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K 6961:2014  

(1) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

目 次 

ページ 

序文 ··································································································································· 1 

1 適用範囲························································································································· 1 

2 用語及び定義 ··················································································································· 2 

3 原理······························································································································· 3 

4 試験材料及び対照材料 ······································································································· 4 

4.1 試験材料 ······················································································································ 4 

4.2 対照材料 ······················································································································ 4 

5 測定装置························································································································· 4 

6 操作······························································································································· 4 

6.1 概要 ···························································································································· 4 

6.2 植種源の準備 ················································································································ 4 

6.3 試験の準備 ··················································································································· 5 

6.4 発生バイオガスの測定 ···································································································· 5 

6.5 試験期間 ······················································································································ 5 

6.6 溶存無機炭素の測定(附属書B参照) ··············································································· 6 

7 計算及び結果の表示 ·········································································································· 6 

7.1 発生バイオガス量 ·········································································································· 6 

7.2 溶存無機炭素の量 ·········································································································· 6 

7.3 生分解度百分率の計算 ···································································································· 6 

8 結果の表示及び解釈 ·········································································································· 7 

9 結果の正当性 ··················································································································· 7 

10 試験報告書 ···················································································································· 7 

附属書A(参考)ガス体積測定装置の例 ··················································································· 8 

附属書B(参考)溶存無機炭素の測定装置の例 ·········································································· 10 

附属書C(参考)生分解度曲線の例 ························································································ 11 

附属書D(参考)温度及び水蒸気圧の関係 ··············································································· 12 

附属書JA(参考)消化汚泥に加える微量栄養素 ········································································ 13 

附属書JB(参考)理論的発生二酸化炭素(ThCO2)量及び 

  理論的発生メタン(ThCH4)量の計算方法 ········································································· 14 

附属書JC(参考)JISと対応国際規格との対比表 ······································································ 16 

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(2) 

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まえがき 

この規格は,工業標準化法第12条第1項の規定に基づき,日本バイオプラスチック協会(JBPA),独立

行政法人産業技術総合研究所(AIST),日本プラスチック工業連盟(JPIF)及び一般財団法人日本規格協

会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があり,日本工業標準調査会

の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本工業規格である。 

この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。 

この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意

を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実

用新案権に関わる確認について,責任はもたない。 

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日本工業規格          JIS 

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プラスチック−制御されたスラリー系における 

嫌気的究極生分解度の求め方− 

発生バイオガス量の測定による方法 

Plastics-Determination of the ultimate anaerobic biodegradation of  

plastic materials in controlled slurry digestion systems- 

Method by measurement of biogas production 

序文 

この規格は,2012年に第1版として発行されたISO 13975を基とし,技術的内容を変更して作成した日

本工業規格である。 

なお,この規格で点線の下線を施してある箇所は,対応国際規格を変更している事項である。変更の一

覧表にその説明を付けて,附属書JCに示す。 

適用範囲 

この規格は,下水汚泥,家畜の排せつ物又は生ごみの処理で一般的な,固形物濃度が15 %を超えない,

制御された嫌気スラリー消化系におけるプラスチック材料の嫌気的究極生分解度を求めるための方法につ

いて規定する。 

この試験方法によって,試験材料中の有機炭素のバイオガスとしての二酸化炭素及びメタンへの変換百

分率及び変換速度を求めることができる。 

この方法は,炭素量が既知の次のプラスチック材料に適用する。 

− 天然及び/又は合成ポリマー,共重合体,又はこれらの混合物 

− 可塑剤,着色剤のような添加物を含むプラスチック 

− 水溶性ポリマー 

− 植種源に存在する微生物に対して試験条件下で阻害的でないプラスチック 

試験する濃度において,試験材料が,微生物に対して阻害的である場合は,この試験を適応してはなら

ない。 

注記1 阻害効果は,阻害試験(ISO 13641-1又はISO 13641-2)で測定できる。 

注記2 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。 

ISO 13975:2012,Plastics−Determination of the ultimate anaerobic biodegradation of plastic 

materials in controlled slurry digestion systems−Method by measurement of biogas production

(MOD) 

なお,対応の程度を表す記号“MOD”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“修正している”

ことを示す。 

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警告 下水汚泥及び他の有機性廃棄物は,病原性微生物を含む可能性がある。したがって,取扱いに

当たって,適切な予防処理を講じる必要がある。有機物の嫌気消化は,発火又は爆発危険を伴

う可燃ガスを発生する。これらのガスは,かなりの濃度の硫化水素及びアンモニアから成る有

毒化学物質をも含んでいる。ドラフトチャンバーの使用,ガスマスクの着用,研究室設備の十

分な換気などの,適切な安全対策をしなければならない。有毒及び性質の未知な試験物質を扱

う場合は,注意深く,また,安全指針に従って取り扱わなければならない。多量の消化処理中

の有機物の輸送及び保管をする場合は,注意しなければならない。 

用語及び定義 

この規格で用いる主な用語及び定義は,次による。 

2.1 

嫌気的究極生分解(ultimate anaerobic biodegradation) 

酸素のない状態での,微生物による有機物からメタン,二酸化炭素,水及び存在する他の元素の無機塩

(無機化)並びに新しいバイオマスへの変換。 

2.2 

消化汚泥(digested sludge) 

バイオマス及び臭いを減らし,汚泥の脱水性を改善することを目的として,嫌気性の中温菌又は高温菌

で消化した上澄みと活性汚泥とから成る混合物。 

注記 消化汚泥は,嫌気発酵性及び二酸化炭素とメタンとを生成するメタン生成性の細菌そう(叢)

を含んでいる。 

2.3 

スラリー(slurry) 

水に対して不溶な物質と水との混合物。 

注記 スラリー中の懸濁物質の濃度は,高くておおよそ15 %で,スラリーは流動性があり,ポンプ輸

送が可能である。 

2.4 

溶存無機炭素 DIC(dissolved inorganic carbon) 

水に溶解した二酸化炭素又は炭酸,炭酸水素イオン,炭酸塩イオンに変化した二酸化炭素。 

2.5 

全乾燥固形物(total dry solids) 

試験材料又は植種源の既知量をとり,105 ℃で乾燥して一定質量(恒量)になったときの固形物。 

2.6 

揮発性固形物(volatile solids) 

試験材料又は植種源を約550 ℃で燃焼した後の残さ(渣)を,同じ試料の全乾燥固形物から差し引いて

得られる固形物。 

注記 揮発性固形物量は,含有する有機物量の指標となる。 

2.7 

理論的発生バイオガス量 ThBiogas(theoretical amount of evolved biogas) 

有機化合物が,嫌気条件下で,完全に生分解したときに発生したバイオガス(CH4+CO2)の最大理論量。 

注記 理論的発生バイオガス量は,分子式から計算され,試験材料1 g当たり発生したバイオガスの

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標準状態(0 ℃,1気圧)でのリットルで表す。 

2.8 

誘導期(lag phase) 

試験の開始から,分解微生物のじゅん(馴)化及び選択が始まり,化学物質又は有機物質の生分解度が,

生分解度の最大レベルの約10 %に到達するまでの時間。 

注記 時間は,日数として測定される。 

2.9 

生分解期(biodegradation phase) 

試験の誘導期終了時から生分解の最大レベルの約90 %に到達するまでの時間。 

注記 時間は,日数として測定される。 

2.10 

定常期(plateau phase) 

生分解期の最後(生分解の最大レベルの約90 %)から試験終了までの時間。 

注記 時間は,日数として測定される。 

2.11 

生分解の最大レベル(maximum level of biodegradation) 

化学物質又は有機物が試験中に到達する,これ以上生分解は起こらないという最大の生分解度。 

注記 生分解度は,百分率で表す。 

2.12 

バイオガス(biogas) 

嫌気的消化過程から発生する,メタンと二酸化炭素との混合ガス。 

2.13 

生分解度(biodegradability) 

試験材料から発生するバイオガス量を,試験材料の理論的発生バイオガス量で除した値。 

原理 

この試験方法は,スラリー系における嫌気条件下でのプラスチック材料の生分解度を求めることを目的

とする。メタン生成植種源は,下水汚泥又はその代わりとして,家畜の排せつ物又は生ごみのような有機

廃棄物を嫌気消化している装置から入手する。植種源と混ぜた試験材料は,通常60日間の期間,あらかじ

め選択した温度で試験容器内で嫌気的に消化される。試験期間は短くすることも,長くすることもできる

が,定常期に達するまで,継続しなければならない。ただし,90日間を超えてはならない。高温菌による

嫌気消化を模擬する場合は,消化温度を55 ℃±5 ℃とする。代わりに,中温菌による嫌気消化を模擬す

る場合は,消化温度を35 ℃±3 ℃とする。 

試験容器で発生したガス,すなわち,二酸化炭素及びメタンの体積を測定する。一方で,試験条件の下

では,二酸化炭素のかなりの量が消化汚泥中に溶解しているか,又は酸水素イオンと炭酸イオンとに解離

して存在している。このため,試験の終わりに,この溶存無機炭素を計測する。試験物質から生成したバ

イオガスの量は,捕集したバイオガスの体積及び溶存無機炭素,それぞれの空試験に対する増加分から計

算する。 

生分解度百分率は,捕集したバイオガス及び溶存無機炭素の増加分の和の理論的発生バイオガス量

(ThBiogas)に対する比で計算する。生分解度曲線は,捕集したバイオガス量を経時的に測定することに

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よって,作成できる(附属書C参照)。 

試験材料及び対照材料 

4.1 

試験材料 

試験材料は,揮発性固形物濃度が7 g/Lから10 g/Lになるように,通常は,固体の形態で直接添加する。

試験材料は,粉体又はフィルムが望ましい。 

4.2 

対照材料 

粒子径20 μm未満の薄層クロマトグラフィー用微結晶セルロースを,陽性対照材料として用いる。 

測定装置 

全てのガラス製品は,徹底的に洗浄し,さらに,確実に有機物又は毒物がないようにしなければならな

い。必要な装置は,通常の研究機器のほか,次に示すものとする。 

5.1 

消化容器 容器は,丈夫なガラスフラスコを用い,接続には気密性のあるコネクター及びガス透過

性のない接続チューブを用いる。6.3に示すように,ガラス容器の体積は,1.5 L以上とすることが望まし

い(附属書A参照)。 

5.2 

ガス体積測定装置 発生したバイオガスは,ガス収集バッグに集める。気密性のあるシリンジ又は

ガスビュレットは,ガス収集バッグに集めたガスの体積を測定するために用いる。ガスに接触する水は,

二酸化炭素の溶解を避けるために,例えば,りん酸,硫酸などを用いてpH 2未満としなければならない。

全てのコネクター及び接続チューブは,気密性があり,かつ,ガス透過性のないものでなければならない

(附属書A参照)。ガス収集バッグは,ガス透過性のない,容量3から5 Lのガス分析用サンプリングバ

ッグを用いるとよい。 

5.3 

溶存無機炭素の測定装置 消化容器の上澄み液中の溶存無機炭素を直接測定するために,適切な炭

素分析機器を用いる。例えば,過剰の希りん酸を加えることによって,発生する二酸化炭素の量を測定す

る(附属書B参照)。 

5.4 

ガス分析機器(任意) 発生したガス中のメタンと二酸化炭素濃度とを測定できる,適切な検出器及

びカラムを備えたガスクロマトグラフなどを用いてもよい。 

5.5 

分析機器(任意) 揮発性脂肪酸並びに全ケルダール窒素,アンモニア性窒素,全乾燥固形物(105 ℃)

及び揮発性固形物(550 ℃)を測定する機器を用いてもよい。 

操作 

6.1 

概要 

消化汚泥を空気(酸素)にさらさないように,できる限り必要な予防処置をする。例えば,不活性ガス

で消化容器内を置換する。 

6.2 

植種源の準備 

植種源の準備は次による。 

a) 消化汚泥の採取及びろ過 主に家庭用下水を処理している下水処理の消化施設から,消化汚泥を採取

する。代わりに,家畜の排せつ物又は生ごみを処理している消化施設からの消化汚泥を用いてもよい。

いずれの場合も,消化汚泥が稼働している消化施設から集められたことを確認する。消化汚泥は,目

開き2 mmのふるいでろ過する。 

代わりに,試験施設で増殖させた嫌気消化汚泥を植種源として用いてもよい。試験に用いる消化汚

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泥の最終濃度は,全乾燥固形物で150 g/Lを超えてはならない。消化汚泥のpHは,7.5から8.5とす

る。 

b) 消化汚泥の運搬及び保存 高密度のポリエチレン又は類似のガス不透過で膨張可能な材料から作られ

ている広口の保存容器を用いる。ガラス容器は安全性の理由で望ましくない。消化汚泥は,保存容器

の上部から1 cm以内まで満たし,蓋は,しっかり閉める。試験施設に運んだ後,容器から直接取り出

した消化汚泥を用いるか,又は,それを実験室規模の消化槽に保管する。内圧が増加しないように,

発生した過剰なバイオガスを放出する。 

c) 消化汚泥の前培養 消化汚泥からのバックグラウンドのガス発生を減少し,空試験のガス発生量を減

少させるために,消化汚泥の前培養を行うとよい。5日間の前培養をすると,誘導期又は生分解期が

長くなりすぎることがなく,空試験からのバイオガスの発生が十分に減少する。 

中温菌の消化汚泥から高温菌の消化汚泥を調製する場合には,約1か月かけて35 ℃から55 ℃まで

段階的に培養温度を上げることで,消化汚泥をじゅん(馴)化することができる。高温メタン菌の増

殖は,バイオガス中のメタン比率の増加によって確認することができる。 

植種源は予調整を行ってもよいが,自然環境下での生分解挙動を模擬した標準状態(0 ℃,1気圧)

での試験の場合は,予暴露した植種源を使わないほうがよい。試験の目的によっては,試験報告書で

明記すれば,予暴露した植種源を使用してもよい。 

必要な場合は,栄養素を消化汚泥に加えて,前培養してもよい(消化汚泥に加える微量栄養素につ

いては,附属書JA参照)。その場合は,試験報告書に,前培養をしたことを明記する。 

6.3 

試験の準備 

試験の準備は,次による。 

a) 少なくとも次の数の消化容器を準備する。 

1) 試験材料用容器(VT) 2個 

2) 対照材料用容器(VR) 2個 

3) 空試験用容器(VB) 

2個 

b) それぞれの消化容器に,1.4 Lの消化汚泥(植種源)を加える。 

c) 試験終了時に,溶存無機炭素の濃度を測定するため,各容器内の消化汚泥の重量を測定し記録する。 

d) 揮発性固形物として10 gから15 gを含む試験材料及び対照材料を各試験容器に加えて,不活性ガスで

混合物を10分間バブリングして置換する。同様に,試験材料又は対照材料を含まない,二つの空試験

容器を準備する。 

e) 容器を培養器又は水槽に入れ,ガス収集バッグを容器に接続する。接続には,ガス透過性のないチュ

ーブ及び気密性のあるコネクターを用いる。 

高温嫌気分解を模擬するためには,消化温度を55 ℃±5 ℃に設定し,中温嫌気分解を模擬するた

めには,消化温度を35 ℃±3 ℃に設定する。必要ならば,試験中に消化容器を振ることで,試験混

合物を混ぜる。 

6.4 

発生バイオガスの測定 

発生バイオガスは,ガス収集バッグに集め,シリンジ又はガスビュレットで測定する。ガス生成速度を

求めるために,ガス体積,気圧及び温度を測定する。測定頻度はガス生成速度に対応し,変化の大きい試

験開始直後は1日に数回,安定すれば1日に1回,変化が少なくなれば数日に1回とする。初期の段階で

は,頻繁な測定が必要であるが,時間経過とともに測定回数を減らしてもよい。 

6.5 

試験期間 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

通常の試験期間は60日間である。定常期(2.10参照)になるまで試験を短縮しても延長してもよいが,

全試験期間が90日を超えてはならない。 

6.6 

溶存無機炭素の測定(附属書B参照) 

ガス体積の最後の測定のあと,試験期間の最後に,消化汚泥を消化容器の中で静置し,それぞれの消化

容器の蓋を開け,消化汚泥の上澄み液の溶存無機炭素濃度を測定する。単位は標準状態(0 ℃,1気圧)

で,上澄み液1 L当たりの溶存無機炭素のリットル量とする。溶存無機炭素を測定した後,消化汚泥のpH

を記録する。同様の方法で,空試験及び対照材料の溶存無機炭素を測定する。上澄み液を取るために,遠

心分離又はろ過をしてはならない。遠心分離又はろ過は,予期できない溶存無機炭素の損失を引き起こす。

上澄み液の分析がすぐにできない場合は,上部に空間を作らずに,上澄み液を適切な密封容器で,約4 ℃

で,最大2日間保管してもよい。 

計算及び結果の表示 

7.1 

発生バイオガス量 

はじめに,それぞれの消化容器からガス収集バッグに集められたバイオガスの標準状態(0 ℃,1気圧)

における体積(V0)を計算する。バッグの中の発生バイオガス及び容器の中の消化汚泥は,熱的に平衡状

態にあり,バッグの中の発生バイオガスは室温に対応する飽和水蒸気を含んでいる。したがって,バイオ

ガスの圧力は大気圧から室温における水蒸気圧を引いたものとなり,バイオガスの体積は,式(1)で求めら

れる。 

25

.

013

1/)

(

)

/

15

.

273

(

w

0

p

p

T

V

V

×

×

=

 ············································ (1) 

ここに, 

p: 大気圧(hPa) 

pw: 測定時の水蒸気圧(hPa)(表D.1参照) 

V: シリンジ又はガスビュレットで計測したバイオガスの体積

(L) 

V0: 標準状態(0 ℃,1気圧)におけるバイオガスの体積(L) 

T: 絶対温度で表された室温(K) 

7.2 

溶存無機炭素の量 

試験容器内の消化液の溶存無機炭素の量は,式(2)を用いて計算する。 

L

DIC

,0

L,0

V

V

V

×

=

 ········································································· (2) 

ここに, 

V0,L: 試験容器内の消化液の溶存無機炭素の標準状態(0 ℃,

1気圧)の体積(L) 

V0,DIC: 試験終了時における,1 L当たりの消化液に含まれる溶

存無機炭素の標準状態の体積(L/L) 

VL: 容器内の消化液の体積(L) 

7.3 

生分解度百分率の計算 

生分解度百分率は,式(3)を用いて計算する。 

100

4.

22

0.

12

/

)]

blank

(

)

blank

(

[

)]

test

(

)

test

(

[

B

i

C,

L,0

g,0

L,0

g,0

×

×

+

+

=

m

V

V

V

V

 ······················ (3) 

ここに, 

B: 生分解度百分率(%) 

V0,g(test): 各試験容器から発生したバイオガスの総量の標準状態

(0 ℃,1気圧)における体積(L) 

V0,L(test): 各試験容器の液中の溶存無機炭素の標準状態における

体積(L) 

(blank)

g

0,

V

: 空試験容器から発生したバイオガスの総量の標準状態

における平均の体積(L) 

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(blank)

L

0,

V

: 空試験容器の消化液中の溶存無機炭素の標準状態にお

ける平均の体積(L) 

mC,i: 試験材料の炭素量(g) 

注記 式(3)の分母は,理論的発生バイオガス量に一致する。理論的発生バイオガス量の計算方法を附

属書JBに記載する。 

対照材料の生分解度百分率を計算するためには,同じ式を用いる。 

結果の表示及び解釈 

試験材料,対照材料及び空試験の測定及び計算結果を含む表を作成する。 

消化容器(空試験,試験材料及び対照材料)から発生したバイオガスの積算量を,時間の関数としてプ

ロットする。試験材料及び対照材料の生分解度(時間の関数としての生分解度百分率)をプロットする(附

属書C参照)。個々のデータ間の差が,20 %以内の場合は平均値を用いる。そうでない場合は,消化容器

ごとに生分解度をプロットする。 

試験の終了時における生分解度百分率の平均値を計算し,その値を最終試験結果として報告する。 

結果の正当性 

試験は,次の場合有効であると判断する。 

a) 15日間経過後の対照材料の生分解度百分率が70 %以上。 

b) 対照材料の生分解度百分率の試験容器間の差が試験終了時において20 %以下。 

10 試験報告書 

試験報告書には,次の事項を記載する。 

a) この規格の規格番号 

b) 試験材料及び対照材料の同定に必要な情報[有機炭素の含量,理論的発生バイオガス量,化学組成及

び化学式(分かるならば),形状,外観及び試料の量/濃度] 

c) 試験容器中の試験材料の濃度 

d) 発生バイオガス量測定方法の詳細(例えば,用いた体積測定方式)及び溶存無機炭素の測定方法の詳

細 

e) 植種源の情報[例えば,採取源,平均滞留時間,採取日,保管方法,取扱履歴,試験材料に対するい

かなるじゅん(馴)化,他の前培養,全乾燥固形物,揮発性固形物,懸濁液のpH値,全窒素含有量,

揮発性脂肪酸量など] 

f) 

各消化容器の,生分解度百分率及びバイオガスの発生量並びにそれらの平均値として得られた結果を

表形式及び図にした結果,試験材料並びに対照材料の最終生分解度百分率の結果 

g) 培養温度 

h) 試験終了時の試験懸濁液のpH及び溶存無機炭素 

i) 

誘導期,定常期,生分解期及び試験期間 

j) 

試験結果が棄却された場合その理由 

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附属書A 

(参考) 

ガス体積測定装置の例 

A.1 概要 

ガス体積測定装置の例を,図A.1及び図A.2に示す。 

 1 

培養器 

消化容器 

植種源 

バイオガス排気口 

リークバルブ 

ガス収集バッグ 

バイオガス 

シリンジ 

放出口 

図A.1−発生バイオガスをシリンジで測定する試験装置の例 

background image

K 6961:2014  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

 1 

恒温槽 

消化容器 

バルブ 

窒素ガス入口 

バイオガス排出口 

窒素ガス放出口 

ガス収集バッグ 

ガスビュレット 

放出口 

図A.2−発生バイオガスをガスビュレットで測定する試験装置の例 

background image

10 

K 6961:2014  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書B 

(参考) 

溶存無機炭素の測定装置の例 

B.1 

概要 

溶存無機炭素の測定装置の例を,図B.1に示す。 

 1 

分液漏斗 

1 mol/Lりん酸溶液(50 mL) 

三角フラスコ(500 mL) 

スラリー(100 g) 

バイオガス排出口 

二方コック 

バイオガス 

ガス収集バッグ(2 L) 

リークバルブ 

図B.1−スラリーに溶存したバイオガスを大気圧下で測定する装置の例 

background image

11 

K 6961:2014  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書C 
(参考) 

生分解度曲線の例 

C.1 概要 

生分解度曲線の例を,図C.1に示す。 

 X 試験期間(日) 

Y 生分解度(%) 

セルロース 

PLA-1 

PLA-2 

PLA: poly(lactic acid) ポリ乳酸 
 

図C.1−PLA及びセルロースの嫌気消化の生分解度曲線,55 ℃のスラリー系 

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12 

K 6961:2014  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書D 
(参考) 

温度及び水蒸気圧の関係 

D.1 概要 

温度及び水蒸気圧の関係を,表D.1に示す。 

表D.1−温度及び水蒸気圧の関係 

℃ 

pw 

kPa 

℃ 

pw 

kPa 

20 

2.338 8 

31 

4.495 3 

21 

2.487 7 

32 

4.757 8 

22 

2.644 7 

33 

5.033 5 

23 

2.810 4 

34 

5.322 9 

24 

2.985 0 

35 

5.626 7 

25 

3.169 0 

36 

5.945 3 

26 

3.362 9 

37 

6.279 5 

27 

3.567 0 

38 

6.629 8 

28 

3.781 8 

39 

6.996 9 

29 

4.007 8 

40 

7.381 4 

30 

4.245 5 

41 

7.784 0 

データはCRC Handbook of Chemistry and Physics [3]から引用した。 

注記 温度(単位℃のT)と水蒸気圧(単位hPaのpw)との関係は,クラウジウス−クラペイロンの

式(D.1)で求められる。 

]

132

.

21

)

15

.

273

/(

6.

267

5

exp[

w

+

+

=

T

p

 ······································· (D.1) 

background image

13 

K 6961:2014  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書JA 

(参考) 

消化汚泥に加える微量栄養素 

JA.1 概要 

消化汚泥に加える微量栄養素の濃度を,表JA.1に示す。 

表JA.1−微量栄養素の保存溶液及び消化汚泥中の微量栄養素の濃度a) 

化合物名 

分子量 

保存溶液の化合物の濃度 

mg/L 

消化汚泥中の微量栄養素の濃度 

mg/L 

mmol/L 

MnCl2・4H2O 

197.90 

400 

Mn(1.11) 

0.020 

H3BO3 

61.83 

50 

B(0.08) 

0.008 

ZnCl2 

136.30 

50 

Zn(0.23) 

0.003 

CuCl2 

134.45 

50 

Cu(0.23) 

0.003 

Na2MoO4・2H2O 

241.95 

50 

Mo(0.19) 

0.002 

CoCl2・6H2O 

237.93 

1000 

Co(2.47) 

0.042 

NiCl2・6H2O 

237.69 

50 

Ni(0.12) 

0.002 

Na2SeO3 

172.94 

10 

Se(0.04) 

0.000 

Na2WO4・2H2O 

329.85 

50 

W(0.27) 

0.001 

Na2S・9H2O 

240.18 

50×103 

S(13.35) 

0.416 

保存溶液1は,硫化ナトリウムを除く全ての栄養素の化合物を混合して調製する。硫化ナトリウムの溶液は,別

の気密容器に調製し,保存溶液2とする。保存溶液1は,100倍に希釈して用いる。保存溶液2は,500倍に希釈し
て用いる。 
注a) ISO 14853記載のTrace-element solution及びASTM D 5210-92記載のStock Solutionsを参考に作成した。 

14 

K 6961:2014  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書JB 

(参考) 

理論的発生二酸化炭素(ThCO2)量及び 

理論的発生メタン(ThCH4)量の計算方法 

JB.1 概要 

理論的発生二酸化炭素(ThCO2)量及び理論的発生メタン(ThCH4)量の計算方法は,次による。 

a) 二酸化炭素(CO2)及びメタン(CH4)の理論的発生ガス量は,Buswell及びMueller 1)によると,式(JB.1)

で求められる。 

2

4

2

CO

4

8

2

CH

4

8

2

O

H

2

4

O

H

C

+

+

+

+

o

h

c

o

h

c

o

h

c

o

h

c

 ········ (JB.1) 

注1) 参考文献[10]参照。 

b) 窒素及び/又は硫黄を含む材料に対するBuswell及びMuellerの拡張式は,式(JB.2)で求められる。 

S

H

NH

CO

4

8

3

4

8

2

CH

4

8

3

4

8

2

O

H

2

4

3

2

4

S

N

O

H

C

2

3

2

4

2

s

n

s

n

o

h

c

s

n

o

h

c

s

n

o

h

c

s

n

o

h

c

+

+

+

+

+

+

+

+

+

 ···· (JB.2) 

c) Fe2O3及びSO42−のような酸化剤が存在する場合は,Buswell及びMuellerの式は使えない。 

d) 発生するメタン及び二酸化炭素の係数をみると,分子の水素,酸素,窒素,硫黄の成分量によって,

係数が変化する。ただし,メタン及び二酸化炭素の係数の和は,cとなり,分子式の炭素数cと等し

くなる。したがって,メタンガス及び二酸化炭素ガスの総和のモル数は,分子式の炭素のモル数と一

致する。 

15 

K 6961:2014  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

参考文献 

[1] Yamamoto, K., Murakami, A., and Iwahori, K.: Biogas and Methane Yields from Paper Sludge by Anaerobic 

Digestion, Japanese Journal of Water Treatment Biology, Vol. 44, pp. 77-86 (2008) 

[2] Yagi, H., Ninomiya, F., Funabashi, M., and Kunioka, M.: Anaerobic Biodegradation Tests of Poly(lactic acid) 

under Mesophilic and Thermophilic Conditions Using a New Evaluation System for Methane Fermentation 

in Anaerobic Sludge, Int. J. Mol. Sci., Vol. 10, pp. 3824-3835 (2009) 

[3] Lide, D.R., and Frederikse, H.P.R. (eds): CRC Handbook of Chemistry and Physics, 75th ed., CRC Press 

(1994-95) 

[4] ISO 8245,Water quality−Guidelines for the determination of total organic carbon (TOC) and dissolved 

organic carbon (DOC) 

[5] ISO 13641-1,Water quality−Determination of inhibition of gas production of anaerobic bacteria−Part 1: 

General test 

[6] ISO 13641-2,Water quality−Determination of inhibition of gas production of anaerobic bacteria−Part 2: 

Test for low biomass concentrations 

[7] ISO 14853,Plastics−Determination of the ultimate anaerobic biodegradation of plastic materials in an 

aqueous system−Method by measurement of biogas production 

[8] ISO 15985,Plastics−Determination of the ultimate anaerobic biodegradation and disintegration under 

high-solids anaerobic-digestion conditions−Method by analysis of released biogas 

[9] ASTM D 5210,Standard Test Method for Determining the Anaerobic Biodegradation of Plastic Materials in 

the Presence of Municipal Sewage Sludge 

[10] BUSWELL, A.M., and MUELLER, H.F. (1952): Mechanism of methane fermentation, Ind. Eng. Chem., 44, 

pp. 550-552 

background image

16 

K 6961:2014  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書JC 

(参考) 

JISと対応国際規格との対比表 

JIS K 6961:2014 プラスチック−制御されたスラリー系における嫌気的
究極生分解度の求め方−発生バイオガス量の測定による方法 

ISO 13975:2012,Plastics−Determination of the ultimate anaerobic biodegradation of plastic 
materials in controlled slurry digestion systems−Method by measurement of biogas production 

(I)JISの規定 

(II) 
国際 
規格 
番号 

(III)国際規格の規定 

(IV)JISと国際規格との技術的差異の箇条ごとの評価
及びその内容 

(V)JISと国際規格との技術的
差異の理由及び今後の対策 

箇条番号 
及び題名 

内容 

箇条 
番号 

内容 

箇条ごと 
の評価 

技術的差異の内容 

− 

− 

− 

引用規格 

削除 

箇条6で,ISO 14853ではなく,附属書JA
(参考)を参照するようにした結果,引用規
格がなくなったため,箇条自体を削除した。 

2 用語及び
定義 

2.12 バイオガス 

追加 

バイオガスの定義を追加 

2.13 生分解度 

追加 

生分解度の定義を追加 

6 操作 

6.2 植種源の準備 

7.2 

消化汚泥に加える微量
栄養素については,
ISO 14853を参照。 

変更 

消化汚泥に加える微量栄養素については,
ISO 14853ではなく,附属書JA(参考)を
参照するようにした。それに伴い,引用規格
の箇条2を削除した。 

ISO規格と附属書JAとは同等
の内容であり,技術的差異はな
い。 

7 計算及び
結果の表示 

7.3 生分解度百分率
の計算 

8.3 

NOTEでISO 14853 
Annex Fを参照。 

変更 

理論的発生二酸化炭素(ThCO2)及び理論的
発生メタン(ThCH4)生成量の計算方法につ
いては,ISO 14853のAnnex Fではなく,附
属書JB(参考)を参照するようにした。 

ISO規格と附属書JBとは同等
の内容であり,技術的差異はな
い。 

10 試験報
告書 

i) 

11 

追加 

定常期を追加 

今後,ISO規格の定期見直しな
どを通じて,修正を提案する。 

JISと国際規格との対応の程度の全体評価:ISO 13975:2012,MOD 

2

K

 6

9

6

1

2

0

1

4

background image

17 

K 6961:2014  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

注記1 箇条ごとの評価欄の用語の意味は,次による。 
 

− 削除 ················ 国際規格の規定項目又は規定内容を削除している。 

− 追加 ················ 国際規格にない規定項目又は規定内容を追加している。 

− 変更 ················ 国際規格の規定内容を変更している。 

注記2 JISと国際規格との対応の程度の全体評価欄の記号の意味は,次による。 
 

− MOD ··············· 国際規格を修正している。 

2

K

 6

9

6

1

2

0

1

4