Z 8462-4:2006 (ISO 11843-4:2003)
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法第12条第1項の規定に基づき,財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準
原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大
臣が制定した日本工業規格である。
制定に当たっては,日本工業規格と国際規格との対比,国際規格に一致した日本工業規格の作成及び日
本工業規格を基礎にした国際規格原案の提案を容易にするために,ISO 11843-4:2003,Capability of detection
−Part 4: Methodology for comparing the minimum detectable value with a given valueを基礎として用いた。
この規格の一部が,技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の
実用新案登録出願に抵触する可能性があることに注意を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会
は,このような技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の実用新
案登録出願にかかわる確認について,責任はもたない。
JIS Z 8462-4には,次に示す附属書がある。
附属書A(規定)この規格で用いる記号
附属書B(参考)検出能力が十分か否かの判定の計算例
JIS Z 8462の規格群には,次に示す部編成がある。
JIS Z 8462-1 第1部:用語及び定義
JIS Z 8462-2 第2部:検量線が直線である場合の方法
JIS Z 8462-3 第3部:検量線がない場合に応答変数の限界値を求める方法
JIS Z 8462-4 第4部:与えられた値が検出可能か否かの判定方法
Z 8462-4:2006 (ISO 11843-4:2003)
(2)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1. 適用範囲 ························································································································ 1
2. 引用規格 ························································································································ 2
3. 定義 ······························································································································ 2
4. 実験計画 ························································································································ 2
4.1 一般的事項 ··················································································································· 3
4.2 参照状態及び標準物質の選択 ··························································································· 3
4.3 繰返し回数 ··················································································································· 3
5. 検出能力が十分か否かの判定基準 ······················································································· 3
5.1 基本的仮定 ··················································································································· 3
5.2 応答変数の限界値 ·········································································································· 3
5.3 正味状態変数の与えられた値を検出する確率 ······································································· 4
5.4 検出能力が十分か否かの判定基準の確認············································································· 4
6. 検出能力の評価結果の報告 ································································································ 5
7. 結果の報告 ····················································································································· 5
附属書A(規定)この規格で用いる記号 ··················································································· 6
附属書B(参考)検出能力が十分か否かの判定の計算例 ······························································· 7
参考文献 ····························································································································· 8
解 説 ································································································································ 9
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
Z 8462-4:2006
(ISO 11843-4:2003)
測定方法の検出能力−
第4部:与えられた値が検出可能か否かの判定方法
Capability of detection - Part 4: Methodology for comparing the minimum
detectable value with a given value
序文 この規格は,2003年に第1版として発行されたISO 11843-4,Capability of detection−Part 4:
Methodology for comparing the minimum detectable value with a given valueを翻訳し,技術的内容及び規格票
の様式を変更することなく作成した日本工業規格である。
なお,この規格で点線の下線を施してある“参考”は,原国際規格にはない事項である。
ある状態変数に関する測定方法の検出能力についての理想的な条件は,観測した各測定対象系の実際の
状態が,基底状態と等しいか又は異なるかということを確実に識別できることである。しかし,実際には,
系統誤差及び偶然誤差のために,次のような理由で,この理想的な条件を満たすことはできない。
a) 基底状態を含むすべての参照状態は,その状態変数については未知であるというのが実情である。し
たがって,すべての状態は,基底状態との差,すなわち,正味状態変数としてだけ正しく特性付けら
れる。
b) 誤った判定をしないために,基底状態との差の数値,すなわち,正味状態変数の値としてデータを報
告することが一般的に推奨されている。
備考 JIS Q 0030及びJIS Z 8461では,状態変数と正味状態変数とを区別していない。その結果,こ
れらの規格では,正当な理由なしに参照状態の状態変数が既知であるとみなしている。
c) さらに,校正の段階並びにサンプリング及び試料調製の過程で,測定結果にランダムな変動が加わる。
この規格では,
− 測定対象系が基底状態にあるとき,これが基底状態にないものと誤って判定する確率をαとする。
− 正味状態変数の値が検出可能な最小値(xd)に等しい測定対象系について,これが基底状態にあるものと
誤って判定する確率をβとする。
1. 適用範囲 この規格は,校正関数(検量線)が直線であり,かつ,残差標準偏差の値と正味状態変数
の値との間に特定の関係がある,というJIS Z 8462-2の前提条件を仮定しない場合の測定方法の検出能力
の評価について規定する。
備考 これらの仮定は,正味状態変数の値がゼロに近い場合には,疑わしいことが多い。
この規格は,検出可能な最小値を推定する代わりに,次のことについて規定する。
− 検出可能な最小値が正味状態変数の与えられたレベルを下回るか否かの判定基準
− この基準に適合するかどうかを試験するための基礎的な実験計画
測定方法の妥当性確認の一部として検出能力を評価する場合,測定方法の検出可能な最小値が,与えら
2
Z 8462-4:2006 (ISO 11843-4:2003)
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れた値より小さいことを確認するだけで十分である場合が多い。
備考 この規格の対応国際規格を,次に示す。
なお,対応の程度を表す記号は,ISO/IEC Guide 21に基づき,IDT(一致している),MOD
(修正している),NEQ(同等でない)とする。
ISO 11843-4:2003,Capability of detection−Part 4: Methodology for comparing the minimum
detectable value with a given value (IDT)
2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す
る。これらの引用規格のうちで,発効年を付記していない引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用
する。
JIS Z 8101-1 統計−用語と記号−第1部:確率及び一般統計用語
備考 ISO 3534-1:1993, Statistics−Vocabulary and symbols−Part 1: Probability and general statistical
termsからの引用事項は,この規格の該当事項と同等である。
JIS Z 8101-2 統計−用語と記号−第2部:統計的品質管理用語
備考 ISO 3534-2:1993, Statistics−Vocabulary and symbols−Part 2: Statistical quality controlからの
引用事項は,この規格の該当事項と同等である。
JIS Z 8101-3 統計−用語と記号−第3部:実験計画法
備考 ISO 3534-3:1999, Statistics−Vocabulary and symbols−Part 3: Design of experimentsが,この
規格と一致している。
JIS Z 8402-2 測定方法及び測定結果の精確さ(真度及び精度)−第2部:標準測定方法の併行精度及
び再現精度を求めるための基本的方法
備考 ISO 5725-2:1994, Accuracy (trueness and precision) of measurement methods and results−Part 2:
Basic method for the determination of repeatability and reproducibility of a standard measurement
methodが,この規格と一致している。
JIS Z 8461 標準物質を用いた校正(検量線が直線の場合)
備考 ISO 11095:1996, Linear calibration using reference materialsが,この規格と一致している。
JIS Z 8462-1 測定方法の検出能力−第1部:用語及び定義
備考 ISO 11843-1:1997, Capability of detection−Part 1: Terms and definitionsが,この規格と一致
している。
JIS Z 8462-2 測定方法の検出能力−第2部:検量線が直線である場合の方法
備考 ISO 11843-2:2000, Capability of detection−Part 2: Methodology in the liner calibration caseが,
この規格と一致している。
JIS Q 0030 標準物質に関連して用いられる用語及び定義
備考 ISO Guide 30:1992, Terms and definitions used in connection with reference materialsが,この
規格と一致している。
ISO 5479:1997, Statistical interpretation of data−Tests for departure from the normal distribution
3. 定義 この規格で用いる主な用語の定義は,JIS Z 8101(すべての部),JIS Q 0030,JIS Z 8402-2,JIS
Z 8461,JIS Z 8462-1及びISO 5479による。
3
Z 8462-4:2006 (ISO 11843-4:2003)
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4. 実験計画
4.1
一般的事項 対象とする測定方法は,標準化されているものと仮定する。参照状態であれ,又は実
際の状態(試験サンプル)であれ,すべての測定には同じ一連の測定手順を用いる。
4.2
参照状態及び標準物質の選択 参照状態には,次の正味状態変数の二つの値を含める。
− 正味状態変数がゼロの場合(すなわち,分析化学におけるブランク物質のサンプル)
− 検出可能な最小値よりも大きいかどうかを判定するために試験する,与えられた値xg
標準物質及び試験対象物質(試験サンプル)は,測定系において同様の挙動をする必要があるため,参
照状態を表す標準物質の組成は,測定する物質の組成にできる限り近いことが望ましい。
4.3
繰返し回数 検出能力は,4.2に規定する両方の参照状態について同じ繰返し回数の実験を別々に繰
り返して評価することが前提になっている。この測定方法を用いるときは,標準物質(正味状態変数のゼ
ロ値を表す)及び実際の状態を測定する。この測定方法を用いるときの繰返し回数は,一般に,この測定
方法の検出能力を評価するための繰返し回数よりも少ない。ここでは,次の記号を用いる。
− J:この測定方法を用いるときの,正味状態変数のゼロ値を表す標準物質(ブランクサンプル)の測定
の繰返し回数
− K:この測定方法を用いるときの,実際の状態(試験サンプル)の測定の繰返し回数
− N:検出能力を評価するときの,各標準物質(4.2参照)の測定の繰返し回数
Nの値は,5以上であることが望ましい。
備考 方法の妥当性確認では,通常,J=K=1で検出能力を求める。
5. 検出能力が十分か否かの判定基準
5.1
基本的仮定 この規格における基本的な仮定は,次のとおりとする。
− すべての物質の応答変数の測定は,独立であり,かつ,正規分布に従う。
− 標準物質及び試験対象物質(試験サンプル)は,測定系において同様に挙動する。
5.2
応答変数の限界値 一般に,試験サンプルの正味状態変数がゼロであるという仮説を,試験サンプ
ルの応答と,基底状態にあるサンプル(ゼロに等しい正味状態変数をもつことが分かっているブランクサ
ンプル)の応答とを比較して(ランダム化実験において)検定するとき,試験サンプルの応答(K回の測
定の平均値)の限界値は,次の式で求める。
K
J
z
y
y
1
1
b
1
b
c
+
+
=
−σ
α
····························································· (1)
この規格で用いる記号の意味を,附属書Aに示す。
正味状態変数が増加するに従って応答変数が減少する場合,応答の限界値は,次の式で求める。
K
J
z
y
y
1
1
b
1
b
c
+
−
=
−σ
α
····························································· (2)
ここに, yc: 下限値
参考 式(1)及び式(2)から分かるように,(正味状態変数がゼロであると分かっている場合の)応答変
数の限界値は,測定回数によって変化する。すなわち,測定回数が多くなれば正味状態変数の
検出可能な最小値が小さくなることに留意する必要がある。
4
Z 8462-4:2006 (ISO 11843-4:2003)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
この場合,5.3,5.4及び6.の
b
g
η
η −
及び
b
gy
y−
は,それぞれ,
g
b
η
η −
及び
g
by
y−
に変更している。
5.3
正味状態変数の与えられた値を検出する確率 正味状態変数の検出可能な最小値(すなわち,5.2に
おける検定の検出力が確率1−βとなる正味状態変数の値)を推定する代わりに,この規格では,正味状態
変数の与えられた値xgに対して,検出力が確率1−β以上となる判定基準を示す。この判定基準を満たせ
ば,検出可能な最小値はxg以下であると結論できる。
参考 この規格では,“検出能力”及び“検出力”という二つの用語を用いている。“検出能力”は,
測定方法全体の性能を表しており,“検出力”は,統計的な処理を行った場合の判断の正しい確
率(統計的検定において,帰無仮説が正しくないとき,帰無仮説を棄却する確率)を表してい
る。
正味状態変数の与えられた値xgに対する応答の標準偏差がσgのとき,検出力が確率1−β以上となる判
定基準は,次の式で求める。
2g
2b
1
b
1
b
g
1
1
1
1
σ
σ
σ
η
η
β
α
K
J
z
K
J
z
+
+
+
−
−
−
≧
·································· (3)
ここに,
ηb及びηg: 実際の測定条件における基底状態の応答及び,正味
状態変数がxgのときのサンプルの応答の期待値。
備考 式(3)の判定基準は,JIS Z 8462-1の正味状態変数の定義及び図1に基づくものである。
β=α,K=Jで,σg≧σbと仮定すると(正味状態変数が大きくなるに従って,標準偏差が小さくなること
はあまりない。),判定基準は,次のように簡易化できる。
J
zα
σ
σ
η
η
−
≥
+
−
1
2g
2b
b
g
2
···································································· (4)
5.4
検出能力が十分か否かの判定基準の確認 通常,式(3)の判定基準における応答の標準偏差及び期待
値は未知であり,判定基準を満たすことは実験データで確認しなければならない。したがって,簡易化し
た式(4)の判定基準の右辺は既知の定数であるが,左辺は未知の定数である。
基底状態の応答及びxgに等しい正味状態変数をもつサンプルの応答のN回の観測による妥当性確認実験
から,式(4)の判定基準の左辺の式は,次の式で推定できる。
2g
2b
b
g
s
s
y
y
+
−
················································································· (5)
記号の意味を,附属書Aに示す。
2g
2b
b
g
)
(
σ
σ
η
η
+
−
の下側の100(1−γ) %信頼限界値の近似は,次の式で求められる。
CL(信頼限界値)=
N
)
v
(
t
s
s
y
y
γ
−
−
+
−
1
2g
2b
b
g
········································· (6)
ただし,t1−γ(v)は,仮説σb=σgが棄却されない場合は自由度がv=2(N−1)の,棄却された場合はウェル
チ=サタースウェイトの公式による自由度
4g
4b
2
2g
2b
)
)(
1
(
s
s
s
s
N
v
+
+
−
=
の,t分布の(1−γ)分位点の値である。
5
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
2g
2b
b
g
)
(
σ
σ
η
η
+
−
の信頼下限値が式(4)の判定基準を満たす場合は,検出可能な最小値がxg以下である
ことが確認される。
備考 Nの値が比較的大きい(20以上)場合は,式(3)又は式(4)の不等式に,
by, gy,sb及びsgの推
定値を代入したとき,これらの不等式のいずれかが成立すれば,検出能力の確認は十分である
としてもよい。
参考 検出能力から十分か否かの判定の計算例を,附属書Bに示す。
6. 検出能力の評価結果の報告 通常,方法の妥当性確認の一環としての検出能力の評価から,次の事項
を報告する。
a) 参照状態値xgを含む,標準物質に関するすべての情報
b) それぞれの参照状態の繰返し回数N
c) 基底状態の応答及びxgに等しい正味状態変数をもつサンプルの応答の,それぞれの平均値
by及び gy
並びに標準偏差sb及びsg
d) 選択したα,β,J及びKの値
e) 推定値を代入した式(3)の判定基準の左辺及び右辺,すなわち,
b
g
y
y−
及び
2g
2b
1
b
1
1
1
1
1
s
K
s
J
z
K
J
s
z
+
+
+
−
−
β
α
,又は,適用できる(β=α,K=J,かつ,σg≧σb)場合は,統計量
2g
2b
b
g
)
(
s
s
y
y
+
−
とその信頼区間,及び式(4)の判定基準による許容下限値
J
zα
−1
2
f)
検出能力に関する結論
7. 結果の報告 観測値(応答又は正味状態変数の補間値)を報告する。真の値に関する仮説を検定する
ために観測値を用いたという事実は,真の値の推定(すなわち,観測値)を破棄して,これを検定の限界
値に等しい上限値又は検出可能な最小値に置き換える理由にはならない。これは,情報の無駄であること
に加えて,これらの限界値には信頼上限値として解釈できるものは一つもなく,誤解を招きやすい。適用
した限界値を,また,可能ならば,検出可能な最小値も報告する。
6
Z 8462-4:2006 (ISO 11843-4:2003)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書A(規定)この規格で用いる記号
J
この測定方法を用いるときの,正味状態変数のゼロ値を表す標準物質(ブランクサンプル)の測
定の繰返し回数
K
この測定方法を用いるときの,実際の状態(試験サンプル)の測定の繰返し回数
N
検出能力を評価するときの,各標準物質(本体の4.2参照)の測定の繰返し回数
yc
応答変数の限界値
xg
検出可能な最小値よりも大きいかを検定するために与えられた値
ηb
基底状態の応答の実際の測定条件における期待値
ηg
xgに等しい正味状態変数をもつサンプルの応答の実際の測定条件における期待値
σb
基底状態の応答の実際の測定条件における標準偏差
σg
xgに等しい正味状態変数をもつサンプルの応答の実際の測定条件における標準偏差
by
基底状態で測定した応答変数の平均値
gy
xgに等しい正味状態変数をもつサンプルで測定した応答変数の平均値
sb
基底状態における応答変数の標準偏差の推定値
sg
xgに等しい正味状態変数をもつサンプルで測定した応答変数の標準偏差の推定値
z1-α
標準正規分布の(1−α)分位点
z1-β
標準正規分布の(1−β)分位点
t1-γ(v)
自由度vのt分布の(1−γ)分位点
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書B(参考)検出能力が十分か否かの判定の計算例
この附属書は,本体に関連する事柄を補足するもので,規定の一部ではない。
連続流系を黒鉛炉原子吸光光度計に接続して,天然水内の低濃度の“反応性の高いアルミニウム”を測
定し,μg/Lの濃度で表した([2]参照)。ブランク濃度xb=0及び正味濃度xg=0.5 μg/Lの二つのサンプルを,
5回測定したときの吸光度の値を,附属書B表1に示す。したがって,方法の評価においては,N=5であ
る。検出能力は,J=K=1及びα=β=0.05として計算した。
附属書B表 1 ブランク濃度xb=0及び正味濃度xg=0.5 μg/Lの吸光度の値
アルミニウムの正味濃度
x
吸光度
y
0
0.5
0.074
0.081
0.075
0.076
0.074
0.126
0.126
0.125
0.108
0.130
統計的解析から,次が得られた。
by=0.076 0
gy=0.123 0
sb=0.002 9
sg=0.008 6
これらの値から,次の値が得られた。
2g
2b
b
g
s
s
y
y
+
−
=5.17
有意水準5 %のF検定では,仮説σb=σgは棄却されない。
γ=0.05及び自由度v=8の場合t1−γ(8)=1.86となり,また,α=0.05の場合z1−α=1.645となる。
本体の式(6)に従って計算した(
)
2g
2b
b
g
σ
σ
η
η
+
+
の95 %信頼下限値は4.34で,これは本体の式(4)に
おける2
J
zα
−
1
=3.29よりも大きい。したがって,この評価では,検出可能な最小値は,xg=0.5 μg/L
よりも小さいことになる。
8
Z 8462-4:2006 (ISO 11843-4:2003)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
参考文献
[1] JIS Z 8462-2 測定方法の検出能力−第2部:検量線が直線である場合の方法
備考 ISO 11843-2:2000,Capability of detection−Part 2: Methodology in the linear calibration caseが,こ
の規格と一致している。
[2] DANIELSSON,L.−G. and SPARÉN,A.A mechanized system for the determination of low levels of
quickly reacting aluminium in natural waters. Analytica Chimica Acta,306,1995,pp. 173-181