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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格          JIS 

Z 8813-1994 

浮遊粉じん濃度測定方法通則 

Measuring methods for suspended particulate matter 

concentration in air-general requirements 

1. 適用範囲 この規格は,環境空気(以下,空気という。)中に浮遊する粉じん(1)の濃度を測定する方法

の一般要求事項について規定する。 

注(1) 空気中の粒子状物質(ここでは,ダスト,ヒューム,ミストを含む。)。 

備考 この規格の引用規格を,次に示す。 

JIS B 7954 大気中の浮遊粒子状物質自動計測器 

JIS B 9921 光散乱式自動粒子計数器 

JIS K 0901 気体中のダスト試料捕集用ろ過材の形状,寸法並びに性能試験方法 

JIS Z 8761 フロート形面積流量計による流量測定方法 

JIS Z 8762 絞り機構による流量測定方法 

JIS Z 8814 ロウボリウムエアサンプラ 

2. 用語の定義 この規格で用いる主な用語の定義は,次のとおりとする。 

(1) 総粉じん 一定流量で吸引する開口形の粉じん捕集装置によって捕集される粉じん。 

(2) 個数濃度 単位体積の空気中に浮遊する粉じん粒子の個数。単位は,個/cm3で表す。 

(3) 質量濃度 単位体積の空気中に浮遊する粉じんの質量。単位は,mg/m3で表す。 

(4) 相対濃度 質量濃度又は個数濃度と一定の相対関係にある物理量を,測定することによって得られる

質量濃度又は個数濃度と1対1の関係にあるもの。 

(5) 粒径 幾何的又は物理的性質に基づいて定められる粒子の大きさ。物理的性質によるものには,空気

力学径,ストークス径,光学的相当径などがある。単位はμmで表す。 

(6) 分粒 粉じんを粗大粒子(2)と微小粒子とに分離すること。 

注(2) 目的によって粒径10μm以上,7μm以上,5μm以上又は2μm以上などをいう。これら未満のも

のを粗大粒子に対して微小粒子という。 

(7) 粒径区分 特定の粒径より大きい粒子だけを選別して,個数濃度又は粒子数の測定を行う場合におけ

る粒径の選別範囲。粒径区分は粒径の値で表す。 

(8) 限界粒子径 分粒装置を通過することができる粒子の最大粒径。 

3. 測定対象 測定は,総粉じんを対象とする場合,分粒操作によってある範囲の粗大粒子(2)を除いたも

のを対象とする場合,及び粒径別濃度を求める場合とがある。 

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Z 8813-1994 

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4. 分粒方法の種類 分粒方法の種類は,次のとおりとする。 

(1) 重力沈降法 粗大粒子が重力によって沈降することを利用する方法。薄い平板を一定間隔で複数枚平

行に重ね合わせた構造の分粒装置を水平に保った状態で空気を吸引したとき,平行板の間を空気が通

り抜ける間に粗大粒子は板上に沈降し,測定する限界粒子径以下の粒子だけが通過する。この方法は,

主に粗大粒子の除去のために使用する。 

(2) 慣性衝突法 衝突板に粒子を含んだ空気を吹きつけたときに,慣性力の大きい粗大粒子か衝突板に捕

集されることを利用する方法。衝突ノズルの出口に衝突板をノズルと直角に配置した構造で,これに

空気を吸引し粗大粒子を衝突板に衝突させて捕集し,測定する限界粒子径以下の粒子を通過させるも

のである。この方法は,粗大粒子の除去及び粒径別の試料捕集の両方の目的のために使用する。 

(3) 遠心分離法 粗大粒子を遠心力によって取り除く方法。空気流が本体内部でらせん状に回転する構造

の分粒装置に空気を流したとき,粗大粒子は遠心力によって壁面に沿って下方に落下し,測定する限

界粒子径以下の粒子が通過するものである。この方法は主に粗大粒子の除去のために使用する。 

(4) 静電分粒法 イオン中で荷電した粒子を直流電界中に導き,粒子の電気的移動度の違いによって分粒

する方法。この方法は,主に微小な粒子の粒径別濃度を求めるものである。 

(5) 拡散分粒法 粒子が目の細かい管路,スクリーンなどを通過する際に,ブラウン拡散運動によって,

管壁及びスクリーン外壁に沈着され,粒径によって透過率が異なることを利用する方法。 

5. 測定方法の種類 測定方法は,大別して次の2種類とする。 

(1) 浮遊測定方法 空気中に浮遊する粉じんを浮遊状態のまま,その濃度を測定する方法で,表1による。 

表1 浮遊測定方法 

濃度測定方法 

測定方法の説明 

濃度表示 

自動化(5)の有無 

散乱光を測定す

る方法 

散乱光法 

単位時間当たりの散乱光量によって測定する。 

mg/m3(4) 

あり 

粒子計数法 

粒子個々の散乱光によって測定する。 

個/cm3 

あり 

吸光度を測定す

る方法 

吸光光度法 

透過光量を吸光光度計で測定する。 

mg/m3(4) 

なし 

その他の方法 

凝縮核計数法(3) 

凝縮成長させた微小粒子を散乱光によって測定する。 

個/cm3 

なし 

注(3) 測定器には,粒子計数器を用いる。 

(4) 相対濃度から求める。 
(5) JIS B 7954及びJIS B 9921に自動測定器として規定される方法。 

(2) 捕集測定方法 空気中に浮遊する粉じんを捕集して,その濃度を測定する方法で表2による。 

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表2 捕集測定方法 

捕集方法 

濃度測定方法(6) 

濃度表示 

自動化の有無(8) 

ろ過式 

ひょう量法 

mg/m3 

なし 

β線吸収法 

mg/m3 

あり 

吸光光度法 

mg/m3(7) 

あり 

計数法 

個/cm3 

なし 

フィルタ振動法 

mg/m3 

なし 

衝突式 

ひょう量法 

mg/m3 

なし 

圧電天びん法 

mg/m3 

あり 

計数法 

個/cm3 

なし 

静電式 

圧電天びん法 

mg/m3 

あり 

計数法 

個/cm3 

なし 

注(6) 濃度は,ひょう量法では天びん,β線吸収法ではβ線計

測装置,圧電天びん法では圧電結晶素子による電気的
計測,吸光光度法では吸光光度計,計数法では顕微鏡,
フィルタ振動法では振動ひょう量素子を用いて測定
する。 

(7) 相対濃度から求める。 
(8) JIS B 7954に自動測定器として規定される方法。 

6. 測定方法 

6.1 

浮遊測定方法 

6.1.1 

一般 浮遊測定方法のうち,質量濃度を求める方法としては,散乱光法又は吸光光度法を適用し,

個数濃度を求める方法としては,粒子計数法及び凝縮核粒子計数法を適用する。 

6.1.2 

散乱光法 散乱光法では,浮遊粉じんに光を照射し,粉じんから発した散乱光の量を,次によって

測定する。この散乱光の強さを光電変換素子で電気信号に変換して計測し,相対濃度として表示する。 

(1) 装置 図1に示すような構成で,空気吸引口,分粒部,光源部,受光部,吸引ファンなどからなる。

光源として白色光,レーザなどを用いる。受光部は光電変換素子などで散乱光を検出し,電気信号に

変換する。 

図1 散乱光法の装置の構成例 

(2) 測定方法 空気を吸引しながら粉じんによる散乱光を連続的に測定し,光電変換して積算することに

よって瞬時値〜1時間の周期で粉じん濃度を求める。この測定法での粉じん濃度は単位時間のカウン

ト数(例えば,counts per minute : c. p. m)として相対濃度で表されるので,変換係数を乗じて質量濃

度を求める。 

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6.1.3 

吸光光度法 吸光光度法では,浮遊粉じんに光を照射し,粉じんによる光の減衰量を次によって測

定する。この光の透過率の変化を光電変換素子で電気信号に変換して測定し,相対濃度として表示する。 

(1) 装置 図2に示すような構成で,トンネル・暗箱などの両側に対立させた光源と受光部とを設置し,

光源からの光を受光部で測定する。 

(2) 測定方法 高濃度の粉じんを含む空気に光を照射し,粉じんによる光の透過率を連続的に測定する。

粉じんの濃度を,光の透過率の対数値に比例する相対濃度として求める。 

図2 吸光光度法の装置の構成例 

6.1.4 

粒子計数法 粒子計数法では,極めて清浄な環境の測定に用いる。この方法では,次によって,空

気を細く乱れがない流れにしてレーザなどの強いビームと交差させ,浮遊粉じんの1個1個の散乱光を検

出し,散乱光の発生回数から個数を,また散乱光の強さから粒径を測定し,単位体積の空気中に含まれる

粒子数と粒径分布を求める。 

(1) 装置 図3に示すような構成で,少なくとも光源,空気吸引系,照射及び集光用の光学系,光電変換

部,波高分析部,内部参照光発生部並びに試験用入出力端子をもつものとする。光源としては,白色

光又はレーザを用いる。 

図3 粒子計数法の装置の構成例 

(2) 測定方法 粒子計数法では,約0.1μmから10μm程度までの粒径範囲について粒径区分を分け,粒子

濃度又は粒子数を測定する。白色光を用いた装置では測定可能最小粒径は約0.3μm,レーザを用いた

装置では約0.1μmである。検出する粒子数が少なくとも数十個以上となるように測定時間を選ぶ。測

定結果は,単位体積当たりの特定粒径(例えば,0.5μmなど)より大きい粒子の総個数で表示する。

粒子計数器は測定可能な最大個数濃度に限界がある(例えば,1 000個/cm3)。 

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6.1.5 

凝縮核粒子計数法 凝縮核粒子計数法は,次によって,微小粒子を過飽和蒸気雰囲気中で凝縮成長

させ,6.1.4の光散乱粒子計数法で検出する。凝縮形成させる方法として加熱冷却形と蒸気混合形とがある。

加熱冷却形では微粒子を高温のn-ブチルアルコール蒸気中に通し,これを凝縮管で冷却することによって,

蒸気混合形では,常温(5ないし35℃)の試料空気と高温のアルコール蒸気とを混合することによってそ

れぞれ過飽和雰囲気を形成して,空気中の微粒子を核として凝縮成長させる。凝縮核粒子計数法は微粒子

が低濃度で存在するような濃度測定に適しているが,測定値として得られる情報は,測定可能な最小粒径

以上の総個数濃度であり,粒径に関する情報は含まれない。 

(1) 装置 図4に示すような構成で,空気吸引部,飽和部(サチュレータ),凝縮部及び粒子計数器からな

る。 

図4 凝縮核粒子計数法の装置の構成例 

(2) 測定方法 測定開始までに測定装置を予熱するとともに,測定開始前に1分間以上吸引を行い,吸引

系内の微粒子が平衡状態に達するようにしてから,測定を実施する。 

6.2 

捕集測定方法 

6.2.1 

捕集方法 捕集方法は,次による。 

(1) ろ過式 試料空気をJIS K 0901に規定するろ過材を通して吸引し,ろ過材上に粉じんを捕集する方式。

吸引流量によって,ロウボリウムエアサンプラ (JIS Z 8814) 又はハイボリウムエアサンプラを用いる。 

(2) 衝突式 試料空気を衝突板上に衝突させ粉じんを捕集する方式。粉じんの付着を容易にし,再飛散を

防止するために付着面に粘着性物質を塗布する形式,粒子の(動力学的)粒径によって慣性が異なる

ことを利用して粒径別に捕集する多段多孔式インパクタなどがある。 

(3) 静電式 高電圧によって粉じんに帯電させ,静電気力によって粉じんを捕集する方式。荷電するため

の方法としては直流又は周期的な電圧印加のコロナ放電などを用い,正の電荷を与えた後,捕集部で

加えられた電界によって光学顕微鏡用のスライドグラス,プラスチック,金属板などに粉じんを捕集

する。 

6.2.2 

濃度測定方法 濃度測定方法は,次による。 

(1) ひょう量法 次によって,ろ過材又は衝突板に捕集した粉じん質量を捕集前後のひょう量差から求め,

吸引量で除して質量濃度を求める。 

(1.1) 装置 0.01mgまで測定できる天びん。ただし,測定対象によってはこれよりも感度の悪い天びんを

使用してもよい。 

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(1.2) 測定方法 粉じん捕集前後のろ過材は,恒温恒湿の室内に24時間以上放置した後,素早くひょう量

する。粉じん捕集前後のひょう量値の差を粉じん質量とする。恒湿方法は空気調和によるか,デシ

ケータを用いる場合は適当な調湿剤を使用する。 

また,このほか,105〜110℃で1時間,電気乾燥器中,又は常温で2〜3日間,シリカゲル入りの

デシケータ中で乾燥させる方法などでもよい。揮発性物質を含む場合は注意を要する。測定方法に

は,次の方法を用いる。 

(a) ロウボリウムエアサンプラによる測定方法 図5に示す構成例による測定では,吸引流量は毎分数

l以上,通常毎分20〜30lで空気をろ過する。粉じん捕集前後のろ過材の質量差をひょう量法によっ

て測定し,吸引量から粉じん濃度を求める。捕集時間は一般環境では数日間,粉じん濃度の高い作

業環境では,数時間程度の短い測定時間を設定する。分粒する場合には,4.(1)〜(3)の分粒装置で粉

じんを10μm又は7μmに分粒して捕集する。 

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図5 ロウボリウムエアサンプラの構成例 

各部の構成 

(b) ハイボリウムエアサンプラによる測定方法 図6に示す構成例による測定では,吸引流量は毎分

0.3m3以上通常1m3前後で空気をろ過する。粉じん捕集前後のろ過材の質量差をひょう量法によっ

て測定し,吸引量から粉じん濃度を求める。捕集時間は,一般に8時間又は24時間とする。 

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図6 ハイボリウムエアサンプラの構成例 

(c) 多段多孔式インパクタによる測定方法 図7に示す構成例による測定では,分粒ステージの細孔を

通過した粉じんは慣性衝突して衝突板上に捕集され,下段になるに従って径が小さくなり通過空気

の流速が早くなることで細かい粒子まで捕集でき,最終的にはろ過材で捕集し,規定した吸引流速

を維持することによって所定の分粒特性が得られる。粉じん捕集前後の衝突板の質量差をひょう量

法によって求め,吸引流量から粉じん濃度を求める。 

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図7 多段多孔式インパクタの構成例 

(2) 計数法 ろ過材又は衝突板に捕集した粉じんの単位面積当たりの個数を顕微鏡を用いて計数し,吸引

量で除して個数濃度を得る。計数法は,次による。 

(2.1) 装置 接眼ミクロメータを装着した,倍率が50〜400倍程度の光学顕微鏡,又は最小粒径0.2μmが

十分に測定できる分解能力の電子顕微鏡を用いる。 

(2.2) 測定方法 光学顕微鏡による場合は,衝突板(ガラス製)又はろ過材に捕集した粉じんについて格

子形ミクロメータの区画を用いて単位面積当たりの粒子数を計測する。この場合,代表的に選んだ

区画(ただし,10区画以上)について計数を行い,全計数値が500を超えることが望ましい。目的

によって粒径5μm以上の粗大粒子だけを計数してもよい。電子顕微鏡による場合は,捕集した粉じ

んを金又はその他の導電性材料で蒸着した後,視野の中の粒子数を計数する。 

(3) β線吸収法 ろ過材に捕集した粉じんによるβ線の吸収量の増加から質量濃度としての指示値を得る。

空気中の浮遊粒子状物質自動計測器の一つとして使用される。β線吸収法は,次による。 

(3.1) 装置 図8に示す構成例のように,粉じん捕集機構,ろ紙供給機構,β線源,検出部,演算制御部

などからなる。粉じん捕集機構は,試料空気を吸引し,ろ紙上に粉じんを捕集するもので試料導入

部及び吸引ポンプなどである。ろ紙供給機構は,リールに巻いたテープ状のろ紙を一定時間ごとに

左右又は一定方向に一定の長さだけ移動させ,測定が済むと巻取りリールにろ紙を巻き取る。β線

源は,14C,147Pmなどの低いエネルギーの密封線源を使用する。検出部は,粉じん採取前後のろ紙

によって吸収するβ線の強さを測定するもので,シンチレーション検出器,電離箱,半導体検出部

などを使用する。演算制御部は,自動測定のための信号を各構成部に送る。 

図8 β線吸収法の装置の構成例 

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(3.2) 測定方法 β線吸収法は,テープ状のろ紙に粉じんを捕集し,その部分のβ線吸収量から捕集前のろ

紙のβ線吸収量を引くことによって捕集粉じん質量を求める。一般に1時間の測定周期の自動測定

器を使用する。吸引流速は,毎分20l程度とし,総吸引量から粉じん濃度を求める。 

(4) 圧電天びん法 圧電天びん法は,次による。粒子の付着による水晶振動子の振動数の低下から質量濃

度としての指示値を得る。 

(4.1) 装置 図9に示す構成例のように,等速吸引機構,粉じんの捕集部・検出部,洗浄機構,高圧回路,

演算制御部などからなる。等速吸引機構は,試料導入管内部における粉じんの沈着を防ぐために,

一定の流量で検出部近くまで試料空気を導入し,その一部を等速吸引流量で検出用試料空気として

分岐して検出器に導く。高圧回路は,粉じんを静電捕集するため針状の放電電極によって高電圧を

発生させ,粉じんを帯電させる。粉じんの捕集部・検出部は,検出器となる水晶振動子の表面に電

極を設け,高周波発振器及び周波数検出器と接続する。洗浄機構は,水晶振動子の上に静電捕集し

た粉じんを一定時間又は一定たい(堆)積量ごとに洗い流すための機構。演算制御部は,自動測定

のための信号を各構成部に送るもので,携帯形の測定器には演算制御部は備えていない。 

図9 圧電天びん法の装置の構成例 

(4.2) 測定方法 1時間の測定周期の自動測定器,又は数分程度の可変測定時間をもつ携帯式測定器を用

いる。検出器に粉じんがたい(堆)積するに従って所定の測定感度が得られなくなることを防ぐた

め,測定開始前及び測定途中に適時,検出器の洗浄・乾燥を行う。 

(5) 吸光光度法 吸光光度法は,次による。ろ紙上に捕集した粉じんによる吸光量から相対濃度としての

指示値を得る。 

(5.1) 装置 図10に示す構成例のように,粉じん捕集機構,ろ紙供給機構,光源,光源定電圧回路,検出

器,演算制御部などからなる。光源には,白色光を用いる。 

図10 吸光光度法の装置の構成例 

(5.2) 測定方法 テープ状のろ紙に粉じんを捕集し,その部分の吸光量から捕集前のろ紙の吸光量を差し

引き,吸引量で除して相対濃度を得る。 

(6) フィルタ振動法 固有の周波数で振動しているフィルタ上へ粒子を捕集し,振動数の減衰量から質量

濃度としての指示値を得る。校正は,必要なく,測定範囲は10μg/m3ないし5g/m3と広く,また,瞬

時測定のほか30分,1時間,8時間,24時間値の表示記録もできる。ろ過材の吸引流量は3l/min,ま

た,0.5ないし5l/minと可変なので数週間の連続測定もできる。フィルタ振動法は,次による。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

(6.1) 装置 図11に示す構成例のように,加熱部,粉じんの捕集部・検出部,演算制御部などからなる。

加熱部は,試料空気を適当な温度に加熱して水分の影響を除く。粉じんの捕集は,16.7l/minで吸入

しインパクタで10μm以上の粉じんを除去した後,分留し,3l/minを検出部へ導入する。残り16.7l

はフィルタ捕集し,分析などに使用する。 

図11 フィルタ振動法の装置の構成例 

(6.2) 測定方法 捕集部とともに固有の振動数で振動している振動素子の振動数の減衰量を,計測し捕集

量を求める。分岐した後,検出部に導入した粉じんをテーパー形振動素子に固定したろ過材で捕集

する。このろ過材とともに固有の周波数で振動している振動素子の周波数の減衰量を,計測して自

動的に連続して測定する。 

6.2.3 

粉じん濃度の計算 粉じん濃度の計算は,次による。 

(1) 粉じん濃度の求め方 ひょう量法及び計数法によって得た粉じんの質量,又は粒子数を吸引流量で除

して,粉じんの質量濃度,又は粉じんの個数濃度を次によって求める。 

(a) ひょう量法の場合 

粉じん濃度=

V

W

W

1

2−

 (mg/m3) ····················································· (1) 

ここに, 

W2: 捕集後のろ過材の質量 (mg) 

W1: 捕集前のろ過材の質量 (mg) 

V: 吸引流量 (m3) 

(b) 計数法の場合 

粉じん濃度=

V

m

n

N

(個/cm3) ··················································· (2) 

ここに, 

N: 計画した区画の全計測粉じん数(個) 

n: 測定した区画の面積 (cm2) 

m: 粉じんを捕集した全面積 (cm2) 

V: 吸引流量 (cm3) 

(c) 相対濃度から質量濃度への変換係数 測定値を相対濃度として得る方式の測定器では,相対濃度を

質量濃度に変換するための変換係数をあらかじめ決定しておき,相対濃度にこれを乗じて質量濃度

の値に変換する。換算係数を求めるには,捕集測定装置と相対濃度計とを吸引口の方向及び高さを

同一にして,同時並行測定を行う。捕集装置で得られた質量濃度 (C) と相対濃度計で得られた相対

濃度 (R) とから,質量濃度変換係数 (K) を,次の式によって求める。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

K=RC····················································································· (3) 

(2) 吸引量の求め方 吸引量は,次によって求める。 

(2.1) フロート形面積流量計を用いる場合 JIS Z 8761に規定する方法で吸引流量を求め,得られた吸引

流量と捕集時間との積から吸引量を求める。 

(2.2) 絞り流量計を用いる場合 JIS Z 8762に規定する方法で吸引流量を求め,得られた吸引流量と捕集

時間との積から吸引量を求める。 

(2.3) 積算流量計を用いる場合 湿式又は乾式ガスメータによって次によって求める。 

(a) 湿式ガスメータを使用した場合 

3

20

10

3.

101

273

293

'

×

+

×

+

×

V

m

a

m

m

P

P

P

V

V

θ

 ········································ (4) 

(b) 乾式ガスメータを使用し,その前で空気を乾燥させた場合 

3

20

10

3.

101

273

293

'

'

×

+

×

+

×

m

a

m

m

P

P

V

V

θ

 ·············································· (5) 

ここに, 

V'20: 20℃における吸引した乾き空気量 (m3) 

Vm: 吸引した湿り空気量(湿式ガスメータの読み) (l) 

V'm: 吸引した乾き空気量(乾式ガスメータの読み) (l) 

θm: ガスメータにおける吸引空気の温度 (℃) 

Pa: 大気圧 (kPa) 

Pm: 積算流量計における空気のゲージ圧 (kPa) 

Pv: θmの飽和水蒸気圧 (kPa) 

7. 濃度測定の際の注意事項 

7.1 

光学的測定方法による場合 

7.1.1 

測定対象以外の粒子による誤差 光学的に粉じん濃度を測定する場合には,空気中に浮遊している

もの(例えば,水滴,煙)をすべて測定することに注意しなければならない。 

7.1.2 

質量濃度への変換による誤差 吸光度,又は散乱光の強さを質量濃度に換算する際には,粉じんの

色,比重,大きさ,形,凝集状態などの影響を受ける。このために,相対濃度値及び質量濃度値の換算係

数が適当でないと誤差を生じる。 

7.2 

捕集測定方法による場合 

7.2.1 

捕集率の変動 捕集測定方法による測定器の捕集率は,機種によって異なるほか,取扱方法,ろ過

材の種類,粉じんの比重,大きさ,形,凝集状態など,又はそのときの環境条件(例えば,湿度,風速)

によって変動することがある。ろ過捕集の場合では,JIS K 0901の5.(性能試験方法)に規定する方法に

よって0.3μmの試験用粒子によって捕集率の測定を行ったろ過材を使用するもので,この捕集率が通常

99%以上では一般的な用途には問題はないが,測定対象の粉じんがさらに細かい粒子を多く含む場合など

には,より適切なろ過材を使用することが必要である。 

7.2.2 

採気による誤差 流量計には,いろいろの形式があるが,主としてフロート形面積流量計,絞り流

量計及び積算流量計が使われる。これらの流量計は,気体の圧力,温度によって測定値に変動を生じるか

ら注意を要する。 

また,排気側に流量計がある場合には,流路に温度変化があれば気体体積が変化するから入気状態に換算

しなければならない。 

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Z 8813-1994 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

7.2.3 

計数誤差 計数時には,次のような誤差を生じる。 

(1) 計数者間の差。 

(2) 計数する粒径範囲によって測定値が異なる。 

(3) 粉じんを部分計数することによって,全粉じん数を求める場合には統計誤差が入る。 

7.2.4 

ひょう量の誤差 ひょう量は,一般には0.01mgが測定できる天びんを用いるが,次のような誤差

が考えられる。 

(1) 試料粉じんが少ないと,ひょう量の誤差が大きくなるので,試料粉じんの質量は天びんの感量の20

倍以上あることが望ましい。 

(2) ひょう量に際して,試料粉じんの質量及びろ過材の質量は,湿度によって変化を生じるから,注意を

しなければならない。 

(3) ろ紙の種類によっては,静電気の影響を受けるものがあるから,注意しなければならない。例えば,

ふっ素樹脂系メンブランろ紙。 

(4) ろ紙の種類によっては,二酸化硫黄などのガスを吸着するものがあるから,注意しなければならない。

例えば,ガラス繊維製ろ紙。 

7.3 

その他の誤差 その他の誤差には,次のようなものがある。 

(1) 測定器の取扱い及び保全の良否 測定器の取扱い及び保全が不適切であると,測定値に誤差を生じや

すいので,具体的には,流量計,検出部の校正をするなどの注意が必要である。 

(2) 粉じんの時間的及び空間的変動による誤差 粉じん濃度は,時間的にも空間的にも絶えず変動するか

ら,測定の目的に応じた測定計画を立て,これに適した測定を行わなければならない。 

(3) 導管による誤差 必要とする測定位置で直接測定できない場合は,導管によって含じん空気を導かな

ければならない。この場合には,管壁への付着などのため誤差を生じるから,やむを得ない場合に,

導管を使用しない(使用するときは,できるだけ長さが短く,曲がりの少ないものを使用)。 

8. 測定結果の記録 測定結果には,次の事項を記録する(例)。 

(1) 測定年月日及び測定者名 

(2) 測定場所又は地点 

(3) 測定方法の種類 

(4) 測定装置の名称,製造業者名及び形式 

(5) 測定装置の特性及び校正方法 

(6) 採取条件(吸引流量,吸引時間) 

(7) 環境条件(天候,風向風速,気温,気圧,湿度など) 

(8) 分粒の有無及び測定対象粒径範囲 

(9) 試料導入管の使用の有無 

(10) その他(換気の有無,喫煙のような発生源の有無など) 

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Z 8813-1994 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

JIS Z 8813 原案作成委員会 構成表 

氏名 

所属 

(委員長) 

本 間 克 典 

労働省産業医学総合研究所 

名古屋 俊 士 

早稲田大学 

片 岡 哲 雄 

労働省労働基準局 

○ 高 木 譲 一 

通商産業省工業技術院 

○ 入 江 建 久 

国立公衆衛生院 

田 森 行 男 

資源環境技術総合研究所 

○ 朝来野 国 彦 

東京都環境科学研究所 

村 野 健太郎 

環境庁国立環境研究所 

○ 大 歳 恒 彦 

財団法人日本環境衛生センター 

○ 木 村 啓之介 

社団法人日本作業環境測定協会 

山 本 和 義 

中央労働災害防止協会 

末 富   宏 

日本鋼管株式会社 

岡 村 勝 郎 

集塵装置株式会社 

○ 森   正 樹 

電気化学計器株式会社 

○ 紀 本 岳 志 

紀本電子工業株式会社 

○ 星 名 民 雄 

リオン株式会社技術統括部 

○ 渡 辺 幸 吉 

柴田化学器械工業株式会社 

○ 佐 藤 行 成 

日本科学工業株式会社 

○ 白 井   忠 

東京ダイレック株式会社 

○ 三 上 圭 二 

社団法人日本保安用品協会 

備考 ○印を付けた委員は,小委員を兼ねる。