Z 9290-1:2014 (IEC 62305-1:2010)
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲 ························································································································· 2
2 引用規格 ························································································································· 2
3 用語及び定義 ··················································································································· 3
4 雷電流パラメータ ············································································································· 8
5 落雷による損傷 ················································································································ 8
5.1 建築物等への損傷 ·········································································································· 8
5.2 損失の種類 ·················································································································· 10
6 雷保護対策の必要性及び経済的正当性 ················································································· 12
6.1 雷保護対策の必要性 ······································································································ 12
6.2 雷保護対策の経済的正当性······························································································ 13
7 保護対策 ························································································································ 13
7.1 一般事項 ····················································································································· 13
7.2 感電による生物の死傷を低減するための保護対策 ································································ 13
7.3 物的損傷を低減するための保護対策 ·················································································· 13
7.4 電気・電子システムの故障を低減するための保護対策 ·························································· 13
7.5 保護対策の選定 ············································································································ 14
8 建築物等の保護に対する基本的な基準 ················································································· 14
8.1 一般事項 ····················································································································· 14
8.2 雷保護レベル(LPL) ···································································································· 14
8.3 雷保護ゾーン(LPZ) ···································································································· 16
8.4 建築物等の保護 ············································································································ 18
附属書A(参考)雷電流パラメータ ························································································ 20
附属書B(参考)解析のための雷電流の時間関数 ······································································· 29
附属書C(参考)試験のための雷電流シミュレーション······························································ 34
附属書D(参考)LPS構成部材に関する落雷の影響を解析するための試験パラメータ······················· 38
附属書E(参考)各設置場所における雷サージ ·········································································· 51
Z 9290-1:2014 (IEC 62305-1:2010)
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まえがき
この規格は,工業標準化法第12条第1項の規定に基づき,一般社団法人電気設備学会(IEIEJ)及び一
般財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があり,
日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣及び国土交通大臣が制定した日本工業規格である。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣,国土交通大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の
特許出願及び実用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
JIS Z 9290の規格群には,次に示す部編成がある。
JIS Z 9290-1 第1部:一般原則
JIS Z 9290-3 第3部:建築物等への物的損傷及び人命の危険
JIS Z 9290-4 第4部:建築物内の電気及び電子システム
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日本工業規格 JIS
Z 9290-1:2014
(IEC 62305-1:2010)
雷保護−第1部:一般原則
Protection against lightning-Part 1: General principles
序文
この規格は,2010年に第2版として発行されたIEC 62305-1を基に,技術的内容及び構成を変更するこ
となく作成した日本工業規格である。
雷放電を防止できるような,自然の気象現象を変更できる装置又は方法は,存在しない。建築物等への
直接又は近傍(若しくは建築物等に接続した引込線・管類)への落雷は,人間,建築物等自体,それらの
内容物及び装置,並びに引込線・管に対して危険を及ぼすこととなる。これが,雷保護対策の適用が極め
て重要であることの理由である。
保護の必要性,保護対策の施工の経済的利益及び適切な保護対策の選定は,リスクマネジメントの条件
の下に決定することが望ましい。リスクマネジメントについては,IEC 62305-2に規定している。
JIS Z 9290(IEC 62305)規格群(以下,この規格群という。)で考慮している保護対策は,危険の低減
に効果的であることが立証されている。
雷に対する保護の全ての対策は,総括的な雷保護を形成している。実際には,雷保護対策の設計,施工
及び保守に対する基準を,次の二つのグループに分けて考える。
a) 第1グループ(JIS Z 9290-3):建築物等への物的損傷及び人命の危険を低減するための保護対策
b) 第2グループ(JIS Z 9290-4):建築物内の電気・電子システムの故障を低減するための保護対策
この規格群の各規格間の関係を図1に示す。
なお,この規格で点線の下線を施してある参考事項は,対応国際規格にはない事項である。
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Z 9290-1:2014 (IEC 62305-1:2010)
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図1−この規格群の各規格間の関係
1
適用範囲
この規格は,設備,内容物及び人間を含む建築物等の従う雷保護の一般原則について規定する。
注記1 この規格群では,建築物又は煙突,塔,油槽などの工作物その他のものを,“建築物等”とい
う。
次の設備などは,この規格の適用範囲外とする。
a) 鉄道システム
b) 車両,船,航空機及び沖合に設けた設備
c) 地下に埋設した高圧配管
d) 建築物等の外部の配管,電力線及び通信線
注記2 a)〜d) のシステムは,通常,種々の専門機関が規定する基準の範囲である。
注記3 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
IEC 62305-1:2010,Protection against lightning−Part 1: General principles(IDT)
なお,対応の程度を表す記号“IDT”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“一致している”
ことを示す。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格のうちで,西暦年を付記してあるものは,記載の年の版を適用し,その後の改正版(追補を含む。)
は適用しない。西暦年の付記がない引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS Z 9290-3 雷保護−第3部:建築物等への物的損傷及び人命の危険
注記 対応国際規格:IEC 62305-3:2010,Protection against lightning−Part 3: Physical damage to
structures and life hazard(MOD)
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JIS Z 9290-4 雷保護−第4部:建築物内の電気及び電子システム
注記 対応国際規格:IEC 62305-4:2010,Protection against lightning−Part 4: Electrical and electronic
systems within structures(IDT)
IEC 62305-2:2010,Protection against lightning−Part 2: Risk management
3
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,次による。
3.1
落雷(lightning flash to earth)
雲と大地との間に発生する1回以上の雷撃からなる大気中の電気的な放電現象。
3.2
下向きの雷放電(downward flash)
雲から大地への下向きリーダによって開始する雷放電。
注記 下向きの雷放電は,第1雷撃と,それに引き続き発生することのある後続雷撃とからなる。一
つ以上の雷撃に引き続き,長時間雷撃が起こることもある。
3.3
上向きの雷放電(upward flash)
接地した建築物等から雲に向かう上向きリーダによって開始する雷放電。
注記 上向きの雷放電は,第1長時間雷撃からなる。この長時間雷撃には,短時間雷撃が多重に重畳
する場合としない場合とがある。一つ以上の雷撃に引き続き,長時間雷撃が起こることもある。
3.4
雷撃(lightning stroke)
落雷の構成要素となる1回の電気的な放電現象。
3.5
短時間雷撃(short stroke)
一つのインパルス電流に相当する雷放電の一部。
注記1 この電流は,通常,2 ms未満の波尾長T2をもつ(図A.1参照)。
注記2 インパルス電流とは,単極の衝撃波状の電流のことである。
3.6
長時間雷撃(long stroke)
連続電流に相当する雷放電の一部。
注記 この連続電流の継続時間TLONG(波頭部の10 %値の瞬間から波尾部の10 %値の瞬間までの時間)
は,普通2 ms〜1 sである(図A.2参照)。
3.7
多重雷撃(multiple strokes)
平均3回から4回の雷撃からなる雷放電。雷撃の代表的な間隔は,50 msである。
注記 雷撃の間隔が10 ms〜250 msの範囲で,数十回の雷撃の事例の報告がある。
3.8
雷撃点(point of strike)
大地又は突出した物体に雷撃があった場所(突出した物体の例:建築物等,LPS,引込線・引込管,樹
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木など)。
注記 雷放電は,複数の雷撃点をもつ場合がある。
3.9
雷電流,i(lightning current)
雷撃点に流れる電流。
3.10
電流波高値,I(current peak value)
雷電流の最大値。
3.11
短時間雷撃の電流波頭しゅん(峻)度の平均値(average steepness of the front of impulse current)
時間間隔(Δt=t2−t1)における電流の変化率の平均値。
注記 時間間隔の始まり及び終わりの電流値の差[Δi=i(t2)−i(t1)]を,時間間隔(t2−t1)で除した値
で表現する(図A.1参照)。
3.12
インパルス電流の規約波頭長,T1(front time of impulse current)
波高値の10 %の瞬間と90 %に到達する瞬間の時間間隔(図A.1参照)の1.25倍として定義したパラメ
ータ。
3.13
インパルス電流の規約原点,O1(virtual origin of impulse current)
時間軸とインパルス電流波高値の10 %の瞬間と90 %に対する点を通過する直線との交点(図A.1参照)。
それは,電流値が波高値の10 %に達する瞬間から0.1×T1だけ前にある。
3.14
インパルス電流の規約波尾長,T2(time to half value on the tail of impulse current)
規約原点O1から電流が波高値の半分に減少するまでの時間間隔として定義したパラメータ(図A.1参照)。
3.15
雷放電継続時間,T(flash duration)
雷撃点において雷電流が流れている時間。
3.16
長時間雷撃電流の継続時間,TLONG(duration of long stroke current)
長時間雷撃電流が,電流増加中の波高値の10 %の瞬間と電流減少中の波高値の10 %の瞬間との間にあ
るときの継続時間(図A.2参照)。
3.17
雷放電の電荷量,QFLASH(flash charge)
雷放電の継続時間全域に対する雷電流の時間積分。
3.18
雷電流の電荷量,QSHORT(impulse charge)
短時間雷撃の雷電流の時間積分。
3.19
長時間雷撃の電荷量,QLONG(long stroke charge)
長時間雷撃の雷電流の時間積分。
5
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3.20
比エネルギー,W/R(specific energy)
雷放電の継続時間全域にわたる電流の2乗の時間積分。
注記 単位抵抗当たりの雷電流エネルギー消費量を示す。
3.21
雷電流の比エネルギー(specific energy of impulse current)
雷電流の継続時間にわたる電流の2乗の時間積分。
注記 長時間雷撃の比エネルギーは,無視することができる。
3.22
被保護建築物等(structure to be protected)
落雷の影響に対する保護が必要な建築物等。
注記 被保護建築物等は,より大きな建築物等の一部であることがある。
3.23
引込線(line)
被保護建築物等に引き込む電力線又は通信線。
3.24
通信線(telecommunication lines)
電話線及び信号線のような離れた建築物等に施設することのある装置間の通信を意図した引込線。
3.25
電力線(power lines)
低圧(LV)又は高圧(HV)主電源のような建築物等内の電気及び電子機器に電気エネルギーを供給す
る配電線。
3.26
建築物等への落雷(lightning flash to a structure)
被保護建築物等への落雷。
3.27
建築物等近傍への落雷(lightning flash near a structure)
被保護建築物等に十分近く,危険な過電圧を引き起こす可能性がある落雷。
3.28
電気システム(electrical system)
低圧配電系統部品で構成するシステム。
3.29
電子システム(electronic system)
通信機器,コンピュータ,制御及び計測システム,無線システム並びにパワーエレクトロニクス設備の
ようなぜい(脆)弱な(弱耐電圧特性の)電子部品で構成するシステム。
3.30
内部システム(internal system)
建築物等の内部の電気システム及び電子システム。
3.31
物的損傷(physical damage)
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雷の機械的,熱的,化学的及び爆発の影響による,建築物等(又はその内容物)に対する損傷。
3.32
生物の死傷(injury of living being)
雷によって生じた歩幅電圧及び接触電圧による,人間及び家畜の死を含む永続的な傷害。
注記 生物は他の方法でも死傷することがあるが,この規格での“生物の死傷”は,感電による脅威
に限る(損傷の種類D1)。
3.33
電気及び電子システムの故障(failure of electrical and electronic systems)
雷電磁インパルス(LEMP)による電気及び電子システムの恒久的な損傷。
3.34
雷電磁インパルス,LEMP(lightning electromagnetic impulse)
雷サージ及び放射電磁界を発生する抵抗結合,誘導結合及び静電結合による,雷電流の全ての電磁的な
影響。
3.35
雷サージ(surge)
LEMPによって発生する過渡的な過電圧及び/又は過電流。
3.36
雷保護ゾーン,LPZ(lightning protection zone)
雷の電磁気的環境を定義した領域。
注記 LPZの領域の境界は,物理的境界(例 壁,床,天井)を必要としない。
3.37
リスク,R(risk)
雷による想定年間損失(人又は物)の平均値。被保護建築物等の全体の価値(人又は物)に関係する。
3.38
許容リスク,RT(tolerable risk)
被保護建築物等に対し,許容することのできるリスクの最大値。
3.39
雷保護レベル,LPL(lightning protection level)
自然界で発生する雷において,想定する最大及び最小の設計値の範囲内の雷電流パラメータの発生確率
に関係する数値。
注記 雷保護レベルは,雷保護対策を設計するために,関連する1組の雷電流パラメータの組合せを
選択して使用する。
3.40
保護対策(protection measures)
リスク低減のために,被保護建築物等に採用する対策。
3.41
雷保護,LP(lightning protection)
建築物等,その内部システム及び内容物,並びに人間に対する落雷の影響から保護するシステム全体。
一般に,LPS及びSPMからなる総合的システムをいう。
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3.42
雷保護システム,LPS(lightning protection system)
建築物等への落雷による物的損傷及び生物への傷害を低減するために使用するシステム全体。
注記1 外部雷保護システム及び内部雷保護システムの両方で構成する。
注記2 これは,雷保護(LP)の総合的システムの一部である。
3.43
外部雷保護システム(external lightning protection system)
LPSの一部で,受雷部システム,引下げ導線システム及び接地極システムで構成するシステム。
3.44
内部雷保護システム(internal lightning protection system)
LPSの一部で,雷等電位ボンディング及び/又は外部LPSとの電気的絶縁で構成するシステム。
3.45
受雷部システム(air-termination system)
外部LPSの一部で,落雷を捕捉するための,突針,メッシュ導体又は水平導体のような金属部材で構成
するシステム。
3.46
引下げ導線システム(down-conductor system)
外部LPSの一部で,落雷電流を受雷部システムから接地極システムへ導くことを目的としたシステム。
3.47
接地極システム(earth-termination system)
外部LPSの一部で,落雷電流を大地に放流することを目的としたシステム。
3.48
外部導電性部材(external conductive parts)
被保護建築物等に出入りする外部に伸びた金属物で,雷電流の一部を通電する可能性のある,配管,ケ
ーブルの金属部分,金属ダクトなどのようなもの。
3.49
雷等電位ボンディング,EB(lightning equipotential bonding)
分離した金属製部品のLPSへボンディングすること。雷電流によって発生する電位差を低減するため,
直接電気的に接続,又はサージ防護デバイスを介して接続すること。
3.50
等価接地インピーダンス(conventional earthing impedance)
接地極に流れる電流の波高値に対する接地極に生じる電圧の波高値との比。一般に,これらは,同時に
は現れない。
3.51
LEMP保護対策,SPM(LEMP protection measures)
内部システムのLEMPの影響に対する保護のための対策。
注記 これは,LPの総合的システムの一部である。
3.52
磁気遮蔽(magnetic shield)
閉鎖形,金属製,格子状又は連続したスクリーンで,被保護建築物等の全体又はその一部を囲い,電気
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システム及び電子システムの故障を低減するために使用するもの。
3.53
サージ防護デバイス,SPD(surge protective device)
過渡過電圧を制限し,サージ電流を分流することを目的とした,1個以上の非線形素子を内蔵している
デバイス。
3.54
協調のとれたSPDシステム(coordinated SPD system)
電気システム及び電子システムの故障の低減を目的として,適切に選定し,協調をとって,設置した複
数のSPD。
3.55
定格インパルス耐電圧,Uw(rated impulse withstand voltage)
製造業者が機器又はその部分に定めたインパルス耐電圧値。この値は,その機器の絶縁の過渡過電圧に
対する耐電圧性能を表す。
注記 この規格では,充電用導体と接地との間の耐電圧だけを考慮する。
3.56
分離用インタフェース(isolating interfaces)
LPZ内に引き込む線を伝搬する雷サージを低減することができる装置。
注記1 分離用インタフェースは,巻線間の遮蔽層を接地した絶縁変圧器,非金属の光ファイバケー
ブル及び光アイソレータを含む。
注記2 分離用インタフェースの絶縁耐力特性が,この適用に対して十分でない場合,SPDを組み合
わせて適用する。
4
雷電流パラメータ
この規格群で使用する雷電流パラメータを,附属書Aに示す。
解析を目的として使用する雷電流の時間関数を,附属書Bに示す。
試験を目的とした雷電流のシミュレーションについての情報を,附属書Cに示す。
LPS構成部材への落雷の影響をシミュレートするために,実験室で使用する基礎パラメータを,附属書
Dに示す。
異なる設備の部分での雷サージについての情報を,附属書Eに示す。
5
落雷による損傷
5.1
建築物等への損傷
建築物等に影響する落雷は,建築物等自体だけでなく,建築物等の居住者及び内部システムの故障を含
む内容物に損傷を及ぼすことがある。この損傷及び故障は,建築物等の周辺に拡大する可能性があり,更
に地域の環境さえも巻き込む可能性がある。この範囲の規模は,建築物等及び落雷の特性に依存する。
5.1.1
建築物等での落雷の影響
落雷の影響に関係する建築物等の主な特性を,次に示す。
a) 建築方式[木造,組積造(Brick),コンクリート,鉄筋コンクリート,鉄骨構造など]
b) 機能(住宅,事務所,農場,劇場,ホテル,学校,病院,美術館,教会,刑務所,百貨店,銀行,工
場,産業プラント,スポーツ施設など)
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c) 居住者及び内容物(人間及び家畜,可燃物又は不燃物の存在,爆発物の有無,高耐圧又は弱耐圧の電
気・電子システムなど)
d) 引込線・管(電力線,通信線,配管等)
e) 保護対策の有無及び施設状況[物的損傷及び生命の危険を低減するための保護対策(LPS),内部シス
テムの故障を低減するための保護対策(SPM)など]
f)
危険拡大の規模(避難が困難又はパニックが起こる可能性のある建築物等,周囲に対して危険性のあ
る建築物等,環境へ悪影響を及ぼす危険性のある建築物等)
建築物等の各種の代表的構造に対する落雷の影響を,表1に示す。
表1−建築物等への落雷の影響
機能及び/又は内容物
による建築物等の種類
落雷の影響
住宅
a) 火災,電気設備の絶縁破壊及び機材の損傷
b) 損傷は,通常,雷撃点又は雷電流通電経路に接する対象物に限定
c) 設置した電気機器及び電子機器並びにシステムの故障(例 テレビジョン,コ
ンピュータ,モデム,電話など)
農家の建物
a) 火災,危険な歩幅電圧及び機材の損傷の一次的なリスク
b) 停電による二次的リスク,換気及び給餌システムの電子制御故障が及ぼす家畜
生命への危険など
劇場,ホテル,学校,
百貨店,スポーツ施設
a) パニックの原因となり得る電気設備(照明など)の損傷
b) 消火活動の遅延となる火災報知器の故障
銀行,保険会社,
貿易会社など
a) パニックの原因となり得る電気設備(照明など)の損傷
b) 消火活動の遅延となる火災報知器の故障
c) 通信の不通,コンピュータの故障及びデータの消失による問題
病院,看護施設,刑務所
a) パニックの原因となり得る電気設備(照明など)の損傷
b) 消火活動の遅延となる火災報知器の故障
c) 通信の不通,コンピュータの故障,データの消失による問題
d) 集中治療中の患者の問題,動けない患者の救出の困難性
工場
工場の設備機器類等によって発生する追加的な影響(微小なものから受け入れ難い
損傷まで),製品の損失
博物館,教会,
考古学に関連した現場
かけがえのない文化遺産の損失
通信,電力プラント
公共サービスの受け入れ難い損失
花火工場,武器・弾薬工場
火災及び爆発による工場並びに周辺への影響
化学プラント,精製所,
核関連施設,生物化学研究所
及びプラント
周辺地域及び地球環境への影響を伴うプラントの火災及び機能不全
注記 教会には,神社仏閣が含まれる。
5.1.2
建築物等の損傷の種類及び発生源
雷電流が損傷の発生源であるため,当該建築物等に関係する雷撃点の場所に応じて,次の状況を考慮し
なければならない。
a) S1:建築物等への落雷
建築物等への落雷は,次の事象を引き起こすことがある。
1) 機械的な損傷,又は火災及び/又は爆発。火災及び/又は爆発は,高温の雷プラズマアーク自体,
導体の抵抗発熱を引き起こす雷電流(導体の過熱),又はアークによる浸食(金属の溶解)を引き起
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こす電荷量によって発生する。
2) 抵抗及び誘導結合並びに部分雷電流の通過による過電圧が引き起こす火花放電が誘発する火災及び
/又は爆発
3) 抵抗及び誘導結合に起因して発生する歩幅電圧及び接触電圧での感電による生物への傷害
4) LEMPによる内部システムの故障又は機能不全
b) S2:建築物等の近傍への落雷
建築物等近傍への落雷は,LEMPによる内部システムの故障又は機能不全を引き起こすことがある。
c) S3:建築物等に接続した引込線・引込管への落雷
建築物等に接続した引込線・引込管への落雷は,次の事象を引き起こすことがある。
1) 接続した引込線・引込管を伝搬する落雷電流及び過電圧による火花放電に起因する火災及び/又は
爆発
2) 建築物等内における,接続した引込線・引込管を伝搬する落雷電流が原因の接触電圧による生物の
死傷
3) 接続した引込線・引込管に現れ,建築物等内に伝搬する過電圧による内部システムの故障又は機能
不全
d) S4:建築物等に接続した引込線・引込管近傍への落雷
建築物等に接続した引込線・引込管近傍への落雷は,接続した引込線・引込管に誘導し,建築物等
内に伝搬する過電圧による内部システムの故障又は機能不全を引き起こすことがある。
注記1 内部システムの機能不全は,この規格群では扱わない。JIS C 61000-4-5を参照することが
望ましい。
注記2 落雷電流(全体又は一部)による火花放電だけが,火災を発生するとみなす。
注記3 引込管への落雷又は近傍への落雷は,それらが,建築物等のボンディング用バーに接続し
ている場合,建築物等に損傷を引き起こさない(JIS Z 9290-3参照)。
結果として,落雷は,基本的に次の三つの種類の損傷を引き起こすことがある。
− D1:感電による生物の死傷
− D2:落雷電流の影響による火花放電を含む物的損傷(火災,爆発,機械的な破壊及び化学物質の流出)
− D3:LEMPによる内部システムの故障
5.2
損失の種類
それぞれの損傷は,単独に又は複合して,被保護建築物等に,種々の重大な損失を引き起こす可能性が
ある。現れる損失の種類は,建築物等の特性に依存する。
この規格群の目的のために,建築物等に関連する重大な損傷の結果として現れる損失は,次の種類を考
慮する。
a) L1:人命の損失(恒久的な傷害を含む。)
b) L2:公共サービスの損失
c) L3:文化遺産の損失
d) L4:経済的価値の損失(建築物等,その設備機器等及び事業活動の損失)
注記 この規格群では,公共サービスとは,ガス,水道,放送,通信及び電力のような事業だけをい
う。
L1,L2及びL3の損失は,社会的価値の損失と考えるのに対し,L4は経済的損失と考える。
損傷の発生源,損傷の種類及び損失の関係を,表2に示す。
11
Z 9290-1:2014 (IEC 62305-1:2010)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
表2−雷撃点の相違による建築物等の損傷及び損失
雷撃点
損傷の発生源
損傷の種類
損失の種類
建築物等
S1
D1
L1,L4 a)
D2
L1,L2,L3,L4
D3
L1 b),L2,L4
建築物等の近傍
S2
D3
L1 b),L2,L4
建築物等の引込線
S3
D1
L1,L4 a)
D2
L1,L2,L3,L4
D3
L1 b),L2,L4
引込線の近傍
S4
D3
L1 b),L2,L4
注a) 家畜の損失を伴う施設にだけ適用する。
b) 爆発の危険を伴う建築物等及び病院又は内部システムの故障が直ちに生命を危険にする建築物等にだけ適用
する。
12
Z 9290-1:2014 (IEC 62305-1:2010)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
損傷の種類から結果として生じる損失及び対応するリスクの関係を,図2に示す。
注a) 病院又は内部システムの故障が直ちに生命を危険にするような建築物等にだけ適用する。
b) 家畜の損失を伴う施設にだけ適用する。
c) リスクR1,リスクR2,リスクR3及びリスクR4は,6.1及び6.2参照。
図2−種々の損傷の種類に起因する損失の種類及び関連するリスク
6
雷保護対策の必要性及び経済的正当性
6.1
雷保護対策の必要性
社会的価値の損失(L1,L2及びL3)を低減するために,被保護建築物等の雷保護対策の必要性を見積
らなければならない。
建築物等の雷保護対策が必要かどうかを見積るために,IEC 62305-2に示す手順によってリスク評価を
実行しなければならない。5.2に規定した損失の種類に対応して,次のリスクを考慮しなければならない。
a) R1:人命の損失又は恒久的傷害のリスク
b) R2:公共サービスの損失のリスク
c) R3:文化遺産の損失のリスク
d) R4:経済的損失のリスク
注記1 R4は,雷保護の経済的正当性を考慮する場合,常に評価することが望ましい。
リスクR(R1,R2及びR3)が,許容レベルRTよりも高い場合には,雷保護対策が必要になる。
T
R
R>
この場合には,リスクR(R1,R2及びR3)を許容レベルRTにまで低減するために保護対策を施さなけれ
ばならない。
T
R
R≦
二つ以上の種類の損失が現れる場合には,それぞれの種類の損失(L1,L2及びL3)に対して,R≦RT
の条件を満たさなければならない。
落雷が社会的価値の項目の損失を生じる可能性がある場合は,許容リスクRTの値は,国の責任のある機
関において定めることが望ましい。
注記2 当局は特定的な適用のために,リスク評価を必要とせずに雷保護対策の必要性を指定するこ
損失の
種類
損傷の
種類
文化遺産
の損失
物的
損傷
公共サービス
の損失
内部シス
テムの
故障
リスクc)
R2
リスクc)
R3
感電に
よる
生物の
傷害
リスクc)
R1
人命の
損失
物的
損傷
内部システ
ムの
故障a)
感電に
よる
生物の
傷害b)
リスクc)
R4
経済的価
値の損失
物的
損傷
内部シス
テムの
故障
物的
損傷
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
とができる。これらの場合には,必要とする雷保護レベルは,当局によって指定することに
なる。場合によっては,リスク評価は,これらの当局の要求事項を適用しないことを正当化
する手法として活用することがあり得る。
注記3 リスク評価の詳細な情報及び保護対策の選定の手順は,IEC 62305-2を参照する。
6.2
雷保護対策の経済的正当性
被保護建築物等の雷保護対策の必要性とは別に,経済的損失L4を低減するために,設置する保護対策
の経済的な恩恵を評価することは有用なことである。
この場合には,経済価値の損失リスクR4を評価することが望ましい。リスクR4の評価は,採用した保
護対策の有無による経済的損失のコストの見積りを可能にする。
保護対策がある場合の残留損失のコストCRL及び保護対策のコストCPMの和が,保護対策のない場合の
総損失のコストCLよりも小さい場合には,保護対策はコスト効果がある。
L
PM
RL
C
C
C
<
+
注記 保護対策の経済的正当性の見積りに関する詳細情報は,IEC 62305-2を参照する。
7
保護対策
7.1
一般事項
保護対策は,損傷の種類に対するリスクを低減するために採用することができる。
7.2
感電による生物の死傷を低減するための保護対策
可能な保護対策は,次による。
a) 露出導電性部品の適切な絶縁
b) メッシュ接地システムによる等電位化
c) 物理的な制限及び警告
d) 雷等電位ボンディング(EB)
注記1 等電位化並びに建築物等内部及び外部の土壌表面の接触抵抗の増加は,人命の危険を低減す
ることができる(JIS Z 9290-3の箇条8参照)。
注記2 保護対策は,LPSによって保護している建築物等内だけに有効である。
注記3 雷警報器の使用及び関連する設備の採用は,人命の危険を減少することができる。
7.3
物的損傷を低減するための保護対策
保護対策は,次の主要なものを含むLPSによって達成する。
a) 受雷部システム
b) 引下げ導線システム
c) 接地極システム
d) 雷等電位ボンディング(EB)
e) 外部LPSに対する電気的絶縁(及びそれによる離隔距離)
注記1 LPSを設置した場合,雷等電位ボンディングは,火災及び爆発の危険並びに人命への危険を
低減するために,非常に重要な対策である(詳細は,JIS Z 9290-3参照)。
注記2 耐火性の仕切り,消火器,消火栓,火災警報器及び消火設備のような,火災の延焼及び拡大
を制限する対策は,物的損傷を低減できる。
注記3 保護した避難経路は,人間の保護を提供する。
7.4
電気・電子システムの故障を低減するための保護対策
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Z 9290-1:2014 (IEC 62305-1:2010)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
可能なLEMP保護対策(SPM)は,次による。
a) 接地及び雷等電位ボンディング(EB)
b) 磁気遮蔽
c) 配線経路
d) 絶縁インタフェース
e) 協調のとれたSPDシステム
これらのLEMP保護対策は,単独又は組み合わせて使用できる。
注記1 損傷の原因S1を考慮する場合,SPMは,LPSによって保護した建築物等内だけに有効であ
る。
注記2 雷警報器の使用及び関連する設備の採用は,電気及び電子システムの故障を減少することが
できる。
7.5
保護対策の選定
7.2〜7.4に規定する規定事項では,まとめてLPを構成する。
最も適切な保護対策の選定は,それぞれの損傷の種類及び量,各種保護対策の技術的及び経済的な側面
並びにリスク評価の結果によって,保護対策の設計者及び被保護建築物等の所有者によって実施しなけれ
ばならない。
リスク評価の判定基準及び最も適切な保護対策の選定は,IEC 62305-2に規定している。
保護対策は,それが関連する規格の要求事項に適合し,かつ,設置した場所において予測するストレス
に耐えることができれば,有効である。
8
建築物等の保護に対する基本的な基準
8.1
一般事項
建築物等の理想的な保護は,接地した十分な厚さの完全に導電性の連続した遮蔽体で被保護建築物等を
囲い,かつ,建築物等に接続した引込線の遮蔽の入口部分において,適切にボンディングを実施すること
である。
これは,雷電流及び関連する雷電磁界が被保護建築物等内へ侵入することを防ぎ,かつ,雷電流による
危険な熱的及び電磁的な影響,並びに危険な火花放電及び内部システムに対する過電圧を防止する。
実際には,このような完全な保護のための対策の実施は,ほとんど不可能で,かつ,コスト効果もない。
遮蔽の連続性の欠如及び/又は不十分な厚さは,雷電流が遮蔽内に侵入し,次の事象を引き起こす。
a) 物的損傷及び人命の危険
b) 内部システムの故障
このような損傷及びその結果の関連する損失を低減するために採用する保護対策は,それに対して必要
とする保護(雷保護レベル)に対し,定められた一連の雷電流パラメータについて設計しなければならな
い。
8.2
雷保護レベル(LPL)
この規格の目的のために,四つの雷保護レベル(I〜IV)を導入する。各LPLについて,一連の最大及
び最小の雷電流パラメータを定める。
注記1 最大及び最小雷電流パラメータがLPL Iに対して定めた値を超える落雷に対する保護は,個
別の根拠に基づいた選定及び施工が望ましく,より効率的な対策を必要とする。
注記2 LPL Iに対して定めた値の範囲外の最小又は最大の雷電流パラメータを伴う落雷の発生確率
15
Z 9290-1:2014 (IEC 62305-1:2010)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
は,2 %未満である。
LPL Iに関する雷電流パラメータの最大値を超える確率は,1 %以下である。想定する極性の比率(A.2
参照)によると,正極性雷放電では10 %未満の確率であり,一方,負極性雷放電は,1 %未満(A.3参照)
である。
LPL Iに関する雷電流パラメータの最大値は,LPL IIでは75 %に,LPL III及びLPL IVでは50 %に減少
する(I,Q,di/dtは比例し,W/Rは2乗に比例する。)。時間パラメータは変化しない。
注記3 最大雷電流のパラメータが,LPL IVに関するパラメータよりも低いLPLは,IEC 62305-2の
附属書Bで規定する値よりも高い損傷の確率値を見込むことはできるが,これらは定量化せ
ず,不当なコストを回避するためのよりよい保護対策を作り上げるのに有効である。
異なる雷保護レベルに対する雷電流パラメータの最大値を表3に示す。これらは,雷保護構成要素(例
えば,導体の断面積,金属板の厚さ,SPDの電流耐量,危険な火花放電に対する離隔距離)の設計及びこ
れらの構成要素に関する雷の影響をシミュレートする試験パラメータを決めるために使用する(附属書D
参照)。
異なるLPLに対応する雷電流波高値の最小値は,直撃雷が到達しない雷保護ゾーンLPZ 0B(8.3,図3
及び図4参照)を決定する手段として,回転球体半径(A.4参照)を得るために使用する。関連の回転球
体半径とともに雷電流パラメータの最小値を,表4に示す。これらは,受雷部システムの配置及び雷保護
ゾーンLPZ 0B(8.3参照)の範囲を決定するために使用する。
表3−LPLによる雷電流パラメータの最大値
電流パラメータ
記号
単位
LPL
I
II
III
IV
第1正極性雷撃
電流波高値
I
kA
200
150
100
短時間雷撃の電荷量
QSHORT
C
100
75
50
比エネルギー
W/R
MJ/Ω
10
5.6
2.5
時間パラメータ
T1/T2
µs/µs
10/350
第1負極性雷撃a)
電流波高値
I
kA
100
75
50
平均波頭しゅん(峻)度
di/dt
kA/µs
100
75
50
時間パラメータ
T1/T2
µs/µs
1 / 200
後続雷撃
電流波高値
I
kA
50
37.5
25
平均波頭しゅん(峻)度
di/dt
kA/µs
200
150
100
時間パラメータ
T1/T2
µs/µs
0.25/100
長時間雷撃
長時間雷撃の電荷量
QLONG
C
200
150
100
時間パラメータ
TLONG
s
0.5
雷放電
電荷量
QFLASH
C
300
225
150
注a) 電流波形の使用は,計算だけに関係し,試験には関係しない。
16
Z 9290-1:2014 (IEC 62305-1:2010)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
表4−LPLに対応した雷電流パラメータの最小値及び関連する回転球体半径
捕捉の基準
LPL
記号
単位
I
II
III
IV
最小雷電流波高値
I
kA
3
5
10
16
回転球体半径
r
m
20
30
45
60
図A.5に記載した統計上の分布から,重要な確率は,雷電流パラメータが各保護レベルで定めた最大値
よりも小さく,最小値よりも大きいと推定できる(表5参照)。
表5−雷電流パラメータの限界についての確率
雷電流パラメータの確率
LPL
I
II
III
IV
表3に定めた最大値よりも小さい範囲
0.99
0.98
0.95
0.95
表4に定めた最小値よりも大きい範囲
0.99
0.97
0.91
0.84
JIS Z 9290-3及びJIS Z 9290-4に規定する保護対策は,設計のために想定したLPLによって定めた範囲
内の雷電流パラメータをもつ落雷に対して効果がある。したがって,保護対策の効率は,雷電流パラメー
タがそれらの範囲内にある確率に等しいと想定している。この範囲を超えたパラメータに対しては,残り
のリスクが依然として存在する。
8.3
雷保護ゾーン(LPZ)
LPS,シールド線,磁気遮蔽及びSPDのような保護対策は,雷保護ゾーン(LPZ)を決定する。
保護対策のLPZ下流側は,LPZの上流側よりも著しいLEMPの低減という特徴がある。
雷の脅威を考慮して,次のLPZを定める(図3及び図4参照)。
a) LPZ 0A:直接の落雷及び落雷の全電磁界による脅威のある領域である。内部システム(電気システム
及び電子システム)は,雷電流の全て,又は一部の影響を受ける可能性がある。
b) LPZ 0B:直接の落雷からは保護しているが,全電磁界の影響を受ける領域である。内部システムは,
雷電流の一部の影響を受ける可能性がある。
c) LPZ 1:雷サージ電流を,境界において電流の分流並びに絶縁インタフェース及び/又はSPDによっ
て制限した領域である。空間遮蔽は雷電磁界を低減することができる。
d) LPZ 2, …, n:雷サージ電流を,境界において電流の分流並びに絶縁インタフェース及び/又は追加の
SPDによって更に制限した領域である。雷電磁界を低減するために追加的な空間遮蔽を使用してもよ
い。
注記1 一般に,個々のゾーンの番号が高いほど,電磁環境のパラメータは小さい。
保護に対する一般的な原則として,被保護建築物等は,低減することが望ましい損傷(物的損傷,過電
圧による電気システム及び電子システムの故障)を引き起こすストレスに耐える能力と共存できる電磁的
特性のLPZ内に設置しなければならない。
注記2 ほとんど全ての電気及び電子システム並びにそれらの器具について,耐性に関する情報は,
製造業者が供給できる。
17
Z 9290-1:2014 (IEC 62305-1:2010)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
1 :建築物等
S1 :建築物等への落雷
2 :受雷部システム
S2 :建築物等近傍への落雷
3 :引下げ導線システム
S3 :建築物等に接続したラインへの落雷
4 :接地極システム
S4 :建築物等に接続したライン近傍への落雷
5 :建築物等に接続した引込線・管 r :回転球体半径
s :危険な火花放電に対する離隔距離
▽:地表レベル
○:SPDを用いたEB
LPZ 0A :直接の落雷,全雷電流
LPZ 0B :直接の落雷はない,部分雷電流又は誘導電流
LPZ 1 :直接の落雷はない,制限された雷電流又は誘導電流
LPZ 1内部の保護された空間は,離隔距離sを厳守する。
図3−LPS(JIS Z 9290-3)によって定めたLPZ
1
2
3
4
5
5
S1
s
SPD
S3
S4
SPD
S2
LPZ 0B
LPZ 1
LPZ 0B
r
r
s
LPZ 0A
18
Z 9290-1:2014 (IEC 62305-1:2010)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
1:建築物等(LPZ 1の遮蔽)
S1 :建築物等への落雷
2:受雷部システム
S2 :建築物等近傍への落雷
3:引下げ導線システム
S3 :建築物等に接続した引込線・管への落雷
4:接地極システム
S4 :建築物等に接続した引込線・管近傍への落雷
5:部屋(LPZ 2の遮蔽)
r :回転球体半径
6:建築物等に接続した引込線・管
ds :磁界に対応した安全離隔距離
▽:地表レベル
○:SPDを用いたEB
LPZ 0A :直接の落雷,全雷電流,全磁界
LPZ 0B :直接の落雷はない,部分雷電流又は誘導電流,全磁界
LPZ 1 :直接の落雷はない,制限された雷電流又は誘導電流,減衰した磁界
LPZ 2 :直接の落雷はない,誘導電流,更に減衰した磁界
LPZ 1及びLPZ 2内部の保護された空間は,安全離隔距離dsを厳守する。
図4−SPM(JIS Z 9290-4)によって定めたLPZ
8.4
建築物等の保護
8.4.1
物的損傷及び人命の危険を低減するための保護
被保護建築物等は,LPZ 0B又はそれよりも高いレベルの保護ゾーン内になければならない。これは,雷
LPSによって達成する。
一つのLPSは,外部雷保護システム及び内部雷保護システムの両方からなる。
外部LPSの機能は,次のとおりである。
a) 建築物等への落雷を捕捉する(受雷部システムによる。)。
b) 大地へ雷電流を安全に導く(引下げ導線システムによる。)。
SPD
SPD
SPD
SPD
SPD
LPZ 0A
LPZ 0B
LPZ 0B
LPZ 0B
LPZ 1
S1
S2
S4
S3
LPZ 2
r
r
1
3
2
ds
ds
5
6
4
6
19
Z 9290-1:2014 (IEC 62305-1:2010)
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c) 大地に雷電流を放流する(接地極システムによる。)。
内部LPSの機能は,建築物等内部における危険な火花放電を,雷等電位ボンディング又はLPS構成部分
と建築物等内の他の導電性部分との間の離隔距離s(それゆえ,電気的絶縁である。)によって防止するこ
とである。
LPS(I,II,III及びIV)の四つのクラスは,LPLに応じた一連の構造規定として定める。これらは,レ
ベルに応じた構造規定(例えば,回転球体半径,メッシュ幅など)及びレベル依存性のないもの(例えば,
断面,材料など)を含む。
建築物等の外部の土壌の表面抵抗率及び建築物等内部の床の表面抵抗率が低い場合,接触電圧及び歩幅
電圧による人命の危険は,次の対策によって低減する。
d) 建築物等の外部:露出導電性部分の絶縁,メッシュ接地システムによる土壌の等電位化,警告表示及
び物理的な制限
e) 建築物等の内部:引込線の建築物等への入口部分におけるEB
LPSは,この規格の要求事項に適合していなければならない。
8.4.2
内部システムの故障を低減するための保護
内部システムの故障のリスクを低減するためのLEMPに対する保護は,次の事項を制限しなければなら
ない。
a) 建築物等への雷放電に起因する抵抗結合及び誘導結合による雷サージ
b) 建築物等近傍への雷放電に起因する誘導結合による雷サージ
c) 引込線又はその近傍への雷放電に起因する建築物等に接続した配線を伝搬する雷サージ
d) 内部システムに直接結合する磁界
注記 直接機器に放射した電磁界による器具の故障は,器具が,当該製品に関連するEMC規格によ
って規定した無線周波数(RF)放射及びイミュニティ試験に適合しているという前提で,無視
できる(IEC 62305-2及びJIS Z 9290-4参照)。
保護することが望ましい内部システムは,LPZ 1又はLPZ 2以上の雷保護ゾーン内に設置しなければな
らない。これは,磁界遮蔽による誘導磁界の減衰及び/又は誘導ループを低減する適切な配線ルートで構
成する電気システム及び電子システムのためのSPMによって達成する。ボンディングは,LPZの境界で,
境界を通過する金属導体及びシステムに対して実施しなければならない。この雷等電位ボンディングは,
ボンディング用導体又は必要な場合には,サージ防護デバイス(SPD)によって実施することができる。
LPZに対応した保護対策は,JIS Z 9290-4に適合しなければならない。
内部システムの故障を引き起こす過電圧に対する効果的な保護は,絶縁インタフェース及び/又は過電
圧を被保護システムの定格インパルス耐電圧未満に制限する“協調のとれたSPDシステム”によっても達
成できる。
絶縁インタフェース及びSPDは,JIS Z 9290-4の要求事項に従って,選定し,設置しなければならない。
20
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附属書A
(参考)
雷電流パラメータ
A.1 落雷
落雷には,次の二つの基本的なものがある。
a) 下向きの雷放電:雲から大地への下向きリーダによって開始する雷放電
b) 上向きの雷放電:接地した建築物等から雲に向かう上向きリーダによって開始する雷放電
多くの下向きの雷放電は,平地及び低い建築物等に対して発生し,突出した及び/又は高い建築物等で
は上向きの雷放電が支配的になる。実効的な高さによって建築物等への落雷の発生確率が増加し(IEC
62305-2の附属書A参照),物理的な条件が変化する。
雷放電は,次のいずれか一つ以上の雷撃によって構成する。
1) 持続時間が2 ms未満の短時間雷撃(図A.1)
2) 持続時間が2 ms以上の長時間雷撃(図A.2)
O1: 規約原点
I: 電流波高値
T1: 規約波頭長
T2: 規約波尾長
±i: 雷電流(正極性又は負極性)
図A.1−短時間雷撃パラメータの定義(一般的にT2<2 ms)
21
Z 9290-1:2014 (IEC 62305-1:2010)
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TLONG: 長時間雷撃の継続時間
QLONG: 長時間雷撃の電荷量
図A.2−長時間雷撃パラメータの定義(一般的に2 ms<TLONG<1 s)
さらに,雷撃の種類は,それらの極性(正極性又は負極性)及び落雷時における様相(第1雷撃,後続
雷撃,重畳した雷撃)によって異なる。可能性のある構成について,下向きの雷放電を図A.3に,上向き
の雷放電を図A.4に示す。
図A.3−下向きの雷放電の構成要素(平地及び低い建築物等で発生)
22
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
図A.4−上向きの雷放電の構成要素(特に突出した及び/又は高層の建築物等で発生)
上向きの雷放電における追加的な構成要素は,第1長時間雷撃であり,数十の短時間雷撃の重畳を伴う
場合と伴わない場合とがある。しかし,上向きの雷放電の全ての短時間雷撃パラメータは,下向きの雷放
電の短時間雷撃パラメータよりも小さい。上向きの雷放電の長時間雷撃では,多い電荷量は確認されてい
ない1)。したがって,上向きの雷放電の雷電流パラメータ値は,下向きの雷放電に与えられた最大値以下
と考えられる。上向き雷放電及び下向き雷放電に関するより正確な雷電流パラメータの評価及び高さ依存
性は,検討中である。
注1) 日本の冬季雷では,600 C〜1 000 Cに達する電荷量の観測結果がある。
23
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
A.2 雷電流パラメータ
この規格における雷電流パラメータは,表A.1に示した国際大電力システム会議(CIGRE:Council on
Large Electrical Systems)のデータに基づいている。これらの統計的分布は,対数正規分布(Logarithmic
normal)を想定している。関連した平均値(µ)及び分散(σlog)を表A.2に示す。そして,これらの累積
頻度分布を図A.5に示す。これに基づき,各パラメータの値に対応した発生確率を決定する。
正極性10 %及び負極性90 %の極性の確率を仮定したが,極性の割合は地域特性に依存する。地域の情
報が入手不可能の場合には,ここに示した値を使用することが望ましい。先に考慮した値を超える雷電流
の波高値の発生確率の値を,表A.3に記載する。
表A.1−CIGREによる雷電流パラメータ値
(Electra No.41又はNo.69)[3][4]
パラメータ
LPL Iに対する
設定値
値
雷撃の種類
図A.5に
おける線
95 %
50 %
5 %
I
(kA)
−
4 a)
20 a)
90
第1負極性短時間b)
1A+1B
50
4.9
11.8
28.6
後続負極性短時間b)
2
200
4.6
35
250
第1正極性短時間(単一)
3
QFLASH
(C)
−
1.3
7.5
40
負極性雷放電
4
300
20
80
350
正極性雷放電
5
QSHORT
(C)
−
1.1
4.5
20
第1負極性短時間
6
−
0.22
0.95
4
後続負極性短時間
7
100
2
16
150
第1正極性短時間
8
W/R
(kJ/Ω)
−
6
55
550
第1負極性短時間
9
−
0.55
6
52
後続負極性短時間
10
10 000
25
650
15 000
第1正極性短時間
11
di/dtmax
(kA/μs)
100
9.1
24.3
65
第1負極性短時間b)
12
200
9.9
39.9
161.5
後続負極性短時間b)
13
20
0.2
2.4
32
第1正極性短時間
14
di/dt30/90%
(kA/μs)
200
4.1
20.1
98.5
後続負極性短時間b)
15
QLONG(C)
200
長時間
TLONG(s)
0.5
長時間
波頭長
(µs)
−
1.8
5.5
18
第1負極性短時間
−
0.22
1.1
4.5
後続負極性短時間
−
3.5
22
200
第1正極性短時間(単一)
波尾長
(µs)
−
30
75
200
第1負極性短時間
−
6.5
32
140
後続負極性短時間
−
25
230
2 000
第1正極性短時間(単一)
時間間隔(ms)
−
7
33
150
多重負極性
雷放電
継続時間(ms)
−
0.15
13
1 100
負極性雷放電(全て)
−
31
180
900
負極性雷放電(単一以外)
−
14
85
500
正極性雷放電
注a) 電流値I=4 kA及び20 kAは,それぞれ,98 %及び80 %の確率に対応する。
b) Electra No.69に記載しているパラメータ及び関連する値。
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表A.2−雷電流パラメータの対数分布
CIGRE(Electra No.41又はNo.69)[3][4] による平均値µ及び分散σlog(計算範囲:95 %〜5 %)
パラメータ
平均値
μ
分散a)
σlog
雷撃の種類
図A.5に
おける線
I(kA)
(61.1)
0.576
第1負極性短時間(80 %)b)
1A
33.3
0.263
第1負極性短時間(80 %)b)
1B
11.8
0.233
後続負極性短時間b)
2
33.9
0.527
第1正極性短時間(単一)
3
QFLASH(C)
7.21
0.452
負極性落雷
4
83.7
0.378
正極性落雷
5
QSHORT(C)
4.69
0.383
第1負極性短時間
6
0.938
0.383
後続負極性短時間
7
17.3
0.570
第1正極性短時間(単一)
8
W/R(kJ/Ω)
57.4
0.596
第1負極性短時間
9
5.35
0.600
後続負極性短時間
10
612
0.844
第1正極性短時間
11
di/dtmax(kA/µs)
24.3
0.260
第1負極性短時間b)
12
40.0
0.369
後続負極性短時間b)
13
2.53
0.670
第1正極性短時間
14
di/dt30%/90%(kA/µs)
20.1
0.420
後続負極性短時間b)
15
QLONG(C)
200
長時間
TLONG(s)
0.5
長時間
波頭長
(µs)
5.69
0.304
第1負極性短時間
0.995
0.398
後続負極性短時間
26.5
0.534
第1正極性短時間(単一)
波尾長
(µs)
77.5
0.250
第1負極性短時間
30.2
0.405
後続負極性短時間
224
0.578
第1正極性短時間(単一)
時間間隔(ms)
32.4
0.405
多重負極性雷撃
雷放電継続時間(ms)
12.8
1.175
負極性雷放電(全て)
167
0.445
負極性雷放電(単一以外)
83.7
0.472
負極性雷放電
注a) σlog=log(X16 %)−log(X50 %):ここに,Xは,パラメータの値である。
b) Electra No.69に記載しているパラメータ及び関連する値。
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表A.3−雷電流Iの関数としての確率Pの値
I
(kA)
P
0
1
3
0.99
5
0.95
10
0.9
20
0.8
30
0.6
35
0.5
40
0.4
50
0.3
60
0.2
80
0.1
100
0.05
150
0.02
200
0.01
300
0.005
400
0.002
600
0.001
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
注記 直線に対応した番号は,表A.1及び表A.2を参照。
図A.5−雷電流パラメータの累積頻度分布(線の範囲:95 %〜5 %値)
この規格で,LPLに対して定めた全ての値は,下向き及び上向き雷放電の両方に関連するものである。
注記 一般に,雷パラメータの値は,高い建築物等での測定から得る。高層の建築物等の影響を考慮
していない落雷電流の概算の波高値の統計学上の分布は,落雷位置評定システムからも得るこ
とができる。
A.3 LPL Iに対応した最大の雷電流パラメータの決定
A.3.1 正極性雷撃
落雷の機械的影響は,電流波高値(I)及び比エネルギー(W/R)に関連している。熱的影響は,抵抗結
合を伴う場合には比エネルギー(W/R)に関係し,アークが設備へ進展する場合には電荷量(Q)に関係す
る。インダクタンスに起因する過渡過電圧及び危険な火花放電は,雷電流波頭の立ち上がりしゅん(峻)
度(di/dt)に関係している。
それぞれ単一のパラメータ(I,Q,W/R,di/dt)は,各故障メカニズムを支配している。このことは,
試験手順を作成するときに配慮しなければならない。
A.3.2 正極性雷撃及び長時間雷撃
機械的影響及び熱的影響に関連したI,Q及びW/Rの値は,正極性落雷によって決定する(正極性の10 %
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値は,負極性雷放電の1 %値に比較して十分に大きいからである。)。図A.5(線:3,5,8,11及び14)
から確率10 %以下として次の値を得る。
I
=200 kA
QFLASH =300 C
QSHORT =100 C
W/R
=/10 MJ/Ω
di/dt
=20 kA/μs
図A.1に示した第1正極性雷撃に対し,これらの値から,波頭長(T1)の第1近似が得られる(T1の値
は,重要ではない。)。
(
)
μs
10
d/
d
1
=
=
t
i
I
T
指数関数的に減衰する雷電流では,電荷量及びエネルギーの概算値に対して,次の式を適用する
(T1≪T2)。
2
2
2
SHORT
7.0
1
2
1
7.0
1
T
I
R
W
T
I
Q
×
×
×
=
×
×
=
これらの方程式及び上記の値は,次の波尾長(T2)の第1近似を導くことができる。
T2=350 μs
長時間雷撃の場合には,その電荷量は,次の式で概算できる。
QLONG=QFLASH−QSHORT=200 C
図A.2によって,その継続時間は,表A.1のデータから次の値となる。
TLONG=0.5 s
A.3.3 第1負極性雷撃
誘導結合の影響については,第1負極性雷撃によって,鉄筋コンクリート製のケーブルダクト内のケー
ブルに,最大の誘導電圧が発生する。図A.5(線2及び線12)から,次の確率1 %未満の値を得ることが
できる。
I=100 kA
di/dt=100 kA/μs
図A.1に示した第1負極性雷撃について,これらの値は,その波頭長の第1近似値を与える。
T1=I/(di/dt)=1.0 μs
第1負極性雷撃の雷撃継続時間から,波尾長は次のように見積る。
T2=200 μs(T2は重要ではない。)
A.3.4 後続雷撃
誘導電圧によって引き起こす危険な火花放電に関連する立ち上がり平均しゅん(峻)度の最大値は,負
極性雷放電の後続短時間雷撃によって決定する(なぜならば,これらの1 %値は,負極性の第1雷撃の1 %
値又は対応する正極性の雷放電の10 %値よりも十分に大きいからである。)。図A.5(線2及び線15)から,
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
次の確率1 %未満の値を得ることができる。
I=50 kA
di/dt=200 kA/µs
図A.1に示した後続雷撃について,これらの値は,その波頭長の第1近似値を与える。
T1=I/(di/dt)=0.25 µs
負極性後続短時間雷撃の継続時間から,波尾長は次のように見積る。
T2=100 μs(T2は重要ではない。)
A.4 最小雷電流パラメータの決定
LPSの捕捉効率は,最小雷電流パラメータとそれに関連した回転球体半径に依存する。落雷から保護す
るゾーンの幾何学的境界は,回転球体法を使用することによって決定できる。
次に示す幾何学的モデルにおける回転球体半径r(雷撃距離)は,第1短時間雷撃の電流波高値に相互
に関連する。IEEE working group report [5] によると,その関係は次の式のとおりである。
r=10×I 0.65
ここに,
r: 回転球体半径(m)
I: 電流波高値(kA)
指定の回転球体半径rについて,対応する最小電流値Iより高い値のピーク値の全ての雷放電は,構造
体利用の又は取り付けた受雷部によって捕捉すると想定できる。そのため,図A.5による(線1A及び線3)
負極性及び正極性の第1雷撃のピーク値の確率を,捕捉効率と仮定する。正極性10 %及び負極性90 %の
極性率を考慮して,総捕捉効率が計算できる(表5参照)。
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附属書B
(参考)
解析のための雷電流の時間関数
次の雷電流の波形は,式(B.1)によって示すことができる。
a) 第1正極性雷撃 10/350 μs
b) 第1負極性雷撃 1/200 µs
c) 後続負極性雷撃 0.25/100 μs
(
)
(
)
(
)
2
10
1
10
1
/
exp
/
1
/
T
t
T
t
T
t
k
I
i
−
×
+
×
=
···················································· (B.1)
ここに,
I: 電流波高値
k: 電流波高値のための補正係数
t: 時間
T1: 波頭長
T2: 波尾長
異なるLPLの第1正極性雷撃,第1負極性雷撃及び後続負極性雷撃については,表B.1に示したパラメ
ータを適用する。それらの時間関数としての解析曲線を図B.1〜図B.6に示す。
表B.1−方程式(B.1)に対応したパラメータ
パラメータ
第1正極性雷撃
第1負極性雷撃
後続負極性雷撃
LPL
LPL
LPL
I
II
III
IV
I
II
III
IV
I
II
III
IV
I(kA)
200
150
100
100
75
50
50
37.5
25
k
0.93
0.93
0.93
0.986
0.986
0.986
0.993
0.993
0.993
T1(μs)
19
19
19
1.82
1.82
1.82
0.454
0.454
0.454
T2(μs)
485
485
485
285
285
285
143
143
143
30
Z 9290-1:2014 (IEC 62305-1:2010)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
図B.1−第1正極性雷撃の電流波頭部の波形
図B.2−第1正極性雷撃の電流波尾部の波形
31
Z 9290-1:2014 (IEC 62305-1:2010)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
図B.3−第1負極性雷撃の電流波頭部の波形
図B.4−第1負極性雷撃の電流波尾部の波形
32
Z 9290-1:2014 (IEC 62305-1:2010)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
図B.5−後続負極性雷撃の電流波頭部の波形
図B.6−後続負極性雷撃の電流波尾部の波形
長時間雷撃は,表3に従って,平均電流I及び継続時間TLONGによるく(矩)形波で表現することがで
きる。
時間関数としての解析曲線から,雷電流振幅密度を導くことができる(図B.7)。
33
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
図B.7−LPL Iによる雷電流の振幅密度
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書C
(参考)
試験のための雷電流シミュレーション
C.1 一般事項
建築物等に落雷すると,雷電流は建築物等内に侵入する。個々の保護対策要素を試験する場合,このこ
とを考慮して,各要素に対応した適切な試験パラメータを選定しなければならない。この目的のため,シ
ステム解析を行わなければならない。
C.2 第1正極性雷撃の比エネルギー及び長時間雷撃の電荷量のシミュレーション
試験パラメータを表C.1及び表C.2に定義し,試験用電源の例を図C.1に示す。この電源は,長時間雷
撃の電荷量と結合した,第1正極性雷撃の比エネルギーのシミュレーションのために使用する。
この試験は,機械的な健全性,有害な過熱からの解放,及び溶解の影響の評価に使用する。
第1正極性雷撃のシミュレーションに関連する試験パラメータ(電流波高値I,電荷量QSHORT,比エネ
ルギーW/R)を表C.1に示す。これらのパラメータは,同一のインパルスで試験することが望ましい。ほ
ぼ指数関数的に減衰する波尾長T2が350 μsの電流発生装置を使用して,試験を行う。
長時間雷撃のシミュレーションに関連する試験パラメータ(電荷量QLONG,継続時間TLONG)を表C.2に
示す。
試験項目及び予測する損傷の仕組みに基づき,長時間雷撃電流が第1雷撃に即座に継続する場合,第1
正極性雷撃又は長時間雷撃は,単一又は複合試験として適用可能である。アークによる溶融試験は,両極
性で試験することが望ましい。
注記 第1負極性インパルスは,この試験には適用しない。
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
注記 図中の数値は,LPL Iに適合した値である。
図C.1−第1正極性雷撃及び長時間雷撃の電荷量の比エネルギーの
シミュレーション用電流発生装置の例
表C.1−第1正極性雷撃の試験パラメータ
試験パラメータ
LPL
許容差
%
I
II
III
IV
電流波高値 I
kA
200
150
100
±10
電荷量 QSHORT
C
100
75
50
±20
比エネルギー W/R
MJ/Ω
10
5.6
2.5
±35
表C.2−長時間雷撃の試験パラメータ
試験パラメータ
LPL
許容差
%
I
II
III
IV
電荷量 QLONG
C
200
150
100
±20
継続時間 TLONG
s
0.5
0.5
0.5
±10
C.3 短時間雷撃の電流波頭しゅん(峻)度のシミュレーション
電流の立ち上がりしゅん(峻)度は,雷電流の流れる導体近傍に設置したループでの電磁誘導電圧を決
定する。
雷撃の電流波頭しゅん(峻)度は,電流上昇時間Δt間に上昇する電流の上昇値Δiで定義する(図C.2)。
この電流しゅん(峻)度に関連した試験パラメータを表C.3に示す。試験用電源の例を図C.3及び図C.4
に示す[これらは,雷撃による雷電流波頭しゅん(峻)度のシミュレーションに使用できる。]。シミュレ
ーションは,短時間の第1正極性雷撃及び後続負極性雷撃に適用可能である。
注記 このシミュレーションは,短時間雷撃の電流波頭しゅん(峻)度に適用する。電流の波尾長は,
このシミュレーションに影響を与えない。
この箇条によるシミュレーションは,独立して適用することもでき,また,C.2によるシミュレーショ
ンと組み合わせて適用することもできる。
さらに,LPS構成要素における雷の影響に対する試験パラメータは,附属書Dを参照するとよい。
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
表C.3−短時間雷撃の試験パラメータ
試験パラメータ
LPL
公差
%
I
II
III
IV
第1短時間雷撃
Δi
kA
200
150
100
±10
Δt
µs
10
10
10
±20
後続短時間雷撃
Δi
kA
50
37.5
25
±10
Δt
µs
0.25
0.25
0.25
±20
図C.2−表3による電流波頭しゅん(峻)度の定義
注記 図中の数値は,LPL Iに適合した値である。
図C.3−大形の供試体に適用する第1正極性雷撃の電流
波頭しゅん(峻)度のシミュレーション用雷電流発生装置例
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
注記 図中の数値は,LPL Iに適合した値である。
図C.4−大形の供試体に適用する後続負極性雷撃の
波頭しゅん(峻)度のシミュレーション用試験電源装置例
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書D
(参考)
LPS構成部材に関する落雷の影響を解析するための試験パラメータ
D.1 一般事項
この附属書は,落雷の影響を研究室で解析するために使用する,基本パラメータを示す。この附属書は,
落雷電流の全て又は大部分にさらされるLPSの全ての構成要素について扱う。個々の特定の構成部材のた
めの要求事項及び試験を規定する規格と併せて活用する。
注記 サージ防護デバイスの協調など,システム側に関連したパラメータは,この附属書では考慮し
ていない。
D.2 雷撃点に関連する電流パラメータ
LPSの物理的な完全性を担う雷電流パラメータは,一般に,電流波高値I,電荷量Q,比エネルギーW/R,
継続時間T及び電流の平均波頭しゅん(峻)度di/dtである。各パラメータは,次に詳しく解析するように,
種々の故障メカニズムに関連する傾向がある。試験において考慮しなければならない電流パラメータは,
試験するLPSの部材の実際の故障メカニズムを代表して実験室で選定したこれらの値の組合せである。未
決定の量の選定のための基準を,D.5に示す。
保護レベルが要求する関数として,試験のために考慮するI,Q,W/R,T,di/dtの最大値を,表D.1に
示す。
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Z 9290-1:2014 (IEC 62305-1:2010)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
表D.1−種々のLPS構成部材及びLPLのための試験値の計算において
考慮すべき雷脅威のパラメータの要約
構成部材
主要な課題
雷パラメータ
注記
受雷部
雷撃接触部分の
侵食(例えば,
金属薄板)
LPL
QLONG(C)
T
I
II
III・IV
200
150
100
1 s未満(単一の
QLONGを印加)
受雷部及
び引下げ
導線
抵抗加熱
LPL
W/R
kJ/Ω
T
JIS Z 9290-3に
よる寸法決め
によって試験
は不要
I
II
III・IV
10 000
5 600
2 500
W/Rを断熱状態
で印加
機械的影響
LPL
I
kA
W/R
kJ/Ω
I
II
III・IV
200
150
100
10 000
5 600
2 500
接続部品
複合的影響
(熱的,機械的,
アーク)
LPL
I
kA
W/R
kJ/Ω
T
I
II
III・IV
200
150
100
10 000
5 600
2 500
2 ms未満
IとW/Rを
単一パルス
で印加
接地極
雷撃接触部分の
侵食
LPL
QLONG(C)
T
寸法決めは,通
常,機械的・化
学的な側面か
ら決定する(腐
食など)。
I
II
III・IV
200
150
100
1 s未満(単一の
QLONGを印加)
スパーク
ギャップ
内蔵SPD
複合的影響
(熱的,機械的,
アーク)
LPL
I
kA
QSHORT(C)
W/R
kJ/Ω
di/dt
kA/μs
単一のパルス
において,I,
QSHORT,W/Rを
印加する(継続
時T<2 ms)。
di/dtは,別のパ
ルスで印加で
きる。
I
II
III・IV
200
150
100
100
75
50
10 000
5 600
2 500
200
150
100
酸化亜鉛
バリスタ
内蔵SPD
エネルギー的
影響
(過負荷)
LPL
QSHORT(C)
二つの側面で
の確認が必要
である。
分割した試験
を考慮できる。
I
II
III・IV
100
75
50
誘電特性
(フラッシオー
バ,ひび割れ)
LPL
I
kA
T
I
II
III・IV
200
150
100
2 ms未満
(Iを単一パル
スで印加)
D.3 雷電流分流
表D.1に示すパラメータは,雷撃点での雷電流に関連している。実際,接地への電流の流れは,複数の
経路があり,通常,幾つかの引下げ導線及び構造体利用導体が,外部LPSを構成している。さらに,種々
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の引込線・管類を被保護建築物等に引き込んでいる(例えば,水道及びガス配管,並びに電力及び通信線)。
LPSの特定の部材に流入する実際の雷電流パラメータの決定には,雷電流分流を考慮しなければならない。
できれば,LPSの特定の場所において,構成部材に流れる電流の大きさ及び波形を,可能な範囲で求める
ことが望ましい。個々の評価ができない場合,雷電流パラメータは,次の手順によって計算する。
外部LPSにおける分流の評価に対し,分流係数kcを採用する(JIS Z 9290-3の附属書C参照)。この係
数は,最悪の条件下での外部LPSの引下げ導線に流れる雷電流分流の概算値の計算に使用する。
被保護建築物等に接続した外部導電性部材,電力線及び通信線が存在する場合の雷電流分流の計算は,
附属書Eで考慮したke及びke' の近似値を使用する。
上記の手順は,接地への特別な電流経路を流れる電流波高値の評価に適用できる。電流の他のパラメー
タの計算は,式(D.1)〜式(D.4)のとおりである。
I
k
I
×
=
p
·············································································· (D.1)
Q
k
Q
×
=
p
············································································· (D.2)
×
=
R
W
k
R
W
2
p
···································································· (D.3)
×
=
t
i
k
t
i
d
d
d
d
p
····································································· (D.4)
ここに,
x: 全雷電流に関連した量の値[電流波高値I,電荷量Q,
比エネルギー(W/R),電流の波頭しゅん(峻)度(di/dt)
などを表す。]。
x p: 接地への特別な経路pを考慮した値[電流波高値Ip,電
荷量Qp,比エネルギー(W/R)p,電流の波頭しゅん(峻)
度(di/dt)pなどを表す。]。
k: 分流係数
kc: 外部LPSに対応した分流係数(附属書C参照)
ke,ke': 被保護建築物等に引き込む外部導電性部材,
電力線及び通信線が存在した場合の分流係数
(附属書E参照)
D.4 発生可能な損傷の原因となる雷電流の影響
D.4.1 熱的影響
雷電流に関連する熱的な影響は,導体抵抗中を流れる電流又はLPSへ流れ込む電流によって発生する抵
抗加熱に関係する。熱的影響は,雷撃点におけるアーク根及びアークの成長に関係するLPSの中で分離し
た全ての部分(例えば,スパークギャップ)において発生する熱にも関連する。
D.4.1.1 抵抗加熱
抵抗加熱は,雷電流の大部分が流れるLPSのあらゆる構成部材において発生する。導体の最小断面積は,
周囲に火災の原因となるような過熱を防止できなければならない。D.4.1で示す熱的な面以外に,大気の状
態及び/又は腐食にさらされる部分について,機械的強さ及び耐久性の基準を考慮しなければならない。
雷電流による導体の過熱の評価は,人間の傷害,及び火災又は爆発のリスクの理由で,問題が発生する可
能性がある場合に必要となる。
雷電流が流れた場合の導体温度上昇の評価のための指針を,次に示す。
解析の手順は,次のとおりである。
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電流によって導体内で熱として消費する瞬時電力は,式(D.5)のように表す。
()
()R
t
i
t
P
×
=2
········································································ (D.5)
そのため,全ての雷電流によって発生する熱エネルギー(W)は,式(D.6)に示すとおり,雷電流が通過
する当該LPS構成部材の抵抗(R)に雷撃の比エネルギー[∫i2(t)dt]を乗じたものである。この熱エネル
ギーは,ジュール(J)又はワット・秒(W・s)によって,次の式(D.6)で表現する。
()t
t
i
R
W
d
2∫
×
=
······································································ (D.6)
落雷においては,落雷の高い比エネルギーの段階は,継続時間が短いので建築物等で発生する発熱につ
いて大きくは発散しない。そのため,この現象は断熱現象と考える。
LPSの導体温度は,次の式(D.7)で算出できる。
−
×
×
×
×
=
−
1
exp
1
W
2
0
0
C
q
R
W
γ
ρ
α
α
θ
θ
················································· (D.7)
ここに,
θ−θ0: 導体の温度上昇(K)
α: 抵抗の温度係数(1/K)
W/R: 落雷電流の比エネルギー(J/Ω)
ρ0: 周囲温度における導体の抵抗率(Ωm)
q: 導体の断面積(m2)
γ: 金属の密度(kg/m3)
CW: 熱容量(J/kgK)
式(D.7)に示した物理的パラメータの特性値を,LPSに使用する種々の材料について,表D.2に示す。
表D.2−LPS構成部材に使用する代表的な材料の物理特性
特性
材料
アルミニウム
軟鉄
銅
ステンレス鋼a)
ρ0(Ωm)
29×10−9
120×10−9
17.8×10−9
700×10−9
α(1/K)
4.0×10−3
6.5×10−3
3.92×10−3
0.8×10−3
γ(kg/m3)
2 700
7 700
8 920
8 000
θs(℃)
658
1 530
1 080
1 500
Cs(J/kg)
397×103
272×103
209×103
−
CW(J/kgK)
908
469
385
500
Cs: 溶融潜熱(J/kg)
θs: 溶融温度(℃)
注a) オーステナイト,非磁性
この式を適用して,W/R及び導体の断面積を関数とした,種々の材料で製作した導体の温度上昇値を,
表D.3に示す。
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表D.3−W/R及び導体の断面積を関数として各種導体の異なる断面積の温度上昇
単位 K
断面積
(mm2)
材料
アルミニウム
軟鉄
銅
ステンレス鋼a)
W/R
(MJ/Ω)
W/R
(MJ/Ω)
W/R
(MJ/Ω)
W/R
(MJ/Ω)
2.5
5.6
10
2.5
5.6
10
2.5
5.6
10
2.5
5.6
10
4
−
−
−
−
−
−
−
−
−
−
−
−
5.5
−
−
−
−
−
−
−
−
−
−
−
−
8
−
−
−
−
−
−
309
−
−
−
−
−
10
566
−
−
−
−
−
169
541
−
−
−
−
14
207
−
−
−
−
−
75
201
464
−
−
−
16
147
454
−
1 114
−
−
56
143
309
−
−
−
22
69
182
415
316
−
−
28
68
133
1 326
−
−
25
52
132
283
211
912
−
22
51
98
938
−
−
38
21
50
97
70
202
533
9
21
39
343
901
−
50
12
28
52
37
96
211
5
12
22
188
460
938
60
8
19
35
25
61
126
4
8
15
128
304
595
100
3
7
12
9
20
37
1
3
5
45
102
188
注a) オーステナイト,非磁性
代表的な雷撃は,短時間継続雷撃(波尾長が数百µs)で,高い電流波高値をもつ。このような環境では,
表皮効果も考慮することが望ましい。しかし,LPS構成部材に関連した多くの実際の場合では,材料特性
(LPS導体の透磁率)及び幾何学的形状(LPS導体の断面積)は,導体の温度上昇における表皮効果の影
響を無視できるレベルになっている。
この加熱に最も関係する雷放電の構成要素は,第1帰還雷撃である。
注記 帰還雷撃とは,雷雲底部から進展したステップトリーダの地表への接近によって,地表物から
発生する上向き放電(ステップトリーダ先端に向かって進展する)が結合し,リーダ路を通り
多量の電荷が地表から雷雲に向かって進行する現象であり,主放電とも呼ばれる。第1帰還雷
撃は,帰還雷撃中の最初の雷撃である(図A.3参照)。
D.4.1.2 雷撃接触箇所の熱的損傷
雷撃接触箇所の熱的損傷は,アークの拡大が起こるLPSの全ての構成部材(例えば,受雷部システム,
スパークギャップなど)において認められる。
金属の溶融及び侵食がこの接触箇所で発生する。実際,アークの根の部分に大きな熱の注入があると同
時に高い電流密度に基づく抵抗加熱の集中がある。ほとんどの熱的なエネルギーは,金属表面又はその近
傍で発生する。アークの根に直接接触する領域で発生する発熱は,伝導によって金属が吸収できる量を超
えており,その超過分は光の放射又は金属の溶融若しくは蒸発において失われる。これらの過程の重要性
は,電流波高値及び継続時間に関係する。
D.4.1.2.1 一般事項
雷撃点における金属表面の熱的影響の計算のために,幾つかの論理モデルを開発している。簡略化のた
めに,この規格では,陽極又は陰極電圧降下モデルだけについて記述する。このモデルの適用は,薄い金
属の表面において特に効果的である。全ての場合において,雷撃点において注入した全てのエネルギーは,
金属中での熱の拡散を無視すると,導体材料の温度上昇,溶融又は蒸発に費やされる。別のモデルでは,
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雷撃点損傷の雷電流の継続時間への依存性について紹介している。
D.4.1.2.2 陽極又は陰極の電圧降下モデル
アーク根における注入エネルギーWは,式(D.8)のとおり,陽極・陰極の電圧降下ua,cに雷電流の電荷量
Qを乗じると仮定する。
()()
()dt
t
i
u
dt
t
i
t
u
W
∫
∫
∞
∞
=
=
0
c
a,
0
c
a,
····················································· (D.8)
陽極又は陰極の電圧降下ua,cは,ここで考慮する電流の範囲領域において,ほとんど一定で,雷電流(Q)
がアーク根におけるエネルギー変換に対して,主として影響する。
ua,cは,数十Vの値である。
単純化したやり方では,アーク根において発生する全てのエネルギーは,金属の温度上昇及び溶融だけ
に使用されるとみなす。式(D.9)はこの仮定を使用しているが,この場合,溶融体積の過見積りになる。
(
)
s
u
s
W
c
a,
1
C
C
Q
u
V
+
−
×
×
×
=
θ
θ
γ
·················································· (D.9)
ここに,
V: 溶融した金属の体積(m3)
ua,c: 陽極及び陰極における電圧降下(一定であると仮定)
(V)
Q: 雷電流の電荷量(C)
γ: 金属の密度(kg/m3)
CW: 比熱(J/kgK)
θs: 溶融温度(℃)
θu: 周囲温度(℃)
Cs: 溶融潜熱(J/Kg)
この方程式に示す,LPLに使用する種々の金属の物理的パラメータの特性値を,表D.2に記載する。
基本的に,考慮する電荷量は,帰還雷撃の電荷量と継続する雷電流との合計である。実験室における経
験によって,帰還雷撃の電荷量は,継続雷電流の影響に比較してさほど重要ではないことが明らかである。
D.4.2 機械的影響
雷電流が引き起こす機械的な影響は,電流波高値及び継続時間に依存するとともに,影響を受けた機械
的構造体の弾性的特性,及びLPS部品間に作用する摩擦力にも依存する。
D.4.2.1 磁気的な相互作用
電磁力は,電流の流れる2本の導体間に発生する,また,電流の流れる導体が1本の場合には,コーナ
又はループで発生する。
電流が回路を流れるときに,回路の様々な箇所で発生する電磁力の大きさは,雷電流の波高値又は回路
の幾何学的な形状に依存する。しかし,これら電磁力の機械的な影響は,それらの大きさだけではなく,
電流波形,継続期間はもちろん,設備の幾何学的形状にも依存する。
D.4.2.1.1 電磁機械力
図D.1に示すような長さl,及び距離d(長くて,小さなループ)の平行導体に流れ込む電流iによって
発生する電磁機械力は,式(D.10)を用いて概算が可能である。
()
()
()dl
t
i
d
l
t
i
t
F
×
×
×
=
×
×
=
−
2
7
2
0
10
2
π
2
μ
·········································(D.10)
ここに,
F(t): 電磁機械力(N)
i: 電流(A)
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Z 9290-1:2014 (IEC 62305-1:2010)
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µ0: 空気の透磁率(真空)(4π×10−7 H/m)
l: 導体の長さ(m)
d: 平行導体の直線部分の距離(m)
図D.1−電磁機械力の計算のための2本の導体の一般的な配置
図D.2に,90度の角度をもつ左右対称のコーナ部分の導体配置で,クランプがコーナの近隣に設けてあ
るようなLPSにおける例を示す。この形状における応力図を図D.3に示す。水平導体に加わる軸方向の力
は,クランプを外側に引っ張る方向に向かう。電流波高値100 kA,垂直導体の長さ0.5 mを想定した場合
の水平導体に沿う力の計算上の値を図D.4に示す。
図D.2−LPSにおける代表的な導体の配置
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図D.3−図D.2の形状に加わる応力の図解
電流波高値:100 kA,垂直導体:0.5 m
図D.4−図D.2の水平導体に沿う単位長さ当たりの力
D.4.2.1.2 電磁機械力の影響
加わる力の大きさということでは,電磁力の瞬時値は,電流の瞬時値の2乗i(t)2に比例する。LPSの機
械構造物内に発生する応力は,弾性変形δ(t) と弾性係数kとの積で表し,この二つの影響を考慮すること
が望ましい。すなわち,機械的な固有周波数(LPS構造物の弾性的反応に関係する)及びLPS構造物の恒
久的な変形(可塑的反応に関係する)が最も重要なパラメータである。さらに,多くの場合において,構
造物中での摩擦力も非常に重要である。
雷電流に基づく電磁力が引き起こす弾性体であるLPS構造物の振動振幅は,2階の微分方程式で表現で
きる。重要な要因は,雷電流の継続時間とLPS構造物の自然な機械的振動周期との比である。LPSの適用
における代表的な状況は,加わる力の振動周期(雷電流の継続時間)よりも更に長い構造物の自然の振動
周期にある。このような場合には,最大機械的応力は電流の停止後に発生し,加わる機械力よりも小さい。
ほとんどの場合,最大機械的応力は無視できる。
可塑的な変形は,応力が材料の弾性限界を超えると発生する。LPS構造体を構成する材料がアルミニウ
ム又は焼きなました銅のように柔らかい場合には,電磁力によってコーナ部及びループにおける導体が変
形する。LPS構成部材は,これらの力に耐えるように,かつ,本質的に,弾性的な反応をするように設計
することが望ましい。
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LPSの構造に加わる全機械的応力は,加わる力の時間積分,すなわち,雷電流に関連した比エネルギー
による。全機械的応力は,また,雷電流の波形及び継続時間(建築物等の固有振動周期と比較)にも関連
する。これら全ての影響するパラメータを,試験中に考慮しなければならない。
D.4.2.2 音響的衝撃波によるダメージ
雷電流がアークを形成すると,衝撃波を形成する。衝撃の大きさは,電流波高値と電流の立ち上がりし
ゅん(峻)度に依存する。
一般的に,音響的衝撃波による損傷は,LPSの金属部分にはないが,周辺の物体への損傷の原因となる
ことがある。
D.4.3 複合的影響
実際には,熱的な影響及び機械的な影響は同時に発生する。構成部材(突針,クランプなど)の材料の
加熱が材料を軟化するのに十分な場合,大きな損傷が発生する可能性がある。極端な場合には,導体は瞬
時に溶融し,周辺にも損傷を及ぼす。金属の断面が,全般的な活動を十分安全に取り扱う場合には,機械
的な信頼性だけの確認が必要である。
D.4.4 火花放電
一般的には,火花放電は,可燃性の環境又は可燃物のある場所だけが重要である。多くの場合,LPS構
成部材において火花放電は重要ではない。
二つのタイプの火花放電が起こり得る。すなわち,熱的な火花放電及び電圧による火花放電である。熱
的な火花放電は,大電流が二つの導電性材料間の接合部分に加わると発生する。多くの熱的な火花放電は,
接合圧力が低すぎる場合に,主として高い電流密度及び不十分な接合面の圧力によって,接合部内部の端
部の近傍で発生する。熱的な火花放電の強度は,比エネルギーに依存するので,雷の最も危険な段階は第
1雷撃である。電圧による火花放電は,電流が複雑な経路を形成する場合に現れ,これはそのようなルー
プ内で誘起した電圧が,金属部品間の絶縁破壊電圧を超えたときに発生する。誘起電圧は,雷電流のしゅ
ん(峻)度と自己インダクタンスとの積に比例する。したがって,電圧による火花放電に対して最も危険
な落雷は,後続負極性雷撃である。
D.5 LPS構成部材の課題及び試験パラメータ
D.5.1 一般事項
LPSは,幾つかの異なる構成部材から成り立っており,それぞれの構成部材は,システムの中で特定の
機能をもっている。構成部材の特性及び構成部材がさら(曝)される特定の応力は,それらの性能を確認
するための実験室での試験を設定する場合,特別な考慮を必要とする。
D.5.2 受雷部
受雷部への影響は,機械的及び熱的影響(D.5.3に示すように,雷撃を受けた受雷部導体に雷電流のほと
んどが流れ込むことによる。)の両者によって発生する。また,ある場合には,受雷部への影響は,特に,
構造体利用の薄い金属屋根又は壁表皮面(孔があいたり,裏面の温度上昇が発生したりする可能性がある。)
及びつ(吊)り下げ形状(カーテンウォールなど)の受雷部導体のようなLPS構成部材において,アーク
による侵食の影響によって発生する。
アークによる侵食の影響では,主に二つのパラメータを考慮することが望ましい。すなわち,長時間継
続電流の電荷及びその継続時間である。
電荷量がアークの根の部分のエネルギー注入を支配する。特に,長い継続時間の雷撃は侵食に大きく影
響し,短い継続時間の雷撃の影響は無視できる。
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Z 9290-1:2014 (IEC 62305-1:2010)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
電流の継続時間は,材料への熱の伝達現象において重要な役割を果たす。試験中に適用する電流の継続
時間は,長時間雷撃と同等でなければならない(0.5秒〜1秒)。
D.5.3 引下げ導線
雷が引き起こす引下げ導線への影響は,次の二つの主な項目に分割できる。
a) 抵抗加熱による熱的な影響
b) 雷電流が近隣の引下げ導線に分割した箇所及び電流が向きを変えた時点における磁気的な相互作用に
関係した機械的影響(与えられた角度で配置した導体間の接合又は折れ曲がり)
多くの場合には,これらの二つの現象は独立して起こるため,各々の影響を確認するために分割して試
験することができる。この方法は,機械的特性が大きくは変化しない雷電流によって,全ての加熱試験に
適用可能である。
D.5.3.1 抵抗加熱
種々の断面積及び材料の違いによる,導体の雷電流による加熱に関連した計算及び計測は,幾人かの著
者が公表している。構想及び方程式に関する主な成果を,D.4.1.1にまとめている。そのため,一般的には,
導体の温度上昇に関連して導体の状態を確認するための試験は必要ない。
試験を要求する全ての場合において,次の検討を考慮しなければならない。
a) 考慮する主な試験パラメータは,比エネルギー及び雷電流継続時間である。
b) 比エネルギーは,雷電流に基づくジュール加熱による温度上昇を決定する。考慮する数値は,第1正
極性雷撃から得た値である。既存のデータは,正極性の雷撃を考慮して得ている。
c) 雷電流継続時間は,当該導体周辺の状態に関連して,熱交換過程において決定的な影響を及ぼす。通
常,雷電流は短時間のため,加熱過程は断熱現象と捉えることができる。
D.5.3.2 機械的影響
D.4.2.1に記載したように,機械的な相互作用は雷電流を流す導体間で発生する。その力は,導体を流れ
る電流値の積(又は,曲がった1本の導体の場合には,電流の2乗)に比例し,導体間の距離に反比例す
る。
導体がループ又は曲がっている場合は,目に見える影響が起こり得る。そのような導体に電流が流れる
と,ループを拡張したり,曲部を延伸したりする機械的な力が発生し,これを外側に曲げようとする。こ
の力が電流の大きさの2乗に比例する。電流の2乗に比例する電磁力とLPSの弾性特性に依存した応力と
の間の明確な識別をすることが望ましい。固有振動数が相対的に低いLPSでは,LPSに生じる応力は,電
磁機械力よりも極めて小さい。この場合には,断面積が現行の規格を満足する限りにおいては,実験室に
おいて直角に曲がった導体の機械的な状態を確認する必要はない。
実験室での試験を要求する全ての場合(特に,柔軟な材料)において,次の検討をしなければならない。
第1雷撃の三つのパラメータ,すなわち,電流継続時間,雷電流の比エネルギー,及び堅固なシステムで
は電流の波高値を検討する必要がある。
LPSの固有振動数の周期と比べる雷電流の継続時間は,変位に関してシステムの機械的反応の種類を,
次のように決定する。
a) 雷電流の継続時間がLPSの固有振動の周期よりも短い場合(雷電流によって,LPSが応力を受ける通
常の場合),システムの質量及び伸縮性は,変形及び機械的な応力を防ぎ,関連する機械的応力は,基
本的には,雷電流の比エネルギーに関連する。雷電流の波高値は,影響を制限する。
b) 雷電流の継続時間が固有振動の周期以上の場合,システムの変位は,加えた応力の波形に対してより
敏感である。この場合,雷電流の波高値及び比エネルギーを,試験で再現しなければならない。
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Z 9290-1:2014 (IEC 62305-1:2010)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
雷電流の比エネルギーが,LPSの弾性変形及び塑性変形を引き起こす応力を決定する。考慮する数値は,
第1正極性雷撃から得た値である。
堅固なシステムは,高い振動周波数をもち,雷電流の最大値がLPSの変位長を決定する。考慮する数値
は,第1正極性雷撃から得た値である。
D.5.3.3 接続部品
LPSの近隣導体間の接続部品は,非常に強い応力が発生した場合に,機械的及び熱的な弱点となる可能
性がある。
導体が直角になるような方法で設置した接合部の場合は,応力の主な影響は機械力に関連しており,そ
の力は,導体一式を引き伸ばそうとし,そして接続した構成部材と導体との間の摩擦力に逆らって接合部
分を引き離すように作用する。種々の部品の接合点で,アークの発生の可能性がある。さらに,小さな接
触面での電流の集中によって発生する加熱の影響は,非常に重要である。
実験室の試験は,複雑な相乗作用が発生した場合には,影響を個々に分離するのは困難であることを示
している。機械的な強さは,接合部分の局所溶融の影響を受ける。接続部品間の相対的変位は,アークの
進展及びそれによる激しい発熱を助長する。
有効なモデルがない場合,実験室での試験は,最も危険な状態における固有の雷電流のパラメータとで
きるだけ同等であることが望ましい。すなわち,雷電流の固有のパラメータを単独の電気試験によって実
施しなければならない。
この場合には,雷電流の波高値,比エネルギー及び継続時間の三つのパラメータを考慮する。
雷電流の波高値は,最大の力を決定する,すなわち,電磁力によって引張力が摩擦力を超えた後では,
LPSの最大の変位長を決定する。考慮する数値は,第1雷撃に関連する数値である。正極性の値を考慮し
て,既存のデータを取得する。
雷電流の比エネルギーは,電流が小さな領域に集中する接合面での加熱を決定する。考慮する数値は,
第1雷撃に関連する数値である。正極性の値を考慮して,既存のデータを取得する。
雷電流の継続期間は,摩擦力の限度を超過した後に,構造物の最大変位を決定し,材料への熱伝達現象
において重要な役割を果たす。
D.5.3.4 接地極
接地極の真の課題は,化学的腐食及び電磁機械力以外の力による機械的損傷に関連する。実用面では,
アーク根における侵食は重要ではない。代表的なLPSが,受雷部に対し複数の接地極を保有することを検
討しなければならない。雷電流は,幾つかの接地極に分流する。このため,アーク根における影響は少な
い。次の二つの主な試験パラメータを考慮することが望ましい。
a) 電荷量は,アーク根における注入エネルギー量を決定する。特に,長時間雷撃がこの構成部材に対し
最も厳しいため,第1雷撃の影響は無視できる。
b) 雷電流の継続時間は,材料への熱伝導現象において重要な役割を果たす。試験中に加える雷電流の継
続時間は,長時間雷撃のそれと同等であることが望ましい(0.5秒〜1秒)。
D.6 サージ防護デバイス(SPD)
D.6.1 一般事項
雷によって発生するSPDにおける応力の影響は,当該SPDの種類,特に,ギャップの有無に依存する。
D.6.2 スパークギャップをもつSPD
雷によるスパークギャップの影響は,次の二つの主要な項目に分ける。
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a) 材料の加熱,溶融及び蒸発による,ギャップ電極の侵食
b) 放電の衝撃波による機械的な応力
これらの現象は,主な雷電流パラメータの複雑な結び付きに関連するので,これらの影響を別々に調査
するのは極めて困難である。
スパークギャップでは,実験室の試験は,最も危険な状態における固有の雷電流パラメータと可能な限
り厳密に同等であるように行わなければならない。すなわち,全ての雷電流の固有のパラメータを単独の
電気的応力によって実施しなければならない。
このときに,電流波高値,電荷量,電流継続時間,比エネルギー及びインパルス電流の立ち上がりしゅ
ん(峻)度の五つのパラメータを考慮しなければならない。
電流波高値は,衝撃波の強さを決定する。考慮する数値は,第1雷撃と関係する数値である。現行のデ
ータは,正極性の雷撃を考慮したものである。
電荷量は,アークのエネルギー注入を決定する。アークのエネルギーは,アークの接触部分で,電極の
一部を加熱し,溶融し,場合によって蒸発させる。考慮する数値は,雷放電全体に関係する数値である。
しかし,長時間雷電流の電荷量は,多くの場合,低圧系統(TN,TT又はIT)によって,無視できる。
雷電流の継続時間は,電極全体への熱伝導現象及び溶融部の拡大の程度を決定する。
雷電流の比エネルギーは,アークの自己磁界による収縮及び電極表面とアークとの間の接触面で発達す
る電極プラズマジェット(多量の溶融物質を噴出する可能性がある。)を決定する。現行のデータは,正極
性の雷撃を考慮したものである。
注記 電力系統に使用するスパークギャップでは,電源周波数の続流が重要なストレス要因となるの
で,続流電流を考慮することが望ましい。
D.6.3 金属酸化物バリスタをもつSPD
雷電流による金属酸化物SPDへのストレスは,過電流及びフラッシオーバの二つの主な項目に分ける。
これらの各項目は,異なる現象によって発生し,異なるパラメータによって決定する故障モードによって
特徴付ける。金属酸化物SPDの故障は,最も弱い特性に関係するので,ほかの致命的なストレスとの間の
相互作用が発生する可能性はない。そのために,各故障モードの条件下での状態の確認をするための個別
試験を実施することが可能である。
過負荷は,デバイスの耐量を超える通過エネルギーによって発生する。ここでの超過エネルギーは,雷
電流そのものと関連する。しかし,電源系統に設置するSPDでは,雷電流の停止直後に,デバイスへの流
入する電源系統からの続流が,デバイスの致命的な損傷となる可能性がある。金属酸化物SPDは,抵抗の
電流電圧特性の負の温度係数に関連した印加電圧の下で,熱的な不安定性によって致命的な損傷を負う。
金属酸化物SPDの過負荷試験では,電荷量を一つの主要なパラメータとして,考慮する。
金属酸化物バリスタ本体の残留(制限)電圧がほぼ一定なので,電荷量がバリスタ本体へのエネルギー
注入量を決定する。考慮する数値は,雷放電に関連する数値である。
フラッシオーバ及びひび割れは,雷電流の大きさがバリスタ本体の耐量を超えたときに発生する。この
故障モードは,通常,接続部分に沿った外部フラッシオーバによって明らかとなり,ときには,接続部分
に垂直なクラック又は孔を生じてバリスタ本体を貫通する。この故障は主に,バリスタ本体の接続部分の
誘電体の破壊に連動している。
この雷現象のシミュレーションのために,雷電流の最大値及び継続時間の二つの主なパラメータを考慮
することが望ましい。
雷電流の最大値は,対応する残留電圧レベルによって,バリスタ本体の縁部分の最大の絶縁強度を超え
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るかどうかを決定する。考慮する数値は,第1雷撃に関する数値である。現行のデータは,正極性の雷撃
を考慮したものである。
雷電流の継続時間は,バリスタの縁部分に印加する誘電ストレスの継続時間を決定する。
D.7 LPS構成部材の試験に採用する試験パラメータの要約
表D.1は,各LPS構成部材の機能の運用中の最も危険な側面を要約したもので,実験室の試験において
再現することが望ましい雷電流パラメータを示す。
表D.3に示す数値は,雷撃点での重要な雷電流パラメータに関連している。
試験の値は,D.3で検討した分流係数の電流配分を考慮して,計算することが望ましい。
試験中に使用するパラメータの数値は,D.3に規定した式で示すように,電流の分流に関連した低減係
数を適用し,表D.1に示すデータに基づいて計算できる。
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Z 9290-1:2014 (IEC 62305-1:2010)
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附属書E
(参考)
各設置場所における雷サージ
E.1
概要
導体,SPD及び器具の選定のために,特定の設置場所での雷サージによる脅威を決めることが望ましい。
雷サージは,(一部の)雷電流と設備への誘導とによって発生する。これらの雷サージによる脅威は,使用
する構成部材の耐性レベル(必要な場合は,適切な試験によって定める。)よりも低くなければならない。
E.2
建築物等への落雷による雷サージ(損傷の発生源 S1)
E.2.1 外部導電性部材及び建築物等へ接続したラインを通過する雷サージ
雷電流は,大地へ流れるとき,接地極システム,外部導電性部材及び引込線へ,直接又は接続したSPD
を介して分流する。
I
k
I
×
=
e
F
············································································· (E.1)
ここに,
I: 当該LPSのクラスに関係する雷電流
IF: 分流電流
ke: 分流係数
各外部導電性部材又は引込線に分流する部分雷電流を式(E.1)によって算出する場合,keは,次の項目に
関係し,式(E.2)及び式(E.3)によって算出できる。
− 並列経路の数
− 地中埋設部分に対しては等価接地インピーダンス,又は架空部分が地中へ接続する場合の架空部分
に対しては接地抵抗
− 接地システムの等価接地インピーダンス
a) 地中引込みの場合
×
+
×
+
=
2
1
2
1
1
e
Z
Z
n
n
Z
Z
Z
k
························································ (E.2)
b) 架空引込みの場合
×
+
×
+
=
1
2
1
2
2
e
Z
Z
n
n
Z
Z
Z
k
························································ (E.3)
ここに,
Z: 接地システムの等価接地インピーダンス
Z1: 外部部分又は地中配線(表E.1)の等価接地インピーダ
ンス
Z2: 架空線を大地へ接続している接地設備の接地抵抗。接地
点の接地抵抗が不明の場合には,表E.1に示すZ1の値を
使用してよい(抵抗は接地点に関与する。)。
注記1 Z2の値は,上の式において各接地点に対して,
同等であるとみなす。そうでない場合には,よ
り複雑な式を必要とする。
n1: 外部導電性部材又は地中配線の総数
n2: 外部導電性部材又は架空配線の総数
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Z 9290-1:2014 (IEC 62305-1:2010)
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雷電流の半分が接地システムへ流れ込み,かつ,Z2=Z1と仮定すれば,外部導電性部材又はラインに対
するkeの値は,式(E.4)によって算出できる。
(
)
2
1
e
5.0
n
n
k
+
=
········································································· (E.4)
引込線(例えば電力線及び電話線)が,非シールド線又は金属管内に配線していない場合は,配線のn' 本
の各導体には雷電流が等しく分流する。
'
'
e
e
n
k
k=
················································································ (E.5)
ここに,
n': 導体の総数
引込口に接続したシールド線については,供給するシールド線のn' 本の導体の各線に対する,分流係数
ke' の値は,式(E.6)となる。
(
)
c
s
s
e
e
'
'
R
R
n
R
k
k
+
×
×
=
····································································· (E.6)
ここに,
Rs: シールドの単位長当たりの抵抗値
Rc: 内部導体の単位長当たりの抵抗値
注記2 芯線とシールドとの間の相互インダクタンスに起因する雷電流の分流において,この式はシ
ールドの役割を過小評価する可能性がある。
表E.1−大地抵抗率に対応した等価接地インピーダンス値Z及びZ1
ρ
(Ωm)
Z1 a)
(Ω)
LPS b) のクラスに対応した等価接地インピーダンス
Z
(Ω)
I
II
III
IV
100以下
8
4
4
4
200
11
6
6
6
500
16
10
10
10
1 000
22
10
15
20
2 000
28
10
15
40
3 000
35
10
15
60
注記 この表で示す値は,10/350 µsのインパルス波形条件(10/350 μs)による埋設導体1本の等価接地イン
ピーダンスである。
注a) 値は,長さ100 mを超える外部部品に対するものである。500 Ωmを超える高い抵抗率の土中にある
長さ100 m以下の外部部品に対し,Z1の値は,2倍となる。
b) 接地極システムは,JIS Z 9290-3の5.4に従う。
E.2.2 電源線における雷電流の分流に影響する要因
詳細な計算において,次に示す要因が雷サージの大きさ及び波形に影響を与える。
a) ケーブル長は,インダクタンス/抵抗(L/R)比によって,電流分流及び電流波形の特性に影響する
可能性がある。
b) 中性線と相導体とのインピーダンスの相違は,配線導体間の電流配分に影響する可能性がある。
注記1 例えば,中性線(N)が多点接地である場合,L1,L2及びL3と比較し,より小さいイン
ピーダンスであるN導体を通過する分流は50 %となる。残りの50 %の電流は,3本の配
線に17 %ずつ分流する。N,L1,L2及びL3が同じインピーダンスである場合には,各導
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体にはおおよそ25 %の電流が流れる。
c) 変圧器の巻線のインピーダンスが異なると電流配分に影響する(変圧器がSPDによってそのインピー
ダンスをバイパスしている場合は,この影響は無視してよい。)。
d) 変圧器の等価接地抵抗と負荷側の定格接地抵抗との関係は,電流配分に影響し得る(変圧器のインピ
ーダンスが低ければ低いほど,低圧配電系統に流れ込む雷サージ電流はより多くなる。)。
e) 並列した需要家が増えると,低圧配電系統の有効なインピーダンスが減少し,落雷時には,低圧配電
系統に流れ込む雷電流が増加する。
注記2 詳細は,JIS Z 9290-4の附属書Dを参照する。
E.3
建築物等に接続したラインに関係する雷サージ
E.3.1 ラインへの落雷による雷サージ(損傷の発生源 S3)
接続したラインへの直撃雷に対して,ラインの両方向への分流及び負荷機器の絶縁破壊を考慮すること
が望ましい。
Iimp値の選定は,Iimpの推奨値が雷保護レベル(LPL)に対応して適切であるところでは,低圧配電系統
では表E.2及び表E.3に示す値,通信系統では表E.3に示す値に基づくことができる。
表E.2−落雷による低圧配電系統への想定する雷サージ電流
LPL
(クラス)
低圧配電系統
ラインへの落雷又は近傍雷
建築物等への近傍雷a)
建築物等への落雷a)
損傷の発生源S3
(落雷)b)
波形:10/350 μs
(kA)
損傷の発生源
S4(近傍雷)c)
波形:8/20 µs
(kA)
損傷の発生源
S2(近傍雷)
(誘導電流)
波形:8/20 µs d)
(kA)
損傷の発生源
S1(落雷)
(誘導電流)
波形:8/20 µs d)
(kA)
III・IV
5
2.5
0.1
5
II
7.5
3.75
0.15
7.5
I
10
5
0.2
10
注記 全ての値は,各相導体に対するものである。
注a) ループ導体の配置及び誘導電流からの距離は,予想する雷サージの値に影響を及ぼす。
表E.2の値は,大規模建築物等内の各種の配置(幅5 m,ループ面積約50 m2)で,壁から1 m離れ,非遮
蔽の建築物等又はLPSを設置したビル(kc=0.5)の内側の,非遮蔽の短絡回路のループ導体に対するもので
ある。他のループ及び建築物等の特性及び値は,係数KS1,KS2,KS3(IEC 62305-2:2010のB.4参照)を掛け
合わせることが望ましい。
b) 値は,需要家及び多数導体(3相+中性線)と近接した最終の電柱への落雷の場合に対するものである。
c) 値は,架空線に対するものである。埋設線の値については,半減できる。
d) ループのインダクタンス及び抵抗は,誘導電流の波形に影響する。ループの抵抗を無視する場合,10/350 μs
の波形と仮定するのが望ましい。このような場合は,スイッチングタイプのSPDが誘導回路に取り付けてい
る場合である。
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表E.3−落雷による通信系統への想定雷サージ電流
LPL
(クラス)
通信系統a)
ラインへの落雷又は近傍雷
建築物等への近傍雷b)
建築物等への落雷b)
損傷の発生源
S3(落雷)c)
波形:10/350 μs
(kA)
損傷の発生源
S4(近傍雷)d)
波形:8/20 μs
(kA)
損傷の発生源
S2(近傍雷)
波形:8/20 μs
(kA)
損傷の発生源
S1(落雷)
波形:8/20 μs
(kA)
III・IV
1
0.035
0.1
5
II
1.5
0.085
0.15
7.5
I
2
0.160
0.2
10
注記 全ての値は,各相導体に対するものである。
注a) 詳細は,ITU-T Recommendation K.67[6] 参照。
b) ループ導体の配置及び誘導電流からの距離は,想定する雷サージの値に影響を及ぼす。
表E.2の値は,大規模建築物等内の各種の配置(幅5 m,ループ面積約50 m2)で,壁から1 m離れ,非遮
蔽の建築物等又はLPSを設置したビル(kc=0.5)の内側の,非遮蔽の短絡回路のループ導体に対するもので
ある。他のループ及び建築物等の特性及び値は,係数KS1,KS2,KS3(IEC 62305-2:2010のB.4参照)を掛け
合わせることが望ましい。
c) 値は,多くのペア線で非遮蔽ケーブルに対するものである。一対の非遮蔽の引込線に対しては,5倍にするこ
とができる。
d) 値は,非遮蔽の架空線に対するものである。埋設線の値は,半分にできる。
遮蔽線に対しては,表E.2に示す雷サージの値を0.5倍に減じることができる。
注記 シールドの抵抗は,並列に配列した全ての配電線導体の抵抗と,ほぼ等しいと仮定している。
E.3.2 配電線近傍への落雷による雷サージ(損傷の発生源 S4)
配電線近傍の落雷による雷サージのエネルギーは,配電線への落雷による雷サージ(損傷の発生源 S3)
によるエネルギーよりかなり小さい。
具体的な雷保護レベル(LPL)及び関係する推定雷サージ電流を表E.2に示す。
遮蔽線に対しては,表E.2及び表E.3に示す雷サージ電流の値は,0.5倍に減じることができる。
E.4
誘導効果による雷サージ(損傷の発生源 S1又はS2)
E.4.1 一般事項
磁界の誘導現象による雷サージは,建築物等の近傍への落雷によって発生(S2),又は外部LPS若しく
はLPZ 1の空間遮蔽に流れる雷電流によって発生(S1)し,その代表的な波形は,8/20 µsである。それら
の雷サージは,LPZ 1の内部及びLPZ 1とLPZ 2との境界の器具の端子又はその付近のものに加わる。
E.4.2 遮蔽していないLPZ 1の内側の雷サージ
遮蔽していないLPZ 1の内側(例えば,この規格による幅5 m超過のメッシュの外部LPSだけによる保
護)では,減衰のない磁界の誘導現象による比較的高い雷サージを予想する。
特定の雷保護レベル(LPL)に関係する過渡過電流の推定値を,表E.2及び表E.3に示す。
E.4.3 遮蔽したLPZの内側の雷サージ
効果的に空間遮蔽した(JIS Z 9290-4の附属書Aによる幅5 m未満のメッシュが必要)LPZの内側では,
磁界の誘導現象による雷サージの発生は大幅に減少する。そのような場合における雷サージは,E.4.2に示
す雷サージよりも低い。
LPZ 1の内側では,空間遮蔽の減衰効果によって誘導現象は低減する。
55
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LPZ 2の内側では,LPZ 1とLPZ 2との空間遮蔽のカスケード(重畳)効果によって雷サージは低減す
る。
E.5
SPDに関する一般的情報
SPDは,電源用ではJIS C 5381-11,通信回線用ではJIS C 5381-21で規定している電流耐量によって使
用する。
設備場所によって使用することが望ましいSPDは,次による。
a) 建築物等内への配線引込口(LPZ 1の境界,例えば主配電盤MB)
1) Iimpで試験したSPD(代表的な波形は10/350 μs),例えば,クラスIに従って試験したSPD
2) Inで試験したSPD(代表的な波形は8/20 μs),例えば,クラスIIに従って試験したSPD
b) 被保護機器の近傍(LPZ 2とそれ以上との境界,例えば,二次分電盤SB又はコンセントSA)
1) Iimpで試験したSPD(代表的な波形は10/350 μs),例えば,クラスIに従って試験したSPD
2) Inで試験したSPD(代表的な波形は8/20 μs),例えば,クラスIIに従って試験したSPD
3) コンビネーション波形で試験したSPD(代表的な電流波形は8/20 µs,電圧波形は1.2/50 µs),クラ
スIIIに従って試験したSPD
参考文献
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[2] JIS C 61000-4-5 電磁両立性−第4-5部:試験及び測定技術−サージイミュニティ試験
注記 対応国際規格:IEC 61000-4-5,Electromagnetic compatibility (EMC)−Part 4-5: Testing and
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イスの要求性能及び試験方法
注記 対応国際規格:IEC 61643-11,Low-voltage surge protective devices−Part 11: Surge protective
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[8] JIS C 5381-21 低圧サージ防護デバイス−第21部:通信及び信号回線に接続するサージ防護デバイス
(SPD)の要求性能及び試験方法
注記 対応国際規格:IEC 61643-21,Low voltage surge protective devices−Part 21: Surge protective
devices connected to telecommunications and signalling networks−Performance requirements and
testing methods(IDT)