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K 7644

:2004 (ISO 18918:2000)

(1)

まえがき

この規格は,工業標準化法第 14 条によって準用する第 12 条第 1 項の規定に基づき,社団法人日本婚礼

写真協会(JBPS)/財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を改正すべきとの

申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本工業規格である。

これによって,JIS K 7644:1996 は改正され,この規格に置き換えられる。

改正に当たっては,日本工業規格と国際規格との対比,国際規格に一致した日本工業規格の作成及び日

本工業規格を基礎にした国際規格原案の提案を容易にするために,ISO 18918:2000,Imaging materials−

Processed photographic plates

−Storage practices を基礎として用いた。

この規格の一部が,技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の

実用新案登録出願に抵触する可能性があることに注意を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会

は,このような技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の実用新

案登録出願にかかわる確認について,責任はもたない。

JIS K 7644

には,次に示す附属書がある。

附属書 A(参考)削除

附属書 B(参考)写真乾板用包材

附属書 C(参考)銀画像の劣化

附属書 D(参考)保存中の湿度

附属書 E(参考)保存中の温度

附属書 F(参考)歴史的価値のある乾板

附属書 G(参考)空気中の浮遊物と有害気体

附属書 H(参考)火災に対する防護

附属書 I(参考)保存目的と使用目的との区別


K 7644

:2004 (ISO 18918:2000)

(2)

目  次

ページ

序文

1

1.

  適用範囲

1

2.

  引用規格

1

3.

  定義

2

4.

  乾板用保存庫,収納箱及び包材

3

4.1

  個装包材

3

4.2

  多数枚収納箱

4

5.

  保存庫

4

5.1

  引出し式キャビネット

5

5.2

  棚及びキャビネット

5

6.

  保存室

5

6.1

  中期保存室

5

6.2

  長期保存室

5

7.

  環境条件

6

7.1

  保存温度及び保存湿度

6

7.2

  空気調節の要件

7

7.3

  空気の純度

7

8.

  耐火保存設備

8

9.

  乾板の識別,取扱い及び検査

8

9.1

  識別のための素材

8

9.2

  取扱い

8

9.3

  検査

8

附属書 B(参考)写真乾板用包材

10

附属書 C(参考)銀画像の劣化

11

附属書 D(参考)保存中の湿度

12

附属書 E(参考)保存中の温度

13

附属書 F(参考)歴史的価値のある乾板

14

附属書 G(参考)空気中の浮遊物及び有害気体

15

附属書 H(参考)火災に対する防護

16

附属書 I(参考)保存目的と使用目的との区別

17

参考文献

18


日本工業規格

JIS

 K

7644

:2004

(ISO 18918

:2000

)

写真−現像処理済み写真乾板−保存方法

Imaging materials

−Processed photographic plates−Storage practices

序文  この規格は,2000 年に発行された ISO 18918:2000,Imaging materials−Processed

photographic plates

−Storage practices  を翻訳し,技術的内容及び規格票の様式を変更することなく作成した日本工業規格であ

る。ただし,原国際規格の Annex A は,旧 ISO 規格番号と新 ISO 規格番号の対比表のため

附属書 を削

除した。

なお,この規格で点線の下線を施してある“参考”は,原国際規格にはない事項である。

1.

適用範囲

1.1

この規格は,写真画像層をもち,記録用途を目的とした現像処理済み写真乾板の暗所保存条件,保

存設備,取扱方法及び検査方法について規定する。

1.2

この規格は,3. n)  に定義する現像処理済み銀・ゼラチン黒白画像乾板に適用する。また,この規格

では,中期保存条件及び長期保存条件についても,3. f)  及び  3. b)  にそれぞれ規定する。

乾板の中期保存と長期保存との間では取扱い上の注意に違いがあるが,

そのほかには格別な区別はない。

この規格に規定する乾板の材料,手法,環境条件及び保管の形態に関する推奨保存方法は,1.1 に規定する

乾板に適用されるものであるが,ラッカー又はオペイクを塗布した乾板,カラー乾板,染料又は金属で調

色した黒白乾板及び  3. i)  から  3. o)  までに定義する歴史的価値のある乾板にも適用可能である。

1.3

この規格で規定する方法は,保存した乾板の実用可能な寿命を予測したり格付けしたりするもので

はない。

1.4

現像処理済みフィルムに対する推奨保存条件は ISO 18911 に,現像処理済みプリントに対する推奨

保存条件は ISO 18920 に,それぞれ規定している。これら写真感光材料における推奨保存条件には幾らか

の差があるが,推奨される温度及び相対湿度は,重複している。

乾板,フィルム及びプリントが 1 か所にまとめて保存されている場合は,すべての写真感光材料の推奨

範囲となるような温度及び相対湿度を選ぶことが望ましい。

備考  この規格の対応国際規格を,次に示す。

  なお,対応の程度を表す記号は,ISO/IEC Guide 21  に基づき,IDT(一致している)

,MOD

(修正している)

,NEQ(同等でない)とする。

ISO 18918:2000, Imaging materials – Processed

photographic plates – Storage practices (IDT)

2.

引用規格  次に掲げる引用規格は,この規格に引用されることによってこの規格の規定の一部を構成

する。これらの引用規格のうちで発行年を付記してあるものは,記載の年の版だけがこの規格の規定を構

成するものであって,その後の改正版・追補には適用しない。発効年を付記していない引用規格は,その

最新版(追補を含む。

)を適用する。


2

K 7644

:2004 (ISO 18918:2000)

JIS K 7645

写真−現像処理済み写真フィルム,乾板及び印画紙−包材,アルバム及び保存容器

参考  ISO 18902:2001, Imaging materials−Processed photographic films, plates and papers−Filing

enclosures and storage containers

が,この規格と一致している。

ISO 14523:1999, Photography

−Processed photographic materials−Photographic activity test for enclosure

materials

ISO 18911:2000, Imaging materials

−Processed safety photographic films−Storage practices

ISO 18920:2000, Imaging materials

−Processed reflection prints−Storage practices

3.

定義  この規格で用いる主な用語の定義は,次による。

a)

アーカイバル保存材料  (archival medium)  適切な保存条件において,記録された情報が損なわれず長

期間,保存できることを目的とした記録材料。

参考  写真分野で用いられる“アーカイバル”という用語は,映像関連分野でしばしば誤用される。

したがって,ISO/TC 42(国際標準化機構の写真専門委員会)は,今後の写真保存規格では“ア

ーカイバル保存”という用語を,

“長期保存”(extended-term storage) という用語に替えると決

定した。

b)

長期保存条件  (extended-term storage conditions)  永遠の価値をもつ記録情報の保存に適した条件。

c)

耐火保存設備  (fire-protective storage)  過度の温度上昇,水,その他の消火剤,水とう(套)付き保

管庫の断熱水から発生する蒸気,崩壊しやすい構造物などから,写真を保護するように設計された設

備。

d)

耐火保管施設  (fire-resistant vault)  規則で定められた保管施設[参考文献 (1) 及び (2) 参照]。

e)

断熱形記録物収納庫[insulated record containers (Class 150)] 日本工業規格又は規則で定められた 150

級収納庫[参考文献 (3) 及び (4) 参照]

f)

中期保存条件  (medium-term storage conditions)  10 年以上の有効寿命(写真として実用できる寿命)

を得るのに適した保存条件。

g)

写真画像層  (photographic layer)  露光及び現像処理によって形成した銀画像が存在する層。

h)

写真乾板  (photographic plate)  一層又は多層の感光層を,ガラス板,金属板などの強い支持体に塗布

した写真材料。

i)

アルビューメンプレート  (albumen plate)  ハロゲン化銀を含む卵白層に,露光及び現像処理を行って

得た銀画像をもつガラス板。

j)

コロジオン湿板又はコロジオン乾板  (collodion wet or dry plate)  ハロゲン化銀を含む硝酸セルロー

スの薄層に,露光及び現像処理を行って得た銀画像をもつガラス板。

k)

アンブロタイプ  (ambrotype plate)  現像処理済みのネガの銀画像の背部に黒い物体を置いたとき,ポ

ジ像として見えるコロジオン湿板の一つ。

l)

カラースクリーンプレート  (colour screen plate)  銀のポジ像と密着した,着色部材によって構成され

た色スクリーンをもつガラス板。

m)

フェロタイプ(

1

) (ferrotype plate)

,ティンタイプ  (tintype)  ハロゲン化銀を含む硝酸セルロースの薄層

に,露光及び現像処理を行って得た銀画像をもち,それがポジ像として見える黒色のエナメル引きの

鉄板。

注(

1

)

光沢紙の乾燥に用いる,光沢面をもつ金属薄板と混同してはならない。

n)

ゼラチン)乾板[(gelatin) dry plate]  ハロゲン化銀・ゼラチン塗布層に,露光及び現像処理を行っ


3

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て得た銀画像をもつガラス板。

o)

ランタンスライド  (lantern slide)  ハロゲン化銀・ゼラチン塗布層に,露光及び現像処理を行って得た

ポジの銀画像をもつガラス板。

備考  ランタンスライドはスライド映写用であるので,写真画像層が四辺をテープ止めしたカバーグ

ラスで保護された構造となっている。アルビューメンプレート及びカラースクリーンプレート

も,ランタンスライド構造となっている場合がある。

p)

収納箱  (storage container)  写真乾板を保存するための箱又は缶。

q)

保存包材  (storage enclosure)  フォルダ,スリーブ,アルバム,封筒などの,記録材料に接触又は密

着する保存材料。

r)

保存庫  (storage housing)  記録材料及びその包材を収める設備。

備考  保存庫の例として引出し,ラック,棚,キャビネットがある。

4.

乾板用保存庫,収納箱及び包材  処理済み乾板は,破損,引っかききず,すりきず,指紋などの各種

の物理的損傷から保護する必要がある。収納箱及び包材はこのような損傷を防ぎ,又は最小限にとどめる

ことができる。

処理済みフィルム又はプリントを,乾板と一緒に収納してはならない。種類の異なる乾板同士は,3.i)

から  3.o)  までに規定する種類ごとの分離を行ったもの以外は,混在させて収納してはならない。

参考  コロジオン写真,アンブロタイプ及びフェロタイプは,硝酸セルロースを含んでいるため,銀・

ゼラチン乾板と分離して保存することが必須である。硝酸セルロースは不安定で,銀画像に影

響を与える窒素酸化物を放出する。

収納箱及び包材は,乾板を立てて保存できるように(長辺が水平であり,乾板の面は垂直になるように)

設計する。乾板を平積みつまり水平状態に保存すると,下部の乾板に過度の圧力が加わるので,避けなけ

ればならない。19 世紀のガラスは,通常,平たんではなく,水平状態で保存すると,応力による損傷が起

こりやすいので注意が必要である。乾板が互いに接触する状態で保存する場合は,乳剤面同士が接触しな

いよう,乳剤面には裏面が接するようにして保存しなければならない。特に微粒子乾板の場合,4.2 に規定

する溝付き多数枚収納箱に入れる方式以外では,互いに接触する形で保存してはならない。

乾板は,寿命をできるだけ長く保たせるために,保存場所に収納するまでの間も清浄な環境下に置かな

ければならない。

4.1

個装包材  乾板に直接触れるもの又は乾板に近接するものを含めて,中期保存及び長期保存に用い

るすべての包材は,JIS K 7645 及び ISO 14523 の規定に適合するものでなければならない。

処理済み乾板は,JIS K 7645 及び ISO 14523 の規定に適合する紙又はプラスチック製の保存袋,ファイ

ルフォルダ,折り畳み式収納箱などに入れて保存する。個々の乾板は,適切な個別の保存袋(とじあり,

なし,のいずれも使用可能)

,スリーブ,フォルダ,

附属書 参照)に収納して,じんあいを排除し物理

的損傷から保護して,識別及び取扱いを容易にするのがよい。

包材として使用可能なプラスチックは,塗工層がないポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)

,ポ

リスチレン,ポリエチレン及びポリプロピレンである。他のプラスチックも可能かもしれないが,まだ十

分な実績がない。グラシン紙,塩素又は硝酸基を含むプラスチックフィルム,並びに多量の可塑材を含む

プラスチックフィルムは,用いてはならない。硝酸セルロース及びポリ塩化ビニルは,使えない。

保存袋のはり合せに使われる接着剤も,JIS K 7645 及び ISO 14523 の規定に適合するものでなければな

らない。保存袋のはり合せ又はとじの部分は,乾板の写真画像層に直接触れることがないように,袋の端


4

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にあるようにする。紙包材に使用可能な接着剤として,写真グレードのゼラチン,一部のアクリル接着剤,

ポリ酢酸ビニル接着剤,でんぷんのり及びメチルセルロース接着剤がある。

4.2

多数枚収納箱  収納箱の材質は,JIS K 7645 及び ISO 14523 の規定に適合する金属,プラスチック

又は厚紙が望ましい。保存用の収納箱は,腐食性のないものでなければならない。木材,合板などの天然

素材は,銀画像に作用する酸化性物質を含んでいるので,使用を避けなければならない(

附属書 参照)。

金属製収納箱の表面仕上げは,金属保存庫に関する 5.  の規定に適合しなければならない。

多数枚収納箱には次の 2 種類があり,いずれもはん用の乾板サイズのものが入手できる。

─  互いに接触する状態又はスペーサによって隔てられた乾板を,

立てた状態で保存する標準的な収納箱。

この種の収納箱は,保存中は,乾板の長辺が水平で面は垂直に保たれ,出し入れの際には,乾板に

きずが付かない構造でなければならない。そのためには収納箱は,内のり(箱内の長さ及び高さ)が

乾板よりわずかに大きく,乾板を収納枚数一杯に入れた場合でも,その重さによって変形することの

ないような強度をもつものでなければならない。

  乾板が互いに接触しないで垂直に置かれるように,内部に平行な溝が切ってある収納箱。

微粒子乾板,個装包材・カバーガラスによって保護されていない乾板などの,相互の接触が望まし

くない乾板には,この種の収納箱を使わなければならない。

通常,この種の収納箱内部の底及び両側面には,平行な溝が切ってある。溝の断面は“U”又は“V”

字形で,乾板を立てて保存中は端縁部だけが接触するようにしてある。

5.

保存庫  処理済み乾板は,垂直収納式の引出し,キャビネットなどの密閉可能な保存庫,若しくは扉

付きキャビネット,又は開放形の棚に組み込まれた密閉式の収納箱に保存されることが望ましい。

保存庫は,乾板の質量に耐えるものがよい。処理済み乾板又は収納箱は,荷重の不均衡によって収納箱

及び棚が倒れることのないように,中央に荷重がかかるような配置で保存することが望ましい。さらに,

保存庫をボルトによって床又は壁に固定して,傾き防止策を強化してもよい。

保存庫を構成する材質は,アルマイト,ステンレス鋼又は可塑剤を含まない樹脂によって粉末塗装され

た鋼材のような,不燃性で腐食性がなく化学的に安定なものが望ましい。木材,合板,プレスボード,パ

ーティクルボードなどは可燃性であり,時間が経つと写真画像の劣化を促進する活性な物質を発生する可

能性もあるので,用いてはならない。

保存庫の塗装には,

耐久性があり,

しかも保存中の乾板へ悪影響を与える物質を含まない塗料を用いる。

塩素化樹脂及び可塑剤を多量に加えた樹脂を含む塗料は,乾板に悪影響を与える可能性がある。また,塗

りたての塗装から発散する溶剤も,乾板に悪影響を与える可能性がある。塗装後 3 か月間は,塗膜から過

酸化物,溶剤その他の有害物質が発散される可能性がある。粉末塗装(溶剤を含まず,静電気的に吸着さ

れた粉末樹脂が,加熱溶融されて被膜となる。)された金属で構成される保存庫又はステンレス鋼製若しく

はアルマイト製の収納箱が望ましい。

空気調節系を備えた保存庫では,乾板を保存しているすべての棚及び引出しが均一の温度及び湿度条件

になるように,空気を循環させる。保存庫を 7.1 に従って空気調節した室内に置く場合は,空気が庫内に

出入りできるように通気口を設ける。この通気口は,耐火及び防水上の必要条件を満たすものでなければ

ならない。

写真プリント又はフィルムを処理済み乾板と同じ保存場所に置いてもよいが,同じ包材又は収納箱に一

緒に入れてはならない。磁気テープ又は光ディスクは,保存中に写真画像を劣化させる気体を発散する可

能性があるので,乾板と一緒に保存してはならない。


5

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5.1

引出し式キャビネット  個装包材に収納された処理済み乾板は,次の保存条件を確実にした上で,

事務所で用いられるようなファイリングキャビネットを改造し,十分な強度をもたせた引出し式のキャビ

ネットに保存するのがよい。

  乾板の重さの分布が偏らないように,また,上段の引出しを一杯に開けた場合にも,キャビネットが

倒れないようにする。

  乾板に衝撃を与えないように,引出しをゆっくりと滑らかに開閉する。

引出しの底部は平らで,その高さは乾板の寸法より少し大きめがよい。引出し内部には乾板の寸法と同

じ高さの仕切りを,10 cm を超えない適切な間隔(例えば,2.5 cm から 5 cm)で設けるとよい。仕切りは

乾板を垂直に保持するだけでなく,乾板の出し入れの際のずれを少なくして,並べられた端の方の乾板に

圧力が加わることを防ぐ役をする。

引出しの中には,個装された乾板をその大きさごとに分けて,一列又は何列かに収納する。それぞれの

列の間にも,適切な仕切りを置く。もし仕切りの設置が困難な場合は,引出しに収まるような収納箱を用

いて,乾板の分類及び整理をし,損傷から守るのがよい。十分な強度をもつ引出し式のキャビネットは,

4.2

に規定の乾板収納箱を保存するのにも適している。

収納箱は 1 段置きとし,積み重ねないほうがよい。使用のために収納箱が取り出されてキャビネット内

に空げきができたとき,他の収納箱が傾かないような注意が必要である。

5.2

棚及びキャビネット  多数枚収納箱は,開放形の棚及びラック,又はそれらを組み込んだ扉付きキ

ャビネットに保存するのがよい。棚の間隔は,収納箱の出し入れに十分な余裕をもつものとする。収納箱

中では乾板が垂直になるようにし,収納箱は重ねずに一段置きとする。棚には収納箱数個分ごとに仕切り

を設け,収納箱の傾き及び転倒が起こらないようにする。使用のために収納箱が取り出されて棚に空げき

ができたとき,他の収納箱が傾かないような注意が必要である。

個装された乾板の保存には,棚を組み込んだ扉付きのキャビネットがよい。棚には乾板の寸法と同じ高

さの仕切りを設けるとよい。その間隔は 10 cm 以下の,例えば,2.5 cm から 5 cm までとする。仕切りは乾

板を垂直に保持するだけでなく,乾板の出し入れの際のずれを少なくして,並べられた端のほうの乾板に

圧力が加わることを防ぐ役をする。引出しの中には,大きさによって分類された乾板が垂直の状態で保存

されるようにする。

6.

保存室

6.1

中期保存室  乾板を保存する部屋又は場所は,乾板の検査及び観察の準備室と同じ場所にあること

が望ましく,適切な管理が行われていなければならない。壁及び空気調節された室内は,屋外の温度が低

く壁が室内の露点以下に冷やされる時期でも,壁の内面又は室内の備品の表面に結露が生じないような設

計でなければならない。また,洪水,漏水,スプリンクラの散水又は火災の際に石壁から発生する蒸気に

よって,乾板が損傷を受けない構造でなければならない。

中期的な価値をもつ乾板画像用の作業室が,7.1 で推奨する環境条件に保たれているならば,特別の保存

室を設ける必要はない。

6.2

長期保存室  長期保存においても,6.1 の規定を適用しなければならない。長期間保存されている処

理済み乾板の価値を考慮して,中期保存室,一時置場,事務所又は作業室から隔離された,専用の保存室

又は貯蔵室を設けるほうがよい。


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7.

環境条件  表 で推奨する温度及び相対湿度条件は,保存庫中又は保存庫が置かれている保存室のい

ずれにおいても,守られなければならない。

7.1

保存温度及び保存湿度(附属書 D,附属書 及び附属書 参照)

  1  保存の最高温度及び相対湿度範囲

現像処理

中期保存

長期保存

a)

最高温度

相対湿度範囲

最高温度

相対湿度範囲

b)

%

b)

c)

%

c)

黒白 25  20∼50 18 30∼40

a)

従来,

“アーカイバル保存”と呼んでいた。歴史的価値のある乾板の保存条件については,

附属書 を参照。

b)

中期保存では,任意の 24 時間当たりの温度及び相対湿度の変動は,それぞれ±5  ℃及び±10 %とする。乾板内

部の水分は,この相対湿度における平衡含水率を超えてはならない。

c)

長期保存では,温度及び相対湿度を組み合わせた条件で管理するのがよい。任意の 24 時間当たりの温度及び相

対湿度の変動は,それぞれ±2  ℃及び±5 %とする。乾板内部の水分は,この相対湿度における平衡含水率を超え
てはならない。

低温及び/又は低湿度の条件下に保存されたとき,乾板の素材の劣化及び発生し得る物理特性上の問題

点については,今のところよく知られていない。相対湿度 40 %以上では,ガラスの分解速度への水分の影

響は大である。一方,低湿に長時間置かれると写真画像層の収縮及びひずみが促進され,写真画像層のは

がれによる表面の膨れ及びガラス基板の縁からのはがれの危険が増す。乾燥した写真画像層には静電気が

発生しやすく,ごみを吸い付けて,すりきずの原因となる。

7.1.1

中期保存環境  中期保存における温度として 20  ℃以下が望ましく,25  ℃を超えることがあって

はならない(

表 参照)。相対湿度が表 の範囲内にあれば,温度の多少の変動は許容される。温度の周期

的な変動は,任意の 24 時間内で±5  ℃とする。

中期保存における相対湿度は,50 %を超えてはならない。相対湿度の周期的な変動は,任意の 24 時間

内で±10 %とする。写真画像層の,乾燥収縮によるはがれのような欠陥が生じている乾板を,規定の最低

湿度である 20 %から 30 %の範囲で保存すると,その欠陥が助長されることがある(

附属書 及び附属書

F

参照)

7.1.2

長期保存環境  長期保存における温度は,18  ℃を超えてはならない(表 参照)。相対湿度が表 1

の範囲内にあれば,温度の多少の変動は許容される。温度の周期的な変動は,任意の 24 時間内で±2  ℃と

する。長期保存における相対湿度は,推奨される 30 %から 40 %までの範囲内になければならない。相対

湿度の周期的な変動は,任意の 24 時間内で±5 %とする(

附属書 及び附属書 参照)。

処理済み乾板の使用頻度が低い場合,推奨される相対湿度範囲の下限の環境で保存することによって,

安定性を更に向上させることができる。

そのためには,

乾板を密閉式の保存箱又は保存庫に収納する前に,

適切な環境のキャビネット内で調湿すればよい。乾板が相対湿度 40 %以上の環境で用いる場合は,保存の

前に再度調湿するのが望ましい。

他の写真感光材料と同様に,乾板も低温保存によって写真画像及び基板の使用年数を延ばすことができ

る。低温保存システムには,相対湿度の管理はせず,保存室の冷却だけを行う方法と,温度及び相対湿度

のいずれをも,規定の範囲に管理する方法との,二通りがある。

前者の方法は後者より費用がかからないが,乾板を透湿性のない袋に密封してから低温保存場所に入れ

る必要がある。しかし,乾板を,袋にきずを付けずに,また,乾板にも損傷を与えずに密封するのは,難


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しいことである。さらに,袋の存在が,乾板の垂直置きの状態を不安定にする。したがって,低温保存場

所の温度及び相対湿度の両方を管理して,袋を使わない方法が理想的である。一方,乾板を 1 枚ごとに包

材中に密閉することによって発生する問題を避けるために,収納箱を袋に入れて密封する方法もある。

低温保存場所から使用場所へ移された収納箱は,室温になるまで放置した後に開くようにして,乾板に

結露が生じないようにしなければならない。ガラス基板の熱容量は大きいので,乾板の調温にはフィルム

及び印画紙の場合より長時間を要する。

乾板が保存場所から頻繁に取り出されたり,取り出したまま高温の環境中に長く置かれたりすると,低

温保存の効果が著しく失なわれる。

ガラス基板は壊れやすいので,乾板の複製を作ってこれを使用に供し,オリジナルの使用を最小限にと

どめるのがよい。

7.2

空気調節の要件  温度及び相対湿度を規定の範囲内に維持するためには,適切な空気調節が必要で

ある。特に規定が厳密な長期保存においては,適切な空気調節が重要である。保存室内は,外界より少し

高い気圧に保つのがよい。空気調節設備及び送排気ダクト内の自動防火ダンパは,該当する日本工業規格

及び規則に従って設置し,維持されなければならない[参考文献 (5) 及び (6) 参照]

参考1.  自動防火ダンパに該当する規則の例として,NFPA232[参考文献 (1) 参照]があり,我が国

の消防法に基づく危険物の規制に関する政令(昭和 34 年 9 月 26 日政令第 306 号)第 39 条に

定めた基準に相当する。

それらはまた,該当する他の日本工業規格又は規則に規定されている耐火資料室の推奨規定にも従わな

ければならない[参考文献 (1) 及び(2)  参照]

。石造り又はコンクリートの壁は,火災の熱によって内部の

水分を蒸気として放出する場合があるので,このような保存室には,蒸気の遮断壁を設置するか又は密閉

式の収納箱を用いるべきである。

参考 2.  耐火資料室に該当する他の日本工業規格又は規則の例として,NFPA90A[参考文献 (5) 参照]

があり,JIS A 1304(建築構造部分の耐火試験方法)の等級 30 分加熱に合格するものに相当

し,また,我が国の建築基準法に基づく[建設省告示第 1675 号]耐火構造にも相当する。

空気調節設備は自動制御方式であることが望ましく,その点検は,正しく校正された湿度計によって頻

繁に行われなければならない。空気調節を行いにくい場所では,電気除湿器によって除湿し,湿度制御装

置によって所定の湿度レベルに保つ方法でもよい。粒径 0.3

μm 以上のじんあい粒子を除去できるフィルタ

を備えた除じん室であれば,純度の高いシリカゲルのような乾燥剤を用いて,相対湿度を 7.1 の規定に従

って管理することもできる。地下室,ほら穴などの,本来温度は低いが湿度がしばしば上限を超えるよう

な保存場所では,除湿が必要となる。

通常の相対湿度が 7.1 で推奨する範囲より低いとき,又は写真画像層のはがれのような低湿度に起因す

る損傷を生じるおそれがあるときには,加湿が必要である。その場合,制御装置付きの加湿器を用いなけ

ればならない。皿に入れた水及び薬品の飽和溶液は,過度の加湿による危険を伴うので,用いてはならな

い。

7.3

空気の純度(附属書 参照)  固体粒子は,写真画像層表面にすりきずを発生させたり画像を化学的

に変化させるおそれがあるので,フィルタによって,保存庫又は長期保存用の部屋へ供給される空気から

除去しなければならない。この種のフィルタは,該当する日本工業規格又は規則の試験方法による捕集率

が 85 %以上の,乾式媒体形のものが望ましい[参考文献 (7) 及び (8) 参照]

。また,フィルタは,該当す

る他の日本工業規格又は規則の構造要件を満たす,不燃性のものでなければならない[参考文献(8)及び(9)

参照]


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参考  フィルタに該当する他の日本工業規格又は規則の例として,ASHRAE 52-76 の汚染試験方法[参

考文献 (7) 参照]があり,JIS B 9908(換気用エアフィルタユニット・換気用電気集じん器の

性能試験方法)の 5.3.1(質量法による粒子捕集率)に相当する。また,フィルタの不燃性に該

当する規則の例として,UL900 の一級構造[参考文献 (9) 参照]がある。

乾板によっては,二酸化硫黄,硫化水素,種々の過酸化物,オゾン,アンモニア,酸の蒸気,窒素酸化

物などの気体状の有害物によって,画像の劣化を起こすことがある。これら有害気体は,適切な洗浄装置

又は吸収装置によって除去することができる。実用的には,現像処理済み乾板を 4.  及び 5.  に適合した密

閉包材,収納箱又は保存庫中で保存すれば十分である。

塗料の蒸気は,酸化性の汚染物質源になることがあるので,中期又は長期のいずれの保存場所について

も,新たに塗料を塗ったときには,3 か月間以上経過するまでは乾板を収納してはならない。

8.

耐火保存設備(附属書 参照)  耐火保存用の包材は,保存容器に入れて 150  ℃で 4 時間熱しても,

発火又は乾板に有害な気体の発生がないものでなければならない。多くの包材は,この温度で融解したり

著しく変形することがあるが,内部の乾板が損傷を受けたり,又は乾板が取り出せなくなるほどに,変形,

融解などが発生する包材を採用してはならない。

火災及びそれに伴う危険からの保護のために,乾板は密閉包材に入れ,耐熱形保存施設に入れるか又は

150

級の断熱形記録物収納庫に保存する[参考文献 (3) 及び(4)  参照]

。耐熱形保存施設は,特に蒸気に対

する保護能力を確保し,同時に該当する日本工業規格又は規則の構造要件を満たすものでなければならな

い[参考文献 (3) 及び (4) 参照]

保存する乾板があまり多くないときは,該当する日本工業規格又は規則に適合する 150 級の断熱形記録

物収納庫が使用できる。この収納庫は,

その等級に応じて 1 時間から 4 時間の火炎暴露試験を行ったとき,

内部の温度が 66  ℃を,内部の相対湿度が 85 %をそれぞれ超えてはならない。建物が耐火構造でない場合

は,断熱形記録物収納庫は,直接地面に接している床の上に置かれなければならない。

火災からの最善の保護策は,複製を作って別の場所に保存することである。

9.

乾板の識別,取扱い及び検査(附属書 C,附属書 及び附属書 参照)

9.1

識別のための素材  現像処理済み乾板には,インキ,フェルトペン,粘着ラベルなどの非写真的な

方法によって,識別記号を付与することが多い。インキのような識別記号を形成する素材は,ISO 14523

に規定の写真影響度試験に適合したものでなければならない[参考文献 (10) 参照]

9.2

取扱い  乾板の正しい取扱いを心がけることは重要である。頻繁に用いる乾板は損傷を受けやすく,

細心の取扱いと適切な保存が必要である。保存場所の正しい管理と,清潔さの維持は不可欠である。取扱

者は薄く汚れのない木綿の手袋を着用し,乾板の縁を持って取り扱うことが望ましい。写真画像層同志が

接する状態で,乾板を積み重ねてはならない。面が完全に平滑でない場合は,ガラスの重さが集中する場

所が生じて,応力破壊を生じることがある。

9.3

検査  保存中の乾板から種類の異なる代表的なサンプルをなるべく多く選び出し,2 年又は 3 年ごと

に検査するのがよい。保存中に温湿度が推奨範囲から外れることがあった場合は,検査頻度を増やさなけ

ればならない。検査は,事前に立てたサンプリング計画によって実施されるべきである。乾板又は包材に

劣化の兆候が認められた場合は,温湿度管理の方法の改善,保護能力が低下した包材・収納箱の更新など

の是正処置をしなければならない。

検査の結果は,乾板の変化を追跡し監視するために保管すべきである。是正処置の正しかったことを確


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認するために,定期的に繰り返し検査をする必要がある。写真画像層は外力によってすりきずがつきやす

いので,検査中にも十分に注意しなければならない。

検査記録には,次の項目を含める。

─  乾板の物理的変化(画面のひび割れ,すりきず,接着故障)

─  外観の変化(退色,ブレミッシュ,変色)

─  包材の変化(ぜい化,変色)

可能ならばこれら問題点の原因を調べ,それを除去することが望ましい。


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附属書 B(参考)写真乾板用包材

B.1

一般事項  現像処理済み乾板用の包材及び保存容器の素材は,この附属書及び本体の 4.に規定すると

おり,JIS K 7645 の規定にすべて適合していなければならない。しかし,はり合せのある保存袋又はスリ

ーブの寸法は,乾板の厚さを考慮して決める必要がある。20 cm×25 cm までのサイズの乾板においては,

包材の長さ,幅ともに,乾板の公称寸法より約 1 cm 大きいことが望ましい。20 cm×25 cm を超えるサイ

ズの乾板においては,包材の長さ,幅ともに,乾板の公称寸法より約 2 cm 大きいことが望ましい。

3

枚又は 4 枚のフラップをもつはり合せなしの保存袋は,長期保存に適しており,特に写真画像層にひ

び割れなどの損傷がある乾板の保存用として望ましい。はり合せなしの保存袋は,内部の遊びがない寸法

とすることが可能で,乾板表面にすりきずを付けることなくとり外すことができる。

B.2

ひびの入った乾板又は割れた乾板の包材  ひびの入った乾板又は割れた乾板は,次のいずれかの状態

にしたうえで,浅い収納箱に水平に置いて保存する。用いる包材及び収納箱の素材は,ISO 18902 の規定

に適合することが望ましい。

  柔らかいティッシュペーパーで包み,硬い板紙と交互に重ねる。

  2 枚のガラス板又は硬い板紙に挟む。

  破片がそれぞれすれ合ったり切りきずを付け合ったりしないように,破損した乾板に合わせて作られ

た小さな板紙スペーサを備えた,紙製の袋に入れる。


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附属書 C(参考)銀画像の劣化

現像処理済み黒白画像は,好ましくない保存条件下及び不適切な包材中では,常に変色(微小なスポッ

ト,銀鏡化又は黄変)の危険にさらされている。画像の劣化は,画像を形成している銀が局部的に酸化し

て,移動性の銀イオンとなることによって発生する。この移動性の銀イオンは,元々存在した位置から移

動し,還元され金属銀となって移動後の位置に定着する。この銀の定着が写真画像層表面に起これば銀鏡

となり,浅い角度から反射で観察すると金属光沢に見える。また,移動性の銀イオンの抜けが集中的に起

こると,

その部分は微小の赤色のスポット又はブレミッシュとなる。

黄変は全面又は部分的な変色となる。

このような画像の劣化を引き起こす酸化物質は,空気中の酸素,過酸化物,オゾン,二酸化硫黄,硫化

水素などである。空気中の水分には,酸素による劣化を促進する作用がある。酸化物質は多くの木材中に

存在し,挟み紙及び紙製収納箱の経時によっても発生することがある。密閉された保存容器では,汚染物

質を除去するために,モレキュラーシーブ,化学的除去剤,防せい(錆)剤を用いるなど,種々の方法が

採用される。

乾板の現像処理及び保存条件が,変色又はブレミッシュの発生に大きな影響を与える。低温で酸化性の

気体を含まない乾燥空気の雰囲気に保存すれば,変色又はブレミッシュを防ぎ,又は遅らせることができ

る。銀画像の調色などによる化学処理は,酸化性気体に対する耐性を増すことができる。


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附属書 D(参考)保存中の湿度

相対湿度がこの規格の規定範囲を大きく外れる状態での保存は,現像処理済み乾板に対して極めて悪い

影響を及ぼすことがある。極端な高湿度及び低湿度は,いずれも避けたほうがよい。

相対湿度 60 %以上で長時間放置すると,かび類の発生による写真画像層の損傷又は破壊が起こり,写真

画像層が包材などに接着することがある。また,高湿度のもとでは,残留するハロゲン化銀及び処理薬品

(例えば,チオ硫酸塩)の銀画像に及ぼす作用が加速され,色素画像の安定性も損なわれることが多い。

高湿度は,ガラス基板の劣化を促進することがある。

低湿度での保存はかびの成長を防ぐほか,化学的劣化の速度をも遅くする。最近の調査によれば,保存

湿度が 50 %以下の場合,写真画像層の安定性が顕著に向上することが分かった。しかし低湿度雰囲気中で

は,写真画像層が収縮してひび割れ及びはがれを生じることがあり,また,写真画像層がもろくなって,

取扱中のひび割れのような損傷のおそれが増す。また,既に存在している写真画像層のはがれなどを,更

に悪化させることがある。


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:2004 (ISO 18918:2000)

附属書 E(参考)保存中の温度

現像処理済み乾板を,常時およそ 40  ℃を超える温度の中に置くと,写真画像層のぜい化及び劣化を生

じ,色素画像では退色が進むことがある。高温乾燥条件下に継続的に置かれた写真画像層では,収縮又は

変形が促進される。写真画像層が,0  ℃以下のような低温でもろくなることは確かであるが,室温へ戻せ

ば柔軟性は回復する。もろくなった乾板の写真画像層は,取扱中にひび割れ,はがれなどの物理的損傷を

受ける危険があるので,低温での乾板の取扱いには十分な注意が必要である。

保存温度が露点以下のときは,

包材及びその中の乾板の温度を露点以上に上げてから取り出さなければ,

乾板の表面に結露する。これを避けるためのならし時間は,乾板の大きさ,相対湿度及び温度差に依存し,

数時間にも及ぶことがある。

保存温度に関する重要な留意点は,湿度の制御が不十分の場合,温度を下げることによって相対湿度が

上がるということである。その結果,相対湿度が推奨範囲を超えてしまうことがある。このような場合は,

密封した収納箱を用いるとよい。


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:2004 (ISO 18918:2000)

附属書 F(参考)歴史的価値のある乾板

歴史的価値のある写真記録が保存されている施設では,相対湿度レベルの選択に当たっては,既にある

程度の劣化(写真画像層のき裂,ひだ又ははがれ)が生じている乾板が,更に 20 %から 30 %という低湿

度による収縮力の影響を受けないように,十分な注意を払うべきである。高湿度の場所と低湿度の場所と

を繰返し往復させると,既に生じている欠陥を悪化させることがある。

低温及び/又は低湿度での保存は,写真画像層をぜい化させる可能性があり,取扱中の損傷の危険を増

すことになる。粗雑な取扱いは,写真画像層にひび割れなどの物理的損傷を発生させやすい。したがって,

歴史的価値のある,特に状態のよくない乾板を低温及び/又は低湿度で保存する場合は,その取扱いを慎

重にするのがよい。

度々用いる乾板又は長い間用いる乾板は,複製を作っておくべきである。低温保存又は低湿度保存によ

って確保されていた写真素材の化学的安定性が,高温又は高湿度の使用場所に繰返し取り出されたり,又

は長時間置かれることによって急速に失われるので,

使用頻度の高い乾板の複製の作製は特に重要である。


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:2004 (ISO 18918:2000)

附属書 G(参考)空気中の浮遊物及び有害気体

じんあい及び空気中の固体粒子が乾板に付着すると,画像が不明りょうになったり,すりきずを生じた

りすることがある。反応性のじんあいは,写真画像の退色又はステインの発生の原因となることもある。

種々の硫黄化合物,オゾン,過酸化物,アンモニア,塗料からの蒸気,その他の活性な化合物などの有害

気体は,写真画像の化学的な劣化を引き起こすことがある。特に,市街地及び工業地帯の環境で最も頻発

する有害気体は二酸化硫黄で,これはわずかな濃度でも決定的な影響を与えやすい。硫化水素は,微生物

スライムのたまった空気洗浄機から発生することがあり,低濃度でも銀画像に対して極めて活性である。

過酸化物のような酸化性の気体は,微粒子の銀画像を局部的に酸化して着色した微小なコロイド銀を析出

させ,銀鏡の一因となる。

適切な方法による,有害ガスの除去は可能である。例えば,二酸化硫黄は,空気洗浄機による水処理で,

二酸化硫黄及び硫化水素は,活性炭による吸着によって除去できる。ただし,いずれも常時管理が必要で

あり,特に活性炭のような化学的除去剤の場合は,専門的な取扱いが必要である。


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:2004 (ISO 18918:2000)

附属書 H(参考)火災に対する防護

火災によって,焼失するに至らなくとも,乾板には高温による損傷が起こり得る。銀ゼラチン画像は,

150

℃に数時間置かれても極端には劣化しないが,カラー画像では,退色又は色バランスの変化を生じる

ことがある。画像の損傷に加えて,高温にさらされることによって,隣り合った乾板同士の接着又はブロ

ッキングが発生し,また,写真画像層のひび割れ及びガラス基板からのはがれが生じることがある。

ある種の耐火保存設備は,蒸気を発生させて,その冷却作用を利用するという設計を用いている。この

場合,乾板に蒸気が触れないような保護措置を講じておくのがよい。そうでないと,写真画像層の溶解,

接着又は著しい変形が起こる。この理由から,密封式の,内容物を蒸気にさらさない設計の断熱形記録物

収納庫(150 級)が推奨される(本体の 8.  参照)

極めて劣化しやすい記録及び火災から確実に守りたい記録は,複製を作り,それを別の場所に保存する

ことを推奨する。


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附属書 I(参考)保存目的と使用目的との区別

現像処理済み乾板における保存目的と使用目的との区別は,

必ずしも明確ではない。使用目的の乾板は,

公文書保管所,記録センター,図書館及び博物館に置かれて容易に閲覧できるようになっており,有効に

使われている。しかし,便利に用いることによって,破損,破砕,すりきず,指紋,異質材料による汚染

などの損傷を受け,強い光及び高温にさらされることもある。使用目的の乾板は,保存場所とは全く異な

る場所での湿度に調湿されてしまうため,保存場所の条件に再調湿されない限り,写真画像層のはがれ又

はフレーク化を生じる可能性がある。つまり,使用目的の乾板は,保存状態にあるとはみなさないほうが

よい。

長期保存が必要な乾板を使用目的に供する場合は,複製を作って,オリジナルを異なる保管場所に置く

ほうがよい。オリジナルを,用いる場合は,この規格の要件を満たした条件で使われ,保存においてもこ

の規格に適合する条件に置かれることが望ましい。オリジナルといえども,ときには取り出して見ること

がある。もし全く見ないのであれば,保存の意味がなくなる。もちろん,オリジナルを見る機会は頻繁で

ないほうがよい。

ガラス基板はもろいので,複製又は使用目的の乾板を作っておいたほうがよい。割れ又は写真画像層に

損傷がある乾板については,すぐに複製を作るとよい。ただ一度の使用でも,オリジナルの損傷を更に悪

化させてしまう場合がある。


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参考文献

(1)  ANSI/NFPA 232-1995

  Protection of records

(2)

政令第 306 号  (昭和 34 年 9 月 26 日)

(3)  ANSI/UL 72-1990

  Tests for fire resistance of record protection equipment

(4)  JIS S 1037

  耐火金庫

(5)  ANSI/NFPA 90A-1993

  Fire-resistive containers

(6)  JIS A 1304

  建築構造部分の耐火試験方法

(7)  ASHRAE Standard 52-76

  Method for testing air cleaning devices used in general ventilation for removing

particulate matter

(8)  JIS B 9908

  換気用エアフィルタユニット・換気用電気集じん器の性能試験方法

(9)  ANSI/UL 900-1995

  Test performance of air filter units

(10) JIS K 7617

  写真−現像処理済み写真感光材料−写真包材の写真画像への影響度試験方法