Z 8514 : 2000 (ISO 9241-4 : 1998)
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法第12条第1項の規定に基づき,日本人間工学会 (JENC)/財団法人日本規格
協会 (JSA) から,日本工業規格を制定すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,通商産
業大臣が制定した日本工業規格である。
JIS Z 8514には,次に示す附属書がある。
附属書A(参考) ユーザビリティ試験(代替試験の提案)
附属書B(参考) 参考文献
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
Z 8514 : 2000
(ISO 9241-4 : 1998)
人間工学−視覚表示装置を用いる
オフィス作業−
キーボードの要求事項
Ergonomics−Office work with visual display terminals (VDTs)
−Keyboard requirements
序文 この規格は,1998年に第1版として発行されたISO 9241-4, Ergonomic requirements for office work
with visual display terminals (VDTs) −Part 4 : Keyboard requirementsを翻訳し,技術的内容及び規格票の様式
を変更することなく作成した日本工業規格である。
なお,この規格で点線の下線を施してある参考は,原国際規格にはない事項である。
キーボードは,現在のところ,情報をインタラクティブ・オフィス・コンピュータ・システムに入力する
ために,操作者によって用いられている主要な入力装置である。キーボードの設計は,効率,有効さ,満
足度に多大な影響を与える。この規格の要求事項と推奨事項は,人間工学の原則に基づいている。
1. 適用範囲 この規格は,据置き使用のために設計された分離したリニア・キーボードに関し,典型的
なオフィスでの仕事に用いるキーボードの設計に関するユーザーの限界及び能力を考慮した指針について
規定する。この規格は,キーボード配列の配置,個々のキーの物理的な特性,及びキーボードのきょう(筐)
体の設計に関して,人間工学上の要因に基づいた指針について規定する。この規格は,キーボードの物理
的な属性を測定することによって,適合性を試験するための方法について規定する。また,物理的な設計
要求事項と推奨事項に適合しないキーボードのために,ユーザーの作業性試験と主観尺度評価に基づいた
提案中の代替試験方法も含む。
備考 この規格の原国際規格を,次に示す。
なお,対応の程度を示す記号は,ISO/IEC Guide 21に基づき,IDT(一致している)とする。
ISO 9241-4 : 1998, Ergonomic requirements for office work with visual display terminals (VDTs)−Part
4 : Keyboard requirements (IDT)
参考 リニア・キーボードとは,ISO/IEC 9995の定義におけるA列からE列のそれぞれの列がすべ
て平行に配置されたキーボードのことであり,キーボード中央で分割するキーボードなどに区
別した意味合いで用いられる。
2
Z 8514 : 2000 (ISO 9241-4 : 1998)
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2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す
る。これらの引用規格のうちで発行年を付記してあるものは,記載の年の版だけがこの規格を構成するも
のであって,その後の改正版・追補には適用しない。発効年を付記していない引用規格は,その最新版(追
補を含む。)を適用する。
JIS Z 8513 人間工学−視覚表示装置を用いるオフィス作業一視覚表示装置の要求事項
備考 ISO 9241-3 : 1992, Ergonomic requirements for office work with visual display terminals (VDTs) −
Part3 : Visual display requirementsからの引用事項は,この規格の該当事項と同等である。
ISO 2469 : 1994, Paper, board and pulps−Measurement of diffuse reflectance factor
ISO 7000 : 1989, Graphical symbols for use on equipment−Index and synopsis
ISO 9241-5 : 1998, Ergonomic requirements for office work with visual display terminals−Part 5 :
Workstationlayout and postural requirements
ISO/IEC 9995-1 : 1994, Information technology−Keyboard layouts for text and office systems−Part 1 :
General principles governing keyboard layouts
ISO/IEC 9995-2 : 1994, Information technology−Keyboard layouts for text and office systems−Part
2 :Alphanumeric section
ISO/IEC 9995-4 : 1994, Information technology−Keyboard layouts for text and office systems−Part
4 :Numeric section
ISO/IEC 9995-5 : 1994, Information technology−Keyboard layouts for text and office systems−Part
5 :Editing section
ISO/IEC 9995-6 : 1994, Information technology−Keyboard layouts for text and office systems−Part
6 :Function section
ISO/IEC 9995-7 : 1994, Information technology−Keyboard layouts for text and office systems−Part
7 :Symbols used to represent functions
ISO/IEC 9995-8 : 1994, Information technology−Keyboard layouts for text and office systems−Part 8 :
Allocation of letters to the keys of a numeric keypad
IEC 60417 : 1973, Graphical symbols for use on equipment Index, survey and compilation of single sheets
3. 定義 この規格で用いる主な用語の定義は,次による。
3.1
技術用語の定義
3.1.1
カーソル (cursor) 英数字キーの入力の位置を示す視覚的な印 (ISO 9241-12)。
3.1.2 カーソル・キー (cursor keys) ディスプレイ上のカーソルの移動を制御し,各キーを押すことに
よるカーソル移動の方向を示す矢印が印されたキーの群。
3.1.3
皿形キーボード (dished profile keyboard) 横から見た形状が連続的にくぼんだ曲線に見えるキ
ーボード(図1参照)。
3
Z 8514 : 2000 (ISO 9241-4 : 1998)
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図1 皿形キーボードの例
3.1.4
平形キーボード (flat profile keyboard) 平らな作業面に置いたとき,手前と奥の高さが同じで,
手前から奥にかけて傾斜がないキーボード(図2参照)。
図2 平形キーボードの例
3.1.5
基準列 (home row) 打けん(鍵)の合間に通常指が戻ってくるキーボードの列(図3参照)。
参考 一般的なキーボードにおいて基準列は,数字キーセクションでも英数字キーセクションにおい
ても,ISO/IEC 9995のC列である。
図3 基準列(1:基準列)
3.1.6
基準列高さ (home row height) 押されていない状態の基準列のキーにおいて,指で押される面中
央からキーボードの支持面までの高さ(図4参照)。
図4 基準列高さ(1:基準列の高さ,2:C列)
3.1.7
キーボード形状 (keyboard profile) キーの上面によって形成されるキーボードの幾何学的外形
形状(すなわち,平形,階段形,傾斜形,皿形,スカルプチャー形)。
3.1.8
キーボード傾斜 (keyboard slope) ISO/IEC 9995-1の定義におけるA列からE列にわたって測定
し,キーの上面で形成される平面 (P−P) と水平面 (H−H) の成す角 (α)(図5参照)。
備考 E列をもたないキーボードの場合には,B列からD列を用いる。
4
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図5 キーボード傾斜
3.1.9
キーの変位 (key displacement) キーが押されていない位置から,最も深く押された位置までのキ
ーの移動量。
3.1.10 キーの押下力 (key force) 特定の位置までキーを移動するために必要な力。
3.1.11 キーロールオーバー (key roll over) 連続したキー入力において,複数のキーを作動させた場合,
作動順序どおりに正しく入力できるキーボードの能力。
3.1.12 配列 (layout) キーボードにおけるキー位置の割り当て。
3.1.13 数字キーパッド (numeric keypad) 0から9までの10個の数字と小数点が配置された数字キーセ
クションのキーの群(図6参照)。
図6 数字キーパッド[左:1-2-3(電話)配列,右:7-8-9(電卓)配列]
3.1.14 パームレスト (palm rest) 操作者の手のひらを置くことができるキーボード手前に置かれた台,
又はキーボードに装着された台。
3.1.15 主要キーセクション (principle section) 英数字,編集,機能,及び数字キーセクション。
3.1.16 ランプ・アクション (ramp action) キー押下中に,押下力が変位量とともに増加する筋運動感覚。
3.1.17 スカルプチャー形キーボード (sculptured profile keyboard) キーボードを横から見たとき,キー
トップが直線的に並んでいないキーボード。
3.1.18 傾斜形キーボード (sloped profile keyboard) キーボードを横から見たとき,キーの上面が机上面
に対してすべて同じ角度で傾斜しているキーボード。
3.1.19 スナップ・アクション (snap action) キー押下中に,ある変位で押下力が急激に減少すること。
3.1.20 階段形キーボード (stepped profile keyboard) キーボードを横から見たとき,キーの上面が机上
面に対して平行で,ただし,机上面からの高さは異なっているキーボード(図7参照)。
図7 階段形キーボードの例
3.1.21 打けん(鍵)面 (strike surface) 打けん中に指が触れるキーの上面の部分。
5
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3.1.22 触覚表示キー (tactile indicator keys) 手の位置を特定するための,触覚による目印の付いた基準
列のキー。
3.1.23 視覚表示装置 (visual display terminal [VDT]) 視覚ディスプレイと入力機器を最小構成単位とす
る装置。
3.2
ユーザビリティに関連した用語の定義
3.2.1
拡散反射 (diffuse reflection) 巨視的に反射の法則と無関係な反射による拡散 [CIE Publ. 17.4 :
1987, IEV 845-04-47]。
3.2.2
効率 (efficiency) ユーザーが,目標を達成する際に正確さと完全さに関連して費やした資源 [JIS
Z 8521]。
3.2.3
有効さ (effectiveness) ユーザーが,指定された目標を達成する上での正確さと完全さ [JIS Z
8521]。
3.2.4
フィードバック (feedback) キーが作動したことをユーザーに知らせる情報。
3.2.5
筋運動感覚によるフィードバック (kinaesthetic feedback) 手,四肢,身体の他の部分の皮膚及び
関節,並びに筋紡錘受容器に基づく感覚。
3.2.6
手/腕の中位姿勢 (neutral hand/arm posture) 手首又はひじ,若しくは肩において中立からずれ
ていない(曲ったり,ねじれたりしていない)手/腕の状態。
3.2.7
反射率 (reflectance) 与えられた条件下の入射光に対する反射光の比 [CIE Publ. 17.4 : 1987, IEV
845-04-58]。
3.2.8
満足度 (satisfaction) 不快さのないこと及び製品使用に対しての肯定的な態度。
3.2.9
鏡面反射 (specular reflection) 拡散がなく光の正反射の法則に従う反射 [CIE Publ.17.4 : 1987,
IEV 845-04-45]。
3.2.10 ユーザビリティ (usability) ある製品が,指定されたユーザーによって,指定された利用の状況
下で,指定された目的を達成するために用いられる際の,有効さ,効率及びユーザー満足度の度合い [JIS
Z 8521]。
4. 指針とする原則(参考) キーボードの設計は,ユーザーの効率,有効さ及び満足度に影響を与える。
一つの特徴を重視しすぎることで他の特徴を損なうことがあるように,設計要素は相互に影響する。満足
できるバランスに達するためには,トレードオフ設計が必要となる。人間工学に基づくキーボードの設計
の目的は,ユーザーが,正確に,素早く,不快感なしに目的のキーに触れて,操作できるようにすること
である。打けん作業のしやすさに影響するキーボードの特性は,英字キーと数字キーの配列,言語上の違
い(国の違い),個々のキーの物理的特性及びキーボードのきょう体の全体設計を含んでいる。
人間工学に基づいて設計されるシステムの目的は,特定の仕事をとり行おうとしている個人の要求を満
たすことである。この目的に対応するためには,いろいろな方法を用いることがある。例えば,一般的用
途の使用に対して設計された適切な機器を選択したり,特定の仕事又は特定のユーザーに対して特注で設
計された装置を適用したり,機器及び作業設備の構成要素に対して適切な特注対応を提供したりする。そ
の上,ユーザーが適切な訓練を行うことが,すべての目的(効率,有効さ及び満足度)の実現に効果的で
ある。
キーボードの幾つかの特性は,VDTユーザーの姿勢に影響を与える(ISO 9241-5参照)。例えば,キー
ボードが置かれた作業面の高さに加えられるキーボードの高さ(厚み)によって,ユーザーは悪い姿勢に
なることがある。
6
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ユーザーの効率,有効さ及び満足度は,ユーザーの仕事に合わせて設計されたキーボードの選択,及び
他の追加入力機器の使用に左右される。例えば,分離した数字キーパッドを提供することは,データ入力
作業の助けとなる。
特定の仕事のために使用するキーボードの設計基準を選ぶとき,関連する考慮点は,キーボード及び他
の入力機器が提供する機能に基づく。これらを考慮することで,特定の仕事のために必要な最小のキーボ
ードを選択することが可能になり,キーの数と適切なキーのグルーピングによって定められる。
5. 性能基準(参考) 性能の基準は,そのキーボードが意図した目的に対して使いやすいということで
ある。与えられた仕事において,ユーザーが打けん作業のしやすさで満足できる水準に達して,結果と快
適さで満足できる水準を持続できれば,使いやすいと考えられる。6.に規定された設計の要求事項を満た
すことによって,この目的を達成することができる。
参考 この規格で述べられている設計特性をもたないキーボードに対しては,適合を決定するための,
6.と7.に代替する方法を開発中である。提案された試験方法が附属書Aに含まれている。
6. 設計上の要求及び推奨事項
6.1
キーボード設計の一般
6.1.1
パームレスト パームレストを含む設計となっている場合には,A列の手前に奥行き50mmから
100mmのパームレストがあることが望ましい。
パームレストが設けられていない場合には,A列がキーボードの前端面に極力近いことが望ましい。
6.1.2
キーボードセクション ISO/IEC 9995-1に規定されているキーボード主要セクションは,明確に
識別できなければならない。
参考 これは,少なくとも縦横が,キーピッチの半分以上離れているか,視覚的に分かれていること
で実現できる。
6.1.3
基準列の高さ 基準列の高さは,30mm以下が望ましい。
なお,キーボードの基準列の高さは35mmを超えてはならない。調節機構が設けられている場合は,こ
の規定を満足する調節位置に調節できなければならない。
6.1.4
キーボードの傾斜角 傾斜角は,水平から正方向に5°から12°の間が望ましい。角度調節ができ
ないキーボードの傾斜角は,正方向に0°から15°の間になければならない。
6.1.5
キーボードの形状(参考) キーボードの形状は,傾斜形,皿形,階段形,スカルプチャー形,又
は平形でよい(図1,図2,図7参照)。
6.1.6
キーボード表面及びキーボードの材料特性 キートップの目に見える表面は,つや消し仕上げでな
ければならない。
視野内の他の機器及びその他のものに対し,過度の輝度コントラストを避けるため,英数字キーのキー
トップの拡散反射率は,0.15〜0.75が望ましい(ISO 9241-55.4.4を参照)。
ユーザーが頻繁に接触する表面の材料は,不適切な熱伝導特性のものを用いないことが望ましい。
キーボードには,ユーザーが傷ついたり不快感を感じる原因となるような,鋭い縁及び角がないことが
望ましい。キーボードきょう体の縁と角の最小半径は,2mm以上が望ましく,角は更に大きくすることが
望ましい。
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6.1.7
キーボードの設置 キーボードの設計は,作業が明確に定義された特別なアプリケーションを除い
て,作業面上で容易に位置を変えられなければならない。キーボードは,本体から分離可能でなければな
らない。キーボードは,水平な平面上では,使用中安定していること(例えば,滑ったり,動かせなかっ
たりしないこと)が望ましい。
6.1.8
キーボード傾斜調節機構 キーボード傾斜は,調節可能であることが望ましい。どのような調節機
構も,安定性と設置の要求事項を妨げてはならない。意図しないときに調節位置が変わってはならない。
調節する際,道具を必要としてはならない。
参考 キーボードの支持面,若しくはキーボードを設置,又は保持する目的で設計された他の機構(例
えば,x,y,z軸及び傾斜調節ができるキーボード台)は,ISO 9241-5の箇条を設計するため
の対象とする。
6.2
キーの設計
6.2.1
キー配列及びキーの中心間距離 キーの配列は,ISO/IEC 9995に適合しなければならない。中心
間を測定した英数字領域と数字領域における隣接する二つのキーの中心間距離は,左右方向と上下方向と
も,19mm±1mmでなければならない。英数字領域,又は数字領域以外のキーの中心間距離は適用外であ
るが,15mmより小さくないことが望ましい。
備考 ある種のキーは,キー1個分を超える位置を占めることは許容され,中心間の距離は左右方向,
上下方向,又は両方向で19mmを適用しなくてもよい(ISO/IEC 9995-1参照)。
6.2.2
キートップの設計 英数字領域と数字領域のすべてのキーの打けん面の面積は,少なくとも
110mm2以上でなければならない。その中の英数字キーの打けん面の幅は,12mmから15mmでなければな
らない。この領域外においては,打けん面はより小さくてもよいが,64mm2より小さくないことが望まし
い。
参考 キートップ(キーキャップ)の適切な寸法は,打けん面とキーの変位と同様に,キーの幅,キ
ーの中心間距離にも依存する。
触感表示は,英数字領域の基準列の適切なキー(例えば,ISO/IEC 9995-1のC04とC07)及び数字領域
の基準列の適切なキー(例えば,ISO/IEC 9995-1のC52)に付けることが望ましい。
6.2.3
キーの変位及び押下力 キーの変位は,1.5mmから6.0mmでなければならない。キーの変位は,
2.0mmから4.0mmであることが望ましい。
キーの変位に関して(図8参照),初期抵抗(始動力又は,初期圧)は,文字を生成する位置(ランプ・
アクションの場合),又はスナップ位置(スナップ・アクションの場合)での押下力の25%から75%でな
ければならない。文字を生成する位置又はスナップ位置での押下力は0.5Nから0.8Nであることが望まし
く,0.25Nから1.5Nでなければならない。スナップアクションにおけるスイッチの作動は,スナップ位置
を通過後で,かつ,キー押下力がスナップ位置での押下力に戻る前に起きなければならない。スイッチの
作動は,スナップ位置通過後の押下力が最小となる位置付近で起きることが望ましい。
備考 文字を生成する位置とスイッチの作動位置とは同じ意味とする。
押下力と変位特性の関係は,英数字キー全体において一様であることが望ましい。キーの押下力と変位
特性の関係は作動中に,打けん面のどこを押しても一様であることが望ましい。
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図8 キー変位とキー押下力の関係
6.2.4
キー動作のフィードバック
6.2.4.1
概論 キーの作動は,フィードバックを伴わなければならない。フィードバックは筋感覚,聴覚
又はこれらの組合せであることが可能で,設計上一つの方法しか許されない場合には,筋感覚によるフィ
ードバックが望ましい。
6.2.4.2
筋感覚によるフィードバック ランプ・アクションの変位だけでは十分な触覚によるフィードバ
ックを与えないので,聴覚によるフィードバックを併用することが望ましい(6.2.4.3参照)。
6.2.4.3
聴覚によるフィードバック 触覚によるフィードバックが提供できない場合には,聴覚によるフ
ィードバックを提供することが望ましい。主要な手段が聴覚によるものの場合は,聴覚信号は,作業環境
で知覚されなければならない。聴覚信号は,インパルス音(例えば,リレースイッチのクリック)又はト
ーン音(例えば,ベルやビープ音)が望ましい。補助的な聴覚によるフィードバックは,停止できなけれ
ばならない(例えば,“切”となる音量の調節位置)。このフィードバックは,キー作動後,100ms以内で
おきなければならない。
6.2.4.4
視覚によるフィードバック 視覚によるフィードバックは,特有のキー(例えば,シフト又はモ
ード状態)の長期間の状態を表示するために使用することが望ましい。このようなフィードバックは,ユ
ーザーにはっきりと見えることが望ましい。視覚的によるフィードバックは,キーそのもの又はキーボー
ドに用意してよいが,後者の場合には,これらはキーに隣接又は近接することが望ましい。画面上(例え
ば,操作者のための情報表示域)にフィードバックを表示する場合は,キーがどの状態にあるかをはっき
りと表示することが望ましい。
6.2.5
はね返り動作(バウンス) 1回のキーの作動で,意図しない複数回の信号が出ることを防ぐため
に,キーボードには,はね返り動作を生じないスイッチを用いるか,はね返り動作によって意図しないキ
ーの作動が生じないような方法を提供しなければならない。
6.2.6 キーロールオーバー キーボードは,個々のキーの作動順序通りに正しく検知しなければならない。
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参考 これは,適切なキーのロールオーバーによって実現できる。
6.2.7
キーのリピート機能 リピート機能があり,リピート率が固定の場合は,リピート率が10〜20回/
秒,リピート開始までの時間が500ms〜750msでなければならない。リピート機能がキーを強く押すこと
によって開始する場合は,開始までの時間は短くてよい。
リピート率は,ユーザーが調節可能なことが望ましい。
ある取り消せない機能(“削除”コマンドなど)については,リピート作動は抑止できることが望ましい。
参考1. 750ms以上のリピート開始までの待ち時間は長すぎると感じる。
2. リピート機能とは,一つのキーを押し続けることによってそのキーが一定間隔で繰返し作動
することをいう。リピート率とは,そのキーが繰返し作動する頻度をいう。
6.2.8
キーの文字・記号 キーの文字・記号は,ユーザーに文字・記号又は機能がキーに割り当てられて
いることを示すために使用する。キーの文字・記号は,文字,記号,単語,又は機能から構成する。
この箇条の規定は,ラテン語及びキリル語に基づいたアルファベットだけに適用する。
6.2.8.1
図記号 図記号を使う場合に,ISO/IEC 9995,ISO 7000,IEC 60417が適用できる場合は,これ
らの規定に従わなければならない。
6.2.8.2
キーの文字・記号の幾何学的設計 キーのすべての文字・記号は,VDT作業の基準姿勢(ISO
9241-5,3.6参照)から見やすくなければならない。
英数字キー上の基本文字・記号の高さは2.6mm以上とする。図記号,単語,又は定着している省略形を
使うときは,高さは2.2mm以上とする。大文字(IとWを除く)の幅は,高さの50%から100%の間でな
ければならない。高さとストローク幅の比は,5 : 1から14 : 1が望ましい。
すべてのキー上の基本文字・記号にとって,背景の輝度レベルと文字・記号の間の輝度コントラストは
最低3 : 1でなければならない。拡張文字・記号は同じキー上の基本文字・記号とは知覚的に異なっている
ことが望ましい。文字・記号の輪郭は鮮鋭であることが望ましい。
明るい背景上の暗い文字・記号を推奨する。
参考 英数字キーセクションの英数字キー上に日本語の文字を表記する場合には,次の値を参考にす
るとよい。基本文字・記号の高さは,英数字と同様で,2.6mm以上とする。文字の幅は,高さ
の80%から120%の間とする。これらの値は,例えば“漢”のような縦横の比率が同程度の文
字で満たしていればよく,“へ”及び“一”のような文字は対象外である。
6.2.8.3
キーの文字・記号の数と位置 キー上の文字・記号の数は,最小にするのが望ましい。
キーの文字・記号の位置は,ISO/IEC 9995-1に従わなければならない。
キーの文字・記号がキートップに対して長すぎる場合,又はキーの機能を変更する場合,キーの文字・
記号を上乗せシート (overlay) で提供してもよい。キーの文字・記号を上乗せシートによって提供する場
合,又はキーボードのきょう体に表示する場合には,それらは参照するキーの隣にあるか,又は近くにあ
ることが望ましい。このように推奨する場所を確保できない場合には,参照カードを用意するのが望まし
い。上乗せシート及び参照カードはつや消し処理が施されていなければならない。
6.2.8.4
キーの文字・記号の耐久性 製造業者が定める製品の耐用期間中,キーの文字・記号は,見やす
くなければならない。キーの文字・記号は,所定の掃除を含む普通の摩滅,消耗に耐えるように,丈夫で
耐久性がなければならない。
6.2.9
カーソル・キー及び編集セクションのキー カーソルを制御するキーを提供しなければならない。
カーソル・キーはISO/IEC 9995-5で規定する位置に配置しなければならない。
消去又は削除を実行するキーは,不注意で意図しないで入力してしまうことがないように配置すること
10
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が望ましい。
6.2.10 数字キーパッド 0から9までの10個の数字は,123配列(電話機配列)か,789配列(電卓配列)
のどちらかの方法で,数字ゾーンZN0に配置しなければならない。配列は電話機配列が望ましい。数字キ
ーセクションの配列と配置は,ISO/IEC 9995-4で規定する。
6.2.11 キートップ形状 英数字,カーソル,数字ゾーンにおける標準の大きさのキーのキートップは,凹
形かフラット形でなければならない。スペースキーはフラット形か凸形がよい。
7. 測定
7.1
一般 キーボードは,平らな水平面上で測定する。
参考1. ISO/IEC 9995-1によれば,キーボードの“列”は記号“A”,“B”,“C”,“D”及び“E”で
記述される。
2. “A”はユーザーに最も近い列であり,“C”はセンター又は基準列である。
7.2
キーボード設計の一般
7.2.1
パームレスト パームレストがある場合,その奥行きはパームレストの後ろの端から前面までの距
離を測定する。
7.2.2
キーボードセクション もし,キーボードの主要セクションが空間的な間隔によって識別すること
を前提にしているなら,その間隔はキーの底面で,セクション間の最も近い端同士の距離を測定する。
もし,キーボードの主要部分が空間的な間隔以外の手段で識別することを前提にしているなら,直接観
察する。
7.2.3
基準列の高さ 基準列の高さは,押下されていない状態のC列のキートップの中心から支持面ま
での距離を測定する(図9参照)。
図9 C列(基準列)でのキーボード高さの測定(1:基準列の高さ,2:C列)
7.2.4
キーボードの傾斜角 傾斜角 (α) はA列及びE列(E列がないキーボードの場合は,B列及びD
列)の高さの差から計算し,キーの上面(凸型キーを除く。)で測定する(図10参照)。
E列がない場合は,B列及びD列を用いる。
図10 キーボード傾斜角の測定
7.2.5
キーボード列の形状 直接観察する。
11
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
7.2.6
キーボード表面及びキーボードの材料特性 つや消し仕上げかどうか,直接観察する。
拡散反射は,入射した光束に対する,反射した光束の拡散反射成分の比とする。ISO 2469に記される幾
何学的特性,分光特性,及び光度測定特性をもつ反射計を使用する。推奨する試験領域は,おおよそ50mm
×50mmとする。必要な場合は,キーボード上面の表面の代わりとなる標本を使用する。
熱伝導率の測定は,しなくてもよい。
7.2.7
キーボードの設置 道具を使用しないで,キーボードの位置が変えられるかどうか判定する。キー
ボードが本体から分離可能であることを確認する。
キーボードの滑りを測定するには,適当な力ゲージを使用し,水平面でキーボード正面の角を押す(図
11参照)。キーボードが動き始めるのに要する力を測定する。そのときの力が0.75Nより大きく,13.0Nよ
り小さいことを確認する。
オフィスの作業面と同等の,水平で滑らかな平面上で測定する。
図11 キーボードの移動に必要な力の測定
がたつきを測定するには,キーボードと作業面との接点にすき間があれば,その最大のすき間を測定す
る。すき間は0.25mmより小さいことが望ましい。
7.2.8
キーボード傾斜調整機構 傾斜調整機構のある位置変更の容易さを判定するには,傾斜調整機構の
すべての位置において,7.2.7の測定を行う。傾斜調整機構を,道具なしで調整することができるかどうか
判定する。
7.3
キーの設計
7.3.1
キーの配列及びキーの中心間距離 キー配列の評価は,ISO/IEC 9995を参照する。
キートップの中心間の距離を測定することによって,二つの隣接するキーの左右方向と上下方向の距離
を評価する。又は,端と端の距離を測定してもよい。
7.3.2
キートップの設計 キーの幅と奥行からキートップの面積を測定することによって,打けん面の大
きさを評価する(図12参照)。
図12 キートップ形状の測定
12
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
7.3.3
キーの変位及び押下力 キーの変位の測定は,キーの中心に,キーの動きの方向に1.5Nの力を加
えて,キーを作動させることによって測定する。全く作動していない状態のキー位置と完全に押下したキ
ー位置の距離をキーの変位とする(図13参照)。押下力−変位特性曲線を生成する適切な方法を使用して,
図8と比較する。測定の手順を記述する。
スナップ位置における抵抗力の測定値が,キーのスナップ位置での押下力を表す。
スナップ・アクションにおいては,文字の生成がスナップ位置通過後であり,キー押下力がスナップ位
置での力に戻る前であることを確認する。
図13 キーの変位の測定(1:押されていないキー,2:押下されたキー)
7.3.4
キー入力のフィードバック
7.3.4.1
一般 知覚できる筋感覚,又は聴覚によるフィードバックがあることを確認する。
7.3.4.2
筋感覚によるフィードバック キーを作動させている間に,抗力が落ちることを確認する。
7.3.4.3
聴覚によるフィードバック 聴覚によるフィードバックの音量レベルを“切”にできることを確
認する。
キーボードの制御によって聴覚によるフィードバックが直接生成される場合には,キー作動後の聴覚に
よるフィードバックの存在を測定する。この場合,文字生成位置(スイッチ作動位置)と音響信号の発生
の間隔を確認する。その他の場合には,この特徴は評価しない。
7.3.5
はね返り動作(バウンス) キースイッチのはね返りがないか,意図しない信号が出てしまうこと
を防ぐシステムをもっているかを確認する。機械的な装置を用い,英字キーか数字キーを1秒間に5回,
1.5Nの力で作動させる。五つのキーをランダムに選び,それぞれ60秒間操作する。意図した文字が生成
できたか,及びキーストロークと同数の文字が生成されたかを確認するために,キーストローク数と生成
した文字の数を比較する。
7.3.6
キーロールオーバー 一つのキーを押したまま別のキーを押し,更にそれらを押したまま別のキー
を押す。これらの連続して押された三つのキーが正しく記録されることを確認する。三つのキーが英数字
キーゾーン及び数字キーゾーンの各行ごとの三つのキーを試験する。
試験中のキーボードは,各種の変更のためのキーを1種類について1個のキーを各種同時に押したとき,
変更のため以外のキーの作動も正しく報告できなければならない。例えば,right control+right alt+left shift
+“A”の組では正しく報告できなければならず,right control+left control+right alt+left shift+“A”では
正しくなくてもよい。
7.3.7
キーのリピート機能 キーが押下され,英数字キーが作動し,15秒間押下し続けたとき,1秒間当
たりにリピートされる文字の数を確認する。
2番目の文字が表示されるまでの遅れを記録する。これをリピート開始までの待ち時間とする。待ち時
間の後に表示された文字の数を数え,その値を15(秒)から待ち時間(秒)を引いた数値で割る。これを
リピート機能の“1秒間当たりの文字数”とする。
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
リピート作動が抑止可能であることを確認する。
7.3.8
キーの文字・記号
7.3.8.1
図記号 ISO/IEC 9995-7を用いて適合を検証する。
7.3.8.2
キーの文字・記号の幾何学的設計 文字の高さは,H及びMのような大文字の上端の上の縁と下
端の下の縁で測る(図14参照)。
大文字(Iを除く。)の文字の幅は,セリフを除いた左端の最も左側の縁と右端の最も右側の縁で測る。
幅が高さの50%から100%の間であるかどうか,高さと幅の比を計算する(図15参照)。
図14 文字高さの測定(1:文字高さ)
図15 文字幅の測定(1:文字幅)
目盛の付いた線幅比較測定用のフォイルを用いてストローク幅を測定する。
コントラストを測定する一つの方法として,シンボル上の異なる4点以上と,シンボルがない背景上の
異なる4点以上の平均輝度を計算する。両者の平均の標準偏差と,部分偏差法による計算によって見積も
ったコントラスト値の不確定性を明記する。
7.3.8.3
キーの文字・記号の数及び位置 位置の適合を確認するために,ISO/IEC 9995-1を参照する。機
能キーと編集キーがシフトキーを入力しないで作動できることを確認する。表面仕上げの測定は7.2.6を参
照する。
7.3.8.4
キーの文字・記号の耐久性 キーの文字・記号が通常の使用で耐久性があることを確認するため
に,製造業者の耐久試験の適切さと手続きを吟味する。
備考1. この試験は,永久的でないマーキングに対してだけの要求とする。
2. キーの文字・記号の丈夫さと耐久性は,強度,頻度,及び力を考慮した特定の使い方によっ
て決定する。耐久性は,キーの文字・記号が,製造業者が定めたその製品の耐用年数にわた
って読みやすいことで証明する。
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
7.3.9
カーソル・キー及び編集セクションのキー カーソル・キーが提供されているかどうか確認する。
ISO/IEC 9995を参照し,カーソル・キーが正しく配置されているか確認する。
カーソル・キーがISO/IEC 9995-5におけるどの配列を採用しているか確認する。
7.3.10 数字キーパッド ISO/IEC 9995-4を参照し,適合性を確認する。
7.3.11 キートップの形状 英数字,カーソル,数字ゾーンのキートップが,フラット形,又は凹形になっ
ていることを確認する(図16参照)。
スペースキーがフラット形,又は凸形になっていることを確認する。
図16 フラット形,凹形及び凸形のキートップ
8. 適合 この規格への適合は,6.の要求事項(測定方法は7.に記述)に合致することで証明する。
備考 (附属書Aで提案されているような)ユーザーの作業性試験を用いた適合への代わりの方法が
認められれば,そのような試験方法を用いて5.で示す性能基準を満たすことによって,適合を
証明する。
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附属書A(参考) ユーザビリティ試験(代替試験の提案)
この試験方法は,ISO 9241への適合性を試験する代替手段として有効性が検討されている。試験機関は,
この技法による結果を支持する文書,特に統計的手法によるものを示すことが要請されている。
A.1 代替の適合性を決定するための試験方法 ここでは,本体6.の要求事項のすべてを満たしていないキ
ーボードの作業性及び快適性を評価する方法論を示す。主に新しいキーボードの設計者又は製造業者がそ
のユーザビリティを検証し,そのことでキーボードの新しい概念を追求する手助けとなることを目的とし
ている。ここで述べられている試験方法は,特定のキーボードがISO 9241のこの部の性能基準に適合する
ものかを判定する必要がある試験機関及びユーザー組織にとっても有用である。
A.1.1 ユーザビリティについて ユーザビリティは,キーボードのユーザーが有効に効率よく満足をもっ
て使うことができるかの度合と関係があるキーボードの設計における考慮事項である。本体の目的のため
に,有効さ及び効率は作業性の計測(入力対エラーの比率)によって判断し,満足度は快適性の評価によ
って判断する。
A.1.2 試験手順の概要 試験手順は,文章入力及びデータ入力の2種類の作業からなる。キーボードは,
主に使われる用途に応じた作業で試験することが望ましい。両方の試験を行う必要はないが,どちらの用
途でも使う通常のキーボードの場合は,両方の試験を満足しなければならない。
評価対象となるキーボード(以下,“試験キーボード”という。)に加えて,直接的な測定法を使って本
体6. のすべての要件に適合する“基準キーボード”を比較のために使うことが望ましい。
文章及びデータ入力の両者とも試験手順において,打けんされた文字がモニタで表示されるように,キ
ーボード及びモニタを設置・準備する。被験者は作業性の計測が行われている間,指定の文章かデータの
入力作業を実行する。文章又はデータ入力作業の完了後,被験者は快適性の主観評価を行うために準備し
た質問に答える。この基本手順は,試験キーボード及び基準キーボードに対して1回ずつ,計2回実行す
る。
作業性及び快適性の主観評価が,妥当な統計的解析手順を用いて,基準キーボードから得られた結果よ
り,有意に劣っていなければ,試験キーボードはこの規格の性能水準に適合している。
A.1.3 被験者 被験者は,想定したユーザーの母集団を代表していることが望ましい。性別,年齢範囲,
視覚特性(矯正レンズの使用を含む。),利き手といったユーザーの違いを,被験者のサンプルを選ぶ場合
に考慮することが望ましい。さらに,サンプルの打けん熟練度は,意図したユーザーのそれと同等である
ことが望ましい。被験者は,意図した言語のキーボードに通じていることが望ましい。
適切な被験者サンプルサイズを決定するために,関連の強固性の検定 (strength of association test) を行う。
A.1.4 装置 試験システムは,次の機能をもつことが望ましい。
a) モニタ上に打けんされた文字を表示する。
b) 打けんされた情報を連続して表示する(ページ分割をしない)。
c) 押下をとらえ蓄える。
d) タイミングセッション。
e) 押下及び誤りを計測するために,打けんされた情報を印刷するか表示する。
試験のために使うモニタは,JIS Z 8513のすべての要求事項を満足していることが望ましい。できるだ
け同一のモニタを試験及び基準キーボードでの打けん文字の表示に使用することが望ましい。異なるモニ
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タを使用する場合には,両者は同一の表示極性であることが望ましい。フォントの見た目は同等であるこ
とが望ましい。
試験で使うすべてのソフトウェアは,被験者の作業性に干渉しないことが望ましい。例えば,システム
がネットワークに接続している場合,新しいメールの通知は禁止することが望ましい。
A.1.5 試験資料 すべての試験資料は,白色の紙に黒い文章か数字として提示されることが望ましい。試
験資料の書式は,できる限りモニタの能力と同等であることが望ましい。つまり,印刷された文章又はデ
ータは,フォント,文字間隔,ライン幅,禁則処理,その他からみて表示されたものと同等であることが
望ましい。
A.1.5.1 文章入力
A.1.5.1.1 内容 文章は,連続的で完全な文から成り立つことが望ましい。語い(彙)の難しさは被験者の
読取り能力を超えないことが望ましい。目安としては12才向けに書かれた資料を用いることがよい。文章
の内容は不偏(政治的又は宗教的でない)であり,過度に技術的又は科学的でないことが望ましい。文章
は綴り及び文法の誤りがなく,句読点が正しいことが望ましい。文章は対象ユーザー母集団の普通の言語
であることが望ましい。
A.1.5.1.2 書式 試験資料の書式は,1行おきの連続文であることが望ましい。文章はインデント又はイタ
リック,ボールド,下線といった特別な修飾を包含しないことが望ましい。
A.1.5.2 データ入力
A.1.5.2.1 内容 データは,無作為に選ばれた文字又は数字の組合せから成ることが望ましい。
A.1.5.2.2 書式 資料は,ページごとに5個のグループに配置することが望ましい。1グループは,各行が
7個の文字か7個の数字から成る5行で構成することが望ましい。
A.1.6 事前試験 試験の前に,各被験者は打けん又はデータ入力速度を検証するために試験されることが
望ましい。この試験は,基準キーボードを使用して実施することが望ましい。さらに,全被験者が,試験
参加に支障なく,適切に見えることを確認するために視機能検査を行うことが望ましい。
A.1.7 特別訓練 試験キーボードへのなじみ不足があるので,信頼に足りる作業性及び快適性の主観的評
価が得られるまで,被験者は訓練期間の延長を要求できる。各被験者は,打けん速度及び正確さが漸近的
であるか,つまり大幅な改善を示さなくなるまで,試験キーボードで訓練することを許されることが望ま
しい。
A.1.8 試験環境 試験場所は,静かで集中できることが望ましい。理想的には,ユーザビリティ実験室の
ような試験専用場所であることが望ましい。
A.1.8.1 騒音 被験者の着席した位置で測定した周囲の騒音は,55dB (A) 以下であることが望ましい。
A.1.8.2 熱環境 周囲温度は,19℃から26℃が望ましい。相対湿度は40%から60%が望ましい。風速は
0.15m/s未満が望ましい。
A.1.8.3 照明 周囲照明は,(250+250cosA) lxの最小であることが望ましい。ここで,Aは水平面とディス
プレイの中央での垂直面との交点によって作られた角度である。ディスプレイの文字又は背景の輝度(ど
ちらか高い方)は,最低でも35cd/m2で,少なくともコントラスト3 : 1を確保することが望ましい。照明
機器又は窓からの光によるディスプレイ上のグレアは,最小限にすることが望ましい。表面反射率の推奨
値を表A.1に示す。
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表A.1 表面反射率
表面
反射率
天井
0.6〜0.8
壁
0.3〜0.5
床
0.2〜0.3
備品
0.2〜0.5
被験者は,試験に先立ち少なくとも15分間試験環境(又は等価な環境)で順応することが望ましい。
A.1.9 試験作業場 作業場は,次の事項を含みISO 9241-5の要求事項を満足することが望ましい。
a) 座面の高さを調節できて基礎が安定した脚
b) 高さを調節できる机
c) 被験者の水平視線から下側20°と45°の間に入力行がくるように調節することができるモニタ
d) 書類ホルダ
e) 足置台
試験キーボードが特別な備品を必要とするならば,その備品を使用することが望ましい。
A.1.10 試験手順
A.1.10.1 提示の順序 各被験者は各キーボードを,試験キーボードを1回及び基準キーボードを1回使用
して試験することが望ましい。キーボードは,匿名でラベルを付けることが望ましい(例えば,“A”及び
“B”)。呈示の順序は順序効果を除去するようにバランスをとることが望ましい。
A.1.10.2 セッションの長さ 各キーボードを打けんする試験は,5分間の休憩をはさんだ20分のセッシ
ョンを6回繰り返す構成とする。最初の2セッションは練習セッションである。
A.1.10.3 試験資料 被験者が試験全体を通して文章又はデータの反復入力をしないように,十分な試験資
料を準備することが望ましい。
A.1.10.4 指示 標準化した指示事項を,試験を始める前に各被験者に伝えることが望ましい。できる限り
素早く正確に作業し,誤りは訂正しないようにしておくことを,被験者に伝えることが望ましい。
A.1.10.5 機密性 個人の能力の機密性は,保証されていることが望ましい。個々の被験者を特定できるよ
うな作業性の得点結果は,試験機関によって公開されるのは望ましくない。人を対象とした実験の倫理行
為を定めた規則に従うことが望ましい。
A.1.11 キーボードの作業性及び快適性の評価
A.1.11.1 作業性の測度 セッション3,4,5及び6から得られたデータを使用して,次の計測を分析する
ことが望ましい。
a) 打けん速度 各20分のセッション中の1分当たりに打けんされた単語又は文字の総数。文章の入力で
は,単語総計は打けんされた文字数を数え,5で除すことによって求める。単語毎分は単語総計を20
で除すことによって求める。データ入力では,文字毎分は文字数を20で除すことによって求める。
b) 誤り率 文章入力では,(絶対的)エラーの数を数えることによって一つ以上のエラーを含む単語の数
を計算する。文章及びデータの入力では,欠落,挿入,及び誤字(間違った文字)といった誤りを含
むことが望ましい。
これらの計測は各々適切な手法を使って統計的に解析されることが望ましい。すべての統計的手法は,
危険率0.05又はこれよりも小さい危険率(例えば,0.01)を使うことが望ましい。
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A.1.11.2 快適性の主観評価 各キーボードでの最後のセッション終了後すぐに,被験者はそのキーボード
に対しての快適性の主観評価を行うために準備した質問紙に答えることが望ましい。この附属書で準備し
た質問紙を使うことが望ましい。
質問紙の回答は,適切な“検定手順”を使用して解析することが望ましい。すべての統計的手法は,危
険率0.05又はこれよりも小さい危険率(例えば,0.01)を使うことが望ましい。
A.2 快適性評価質問紙 次の各評価項目について,今使ったキーボードの特性についてあなたの印象を最
もよく表す番号に○を付けて下さい。
1. キーを押すために要した力
1 2 3 4 5 6 7
不適切(重すぎ,又は軽すぎ) 適切
2. リズム感
1 2 3 4 5 6 7
悪い 良い
3. 手や手首の疲れ
1 2 3 4 5 6 7
非常に大きい 非常に小さい
4. 腕の疲れ
1 2 3 4 5 6 7
非常に大きい 非常に小さい
5. 肩の疲れ
1 2 3 4 5 6 7
非常に大きい 非常に小さい
6. 打けん中の姿勢
1 2 3 4 5 6 7
非常に不快 非常に快適
7. 総合
1 2 3 4 5 6 7
非常に使いにくい 非常に使いやすい
操作者のコメント
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A.3 データ入力用の試験資料の例(英語)
文字データ
数字データ
SOENFIL
2017947
OAPICAI
9329450
TOZNBHT
1623337
MTODSRI
1361489
EIFRESG
2756490
TESBLTO
4905087
KYORSWT
2586728
RSWETOE
0104652
FRBGECE
7498501
OSQETYH
2756490
USIPROZ
7925381
TSNKLXE
0891273
TYAPAUR
4209317
DTIAOMI
1876504
ECVRNBT
7580893
GHWQANT
2735018
DSGBEFR
5873642
BHIFRWN
6098971
CSAULUS
1240354
ADHTCNI
4769016
LEURMNM
5187638
TICNOWL
1754520
XBIAJDM
9357216
HSNCIEV
6489571
POASCRT
2758096
20
Z 8514 : 2000 (ISO 9241-4 : 1998)
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附属書B(参考) 参考文献
[1] JIS Z 8521 人間工学−視覚表示装置を用いるオフィス作業−使用性についての手引
備考 ISO 9241-11 : 1998, Ergonomic requirements for office work with visual display terminals (VDTs)−
Part 11 : Guidance on usability. が,この規格と一致している。
[2] ISO 9241-12 : 1998, Ergonomic requirements for office work with visual display terminals (VDTs)−Part 12 :
Presentation of information.
[3] CIE Publication 17.4 : 1987, International lighting vocabulary. (IEC/CIE joint publication).
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JIS Z 8514(人間工学−視覚表示装置を用いるオフィス作業−キーボードの要求事項)原案作成本委員会
構成表
氏名
所属
(委員長)
林 喜 男
慶應義塾大学
(幹事)
○ 中 野 義 彦
沖電気工業株式会社
○ 渡 辺 武 夫
工業技術院標準部
○ 橋 本 進
財団法人日本規格協会
○ 中 込 常 雄
中込技術士事務所
○ 堀 野 定 雄
神奈川大学
山 本 栄
東京理科大学
黒 須 正 明
静岡大学
○ 吉 武 良 治
日本アイ・ビー・エム株式会社
堀 部 保 弘
株式会社三菱総合研究所
青 木 和 夫
日本大学
谷 井 克 則
武蔵工業大学
栃 原 裕
九州芸術工科大学
米 村 俊 一
NTT東日本株式会社
(事務局)
森 みどり
日本人間工学会(神奈川大学)
JIS Z 8514(人間工学−視覚表示装置を用いるオフィス作業−キーボードの要求事項)原案作成分科会
構成表
氏名
所属
(主査)
吉 武 良 治
日本アイ・ビー・エム株式会社
(幹事)
中 野 義 彦
社団法人日本電子工業振興協会(沖電気工業株式会社)
石 裕 二
社団法人日本オフィス家具協会(株式会社イトーキ)
梅 津 直 明
株式会社東芝
坂 井 隆 夫
ミノルタ株式会社
高 橋 厚
社団法人日本事務機械工業会(キャノン株式会社)
田 中 典 朗
三菱電機株式会社
田部井 隆
株式会社日立製作所
中 込 常 雄
中込技術士事務所
中 迫 勝
大阪教育大学
橋 本 進
財団法人日本規格協会
福 住 伸 一
ヒューマンインタフェース学会(日本電気株式会社)
堀 野 定 雄
神奈川大学
松 本 啓 太
富士通株式会社
森 本 一 成
京都工芸繊維大学
山 崎 直 樹
ミツミ電機株式会社
渡 邊 武 夫
工業技術院標準部
備考 本委員会の○印は,分科会委員を兼ねる。