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K 6239

:2007

(1)

目  次

ページ

序文 

1

1

  適用範囲

1

2

  引用規格

1

3

 

1

H-NMR

法(絶対法) 

2

3.1

  原理

2

3.2

  試薬

2

3.3

  装置

2

3.4

  試料の採取 

2

3.5

  手順

2

3.6

  ミクロ構造の計算

3

4

  IR 法(相対法)

4

4.1

  原理

4

4.2

  試薬

4

4.3

  装置

4

4.4

  試料の採取 

4

4.5

  手順

5

4.6

  ミクロ構造の計算

6

4.7

 

1

H-NMR

法と同等な値を得るための IR 法の校正

7

5

  精度(削除) 

9

6

  試験報告書 

9

附属書 A(参考)試料の製膜及び FT-IR 法によるミクロ構造の測定手順 

10

附属書 JA(参考)精度

13

附属書 JB(参考)JIS と対応する国際規格との対比表

15


K 6239

:2007

(2)

まえがき

この規格は,工業標準化法第 12 条第 1 項の規定に基づき,日本ゴム工業会(JRMA)及び財団法人日本規

格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があり,日本工業標準調査会

の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本工業規格である。

この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。

この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実用新案登録出願に

抵触する可能性があることに注意を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許

権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実用新案登録出願に係る確認について,責任は

もたない。


日本工業規格     

JIS

 K

6239

:2007

原料ゴム−

溶液重合 SBR のミクロ構造の求め方(定量)

Rubber, raw, S-SBR

Determination of the microstructure

序文 

この規格は,2005 年に第 1 版として発行された ISO 21561 を基に,技術的内容を変更して作成した日本

工業規格である。

なお,この規格で点線の下線を施してある箇所は,対応国際規格を変更している事項である。変更の一

覧表にその説明を付けて,

附属書 JB に示す。

警告  この規格の利用者は,通常の試験室での作業に精通しているものとする。この規格は,その使用に

関連して起こるすべての安全上の問題を取り扱おうとするものではない。この規格の利用者は,各自の責

任において安全及び健康に対する適切な措置をとらなければならない。 

適用範囲 

この規格は,原料ゴム−溶液重合 SBR(S-SBR)のミクロ構造(ブタジエン成分のトランス-1,4 単位,

シス-1,4 単位及び 1,2 単位並びにスチレンの含有量)を求める二つの方法,すなわち絶対法としてのプロ

トン核磁気共鳴法(

1

H-NMR

法)及び相対法としての赤外分光法(IR 法)について規定する。

なお,トランス-1,4 単位,シス-1,4 単位及び 1,2 単位(ビニル単位ともいう。

)の単位含有量は,ブタジ

エン成分に対するモル分率で表し,スチレン含有量はポリマー全体に対する質量分率で表す。

注記 1  IR 法では,

1

H-NMR

法によって絶対的なミクロ構造が得られている S-SBR を用いた校正によ

って,ミクロ構造の絶対量を求めることも可能である。

注記 2  この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。

ISO 21561:2005, Styrene-butadiene rubber(SBR)

−Determination of the microstructure of

solution-polymerized SBR (MOD)

なお,対応の程度を表す記号(MOD)は,ISO/IEC Guide 21 に基づき,修正していることを

示す。

引用規格 

次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの

引用規格は,その最新版(追補を含む。

)を適用する。

JIS K 0117

  赤外分光分析方法通則

JIS K 6229

  ゴム−溶剤抽出分の求め方(定量)

注記  対応国際規格:ISO 1407,Rubber−Determination of solvent extract (MOD)


2

K 6239

:2007

JIS K 6298

  原料ゴム−天然ゴム・合成ゴム−試験用試料の採取手順

注記  対応国際規格:ISO 1795,Rubber, raw natural and raw synthetic−Sampling and further preparative

procedures (MOD)

JIS K 8034

  アセトン(試薬)

JIS K 8464

  シクロヘキサン(試薬)

1

H-NMR

法(絶対法) 

3.1 

原理 

3.1.1 

抽出処理した S-SBR 試料を,重水素化クロロホルムに溶解する。 

3.1.2 

その試料溶液の

1

H-NMR

スペクトルを,観測幅 15 ppm で測定する。ブタジエン成分の 1,4 単位(ト

ランス-1,4 単位とシス-1,4 単位との合計)のピーク面積及び 1,2 単位のピーク面積並びにスチレンのピーク

面積を求める。ブタジエン成分の 1,4 単位及び 1,2 単位並びにスチレンの含有量は,NMR の理論に従い 3.6

に示す計算式を用いて算出する。

3.2 

試薬 

3.2.1 

重水素化クロロホルム(CDCl

3

)

  0.03  %テトラメチルシラン(TMS)を内部標準として含有し,純

度 99.8  %を超えるもの。 

3.2.2 

無水エタノール-トルエン共沸混合物(ETA)  JIS K 6229 に示された方法によって調製する。 

3.2.3 

アセトン  JIS K 8034 に示されるもの。 

3.3 

装置 

3.3.1 

1

H-NMR

装置  プロトンの共鳴周波数が,150 MHz 以上のフーリエ変換形核磁気共鳴装置

(FT-NMR)

 

3.3.2 

抽出装置  JIS K 6229 に規定するもの。 

3.3.3 

真空乾燥器  50〜60  ℃に制御できるもの。 

3.3.4 

はかり  0.1 mg まで測定できるもの。 

3.4 

試料の採取 

JIS K 6298

によって,原料ゴムから試料を採取する。

3.5 

手順 

3.5.1 

JIS K 6229

によって,ETA 又はアセトンを抽出溶媒として用い,伸展油,老化防止剤などのゴム添

加剤を抽出する。抽出処理した S-SBR 試料を,50〜60  ℃の真空乾燥器で恒量になるまで乾燥する。

3.5.2 

抽出処理し,乾燥した S-SBR 試料の 15〜50 mg を,0.5 ml の CDCl

3

に完全溶解させる。試料溶液

の濃度は,使用する装置の分解能に応じて選択する。

3.5.3 

S-SBR

試料溶液 0.5 ml を,NMR 測定試料管に移す。

3.5.4 

次の条件で,S-SBR 試料溶液及びブランク溶液(3.2.1 参照)の

1

H-NMR

スペクトルを測定する。 

−  モード:シングルパルス法

−  測定温度:室温〜50  ℃

−  データポイント数:32 k

−  オフセット:5 ppm

−  観測幅:15 ppm 以上

−  観測用パルス:30  °パルス

−  繰返し時間:4〜30  秒


3

K 6239

:2007

−  積算回数:32〜256  回

3.6 

ミクロ構造の計算 

3.6.1 

ピーク面積の求め方 

1

H-NMR

スペクトルからピーク面積を求める方法は,

表 による。図 

1

H-NMR

スペクトルの例を示

す。 

表 1−ピーク面積の求め方 

記号

積分範囲及びピーク面積

4.3 ppm

から 5.0 ppm 付近の最低強度位置までのピーク面積

5.0 ppm

付近の最低強度位置から 6.1 ppm 付近の最低強度位置までのピーク面積

6.1 ppm

付近の最低強度位置から 7.7 ppm までのピーク面積

TMS

blank

ブランク測定時の TMS(0 ppm)のピーク面積

CD

blank

ブランク測定時の 6.1 ppm から 7.7 ppm までのピーク面積

TMS 

試料測定時の TMS(0 ppm)のピーク面積

X

化学シフト(ppm)

A

BC

シグナルピーク面積

図 1S-SBR 試料の

1

H-NMR

スペクトルの例 

3.6.2 

ピーク面積 の補正 

CDCl

3

中の不純物である CHCl

3

の影響を補正するために,式(1)を用いて C

calib

を算出する。

)

/

(

blank

blank

calib

TMS

TMS

CD

C

C

×

=

 (1)


4

K 6239

:2007

3.6.3 

ミクロ構造の計算 

3.6.1

で求めたピーク面積 A及び 3.6.2 で求めた C

calib

を用いて,式(2)〜式(4)によって,ブタジエン成

分の 1,4 単位及び 1,2 単位,並びにスチレンの含有量を計算する。

100

54

)

4

2

(

104

)

5

(

104

)

5

(

calib

calib

×

×

+

+

×

×

=

/

A

/

B

/

C

/

C

St

%

 (2)

100

4

2

2

2

1

×

+

=

/

A

/

B

/

A

Bd

%

,

 (3)

100

4

/

2

/

4

/

2

/

%

4

,

1

×

+

=

A

B

A

B

Bd

 (4)

ここに,

St

S-SBR

試料中のスチレン含有量(質量分率)

Bd

1,2

S-SBR

試料のブタジエン成分の

1,2

単位含有量(モル

分率)

Bd

1,4

S-SBR

試料のブタジエン成分の

1,4

単位含有量(モル

分率)

4 IR

法(相対法) 

4.1 

原理 

4.1.1 

抽出処理した

S-SBR

試料をシクロヘキサンに溶かし,

KBr

板(臭化カリウム結晶板)上で製膜す

る。 

4.1.2 

KBr

板上で製膜した

S-SBR

試料の

IR

スペクトルを,

1 200

600 cm

-1

の領域で測定する。四つの指

定した波数における吸光度から,ブタジエン成分のトランス

-1,4

単位,シス

-1,4

単位及び

1,2

単位,並びに

スチレンの含有量をハンプトン法(参考文献

[1]

を参照)を用いて計算する。

4.1.3 

IR

法では,

1

H-NMR

法で求めたミクロ構造既知の

S-SBR

試料を用いて校正することによって,ミ

クロ構造の絶対量を求めることができる。

4.2 

試薬 

4.2.1 

無水エタノール-トルエン共沸混合物(ETA)  JIS K 6229 に示された方法によって調製する。 

4.2.2 

アセトン  JIS K 8034 に示されるもの。 

4.2.3 

シクロヘキサン  JIS K 8464 に示されるもの。 

4.3 

装置 

4.3.1 

赤外分光光度計  フーリエ変換形赤外分光光度計(

FT-IR

,又は複光束分散形赤外分光光度計(分

散形

IR

JIS K 0117 に規定するもの。 

4.3.2 

抽出装置  JIS K 6229 に規定するもの。 

4.3.3 

真空乾燥器 

50

60

℃に制御できるもの。 

4.3.4 

化学はかり 

0.1 mg

まで測定できるもの。 

4.3.5 20 

ml

ふた付き試料瓶 

4.3.6 

パスツールピペット及び 10 ml ピペット 

4.3.7 KBr

板(臭化カリウム結晶板)  赤外分光測定用。 

4.3.8 

ホルダ 

KBr

板用。 

4.3.9 

金属製スペーサ  厚さ

0.1 mm

のもの。 

4.4 

試料の採取 

JIS K 6298

によって,原料ゴムから試料を採取する。


5

K 6239

:2007

4.5 

手順 

4.5.1 

試料溶液の調製 

4.5.1.1 

JIS K 6229

によって,抽出溶媒として

ETA

又はアセトンを用い,伸展油,老化防止剤などのゴム

添加剤を抽出する。抽出処理した

S-SBR

試料は,

50

60

℃の真空乾燥器で恒量になるまで乾燥する。

4.5.1.2 

抽出処理し,乾燥した

S-SBR

試料

0.2 g

を,

20 ml

試料瓶にとる。

4.5.1.3 

10 ml

ピペットを用いて,試料瓶にシクロヘキサン

10 ml

を加える。試料瓶にフタをし,よく振っ

S-SBR

試料を完全に溶解させる。

4.5.2 

製膜 

4.5.2.1 

厚さ

0.1 mm

の金属製スペーサを

KBr

板上に置き,パスツールピペットを用い,試料溶液をスペ

ーサ孔内に均一に広げる。

4.5.2.2 

フィルムの厚さを均一にするために,スペーサから余分な試料溶液を除く。フィルムの厚さは,

吸光度に影響するので,状況に応じて,試料溶液量を調整する。

4.5.2.3 

KBr

板上で溶媒を蒸発させる。

4.5.2.4 

KBr

板からスペーサを外し,ホルダを用いて

KBr

板を赤外分光光度計にセットする。 

注記

製膜用の器具及び手順を,

附属書 に示す。

4.5.3 IR

スペクトルの測定 

4.5.3.1 FT-IR

による測定 

4.5.3.1.1 

KBr

板だけのバックグラウンドスペクトルを,

1 200

600 cm

1

の範囲で測定する。 

4.5.3.1.2 

試料を製膜した

KBr

板のスペクトルを,

1 200

600 cm

1

の範囲で測定する。 

4.5.3.1.3 

再現性のよいデータを得るために,試料スペクトルの最大吸光度を

0.10

0.15

の範囲に入るよ

うにする。 

4.5.3.1.4 

IR

スペクトルの例を,

図 に示す。 

4.5.3.2 

分散形 IR による測定 

4.5.3.2.1 

KBr

板だけを試料側及び対照側双方の光路に置き,吸光度モードで

1 200

600 cm

1

の範囲を測

定する。これをバックグラウンドスペクトルとする。 

4.5.3.2.2 

試料を製膜した

KBr

板を試料側光路に,

KBr

板だけを対照側光路に置き,吸光度モードで

1 200

600 cm

1

の範囲を測定する。これを,試料スペクトルとする。 

4.5.3.2.3 

再現性のよいデータを得るために,試料スペクトルの最大吸光度を

0.10

0.15

の範囲に入るよ

うにする。 

4.5.3.2.4 

試料スペクトルからバックグラウンドスペクトルを差し引き,ミクロ構造計算のための差スペ

クトルを作成する。


6

K 6239

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N

波数

D

吸光度

1

トランス-1,4 単位

2 1,2

単位

3

シス-1,4 単位

4

スチレン

図 2S-SBR 試料の IR スペクトルの例 

4.6 

ミクロ構造の計算 

4.6.1 

各ミクロ構造に対応する吸光度の読取り 

ミクロ構造に対応する吸光度の読取り方は,

表 による。ブタジエン成分のシス

-1,4

単位は,吸収ピー

クが弱く,そのピークの波数は,ポリマー中のスチレン含有量の影響を受ける。

表 2−各ミクロ構造の吸光度の読取り方 

記号

ミクロ構造

波数(cm

1

)

吸光度の読取り方

D

trans

 

トランス-1,4 単位 967 付近

最大ピークの吸光度を読み取る。

D

vinyl

 

1,2

単位 911 付近

最大ピークの吸光度を読み取る。

D

cis

 

シス-1,4 単位 724 付近

最大ピークの波数は,スチレン含有量などの影響を受ける。
ピークが明確な場合は,740〜720 cm

1

のピークトップの

吸光度を読み取る。この場合,724 cm

1

の吸光度は使わな

い。 
スチレン含有量が約 30  %を超える場合,シス-1,4 単位の

ピークはスチレンに起因する 755 cm

1

及び 699 cm

1

の二

つの吸収に隠れる。この場合は,固定波数 724 cm

1

におけ

る吸光度を読み取る。

D

styrene

 

スチレン 699 付近

最大ピークの吸光度を読み取る。

4.6.2 

計算 

4.6.2.1 

一般 

S-SBR

試料中の各ミクロ構造の含有量は,ハンプトン法によって対応する波数の吸光度(

D

trans

D

vinyl


7

K 6239

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D

cis

D

styrene

)から算出する。

4.6.2.2 

吸光度比率の求め方 

読み取った吸光度の値を用いて,次の式によって各ミクロ構造の吸光度比率を算出する。

100

styrene

cis

vinyl

trans

trans

trans

×

+

+

+

=

D

D

D

D

D

D

%

(5)

100

styrene

cis

vinyl

trans

vinyl

vinyl

×

+

+

+

=

D

D

D

D

D

D

%

(6)

100

styrene

cis

vinyl

trans

cis

cis

×

+

+

+

=

D

D

D

D

D

D

%

(7)

100

styrene

cis

vinyl

trans

styrene

styrene

×

+

+

+

=

D

D

D

D

D

D

%

(8)

4.6.2.3 

ミクロ構造の濃度計算 

各ミクロ構造の濃度(

c

trans

c

vinyl

c

cis

c

styrene

(g/L)

は,次の式によって算出する。

styrene

cis

vinyl

trans

trans

%

5

006

.

0

%

1

036

.

0

%

2

011

.

0

%

7

393

.

0

D

D

D

D

c

×

×

×

×

=

 (9)

styrene

cis

vinyl

trans

vinyl

%

1

007

.

0

%

4

015

.

0

%

0

314

.

0

%

7

006

.

0

D

D

D

D

c

×

×

×

+

×

=

 (10)

styrene

cis

vinyl

trans

cis

%

1

025

.

0

%

7

834

.

1

%

4

027

.

0

%

4

004

.

0

D

D

D

D

c

×

×

+

×

×

=

(11)

styrene

cis

vinyl

styrene

%

9

373

.

0

%

4

260

.

0

%

8

013

.

0

D

D

D

c

×

+

×

×

=

 (12)

4.6.2.4 

ミクロ構造の計算 

ブタジエン成分のトランス

-1,4

単位,シス

-1,4

単位及び

1,2

単位の含有量(モル分率)並びにスチレンの

含有量(質量分率)を次の式によって算出する。

100

trans

cis

vinyl

trans

trans

×

+

+

=

c

c

c

c

%

(13)

100

vinyl

cis

vinyl

trans

vinyl

×

+

+

=

c

c

c

c

%

(14)

100

cis

cis

vinyl

trans

cis

×

+

+

=

c

c

c

c

%

(15)

100

styrene

styrene

cis

vinyl

trans

styrene

×

+

+

+

=

c

c

c

c

c

%

(16)

ここに,

 trans

S-SBR

試料のブタジエン成分のトランス

-1,4

単位含

有量(モル分率)

 vinyl

S-SBR

試料のブタジエン成分の

1,2

単位含有量(モ

ル分率)

 cis

S-SBR

試料のブタジエン成分のシス

-1,4

単位含有量

(モル分率)

 styrene

S-SBR

試料中のスチレン含有量(質量分率)

4.7 

1

H-NMR

法と同等な値を得るための IR 法の校正 


8

K 6239

:2007

4.7.1 

ブタジエン成分の

1,2

単位含有量及びスチレン含有量を

1

H-NMR

法で求めた既知の

S-SBR

試料を

用いて校正することによって,ミクロ構造の絶対量を求めることができる。ブタジエン成分の

1,4

単位含

有量(トランス

-1,4

単位含有量とシス

-1,4

単位含有量との合計)は,

100

からブタジエン成分の

1,2

単位含

有量を差し引いて求める。

図 及び図 に,校正曲線の例を示す。

4.7.2 

未知試料の

IR

スペクトルを作成するために用いる測定条件(分解,アポダイゼーション,積算回

数など)は,校正曲線を作成するときと同じでなければならない。

X

1

H-NMR

による 1,2 単位含有量(ブタジエン成分のモル分率)

Y IR

による 1,2 単位含有量(ブタジエン成分のモル分率)

図 3

1

H-NMR

法と IR 法との 1,2 単位含有量の校正曲線の例 

X

1

H-NMR

によるスチレン含有量(S-SBR 試料中の質量分率)

Y IR

によるスチレン含有量(S-SBR 試料中の質量分率)

図 4

1

H-NMR

法と IR 法とのスチレン含有量の校正曲線の例 


9

K 6239

:2007

精度(削除) 

対応国際規格では,この箇条において,精度について規定しているが,この規格では不要であり不採用

とし

附属書(参考)に移した(内容は附属書 JA 参照。)。

試験報告書 

試験報告書には,次の事項を記載する。

a)

この規格の番号及び名称

b)

試料を特定するための詳細情報

c)

使用した方法(

1

H-NMR

法又は

IR

法)

d)

測定結果[モル分率(%)又は質量分率(%)で示し,丸めの幅

0.1

で表す(小数点以下第

1

位まで

表す)

e)

この規格に含まれない操作又は任意に行った操作

f)

測定日


10

K 6239

:2007

附属書 A

(参考)

試料の製膜及び FT-IR 法によるミクロ構造の測定手順

序文 

この附属書は,本体について補足するものであって,規定の一部ではない。

A.1 

器具 

試料の製膜及び

FT-IR

測定に使用する器具を,

図 A.1 に示す。

1

  パスツールピペット

2

  35 mm×35 mm×5 mm の KBr 板

3

  KBr 板用ホルダ

4

  厚さ 0.1 mm の金属製スペーサ

図 A.1−器具一式 

A.2 

手順 

A.2.1 

KBr

板上にスペーサを置く(

図 A.2 参照)。 

A.2.2 

パスツールピペットを用い,スペーサ孔の中心に試料溶液を数滴滴下する(

図 A.3 参照)。 

A.2.3 

スペーサ上にもう一枚の

KBr

板を載せて過剰溶液を付着させ,その後はずす。必要に応じてこの

操作を

2

3

回繰り返し,過剰溶液を取り除く(

図 A.4 参照)。 

A.2.4 

KBr

板上の溶媒を蒸発させる(

図 A.5 参照)。 

A.2.5 

スペーサを

KBr

板から取り除き,製膜した

KBr

板をホルダにセットする(

図 A.6 参照)。 

A.2.6 

KBr

板ホルダを,赤外分光光度計にセットする(

図 A.7 参照)。

注記  分散形

IR

による測定においても,試料の製膜方法は

FT-IR

法と同様に行う。 


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K 6239

:2007

図 A.2KBr 板上にスペーサを置く 

図 A.3−パスツールピペットを使い,試料溶液をスペーサの孔に滴下する 

図 A.4−過剰の試料溶液を取り除く 


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図 A.5−溶媒を蒸発させる 

図 A.6−製膜した KBr 板をホルダにセットする 

図 A.7−赤外分光光度計にホルダをセットする 


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K 6239

:2007

附属書 JA

(参考)

精度

序文 

この附属書は,本体について補足するものであって,規定の一部ではない。

JA.1 

概要 

1

H-NMR

法及び

IR

法の精度の計算は,

ISO/TR 9272

によって行った。

1

H-NMR

法で得られた結果を

表 JA.1

及び

表 JA.2 に,

IR

法によって得られた結果を

表 JA.3 及び表 JA.4 に示す。文書での合意がない限り,こ

れらの精度パラメータを,対象とする材料の合否判定に用いてはならない。

JA.2 

精度の結果 

JA.2.1 

実施方法 

精度試験は,

1

H-NMR

法については

7

試験室において,

IR

法については

8

試験室において,

SBR-1

及び

SBR-2

2

種類の

S-SBR

を用いて

2003

年に実施した。試験は,

1

週間おいて繰り返し,計

2

日間行った。

一日の試験は,

2

回行い,その平均値を一つのデータとした。これらのデータから計算した結果を

表 JA.1

表 JA.4 に示す。用いた記号は,次のとおりである。

s

r

試験室内の併行標準偏差,試験室内の繰返し標準偏差

r

試験室内の併行精度,試験室内の繰返し精度(測定単位で表したもの)

(r)

試験室内の併行精度,試験室内の繰返し精度(

r

の平均値に対する割合を%で表したもの)

s

R

試験室間の再現標準偏差

R

試験室間の再現精度(測定単位で表したもの)

(R)

試験室間の再現精度(

R

の平均値に対する割合を%で表したもの)

JA.2.2 

併行精度(試験室内繰返し精度) 

表 JA.1〜表 JA.4 に示した併行精度

r

値は,統計的に適正である。二つの試験結果に

r

値より大きな差が

生じた場合は,疑わしいと考え,何らかの適切な精査を要する。ただし,今回の精度は一日

2

回の試験の

平均値から算出しているため,一日

1

回の試験結果の評価に用いる場合には注意が必要である。

JA.2.3 

再現精度(試験室間精度) 

表 JA.1〜表 JA.4 に示した再現精度

R

値は,統計的に適正である。二つの試験結果に

R

値より大きな差

が生じた場合は,疑わしいと考え,何らかの適切な精査を要する。ただし,今回の精度は一日

2

回の試験

の平均値から算出しているため,一日

1

回の試験結果の評価に用いる場合には注意が必要である。

表 JA.1

1

H-NMR

法による S-SBR 試料中のスチレン含有量測定の精度 

平均値

試験室内

試験室間

試料

s

r

 r (r)

s

R

 R (R) 

SBR-1

25.2 0.04

0.12

0.47

0.13

0.37 1.46

SBR-2

24.7 0.07

0.19

0.75

0.13

0.36 1.44


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K 6239

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表 JA.2

1

H-NMR

法による S-SBR 試料中のブタジエン成分の 1,2 単位含有量測定の精度 

試験室内

試験室間

試料

平均値

s

r

 r  (r) 

s

R

 R (R) 

SBR-1

10.4 0.08

0.22

2.15

0.25

0.72 6.88

SBR-2

32.6 0.25

0.71

2.18

0.29

0.81 2.50

表 JA.3IR 法による S-SBR 試料中のスチレン含有量測定の精度 

試験室内

試験室間

試料

平均値

s

r

 r (r) 

s

R

 R (R) 

SBR-1

24.9 0.45

1.27

5.09

0.60

1.71 6.87

SBR-2

25.4 0.41

1.15

4.53

0.67

1.89 7.45

表 JA.4IR 法による S-SBR 試料中のブタジエン成分の 1,2 単位含有量測定の精度 

平均値

試験室内

試験室間

試料

s

r

 r  (r) 

s

R

 R (R)

SBR-1

10.4 0.17

0.48

4.60

0.24

0.69 6.61

SBR-2

32.5 0.14

0.40

1.24

0.36

1.01 3.10

参考文献 

[1]

 

HAMPTON

R.R.: Analyt. Chem.

 21 (1949)

 p. 923

[2]

  ISO/TR 9272

:2005

 

Rubber and rubber products

Determination of precision for test method

standards


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附属書 JB

(参考)

JIS

と対応する国際規格との対比表

JIS K 6239 : 0000

  原料ゴム−溶液重合 SBR のミクロ構造の求め方(定量) 

ISO 21561:2005

  Styrene-butadiene rubber(SBR) − Determination of the

microstructure of solution-polymerized SBR

 

(Ⅰ)JIS の規定 

(Ⅲ)国際規格の規定 

(Ⅳ)JIS と国際規格との技術的差異の箇
条ごとの評価及びその内容 

箇 条 番 号 及
び名称

内容 

(Ⅱ) 
国際

規格 
番号 

箇条番号 

内容 

箇 条 ご
と の 評

価 

技術的差異の内容 

(Ⅴ)JIS と国際規格との技術的差
異の理由及び今後の対策 

2

引用規格

 

 

3

1

H-NMR

(絶対法)

3.1.2

含有量の算出方法

 

3.1.2

JIS

にほぼ同じ

変更

理論式を分かりやすく記載し
た。

次回の ISO 規格見直し時に提案す
る。

3.2.2

  ETA 調整方法 

 

3.2.2

JIS

にほぼ同じ

変更

調整方法を規定する JIS を記載
した。

次回の ISO 規格見直し時に提案す
る。

 3.2.3

  アセトン 

 

3.2.3

JIS

にほぼ同じ

変更

試薬の JIS を記載した。

国際規格では,試薬は個々の規格
で定められていないが,技術的な
差異はない。

 3.5.4

 

1

H-NMR

の測定 

3.6.2

  ピーク面積 C の補

正 

 

3.5.4

3.6.2

変更

JIS

の 3.6.2(ISO 規格の 3.6.2)

で,ブランク溶液の測定を削除

し,JIS の 3.5.4 に移した。

対応国際規格では,ブランク測定
について,3.6.2 で明記されている

が,本来は 3.5(手順)に記載す
べき内容のため,記載箇所を変更
した。次回の ISO 規格見直し時に

提案する。

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K 6239

:2007

(Ⅰ)JIS の規定 

(Ⅲ)国際規格の規定 

(Ⅳ)JIS と国際規格との技術的差異の箇

条ごとの評価及びその内容 

箇 条 番 号 及
び名称

内容 

(Ⅱ) 

国際 
規格 
番号 

箇条番号 

内容 

箇 条 ご
と の 評

価 

技術的差異の内容 

(Ⅴ)JIS と国際規格との技術的差

異の理由及び今後の対策 

4

  IR 法(相

対法)

4.2.1

  ETA 調整方法

 4.2.1 JIS

にほぼ同じ

変更

調整方法を規定する JIS を記

載した。

次回の ISO 規格見直し時に提案す

る。

4.2.2

  アセトン

4.2.3

  シクロヘキサン

 4.2.2

4.2.3

JIS

にほぼ同じ

変更

試薬の JIS を記載した。

国際規格では,試薬は個々の規格
で定められていないが,技術的な
差異はない。

 4.3.1

  赤外分光光度計

4.3.1

追加

JIS K 0117

を引用した。

国際規格に対応規格はない。通則
であり,技術的な差異はない。

表 2

 4.6.1 Table 2

変更

測定波数を 付近 に変更した。

装置の制約上,測定波数は,整数
ではなくその近傍となるため,そ

れぞれ

付近

に変更した。次回の ISO

規格見直し時に提案する。

 4.7.1

  校正方法

 4.7.1

追加

ブタジエン成分中の 1,4 単位含
有量の算出方法を追加した。

対応国際規格では,ブタジエン成
分中の 1,4-単位含有量を算出する

方法が明記されていない。次回の

ISO

規格見直し時に提案する。

5

精度

5

精度

削除

本文から削除し,附属書 JA(参
考)に移行した。

対 応 国 際 規 格 の 精 度 算 出 は ,

ISO/TR 9272

にそって行われてい

るが,この規格は,ISO 規格とな
っていない。そのため,今回は規
定からはずし,附属書 JA(参考)

とした。ISO/TR 9272 が ISO 規格
となった時点で規定とする。

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JIS

と国際規格との対応の程度の全体評価:ISO21561 : 2005:MOD

注記 1  箇条ごとの評価欄の用語の意味は,次による。

    −  削除……………… 国際規格の規定項目又は規定内容を削除している。 
    −  追加……………… 国際規格にない規定項目又は規定内容を追加している。 
    −  変更……………… 国際規格の規定内容を変更している。

注記 2  JIS と国際規格との対応の程度の全体評価欄の記号の意味は,次による。

    −  MOD……………  国際規格を修正している。

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