Z8731 : 1999
(1)
まえがき
この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,通商産業大臣が改正した日
本工業規格である。これによって JIS Z 8731 : 1983 は改正され,この規格に置き換えられる。
今回の改正では,日本工業規格と国際規格との対比,国際規格に一致した日本工業規格の作成,及び日
本工業規格を基礎とした国際規格原案の提案を容易にするため,ISO 1996-1 : 1982, Acoustics−Description
and measurement of environmental noise, Part 1 : Basic quantities and procedures
及び ISO 1996-2 : 1983,
Acoustics
−Description and measurement of environmental noise, Part 2 : Acquisition of data pertinent to land use
を基礎として用いた。
鉄道や自動車,航空機,工場等の騒音源が放射する騒音が人に及ぼす影響についてはこれまで多くの研
究が行われており,騒音源の種類ごとにさまざまな騒音評価尺度が提案され,広く用いられている。その
結果,異なる評価尺度の間の変換が難しくなっている。音環境が一種類の騒音で決まっている場合には,
異なる騒音評価尺度があっても大きな問題ではないが,多くの場合,環境騒音は多数の騒音源からの音の
重ね合わせであり,騒音の種類の分布は時々刻々と変化するのが普通である。そこでこの規格では,ある
場所における騒音の状態を決定するすべての騒音源からの騒音について,それぞれを単独で扱うことがで
きると同時に全体としても扱えるようにするために,騒音の表示及び測定方法を規定する。そのためには,
現在の技術水準から考えて,基本評価量として等価騒音レベルを採用するのが最も適当と考えられる。
この規格の目的は,地域の環境における騒音の状態を表示するための方法を提供することである。この
規格に規定する方法によれば,騒音の許容限度を規定し,騒音環境を管理することが容易となる。ただし,
環境騒音の許容限度を規定することはこの規格の目的ではない。
JIS Z 8731
は,次に示す附属書を含む。
附属書 1(規定) 適正な土地利用のための音響データの収集
附属書 2(参考) 環境騒音の表示・測定方法に関する補足事項
Z8731 : 1999
(1)
目次
ページ
序文
1
1.
適用範囲
1
2.
引用規格
1
2.1
日本工業規格
1
2.2
国際規格
1
3.
定義
1
3.1
A 特性音圧
2
3.2
音圧レベル
2
3.3
騒音レベル
2
3.4
時間率騒音レベル
2
3.5
等価騒音レベル
2
3.6
単発騒音暴露レベル
2
3.7
実測時間
3
3.8
基準時間帯
3
3.9
長期基準期間
3
3.10
長期平均等価騒音レベル
3
3.11
評価騒音レベル
3
3.12
長期平均評価騒音レベル
3
3.13
騒音の種類
3
3.13.1
総合騒音
3
3.13.2
特定騒音
3
3.13.3
初期騒音
3
3.14
記号
3
4.
測定器
4
4.1
一般事項
4
4.2
校正
4
5.
測定
4
5.1
一般事項
4
5.2
測定点
5
5.2.1
屋外における測定
5
5.2.2
建物の周囲における測定
5
5.2.3
建物の内部における測定
5
5.3
気象の影響
5
5.3.1
種々の気象条件における測定結果を平均する方法
5
5.3.2
特定の気象条件において測定する方法
5
Z8731 : 1999
目次
(2)
5.4
等価騒音レベルの算出方法
5
5.4.1
一般的な方法
5
5.4.2
変動騒音
5
5.4.3
定常騒音
6
5.4.4
騒音レベルが段階的に変化する定常音
6
5.4.5
単発的に発生する騒音
6
5.5
補正
7
6.
記録事項
7
6.1
測定方法
7
6.2
測定時の条件
7
6.3
定性的記述
7
附属書 1(規定) 適正な土地利用のための音響データの収集
8
序文
8
1.
適用範囲
8
2.
引用規格
8
3.
定義
8
3.1
土地利用
8
3.2
騒音レベルゾーン
8
4.
データの収集
8
4.1
音響データ
8
4.1.1
一般事項
8
4.1.2
評価騒音レベル
8
4.1.3
純音補正
9
4.1.4
衝撃性補正
9
4.2
気象の影響の補正
9
4.3
長期平均等価騒音レベル
9
4.4
長期平均評価騒音レベル
9
4.5
時間率騒音レベル
9
5.
長期平均等価騒音レベル及び長期平均評価騒音レベルの求め方
10
5.1
一般事項
10
5.2
測定器
10
5.3
測定点の位置と数
10
5.3.1
一般事項
10
5.3.2
マイクロホン位置
10
5.3.3
対象とする地域における測定点の位置
10
5.3.4
対象とする地域を代表する測定位置
10
5.3.5
騒音源の特性を調べるための測定位置
11
5.4
時間の設定
11
5.4.1
基準時間帯
11
5.4.2
長期基準期間
11
Z8731 : 1999
目次
(3)
5.4.3
実測時間
11
5.5
音響データの収集
12
5.5.1
一般事項
12
5.5.2
連続測定による方法
12
5.5.3
時間サンプリングによる方法
12
5.6
長期平均等価騒音レベル及び長期平均評価騒音レベル
12
6.
騒音のレベルの予測
12
7.
騒音レベルゾーン及び結果の表示
12
8.
記録事項
13
8.1
測定方法
13
8.2
測定時の条件
13
8.3
定性的記述
13
8.4
定量的データ
13
9.
報告事項
14
附属書 2(参考) 環境騒音の表示・測定方法に関する補足事項
15
1.
適用範囲
15
2.
時間率騒音レベルの求め方
15
3.
特定の間欠騒音及び衝撃騒音の表示・測定方法
15
3.1
特定の間欠騒音
15
3.2
特定の衝撃騒音
15
3.2.1
特定の分離衝撃騒音
15
3.2.2
特定の準定常衝撃騒音
15
4.
暗騒音の影響の補正
15
日本工業規格
JIS
Z8731
: 1999
環境騒音の表示・測定方法
Acoustics
−Description and measurement of environmental noise
序文 この規格は,1982 年に第 1 版として発行された ISO 1996-1, Acoustics−Description and measurement of
environmental noise, Part 1 : Basic quantities and procedures
を翻訳した日本工業規格であり,次に示す
附属書 1
及び
附属書 2 を除き,技術的内容及び規格票の様式を変更することなく作成している。
附属書 1 は,1983 年に第 1 版として発行された ISO 1996-2, Acoustics−Description and measurement of
environmental noise, Part 2 : Acquisition of data pertinent to land use
のうち,第 1 部と重複する部分を除いた残
りを翻訳し,技術的内容を変更することなく作成したものである。
附属書 2 には,改正前の JIS Z 8731 : 1983(騒音レベル測定方法)で規定していたが,この規格で採用さ
れなかった項目のうちの重要なものを参考として記載した。
なお,この規格で点線の下線を施してある
参考
は,原国際規格にはない事項である。
1.
適用範囲 この規格では,環境騒音を表示する際に用いる基本的な諸量を規定し,それらを求めるた
めの方法を示す。
2.
引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す
る。
2.1
日本工業規格
JIS C 1502
普通騒音計
備考 原国際規格 ISO 1996-1 に引用規格として記載された IEC 60651, Sound level meters の Type 2
及び IEC 60804, Integrating-averaging sound level meters の Type 2 に関する引用事項は,こ
の規格の該当事項と同等である。
JIS C 1505
精密騒音計
備考 原国際規格 ISO 1996-1 に引用規格として記載された IEC 60651, Sound level meters の Type 1
及び IEC 60804, Integrating-averaging sound level meters の Type 1 に関する引用事項は,こ
の規格の該当事項と同等である。
JIS C 1512
騒音レベル,振動レベル記録用レベルレコーダ
2.2
国際規格
ISO 1999
Acoustics−Determination of occupational noise exposure and estimation of noise-induced hearing
impairment
3.
定義 この規格で用いる主な用語の定義は,次による。
2
Z8731 : 1999
3.1
A
特性音圧 (A-weighted sound pressure) p
A
周波数重み特性 A(JIS C 1502 又は JIS C 1505 参照)
をかけて測定される音圧実効値。単位はパスカル (Pa) 。
参考 周波数重み特性は,周波数補正特性と呼ぶこともある。
3.2
音圧レベル (sound pressure level) L
p
音圧実効値の 2 乗を基準音圧の 2 乗で除した値の常用対数の
10
倍で,次の式で与えられる。単位はデシベル (dB) 。
2
0
2
10
10
p
p
log
L
p
=
(1)
ここに,
p
:
音圧実効値 (Pa)
p
0
:
基準音圧 (20
µPa)
3.3
騒音レベル (A-weighted sound pressure level) L
pA
A 特性音圧の 2 乗を基準音圧の 2 乗で除した値の
常用対数の 10 倍で,次の式で与えられる。単位はデシベル (dB) 。A 特性音圧レベルともいう。
2
0
2
10
10
p
p
log
L
A
pA
=
(2)
3.4
時間率騒音レベル (percentile level) L
AN,T
時間重み特性 F(JIS C 1502 又は JIS C 1505 参照)によ
って測定した騒音レベルが,対象とする時間 T の N パーセントの時間にわたってあるレベル値を超えてい
る場合,そのレベルを N パーセント時間率騒音レベルという。単位はデシベル (dB) 。
参考 例えば,L
A50,1h
は,1 時間のうちの 50%の時間にわたって騒音レベルがその値以上である場合に
用いる。L
A50,T
を騒音レベルの中央値という。
3.5
等価騒音レベル (equivalent continuous A-weighted sound pressure level) L
Aeq,T
ある時間範囲 T につ
いて,変動する騒音の騒音レベルをエネルギー的な平均値として表した量で,次の式で与えられる。単位
はデシベル (dB) 。
( )
ú
û
ù
ê
ë
é
=
ò
2
1
2
0
2
10
Aeq,
1
10
t
t
A
T
dt
p
t
p
T
log
L
(3)
ここに,
L
Aeq,T
:
時刻
t
1
から時刻
t
2
までの時間
T (s)
における等価騒音レベル
(dB)
p
A
(t)
:
対象とする騒音の瞬時
A
特性音圧
(Pa)
p
0
:
基準音圧
(20
µPa)
備考
等価騒音レベルは,作業環境における騒音暴露の評価にも用いられる(ISO 1999 参照)
。
参考1.
L
Aeq,T
の添字
T
は,
時間又は分で表してもよい。
例えば,
10
分間を対象とする場合には
L
Aeq,10min
,
8
時間を対象とする場合には
L
Aeq,8h
などと表す。
2.
時間的に変動する騒音のある時間範囲
T
における等価騒音レベルは,その騒音と等しい
A
特
性の平均
2
乗音圧をもつ定常音の騒音レベルに相当する。
3.6
単発騒音暴露レベル (sound exposure level) L
AE
単発的に発生する騒音の全エネルギー(瞬時
A
特
性音圧の
2
乗積分値)と等しいエネルギーをもつ継続時間
1
秒の定常音の騒音レベルで,次の式で与えら
れる。単位はデシベル
(dB)
。
( )
ò
=
2
1
2
0
2
0
10
AE
1
10
t
t
A
dt
p
t
p
T
log
L
(4)
ここに,
P
A
(t)
:
対象とする騒音の瞬時
A
特性音圧
(Pa)
p
0
:
基準音圧
(20
µPa)
t
1
〜
t
2
:
対象とする騒音の継続時間を含む時間
(s)
T
0
:
基準時間
(1 s)
3
Z8731 : 1999
3.7
実測時間 (measurement time interval) 実際に騒音を測定する時間。
参考
騒音レベルを測定する際の対象とする時間を観測時間
(observation time interval)
ということが
ある。観測時間は騒音の状態が一定とみなせる時間のことで,そのうち,実際に騒音を測定す
る時間が実測時間である。
3.8
基準時間帯 (reference time interval) 一つの等価騒音レベルの値を代表値として適用し得る時間帯。
基準時間帯は,対象とする地域の居住者の生活態様及び騒音源の稼動状況を考慮して決める。
3.9
長期基準期間 (long-term time interval) 騒音の測定結果を代表値として用いる特定の期間で,一連
の基準時間帯から成る。
3.10
長期平均等価騒音レベル (long-term average sound level) L
Aeq,LT
長期基準期間に含まれる一連の基
準時間帯ごとの等価騒音レベルを長期基準期間の全体にわたって平均した値。平均の仕方は
附属書 1 によ
る。
3.11
評価騒音レベル (rating level) L
Ar,T
等価騒音レベルに,対象騒音に含まれる純音性及び衝撃性に対
する補正を加えた値。
3.12
長期平均評価騒音レベル (long-term average rating level) L
Ar,LT
一連の基準時間帯について算出さ
れた評価騒音レベルを長期基準期間にわたって平均した値。平均の仕方は
附属書 1 による。
3.13
騒音の種類
3.13.1
総合騒音 (total noise) ある場所におけるある時刻の総合的な騒音。
3.13.2
特定騒音 (specific noise) 総合騒音の中で音響的に明確に識別できる騒音。騒音源が特定できるこ
とが多い。
備考
ある場所におけるある時刻の総合騒音のうち,すべての特定騒音を除いた残りの騒音を残留騒
音
(residual noise)
と呼ぶことがある。また,ある特定の騒音に着目したとき,それ以外のすべ
ての騒音を暗騒音
(background noise)
ということがある。
3.13.3
初期騒音 (initial noise) ある地域において,何らかの環境の変化が生じる以前の総合騒音。
参考
騒音の種類は,時間的な変動の状態によって定常騒音,変動騒音,間欠騒音,衝撃騒音(分離
衝撃騒音,準定常衝撃騒音)に分類される。
−
定常騒音:レベル変化が小さく,ほぼ一定とみなされる騒音
−
変動騒音:レベルが不規則かつ連続的にかなりの範囲にわたって変化する騒音
−
間欠騒音:間欠的に発生し,一回の継続時間が数秒以上の騒音
−
衝撃騒音:継続時間が極めて短い騒音
−
分離衝撃騒音:個々に分離できる衝撃騒音
−
準定常衝撃騒音:レベルがほぼ一定で極めて短い間隔で連続的に発生する衝撃騒音
3.1
記号 各種の騒音レベルを表すための記号を表 1 に示す。
表 1 各種の騒音のレベル (dB) を表す記号
評価量
記号
備考
騒音レベル
L
pA
時間率騒音レベル
L
AN,T
時間 T の N%にわたって騒音レベルがこの値を超えている。
単発騒音暴露レベル
L
AE
単発的に発生する騒音を対象とする。
等価騒音レベル
L
Aeq,T
時間を明示する。
長期平均等価騒音レベル
L
Aeq,LT
同上
評価騒音レベル
L
Ar,T
同上
長期平均評価騒音レベル
L
Ar,LT
同上
4
Z8731 : 1999
4.
測定器
4.1
一般事項 測定器としては,直接又は計算によって,すなわち 3.5 の定義通り又は何らかの近似的な
方法によって,等価騒音レベルを算出できるものを用いる。測定器は JIS C 1505 に適合するものを用いる
ことが望ましい。少なくとも JIS C 1502 に適合するものを用いなければならない。これらの騒音計に代わ
る測定器を用いる場合にも,周波数重み特性,時間重み特性について同等の性能をもつものでなければな
らない。
このような条件を満たす測定器としては,次の種類が挙げられる。
a)
等価騒音レベルを測定することができる騒音計
b)
単発騒音暴露レベルを測定することができる騒音計
c)
周波数重み特性
A
及び時間重み特性
S
を備えた騒音計
d)
騒音レベルをサンプリングすることができる時間重み特性
F
を備えたデータロガー
e)
d)
と同様に,騒音レベルのサンプル値を統計処理することができる機器
d)
及び e)に該当する測定器は,時間率騒音レベルを求める際にも使用できる。
備考1.
a)
及び b)に該当する測定器は衝撃性,変動性又は周期性をもった騒音の測定に広く用いるこ
とができるので,この規格に基づく騒音の測定ではこれらの機能を備えた測定器を使用する
ことが望ましい。ただし,そのためには,広いダイナミックレンジをもち,内部の電気的ノ
イズ及び過負荷特性が測定の目的に対して十分な特性となっていることが必要である。
2.
e)
に該当する測定器を用いる場合,レベルの分割幅は音圧レベルの変動幅に応じて決めるべ
きであるが,
5dB
を超えないほうがよい。
参考1.
騒音計にレベルレコーダを接続して騒音レベルを記録する場合,レベルレコーダは JIS C
1512
に適合するものを用いる。
2.
騒音計の出力を録音する場合は,レンジの設定や録音機器のダイナミックレンジと対象騒音
のレベルの変動幅の関係に十分注意する必要がある。
各種の測定器を用いて等価騒音レベルを求める方法については 5.4 で述べる。
4.2
校正 すべての測定器は校正を行う必要がある。その方法は,測定器の製造業者が指定した方法に
よる。測定器の使用者は,少なくとも一連の測定の前後に現場で検査を行わなければならない。その場合,
マイクロホンを含めた音響的な検査を行うことが望ましい。
参考
騒音計にレベルレコーダを接続してレベル記録をする場合,騒音レベルの記録に先立って,記
録紙上に騒音計の校正信号を記録し,確認する必要がある。録音する場合も,一連の測定の前
後に騒音計の校正信号を録音しておく。
5.
測定
5.1
一般事項 この規格では,環境騒音の測定に関する一般的な方法を規定する。測定結果とともに,
参考資料として,使用した測定器,測定方法及び測定期間中の状態の詳細を記録し,保存しておくことが
重要である。
備考1.
測定信号をテープレコーダに収録する場合,スタジオ仕様(ディジタル方式でないもの)で
あっても,4.1の a),b)に属する型の測定器を用いる場合には,ダイナミックレンジが不足す
ることがあるので注意が必要である。
2.
建物の近傍で気流が乱れている場所又はある種の工場地域や交通機関に近い場所では,低周
5
Z8731 : 1999
波数成分が卓越していることが多い。このような場合,
A
特性フィルタを通して測定しても
その成分を除くことができない場合がある。聴感的にはわずかに感じられる程度であっても,
それによって信号にひずみが生じ,その高周波数成分が可聴周波数領域にまで影響を及ぼす
こともあるので注意が必要である。
5.2
測定点 測定点の設定は,特に指定がない限り,次による。
5.2.1
屋外における測定 反射の影響を無視できる程度に小さくすることが必要な場合には,可能な限り,
地面以外の反射物から
3.5m
以上離れた位置で測定する。測定点の高さは,特に指定がない限り,地上
1.2
〜
1.5m
とする。それ以外の測定点の高さは,目的に応じて個々に定めるものとする。
5.2.2
建物の周囲における測定 建物に対する騒音の影響の程度を調べる場合には,特に指定がない限り,
対象とする建物の騒音の影響を受けている外壁面から
1
〜
2m
離れ,建物の床レベルから
1.2
〜
1.5m
の高さ
で測定する。
5.2.3
建物の内部における測定 特に指定がない限り,壁その他の反射面から
1m
以上離れ,騒音の影響
を受けている窓などの開口部から約
1.5m
離れた位置で,床上
1.2
〜
1.5m
の高さで測定する。
5.3
気象の影響 騒音の伝搬は気象条件によって変化し,その程度は伝搬距離が長いほど著しい。この
ような影響が問題となる場合には,以下に述べる二つの方法のうち,いずれかによって測定を行うことが
望ましい。
5.3.1
種々の気象条件における測定結果を平均する方法 測定点において種々の気象条件にわたる長期
平均等価騒音レベルが得られるように,実測時間を設定する。
5.3.2
特定の気象条件において測定する方法 特定の気象条件のときの騒音のレベルが把握できるよう
に実測時間を設定する。このような気象条件は,一般に,騒音の伝搬が最も安定している場合,すなわち
風速ベクトルが騒音源から測定点の方向に正の成分をもっている条件(順風)である。
備考
5.3.2
の方法によって得られる騒音レベルの値に補正を加えることによって,5.3.1 の方法による
場合に相当する騒音レベルの値を算出することができる場合もある。
5.4
等価騒音レベルの算出方法
5.4.1
一般的な方法 一般的な等価騒音レベルの算出方法を 5.4.2〜5.4.5 に示す。個別の規格等で特に規
定がない場合には,これらのうち適当な方法を選んで用いる。
備考
4.1
の a)に該当する積分平均型騒音計を用いることにより,すべての種類の騒音について正確
な測定値を得ることができる。5.4.3 及び 5.4.4 に述べるような場合には,積分平均機能を備え
ていない騒音計によって測定することもできる。5.4.2 及び 5.4.5 に述べるような場合について
は,4.1 の d)及び e)に示した機器を用いてサンプリングの方法によって近似値を求めることが
できる。
5.4.2
変動騒音 騒音の変動が大きい場合には,積分平均型騒音計を用いることが望ましい。その場合,
設定した実測時間を必ず記録しておく。この方法の代わりに,以下に述べるサンプリングによる方法又は
騒音レベルの統計分布による方法を用いることもできる。
5.4.2.1
サンプリングによる方法 時刻
t
1
から
t
2
まで,一定時間間隔⊿
t
ごとに騒音レベルのサンプル値
を求める。その結果から,次の式によって等価騒音レベルを算出する。
ú
û
ù
ê
ë
é
=
å
=
N
i
L
T
i
P
N
log
L
1
10
/
10
,
Aeq
,
A
10
1
10
(5)
6
Z8731 : 1999
ここに,
N
:
サンプル数
÷
ø
ö
ç
è
æ
∆
−
=
t
t
t
N
1
2
L
pA,i
:
騒音レベルのサンプル値
この方法による場合,サンプリング時間間隔が騒音レベルを測定する機器の時間重み特性の時定数に比
べて長くなるほど測定結果の精度は低下する。一般に,サンプリング時間間隔を測定システム全体の時定
数に比べて短くとれば,真の積分による結果と等しい結果が得られる。
参考 サンプリングの時間間隔⊿
t
は,騒音レベルの変動の程度に応じて決められるが,騒音計の時間
重み特性 F を用いる場合には 0.25 秒以下,時間重み特性 S を用いる場合には 2 秒以下とするこ
とが望ましい。ただし,騒音レベルの変動が緩やかで,実測時間が数分以上にわたる場合には,
⊿
t
を 5 秒程度まで広げてもよい。等価騒音レベルを測定するためには,時間重み特性 S を用
いることが望ましい。
5.4.2.2
騒音レベルの統計分布による方法 騒音レベルのサンプル値の統計分布から等価騒音レベルを
求めることもできる。その場合,騒音レベルの分割幅は,騒音の特性に応じて決めるべきであるが,一般
に 5dB 間隔が適当である。この方法による場合,等価騒音レベルは次の式によって求められる。
ú
û
ù
ê
ë
é
⋅
=
å
=
n
i
L
i
T
i
P
f
log
L
1
10
/
10
,
Aeq
,
A
10
100
1
10
(6)
ここに,
n
:
レベルの分割数
f
i
:
騒音レベルが
i
番目の分割クラスに入っている時間の割
合 (%)
L
pA,i
:
i
番目の分割クラスの中点の騒音レベル (dB)
5.4.3
定常騒音 対象としている時間全体にわたって騒音が定常である場合には,JIS C 1502 又は JIS C
1505
に適合する,積分機能を備えていない騒音計で測定を行ってもよい。その場合,周波数重み特性 A,
時間重み特性 S を用い,指示値の振れの平均を読み取る。ただし,指示値が 5dB を超える範囲にわたって
変動する場合には定常騒音として扱うことはできない。
5.4.4
騒音レベルが段階的に変化する定常音 騒音レベルが定常的ではあるが段階的に変化し,それぞれ
のレベルが明りょうに区別できる場合には,各段階の騒音レベルを定常騒音として測定し,レベルごとの
継続時間を測定しておくことにより,次の式によって等価騒音レベルを計算することができる。
úû
ù
êë
é
⋅
=
å
10
/
10
,
Aeq
,
A
10
1
10
i
P
L
i
T
T
T
log
L
(7)
ここに, T=
ΣT
i
:
全測定時間
T
i
:
i
番目の定常区間の継続時間
L
pA,i
:
i
番目の定常区間における騒音レベル (dB)
5.4.5
単発的に発生する騒音 環境騒音の中で単発的に発生する騒音が卓越している場合,時間 T の間に
発生する騒音の単発騒音暴露レベルから,次の式によって等価騒音レベルを計算することができる。
ú
û
ù
ê
ë
é
=
å
=
n
i
L
T
i
T
T
log
L
1
10
/
0
10
,
Aeq
,
AE
10
10
(8)
ここに,
L
AE,i
:
時間 T (s) の間に生じる n 個の単発的な騒音のうち,i 番目の
騒音の単発騒音暴露レベル
T
0
:
基準時間 (1s)
単発的な騒音が同じ大きさで繰り返して発生している場合には,その騒音が整数回繰り返す時間にわた
7
Z8731 : 1999
って測定する。別の方法として,4.1b)に示した騒音計を用いて一回の発生について単発騒音暴露レベルを
測定し,その結果から次の式によって等価騒音レベルを求めることもできる。
( )
÷÷ø
ö
ççè
æ
−
+
=
0
10
10
AE
,
Aeq
10
10
T
T
log
n
log
L
L
T
(9)
ここに,
n
: 時間 T (s) における騒音の発生回数
T
0
: 基準時間 (1s)
5.5
補正 この規格で規定する測定方法は,環境における騒音を物理的に正しく表示することを目的と
している。したがって,騒音に対する人間の反応を評価する場合には,その目的に適した基本量とするた
めに,測定値に何らかの補正を加えることが必要となることもある。等価騒音レベルの値に対してそのよ
うな補正を加えた量が評価騒音レベルである。
6.
記録事項 音響測定結果に加えて,6.1 に述べる事項を記録し,参考資料として保存しておく。6.2 及
び 6.3 に述べる事項も必要に応じて記録しておくことが望ましい。
6.1
測定方法
a)
測定器の種類,測定方法及び計算による場合にはその方法
b)
測定時間に関する事項,すなわち基準時間帯,実測時間及びサンプリングによる方法を用いた場合に
はその詳細(サンプリング時間間隔,回数など)
c)
測定点(位置及び高さ)
6.2
測定時の条件
a)
大気の状態:風向・風速,雨,地上及びその他の高さにおける気温,大気圧,相対湿度
b)
騒音源と測定点の間の地表の種類及び状態
c)
騒音源の騒音放射の変動性
6.3
定性的記述
a)
騒音源の方向の判断可能性
b)
騒音源の同定の可能性
c)
騒音源の性質
d)
騒音の特徴
e)
騒音の意味性
8
Z8731 : 1999
附属書 1(規定) 適正な土地利用のための音響データの収集
序 文 この 附属 書 は,1983 年に発 行さ れた ISO 1996-2, Acoustics− Description and measurement of
environmental noise, Part 2 : Acquisition of data pertinent to land use
を翻訳してこの規格の本体と内容が整合す
るように修正したもので,内容は次による。
この附属書では,環境騒音を記述するための騒音レベルの表示方法及びデータを収集する方法を示す。
このようなデータに基づくことにより,環境騒音の観点から特定の地域の土地利用形態を適切に設定し,
実在又は計画中の騒音源の許容の程度を判断することができる。
連続積分又は時間サンプリングによる方法,及び特定の気象条件下における測定等,具体的な測定の方
法を示す。
必要に応じて,予測計算又は縮尺模型実験による方法を利用してもよい。
土地利用に関するデータを得るために予測計算による方法を用いる場合にも,この附属書で規定する方
法で騒音を記述することが重要である。ただし,この附属書では,予測計算方法の詳細は取り扱わない。
この附属書は,環境騒音の許容限度を規定するものではない。
1.
適用範囲 この附属書は,次の目的で騒音の表示量を得るためのデータの収集方法を規定する。
a)
統一的な方法による特定の地域における環境騒音の表示
b)
現在又は将来予想される騒音を考慮した土地利用の適正さの評価
2.
引用規格 本体の 2.による。
3.
定義 この附属書で用いる用語の意味は,本体の定義によるほか,次による。
3.1
土地利用 (land use) 対象とする地域の現状又は計画上の用途。
3.2
騒音レベルゾーン (noise zone) 長期平均等価騒音レベル又は長期平均評価騒音レベルがある特定
の二つのレベルの間になっている領域。例えば,65dB と 70dB の間の騒音レベルゾーンは 65〜70dB と表
示する。
4.
データの収集 土地利用に関する基本的データとして,次の事項が必要である。
a)
対象とする地域の地勢情報
b)
その地域における騒音源の特性
c)
その地域における居住状況及び周辺の状況
備考 対象とする地域の気象条件に関する情報,すなわち,風向・風速,雨量,気温(温度分布の逆
転が生じる可能性も含む)に関して,通年又は適当と思われる代表的な期間についての統計デ
ータを調べておくことが望ましい。
4.1
音響データ
4.1.1
一般事項 基本的な音響データは,基準時間帯における等価騒音レベル,並びに必要に応じて同じ
基準時間帯について求めた評価騒音レベル及び騒音の特性に関する補足的情報とする。
4.1.2
評価騒音レベル 騒音源及び対象とする地点の特性を考慮して,それぞれの基準時間帯について次
の式によって評価騒音レベルを求める。
9
Z8731 : 1999
(L
Ar,T
)
i
=(L
Aeq, T
)
i
+K
1i
+K
2i
ここに, (L
Aeq, T
)
i
=i 番目の基準時間帯についての等価騒音レベル (dB)
K
1i
:
i
番目の基準時間帯に対する純音補正の値 (dB)
K
2i
:
i
番目の基準時間帯に対する衝撃音補正の値 (dB)
備考 基準時間帯のうちの限定された時間に純音性又は衝撃性の騒音が存在する場合には,その継続
時間を考慮して補正の値を決めてもよい。
4.1.3
純音補正 ある特定の時間帯において,騒音に著しい純音性が認められる場合には,その時間帯に
ついて測定された等価騒音レベルに補正値 K
1
を加えてもよい。その場合には,補正値を明記する。
備考 一般に,ある 1/3 オクターブバンドにおけるレベルが隣接する周波数帯域における値よりも 5dB
以上大きくなっている場合には,その周波数帯域に卓越した純音成分が含まれていると考えて
よい。騒音の中に純音成分が含まれているか否かを正確に調べるためには,さらに狭帯域周波
数分析が必要である。純音成分が含まれていることが聴感的にも明らかで,1/3 オクターブバン
ド分析でもその存在が認められる場合には,補正値は 5〜6dB とするのが適当であろう。
参考 現在,ISO 1996 シリーズの見直し作業が ISO/TC 43(音響)/SC 1(騒音)で行われており,そ
の中で上記の純音補正の具体的な方法が検討されている。
4.1.4
衝撃性補正 ある特定の時間帯において,騒音に著しい衝撃性が認められる場合には,その時間帯
について測定された等価騒音レベルに補正値 K
2
を加えてもよい。その場合には,補正値を明記する。
備考 ソニックブーム,採鉱,採石のための発破作業などで生じる大振幅の騒音については,評価騒
音レベルを求める際に周波数重み特性 C を用いる方法を採用している国もある。
参考 現在,ISO 1996 シリーズの見直し作業が ISO/TC 43(音響)/SC 1(騒音)で行われており,そ
の中で上記の衝撃性補正の具体的な方法が検討されている。
4.2
気象の影響の補正 ある特定の気象条件の下で測定された等価騒音レベルの値から長期にわたる値
を推定するために,気象の影響に関する補正を加えてもよい(本体の 5.3.2 参照)
。
4.3
長期平均等価騒音レベル 指定された基準時間帯について,次の式によって長期平均等価騒音レベ
ルを計算する。
(
)
ú
û
ù
ê
ë
é
=
å
=
N
i
L
LT
i
T
N
log
L
1
10
/
10
,
Aeq
,
Aeq
10
1
10
(1)
ここに,
N
:
基準時間帯のサンプル数
(L
Aeq, T
)
i
:
i
番目の基準時間帯の等価騒音レベル (dB)
4.4
長期平均評価騒音レベル 指定された基準時間帯について,次の式によって長期平均評価騒音レベ
ルを計算する。
(
)
ú
û
ù
ê
ë
é
=
å
=
N
i
L
LT
i
T
N
log
L
1
10
/
10
,
Ar
,
Ar
10
1
10
(2)
ここに,
N
:
基準時間帯のサンプル数
(L
Ar,T
)
i
:
i
番目の基準時間帯の評価騒音レベル (dB)
4.5
時間率騒音レベル 騒音の時間変動特性を記述する場合には,等価騒音レベルだけでなく騒音レベ
ルの分布も用いることが望ましい場合もある。その場合には,L
A95,T
, L
A50,T
, L
A5,T
のような時間率騒音レベル
を求める(
附属書 2 参照)。
10
Z8731 : 1999
5.
長期平均等価騒音レベル及び長期平均評価騒音レベルの求め方
5.1
一般事項 これらの量は,一般に測定及び計算又はそれらのいずれかによって求める。それらの結
果は,特定の地点における騒音レベルの代表値である。測定による場合,騒音源と対象とする地点の特性
及び測定結果の重要性を考慮して測定方法を決める。
測定結果に対象とする地点における騒音として例外的な音の寄与が含まれている場合には,必要に応じ
てその旨を記述しておく。
5.2
測定器 本体の 4.による。
5.3
測定点の位置と数
5.3.1
一般事項 等価騒音レベルの測定は,対象とする環境騒音を記述する上で適当な屋外の位置で行う。
測定位置は地図上に明示する。測定点の位置と数は,対象とする環境に対して必要な空間分解能を考慮し
て決める。
測定点の設定の仕方には,次のような方法がある。
a)
対象とする地域の全体にわたってほぼ等間隔に測定点を設定する(例えば,地図上の格子線の交点)
。
それによって,各測定点における測定結果を内挿して騒音レベルコンター(等高線)を表示すること
ができる。
b)
特定の地域の平均レベルを代表する点を選ぶ。
c)
対象とする地域に存在する騒音源が放射する騒音の特性を把握できる地点を選ぶ。これによって,対
象とする地域内の他の位置における騒音を計算によって推定することができる。
5.3.2
マイクロホン位置 マイクロホンの高さは,実際の,又は予想される居住の態様を考慮して設定す
る。高い建物が建てられることが予想される地域では,測定点の高さは 3〜11m とする。その他,特に指
定がない場合には,本体の 5.2.1 による。
備考 測定点を高くすることによって,地表面効果や低い障害物の影響が少なくなるため,測定の再
現性は高くなるが,測定値は地表面近くで測定される値よりも一般に大きめとなる。
建物の周囲における測定は,本体の 5.2.2 による。
反射の影響を無視できる程度に小さくすることが必要な場合には,可能な限り地面以外の反射物から
3.5m
以上離れた位置又は開放された窓から 0.5m 離れた位置で測定を行う。
備考 建物の外壁から 1〜2m 離れた点で測定を行う場合,建物の反射の影響が含まれる。対象とする
騒音が広帯域成分をもち,卓越した狭帯域成分や純音成分を含んでいない場合には,反射によ
るレベルの増大は,最大 3dB 程度である。これを補正する場合には,建物の外壁面の大きさ及
び反射性を考慮して適切な値を用いる。外壁面の延長上で,外壁の端部から 3.5m 以上離れてい
る点で測定を行う場合には,反射の影響はほぼ無視できる。
5.3.3
対象とする地域における測定点の位置 一つの地域内に設定する測定点の密度は,検討に必要とさ
れる空間分解能及び騒音のレベルの空間的な変化の程度によって決める。騒音のレベルの場所による変化
は,騒音源の近傍や大きな障害物の近くで著しい。したがって,このような場所では,測定点の密度をさ
らに高くする必要がある。一般に,隣り合う測定点の間のレベル差が 5dB 以上にならないようにする。レ
ベル差がそれ以上になった場合には,中間に測定点を追加する。
5.3.4
対象とする地域を代表する測定位置 騒音レベルの空間的な変化が小さい場合,又は限られた範囲
だけを対象とする場合には,測定結果が地域全体を代表するような地点に測定点を設定する。このような
地点を設定するためには,予備調査を行うことが望ましい。
11
Z8731 : 1999
5.3.5
騒音源の特性を調べるための測定位置 騒音源の寄与を個々又は種類別に調べる必要がある場合
には,他の騒音源の影響を避けるために,対象とする騒音源の近傍に測定点を設定する。他の地点におけ
る騒音のレベルは,距離減衰,空気の音響吸収,地表面の影響及び遮へい効果などを考慮して,内挿又は
外挿によって推定することができる。
備考 適当な伝搬計算モデルによって内挿計算が可能な場合には,測定点の数を減らしてもよい。
5.4
時間の設定
5.4.1
基準時間帯 基準時間帯及び実測時間を適切に設定するためには,長時間にわたる予備測定を行っ
て騒音の状態を調べることが必要な場合もある。基準時間帯は,居住者の典型的な生活態様及び騒音源の
種々の稼動条件(交通量や工業プラントなどの稼動時間)をカバーするように設定する。居住者の生活態
様を考慮する場合には,昼間及び夜間をそれぞれ基準時間帯に設定するのが適当である。週末や休日につ
いては,夕方についても基準時間帯を設定してもよい。一つの基準時間帯の間に居住者の生活態様に大き
な変化がある場合には,その基準時間帯について評価騒音レベルを算出する際に,生活態様の変化に応じ
てレベルに補正を加えてもよい。そのような補正を行う場合には,報告書に補正値とそれを適用した時間
帯を必ず明記する。
5.4.2
長期基準期間 長期基準期間の設定に当たっては,騒音制御の目的,対象とする地域の特性と居住
者の生活態様,騒音源の稼動状況及び騒音の伝搬条件の変化を考慮する必要がある。
備考 長期基準期間は,騒音の発生状況の長期的変化を含むように設定する。その期間は数箇月にわ
たることが多い。ただし,騒音の発生が一年のうちの特定の期間に限られている場合には,長
期基準期間をその期間に限定してもよい。
5.4.3
実測時間 実測時間は,対象とする基準時間帯の等価騒音レベルが安定して得られるように,また
長期平均等価騒音レベル及び長期平均評価騒音レベルが必要とされる精度で推定できるように,騒音の発
生及び伝搬の変化に応じて設定する。
騒音に明らかな周期性が認められる場合には,少なくともその 1 周期を含むように実測時間を設定する。
1
周期にわたって連続的に測定を行うことができない場合には,
1
周期のうちの部分ごとに実測時間を設定
し,全体で 1 周期をカバーするようにする。
騒音レベルが段階的に変化している場合には,騒音レベルがほぼ定常とみなされる時間のそれぞれを代
表するように実測時間を設定する。
騒音が不規則に変動している場合には,長期平均等価騒音レベルの推定のために十分な数のサンプル値
が得られるように実測時間を設定する。
上空又は側方を通過するような騒音源(例えば,航空機や鉄道などで,通過する間だけ騒音が存在し,
基準時間帯のその他の時間には騒音が存在しないような騒音源)を対象とする場合には,通過するときの
単発騒音暴露レベルが測定できるように実測時間を設定する。
測定結果の比較を容易にするために,再現性があり安定した騒音の伝搬条件となる気象条件を選んで測
定を行うことが望ましい。特に一つの卓越した騒音源がある場合には,騒音源から対象とする地域へ騒音
が伝わりやすい気象条件を選び,以下に示す各条件を満たすように実測時間を設定するとよい。
− 主要な騒音源の中心と対象とする地域の中心を結ぶ線に対して風向が±45°以内の範囲で順風となっ
ている条件
− 地上 3〜11m の高さにおける風速が 1〜5m/s の範囲になっている条件
− 地表近くに強い気温の逆転が生じていない条件
− 強い降雨でない条件
12
Z8731 : 1999
備考 マイクロホンで生じる風雑音が測定に影響を与えていないことを常に確認する必要がある。
5.5
音響データの収集
5.5.1
一般事項 音響データは実測時間全体にわたる測定結果から算出する。その方法には,次に述べる
二つの方法がある。
5.5.2
連続測定による方法 基準時間帯全体を実測時間とする。ただし,強風や豪雨のときや対象とする
地域の代表的な騒音以外の騒音の影響が強い場合など,測定誤差を生じるおそれのある時間帯を除く。
備考 この方法によれば最も正確な測定結果が得られるが,測定に多大な時間と手間がかかることを
考えると,必ずしも時間サンプリングによる方法に比べて勝っているとはいえない。
5.5.3
時間サンプリングによる方法 基準時間帯の間に幾つかの離散的な実測時間を設定し,その間の測
定結果から等価騒音レベル及び評価騒音レベルを計算する。この方法による場合,実測時間の全体は基準
時間帯の一部であり,基準時間帯には実際に測定を行わない時間が含まれる。
5.6
長期平均等価騒音レベル及び長期平均評価騒音レベル 5.2〜5.5 によって求めた結果から,長期平均
等価騒音レベルは 4.3 によって,また長期平均評価騒音レベルは 4.4 によって計算する。
6.
騒音のレベルの予測 建設が計画されている工場,道路・航空機・鉄道などの交通施設から放射され
る騒音の状況を予測する場合,予測計算又は縮尺模型実験によってもよい。その場合には,採用した予測
計算方法又は実験方法を詳しく記述する必要がある。
備考 国又は地方自治体が予測計算方法を示している場合にはそれによる。
7.
騒音レベルゾーン及び結果の表示 現状の環境騒音の測定結果及び計画されている事業による騒音の
予測結果の報告に,騒音レベルゾーンによる表示を加えると効果的である。その場合,5dB ごとのレベル
ゾーンの境界を表す等高線による表示が望ましい。各々のゾーンは,上限値及び下限値 (dB) で表す。
対象とする地域の地図上で,異なる騒音レベルゾーンを色又はハッチングで区別する場合には,
附属書
1
表 1 に示すクラスごとの色又はハッチングによって表示することが望ましい。
備考 レベルゾーンの幅を 10dB とする場合には,附属書 1 表 2 に示す色又はハッチングを用いる。
附属書 1 表 1 5dB ごとの騒音レベルゾーンの色又はハッチング
騒音レベルゾーン (dB)
色
ハッチング
35
以下
明るい緑 (Light
green)
小さな点,低密度
35
〜40
緑 (Green)
中程度の点,中密度
40
〜45
暗い緑 (Dark
green)
大きな点,高密度
45
〜50
黄 (Yellow)
縦線,低密度
50
〜55
黄土色 (Ochre)
縦線,中密度
55
〜60
橙 (Orange)
縦線,高密度
60
〜65
朱 (Cinnabar)
クロスハッチング,低密度
65
〜70
カーミン (Carmine)
クロスハッチング,中密度
70
〜75
明るい紫みの赤
(Lilac red)
クロスハッチング,高密度
75
〜80
青 (Blue)
広い縦じま
80
〜85
暗い青 (Dark
blue)
黒
13
Z8731 : 1999
附属書 1 表 2 10dB ごとの騒音レベルゾーンの色又はハッチング
騒音レベルゾーン (dB)
色
ハッチング
45
以下
緑 (Green)
中程度の点,中密度
45
〜55
黄 (Yellow)
縦線,低密度
55
〜65
橙 (Orange)
縦線,高密度
65
〜75
赤 (Red)
クロスハッチング,中密度
75
〜85
青 (Blue)
広い縦じま
騒音マップは,建物,交通機関,工場地域,農地,植生,海抜高度を表す等高線などを示し,縮尺を明
示した公式の地図上に作成する。
地図上には,騒音レベルの測定地点(○印)又は予測地点(×印)を明示する。
8.
記録事項 次の事項を記録する。
8.1
測定方法 本体の 6.1 による。
8.2
測定時の条件
a)
気象条件に関するデータ
1)
雨,霧雨,乾燥している,湿気が多い,曇り,晴天などの定性的データ
2)
定量的データ
− 実測時間内の風向・風速(特に規定がない場合には,これらの測定は屋外の開けた場所で地上 3
〜11m の高さで行う。
)
− 必要な場合には,地上 1〜11m の高さで測定された気温のこう配
− 相対湿度
b)
騒音源と測定点の間の地表の種類及び状態
c)
騒音源の騒音放射の変動性
8.3
定性的記述
a)
測定又は予測計算の目的
b)
騒音源に関する記述
c)
対象とする地域に関する記述
d)
騒音の特徴
e)
騒音の意味性
f)
対象とする地域又は範囲について
− 必要に応じて,騒音レベルゾーンを表示した騒音マップ
− 内挿又は外挿計算によった場合には,その方法(計算に用いた伝搬モデルの記述を含む)
g)
対象とする地域又は場所の地勢情報
h)
現状及び計画されている土地利用の状況
8.4
定量的データ
a)
個々の基準時間帯における等価騒音レベル
b)
個々の基準時間帯における評価騒音レベル
c)
長期平均等価騒音レベル,可能な場合には変動性の評価(基準時間帯における測定結果の標準偏差,
測定回数及び計算に用いた式と諸量)
d)
長期平均評価騒音レベル,可能な場合には変動性の評価(基準時間帯における測定結果の標準偏差,
測定回数及び計算に用いた式と諸量)
14
Z8731 : 1999
9.
報告事項 測定報告書には,8.に示した諸データを示すとともに,この附属書を参照したことを明記
する。
騒音レベルの予測結果を報告する場合には,次の事項を付記する。
a)
騒音の予測計算法,模型実験によった場合にはその実験方法
b)
騒音源の位置及び特性(例えば,道路交通騒音の場合には,交通量と交通流特性,音響パワーレベル,
周波数スペクトルなど)
c)
建物や障壁による騒音の減衰又は反射
d)
空気による音響吸収
e)
騒音の伝搬条件(地表面,樹木・潅木,建物群などによる音の減衰)
f)
設定した気象条件
g)
予測地点
15
Z8731 : 1999
附属書 2(参考) 環境騒音の表示・測定方法に関する補足事項
1.
適用範囲 この附属書では,騒音の時間変動特性を表す場合に用いられる時間率騒音レベルの求め方,
特定の間欠騒音や衝撃騒音の表示・測定方法,及び暗騒音の影響の補正方法について,改正前の JIS Z 8731 :
1983
(騒音レベル測定方法)で規定されていた内容を取りまとめて参考として示す。
2.
時間率騒音レベルの求め方 ある時間範囲 T について,騒音計の時間重み特性 F を用いて一定時間間
隔⊿t ごとに騒音レベルを測定し,累積度数分布を求める。その累積度数が (100−N) %に相当するレベル
を N パーセント時間率騒音レベル L
AN,T
とする。
備考 5 パーセント時間率騒音レベル L
A5,T
,95 パーセント時間率騒音レベル L
A95,T
をそれぞれ 90 パー
セントレンジの上端値,下端値という。
3.
特定の間欠騒音及び衝撃騒音の表示・測定方法 環境騒音に含まれる特定の間欠騒音又は衝撃騒音に
着目して測定を行う場合,本体に規定する単発騒音暴露レベルの測定によるほか,次の方法による。
3.1
特定の間欠騒音 騒音の発生ごとに,騒音計の指示値の最大値を読み取る。この場合,特に規定が
ない場合には,騒音計の時間重み特性 F を用いる。最大値がほぼ一定の場合には,数回の平均値で表示す
る。発生ごとに最大値がかなりの範囲にわたって変化する場合には,多数回の測定を行い,測定結果のエ
ネルギー平均,累積度数分布の 90 パーセントレンジの上端値などを求めて代表値とする。測定結果には,
必ず使用した騒音計の時間重み特性を付記する。また,必要な場合には,騒音の発生頻度,1 回の発生ご
とのおおよその継続時間なども記録しておく。
3.2
特定の衝撃騒音
3.2.1
特定の分離衝撃騒音 特に規定がない場合には,騒音の発生ごとに騒音計の時間重み特性 F による
指示値の最大値を読み取る。最大値がほぼ一定の場合には,数回の平均値で表示する。発生ごとに最大値
がかなりの範囲にわたって変化する場合には,多数回の測定を行い,測定結果のエネルギー平均値,累積
度数分布の 90 パーセントレンジの上端値などを求めて代表値とする。測定結果には,騒音の発生頻度など
を記録しておく。
3.2.2
特定の準定常衝撃騒音 特に規定がない場合には,騒音計の時間重み特性 F による指示値の最大値
を読み取る。
4.
暗騒音の影響の補正 特定の定常騒音の騒音レベルを測定する場合,その騒音があるときとないとき
の騒音計の指示値の差が 10dB 以上であれば,暗騒音の影響はほぼ無視できる。その差が 10dB 未満のとき
には,暗騒音の影響が無視できない。その場合には,
附属書 2 表 1 によって指示値を補正することにより,
対象とする特定の騒音だけがあるときの騒音レベルを推定することができる。
附属書 2 表 1 暗騒音の影響に対する騒音計の指示値の補正
単位 dB
対象音があるときとないときの指示値の差 4 5 6 7 8 9
補正値
−2
−1
16
Z8731 : 1999
原案作成委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
子 安 勝
千葉工業大学工学部
今 井 章 久
武蔵工業大学工学部
今 泉 八 郎
株式会社小野測器
大 西 博 文
建設省土木研究所
押 野 康 夫
財団法人日本自動車研究所
君 塚 郁 夫
日本アイ・ビー・エム株式会社
桑 野 園 子
大阪大学人間科学部
佐 藤 宗 純
工業技術院電子技術総合研究所
鈴 木 英 男
オンテック R&D 株式会社
鈴 木 陽 一
東北大学電気通信研究所
瀧 浪 弘 章
リオン株式会社
竹 内 恒 夫
環境庁大気保全局
田 近 輝 俊
株式会社環境技術研究所
(主査)
橘 秀 樹
東京大学生産技術研究所
田 中 俊 光
株式会社神戸製鋼所
東 山 三樹夫
工学院大学工学部
平 松 友 孝
大成建設株式会社技術研究所
福 島 寛 和
建設省建築研究所
松 本 晃 一
日本道路公団試験研究所
三 浦 甫
静岡理工科大学理工学部
矢 野 博 夫
千葉工業大学工学部
山 田 一 郎
財団法人小林理学研究所
山 田 英 美
松下インターテクノ株式会社
山 本 貢 平
財団法人小林理学研究所
米 川 善 晴
労働省労働医学総合研究所
田 仲 信 夫
工業技術学院標準部材料機械規格課
橋 本 繁 晴
財団法人日本規格協会
(事務局)
後 藤 健 次
社団法人日本音響学会