2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
Z 8704-1993
温度測定方法−電気的方法
Temperature measurement−Electrical methods
1. 適用範囲 この規格は,温度による熱起電力又は電気抵抗の変化を利用して温度を電気的に測定する
一般的方法(以下,測定方法という。)について規定する。
備考 この規格の引用規格は,付表1に示す。
2. 用語の定義 この規格で用いる主な用語の定義は,JIS C 1601, JIS C 1602, JIS C 1603, JIS C 1604, JIS
C 1605, JIS C 1606, JIS C 1610, JIS C 1611, JIS C 1802及びJIS Z 8103によるほか,次による。
(1) 計測器 測定器,受信器,標準器などの総称。
(2) 測定器 電圧又は抵抗の測定を行うための器具。
(3) 受信器 測温体の信号を受け,伝送,温度の指示・記録などを行う器具。
(4) 標準器 ある単位で表された量の大きさを具体的に表すもので,測定の基準として用いるもの(JIS Z
8103参照)
(5) 測温体 温度の測定量を信号に変換する系の最初の要素の検出器で,熱電対,測温抵抗体又はサーミ
スタ測温体。
(6) 伝送器 測温体の信号を伝送するため別の信号に変換し,又は信号の大きさを変える機能をもつ器具。
(7) 検出素子 温度を検知し,その量を電気信号に変換する部品。測温体の一部を構成する。例えば,熱
電対の測温接点,測温抵抗体の抵抗素子,又はサーミスタ測温体のサーミスタ。
(8) 検出部 測温体のうち,測定対象と同じ温度になるべき部分。検出素子及びその近傍にある保護管の
一部を含む。
(9) 保護管 検出素子が,被測定物,雰囲気などに直接接触しないように保護するために付ける管。
(10) 端子 温度に対する信号を発信又は受信するための接続点。
(11) 補償接点 熱電対と補償導線との接合点。
3. 測定方法の特徴 測定方法は,測定対象に検出部を接触させ,両者が熱的平衡に達したときの検出部
の電気的特性によって温度を測定するものである。
測定方法は,遠隔測定及び自動記録に適する。
また,自動調節にも利用できる。
4. 測定方法の種類 測定方法の種類は,これに用いる測温体によって分類し,表1に示す2種類とする。
2
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表1 測定方法の種類
種類
測温体
熱電対を用いる方法 熱電対
(JIS C 1602)
シース熱電対
(JIS C 1605)
抵抗式測温体(1)を
用いる方法
測温抵抗体
(JIS C 1604)
シース測温抵抗体
(JIS C 1606)
サーミスタ測温体
(JIS C 1611)
注(1) 測温抵抗体,シース測温抵抗体及びサーミスタ
測温体を一括して抵抗式測温体と総称する。
5. 測定方法の選定及び適用温度範囲 測定方法は,測定対象によって次の事項を考慮して,目的に適す
るものを選定する。
(1) 表2に示す熱電対の使用限度,表3に示すシース熱電対の使用限度及び表4に示す抵抗式測温体の使
用温度範囲。
(2) 7.に示す測温体の利点及び欠点。
(3) 6.に示す計測器の選定に関する事項,並びに8.に示す計測器の利点及び欠点。
(4) 14.2に示す保護管。
なお,熱電対を用いる方法は10.に,抵抗式測温体を用いる方法は11.による。
表2 熱電対の使用限度
単位℃
熱電対の構成材料の
記号
素線径
(mm)
常用限度(2)
過熱使用限度(3)
B
0.50
1 500
1 700
R
0.50
1 400
1 600
S
K
0.65
650
850
1.00
750
950
1.60
850
1 050
2.30
900
1 100
3.20
1 000
1 200
E
0.65
450
500
1.00
500
550
1.60
550
650
2.30
600
750
3.20
700
800
J
0.65
400
500
1.00
450
550
1.60
500
650
2.30
550
750
3.20
600
750
T
0.32
200
250
0.65
200
250
1.00
250
300
1.60
300
350
注(2) 空気中において連続使用できる温度の限度。
(3) 必要上やむを得ない場合に短時間使用できる温度の限度。
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表3 シース熱電対の使用限度(常用限度)
単位 ℃
金属シース
外径 (mm)
1.0, 1.5, 1.6, 2.0
3.0, 3.2
4.5, 4.8
6.0, 6.4
8.0
材質(4)
A, B
A, B
A
B
A
B
A
B
シース熱電対の
構成材料
SK
650
750
800
900
800 1 000 900 1 050
SE
650
750
800
900
800
900 800
900
SJ
450
650
750
750
750
ST
300
350
350
350
350
注(4) A:オーステナイト系ステンレス鋼,B:ニッケルクロム系耐熱合金
表4 抵抗式測温体の使用温度範囲
単位 ℃
種類
使用温度範囲
低温用
中温用
高温用
測温抵抗体
Pt100
−200〜+100
0〜350
0〜650
JPt100
−200〜+100
0〜350
0〜500
シース測温抵抗体 Pt100, JPt100
−200〜+100
0〜350
0〜500
サーミスタ測温体
−50〜+350のうち指定された温度範囲
参考 JPt100は,JIS C 1604では,将来廃止する予定である。
6. 計測器の選定 計測器は,次の事項を考慮して,目的に適するものを選定する。
(1) 8.に示す計測器の利点及び欠点。
(2) 必要な精度。
(3) 統一信号に変換して表示するときには,その信号の大きさと種類。
(4) 測温体の断線の際にそれを識別しようとするときには,バーンアウト機構。
(5) 防爆を必要とするときには,防爆基準(JIS C 0903)
7. 測温体の利点及び欠点 測温体の利点及び欠点を表5に示す。
表5 測温体の利点及び欠点
測温体
利点
欠点
熱電対
(1) 小さい箇所の温度の測定ができる。
(2) 遅れを小さくすることができる。
(3) 振動・衝撃などに対して丈夫である。
(4) 温度差を測るのに都合がよい。
(1) 基準接点が必要である。
(2) 基準接点及び補償導線の誤差を考える必要
がある。
測温抵抗体
(1) ある大きさの部分の平均温度を測定するの
に都合がよい。
(2) 基準接点などを必要としない。
(3) 熱電対に比較して常温,中温付近で精度が
良い。
(1) 遅れを小さくしにくい。
(2) 振動の強い場所では破損のおそれがある。
(3) 自己加熱に注意する必要がある。
サーミスタ測温体 (1) 小さい箇所の温度測定ができる。
(2) 基準接点などを必要としない。
(3) 感度が非常に良い。
(4) 導線の抵抗による誤差を無視できる場合が
多い。
(1) 抵抗と温度との非直線性が大きく,使用温
度範囲が限定される。
(2) 自己加熱に注意する必要がある。
(3) 多くの場合,互換用抵抗を必要とする。
(4) 衝撃によって破損するおそれがある。
8. 計測器の利点及び欠点 計測器の利点及び欠点を表6に示す。
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表6 計測器の利点及び欠点
計測器
利点
欠点
測定器 ブリッジ
電位差計
精度が最も良く,標準として信頼できる。 (1) 熟練を要する。
(2) 操作が必要である。
ディジタル電圧計 (1) 高精度のものは標準として使用できる。
(2) 操作・熟練を要しない。
(1) 高精度を維持するには,定期的に校正す
る必要がある。
(2) 電源投入後,安定するまでに時間を要す
る。
受信器 自動平衡計器
(1) 表示機構のトルクが大きい。
(2) 零位法を用いるので精度が良い。
(3) 目盛の温度範囲の狭いものを作り得る。
構造が複雑である。
ハイブリッド形計
器
(1) ディジタル処理を用いるので精度が良
く,演算機能をもつ。
(2) アナログ記録とディジタル印字を同時
に行うので読取りが正確である。
(3) 多種類入力が可能な機能をもち,任意に
選択使用が可能である。
(4) 目盛範囲が任意に設定できる。
(5) 多数の測定箇所を短時間に測定できる。
(6) コンピュータとのインターフェイスが
ある。
(1) 構造が複雑である。
(2) 使用条件を設定する操作が必要である。
ディジタル温度計 (1) 温度が直読できる。
(2) 熟練を要しない。
精度を維持するには,校正周期及び使用環境
に注意する必要がある。
温度伝送器
(1) 温度範囲によらないで統一信号が得ら
れる。
(2) 可動部がないので構造が簡単である。
(1) 伝送器だけでは,指示ができない。
(2) 温度を知るためには換算が必要である。
可動コイル形計器 熱電対の場合,補助電源なしで測定できるも
のもある。
外部抵抗調整を要するものもある。
9. 測定手順 温度の測定は,次の手順に従って行う。
(1) 5.によって,測定方法を選定する。
(2) 6.によって,計測器を選定する。
(3) 希望する測定精度に応じ,10.7又は11.6によって測定方式を決める。
(4) 必要があれば,あらかじめ15.によって検査する。
(5) 測温体及び受信器を14.3及び14.4によって取り付ける。
なお,取付けに当たっては,誤差を少なくするように注意する(7.参照)。
(6) 取付け後,必要な場合は,外部抵抗を規定値に調整する。
(7) 7.に示す事項を考慮して誤差を補正する。
(8) 長期間にわたって使用する温度測定用器具(測温体,伝送器,計測器及びその他の必要な器具。以下,
これらを一括して温度計という。)は,15.に示す方法によって,一定の期間を経過するごとに検査を
行う。
10. 熱電対を用いる方法
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10.1 測定回路の構成 測定回路は,一般に熱電対,基準接点,補償導線,計測器及び銅導線からなり,
それぞれの用途に適した構造及び性能(機械的強度・電気的性能・耐久性など)をもつものとする。
10.2 熱電対
10.2.1 熱電対 熱電対は,JIS C 1602に規定されている素線径に応じて指定された過熱使用限度以上に温
度を上げてはならない(表2参照)。
また,シース熱電対は,JIS C 1605に規定された金属シースの外径及び材質に応じて指定された常用限
度以下で使用するのがよい(表3参照)。
10.2.2 熱電対の選定 熱電対は,使用限度(表2及び表3参照)のほか,次の事項を考慮して,その種類
及び素線径を選定する。
(1) B熱電対,S熱電対,R熱電対,K熱電対及びE熱電対は,酸化に対して強いが還元に対して弱く,J
熱電対及びT熱電対は,還元に対しては強いが酸化に対して弱い。したがって,使用場所に応じた材
質を選ぶこと。
(2) B熱電対,S熱電対及びR熱電対は高価なので,測定精度を良くしたい場合又は温度測定が1 000℃以
上に及ぶ場合以外は,K熱電対,E熱電対,J熱電対又はT熱電対を使用するとよい。
また,400℃以下の温度測定ではE熱電対又はJ熱電対を,250℃以下で0℃以下にも及ぶ温度測定
ではT熱電対を使用するとよい。
(3) 素線径及びシース外径が太いほど高温でも耐久性があるが,比較的高い温度で長時間使う場合には,
太い素線径又は太いシース外径の熱電対を使う方がよい。
(4) 遅れを少なくしたい場合,短い熱電対を使う場合などは,細い素線径又は細いシース外径の熱電対を
使う。
10.2.3 熱電対の保護 熱電対は,通常,保護管(14.2参照)を用いて保護することが必要である。
10.3 基準接点
10.3.1 基準接点の種類 基準接点は,氷点式基準接点,電子冷却式基準接点又は補償式基準接点とする。
それぞれの基準接点は,表7に示すように使用するのがよい。
表7 基準接点と測定方式との関係
基準接点
用途
測定方式(表8参照)
氷点式基準接点
標準熱電対の校正など,高精度の温
度測定に用いる、
A級
B級
電子冷却式基準接点 熱電温度計の校正又はこれに準じる
温度測定に用いる。
B級
C級
補償式基準接点
一般の熱電温度計による温度測定に
用いる。
B級
C級
D級
10.3.2 氷点式基準接点 氷点式基準接点は,魔法瓶に細かく削った氷と清浄な水とを入れ,氷と水との熱
的平衡状態を保つことによって基準接点を氷点に保つものである。
これを用いるときは,次の事項に注意する。
(1) 市販の氷の透明な部分を清浄な水で洗って使う。
(2) 魔法瓶内には,清浄な水と十分な氷とがなければならない。
(3) 長時間使用していると,接合点の周囲の氷が融解し,水が少ない場合には氷の間に空間を生じて,空
気で接合点が取り囲まれたようになり,また,水が多い場合には氷が上に浮いて水の中に接合点が置
かれることになるため,いずれの場合にも氷点でなくなる。このため,常に点検して水又は氷を補充
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する。
(4) 挿入長さによる誤差を避けるため,氷水に浸す長さは十分に大きくする。[13.3(1)参照]
10.3.3 電子冷却式基準接点 熱電素子によって密閉水槽を冷却し,水が氷に変わるときの体積変化を利用
して温度調節を行うことによって,基準接点の温度を氷点に保つものである。
10.3.4 補償式基準接点 補償式基準接点は,計測器の測定回路の一部に温度係数の大きい基準接点補償抵
抗又は半導体素子を用い,基準接点の温度変化による電圧変化を,熱電対の起電力に加えて補償するもの
である。
10.4 補償導線 補償導線は,JIS C 1610による。熱電対の種類に応じて補償導線の材料も異なるから,
使用する熱電対に応じた補償導線を用い,かつ,その極性を間違えないようにする。
補償導線の熱起電力特性と使用する熱電対の熱起電力特性とは完全には一致しないため,補償接点の温
度によってはある程度の誤差を伴う。したがって,高精度の温度測定には,補償導線を用いないb結線(10.6
の図1参照)によるか又は補償導線の誤差を補正する。
補償接点は,同種類の導線の接合点の場合を除き,+脚と−脚とのそれぞれの接点を同じ温度に保つこ
とが必要である。
10.5 計測器
10.5.1 計測器の種類 この測定方法に用いる計測器は,電位差計,ディジタル電圧計,自動平衡計器,ハ
イブリッド形計器,ディジタル温度計,温度伝送器又は可動コイル形計器とする(表6参照)。
10.5.2 電位差計 電位差計は,標準熱電対の校正などのように,良い精度を必要とする温度測定に用いる。
10.5.3 ディジタル電圧計 ディジタル電圧計は,測定電圧を数字で表示する計器であって,標準熱電対の
校正などのように,良い精度を必要とする温度測定に用いる。
10.5.4 自動平衡計器 自動平衡計器は,電位差計回路に自動平衡機構を組み合わせ,零位法によって温度
を表示するもので,一般の温度測定に用いる。
10.5.5 ハイブリッド形計器 ハイブリッド形計器は,マイクロプロセッサを備え,ディジタル処理によっ
て,アナログ記録及びディジタル印字を行う計器であって,一般の温度測定に用いる。
10.5.6 ディジタル温度計 ディジタル温度計は,熱電対からの信号を受け,温度値で表示する計器であっ
て,一般の温度測定に用いる。
10.5.7 温度伝送器 温度伝送器は,熱電対からの信号を受け,これを統一した信号に変え,他の受信器に
伝送するために用いる。
10.5.8 可動コイル形計器 可動コイル形計器は,一般の温度測定に用いる。
可動コイル形計器は,使用熱電対の熱起電力によって動作するものであるが,外部抵抗の調整,トルク
が小さいなどの欠点があるため,増幅器を内蔵して駆動トルクを大きくしたものもある。
10.6 測定回路の結線方式 測定回路に,熱電対・計測器のほかに,銅導線・補償導線を用いるかどうか
によって,結線方式をa結線,b結線,c結線及びd結線に分類する。各分類の熱電対,計測器,補償接点
及び基準接点の関係を図1に示す。
基準接点及び補償接点の二つの端子は,同種類の導線の接合点の場合を除き,それぞれ同一の温度に保
つ。
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図1 測定回路の結線図
10.7 測定方式の等級 測定方式は,その測定精度によって表8に示すA級,B級,C級及びD級の4等
級とする。
表8 熱電対を用いる測定方式の等級
等級
A級
B級
C級
D級
適用
標準の設定又は常用標
準器の校正
温度計の校正又はこれ
に準じる温度測定
一般の温度測定
一般の温度測定
測定精度
約±1℃
有効測定範囲の
約±0.5%
有効測定範囲の
約±1〜±1.5%
有効測定範囲の
約±2.5%
構成 熱電対
0.25級(±0.5℃の精
度で校正したもの)
0.4級又はそれより精
度が良いもの
0.75級又はそれより精
度が良いもの
1.5級又はそれより精
度が良いもの
基準接点 氷点式
氷点式
電子冷却式
補償式
電子冷却式
補償式
補償式
計測器
±0.5μVの精度で校
正した次のもの
電位差計
ティジタル電圧計
0.3級又は0.3級相当の
次のもの
ディジタル電圧計
自動平衡計器
ハイブリッド形計器
ディジタル温度計
温度伝送器
1.0級又は1.0級相当の
次のもの
自動平衡計器
ディジタル温度計
温度伝送器
可動コイル形計器
2.0級又は2.0級相当の
次のもの
ディジタル温度計
温度伝送器
可動コイル形計器
結線方式
b
b, c
a, c, d
a, c
備考 0.3級相当などの表現は,有効測定範囲での百分率誤差の最大値で表した計測器の精度の目安を意味す
る。
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11. 抵抗式測温体を用いる方法
11.1 測定回路の構成 この測定方法の測定回路は,抵抗式測温体,計測器,電源,互換用抵抗及びこれ
らを結ぶ導線からなり,それぞれの用途に適した構造及び性能(機械的強度・電気的性能・耐久性など)
をもつものとする。
11.2 抵抗式測温体 抵抗式測温体は,指定の温度範囲以外の温度で使用してはならない。
測温抵抗体は,JIS C 1604又はJIS C 1606に,また,サーミスタ測温体は,JIS C 1611による。
11.3 計測器
11.3.1 計測器の種類 この測定方法に用いる計測器は,ブリッジ,電位差計,ディジタル電圧計,自動平
衡計器,ハイブリッド形計器,ディジタル温度計,温度伝送器又は可動コイル形計器とする(表6参照)。
11.3.2 ブリッジ・電位差計 ブリッジ及び電位差計は,いずれも標準抵抗温度計の校正などの,良い精度
を必要とする温度測定に用いる(図2参照)。
11.3.3 ディジタル電圧計 ディジタル電圧計は,測定電圧を数字で表示する計器であって,標準抵抗温度
計の校正などの,良い精度を必要とする温度測定に用いる。
11.3.4 自動平衡計器 自動平衡計器は,ブリッジ回路に自動平衡機構を組み合わせ,零位法によって温度
を表示するもので,一般の温度測定に用いる。
11.3.5 ハイブリッド形計器 ハイブリッド形計器は,マイクロプロセッサを搭載し,ディジタル処理によ
って,アナログ記録及びディジタル印字を行う計器であって,一般の温度測定に用いる。
11.3.6 ディジタル温度計 ディジタル温度計は,抵抗式測温体からの信号を受け,これを温度値の数字で
表示する計器であって,一般の温度測定に用いる。
11.3.7 温度伝送器 温度伝送器は,抵抗式測温体からの信号を受け,これを統一した信号に変え,他の受
信器に伝送するために用いる。
11.3.8 可動コイル形計器 可動コイル形計器は,一般の温度測定に用いる。増幅回路を組み合わせたもの
で,入力インピーダンスが高く外部抵抗の調整を必要としないものを用いるか,又は指示機構のトルクが
大きい計器を用いる。
11.4 電源 抵抗式測温体の校正の場合には,電圧変動が少ない電源を用いる。
11.5 抵抗式測温体の結線方式
11.5.1 抵抗式測温体の結線方式の種類 結線方式は,計測器の種類のほか,使用する抵抗式測温体の種類
が測温抵抗体の場合はその導線形式によって,4線式結線,3線式結線又は2線式結線とする。
サーミスタ測温体の場合は,通常,2線式結線とする。
11.5.2 4線式結線 4線式結線は,ブリッジ,電位差計又はディジタル電圧計と4導線式の測温抵抗体と
を4本の導線で結線したものをいう(図2参照)。
この方式は,測温抵抗体の導線抵抗による誤差を補償することができるので,標準抵抗温度計の校正な
どの,極めて精度の良い温度測定に用いる。
11.5.3 3線式結線 3線式結線は,ブリッジ,自動平衡計器,ハイブリッド形計器,ディジタル温度計,
温度伝送器又は可動コイル形計器と3導線式の測温抵抗体とを結線したものをいう(図2参照)。この場合
の導線は,材質,線径,長さ及び電気抵抗が等しく,かつ全長にわたって同じ温度分布になるように並べ
なければならない。
この方式は,計測器に記載された外部抵抗(5)値以内であれば測温抵抗体の導線抵抗による誤差の補償が
実用的には十分な精度で行えるので,一般の温度測定に用いる。
注(5) 計測器の測定端子の外側に接続される導線,抵抗式測温体の内部導線などからなる回路部分の
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抵抗をいい,抵抗素子の抵抗を含まない。測定端子の内側に調整抵抗をもつものでは,上記の
抵抗に調整抵抗を加えたものである。
11.5.4 2線式結線 2線式結線は,ディジタル温度計,自動平衡計器,又は可動コイル形計器と,2導線
式の測温抵抗体又はサーミスタ測温体とを結線したものをいう(図2参照)。
この方式は,導線抵抗による誤差を除き得ないので,この影響を小さくするため,導線抵抗は,抵抗式
測温体の抵抗に比べて十分に小さくする。
また,外部抵抗(5)を計測器に記載されている公称値に調整する。ただし,サーミスタ測温体は,抵抗値
も温度係数も大きいので,通常は外部抵抗(5)の影響を無視することができる。
サーミスタ測温体の結線方式は,通常2線式結線であるが,結合方式による回路上の性格から,素子互
換式サーミスタ測温体及び合成抵抗式サーミスタ測温体は2端子の,また,比率式サーミスタ測温体では
3端子の結線方式を用いる。
なお,測温抵抗体を用いる2線式結線は,良い精度の温度測定には,適さない。
図2 結線の例
備考1. 図2の二点鎖線内は測温抵抗体を示し,記号A及びBは,JIS C 1604, C 1606の測温抵抗体の端子の記号と合
わせてある。
2. 図2に示す記号は,次による。
S: 測温抵抗体の抵抗素子
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Rs: 標準抵抗
Rh: 電流調整用抵抗
11.6 測定方式の等級 測定方式は,その測定精度によって表9に示すA級,B級,C級及びD級の4等
級とする。
表9 抵抗式測温体を用いる標準測定方式
A級
B級
C級
D級
適用
標準の設定又は常用
標準器の校正
温度計の校正又はこ
れに準じる温度測定
一般の温度測定
一般の温度測定
測定精度
約±0.1℃
有効測定範囲の
約±0.5%
有効測定範囲の
約±1〜±1.5%
有効測定範囲の
約±2.5%
構成 抵抗式測
温体
測温抵抗体のA級
(±0.1℃の精度で
校正したもの)
測温抵抗体のA級 測温抵抗体のA級又
はB級
サーミスタ測温体の
1.5級又はそれより
精度の良いもの
計測器
0.01%以内の精度
で校正した次のもの
ブリッジ
電位差計
ディジタル電圧計
0.3級又は0.3級相当
の次のもの
ディジタル電圧計
自動平衡計器
1.0級又は1.0級相当
の次のもの
自動平衡計器
ディジタル温度計
温度伝送器
可動コイル形計器
2.0級又は2.0級相当
の次のもの
ディジタル温度計
温度伝送器
可動コイル形計器
結線方式
測温抵抗体
4線式
4線式又は3線式
3線式又は2線式
−
サーミスタ測温体
4線式
2線式
2線式
2線式
備考 0.3級相当などの表現は,有効測定範囲での百分率誤差の最大値をもって表した計測器の精度の
目安を意味する。
12. 特殊な温度計による測定
12.1 特殊な温度計による測定一般 測定しようとする対象によって種々の温度計が作られているが,こ
れらを使用する場合は,測定対象,測定条件及び温度計の特性に注意する。
12.2 吸引高温計 高温の気体の温度を正確に測定するためには,吸引高温計を用いる。これは熱電対を
入れた保護管と外管との間の気体を,適当な速度で吸引することによって,放射熱による誤差[13.3(5)参
照]を少なくするものである。
これを使うに当たって,気体にごみなどが含まれている場合は,気体の通路をふさぐおそれがあるから,
度々つまりの状況を調べて必要に応じて取り除く。
12.3 消耗形浸せき温度計 これは熱電対の先端部分だけを,短時間測定対象の中に挿入して,計測器の
指示温度が一定値を示した後,取り出して温度を求めるもので,熱伝導による誤差などが小さい。検出部
の先端部分を消耗品として1回の測定ごとに取り換えるもので,高温の溶融金属の温度を測定するのに適
する。
12.4 表面温度計 物体の表面温度の測定に用いられる測温体は,検出部の熱容量が小さく,測定面との
熱接触を十分によくし,その存在によって測温箇所の温度分布をできる限り変えないようにする。
この目的のために,静止固体表面用,回転又は移動固体表面用,はり付け用,挟み込み用等多くの表面
温度計があるが,使用に当たっては,被測定物の種類,表面の形状・粗さ・熱伝導率・熱容量等を被測定
条件と同じにして,あらかじめ校正しておかないと,大きな誤差を生じることがある。
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13. 誤差
13.1 一般 測温体を用いる温度測定には,電気的誤差及び熱的誤差を伴うことがあるから,温度計の取
扱い及び検査には,十分に注意しなければならない。
13.2 電気的誤差 電気的誤差には,次のようなものがある(JIS C 1601〜1606,JIS C 1610及びJIS C 1611
参照)。
これらの誤差は,年月とともに変わることがあるので,用途に応じて定期的に検査して補正する。
(1) 計測器の単独誤差。
(2) 測温体の単独誤差。
(3) 回路の絶縁抵抗の低下による誤差。
(4) 回路の調整抵抗の調整不十分又は接触抵抗の存在によって,外部抵抗の実際値と指定値とに差がある
ための誤差。
(5) 抵抗温度計を3線式結線(11.5.3参照)で使用する場合,外部抵抗の実際値と指定値とに差があると
きに起こる誤差。
(6) 補償導線を使用する場合に,その熱起電力特性が熱電対の特性と異なるための誤差(10.4参照)。
(7) 熱電対を用いる方法では,基準接点温度の補償又は補正の不完全なために起こる誤差。
(8) シールドを必要とする受信器において,シールドが不完全なとき,外部からの誘導による誤差。
(9) 測温体又は回路の対地雑音障害の除去が不完全なために生じる誤差。
13.3 熱的誤差 検出部には,次のような熱的誤差がある。
(1) 挿入長さによる誤差 測温体の挿入長さが短いときは,保護管に接した壁又は外界の温度の影響を受
けて誤差を生じる。条件によってこの誤差は異なるが,気体を測定する場合,金属保護管は直径の15
〜20倍の長さを,非金属保護管は10〜15倍の長さを差し込むこと。
また,表面温度測定時には,十分な長さを測定面に沿わせないと誤差を生じる。
備考 均一な温度を測る場合に,この誤差を判定するには,次の二つの方法がある。
(a) 挿入長さを変えて指示温度が変われば,誤差を含んでいることが分かる。
(b) 細い保護管に入れた熱電対を同一場所に差し込み,これと比較して温度差があれば,誤差を含んで
いることが分かる。
(2) 熱抵抗の増加による誤差 高温にある保護管にすす・ごみなどが付くと,真の温度よりも低い指示を
与えるから,点検して取り除く。
(3) 遅れによる誤差 検出部には,温度の遅れがあるので,挿入してから測定時まで,十分な時間をおく。
遅れの度合いは,その測温体の構造によるほか,測定条件によって著しい違いがある。保護管を用
いた場合,気体,特に流動しない気体では,遅れが著しいので,30分以上の時間を必要とすることが
ある。液体の場合でも,5分以上おく。
変化しつつある温度を測定する場合には,単に指示が遅れるだけでなく,その指示値にも,かなり
の誤差を含むから,遅れの小さい測温体を使う。
(4) 自己加熱による誤差 抵抗式測温体を用いる方法では,抵抗素子に電流が流れるから,ジュール熱に
よって温度が上がる。これは電流,温度及び測定対象の種類によって異なるため,測温体及び受信器
で規定された電流で使用する。ブリッジ又は電位差計による場合には,抵抗素子に指定の電流を流し,
2〜3分以上おいてから測定する(測温抵抗体の場合はJIS C 1604の3.(3)及びJIS C 1606の3.(3),サ
ーミスタ測温体の場合はJIS C 1611の8.2.1参照)。
(5) 放射熱による誤差 検出部の周りにそれとの温度の差が大きい物体がある場合には,放射エネルギー
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の授受による誤差を生じる。放射エネルギーは,熱力学温度の4乗にほぼ比例するから,高温では著
しく大きく,指示温度にしばしば100℃以上の誤差を伴う。
これを避けるため,検出部を,それと著しく温度が異なる部分からはなるべく見えないような場所
に取り付け,かつ検出部を取り囲む部分の温度を測定対象の温度に近くする。このため,検出部を管
などで囲み放射シールドを施すことがある(12.2参照)。
(6) 空気の侵入による誤差 れんが積み炉体に穴を空けて温度を測定する場合などでは,目地割れ部から
冷風が侵入して検出部が冷却され,温度を低く示す。
14. 温度計の取扱い
14.1 一般的注意 温度計の取扱者は,次の事項に注意する。
(1) 温度計の原理及び構造を熟知していること。
(2) 温度計は,大切に取り扱う。
(3) 衝撃,ごみ,腐食性物質,高温,低温及び高湿度を避ける。
(4) 測定結果は検討し,必要に応じて補正する。
14.2 保護管
14.2.1 保護管一般 熱電対又は抵抗式測温体の抵抗素子は,機械的及び化学的保護の目的で,保護管に入
れて使うことが多い。保護管及び内部にある導線や絶縁物は,十分にきれいにしておき,使用温度におい
て,有害な気体を発生しないものを用いる。
14.2.2 保護管の選択 保護管の選択は,次の諸条件を考えて行う。
(1) 測定対象の温度及び圧力に十分耐えること。
(2) 測定対象物によって,腐食その他化学的反応を起こさないこと。
(3) 十分に気密であること。
(4) 急激な温度の変化に対して破損しないこと。
(5) 振動・衝撃などの機械的な力に十分に耐えること。
(6) 保護管自身が測温部にとって有害な気体を発生しないこと。
(7) 外部温度の変化を迅速に伝えること。
備考 1 000℃以上の高温になると,上記の条件を全部満たすような保護管の入手は困難であるから,
その選択には十分に注意する。
14.2.3 保護管の種類 保護管の種類は,その材質によって,非金属保護管又は金属保護管とする。
(1) 非金属保護管 非金属保護管は,JIS R 1401に規定のあるものはこれによる。ただし,実際の使用条
件は,JIS R 1401の試験条件よりも厳しい場合もあるから,これに記載されている使用温度よりも,
100℃程度低い温度で使う方が安全である。
主な非金属保護管の特性を,表10に示す。
備考 非金属保護管の多くのものは,耐熱性はあるが,機械的強度が劣る。
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表10 非金属保護管
材料
化学成分 (%) 常用限度 (℃)
特徴(耐熱・耐食)
塩化ビニル樹脂 (PVC) 塩化ビニル
50
成分の配合によっては常用限度が異なる。
酸性・アルカリ性の両面の耐食性に優れているが,温度
の上昇と共に安定性は低下する。
プラスチック材質の機械的強度をもたせるために金属
保護管に表面加工して使用されることもある。
ポリエチレン (PE)
エチレン
80
ふっ素樹脂
4ふっ化エチレン
250
石英ガラスQT(6)
SiO2
1 000
熱膨張が小さく急熱急冷に強い。
磁器PT 2(6)
Al2O347
SiO249
1 400
磁器は中程度の高温では化学的(アルカリを除く)にも
機械的にも安定している。
Al2O3の含有率が高くなるにつれて高温強さ,電気絶縁
性,耐磨耗性が良く,酸化性又は還元性の雰囲気中でも
かなり高温まで使用できる。
急熱・急冷に弱い。アルカリに弱い。
磁器PT 1(6)
Al2O355
SiO241
1 500
磁器PT 0(6)
Al2O399
1 600
マグネシア
MgO97
1 800
マグネシアは水和性があるが,高温で焼結した高密度の
ものは無機の塩類,酸化性ガスに侵されにくい。
ジルコニア
ZrO291
CaO6
1 800
ジルコニアは酸性酸化物なので酸化性又は中性の物質
に対しては高温でも反応しにくいが,塩基性酸化物には
侵される。
炭化けい素 炭化けい素 SiC89
SiO29
1 400
SiCは常温と高温での変化が少なく,熱伝導率が大きい
ため,急熱・急冷に対する耐久力が大きい。
耐磨耗性が良い。
再結晶
SiC98
1 600
SiCは酸化性雰囲気では,SiO2を生成し,酸化の進行を
防止している。
二重保護管の外側管として用いる。
窒化けい素
Si3N497
1 600
Si3N4の耐酸化性は,SiCと同様にSi3N4の表面が酸化初
期に形成されたSiO2膜による。
注(6) JIS R 1401による記号
(2) 金属保護管 主な金属保護管の特性を表11に示す。
備考 一般に金属保護管は機械的強度が強く,これに表面処理を施すと,耐熱性又は耐食性が増す。
表11 金属保護管
材料
JISによる記号
化学成分 (%)
常用限度 (℃)
特徴(耐熱・耐食)
銅
C1100
99.90Cu以上
300
低温用,耐食性・熱伝導性に優れる。
炭素鋼鍛鋼
SF490A
(C≦0.60)
(Si0.15〜0.05)
(Mn0.30〜1.20)
(P≦0.030)
(S≦0.035)
450
S雰囲気での結露に注意する。
水蒸気高圧部で,配管材質に合わせて
使用(異材とならぬように)する。
高温圧力容器
用合金鋼鍛鋼
SFVAF22
2.25Cr-1Mo
(C≦0.15)
600
低炭素合金鋼で耐食性が良好,さら
に,Mo, Crの添加によって,高温(450
〜500℃)での耐食性が改善されてい
る。
S雰囲気での結露に注意する。
高圧部で,配管材質に合わせて使用
(異材とならぬように)する。
軟鋼
STPG
0.25〜0.3C
0.3〜1.0Mn
600
酸化性雰囲気に弱いため,非腐食性の
流体に使用する。耐食性を増すために
ガラス・樹脂等で表面加工し使用され
ることもある。
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材料
JISによる記号
化学成分 (%)
常用限度 (℃)
特徴(耐熱・耐食)
オーステナイト系
ステンレス鋼
SUS304
18Cr-8Ni
900
ステンレス鋼。耐食鋼として最も広く
使用される。
SUS304L
18Cr-9Ni-低C
800
SUS304の極低炭素鋼。耐粒界腐食性
に優れる。
SUS310S
25Cr-20Ni
1 000
耐酸化性に優れて,耐熱鋼として使用
される。
硫化物に弱い。
SUS316
18Cr-12Ni-2.5Mo
900
海水をはじめ各種媒質に対して
SUS304より優れた耐食性がある。
SUS316L
18Cr-12Ni低C
900
高温アルカリ等耐食性に優れる。
SUS317
18Cr-12Ni-3.5Mo
800
耐孔食性がSUS316より優れている。
SUS321
18Cr-9Ni−Ti
900
Tiを添加し耐粒界腐食性を高めたも
の。
SUS347
18Cr-9Ni−Nb
900
Nbを含み耐粒界腐食性を高めたも
の。
オーステナイト・
フェライト系ステ
ンレス鋼
SUS329J1
25Cr-4.5Ni-2Mo
800
二相組織を持ち,耐酸性,耐孔食性に
優れ,かつ高強度をもつ。
フェライト系耐熱
鋼
SUH446
25Cr−N-0.2C
1 000
高温腐食に強く,1082℃まではく離し
やすいスケールの発生がない。耐硫化
性に優れる。
耐食耐熱超合金
NCF600
15Cr-72Ni-7Fe
1 050
高温酸化性雰囲気・還元性雰囲気下で
の耐食性に優れる。耐浸炭性,耐窒化
性に優れる。
NCF800
20.5Cr-32Ni
44.5Fe−Ti−Al
−Cu
1 000
耐浸透硫性及び内部酸化に対して強
い抵抗がある。安定したオーステナイ
ト組織をもち,耐食性も良好。
チタン
TB28
0.2Fe−Ti残部
250
低温域での耐食性,特に耐海水性がよ
い。
備考 JISによる記号については,JIS H 3100, JIS G 3201, JIS G 3203, JIS G 3454, JIS G 4303, JIS G 4312, JIS G 4901
及びJIS H 4650を参照。
14.3 測温体の取付け 測温体は,その検出部が測定対象と十分な熱的平衡状態になるように設置する。
特に次の事項に注意する。
(1) 測定対象の温度が不均一な場合,目的とする温度,例えば平均温度,最高温度などに応じて,検出部
の設置位置,挿入長さなどを選定する。
(2) 測温体を設置することによって測定対象の温度分布が変わらないように,測温体の熱容量をなるべく
小さくする。
(3) 測温部の挿入長さ,放射熱及び空気の侵入による誤差を小さくするための工夫をする。
(4) 管又はダクトの中の流体温度を測定するときには,検出部を管の中央に置き,流れとは逆の方向に挿
入する。
(5) 保護管が湾曲するような高温を測る場合には,熱電対は上から垂直に挿入する。
(6) 常温以下の低温を測る場合には,保護管内の結露によって検出素子が絶縁不良を起こし,誤差を生じ
ることがあるので,湿気が入らないような構造の測温体を使用する。
(7) 約80K以下の極低温計測の場合には,熱容量の小さい測温体を用い,検出部と被測物との熱接触に十
分留意するとともに,リード線からの熱の流入を防ぐ。
(8) セラミックなどの非金属保護管を使用した測温体は,これらの材質が一般に熱衝撃に弱いので,測温
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場所への取付けと取外しには,十分時間をかけ,また,予熱などの処置をとる。
(9) シース形測温体の最小曲げ半径は,シース外径の5倍程度とされているが,同一箇所では繰り返して
曲げないようにし,できる限り温度こう配がない部分で大きく曲げる。
(10) シース測温抵抗体では,先端部に抵抗素子が内蔵されているので,曲げ不可能部(先端から100mm
程度)は曲げてはならない。
(11) 測温体を爆発の危険がある場所で使用する場合には,JIS C 0903の防爆構造とする。
(12) 設置場所が屋内である場合は,防湿構造でよいが,屋外又は水が頻繁に使用される場合には,防水構
造とする。防水性の試験方法はJIS C 0920による。
14.4 受信器の取付け 受信器の取付けには,次の事項に注意する。
(1) 使用に便利な場所に取り付ける。
(2) ごみ又は腐食性気体がなく,温度変化が少なく,正常動作条件の場所に取り付ける。
(3) 機械的振動又は衝撃がないこと。
(4) 大電流の電線,その他電磁的影響を与えるものが近くにないこと。
(5) 計器板上は,50lx以上の照度であること。
(6) ガラス面の光が反射して,指針先が見にくくなることを避ける。
(7) 指定されているとおりの姿勢に取り付ける。
14.5 配線
14.5.1 一般的な配線方法 配線には,次の事項に注意する。
(1) 測温体と受信器とは1対1の構成とし,測温体の導線を共用しない。
(2) 強電回路から遠ざけて配線する。
(3) 測温体の端子から受信器の端子までの区間は継目なく配線する。
(4) 受信器によってはシールド線を用いる。
(5) 配線は絶縁電線又は外装ケーブルを用いる。湿気の多い場所,腐食性気体又は溶液が漏れるおそれの
ある場所は避ける。やむを得ない場合は,金属管若しくは硬質ビニル管に導線を通したものを用いる
か,又は鋼帯外装ケーブルを用いる。
地下埋設は,被覆の損傷による絶縁低下が発生しやすいので,できるだけ避ける。
(6) 温度変化が少ない場所を選び,特に高温,低温の場所は避ける。やむを得ず高温の場所に配線する場
合は,耐熱用電線を使用する。
(7) 配線の中継点などの要所には,測定箇所などを識別できるようにする。
(8) 回路の絶縁抵抗は,測温体及び受信器を取り除き,2線間及び各線と大地間において絶縁抵抗計で測
定したとき,所定の絶縁抵抗値以上あること。
(9) 測温体又は回路の対地雑音障害が生じやすい場合には,保護管若しくは導線シールドの直接接地,又
は平衡ろ波回路を仲介とする接地を行う。
14.5.2 熱電対の配線 熱電対の配線には,次の事項に注意する。
(1) 熱電対に補償導線を用いる場合は,JIS C 1610による。
(2) 補償導線は,使用する熱電対に合わせてその種類を決め,要求精度に合った熱起電力特性をもつ階級
のものを選ぶ。
(3) 補償接点は,補償導線の使用温度範囲及び所定の温度を超えないこと。
14.5.3 抵抗式測温体の配線 抵抗式測温体の配線には,次の事項に注意する。
(1) 測温抵抗体の配線に用いる銅線には,JIS C 3307, JIS C 3401又はこれらと同等以上の絶縁性能をもつ
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ものを用い,機械的強度を保ち,かつ,電気抵抗の大きな増加をきたさないように,公称断面積1.25mm2,
又はこれと同等以上のものを用いる。ただし,サーミスタ測温体で導線の長さが数十m以下の場合は,
銅線の公称断面積を0.3mm2まで細くしてもよい。
(2) 測温抵抗体は,一般に3導線式を採用して導線抵抗による誤差を補償しているが,導線間に抵抗のば
らつきがある場合には,これが誤差の原因となるので注意する。
また,1導線当たりの抵抗値についても,受信器が規定している抵抗値を超えないこと。
15. 温度計の検査方法
15.1 検査の時期 温度計は,次の時期に検査するのがよい。
(1) 入手した直後。
(2) 放置してあったものは使用前。
(3) 一定の期間を経過したとき。
(4) 特に精度のよい測定を行うとき。
(5) 測定値に疑問があるとき。
(6) その他検査した方がよいと思われるとき。
15.2 検査に用いる測定方式 B級の測定方式に用いる温度計は,A級の測定方式で検査し,C級又はD
級の測定方式に用いる温度計は,A級又はB級の測定方式で検査する。
15.3 検査の種類 検査は,その対象によって,配線検査,熱電温度計検査及び抵抗温度計検査に区分す
る。
15.4 配線検査 配線検査は,測定回路の状態を検査するもので,次の方法による。
(1) 測温体の端子を短絡し,受信器を回路から分離し,ブリッジ又は回路計を用いて導線の抵抗を測り,
回路の断線の有無を検査する。ただし,抵抗温度計では,抵抗式測温体の短絡又は取外しは,受信器
の電源を切ってから行う。
外部抵抗が指定されている受信器を使うときは,調整抵抗が指定値のとおりに調節されているかど
うかを検査する。
(2) 次に,測温体を測定回路から分離し,導線間及びそれと大地との間の絶縁抵抗を500Vの絶縁抵抗計
を用いて測定し,回路の絶縁がよいかどうかを判定する。
15.5 熱電温度計検査
15.5.1 熱電温度計検査の種類 熱電温度計の検査は,検査目的及び検査精度によって,次の検査を行う。
(1) 熱電温度計の組合せ検査
(2) 熱電温度計の受信器検査
(3) 熱電用伝送器検査
(4) 熱電対検査
(5) 補償導線検査
15.5.2 熱電温度計の組合せ検査 熱電温度計の組合せ検査は,被検査温度計の測温接点と標準熱電温度計
の測温接点とを近接させて同一温度に保ち,使用状態でその指度を比較して行う。
高温になっている炉を利用して,その中に熱電対を入れるときは,標準の熱電対と同一の保護管に入れ
る必要がある。
15.5.3 熱電温度計の受信器検査 熱電温度計の受信器検査は,その精度に応じて,次に示す簡易検査及び
精密検査の二通りとする。
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(1) 簡易検査 取付け場所で行う簡易な検査方法であり,使用状態で回路から受信器を取り外し,校正さ
れているmV計で置き換えて,その電圧を測定し,その値が受信器に正しく指示されているかどうか
を検査する。
(2) 精密検査 精密に行う検査方法であり,標準計測器を用いて設定した一定の電圧を被検査受信器に与
えて,その示度を次によって検査する。
(a) 基準接点温度t℃が既知の場合又は正確に測定されている場合には,図3(1)の回路を用い,標準電圧
発生器で使用熱電対の基準接点温度に相当する熱起電力を差し引いた規準熱起電力を与えて,被検
査受信器の指示を読む。
(b) 基準接点温度t0℃を測らないで正確に検査するには,図3(2)の回路を使う。氷点式基準接点又は電
子冷却式基準接点を用い,被検査受信器との間は同じ熱電対用の補償導線を極性を間違えないよう
に結び,標準電圧発生器で規準熱起電力を与えて,被検査受信器の指示を読む。
(c) 絶縁抵抗試験は,500Vの直流電圧で行い,可動コイル形計器では10MΩ以上(JIS C 1601の4.2.9
参照),電子式受信器では20MΩ以上の絶縁抵抗があること。ただし,この試験は,電子式受信器で,
電気回路が接地されている場合には行わない。
図3 精密検査の回路例
15.5.4 熱電用伝送器検査 熱電用伝送器(補償基準接点をもつもの)の検査は,次のとおりとする。
(1) 基準接点温度t℃が既知の場合又は正確に測定されている場合には,図4(1)の回路を用い,標準電圧発
生器で使用熱電対の基準接点温度に相当する熱起電力を差し引いた規準熱起電力を与えて,被検査伝
送器の出力を標準計測器で検査する。
(2) 基準温度t0℃を測らないで正確に検査するには,図4(2)の回路を用いる。氷点式基準接点又は電子冷
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却式基準接点を用い,被検査伝送器との間には熱電対用の補償導線を符号を間違えないように結び,
標準電圧発生器によって規準熱起電力を与えて,被検査伝送器の出力を標準計測器で検査する。
(3) 熱電用伝送器の絶縁抵抗試験は,15.5.3(c)に準じて行う。
図4 伝送器検査の回路例
15.5.5 熱電対検査 熱電対検査は,熱起電力検査,抵抗検査及び絶縁抵抗検査とし,JIS C 1602の9.及び
JIS C 1605の11.による。
15.5.6 補償導線検査 補償導線検査は,熱起電力検査,抵抗検査及び絶縁抵抗検査とし,JIS C 1610の
7.による。
15.6 抵抗温度計検査
15.6.1 抵抗温度計検査の種類 抵抗温度計の検査は,検査目的及び検査精度によって,次の検査を行う。
(1) 抵抗温度計の組合せ検査
(2) 抵抗温度計の受信器検査
(3) 抵抗用伝送器検査
(4) 抵抗式測温体検査
15.6.2 抵抗温度計の組合せ検査 抵抗温度計の組合せ検査は,検査温度に保った恒温槽中に被検査温度計
の抵抗式測温体と,標準抵抗温度計の抵抗式測温体とを挿入して,その示度を比較して行う。標準抵抗温
度計の代わりに,標準ガラス温度計を用いてもよい。
恒温槽の代わりに,現場において被検査抵抗温度計に近接して,標準抵抗温度計を挿入して比較しても
よい。
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Z 8704-1993
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
15.6.3 抵抗温度計の受信器検査 抵抗温度計の受信器検査は,抵抗式測温体の代わりに値が分かっている
可変抵抗器を用い,目盛上の1点又は主な数点について検査する。可変抵抗の値は,測温抵抗体について
はJIS C 1604の付表1又は付表2及びJIS C 1606の付表1又は付表2によって,また,サーミスタ測温体
については,JIS C 1611の表5〜7によって定める。ただし,抵抗式測温体の2線式結線の場合には,この
値に指定された外部抵抗の値を加えなければならない。
受信器の絶縁抵抗試験は,500Vの直流電圧で行い,電子式受信器では20MΩ以上,可動コイル形計器で
は5MΩ以上の絶縁抵抗がなければならない。ただし,この試験は,電子式受信器であって,電気回路が接
地されている場合は行わない。
15.6.4 抵抗用伝送器検査 抵抗温度計の伝送器検査は,値の分かっている可変抵抗器を用い,伝送器の出
力の1点又は主な数点について検査する。可変抵抗の値は,測温抵抗体についてはJIS C 1604の付表1又
は付表2及びJIS C 1606の付表1又は付表2によって,また,サーミスタ測温体については,JIS C 1611
の表5〜7によって定める。
抵抗用伝送器の絶縁抵抗試験は,15.5.3(c)に準じて行う。
15.6.5 抵抗式測温体検査 抵抗式測温体検査は,抵抗値検査及び絶縁抵抗検査とし,測温抵抗体の場合は,
JIS C 1604の9.2.3及び9.2.6又はJIS C 1606の9.2.3及び9.2.5によって,また,サーミスタ測温体の場合
はJIS C 1611の8.3.3及び8.3.6による。
付表1 引用規格
JIS C 0903 一般用電気機器の防爆構造通則
JIS C 0920 電気機械器具及び配線材料の防水試験通則
JIS C 1601 指示熱電温度計
JIS C 1602 熱電対
JIS C 1603 指示抵抗温度計
JIS C 1604 測温抵抗体
JIS C 1605 シース熱電対
JIS C 1606 シース測温抵抗体
JIS C 1610 熱電対用補償導線
JIS C 1611 サーミスタ測温体
JIS C 1802 工業用電子式自動平衡記録計
JIS C 3307 600Vビニル絶縁電線 (IV)
JIS C 3401 制御用ケーブル
JIS C 3610 ケーブル用鋼帯がい装及び防食層
JIS G 3201 炭素鋼鍛鋼品
JIS G 3203 高温圧力容器用合金鋼鍛鋼品
JIS G 3454 圧力配管用炭素鋼鋼管
JIS G 4303 ステンレス鋼棒
JIS G 4312 耐熱鋼板
JIS G 4901 耐食耐熱超合金捧
JIS H 3100 銅及び銅合金の板及び条
JIS H 4650 チタン棒
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Z 8704-1993
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
JIS R 1401 熱電対用非金属保護管
JIS Z 8103 計測用語
関連規格 JIS Z 8710 温度測定方法通則
JIS 8704, 8710改正原案作成委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
豊 田 弘 道
成蹊大学工学部
坂 東 一 彦
通商産業省機械情報産業局
池 田 要
工業技術院標準部材料規格課
黒 木 勝 也
財団法人日本規格協会
(第1分科会主査)
①
藤 村 貞 夫
東京大学工学部
(第2分科会主査)
②
島 田 道 彦
法政大学工学部
(第1分科会幹事) ①②
櫻 井 弘 久
工業技術院計量研究所
(第2分科会幹事) ①②
小 川 実 吉
横河電機株式会社
②
河 村 昭 利
東京都立工業技術センター
①
渡 辺 一 郎
日本電気計器検定所
①
河 原 俊 治
日本酸素株式会社
①
清 水 節 郎
昭和電工株式会社
①
田 村 洋 一
住友金属工業株式会社
②
田 中 敏 夫
三菱化成株式会社
②
吉 成 正 博
日石エンジニアリング株式会社
②
脇 田 忠 良
東京電力株式会社
(徳 平 真)
②
佐 藤 裕 典
株式会社岡崎製作所
②
則 武 利 一
山里産業株式会社
②
重 野 守 男
株式会社チノー
①
桑 原 敏 久
山武ハネウエル株式会社
①
堀 内 健 二
株式会社東芝
①
渡 部 勉
株式会社渡部計器製作所
①②
塚 本 正 仁
社団法人日本電気計測器工業会
(石 川 隆 一)
(事務局)
斎 藤 保 孝
社団法人計測自動制御学会
備考 ○印の数字は所属分科会を示し,括弧内は前任者を示す。