日本工業規格
JIS
K
6555
-1995
革の仕上膜のはく離強さ試験方法
Testing method for adhesion of finish to leathers
1.
適用範囲 この規格は,仕上剤を塗布したすべての革の仕上膜のはく離強さ(
1
)
の試験方法について規
定する。
注(
1
)
ここでいう仕上膜のはく離強さとは,革の仕上面の一部をキャリアの表面に接着剤で接着し,
接着していない革の一端をキャリアの表面に対して約90度の角度で引っ張り,仕上膜がはく離
するのに要する力とする。
備考1. この規格の引用規格を,次に示す。
JIS K 6545
革の耐屈曲性試験方法
JIS K 6550
革試験方法
JIS K 8593
石油エーテル(試薬)
JIS L 0804
変退色用グレースケール
JIS Z 8401
数値の丸め方
JIS Z 8703
試験場所の標準状態
2.
この規格の中で{ }を付けて示してある単位及び数値は,従来単位によるものであって,参
考として併記したものである。
2.
試験項目 この規格で規定する試験項目は,次のとおりである。
(1)
はく離試験
(2)
湿潤はく離試験
(3)
老化はく離試験
(4)
屈曲はく離試験
3.
試験の一般条件
3.1
試験室の標準状態 試験室は,JIS Z 8703 の温湿度状態 3 類[温度 20±2 ℃,相対湿度 (65±5) %]
とする。ただし,恒温恒湿の設備のない場合には常温 (20±15 ℃),常湿 [(65±20) %] の状態で試験して
もよいが,この場合には試験時の温湿度を記録する。
3.2
試験片の調整 試験片は,試験前に温度 20±2 ℃,相対湿度 (65±5) %の状態中に 48 時間以上静置
する。
4.
装置,器具及び薬品
4.1
装置,器具
2
K 6555-1995
4.1.1
引張試験機 引張試験機は,はく離時の荷重がその容量の 15 %以上 85 %以下の範囲を持ち,その
引張速度が 1 分間当たり 100±20 mm で,保持器及び連結フックが固定でき,しかも試験中のはく離強さ
−はく離間隔曲線が自動記録できるものとする。
4.1.2
キャリア キャリアは,図 1 に示す形状で,試験片を接着できる 70×10×10 mm の大きさの表面
平滑な金属製(例えば,アルミニウム,軟鋼など)とする。
図 1 キャリアの形状及び寸法
4.1.3
保持器 保持器は,試験片を接着したキャリアを引張試験機の下部つかみに固定できる図 2 に示す
装置(例えばアルミニウム製)とする。
図 2 保持器の一例
4.1.4
連結フック 連結フックは,つかみ装置の上部と引張試験機の上部つかみとを連結する図 3 に示す
装置で,直径 1〜2 mm, 長さ約 25 cm のスチール製針金フックとする。
図 3 連結フックの一例
4.1.5
つかみ装置 つかみ装置は,試験片の接着していない端を固定し,しかもその上部で連結フックに
取り付けられる輪をもった
図 4 に示す装置とする。
3
K 6555-1995
図 4 つかみ装置の一例
4.1.6
恒温器 恒温器は,50±2 ℃に保つことができる空気浴恒温器とする。
4.1.7
変退色用グレースケール 変退色用グレースケールは JIS L 0804 を用いる。
4.2
薬品
4.2.1
接着剤 接着剤は,エポキシ樹脂接着剤を用いる。
4.2.2
石油エーテル 石油エーテルは,JIS K 8593 の特級を用いる。
5.
はく離試験方法
5.1
試料及び試験片の採取方法 試料は,JIS K 6550 の 4.(試料及び試験片の採取方法)にそれぞれ規
定した部分から採取する。試験片は,試料 1 個につき 100×15 mm の大きさで 4 個採取する。ただし,そ
のうちの 2 個は背線に平行に,他の 2 個は前者の切線に接して背線に垂直に打ち抜いて作製する。
5.2
操作 操作は,次によって行う。
(1)
試験片のキャリアへの取付け 3.2 によって調整した試験片及びキャリアの接着面を石油エーテルを
浸み込ませた柔らかい清浄な布でふき,汚れを除く。石油エーテルが乾燥した後,キャリアの接着面
に接着剤をへらで薄く塗る(
2
)
。次に接着剤を塗ったキャリアの上に,試験片の仕上面が接し,しかも
その長辺の両端は約 15 mm ずつ,短辺の端は約 2.5 mm ずつはみ出すようにして置く。試験片の裏面
を指又はペーパーナイフで強く押し,気泡を除く。次いで平らな板上に試験片が下になるようにして
24
時間以上標準状態の中に静置する。
注(
2
)
試験片の仕上面にも接着剤を塗ることができる。ただし,この場合には試験片の長辺の両端約
15 mm
ずつは接着剤を塗らないこと。
(2)
試験片の裁断 試験片を接着したキャリアを引張試験機に取り付ける前に,図 5 に示すようにキャリ
アの長軸からはみ出している試験片の短辺の端をキャリアの端に合わせて切り落とす。
図 5
4
K 6555-1995
(3)
はく離強さの試験 キャリアからはみ出している試験片の長辺の両端をそれぞれ軽く引っ張り,両端
から試験片の接着面を数 mm ずつはがす。
次いでキャリアを保持器に差し込み,
ボルト等で固定する。
この保持器を引張試験機の下部つかみに取り付ける。この場合,つかみの軸の中心からキャリアの一
端までが 17.5 mm となるようにする。この端にある試験片の接着されていない部分を端から約 5 mm
のところまで,つかみ装置に挟む。このとき,つかみ装置のフック連結輪は上を向かせる。
連結フックの一方を引張試験機の上部つかみに固定し,他方のフックをつかみ装置の連結輪に挟む。
引張試験機を 1 分間当たり 100±20 mm の速度で,試験片の接着面が 30 mm はがれるまで引っ張る。
次いで,つかみを元の位置まで戻した後,固定したキャリアを外し,このキャリアの反対側を再び保
持器に取り付け,上記の試験を繰り返す。
備考 引張試験機にキャリアを取り付けた状態を図 6 に示す。
図 6
5.3
評価 評価は,引張試験機に記録されたはく離強さ−はく離間隔曲線から 10 mm 幅当たりのはく離
強さ (mN) {gf} の平均値を整数位まで読み取り,10 位に丸める。
1
試験片について 2 回ずつ測定した計 8 個の測定値の平均を求め,JIS Z 8401 によって 10 位に丸める。
備考 はく離強さの平均値評価例を図 7 に示す。
5
K 6555-1995
図 7
6.
湿潤はく離試験方法 5.1,5.2(1)及び 5.2(2)によって試験片の取付け及び裁断の終わったキャリアを
1l
のビーカーなどの容器に入れ,キャリアと試験片が十分に水につかるまで蒸留水を入れる。このビーカ
ーを真空デシケーター中に入れ,できるだけ早く 55〜25 mbar の真空にし,次いで常圧に戻す。この操作
を繰り返し,3 回目は 10 分間真空の状態に保つ。次いで常圧に戻した後,更に 20 分間放置してキャリア
を取り出し,付着した水分をろ紙で吸い取る。はく離強さの試験までポリエチレンのフィルムに包んで保
管し,5.2(3)及び 5.3 によってはく離強さを求める。この場合,キャリアを水につけてから 110〜130 分間
で,はく離強さを試験しなければならない。
7.
老化はく離試験方法 5.1,5.2(1)及び 5.2(2)によって試験片の取付け及び裁断の終わったキャリアを
50
±2 ℃に保った恒温器に 48 時間放置し,次いで標準状態で 48 時間調整した後,直ちに 5.2(3)及び 5.3
によってはく離強さを求める。
8.
屈曲はく離試験方法 JIS K 6545 の 3.(試料及び試験片の採取方法)によってそれぞれ試験片を採取
し JIS K 6545 の 5.(試験方法)によって 5 000 回屈曲する。試験片の屈曲が著しい部分(
図 8 参照)から,
はく離強さ測定用試験片を採取する。次いで 6.によってはく離強さを試験する。ただし,この場合には試
験片の大きさを 50×15 mm とし,キャリアの中央部で 2 個の試験片が接するように取り付けて試験する。
6
K 6555-1995
図 8 屈曲試験片
9.
報告 試験報告は,次のとおりとする。
(1)
革の種類
(2)
試験方法の種類及び評価
(3)
試験室が標準状態でないときは,試験時の温度及び湿度
(4)
使用した接着剤の種類
(5)
はく離強さ
(6)
試験後の革の外観(仕上膜がはく離したときの革の状態について,革からのスムーズなフィルム状は
く離であるか,又は仕上膜の層間におけるはく離であるかなどを記入する。
)
。
備考 更に仕上膜表面の変化を記述するときは,仕上膜のはく離した革表面をこすってみがいた後,
JIS L 0804
に規定する変退色用グレースケールによって試験前の革表面と比較し,評価する。