サイトトップへこのカテゴリの一覧へ

Z 8150:2017  

(1) 

目 次 

ページ 

序文 ··································································································································· 1 

1 適用範囲························································································································· 1 

2 引用規格························································································································· 1 

3 用語及び定義 ··················································································································· 1 

4 科学的アプローチ ············································································································· 3 

4.1 一般 ···························································································································· 3 

4.2 子どもの特性に起因する事故の特徴の理解 ·········································································· 3 

4.3 子どもの身体特性及び行動特性の理解················································································ 3 

5 子どもの安全性確保のための活動 ························································································ 3 

5.1 一般 ···························································································································· 3 

5.2 事故情報の確認及び対処 ································································································· 4 

5.3 設計・開発の評価又は検証及び改善··················································································· 4 

5.4 利用者への情報の伝達 ···································································································· 4 

5.5 事故情報及びユーザーニーズの蓄積並びに活用 ···································································· 5 

6 リスクアセスメント ·········································································································· 5 

6.1 一般 ···························································································································· 5 

6.2 意図する使用及び合理的に予見可能な誤使用の同定 ······························································ 6 

6.3 ハザードの同定 ············································································································· 6 

6.4 リスクの見積り ············································································································· 7 

6.5 リスクの評価 ················································································································ 8 

7 危害の軽減及び防止の対策 ································································································· 8 

7.1 一般 ···························································································································· 8 

7.2 ステップ1:本質的安全設計 ···························································································· 8 

7.3 ステップ2:ガード及び保護装置 ······················································································ 8 

7.4 ステップ3:使用上の情報 ······························································································· 8 

7.5 残留リスクへの方策 ······································································································· 9 

7.6 使用段階のリスク低減 ···································································································· 9 

附属書A(参考)複合要因による事故事例 ··············································································· 10 

附属書B(参考)子どもの安全性確保のための活動事例 ······························································ 14 

附属書C(参考)子どもの事故事例分析のためのデータベース等·················································· 19 

附属書D(参考)子どもの安全性確保のための製品の設計に資するデータ及び知見 ·························· 22 

附属書E(参考)危害の軽減及び防止の対策事例 ······································································· 26 

Z 8150:2017  

(2) 

まえがき 

この規格は,工業標準化法に基づき,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本

工業規格である。 

この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。 

この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意

を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実

用新案権に関わる確認について,責任はもたない。 

日本工業規格          JIS 

Z 8150:2017 

子どもの安全性−設計・開発のための一般原則 

Child safety-General principles for design and development 

序文 

子どもの探索行動又は事物への興味及び関心を示す行動は,子どもの成長・発育過程において自然な行

為であり,発育に必要な行為である。一方で,子どもの事故には子ども特有の行動特性及び心理特性に起

因しているものも多い。重要な点は,子どもの自然な行動を阻害することなく,かつ,重篤な事故につな

がらない対策を打つことである。子どもの安全に関する考え方の基本は,危険源の察知及び危険回避の能

力の発達を妨げるものではなく,死亡又は重傷を負うような事故を回避することにある。 

子どもの事故の中には,対象となる利用者を特定した各業界の安全規格だけでは防ぎきれない事例が存

在する。これらの事故を防ぎ,子どもが深刻な傷害を負う状況を避けるためには,過去の子どもの事故情

報並びに子どもの行動特性及び心理特性に基づいた対策が必要である。この規格は上記の考えに基づいて,

製品などの設計・開発において子どもの安全性確保に必要な活動を規定するものであり,独立して使用さ

れることも,各業界の安全規格と併存する場合もある。 

適用範囲 

この規格は,子どもが死亡又は重傷を負う可能性を,最小限に抑えることができるよう,製品を設計・

開発するための一般原則を規定する。 

この規格は,あらゆる製品を提供する事業者を対象とし,子どもを直接の利用者と想定した製品だけで

なく,子どもが遭遇すると思われる製品の設計・開発において,事業者の規模,業種,業態にかかわらず,

適用される。 

この規格は,故意の危害(例えば,虐待)又は心理的危害(例えば,脅迫)のような非肉体的危害の防

止に関する指針は提供していない。 

注記 環境及びサービスは,この規格の適用範囲には含まないが,環境及びサービスの設計・開発に

おいて,この規格を参考にすることができる。 

引用規格 

次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの

引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。 

JIS Z 8050 安全側面−規格及びその他の仕様書における子どもの安全の指針 

JIS Z 8051 安全側面−規格への導入指針 

用語及び定義 

この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS Z 8050及びJIS Z 8051によるほか,次による。 

Z 8150:2017  

3.1 

環境(environment) 

住宅・建築物など人が存在する場所及び空間。 

注記 この用語は,箇条1にだけ適用される。 

3.2 

ケアラー(carer) 

個々の子どもの安全について,一時的であれ,責任を果たす人,又は子どもの世話をする人。 

注記 ケアラー(carer)は,“ケアギバー(caregiver)”と(海外では)いうこともある。 

例 親,祖父母,子どもに対して限定的な責任を与えられた兄弟姉妹,その他の親戚,大人の知り合

い,ベビーシッター,教師,保育士,ユースリーダー(青少年施設の指導員),スポーツコーチ,

キャンプ生活の指導員,保育所就業者。 

(JIS Z 8050,3.1を参照。) 

3.3 

子ども(child) 

14歳未満の人。 

注記 年齢は各業界の基準・法令によって異なる年齢制限を採用する場合もある。 

3.4 

サービス(service) 

組織と顧客との間で必ず実行される,少なくとも一つの活動を伴う組織のアウトプット。一般に無形で

ある。 

3.5 

事故(accident) 

製品によって危害が引き起こされること。又は製品を利用中に,利用者に危害が引き起こされること。 

3.6 

製品(product) 

組織と顧客との間の処理又は行為なしに生み出され得る,組織のアウトプット。一般に有形である。ハ

ードウェア,素材製品,ソフトウェアなどに分類される。 

3.7 

ドキュメント(documents) 

製品の利用に関わる情報を伝達するための資料。取扱説明書,カタログ,情報伝達シートなど。 

3.8 

プロセス(process) 

インプットをアウトプットに変換する,相互に関連する又は相互に作用する一連の活動。 

3.9 

リスク低減(risk reduction) 

ハザードを除去するか,又はリスクを低減する。 

3.10 

利用者(user) 

製品の提供を受ける側。 

Z 8150:2017  

科学的アプローチ 

4.1 

一般 

子どもの安全を確保するためには,製品の設計・開発に科学的なアプローチを取り入れ,子どもの特性

に起因する事故の特徴を理解し,事故を繰り返さないことが重要である。 

科学的アプローチには,次のようなものがある。 

a) 過去の事故情報及び利用者から寄せられた情報を参照して子どもの特性に起因する事故の特徴を理解

する。 

b) 身体寸法データベース及び研究成果などの資料を参照して,子どもの身体特性及び行動特性を理解す

る。 

4.2 

子どもの特性に起因する事故の特徴の理解 

子どもの特性に起因する事故には,次のような共通する傾向がある。 

4.2.1 

複合要因による事故 

事故は単一製品が原因で発生するばかりでなく,他の製品又は環境などとの関わりにおいて引き起こさ

れることがある。製品と製品との組合せ,製品と環境又はその他の要因との組合せによる事故を予測し,

対策を行うことが必要である。附属書Aなどを参照し,過去の事故情報から事故が発生した状況,関わっ

た製品などの相互関係を推測することが有効である。 

4.2.2 

子どもの発育及び行動 

子どもは発育に応じて,体の大きさ,運動能力,感覚機能,反応時間などが急速に変化する。子どもの

発育に伴う行動特性が引き起こす事故を予測し,対策を行うことが必要である。事故情報から年齢ごとに

発生し得る事故の分析を行い,事故の頻度,重篤度を知ることが有効である。 

4.2.3 

子どもの認識,知識及び経験の度合い 

子どもの事故の多くは認識,知識及び経験の度合いが低いことから発生する。子どもの認識,知識及び

経験の度合いから,注意喚起は必ずしも有効でない場合も多い。年齢ごとの子どもの認識,知識を踏まえ,

製品特性又は使用実態に合わせた予測及び対策が必要である。 

4.2.4 

社会的及び環境的要因 

子ども及びケアラーのライフスタイルは,社会状況によって絶えず変化する。社会的及び環境的要因に

よる事故を回避するためには,最新の事故情報を入手し,常に新しい社会及び環境の下で,子どもが傷害

を受ける可能性を推測することが有効である。 

4.2.5 

ケアラーの認識若しくは知識,経験,又は監督の度合い 

ケアラーにおいても認識,知識及び経験には個体差がある。又は不特定多数の子どもを対象に行動する

場合もある。保育においては,人による監督には限界があると考えることが妥当である。また,監督下で

あっても常に事故を防止できるとは限らない。 

4.3 

子どもの身体特性及び行動特性の理解 

子どもは発達段階にあり,身体をはじめ,感覚,運動能力,情緒,認知などの諸機能は段階を追って成

長する。子どもの身体特性及び行動特性の理解に当たっては,附属書Dに記載するような,実験又は計測

を根拠とする実証的資料を参照し,活用することが望ましい。 

子どもの安全性確保のための活動 

5.1 

一般 

子どもの安全性確保のためには,製品の設計・開発を通じて,次に示す四つの活動を行うことが求めら

Z 8150:2017  

れる。 

これらの活動は,企画,開発,設計,製造,建設,提供,販売,運用など,事業者の業態に応じて既存

の事業プロセスのどこに組み込んで実施しても構わないが,相互に関連ある活動であるため,附属書Bを

参照し,漏れなく組み込むことが望ましい。実施に当たっては,後日,検証可能な方法で,管理,運営さ

れることが望ましい。また,これらの活動は,繰り返し実施し,継続的な業務改善(スパイラルアップ,

spiral up)を図ることが望ましい。 

a) 事故情報の確認及び対処 

b) 設計・開発の評価又は検証及び改善 

c) 利用者への情報の伝達 

d) 事故情報及びユーザーニーズの蓄積並びに活用 

5.2 

事故情報の確認及び対処 

この活動では,次のことを実施する。 

a) 当該製品に関連して自社に寄せられた事故情報を蓄積し,確認しなければならない。 

b) 当該製品に関連する過去の子どもの事故情報を検索し,確認することが望ましい。 

c) 事故情報の検索に当たっては,附属書Cに記載したような子どもの事故関連の資料を,それぞれの特

徴(登録項目,登録件数,更新頻度など)に留意して,複数参照することが望ましい。 

d) 当該製品に関連する子どもの事故情報がない場合でも,事故が存在していないとは限らないため,附

属書Cに記載したような子どもの事故関連の各種情報から,同種の機能又は構造をもった製品など,

事故の発生を類推可能な事故情報を抽出して,製品が使われる環境,子どもとの関連性,事故発生の

可能性及び監督の度合いを検証することが望ましい。 

e) 子どもの特性に起因する事故には共通する傾向がある。これを理解し考慮してリスクアセスメントを

実施することが望ましい。子どもの特性に起因する事故の特徴の理解については箇条4を,リスクア

セスメントについては箇条6を参照するとよい。 

f) 

事故防止のための対処方法の検討に当たっては,附属書Dに記載するようなデータ及び知見を参照す

ることが有効である。 

5.3 

設計・開発の評価又は検証及び改善 

この活動では,次のことを実施する。 

a) 設計・開発の評価又は検証は,関係者を明確にし,実施されなければならない。 

b) 設計・開発の評価又は検証は,図面又は試作品などで行う。 

c) 評価又は検証の結果が,子どもの重篤な事故を回避する設計に適合しない場合には,改善する。 

d) 改善に当たっては,危害の軽減及び防止の対策を実施する。危害の軽減及び防止の対策については箇

条7を参照するとよい。 

e) 改善は,許容可能なリスクが達成されるまで行う。 

f) 

利用者が使用を開始する前までに,改善の妥当性を確認することが望ましい。 

5.4 

利用者への情報の伝達 

この活動では,次のことを実施する。 

a) 利用者が,製品を正しく使用できるドキュメントを作成して,情報を伝達しなければならない。 

b) 製品が子ども向けの場合には,子ども向け及びケアラー向けのドキュメントを作成することが望まし

い。製品が子ども向けでない場合には,大人向けに,子どもの安全が確保されるような使用のための

ドキュメントを作成することが望ましい。また,遊具などのように,設置,運用,管理する人と実際

Z 8150:2017  

に使う人が異なる製品の場合には,設置,運用,管理する人向けのドキュメントに,実際に使う人に

伝達すべき情報を明記することが望ましい。 

c) ドキュメントの内容は,正しい使用方法だけでなく,誤った使用方法によるリスクも併記することが

望ましい。 

d) ドキュメントは,ピクトグラム又は図式も併用することが望ましい。 

e) 情報の伝達に当たっては,ウェブ(World Wide Web)又はソーシャルメディア(social media)などを

活用することも有効である。 

5.5 

事故情報及びユーザーニーズの蓄積並びに活用 

この活動では,次のことを実施する。 

a) 販売又は提供後に,当該製品の子どもに関する事故情報を利用者から受け付ける連絡窓口を明確にし

なければならない。 

b) 利用者から寄せられる事故情報は継続して蓄積しなければならない。 

c) 組織における体制を整備し,関係者がその内容を照会・活用できる仕組みを整備するとよい。 

d) 蓄積された事故情報については,事故の原因を分析し再発防止を検討する仕組みを整備するとよい。 

リスクアセスメント 

6.1 

一般 

子どもの安全性確保のための製品の設計・開発におけるリスクアセスメントでは,設計者は次のことを

実施するとよい。 

a) 意図する使用及び合理的に予見可能な誤使用の同定 

b) ハザードの同定 

c) リスクの見積り 

d) リスクの評価 

a) からc) までをリスク分析という。図1に,“リスクアセスメント”及び“危害の軽減及び防止の対策

(箇条7参照)”の手順を示す。 

background image

Z 8150:2017  

図1−“リスクアセスメント”及び“危害の軽減及び防止の対策” 

6.2 

意図する使用及び合理的に予見可能な誤使用の同定 

子どもの心身は,乳幼児期(0歳〜2歳)から低年齢の子ども(3歳〜8歳),高年齢の子ども(9歳〜14

歳未満)まで段階を追って発達する。乳幼児期(0歳〜2歳)及び低年齢の子ども(3歳〜8歳)の安全を

考えた場合,子どもと製品との関わりに誤使用という概念は存在しない。こうした年齢の子どもの行動は,

意図する使用及び合理的に予見可能な誤使用として同定することは困難である。附属書Dに記載するよう

なデータ及び知見から想定される行動は,全てあり得るものと考える方がよい。 

製品を利用するための知識及び生活の中で危険を予知し回避する感性には,人によって差がある。また,

これらは,時流及び同時期に提供されている製品の影響も受けて,絶えず変化する。ケアラーの使用及び

誤使用の同定に当たっては,最新の社会状況及び他の製品の状況を考慮することが望ましい。 

6.3 

ハザードの同定 

次の視点でハザードの可能性を検討するとよい。 

はい 

はい 

いいえ 

いいえ 

スタート 

意図する使用及び合理的に予見

可能な誤使用の同定 

ハザード同定 

リスクの評価 

リスクの見積り 





許容可能なリスク

がリスク低減によ

って達成できない

場合だけ関係する

アクション 









リスクは 

許容可能か 

リスク低減 

リスクの評価 

リスクの見積り 

残留リスクは 

許容可能か 

妥当性確認 及び 文書化 












完了 

background image

Z 8150:2017  

6.3.1 

製品の構造及び機能に起因するハザード 

製品の構造及び機能にハザードとなる要因が見出された場合,傷害の対象は子どもに限らないことが多

い。このケースでは,ハザードを排除するか又はハザードに対して防護する措置を講じなければならない。 

6.3.2 

子どもを利用者と想定した製品の使い方に起因するハザード 

遊具,玩具など子どもが利用者と想定される製品が,想定された使い方以外の使い方によって事故を引

き起こすことがある。子どもの体形,生理,体力,認識力などの発達は急速かつ個体差もあり,必ずしも

年齢によるものだけではないことを想定することが望ましい。これは,その製品が想定する発達段階以外

の子どもが使うケースも含まれる。 

6.3.3 

子どもを利用者と想定していない製品の使い方に起因するハザード 

子どもの事故の事例の多くがこれに当たる。多くの大人用又は幅広い年齢層を対象とした製品が,子ど

もの探索行動,認識力の未熟さ,運動制御力の未熟さによって,ハザードになり得ることを認識しなけれ

ばならない。子どもと製品との関わり合いは,それが“みなし遊び”のような行動に起因するものなのか,

意図した使用なのかを判断することは困難である。これらを区別することなく,推測することが望ましい。 

6.3.4 

設置,保管,運用などの環境に起因するハザード 

製品はそれが設置,保管,運用される環境によって,ハザードとなり得る。製品が消費者に届いた後,

それがどのように設置され,保管され,使われるかを考慮し,子どもがどのような状況で接触するかを推

測することが望ましい。 

6.4 

リスクの見積り 

ハザード同定の後,リスクの要素(図2参照)を決定することによって,それぞれの危険状態に対して,

リスクを見積もる。それぞれの危険状態に関するリスクは,危害の度合いとその危害の発生確率との関数

で見積もることができる。 

リスク 

は 

危害の度合い 

及び 

その危害の発生確率 

の関数 

検討されたハ
ザードに関す
るリスク 

検討されたハザ
ードから生じる
危害の度合い 

ハザードへの暴露 

危険事象の発生 

危害の回避又は制限の可能性 

図2−リスクの要素 

6.4.1 

危害の度合い 

危害の度合いは,次のような項目で見積りを行う。 

a) 軽度 

b) 重度 

c) 死亡 

6.4.2 

ハザードへの暴露 

ハザードへの暴露は,次のような項目で見積りを行う。 

a) 接触及び接近の可能性 

b) 接触及び接近の頻度 

c) 接触及び接近状態での経過時間 

6.4.3 

危険事象の発生 

危険事象の発生は,次のような項目で見積りを行う。 

a) 当該製品による事故履歴 

Z 8150:2017  

b) ケアラーによるヒヤリハット報告 

c) 他の類似の製品とのリスク比較 

6.4.4 

危害の回避又は制限の可能性 

危害の回避又は制限の可能性は,次のような項目で見積りを行う。 

a) 危険源に暴露される人 

1) 乳児(生後1年未満) 

2) 幼児(1歳〜2歳) 

3) 低年齢の子ども(3歳〜8歳) 

4) 高年齢の子ども(9歳〜14歳未満) 

b) リスクの認知 

1) 使用上の情報 

2) 警告表示 

3) 直接観察 

c) 経験及び知識 

1) 当該製品について 

2) 類似の製品について 

3) 経験なし 

d) ケアラーによる危害の回避又は制限の可能性 

6.5 

リスクの評価 

リスク見積りの後,リスク低減が必要かどうかを決定するため,リスク評価を実施する。評価に当たっ

ては,子どもは大人に比べてぜい弱なため深刻な危害を受けやすいことを考慮する。 

リスク低減が必要な場合には,危害の軽減及び防止の対策の手順を反復し,達成させる。 

危害の軽減及び防止の対策 

7.1 

一般 

リスク低減のためには,危害の軽減及び防止の対策を行う。危害の軽減及び防止の対策は,スリーステ

ップメソッドを適用し,次の手順で実施する(図3参照)。具体的な対策事例については,附属書Eを参

照するとよい。 

7.2 

ステップ1:本質的安全設計 

ハザードを除去する,又は設計上の工夫によってリスクを低減する。子どもの場合,ガード及び追加の

安全防護は,叩く,投げるなどの行動によって,取り外されたり無効にされたりする場合がある。また,

使用上の情報は,的確に伝わらず,守られない場合が多い。そのため,本質的安全設計は最も重要なステ

ップである。対策に当たっては,子どもの身体寸法・特性情報を参照するとよい。 

7.3 

ステップ2:ガード及び保護装置 

7.2の本質的安全設計がハザードを除去することも,リスクを十分に低減させることもできない場合には,

子どもに対する,ガード及び保護装置を講じて,リスクを低減する。 

7.4 

ステップ3:使用上の情報 

使用上の情報として,子ども向けには,子どもの成長発達の度合いに応じた注意喚起又は教育につなが

る情報提供を行う。 

また,ケアラー向けには,その職種又はその立場に応じた取扱い説明及び注意喚起,又は指導・教育が

background image

Z 8150:2017  

行えるような情報提供を行う。 

7.5 

残留リスクへの方策 

使用上の情報を提供しても,子どもには的確に伝わらない場合が多い。子どもの場合にはステップ3で

は,ほとんどリスクは低減しないと考えるのがよい。ステップ1及びステップ2を確実に実施し,残留リ

スクを可能な限り,減らすことが望ましい。 

7.6 

使用段階のリスク低減 

当該製品の機能及び特徴から,使用段階でなければリスクを十分に低減できない場合がある。その場合,

ケアラーは,子どもに必要な個人用保護具を装着させて利用するなど,事業者から提供された情報に沿っ

て,リスクの低減を行う役割を果たす。 

注a) 一例として顧客に供給した製品若しくはシステムに,又はそれらを据え付けた後の構造的特徴に,

残っているリスクがある。 

図3−設計段階及び使用段階における危害の軽減及び防止の対策 

許容不可能なリスク 

設計段階 

全ての対策を行

った後の残留リ

スク 

・ステップ1:本質的安全設計 

・ステップ2:ガード及び保護装置 

・ステップ3:使用上の情報 

  ・子どもの成長発達の度合いに応じた 

    − 注意喚起 

    − 教育につながる情報提供 

  ・ケアラー向けに職種又は立場に応じた 

    − 取扱い説明 

    − 注意喚起 

    − 指導・教育が行えるような 

      情報提供 

使用段階 

残留リスク(設計後に残っているリスク)a) 

使用段階のリスク低減 

      − 指導・教育 

      − 個人用保護具 

事業者によって 

対策を図った後 

の残留リスク 

リスク 

background image

10 

Z 8150:2017  

附属書A 

(参考) 

複合要因による事故事例 

A.1 複合要因による事故事例 

製品どうしの組合せ,製品と使用環境との又は製品と子どもの特性などとの複合要因による事故事例を表A.1に示す。 

表A.1−複合要因による事故事例 

事故の概要 

子どもの 

年齢・性別 

発生年月 

関連した製品, 

場所,人 

複合要因 

出典 

パソコンデスクの棚の上の箱に入れていた父親の薬を
取り出し,誤飲した。10錠入りのシートのうち9錠が
なくなっていた。床にある箱を踏み台にしてパソコンデ
スク(高さ80 cm)によじ登り,高さ140 cmの棚に手
が届いたようだ。医療機関で胃洗浄を実施。 

2歳男児 

2014年8月 

薬,箱(踏み台) 

箱を踏み台にしてパソコ
ンデスクによじ登り,手
の届かない場所にある薬
を取り出し飲んだ 

製品×環境×
発達及び行動 

お湯を沸かしていた電気ケトルのコードを足に引っ掛
けて,電気ケトルが落下した。こぼれたお湯で熱傷を負
った。(胸,背の熱傷 軽症) 

8歳 

2011年8月 

電気ケトル,コード 電気ケトルのコードに引

っ掛かり,台の上から電
気ケトルが落下し熱湯が
かかる 

製品×附属品 

B-1 

電気ケトルを床に置いて使用していた。乳児がはいはい
をして電気ケトルに触れて倒したようだ。家族が乳児の
泣き声に気付いて見ると,乳児の体に電気ケトルのお湯
がかかっていた。(顔,胸の熱傷 中等症) 

0歳 

2011年11月 電気ケトル,床置き 電気ケトルを床で使用

中,はいはいで倒し熱湯
がかかる 

製品×環境 

B-1 

親が洗面所で洗濯中,別室にいた子供が吐き,泣き出し
た。洗濯機の横60 cmの高さに置いてあった洗剤をかじ
ってしまった様子。すぐに吐き出させて口をゆすいだ
が,口が痛いという。 

4歳男児 

2014年6月 

パックタイプ洗剤 

新形(パックタイプ)の
洗濯用洗剤をかじり,フ
ィルムが破れ,飲み込ん
だ 

製品×発達及
び行動×社会
的・環境的要因 

B-2 

引き出しの中に収納されているはずのLEDライト付き
耳かきが放り出されており,子どもがコイン型のリチウ
ム電池を誤飲したことが分かった。病院にて9時間かけ
て取り出したが,放電の影響で気管と食道に穴が開き,
2カ月入院した。 

1歳男児 

2013年11月
(受付年月) 

電池(コイン型),
LEDライト付き耳
かき 

引き出しの中からLED
ライト付き耳かきを取り
出した上,耳かきの中か
らコイン型電池を外して
飲み込んだ 

製品×発達及
び行動 

4

Z

 8

1

5

0

2

0

1

7

background image

11 

Z 8150:2017  

表A.1−複合要因による事故事例(続き) 

事故の概要 

子どもの 

年齢・性別 

発生年月 

関連した製品, 

場所,人 

複合要因 

出典 

タイマーのふたを取って遊んでいるのを母親が発見。中
にあるはずのボタン電池が見当たらず受診。腹部レント
ゲンで胃にボタン電池を確認したため,マグネットカテ
ーテルにて摘出。ボタン電池は黒色に変色していた。 

1歳男児 

2013年8月 

電池(ボタン),タ
イマー 

タイマーの中からボタン
電池を外して飲み込んだ 

製品×発達及
び行動 

子供がトイレ内でエアゾール缶(消臭剤)を使用したと
ころ,火災が発生し,火傷を負った。トイレ内には一度
も清掃していない空気清浄機(静電気式)が設置されて
いた。当該製品内部には多量のホコリが付着しており,
その状態で使用を続けると放電光が発生するような状
況であった。使用者が狭い空間内で消臭剤を大量に噴射
したため,空気清浄機の静電気による火花が,消臭剤に
噴射剤として含まれているLPガスに引火し,火災に至
ったものと推定される。 

5歳 

2011年7月 

空気清浄機,エアゾ
ール缶(消臭剤) 

狭い空間で大量の消臭剤
を噴射,長期間清掃して
いない空気清浄機の静電
気の火花がLPガスに引
火した 

製品×環境×
発達及び行動 

幼児がウォーターサーバーの温水レバーを操作したと
ころ,チャイルドロック機能が効かず,お湯が出て火傷
を負った。構造上の問題からチャイルドロックボタンの
カバーが温水コックのカバーに干渉したため,チャイル
ドロックボタンが押された状態から戻らなくなり,その
状態で幼児が温水レバーに触れて出湯し,火傷を負った
ものと推定される。 

1歳 

2013年7月 

ウォーターサーバ
ー,チャイルドロッ
クの不具合 

1歳児でも手の届く高さ
に温水レバーが設置され
ていて,チャイルドロッ
クにも不具合があった 

製品(不具合)
×環境×発達
及び行動 

児を抱っこ紐に対面で固定している状態で,券売機にて
券を購入しようと70〜80 cm程度の高さの台にカバン
を置いた。カバンから財布を出そうと少し前かがみにな
ったときに抱っこ紐の右脇から児が滑るように頭部を
先進部にしてコンクリートの地面に転落してしまった。
抱っこ紐のベルトはすべて閉めていた。外傷性くも膜下
出血。 

4か月男児 

2013年3月 

抱っこひも,コンク
リート地面,ケアラ
ー 

前かがみの姿勢になった
とき,子どもが抱っこひ
もの脇から滑り,コンク
リート地面に転落 

製品×環境 
×ケアラーの
行為,行動 

10 抱っこひもを装着して前抱きしていた。ひもは腰だけつ

けた状態で上体はフリーであった。母親がおんぶに変え
ようとした際に,くるっと背中側に回そうとしたとこ
ろ,子どもがのけぞり,そのまま頭から転落。床はフロ
ーリング。右頭頂骨骨折あり。 

9か月男児 

2014年8月 

抱っこひも,フロー
リング,ケアラー 

前抱きから,おんぶに変
えようとした際,子ども
がのけぞりフローリング
の床に転落 

製品×環境 
×ケアラーの
行為,行動 

4

Z

 8

1

5

0

2

0

1

7

background image

12 

Z 8150:2017  

表A.1−複合要因による事故事例(続き) 

事故の概要 

子どもの 

年齢・性別 

発生年月 

関連した製品, 

場所,人 

複合要因 

出典 

11 子どもが歯ブラシを持ってソファで遊んでいた。ボンと

いう音で気付いて母親が振り向くと,うつぶせで啼泣。
ひっくり返すと口の中に歯ブラシが刺さったままだっ
た。母親が引き抜こうとしても抵抗あり,引き抜けなか
った。2-3回強くひっぱり,ようやく引き抜いた。毛側
の先端約2.5 cmが折れた状態だった。口から出血して
いた。すぐに近所の小児科受診。異物の残存なく経過観
察の方針。心配なので本日近所の耳鼻科受診。頭部CT
で歯ブラシ先端の残存あり,当院紹介受診。 

4歳男児 

2012年1月 

歯ブラシ,ソファ 

歯ブラシを持って遊んで
いるときにソファから転
落,歯ブラシが口腔内に
刺さった 

製品×製品×
発達及び行動 

12 入浴後に洗濯機(110 cm)の上に座布団をひいて児を寝

かせて着替え中,上の子がお風呂にはいると脱ぎだした
のでその準備に児の側を離れた。ごごんと鈍い音がして
母が見たときには児は床(フローリング)に転落してい
た。左顔面部にすじ様の発赤あり口から出血あり。救急
車要請。本日は,父が胃腸炎の症状があり休んでいたの
で,母一人で2人の子どもを見ていた。脱衣所の床は冷
たそうなので,通常,洗濯機の上で更衣を行っていた。
児はまだ寝返りしないが,背中を反らせて落ちたと思わ
れる。 

5か月女児 

2010年2月 

洗濯機,年上の兄
弟,ケアラー 

親が入浴後着替えのため
幼児を洗濯機の上に寝か
せていたところ,転落 

製品×環境 
×ケアラーの
行為,行動 

13 自宅のリビングで。児,弟(1歳),母,祖父母がいた。

突然“ボンッ!”という何かが爆発したような音が聞こ
えてきて,児を見ると大泣きして手の指に黒いススが付
いていた。児に聞くとヘアピンをコンセントに差し込ん
だとのこと。黒いヘアピン(ユーピン)は,前日児が浴
衣を着た際に使用したもので,リビングの戸棚に置いて
いたもの。児が戸棚から持ち出して,ワゴンのコンセン
ト(高さ100 cmくらい)に差し込んでしまったようす。
ダイニングテーブルの椅子に乗って手が届いた,と。ワ
ゴンのコンセントは炊飯器などで使用する。このときは
2つ空いていた。 

3歳女児 

2014年7月 

コンセント,ヘアピ
ン 

ワゴンの上のコンセント
に,戸棚から取り出した
ヘアピンを差し込んだ 

製品×製品×
発達及び行動 

4

Z

 8

1

5

0

2

0

1

7

background image

13 

Z 8150:2017  

表A.1−複合要因による事故事例(続き) 

出典凡例(事故の概要,子どもの年齢・性別,発生年月の3項目について,次の出典元から引用した。) 
A:消費者庁 News Release 子どもによる医薬品の誤飲事故に注意!(2014年12月19日) 
B:消費者庁/独立行政法人国民生活センター 
 B-1:News Release 電気ケトルの転倒等による乳幼児の熱傷事故にご注意ください(2012年11月28日) 
 B-2:News Release 洗濯用パック型液体洗剤に気を付けて!(2015年3月18日) 
C:独立行政法人国民生活センター 報道発表資料 ボタン電池を使用した商品に注意(2014年10月30日) 
D:独立行政法人製品評価技術基盤機構 事故情報データベース(掲載した事故事例は左記で検索した情報を一部編集したもの) 
E:経済産業省/消費者庁 製品安全ガイド“事故情報検索”(掲載した事故事例は左記で検索した情報を一部編集したもの) 
F:公益社団法人日本小児科学会 Injury Alert(傷害速報)No.41 
G:国立研究開発法人産業技術総合研究所/特定非営利活動法人キッズデザイン協議会 キッズデザインデータベース 

4

Z

 8

1

5

0

2

0

1

7

background image

14 

Z 8150:2017  

附属書B 

(参考) 

子どもの安全性確保のための活動事例 

B.1 

子どもの安全性確保のための活動事例 

箇条5に記載した四つの活動を,子どもの安全性確保のために,製品の設計・開発を通じて実施した事

例を,次に示す。 

B.1.1 事例1:日用品(歯ブラシ) 

箇条5に示し
た四つの活動 

活動内容 

5.2 事故情報
の確認及び対
処 

1) 当社では,複数の製品分野において,子ども及び高齢者などに寄り添うアクセシブルデザインに

取り組んでおり,日常的に,様々な事故情報にも注意を払っている。 

2) 歯ブラシによる事故については,News Release“乳幼児の歯ブラシによる事故に注意!”(平成25

年3月,消費者庁/独立行政法人国民生活センター)を見て,事故件数,保護者の認識,専門家
のコメント,乳幼児の歯磨きの実態調査結果,注意喚起など,詳細を知った。これをきっかけに,
乳幼児が歯磨き中歯ブラシをくわえたまま転倒し,口腔内に歯ブラシを突き刺すなどの事故が起
きていることを認識した。 

3) 消費者への注意喚起として,“歯ブラシを口に入れたり,手に持たせたまま歩き回らせないでくだ

さい。”とあったが,子どもをじっとさせておくのは難しいと思われた。 

4) さらに母親を対象にヒアリングを行ったところ,動き回って危ないなど事故への“不安”及び子

どもが嫌がって磨かせてくれない“負担”などの意見が多く寄せられた。 

5) 事故情報データベース(独立行政法人製品評価技術基盤機構)に,子どもの喉に歯ブラシが刺さ

ってしまう事故が報告されていた。また,消費者庁及び公益社団法人日本小児科学会から注意喚
起がなされていた。 

6) 次を考慮してリスクを見積もり,評価した。 

− 危害の度合い 

・ 深く刺さった場合には生命が脅かされる危険性もある。 

− ハザードへの暴露 

・ 接触の可能性あり,1日2回程度の頻度,数分程度の経過時間 

− 危険事象の発生 

・ 東京消防庁ウェブサイトで乳幼児(5歳以下)の歯みがき中の事故による救急搬送人員を確

認した。 

・ 細長いものを口にくわえたまま転倒して生じる事故は,箸,フォーク,鉛筆などでも発生し

ている。 

・ ヒアリングで多くのヒヤリハット報告が得られた。 

− 危害の回避又は制限の可能性 

・ 暴露されるのは乳幼児 
・ 歯ブラシには特にとが(尖)った部分はなく,箸,フォーク,鉛筆など先のとが(尖)った

物に比べて,ケアラーが事故の危険性を認識しにくい。 

7) 対処方法の検討において,現在市販されている歯ブラシを確認し,次を事故防止のための要求仕

様とした。 

− 強い力が掛かると歯ブラシが曲がり,衝撃を吸収する。パキッと折れない。 
− 歯及び歯ぐきを傷付けず,歯こう(垢)も落とせる適切な歯磨き圧で磨ける。 
− 適切な力で持ちやすい形状。 

background image

15 

Z 8150:2017  

箇条5に示し
た四つの活動 

活動内容 

5.3 設計・開
発の評価又は
検証及び改善 

1) 歯ブラシのデザインにおいては,様々な形状をデザインし3次元CADで構造を検証した。 
2) のど突き時の衝撃を和らげ,子どもの重篤なけがを防ぐために,軟質材と硬質材との組合せによ

ってネック及びボディが曲がる機構とし,適切な圧で歯を磨けるように設計した。 

3) 安全性評価は外部の研究機関に試験を依頼した。 

− 形状試作品による試験を行い,その結果を踏まえ改良設計を行い再度試験を行った。その結果,

目標以上の数値をクリアし,刺傷の可能性は低い結果が得られた。 

4) 試作品を用いて,モニターアンケートを行ったところ,“ヘッド部分が小さいので裏及び奥が磨き

やすかった”,“ブラシ部分が曲がり,仕上げ磨きがしやすかった”,“仕上げのときに嫌がられる
ことがあったが,適度な力で磨けるので良かった”との結果を得た。安全性に加えて,歯磨きし
やすく,歯磨き圧も強すぎないことが分かった。 

5.4 利用者へ
の情報の伝達 

1) 乳幼児を対象とする製品のため,ケアラー向けに製品パッケージに次の内容を記載した。 

“歯ブラシによるのど突き事故の危険性が認識でき,曲がって事故を予防する機能”,“図を用

い歯及び歯ぐきにやさしい製品特徴(機能)”を説明した。 

2) 製品情報に簡単にアクセスできるようパッケージにQRコードを記載した。 

5.5 事故情報
及びユーザー
ニーズの蓄積
並びに活用 

1) 製品パッケージに,製造・販売会社ホームページ(製品情報含む。)のQRコードを記載した。 
2) ホームページには,問合せ電話番号,メールでの問合せ先が明記されている。 

− 利用者からの事故情報は,“お客様の声”として製造・販売会社に集約される。 
− “お客様の声”は,デザイン開発会社に報告され対応が検討される。 
− 検討は,デザイン・性能・素材の特性・製造技術・適切な価格等の観点で行われる。 

B.1.2 事例2:屋外遊具 

箇条5に示し
た四つの活動 

活動内容 

5.2 事故情報
の確認及び対
処 

1) 当社製品のヒヤリハット情報は,“ヒヤリハット報告書”として各エリアから,担当部門に集めら

れ,重要な情報を選択し,“安全推進会議”で,その内容が報告・検討される。 

2) 当社製品の事故情報は,“事故報告書”の様式で担当部門に報告され,その対応は“事故対応手順

書”に従って処理される。 
(事例) 

挟まり事故への対応について,自社で検証器具等を使用し検証を行った結果,これまでのX mm

以内という基準を,Y mm以下とし自社基準を改訂した。 

3) 地方で発生した一般事故情報(地方紙情報)は,各エリアから担当部門に報告され,担当部門は

事故情報を収集し,自社製品の事故の可能性など分析・確認を行う。 

4) 一般事故情報は担当部門が2か月に1度程度,又は事故発生の都度,次の確認を行っている。 

“インターネット”,“全国紙”,“事故情報データバンクシステム(消費者庁)”,“事故情報デー

タベース(独立行政法人製品評価技術基盤機構)”,“学校事故事例検索データベース”,“キッズデ
ザインの輪(経済産業省/国立研究開発法人産業技術総合研究所)”,“日常生活における事故情報
(東京消防庁)” 

5) 製品開発に適用される基準は,“遊具安全基準”である。この基準は,国土交通省の“都市公園に

おける遊具の安全確保に関する指針”をベースとし,独自に自社基準として制定された。 

− 子どもの年齢別に専用の計測器具を使用し,身体の通り抜け,挟み込みなどの計測を行い,自

社独自の基準値のデータを活用している。 

− この基準改訂の際には,改訂の引き金となった情報を記載し,基準が変更された理由を分かり

やすく表現したものである。 

background image

16 

Z 8150:2017  

箇条5に示し
た四つの活動 

活動内容 

5.3 設計・開
発の評価又は
検証及び改善 

1) 製品開発は,“製品開発管理表”で計画され,各段階で定められた会議体・関係部署・関係者等で

行っている。 

2) 新商品開発時は,自社基準である“遊具安全基準”に基づき設計され,内外の事故情報並びにヒ

ヤリハットに基づいて作成された“安全性適合チェックリスト(新商品−事故事例からの安全性
重点項目)”を用い,最終的に安全面のチェックを実施している。 

3) 評価又は検証は,試作品を作成し,対象年齢の子ども達を対象に,モニタリングを行っている。 

(事例) 

組み合わされた複合的な製品のモニタリングの結果,“遊具安全基準”を用いた設計基準値(寸

法)では,“つまずいて転んでしまう”危険性があったため,寸法を変更した。また,転んでしま
った際,別の部材に衝突する可能性があるので,その部材との離隔距離を大きくした。 

5.4 利用者へ
の情報の伝達 

1) 子ども 

使用者である幼児に対しても,遊具の登っては危険な箇所に“ストップを意味する手のマーク”

及び“のぼらないで”という文字のシールにて注意喚起を行っている。 

2) ケアラー 

製品には,モニターした内容も反映されコンパクトに分かりやすく表現された“取扱説明書”

が用意され,引渡し時に説明をしている。“取扱説明書”には,安全の注意事項(イラスト付き),
メンテナンス方法,対象年齢,標準使用期間,安全エリア,遊具日常点検表,保証・アフターサ
ービス,問合せ先(故障,修理)などを記載している。 

5.5 事故情報
及びユーザー
ニーズの蓄積
並びに活用 

1) 利用者からの連絡窓口は,本社及び全国の支店であり,それらの情報は“取扱説明書”,“ガイド

ブック”,“ウェブサイト”などで明確にしている。 

2) 自社製品の利用者からの情報は“ヒヤリハット報告書”又は“事故報告書”という様式で担当部

門に集約される。 

− “ヒヤリハット報告書”は,各エリアから,担当部門に集められ,重要な情報を選択し,“安全

推進会議”で,その内容が報告・検討される。 

− 事故情報は,“事故報告書”の様式で担当部門に報告され,その対応は“事故対応手順書”に従

って処理される。 

3) 自社製品の“ヒヤリハット情報”,“事故情報”は,社内イントラで共有している。 

background image

17 

Z 8150:2017  

B.1.3 事例3:文具(マーキングペン) 

箇条5に示し
た四つの活動 

活動内容 

5.2 事故情報
の確認及び対
処 

1) 当社では,新商品開発の際,品質管理部門で収集・管理されたクレーム及び事故情報の確認を行

っている。収集・管理された情報には,“営業担当に寄せられた情報”及び“商品情報ウェブから
寄せられた“お客様の声”情報”がある。また,日常的には,毎週“品質情報連絡会議”を行い,
関係者間の情報共有を図っている。 

2) 営業担当には,保育園及び幼稚園の先生方から,年齢の異なる園児が商品を使用した状況及び商

品に対する改善の要望などが寄せられる。それらは,商品の改善又は新商品の企画に役立ててい
る。 

3) 自社以外の事故情報について,キッズデザインの輪など複数の資料を検索したところ,誤飲・誤

えん(嚥)事故が発生している現状を把握することができた。 

− 事故の多くは軽症であったが,中には,喉に詰まって窒息する重篤なものもあった。 
− 誤飲・誤えん(嚥)事故は,床等に転がっている物が何であるかを理解できない乳幼児に多く

みられた。 

4) 自社で作成した資料“年齢区分別子どもの心理特性・行動特性及びそれに起因する事故・傷害情

報”から,誤飲・誤えん(嚥)事故は,次の子どもの特性に起因していることが分かった。 

− 子どもは5〜6か月になるとつかんだ物を口に持っていくようになる。 
− 乳幼児は成人に比べて呼吸機能が未熟で,成人のように長い時間息をこらえることができない。 
− 一緒に遊んでいる小さな弟及び妹が,兄姉の玩具などを口にすることがある。 

5) リスクの見積りに当たっては,次を考慮した。 

− 危害の度合い 

・ 窒息に至ると命の危険がある。 

− ハザードへの暴露 

・ 接触の可能性あり,1日数回の頻度,数十分〜数時間の経過時間 

− 危険事象の発生 

・ 類似事故事例として,ビー玉,おはじき,粉ミルク小分け容器のキャップなど,製品キャッ

プと類似の大きさのもので事故事例がある。 

・ 保育園でも類似の大きさのものについてヒヤリハット報告がみられた。 

− 危害の回避又は制限の可能性 

・ 対象年齢以下の子どもたちが暴露される可能性がある。 

6) 事故情報を踏まえ,次の2点を主な要求仕様とした。 

− マーキングペンのJISに基づいた空気流量を確保し,飲み込んでも窒息しないようにする。 
− キャップに突起を付け,転がりにくく,紛失しにくいようにした。 

background image

18 

Z 8150:2017  

箇条5に示し
た四つの活動 

活動内容 

5.3 設計・開
発の評価又は
検証及び改善 

1) 設計・開発においては,JIS,ST基準及び自社基準を総合的に活用している。 
2) 企画・意匠は,自社で行い,設計・製造は外部に委託している。 
3) 企画,設計,試作評価等の各段階で自社で作成した,品質チェックシートを用いて仕様の安全性

を確認している。 

4) デザインレビューは,試作品を用いて,当社及び外部委託先が一緒に行っている。また,試作品

の品質については,第三者機関による検査も行っている。 

5) 設計上の安全対策は次のとおりである。 

− マーキングペンのJISの空気流量の基準に基づいて,通気孔の大きさ及び数を設計し,飲み込

んでも窒息の危険がないようにした。空気流量の確認は第三者機関で行った。 

− キャップに窒息防止の孔をあけることで,ケアラーに,子どもの誤飲・誤えん(嚥)事故の可

能性を認識してもらい,誤飲・誤えん(嚥)に対しての注意及び子どもの指導にもつながるよ
うにした。 

− キャップの突起の形状及び大きさは,試作品を用いて検証し,転がりにくいように設計した。 
− 突起は,当たってもけがをすることがないよう,丸みのあるデザインにした。 
− キャップは閉めると“カチッ”と音が出て,子ども自身がきちんと蓋がしまったか確認できる

ようにした。これによって,キャップ紛失の減少にもつなげることにした。 

6) 妥当性確認は,自社のラボラトリー(及び保育園・幼稚園)で行っている。 

− 試作品を対象年齢の子どもたちに使ってもらい,行動観察等を行い確認している。 

5.4 利用者へ
の情報の伝達 

1) 乳幼児を対象とする製品のため,取扱い説明はケアラー向けだけとした。 

− パッケージに,ケアラー向けに“キャップを口に入れたりしないようにご指導ください”と記

載した。 

− 機能説明は,カタログに記載した。 

5.5 事故情報
及びユーザー
ニーズの蓄積
並びに活用 

1) 当社の製品は,主に保育園・幼稚園に販売しており,クレーム,商品に対する要望などは,営業

担当者が保育園・幼稚園から入手している。 

2) また個人で購入された方からのクレーム及び事故情報は,当社の商品情報が掲載されているウェ

ブサイトに設けられた“お客様の声”から寄せられる。 

3) クレームは,品質管理部で蓄積及び管理している。 

− 頻度又は危険性の高いものついては,製造会社にもフィードバックし改善している。 
− 保育園・幼稚園から寄せられた情報は,品質手順書を基に,週1回,関連部署が集まった品質

会議で共有し活用している。 

background image

19 

Z 8150:2017  

附属書C 
(参考) 

子どもの事故事例分析のためのデータベース等 

C.1 子どもの事故事例分析のためのデータベース 

子どもの事故情報の検索に当たって参照できるデータベースの例を表C.1に示す。 

表C.1−データベースの例 

名称等 

情報提供元 

登録 
件数 

登録項目 

更新 
頻度 

特徴 

利用
方法 

URL 

1 Injury Alert 

(傷害速報) 

公益社団法人日本
小児科学会 

65 年齢,性別,体重,身長,傷害の種

類,原因対象物,臨床診断名,直接
医療費,発生場所,周囲の人・状況,
発生年月日・時刻,発生時の詳しい
様子と経緯,治療経過と予後,Full 
Text,Follow-up報告,類似報告 

随時 
(2008 
年〜) 

小児医療関係者が,傷害の事
実をできる限り正確に記載し
た報告。 

自由 
閲覧 

https://www.jpeds.or.jp/ 
modules/injuryalert/ 

2 学校事故事例

検索データベ
ース 

独立行政法人日本
スポーツ振興セン
ター 

6079 死亡・障害,死亡・障害の種類,被

災学校種別,学年,性別,場合別1・
2(学校生活の中のどの時間か),競
技種目,通学方法,発生場所1・2,
遊具等,災害発生時の状況 

年1回 
(2005 
年度〜)

独立行政法人日本スポーツ振
興センターが行っている災害
共済給付業務において給付し
た死亡・障害例の検索が可能。 

自由 
閲覧 

http://www.jpnsport.go.jp/ 
anzen/anzen̲school/tabid/ 
822/Default.aspx 

3 キッズデザイ

ンの輪“収集
した事故デー
タの検索” 

経済産業省/国立
研究開発法人産業
技術総合研究所 

22322 事故の種類,傷害の種類,傷害の部

位,事故発生日時(時),事故発生
日時(月),年齢,性別,関わった
製品(モノ),事故の詳細,事故が
起きた場所,直前の行動,治療状況,
発達段階 

更新な
し 

国立成育医療研究センターで
2006年11月〜2013年3月ま
でに収集された事故データの
検索が可能。検索結果として
件数のグラフ及び詳細情報が
表示される。 

自由 
閲覧 

http://www.kd-wa-meti.com/
statistics.html 

4

Z

 8

1

5

0

2

0

1

7

background image

20 

Z 8150:2017  

表C.1−データベースの例(続き) 

名称等 

情報提供元 

登録 
件数 

登録項目 

更新 
頻度 

特徴 

利用
方法 

URL 

4 事故情報デー

タバンクシス
テム 

消費者庁 

187385 事故情報ID,種別(事故,危険),

商品分類,商品など名称,事故内容,
傷病内容,傷病程度,登録年月日,
発生年月日,発生場所(住所),発
生場所(施設用途),発生場所(部
屋等),被害者人数,被害者年代,
被害者性別 

随時 
(2009 
年9月
〜) 

関係行政機関が保有する生
命・身体に係る消費生活上の
事故の情報を一元的に集約し
たデータベース。“事故情報を
閲覧する”では,フリーワー
ド検索,事故内容・発生場所・
被害者年代等で検索可能。事
故情報トピックスでは,注目
事故情報等が閲覧できる。 

自由 
閲覧 

http://www.jikojoho.go.jp/ 
ai̲national/ 

5 事故情報デー

タベース 

独立行政法人製品
評価技術基盤機構 

51138 事故発生日,年度番号,品目,品名,

型式・機種,製造・輸入業者,製品
使用期間,事故通知者,事故通知内
容,被害の種類,事故原因,原因区
分コード,再発防止措置 

随時 
(1996 
年度〜)

“事故情報の検索”で,キー
ワード,検索項目,選択肢等
の検索条件により絞り込み検
索ができる。他に社告・リコ
ール情報データベースも掲載
されており,“リコール情報の
検索”で事故情報の検索と同
様に検索ができる。 

自由 
閲覧 

事故情報データベース 
http://www.jiko.nite.go.jp/ 
php/jiko/search/index.php 
社告・リコール情報データ
ベース 
http://www.jiko.nite.go.jp/ 
php/shakoku/search/index. 
php 

6 製品安全ガイ

ド“事故情報
検索” 

経済産業省/消費
者庁 

5592 管理番号,事故発生日,報告書受理

日,製品名,機種・型式,事業者名,
事故発生場所,人的被害概要,事故
の内容,事故の原因,再発防止策 

随時 
(2007 
年〜) 

消費生活用製品安全法第35条
第1項に基づいて事業者から
報告があった事故のうち,プ
レス発表を行った製品事故を
検索できる。 

自由 
閲覧 

http://www.meti.go.jp/ 
product̲safety/cgi/search 

7 キッズデザイ

ンデータベー
ス 

国立研究開発法人
産業技術総合研究
所/特定非営利活
動法人キッズデザ
イン協議会 

33451 事故の種類,怪我の種類,怪我の部

位,事故発生年月,事故発生時間帯,
年齢,性別,関わった製品(モノ),
事故の詳細,事故が起きた場所,直
前の行動,治療状況,発達段階 

年1回 
(2006 
年11月
〜) 

“キッズデザインの輪”内の
データを拡充し,検索機能及
びグラフィック・インターフ
ェイスを向上させたデータベ
ース。“子どもの身体寸法”デ
ータも収録。 

会員 
登録 
制 

https://kidsdesigndb.jp/ 

注記1 表内の情報は右記括弧内を除いて2016年12月9日現在のもの(5. 事故情報データベースの件数は2016年12月20日現在のもの,6. 製品安全ガイド“事故

情報検索”の件数は2016年10月31日現在のもの。)。 

注記2 1. Injury Alert(傷害速報)には,登録件数65件のほか,類似例も多数掲載されている。 

4

Z

 8

1

5

0

2

0

1

7

background image

21 

Z 8150:2017  

表C.1−データベースの例(続き) 

注記3 4. 事故情報データバンクシステムの登録件数187 385件の内,0歳〜19歳の情報は7 414件(2016年12月9日現在)。 

登録されている関係行政機関:消費者庁/独立行政法人国民生活センター・消費生活センター/日本司法支援センター/厚生労働省/農林水産省/消費者

庁・経済産業省・農林水産省/独立行政法人製品評価技術基盤機構/国土交通省/国土交通省国土技術政策総合研究所/独立行政法人日本スポーツ振興セン
ター 

注記4 5. 事故情報データベースにおいて,子ども/子供/こどものいずれかを含むとして検索した結果は1 015件(2016年12月9日現在)。 
注記5 7. キッズデザインデータベースは,特定非営利活動法人キッズデザイン協議会の企業会員だけが利用可能。 

C.2 子どもの事故分析のためのウェブサイト 

商品テスト情報,体験談及びヒヤリハット情報など,子どもの事故に関連して参考になるウェブサイトの例を表C.2に示す。 

表C.2−ウェブサイトの例 

ウェブサイト

の名称等 

情報提供元 

登録 
件数 

登録項目 

更新 
頻度 

特徴 

利用
方法 

URL 

子どもの事故 

独立行政法人国
民生活センター 

145 

国民生活センター発表情報,商品テス
ト結果,見守り情報,相談事例と解決
結果など 
【検索機能なし:国民生活センターか
ら発表・公表された情報を集約したサ
イト】 

随時 
(2010 
年8月
〜) 

国民生活センターウェブサイ
ト内の“注目テーマ>子どもの
事故”で,子どもの危害・危険
情報,商品テスト情報などが閲
覧できる。 

自由 
閲覧 

http://www.kokusen.go.jp/ 
soudan̲now/data/kodomo̲ 
jiko.html 

東京くらし
WEB“子供の
安全” 

東京都生活文化
局消費生活部 

30 

商品等の安全に関するテスト,ヒヤ
リ・ハット調査,東京都商品等安全対
策協議会 
【検索機能なし:東京都生活文化局が
公表した情報を集約したサイト】 

随時 

東京くらしWEB内の“お子さ
まがいるご家庭>子供の安全”
に,東京都による調査,注意喚
起の情報がレポート形式で掲
載されている。 

自由 
閲覧 

http://www.shouhiseikatu. 
metro.tokyo.jp/okosama/ 
anzen.html 

日常生活にお
ける事故情報 

東京消防庁 

43 

“日常生活における事故”,“STOPシ
リーズ”,“季節の事故”,“子どもの事
故” 
 
【検索機能なし:東京消防庁の広報サ
イトで公開された情報を集約したサ
イト】 

随時 

東京消防庁ウェブサイト内の
“安全・安心情報>日常生活に
おける事故情報”で“子どもの事
故”に関する救急搬送等のデー
タ,事例がレポート形式で閲覧
できる。“子どもの事故”以外
のカテゴリーにも,子どもに関
連した情報が掲載されている。 

自由 
閲覧 

http://www.tfd.metro.tokyo. 
jp/lfe/topics/nichijou.html 

注記 表内の情報は全て2016年12月9日現在のもの。 

4

Z

 8

1

5

0

2

0

1

7

22 

Z 8150:2017  

附属書D 
(参考) 

子どもの安全性確保のための製品の設計に資するデータ及び知見 

D.1 一般 

子どもの事故防止のための対処方法の検討に当たって,参照することが有効なデータ及び知見の例を次

に示す。 

D.2 子どもの身体寸法 

子どもの身体寸法データには次のようなものがある。 

D.2.1 子どもの身体寸法データベース 

2005年度〜2008年度に一般社団法人日本機械工業連合会からの委託を受けて,一般社団法人人間生活工

学研究センターが計測した結果をまとめたもの。日本人の満年齢0歳〜12歳までの児童(男女)の身体寸

法40項目及び体重,握力のデータが収録されている。 

詳細は次のウェブサイトを参照。 

https://www.hql.jp/database/cat/size/children 

D.2.2 子どもの身体寸法に関するデータを掲載しているウェブサイト 

データが継続的に掲載されているウェブサイトについては,次の二つがある。 

a) 国民健康・栄養調査 厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kenkou̲eiyou̲chousa.html 

身体寸法に関しては,身長,体重,腹囲の3項目 

b) 学校保健統計調査 文部科学省 http://www.mext.go.jp/b̲menu/toukei/chousa05/hoken/1268826.htm 

身体寸法に関しては,身長,体重,座高(平成27年まで)の3項目 

D.3 キッズデザイン製品開発支援事業 

経済産業省“平成22年度〜平成24年度 キッズデザイン製品開発支援事業”における共創プロジェク

ト・基盤整備プロジェクトでは,1)子どもへの安全性に配慮された製品(キッズデザイン製品)の開発又

は基準策定等のニーズをもった企業・業界団体,2)分析技術又は事故関連データをもった団体,3)研究

機関・データ収集機関などが協働し,キッズデザイン製品開発・基準策定等に必要なデータ・分析技術が

整備された。その成果として,他の企業又は業界内外で共有・利用できるような一般的な知見(表D.1)

が公開されている。 

詳細は次のウェブサイトを参照。 

http://www.kd-wa-meti.com/data.html 

background image

23 

Z 8150:2017  

表D.1−プロジェクト一覧 

平成22年度〜平成24年度 キッズデザイン製品開発支援事業内のプロジェクト一覧 



24

度 

角に関する衝突安全性評価方法 

切傷・裂傷に対する安全性評価方法の確立及び幼児の操作性に関する研究(レバー状操作部) 

子ども向け遊戯施設における空気膜遊具の安全性に関する研究 

パッケージ製品設計における子どもの身体特性の把握 

子どものいる住宅の生活実態調査 

ブレーキの急制動反応時間と要因関係との明確化 

子供の行動スケール調査による危険の回避 

商業施設における事故情報収集手法の効率化 

子どもに関する保険事故情報の分析および活用 

子どもの傷害予防のための包括的コミュニケーション・デザイン 

情報活用及び設計支援ツール開発 

設備・製品の差異と子どもの行動 



23

度 

家電製品の設置や利用におけるヒューマンエラーの発生機序解明と子供がいる家庭での具体的な事故防止ア
イデアに基づくエラー低減策の研究 

人間工学に基づいた危険が伝わるコミュニケーション・デザイン 

子ども用文具の安全性確保のためのガイドラインの確立 

子育て住宅の生活実態・生活用品調査及び子どもの行動特性調査 

角の性状に関する衝突安全性評価方法の研究 

子どもの自転車運転走行中の衝突事故の削減の為の基礎情報整備 

子乗せ自転車転倒による子供事故削減の為の基盤情報整備 

デザイン・設計支援における支援ツール開発に関する調査とツール開発検討 

家庭における情報機器の接触機会の調査 

ユーティリティーライターの新しいチャイルドレジスタンス機構を実現するための基盤データづくり 

引戸の重量及び取手形状と,子供の開閉可能領域の検証 

商業施設における事故情報収集手法の効率化 

空気膜遊具の安全性に関する研究 

ケガ防止を目的とした衣服設計のための基礎的カラダデータに関する調査 

浴槽用浮き輪による溺水事故防止及び,吸い込まれ事故の防止[プール施設の吸排水口,入浴施設の排(環)
水口,など] 

幼児のくぐり抜けに対する頭上衝突事故予防と設計ガイドライン作成に関する研究 

製品開発時における子どもの危険源発見と製品開発・設計プロセスへの反映に関する研究 

屋外遊具 床面材の滑りに対する検証 

チャイルドレジスタンス・パッケージ開発における設計指標および評価基準の確立 

子どもの事故を未然に防ぐための危険行動因子に関する調査 

切傷のメカニズム解明 

子どもの筋力データの蓄積 

ドアの速度と重量による衝撃の基礎的研究 

大人向け健康遊具の子どもに対する安全性評価 

屋外用キッズ・セーフティゲートの開発に関する研究 

建物や家具が作る段差に対する乳幼児の行動特性の運動発達的変化 

乳幼児期の食器およびその周辺対象に対する行動特性の抽出 

background image

24 

Z 8150:2017  

表D.1−プロジェクト一覧(続き) 

平成22年度〜平成24年度 キッズデザイン製品開発支援事業内のプロジェクト一覧 



22

度 

“チャイルドロック”設計のための子どもの操作能力の調査 

家電における,安全安心情報を取り込んだ開発の“しくみ”構築と製品化研究 

子育て賃貸住宅評価基準の設定 

子ども用イスの安全性及び適合性の評価手法の確立 

自転車の挟まれ事故(スポーク外傷)の防止に関わる子供の身体データ及び動作の評価,解析 

自転車走行中における転倒事故防止に関わる子どもの身体データ及び動作の評価,解析 

自転車停止中における転倒事故防止に関わる子供の身体データ及び動作の評価,解析 

散歩車(および避難車)の安全性調査 

次世代エスカレーターに向けた要素技術研究 

子供向け屋内遊戯施設における遊具の安全推進プロジェクト 

遊具の安全性を高めるための衝撃吸収特性に関する調査 

隙間・穴に対する安全基準やチェックリストの作成 

角・稜線に対する評価方法の策定及び安全基準やチェックリストの作成 

事故未然防止・商品開発時の基盤となる子どもの行動特性データの蓄積 

角等の性状に関する衝突安全性評価方法の研究 

子どもの転倒時のデータ収集と,衝撃吸収性能を備えた床における転倒衝突時の子どもへの影響についての検
証 

人間工学に基づく危険が伝わるデザイン及び注意表示のガイドラインづくり 

日本小児科学会雑誌Injury Alert事例の分析に関する研究 

保育所・幼稚園における遊具による事故の分析 

D.4 参考文献・ツール 

D.4.1 子どもの行動特性 

[1] 保育所保育指針 “第2章 子どもの発達” 厚生労働省 2008 

[2] 保育所保育指針解説書 “第2章 子どもの発達” 厚生労働省 2008 

D.4.2 子どもの身体寸法・行動特性等の測定方法 

[3] 子ども計測ハンドブック 持丸正明,西田佳史,河内まき子,山中龍宏 朝倉書店 2013 

D.4.3 子どもの身体寸法に基づいた設計支援ツール 

[4] 子どものからだ図鑑 

[5] 子どものからだパスデータ集 

[6] 全身の原寸大テンプレート 1歳・3歳・6歳 2Dキッズモデル 

[7] 全身の原寸大マネキン 1歳・3歳・6歳 3Dキッズモデル 

[4]〜[7] 国立研究開発法人産業技術総合研究所/公益社団法人日本インダストリアルデザイナー協会/

特定非営利活動法人キッズデザイン協議会 2013 

D.4.4 リスクアセスメント 

[8] 消費生活用製品向けリスクアセスメントのハンドブック 第1版 経済産業省 2010 

[9] リスクアセスメント・ハンドブック 実務編 経済産業省 2011 

D.4.5 関連規格・基準 

[10] ISO 8124-1:2014,Safety of toys−Part 1: Safety aspects related to mechanical and physical properties 

[11] ISO 8124-2:2014,Safety of toys−Part 2: Flammability 

[12] ISO 8124-3:2010,Safety of toys−Part 3: Migration of certain elements 

25 

Z 8150:2017  

[13] ISO 8124-4:2014,Safety of toys−Part 4: Swings, slides and similar activity toys for indoor and outdoor family 

domestic use 

[14] ISO 8124-5:2015,Safety of toys−Part 5: Determination of total concentration of certain elements in toys 

[15] ISO 8124-6:2014,Safety of toys−Part 6: Certain phthalate esters in toys and children's products 

[16] ISO 8124-7:2015,Safety of toys−Part 7: Requirements and test methods for finger paints 

[17] JIS S 6060:2017 筆記及びマーキング用具−窒息のリスクを軽減するためのキャップ仕様 

[18] 都市公園における遊具の安全確保に関する指針 改訂第2版 国土交通省 2014 

[19] 遊具の安全に関する規準 JPFA-SP-S:2014 一般社団法人日本公園施設業協会 2014 

[20] 玩具安全基準書(ST-2016) 一般社団法人日本玩具協会 2016 

[21] 子育てに配慮した住宅のガイドライン 東京都都市整備局 2016 

background image

26 

Z 8150:2017  

附属書E 

(参考) 

危害の軽減及び防止の対策事例 

E.1 危害の軽減及び防止の対策事例 

事故及びヒヤリハットの例及び製品に施された対策の例を表E.1に示す。 

なお,ここに挙げた対策例によって,それぞれの製品において全てのハザードが除去され,リスクが十分低減されているとは限らない。また,これ

ら対策は一例であり,製品の仕様又は機能,使用状況によって様々な対策を考えることが重要である。 

表E.1−危害の軽減及び防止の対策を施した製品例 

事故及びヒヤリハットの例 

JIS Z 8050:2016における記述 

危害の軽減及び 

防止の対策 

製品例(概要) 

子どもに関連 
するハザード 

リスクを回避又は 

低減する戦略 

自宅の室内でドアに小指を挟
み,皮膚がむけ変色。 

隙間及び開口部
“7.2.1” 

隙間ができないように
する。 

ステップ1:本質
的安全設計 

【ドア:室内用】 
ちょうつがい(蝶番)をやめ,隙間を大幅に縮小した。 

育ち盛りの子どもの人
体計測データと関連付
けて,隙間及び開口部の
寸法を規定する。 

ステップ2:ガー
ド及び保護装置 

【ドア:室内用】 
足元の指挟みに対しては,子どもの身長及びドア開閉の立ち位
置の関係を考慮し,足元に樹脂カバーを付けた。 

外出先から母親と一緒に帰
宅。子どもが植木に気をとら
れていたため,母親が先に室
内に入ろうとしたところ,子
どもがドアのちょうつがい
(蝶番)側に指を挟んだ。ド
アが閉まる途中で,子どもが
泣き出し気づいた。 

隙間及び開口部
“7.2.1” 

隙間ができないように
する。 

ステップ1:本質
的安全設計 

【ドア:玄関用】 
扉つり方式を従来の丁番つりから中心つりにし,つ(吊)り元
側の枠形状に凸形状を設けることで,扉表面と枠との隙間を小
さくした。 

育ち盛りの子どもの人
体計測データと関連付
けて,隙間及び開口部の
寸法を規定する。 

ステップ2:ガー
ド及び保護装置 

【ドア:玄関用】 
室内側は,ゴムを設けることで指を挟まない隙間を確保した。 

発射体及び可動
又は回転体
“7.2.6” 

可動部の質量又は速度
を制限する。 

【ドア:玄関用】 
玄関という特徴から風等で急にドアが閉まった場合もゆっくり
と閉まる機能を付加した。 

4

Z

 8

1

5

0

2

0

1

7

background image

27 

Z 8150:2017  

表E.1−危害の軽減及び防止の対策を施した製品例(続き) 

事故及びヒヤリハットの例 

JIS Z 8050:2016における記述 

危害の軽減及び 

防止の対策 

製品例(概要) 

子どもに関連 
するハザード 

リスクを回避又は 

低減する戦略 

レストランでドアのちょうつ
がい(蝶番)側にくすり指を
挟んだ。 

隙間及び開口部
“7.2.1” 

隙間ができないように
する。 

ステップ1:本質
的安全設計 

【ドア:ビルエントランス用】 
開閉時に発生するつ(吊)り元側の枠と扉の間の隙間をなくし
た。 

遊具の階段を降りていると
き,つまづいて転び,支柱の
ボルトに額をぶつけた。 

突起部及び突出
部“7.2.2” 

不必要な突起部を設け
ない。 

ステップ1:本質
的安全設計 

【遊具:鉄棒】 
構造上必要なボルト・ナット類でも,直接衝突のおそれがある
場合は,外部に突出しない構造とした。 

ステップ2:ガー
ド及び保護装置 

【屋外遊具】 
金属が用いられる屋外遊具において,子どもが潜り込む裏側な
ど,避けられない突起部又は鋭利な角を保護するために,耐摩
耗性及び耐食性に優れたゴムコーティングを施した部品(部材)
を使用した。 

キッチンの引き出しにしまっ
てあった果物ナイフを取り出
し遊んでいたところ,指を切
った。 

鋭利なエッジ及
びせん(尖)端
部“7.2.3” 

ペン,鉛筆及び編み針の
ようなとが(尖)った物
体への,低年齢の子ども
の接触を制限する。 

ステップ1:本質
的安全設計 

【システムキッチン】 
システムキッチンの包丁差しユニットにチャイルドロック機構
を設けた。ロックのON/OFFをする部品は,幼児の身体寸法に
基づき,扉内側の幼児の手が届きにくい位置に設置した。 

ジューサーミキサーで遊んで
いて,手を入れたまま電源を
入れてしまい,指を切った。 

鋭利なエッジ及
びせん(尖)端
部“7.2.3” 

ペン,鉛筆及び編み針の
ようなとが(尖)った物
体への,低年齢の子ども
の接触を制限する。 

ステップ1:本質
的安全設計 

【ミキサー】 
蓋を閉めなければ回転しない構造にするとともに,保護スイッ
チのガード機能などを付けた。 

歯ブラシをくわえたまま室内
を走っていて転倒し,口腔内
に歯ブラシが刺さった。 

鋭利なエッジ及
びせん(尖)端
部“7.2.3” 

裂傷のリスクを低減す
るために,露出したエッ
ジをなくすか,ガードす
るか,丸みを付ける。 

ステップ1:本質
的安全設計 

【歯ブラシ①】 
力が加わるとネック及びボディが曲がる歯ブラシ。歯及び歯ぐ
きを傷つけずにしっかりと汚れが落とせるブラシ圧及び喉突き
事故に関する実証・測定データに基づいた。 

ステップ2:ガー
ド及び保護装置 

【歯ブラシ②】 
歯ブラシのヘッドとグリップとの間に,丸いつば状の安全ガー
ドを付けた。 

自宅リビングの窓を開けたと
ころ,風が吹き抜けてドアが
勢いよく閉まり,指を挟んだ。 

発射体及び可動
又は回転体
“7.2.6” 

製品の動きを停止する。 ステップ1:本質

的安全設計 

【ドアストッパー:室内用】 
ドアが床の受けの位置まで開くと,自動的にドアストッパーの
ロックがかかる機構にした。 

4

Z

 8

1

5

0

2

0

1

7

background image

28 

Z 8150:2017  

表E.1−危害の軽減及び防止の対策を施した製品例(続き) 

事故及びヒヤリハットの例 

JIS Z 8050:2016における記述 

危害の軽減及び 

防止の対策 

製品例(概要) 

子どもに関連 
するハザード 

リスクを回避又は 

低減する戦略 

店に勢いよく駆け込もうとし
たところ,入り口の自動ドア
に気づかず,ガラス面にぶつ
かりガラスが割れた。 

発射体及び可動
又は回転体
“7.2.6” 

− 

ステップ3:使用
上の情報 

【自動ドア:ガラス面注意ステッカー】 
目線の高さ及び距離によって表示が切り替わるチェンジングス
テッカーを用いて,子ども向け,大人向けの注意喚起を,それ
ぞれにとって分かりやすい絵柄及び文字遣いによって1枚の注
意ステッカー上に表示した。 

10 2階ベランダの柵の横さんを

足がかりにしてよじ登り,庭
に転落した。 

落下及びその他
の衝突による傷
害“7.3” 

バルコニーに効果的な
対策をする。 

ステップ1:本質
的安全設計 

【建材:ベランダ用アルミ手すり】 
よじ登り対策として,幼児が足をかけてよじ登ることが可能と
される高さまで,横さんの格子間の隙間を狭くするためのフィ
ンを付けた。隙間の寸法設定に当たっては実際に幼児による検
証を行い安全性を確認した。 

11 自宅のリビングで兄と追いか

けっこをしていて転倒し,床
に肩を激しく打ち付けた。 

落下及びその他
の衝突による傷
害“7.3” 

衝撃吸収性のある表面
材料を取り付ける。 

ステップ1:本質
的安全設計 

【建材:住宅用床材】 
子どもが転倒した際の衝突速度及び衝撃度を調査・検証するこ
とで独自の基準を設け,衝撃吸収効果を高めるために特殊緩衝
材を使用した。 

12 ジャングルジムで遊んでい

て,足を滑らせて転落した。
地面に落ちた際に手首を強打
した。 

落下及びその他
の衝突による傷
害“7.3” 

適切な安全用具及び環
境を設計する。 

ステップ2:ガー
ド及び保護装置 

【建材:インターロッキング】 
露出した土間コンクリートの上に,ゴムチップを使用したイン
ターロッキング状の素材を敷設した。クッション性があり,転
倒,転落時の衝撃を緩和した。また,透水性もあり,雨が降っ
ても滑りにくくした。 

13 リビングの出窓を開けた勢い

で,コンクリートの上に転落
した。 

落下及びその他
の衝突による傷
害“7.3” 

建物には,窓の防護物及
びロック装置を取り付
ける。 

ステップ1:本質
的安全設計 

【建材:住宅窓用オペレーターハンドル】 
外開き窓の開閉操作部に回転式構造のハンドルを採用。握って
押し開く従来のハンドルに比べ,窓から外に身を乗り出す必要
をなくした。 

14 母親がシャンプーをしている

とき,子どもは洗い場にいた
が,バシャという音がして浴
槽を見ると,子どもが沈んで
いた。 

溺水のハザード
“7.4” 

しっかりと注意して見
守ることが容易なもの
となるように,見通しの
よい水場環境を設計す
る。 

ステップ1:本質
的安全設計 

【バスルーム】 
子どもを見守りながら親が体又は頭を洗えるように,シャワー
ヘッドの設置位置を壁面から変更した。手元で吐止水できるシ
ャワーヘッドを組み合わせた移動可能なテーブルを新たに設け
た。 

4

Z

 8

1

5

0

2

0

1

7

background image

29 

Z 8150:2017  

表E.1−危害の軽減及び防止の対策を施した製品例(続き) 

事故及びヒヤリハットの例 

JIS Z 8050:2016における記述 

危害の軽減及び 

防止の対策 

製品例(概要) 

子どもに関連 
するハザード 

リスクを回避又は 

低減する戦略 

15 かくれんぼをして遊んでい

て,宅配ボックスに隠れたと
ころ鍵がかかり出られなくな
った。 

閉じ込められた
空間“7.5.3” 

製品を内側から開けら
れるように設計する。 

ステップ1:本質
的安全設計 

【宅配ボックス】 
内部で人の動きを察知して電気錠のロックを自動的にリリース
する感知機能,電気錠が作動しない停電時に手動で解錠できる
機能を装備した。 

囲われた空間に適切な
通気を提供するための,
通気穴を設ける。 

【宅配ボックス】 
あえて密閉性をもたず内部に光及び空気が入る設計にした。 

16 ブラインドのひもが首にまき

つき,危うく窒息するところ
だった。 

首の絞付けのハ
ザード“7.6” 

ひものない窓覆いを使
用するか,危険なループ
又は危険な長さをなく
したひもを付けた窓覆
いを使用する。 

ステップ1:本質
的安全設計 

【ブラインド①】 
操作コードそのものをきょう(筐)体内部に格納し,ハンドル
の上下だけで昇降を可能にした。 
【ブラインド②】 
操作コードをループ状ではなく1本にし,首に絡まることを防
止した。 

17 カーテンのタッセルに首が引

っかかったまま,ぐったりし
ていた。 

首の絞付けのハ
ザード“7.6” 

力がかかると切れるよ
うなネックレスを作る。 

ステップ1:本質
的安全設計 

【住宅インテリア部材:タッセル】 
通常はマグネットの磁力によって連結してループ状になってい
るものが,一定の荷重が掛かるとマグネット部が外れ,首への
巻き付きを防止した。 
【住宅インテリア部材:房掛け】 
一定の荷重が掛かると房掛けのフック部分が前に倒れることで
タッセルが外れ,首への巻き付きを防いだ。 

18 テーブルの上にあったボール

ペンを持って遊んでいたが,
少しの間,目を離していたと
ころ,キャップがなくなって
いた。 

小さな物体
“7.7.1” 

子どもがものを飲み込
んでも呼吸することが
できるように,連続的な
空気の通り道を確保す
るような二次予防への
戦略を適用する。 

ステップ2:ガー
ド及び保護装置 

【文具:マーカー】 
マーカーの蓋に通気孔を設け,誤って飲み込んだ場合にも窒息
を防ぐ。また,蓋がテーブルから床に転がり落ちて,年下の幼
児が蓋を拾って口にしてしまうことを防ぐために,蓋に転がり
止めの突起を付けた。 

4

Z

 8

1

5

0

2

0

1

7

background image

30 

Z 8150:2017  

表E.1−危害の軽減及び防止の対策を施した製品例(続き) 

事故及びヒヤリハットの例 

JIS Z 8050:2016における記述 

危害の軽減及び 

防止の対策 

製品例(概要) 

子どもに関連 
するハザード 

リスクを回避又は 

低減する戦略 

19 留守番中のライターの火遊び

で火災が起きた。 

裸火“7.8.1” 

子どもにとって操作が
困難なように(すなわ
ち,チャイルドレジスタ
ンス),子ども対策をラ
イター及び他の発火源
の設計に盛り込む。 

ステップ1:本質
的安全設計 

【ライター】 
チャイルドロック機能を付加することで子どもが容易に着火で
きない構造にした。 

20 台所の炊飯器の湯気に手をか

ざしやけどを負った。 

高温流体による
ハザード“7.9.2” 

使用できる高温流体の
量を制限する。 

ステップ1:本質
的安全設計 

【IHジャー炊飯器①】 
蒸気処理に工夫を施し,低温化した上で排気をする機構を付けた。
【IHジャー炊飯器②】 
発生した蒸気を水タンクで冷却することで蒸気レス化を図っ
た。また,炊飯中に蓋オープンボタンを押しても蓋が開かない
チャイルドロック機能を装備した。 

21 ビルトイン食洗機の排気口が

子どもの顔の位置に近いた
め,高温の排気でやけどをし
そうになった。 

高温流体による
ハザード“7.9.2” 

使用できる高温流体の
量を制限する。 

ステップ1:本質
的安全設計 

【ビルトイン食器洗い乾燥機】 
排気口を正面から,上面操作部に変更するとともに,排気の低
温・低湿度化を図った(温度は体温程度まで下げた。)。 

22 はいはいをしていて,床に置

いた電気ケトルを倒してしま
い,お湯がかかってやけどを
した。 

高温流体による
ハザード“7.9.2” 

使用できる高温流体の
量を制限する。 

ステップ1:本質
的安全設計 

【電気ケトル】 
転倒流水防止構造,熱くなりにくい本体二重構造,蒸気レス構
造,空だ(焚)き防止機能,自動通電オフ機能,ロックボタン
などを採用。取っ手側が重い構造にし,転倒した際,注ぎ口が
上を向き熱湯が漏れにくくした。 

23 菓子の袋に入っていた乾燥剤

を菓子と一緒に食べてしまっ
た。 

化学的ハザード
“7.10” 

毒性の低い化学物質に
置き換えるか,当該物質
の使用量を更に少なく
する。 

ステップ1:本質
的安全設計 

【石灰乾燥剤】 
乾燥能力を損なわずに,ほとんど発熱しない石灰原料を開発し
乾燥剤に使用した[乾燥剤として食品に同こん(梱)されるこ
との多い従来の石灰乾燥剤は水と反応すると200度近い発熱を
起こす。]。 

24 病院で処方されたシロップ薬

の瓶を一人で開けて,飲んで
しまった。 

化学的ハザード
“7.10” 

適切な容器又は安全保
管施設では,チャイルド
レジスタントとなって
いる密封装置のような,
物理的障壁を使用する。 

ステップ1:本質
的安全設計 

【投薬瓶】 
子どもが容易に瓶の蓋を開けられないように,押しながら回さ
なければ開かない機能をもたせた。 

4

Z

 8

1

5

0

2

0

1

7

background image

31 

Z 8150:2017  

表E.1−危害の軽減及び防止の対策を施した製品例(続き) 

事故及びヒヤリハットの例 

JIS Z 8050:2016における記述 

危害の軽減及び 

防止の対策 

製品例(概要) 

子どもに関連 
するハザード 

リスクを回避又は 

低減する戦略 

25 コンセントの穴にヘアピンを

差し込みやけどを負った。 

感電のハザード
“7.11” 

コンセントの場合のよ
うに開口部を接近しや
すいものにする必要が
ある場合,効果的な隔離
方法を用いる。 

ステップ1:本質
的安全設計 

【コンセント】 
プラグの刃を2本同時に差し込まないと差し込めない扉を付け
た。 

注記 表中,“子どもに関連するハザード”の各事故情報に対応するセル内の“ ”内の数字は,JIS Z 8050:2016内の箇条を示している。 




























4

Z

 8

1

5

0

2

0

1

7