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C 5630-1

:2008 (IEC 62047-1:2005)

(1) 

目  次

ページ

序文  

1

1

  適用範囲  

1

2

  用語及び定義  

1

2.1

  一般  

1

2.2

  理工学  

2

2.3

  材料技術  

4

2.4

  機能要素  

4

2.5

  加工技術  

10

2.6

  接合・組立技術  

17

2.7

  評価技術  

19

2.8

  応用技術  

20

附属書 A(参考)用語の選定基準及び留意点  

24


C 5630-1

:2008 (IEC 62047-1:2005)

(2) 

まえがき

この規格は,工業標準化法第 12 条第 1 項の規定に基づき,財団法人マイクロマシンセンター(MMC)

及び財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があ

り,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本工業規格である。

この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。

この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実用新案登録出願に

抵触する可能性があることに注意を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許

権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実用新案登録出願に係る確認について,責任は

もたない。


   

日本工業規格

JIS

 C

5630-1

:2008

(IEC 62047-1

:2005

)

マイクロマシン及び MEMS に関する用語

Semiconductor devices-Micro-electromechanical devices-

Part 1: Terms and definitions

序文 

この規格は,2005 年に第 1 版として発行された IEC 62047-1 を基に,技術的内容及び対応国際規格の構

成を変更することなく作成した日本工業規格である。

適用範囲 

この規格は,製造プロセスを含むマイクロマシン及び MEMS に関する用語について規定する。

注記  この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。

IEC 62047-1:2005

,Semiconductor devices−Micro-electromechanical devices−Part 1: Terms and

definitions (IDT)

なお,対応の程度を表す記号(IDT)は,ISO/IEC Guide 21 に基づき,一致していることを示す。

用語及び定義 

2.1 

一般  (General terms) 

2.1.1 

微小電気機械デバイス  (micro-electromechanical device) 

内部にセンサ,アクチュエータ,機構部品,電子回路のすべて,又は一部を含む微小なデバイス。

2.1.2 

MEMS 

微小な電気機械システムで,半導体プロセスを用いて一つのチップ上にセンサ,アクチュエータ,電子

回路などのすべて,又は一部を統合化したもの。

注記 MEMS は,micro-electromechanical systems の略語であり,主として米国で使われている用語で,

幾つかの異なる意味で使われる場合があるが,一般には,シリコンプロセス技術を用いた微小

な構造体,センサ及びアクチュエータに関する技術を意味する。

2.1.3 

MST 

微小な電気,光学,機械システム又は/及びその構成要素を微細加工技術によって実現する技術。

注記 MST は,microsystem technologies  の略語で,主として欧州で使われている用語である。

2.1.4 

マイクロマシン  (micromachine) 


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構成部品の寸法が数 mm 以下の機能要素,及びそれらから構成される微小なシステム。

注記  マイクロマシンテクノロジを駆使して製作される機能要素(センサなど)から,これらを統合

化して完成された機械システムまでが含まれる。ナノマシンと呼ばれる分子機械もこれに含ま

れる。その応用として産業分野では配管内,狭所での検査,修理,エネルギー消費が少なく環

境への負荷の小さいマイクロファクトリへの適用。医療分野では従来のメスを使った体の外側

からの手術をマイクロマシンを使った内側からの治療に置き換えることなどが期待されている。

また,マイクロマシン実現のための研究開発は大きく分けて,半導体プロセスを用いた微小電

気機械システム(MEMS)からのアプローチと,現在の機械技術の微小化という二つのアプロ

ーチがある。

2.1.5 

マイクロマシン技術  (micromachine technology) 

マイクロマシンに関連した技術の総称。

注記  マイクロマシンに関連した技術は,非常に多岐にわたり要素技術分野で分類した場合,“設計技

術”,

“材料技術”,

“加工技術”,“機能要素技術”,

“システム制御技術”,

“エネルギー供給技

術”

“接合組立技術”

“電子回路技術”及び“評価技術”

,とそれらの基盤となるマイクロ環境

での熱力学,トライボロジーなどの“マイクロ理工学”などから構成されている。また,マイ

クロマシン技術には二つの側面があり,一つはマイクロマシンを実現させるために必要な技術,

もう一つはマイクロマシンの開発を通して得られた技術を他の産業分野に応用するのに必要な

技術である。

2.2 

理工学  (Terms relating to science and engineering) 

2.2.1 

マイクロ理工学  (micro-science and engineering) 

マイクロマシンが使われるような微小な世界における理工学。

注記  機械システムをマイクロ化していくと,種々の物理パラメタが変化する。その変化は,

−  マクロな世界での変化の外挿で予測できる場合。

−  マイクロな世界での特殊性が顕在化してきて,外挿が不可能になる場合。

の二通りがある。後者の場合,微小な世界での現象を説明するために,新しい理論式又は実験

式を確立しなければならない。さらに,このような工学問題を取り扱うための分析法及び統合

法を新たに開発する必要がある。材料科学,流体力学,熱力学,トライボロジー,制御工学及

び運動力学は,マイクロメカトロニクスを支える基礎であるマイクロ理工学として体系化でき

るであろう。

2.2.2 

スケール効果  (scale effect) 

物体の代表寸法が変わると,これに作用する各種影響及び物体そのものの特性が変わること。

注記  物体の体積は寸法の 3 乗に比例し,表面積はその 2 乗に比例する。すなわち,寸法が小さくな

ると表面力の影響が体積力のそれよりも大きくなる。例えば,微小物体の運動では,慣性力よ

りも静電力及び粘性力が支配的になる。物体の寸法が小さくなると,材料の性質もその微小構

造及び表面の影響を強く受けるようになり,バルクのそれと異なることがある。マイクロな世

界の摩擦特性もマクロな世界とは異なる。マイクロマシンの設計においては,これらの影響を


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十分に考慮する必要がある。

2.2.3 

メソトライボロジー  (mesotribology) 

マイクロとマクロの中間とのメソスコピックな領域を取り扱うトライボロジー。

注記  トライボロジーとは,マクロな世界での摩擦及び摩耗を扱う学問分野である。一方,マイクロ

トライボロジーにおいては,原子・分子の尺度でトライボロジー現象を明らかにすること,及

び摩擦・摩耗を定量化することは,いずれも重要な研究課題である。相対運動を行う両表面が

生じさせるマクロな特徴に着目し,その発生領域にまでさかのぼると,その特徴を生じさせて

いる最小単位に到達する。しかし,それ以上細かくしていくと,その特徴が失われてしまう限

界も存在する。サブナノメータのスケールである原子を幾つも寄せ合わせ,メソスコピックな

スケールにしてトライボロジー現象を考えることによって,マイクロとマクロとの間をつなぐ

新しい展開が図れると考えられる。

2.2.4 

マイクロトライボロジー  (microtribology) 

マイクロマシンが使われるような微小な世界におけるトライボロジー。

注記  トライボロジーとは,マクロな世界での摩擦及び摩耗を扱う分野である。  一方,マイクロマシ

ンのように構成する部品の寸法が極端に小さくなると,重力及び慣性力に変わって,表面力及

び粘性力が支配的になってくる。クーロンの摩擦法則によれば,摩擦力は垂直荷重に比例する

が,マイクロマシンの環境では表面間力のため,通常のスケールでは考えられないような大き

な摩擦力が現れるといわれている。また,

通常のサイズでは問題にならない極微少量の摩耗が,

マイクロマシンにとって致命的なダメージとなる。マイクロトライボロジーの研究では,摩擦

面及び固体表面で起きる現象のオングストロームからナノメートルの分解能での観察,原子レ

ベルの相互作用の解析を通して,摩擦力の低減又は原子的に見ても摩耗の生じない条件の発見

が試みられている。これらのアプローチは,マイクロマシンだけでなく通常のスケールのトラ

イボロジー問題の解決にも役立つものと期待されている。

2.2.5 

バイオミメティクス  (biomimetics) 

生物の運動及び機構を模倣して機能を作ること。

注記  マイクロマシンの寸法に適した微小機構を考えるとき,厳しい自然とうた(淘汰)の中で生き

続けてきた生物の機構及び構造は良い手本となる。その一例として,昆虫の外骨格・弾性ジョ

イント系を手本にした微小三次元構造が報告されている。外骨格とは硬い表皮が弾性体で結合

されたもので,可動部分はすべて弾性体の変形を利用して動いている。弾性変形を利用すると

しゅう(摺)動による摩擦が生じないため,微小世界において有利になると考えられる。また,

外骨格構造は,機構学でいう閉リンク機構に相当し一部のアクチュエータの動きを複数のリン

クに伝達できる特徴がある。

2.2.6 

繊毛運動  (ciliary motion) 

多数の繊毛が協調して作り出す動き。

注記  多数の繊毛を協調的に制御して動かすことによって全体として進行波を創成し,流体及び微小

物体を搬送したり,自らが移動することができるようになる。前者の例としては,人体の気管


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から微小なごみを排出する仕組みがあげられる。後者の例としては,単細胞生物のゾウリムシ

がある。このような生物の繊毛運動を模擬し,マイクロマシニングで作製された多数の繊毛を

もつアクチュエータが試作研究されている。

2.2.7 

自己組織化  (self-organization) 

多数の微小物体間及び現象間の相互作用によって,外部的な操作又は制御なしに非平衡系の構造が自発

的に生まれること。

2.3 

材料技術  (Terms relating to material science) 

2.3.1 

形状記憶樹脂  (shape memory polymer) 

変形を加えた後,加熱及び刺激によって変形前の形状に戻る性質をもつ樹脂。

注記  形状記憶の性質をもたせるためには,架橋又は部分結晶化された固定相及び可逆相が混在して

いる必要がある。形状を記憶,再生するには次の手順を踏む。

まず,樹脂をある温度以上に保ち,固定相及び可逆相をともに軟化した状態にする。次に任

意の一次形状に保ちながら温度を幾らか下げ,可逆相は,軟化状態のままで固定相を凍結状態

にすることで一次形状を記憶させる。外力を加え別の二次形状にした状態で,更に温度を下げ

可逆相をも凍結状態にすることで二次形状に固定する。この状態では,外力を取り除いても二

次形状は保たれる。ここで可逆相だけが軟化する温度まで加熱すると以前に記憶した一次形状

に戻る。加熱して柔らかくなることが形状回復の原因となっているため,大きな回復力は期待

できない。熱を介さずに pH 変化,電気刺激,光刺激などによって形状回復をする樹脂もある。

形状記憶樹脂にはポリエステル,ポリウレタン,スチレン・ブタジエン,ポリノルボルネン,

トランスポリイソプレンなどがある。

2.3.2 

改質加工  (modification) 

材料の物理的及び化学的な特性を変化させる加工技術。

注記  代表的な例として,集束イオンビームによって局所的に不純物をドーピングしたり,単結晶化

などの相変化を起こさせるレーザドーピング,イオン注入及びイオンミキシングがあげられる。

2.4 

機能要素  (Terms relating to functional element) 

2.4.1 

アクチュエータ  (actuator) 

電気的エネルギー,化学的エネルギーなどの種々のエネルギーを力学的運動エネルギーに変換して,機

械的仕事を行う機械要素。

注記  マイクロマシンが機械的仕事を行うためには,その基本要素としてマイクロ化されたアクチュ

エータが不可欠である。主な例として,シリコンプロセスで作製した静電アクチュエータ,PZT

のような機能性材料を利用した圧電アクチュエータ,ゴム製空気圧アクチュエータなどがある

が,そのほかにも様々なエネルギー変換原理を応用した多くのマイクロアクチュエータが研究

開発されている。しかし,これらのアクチュエータは,小形化するほどエネルギーの変換効率

が低下するため,マイクロマシン用の新規アクチュエータとして,生物の運動メカニズム,例


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えば,タンパク分子の変形,細菌のべん(鞭)毛運動及び筋収縮などを解析し,これらを利用

することも研究されている。

2.4.2 

マイクロアクチュエータ  (microactuator) 

微細加工によって作られたアクチュエータ。

注記  例えば,微小静電アクチュエータは狭領域の静電場によって駆動し,微小磁気アクチュエータ

は狭領域の磁場によって駆動し,微小圧電アクチュエータは狭領域の応力場によって駆動する。

2.4.3 

光駆動形アクチュエータ  (light driven actuator) 

光を信号源又は動力源としたアクチュエータ。

注記  光わい(歪)効果などの性質を示す材料が開発されたことによって,これらの材料特性を利用

した種々の光駆動形アクチュエータが提案されるようになった。これらのアクチュエータは,

構造が簡単で,非接触で駆動可能なことが特徴である。磁性体の光吸収による加熱で生じる,

磁化方向が可逆的に変化するスピン再配列現象を利用したモータも提案されている。また,熱

膨張を利用するもの,及び高分子の光化学反応を利用するアクチュエータも研究されている。

2.4.4 

圧電アクチュエータ  (piezoelectric actuator) 

圧電材料を利用したアクチュエータ。

注記  圧電アクチュエータは,単板形,バイモルフ形及び積層形に分類され,圧電材料としてはチタ

ン酸ジルコン酸鉛 (PZT) が一般的に用いられる。その特徴は,

−  応答速度が速い。

−  単位寸法当たりの発生力が大きい。

−  構造が簡素で小形化が容易。

−  変位レンジが小さく微小変位コントロールが容易。

−  エネルギー変換効率が高い。

などである。超音波モータ,微小変位ステージ,圧電ファン,圧電ポンプ,圧電スピーカなど

に用いられている。開発例として,圧電バイモルフの共振振動を利用して移動を行う移動機構

用圧電アクチュエータ,積層形圧電素子の変位をてこで拡大する微小位置決め用圧電アクチュ

エータなどがある。

2.4.5 

形状記憶合金アクチュエータ  (shape memory alloy actuator) 

形状記憶合金を利用したアクチュエータ。

注記  形状記憶合金アクチュエータは,小形軽量で,発生力が大きい。温度変化サイクルによって,

連続的な繰返し動作をさせる。また,スイッチングによる通電加熱で任意の動作をさせること

も可能である。最近では,特に,速い動きを必要としない用途において,フィードバック機構

及び冷却機構を工夫することによって,サーボシステムを構成することが試みられている。例

えば,細胞の操作のためのマイクログリッパ,微小流量を制御するマイクロバルブ,医療用の

能動内視鏡などの開発が行われている。

2.4.6 

ゾル・ゲル変換アクチュエータ  (sol-gel conversion actuator) 


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物質のゾル状態“液体状態”とゲル状態“固体状態”との間の変化を利用したアクチュエータ。

注記  ゾル・ゲル変換アクチュエータは,生物に近い動きをさせることが可能である。例えば,電解

溶液に入れたポリアクリル酸ソーダ・ゲルの小球に電極を付け,電圧を印加すると変形を繰り

返すアクチュエータが得られる。これを細い管に直列に封入し足を多数形成すると,一定方向

に移動するムカデのようなマイクロロボットができる。また,細い管の中を自動的にほふく前

進するマイクロロボットなどに応用することも考えられている。

2.4.7 

静電アクチュエータ  (electrostatic actuator) 

静電力を利用したアクチュエータ。

注記  静電アクチュエータは,構造が簡単で小形化するほど質量当たりの出力向上が期待できるため,

マイクロマシン用のアクチュエータとして多くの研究がなされている。ワブルモータ,フィル

ム形静電アクチュエータなどの試作例がある。

2.4.8 

くし(櫛)歯状アクチュエータ  (comb drive actuator) 

くし歯状の一連の平行突起部をもつ構造が同様の構造とすき間を保ちながらかみ合い,これらの間の静

電力で駆動されるアクチュエータ。

注記  二つの構造間に電荷が与えられることによって静電引力が作用し,くし歯構造同士が引きつけ

あい,電荷がなくなると微細加工されたばねの力によって元の位置に戻る。

2.4.9 

ワブルモータ  (wobble motor) 

ロータと偏心したステータ表面とをロータが滑らずに転がり運動させる可変ギャップ形静電モータ。

注記  ワブルモータは,ハーモニック静電モータとも呼ばれロータと静電力発生用の電極とをもつス

テータ,及びロータ又はステータ表面に形成される絶縁膜から構成される。ロータは,公転方

向及び反対方向に自転し自転速度は,公転速度の(ステータ周長−ロータ周長)/(ロータ周

長)の倍となる。その特徴は,

−  ロータ周長をステータ周長に近づけることによって低速・高トルクが容易に達成できる。

−  しゅう動部がなく摩擦及び摩耗の影響がない。

−  種々の材料が使用可能。

−  アスペクト比を容易に大きくできる。

などである。一方,ロータが公転によって振動するという問題がある。  試作例には,可とう継

ぎ手によってロータを支持したワブルモータ,IC プロセスによって製作されロータが支軸に対

し転がり運動するワブルモータがある。

2.4.10 

マイクロセンサ  (microsensor) 

マイクロマシニングによって作製された物理量及び化学量を検出する微小な素子の総称。

注記  マイクロマシンの中で最も早期に開発され,実用化されているのがこのマイクロセンサの分野

である。機械量センサ(圧力,加速度,触覚,変位など)

,化学量センサ(イオン,酸素,温度,

湿度など)

,電気量センサ(磁気,電流など)

,バイオセンサ,光学センサなど様々なマイクロ

センサが開発されている。機構部を含む検出部と集積回路とを一体化した例が多い。センサを

マイクロ化する利点は,


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−  環境を乱さない。

−  局所的な状態が計測できる。

−  回路と一体化できる。

−  省電力。

などの利点があげられる。

2.4.11 

バイオセンサ  (biosensor) 

生体物質を素子に用いたセンサ,生体関連物質を測定対象とするセンサ,及び生体をモデルとしたセン

サの総称。

注記  バイオセンサの一般的な構成は,測定対象物を識別するための生体分子識別材料(酵素,抗体

などの生体触媒が用いられることが多い。

)また,その反応に伴う物理量及び化学量を検出する

デバイスからなる。このデバイスには半導体センサ及び種々の電極(ISFET,マイクロ酸素電

極,蛍光検出オプティカルセンサなど)を用いることができ,シリコン微細加工技術によって

製作される。血液分析システム,グルコースセンサ,マイクロロボットなどに使用される。

2.4.12 

集積化マイクロプローブ  (integrated microprobe) 

マイクロプローブと信号処理回路とを統合し,一体化したプローブ。

注記  センサは,その感応部分の大きさが小さいほど被測定系を乱さない S/N 比の良い計測ができる,

局所の情報を得ることができるといった特長がある。集積化マイクロプローブは,シリコンを

微細加工によって極微細な針状に加工したマイクロプローブと信号処理回路とを統合・一体化

したデバイスである。シリコン針を数 nm から数 µm に加工したプローブ,インピーダンス変

換回路などが一体化されている。生体用の微小電極,走査トンネル顕微鏡(STM)及び原子間

力顕微鏡(AFM)に利用されている。

2.4.13 

ISFET

  [ion sensitive field effect transistor (ISFET)] 

イオン選択性電極と電界効果形トランジスタ(FET)とを一体化した半導体センサ。

注記  イオン選択性電極部では,血液の水素イオン濃度(pH)及び炭酸ガス分圧などの変動によって

膜電圧が変化する。増幅用のアンプとして電界効果形トランジスタ[FET:キャリヤによる電

流通路(チャネル)のコンダクタンスをキャリヤの流れに直角な電界によって制御するトラン

ジスタ]が使用される。シリコンの微細加工技術によって,シリコン基板上に検出部及び増幅

器が一体化されて製作される。また,バルブなどのメカニカル部品も同時に製作された例もあ

る。ISFET は医学分析,環境機器などの分野で用いられる。

2.4.14 

加速度計  (accelerometer) 

入力された加速度を,その大きさに比例した出力(通常,電気的)に変える変換器。

注記  シリコン微細加工技術を基にした加速度センサは,一般に軟らかいばね及び質量で構成されて

いる。加速度が加わる質量の慣性力によってばねの変位を検出したり,その変位を相殺する力

を測定して,加速度を検出している。これらシリコンで作られたセンサのうち,加速度センサ

は次世代の商品として期待されており,半導体ひずみゲージ方式,静電容量検出方式,電磁サ

ーボ方式,静電サーボ方式などの多くの事例がある。さらに,共振周波数の変化を検出する振


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動検出方式センサ及び圧電効果を利用した圧電効果形加速度センサもある。自動車,ロボット,

宇宙産業などの幅広い分野への応用を目指して,開発が進められている(JIS B 0153  参照)

2.4.15 

マイクロジャイロ  (microgyroscope) 

角速度を検出する微小なセンサ。

注記  マイクロジャイロは,マイクロロボットの姿勢センサとして期待されている。機械式のジャイ

ロは,コリオリ力を利用し回転式及び振動式がある。また,サニャック効果を利用したものと

しては,リングレーザジャイロ及びオプティカルファイバジャイロがある。これらの方式のう

ち,マイクロ化に向くと考えられる振動式[音さ(叉)形及び音片形]がマイクロ用として研

究されている。

2.4.16 

ダイアフラム構造  (diaphragm structure) 

柔軟な膜を用いた隔壁構造。

注記  マイクロ領域では,材料として主に単結晶シリコン,ポリシリコンなどが用いられ微細加工プ

ロセスにおける異方性エッチングによって作製される。また,ダイアフラムの厚みは,数 µm

∼数十 µm 用途に応じて変えることができる。この構造は,圧力変化を検出したり,変位を発

生させるのに用いられる。応用としては,自動車エンジンなどの圧力センサの感圧部分に使用

される。さらに,マイクロバルブ及びマイクロポンプにおいては,圧力を変化させる膜として

利用される。

2.4.17 

微小片持ちはり(梁)  (microcantilever) 

微細加工によって作られた片持ちはり(梁)

注記  微小片持ちはりは,原子間力顕微鏡(AFM)のような高解像度プローブ顕微鏡に多用される。

2.4.18 

微小流路  (microchannel) 

微細加工によって作られた流路。

注記  微小流路は,ラボオンチップのような微小流体システムに多用される。微小流路内の流れは巨

視的な流れと異なりその解析は,微小理工学における重要な課題の一つとなっている。微小流

路は,音響用導波路としても用いられる。

2.4.19 

マイクロミラー  (micromirror) 

反射角が制御できる微小な鏡。

2.4.20 

走査ミラー  (scanning mirror) 

光を走査するための鏡。

注記  走査ミラーは,レーザープリンタのヘッド部,光応用センサの走査部,光ディスク用ヘッド,

ディスプレイなどに用いられている。マイクロマシニング技術によってミラー,駆動部を一体

化及び配列化した走査ミラーアレーも製作できる。マイクロマシンの具体的応用として期待さ

れている分野の一つである。

2.4.21 


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マイクロスイッチ  (microswitch) 

微細加工で作られた機械スイッチ。

注記 1  “マイクロスイッチ”という用語は,従来技術によって作られた市販のスイッチで既に使わ

れている。

注記 2  マイクロスイッチの主な応用は,マイクロリレーである。

2.4.22 

光スイッチ  (optical switch) 

電気信号に変換することなく光を直接スイッチングする光学要素。

2.4.23 

マイクログリッパ  (microgripper) 

微小な対象物を把持するための機械要素。

注記  マイクログリッパには二つの位置付けがある。マイクロマシンを組み立てるツールとしての位

置付けと,マイクロロボットなどの手としての位置付けである。いずれの場合でも,対象物を

つかむための指とそれを動かすアクチュエータとをもち,組立のツールとしてのマイクログリ

ッパは,マイクロロボットの手として用いられる物に比べて,機構の大きさは大きいが精密な

制御が必要とされる。マイクログリッパの機能は,単に対象物を把持するだけなので多自由度

のハンドリングのためには適切なマニピュレータと組み合わせることが必要である。マイクロ

グリッパなどを用いる接触式ハンドリングを,レーザ光などを利用した非接触式と比較した場

合対象物の姿勢との制御は,容易であるが対象物の大きさが数十 µm 程度以下になるとマイク

ログリッパの指と対象物との間に働く表面間力のために,対象物の操作が困難になる。

2.4.24 

マイクロポンプ  (micropump) 

微小量の気体又は液体を,昇圧又は減圧し搬送する機械要素。

注記  マイクロポンプは,材料として主にシリコン,ガラスを用い,微細加工技術でダイアフラムと

アクチュエータとを結合して作製する例が多い。応用例としては,圧電素子によってダイアフ

ラムを駆動し超小形逆止弁を用いたダイアフラム形ポンプ,及びマイクロヒータとともに熱膨

張形アクチュエータを用いた一体形ポンプなどがある。積層形圧電アクチュエータによってダ

イアフラムを変形させて液体の排出,吸入を行うポンプでは,ポンプの駆動周波数によって流

量を制御できる。  また,脈流低減形ポンプでは,デュアル形ポンプと同期バッファポンプとに

よって送液量を高精度で制御できる。

2.4.25 

マイクロバルブ  (microvalve) 

気体又は液体の微小な流路における流れを制御する機械要素。

注記  マイクロバルブは,アクチュエータ,シリコンなどで作製されたダイアフラムなどによって構

成され,微小な流路(数 µm 以下)の流れを制御する。気体流量制御用バルブは,積層形圧電

アクチュエータとダイアフラムとによって構成される。また,血液などの粘度の高い液体を制

御するためには,流路を広げてバルブ駆動部分のストロークを大きくする必要がある。このた

めに,形状記憶合金コイルとバイアスばねとを用いる機構,又は静電,電磁若しくは圧電アク

チュエータによって流路を変化させる機構が試作されている。

2.4.26 


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集積化マスフローコントローラ  (integrated mass flow controller) 

微細加工技術で作られたマイクロバルブとフローセンサとを,

基板に一体化したガス流量制御デバイス。

注記  マイクロバルブは,例えば,シリコン基板とガラス基板とからなり,シリコン基板上にダイア

フラムで開閉するポート部分をシリコン微細加工技術で作製し,ガスの流入流出口を加工した

ガラス基板とを一体化させる。ダイアフラムは,圧電アクチュエータ及び静電アクチュエータ

で作動する。構造を工夫することによって,三方弁とした構造などいろいろなタイプのバルブ

構造が研究開発されている。フローセンサには,ヒータの熱が気体の流れによって奪われ,ヒ

ータの温度が下がることを検出する熱形フローセンサがよく使用される。 高純度のガスが必要

な半導体製造装置用に分子数レベルでのガス流量の制御を目指した研究開発が行われており,

バルブとフローセンサとを一体化した超小形のガスフロー制御デバイスが実現している。

2.4.27 

マイクロ燃料電池  (micro fuel cell) 

電気化学的プロセスによって,燃料の化学的エネルギーを直接電気に変換する微小なデバイス。

2.4.28 

光電変換素子  (photoelectric transducer) 

入射した光の量に応じて電気的出力を発生する素子。

注記 1  光電変換素子は,応用の仕方によって受光素子と呼ばれる光信号を取り扱う光検出器と光エ

ネルギーに応じる太陽電池のような光起電力素子とに分けられる。前者では,検出感度と応

答速度が,後者ではエネルギー変換効率が重要である。また,動作原理から分類すると,光

導電セル又は撮像管に代表される光導電形と,フォトダイオード及び太陽電池に代表される

光起電力形とに分けられる。

注記 2 transducer を“素子”とするか“変換器”とするかは,他の分野の事例に従う。

2.5 

加工技術  (Terms relating to machining technology) 

2.5.1 

マイクロマシン  (micromachining) 

a)

マイクロ機械加工  従来の機械加工技術を応用した微細部品の加工技術。

注記  マイクロ機械加工には,マイクロ切削研削加工,マイクロ塑性加工,マイクロ鍛造,マイク

ロ放電加工などがある。工具及び工作機械を高精度・微細化することによって鏡面加工など

の超精密加工又は回折格子のような微細形状を作ることができる。この場合,工具としては,

微細,かつ,鋭利な形状を製作しやすい単結晶ダイヤモンドが多用される。

b)

微細加工  加工法の中で,被加工物の厚さ方向だけでなく,加工面内での横寸法にも細かく精密なも

のの総称。

注記  一般的な機械加工では工具を用いて材料の破壊などを行うが,微細な形状の加工では工具の

変形及び強度不足のため,高いエネルギーの集中に困難がある。そこで,エネルギービーム

及び化学的なプロセスを用いるとより微細な加工を行うことができる。リソグラフィなどの

特殊技術とエッチングとを組み合わせた加工技術が多い。具体例として,シリコンウエハに

リソグラフィで微細パターンを作成し,エッチングによって三次元形状を作る手法などがあ

る。

注記  a)及び b)の注記は分野ごとに区分した。


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C 5630-1

:2008 (IEC 62047-1:2005)

2.5.2 

シリコンプロセス  (silicon process) 

シリコンを材料として使用する超精密加工技術の総称。

注記  表面微細加工とバルク微細加工とに大別されるが,それらの工程はほぼ共通であり,薄膜積層

工程,パターン作成工程,微細組立,アニール及び被覆といった流れになる。加工技術として

蒸着,拡散,化学腐食,リソグラフィなどの多くの技術を複合させて用いる。大きなウエハ上

にバッチ処理で大量に部品を作ることができるのが特徴である。

2.5.3 

厚膜技術  (thick film technology) 

基板上に厚膜を形成する技術。

注記  厚膜とは,インク状ペーストなどを塗布,スプレー印刷などで塗り,焼き付ける方法で作製し

た,およそ 5 µm 以上の膜を指す。圧電素子,磁性膜などアクチュエータとして使用される厚

膜の作製が試みられている。

2.5.4 

薄膜技術  (thin film technology) 

基板上に薄膜を形成する技術。

注記  薄膜とは,基板上に真空蒸着,イオンスパッタなどによって得られる膜で,膜厚は単原子層,

単分子層のものからおよそ 5 µm までのものをいうが,通常は,厚さ 1 µm 以下を指す場合が多

い。薄膜の特徴は,物体の形状を実質的に変えることなく,色,反射率,摩擦係数などの性質

を変えられ,例えば,干渉,表面拡散などが顕著に変化する。  また,薄膜の形成は非平衡,不

均質核形成過程をたどることが多く,形成膜の構造組織は普通の平衡条件下で作られたバルク

物質と異なる。  具体的な事例としてサーマルプリンタヘッドの製作があげられ,従来,厚膜技

術で製作されていたものを,薄膜技術とエッチング技術とを組み合わせることで高集積化でき

た。

2.5.5 

バルク微細加工  (bulk micromachining) 

基板そのものの一部を除去加工する技術。

注記  バルク微細加工の一例として,化学的溶液の腐食作用によって基板の不要な部分を除去する加

工方法がある。材料を残したい部分には SiO

2

及び Si

3

N

4

のマスクを施しておくと表面からの腐

食が進まない。また,ほう素を注入した層を設けておくと,その部分で腐食を停止させること

ができる。最近では,シリコンフュージョンボンディングによって,より複雑な構造もできる

ようになってきている。

2.5.6 

表面微細加工  (surface micromachining) 

基板表面で種々の物質を種々の微細形状に形成する加工技術。

注記  一例として,化学蒸着(CVD)を応用して種々の薄膜を基板上に形成し,マスクによって選択

的な除去を行うことで,可動部分などの構造を作るための加工方法がある。ここで,一度たい

(堆)積させた後,溶かしさる層を犠牲層という。代表的な犠牲層材料は,phosphosilicate glass

(PSG)である。この加工を応用してはり(梁)

,ベアリング,リンクなどが作られる。


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2.5.7 

フォトリソグラフィ  (photolithography) 

光を利用して微細パターンを基板に転写する技術。

注記  ガラス板上に所望のパターンを描いたものをマスクとし,フォトレジストと呼ばれる感光性材

料の薄層を形成しておいた基板に,マスクを通した可視光又は紫外光を露光する。露光によっ

てフォトレジストの現像液に対する溶解度が変化するため,現像工程で,マスクに対応するパ

ターンがフォトレジストに転写されることになる。この技術は,シリコンプロセスには欠かす

ことができないものである。半導体関連で必要とされるパターンの横分解能は,サブ µm のオ

ーダに達しており,より短い波長の光が用いられるようになってきている。

2.5.8 

フォトマスク  (photomask) 

光投影によって転写するためのパターンが描かれた,部分的に透明な膜又はガラス板。

注記 IC の製造では,最終的な回路パターンの数十倍から百倍近い大きさの原図を作り,これをフォ

トマスクとしてフィルム又はガラスに縮小する。この原版をそのままウエハの露光に使うか,

生産用に原版と同じパターンとをもつ加工用版を作る。原版の材料は,露光に用いる光線の波

長によって選ぶ。

2.5.9 

フォトレジスト  (photoresist) 

フォトリソグラフィにおいて用いる感光剤。

注記  フォトレジストは,感光性機能分子を含む高分子化合物からなり水溶性と溶剤性とがある。  通

常,試料にレジストの塗布→プリベーク→露光→現像→ポストベークのプロセスを経てパター

ンとなる。パターン露光された部分が現像でなくなるポジレジストと露光部分が残るネガレジ

ストとがあり,また,サブ µm の微細パターン用に,極短波長の電子線又は X 線に感光する各

種のレジストもある。

2.5.10 

電子ビームリソグラフィ  (electron beam lithography) 

電子ビームを利用して高分解能の微細パターンを基板に形成する技術。

注記  パターン分解能は,使用する電磁波の波長に依存し原理的には,その波長以下は得られないた

め電子ビームを利用することで分解能を高めた技術である。マスク製作用の CAD とリンクさ

せることでマスクパターンなしのより柔軟なリソグラフィ技術が可能となる。ただし,パター

ンどおりに電子線をラスタ又はベクタ走査しなくてはならないため,一括露光と比較して露光

時間がかかるという欠点がある。

2.5.11 

シリコン  オン  インシュレータ (SOI)  [silicon-on-insulator (SOI)] 

絶縁体と,その上に形成されたシリコンの薄膜によって構成された構造体。

注記  サファイア(SOS の場合),ガラス(SOG の場合),酸化シリコン,窒化シリコン,又は高抵抗

シリコンが絶縁体として用いられる。

2.5.12 

LIGA

プロセス  (LIGA process) 


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X

線(シンクロトロン放射光)リソグラフィによる深いリソグラフィと電鋳とを組み合わせ,形として

用いることのできる微細構造を製作するプロセス。

注記 LIGA は,Lithographie Galvanoformung und Abformung の略語で,リソグラフィ,電鋳及びモー

ルディングを意味するドイツ語の頭文字をとって名付けられた。特徴として,線幅 1∼10 µm,

高さ数 100 µm 程度の高アスペクト比の微細構造体が,一括して大量に生産でき,また,プラ

スチック,金属,セラミックスといった多様な材料を選択できること,シリコン半導体素子な

どと組み合わせることが可能といったことがあげられる。

2.5.13 

UV-LIGA 

LIGA

プロセスで用いられる X 線を,紫外線に置き換えたもの。

2.5.14 

X

線リソグラフィ  (X-ray lithography) 

X

線を利用して微細パターンを基板に転写する技術。

注記  リソグラフィ技術では,当初可視光を用いていたが,パターンの集積度が高まるにつれ,より

波長の短いエキシマレーザ及び紫外線が用いられるようになってきた。また,一括露光は,困

難であるが電子線及びイオンビームを用いることもある。この中で,X 線は,エキシマレーザ

よりも更に波長が短く集積度が高まると考えられるが,X 線に対する高効率,高精度なレンズ

の製作が難しいため,その光学系には技術的課題が多い。

2.5.15 

ビーム加工  (beam processing) 

高密度エネルギービームを用いて微細な形状を加工する技術。

注記  微細加工に用いられる高密度エネルギービームとしては,レーザビーム,電子ビーム,イオン

ビーム(代表的な例として集束イオンビーム:FIB)

,分子・原子ビームなどがあげられる。  レ

ーザ光による微細加工は,微細パターンマスクを通した方法又は微小径のレーザ光を用いた方

法によって行われる。マスクを使用する場合にはマスクの精度又はレンズの収差によって,集

光レーザ光の場合にはレーザ光の波長とレンズの焦点距離とによって加工の微細度が決まる。

また,イオンビーム加工は,せん(尖)鋭部分の仕上げ加工に用いられる。

2.5.16 

スパッタリング  (sputtering) 

加速されたイオンの運動エネルギーを利用して固体表面の構成原子をたたき出すこと。

注記  不活性又は反応性のイオンを利用したスパッタリング作用によって種々の加工が行える。スパ

ッタリングを利用した除去加工,たたき出した原子を付着させるたい(堆)積加工などがある。

IEC 60194:1999

参照。

2.5.17 

集束イオンビーム加工  (focused ion beam machining) 

集束された加速イオンのスパッタ作用によって,材料表面の微視的な除去を行う加工法。

注記 0.1

µm

前後まで集束したビームによって加工を行うため,

微細な加工穴を精度よくあける,

種々

の探針(プローブ)をせん鋭化する,非球面レンズの修正加工をするなどができる。  また,被

加工物の原子がスパッタされたときに飛び出す 2 次イオン及び 2 次電子の強度変化を見ること

によって,加工深さも精度良く制御できる。しかし,加工速度が遅く、また,高い真空度を要


14

C 5630-1

:2008 (IEC 62047-1:2005)

   

するため,装置が比較的複雑になる。

2.5.18 

エッチングプロセス  (etching process) 

化学的腐食作用を利用した除去加工技術。

注記 1  エッチングには等方性エッチングと異方性エッチングとがあり,気相又は液相中の腐食性雰

囲気の中で加工対象材料の一部を除去する。電気エネルギーのアシストを加える場合もある

(電気化学エッチング)

。マイクロマシン技術では異方性エッチングが多用される。具体的に

は単結晶シリコンを水酸化カリウム(KOH)又はエチレンジアミンピロカテコール(EDP)

でエッチングすると,結晶面(1 1 1)のエッチング速度が他の結晶面に比べて遅くなるため,

(1 1 1)面で構成される立体形状を作ることができる。

注記 2 process を“加工技術”とするか“プロセス”とするかは,他の分野の事例に従う。

2.5.19 

ウェットエッチング  (wet etching) 

反応性の薬液を用いた液相でのエッチング加工技術。

注記  ウェットエッチングは,被加工材の加工を施す部分を露出させ,そうでない部分をマスクで覆

ってから,反応液に浸して加工を行う。被加工材の結晶構造に依存しない等方性エッチングと

これに依存する異方性エッチングとに大別できる。等方性エッチングではマスクのない部分か

らすべての方位に等速度で浸食が進むため断面が半円状になりやすい。一方,異方性エッチン

グでは被加工材の結晶方位ごとにエッチング速度が異なるため,エッチング速度の遅い面が最

終的に残り,最終形状を決める。

2.5.20 

ドライエッチング  (dry etching) 

反応性ガス,反応性プラズマなどを用い,気相での物理・化学反応を利用してエッチングする加工技術。

注記  基本的には,電気エネルギーによって反応性の気体を作りだし,基板と反応させて,所望の形

状を作る。化学的反応を利用した等方性エッチングとなるプラズマエッチングと物理的反応(ス

パッタリング)を利用した方向性エッチングとなるイオンエッチングとに分けられる。これら

の一方又は両方を同時に利用するドライエッチングは,現在の LSI の製造プロセスにおいて盛

んに用いられている。

2.5.21 

等方性エッチング  (isotropic etching) 

結晶方位及びエネルギービームの方向によって,エッチング速度が変化しないエッチングプロセス。

注記  シリコンの代表的な等方性エッチング液は,HF/HNO

3

/CH

3

COOH (HNA)

溶液である。

2.5.22 

異方性エッチング  (anisotropic etching) 

結晶方位及びエネルギービームの方向によって,エッチング速度が異なるエッチングプロセス。

注記  シリコンの代表的な異方性エッチング溶液は,水酸化カリウム (KOH) 溶液であり,様々なバ

ルク微細加工用に広く用いられている。

2.5.23 

エッチストップ  (etch stop) 

エッチング液に対して耐性があり,エッチングを止めるために基板内に設けられた層。


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注記  シリコンのエッチングでは,ボロンのような元素を添加することによってエッチストップを形

成することが一般的である。シリコンの窒化層又は酸化層もエッチストップとして機能する。

2.5.24 

ロストウエハプロセス  (lost wafer process) 

選択エッチングによって基板のほとんどを除去し,拡散層を形成した部分だけを残す技術。

注記  通常,基板上に製作される電気的回路は,表面から深さ数 µm 程度までを利用している。電気

的回路部分を残しそれより下の部分は,エッチングなどによって除去してしまい回路部分をガ

ラス基板などに接合して,センサなどを製作するプロセスをいう。多重微小電極,視覚イメー

ジャ,マルチプローブ STM などが試作されている。

2.5.25 

犠牲層エッチング  (sacrificial etching) 

二つの層の間に挟まれた異なる材料の中間層を選択的にエッチング除去するマイクロ加工プロセス。

注記  通常,中間層とそれを挟んでいる二つの層の間での,エッチングの選択性は高い。犠牲層の目

的は,挟んでいる層の片側又は両側を機械的に分離することにある。一般に,酸化シリコンが

犠牲層として用いられる。

2.5.26 

反応性イオンエッチング(RIE  [reactive ion etching (RIE)] 

反応性ガスによるエッチング作用とイオンのスパッタ作用とを複合させた加工法。

注記  反応性イオンエッチングでは,化学的な反応作用とプラズマで発生したイオン,ラジカルが加

工対象に衝突“スパッタ”する作用との両方によって,マスクから垂直方向に選択的に進む。

異方性エッチングが結晶方位に対する異方性を示すのに対し,これはイオンの流れの方向に対

する選択性を示す。湿式のエッチングに見られるようなアンダーカット“マスクの下に回り込

んだ腐食”を起こしにくい。

2.5.27 

DRIE 

反応性イオンエッチング(RIE)の一種であり,エッチング用と保護膜形成用とのガスの導入を交互に繰り

返すことによって,高いアスペクト比の形状を形成することが可能なプロセスである。

注記 DRIE は,deep reactive ion etching の略語である。

2.5.28 

ICP 

誘導結合によって発生された高密度プラズマ。

注記 ICP は,Inductively Coupled Plasma の略語である。DRIE のようなエッチングプロセスでしばし

ば使用される。

2.5.29 

蒸着  (vapour deposition) 

蒸気状にした物質を固体表面上に付着たい(堆)積させる技術。

注記  通常,真空中において,金属などの物質を加熱又は電子線の照射によって蒸気にし,その蒸気

を基板にあてて付着させる薄膜形成技術の一つ。反応容器内の圧力“真空度”によって膜の純

度が影響されること及び単なる付着のため比較的付着強度が弱く,また,結晶性は良好とはな

らないことがある。このため,基板を加熱しておいて付着後に,化学反応によって付着強度を


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高めたり,結晶性を改善するなどの処理が行われている。

2.5.30 

PVD

プロセス  [physical vapour deposition process (PVD process)] 

<MEMS

デバイス>主に物理蒸着を用いた薄膜の製造プロセス。

注記 PVD プロセスは,真空蒸着,不活性ガス若しくは活性ガス雰囲気中における単一又は複数ター

ゲットを用いたスパッタ成膜によって,主に薄膜を構成する。例として,RF マグネトロンスパ

ッタリング,イオンビームスパッタリング,分子線エピタキシ,レーザアブレイションなどが

ある。

2.5.31 

電鋳法  (electroforming) 

後に離型される心棒及び型の表面への電着による物品の生産法又は複製法。

注記  樹脂などの母型を無電解めっきによって導体化し,それを陰極として所要の金属を厚くかつ高

速で電着させ,その後離型することで成型品を得る技術。母型の形状精度及び表面粗さを高い

精度で転写することができ,コンパクトディスク及びレーザディスクのスタンパ製作に用いら

れている(JIS H 0400 参照)

2.5.32 

マイクロ放電加工  (micro-electrodischarge machining) 

微小工具電極と加工対象との間の放電を利用した微細加工技術。

注記  従来の放電加工と原理は同様であるが,微小エネルギー放電技術と微小工具電極との作成が異

なる。すなわち,電極と加工対象との間の浮遊容量を小さくする必要があり,工具もワイヤ放

電加工[WEDG(wire electro-discharge grinding)

]などの方法で微細にする必要がある。WEDG

法では,直径 2.5 µm の電極も成形可能であり,微細穴の加工が可能となる。

2.5.33 

ホットエンボス  プロセス  (hot embossing process) 

加熱状態で軟化した基板に型を押し付けることによって型の表面形状を基板に転写するプロセス。

注記  同様な意味でナノインプリンティングという用語が使われる。

2.5.34 

マイクロモールディング  (micromoulding) 

液状化した材料を型に流し込んで所望の形状をもった微細部品を得る加工。

注記  金型を用いて圧縮,トランスファー,射出,ブローなどの手段によって材料を所望の形にする

微細加工。高分子,セラミックなどの原材料を鋳型に流し込む方法で形を作ることができる。

精密モールディング技術を用いて,LIGA プロセスでは金属の鋳型にプラスチックをモールド

している。典型的な例として次のようなものがある。狭いすき間にも樹脂材料が入るように,

低粘度の材料を用いて気泡が生じないように脱気し,鋳型の内部は,注入前に真空にして樹脂

材料を高い圧力で注入する。樹脂の硬化,ストレス除去及び収縮分の補償のために,熱処理は

高圧,高温下にて行う。この方法をリアクションインジェクションモールディングと呼び,こ

の技術で製作したプラスチック構造体は,これを再び鋳型として用いて金属をめっきし,金属

の構造体を作ることもできる。

2.5.35 

STM

加工  (STM machining) 


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走査トンネル顕微鏡(STM)を利用し,原子分子レベルの表面加工(アトミックマニピュレーション)

を行う加工。

注記  原子で文字を書いたりする例としてアトミックマニピュレーションは知られており,分子原子

レベルで加工が行えるが,振動を極端に嫌うなど,実用化には課題が多い。

2.6 

接合・組立技術  (Terms relating to bonding and assembling technology) 

2.6.1 

ボンディング  (bonding) 

材料と材料とを接合する加工。

注記  典型的な例として,陽極接合,拡散接合,シリコンフュージョンボンディング,超音波ワイヤ

ーボンディングなどがある。これらの例では,接着剤は用いない。

2.6.2 

接着接合  (adhesive bonding) 

ポリマーを接着剤として使用することによって 2 種類の材料を接合する技術。

2.6.3 

陽極接合  (anodic bonding) 

可動イオンを含むガラス,シリコンウエハ,金属などを密着接合する方法。重ね合わせた基板を加熱し

て,ガラス側を軟化させる。また,同時にシリコン側を陽極として両者の間に高電圧を付加することによ

って,電気的二重層を発生させ静電引力によって基板同士を接合する。

注記  接合は,固相で行われるので高精度の接合が達成される。シリコンフュージョンボンディング

ほどではないが,接合強度は表面の平たん度に大きく影響される。シリコンウエハ,パイレッ

クスガラスなどを接合し,容量形圧力センサ,マイクロポンプなどの内部キャビティをもつ構

造が作られている。シリコン同士,シリコン及び金属を接合するためには,表面にガラス薄膜

を形成したり,シリコン表面を酸化したりする方法が試みられている。薄膜を用いる方法では

接合温度を高くすると薄膜の絶縁破壊電圧が低下し,十分な電圧が印加できないという問題が

あった。低融点ガラスをスパッタ膜付けし,プロセス温度を常温に下げる試みもなされている。

常温にプロセス温度を下げると,熱応力に起因するひずみ,変形などの諸問題が解決し,精度

の向上,材料の選択性が広がるなどの多くの利点がある。

2.6.4 

拡散接合  (diffusion bonding) 

材料同士を融点以下の温度に加熱,加圧密着させ互いの原子の相互拡散によって固相のまま接合する方

法。

注記  固相で接合できるので溶融接合に比べて精度の高い接合を行うことができる。主に金属同士及

びセラミックスと金属との接合に用いられる。異種材料の接合においては,接合後の冷却時に

互いの熱膨張係数が異なるために,熱応力が発生する。これに起因するクラックの発生を回避

するための,熱応力緩和方法が主な研究課題である。緩和方法としては,両方の材料のほぼ中

間の熱膨張係数をもつ材料及び変形しやすい材料を間にサンドイッチする方法などがとられて

いる。熱膨張係数が厚さ方向に徐々に変化する材料“傾斜機能材料”を中間に挟む方法も盛ん

に研究されている。

2.6.5 


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シリコンフュージョンボンディング  (silicon fusion bonding) 

親水化されたシリコン,酸化シリコンなどの基板を,まず水素結合では(貼)り合わせた後,加熱処理

をして Si-O-Si 結合によって接合する技術。

注記  少なくともどちらかが酸化されているシリコンウエハ同士をはり合わせることによって,ウエ

ハ内部に不純物拡散層及び絶縁物層を形成するときに用いられる。また,不純物の種類及び濃

度の異なるウエハを接合することによって,高温長時間を要する深い不純物拡散及びエピタキ

シャル成長の代替技術として用いられる。この技術の最大の欠点は,プロセス温度が高いこと

であり,より低温で行わなければならないプロセスは,この後に行わなければならない。プラ

ズマ酸化処理などを施した後に,接合することによってプロセス温度を低下させる試み,シリ

コン以外の材料の接合にこの技術を応用する試みなどが盛んに研究されている。酸化ウエハの

はり合わせによって,絶縁層をシリコンでサンドイッチした構造,SOI(Silicon on Insulator)構

造を得ることができる。SOI は,集積化された素子を酸化物などの誘電体によって分離し,高

性能化する技術に利用され,フォトダイオードアレイの製造などに利用される。また穴あけ,

溝切り加工を施したウエハを接合すれば内部に微細加工が施された構造を得ることができ,圧

力センサ及び内部に冷却構造をもったレーザダイオード用の熱交換器の製作などに利用されて

いる。

2.6.6 

マイクロマニピュレータ  (micromanipulator) 

遺伝子,細胞,微小部品,微小工具などの微細な対象物を操作することを目的とした機構。

注記  駆動方式としては,純機械式タイプ,空気圧駆動タイプ,油圧(水圧)駆動タイプ,電磁力駆

動タイプ,電動モータ駆動タイプ,圧電駆動タイプなどがある。細胞操作用マイクロマニピュ

レータは,一般に微動用と粗動用とで別々の駆動方式を用い,これらを組み合わせた構成とな

っている。制御方式としては,顕微鏡,カメラなどから得られる視覚情報を用いて,マニュア

ル操作で,その微小位置の制御を行っているのが主流である。将来,微小対象物を組み立てる

微細力作業又はマイクロテレオペレーションシステムを実現するときには,力制御機構をもつ

マイクロマニピュレータの開発が望まれる。

2.6.7 

非接触ハンドリング  (non-contact handling) 

非接触で物体の捕そく(捉)及び移動を行うこと。

注記  例えば,細胞操作では,細胞をガラス製のミクロピペットで吸引し機械的に取り扱うのが一般

的であるが,接触によって試料を傷めたり,物理的,化学的な条件を変えてしまうという問題

がある。これに代わる非接触の操作法の一つとしてレーザ捕そく“レーザトラッピング”があ

る。これは光が物体に及ぼす力“放射圧”を利用して試料を非接触・非破壊的に操作する方法

である。電磁理論によると 1 mW のレーザ光で発生する力は,7 pN といわれている。

2.6.8 

パッケージング  (packaging) 

構成部品を保護するために外部端子をもつ容器に組み込む工程。

注記  パッケージングの目的は,構成部品が外部から受ける化学的,物理的なダメージを小さくする

ことである。ただし,寸法が微細化するにつれてパッケージングの応力ひずみに起因する問題

を生じることがある。そのため,シリコンチップ,微細構造部材などの接合技術が非常に重要


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である。また,センサシステム分野では,ハイブリッド集積化技術が必要とされ,特別なパッ

ケージング技術が研究されている。

2.6.9 

ウエハレベルパッケージング  (wafer level packaging) 

ウエハの切断前にパッケージングを終了させるプロセス。

2.7 

評価技術  (Terms relating to evaluation technology) 

2.7.1 

走査プローブ顕微鏡(SPM[scanning probe microscope (SPM)] 

原子レベルの大きさの先端をもつプローブを試料に近接させた状態で,試料の表面との間で発生する物

理量を計測しながらプローブをラスタ走査することで画像情報を得る顕微鏡。

注記  プローブ“探触子”の先端を原子の大きさまでとが(尖)らせ,物体の表面に近接させると,

原子レベルの分解能で物体とプローブとの間に働く種々の物理量を計測することができる。一

般に計測した物理量が一定となるよう物体表面に沿ってプローブをラスタ走査し,それに伴う

プローブの変位を画像化することで,その物理量に基づく物体の微細な画像を構成することが

できる。これが,走査トンネル顕微鏡,原子間力顕微鏡,静電力顕微鏡,走査イオン顕微鏡,

走査磁場顕微鏡,走査温度顕微鏡,走査摩擦力顕微鏡など種々の走査プローブ顕微鏡の共通原

理である。

2.7.2 

原子間力顕微鏡(AFM[atomic force microscope (AFM)] 

片持ちはりを走査する間に片持ちはりに作り込んだ探針と試料との間の原子間力によって起こされた片

持ちはりの変位を検出することによって,微視的な形状を測定する顕微鏡。

注記  光てい(梃)子法が片持ちはりの変位を監視することに有効である。片持ちはりの変位は片持

ちはりから反射した光を検出することによって測定される。測定において 3 タイプの片持ちは

りの動きがある。

−  片持ちはりを試料に接触させる方法。

−  振動する片持ちはりを周期的に試料に接触させて片持ちはりの振幅変化を検出する方法

“タッピングモード”

−  振動する片持ちはりと試料とを接触させずに,振動する片持ちはりの周波数変化を検出す

る方法。

2.7.3 

走査トンネル顕微鏡(STM[scanning tunneling microscope (STM)] 

プローブと試料との間のトンネル電流を一定に保ちながらプローブをラスタ走査して,試料表面の微細

形状を測定する顕微鏡。

注記  極端にとが(尖)らせたプローブを固体表面 1∼2 nm  近づけて電圧をかけるとトンネル電流が

流れる。これを一定に保つようにプローブ位置を制御し,更に水平方向への走査を行うと,原

子スケールで表面形状を求めることができる。この顕微鏡は,固体表面の分子を切り離したり

するマイクロマニピュレーションにも応用されている。

2.7.4 

近視野顕微鏡  (near-field microscope) 


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ピンホールを通して,試料に極めて近接したところから電磁波及び音波の放射強度を計測し,このピン

ホールをラスタ走査することで分解能の高い画像情報を得る顕微鏡。

注記  走査近接場顕微鏡とも呼ばれる。通常の顕微鏡では,観測に用いる電磁波及び音波の波長の長

さの 1/2 の長さが分解能の限界となる。しかし,開口角を大きく取ることで分解能を向上でき

る。すなわち,試料に極めて近接したところからピンホールを通して電磁波及び音波を計測し

ながら,この孔を走査することで画像を得た場合,その分解能は波長に関係なく,孔の寸法だ

けに依存するようになる。この原理を利用して画像を得ようとするのが近視野形の顕微鏡であ

る。しかし,孔を小さくするほど受信できる信号は弱くなるため,高感度の受信器が必要とな

る。具体的には近視野超音波顕微鏡,レーザ走査顕微鏡,蛍光顕微鏡などがある。

2.7.5 

アスペクト比  (aspect ratio) 

立体形状の垂直(高さ)

:水平(幅)の寸法比で,構造物の相対的な厚みを示す指標。

注記  シリコンプロセスで作られる形状のアスペクト比はせいぜい 10:1 といわれ,厚みのある立体

形状は作りにくい。異方性エッチング又は LIGA プロセスを用いるとアスペクト比が 100:1 以

上の深穴,溝などを作ることができる。

2.7.6 

出力/質量比  (power-to-weight ratio) 

アクチュエータの出力とその質量との比。

注記  アクチュエータなどの性能を評価する基準の一つである。この比が大きいほど軽量で大きな出

力が出せる。一般的には大きな物ほどエネルギー変換に本質的にかかわる部分の割合が増加し,

かつ,損失の割合が少なくなるため,この値が大きくなる傾向がある。

2.8 

応用技術  (Terms relating to application technology) 

2.8.1 

バイオ MEMS  (bio-MEMS) 

生物学及び生医学分野へ応用した MEMS。

注記 Bio-MEMS は,Biomedical MEMS の略語である。

2.8.2 

RF MEMS 

高周波無線通信分野へ応用した MEMS。

注記 RF

MEMS

は,Radio Frequency MEMS の略語である。

2.8.3 

MOEMS 

光学分野へ応用した MEMS。

注記 MOEMS は,micro-optical-electromechanical systems  の略語。

2.8.4 

ラブオンチップ  (lab-on-a-chip) 

化学,

生化学又は生物工学で用いられるプロセスを行うためにマイクロチップに組み込まれたシステム。

注記  ラブオンチップは,微量の液体を計量したり,試薬混合したり,集積化され温度制御された反


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応槽に混合物を移動させたり,分離したり又は検出器で結果を調べたりするためのシステムな

どをもつチップである。このシステムは,分析及び合成の両面に使うことができる。

2.8.5 

マイクロ TAS  (micro TAS) 

微小化され集積化された化学的,生化学的又は生物工学的な分析システム。

注記  マイクロ TAS は,Micro Total Analysis System  の略語。

2.8.6 

マイクロリアクタ  (microreactor) 

マイクロメータ規模の化学反応槽。

注記  マイクロリアクタは,化学的プロセスにおける処理装置の一つでマイクロメータ規模の空洞状

になっている。マイクロリアクタの特徴は,寸法が小さくなるにつれ温度,圧力及び濃度のこ

う配がきつくなり,熱伝導率,物質移動又は拡散が増加することである。例えば,寸法が 1/100

に減少すれば分子の拡散時間は 1/10 000 に短縮する。マイクロリアクタのもう一つの潜在的な

利点は,反応条件の優れた制御性,高い安全性及び携帯性である。優れた制御性は,反応槽の

もつ高い表面積/体積比から得られる温度の精密な制御性に起因する。マイクロリアクタの製

造工程,材質及び形状は,応用例によって異なる。

2.8.7 

マイクロサージェリー  [microscopic surgery (microsurgery)] 

顕微鏡下で行われる外科手術。

注記  最近の手術のうち注目されている技術の一つに,実体顕微鏡の下で行われる手術がある。顕微

鏡下の外科手術という意味でマイクロスコピック・サージェリーと呼ぶのが正式であるが,我

が国ではマイクロサージェリーと呼ばれている。耳鼻科,眼科,脳外科,血管外科,形成外科

などで,このような顕微鏡下の手術が実施されている。現在最も微小なレベルの手術では,直

径 800 µm 程度の動脈,静脈及び神経を,直径 20 µm  程度の針付きの糸で縫合することも行わ

れている。しかし,医者が持針器,ピンセット及びメスを手で持って通常の手術と同じような

動作をするので,この程度の太さの血管及び神経の縫合が限界だといわれており,マイクロテ

レオペレーションなどのマイクロマシン技術が今後期待されている。

2.8.8 

能動カテーテル  (active catheter) 

湾曲動作用のマイクロアクチュエータを搭載し,外部からの操作信号によって自由に湾曲して,目標地

点に到達することが可能なカテーテル。

注記  曲がりくねった管くう(腔)臓器内でもカテーテルを外部からの操作で確実に自由に曲げるこ

とが可能になれば,血管でつながった体内の必要な場所に,治療などのための器具を容易に挿

入することができる。能動カテーテルが実現化するためには,今後様々なマイクロアクチュエ

ータ及びマイクロ機構の開発が重要である。

2.8.9 

ファイバー内視鏡  (fibre endoscope) 

体外から直接見ることのできない体の中を観察するために用いられる器具で,光ファイバを用いて画像

を伝達する方式のもの。

注記  レンズだけで構成された硬性鏡に比べ,細い繊維を束ねているため,柔軟性に富み屈曲できる。


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このため,消化管,血管などの中空状の臓器の内部を観察するのに用いられている。また,工

業的にもパイプ内,ジェットエンジン内部の観察などに利用されている。この内視鏡の内部に

マイクロ化した手術器具を組み込むことで,患部を観察しながら手術できるようになった。手

術器具のマイクロ化についても研究開発が進められている。

2.8.10 

スマートピル  (smart pill) 

生体内で計測及び薬剤送達を行うロボット。

注記  現在提案されている例として,消化管用スマートピルがある。この提案されたスマートピルは,

計測検体を採取するサンプリング装置,シリコンウエハの上に作られたインテリジェントセン

サ回路,信号の増幅制御器,治療用薬剤のタンク,その放出メカニズム,マイクロ電源などに

よって構成されている。

2.8.11 

バイオチップ  (bio-chip) 

短時間に種々の生物学的反応を起こすことのできるように,微小化した反応部及び検出部を基板上に配

列したチップ。

2.8.12 

DNA

チップ  (DNA chip) 

多量の遺伝子を同時に高効率で解析するのが容易になるよう,固体表面に DNA の短い断片を結合させ

高密度に配列したチップ。

2.8.13 

プロテインチップ  (protein chip) 

多量のタンパク質を同時に高効率で解析するのが容易となるよう,抗体などの種々のタンパク質に対し

強い親和性をもつ物質を高密度に配列したチップ。

2.8.14 

細胞操作  (cell handling) 

細胞に対して行う種々の操作。

注記  バイオテクノロジーの分野では,細胞を保持して種々の操作が行われる。例えば,細胞の核の

中にガラスの細管を突き刺して,遺伝子を注入するなどの操作である。このような操作には,

光学顕微鏡,マイクロマニピュレータ,マイクロステージ及びマイクロピペットが使用される。

現在の装置の多くは,操作に熟練を要するため自動化装置が開発されることが期待されている。

リモートオペレーション,多自由度マニピュレータ,自動追尾装置,マイクロアクチュエータ

などが開発課題である。

2.8.15 

細胞融合  (cell fusion) 

隣接する細胞の隔壁が消失し,二つの細胞同士が一つの細胞として融合すること。

注記  人為的に細胞融合を起こすことで,同種,異種細胞にかかわらず両方の遺伝情報をもつ融合細

胞を形成することができる。遺伝子操作と並ぶバイオテクノロジーの基幹技術である。ウイル

ス,ポリエチレングリコールなどを用いる方法のほかに,電気パルスを加える方法でも細胞融

合を起こすことができる。

一例として,液中に浮遊する細胞を交流電場によって整列させた後,

直流パルスを与えて互いに接した部分で細胞膜を融合させる細胞融合装置がある。マイクロマ


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シン技術を用いれば,この装置を多数個並列に設置し多量の細胞を一度に処理するシステムを

製作することができる。

2.8.16 

ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)  [polymerase chain reaction (PCR)] 

<micro-electromechanical devices>ある DNA 断片と全く同一の複製を,多量に合成するための増幅方法。

2.8.17 

マイクロファクトリ  (microfactory) 

小形工業製品のサイズに見合った小形の製造システム。

注記  時計,カメラ,カセットレコーダのような小形の機器では,多数のミリ寸法の部品が使用され

ている。従来,この種の微小部品の加工及び小形機器の組立も,メートル寸法の工作機械又は

組立用ロボットによって行われている。したがって,このような製造システムにおける微小部

品の加工工程又は組立工程では,部品の加工,機器の組立に要する動力に比べて工作機械及び

組立用ロボット自体の運動に費やされる動力が著しく大きくなっている。また,このような製

造システムでは扱っている部品・製品の大きさに比べて極めて大きな空間,資源を必要とする。

取り扱う部品及び製品の大きさに見合った各種マイクロマシン技術を利用した微小な部品及び

製品の製造システム技術をマイクロファクトリ技術と呼び,従来の生産システムに比べ,大幅

な省エネルギー・省資源・省スペースが達成できる。

参考文献  JIS B 0153  機械振動・衝撃用語

注記  対応国際規格:ISO 2041:1990  Vibration and shock−Vocabulary(MOD)

JIS H 0400

  電気めっき及び関連処理用語

注記  対応国際規格:ISO 2079:1981  Surface treatment and metallic coatings−General

classification of terms

(MOD)

IEC 60050-815:2000

  International Electrotechnical Vocabulary−Part 815: Superconductivity

IEC 60194:1999

  Printed board design, manufacture and assembly−Terms and definitions


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附属書 A

(参考)

用語の選定基準及び留意点

序文 

この附属書は,用語の選定基準及び留意点について記載するものであって,規定の一部ではない。

A.1 

用語選択の基準 

微小電気機械デバイスは,広い分野を包含するものであるため,用語の選択に当たっては特定の分野に

偏ることのないように,また,専門外の人の理解の助けとなるように配慮した。そのために用語分類表を

作成し,分野の隔たり及び重要な分野の欠落がないように確認を行った。さらに,この分類表では各用語

の階層関係及び抽象的なものと具象的なものの区別も考慮した。

A.2 

(定義)を規定するときの基準 

他分野において既に使われている用語については,

基本的にこれにならった定義付けを行った。

ただし,

上記のように微小電気機械デバイスが他分野にまたがることに配慮し,なるべく平易な表現とした。

A.3 

(注記)を規定するときの基準 

一般的な解説に加え,微小電気機械デバイス固有の問題を記述するようにした。可能であれば具体的な

数値及び事例を引用するようにしたが,将来の発展が未知であることを考え,数値及び応用範囲を限定す

るような表現は避けた。