2 に対してゼロに減少させることができなければならない。レベル 3 に対しては,

トリムで取りきれない定常操縦室操だ力は,縦揺れ 44N {4.5kgf} (10lbf)  ,横揺れ 22N {2.3kgf} (5lbf)  及び

ペダル 89N {9.1kgf} (20lbf)  を超えてはならない。

レベル 2 及び 3 の要求事項を適用する際に考慮すべき故障には,両方向のトリムの固着 (sticking) や暴

走 (runaway) を含めなければならない。操縦士に代替トリム機構やオーバライド能力を与えることによっ

て,

レベル 2 及び 3 の要求事項を満足させてよい。トリムの速度とオーソリティに関する追加要求事項は,

MIL-F-9490 

(JIS W 0701)

や MIL-F-18372 に含まれている。

3.6.1.1

非対称スラスト時のトリム  すべての多発機においては,最も危険な原因(3.3.9 参照)によるス

ラストの非対称喪失が生じた後,2 台までのエンジン不作動状態での直線飛行において,操縦室操だ力を

ゼロにトリムできなければならない。この要求事項は,エンジン不作動形態の最大航続速度から作動エン

ジンの正規定格スラストによって得られる速度までの速度での水平巡航飛行におけるレベル 1 を規定する。

故障エンジンに全面的に依存するシステムも,故障したものとみなされなければならない。


37

W 0402-1992

3.6.1.2

トリム操作速度  トリム装置は,通常使用中に出会う変動条件の下で,操縦士が小さい操だ力を

維持できるように十分に急速で,しかも,どのような条件の下でも,過大な感度やトリム精度の困難さを

生じるほどには急速でなく作動しなければならない。特に,次の条件を通じて,縦揺れ操だ力を,中央操

縦かん式飛行機については 44N {4.5kgf} (10lbf)  ,操縦輪式飛行機については 89N {9.1kgf} (20lbf)  より小

さくトリムすることができなければならない。

(a)

通常の運用中に必要な急降下及び地上攻撃運動。

(b)

任意の高度で,飛行機が運動の開始前に水平飛行トリムされているとき,250kt 又は V

R/C

のどちらか

小さい方から V

max

まで最大増強スラストで水平飛行加速。

トリム系統を操作する際に操縦輪式操縦装置から片手を放す必要がある場合には,レベル 1 の操だ力限

界は,中央操縦かん式のものと同じとしなければならない。

3.6.1.3

トリム系統の失速  運動中に空力荷重によって起こるトリム系統の失速は,危険な状態を生じて

はならない。特に,縦のトリム系統は,どのような到達可能許容荷重倍数でも,また,トリム装置のどの

ような起こり得る位置においても,3.2.3.6 の急降下の回復中に作動できなければならない。

3.6.1.4

トリム系統の不可逆性  すべてのトリム装置は,操縦士によるか,特殊な自動連結装置(着陸フ

ラップに対するものなど)によるか又は増大・増強装置の作動によって変更しない限り,いつまでも与え

られた設定位置を維持しなければならない。もし,トリム装置と一緒に自動連結装置や増大・増強装置を

使用するならば,各連結装置や増大・増強装置の操作指令を取り去ったときに,トリム装置がその最初の

トリム位置に正確に復帰することを保証するような対策を講じなければならない。

3.6.2

速度及び飛行経路制御装置  縦の操縦能力と応答時間は,運用飛行範囲内のどのような飛行条件に

おいても,飛行経路と対気速度を適切に制御するのに十分なものでなければならない。この要求事項は,

スロットル,スラストリバーサ,補助抵抗装置及びフラップなどの装置を使用して満足させてもよい。

3.6.3

過渡現象及びトリムの変化  二次操縦装置(スロットル,スラストリバーサ,フラップ,スラット,

スピードブレーキ,減速装置,急降下回復装置,可変後退角装置,降着装置など)の通常の操作による過

渡現象と定常トリム変化は,トリム操縦装置を使用しないで,所望の機首方位,高度,姿勢,上昇率,速

度又は荷重倍数を維持するのに過大な操だ力を要してはならない。この要求事項は,降着装置,スピード

ブレーキ,スラット又はフラップの不均等作動のような非対称作動の影響を含み,すべての飛行中の形態

変更と使用条件に基づく形態変更の組合せとに適用する。どのような場合でも,このような装置によって

好ましくないバフェッティングや振動を生じてはならない。

二次操縦装置に関するより個別な要求事項は,

3.6.3.1

3.6.4MIL-F-9490 (JIS W 0701)  及び MIL-F-18372 に示してある。

3.6.3.1

縦のトリムの変化  二次操縦装置の操作によって起こる縦のトリム変化は,運用手順の代表的条

件の下で飛行中に形態変化が行われた場合に,中央操縦かん式操縦装置に対しては 44N {4.5kgf} (10lbf)  又

は操縦輪式操縦装置に対しては 89N {9.1kgf} (20lbf) を超えるピーク縦揺れ操だ力を必要とするほど大き

くてはならない。

一般に,

表 15 に記載されている条件は,この要求事項に適合していることを確認するのに十分なもので

ある。

(可変後退翼を備えた飛行機については,

その飛行機の運用に矛盾しない追加要求事項を満足させる

ものとする。

それぞれ指定の初期条件に応じてトリムされた飛行機においては,指定した形態変更を行ったとき,指

定したパラメータを一定に維持するのに要するピーク操だ力は,操縦士の形態変更開始操作完了後,少な

くとも 5 秒間は規定値を超えてはならない。この期間後のトリム変化の大きさと速度は,通常のトリム装

置を使用して容易に操だ力をトリムできるものでなければならない。これらの要求事項は,レベル 1 を規


38

W 0402-1992

定する。レベル 2 及び 3 に対しては,許容できる力は,50%増とする。

表 15  縦のトリム変化条件

初期トリム条件

番号  飛 行

状態

高度

速度

降着 
装着

高 揚 力 装 置 及
び翼フラップ

スラスト

形態変更

一 定 に 保 つ べ き

パラメータ

1

進入

h

0min

正規場周
進入速度

上げ

上げ TLF

脚下げ

高 度 及 び 対 気 速
(

1

)

2

進入

h

0min

正規場周
進入速度

上げ

上げ TLF

脚下げ

高度

3

進入

h

0min

正規場周
進入速度

下げ

上げ TLF

高揚力装置及び翼フ
ラップ下げ

高 度 及 び 対 気 速
(

1

)

4

進入

h

0min

正規場周

進入速度

下げ

上げ TLF

高揚力装置及び翼フ

ラップ下げ

高度

5

進入

h

0min

正規場周

進入速度

下げ

下げ TLF

アイドルスラスト

対気速度

6

進入

h

0min

V

0min

下げ

下げ TLF

進入抗力装置下げ

対気速度

7

進入

h

0min

V

0min

下げ

下げ TLF

離陸スラスト

対気速度

8

進入

h

0min

V

0min

下げ

下げ TLF

離陸スラスト及びウ
エーブオフ(着陸復

航)に対する通常の
クリーンアツプ

対気速度

9

離陸

h

0min

V

0min

下げ

離陸

離陸 
スラスト

脚上げ

縦揺れ姿勢

10

離陸

h

0min

最 小 フ ラ

ッ プ 上 げ
速度

上げ

離陸

離 陸 ス ラ

スト

高揚力装置及び翼フ

ラップ上げ

対気速度

11

巡航及
び空対
空戦闘

h

0min

及び 
h

0max

水 平 飛 行
速度

上げ

上げ MRT

アイドルスラスト

縦揺れ姿勢

12

巡航及
び空対
空戦闘

h

0min

及び 
h

0max

水 平 飛 行
速度

上げ

上げ MRT

減速装置を作動

縦揺れ姿勢

13

巡航及
び空対

空戦闘

h

0min

及び 
h

0max

水 平 飛 行
速度

上げ

上げ MRT

最大増強スラスト

縦揺れ姿勢

14

巡航及
び空対

空戦闘

h

0min

及び 
h

0max

最 大 航 続
距離速度

上げ

上げ TLF

減速装置を作動

縦揺れ姿勢

(

1

)

運動中にスロットル設定を変更してもよい。

備考  補助抗力装置は最初は引っ込めている。

また,個別に述べていない形態のすべての詳細は,飛行状態に対して正規のものである。 
任務に対して設定された減速要求事項を満足させるのに出力減少が許容されるならば,番号 12 及び 14 の

減速装置の作動には許容出力減少を伴わなければならない。

3.6.4

補助急降下回復装置  急降下回復用だけに用いるどのような補助装置も,その作動によって常に垂

直加速度の正の増分を生じなければならないが,全垂直荷重倍数は,操縦装置自由で 0.8n

L

を超えてはな

らない。

3.7

大気のじょう乱


39

W 0402-1992

3.7.1

じょう乱モデルの式  飛行性の解析が対応する構造解析と矛盾しないように,連続乱気流モデルに

は,可能な限り,フォン  カルマンの式を用いなければならない。対応する構造解析を行わない場合やフ

ォン  カルマンの式の使用が適切でない場合には,ドライデンの式を用いてもよい。一般には,連続乱気

流モデルと孤立突風モデルの両方を用いなければならない。孤立突風モデルの突風の大きさを決定するの

に使用するスケールと強さは,ドライデンの乱気流モデルのものと同じとしなければならない。

3.7.1.1

乱気流モデル(フォン  カルマンの式)  乱気流速度のスペクトルについてのフォン  カルマン

の式は,次のとおりである。

[

]

5

6

g

2

u

u

2

u

u

339

.

1

(

1

1

2

)

(

Ω

L

L

Ω

Φ

+

=

π

σ

[

]

6

11

g

2

v

2

v

v

2

v

v

)

339

.

1

(

1

)

339

.

1

(

3

8

1

)

(

Ω

L

Ω

L

L

Ω

Φ

+

+

=

π

σ

[

]

6

11

g

2

w

2

w

w

2

w

w

)

339

.

1

(

1

)

339

.

1

(

3

8

1

)

(

Ω

L

Ω

L

L

Ω

Φ

+

+

=

π

σ

3.7.1.2

乱気流モデル(ドライデンの式)  乱気流の速度スペクトルについてのドライデンの式は,次の

とおりである。

2

u

u

2

u

u

)

(

1

1

2

)

(

g

Ω

L

L

Ω

Φ

+

=

π

σ

[

]

2

2

v

2

v

v

2

v

v

)

(

1

)

(

3

1

)

(

g

Ω

L

Ω

L

L

Ω

Φ

+

+

=

π

σ

[

]

2

2

w

2

w

w

2

w

w

)

(

1

)

(

3

1

)

(

g

Ω

L

Ω

L

L

Ω

Φ

+

+

=

π

σ

3.7.1.3

孤立突風モデル  三つの突風速度成分のいずれに対しても,また,微分によって三つの角成分の

いずれに対しても,下記の孤立突風モデルを用いてよい。

弧立突風は、

1

cosine

”の形をもち,次の式で表される。

v

0 ,x<0

÷÷ø

ö

ççè

æ

=

m

cos

1

2

d

x

v

v

m

π

,0

x

d

m

v

v

m

,x>d

m


40

W 0402-1992

大きいじょう乱に対する航空機の応答や操縦士の操縦を評価するために,前記の孤立突風を単独に又は

組み合わせて用いてよい。

また,ステップ関数形又は線形ランプ形の突風を用いてもよい。

3.7.2

中・高高度モデル  スケールと強さは,

610m (2 000ft)

を超えた高度の乱気流には等方性があると

いう仮定に基づく。そのとき,

σ

u

σ

v

σ

w

及び

L

u

L

v

L

w

3.7.2.1

乱気流のスケール長さ  使用すべきスケールの値は,次のとおりとする。

フォン  カルマンの式を用いる場合は

L

u

L

v

L

w

760m (2 500ft)

ドライデンの式を用いる場合は

L

u

L

V

L

w

530m (1 750ft)

3.7.2.2

乱気流の強さ

rms

値で表した乱気流の強さを,高度と遭遇確率(

σ

より大きい乱れに遭遇する確

率)の関数として

図 に示す。この規格の要求事項に適用するため単純化した曲線も示す。

図 7  乱気流の遭遇確率

3.7.2.3

突風の長さ

d

m

として,いくつかの値を用いなければならない。その各々は,それらをもつ突風

が飛行機とその操縦系統のそれぞれの固有振動数(より高い振動数の構造モードは除外してもよい。

)と同

調するように選んだものでなければならない。強程度の強さの突風ついては,乱気流のスケール長さより

短い波長をもつモードは除外してもよい。

3.7.2.4

突風の大きさ  軽及び中程度の突風の大きさ

U

g

V

g

W

g

は,3.7.2.3 に従って決定された

d

x

d

y

d

z

の値と

図 から求められた該当する乱気流強さの

rms

値とを用いて,

図 から決定しなければならない。

強程度の突風の大きさは,次のとおりでなければならない。

(a)

  V

G

(突風突入速度)において,

20m/s (66ft/s) EAS

(b)

  V

0max

において,

15m/s (50ft/s) EAS


41

W 0402-1992

(c)

  V

max

において,

7.6m/s (25ft/s) EAS

(d)

降着装置その他の装置を最大開位置又は最大伸長位置に開くか伸ばした状態で,

V

max

 (PA)

までの速度

15m/s (50ft/s) EAS

(e)

  6 100m (20 000ft)

を超える高度については,突風の大きさは,次のように高度とともに直線的に減少

させてよい。

(1)

  V

G

状態に対しては,高度

6 100m (20 000ft)

における

20m/s (66ft/s) EAS

から

15 200m (50 000ft)

にお

ける

12m/s (38ft/s) EAS

まで。

(2)

  V

0max

状態に対しては,高度

6 100m (20 000ft)

における

15m/s (50ft/s) EAS

から

15 200m (50 000ft)

おける

7.6m/s (25ft/s) EAS

まで。

(3)

  V

max

状態に対しては,高度

6 100m (20 000ft)

における

7.6m/s (25ft/s) EAS

から

15 200m (50 000ft)

おける

3.8m/s (12.5ft/s) EAS

まで。

(f)

  15 200m (50 000ft)

を超える高度については,

15 200m (50 000ft)

において規定した等価突風速度に係

50

ρ

ρ

[その高度での空気密度と

15 200m (50 000ft)

の標準大気密度との比の平方根]を乗じなけれ

ばならない。

図 8  孤立突風の大きさ

3.7.3

低高度じょう乱モデル  この箇条では,カテゴリ

C

(発着時飛行状態)でのすべての運用に対して

用いるべき大気じょう乱モデルを規定する。風のシア,乱気流及び突風の影響を別々に解析してもよい。

風のシア,乱気流及び突風の累積効果に関する要求事項に適合することを実証する場合には,完全な環境

の表現を考慮する,何らかの解析と操縦シミュレーションを必要とする。

また,実測した乱気流のつぎはぎ的な断続的性質を表すために,風のモデルと共に非ガウス乱気流表現

を用いてもよい。

3.7.3.1

風速  地上

6.1m (20ft)

の風速

u

6.1

を発生確率の関数として,

図 に示す。大気じょう乱の異なる

強さに対して用いるべき値を

図 に示す。


42

W 0402-1992

図 9  高度 6.1m (20ft)  の平均風速遭遇確率

3.7.3.2

風のシア  風のシアのスカラー量は,高度の関数として示した次の平均風速分布の式を用いて規

定する。

ú

ú

ú

ú

û

ù

ê

ê

ê

ê

ë

é

÷÷ø

ö

ççè

æ

÷÷ø

ö

ççè

æ

=

÷÷ø

ö

ççè

æ

÷÷ø

ö

ççè

æ

=

0

0

20

w

0

0

1

.

6

w

20

ln

ln

1

.

6

ln

ln

z

z

h

u

u

z

z

h

u

u

ここに,

  z

0

0.046m (0.15ft)

,カテゴリ

C

飛行状態に対し,

0.61m(2.0ft)

,その他の飛行状態に対し

3.7.3.3

ベクトルシア  カテゴリ

C

については滑走路に対し,その他の飛行状態については飛行機の飛行

経路に対し異なる方向の平均風を考慮しなければならない。更に,与えられた高度変化にわたり平均風速

の方向の変化を,次のとおり考慮しなければならない。


43

W 0402-1992

じ よ う 乱
の強さ

平均風方位の
変化,度

ベクトルシア
の高度,m (ft)

軽程度

0

中程度 90  183

(600)

強程度

90

 91 (300)

シアの始まりに当たって,最初の風の方位と最初の高度に対する数値の範囲を考慮しなければならない。

滑走路に対して,3.3.7 に示す横風の値を超える

u

6

sin

ψ

w

の大きさ,又は高度

6.1m (20ft)

での

10kt

を超える

追風成分は,考慮する必要はない。

6.1m (20ft)

以外の高度では,この制限を適用しない。

3.7.3.4

乱気流  3.7.1.1 又は 3.7.1.2 の乱気流モデルを用いなければならない。高度の関数として,適切な

スケール長さを

図 10 に示す。使用すべき乱気流の強さは,

σ

w

0.1u

6.1

で,

σ

u

σ

v

σ

w

と高度の関数とし

図 11 に示す。

図 10  低高度乱気流積分スケール


44

W 0402-1992

図 11  水平乱気流の強さ rms 

3.7.3.5

突風  3.7.2.3 で規定する形の孤立突風を用い,その単一ランプ形及び二重のランプ形の両方を考

慮しなければならない。

d

m

としていくつかの値を用いなければならない。その各々は,それらをもつ突風

が飛行機とその操縦系統の各々の固有振動数と同調するように選んだものでなければならない。突風の大

きさは,

図 10 と図 11 から得た該当する値を用いて,図 から決定しなければならない。二重突風の前半

と後半は,互いに同じ長さ又は同じ大きさとする必要はない。

3.7.4

艦載機着艦じょう乱モデル  この箇条は,艦載機の着艦運用に使用する大気じょう乱モデルを規定

する。艦載機の着艦中の飛行機の操だ応答と経路制御の精度とを確認するために行う解析と操縦シミュレ

ーションに,このモデルを用いなければならない。このモデルは,3.7.3 の低高度モデルを補足するが,こ

れに代わるものではない。

艦への進入の最後の

800m (

2

1

mile)

のシミュレーションの間は,進入着艦じょう乱モデルを用いなければ

ならない。

u

速度成分は,甲板上の風の向きと同じとする。全じょう乱速度は,不規則自由大気乱流

  (u

1

v

1

,

w

1

)

,定常艦船後流じょう乱

  (u

2

w

2

)

,周期的艦船運動誘起乱流

  (u

3

w

3

)

及び不規則艦船後流じょう乱

(u

4

v

4

,

w

4

)

によって生じる部分を加えて計算する。したがって,全大気じょう乱成分

u

g

v

g

w

g

は,次のとおり

となる。

u

g

u

1

u

2

u

3

u

4

v

g

v

1

v

4

w

g

w

1

w

2

w

3

w

4

すべての不規則じょう乱フィルタへの入力は,広帯域で平均値が

0

,分散が

1

の正規分布の乱数発生器


45

W 0402-1992

の出力をフィルタすることによって発生させなければならない。

3.7.4.1

自由大気乱流成分  飛行機の相対的位置に関係しない自由大気乱流成分は,次のスペクトルを生

じるように,3.7.4 で述べた白色雑音発生器の出力をフィルタすることによって表す。

2

1

u

)

5

.

30

(

1

0

.

61

)

(

Ω

Ω

Φ

+

=

rad/m

当たり

ú

û

ù

ê

ë

é

+

当たり

rad/ft

)

100

(

1

200

)

(

2

1

u

Ω

Ω

Φ

ú

ú

û

ù

ê

ê

ë

é

÷

ø

ö

ç

è

æ

+

+

+

=

2

2

2

1

v

3

122

1

]

)

305

(

1

[

]

)

122

(

1

[

800

1

)

(

Ω

Ω

Ω

Ω

Φ

  rad/m 当たり

ú

ú

ú

ú

ú

û

ù

ê

ê

ê

ê

ê

ë

é

ú

ú

û

ù

ê

ê

ë

é

÷

ø

ö

ç

è

æ

+

+

+

=

当たり

rad/ft

3

400

1

]

)

000

1

(

1

[

]

)

400

(

1

[

900

5

)

(

2

2

2

1

v

Ω

Ω

Ω

Ω

Φ

2

1

w

)

48

.

30

(

1

8

.

21

)

(

Ω

Ω

Φ

+

=

  rad/m 当たり

ú

û

ù

ê

ë

é

+

=

当たり

rad/ft

)

100

(

1

6

.

71

)

(

2

1

w

Ω

Ω

Φ

ここに,

空間周波数 rad/m (rad/ft)

3.7.4.2

母艦の空気後流の定常成分  母艦の空気後流の定常成分は,距離の関数である定常風の減少と船

の後の顕著な吹上げとからなる。

図 12 に,定常風関数

u

2

/

V

w/d

w

2

/

V

w/d

を船の横揺れ中心からの距離の関

数として示す。

図 12  母艦後流定常風比


46

W 0402-1992

3.7.4.3

母艦の空気後流の周期的成分  空気後流の周期的成分は,船の縦揺れ振動数,縦揺れの大きさ,

甲板上の風及び航空機の距離によって変わる。これらの成分は,次のとおりに計算する。

u

3

θ

s

V

w/d

 (2.22

+0.002 95

x

)

C

u

3

θ

s

V

w/d

 (2.22

+0.000 9

x

)

C

w

3

θ

s

V

w/d

 (4.98

+0.005 91

x

)

C

w

3

θ

s

V

w/d

 (4.98

+0.001 8

x

)

C

ここに,

ïþ

ï

ý

ü

ïî

ï

í

ì

+

ú

û

ù

ê

ë

é

+

÷÷ø

ö

ççè

æ

+

=

p

V

x

V

V

V

t

w

C

d

/

w

d

/

w

d

/

w

p

85

.

0

85

.

0

1

cos

    ここに,  w

p

=船の縦揺れ角振動数  rad/s

θ

s

=船の縦揺れ角  rad

p=ランダム位相角  rad

成分は,x<−682m (−2 236ft)  に対して 0 とし,また,成分は,x<−773m (−2 536ft)  に対して 0 と

する。

3.7.4.4

母艦の空気後流の不規則成分  船に関連する不規則速度成分は,白色雑音をフィルタすること

3.7.4 参照)によって次のとおりに計算する。

1

)

(

)

input

(

)

(

2

)

(

4

+

=

jw

x

x

x

u

τ

τ

σ

1

35

.

3

)

input

(

66

.

6

035

.

0

4

4

+

=

=

jw

V

u

w

d

w

ここに,

σ (x)  : 振幅 rms 値 m/s (ft/s)  (図 13 参照)

τ

 (x)  : 時定数 s(図 13 参照)

)

10

sin(

1

.

0

)

(

input

t

jw

jw

π

÷÷ø

ö

ççè

æ

+

= 乱数出力

図 13  母艦の空気後流の 成分の時定数及び分散


47

W 0402-1992

3.7.5

解析におけるじょう乱モデルの適用  突風と乱気流の速度は,飛行機の運動方程式の空力項だけに

適用し,また,空力検出器が飛行機の増大系統の部分である場合は,このような検出器に及ぼす突風と乱

気流の直接の影響を含めなければならない。孤立突風モデルを用いている場合には,飛行機が突風を通過

するときのすべての重要な状態を解析に取り入れなければならない。じょう乱モデルをどのように適用す

るかは,機体の解析に関係する周波数範囲に依存する。構造モードが重要な場合は,乱気流速度の正確な

分布を考慮するのがよい。この目的のために,u

g

と v

g

は だけの一次関数とみなすことは容認できるが,

w

g

は,空気力とモーメントを評価するとき,二次元で と 両方の関数とみなさなければならない。

構造モードが重要でない場合は,機体の剛体応答は,じょう乱速度は直線的なこう配をもち,飛行機は

一様な突風又は乱気流を受けていると考えて評価してもよい。ここに一様な突風又は乱気流を受けるとい

うことは,飛行機の重心において定義した u

g

v

g

w

g

を受けることを意味する。乱気流による角速度は,

実質上飛行機の角速度と等しい。これらの角速度の近似は,次のように定める(正確には,非常に低い周

波数においてだけ)

x

W

q

=

=

g

g

g

α

,

y

W

p

=

g

g

,

x

V

r

=

g

g

更に,乱気流による角速度のじょう乱スペクトルは,次の式で与えられる。

2

w

w

2

w

g

4

1

4

8

.

0

)

(

3

1

÷

ø

ö

ç

è

æ

+

÷

ø

ö

ç

è

æ

=

Ω

b

b

L

L

Ω

Φp

π

π

σ

,

)

(

4

1

)

(

g

2

2

g

Ω

Φw

Ω

b

Ω

Ω

Φq

÷

ø

ö

ç

è

æ

+

=

π

)

(

3

1

)

(

g

2

2

g

Ω

Φv

Ω

b

Ω

Ω

Φr

÷

ø

ö

ç

è

æ

+

=

π

ここに,  b:  翼幅

乱気流成分 u

g

v

g

w

g

及び P

g

は,統計的意味では互いに独立(相関々係がない)とみなさなければなら

ない。しかし,q

g

は w

g

と,r

g

は v

g

と相関々係がある。孤立突風に対して直線こう配を用いると,次の形の

角速度の乱れが得られる。

÷÷ø

ö

ççè

æ

=

m

m

g

sin

d

x

p

p

π

  0≦xd

m

低高度モデルに関しては,乱気流速度成分 u

g

v

g

w

g

は,u

g

を相対的平均風ベクトルの方向と同じ方向

に取り,w

g

を垂直に取った軸に沿って取るべきである。

3.8

じょう乱モデルの使用に関する要求事項  発注者が要求するときは,飛行性に及ぼすじょう乱の影

響を,3.8.23.8.3.2 の要求事項に従って系統的に考慮しなければならない。特に,3.8.3.1 が 3.1.10.1 に,

3.8.3.2

が 3.1.10.2 におき代わる。

3.8.1

じよう乱モデルの使用  3.7.13.7.4.4 の各箇条は,風のシア,連続不規則乱気流及び孤立突風を規

定するが,これらは,次の事項を評価するのに用いなければならない。

(a)

飛行機の飛行性に及ぼすある種の環境条件の影響。

(b)

環境条件によって生じた混乱から回復させる操縦士の能力。

(c)

手動及び自動着艦中の飛行経路制御の精度。

この規格の目的のためには,大気は次の三つの領域からなるとみなさなければならない。すなわち,低

高度[地面上から約 610m (2 000ft) AGL(地面からの高度)まで]

,中・高高度[約 610m (2 000ft)  を超え


48

W 0402-1992

る高度]及び着艦だけについて,発着時進入[高度 0∼91m (0∼300ft)  及び着艦までの 800m (

2

1

mile)

低高度モデルは,カテゴリ C と発注者が指定した他の飛行状態(例えば,地上攻撃,地形追随)に適用

しなければならない。中・高高度モデルは,地上に近いことが問題とならない飛行状態,一般にはカテゴ

リ A 及び B に適用することを意図している。適用に際しては,中・高高度モデルだけについて平均高度に

おける条件を用いてもよい。着艦じょう乱モデルは,艦載機だけに適用する。

3.8.2

定性的適合度  飛行性の定性的適合度を評価するに当たっては,じょう乱の三つの強さを考慮しな

ければならない。これらの強さは,3.7 に定義する軽程度,中程度及び強程度とする。これらのじょう乱の

影響に関する要求事項は,異なる飛行包囲線と飛行状態に対して 3.8.3.1 と 3.8.3.2 に示してある。

飛行性の定性的適合度は,次のとおりに区分する。

満足

任務飛行状態に対して,飛行性が適切なことが明白な場合。

容認可能  任務飛行状態を達成するのに飛行性は適切であるが,操縦士の作業負担がいくらか増大

し,若しくは任務の効率が低下し,又はその両方が起こる場合。

操縦可能  飛行機は安全に操縦できるが,操縦士の作業負担は過大となり,若しくは任務の効率が不

適切となり,又はその両方が起こるような飛行性。カテゴリ A 飛行状態は,安全に終わ

らせることができ,カテゴリ B 及び C 飛行状態は完了させることができる。

回復可能  じょう乱を抜け出すのに十分な時間,操縦を維持できるような飛行性。すべての飛行状態

を安全に終わらせることができ,ウエーブオフ・着陸復航を完遂できる。

3.8.3

大気じょう乱の影響  飛行機を異常な条件の下で運用することが要求される可能性を表すのに,こ

の規格では 1.5 で示す飛行性のレベルを用いている。このような異常な条件は,また,極端な大気じょう

乱や条件のある組合せの結果として起こることがある。これらの要因に関して,飛行性の低下は,3.8.3.1

と 3.8.3.2 の規定に従って許容する(4.1.1 も参照のこと。

3.8.3.1

飛行機の正規状態に対する要求事項  大気のじょう乱中では,飛行機の正規状態(3.1.6.1 参照)

に対する最小要求飛行性は,

表 16 に規定するとおりとする。

表 16  飛行機の正規状態に対するレベル

運用飛行包囲線内

実用飛行包囲線内

大気じょう乱

定 量 的 要
求事項

定 性 的 要
求事項

定 量 的 要
求事項

定 性 的 要
求事項

静穏から軽程

度まで

レベル 1

満足

レベル 2

容認可能

軽程度から中

程度まで

レベル 1

容 認 可 能

以上

レベル 2

操 縦 可 能

以上

中程度から強

程度まで

操 縦 可 能

以上

回 復 可 能

以上

3.8.3.2

飛行機の故障状態に対する要求事項  飛行機が故障状態(3.1.6.2 参照)にある場合,3.8.3.1 で規

定するより低いレベルに遭遇する確率が十分に小さいときだけ,飛行性が低下しても許容する。発注者が

設定した間隔で,受注者は,入手できる最も正確な資料に基づいて,1 飛行当たりの各飛行機故障状態の

発生確率並びに運用及び実用飛行包囲線内で飛行性に及ぼすその故障状態の影響を決定しなければならな

い。これらの決定は,次の点を除き MIL-STD-756 に基づかなければならない。

(a)

すべての飛行機の構成部品と系統は,その飛行機の設計に当たり受注者が考慮すべき最長運用任務時

間に等しい 1 飛行当たりの時間,作動しているものと仮定する。

(b)

各個別の故障は,飛行包囲線内で最も危険(飛行性の意味で)であると考えられる点で発生するもの


49

W 0402-1992

と仮定する。

これらの故障状態の確率と影響とから,受注者は,一つ以上の故障のために,一つ以上の飛行性がレベ

ル 2 に低下する 1 飛行当たりの総合確率を決定しなければならない。受注者はまた,一つ以上の飛行性が

レベル 3 に低下する確率を決定しなければならない。

表 17 は,飛行性の低下に遭遇する確率の関数として

要求事項を規定する。

表 17  飛行機の故障状態に対するレベル

故障状態 I(

1

)

故障状態 II(

2

)

大気じょう乱

定 量 的 要
求事項

定 性 的 要
求事項

定 量 的 要
求事項

定 性 的 要
求事項

静穏から軽程

度まで

レベル 2

容 認 可 能

以上

レベル 3

操 縦 可 能

以上

軽程度から中

程度まで

レベル 2

操 縦 可 能

以上

レベル 3

回 復 可 能

以上

中程度から強

程度まで

回 復 可 能

以上

(

1

)

運用飛行包囲線内の飛行に対して,故障による飛行
性レベルの低下に遭遇する確率は,1飛行当たりより

10

2

小さい。

(

2

)

運用飛行包囲線内の飛行に対して,故障による飛行
性レベルの低下に遭遇する確率は,1 飛行当たり 10

4

より小さく,実用飛行包囲線内の飛行に対して,

故障による飛行性レベルの低下に遭遇する確率は,1
飛行当たり 10

2

より小さい。

4.

品質保証

4.1

適合性の実証  3.のすべての要求事項に適合していることを,解析によって実証しなければならない。

更に,要求事項の多くの事項に適合していることを,シミュレーション,飛行試験又はその両方によって

実証する。適合性を実証する方法は,発注者と受注者との間の合意によって設定しなければならない。設

計と試験の条件の数を制限するため,詳細調査用の代表的飛行条件,形態,外部搭載物数,搭載状態など

を決定しなければならない。選定した設計点は,要求事項を適用するその他の条件に対して正確な外挿が

できるように十分に取らなければならない。

表 18 は,一般的手引を規定するが,個々の飛行機設計の特殊性のために追加又は代替の試験条件を必要

とすることもある。所要の故障解析は,完全なものでなければならない。ただし,承認された特殊故障状

態(3.1.6.2.1 参照)だけはこの限りではない。

4.1.1

解析による適合性

4.1.1.1

故障状態の影響  3.1.10.2 の要求事項に理論的に適合していることを確認するため,次の段階を

踏まなければならない。

(a)

飛行性に重要な影響をもつ飛行機の故障状態を明確にする(3.1.6.2 参照)

(b)

運用任務中に遭遇する最長飛行継続時間を定める(3.1.1 参照)

(c)

前記の飛行継続時間に基づいて,1 飛行当たりの種々の飛行機故障状態に遭遇する確率を決定する

3.1.10.2 参照)

(d)

個々の要求事項で定めるレベルで,各飛行機故障状態に関連する飛行性低下の程度を決定する。

(e)

最も危険な飛行機故障状態(考慮している飛行包囲線内で,飛行性の意味で最も危険であると考えら


50

W 0402-1992

れる点で故障が発生するものと仮定して)を決定し,更に,機器の故障によって運用飛行包囲線内で

レベル 2 の飛行性に遭遇する総合確率を計算する。同じように,運用飛行包囲線内でレベル 3 の飛行

性に遭遇する確率を計算することなどを行う。

(f)

前記の計算値を 3.1.10.2 と 3.1.10.3 に規定する要求事項と比較する。遭遇確率の近似推定の実例を次に

示す。

故障がすべて統計的に独立であるときは,運用飛行範囲内で飛行性をレベル 2 に低下させるすべて

の飛行機故障状態に遭遇する確率の合計を決定する。この合計は,1 飛行当たり 10

2

未満でなければ

ならない。

もし,要求事項が満足されないときは,設計者は,次のような代替手順を考慮しなければならない。

(a)

より起こりそうな故障状態に関連する飛行機の飛行性を改善する,又は

(b)

機器の再設計,冗長性などによって,より起こりそうな故障状態に遭遇する確率を減少させることな

どを行う。

どのような与えられた飛行機故障状態(特殊故障状態を除く。

)でも,それに遭遇する確率のいかん

にかかわらず,飛行性は,レベル 3 より下に低下してはならない。

4.1.1.2

大気じょう乱の影響  4.1.1.1 は,じょう乱を考慮しないで,飛行機故障状態が飛行性を低下させ

る影響の下で要求事項を満足させるための手順を示している。大気のじょう乱もまた,3.8.2 に規定すると

おり操縦士の見解を悪くさせることがある。適用に際しては,操だ力及び操だ量,並びに定常状態及び動

応答パラメータ(例えば,n

0max

F

s

/n

及び

φ

t

)の数値は,大気じょう乱があるときの平均値とみなすべきで

ある。これらの値は,しばしば静穏大気中の値と同じである。周波数応答パラメータと操縦オーソリティ

の数値は,大気じょう乱のそれぞれの特定の強さにおいて,その飛行機に対して実効値とする。それから

3.8.3.1

と 3.8.3.2 の定性的要求事項は,4.1.1.1 で明確にした飛行機正規状態と危険な故障状態の両方につい

て評価するのがよい。

4.1.1.3

計算仮定  3.1.10.2 (a)(b)の仮定は,幾分控えめであるが,それは 3.1.10.2 の所要の計算を簡

略化し,しかも理論的予測に対する有効な一組の基本的法則を提供する。これらの仮定の理由は,次のと

おりである。

(a)

“……構成部品と系統は……最長運用任務時間に等しい 1 飛行当たりの時間,作動している……”

。大

抵の構成部品の故障データは飛行時間当たりの故障で示されているので,たとえ連続運用が代表的で

ないことがあっても(例えば,超音速飛行中だけヨーダンパをオンにする。

,故障確率は,

“代表的”

全飛行時間を用いて飛行当たりを基礎に予測しなければならない。

“代表的”なものとして“最長運用

任務時間”が,自然である。もし,故障までの領収サイクル信頼性データが入手できるときは

MIL-STD-756 参照)

,発注者の承認を受けて,運用任務当たりの最大サイクルに基づく予測のため

にこれらのデータを使用してもよい。どのような場合でも,4.に従って確認する 3.1.10.2 の要求事項の

適合性は,飛行当たりの遭遇確率に基づく。

(b)

“故障は,最も危険と考えられる点で発生するものとみなされる……”

。この仮定は,問題とする実際

の故障に続く飛行状態を考えて,3.1.6.2 の要求事項と歩調を合わせている。運用の立場から見て非現

実的な場合,個別の飛行機故障状態は,飛行機の特殊故障状態の分類に入れることもある(3.1.6.2.1

参照)


51

W 0402-1992

4.1.2

シミュレーション  強程度のじょう乱の影響,地面に接近した事象(3.2.3.4 を飛行で実証しなけれ

ばならない場合を除く。

,故障状態とじょう乱の組合せなどのような条件や事象を評価するのに,飛行試

験の危険性,範囲又は困難さのため,飛行試験よりもむしろシミュレーションを指示することがある。更

に,

発注者との合意によって,

地上特性が適切であることを実証するため,

また,

大気のじょう乱中と 4.1.1.1

で明確にした危険な条件において定性的要求事項に適合していることを確認するため,新設計機の初回飛

行前にパイロットシミュレーションを実施しなければならない。

シミュレーションが,ある要求事項に対する適合性を実証する最後の方法である場合,シミュレーショ

ンモデルは,飛行試験データによって正当性を立証し,更に,発注者の承認を得なければならない。

4.1.3

飛行試験による実証  所要の飛行試験は,4.1.1 と 4.1.2 から得た結果を用いて,発注者,試験機関

及び受注者が共同して決定したとおり,運用,技術及び安全性を考慮して定める。中及び強程度のじょう

乱における要求事項を飛行試験によって実証することは,飛行機の任務によって必要とされない限り,実

施することを要求しない。飛行によっては,実際のじょう乱に遭遇することがあると予想される。そのと

きは,もしじょう乱の強さが区分できれば,定性的要求事項を適用する。

4.2

飛行機の状態  飛行機の状態を定めるパラメータを表にしなければならない。表 19 は,容認できる

形式の例を示す。

4.2.1

重量及び慣性モーメント  表 18 に規定した“最大重量”や”最大慣性モーメント”などの用語は,

3.1.2

や 3.1.3 と矛盾しない最も重く,また,最も大きいことを意味する。臨界重心位置が示されている場

合は,飛行機の重量とそれに伴う慣性モーメントは,その臨界重心位置が得られる最も不利な運用重量状

態に対応するものでなければならない。

4.2.2

重心位置  表 18 に規定した“重心最前方”や“重心最後方”などの用語は,3.1.2 と矛盾しない最

前方又は最後方を意味する。臨界重量又は臨界慣性モーメントが示されている場合には,重心位置は,そ

の臨界重量又は臨界慣性モーメントが得られる最も不利な運用重量状態に対応するものでなければならな

い。

4.2.3

スラスト設定  スラストの設定は,表 19 に記載のとおりでなければならない。

4.3

設計及び試験の条件

4.3.1

高度  発着時飛行状態に対しては,通常,3 050m (10 000ft)  未満(低高度)のただ 1 高度だけで選

定した飛行機状態を調べれば十分である。非発着時飛行状態に対しては,通常,3 050m (10 000ft)  未満の

1

高度において,又は最低運用高度(低高度)

,最高運用高度  (h

0max

)

及び中間の 1 高度において選定した

飛行機状態を調べれば十分である。最高運用高度が 12 200m (40 000ft)  を超える場合又は安定性若しくは

操縦性が高度に応じて急激に変化する場合には,

表 18 に規定されるものより多くの中間高度を調査しなけ

ればならない。実用飛行包囲線が運用飛行包囲線のはるかに上か下に広がっている場合には,実用高度限

界を考慮しなければならない。


52

W 0402-1992

表 18  設計及び試験条約の手引(

3

)(

4

)  


53

W 0402-1992


54

W 0402-1992


55

W 0402-1992


56

W 0402-1992


57

W 0402-1992

(

1

)

最大重量と組み合わせて

(

2

)

最小重量と組み合わせて

(

3

)

ダッシュ  (−)  は,一般的指示をなし得ないことを示す。

(

4

)

“必要に応じて”という句は,飛行条件が要求事項で規定されるか,又は試験飛行運動の性質によって定められる
ことを示す。

(

5

)

米印  (※)  は,すべての適用可能なカテゴリ A 飛行状態を示す。


58

W 040

2-199

2

表 19  飛行機の正規状態

飛行状態

重量

重心

外 部 搭 載

スラスト

ス ラ ス ト

ベ ク ト ル

角度

高揚力

装置

翼後退角 翼取付け角

装置

ス ピ ー ド

ブレーキ

貨物扉等

安 定 増 大

装置

その他

離陸

T

上昇

C

巡航

C

ロイター

L

降下

緊急降下

E

緊急減速

D

進入

ウエーブオフ/着陸復航

W

着陸

空対空戦闘

C

地上攻撃

G

武器投下・発射

W

空中投下

A

空中回収

A

偵察

R

空中燃料受給機

R

空中給油機

地形追随

対潜捜索

A

密集編隊飛行

カタパルト離陸

C


59

W 0402-1992

4.3.2

特殊条件  前記の飛行条件に加えて,次の条件を生じる速度−高度の組合せについて,適用できる

場合には,すべてこれを調査しなければならない。

(a)

操縦装置の変位 1 度当たりの最大垂直加速度応答。

(b)

単位操だ力当たりの最大垂直加速度応答。

(c)

最大動圧と最大マッハ数

4.4

特殊設備における試験  ある種の試験は,その性質上,発注者又は受注者のいずれも入手できない

第三者がもつ特殊設備でだけ行うことが可能である。このような場合に,発注者が特殊施設における試験

の支援について同意を得たとき,

試験で得られた結果の解析は,

適合性の解析的実証の必要な部分をなす。

5.

引渡し準備

5.1

この規格には適用しない。

6.

注記

6.1

用途  この規格は,有人飛行機に対する飛行性要求事項を規定し,発注者が行う飛行機の領収可能

性の判定に対する基礎の一つをなすものである。この規格は,安定性・操縦性の計算,風洞試験結果の解

析,シミュレータによる評価,飛行試験などに使用するための基準に関する設計要求事項からなる。要求

事項は,本質的に良好な基本機体を提供することによってできる限り満足させるとよい。

基本機体の特性と増強された動応答特性との間の適正なバランスを決定する際に,費用,性能,信頼性,

整備などのトレードオフが必要である。受注者は,どのような特定の要求事項でも,それを満足させるこ

とによって生じることがある重要な設計上のペナルティについて発注者に助言するとよい。

6.2

用語の定義  この規格の全体を通じて使用する用語と記号は,次のように定義する。

6.2.1

一般

S

翼面積

s

ラプラス演算子

q

動圧

MSL

平均海面

T

2

振幅が 2 倍となるまでの時間,振動に対しては T

2

n

ζω

693

.

0

,1 次のダイバージェンスに対して

は T

2

=0.693

τ

飛行機の正規状態  (airplane normal states)

表 19 の用語と様式を用いて,飛行機の正規状態(3.1.6.1 

照)を定義しなければならない。

実用上昇限度 (service ceiling)   与えられた対気速度において指定された重量とエンジンスラストで上

昇率が 30m/min (100ft/min)  となる高度。

戦闘上昇限度 (combat ceiling)   与えられた対気速度において指定された重量とエンジンスラストで上

昇率が 150m/min (500ft/min)  となる高度。

巡航上昇限度 (cruising ceiling)   与えられた対気速度において指定された重量と正規スラストで上昇率

が 90m/min (300ft/min)  となる高度。

h

max

最大実用高度(3.1.8.3 で定義)

h

0max

最大運用高度(3.1.7 参照)

h

0min

最小運用高度(3.1.7 参照)

c. g.

飛行機の重心


60

W 0402-1992

6.2.2

速度

等価対気速度  (equivalent airspeed, EAS)    真対気速度に

σ

を乗じたもの。ここに

σは,与えられた高度

での大気密度の標準海面空気密度に対する比である。

校正対気速度 (calibrated airspeed)   位置誤差と計器誤差については修正されたが,圧縮性については修

正されていない対気速度計の読み。

断念速度 (refusal speed)   使用可能な滑走路長において,飛行機が加速し,それから停止できる最大速

度。

M

マッハ数

V

飛行経路に沿う対気速度(該当する場合は,この規格では を で置き換えてもよい。

V

s

  飛行経路に垂直な 1G 状態での失速速度(等価対気速度)であって,次のうちで最大のもの

として定義する。

(a)

  C

Lmax

における定常直線飛行速度。ここに C

Lmax

は,揚力係数  (L/gS)  対迎え角曲線で,C

L

がゼロから

増加するときに生じる最初の局所最大値。

(b)

制御されない縦揺れ,横揺れ又は偏揺れが起こる速度(3.4.2.1.2 参照)

(c)

耐え難いバフェット又は構造振動が起こる速度。

V

s

を決定するための条件  飛行機は最初に下記の設定でほぼ 1.2V

s

にトリムし,その後,そのトリムと

スロットルの設定を一定に保たなければならない。

飛行状態

スラスト設定(

1

)

トリム設定

上昇 (CL)

正規上昇

直線飛行に

降下 (D)

正規降下

直線飛行に

緊急降下 (ED)

アイドル

直線飛行に

緊急減速 (DE)

アイドル

直線飛行に

離陸 (TO)

離陸

推奨離陸決定値に

進入 (PA)

正規進入

正規進入に

ウェーブオフ・着陸復航

(WO)

離陸

正規進入に

着陸 (L)

アイドル

正規進入に

その他すべて 1.2V

s

における水平

飛行スラスト (TLF)

直線飛行に

(

1

)

すべてのエンジンで,又は臨界エンジンが不作動状態のときの
残りのエンジンで,いずれかより大きい V

S

の値を生じる方の

スラスト設定。

飛行試験においては,動的揚力効果を最小にするため,速度を

極めて緩やかに(典型としては

2

1

kt/s

以下)減少させる必要があ

る。失速が起こるとき,荷重倍数は,正確には 1G ではない。こ
の場合は,V

S

を次のように定義する。

f

s

n

V

V

=

ここに,と n

f

は失速時の測定値であり,n

f

は飛行経路に垂直

な荷重倍数とする。

V

s

(X) ,

V

min

(X) ,

V

max

 (X)

飛行状態 に関連する与えられた形態,重量,重心位置及び外部搭載物の組合せに対す

る速度 V

s

V

min

V

max

の速度記号。例えば,V

max

 (TO)

という表示は,3.2.3.3.2 で使用さ

れているが,これは意図する速度(考慮している重量,重心及び外部搭載物の組合せに

対して)が離陸飛行状態に関連する形態に対する V

max

であることを強調している。形態


61

W 0402-1992

(configuration)

と飛行状態とは離陸から上昇へと運動中に変わるので,これは混同を避

けることが必要である。

V

trim

トリム速度

V

end

最大航続時間を得る速度

V

L/D

最大揚抗比を得る速度

V

R/C

最大上昇率速度

V

range

風速ゼロの条件で最大航続距離を得る速度

V

NRT

正規定格スラストでの水平飛行速度(高速)

V

MRT

緊急定格スラストでの水平飛行速度(高速)

V

MAT

最大増強スラストでの水平飛行速度(高速)

V

max

最大実用速度(3.1.8.1 で定義)

V

min

最小実用速度(3.1.8.2 で定義)

V

0max

最大運用速度(3.1.7 参照)

V

0min

最小運用速度(3.1.7 参照)

V

G

突風突入速度

6.2.3

スラスト及び出力

スラスト及び出力  (thrust and power)    プロペラ機に対しては,この規格の全体を通じて“スラスト”と

いう語を“出力”という語で置き換えなければならない。

TLF

水平飛行スラスト

NRT

正規定格スラストで,これはエンジンを連続運転できる最大スラストである。

MRT

緊急定格スラストで,エンジンを規定の時間運転できる最大スラストである。

MAT

最大増強スラストで,その飛行状態について使用できるすべての手段によって増強された

最大スラストである。

離陸スラスト  (take off thrust)    離陸に使用できる最大スラスト。

6.2.4

操縦性パラメータ

縦,横及び方向の操縦装置  (pitch, roll, yaw controls)    それぞれ縦揺れ,横揺れ及び偏揺れのモーメント

を生じるように操縦士が操作する操縦かん又は操縦輪及びペダル。操縦室操縦装置。

縦揺れ操だ力  (pitch control fbrce) F

s

  操縦かんの握りの中心と操縦かんのピボットとの間を結ぶ直線に

垂直な方向にかんの握り又は操縦輪の中心に作用し,操縦士が操縦室操縦装置に加える力の対称面又は対

称面に平行な成分。

横揺れ操だ力  (roll control force)    操縦かん式操縦装置に対しては,かんの握りの中心とかんのピボット

とを結ぶ直線に垂直な方向にかんの握りの中心に作用し,操縦士が加える操だ力の対称面に垂直な面内の

成分。

操縦輪式操縦装置に対しては,操縦士が操縦輪の面内で輪軸の周りに加える全モーメントを輪のピボッ

トから操縦士の握りまでの平均半径で割ったもの。

偏揺れ操だペダル力  (yaw-control pedal force)    操縦士が偏揺れ操だペダルに加える力で,対称面に平行

な面内にあり,それぞれの偏揺れ操だペダルに通常載せる操縦士の足の甲の点で,ペダルに垂直に測定し

た押す力の成分の差。

直接垂直力制御装置 (direct normal force control)   飛行機の飛行経路を制御するという主目的のため直

接垂直力を生じる装置。直接垂直力制御装置は,一定の迎え角と一定の対気速度でその浮揚能力を変化さ


62

W 0402-1992

せることにより,又はジェット排気装置,プロペラ及びファンなどの品目の垂直力成分を制御することに

よって飛行機に加わる垂直力を直接に調節するという概念に与えられた説明的な名称である。

操縦能力 (control power)   飛行機に力又はモーメントを加えるとき,その操縦だ面の効き。例えば,利

用できる横揺れ操縦能力の 50%とは,許容横揺れ操だ力によって操縦士に利用できる最大横揺れモーメン

トの 50%ということである。

6.2.5

縦のパラメータ

ζ

sp

短周期振動の減衰比

ω

nSP

短周期振動の非減衰固有振動数

ζ

p

フゴイド振動の減衰比

ω

np

フゴイド振動の非減衰固有振動数

n

重心で測定した垂直加速度又は垂直荷重倍数

n

L

与えられた飛行機正規状態に対する対称飛行制限荷重倍数で,構造上の配慮に基づ

くもの。

n

max

n

min

最大及び最小実用荷重倍数

n (+) , n (−)

与えられた高度に対して,実用飛行包囲線を示す V線図上の の上限と下限

n

0max

n

0min

最大及び最小運用荷重倍数

n

0

 (

+) , n

0

 (

−)   与えられた高度に対して,運用飛行包囲線を示す V線図上の の上限と下限。

α

迎え角。胴体基準線と飛行機の重心における飛行経路への接線との間の角度で,対称面内

の角度。

α

s

与えられた飛行機の正規状態に関連する形態,重量,重心位置及び外部搭載物の組合せに

対する一定速度における失速迎え角で,次のもののうち最も小さいものとして定義する。

(a)

与えられた速度又はマッハ数で到達できる(飛行経路に垂直な)最高定常荷重倍数に

対する迎え角。

(b)

与えられた速度又はマッハ数において,制御できない縦揺れ,横揺れ又は偏揺れが起

こる迎え角(3.4.2.1.2 参照)

(c)

与えられた速度又はマッハ数において,耐え難いバフェットが起こる迎え角。


63

W 0402-1992

C

Lstall

前述の

α

s

における揚力係数。

n/

α

一定速度(対気速度とマッハ数)において縦揺れ操だ量の増加に関連して,迎え角の単位

変化当たりの定常垂直加速度変化。

F

s

/n

一定速度での に対する定常縦揺れ操だ力のグラジエント(3.2.2.2.1 参照)

γ

 

上昇角。上昇飛行に対して正。

÷

ø

ö

ç

è

æ

=

真対気速度

鉛直速度

1

sin

γ

θ

縦揺れ姿勢角 (pitch attitude) ,x 軸と水平面との問の x−z 面内で測定した角度。

L

飛行経路に垂直な空力揚力とスラスト成分の和。

6.2.6

横−方向のパラメータ

δ

AS

横揺れ操縦かん又は操縦輪のその経路に沿う変位。

τ

R

一次ロールモード時定数,安定モードを正とする。

τ

s

一次スパイラルモード時定数,安定モードを正とする。

λ

R

R

1

τ

λ

S

S

1

τ

ω

φ

伝達関数

φ/δ

AS

の分子の二次式の非減衰固有振動数。

ζ

φ

伝達関数

φ/δ

AS

の分子の二次式の減衰比。

ω

nd

ダッチロール振動の非減衰固有振動数。

ζ

d

ダッチロール振動の減衰比。

T

d

ダッチロールの減衰周期,T

2

d

nd

1

2

ζ

ω

π

ω

nRS

ロール−スパイラル連成振動の非減衰固有振動数。

ζ

RS

ロール−スパイラル連成振動の減衰比。

φ

y

軸と水平面との間の,y−z 面内で測定したバンク角(6.2.1 参照)

φ

t

3.3.4

で与えられた形の操縦装置の操だ量に対応する時間 におけるバンク角変化。

p

x

軸周りの横揺れ角速度(6.2.1 参照)

av

0sc

p

p

方向の操縦装置自由で横の操縦装置のステップ操だを行った後の横揺れ角速度の平均成

分に対する横揺れ角速度の振動成分の比。

2

3

1

2

3

1

av

sc

0

d

2

2

2

.

0

p

p

p

p

p

p

p

p

+

+

+

=

ζ

2

1

2

1

av

sc

0

d

2

.

0

p

p

p

p

p

p

+

=

ζ

ここに,p

1

p

2

及び p

3

は,それぞれ第一,第二及び第三のピークにおける横揺れ角速度

とする(

図 14 と図 15 参照)。

av

sc

0

φ

φ

ペダル自由で補助翼パルス操だを行った後のバンク角の平均成分に対するバンク角の振

動成分の比。

2

3

1

2

3

1

av

0

d

2

2

2

.

0

φ

φ

φ

φ

φ

φ

φ

φ

ζ

+

+

+

=

sc

2

1

2

1

av

0

d

2

.

0

φ

φ

φ

φ

φ

φ

ζ

+

=

sc

ここに,

φ

1

φ

2

及び

φ

3

は,それぞれ第一,第二及び第三のピークにおけるバンク角とする。


64

W 0402-1992

β

重心における横滑り角で,乱されない流れと対称面の間の角度。正の横滑り又は右横滑り

とは,対称面の右側から近づく入射流れの状態をいう。

∆β

横の操縦装置ステップ操だに対して 2 秒又はダッチロールの半周期のいずれか長い方の

時間内に起こる最大横滑り変位量である(

図 14 と図 15 参照)。

K

3.3.4

又は 3.3.4.1 の“適用横揺れ性能要求事項”に対する“操だ横揺れ性能”の比。ここ

で,

(a)

“適用横揺れ性能要求事項”  (

φ

t

) requirement

は,考慮しているクラス,飛行状態カ

テゴリ及びレベルについて,3.3.4 と 3.3.4.1 から決定する。

(b)

“操だ横揺れ性能”  (

φ

t

) command

は,偏揺れ操だペダルを 3.3.4 と 3.3.4.1 に規定す

る状態とし,与えられた横揺れステップ操だを行ったとき規定の時間で到達するバン

ク角である。

t

requiremen

)

(

command

)

(

t

t

φ

φ

=

K


65

W 0402-1992

図 14  横揺れ−横滑り連成パラメータ−右横揺れ


66

W 0402-1992

図 15  横揺れ−横滑り連成パラメータ−左横揺れ

t

n

β

ダッチロール振動に対して,右ステップ若しくはパルス横揺れ操だで 番目の極大値,又

は左操だで 番目の極小値に達する横滑り応答時間。

ステップ操だ入力を与え得ない場合


67

W 0402-1992

には,操縦装置は,できるだけ急速に動かさなければならない。

また,この定義のために,時間は,操縦室操縦装置の変位が操作量の振幅の半分を過ぎ

た瞬間から測定しなければならない。パルス入力に対しては,時間は,パルス持続時間の

半分の時点から測定しなければならない。

ψ

β

横滑りにおいてダッチロール振動の余弦表示に対する遅れとして表された位相角。

ここで,

)

1

(

360

360

n

d

+

=

n

t

T

Ψ

β

β

n

は上記の

t

n

β

における

n

と同じ。

p/

β

自由ダッチロール振動における横揺れ角速度と横滑りの間の位相角。角度は,

p

0

180

°の角度だけ

β

より進んでいるときに正とする。

|

φ/β|

d

任意の瞬間におけるダッチロールモードでのバンク角と横滑り角の範囲の振幅の比。

横揺れ−横滑り連成パラメータ測定例について,右横揺れに対しては

図 14,左横揺れに対しては図 15

に示す。これらのパラメータの測定には,ダッチロールのいくつかの振動が必要であり,また,適正に識

別するためには,一般に大きい横揺れ角速度と大きいバンク角変化を避けなければならないので,横揺れ

ステップ操だ入力は,小さくすべきである。

ψ

β

は横滑りのダッチロール成分の位相角であるから,ピーク

の位置が横揺れモードにより影響を受けないように十分に離れた下流でピークを選定するように注意しな

ければならないことは,特記すべき事項である。

実際には,補助翼入力に続く横揺れモード時定数の

1

又は

2

倍後に起こるピークは,比較的にゆがめら

れることがない。横滑り曲線に変曲

 (ramping)

があるときは,その変曲は曲線のピークの位置をダッチロ

ール成分の対応するピークから移動させるものであるから,また注意しなければならない。

実際には,横滑りのダッチロール成分のピークの位置は,まず横滑り曲線の変曲部を通る直線を引き,

次にその直線と横滑り曲線との垂直距離が最大をなす時間を記録して定める[

図 14 と図 15 (a)の場合に

関する次の図を参照のこと。

横滑り応答のダッチロール成分の最初の極大は,

t

2.95

秒で起こるから,


68

W 0402-1992

°

=

=

+

=

303

)

95

.

2

(

5

.

3

360

)

1

(

360

360

n

d

n

t

T

Ψ

β

β

飛行機の進入中のクラス

IV

レベル

1

の飛行性を審査すると,横滑り要求事項(

図 6)中のパラメータ

K

の基礎となる

表 の横滑り性能要求事項は,方向だペダル自由で(3.3.2.4 の横揺れと同じように)

1

秒で

φ

t

30

度である。定義から,この条件に対する

K

は,

t

reguiremen

)

(

command

)

(

1

1

φ

φ

=

K

したがって

図 14 と図 15 から,

(a)

の場合では,

K

30

.

0

30

1

.

9

=

(b)

の場合では,

K

27

.

0

30

1

.

8

=

(c)

の場合では,

K

23

.

0

30

8

.

6

=

(d)

の場合では,

K

20

.

0

30

0

.

6

=

6.2.7

大気じょう乱パラメータ

j

1

空間(誘導)周波数

  [spatial (reduced) frequency] rad/m (rad/ft)

ω

時間周波数

  (temporal frequency) rad/s

,ここで

ω

V

t

時間,秒

u

g

x

軸に沿ったじょう乱速度,前方を正とする。

m/s (ft/s)

v

g

y

軸に沿ったじょう乱速度,操縦士の右方を正とする。

m/s (ft/s)

w

g

z

軸に沿ったじょう乱速度,下向きを正とする。

m/s (ft/s)

備考

規則な

u

g

v

g

w

g

は,ガウス(正規)分布をもつ。

V

w/d

航空母艦の甲板上の風の大きさ,

m/s (ft/s)

σ

じょう乱の強さの

rms

値,ここに

ò

ò

=

=

0

0

2

)

(

)

(

ω

Φ

dΩ

Φ

σ

σ

u

u

g

rms

σ

v

v

g

rms

σ

w

w

g

rms

L

u

u

g

のスケール長さ,

m (ft)

L

v

v

g

のスケール長さ,

m (ft)

L

w

w

g

のスケール長さ,

m (ft)

Φ

ug

 (

)  

u

g

のスペクトル,ここに

Φ

ug

 (

)  Vφ

ug

 (

ω)

Φ

vg

 (

)  

v

g

のスペクトル,ここに

Φ

vg

 (

)  Vφ

vg

 (

ω)  

Φ

wg

 (

)  

w

g

のスペクトル,ここに

Φ

wg

 (

)  Vφ

wg

 (

ω)  

v

m

一般孤立突風強さ,軸の正方向に沿うものを正とする。

mx, y, z, m/s (ft/s)

d

m

一般孤立突風長さ(常に正)

mx, y, z, m (f/t)

u

6

地面上

6.1m (20ft)

における風速。

x

飛行機からの船の縦揺れ中心までの距離,船の後方が負,

m (ft)

ψ

w

滑走路に対する平均風向(3.7.3.3 参照)

6.2.8

大迎え角要求事項で使用する用語

ポストストール

 (post-stall)

  公称失速迎え角よりも大きい迎え角を含む飛行領域。ポストストール領域

の飛行機特性は,制御飛行からデパーチャした後の次の三つの多少なりとも区別し得る連続した飛行機の


69

W 0402-1992

運動から成ることがある。すなわち,ポストストール

ジャイレーション,初期きりもみ及び発展したきり

もみ。

ポストストール  ジャイレーション

 (Post-stall gyration) (PSG)

  制御飛行からデパーチャした後の

1

上の飛行機軸周りの制御不能の運動。この種の飛行機の運動は失速角より大きい迎え角を取るけれども,

運動の途中に断続的により小さい迎え角となることもある。

きりもみ

 (spin)

  失速後の飛行機の運動の部分で,持続的な偏揺れ回転を特徴とする。きりもみには,

正面

 (erect)

又は背面きりもみ,水平(大迎え角)又は垂直

 (steep)

(迎え角は余り大きくないがまだ失速

角以上)きりもみのことがあり,更に,回転運動は,その上に縦揺れ,横揺れ及び偏揺れの振動を重ねら

れることがある。初期きりもみは,運動の最初の過渡段階であって,そこではきりもみモードを識別でき

ないが,通常その後に進展したきりもみが続き,その段階ではきりもみモードを識別できる。

6.3

表 の F

s

/n

限界の解釈

F

s

/n

の限界は

n

L

n/

α

の両方の関数であるので,

表 は,かなり複雑であ

る。その使用例を示すため,

図 16 に,中央操縦かん式操縦装置を備え

n

L

7.0

の飛行機について限界を示

した。

図 16  縦揺れ操縦力グラジエント限界の例, 

中央操縦かん式操縦装置,n

L

7.0

6.4

ゲインスケジュール  主操縦系統における機械的ギヤリングと安定増大装置のゲインの変更は,時

にフラップや翼後退角などの二次操縦装置の設定値の関数として,その変更をスケジューリングすること

によって行うことがある。この方法は,一般には容認できるが,操縦士が飛行機を常には釣合い状態に保

つとは限らないので,ギヤリングとゲインは,通常は,トリム操作装置の設定値の関数としてスケジュー

リングしないのがよい。

6.5

エンジンの影響  エンジン運転の二次的効果は,飛行性と重要な関係をもつことがあり,設計にお

いてこれを見逃さないことが望ましい。これらの考慮事項には,機体の動的運転に及ぼすエンジンのジャ

イロモーメントの影響,大迎え角飛行特性(3.4.2 参照)に及ぼすエンジン運転の効果(フレームアウトや

故意の停止を含む。

)及び操縦系統操作用のエンジン抽出動力の低回転速度における低下などがある。


70

W 0402-1992

6.6

空力弾性,操縦装置及び構造振動の影響  空力弾性,操縦装置及び構造振動は,飛行機の飛行性に

重要な影響を及ぼすことがあるので,この規格の要求事項と適合していることを検討するための計算や解

析には,このような影響を見逃さないことが望ましい。

6.7

レベルの適用  3.1.10 の意図するところは,一部,構成部品や部分系統の故障のため飛行性がかなり

低下する確率は小さいことを保証することにある。例えば,飛行性が極めて低下する確率(レベル

3

)は,

1

飛行当たりの指定値より小さくなければならない。

6.7.1

レベルの定義  与えられた飛行機の故障状態に対する飛行性パラメータの低下を決定するため,次

の定義を用いる。

(a)

レベル

1

は,3.で規定するレベル

1

の境界又は数値よりも良いか又は等しい。

(b)

レベル

2

は,レベル

1

よりも悪いが,レベル

2

の境界又は数値よりも悪くない。

(c)

レベル

3

は,レベル

2

よりも悪いが,レベル

3

の境界又は数値よりも悪くない。

与えられた境界又は数値がレベル

1

とレベル

2

として確認されたときは,これは,示された境界条件の

外側の飛行性又は与えられた数値より悪い数値は,よくてもレベル

3

の飛行性であることを意味する。

また,レベル

1

とレベル

2

の要求事項は同じであるから,飛行性は,飛行機の正規状態に対する運用飛

行包囲線と実用飛行包囲線の両方において,この共通の境界又は数値の中になければならない(3.1.10.1

参照)

この共通の境界を越えて飛行性を低下させない飛行機故障状態は,

3.1.10.2

の要求事項を満足させること

において考慮していない。しかし,運用飛行包囲線と実用飛行包囲線の両方においてレベル

3

への低下が

起こる確率の計算には,レベル

3

への低下を表す飛行機故障状態を含めなければならない。既に示したと

おり,レベル

3

の境界を越える低下は,構成部品の故障に関係なく許容しない。

6.8

関連文書  下記の文書は,この規格の一部をなすわけではないが,この規格と密接に関係している

ので,この規格を適用するときにはそれらの内容に配慮することが望ましい。

仕様書 

Military Specification 

MIL-C-5011 

Charts ; Standard Aircraft Characteristics and Performance, Piloted Aircraft

MIL-M-7700 

Manual, Flight

MIL-A-8860 

Airplane Strength and Rigidity

General Specification for

MIL-A-8871 

Airplane Strength and Rigidity, Flight and Ground Operation Test

JIS W 0616 

飛行機の強度及び剛性,飛行及び地上運用試験)

MIL-G-38478 

General Requirements for Angle-of

Attack

Based Systems

規格 

Military Standard 

MIL-STD-882 

Systems Safety Program for Systems and Associated Subsystems and Equipment :

Requirement for

出版物 

AFSC Design Handbooks 

DH 1-0 General 

DH 2-0 

Aeronautical Systems

AFFDL Technical Report 

TR 69-72 

Background Information and User Guide for

MIL-F-8785B

, Military Specification

Flying Qualities of Piloted Airplanes, August 1969