Z8504 : 1999 (ISO 7243 : 1989)
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,通商産業大臣が制定した日
本工業規格である。
JIS Z 8504には,次に示す附属書がある。
附属書A(参考) WBGT熱ストレス指数の基準値表
附属書B(参考) WBGTの基準値を示す曲線及び熱順化の方法
附属書C(参考) 評価報告書の例
附属書D(参考) 参考文献
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
Z8504 : 1999
(ISO 7243 : 1989)
人間工学−WBGT(湿球黒球温度)
指数に基づく作業者の熱ストレスの評価
−暑熱環境
Hot environments−Estimation of the heat stress on working man, based on
the
WBGT−index (wet bulb globe temperature)
序文 この規格は,1989年第2版として発行されたISO 7243 (Hot environments−Estimation of the heat stress
on working man, based on the WBGT-index (wet bulb globe temperature) を翻訳し,技術的内容及び規格票の様
式を変更することなく作成した日本工業規格である。
この一連の規格*の目的は,次のとおりである。
− すでに存在する規格,又は現在立案されているものを考慮しつつ,測定,試験及び解析の方法で使用
される用語の定義を完成させる。
− 温熱環境の特性を表す物理的パラメータの測定方法に関する仕様書を立案する。
− 一つ,又は複数のパラメータの解析方法を選択する。
− 快適な環境及び極端な環境(暑熱及び寒冷)との領域において,温熱環境にばく(曝)露される場合
の,推奨値又は限界値を確立する。
− 暑熱及び寒冷に対する個人又は集団の防護のための装置,又は手順の有効性を評価する方法に関する
仕様書を立案する。
注*
ISO/TC159/SC5/WG1(国際標準化機構/人間工学/物理的環境/温熱環境)の一連の規格のこ
とである。このJIS以外の規格は,まだJIS化されていない。熱環境に関する幾つかの日本工
業規格が将来制定される予定である。
個人が温熱環境にばく露されることによって起こる問題に関心がますます高まる中で,この分野の資料
又は国の基準がほとんどないことを考えると,一連の規格がすべて立案されるのを待たずに,この規格を
提示することが望ましく思われる。
湿球黒球温度(wet bulb globe temperature以下,WBGTと略称する。)指数は,個人がばく露される熱ス
トレスを表す経験的な指数の一つであり,労働環境で容易に測定できる。この指数に基づいて熱ストレス
を評価する方法は,正確な指数を使いたいという要求と,労働環境で容易に測定を行う必要性との折衷案
である。この規格は現場での測定方法を示す。
人間と環境との間の熱交換の解析に基づいて温熱ストレスを評価する方法を用いることによって,より
正確にストレスを評価し,防護の方法を検証することが可能となる。しかし,この方法は,現在の測定技
術では時間がかかり,かつ,困難であるという欠点がある。
2
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そのため,このような方法は,暑熱下における作業条件の厳密な分析を行うことが望まれるときに用い
る。又は,この方法の最初の測定で得られたWBGTの値が,基準値の範囲を超えているときに用いる。
WBGT指数に基づいて熱ストレスを評価する方法を確立することは,両方の方法の利点を兼ね備えた指
数の提案へ導く第一歩である。しかし,現在このような指数がないので,労働環境で使用可能な規格の開
発を速やかに推し進めることが望ましいと考えられる。
1. 適用範囲 この規格は,作業者が受ける暑熱環境による熱ストレスの評価を労働環境において簡単に
行うことができ,また,速やかな判断を可能にする方法について規定する。
この方法は,作業者の主な活動中における平均的な熱の影響を評価する場合には適用できるが,短時間
に受けた熱ストレスの評価,及び快適域に近い熱ストレスの評価には適用しない。
備考 この規格の対応国際規格を次に示す。
ISO 7243 : 1989, Hot environments−Estimation of the heat stress on working man, based on the
WBGT−index (wet bulb globe temperature)
2. 原理及び基本的な定義 暑熱環境にばく露された人の受ける熱ストレスは,身体活動の結果生じた身
体内の熱産生 (production of heat),及び空気と身体の間の熱移動に影響を与える環境特性に依存する。
身体内の熱負荷は,活動によって生じた代謝エネルギーの結果であり,熱ストレスに対する環境影響の
詳細な分析は,気温,平均放射温度,気流速度及び絶対湿度の四つの基本的な因子を必要とする。しかし,
この影響の総合的な評価は,基本的な因子から導くことができるパラメータを測定することによって可能
であり,このパラメータは,その場所の物理的特性の関数とする。
WBGT指数は,自然湿球温度 (tnw) と黒球温度 (tg) との二つのパラメータの測定をし,また,ある条件
においては基本的な因子,すなわち気温(ta;乾球温度)の測定も行う。次の式は,異なる環境条件によ
るパラメータの関係式を表す。
− 屋内,及び屋外で太陽照射のない場合
WBGT=0.7tnw+0.3tg
− 屋外で太陽照射のある場合
WBGT=0.7tnw+0.2tg+0.1ta
熱ストレスを評価するこの方法は,これらの異なったパラメータの測定と,場所−時間の変動を考慮し
たパラメータの平均値の計算とに基づいて行う。この方法によって収集され,処理されたデータを基準値
と比較し,次のいずれかの方法をとる。
− 適切な方法によって,作業場での熱ストレス又は熱負担を直接軽減する。
− 通常は,より手間と時間とがかかるが,綿密な方法を用いて熱ストレスを詳しく分析する。
これらの基準値は,附属書Aに示す条件下においてばく露されてもほとんどの人々が,有害な影響を受
けないレベルに相当する。ただし,これは既応症がないことを前提とする。
参考 これらのばく露のレベルは,個人の健康にかかわるものであって,例えば,作業中の事故を引
き起こすような心理的感覚運動反応の変化などの関連でみたものではない。
3. 環境特性のパラメータの測定 WBGT指数の測定には,自然湿球温度及び黒球温度の二つのパラメー
タの測定,並びに基本的な因子である気温の測定を必要とする。
3
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3.1
導出されたパラメータの測定 すべての他の条件が等しい場合に,導出パラメータを測定するセン
サーによって得られる情報は,使用するセンサーの物理的特性によるものとし,これらの特性は,3.1.1及
び3.1.2による。
3.1.1
自然湿球温度センサー 自然湿球温度は,自然な対流中で,すなわち強制通風することなく環境に
置かれたぬ(濡)れたガーゼで覆った温度センサーによって示す値をいう。
温度センサーは,次の特性に従わなければならない。
a) センサーの受感部の形状:円筒形
b) センサーの受感部の外径:6mm±1mm
c) センサーの長さ:30mm±5mm
d) 測定範囲:5〜40℃
e) 測定精度:±0.5℃
f)
センサーの受感部全体は白いガーゼのような吸水性の高い素材(例えば,綿)によって覆う。
g) センサーの支持部は,6mmに等しい直径にし,かつ,センサーの支持部からの熱伝導を減少させるた
めに20mmのガーゼで覆う。
h) そのガーゼは,覆いがきつ過ぎたり緩過ぎたりすると精密な測定に支障をきたすので,筒状に編み,
センサーの周りにきちんと覆いかぶせる。
i)
ガーゼは,清潔に保つ。
j)
ガーゼの下部は,水つぼ(壼)の蒸留水に浸す。空気中にある部分の長さは,20〜30mmとする。
k) 水つぼは,周囲の環境の熱放射によって水温が上がらないような設計にする。
参考 自然湿球温度は,通風乾湿計によって測定される熱力学的温度とは異なっている。
3.1.2
黒球温度センサー 黒球温度は,次のような特性をもつ中空黒球の中心に位置する温度センサーが
示す温度をいう。
a) 直径:150mm
b) 平均放射率:0.95(つや消し黒色球)
c) 厚さ:できるだけ薄いこと。
d) 測定範囲:20〜120℃
e) 測定精度
− 範囲:20〜50℃±0.5℃
− 範囲:50〜120℃±1℃
自然湿球温度又は黒球温度の測定装置は,ある特定の範囲でこう(較)正されたのち,同程度の測定精
度をもつものなら,どれを使用してもよい。
3.2
気温の測定 基本的な因子である気温の測定は,適切な方法を用いることによってセンサーの形状
がいかなるものであってもよい。ただし,気温の測定に関係する測定精度を遵守しなければならない。気
温センサーは,特に,センサーの周囲の通風を妨げない状態で,放射熱による影響を受けないようにする。
気温の測定範囲は10〜60℃で,かつ,測定精度は±1℃とする。
4. エネルギー代謝の測定及び推測 代謝率は,次のいずれかの方法によって測定してよい。
− 作業者の酸素消費量を測定する。
− 参照表から代謝率を推定する。
活動量は次の五つの主な等級に区分する。
4
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安静,低代謝率,中代謝率,高代謝率,極高代謝率
表1は,このような区分を簡単に推定できるように作られたものを示す。示した数値は,連続的な作業
に対して推定しているもので,その数値を判断するのが難しい場合には,最も正確であると考えられる直
接測定をする。
参考1. 身体内の熱産生量は,熱ストレスの一要因である。したがって,熱ストレスを評価するため
には,熱産生量を決定することが不可欠である。身体内で消費された総エネルギー量を表す
エネルギー代謝は,ほとんどの作業(外部仕事エネルギー量は無視する。)における熱産生量
のよい推定値となる。
2. WBGT指数の性格からすれば,参照表によって代謝率を推定しても十分である。代謝率の推
定には,多少の練習が必要であり,この分野での経験をもった人によることが望ましい。
表1 代謝率レベルの区分
区分
代謝率範囲 M
平均代謝率の計算に
使われる値
例
皮膚表面部分
に関して
W/m2
1.8m2の皮膚表
面部分の平均
W
W/m2
W
0
安静
M≦65
M≦117
65
117
安静
1
低代謝率
65<M≦130 117<M≦234
100
180
楽な座位;軽い手作業(書く,タイピング,描く,
縫う,簿記);手及び腕の作業(小さいペンチツール,
点検,組立てや軽い材料の区分け);腕と脚の作業(普
通の状態での乗り物の運転,足のスイッチやペダル
の操作)。
立体;ドリル(小さい部分);フライス盤(小さい部
分);コイル巻き;小さい電気子巻き;小さい力の道
具の機械;ちょっとした歩き(速さ3.5km/h)。
2
中程度代謝率
130<M≦200 234<M≦360
165
297
継続した頭と腕の作業(くぎ打ち,盛土);腕と脚の
作業(トラックのオフロード操縦,トラクター及び
建設車両);腕と胴体の作業(空気ハンマーの作業,
トラクター組立て,しっくい塗り,中くらいの重さ
の材料を断続的に持つ作業,草むしり,草掘り,果
物や野菜を摘む);軽量な荷車や手押し車を押したり
引いたりする;3.5〜5.5km/hの速さで歩く;追突。
3
高代謝率
200<M≦260 360<M≦468
230
414
強度の腕と胴体の作業;重い材料を運ぶ;シャベル
を使う;大ハンマー作業;のこぎりをひく;硬い木
にかんなをかけたりのみで彫る;草刈り;掘る;5.5
〜7km/hの速さで歩く。重い荷物の荷車や手押し車
を押したり引いたりする;鋳物を削る;コンクリー
トブロックを積む。
4
極高代謝率
M>260
M>468
290
522
最大速度の速さでとても激しい活動;おのを振る
う;激しくシャベルを使ったり掘ったりする;階段
を登る,走る,7km/hより速く歩く。
5. 測定の詳細
5
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5.1 不均一な環境に関する測定の詳細 ある温熱因子が作業者の周囲において一定の値にならないとき,
頭部,腹部,及び足首部のそれぞれの高さの位置でWBGT指数を決定する。作業者が立位のとき,その測
定は床面から0.1m, 1.1m,及び1.7mの高さで,座位のとき床面から0.1m, 0.6m,及び1.1mのそれぞれの
高さで行う。その指数を決定するための測定は同時に行うのがよい。
WBGT指数の平均値は,三つの加重平均から次の式を用いて計算する。
(
)
4
2
ankies
abdomen
head
WBGT
WBGT
WBGT
WBGT
+
×
+
=
ここに,
WBGThead: 頭部の高さでのWBGT値
WBGTabdomen: 腹部の高さでのWBGT値
WBGTankles: 足首部の高さでのWBGT値
測定点又は類似のタイプの測定点が実際上熱環境が均一(不均一性<5%)である場合には,腹部での
WBGT指数の測定だけを行う簡単な手順でもよい。
分析結果の解釈を議論する場合,どんな環境においても,標準の手順(3か所の測定)に従って決定さ
れたWBGT指数を基準値とする。
WBGT指数の迅速な測定のためには,熱ストレスの評価を安全側に過大評価する熱ストレスが最大とな
るレベルにおいて,1回の測定を行う。この方法を用いたときは,その測定報告に明示しなければならな
い。
通常の作業場においてセンサーを配置することが不可能な場合には,その環境から受ける影響とほぼ同
じ環境の場所にセンサーを配置するのがよい。
5.2
温熱因子の時間変動に関する測定の詳細 作業場及び活動量の分析から,温熱因子が時間によって
一定の値を示さない場合,代表的な平均値を決めなければならない。
最も厳密な手法は,この温熱因子を時間の関数として連続的に展開し,それを積分して平均値を導き出
すこととし,多くの場合において,この方法を用いるのには難しいので,それぞれの温熱因子の変動がほ
とんど一定の範囲にある場合には,一定値とみなす。温熱因子の平均値は,得られたそれぞれのレベルの
時間による加重平均によって求める。
平均値の計算の基礎となる時間Tは,作業−休憩を含む1時間とし,熱ストレスの最大値を示すので,
それは作業期間の始めから計算する。
n個のレベルに分解された時間の関数として求められた因子の平均値P(例えば:代謝率,黒球温度及
び環境の三つの温熱因子の同時測定の場合におけるWBGT)は,次の式による。
(
)(
)
(
)
n
n
n
t
t
t
t
p
t
p
t
p
p
+
+
+
×
+
+
×
+
×
=
Λ
Λ
2
1
2
2
1
1
ここに, p1, p2,…,pnは時間t1, t2,…,tnで得られたパラメータのレベル
t1+t2+…+tn=T=1時間
測定回数は,その因子の変動の速度,使用したセンサーの応答性,要求される測定の精度による。
5.3
エネルギー代謝の平均値 代謝率の平均値を決定するために適用される5.2の考えは,測定値及び参
照表による評価に基づくものとする。代謝率が4.で述べた五つの主な等級のうちの一つに簡単に分類され
る場合,その平均代謝率レベルは,それぞれの基本活動量に対して,表1で求める代謝率の平均値によっ
て5.2の計算式から決定する。
そのデータの解釈をする場合,最も正確と考えられるのは,連続的に測定された因子の変動から計算さ
れたものとし,次には,正確に測定された最も多数のレベルから計算したものとする。
6
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6. 測定期間と継続時間
6.1
測定期間 この規格によるWBGT指数は,測定が行われたそのときに作業者が受けた熱ストレスの
評価だけに使用できるので,これらは最大熱ストレス下,すなわち一般に暑い夏の日中,又は発熱設備が
稼動しているときに合わせて行われることが望ましい。
6.2
測定の継続時間 それぞれの測定時間は,センサーの応答時間によって,場合によって十分に考慮
されなければならない(特に黒球温度)。
参考 1回の測定だけや,それぞれの因子を使ったそれぞれのレベルでの評価を行うことができる。
その測定の継続時間は,5.2で定義したような(時間を基準とした)正確な分析の時間から明確
になる。
7. 基準値 附属書Aに示されたWBGT指数の値は,科学論文のデータに基づいた基準値とし,これら
の値が限度を超えた場合,次のことを必要とする。
− 適切な方法(環境,活動量レベル,その環境にばく露される時間の調整,及び個人の保護)によって
当該作業場での熱ストレスを直接軽減する。
− より入念な方法に従った,熱ストレスの,詳細な分析を行う。
健康な作業者が,作業に適応した標準的な衣服[保温性Icl=0.6Clo(1)]を着用したときの基準値を
附属書Aに示す。
採用した代謝率の値が疑わしいとき,より一段高い代謝率に対応する基準値を採用すべきであり,
さらに,すべての測定,又は評価が不可能な場合には等級4(極高代謝率)とする。
注(1) Clo:衣服の保温力の単位;1Clo=0.155m2・K/W
備考 着用衣服が標準的な作業着[通気性があり水無気を通す衣服,保温性Ici=0.6Clo(1)]でな
い場合には,基準値は衣服の特殊性と当該環境によって修正しなければならない。
参考1. これらの基準値は,かなり長期間にわたる作業における作業者への熱の平均的な影響の
代表的なものである。それらは,作業者が特別に暑い環境か,又は短時間の激しい身体
活動量など短い時間(数分)に受ける熱ストレスのピーク値は考慮に入れていない。平
均的な活動量,又は平均的な環境を代表する基準値を超えなくても,実際そのようなと
きは,熱ストレスが許容限界を超えることになる。
2. 一般に水蒸気を通さないような衣服の場合には,基準値を下げる(厳しくする)必要が
ある。また一方では,熱を反射する衣服の場合には基準値を上げる(緩くする)ことも
ある。修正を行うことが困難である場合,つまり標準的な作業者から明らかに異なる特
殊な衣服の組合せのときには,専門家に相談することが望ましい。
3. 附属書Bには,休憩場所でのWBGTの値が作業場でのWBGTの値と同じであるか,又
はかなり近い値であるという仮定に基づき,種々の作業−休憩のサイクルに対応した
WBGTによるいくつかの基準値の指針を示す。
4. 熱順化は,熱ストレスを徐々に増大することによって7日間で達成される。附属書Bに
は,一例として,作業期間を徐々に増大することと,次の休憩時間を調整することに基
づいた順化の方法を示した。順化していない人とは,作業する前の週に毎日熱にばく露
されていなかった人をいう。
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8. 評価報告書 ある状況において個人が被った熱ストレスの評価報告書は,次のようなデータを示すの
がよい。
a) 評価を行った場所(例 工場,職場,作業場)
b) 評価を行った期間(年,月,日,時間)
c) 評価を行った事業所又は個人
d) 温熱因子の測定値又は推定値(基準値)の詳細
e) WBGTの平均値及び基準値に関してそのWBGT値の位置付け
附属書Cに,例としてその結果を表す方法を示す。
8
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附属書A(参考) WBGT熱ストレス指数の基準値表
表A.1 各条件に対応した基準値
代謝率区分
代謝率M
WBGT基準値
単位体表面積
W/m2
総表面積(平
均体表面積
1.8m2)
W
熱に順化している人
℃
熱に順化していない人
℃
0(安静)
M≦65
M≦117
33
32
1(低代謝率)
35<M≦130
117<M≦234
30
29
2(中程度代謝率) 130<M≦200
234<M≦360
28
26
3(高代謝率)
200<M≦260
360<M≦468 気流を感じ
ないとき
25
気流を感じ
るとき
26
気流を感じ
ないとき
22
気流を感じ
るとき
23
4(極高代謝率)
M>260
M>468
23
25
18
20
備考 これらの数値は最高直腸温度38℃を許容限度として設定されている。
9
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附属書B(参考) WBGTの基準値を示す曲線及び熱順化の方法
B.1 作業−休憩サイクルに対応したWBGTの基準値を示す曲線 曲線は,休憩場所のWBGT値が作業場
のWBGT値と同じか,又はかなり近い値という仮定に基づいて作られている(条件は,基準時間を1時間
とし,熱に順化している人が気流を感じるときを前提としている。)。
これらの曲線は図B.1に示されており,作業−休憩サイクルを変えることで容易に作業の調整に役立て
ることができる。この規格を的確に適用するには,測定された各WBGT値に重みを加えることが望ましい。
B.2 熱順化の方法 順化とは,ある環境に一定時間十分ばく(曝)露されたとき,その環境に対する人の
耐性を高める生理的な適応プロセスから生じる状態である。順化している人は,順化していない人に比べ
ると,同じ熱ストレスに対し生理的負担が少ない。
この種の順化は,人工気候室の中で繰返しばく露することで人工的に達成できる。
また,現場では,作業者が,始めは短時間に作業を行い,次第に時間を長くすることで自然に達成でき
る。順化していない状態から順化した状態へ作業の持続時間を増やすのは,7日以上かけて徐々に行わな
ければならない。
順化した人と順化していない人の作業−休憩サイクルは,この規格と附属書Aの基準値に基づいて
WBGTを推定することで定められる。
図B.1 作業・休憩サイクルに対応したWBGTの基準値
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附属書C(参考) 評価報告書の例
11
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附属書D(参考) 参考文献
ISO 7726, Thermal environments−Instruments and methods for measuring physical quantities
ISO 7730, Moderate thermal environments−Determination of the PMV and PPD indices and specification of
the conditions for thermal comfort
ISO 7933, Hot environments−Analytical determination and interpretation of thermal stress using calculation of
required sweat rates
原案作成委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
栃 原 裕
九州芸術工科大学
(幹事)
古 川 良 知
京都電子工業株式会社
宮 崎 正 浩
工業技術院標準部
橋 本 進
財団法人日本規格協会
中 込 常 雄
中込技術士事務所
堀 野 定 雄
神奈川大学
田 中 正 敏
福島県立医科大学
澤 田 晋 一
労働省産業医学総合研究所
大 澤 似 仁
柴田科学器械工業株式会社
吉 田 良 一
タバイエスペック株式会社
吉 田 燦
日本大学
三 澤 哲 夫
千葉工業大学
栗 原 潤 一
ミサワホーム株式会社
深 井 一 夫
横浜国立大学
岩 本 賢 松下インターテクノ株式会社
都 築 和 代
工業技術院生命工学工業技術研究所
(事務局)
森 み ど り
日本人間工学会(神奈川大学)