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目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 2
3 用語及び定義 ··················································································································· 2
4 ユーザビリティの根拠及び効用 ··························································································· 6
5 特定の利用状況におけるユーザビリティ ··············································································· 6
5.1 ユーザビリティの概念 ···································································································· 6
5.2 システム,製品又はサービス ··························································································· 7
5.3 “特定の”状況におけるユーザビリティの考慮 ···································································· 8
6 利用の成果 ······················································································································ 8
6.1 成果としてのユーザビリティ ··························································································· 8
6.2 効果 ···························································································································· 9
6.3 効率 ···························································································································· 9
6.4 満足 ··························································································································· 10
6.5 ユーザビリティの概念の用途 ·························································································· 11
6.6 その他の利用の成果 ······································································································ 11
7 利用状況························································································································ 12
7.1 利用状況の構成要素 ······································································································ 12
7.2 利用状況におけるユーザ ································································································ 12
7.3 利用状況における目標 ··································································································· 13
7.4 利用状況におけるタスク ································································································ 14
7.5 資源 ··························································································································· 14
7.6 環境 ··························································································································· 15
8 ユーザビリティの概念の適用 ····························································································· 16
8.1 様々なシステム,製品又はサービスを利用した成果として生じるユーザビリティ ······················ 16
8.2 ユーザビリティのために求められるユーザ,タスク及び環境の特性 ········································ 17
8.3 設計・開発において達成すべきユーザビリティ ··································································· 17
8.4 調達におけるユーザビリティ ·························································································· 17
8.5 再検討又は比較の際のユーザビリティ··············································································· 18
8.6 マーケティング及び市場調査へのユーザビリティの活用 ······················································· 18
附属書A(参考)ユーザビリティの測定尺度 ············································································ 19
参考文献 ···························································································································· 22
附属書JA(参考)JISと対応国際規格との対比表 ······································································ 25
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まえがき
この規格は,産業標準化法第16条において準用する同法第12条第1項の規定に基づき,一般社団法人
日本人間工学会(JES)及び一般財団法人日本規格協会(JSA)から,産業標準原案を添えて日本産業規格
を改正すべきとの申出があり,日本産業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本産業規格
である。これによって,JIS Z 8521:1999は改正され,この規格に置き換えられた。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本産業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
日本産業規格 JIS
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人間工学−人とシステムとのインタラクション−
ユーザビリティの定義及び概念
Ergonomics of human-system interaction-
Definitions and concepts of usability
序文
この規格は,2018年に第2版として発行されたISO 9241-11を基とし,日本国内での実情と異なる点が
あるため,技術的内容を変更して作成した日本産業規格である。
なお,この規格で点線の下線を施してある箇所は,対応国際規格を変更している事項である。変更の一
覧表にその説明を付けて,附属書JAに示す。
1
適用範囲
この規格は,ユーザビリティの概念を説明し,インタラクティブシステム,ほかのタイプのシステム(建
築環境を含む。),製品(工業製品及び消費者製品を含む。)及びサービス(技術的なサービス及び個人サー
ビスを含む。)を利用する状況にユーザビリティの概念を適用する枠組みを提供する。
この規格は,
− ユーザビリティが利用の成果であることを説明し,
− 重要な用語及び概念を定義し,
− ユーザビリティの基本を明らかにし,
− ユーザビリティの概念の適用方法を説明する。
ユーザビリティを考慮した設計及び評価における具体的なプロセス及び方法については説明しない。
この規格は,主に次の人々を対象にしている。
− ユーザビリティの専門家及び人間工学の専門家
− システム,製品及びサービスの設計者及び開発者
− 品質保証の担当者
− 公共団体及び企業の購買担当者
− 消費者団体
この規格の最も一般的な適用対象は,設計及び評価である。
注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
ISO 9241-11:2018,Ergonomics of human-system interaction−Part 11: Usability: Definitions and
concepts(MOD)
なお,対応の程度を表す記号“MOD”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“修正している”
ことを示す。
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2
引用規格
この規格に引用規格はない。
3
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,次による。
ISO及びIECは,次のURLにおいて規格に用いる用語のデータベースを維持している。
− ISO Online Browsing Platform: https://www.iso.org/obp
− IEC Electropedia: https://www.electropedia.org/
3.1
ユーザビリティ
3.1.1
ユーザビリティ(usability)
特定のユーザが特定の利用状況において,システム,製品又はサービスを利用する際に,効果,効率及
び満足を伴って特定の目標を達成する度合い。
注記1 “特定の”ユーザ,目標及び利用状況とは,ユーザビリティを考慮する際のユーザ,目標及
び利用状況の特定の組合せである。
注記2 “ユーザビリティ”という言葉は,ユーザビリティ専門知識,ユーザビリティ専門家,ユー
ザビリティエンジニアリング,ユーザビリティ手法,ユーザビリティ評価など,ユーザビリ
ティに寄与する設計に関する知識,能力,活動などを表す修飾語としても用いる。
3.1.2
製品(product)
人又は機械によって作られたもの。
3.1.3
消費者製品(consumer product)
専門家用というよりは個人用として,入手及び使用されることを目的とした製品(ISO 20282-1:2006 3.2
参照)。
3.1.4
システム(system)
一つ以上の明記された目的を達成するために組織された相互に作用する要素の組合せ(ISO/IEC
15288:2015 4.1.46を修正)。
注記1 システムは,製品又はシステムが提供するサービスを含むことがある。
注記2 完成された一つのシステムは関連機器,設備,材料,作業用具,コンピュータプログラム,
ファームウェア,技術文書,サービス及び要員を含み,想定された環境の下での自立的な利
用を支える。
注記3 システムは,製品,サービス,構築環境,又はそれらの組合せ及び人々で構成される。
3.1.5
インタラクティブシステム(interactive system)
ユーザが特定の目標を達成するためにインタラクションするハードウェア,ソフトウェア,サービス及
び/又は人々の組合せ。
注記 インタラクティブシステムには,開こん,ユーザ・マニュアル,オンラインヘルプ,人による
支援,保守などのサポート及びトレーニングが適宜含まれる。
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3.1.6
サービス(service)
顧客が達成することを望む成果を促進することによって,顧客に価値を提供する手段(JIS Q
20000-1:2012 3.26を修正,注記を置換え)。
注記1 サービスは,人とシステムとのインタラクション(例えば,ウェブを介して文書作成ツール
にアクセスすること),及び人と人とのインタラクション(例えば,郵便局カウンターで職員
とインタラクションすること)を含む。
注記2 “顧客”はユーザであり,必ずしも金銭関係があるとは限らない。
3.1.7
ユーザ(user)
システム,製品又はサービスとインタラクションする人(ISO 26800:2011 2.10を修正,注記1を置換
え,注記2及び注記3を削除)。
注記 システム,製品又はサービスのユーザは,システムを操作する人,システムの出力を利用する
人及びシステムをサポートする人(保守又は運用の訓練の提供を含む。)を含む。
3.1.8
ユーザグループ(user group)
ユーザビリティに影響を与える可能性のあるユーザ,タスク又は環境の特性によって特徴付けられる特
定のユーザの集まり(ISO/TS 20282-2:2013 4.24を修正,定義の表現を変更,注記を省略)。
3.1.9
ステークホルダ(stakeholder)
意思決定又は活動に影響を与え,影響されることがある又は影響されると認知している,あらゆる人又
は組織(JIS Q 31000:2010 2.13を修正,元の注記を注記1及び注記2に置換え)。
注記1 ステークホルダには,ユーザ,購入者若しくはシステム所有者又は管理者のほか,システム,
製品又はサービスの運用によって間接的に影響を受ける人を含む。
注記2 ステークホルダはそれぞれ,異なるニーズ又は要求事項があり,異なる期待をもっている可
能性がある。
3.1.10
目標(goal)
意図した成果。
3.1.11
タスク(task)
特定の目標を達成するために行う一連の活動。
注記1 一連の活動には,身体的,知覚的及び/又は認知的なものがある。
注記2 タスクは,目標を達成するための特定の手段を述べたものであり,目標を達成するために使
った手段と目標との間には直接的な関係がない。
3.1.12
効果(effectiveness)
ユーザが特定の目標を達成する際の正確性及び完全性。
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3.1.13
効率(efficiency)
達成された結果に関連して費やした資源。
注記 典型的な資源は,時間,人間の労力,コスト及び材料を含む。
3.1.14
満足(satisfaction)
システム,製品又はサービスの利用に起因するユーザのニーズ及び期待が満たされている程度に関する
ユーザの身体的,認知的及び感情的な受け止め方。
注記1 満足は,実際の利用に起因するユーザエクスペリエンスがユーザのニーズ及び期待を満たし
ている程度を含む。
注記2 利用前の期待は,実際の利用に伴う満足に影響を与える可能性がある。
注記3 身体的,認知的及び感情的な反応を満足の測定に利用する場合がある(6.4参照)。
3.1.15
利用状況(context of use)
ユーザ,目標及びタスク,資源並びに環境の組合せ。
注記 利用状況の“環境”は,技術的,物理的,社会的,文化的及び組織的環境を含む。
3.2
関連する概念及び分野
3.2.1
human-centred quality
[対応国際規格では定義しているが,利用の成果(outcome of use)と同じ意味であると判断し,読者の混
乱を避けるためにJISでは定義しない。]
3.2.2
アクセシビリティ(accessibility)
製品,システム,サービス,環境及び施設が,特定の利用状況において特定の目標を達成するために,
ユーザの多様なニーズ,特性及び能力で使える度合い(ISO 9241-112:2017 3.15参照)。
注記 利用状況は,ユーザが単独で利用する,又は支援技術を使って援助を受けながら利用する状況
を含む。
3.2.3
ユーザエクスペリエンス(user experience)
システム,製品又はサービスの利用前,利用中及び利用後に生じるユーザの知覚及び反応。
注記1 ユーザの知覚及び反応は,ユーザの感情,信念,し(嗜)好,知覚,身体的及び心理的反応,
行動並びに達成感を含む。
注記2 ユーザエクスペリエンスは,ブランドイメージ,表現,機能,性能,支援機能及びインタラ
クションの影響を受ける。また,ユーザの事前の経験,態度,技能及び個性によって生じる
内的及び身体的な状態,利用状況などの要因の影響を受ける。
注記3 “ユーザエクスペリエンス”という用語は,ユーザエクスペリエンス専門家,ユーザエクス
ペリエンスデザイン,ユーザエクスペリエンス手法,ユーザエクスペリエンス評価,ユーザ
エクスペリエンス調査,ユーザエクスペリエンス部門といった,能力又はプロセスを表すこ
ともある。
注記4 人間中心設計では,インタラクティブシステムの設計に関連するユーザエクスペリエンスだ
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けを管理する。
3.2.4
利用による危害(harm from use)
システムの利用に起因する健康,安全,財産又は環境に関する否定的な影響。
注記 ここでの否定的な影響とは,ユーザ又はほかのステークホルダへの影響のことである。
3.2.5
人間工学,エルゴノミクス,ヒューマンファクターズ(ergonomics,human factors)
システムにおける人間とその他の要素との間の相互作用(インタラクション)の理解に関する科学の分
野,並びに人間の福利及びシステム全体の遂行能力を最適化するために,理論,原則,データ及び方法を
設計に活かす専門分野(JIS Z 8501:2007参照)。
3.2.6
人間中心設計(human-centred design)
システムの利用に焦点を当て,人間工学(ユーザビリティを含む。)の知識及び技法を適用することによ
って,インタラクティブシステムをより使いやすくすることを目的とするシステムの設計及び開発へのア
プローチ(ISO 9241-210:2019 3.7を参照)。
注記1 この規格が,一般的にユーザとみなされる人々に加えて,多くのステークホルダへの影響に
も対応していることを強調するため,“ユーザ中心設計”ではなく“人間中心設計”という用
語を用いる。実際に,“ユーザ中心設計”及び“人間中心設計”という用語は,しばしば同義
語として用いられる。
注記2 使いやすいシステムは,生産性の向上,ユーザの快適さの向上,ストレスの回避,アクセシ
ビリティの向上及びリスクの軽減を含む多くの利点を提供する。
3.3
その他の定義
3.3.1
建築環境(built environment)
外部及び内部の環境,発注,設計,構築,人々が利用するために管理される要素,構成要素又は附属品
(ISO 21542:2011 3.10を参照)。
3.3.2
要求事項(requirement)
合意事項,標準若しくは仕様又はほかの正式に取り交わした文書の内容を満たすシステム,システム構
成要素,製品又はサービスによって,適合若しくは具備しなければならない制約条件又は能力(ISO/IEC
24765:2017 3.2506,定義2を参照)。
3.3.3
ユースエラー(use error)
製造業者の意図又はユーザの期待とは異なる結果をもたらしたシステム,製品又はサービスを利用する
ユーザの行動又は行動の欠如(IEC 62366-1:2015 3.21を修正,医療機器という用語をインタラクティブ
システムに置換え,注記4及び注記5を置換え,注記6を省略)。
注記1 ユースエラーは,ユーザがタスクを完遂する能力がない場合を含む。
注記2 ユースエラーは,ユーザの特性,ユーザインターフェース,タスク又は環境の不整合による
結果である。
注記3 ユーザは,エラーが起きたことに気付いたり気付かなかったりする。
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注記4 インタラクティブシステムの故障によって引き起こされた,予期していないエラーは含まな
い。
注記5 エラーの責任をユーザに押し付けることを避けるため,ユーザエラー又はヒューマンエラー
ではなく,ユースエラーという用語を使う。
4
ユーザビリティの根拠及び効用
ユーザビリティは,対象とするシステム,製品又はサービスとユーザとのインタラクションにおける効
果,効率及び満足で表す。
システム,製品又はサービスを設計する場合,
− ユーザビリティが予想より低い場合,対象ユーザはシステム,製品又はサービスを利用できない,若
しくは利用したがらない可能性がある。
− ユーザビリティが十分な場合には,システム,製品又はサービスは,私的,社会的及び経済的利益を
ユーザ,雇用者及び供給者に提供する。
− ユーザビリティが期待より高い場合には,システム,製品又はサービスには競争的な優位性がある(例
えば,顧客維持又は特別価格で購入する意思がある顧客の確保)。
適切なユーザビリティがもたらす具体的な恩恵は次による。
− 組織の運用効率への貢献
− 顧客相談窓口などの顧客支援費用の削減
− 多様な特性をもつ人々にとってのユーザビリティの向上(6.6.2参照)
− 持続可能性への貢献(JIS Z 26000:2012及びISO 27500:2016参照)
− 個人,社会又はビジネスにとって望ましくない結果が生じるリスクの低減
− ブランドイメージの向上などによる競争優位の確保
システム,製品又はサービスの使用に起因するユーザビリティを仕様化し,設計し,評価する際,その
目的は,効率,効果及び満足を,仕様に合ったレベルにすることである。特定のレベルのユーザビリティ
を実現することの潜在的な影響(ビジネス,組織,個人又は社会)を推定することで,開発に必要な労力
を調整することが可能である(ISO 9241-210:2019を参照)。
注記 文献[29]は,ユーザビリティのための開発作業のコストの妥当性に関する情報を提供する。
5
特定の利用状況におけるユーザビリティ
5.1
ユーザビリティの概念
ユーザビリティとは,特定のユーザが特定の利用状況において,システム,製品又はサービスを利用す
る際に,効果,効率及び満足を伴って特定の目標を達成する度合いである。
図1においては,システム,製品又はサービスを,ユーザ,目標及びタスク,資源並びに環境で構成さ
れる利用状況の内側に示し,効果,効率及び満足で構成されるユーザビリティを利用の成果として示して
いる。
注記 ユーザビリティの構成要素は,6.2,6.3,6.4及び6.6で詳細に説明する。
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システム,
製品又は
サービス
利用状況
ユーザ
環境
資源
目標
及び
タスク
利用の成果
• アクセシビリティ
• 危害の回避
など(注記)
ユーザビリティ
効果
効率
満足
その他の
利用の成果
利用
注記)例えば,ユーザエクスペリエンスの一部
図1−ユーザビリティの概念図
ユーザビリティが達成される度合いは,次の特性によって異なる。
− システム,製品又はサービス
− 目標
− タスク
− ユーザ
− 資源
− 環境
同じシステム,製品又はサービスを利用したとしても,目標,ユーザのタイプ及び利用状況のほかの構
成要素によって,ユーザビリティのレベルが大きく異なる可能性がある。ユーザビリティは,ユーザの特
性,能力などの個人差及びユーザが実行するタスクの特性,並びに物理的,社会的,文化的及び組織的環
境の影響を受ける。
一般に,特定の利用状況(ユーザグループ,タスク及び環境)において設計又は評価されたシステム,
製品又はサービスについて,ユーザビリティを考慮する。
例1 統計処理の専門家に向けたアプリケーションのユーザビリティのレベルは,専門家にとって高
くても,初めて統計を学ぶ学生にとっては低いことがある。
ユーザビリティは,利用状況の一つの構成要素の適合性を検討する際に用いることも可能である(8.2
参照)。
例2 ある製品を特定の利用状況の下で使えるようにするために,物理環境の一部として,照明の照
度を考慮する必要がある。
効果,効率及び満足は,ユーザ,目標及び利用状況のほかの構成要素による影響を受けるため,システ
ム,製品又はサービスのユーザビリティを測定する単一固有の尺度はない。
5.2
システム,製品又はサービス
ユーザビリティは特定のシステム,製品又はサービスを対象としている。システム,製品又はサービス
は,高度に複雑なシステム群から個々の構成要素まで様々である。
注記1 ユーザビリティは,ユーザとシステム,製品又はサービスとのインタラクションの成果であ
る。ユーザがインタラクションするシステム又はサービスは,ほかの人々を含む。
注記2 ユーザビリティの概念を適用できる様々なシステム,製品又はサービスについては,8.1に記
載する。
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5.3
“特定の”状況におけるユーザビリティの考慮
5.3.1
概要
“特定の”ユーザ,目標及び利用状況のほかの構成要素とは,ユーザビリティを考慮するためのユーザ,
目標及び利用状況のほかの構成要素を組み合わせたものである。
注記1 システム開発の仕様において考慮したか否かに関係なく,ユーザビリティを考慮する目的で
ユーザ,目標及び利用状況のほかの構成要素を“特定”することがある。
注記2 ユーザビリティは,“特定の”ユーザ,目標及びタスク,資源並びに環境の組合せによって大
きく異なる。
5.3.2
“特定の”ユーザ
“特定の”ユーザとは,ユーザビリティを考慮する目的によって特定したユーザのことである。ユーザ
の特性はユーザビリティに影響する(7.2参照)。
注記 特定のユーザは一つ以上のユーザグループであり,典型的にはシステム,製品又はサービスの
開発者が意図したユーザグループに含まれるが,含まれない可能性もある。
5.3.3
“特定の”目標
全ての目標が“特定の”目標として選択されるとは限らないため,ユーザビリティを考慮する“特定の”
目標を明確にすることが重要である(7.3を参照)。
ユーザビリティを考慮する“特定の”目標(意図した成果)には,ユーザ,管理者又は製造業者がそれ
ぞれ意図するような目標がある。
注記1 多くの場合,一つに限らず,複数の目標を考慮する。
注記2 “特定の”目標の達成と別の目標の達成との間に競合が生じる可能性がある。
例 切符を予約する際,最短の移動時間,快適さ,最も安い料金及び旅の詳細を設定するという目
標は競合する可能性がある。
5.3.4
“特定の”利用状況
ユーザビリティを考慮する特定の利用状況を明確にすることが重要である。通常,“特定の”利用状況は,
利用状況の全ての組合せの一部である。
6
利用の成果
6.1
成果としてのユーザビリティ
ユーザビリティは,ユーザとシステム,製品又はサービスとのインタラクションにおける効果,効率及
び満足に焦点を当てる。
効果(6.2参照),効率(6.3参照)及び満足(6.4参照)は,それぞれ下位構成要素から成る。
ユーザビリティが考慮される根拠及び特定の利用状況によって,効果,効率及び満足の相対的な重要性
及びそれらの下位構成要素は異なる。
例 医療機器の扱いを訓練された医療関係者にとっては,効果(正確性及び完全性)及び効率(所要
時間)が重要な関心事項である。
注記1 非効率又は不満足であってもユーザにとって効果的なことがある。また,効果的でない又は
非効率であるにもかかわらずユーザは満足することがある。
注記2 必要な機能を提供することは,ユーザビリティの前提条件である。
注記3 効果,効率及び満足は,観察可能な成果及び/又はユーザが知覚した成果を測定することで,
それぞれ特定又は評価できる(附属書A参照)。
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その他の利用の成果には,アクセシビリティ(6.6.2参照),利用における危害の回避(6.6.3参照),ユー
ザエクスペリエンスの一部(6.6.4参照)などがある。
注記4 その他の利用の成果はコンピュータシステムの出力ではない。
6.2
効果
6.2.1
概要
効果の下位構成要素は,ユーザが特定の目標を達成するための正確性及び完全性である。
注記1 効果とは実際の成果が意図した成果に一致する度合いを表す。
注記2 効果の欠如は利用における危害を引き起こす可能性がある(6.6.3参照)。
6.2.2
正確性
正確性とは実際の成果が意図した成果に一致する度合いである。
正確性は意図した成果の具体性に基づく。しかし,成果が正しいか否かで正確性が決まる場合もある。
例1 ユーザが録画したいテレビ番組をハードディスクレコーダで録画できた。
その他の場合,正確性は意図した成果のレベルに達したかどうかに基づく。正確性が意図した成果のレ
ベルに達しない原因には,次の場合がある。
a) ユースエラー又は難しさ
例2 券売機で列車の安価な切符を購入しようとするが,往復切符ではなく割高な片道切符を購入し
てしまう。
b) ユーザのタスクを妨げる不必要なシステム出力
例3 券売機で列車の切符を購入すると,切符に加えて領収書なども券売機から出てくる。その中か
ら切符を見付けることは容易ではない。
c) 不正確又は不完全な出力に基づいて行われた不適切な決定
例4 ユーザは,オンラインショップBよりも低価格であるオンラインショップAから,商品を購入
することを決定した。このとき,オンラインショップAには在庫がない(そのため,納期がか
なり遅れる)状態にあったが,その情報はユーザに表示されていなかった。
6.2.3
完全性
完全性とは,システム,製品又はサービスのユーザが,全ての意図した成果を達成できる度合いである。
注記1 意図していない有益な成果が加わることがある。
例1 博物館へ行く前に入場料金を調べるためウェブサイトを確認した結果,その日は閉館日である
と分かった。
注記2 成果の相対的な重要性は,完全性の程度に影響することがある。
注記3 完全な成果が得られなくても個々の成果は正確であることがある。
例2 レシピに載っている食材を入手するためにウェブショップで食材の注文をした。ウェブショッ
プは在庫切れではなかった食材だけを配送した。配送された食材は正しかったが,レシピに必
要な食材は完全にはそろわなかった。
注記4 全ての成果が完全に正確ではなくても完遂できることがある。
例3 ユーザの目標はパソコンを使って保険を申し込むことであった。申し込みの最後のアンケート
には不正確な回答をしたが,保険の申し込みは完了した。
6.3
効率
6.3.1
概要
効率とは達成される成果に関して利用される資源である。
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これらの資源は,時間,人的労力,資金及び資材を含む。
これらの資源は,利用状況において利用可能な資源とみなす(7.5.3を参照)。
システム,製品又はサービスの利用は,資源をほとんど利用しなければ効率的であるが,意図した成果
を達成する側面においては効果的ではないことがある。一方,膨大な資源を消費して非効率な場合でも,
目標を達成できれば非常に効果的なこともある。
例1 プログラム作成時に多くのコメント行を挿入することは,膨大な作業時間を必要として非効率
ではあるが,バグの少ないプログラムを作成する目標においては効果的である。
あるユーザは満足していなくても効率的に利用できたり,又は効率的に利用できないにもかかわらず満
足している可能性もある。
効率の下位構成要素は,ユーザビリティを考慮する目標によって決まる。
例2 娯楽(例えば,ゲームで遊ぶこと)において,楽しく時間を費やすことは目標の一つである。
その場合,時間の増加は非効率とならないため,ほかの関連する資源を効率の尺度とする(例
えば,娯楽費が安い方が効率的となる。)。
6.3.2
所要時間
所要時間とは,目標達成のために費やされた時間である。
注記 所要時間は次による。
− 意図した成果を達成するための所要時間(エラーが生じたときの所要時間を含む。)
− 意図した成果を達成するための所要時間及び準備作業に含まれる時間(例えば,準備作業
とは,意図した成果を達成するためにシステム,製品又はサービスを利用する前に完遂す
る必要のある訓練及び学習のこと)
− 意図した成果の達成に関連する活動の開始から終了までの総経過時間
6.3.3
消費された労力
消費された労力とは,特定の作業を完了するために費やされた精神的及び身体的労力である。
注記 労力は個々のユーザへの精神的及び身体的な影響を対象とする。労力の消費は過度な要求及び
負荷不足の両方を含み,いずれも否定的な影響を引き起こす可能性がある。
6.3.4
消費された資金
資金には,システム,製品又はサービスを利用する費用を含む。例えば,賃金の支払い,光熱費,通信
費などである。費用には,使用済みの機器及びゴミの処分に掛かる費用を含む。
注記 設備,施設,情報又は専門技術など,システム,製品又はサービスを利用するために獲得した
再利用可能な資源の費用の一部を含む(7.5.2参照)。
6.3.5
消費された資材
資材とは,タスク(保守作業を含む。)のための材料として使われ,システム,製品又はサービスによっ
て使用される物品(例えば,原材料,水,紙)のことである。
6.4
満足
6.4.1
概要
満足は,システム,製品又はサービスの利用に起因するユーザのニーズ及び期待が満たされている程度
に関するユーザの身体的,認知的及び感情的な受け止め方である。
注記1 満足はユーザの行動及び結果に影響を及ぼす。
注記2 満足は一般にユーザからの評定に基づいて評価する。
満足の下位構成要素は,身体的,認知的及び感情的な反応であり,ユーザビリティを考慮する際に用い
11
Z 8521:2020
る下位構成要素は状況によって異なる。
6.4.2
身体的反応
快適又は不快の感覚は満足の身体的反応である。それらは,システム,製品又はサービスを利用した身
体的経験による結果である。
例1 画面のまぶしさは不快感を引き起こす。
例2 マウスを使わずにノートパソコンを長時間利用すると,腕及び指が疲れる。
6.4.3
認知的反応
態度,し(嗜)好及び知覚は,満足の認知的反応である。それらはシステム,製品又はサービスの利用
経験の結果であり,類似のシステムを利用した経験及びほかの人の意見によっても影響を受ける可能性が
ある。
例 あるユーザは,レンタカー会社のウェブサイトでの車の予約に“すごく時間が掛かる”と嘆く。
注記 信用,認識された安全度,認識されたセキュリティの度合い及び認識されたプライバシーの度
合いも認知的反応である。
6.4.4
感情的反応
情緒的要素は満足の感情的反応である。それらはシステム,製品又はサービスを利用している間の経験
から生じる。これらの反応は,類似のシステムを利用した経験及びほかの人の意見によって影響を受ける
可能性がある。
注記1 感情は,生理的反応を生じさせる又は生理的な反応から生じる。
注記2 インタラクティブシステムは,ゲームの興奮及び楽しさ又はウェブショップへの信頼のよう
な意図的に豊かな感情的反応を作る。感情的反応が目標の一部である場合,それらの達成度
は効果として扱う(5.3.3参照)。
注記3 感情的反応は,評価尺度を用いた自己評価と同様に,顔の表情及び皮膚抵抗のような生理的
反応によっても評価する。
6.5
ユーザビリティの概念の用途
用途の例を次に示す。
a) 保守性 保守性は,システム,製品又はサービスを維持する目標を達成する場合に,効果,効率及び
満足の観点で考慮する。
b) 習熟性 習熟性は,システム,製品又はサービスを利用することを学ぶ目標を達成する場合,効果,
効率及び満足度の観点で考慮する。
注記 JIS X 25010:2013は,保守性又は習熟性を達成するために役立つ製品属性を規定している。JIS
Z 8520:2008は,学習への適合性の原則がどのようにインタラクティブシステムの設計及び評価
に適用されるかについて規定している。
6.6
その他の利用の成果
6.6.1
概要
その他の利用の成果には,アクセシビリティ,利用におけ危害の回避,ユーザエクスペリエンスの一部
などが含まれる。
注記1 これらの利用の成果は独立しているものではなく,利用の成果に対する様々な視点から考え
たものである。
注記2 ユーザエクスペリエンスは,利用中及び利用後だけでなく利用前についても対象としている。
また,ブランドイメージなど利用以外の要因も含まれるため,利用による成果となるのはユ
12
Z 8521:2020
ーザエクスペリエンスの一部である。
6.6.2
アクセシビリティ
アクセシビリティとは,製品,システム,サービス,環境及び施設が,特定の利用状況において特定の
目標を達成するためにユーザの多様なニーズ,特性及び能力で使える度合いである。アクセシビリティの
ために設計する狙いは,対象とする母集団をより大きくすることである。ひいては,より多様な利用状況
において,より多くの人々にとってアクセシビリティが高い製品,システム,サービス,環境及び施設を
作ることである。
6.6.3
利用における危害の回避
利用における危害の回避は,不十分な効果,効率若しくは満足又はアクセシビリティの欠如,及び/又
は望ましくないユーザエクスペリエンスによって否定的な影響が生じるリスクを最小化することである。
否定的な影響は次を含む。
a) ユーザ又はそれ以外の人々への危害(例えば,身体的な危険,心的損害,金銭的損害又はプライバシ
ーの侵害)
b) システムを利用している組織への危害(例えば,経済,セキュリティ,環境,社会的評価又はブラン
ドイメージに対する損害)
c) システムを開発,提供又は取得した組織への危害(例えば,ユーザビリティが意図した目標と合って
いないシステムによって受けた経済的又は社会的損害)
6.6.4
ユーザエクスペリエンスの一部
ユーザエクスペリエンスは,利用前,利用中及び利用後におけるユーザの全ての経験を対象とする。た
だし,その他の利用の成果におけるユーザエクスペリエンスの一部は,利用中及び利用後の経験だけを対
象とする。
7
利用状況
7.1
利用状況の構成要素
利用状況は,システム,製品又はサービスが使われる際の,ユーザ,目標,タスク,資源,並びに技術
的,身体的,社会的,文化的及び組織的環境の組合せで構成したものである。
注記1 利用状況は,システム,製品又はサービスと,ほかのシステム,製品又はサービスとの間の
インタラクション及び依存関係を含む。
ユーザビリティは,システム,製品又はサービスの利用状況の構成要素の性質によって決まる。したが
って,実際の利用状況,又は意図された利用状況に関連する特性を特定することが重要である。利用状況
によって,システム,製品又はサービスのユーザビリティは異なる。
注記2 利用状況における特定の性質がユーザビリティの変化に与える影響の大きさは様々である。
利用状況及びユーザビリティに影響する特性を特定することが重要である。利用状況はインタラクショ
ンの過程で変化し(例えば,ユーザの目標が変化していく又はユーザが上達していく。),ユーザビリティ
の達成に影響を及ぼすことがある。
利用状況の構成要素及びそれらに要求される具体的なレベルは,取り組む問題の範囲によって決まる場
合がある。ISO/IEC 25063:2014は,利用状況に規定すべき情報を記載している。
ユーザビリティは,網羅する必要のある利用状況の範囲に応じて考慮する。
7.2
利用状況におけるユーザ
ユーザビリティを考慮するユーザは,特定のシステム,製品又はサービスの様々な要素とインタラクシ
13
Z 8521:2020
ョンする人々であり,次の人々を含む。
− システム,製品又はサービスを使う人々(システム,製品又はサービスを利用し互いにインタラクシ
ョンする人々を含む。)
− システム,製品又はサービスを使わずに,その出力を利用する人々
例 銀行の顧客は,銀行員用のシステムを直接扱うユーザではなく,銀行員を介してシステムを利用
するユーザである。例えば,コールセンタを利用したり,支店の窓口を利用したりすることで,
間接的にシステムを利用する。
− システム,製品又はサービスを支える又は維持する人々(例えば,管理者,訓練要員又は保守要員)
注記1 JIS X 25010:2013では,直接,間接,一次,二次の四つのカテゴリにユーザを分類している。
これらのカテゴリは,システム,製品又はサービスとインタラクションする人々を分類する
ために用いる。
ユーザは,異なるニーズ,目標,タスク,役割,環境,ユーザの特徴,生理的・心理的な能力状態又は
その他の個人差による要因に基づいて,一般的に複数のグループに分けられる。ユーザの特徴には,身体
的,感覚的,心理的及び社会的要因を含む。
注記2 市場調査の分野で用いられる市場区分とは,一般に,利用行動よりもむしろ購買行動に関係
した個人の特徴に基づいて定義される(8.6参照)。
利用状況に含まれるユーザグループは,ユーザビリティを考慮する特定のユーザグループよりもはるか
に大きいことがある(5.3.2参照)。
多様な特性及び能力をもつユーザグループも考慮に入れて,ユーザグループ及びユーザビリティに関係
するユーザの特性を明確にすることが重要である。
7.3
利用状況における目標
目標とは,達成すべき特定の結果である。目標は,それらを達成するために使う手段ではない。目標は,
必ずしも想定する基準(効果,効率,満足度のレベルなど)を必要とせず,達成する成果に焦点を当てて
いる。
目標は,次を含む様々な要因に基づく。
− ユーザ自身
− その他のステークホルダ
− 組織
− 規制
異なるユーザは,異なる目標をもつ。
注記1 目標は,機能的,認知的,情緒的又は意識的な行為による成果に焦点を当てている。
利用状況は,潜在的な要因に基づく目標も含む。
注記2 ユーザビリティに関する特定の目標及び利用状況が,ユーザではなくステークホルダに基づ
く場合,そのユーザビリティは,実際の利用状況におけるユーザの目標には適さない可能性
がある。
目標は,途中結果を含む副目標に分解される。副目標及び途中結果も利用状況の一部である。
注記3 目標は目標を達成するために使われる手段ではなく,タスクが目標を達成するための詳細な
手段である。
例
目標:目的地へ行く(現在とは異なる場所)。
14
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副目標:交通手段を決める。
タスク:飛行機と電車とを比較する。
副目標:チケットを入手する。
タスク:クレジットカードを使ってチケットを購入する。
副目標:移動する。
一般的に,ユーザビリティを考慮する特定の目標は,利用状況に含まれる様々な目標の中から抽出する。
また,特定した目標以外の目標を導くことは,利用状況を分析する上で重要である。
注記4 ユーザビリティを考慮しない,外部によって課された目標(例えば,規制又は組織文化によ
る)は,システム,製品又はサービスを利用する際のユーザビリティを達成することに制限
を加える場合がある。
7.4
利用状況におけるタスク
タスクは,目標を達成するために行われる一つ以上の活動で構成したものである。
活動の様々な組合せは,同じ目標を達成する異なる方法を提供し,ユーザビリティのレベルに影響する
可能性がある。
例1 銀行口座から現金を引き出すという目標は,人が銀行へ行き,カウンターで引き出す方法及び
コンビニエンスストアでATMを使うなど,様々な方法で達成可能である。
注記1 設計のために利用状況の一部としてタスクを考慮する場合は,現行のタスク,タスクを遂行
する新たな方法,及び具体的な支援タスクを考慮することが重要である。
タスクを構成する活動の特徴,例えば,習慣,既成概念,文化的慣習と同様に頻度,期間,複雑さ,依
存及び相互依存のような関係は利用状況の一部である。さらに,タスクを構成する活動の詳細も重要であ
る(例えば,タスクの活動がどの程度融通が利くか,どのタスクを実行するか,どのようにタスクを実行
するかを特定すること)。
注記2 ユーザがタスクを遂行する方法は,ほかのタスクを遂行する方法及びそのユーザビリティに
影響を与える可能性がある。
例2 新しいタスクを遂行する場合,効率的な方法を調べるよりもユーザはほかのタスクで慣れた方
法を使おうとする。例えば,初めて振り込みをするときに,ATMを使わずに,使い慣れている
銀行窓口を使う。
タスクを遂行するために規定された方法は,ユーザが特定の目標を達成するためにタスクを遂行する実
際の方法とは異なる可能性がある。
注記3 タスクを遂行する既定の方法と実際の方法との不一致が生じた場合,利用状況に関する重要
な情報が得られる可能性がある。利用状況を特定する際に,既定の方法でタスクを遂行する
ことに妥当な理由があるかを確認することが重要である。
例3 ある組織では情報漏えい(洩)を防ぐために上級管理者が全ての情報交換の内容を承認する決
まりがある。しかし,その組織の従業員が,ほかの組織にいる同僚と直接会って情報交換する
方が,より効果的かつ効率的であることに気付いた。
7.5
資源
7.5.1
概要
利用状況は特定の目標を達成するための再利用可能な資源及び利用可能な資源を含む。
7.5.2
再利用可能な資源
再利用可能な資源は,ユーザがタスクを実行している間にシステム,製品又はサービスと共に利用され,
15
Z 8521:2020
タスクの完了に不可欠な機器,アプリケーション,情報及びサポートを含む。
a) 機器及びアプリケーションは,ハードウェア,ソフトウェア及びその他の物理的な製品(例えば,事
務机)を含む。
注記 システム,製品又はサービスと共に利用される製品には,家具,個人用保護具又はバッテリー
充電器が含まれる可能性がある(再利用が不可能な場合,これらの製品の幾つかは消耗品とな
る。)。
b) 情報には,(ハードウェア,ソフトウェア又は紙のような物理手段によって提供されるかどうかにかか
わらず)ユーザが利用するデータ(例えば,道路標識又はレシピ)が含まれ,各タスクの達成を助け
る。
c) サポートは支援技術を含むあらゆるサービス(人的又はシステムベース)を含み,特定の目標を達成
するためにユーザが利用する。
7.5.3
利用可能な資源
利用可能な資源は,時間,人間の労力,資金及び資材を含む(6.3参照)。
注記1 利用可能な資源は,システム,製品又はサービスの一部(例えば,プリンタ用紙)を含む。
利用可能な資源に対する制約条件によって消費は制限される。そのため,その制約条件は利用状況にお
ける重要な部分である。
注記2 エネルギー及び通信は,利用可能な資源とみなすことができる。エネルギー(例えば,電気
的,化学的又は機械的)及び通信(例えば,インターネット,携帯電話網)は利用可能な資
源であると同時に再利用可能な資源である。これらの資源の利用手段の提供は,技術的環境
の要素である(7.6.2参照)。
7.6
環境
7.6.1
概要
利用状況は,ユーザビリティに影響を与える技術的,物理的及び社会的,文化的及び組織的環境を含む。
注記 一般に,環境は利用状況の一部とみなすことができる制約条件を創り出す。
7.6.2
技術的環境
技術的環境は,再利用可能な資源(7.5.2参照)及び利用可能な資源(7.5.3参照)を利用できる又は制限
する環境の構成要素から成る。
技術的環境には,一般に,家具,商品,操作機器,エネルギー(例えば,電気的,化学的又は機械的)
及び通信(例えば,インターネット,携帯電話網)のような資源の利用手段を含む。
7.6.3
物理的環境
物理的環境は,次を含む。
− 建築環境
− 空間,温熱,聴覚的及び視覚的な条件,並びに安定性及び振動
− 地理的及び地形的特徴
− 気象条件
− 時間帯及び季節
7.6.4
社会的,文化的及び組織的環境
社会的,文化的及び組織的環境は次を含む。
− その他の人々(ステークホルダを含む。)
− 人間の役割及び関係
16
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− 組織構成
− 言語
− 法律
− 規範及び価値観並びに働き方
− 単独又はグループの一部としての利用
− プライバシー
8
ユーザビリティの概念の適用
8.1
様々なシステム,製品又はサービスを利用した成果として生じるユーザビリティ
ユーザビリティは,ユーザが関わる全ての状況に関係する。ユーザビリティの概念は,広範なシステム,
製品及びサービスの利用に適用できる。
注記 ユーザビリティの概念の最も一般的な適用場面は,設計,開発及び評価である。
この概念を適用するには,特定の利用状況を利用することを考えず,システム,製品又はサービスを明
確にすることが重要である。
ユーザビリティは,次を含む様々な範囲及び複雑さのレベル(複雑な全体システム,個々のシステム,
製品,サービス又は環境の構成要素に至るまで)の下で検討する。
a) システム
− 典型的なインタラクティブシステムとは,ユーザの入力を受け,出力を伝えるハードウェア,ソフ
トウェア,及び/又はサービスの組合せである。
− システムは製品,サービス及び建築環境(例えば,建築物及び車椅子のための通路)を含み,階層
及び入れ子の構造をもつ。
− 建築環境にユーザがいる場合,建築物の中にいるとき,又は建築物を出入りする際に,案内板など
を利用して環境とインタラクションする可能性がある。
注記 更に複雑なシステムでは,システムとインタラクションする人々との間に,多くのインタフェ
ースがある。
例1 コンビナートには,中央制御室,分散した複数の制御室,特殊なツール及び材料を取り扱うた
めの装置がある。これらは,システム全体を使うために,複数の人々によって使われるもので
ある。
b) 製品
− 製品とは一般に,単独で動作する人工物である。
− 製品には,物体,ソフトウェア製品及びその他の無形製品を含む。
− 典型的な物理的製品は,容易に触れて確認できるインタフェース(例えば,コップのようなインタ
ラクティブではないインタフェースを含む。)を備えている。
− 複雑な製品においては,製品全体又はその一部(例えば,こん包)について,ユーザビリティを評
価する。
c) サービス
− サービスは,複数の個別のサービス(例えば,携帯電話契約のための手続き,工事,保守等の個別
のサービス)から構成され,ユーザに価値ある結果を提供する。
ユーザとサービスとのインタフェースは,情報及びその他の無形物だけでなく,サービスを担う人々の
場合がある。
17
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注記 ユーザビリティは一般に,人為的に構築されたシステム,製品及びサービスに関して考慮する
が,環境の中で自然に生じるシステムの評価にも適用できる。
例2 目的地に到達するための経路のユーザビリティは,道の勾配及びユーザの能力を考慮して評価
する。
ユーザビリティを向上させるための設計及び評価では,システム,製品又はサービスの一つ以上のイン
タラクションに焦点を当てる。それらのユーザは一つ以上の目標の達成を目指している。
8.2
ユーザビリティのために求められるユーザ,タスク及び環境の特性
ユーザビリティを向上させるための設計及び評価では,意図した目標を達成するために,利用状況の各
構成要素の特性を特定する。
a) ユーザに必要とされる能力及び特性(例えば,技能又は専門知識)
b) 目標達成に必要なタスクの適切な特性(例えば,タスクの複雑さ,又はシステムがタスクを支援する
度合い)
c) 資源に求められる属性(例えば,インターネット接続の速さ,又は入手可能なデータの質)
d) 環境に求められる特性(例えば,温度又はユーザへの支援若しくは訓練が必要かどうか)
8.3
設計・開発において達成すべきユーザビリティ
ISO 9241-210:2019は,ユーザビリティを達成するための一連の人間中心設計の活動を明らかにしている。
a) 利用状況の理解及び明示では,適切な利用状況が何であるかを明らかにし,その情報を,要求の仕様
化,並びに設計解の開発及び評価に利用できるようにする。
b) ユーザ要求事項の明示においては,関連するユーザビリティの要求事項(すなわち,特定の利用状況
における効果,効率及び満足の基準)を明らかにする。
c) 設計解の作成においては,使いやすい設計解を作るために,人間工学的知識及びプロトタイプを利用
するとともに,利用状況及びユーザ要求事項を活用する。
d) 評価結果を提供するために,設計解を評価する(表A.1には,ユーザビリティ評価のための様々なア
プローチをまとめている。)。
ISO 9241-220:2019には,人間中心設計による成果を達成するために,組織的に人間中心設計を支援し,
実行するプロセスが記載されている。
注記 ISO 9241シリーズのほかのパートでは,製品,システム及びサービスの設計に適用してそのユ
ーザビリティを高めるための,より具体的な指針を提供している。例えば,JIS Z 8520:2008及
びISO 9241-112:2017では,ソフトウェアのユーザビリティに関連する原則及び高度な指針を提
供している。ISO/IEC 2506xシリーズのCommon Industry Formats(CIF)の規格では,インタラ
クティブシステムのユーザビリティを明示したり評価したりする際の情報項目を定義している。
8.4
調達におけるユーザビリティ
ユーザビリティを向上させるための設計及び評価は,組織及び個人による調達において,次の利益があ
る。
− 入手,及び利用されるシステム,製品又はサービスについて,要求されるユーザビリティを確認し,
実際のユーザビリティと比較できるようにする(JIS X 25062:2017及びISO/TS 20282-2:2013を参照)。
− 意図した利用状況を特定するための原則並びに効果,効率及び満足の基準を提供する。
− 利用状況を無視した機能及び特徴に基づく比較ではなく,ユーザ要求に焦点を当てた包括的なアプロ
ーチをとる。
18
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8.5
再検討又は比較の際のユーザビリティ
ユーザビリティを向上させるための設計及び評価は,システム,製品又はサービスの再検討において,
次の利点がある。
− システム,製品又はサービスの再検討又は比較のために用いる利用状況を明確に仕様化できる
(ISO/IEC 25063:2014参照)。
− 公正で適切なユーザ指向の基準を提供する。
− 消費者指向を促進する。
− 新しい技術を比較調査するための原則を提供する。
8.6
マーケティング及び市場調査へのユーザビリティの活用
マーケティング及び市場調査においてのユーザビリティを考慮することの活用例を次に示す。
− 様々な市場セグメントへの様々なユーザ要求が認識できる。
− 製品の特徴又は性質の順位付けができる。
19
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附属書A
(参考)
ユーザビリティの測定尺度
A.1 概要
ISO/IEC 25066:2016に記載している,ユーザビリティ評価への様々なアプローチ(ユーザテスト及び専
門家評価のために用いられる。)は,表A.1に示す測定尺度を提供する。これらには,効果,効率及び/又
は満足の測定尺度,並びに個々の利用状況におけるユーザビリティの達成に寄与する製品,システム又は
サービスの属性の測定尺度を含む。
表A.1−ユーザビリティ評価へのアプローチ及び測定尺度の事例
アプローチ
測定尺度の例
a) 明示された基準に対する評価対象の偏りを特定す
るための検査
要求事項,原則,設計指標又は確立した慣習に適合する
度合い
b) タスクの完遂を試みる際に生じる可能性のあるユ
ーザビリティの問題を特定する検査
問題の数及び影響度
c) テスト環境又は実環境における実際のユーザビリ
ティの問題を特定するためのユーザ行動の観察
問題の数及び影響度
d) テスト環境又は実環境におけるユーザのパフォー
マンス,すなわち,効果及び効率の測定
正確さ及び完全さの測定尺度並びに(時間,資金などの)
資源の利用度合い
e) テスト環境又は実環境における満足の測定
満足の度合いから得られる測定尺度
d) 及びe) のアプローチでは,直接ユーザから効果,効率及び満足を測定する。
A.2 効果,効率及び満足の測定尺度
効果,効率及び満足の測定尺度は,ユーザが実環境又は擬似的な利用状況においてタスクを遂行する際
の客観的又は認識された利用結果に基づく。
ユーザビリティの評価の焦点は客観的測定尺度である一方,効果,効率及び満足に関してユーザに尋ね
ることは,これらのユーザビリティの構成要素に対して,客観的尺度による測定とは異なる主観的な測定
を提供する。
例1 客観的には,ユーザがタスクを完遂できていない状態でも,ユーザが正しく終了して次の行動
の必要がないと思い込んでいる場合にも,ユーザビリティ上の問題がある。
注記1 満足の客観的測定は,行動観察に基づく(例えば,システムの再利用)。
ユーザビリティの各構成要素の重要性は,利用状況及びユーザビリティを考慮する目的によって変わる
ため,測定尺度の選択及び組合せ方法に関する一般的な規則はない。
注記2 あるユーザビリティの構成要素(例えば,効果)の様々な測定尺度が,異なる結論になる可
能性がある。
例2 正確さを測定する場合,正しく目標を達成できたかを測定する尺度と,目標を達成するまでに
生じたエラーの回数を測定する尺度とは同じではない。
例3 消費したコストを測定する際に,ある組織では,以前の消費分が回収不能になることを考慮し
て新たに消費した金額だけを測定尺度とする一方で,ほかの組織では,過去の消費金額も考慮
20
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する。
測定尺度の選択及び各測定尺度の詳細度のレベルは,評価に参加している関係者の目標によって決まる。
各測定尺度の目標への相対的な重要性を考慮することが重要になる。例えば,使用頻度が低い場合,学習
及び再学習の測定尺度の重要性が高い。
測定尺度は,離散量に基づくもの(例えば,出現率)又は連続量に基づくもの(例えば,所要時間)が
ある。ユーザビリティの各構成要素の測定尺度及び基準は,例えば,次の理由に基づいて選択する。
− ユーザビリティを考慮する目的
− 実行している人間中心設計活動
− 測定のために使用できる資源
− 測定の実現可能性
− 測定に必要な精度及び信頼性
効果,効率又は満足の構成要素の中の一つの測定尺度が,ユーザビリティの全容を十分に表すことはで
きない。
注記3 JIS X 25022:2019 には,情報通信技術における効果,効率及び満足の測定尺度の例が記載さ
れている。
表A.2では,目標ごとに使われる可能性のある測定尺度を示している。
表A.2−ユーザビリティ測定尺度の例
目標
効果の測定尺度
効率の測定尺度
満足の測定尺度
客観的
主観的
客観的
主観的
客観的
主観的
券売機でチケッ
トを購入する。
−利用結果の正確さ
(例 有効な切符が
購入できたか否か)
−タスク達成率(例
想定されるユーザグ
ループでタスクを達
成できたユーザの割
合)
−券売機を改善しな
かった場合にユーザ
が金銭を失う頻度
−想定していた
旅行手段とし
て,購入した切
符が有効である
というユーザの
認識
−購入した切符
が有効であるこ
とを正しく理解
しているユーザ
の割合
−タスク達
成までの所
要時間
−タスク達
成までのコ
スト
−タスク達
成までの所
要時間に対
するユーザ
の認識
−タスク達
成までのコ
ストに対す
るユーザの
認識
−券売機
を再利用
する頻度
(観測結
果)
−タスク達
成又は券売
機に対する
満足
−所要時間
に対する満
足
−信用に関
する測定尺
度
−他者に利
用を薦める
傾向
表計算ソフトウ
ェアでの集計表
の作成方法を習
得し新しいスキ
ルを獲得する。
−集計表を正しく作
成できたかどうか
−1週間後でも正しく
利用できたかどうか
−集計表の作成方法
を誤って理解したた
めに正しくない結果
となる頻度
−正しく適用で
きたとするユー
ザの認識
−再び利用でき
る能力に対する
ユーザの認識
−タスク達
成までの所
要時間
−タスク達
成までのコ
スト
−タスク達
成までの労
力に対する
認識
−表計算
ソフトウ
ェアで集
計表を作
成する頻
度
−専門知識
を習得した
ことに対す
る満足
A.3 測定尺度の利用
ユーザビリティの測定尺度は,次の目的のために利用する。
a) ユーザ要求事項の明示 ユーザビリティの測定尺度は,ユーザの要求事項のための基準を特定し,明
21
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示するため,及び将来の比較のためのベンチマークを提供するために用いる。
b) 要求事項を満たしているか否かの評価 設計又はシステムが,ユーザの要求事項を満たしていること
を確証するために評価する。
c) 比較 異なるシステム,製品又はサービス,若しくはそれらの異なるバージョンを利用した結果であ
るユーザビリティ間を比較する,又は確立されたベンチマークを用いて比較する。
効果,効率及び満足は,想定される利用状況において具体化,又は測定されるものである。信頼できる
測定尺度とするために,ユーザの代表者が代表的なタスクを代表的な利用状況の下で実行する。ISO/TS
20282-2:2013は,このようなテスト方法の一例であり,JIS X 25062:2017は,これらのタイプの測定尺度
を,どのように文書化するかの例である。
22
Z 8521:2020
参考文献
[1] JIS X 8341-1: 2010 高齢者・障害者等配慮設計指針−情報通信における機器,ソフトウェア及びサー
ビス−第1部:共通指針
注記 対応国際規格:ISO 9241-20:2008,Ergonomics of human-system interaction−Part 20: Accessibility
guidelines for information/communication technology (ICT) equipment and services
[2] JIS Z 8520: 2008 人間工学−人とシステムとのインタラクション−対話の原則
注記 対応国際規格:ISO 9241-110:2006,Ergonomics of human-system interaction−Part 110: Dialogue
principles
[3] ISO 9241-112: 2017,Ergonomics of human-system interaction−Part 112: Principles for the presentation of
information
[4] JIS X 8341-6:2013 高齢者・障害者等配慮設計指針−情報通信における機器,ソフトウェア及びサー
ビス−第6部:対話ソフトウェア
注記 対応国際規格:ISO 9241-171:2008,Ergonomics of human-system interaction−Part 171: Guidance
on software accessibility
[5] ISO 9241-210:2019,Ergonomics of human-system interaction−Part 210: Human-centred design for interactive
systems
[6] ISO 9241-220:2019,Ergonomics of human-system interaction−Part 220: Processes for enabling, executing
and assessing human-centred design within organizations
[7] ISO 9355-1:1999,Ergonomic requirements for the design of displays and control actuators−Part 1: Human
interactions with displays and control actuators
[8] ISO/IEC 13066-1:2011,Information technology−Interoperability with assistive technology (AT)−Part 1:
Requirements and recommendations for interoperability
[9] ISO/IEC 15288:2015,Systems and software engineering−System life cycle processes
[10] ISO/TR 16982:2002,Ergonomics of human-system interaction−Usability methods supporting human-centred
design
[11] ISO 20282-1:2006,Ease of operation of everyday products−Part 1: Design requirements for context of use and
user characteristics
[12] ISO/TS 20282-2:2013,Usability of consumer products and products for public use−Part 2: Summative test
method
[13] JIS X 25010:2013 システム及びソフトウェア製品の品質要求及び評価 (SQuaRE) −システム及びソ
フトウェア品質モデル
注記 対応国際規格:ISO/IEC 25010:2011,Systems and software engineering−Systems and software
Quality Requirements and Evaluation (SQuaRE)−System and software quality models
[14] ISO/IEC/TS 25011:2017,Information technology−Systems and software quality requirements and evaluation
(SQuaRE)−Service quality models
[15] JIS X 25022:2019 システム及びソフトウェア製品の品質要求及び評価 (SQuaRE) −利用時品質の測
定
注記 対応国際規格:ISO/IEC 25022:2016,Systems and software engineering−Systems and software
23
Z 8521:2020
quality requirements and evaluation (SQuaRE)−Measurement of quality in use
[16] JIS X 25023:2018 システム及びソフトウェア製品の品質要求及び評価 (SQuaRE) −システム及びソ
フトウェア製品の品質の測定
注記 対応国際規格:ISO/IEC 25023:2016,Systems and software engineering−Systems and software
Quality Requirements and Evaluation (SQuaRE)−Measurement of system and software product
quality
[17] ISO/IEC/TR 25060:2010,Common industry format for usability−General framework for usability-related
information
[18] JIS X 25062:2017 システム及びソフトウェア製品の品質要求及び評価 (SQuaRE)−使用性の試験報
告書のための工業共通様式
注記 対応国際規格:ISO/IEC 25062:2006,Software engineering−Software product Quality
Requirements and Evaluation (SQuaRE)−Common Industry Format (CIF) for usability test reports
[19] ISO/IEC 25063:2014,Systems and software engineering−Systems and software product Quality
Requirements and Evaluation (SQuaRE)−Common Industry Format (CIF) for usability: Context of use
description
[20] ISO/IEC 25066:2016,Systems and software engineering−Systems and software Quality Requirements and
Evaluation (SQuaRE)−Common industry Format for Usability−Evaluation Report
[21] JIS Z 26000:2012 社会的責任に関する手引
注記 対応国際規格:ISO 26000:2010,Guidance on social responsibility
[22] ISO 26800:2011,Ergonomics−General approach, principles and concepts
[23] ISO 27500:2016,The human-centred organization−Rationale and general principles
[24] IEC 62366-1:2015,Medical devices−Part 1: Application of usability engineering to medical devices
[25] JIS Z 8071:2017 規格におけるアクセシビリティ配慮のための指針
注記 対応国際規格:ISO/IEC Guide 71:2014,Guide for addressing accessibility in standards
[26] JIS X 8341-2:2014 高齢者・障害者等配慮設計指針−情報通信における機器,ソフトウェア及びサー
ビス−第2部:パーソナルコンピュータ
注記 対応国際規格:ISO/IEC 29136:2012,Information technology−User interfaces−Accessibility of
personal computer hardware
[27] ISO/IEC 29138-1:2018,Information technology−User interface accessibility−Part 1: User accessibility needs
[28] ISO/IEC 30071:2017,Information technology−Development of user interface accessibility−Part 1: A code of
practice for creating ICT products and services
[29] Bias R.G., & Mayhew D.J. eds. Cost-Justifying Usability: An Update for the Internet Age. Morgan Kaufmann,
2005
このJISに追加する参考文献
[30] JIS Q 20000-1:2012 情報技術−サービスマネジメント−第1部:サービスマネジメントシステム要求
事項
[31] JIS Q 31000:2010 リスクマネジメント−原則及び指針
[32] JIS Z 8501:2007 人間工学−作業システム設計の原則
[33] ISO 21542:2011,Building construction−Accessibility and usability of the built environment
24
Z 8521:2020
[34] ISO/IEC 24765:2017,Systems and software engineering−Vocabulary
25
Z 8521:2020
附属書JA
(参考)
JISと対応国際規格との対比表
JIS Z 8521:2020 人間工学−人とシステムとのインタラクション−ユーザビリ
ティの定義及び概念
ISO 9241-11:2018,Ergonomics of human-system interaction−Part 11: Usability:
Definitions and concepts
(I)JISの規定
(II)国際
規格番号
(III)国際規格の規定
(IV)JISと国際規格との技術的差異の箇条ごと
の評価及びその内容
(V)JISと国際規格との技術的差
異の理由及び今後の対策
箇条番号
及び題名
内容
箇条
番号
内容
箇条ごと
の評価
技術的差異の内容
1 適用範囲 ユーザビリティの
定義及び概念の適
用範囲を規定
1
NOT
E
JISとほぼ同じ
削除
システム,製品又はサービスを関心
の対象に言い換えているが,JIS規
格では言い換えない。技術的差異は
ない。
−
3 用語及び
定義
3.1.14 満足の定義
3.1.4
注記2まで定義
追加
箇条6.4に対応するために,注記3
を追加。
−
3.2.1
3.2.1
人間中心品質を定義
削除
ユーザエクスペリエンスを含む人
間中心品質を削除。同じ意味で使用
している利用の成果に統一。
我が国では,ユーザエクスペリエ
ンスを品質に含めない。この論点
を,国際規格の審議で提案してい
る。
3.2.2 アクセシビリ
ティの定義
3.2.2
アクセシビリティを定
義
変更
関連国際規格での最新の定義に変
更。技術的差異はない。
−
4 ユーザビ
リティの根
拠及び効用
ユーザビリティが,
どのような指標で
表されるかを規定
4
JISとほぼ同じ
削除
ユーザビリティの効用から,ユーザ
エクスペリエンスの改善を削除。
我が国では,ユーザビリティが全
てのユーザエクスペリエンスの改
善に効果があると認めていない。
この論点を,国際規格の審議で提
案している。
構成要素の関係性
の説明
JISとほぼ同じ
変更
箇条4にあるユーザビリティの構
成要素の関係性に関する文章を構
成要素の説明がある5.1に変更。技
術的差異はない。
−
5
Z
8
5
2
1
:
2
0
2
0
26
Z 8521:2020
(I)JISの規定
(II)国際
規格番号
(III)国際規格の規定
(IV)JISと国際規格との技術的差異の箇条ごと
の評価及びその内容
(V)JISと国際規格との技術的差
異の理由及び今後の対策
箇条番号
及び題名
内容
箇条
番号
内容
箇条ごと
の評価
技術的差異の内容
5特定の利
用状況にお
けるユーザ
ビリティ
図1 特定の利用状
況の下でシステム,
製品又はサービス
を利用した結果と
してのユーザビリ
ティ
Figur
e 1
JISとほぼ同じ
変更
Figure 1において,その他の利用の
成果として記述されていたユーザ
エクスペリエンスを削除し,注記と
して,“例えばユーザエクスペリエ
ンスの一部”を追加。
我が国では,ユーザエクスペリエ
ンスの一部が,利用の成果である
と考えている。この論点を,国際
規格の審議で提案している。
5.1 ユーザビリティ
の概念の説明
5.1
JISとほぼ同じ
削除
図1との対応から,その他の利用の
成果に関する説明の文章を削除。
Figure 1の変更理由と同じ。
6 利用の成
果
6.1 成果としてのユ
ーザビリティ
6.1
Note
5
JISとほぼ同じ
削除
人間中心の品質は,利用の成果と同
じ意味で使われているため,人間中
心の品質の記述(注記5)を削除し
た。
この論点は,国際規格の審議で提
案している。
6.6.1 その他の利用
の成果の概要を説
明
6.6.1
JISとほぼ同じ
削除
人間中心の品質は,利用の成果と同
じ意味で使われているため,人間中
心の品質の記述を削除した。
この論点は,国際規格の審議で提
案している。
6.6.3 利用における
危害の回避
6.6.4
JISとほぼ同じ
変更
図1の説明に合致するよう項順及
び6.6.4の項目名を変更。
6.6.4にユーザエクスペリエンスの
一部に関する説明を追加。技術的差
異はない。
Figure 1の変更理由と同じ。
6.6.4 ユーザエクス
ペリエンスの一部
6.6.3
−
Anne
x A
ユーザビリティとほか
の概念との関係
削除
附属書Aを削除し,附属書Bを附
属書Aに変更。A.1からA.5までは
ユーザビリティと直接関係がない
内容である。A.6 の人間中心の品質
は利用の成果と重複する。A7は改
訂中である。以上の理由から,附属
書Aを削除した。技術的差異はな
い。
−
5
Z
8
5
2
1
:
2
0
2
0
27
Z 8521:2020
JISと国際規格との対応の程度の全体評価:ISO 9241-11:2018,MOD
注記1 箇条ごとの評価欄の用語の意味は,次による。
− 削除 ················ 国際規格の規定項目又は規定内容を削除している。
− 追加 ················ 国際規格にない規定項目又は規定内容を追加している。
− 変更 ················ 国際規格の規定内容を変更している。
注記2 JISと国際規格との対応の程度の全体評価欄の記号の意味は,次による。
− MOD ··············· 国際規格を修正している。
5
Z
8
5
2
1
:
2
0
2
0