Z 8736-1:1999 (ISO 9614-1:1993)
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,通商産業大臣が制定した日
本工業規格である。
JIS Z 8736-1には,次に示す附属書がある。
附属書A(規定) 音場指標の計算
附属書B(規定) 必要な測定精度を得るための手順
附属書C(参考) 気流が音響インテンシティ測定に及ぼす影響
附属書D(参考) 測定面内の吸音の影響
附属書E(参考) 文献
JIS Z 8736群は,規格名称の前づけ及び主題を,“音響−音響インテンシティによる騒音源の音響パワー
レベルの測定方法”とし,次の各部からなる。
第1部:離散点による測定
第2部:スキャニングによる測定
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
Z 8736-1:1999
(ISO 9614-1:1993)
音響−音響インテンシティによる
騒音源の音響パワーレベルの
測定方法−
第1部:離散点による測定
Acoustics−Determination of sound power levels of
noise sources using sound intensity−
Part 1 : Measurement at discrete points
序文 この規格は,1993年に第1版として発行されたISO9614-1, Acoustics−Determination of sound power
levels of noise sources using sound intensity−Part 1 : Measurement at discrete pointsを翻訳し,技術的内容及び
規格票の様式を変更することなく作成した日本工業規格である。
なお,この規格で点線の下線を施してある“参考”は,原国際規格にはない事項である。
1. 適用範囲
1.1
この規格は,音響パワーレベル測定の対象とする騒音源を取り囲んで設定した測定面に垂直な音響
インテンシティの成分を測定する方法を規定する。その結果から,1オクターブバンド,1/3オクターブバ
ンド又はA特性音響パワーレベルを求める。この方法は,物理的に固定した測定面が設定でき,その面上
で騒音が時間的に定常(3.13で規定)であるようなすべての音源に適用できる。被測定音源の定義は測定
面の設定による。この測定方法は,実際に音源が設置されている現場,特別な目的をもつ試験環境のいず
れにおいても適用できる。
1.2
この規格は,音源の発生音の時間的変動が音響インテンシティの測定精度を著しく低下させるほど
大きくはなく,また,測定プローブが著しい速度及び変動を伴う気流にさらされるようなことのない環境
(5.3及び5.4参照)に設置されている音源の測定に適用できる。
この規格で要求する測定条件を満たすことができない場合もある。特に,測定時間内で外部騒音のレベ
ルが著しく変動する場合などである。このような場合には,この規格で規定する測定方法は,音源の音響
パワーレベルの測定に適用できない。
備考 上記のような場合には,その他の方法,例えば,ISO/TR 7849に規定されている音源表面の振
動レベルから音響パワーレベルを求める方法などが適用できる。
1.3
測定精度を評価するために,この規格では音響パワー測定に関する補足的な試験方法を附属書Bに
規定する。その結果を測定の質,すなわち,精度のグレードを示すために用いる。この規格で規定する条
件が満たされない場合には,指定する方法に従って測定方法を変更する。
2
Z 8736-1:1999 (ISO 9614-1:1993)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す
る。これらの引用規格のうちで,発行年を付記してあるものは,記載の年の版だけがこの規格の規定を構
成するものであって,その後の改正版・追補には適用しない。
JIS C 1515 音響校正器
備考 IEC 60942 : 1988, Sound calibratorsが,この規格と一致している。
ISO 5725 : 1986, Precision of test methods−Determination of repeatability and reproducibility for a standard
test method by inter-laboratory tests
IEC 61043 : 1993, Electroacoustics Instruments for the measurement of sound intensity−Measurements with
pairs of pressure sensing microphones
参考 上記のIEC規格番号は,1997年1月1日から実施のIEC規格新番号体系によるものである。
これによって前に発行された規格については,規格票に記載された規格番号に60000を加えた
番号に切り替える。これは番号だけの切替えであり内容は同一である。
3. 定義 定義は,次による。
3.1
音圧レベル (sound pressure level) Lp 基準音圧の二乗に対する平均二乗音圧の比の常用対数を10倍
した値で,単位はデシベル (dB)。基準音圧は20μPaとする。
3.2
瞬時音響インテンシティ (instantaneous sound intensity)
)
(t
Iρ
ある点における瞬時的な粒子速度
の方向に,単位断面積を通過する単位時間当たりの音響エネルギーの瞬時値 (W/m2)。この量は,ベクトル
量で,ある点の音圧と粒子速度の瞬時値の積に等しい。
)
(
)
(
)
(
t
u
t
p
t
I
ρ
ρ
=
·········································································· (1)
ここに,
p (t): 音圧の瞬時値 (Pa)
uρ (t): 粒子速度の瞬時値 (m/s)
t: 時刻 (s)
3.3
音響インテンシティ (sound intensity) Iρ 時間的に定常な音場における
)
(t
Iρ
の時間平均値。
∫
∞
→
=
T
T
dt
t
I
T
I
0
)
(
1
lim
ρ
ρ
····································································· (2)
ここに, T: 積分(平均化)時間
また,Iρの符号付き大きさをIと表す。符号は,向きを示し,エネルギー流の正の向きの取り方によっ
て決まる。
│I│は,Iρの符号なし大きさ(絶対値)である。
3.4
ノーマル音響インテンシティ (normal sound intensity) In 法線ベクトルnρで表される測定面に対し
て垂直方向の音響インテンシティの成分。
n
I
In
ρ
ρ
=
·················································································· (3)
ここに,
nρ: 測定面から外向きの単位法線ベクトル
3.5
ノーマル音響インテンシティレベル (normal sound intensity level) LIn ノーマル音響インテンシテ
ィの絶対値│In│をレベル表示した値で,式(4)で定義される。単位はデシベル (dB)。
dB
I
I
L
n
In
=
0
10
log
10
·································································· (4)
3
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ここに, I0: 音響インテンシティの基準値 (=10-12W/m2)
Inが負の場合には,δpIo(3.11参照)の評価に用いる場合を除いて,レベルは (−) XX dBと表示する。
3.6
音響パワー (sound power)
3.6.1
部分音響パワー (partial sound power) Pi 測定面上の一つの面要素を通過する単位時間当たりの
音響エネルギー流の時間平均値で,式(5)で定義される。
i
ni
i
i
i
S
I
S
I
P
=
=
ρ
ρ
······································································· (5)
ここに, Ini: 測定面上のi番目の測定点で測定されるノーマル音響インテン
シティの符号付き大きさ
Si: i番目の測定点が代表する面要素の面積 (m2)
3.6.2
音響パワー (sound power) P この規格で規定する方法によって測定される音源の全放射音響パワ
ー(音響出力)で,式(6)及び式(7)で定義される。
∑
=
=
N
i
iP
P
1
················································································· (6)
∑
=
=
N
i
iP
P
1
··············································································· (7)
ここに, N: 測定面の面要素の総数
3.6.3
音響パワーレベル (sound power level) Lw この規格で規定する方法によって測定される音源の音
響パワーをレベル表示した値で,式(8)で定義される。単位はデシベル (dB)。
dB
P
P
LW
0
10
log
10
=
····································································· (8)
ここに,
│P│: 音源の音響パワーの絶対値
P0: 基準の音響パワー (=10-12W)
Pが負の場合には,記録の便宜上,レベルは (−) XX dBと表示する。
備考 Pの値が負となった場合には,この規格を適用することはできない。
3.7
測定面 (measurement surface) 音響インテンシティ測定を行うための仮想的な面で,音源を完全に
包み込むように設定する。音響的に剛で連続的な面と一体となって音源を囲んでもよい。剛な面をもつ物
体が仮想面を貫通する場合には,物体と仮想面の交差部分を測定面の端部とする。
3.8
面要素 (segment) 測定面を分割した面で,その面ごとに一つの測定点を設定する。
3.9
外来インテンシティ (extraneous intensity) 測定面の外部にある音源の寄与による音響インテンシ
ティ。
3.10 プローブ (probe) 測定システムの一部である音響インテンシティのセンサ。
3.11 音圧−残留インテンシティ指数 (pressure-residual intensity index) δpIo 音場内でプローブを音響イ
ンテンシティが0となるような向きに設置したときに測定されるLpとLIとの差。単位はデシベル (dB)。
δpIo= (Lp−LI) ·········································································· (9)
δpIoの測定方法は,IEC 61043に詳しく規定されている。
3.12 ダイナミック性能指数 (dynamic capability index) Ld 式(10)で定義される量で,単位はデシベル
(dB)。
4
Z 8736-1:1999 (ISO 9614-1:1993)
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Ld=δpIo−K ············································································· (10)
K(バイアス誤差係数)は,必要とする測定精度に応じて,表1に示す値とする。
5
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表1 バイアス誤差係数K
測定精度
バイアス誤差係数dB
精密級(グレード1)
10
実用級(グレード2)
10
簡易級(グレード3)
7
3.13 定常信号 (stationary signal) この規格では,それぞれの測定点における時間平均値が,平均化時間
を測定面上のすべての測定点における測定に要する時間に延長した場合にその点で測定される値と等しけ
れば,信号は定常であるとみなす。反復的又は周期的な信号でも,個々の測定点における測定時間を信号
の繰返し周期の少なくとも10倍以上にとれば,定常とみなしてよい。
3.14 音場指標 (field indicator) F1〜F4 附属書A参照。
4. 一般測定条件
4.1
騒音源の大きさ 騒音源の大きさは,制限しない。騒音源の範囲は,測定面の設定によって決まる。
4.2
音源の発生騒音の特性 被測定音源の発生音は,定常(3.13参照)でなくてはならない。音源の作
動状態が周期性をもって段階的に変化し,その段階ごとに明確な定常的な状態があれば,この規格によっ
てその作動条件ごとに音響パワーレベルを測定することができる。非定常的な外部の騒音源の作動が予測
できる場合には,その作動時間中の測定は避ける(附属書Bの表B.3参照)。
4.3
測定の不確かさ この規格では,表2に示す3段階の測定精度が設定されている。この表に示され
ている測定の不確かさは,測定に伴うランダム誤差と必要な測定精度に応じた係数K(表1参照)の選択
によって決まるバイアス誤差の最大値とを考慮して設定されている。ただし,これらの値には,IEC 61043
で規定されている測定器の性能の許容誤差,並びに被測定音源の設置・取付方法及び作動条件の変化によ
る影響は含まれていない。
50Hz以下については,測定の不確かさを決めるデータが十分でない。そこでこの規格では,A特性の値
は,オクターブバンドで63Hz〜4kHz,1/3オクターブバンドで50Hz〜6.3kHzまでの成分を含むものとし
ている。31.5〜40Hzまで,及び8〜10kHzまでの周波数範囲に著しく高いレベルがなければ,オクターブ
バンドで63Hz〜4kHz,1/3オクターブバンドで50Hz〜6.3kHzまでの帯域ごとの値から計算したA特性の
値は正しいと考えてよい。この点を確認するためには,上記の帯域外でA特性の重み付けをしたバンドレ
ベル値が合成計算で求めたA特性の値から6dBを減じた値以上となっていないことを確かめる。上記の範
囲より狭い周波数範囲についてA特性音響パワーレベルを求める場合には,その周波数範囲を明記する必
要がある(10.5参照)。
騒音源の音響パワーレベルの測定精度は,音源の近傍音場,周囲の騒音,被測定音源自体の吸音性,及
び音響インテンシティ場のサンプリングの仕方などの測定方法による。そのため,この規格では,設定し
た測定面上の音場の特性を表す指標を調べるための初期測定を規定する(附属書A参照)。この初期測定
の結果に基づいて,所定の精度を確保するために必要な方法を表B.2及びB.3表によって選ぶ。
A特性音響パワーレベルの値だけを求める場合には,A特性の重み付けをした帯域ごとのパワーレベル
のうち,最大の値よりも10dB又はそれ以上小さい帯域は無視して計算してもよい。そのような帯域が二
つ以上ある場合には,それらの合成レベルが最大値よりも10dB以上小さい場合には無視してもよい。A
特性音響パワーレベルの値だけを求める場合,A特性の重み付けをしたバンドパワーレベルがA特性の重
み付けをしたオーバーオール値よりも10dB以上小さい帯域は,測定精度に影響しない。
6
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
表2 音響パワーレベル測定における不確かさ
オクターブバンド
中心周波数
Hz
1/3オクターブバンド
中心周波数
Hz
標準偏差:s(1)
精密級(グレード1)
dB
実用級(グレード2)
dB
簡易級(グレード3)
dB
63〜125
50〜160
2
3
−
250〜500
200〜630
1.5
2
−
1 000〜4 000
800〜5 000
1
1.5
−
6 300
2
2.5
−
A特性(2)
−
−
−
4(3)
注(1) 音響パワーレベルの真値は,95%の信頼度で測定結果を中心として±2sの範囲内にあると期待される。
(2) 63Hz〜4kHz又は50Hz〜6.3kHz
(3) 種々の測定器が用いられるので,この値は暫定的な値とする。
5. 音響環境条件
5.1
測定環境条件 測定環境は,IEC 61043に規定する測定器による音響インテンシティ測定の原理が満
たされる条件を備えていなければならない。また,5.2〜5.4に規定する条件を満たす必要がある。
5.2
外来インテンシティ
5.2.1
外来インテンシティのレベル あらゆる方法によって,許容限界以上に精度を低下させる外来イン
テンシティを最小にする(附属書AのA.2.2及び附属書B参照)。
備考 被測定音源の一部が吸音性材料でできている場合には,外来インテンシティによって音響パワ
ーレベルの測定に誤差を生じることがある。被測定音源の音を停止することができる場合につ
いては,この種の測定誤差の評価のしかたを附属書Dに示す。
5.2.2
外来騒音の変動の程度 外来騒音の変動の影響を調べるために,音場の時間的変動性を表す指標
F1が規定された限度を超えていないことを確認する(表B.3参照)。
5.3
風,気流,振動及び温度 インテンシティプローブの周辺の気流の条件が,測定器製造業者が規定
する測定器の使用範囲を超えている場合には,測定を行ってはならない。そのような条件の規定がない場
合,平均風速が2m/sを超える条件では測定を行わない(附属書C参照)。屋外の測定では,常にウインド
スクリーンを使用する(IEC 61043参照)。平均流速が2m/s以上の気流中やその周辺,又は振動が大きな
場所にプローブを設置してはならない。
備考1. 風速は,平均値を中心として変動するので,平均風速が許容値に近い場合,音響パワーレベ
ルは過大に測定されやすい。
2. 周辺の気温に比べて温度が著しく異なる物体に対しては,20mm以内にプローブを近づけて
はならない。周辺の気温より著しく高温の条件,特にプローブの部分で大きな温度こう(勾)
配ができているような条件でプローブを使用することはなるべく避ける。
3. 気圧及び気温によって空気の密度及び音速が変化する。したがって,測定器に対するこれら
の要因の影響を十分に考慮し,校正時に適切な補正を行う必要がある(IEC 61043参照)。
5.4
周囲の状況 測定環境は,測定の時間内でできるだけ一定の条件に保たなければならない。この条
件は,音源が純音成分を含んでいる場合に特に重要である。測定の再現性(ISO 5725に規定)を調べ,測
定の間に測定環境に何らかの変化があった場合には必ず記録しておく。いずれの測定点についても,測定
中に測定者がプローブ軸の方向又は近傍に立たないようにする。被測定音源の近くにあるものは,できる
だけ移動する。
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6. 測定器
6.1
一般事項 IEC 61043の規定に適合する音響インテンシティ測定器及びプローブを用いる。グレード
1及びグレード2の精度の測定には,クラス1の測定器を用いなければならない。IEC 61043に従って,
大気圧及び気温に応じて測定器の感度を調整する。この規格による測定に用いる測定器の音圧−残留音響
インテンシティ指数を測定周波数帯域ごとに記録しておく。
6.2
校正及び測定現場におけるチェック プローブを含む測定器は,IEC 61043に適合していなければな
らない。少なくとも年に一度は,認定された校正機関において所定の方法に従った校正を行い,IEC 61043
に適合していることを確認する。その結果は,10.3に従って記録しておく。
一連の測定に先立って,測定器が正常に作動していることを確かめるために,測定器製造業者の指示に
従って現場における点検を行う。そのような方法が指定されていない場合には,6.2.1及び6.2.2の方法に
よって,運搬中などに起こり得る測定器の異常の有無を調べる。
6.2.1
音圧レベル JIS C 1515に規定するクラス0,1又は1Lの音響校正器を用いて,インテンシティプ
ローブを構成する二つの音圧マイクロホンを校正する。
6.2.2
音響インテンシティ 測定面上で,ノーマル音響インテンシティが測定面全体の平均値よりも大き
い位置にインテンシティプローブをその軸が面に垂直になるように置く。その状態で,ノーマル音響イン
テンシティレベル(3.5参照)を測定する。次に,インテンシティプローブを測定軸に対して180°回転さ
せる。その場合,プローブの音響中心は前と同じ点に保つ。この状態でインテンシティを再び測定する。
回転の際にプローブが同じ位置を保つようにスタンドに取り付ける。測定器が適合しているためには,以
上のようにして測定したオクターブバンド又は1/3オクターブバンドの最大レベルに関して,二つのInの
符号が反対で両者のレベル差が1.5dB未満でなければならない。
7. 騒音源の設置及び作動
7.1
一般事項 被測定音源を通常の使用状態に近い形で適切に設置する。特殊な機械又は装置で特別の
試験要項がある場合には,それに従って設置する。
7.2
被測定音源の作動及び設置条件 特殊な機械又は装置で,個々の試験要項で作動及び設置条件につ
いて指定がある場合には,それによる。試験要項がない場合には,通常の使用条件を代表する定常状態で
大きな負荷の条件で被測定音源を作動する。
代表的な音源の作動条件は,次のとおりとする。
a) 通常の使用状態で,音の発生が最大となる負荷条件(そのような使用の確率が10%以上の場合)
b) 最大負荷の条件
c) 無負荷(アイドリング)の条件
d) 擬似負荷条件(通常の作動条件を代表する負荷ではなく,擬似的な負荷条件で,音の発生が最大とな
る条件が望ましい。)
e) その他,特に指定された負荷及び作動条件
主たる作動条件としては,a)又はb)が適切である。その他の条件は,追加的な条件である。
8. ノーマル音響インテンシテイレベルの測定
8.1
平均化時間 インテンシティの測定結果において,最大誤差5%を95%信頼度で保つためには,ガウ
ス分布をもつホワイトノイズの場合,バンドパスフィルタを含む測定器に要求される平均化時間は,次の
式の条件を満たす必要がある。
8
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BT≧400
ここに, B: フィルタの通過帯域幅 (Hz)
T: 平均化時間 (s)
狭帯域周波数分析の結果からオクターブバンド又は1/3オクターブバンドの値を合成して求める方式の
測定器については,IEC 61043の等価平均化時間及び平均回数に関する規定を参照。周期的な繰返し音の
場合には,特別な注意が必要である。
8.2
初期測定 初期測定として,被測定音源を取り囲んで設定した測定面上のノーマル音響インテンシ
ティを測定する。この測定面が不適切と判断された場合,附属書Bに示す方法によってその設定を変更す
る。
備考 測定面は,図1に示すような幾何学的に単純で面積が計算しやすい形状の中から選ぶとよい。
図1 初期測定のための測定面の例
測定面と被測定音源の表面との平均的な距離は,音源の全放射音響パワーに対する寄与が小さいことが
あらかじめ確かめられている部分を除き,0.5m以上とする。測定面の一部がコンクリートや,石ばりなど
の反射性の面(残響室法吸音率で0.06以下)面であってもよい。ただし,そのような面上では,インテン
シティ測定は行わない。また,それらの面は,式(6)による音源の音響パワーの計算には含めない(3.6.2
参照)。
音場の定常性を調べるために,初期測定面上に代表的な測定点を設定する。すべての測定周波数帯域に
ついて,附属書AのA.2.1に従って指標F1を計算する。音場の時間的変動性が表B.3に示す値以上となっ
ている場合には,それを小さくするために,表B.3に従って適切な手段をとる。
被測定音源を停止できる場合,測定面全体にわたってできるだけ均一に配置した5点における騒音レベ
ルが,音源を停止したときに10dB以上下がれば,外部の騒音の影響は小さいと判断してよい。
備考 この条件は,測定面外部に被測定音源に連動した他の音源があり,その音が無視できない場合
には適用できない。
音響パワーを測定するすべての周波数帯域について,少なくとも1m2当たり1点,かつ,できるだけ均
一に設定した最小10点の測定点で,測定面上のノーマル音響インテンシティレベル及び音圧レベルを測定
する。外部の騒音の影響が無視できない場合,かつ,それによって50以上の測定点が必要となる場合には,
測定点の総数が50を下回らないという条件で,2m2当たり測定点1点としてもよい。外部の騒音の影響が
小さく,測定面の面積が50m2以上の場合には,50の測定点を測定面上にできるだけ均一になるように設
定する。
すべての測定周波数帯域について,附属書Aに従ってF2,F3及びF4を計算し,その結果を附属書Bの
B.1に示す評価基準に代入する。各周波数帯域で基準を満足している場合には,表2に示す不確かさの範
囲で,初期測定で求められた音響パワーレベルを最終結果としてよい。
B.1.1の基準1が満たされない測定周波数帯域内に帯域がある場合には,次に示す手順のうちのいずれか
を選ぶ。
a) それらの周波数帯域で,音響パワーレベル測定の精度の不確かさが目的とする精度のグレードに対し
9
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て表2に示されている値を超えている旨を10.5に従って報告する。
b) 表B.3に従って測定精度を高めるための方法をとる。
B.1.2の基準2が満たされない測定周波数帯域がある場合,8.3又は8.4に従って別の方法をとる。
8.3
初期測定面上の追加測定点の数を最小にするためのオプション
8.3.1
部分音響パワーの集中に関する検討 B.1.2(基準2)による検討の結果,(一つ又は複数の)周波
数帯域で,初期測定面上における音場不均一性指標F4が,サンプリング誤差が所定の精度の範囲に入って
いることを保証する値を超えていても,ノーマル音響インテンシティ測定が最適となるように測定点の配
列を変更することによって,初期測定で設定した測定面のままで追加的な測定を最小限にすることができ
る場合もある。その可能性は,8.3.2の手順によって調べる。
8.3.2
正の部分音響パワーの集中 次の手順によって,測定点の配列を選択的に変更することによってノ
ーマル音響インテンシティのサンプリングを最適化できる可能性を調べる。B.1.1の基準1を満たしている
が,B.1.2の基準2を満たしていない場合で,さらに幾つか,又はすべての測定周波数帯域でF3−F2≦1dB
の場合には,部分面積の和が測定面全体の半分以下であり,しかもその和の面積を音源の音響パワーの大
部分が通過するようにすることが可能である。
そのような面要素の測定点を選択的に増やすことによって,一般に音響パワー測定の精度が向上する。
その可能性については,B.1.3に示す計算方法によって調べることができる。
部分音響パワーの集中が生じていることが確認された場合には,B.1.3の計算手順によって音響パワーの
大部分が通過する一群の面要素上に追加すべき測定点の数を求め,その数の測定点を一群の面要素の上に
各面要素の面積に応じて一様に設定する。ノーマル音響インテンシティレベルの測定は,新たに設定した
測定点についてだけ行えばよい。式(11)及び式(12)によって,部分音響パワー及び音源の音響パワーレベル
を計算し,最終結果の測定精度を表2に従って評価する。
上述のような選択的な測定点の変更が不可能な場合には,B.2及び表B.3に従って,他の適切な方法を
とる必要がある。
8.4
追加試験 B.1による評価で,初期に設定した測定点の配列,又は8.3.2に述べた手順によって変更
した測定点の配列によっても,所定の測定精度が得られない場合には,B.2によって適切な処置をとる必
要がある。変更された測定面又は測定点について,ノーマル音響インテンシティレベルと音圧レベルとを
測定する。音場指標F2,F3及びF4を再び計算し,B.1に従って評価する。B.2によって,以後の手段をと
る。
B.1に示すように,必要な測定精度が得られるまで以上の手順を繰り返す。それでも基準を満たすこと
ができない場合には,測定不可能とし,その理由を記述しておく。
9. 音響パワーレベルの算出
9.1
面要素ごとの部分音響パワーの計算 測定面のそれぞれの面要素について,式(11)によって周波数帯
域ごとに部分音響パワーを計算する。
Pi=Ini・Si ················································································ (11)
ここに, Pi: 面要素iについての部分音響パワー
Ini: 測定点iにおいて測定された符号付きノーマル音響インテン
シティ
Si: 面要素iの面積
面要素iについてのノーマル音響インテンシティレベルLI, niがXX dBと表される場合,Iniの値は,次の
10
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
式によって計算する。
Ini=I0×10XX/10
また,面要素iについてのノーマル音響インテンシティレベルLI, niが (−) XX dBと表される場合,Iniの
値は,次の式によって計算する。
Ini=I0×10XX/10
ここに,
I0= 10-12W/m2
9.2
騒音源の音響パワーレベルの計算 式(4)によって,周波数帯域ごとに音源の音響パワーレベルを計
算する。
dB
P
P
L
N
i
i
W
=
∑
=1
0
10
log
10
····························································· (12)
ここに, Pi: 式(11)によって計算した面要素iの部分音響パワー
P0: 基準音響パワー (=10-12W)
N: 測定点(面要素)の総数
いずれかの周波数帯域で∑
=
N
i
iP
1
が負の場合には,その帯域についてこの規格の方法を適用することはで
きない。
10. 報告事項 この規格による測定では,次の事項をまとめて記録する。
10.1 被測定音源
a) 被測定音源の仕様(寸法及び表面の材質を含む。)
b) 被測定音源の特性(変動性,周期性,純音性の有無など。)
c) 作動条件
d) 設置条件
10.2 音響環境
a) 測定環境(音源の設置位置,近接した障害物の位置,局所的な地形及び地面の性質などのスケッチを
含む。)
b) 被測定音源以外の音源が発生する騒音の特性(変動性,周期性,純音性の有無などを含む。)
c) 気温及び気圧
d) 平均風速及び風向
e) 外来騒音の影響を最小にするために用いた装置及び方法
f)
気流及びその不安定さに関する定性的記述
10.3 測定器
a) 使用した測定器(名称,形式,製造番号,製造業者,プローブ構成などを含む。)
b) 測定器の校正及び現場での点検方法(校正日時を含む。)
c) 音響インテンシティ測定システム並びに使用したプローブの各測定周波数帯域及び各プローブ構成に
ついての音圧−残留インテンシティ指数
d) 音響インテンシティ測定器の校正場所及び日時
10.4 測定方法
11
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
a) 測定の各段階における手順
b) 測定中のインテンシティプローブの設置又は支持方法
c) 測定面及び面要素の定量的記述(図を付ける。)
d) 測定点の配列(各測定点に番号及び座標を付ける。)
e) 各測定点における平均化時間
10.5 音響データ
a) 各測定面についての一連の測定ごとに計算した音場指標F1〜F4の表
b) 被測定音源の全測定周波数帯域における音響パワーレベル算出値の表又は図。A特性音響パワーレベ
ルを求めた場合には,附属書Bに示す基準1及び基準2の両方,又は一方を満たさない周波数帯域の
寄与は計算の際に除外する。その場合,4.3によってその寄与を無視してもよい場合以外は,その旨を
明記する。
c) 附属書Bに示す基準2を満たさない周波数帯域における音響パワーレベルの測定値の95%信頼区間
[式(B.3)によって計算]
d) 必要に応じて,6.2.2に示したプローブを反転させる方法による現場での点検の結果
e) 測定を行った年/月/日
10.6 音響パワーレベルの測定精度のグレード 最終的な測定における測定精度のグレードを必ず明記す
る(表2参照)。音響パワーレベルの測定精度が所定のグレードに適合していない周波数帯域がある場合に
は,その95%信頼区間を式(B.3)によって推定し,報告する。
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附属書A(規定) 音場指標の計算
A.1 一般事項 音響パワーレベルの測定を行う測定面と測定点の配置について,測定周波数帯域ごとに,
式(A.1)〜式(A.9)によって音場指標を求める。
A.2 音場指標の定義
A.2.1 時間変動性指標 測定面上の適切な位置で,音場の時間変動性指標F1を式(A.1)によって求める。
(
)
∑
=
−
−
=
M
k
n
nk
n
I
I
M
I
F
1
2
1
1
1
1
······················································ (A.1)
ここに,
nI: M個の短時間の測定によるサンプル値Inkから,式(A.2)
によって計算したInの平均値
∑
=
=
M
k
nk
n
I
M
I
1
1
········································································ (A.2)
備考 Mは,通常10とする。また,短時間測定の平均時間は,8秒〜12秒とし,周期的に変動する
音の場合には周期の整数倍の時間とする。
A.2.2 符号なし音圧−インテンシティ指標 測定面上の音圧−インテンシティ指標F2を,式(A.3)によって
計算する。
In
pL
L
F
−
=
2
········································································· (A.3)
ここに,
p
L: 式(A.4)によって計算した測定面上の平均音圧レベル
=
∑
=
N
i
Lpi
p
N
L
1
1.0
10
10
1
log
10
dB ·················································· (A.4)
ここに,
In
L: 測定面における符号なしノーマル音響インテンシティ
レベルの平均値
式(A.5)によって計算する。
=
∑
=
N
i
ni
In
I
I
N
L
1
0
10
1
log
10
dB ····················································· (A.5)
ここに,
ni
I: i番目の測定点におけるノーマル音響インテンシティの
絶対値
I0: 基準の音響インテンシティ (=10-12W/m2)
A.2.3 符号付き音圧−インテンシティ指標 負となる部分音響パワーを評価する指標F3を,式(A.6)によっ
て求める。
In
pL
L
F
−
=
3
·········································································· (A.6)
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ここに,
p
L: 式(A.4)によって計算した測定面上の音圧レベル(平均
値)
In
L: 測定面における符号付きノーマル音響インテンシティ
レベル(平均値)
式(A.7)によって計算する。
∑
=
=
N
i
ni
In
I
I
N
L
1
0
10
1
log
10
dB ························································ (A.7)
ここに, Ini: i番目の測定点における符号付きノーマル音響インテンシティ
i番目の測定点におけるノーマル音響インテンシティレベルLIniがXX dBと表される場合には,Iniは,次
の式によって計算する。
Ini=I0×10XX/10
また,i番目の測定点におけるノーマル音響インテンシティレベルLIniが (−) XX dBと表される場合に
は,Iniは,次の式によって計算する。
Ini=−I0×10XX/10
いずれかの周波数帯域でΣIni/I0が負である場合には,その帯域では測定条件がこの規格の条件に適合し
ていないことになる。
A.2.4 音場不均一性指標 音場の不均一性指標F4を,式(A.8)によって求める。
(
)
∑
=
−
−
=
N
i
n
ni
n
I
I
N
I
F
1
2
4
1
1
1
······················································· (A.8)
ここに,
nI: 測定面上のノーマル音響インテンシティの平均値で,式
(A.9)によって計算する。
∑
=
=
N
i
ni
n
I
N
I
1
1
········································································· (A.9)
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附属書B(規定) 必要な測定精度を得るための手順
B.1 必要とされる条件 初期測定で設定した測定点では,音場のばらつきが大きすぎる場合もあり得る。
そこで,この規格による音響パワーレベル測定における不確かさの上限を保証するために,測定システム
の妥当性及び個々の測定音場・環境に応じて設定した測定条件(測定面,距離,マイクロホン設置位置な
ど)の妥当性を調べる必要がある。その一般的な手順を図B.1に示す。
B.1.1 測定装置の検討 測定点の配置がこの規格による騒音源の音響パワーレベルの測定に適しているた
めには,各測定周波数帯域において測定器のダイナミック性能指数Ldが附属書Aで規定した指標F2より
も大きくなくてはならない。すなわち,
基準1 Ld>F2 ······································································· (B.1)
初期測定で設定した測定面上で基準1が満たされない場合には,表B.3及び図B.1に示す方法をとる。
備考 式(B.1)で,F2の代わりにF3を用いれば,測定はより安全側である。
B.1.2 測定点の検討 次の条件が満たされていれば,測定面上に均等に配置されたN個の測定点は適切で
あると判断できる。
基準2 N>C・F42 ··································································· (B.2)
ただし,F4の計算は附属書Aによる。また,Cの値は表B.2から求める。すべての測定周波数帯域につ
いて,測定点の数が同じ場合には,基準2の判定にはC・F42の最大値を用いる。
幾つかの周波数帯域で基準2が満たされず,それらの帯域におけるレベルがそれほど大きくない場合(4.3
参照)には,それらの値は報告してはならない。
個々の1オクターブバンド又は1/3オクターブバンドについての結果の95%信頼区間は,式(B.3)で与え
られる。
(
)
N
F4
2
1
log
10
±
dB ····························································· (B.3)
ただし,F4はそれぞれの帯域ごとに計算する。ある周波数帯域で基準2が満たされない場合,その帯域
についての音響パワーレベルの測定結果は報告してもよいが,95%信頼区間を必ず付記する。
各周波数帯域の測定結果から合成計算によってA特性音響パワーレベルを求める場合,各周波数帯域に
おけるA特性の周波数重み付けをした音響インテンシティについてのIni及びnIの値を用いて式(A.8)及び
式(A.9)によってF4を計算する。その結果と,測定精度のグレードごとに決められている周波数帯域ごとの
Cの値の最大値を用いて,基準2の判定を行う。
各周波数帯域におけるA特性音響インテンシティは,次の方法で計算する。i番目の面要素におけるA
特性ノーマル音響インテンシティレベルLIniがXX dBと表される場合には,IniのA特性重み付けをした値
は,次の式によって計算する。
Ini=I0×10XX/10
また,i番目の面要素におけるA特性ノーマル音響インテンシティレベルLIniが (−) XX dBと表される
場合には,A特性重み付けをしたIniの値は,次の式によって計算する。
Ini=−I0×10XX/10
ここに, I0: 基準の音響インテンシティ (=10-12W/m2)
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B.1.3 正となる部分音響パワーの集中度の確認及び必要な測定点配列の設定変更方法(オプション) 8.3.2
を適用する各周波数帯域について,通過する正の音響パワーの大きさの順に面要素を並べ,その中から全
体の音響パワーの半分以上が通過している上位の面要素(の部分集合)を選ぶ。全体の音響パワーに対し
てそのパワーの割合を記号αとする(α>0.5)。そのように選んだ面要素の数Nαは,面要素の総数N未満
でなければならない。次に示す手順によって,このようにして選定した面要素の上に追加する測定点の数
を決める。
上記のような条件となる面要素の部分集合がない場合には,表B.3によって音響パワーレベルの測定精
度を高めるための別の手順をとる。
次の各区分について,A.2.3に従って指標F4を計算する。
a) Nα個の面要素の部分集合(全面積Sα)について
b) 残りの面要素について
これらの区分ごとのF4の値をそれぞれF4 (α) ,F4 (1−α) とする。
式(B.4)によって,測定面Sαに新たに追加する測定点の数N*を求める。
N*≧4 [F4 (α) /∆α] 2 ·································································· (B.4)
ここに,
(
)
(
)
−
−
−
∆
=
∆
−
α
α
α
α
α
1
2
1
1
4
1
F
N
N1-α=N−Nα
△の値は表B.1で与えられる。
このようにして計算されたN*個の追加測定点を面積Sαの上に(面要素の面積に応じて)できるだけ均
等に分布させる。
備考 1/3オクターブバンドで800Hz〜5 000Hzの帯域の成分を合成した値のA特性音響パワーに対す
る寄与が半分以下の場合には,Cの値としては1/3オクターブバンドで200Hz〜630Hzに対する
値を用いる。
B.1.4 測定音場の非定常性の判定 一つの測定面についての測定の直前及び直後に,必ず指標F1について
調べる。もしF1が表B.3に示す値より大きくなっている場合には,音場の時間的変動性を小さくする手段
をとる。
B.1.5 指向性の強い外部音源の存在の判定 F2とF3との値が著しく異なる場合には,被測定音源の近くに
指向性の強い外部音源がある可能性がある。
B.2 測定精度向上のための手段 設定した測定面及び面要素がB.1に述べた条件に適合しない場合には,
表B.3に示す方法の内から適切な方法をとる。
表B.1 誤差係数△
周波数
グレード1
グレード2
グレード3
すべての周波数帯域
0.20
0.29
−
A特性
−
−
0.60
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表B.2 係数C
オクターブバンド
中心周波数
Hz
1/3オクターブバンド
中心周波数
Hz
C
精密級
実用級
簡易級
(グレード1) (グレード2) (グレード3)
63〜125
50〜160
19
11
−
250〜500
200〜630
29
19
−
1 000〜4 000
800〜5 000
57
29
−
6 300
19
14
−
A特性(1)
−
−
−
8
注(1) 63Hz〜4kHz又は50Hz〜6.3kHz
表B.3 測定精度を向上させるためにとるべき方法
基準
方法の記号
(図B.1参照)
方法
F1>0.6
e
外来インテンシティの時間変動を小さくし,その変動が小さい時間帯
に測定し,さらに可能ならば各測定点における測定時間を長くするな
どの方法をとる。
F2>Ld
又は
(F3−F2) >3dB
a
又は
b
大きな外部騒音又は長い残響がある場合には,音源から測定面までの
平均距離を小さくする(最小0.25m)。大きな外部騒音又は長い残響
がない場合には,上記の平均距離を最大1mまで大きくする。
外部騒音源から測定面を遮へい(蔽),又は被測定音源への反射を小
さくするような方法をとる。
基準2に適合せず,
かつ,
1dB≦ (F3−F2) ≦3dB
c
基準2に適合するように,測定点の密度を一様に増やす。
基準2に適合せず,
かつ,(F3−F2) ≦1dB,
さらに8.3.2を適用しな
い又はできない場合
d
測定点数は同じにして,音源から測定面までの平均距離を大きくする
か,又は同じ測定面で測定点数を増やす。
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図B.1 測定精度を確保するための方法
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附属書C(参考) 気流が音響インテンシティ測定に及ぼす影響
風のある屋外,冷却ファンの気流に近い場所などでの測定では,音響インテンシティプローブが気流に
さらされる。原理的には,定常的な気流の中でp-p形プローブを用いて音響インテンシティ測定を行うこ
とは不可能である。しかし,低マッハ数 (M<0.05) の気流中では,極めてリアクティブな音場を除いて,
測定誤差は無視できる程度である。それよりも,非定常な気流(乱れ)の影響によってより大きな誤差が
生じる。
プローブに当たる気流には乱れが含まれており,また,プローブの存在自体が乱れを発生させる。気流
の乱れに伴う流体の運動量の変動によって,圧力が変動する。これらは音響現象ではなく,その音場の音
圧の変動とは無相関である。しかし,これらの変動は,気流中に置かれた圧力に感度をもつトランスデュ
ーサによって同時に検知され,その出力信号から音響的な圧力変化だけを区別することはできない。気流
の乱れは,気流の平均速度にほぼ近い速度で移動し,その中には可聴周波数の音の波長に比べて寸法がは
るかに小さい渦が含まれており,それによって乱れの中の空間的な圧力こう(勾)配は音波の中の圧力こ
う(勾)配に比べてはるかに大きい。したがって,気流の乱れによる粒子速度は,音波による粒子速度よ
りもはるかに大きい。このようにして,気流の乱れによって擬似的な音響インテンシティが生じる。
ウインドスクリーンを装着することによって,圧力トランスデューサを気流から守ることができる。気
流の乱れの移動速度が小さいことから,ウインドスクリーンの外表面に作用する気流の乱れの圧力及び速
度の変動は,圧力トランスデューサが装着されている中心部に伝搬しにくい。一方,それに比べて音波の
減衰ははるかに小さい。このような原理によって,ウインドスクリーンが気流に対して効果を発揮する。
しかし,ウインドスクリーンの効果にも限界があり,極めて強い気流の乱れの影響まで除去することは
できない。また,低い周波数で寸法が大きな乱れは,高い周波数で寸法が小さい乱れに比べて減衰が小さ
い。自然風及びファンが発生する気流の乱れは,周波数が高くなるにつれて急速に小さくなるので,イン
テンシティ測定に対する影響は,低周波数(おおよそ200Hz以下)で大きい。
気流の乱れの大きさ及び周波数成分は,その発生過程に大きく依存するので,現場におけるインテンシ
ティ測定の際に生じる様々な不安定な気流の流れをすべて制御することは不可能である。気流の乱れによ
る圧力変動の実効値は,平均流速の二乗に比例して増加するので,平均流速に対して一律の安全側の限界
を設定する。
一般的な目安として,1オクターブ又は1/3オクターブバンドごとのインテンシティレベル又は粒子速
度レベルが大きい状態が続くか,又は低周波数(100Hz以下)で大きくなる場合,音圧レベルも同様の傾
向を示すか,耳で聞いても低周波数成分が大きいことがはっきり分かる場合以外は,気流の影響を受けて
いる危険性がある。インテンシティレベル及び粒子速度レベルの不安定性を見ることも,音響インテンシ
ティが気流の乱れによる擬似的なインテンシティの影響を含んでいるかどうかを判断する定性的な方法で
ある。低周波数の大きな規模の気流の乱れによる圧力変動は,インテンシテイプローブの二つのマイクロ
ホンの距離では強い相関性をもっているので,二つのマイクロホンの出力のコヒーレンスを調べてみても,
気流の乱れによる影響の有無を調べることは難しい。気流の乱れによる重大な悪影響として,音響インテ
ンシティの測定におけるダイナミックレンジを狭くすることがあり,その影響は特にオートレンジ方式の
測定器を用いる場合に著しい。
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附属書D(参考) 測定面内の吸音の影響
断熱処理,吸音処理などによって,被測定音源が大きな吸音性をもっている場合及び音場指標F3が6dB
以上となっている場合には,測定される全体のパワーPIに対する吸収される音響パワーPI, abs (PI, abs<0) の
影響を調べる必要がある。
被測定音源を停止させることができる場合には,これを直接調べることができる。音源を停止したとき
に,その他の外来騒音には変化がないとすれば,被測定音源を取り囲んで設定した測定面上の音響インテ
ンシティをこの規格によって測定し,式(9)によって計算すれば,音源によって吸収される音響パワーPI, abs
を直接測定することができる。被測定音源を停止させたときに,外来騒音が変化してしまう場合には,測
定面上のレベルが本来の外来騒音による場合と同じ程度になるような外来騒音を人為的に付加することに
よって,音源によって吸収される音響パワーを近似的に求めることができる。
次の条件が満たされていれば,音源自体による吸音の影響は無視できる。
Lw−Lw, abs≧K dB ····································································· (D.1)
ここに,
Lw: 音源が作動しているときの全音響パワーレベル[式(8)によ
る。]
Lw, abs: 停止した音源が吸収する音響パワーレベル [=10log10 (│
PI, abs│/P0)]
K: 表1によって与えられる値
上記の条件が満たされていない場合には,外来インテンシティのレベルを下げる,又は外部の音源から
測定面を遮へいするなどの手段をとる必要がある。
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附属書E(参考) 文献
[1] ISO 2204:1979, Acoustics−Guide to International Standards on the measurement of air-borne acoustical noise
and evaluation of its effects on human beings
[2] ISO 3740:1980, Acoustics−Determination of sound power levels of noise sources−Guidelines for the use of
basic standards and for the preparation of noise test codes
[3] ISO 3741:1988, Acoustics−Determination of sound power levels of noise sources−Precision methods for
broadband sources in reverberation rooms
[4] ISO 3742:1988, Acoustics−Determination of sound power levels of noise sources−Precision methods for
discrete-frequency and narrow-band sources in reverberation rooms
[5] ISO 3743:1988, Acoustics−Determination of sound power levels of noise sources−Engineering methods for
special reverberation test rooms
[6] ISO 3744:1981, Acoustics−Determination of sound power levels of noise sources−Engineering methods for
freefield conditions over a reflecting plane
[7] ISO 3745:1977, Acoustics−Determination of sound power levels of noise sources−Precision methods for
anechoic and semi-anechoic rooms
[8] ISO 3746:1979, Acoustics−Determination of sound power levels of noise sources−Survey method
[9] ISO 3747:1987, Acoustics−Determination of sound power levels of noise sources−Survey method using a
reference sound source
[10] ISO/TR 7849:1987, Acoustics−Estimation of airborne noise emitted by machinery using vibration
measurement
[11] BENOIT, R. et al. Analysis of sound power measurements via intensity for a spinning frame. Inter-noise 85
(Munich), 1985, pp.1131-1134
[12] BOCKHOFF, M. Sound power determination by intensity measurements in the near-field of a vibrating panel.
Internoise 85 (Munich), 1985, pp.1135-1138
[13] BOCKHOFF,
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der
Schalleistungsbestimmung
nach
dem
Intensitätsmessverfahren. DAGA 87 (Aachen), 1987, pp.789-792
[14] BOCKHOFF, M. et al. Sound power determination of machines by intensity technique. Inter-noise 88
(Avignon), 1988 , pp.1125-1128
[15] CROCKER, M. J. The use of existing and advanced intensity techniques to identify noise sources of a Diesel
engine. SAE 810694, 1981
[16] FAHY, F. J. Sound Intensity, Elsevier Applied Science, London, 1989
[17] HÜBNER, G. Development of requirements for an intensity measurement code determining sound power level
of machines under (worst) in situ conditions. Inter-noise 84 (Honolulu, USA), 1984, pp.1093-1098
[18] HÜBNER, G. Recent developments of sound power determination for machines using sound intensity
measurements. A survey of procedure and accuracy aspects. Inter-noise 85 (Munich), 1985, pp.57-68
[19] HÜBNER, G. Recent developments of requirements for an intensity measurement code determining sound
power levels of machines.2e Congrès international sur lʼintensimétrie acoustique, Senlis, France, September
1985, pp.307-318
21
Z 8736-1:1999 (ISO 9614-1:1993)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
[20] HÜBNER, G. Sound intensity method. Errors in determining the sound power levels of machines and its
correlation with sound field indicators. Inter-noise 87 (Beijing, China), 1987, pp.1227-1230
[21] HÜBNER, G. Sound power determination of machines using sound intensity measurements. Reduction of
number of measurement positions in cases of “hot areas”. Inter-noise 88 (Avignon), 1988, pp.1113-1116
[22] HÜBNER, G. and RIEGER, W. Schallintensitäts-messverfahren zur Schalleistungsbestimmung in der Praxis.
Forschungsbericht der Bundesanstalt für Arbeitsschutz, Fb Nr.550, ISBN 3-88314-809.1. Wirtschaftsverlag NW,
Verlag für die Neue Wissenschft GmbH, Bremerhafen, Germany
[23] LAMBERT, J. M. The application of a modern intensity meter to industrial problems : example of in situ sound
power determination. Inter-noise 79 (Warszawa), 1979, pp.227-231
[24] PASCAL, J. C. Unbiased sound power determination. Proceedings of the Institute of Acoustics Autumn
Conference (Bournemouth), 1982, pp. B2.1-B2.4
[25] POPE, J. Intensity measurements for sound power determination over a reflecting plane. Inter-noise 86 (Boston),
1986, pp.1115-1120
[26] RASMUSSEN, P. Sound power measurements by different operators. Inter-noise 86 (Boston), 1986,
pp.1121-1124
規格原案作成委員会 構成表
氏名
所属
(主査)
子 安 勝
千葉工業大学
○ 今 井 章 久
武蔵工業大学
今 泉 八 郎
株式会社小野測器
○ 押 野 康 夫
財団法人日本自動車研究所
君 塚 郁 夫
日本アイ・ビー・エム株式会社
○ 鈴 木 英 男
オンテックR&D株式会社
○ 瀧 浪 弘 章
リオン株式会社
○ 橘 秀 樹
東京大学
田 中 俊 光
株式会社神戸製鋼所
○ 東 山 三樹夫
工学院大学
三 浦 甫
静岡理工科大学
○ 矢 野 博 夫
千葉工業大学
○ 山 田 英 美
松下インターテクノ株式会社
矢 野 友三郎
工業技術院材料規格課
橋 本 繁 晴
財団法人日本規格協会
(事務局)
後 藤 健 次
社団法人日本音響学会