Z 8103:2019
(1)
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 1
2 用語の分類及び定義の構成 ································································································· 1
2.1 用語の分類 ··················································································································· 1
2.2 用語の定義の構成 ·········································································································· 1
3 用語の定義 ······················································································································ 2
3.1 一般 ···························································································································· 2
3.2 量及び単位 ··················································································································· 3
3.3 測定方法 ····················································································································· 13
3.4 トレーサビリティ及び測定標準 ······················································································· 16
3.5 誤差及び不確かさ ········································································································· 24
3.6 測定器 ························································································································ 31
3.7 測定器の特性及び性能 ··································································································· 34
3.8 統計解析 ····················································································································· 39
参考文献 ···························································································································· 42
略語表 ······························································································································· 44
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(2)
まえがき
この規格は,工業標準化法第14条によって準用する第12条第1項の規定に基づき,一般財団法人日本
規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を改正すべきとの申出があり,日本工業標準
調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本工業規格である。これによって,JIS Z 8103:2000は改
正され,この規格に置き換えられた。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
日本工業規格 JIS
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計測用語
Glossary of terms used in measurement
序文
この規格は,1959年に制定され,その後5回の改正を経て今日に至っている。前回の改正は2000年に
行われたが,その後の2007年に国際計量計測基本用語ISO/IEC Guide 99:2007が制定されるなどの国際的
な動きがあり,それらの用語を取り入れるために改正した。また,国際単位系(SI)の基本単位の定義が
2019年5月20日に改定されたが,この規格の改正は2019年の定義改定には対応していない。
なお,対応国際規格は現時点で制定されていない。
1
適用範囲
この規格は,産業における計測に関する主な用語について規定する。
2
用語の分類及び定義の構成
2.1
用語の分類
用語は,次のとおり分類する。
a) 一般
b) 量及び単位
c) 測定方法
d) トレーサビリティ及び測定標準
e) 誤差及び不確かさ
f)
測定器
g) 測定器の特性及び性能
h) 統計解析
2.2
用語の定義の構成
用語の定義の構成は,次による。
a) 一つの用語欄に二つ以上の用語が併記してある場合には,記載してある順位に従って優先的に使用す
る。
b) 用語の一部に丸括弧“( )”を付けてある場合は,丸括弧の中の文字を含めた用語と,丸括弧の中の
文字を省略した用語の二通りあることを示す。誤解の生じない場合には,丸括弧の中の文字を省略す
ることができる。
c) この規格における用語の定義は,ISO/IEC Guide 99:2007の定義と一致するものが多いが,主として理
解の容易さの観点から修正を加えたものもある。注記についても同様である。また,ISO/IEC Guide
99:2007に収録されている用語が全てこの規格に収録されているわけではない。
2
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d) 定義によっては,非定義概念(“根源語”ともいう。)を用いることが避けられないことがある。ISO/IEC
Guide 99:2007に収録されている用語では,次のものがそのような非定義概念とされている。システム
(system),構成要素(component),現象(phenomenon),物体(body),物質(substance),性質(property),
参照基準(reference),実験(experiment),検査(examination),大きさ(magnitude),材料(material),
装置(device)及び信号(signal)である。
e) 対応英語がある用語は,それを参考として記載した。ISO/IEC Guide 99:2007に収録されている用語に
ついては,対応英語の下に,括弧書きでISO/IEC Guide 99:2007の用語番号も記載した。
3
用語の定義
この規格で規定する産業における計測に関する主な用語の定義は,次のとおりとする。
3.1
一般
番号
用語
定義
対応英語(参考)
101
計測
特定の目的をもって,測定の方法及び手段を考究し,実施し,その結果を用
いて所期の目的を達成させること。
注記 “計測”の対応英語として用いられることがある“metrology”は,こ
の規格では“計測学”に対応させた。
102
計量
公的に取り決めた測定標準を基礎とする測定。
注記 “計量”の対応英語として用いられることがある“metrology”は,こ
の規格では“計測学”に対応させた。
103
測定
ある量をそれと同じ種類の量の測定単位と比較して,その量の値を実験的に
得るプロセス。
注記1 測定は,測定結果の利用目的にかなう量の記述,測定手順,その手
順に従って動作する校正された測定システムの存在が前提となる。
注記2 一般に,測定で得られる結果は単一の値ではなく,注記1に記載し
た前提の下でその量に合理的に結び付けることが可能な値全ての集
合と考える(番号501“測定結果”の注記2を参照)。
注記3 ある量と測定単位との比較は,間接測定においては,その量に関連
する他の種類の量の測定を通じて間接的に行われる。
注記4 事物の計数は次元1の量の測定単位との比較であり,測定の一種と
みなされる。
注記5 測定は,名義的性質には適用されない。
measurement
(2.1)
104
計測管理
計測の目的を効率的に達成するため,計測の活動全体を体系的に管理するこ
と。
注記 分野によっては“計量管理”ともいう。
105
計測学
測定及びその応用の科学。
注記1 計測学は,測定の不確かさの大きさ,及び適用分野に関係なく,測
定の全ての理論的及び実際的側面を含む。
注記2 “metrology”は,“測定学”,“計量学”又は“計量計測”とも訳さ
れる。
metrology
(2.2)
3
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3.2
量及び単位
番号
用語
定義
対応英語(参考)
201
量
現象,物体又は物質の性質であって,一つの数値と一つの参照基準の組合せ
として表すことができる大きさをもつもの。
注記1 包括的概念としての“量”は,次の表に示すように,具体化した概
念の幾つかの段階に分けることができる。表の左側の欄は,包括的
な“量”の下にある具体的概念を示している。それぞれは右側の欄
の個々の量を包括する概念になっている。
長さ,l 半径,r
円Aの半径,rA又はr(A)
波長,λ
ナトリウムのD線の放射波長,λD又はλ(D;Na)
エネル
ギー,E
運動エネルギ
ー,T
ある与えられた系の粒子iの運動エネルギー,
Ti
熱,Q
水の試料iの蒸発熱,Qi
電荷,Q
陽子の電荷,e
電気抵抗,R
ある与えられた回路の抵抗器iの電気抵抗,Ri
実在物Bの物質量濃度,
cB
ワイン試料iのエタノール物質量濃度,
ci(C2H5OH)
物体Bの個数濃度,CB
血液試料i中の赤血球の個数濃度,C(Erys;Bi)
ロックウェルCスケール
硬さ,HRC
鉄鋼試料iのロックウェルCスケール硬さ,
HRCi
注記2 参照基準(reference)としては,測定単位,測定手順,標準物質又
はこれらの組合せがあり得る。
注記3 量を表す記号はJIS Z 8000規格群の量及び単位に規定されている。
量を表す記号は斜体で記述する。同じ記号でも別の量を示すことが
ある。
注記4 臨床検査において量を示すためのIUPAC/IFCCの推奨形式は,“系
−成分:量の種類”である。
例 血しょう(漿)(血液)−ナトリウムイオン:ある与えられた
時間,ある与えられた人において143 mmol/Lに等しい物質量
濃度
注記5 ここでは,一つの量を一つのスカラーとして定義している。しかし,
量をその成分としてもつベクトル又はテンソルも,やはり一つの量
と考える。
注記6 “量”の概念は,包括的に,例えば,“物理学量”,“化学量”及び“生
物学量”のように,又は基本量及び組立量のように分けることがで
きる。
quantity
(1.1)
4
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番号
用語
定義
対応英語(参考)
202
(量の)種類 相互に比較可能な量に共通の性質。
注記1 “量の種類”に従って“量”を区分することはある程度し(恣)意
的である。
例1 直径,円周及び波長という量は,一般に,同じ種類の量,
すなわち長さと呼ばれる種類の量と考えられている。
例2 熱,運動エネルギー及び位置エネルギーという量は,一般
に,同じ種類の量,すなわち,エネルギーと呼ばれる種類
の量と考えられている。
注記2 ある与えられた量体系内において,同じ種類の量は同一の“量の次
元”をもつ。ただし,同一次元の量は必ずしも同じ種類であるとは
限らない。
例3 力のモーメント及びエネルギーはいずれも同一の次元をも
つ量であるが,慣習では,同じ種類の量とみなさない。同
様のことが,熱容量及びエントロピーについても,また,
事物の個数,比透磁率及び質量分率についても言える。
kind of quantity
(1.2)
203
量体系
量の集合と,これらの量を関係付ける矛盾のない方程式の集合とを合わせも
つ体系。
注記 ロックウェルCスケール硬さのような順序尺度量は,経験的関係だけ
を通して他の量と関係付けられるため,通常は量体系の一部とはみな
さない。
system of
quantities
(1.3)
204
基本量
ある与えられた量体系において,取決めによって選択される部分集合に含ま
れる量であって,当該部分集合の中のどの量も,同じ部分集合の中の他の量
で表現できないもの。
注記1 この定義でいう部分集合を,“基本量の集合”という。
例 国際量体系(ISQ)における基本量の集合は,番号206に示す。
注記2 基本量は他の基本量のべき乗の積として表現することができないた
め,“互いに独立である”と言われる。
注記3 “事物の個数”は,どの量体系でも基本量とみなすことができる。
base quantity
(1.4)
205
組立量
量体系の中で,その体系の基本量を用いて定義される量。
例 長さ及び質量を基本量としてもつ量体系では,質量密度は質量を体積
(長さの3乗)で除した商と定義される組立量である。
derived quantity
(1.5)
206
国際量体系,
ISQ
七つの基本量,すなわち,長さ,質量,時間,電流,熱力学温度,物質量及
び光度を基本量とする量体系。
注記1 この量体系は,JIS Z 8000規格群“量及び単位”を参照。
注記2 国際単位系(SI)(番号216参照)は,ISQに基づいている。
International
System of
Quantities
(1.6)
5
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番号
用語
定義
対応英語(参考)
207
(量の)次元 量の,ある量体系における基本量への依存性を,数値部分を除いて,基本量
に対応する因数のべき乗の積として表すもの。
例1 ISQでは,力の量の次元をdim F=LMT−2と表記する。
例2 同じ量体系の中で,dim ρB=ML−3は成分Bの質量濃度の量の次元で
あり,またML−3は質量密度ρ(体積質量)の量の次元でもある。
例3 自由落下の局所加速度がgである場所における長さlの振り子の周期
Tは次の式で求められる。
g
l
T
π
2
=
又は
l
C
T
)
(g
=
ただし
g
g
π
2
)
(
=
C
したがって dim C(g)=L−1/2T
注記1 因数のべき乗とは,べき指数で累乗された因数のことである。各因
数は,ある一つの基本量の次元に相当する。
注記2 基本量の次元は,大文字の直立体(ローマン体)一文字で表記する
と取り決められている。組立量の次元は,その組立量の定義に従う,
基本量の次元のべき乗の積で表記すると取り決められている。量Q
の次元は,dim Qと表記する。
注記3 量の次元を組み立てる際には,量がスカラーか,ベクトルか,又は
テンソルかという特性は考慮しない。
注記4 ある与えられた量体系において,
− 同じ種類の量は,同じ次元をもち,
− 次元の異なる量は,常に異なる種類の量であるが,
− 同じ次元をもつ量は,必ずしも同じ種類の量ではない。
注記5 ISQで基本量の次元を表す記号は,次のとおりである。
基本量
次元
長さ
L
質量
M
時間
T
電流
I
熱力学温度
Θ
物質量
N
光度
J
したがって,量Qの次元は,dim Q=LαMβTγIδΘεNζJηと表記される。
ここで,指数は次元指数と呼ばれており,正,負又はゼロである。
quantity
dimension
(1.7)
6
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番号
用語
定義
対応英語(参考)
208
次元1の量,
無次元量
量の次元において,基本量に対応する因数の全ての指数が0である量。
注記1 一般に“無次元量”という用語が用いられており,ここでは歴史的
理由からこれも許容する。この用語は,このような量の次元の記号
表現における全ての指数が0であるという事実に由来する。“次元1
の量”という用語は,このような量の次元を記号1で表記するとい
う取決めを反映している(JIS Z 8000-1:2014の3.8参照)。
注記2 次元が1である量の測定単位及び値は数値であるが,このような量
は単なる数値よりも多くの情報をもつ。
注記3 次元1の量の中には,同じ種類の二つの量の比で定義されるものが
ある。
例1 平面角,立体角,屈折率,相対浸透率,質量分率,摩擦係
数,マッハ数
注記4 事物の個数は次元1の量である。
例2 コイルの巻数,ある与えられた試料中の分子の数,量子系
のエネルギーレベルの縮退数
quantity of
dimension
one,
dimensionless
quantity
(1.8)
209
(測定)単位 取決めによって定義し採用する,実数のスカラーの量であって,同じ種類の
他のどの量もそれと比較することができ,それら二つの量の比を数値として
表すことができるもの。
注記1 測定単位は取決めによって割り当てられる名称及び記号で指定され
る。
注記2 同一次元の複数の量の測定単位は,それらの量が同じ種類のもので
なくても,同一の名称及び記号で指定することがある。例えば,ジ
ュール毎ケルビン(J/K)は,それぞれ熱容量の測定単位並びにエン
トロピーの測定単位両方の名称及び記号であるが,両者は一般に同
じ種類の量とはみなされない。しかし,特別な測定単位名は,特定
の種類の量だけに使用が限定されている場合がある。例えば,測定
単位“秒のマイナス1乗”(1/s)は,周波数に用いる場合はヘルツ
(Hz)であり,放射能の意味として用いる場合はベクレル(Bq)で
ある。
注記3 次元1の量の測定単位は数である。場合によって,これらの測定単
位は,例えば,ラジアン,ステラジアン,デシベルのような特別な
名称が与えられるか,又は10−3に等しいミリモル毎モル(mmol/mol)
及び10−9に等しいマイクログラム毎キログラム(μg/kg)のような
商によって表現される。
注記4 “質量単位”又は“質量の単位”のように,ある与えられた量に対
し,“単位”という単語を量の名称と組み合わせることがある。
measurement
unit,
unit
(1.9)
210
基本単位
基本量に対して,取決めによって採用される測定単位。
注記1 一貫性のある単位系のそれぞれにおいて,基本量ごとにただ一つの
基本単位が存在する。
例1 SIでは,メートルが長さの基本単位である。CGS系では,
センチメートルが長さの基本単位である。
注記2 基本単位は,同じ次元をもつ組立量に対して用いられることがある。
例2 雨量は,体積の面密度(単位面積当たりの体積)として定
義するとき,一貫性のあるSI組立単位として,単位メート
ルをもつ。
注記3 事物の個数の1個は,記号1で表し,どのような単位系においても,
基本単位の一つとみなすことができる。
base unit
(1.10)
7
Z 8103:2019
番号
用語
定義
対応英語(参考)
211
組立単位
組立量に対する測定単位。
例 メートル毎秒(m/s)及びセンチメートル毎秒(cm/s)は,SIにおける
速度の組立単位である。キロメートル毎時(km/h)は,速度の非SI単位
であるが,SIと併用される単位として許容されている。1海里毎時(1
M/h)に相当するノット(kn)は,速度の非SI単位である。
derived unit
(1.11)
212
一貫性のある
組立単位
ある与えられた量体系の,ある選択された基本単位の集合において,1以外
の比例係数を含まず,基本単位のべき乗の積となっている組立単位。
注記1 基本単位のべき乗とは,べき指数で累乗された基本単位である。
注記2 一貫性は,特定の量体系,及びある与えられた基本単位の集合に対
してだけ決めることができる。
例1 メートル,秒及びモルが基本単位であるとするならば,メ
ートル毎秒は,速度を量方程式v=dr/dtによって定義する
とき,速度の一貫性のある組立単位となり,また,モル毎
立方メートルは,物質量濃度を量方程式c=n/Vによって定
義するとき,物質量濃度の一貫性のある組立単位となる。
組立単位(番号211)の例として示したキロメートル毎時及
びノットは,このような量体系では,一貫性のある組立単
位とならない。
注記3 組立単位は,ある量体系では一貫性があるが,別の量体系では一貫
性がない場合がある。
例2 センチメートル毎秒は,CGS単位系では一貫性のある速度
の単位であるが,SIでは一貫性のある組立単位ではない。
注記4 ある与えられた単位系において,次元1をもつ全ての組立量に対す
る一貫性のある組立単位は,数1であり,記号1で表される。測定
単位1の名称及び記号は,通常は明記しない。
coherent derived
unit
(1.12)
213
単位系
ある与えられた量体系において,一定の規則に従って定義される,それらの
倍量及び分量を含む,基本単位及び組立単位の集合。
system of units
(1.13)
214
一貫性のある
単位系
ある与えられた量体系に基づく単位系であって,各組立量の測定単位が一貫
性のある組立単位であるもの。
例 一貫性のあるSI単位及びSI単位間の関係の集合。
注記1 単位系は,ある量体系及びそこで採用した基本単位に関してだけ一
貫性をもつことができる。
注記2 一貫性のある単位系では,数値方程式は,数値係数を含めて,対応
する量方程式と同じ形式をもつ。
coherent system
of units
(1.14)
215
体系外の(測
定)単位
ある与えられた単位系に属していない測定単位。
例1 電子ボルト(約1.602 18×10−19 J)は,SIに関して,体系外のエネル
ギーの測定単位である。
例2 日,時及び分は,SIに関して,体系外の時間の測定単位である。
off-system unit
(1.15)
8
Z 8103:2019
番号
用語
定義
対応英語(参考)
216
国際単位系,
SI
国際度量衡総会(CGPM)によって採択された,一連の接頭語の名称及び記
号を含めた単位の名称及び記号,並びにその使用規則を含む,国際量体系に
基づく単位系。
注記1 SIは,ISQの七つの基本量,並びに次の表に掲げる対応する基本単
位の名称及び記号に基づいている。
基本量
基本単位
名称
名称
記号
長さ
メートル
m
質量
キログラム
kg
時間
秒
s
電流
アンペア
A
熱力学温度
ケルビン
K
物質量
モル
mol
光度
カンデラ
cd
注記2 SIの基本単位及び一貫性のある組立単位は,“一貫性のあるSI単位
の集合”と呼ばれる一貫性のある集合を形成する。
注記3 国際単位系の詳細な説明については,国際度量衡局(BIPM)が発
行し,BIPMのウェブサイトから入手可能な最新版のSI小冊子を参
照。
注記4 量の演算では,“事物の個数”という量は,基本単位1,及び記号1
とする基本量とみなすことが多い。
注記5 単位の倍量及び単位の分量を表すSI接頭語は,次のとおりである。
倍数
接頭語
倍数
接頭語
名称
記号
名称
記号
1024
ヨタ
Y
10−1
デシ
d
1021
ゼタ
Z
10−2
センチ
c
1018
エクサ
E
10−3
ミリ
m
1015
ペタ
P
10−6
マイクロ
μ
1012
テラ
T
10−9
ナノ
n
109
ギガ
G
10−12 ピコ
p
106
メガ
M
10−15 フェムト
f
103
キロ
k
10−18 アト
a
102
ヘクト
h
10−21 ゼプト
z
101
デカ
da
10−24 ヨクト
y
International
System of
Units
(1.16)
9
Z 8103:2019
番号
用語
定義
対応英語(参考)
217
単位の倍量
ある与えられた測定単位に1より大きい整数を乗じて得られる測定単位。
例1 キロメートルは,メートルの10進の倍量である。
例2 時間は,秒の非10進の倍量である。
注記1 SI基本単位及びSI組立単位の10進の倍量で示す場合のSI接頭語は,
番号216“国際単位系”の注記5を参照。
注記2 SI接頭語は厳密に10のべき乗を指し,2のべき乗を指すときには用
いない。例えば,1 024ビット(210ビット)を表すときは,1キロ
ビット(kilobit)ではなく1キビビット(kibibit)を用いるべきであ
る。2進の倍量用の接頭語は,次のとおりである。
倍数
接頭語
名称
記号
(210)8
ヨビ
Yi
(210)7
ゼビ
Zi
(210)6
エクサビ
Ei
(210)5
ペビ
Pi
(210)4
テビ
Ti
(210)3
ギビ
Gi
(210)2
メビ
Mi
(210)1
キビ
Ki
出典:IEC 80000-13
multiple of a unit
(1.17)
218
単位の分量
ある与えられた測定単位を1より大きい整数で除して得られる測定単位。
例1 ミリメートルは,メートルの10進の分量である。
例2 平面角で,秒は分の非10進の分量である。
注記 SI基本単位及びSI組立単位の10進の分量で示す場合のSI接頭語は,
番号216“国際単位系”の注記5を参照。
submultiple of a
unit
(1.18)
10
Z 8103:2019
番号
用語
定義
対応英語(参考)
219
(量の)値
ある与えられた量の大きさを表す,数値と参照基準との組合せ。
例1 5.34 m又は534 cm:ある棒の長さ
例2 0.152 kg又は152 g:ある物体の質量
例3 112 m−1:ある円弧の曲率
例4 −5 ℃:ある試料のセルシウス温度
例5 (7+3j) Ω:ある回路素子のある周波数におけるインピーダンス,ここ
にjは虚数単位
例6 1.32:あるガラス試料の屈折率
例7 43.5 HRC:ある試料のロックウェルCスケール硬さ
例8 3 μg/kg又は3×10−9:ある銅試料中のカドミウム質量分率
例9 1.76 μmol/kg:ある水試料中の鉛イオンの質量モル濃度
例10 5.0 IU/L(ここで“IU”はWHO国際単位):ヒトの血しょう(漿)の
ある与えられた試料中のルトロピンの任意の(arbitrary)物質量濃度
(WHO国際標準品80/552をキャリブレータとして用いる。)。
注記1 参照基準(reference)の種類に応じて,量の値は次のいずれかとな
る。
− 数値と測定単位との積(例1,例2,例3,例4,例5,例8及
び例9参照):次元1の量については,一般に,測定単位1は表
示しない(例6及び例8参照)。
− 数値と測定手順への参照基準との組合せ(例7参照)
− 数値と標準物質との組合せ(例10参照)
注記2 数値は複素数の場合がある(例5参照)。
注記3 量の値は複数の方法で表現することができる(例1,例2及び例8
参照)。
注記4 ベクトル量又はテンソル量の場合は,各要素が量の値をもつ。
例11 (Fx; Fy; Fz)=(−31.5; 43.2; 17.0) N:直交座標系成分で表し
た,ある粒子に働く力。
quantity value,
value
(1.19)
220
(量の)数値 量の値の表記における数値であって,参照基準の役目を果たす数値以外のも
の。
注記1 次元1の量の場合,参照基準は数である測定単位であり,これは量
の数値の一部ではない。
例1 3 mmol/molに等しい物質量分率の場合,量の数値は3であ
り,単位はmmol/molである。単位mmol/molの量の数値は
0.001であるが,この数0.001は量の数値の一部ではなく,
量の数値は3のままである。
注記2 測定単位をもつ量(すなわち順序尺度量以外の量)の場合,量Qの
数値{Q}は,しばしば,{Q}=Q/[Q]と表記する。ここで,[Q]は単位
を表す。
例2 量の値が5.7 kgの場合,量の数値は{m}=(5.7 kg)/kg=5.7で
ある。同じ量の値は5 700 gと表すことができるが,この場
合,量の数値は{m}=(5 700 g)/g=5 700である。
numerical
quantity value,
numerical value
(1.20)
221
量演算
順序尺度量以外の量に適用する,数学的規則及び操作の集合。
注記 量演算では,量方程式は測定単位の選択に依存しないのに対して,数
値方程式は依存するので,数値方程式よりも量方程式によるのがよい
(JIS Z 8000-1:2014の6.3参照)。
quantity calculus
(1.21)
11
Z 8103:2019
番号
用語
定義
対応英語(参考)
222
量方程式
ある与えられた量体系における,測定単位に依存しない,量の間の数学的関
係。
例1 Q1=ζQ2 Q3
ここに,Q1,Q2及びQ3はそれぞれ別の量を表し,ζは数値要素であ
る。
例2 T=(1/2)mv2
ここに, T: 運動エネルギー
v: 質量mの特定の粒子の速度(速さ)
例3 n=It/F
ここに, F: ファラデー定数
n: 1価の成分の物質量
I: 電流
t: 電気分解の継続時間
quantity equation
(1.22)
223
単位方程式
基本単位,一貫性のある組立単位,又は他の測定単位の間の数学的関係。
例1 番号222の例1の量において,[Q1],[Q2]及び[Q3]がそれぞれQ1,Q2
及びQ3の測定単位を表す場合,これらの測定単位が,ある一貫性のあ
る単位系に含まれていれば,[Q1]=[Q2] [Q3]である。
例2 J :=kg m2/s2。ここに,J,kg,m及びsは,それぞれジュール,キロ
グラム,メートル及び秒の記号である(記号の :=は,JIS Z 8000規
格群に示すように,“定義として等しい”ことを示す。)。
例3 1 km/h=(1/3.6) m/s
unit equation
(1.23)
224
単位間の換算
係数
同じ種類の量を表す測定単位の比。
例1 km/m=1 000であるから,1 km=1 000 m
注記 測定単位は異なる単位系に属していることがある。
例2 h/s=3 600であるから,1 h=3 600 s
例3 (km/h)/(m/s)=(1/3.6)であるから,1 km/h=(1/3.6) m/s
conversion factor
between units
(1.24)
225
数値(量)方
程式
ある与えられた量方程式及び特定の測定単位に基づく,量の数値の間の数学
的関係。
例1 番号222の例1の量で,{Q1},{Q2}及び{Q3}がそれぞれQ1,Q2及び
Q3の数値を表す場合,これらが基本単位及び/又はある一貫性のある
組立単位で表されていれば,{Q1}=ζ{Q2}{Q3}である。
例2 ある粒子の運動エネルギーを表す量方程式T=(1/2) mv2で,m=2 kg,
v=3 m/sであれば,{T}=(1/2)×2×32はTがジュールを単位とする数
値9であることを示す数値方程式である。
numerical value
equation
(1.25)
226
測定目盛
ある与えられた種類の量の値の順序集合であって,その種類の量を大きさに
応じて順序付ける際に用いるもの。
例1 セルシウス温度目盛
例2 時間目盛
例3 ロックウェルCスケール硬さ目盛
quantity-value
scale,
measurement
scale
(1.27)
227
取決めによる
参照目盛
公式の合意によって定義される測定目盛。
conventional
reference scale
(1.29)
228
測定の尺度
量を数値で表すために定めた,量と数値との間の1対1の対応の規則。
注記 しばしば,名義尺度,順序尺度,比例尺度及び間隔尺度の4種類に分
類される。
scale of quantity
12
Z 8103:2019
番号
用語
定義
対応英語(参考)
229
順序尺度量
取り決めた測定手順によって定義される量であって,大きさに従って同じ種
類の他の量との順序関係を完全に決めることができるが,これらの量の間の
代数的演算は存在しない量。
例1 ロックウェルCスケール硬さ
例2 石油燃料のオクタン価
例3 リヒタースケール(Richter scale)による地震強度
例4 0から5までのスケールによる腹痛の主観的レベル
注記1 順序尺度量は,経験的関係だけを示すものであり,測定単位も量の
次元ももたない。順序尺度量の差及び比には物理的に確定的な意味
はない。
注記2 順序尺度量の値の目盛は,測定手順に従った測定によって確立され
ることがある。
ordinal quantity
(1.26)
230
物理量
物理学における一定の理論体系の下で次元が確定し,定められた単位の倍数
として表すことができる量。
physical quantity
231
心理物理量
特定の条件の下で,感覚と1対1に対応して心理的に意味があり,かつ,物
理的に定義・測定できる量。
例1 色の三刺激値
例2 音の大きさ
psychophysical
quantity
232
工業量
測定方法を取り決めることによって定義される,工業的に有用な量。
例1 硬さ
例2 表面粗さ
注記 工業量は一般に順序尺度量である。
industrial
quantity
233
名義的性質
現象,物体又は物質の性質であって,大きさをもたないもの。
例1 人間の性別
例2 塗料見本の色
例3 化学分野でのスポット(斑点:spot)試験の色
例4 JISで規定する2文字の国名コード
例5 ポリペプチドにおけるアミノ酸の配列
注記1 名義的性質は,数値コード又は他の手段を用いた語句で表現するこ
とができる値をもつ。
注記2 “名義的性質の値”を,量の公称値と混同しないほうがよい。
注記3 名義的性質は,ISO/IEC Guide 99:2007での“測定”の対象とはして
いない。
nominal property
(1.30)
13
Z 8103:2019
3.3
測定方法
番号
用語
定義
対応英語(参考)
301
測定対象量
測定を意図した量。
注記1 測定対象量の詳述には,量の種類の知識,関係する全ての成分を含
む量を表す現象,物体又は物質の状態の記述,及び関与する化学的
実在物が必要である。
注記2 IEC 60050-300:2001では,測定対象量は“測定の対象となる特定の
量”と定義されている。また,JIS Z 8103:2000では,測定対象量は
用語“測定量”の下で“測定の対象となる量”と定義されていた。
注記3 測定システム及び測定の実施条件を含む測定は,現象,物体又は物
質を変化させることがあり,その結果,測定される量が定義したと
おりの測定対象量とは異なる可能性がある。この場合は適切な補正
が必要である。
例1 電池の端子間の電位差は,大きな内部コンダクタンスをも
つ電圧計を用いて測定を実行するとき,低下することがあ
る。開回路の電位差は電池及び電圧計の内部抵抗から計算
することができる。
例2 23 ℃の雰囲気温度と均衡を保っている鋼棒の長さは,指定
された温度(20 ℃)における長さ(すなわち測定対象量)
とは異なる。この場合には補正が必要である。
注記4 化学では,“分析種(検体)”,すなわち物質又は化合物の名称を,“測
定対象量”の代わりに用いることがある。この用い方は,これらの
用語が量を指すわけではないので誤用である。
measurand
(2.3)
302
影響量
測定対象量以外で,測定結果に影響を与える量。
例1 電流計を用いた交流の振幅の直接測定における周波数
例2 ヒト血しょう(漿)ヘモグロビン物質量濃度の直接測定におけるビリ
ルビン物質量濃度
例3 棒の長さの測定に用いるマイクロメータの温度及び棒の温度。
例4 物質量測定中の質量分析計のイオン源内のバックグラウンド圧力。
注記1 ISO/IEC Guide 99:2007では,“影響量”は,この規格の定義と異な
り,“直接測定で,実測される量には影響を与えず,指示値と測定結
果との関係に影響を与える量。”と定義されている。すなわち,直接
測定で,測定システムに影響する量だけに限定されている。この規
格の定義では,直接測定だけに限定しておらず,実測される量に影
響する量にも当てはまるものと定義している。ISO/IEC Guide
99:2007の定義に従えば,例3の“棒の温度”は測定対象量の定義に
組み込むことができるので影響量ではない。
注記2 ISO/IEC Guide 98-3:2008では,“影響量”の概念は,この規格の定
義に沿った形で用いられている。
注記3 臨床検査分野では,干渉物質,妨害物質などの影響を与える量をい
う場合がある。
influence
quantity
(2.52)
303
測定原理
測定の基礎となる現象。
例1 温度の測定に応用される熱電効果
例2 物質量濃度の測定に応用されるエネルギー吸収
例3 組織標本中のインスリン濃度の測定に応用される,絶食ウサギの血中
グルコース濃度の低減
注記 現象は,物理学的性質,化学的性質又は生物学的性質である場合があ
る。
measurement
principle
(2.4)
14
Z 8103:2019
番号
用語
定義
対応英語(参考)
304
測定方法
測定に用いる操作の論理的構成の一般的な記述。
注記 測定方法は,次のように様々な方式がある。
− 置換法
− 差動法
− 零位法など
又は
− 直接測定
− 間接測定
IEC 60050-300:2001を参照。
measurement
method
(2.5)
305
測定手順
ある測定モデルに基づいた,測定結果を得るための計算を含む,一つ又はそ
れ以上の測定原理,及びある与えられた測定方法に従った測定の詳細な記
述。
注記1 測定手順は,通常,オペレータが測定を実施できるように,十分詳
しく記述する。
注記2 測定手順は,目標とする不確かさに関する表明を含むことがある。
注記3 測定手順は,標準操作手順(SOP: Standard Operating Procedure)とい
うことがある。
measurement
procedure
(2.6)
306
参照測定手順 同じ種類の量に対する他の測定手順によって測定値の真度を評価するとき,
校正するとき,又は標準物質を値付けするときに,それらの意図した用途に
合致した測定結果を提供するものとして受け入れられた測定手順。
reference
measurement
procedure
(2.7)
307
一次参照(測
定)手順
同じ種類の量の測定標準を用いることなく測定結果を得るための参照測定
手順。
例 50 mLピペットを用いて,20 ℃で分取する水の体積は,ビーカー及び水
の質量から最初の空のビーカーの質量を差し引いて,ピペットからビー
カーに移される水の質量をはかり,体積質量(質量密度)を用いて実際
の水温での質量差を補正して測定する。
注記1 国際度量衡委員会物質量諮問委員会(Consultative Committee for
Amount of Substance−Metrology in Chemistry & Biology: CCQM)では
この概念に,“一次測定法(primary method of measurement)”という
用語を用いている。
注記2 CCQMは,“直接一次参照測定手順”及び“比一次参照測定手順”
と名付けることが可能な二つの従属概念を定義している。
primary reference
procedure
(2.8)
308
直接測定
測定対象量と関数関係にある他の量の測定にはよらず,測定対象量の値を直
接求める測定方法。
注記 測定値に対して補正を行うために影響量の値を決定する補助的測定を
行う必要があったとしても,その方法が直接測定であることに変わり
はない。
direct
measurement
309
間接測定
測定対象量と一定の関係にある幾つかの他の量の測定によって,測定対象量
の値を導き出す測定方法。
indirect
measurement
15
Z 8103:2019
番号
用語
定義
対応英語(参考)
310
絶対測定
a) ある組立量を,それに関連する全ての基本量の測定によって決定する測
定方法。
b) ある量を,その量の単位の定義に従って現示させ,測定する測定方法。
注記1 a)を“基本測定法”,b)を“定義測定法”と呼ぶこともある。日本で
は,総称としての“絶対測定”が用いられてきたが,二つの測定方
法のいずれを指すか曖昧な場合が多かった。
例1 基本測定法:圧力を,水銀圧力計を用い,水銀柱の高さ,
密度,重力の加速度の測定から導く測定。
例2 定義測定法:周波数の定義を現示した133Cs原子周波数標準
器が示す周波数と直接比較して行う周波数の測定。
注記2 臨床検査分野においては,“基準測定法”という。
definitive
measurement,
absolute
measurement
311
比較測定
同じ種類の量と比較して行う測定。
例 ブルドン管圧力計で,既知圧力と測定圧力との指針の振れを比較して行
う測定。
comparison
measurement
312
静的測定
測定中一定な値をもつとみなすことができる量の測定。
注記 静的という修飾語は,測定対象量に適用される。
static
measurement
313
動的測定
変動する量の瞬時値の測定,及び場合によってはその時間的変動の測定。
注記 動的という修飾語は,測定対象量に適用される。
dynamic
measurement
314
置換法
測定対象量と既知量とを置き換えて2回の測定の結果から測定対象量を知る
方法。
例1 天びんの使用法として,初めに物体と分銅とを釣り合わせ,次に物体
の代わりに正確な分銅を置換し,置換した分銅の表示値から測定対象
量である物体の質量を知る。
例2 光度計による,測定光源の光度を基準の光度と比較する測定において,
測定光源と基準光源とを置き換えて,両者の光度の比を測定する。
substitution
method
315
差動法
同じ種類の2量の作用の差を利用して測定する方法。
例1 明るさを比較するために,二つの光電池を直列につなぎ,それらの差
の光電流を取り出す測定方法。
例2 二つの熱電対を直列につなぎ,温度差に比例する熱起電力を取り出す
測定方法。
differential
method
316
零位法
(れいいほ
う)
測定対象量とは独立に,大きさを調整できる同じ種類の既知量を別に用意
し,既知量を測定対象量に平衡させて,そのときの既知量の大きさから測定
対象量を知る方法。
注記 互いに平衡させる量は,測定対象量及び既知量からそれぞれ導かれた
量である場合もある。
例1 電位差計では,滑り抵抗器の接点位置の調整によって任意の
標準電位差を作り出し,それを測定しようとする電位差と平
衡させ,そのときの滑り抵抗の接点位置から測定対象量であ
る電位差を知る。
例2 マイクロメータでは,ねじの回転によって任意の測定面間隔
を作り出し,それを測定しようとする厚みに等しく調整し,
そのときのねじの回転角から測定対象量である厚みを知る。
null method,
zero method
317
偏位法
測定対象量を原因とし,その直接の結果として生じる指示から測定対象量を
知る方法。
例1 ダイヤルゲージでは,測定スピンドルの変位が原因となり,歯車でそ
れを拡大した指針の振れを生じさせ,測定対象量である変位を知る。
例2 可動コイル型指示電流計では,測定対象量の電流が原因となる電磁力
を生じさせ,それによる指針の振れから,測定対象量である電流を知
る。
deflection
method
16
Z 8103:2019
番号
用語
定義
対応英語(参考)
318
合致法
目盛線などの合致を観測して,測定対象量と基準として用いる量との間に一
定の関係が成り立ったことを知り,測定する方法。
例 ブロックゲージの長さについて,干渉じまの観測によって光波長の倍数
で表した値を求める測定で,数種類の異なる波長の光について干渉じま
を観測して,整数部分を推定し,推定した整数部分が正しいときは,各
波長について小数部分が観測値に合致することから測定値を決定する。
coincidence
method
319
補償法
測定対象量からそれにほぼ等しい既知量を引き去り,その差を測って測定対
象量を知る方法。
例 天びんは,測定対象量である物体の質量から,基準として用いる量であ
る分銅の質量を差し引き,その差を指針の振れで知る測定方法。
compensation
method
3.4
トレーサビリティ及び測定標準
番号
用語
定義
対応英語(参考)
401
校正
指定の条件下において,第一段階で,測定標準によって提供される不確かさ
を伴う量の値とそれに対応する指示値との不確かさを伴う関係を確立し,第
二段階で,この情報を用いて指示値から測定結果を得るための関係を確立す
る操作。
注記1 校正は,表明(statement),校正関数,校正線図,校正曲線又は校正
表の形で表すことがある。場合によっては,不確かさを伴う,指示
値の加算又は乗算の補正で構成することがある。
注記2 校正は,“自己校正(self-calibration)”と呼ばれる測定システムの調
整(adjustment),又は校正の検証(verification)と混同すべきではな
い。
注記3 上記の定義の第一段階だけで校正と認識していることがある。
calibration
(2.39)
402
校正階層
参照基準から最終の測定システムまでの校正の段階的な連鎖。そこでは,
個々の校正の結果は上位階層の校正の結果に依存する。
注記1 不確かさは,校正の段階的なつながりに沿って必然的に増加する。
注記2 校正の階層の要素は,測定手順に従って操作する一つ以上の測定標
準及び測定システムである。
注記3 この定義での“参照基準”は,現示された測定単位の定義,測定手
順,又は測定標準のいずれともなり得る。
注記4 二つの測定標準の比較が,一方の測定標準の量の値及びその不確か
さを確認し,必要であれば補正するために行われる場合には,その
比較を校正とみなすことがある。
calibration
hierarchy
(2.40)
17
Z 8103:2019
番号
用語
定義
対応英語(参考)
403
トレーサビリ
ティ
個々の校正が不確かさに寄与する,切れ目なく連鎖した,文書化された校正
を通して,測定結果を参照基準に関係付けることができる測定結果の性質。
注記1 この定義では,“参照基準”は,現示された測定単位の定義,順序尺
度量でない量の測定単位を含む測定手順,又は測定標準のいずれと
もなり得る。
注記2 トレーサビリティには,確立された校正階層が必要である。
注記3 参照基準の詳述には,校正階層を確立する際にこの参照基準を用い
た時期のほかに,校正階層の中で最初の校正をいつ行ったかなど,
参照基準に関連する他の計測情報を含める。
注記4 測定モデルで入力量が複数ある測定の場合,各入力量の値はそれ自
体がトレーサビリティをもつことが望ましく,関係する校正階層は
分岐構造又はネットワークを形成していることがある。各入力量の
値のトレーサビリティを確立するために必要となる作業は,測定結
果に対する相対的寄与に釣り合ったものであることが望ましい。
注記5 測定結果のトレーサビリティは,不確かさが与えられた目的に対し
て十分であること,又は誤りがないことを保証するものではない。
注記6 二つの測定標準の比較が,一方の測定標準の量の値及びその不確か
さを確認し,必要であれば補正するために行われる場合には,その
比較を校正とみなすことがある。
注記7 “トレーサビリティ”という用語は,“測定のトレーサビリティ”の
意味で用いられる以外に,“試料のトレーサビリティ”,“文書のト
レーサビリティ”,“機器のトレーサビリティ”,又は“物質のトレー
サビリティ”といった他の概念で用いられることがあり,これらの
場合には,あるアイテムの“履歴(trace)”が明確であるという意味
をもたせている。したがって,それらと混同する可能性があると思
われる場合には,“測定のトレーサビリティ”,又は“計量計測トレ
ーサビリティ”,“計測トレーサビリティ”,若しくは“計量トレーサ
ビリティ”のいずれかを用いることが望ましい。
traceability,
metrological
traceability
(2.41)
404
トレーサビリ
ティの連鎖
測定結果を参照基準に関係付けるために用いる,測定標準及び校正の段階的
なつながり。
注記1 トレーサビリティの連鎖は,校正階層を通して定義される。
注記2 トレーサビリティの連鎖は,測定結果のトレーサビリティを確立す
るために用いる。
注記3 二つの測定標準の比較が,一方の測定標準の量の値及びその不確か
さを確認し,必要であれば補正するために行われる場合には,その
比較を校正とみなすことがある。
traceability chain
(2.42)
405
(測定)単位
へのトレー
サビリティ
測定単位の現示を通して,測定単位の定義を参照基準とする場合のトレーサ
ビリティ。
注記 “SIへのトレーサビリティ”という表現は,“国際単位系の測定単位
へのトレーサビリティ”を意味する。
metrological
traceability to
a unit
(2.43)
18
Z 8103:2019
番号
用語
定義
対応英語(参考)
406
検証
与えられたアイテムが指定された要求事項を満たしているという客観的証
拠の提示。
例1 対象とするある与えられた標準物質が,その量の値及び測定手順に対
して,質量10 mgの測定試料まで均質であることの確認。
例2 測定システムが性能特性又は法的要求事項を満たしていることの確
認。
例3 目標とする不確かさを満たすことができることの確認。
注記1 該当する場合は,不確かさを考慮することが望ましい。
注記2 アイテムとは,例えば,プロセス,測定手順,材料,化合物,又は
測定システムのいずれであってもよい。
注記3 指定された要求事項とは,例えば,製造業者の仕様を満たしている
ことである。
注記4 国内の法定計量分野では,“verification”を“検定”という。
注記5 法定計量での検証(検定)は,OIML V1:2000 VIMLで定義している
ように,また,適合性評価での検証は,一般に,測定システムに対
する検査,及び標章付け並びに/若しくは検定証明書の発行を含む。
注記6 検証と校正とを混同すべきではない。全ての検証が妥当性確認であ
るとは限らない。
注記7 化学分野では,関連する事物又は活性の同一性の検証には,その事
物又は活性の構造又は性質の記述が必要となる。
verification
(2.44)
407
妥当性確認
指定された要求事項が意図した用途に十分であることの検証。
例 水中の窒素の質量濃度の測定に通常用いる測定手順は,ヒトの血清中の
窒素の質量濃度の測定に対しても妥当である場合がある。
validation
(2.45)
408
測定(結果)
の比較性
ある与えられた種類の複数の量において,同一の参照基準へのトレーサビリ
ティをもつ測定結果の間の比較可能性。
例 地球から月までの距離,及びパリからロンドンまでの距離の測定結果
は,例えば,メートルのように,両方が同一の測定単位へのトレーサビ
リティをもっているとき,計測的に比較可能である。
注記1 番号403“トレーサビリティ”の注記1参照。
注記2 測定結果の比較性は,測定値と付随する不確かさとがそれぞれ同じ
オーダーの大きさであることは必要としない。
metrological
comparability
(2.46)
409
測定(結果)
の両立性
ある指定された測定対象量に対する複数の測定結果からなる集まりの性質
であって,その集まりに含まれる二つの異なる測定結果から取り出した,任
意の二つの測定値の差の絶対値が,その差の標準不確かさと選定した係数と
の積よりも小さくなるもの。
注記1 測定結果の両立性は,“誤差の範囲内にある”という伝統的な概念に
代わるものである。それが,二つの測定結果が同じ測定対象量を指
すか否かを決めるための評価基準となるからである。一連の測定中
に一定と考えられる測定対象量の,一つの測定結果が他の複数の測
定結果と両立しなければ,測定が正しくなかった(例えば,不確か
さを過小に評価した)か,又は測定される量が測定の間に変化した
かのいずれかである。
注記2 測定間の相関は,測定結果の両立性に影響を与える。もし,測定が
完全に相互に無相関であれば,それらの差の標準不確かさは,それ
らの標準不確かさの二乗和の平方根と等しいが,正の共分散の場合,
より小さくなるか,又は負の共分散の場合,より大きくなる。
metrological
compatibility
(2.47)
19
Z 8103:2019
番号
用語
定義
対応英語(参考)
410
測定標準,
エタロン
何らかの参照基準として用いる,表記された量の値及びその不確かさをも
つ,ある与えられた量の定義を現示したもの。
例1 標準不確かさが3 μgの1 kg質量標準
例2 標準不確かさが1 μΩの100 Ω測定標準抵抗器
例3 相対標準不確かさが2×10−15のセシウム周波数標準器
例4 pHが7.072で,その標準不確かさが0.006の標準緩衝液
例5 各溶液に対して認証値及び不確かさをもつヒト血清中のコルチゾール
参照溶液の組
例6 10種の異なるタンパク質の一つ一つの質量濃度に対して,量の値及び
不確かさを与える標準物質
注記1 “量の定義の現示”は,測定システム,実量器又は標準物質によっ
て与えることができる。
注記2 測定標準は,他の同種の量に対して測定値及び不確かさを確定し,
それによって,他の測定標準,測定器又は測定システムの校正を通
して,トレーサビリティを確立する際の参照基準としてしばしば用
いられる。
注記3 “現示(realization)”という用語は,ここでは最も一般的な意味で
用いている。これは“現示”の三つの手順を示している。第一の手
順は,測定単位の定義からの物理的実現であり,“厳密な意味(sensu
stricto)”での現示である。第二の手順は,測定単位の定義からの現
示ではなく,物理現象に基づいた再現性の高い測定標準を組み立て
ることで,例えば,長さ(メートル)の測定標準を確立するための
周波数安定化レーザ,電圧(ボルト)確立のためのジョセフソン効
果,又は電気抵抗(オーム)確立のための量子ホール効果の使用な
どの場合にみられる。これは“再現(reproduction)”と呼ばれてい
る。第三の手順は,実量器を測定標準として採用することで,例え
ば,1 kg測定標準の場合がある。
注記4 測定標準に付随する標準不確かさは,常に,その測定標準を用いて
得られる測定結果での合成標準不確かさ(ISO/IEC Guide 98-3:2008
の2.3.4参照)の一成分である。この成分は,合成標準不確かさの他
の成分と比べると小さいことが多い。
注記5 量の値及び不確かさは,測定標準を用いた時点で決定する。
注記6 同じ又は異なる種類の幾つかの量を,一般に測定標準とも呼ばれる
一つの装置で実現することもある。
注記7 科学技術分野では,英語の用語“標準(standard)”は少なくとも二
つの異なる意味をもつ。一つは記述,技術的勧告又は類似の規範文
書(仏語では“norme”)という意味であり,もう一方は測定標準(仏
語では“étalon”)というものである。
注記8 測定標準を指す用語としては,基本単位の値そのものを現示したも
のを指す“原器(prototype)”,計器及び実量器を指す“標準器”な
ども使用される。
注記9 計量法では,法定計量分野で特定計量器の検定又は定期検査に用い
る測定標準を“基準器”と呼んでいる。
注記10 “測定標準”という用語は,他の計測ツール,例えば,“ソフトウェ
ア測定標準”を意味するために用いることがある(ISO 5436-2参照)。
measurement
standard,
etalon
(5.1)
20
Z 8103:2019
番号
用語
定義
対応英語(参考)
411
国際(測定)
標準
国際協定の調印国によって承認され,世界中で用いることを意図した測定標
準。
例1 国際キログラム原器
例2 世界保健機関(WHO)国際標準第4版1999,75/589による,アンプ
ル当たり650国際単位のじゅう(絨)毛性ゴナドトロピン
例3 国際原子力機関(IAEA)から配布された,安定同位体の物質量比の差
の測定のためのVSMOW2(ウィーン標準平均海洋水)
international
standard
(5.2)
412
国家(測定)
標準
当該の種類の量について,他の測定標準に量の値を付与するための基礎とし
て,ある国又は経済圏で用いるように国家当局が承認した測定標準。
national standard
(5.3)
413
一次(測定)
標準
一次参照測定手順を用いて確立された,又は取決めによって選定された人工
物として作られた測定標準。
例1 既知量の化学成分物質を,既知容量の溶液に溶かすことによって調製
された物質量濃度の一次測定標準
例2 力及び面積の個別の測定に基づく,圧力の一次測定標準
例3 複数の同位体物質の既知量を混ぜることによって調製された,同位体
の物質量比測定用の一次測定標準
例4 熱力学温度の一次測定標準としての水の三重点セル
例5 取決めによって選定された人工物(artifact)としての国際キログラム
原器
primary standard
(5.4)
414
二次(測定)
標準
同じ種類の量の一次測定標準を用いた校正を通して確立された測定標準。
注記1 校正は,一次測定標準と二次測定標準との間で直接行うこともある
し,一次測定標準によって校正され,測定結果を二次測定標準に付
与する中間測定システムが介在することもある。
注記2 一次参照測定手順によって,比として値付けされた量の値をもつ測
定標準は,二次測定標準である。
secondary
standard
(5.5)
415
参照(測定)
標準
ある組織又はある場所において,ある与えられた種類の量の他の測定標準を
校正するために指定された測定標準。
reference
standard
(5.6)
416
実用(測定)
標準
測定器又は測定システムを校正又は検証するために,日常的に用いる測定標
準。
注記1 実用標準は,通常,参照標準によって校正される。
注記2 検証に関しては,“チェック標準(check standard)”又は“管理標準
(control standard)”という用語を用いることもある。
working standard
(5.7)
417
移動用(測定)
標準
異なる場所間の輸送を意図した測定標準。特殊な構造をとる場合がある。
例 電池駆動の可般型セシウム133周波数測定標準
travelling
standard
(5.8)
418
仲介(測定)
装置
測定標準を比較するために仲介として用いる装置。
例 国際比較に用いられる抵抗温度計,振動ピックアップ,ロードセルなど。
注記 測定標準を仲介装置として用いる場合がある。
transfer device
(5.9)
21
Z 8103:2019
番号
用語
定義
対応英語(参考)
419
固有(測定)
標準
現象又は物質に固有で再現性のある性質に基づいた測定標準。
例1 熱力学温度の固有測定標準としての水の三重点セル
例2 ジョセフソン効果に基づく電位差の固有測定標準
例3 量子ホール効果に基づく電気抵抗の固有測定標準
例4 導電率の固有測定標準としての銅の試料
注記1 固有測定標準の量の値は合意によって付与されるものであって,同
型式の別の測定標準に関連づけることによって確立する必要はな
い。その不確かさは,二つの成分を考慮して決定する。すなわち,
一つは,その合意による量の値に付随する成分であり,もう一つは,
その組立て,運用及び保守に付随する成分である。
注記2 固有測定標準は,通常,合意された手順の要求事項に従って作られ,
定期的な検証を受けるシステムで構成される。合意された手順は,
運用に必要な補正の適用を含むことがある。
注記3 量子現象に基づく固有測定標準は,通常,優れた安定性をもつ。
注記4 “固有の”という形容詞は,そのような測定標準が特別な注意なし
に運用でき使用できる,又はそのような測定標準が内部若しくは外
部の影響を受けない,ということを意味するものではない。
intrinsic standard
(5.10)
420
(測定)標準
の維持
測定標準の特性を表記された限度内に保持するために必要な一連の操作。
注記 維持は,一般に,事前に定義された測定に関わる特性又は校正の定期
的検証,適切な条件下での保管,及び明示された使用時の留意事項を
含む。
conservation of a
measurement
standard,
maintenance of a
measurement
standard
(5.11)
421
キャリブレー
タ
校正に用いる測定標準。
注記 この用語は,主として電気試験,臨床検査などの分野で用いる。
calibrator
(5.12)
22
Z 8103:2019
番号
用語
定義
対応英語(参考)
422
標準物質,
RM
指定された特性に関して十分に均質かつ安定な物質であって,測定又は名義
的性質の検査において意図する用途に適していることが立証されているも
の。
注記1 名義的性質の検査は,名義的性質の値及び付随する不確かさを与え
るものである。この不確かさは,測定の不確かさではない。
注記2 付与された量の値の有無に関係なく,標準物質は測定の精密さの管
理(化学分野では“精度管理”という。)に使用できる。一方,校正
又は測定の真度(番号517参照)の管理に用いることができるのは,
付与された量の値をもつ標準物質だけである。
注記3 “標準物質”は,量及び名義的性質を実現した物質から成る。
例1 量を実現した標準物質の例
a) 純度が表記された水で,その動粘度を粘度計の校正に
用いる。
b) 内因性コレステロールの物質量濃度の付与された量の
値をもたないヒト血清で,測定の精度管理用物質とし
てだけ用いる。
c) 表記された質量分率のダイオキシンを含む魚の細胞組
織で,キャリブレータとして用いる。
例2 名義的性質を実現した標準物質の例
a) 一つ又は複数の特定色を示す色チャート
b) 特定のヌクレオチド配列を含むDNA化合物
c) 19-アンドロステンジオンを含む尿
注記4 標準物質を,特別に製作された装置に組み込むことがある。
例3 三重点セルに入っている三重点が既知の物質
例4 透過フィルターホルダーに入っている光学密度が既知のガ
ラス
例5 顕微鏡スライドに取り付けた均一サイズの球
注記5 単位系外の測定単位に対してトレーサビリティのある量の値が付与
された標準物質がある。このような物質には,世界保健機関(WHO)
が国際単位(IU)を付与したワクチン類がある。
注記6 ある与えられた測定では,ある特定の標準物質だけを,校正又は品
質保証に用いることができる。
注記7 標準物質の仕様には,その出所及び加工方法を示す物質のトレーサ
ビリティを記載することが望ましい(Accred.Qual.Assur.:2006参
照)。
注記8 ISO/REMCOは類似の定義(Accred.Qual.Assur.:2006参照)をして
いるが,ISO 15189:2007の3.4では“検査”の意味で“測定プロセ
ス”という用語を用いており,これは量の測定及び名義的性質の検
査の両方の概念を含む。
reference
material
(5.13)
23
Z 8103:2019
番号
用語
定義
対応英語(参考)
423
認証標準物
質,
CRM
有効な手順を用いて,不確かさを伴う一つ以上の指定された特性の値及びト
レーサビリティを与える,権威ある機関から発行された文書が添えられた標
準物質。
例 添付された認証書にコレステロール濃度の付与された量の値及び付随
する不確かさが表記された,キャリブレータ又は測定の真度の管理用物
質として用いるヒト血清
注記1 “文書”は,“認証書”の形で示される(JIS Q 0031参照)。
注記2 認証標準物質の生産及び認証手順は,例えば,JIS Q 17034及びJIS
Q 0035を参照。
注記3 この定義において,“不確かさ”は,“測定の不確かさ”及び,例え
ば,同一性及び順序のような“名義的性質の値の不確かさ”の両方
の概念を含む。また,“トレーサビリティ”は,“量の値の測定のト
レーサビリティ”及び“名義的性質の値のトレーサビリティ”の両
方の概念を含む。
注記4 認証標準物質の指定された特性の値には,不確かさを伴う測定のト
レーサビリティが必要となる(Accred. Qual. Assur.:2006参照)。
注記5 ISO/REMCOは類似の定義(Accred.Qual.Assur.:2006参照)をして
いるが,“metrological”及び“metrologically”という修飾語を,量及
び名義的性質の両方の概念を指すものとして用いている。
certified
reference
material
(5.14)
424
(標準物質
の)相互互
換性,
(標準物質
の)コミュ
ータビリテ
ィ
二つのある与えられた測定手順によって得られる,ある標準物質についての
表記された量の測定結果の間の関係と,他の指定された物質についての測定
結果の間の関係との一致の度合いによって実証される,標準物質の性質。
注記1 ここでいう標準物質は,通常は,キャリブレータであり,他の指定
された物質とは,通常は,日常の試料のことである。
注記2 定義に引用した二つの測定手順は,校正階層の中での標準物質(キ
ャリブレータ)の前にあるものと後にあるものである(ISO 17511
参照)。
注記3 互換性のある標準物質の安定性を,定期的に監視することが望まし
い。
commutability of
a reference
material
(5.15)
425
参照データ
現象,物体若しくは物質の性質に関する,又は組成若しくは構造が既知であ
る複数成分からなるシステムに関する,確認された情報源から得られ,厳格
に評価され,精確さに関して検証されたデータ。
例 IUPACが発行する化合物の溶解度に関する参照データ
注記 この定義では,精確さ(番号516参照)は,例えば,測定の精確さ及
び“名義的性質の値の精確さ”を意味する。
reference data
(5.16)
426
標準参照デー
タ
公認された権威ある当局が公表する参照データ。
例1 ICSUのCODATAが定期的に評価し,推奨する基礎物理定数の値
例2 IUPAC-CIAAWで隔年に評価し,IUPAC総会において承認され,Pure
Appl. Chem.に公表される,原子量とも呼ばれる元素の相対原子質量の
値。
standard
reference data
(5.17)
427
(量の)参照
値
同じ種類の量の値との比較の基礎として用いる量の値。
注記1 量の参照値は,測定対象量の真値となる場合があり,その場合の参
照値は不可知である。また,取決めによる量の値となる場合があり,
その場合の参照値は既知である。
注記2 不確かさを伴う参照値は,通常,次の事項への参照とともに示す。
a) ある物質,例えば,認証標準物質
b) ある装置,例えば,安定化レーザ
c) ある参照測定手順
d) 複数の測定標準の,ある比較
reference value
(5.18)
24
Z 8103:2019
3.5
誤差及び不確かさ
番号
用語
定義
対応英語(参考)
501
測定結果
利用し得る全ての関連情報を伴った,測定対象量に結び付けられる量の値の
集合。
注記1 測定結果は,一般に,ある値が他の値よりも測定対象量を表す量の
値としてふさわしいことを示す,量の値の集合に関する“関連情報”
を含んでいる。これは,確率密度関数(probability density function,
PDF)の形で表現することがある。
注記2 一般に,測定結果は,単一の測定値及びその不確かさとして表現す
る。ある目的に対して不確かさが無視できると考えられる場合は,
測定結果を単一の測定値として表現することがある。多くの分野で,
これは測定結果を表現する最も一般的な方法である。
注記3 従来の文献では,測定結果は測定対象量に結び付けられる値として
定義され,文脈に応じて,指示値,補正されない結果又は補正され
た結果を意味すると説明されていた。
measurement
result
(2.9)
502
測定値
測定結果を表す量の値。
注記1 測定の反復による複数の指示値がある場合,個々の指示値を,対応
する個々の測定値を求めるために用いることができる。また,この
個々の測定値の集合を,平均又は中央値のような測定の代表値を計
算するために用いることができる。このような代表値は,通常,個々
の測定値よりも付随する不確かさは小さい。
注記2 測定対象量を表すと考えられる真値の範囲が不確かさと比べて小さ
いときは,測定値は本質的に一意的な真値の推定値であると考える
ことができ,反復測定によって得られた個々の測定値の平均又は中
央値を測定値とすることが多い。
注記3 測定対象量を表すと考えられる真値の範囲が不確かさと比べて小さ
くないときは,真値の集合の平均又は中央値の推定値を測定値とす
ることが多い。
注記4 ISO/IEC Guide 98-3:2008では,“測定の結果”及び“測定対象量の
値の推定値”(単に“測定対象量の推定値”ということもある。)と
いう用語を,“測定値”の意味で用いている。
measured value,
measured
quantity value
(2.10)
503
真値,
真の値
量の定義と整合する量の値。
注記1 測定の解釈における誤差アプローチ(error approach)では,真値が
一意的で,実際には知ることのできないものと考えられている。不
確かさアプローチ(uncertainty approach)では,量は本来どこまでも
詳細に定義できないため,単一の真値は存在せず,量の定義と整合
する複数の値からなる真値の組が存在すると考えられている。ただ
し,この真値の組は,原理的にも実際にも知ることはできない。そ
れ以外の評価手法では,真値の概念は不要であるとして,測定の妥
当性評価において測定結果の両立性の概念を適用している。
注記2 基礎定数という特殊な場合,その量は単一の真値をもつとみなされ
ている。
注記3 測定対象量に付随する,定義による不確かさが,不確かさの他の成
分と比べて無視できるほど小さいと考えられるときは,測定対象量
は“本質的に唯一の”真値をもつと考えることができる。これは,
ISO/IEC Guide 98-3:2008及び関連文書が採用している評価方法で
あり,この場合,“真の”という修飾語は冗長と考えられている。
true value,
true quantity
value
(2.11)
25
Z 8103:2019
番号
用語
定義
対応英語(参考)
504
取決めによる
(量の)値
ある与えられた目的のために,合意によって,量に付与された値。
例1 自由落下の標準加速度(従来は“重力による標準加速度”と呼ばれて
いた。)
gn=9.806 65 m・s−2
例2 ジョセフソン定数の取決めによる量の値
KJ-90=483 597.9 GHz・V−1
例3 ある与えられた質量標準の取決めによる量の値
m=100.003 47 g
注記1 この概念を意味するものとして“取決めによる真値”という用語を
用いることがある。ただし,その用語を用いることは推奨しない。
注記2 取決めによる量の値は,真値の推定値であることがある。
注記3 取決めによる量の値は,一般的には十分に小さな(ゼロの場合もあ
る。)不確かさを伴うものとして受け入れられている。
conventional
value
(2.12)
505
(測定)誤差 測定値から真値を引いた値。
注記1 この定義は,ISO/IEC Guide 98-3:2008及びJIS Z 8103:2000を含む
多くの計測関係の文献で採用されている。
注記2 ISO/IEC Guide 99:2007は,“測定値から量の参照値を引いたもの”
と定義している。ISO/IEC Guide 99:2007の定義に従えば,“測定誤
差”の概念は,次の場合に用いることができるとしている。
a) 引用する量の参照値が一つだけある場合:このような状況が生
じるのは,不確かさが無視できる測定値を用いて測定標準によ
って校正を行う場合,又は取決めによる量の値が示されている
場合である。この場合,測定誤差は既知である。
b) 測定対象量が一意的な真値,又は無視できるほど狭い範囲に存
在する真値の集合で表すことができると考えられる場合:この
場合,測定誤差は不可知である。
注記3 測定誤差と,生産工程の誤差又は過失とを混同すべきではない。
measurement
error,
error
(2.16)
506
(測定の)系
統誤差
反復測定において,一定のままであるか,又は予測可能な変化をする測定誤
差の成分。
注記1 系統誤差を求めるための量の参照値は,真値であるか,又は不確か
さが無視できる測定標準の測定値若しくは取決めによる量の値であ
る。
注記2 系統誤差及びその原因は,既知の場合もあれば未知の場合もある。
既知の系統誤差を補償するために,補正を適用することができる。
注記3 系統誤差は,測定誤差から偶然誤差を差し引いたものに等しい。
systematic error
(2.17)
507
(測定の)偶
然誤差
反復測定において,予測が不可能な変化をする測定誤差の成分。
注記1 偶然誤差を求めるための量の参照値は,同じ測定対象量の無限回の
反復測定によって求められるであろう平均である。
注記2 一組の反復測定の偶然誤差は,一般に期待値がゼロと仮定される分
布を形成する。
注記3 偶然誤差は,測定誤差から系統誤差を差し引いたものに等しい。
random error
(2.19)
508
(測定の)か
たより
測定値の母平均から真値を引いた値。
注記1 測定のかたより及びその原因は,既知の場合もあれば未知の場合も
ある。
注記2 かたよりは,系統誤差のうち,反復測定において,一定のままであ
る測定誤差の成分を表す。
注記3 ISO/IEC Guide 99:2007では“系統誤差の推定値”と定義されている。
bias
(2.18)
26
Z 8103:2019
番号
用語
定義
対応英語(参考)
509
(測定の)ば
らつき
測定値がそろっていないこと。また,ふぞろいの程度。
注記1 測定のばらつきは偶然効果によって生じる。
注記2 ふぞろいの程度を表すには,例えば,標準偏差を用いることができ
る。
注記3 ISO/IEC Guide 99:2007では“測定のばらつき”は定義されていない。
dispersion
510
まちがい,
過失,
過ち
測定者が気付かずにおかした誤り,又はその結果求められた測定値。
mistake,
blunder
511
部分誤差
間接測定において,それを構成する個々の量の測定誤差によって生じる成
分。
partial
measurement
error
512
合成誤差
間接測定において,部分誤差を合成したもの。
resultant
measurement
error
513
総合誤差
種々の要因によって生じる誤差成分の全てを含めた総合的な誤差。
overall
measurement
error
514
個人誤差
測定者固有のくせによって,測定上又は調整上に生じる誤差。
personal error
515
視差
読取りに当たって,視線の方向の違いによって生じる誤差。
parallax
516
精確さ,
総合精度
測定値と測定対象量の真値との一致の度合い。
注記1 “精確さ(measurement accuracy)”は測定値と真値との一致の度合
いを表す概念であり,この概念を数値的な量の値として表す統一的
かつ共通的な方法はまだ定まっていない。より小さな測定誤差を与
える測定は,より精確さが大きい,又はより総合精度が高いと言わ
れる。
注記2 “精確さ”は,“真度(measurement trueness)”を意味する用語とし
て用いるべきではない。また,“精密さ(measurement precision)”は,
“精確さ”を意味する用語として用いるべきではない。“精確さ”は,
“真度”及び“精密さ”の二つの概念に関係しており,“測定値の真
度と精密さを含めた,測定対象量の真値との一致の度合い”である。
注記3 “精確さ”は,測定対象量に結び付けられる量の値の間の一致の度
合いとして理解されることがある。
注記4 JIS Z 8101規格群では,“measurement accuracy”を“(測定の)精確
さ”,“measurement trueness”を“(測定の)真度”,“measurement
precision”を“(測定の)精度”という。
注記5 従来,機械・物理分野では用語“精度”を精確さの意味で使ってお
り,化学分野では用語“精度”を精密さの意味で使ってきた。その
ため,見出し語は“精確さ”とした。意味の混同のおそれがない場
合は,“総合精度”又は“精度”を用いることができる。“精度”を
用いる場合,“精確さ”と“精密さ”とのどちらの意味で使っている
かを明確にしておくことが望ましい(番号518参照)。また,用語“精
確さ”を用いる場合,用語“正確さ”(番号517参照)と同じ発音で
あることに留意する。
accuracy,
measurement
accuracy
(2.13)
27
Z 8103:2019
番号
用語
定義
対応英語(参考)
517
真度,
正確さ
無限回の反復測定によって得られる測定値の平均と参照値との一致の度合
い。
注記1 “真度”は測定値のかたよりの小ささを表す概念であり,数値で表
現することはできないが,一致の度合いの尺度はJIS Z 8402規格群
に規定されている。
注記2 真度は系統誤差とは逆の関係となるが,偶然誤差には関係しない。
注記3 “精確さ(measurement accuracy)”という用語は,“真度(measurement
trueness)”の意味で用いるべきではない。また,用語“真度”の代
わりに用語“正確さ”を用いる場合,用語“精確さ”(番号516参照)
と同じ発音であることに留意する。
注記4 JIS Z 8101規格群では,“measurement accuracy”を“(測定の)精確
さ”,“measurement trueness”を“(測定の)真度”,“measurement
precision”を“(測定の)精度”という。
注記5 測定器について“推定したかたよりの限界の値で表した値”を“正
確度”ということがある。
trueness,
measurement
trueness
(2.14)
518
精密さ,
精度
指定された条件の下で,同じ又は類似の対象について,反復測定によって得
られる指示値又は測定値の間の一致の度合い。
注記1 “精密さ(measurement precision)”は,通常,指定された測定条件
下での標準偏差,分散,変動係数などの,不精密さ(imprecision)
の尺度によって数値表現する。
注記2 “指定された条件”には,例えば,繰返し条件,中間再現条件又は
再現条件がある(JIS Z 8402-1:1999参照)。
注記3 精密さは,測定の繰返し性,中間再現性及び再現性を定義するため
に用いる。
注記4 “精密さ(measurement precision)”は,精確さ(measurement accuracy)
を意味するものとして誤って用いられることがある。
注記5 JIS Z 8101規格群では,“measurement accuracy”を“(測定の)精確
さ”,“measurement trueness”を“(測定の)真度”,“measurement
precision”を“(測定の)精度”という。
注記6 従来,機械・物理分野では用語“精度”を精確さの意味で使ってお
り,化学分野では用語“精度”を精密さの意味で使ってきた。意味
の混同のおそれがない場合は,“総合精度”又は“精度”を用いるこ
とができる。“精度”を用いる場合,“精確さ”と“精密さ”とのど
ちらの意味で使っているかを明確にしておくことが望ましい(番号
516参照)。
注記7 精密さを推定した数値で表した値を“精密度”ということがある。
precision,
measurement
precision
(2.15)
519
繰返し条件,
併行精度条件
同一の測定手順,同一のオペレータ,同一の測定システム,同一の操作条件
及び同一の場所,並びに短期間での同一又は類似の対象についての反復測定
を含む一連の条件から構成される測定の条件。
注記1 ここでいう“測定の条件”は,ある特定の一連の繰返し条件だけに
関連する個々の繰返し条件(併行精度条件)である。
注記2 化学分野では,この概念を表すために“測定のシリーズ内精度条件
(intra-serial precision condition of measurement)”という用語を用いる
ことがある。
repeatability
condition
(2.20)
520
繰返し性,
併行精度
一連の測定の繰返し条件の下での測定の精密さ。
repeatability
(2.21)
28
Z 8103:2019
番号
用語
定義
対応英語(参考)
521
中間再現条件,
中間精度条件
同一の測定手順,同一の測定場所,及び長期間にわたる同一又は類似の対象
の反復測定で,その他の条件は変更することがある一連の条件から構成され
る測定の条件。
注記1 ここでいう変更には,新たな校正,キャリブレータ,オペレータ,
測定システムなどの条件が含まれる。
注記2 条件の詳述には,実行可能な程度で変更した条件及び変更しなかっ
た条件を記載することが望ましい。
注記3 化学分野では,この概念を表すために“測定のシリーズ間精度条件
(inter-serial precision condition of measurement)”という用語を用いる
ことがある。
注記4 化学分野では,“中間精度条件”又は“室内再現条件”が用いられて
いる。
注記5 “中間再現条件”は,JIS Z 8101規格群では“中間精度条件”とい
う。“再現性”の定義が,測定場所,オペレータ,測定システムの全
てが異なる“再現条件”の下での測定の精密さとなっており,一部
の条件が異なる再現性を表すために,“中間再現性”,“中間精度”が
必要とされた。測定場所が異なる再現条件は“試験所間再現条件”,
オペレータが異なる再現条件は“オペレータ間再現条件”などとい
う。
intermediate
precision
condition
(2.22)
522
中間再現性,
中間精度
一連の測定の中間再現条件の下での測定の精密さ。
注記1 関連する統計用語は,JIS Z 8402-3:1999に記載されている。
注記2 化学分野では,“中間精度”又は“室内再現性”が用いられている。
注記3 “中間再現性”は,JIS Z 8101規格群では“中間精度”という。“再
現性”の定義が,測定場所,オペレータ及び測定システムの全てが
異なる“再現条件”の下での測定の精密さとなっており,一部の条
件が異なる再現性を表すために,“中間再現性”及び“中間精度”が
必要とされた。測定場所が異なる再現性は“試験所間再現性”,オペ
レータが異なる再現性は“オペレータ間再現性”などという。
intermediate
precision
(2.23)
523
再現条件,
再現精度条件
異なる測定場所,異なるオペレータ,異なる測定システム,及び同一又は類
似の対象についての反復測定からなる一連の条件から構成される測定の条
件。
注記1 測定システムが異なれば,異なる測定手順が用いられる場合がある。
注記2 条件の詳述には,実行可能な程度で変更した条件及び変更しなかっ
た条件を記載することが望ましい。
reproducibility
condition
(2.24)
524
再現性,
再現精度
測定の再現条件の下での測定の精密さ。
注記 関連する統計用語は,JIS Z 8402-1:1999及びJIS Z 8402-2:1999に記載
されている。
reproducibility
(2.25)
525
補正
推定した系統効果に対する補償。
注記1 “系統効果”の説明については,ISO/IEC Guide 98-3:2008の3.2.3
を参照。
注記2 補償は加数,乗数などの様々の形式をとり得るものであり,表から
推論することもある。
correction
(2.53)
29
Z 8103:2019
番号
用語
定義
対応英語(参考)
526
不確かさ
測定値に付随する,合理的に測定対象量に結び付けられ得る値の広がりを特
徴づけるパラメータ。
注記1 不確かさは,補正及び測定標準の付与された量の値に付随する成分
のような,系統効果から生じる成分及び定義による不確かさを含む。
推定した系統効果を補正せず,代わりにそれに関連する不確かさの
成分を含める場合がある。
注記2 パラメータは,例えば,標準不確かさと呼ばれる標準偏差(又はそ
の指定倍量)でも,又は明示された包含確率をもつ区間の幅の半分
でもよい。
注記3 不確かさは,一般に多くの成分からなる。そのうち幾つかの成分は,
不確かさのタイプA評価に基づき,一連の測定によって得られる量
の値の統計分布から評価され,標準偏差によって特徴づけることが
できる。その他の成分は,不確かさのタイプB評価に基づき,経験
又はその他の情報に基づく確率密度関数から評価され,これも標準
偏差によって特徴づけることができる。
注記4 一般に,ある与えられた一連の情報に対して,不確かさは,報告さ
れる測定値に付随すると理解される。異なる測定値を報告する場合,
付随する不確かさも変わる。
注記5 この定義は,ISO/IEC Guide 98-3:2008に基づく。
注記6 “不確かさ”という用語が測定の不確かさを表すか否か明確でない,
又はそれを明確にすることが必要な場合,“測定不確かさ”又は“測
定の不確かさ”を用いる。
uncertainty
(2.26)
527
定義による不
確かさ
ある測定対象量の定義の詳しさが有限であることに起因する不確かさの成
分。
注記1 ある与えられた測定対象量の測定において,定義による不確かさは,
実質的に達成可能な最小の不確かさである。
注記2 定義の詳しさを変えると,定義による不確かさは変化する。
注記3 ISO/IEC Guide 98-3:2008のD.3.4及びJIS C 1005では,“定義によ
る不確かさ”の概念には“固有の不確かさ(intrinsic uncertainty)”と
いう用語が用いられている。
definitional
uncertainty
(2.27)
528
不確かさバジ
ェット
測定値の不確かさ,その不確かさを構成する成分,並びにそれらの計算及び
合成の報告。
注記 不確かさバジェットには,測定モデル,推定値と測定モデルの量に付
随する不確かさ,共分散,適用した確率密度関数のタイプ,自由度,
不確かさの評価のタイプ及び包含係数を含めることが望ましい。
uncertainty
budget
(2.33)
529
標準不確かさ 標準偏差として表した不確かさ。
standard
uncertainty
(2.30)
530
相対標準不確
かさ
標準不確かさを測定値の絶対値で除したもの。
relative standard
uncertainty
(2.32)
531
(不確かさ
の)タイプ
A評価
指定された測定条件の下で得られる一連の測定値の統計的解析による,不確
かさの一成分の評価。
注記1 種々のタイプの測定条件については,測定の繰返し条件,測定の中
間再現条件,及び測定の再現条件を参照。
注記2 統計的解析に関する情報については,例えば,ISO/IEC Guide
98-3:2008を参照。
注記3 ISO/IEC Guide 98-3:2008の2.3.2,JIS Z 8402規格群,JIS Z 8405,
JIS Z 8404-1及びJIS Z 8404-2を参照。
Type A
evaluation of
uncertainty
(2.28)
30
Z 8103:2019
番号
用語
定義
対応英語(参考)
532
(不確かさ
の)タイプ
B評価
不確かさのタイプA評価以外の方法による,不確かさの一成分の評価。
例 次の情報に基づく評価
− 権威ある公表されている量の値に付随する情報
− 認証標準物質の量の値に付随した情報
− 校正証明書から得られる情報
− ドリフトについての情報
− 検定済み測定器の精度等級から得られる情報
− 個人的経験を通して導き出される限界から得られる情報
注記 ISO/IEC Guide 98-3:2008の2.3.3を参照。
Type B
evaluation of
uncertainty
(2.29)
533
合成標準不確
かさ
測定モデルの入力量に付随する個々の標準不確かさを用いて得られる標準
不確かさ。
注記 測定モデルの入力量に相関がある場合,合成標準不確かさを計算する
ときには共分散も考慮する(ISO/IEC Guide 98-3:2008の2.3.4を参照)。
combined
standard
uncertainty
(2.31)
534
拡張不確かさ 測定結果について,合理的に測定対象量に結び付けられ得る値の分布の大部
分を含むと期待する区間を定める不確かさ。
注記1 “大部分”によって表される割合は,この区間の包含確率又は信頼
の水準とみなすことができる。
注記2 拡張不確かさが定める区間に特定の包含確率を結び付けるために
は,測定値及びその合成標準不確かさによって特徴づけられる確率
分布に関する明示的又は暗黙の仮定が必要となる。この区間に結び
付けられる包含確率は,そのような仮定が正当化できる程度以上の
厳密さで知ることはできない。
注記3 この定義は,ISO/IEC Guide 98-3:2008に基づく。
expanded
uncertainty
(2.35)
535
包含係数
拡張不確かさを得るために合成標準不確かさに乗じる数として用いる数値
係数。
注記1 包含係数は,通常2から3の範囲にある。
注記2 この定義は,ISO/IEC Guide 98-3:2008に基づく。
coverage factor
(2.38)
536
包含区間
拡張不確かさによって定まる区間で,測定値の周りの,合理的に測定対象量
に結び付けられ得る値を,ある指定した割合で含むと期待される区間。
注記1 この定義は,ISO/IEC Guide 98-3:2008に記載されている不確かさの
評価手法に関連する。
注記2 包含区間は,選択された測定値が中心である必要はない(ISO/IEC
Guide 98-3:2008/Suppl 1:2008参照)。
注記3 統計上の概念との混同を避けるため,包含区間を“信頼区間”とい
うべきではない(ISO/IEC Guide 98-3:2008の6.2.2参照)。
注記4 “ある指定した割合”を包含確率という(番号537参照)。
coverage interval
(2.36)
537
包含確率
合理的に測定対象量に結び付けられ得る値が,ある特定の包含区間に含まれ
ると期待される割合。
注記1 この定義は,ISO/IEC Guide 98-3:2008に記載されている不確かさの
評価手法に関連する。
注記2 包含確率は,ISO/IEC Guide 98-3:2008では“信頼の水準”(level of
confidence)とも言われている。これは,統計学で使用される“信頼
水準”(confidence level)とは区別される。
coverage
probability
(2.37)
31
Z 8103:2019
番号
用語
定義
対応英語(参考)
538
測定モデル,
(測定の)数
学的モデル
測定に関連していると考えられる全ての量の間の数学的関係。
注記1 測定モデルは,しばしばY=f(X1, …, Xn)の形の数式で表現される。
ここで,測定モデルの出力量Yは測定対象量で,その値は測定モデ
ルの入力量X1, …, Xnに関する情報から推測される。測定モデルは更
に一般的な数式h(Y, X1, …, Xn)=0で表現されることもある。
注記2 測定モデルにおいて,二つ以上の出力量が存在する,より複雑な場
合には,測定モデルは二つ以上の数式で表現される(ISO/IEC Guide
98-3:2008/Suppl 2:2011参照)。
measurement
model,
mathematical
model of
measurement
(2.48)
539
測定関数
量の関数であって,測定モデルの入力量に対する既知の値を用いてその関数
の値を計算した場合に,出力量の測定値となる関数。
注記1 測定モデルh(Y, X1, …, Xn)=0が,明示的にY=f(X1, …, Xn)と書ける
ならば,関数fは測定関数である。ここで,Yは測定モデルの出力
量である。さらに,一般的には,fは,入力量の値(x1, …, x)に対
応する出力量の唯一の値y=f(x1, …, xn)を算出するアルゴリズムを象
徴的に表すこともある。
注記2 測定関数は,出力量Yの測定値に付随する不確かさの計算にも用い
る。
measurement
function
(2.49)
540
(測定モデル
の)入力量
測定対象量の値を計算するために,測定しなければならない量又は別の方法
で値を得ることができる量。
例 指定の温度における鋼棒の長さが測定対象量であるとき,鋼棒の実際の
温度,その実際の温度における長さ,及びその線膨張係数は測定モデル
の入力量である。
注記1 測定モデルの入力量は,測定システムの出力量であることが多い。
注記2 指示値,補正値及び影響量は測定モデルの入力量となり得る。
input quantity
(2.50)
541
(測定モデル
の)出力量
その測定値が測定モデルの入力量の値を用いて計算される量。
output quantity
(2.51)
3.6
測定器
番号
用語
定義
対応英語(参考)
601
信号
測定対象量と関数関係にあり,測定対象量を表す量。
例1 熱電対の熱起電力は温度の情報を伝えるものであり,測定対象量とし
ての温度を表す信号である。
例2 計器の指針位置は,測定対象量の大きさを表す信号である。
注記1 信号を処理する装置に入る信号を“入力信号(input signal)”という。
注記2 信号を処理する装置から出る信号を“出力信号(output signal)”と
いう。
注記3 連続的な大きさで表した量の信号を“アナログ信号(analog signal)”
という。
注記4 数値に対応した表示で離散的な状態で表した量の信号を“ディジタ
ル信号(digital signal)”という。
signal
602
量子化
連続的な信号の大きさを幾つかの区間に区分し,各区間内を同一の値とみな
すこと。
注記 量子化を行うときに生じる誤差を“量子化誤差(quantization error)”
という。
quantization
32
Z 8103:2019
番号
用語
定義
対応英語(参考)
603
雑音,
ノイズ
測定システムに混入又は測定システム内で発生して,信号の発生,伝達,受
信の妨害となり,測定対象量との関数関係を乱すもの。
例 熱雑音,散弾雑音などに基づく周波数の広帯域にわたるホワイトノイ
ズ,低周波で特に大きくなる1/fノイズ,外部の火花放電などによって
ランダムに入るパルス状ノイズ,交流電源周波数のハムノイズ
注記1 雑音が継続して存在するとき,その平均的な水準を“雑音レベル
(noise level)”という。
注記2 雑音には,振幅が連続に不規則に変動するもの,パルス状又はステ
ップ状に変化するものがある。
noise
604
SN比
信号パワーの雑音パワーに対する比。普通はデシベルで表す。
注記 インパルス雑音に対しては信号と雑音とのピーク値の比をとることが
ある。
signal-to-noise
ratio
605
検出
測定対象量を信号として取り出すこと。
detection
606
変換
信号又は量を,それに対応する他の種類の信号若しくは量,又は同じ種類の
信号若しくは量に変えること。
注記1 変換をするための器具又は物質を“変換器(signal converter)”とい
う。例えば,スプリング・スケールのばね,AD変換器。
注記2 アナログ信号をディジタル信号に変換することを“AD変換
(analog-to-digital conversion)”という。
注記3 ディジタル信号をアナログ信号に変換することを“DA変換
(digital-to-analog conversion)”という。
signal conversion
607
伝送
検出器,伝送器などからの信号を,受信器に送り伝えること。
注記 伝送を行うためには,信号に変換する,又は信号の大きさを変える機
能が必要である。
transmission
608
増幅
入力信号よりも高いレベルの出力信号を与えること。
注記1 増幅を行うためには,エネルギー供給源をもつことが必要である。
エネルギー供給源をもたない“てこ”による変位の拡大などとは区
別すべきである。
注記2 増幅するための器具を“増幅器(amplifier)”という。
amplification
609
表示
測定対象量の値,物理的状態などを観測者に表し示すこと。
display
610
記録
測定対象量の値,物理的状態を後から読み取れるように残し示すこと。
recording
611
補償
測定対象量以外の量に基づく望ましくない影響を相殺するための対策。
注記1 特に影響量を別に測定し修正するのではなく,自動的に差し引かれ
るような対策をいう。
注記2 補償をするための器具を“補償器(compensator)”という。例えば,
振り子の温度変化による伸縮を自動的に修正する補正振り子。
compensation
612
測定器,
計測器
測定を行うために,単独で,又は1台以上の補助装置と併せて用いる装置。
注記1 単独で使用可能な測定器は,測定システムである。
注記2 測定器は,指示測定器又は実量器である。
注記3 特に機械的運動を用いて測定するものを“測定機”ということがあ
る。
注記4 “測定器”と“計測器”との違いは,番号103“測定”及び番号101
“計測”の定義を参照する。
measuring
instrument
(3.1)
613
測定システム 1台又はそれ以上の測定器と,しばしば,試薬又は補給品を含む周辺装置と
のセットを組み立てて調整したもので,指定した種類の量に対して,指定し
た区間内の測定値を生み出す情報を得るためのもの。
注記 測定システムは,1台の測定器だけからなることもある。
measuring system
(3.2)
33
Z 8103:2019
番号
用語
定義
対応英語(参考)
614
指示測定器,
指示計器
測定される量の値に関する情報を伝える出力信号を与える測定器。
例 電圧計,マイクロメータ,電子天びん
注記1 指示測定器には,その指示値の記録を出力するものもある。
注記2 出力信号は,視覚的又は聴覚的に示されることがある。出力信号は,
1台以上の別の装置に伝送されることもある。
indicating
measuring
instrument
(3.3)
615
表示測定器,
表示計器
出力信号を視覚的に表示する指示測定器。
displaying
measuring
instrument
(3.4)
616
実量器
一つ以上のある与えられた種類の量について,それぞれが付与された量の値
をもち,その使用期間中は,常に再現又は供給する装置。
例 標準分銅,体積用ます(目盛の有無にかかわらず,一つ以上の値を供給
するものがある。),標準電気抵抗器,直尺(ものさし),ブロックゲー
ジ,標準信号発生器,認証標準物質
注記1 実量器の指示値は,付与された量の値である。
注記2 実量器は,測定標準となる場合がある。
material measure
(3.6)
617
測定トランス
デューサ
入力量に対してある特定の関係をもつ出力量を提示する,測定に用いる装
置。
例 変流器,ひずみゲージ,pH電極,ブルドン管,バイメタル片,ロード
セル
注記 “変換器”と同じ意味で用いることがある。
transducer
(3.7)
618
センサ
測定しようとする量を伝える現象,物体又は物質によって直接的に影響を受
ける測定システムの要素。
例 白金抵抗温度計の抵抗素子,タービン流量計の回転子,圧力ゲージのブ
ルドン管,液面測定器の浮き,分光計のフォトセル,温度に依存して変
色するサーモトロピック液晶
注記 分野によっては,“検出器(detector)”という用語をセンサの概念とし
て用いる。
sensor
(3.8)
619
検出器
ある量がしきい(閾)値を超えたときに,その量と関連する現象,物体又は
物質の存在を示す装置又は物質。
例 ハロゲン漏れ検出器,リトマス試験紙
注記1 分野によっては,“検出器(detector)”という用語をセンサの概念と
して用いる。
注記2 化学分野では,“指示薬(indicator)”という用語を検出器の概念とし
てよく用いる。
detector
(3.9)
620
ゼロ検出器
零位法における不平衡信号がゼロであるかどうかを検知する器具。
例 ホイートストンブリッジ又は電位差計の不平衡を検知する検流計,天び
んの指針及び度表
null detector,
zero detector
621
比較器
二つの量の値の大小を比較し,その差に対応する信号を与える器具。
例 2個のブロックゲージの長さの差を知るレベル・コンパレータ,天びん
comparator
622
測定系列
センサから出力要素に至る,単一の信号経路を構成する測定システムの一連
の要素。
例1 マイクロホン,減衰器,フィルター,増幅器及び電圧計から構成され
る電子音響式の測定系列
例2 ブルドン管,てこの機構,二つの歯車及び機械式ダイヤルから構成さ
れる機械式の測定系列
measuring chain
(3.10)
34
Z 8103:2019
番号
用語
定義
対応英語(参考)
623
(測定システ
ムの)調整
ある与えられた測定しようとする量の値に対応して所定の指示値を示すよ
うに,測定システムに施す一連の操作。
注記1 測定システムの調整の種類は,測定システムのゼロ調整,オフセッ
ト調整,及びスパン調整(ゲイン調整ともいう。)を含む。
注記2 測定システムの調整を,調整の前提条件となる校正と混同すべきで
はない。
注記3 測定システムの調整後に,通常は再校正が行われる。
adjustment of a
measuring
system
(3.11)
624
(測定システ
ムの)ゼロ
調整
測定しようとする量のゼロ値(zero value)に対応して,ゼロ指示値(null
indication)を示すようにする測定システムの調整。
zero adjustment
(of a measuring
system)
(3.12)
625
(表示測定器
の)目盛
表示測定器の一部として,量の値と順序よく対応付けられた記号の集合。
scale of a
displaying
measuring
instrument
(3.5)
626
(表示測定器
の)目
相隣る目盛線で区切られた部分(下図参照)。
注記1 表示測定器の相隣る目盛線の間隔を“目幅”という。
注記2 表示測定器の目幅に対応する測定対象量の大きさを“目量”という。
目量(1目の読み)=0.2 mV
最大目盛値=15 mV
最小目盛値=5 mV
目盛スパン=15 mV−5 mV
=10 mV
scale division
627
(表示測定器
の)指標
目盛に対する位置によって指示値を決定することができる表示装置の固定
部分又は可動部分。
例 電圧計,電流計などの目盛板上を動く針
注記 針又は矢状の実体のある指標を“指針”という。
index
3.7
測定器の特性及び性能
番号
用語
定義
対応英語(参考)
701
応答
測定器への入力信号に対して出力が対応するありさま。
response
702
静特性
時間的に変化しない測定対象量に対する,測定器の応答の特性。
static
characteristics
703
動特性
時間的に変化する測定対象量に対する,測定器の応答の特性。
dynamic
characteristics
704
直線性
入力信号と出力信号との間の直線関係からのずれの小さい程度。
linearity
35
Z 8103:2019
番号
用語
定義
対応英語(参考)
705
指示値
測定器又は測定システムが提示する量の値。
注記1 指示値は,視覚若しくは聴覚の形式で表されることもあり,又は別
の装置に伝送されることもある。指示値は,アナログ出力の場合は
ディスプレイ上の指針の位置,ディジタル出力の場合は表示又は印
字された数字,コード出力の場合はコードパターン,実量器の場合
は付与された量の値で示されることがある。
注記2 測定される量の指示値と,それに対応する量の値とは,必ずしも同
じ種類の量の値とは限らない。
注記3 主にディジタル計器の場合,“表示値”ともいう。
注記4 測定対象について測定器から得たままの値を“読み(reading)”,又
は“読み値(reading)”ということもある。
indication
(4.1)
706
公称値
測定器又は測定システムを適切に用いるための手引となる,測定器又は測定
システムを特徴づける量の丸め値又は近似値。
例1 標準抵抗器に表示された公称値としての100 Ω
例2 単一標線をもつ容量フラスコに表示された公称値としての1 000 mL
例3 塩化水素(HCl)溶液の物質量濃度の公称値としての0.1 mol/L
例4 冷凍保存のための上限温度としての−20 ℃
nominal value
(4.6)
707
器差
a) 指示値から真値を引いた値。
b) 標準器の公称値から真値を引いた値。
注記1 一般的に真値の代用として参照値が用いられる。
注記2 正しい値を得るには指示値又は公称値から器差を引けばよい。
instrumental error
708
固有誤差
指定された標準状態における測定器又は測定システムの誤差。
例 標準状態(20 ℃)の下で,測定器の誤差が0.5 %であり,温度が5 ℃の
とき0.8 %だけ余分に誤差を生じるとき,固有誤差は0.5 %,付加誤差は
0.8 %である。
intrinsic error
709
付加誤差
影響量の値が指定された標準状態の値と異なるために生じる測定器又は測
定システムの誤差。
例 番号708の例を参照。
complementary
error
710
ブランク指示
値,
バックグラウ
ンド指示値
該当する量が,存在していない又は指示に寄与していないと推測される,測
定対象に類似した現象・物体・物質から得られる指示値。
blank indication,
background
indication
(4.2)
711
指示区間
指示可能な両端の値によって区切られた量の値の集合。
注記1 指示区間は,通常,その最小と最大との量の値によって記述される
(例えば,“99 V〜201 V”)。
注記2 分野によっては,“指示範囲(range of indications)”ともいう。
indication
interval
(4.3)
712
公称指示区間 測定器又は測定システムの制御系の特定の設定によって得られ,かつ,その
設定を指定するために用いる,両端の指示値の丸め値又は近似値によって区
切られた量の値の集合。
注記1 公称指示区間は,通常,その最小と最大との量の値で記述される(例
えば,“100 V〜200 V”)。
注記2 分野によっては,“公称区間(nominal interval)”,“公称範囲(nominal
range)”ともいう。
nominal
indication
interval
(4.4)
713
公称指示区間
の範囲
公称指示区間の両端の量の値の差の絶対値。
例 公称指示区間が,−10 V〜+10 Vの場合,公称指示区間の範囲は20 V
である。
注記 公称指示区間の範囲を,“公称区間のスパン(span of a nominal
interval)”ともいう。
range of a
nominal
indication
interval
(4.5)
36
Z 8103:2019
番号
用語
定義
対応英語(参考)
714
測定区間
定義された条件下で,ある与えられた測定器又は測定システムによって,特
定の機器による不確かさで測定することができる同じ種類の量の値の集合。
注記1 分野によっては,“測定の範囲(measuring range)”又は“測定範囲
(measurement range)”ともいう。また,測定器について述べている
ことが分かる場合には“使用区間(working interval)”ともいう。
注記2 測定区間の下限値を,検出限界と混同すべきではない。
measuring
interval
(4.7)
715
定常動作条件 測定対象量が時間とともに変動したとしても,校正によって確立された関係
が妥当な状態を保つ測定器又は測定システムの動作条件。
steady-state
operating
condition
(4.8)
716
定格動作条件 測定器又は測定システムが設計どおりに機能するために,測定中に満たさな
ければならない動作条件。
注記 定格動作条件は,測定される量及び影響量の値の区間を指定する。
rated operating
condition
(4.9)
717
限界動作条件 定格動作条件下で継続して動作させるとき,損傷することなく,また,指定
された測定に関わる特性を低下させることなく維持するために,測定器又は
測定システムに要求される極限の動作条件。
注記1 保存,輸送又は運転のための限界条件はそれぞれ異なることがある。
注記2 限界条件には,測定される量及び影響量の限界値も含まれることが
ある。
limiting operating
condition
(4.10)
718
参照動作条件 測定器若しくは測定システムの性能を評価するため,又は複数の測定結果を
比較するために,あらかじめ定められた動作条件。
注記1 参照動作条件は,測定対象量及び影響量の値の区間を指定する。
注記2 IEC 60050-300:2001の311-06-02における“参照条件”は,対象の機
器による不確かさが可能な限り最小となる動作条件を指している。
注記3 この用語の定義に示す意味で,用語“標準状態”が多くの規格で用
いられている。“標準状態”は,一般に,一つ又は二つ以上の影響量
の基準値(reference values)又は基準範囲(reference ranges)の組合
せで示す。
reference
operating
condition
(4.11)
719
(測定システ
ムの)感度
測定される量の値の変化に対する,測定システムの指示値の変化の比率。
注記1 測定システムの感度は,測定される量の値に依存することがある。
注記2 測定される量の値の変化は,分解能より大きい。
sensitivity of a
measuring
system
(4.12)
37
Z 8103:2019
番号
用語
定義
対応英語(参考)
720
(測定システ
ムの)選択
性
指定された測定手順を用いて,測定対象の現象・物体・物質中の他の測定対
象量又は他の量とは独立に,一つ以上の測定対象量に測定値を与える,測定
システムの性質。
例1 二つの特定の化合物が生成するイオン電流の比を,他の特定の電流発
生源による妨害なしに測定する質量分析計を含む測定システムの能力
例2 ある与えられた周波数の信号成分の電力を,別の周波数の他の信号又
は信号成分によって妨害を受けることなく測定する,測定システムの
能力
例3 求める信号と不要な信号とを識別する受信機の能力。不要な信号は,
多くの場合,求める信号の周波数から僅かに異なる周波数をもつ。
例4 混在する放射線の存在下で,測定すべきある与えられた放射線に反応
する電離放射線測定システムの能力
例5 ヤッフェ法に従って血しょう(漿)中のクレアチニンの物質量濃度を,
グルコース,尿酸塩,ケトン及びタンパク質濃度の影響を受けること
なく測定する測定システムの能力
例6 地質堆積物に由来するけい(珪)素中の28Si同位元素及び30Si同位元
素の物質量の存在量を,両同位元素又は29Si同位元素の影響を受ける
ことなく測定する質量分析計の能力
注記1 物理学では,測定対象量はしばしば一つだけであり,他の量は測定
対象量と同じ種類の量で,それらは測定システムの入力量である。
注記2 化学では,測定される量は,測定対象のシステムの中の様々な成分
を含むことが多く,それらの量は必ずしも同じ種類の量であるとは
限らない。
注記3 化学では,測定システムの選択性は,通常,定められた濃度区間に
ある選択成分の量について得られる。
注記4 物理学で用いる選択性(注記1参照)は,化学で用いることがある
特異性(specificity)に近い概念である。
selectivity of a
measuring
system
(4.13)
721
分解能
対応する指示値が感知できる変化を生じる,測定される量の最小の変化。
注記 分解能は,例えば,ノイズ(内部又は外部)又は摩擦に依存すること
がある。さらに,測定される量の値に依存することもある。
resolution
(4.14)
722
表示装置の分
解能
有意に区別できる表示される指示値の間の最小差。
resolution of a
displaying
device
(4.15)
723
識別しきい
(閾)値,
識別限界
対応する指示値に検出可能な変化を生じない,測定される量の値の最大の変
化。
注記1 識別しきい(閾)値は,例えば,ノイズ(内部又は外部の)又は摩
擦に依存することがある。さらに,測定される量の値,及び変化の
与え方に依存することもある。
注記2 測定される量の値にヒステリシスが存在する場合,識別しきい(閾)
値と分解能は異なる値となる。
注記3 値ではなく測定器の能力を示す場合には“識別能”という用語が用
いられる。
discrimination
threshold
(4.16)
724
不感帯
対応する指示値に検出可能な変化を与えることなく,両方向に変化し得る測
定される量の値の最大区間。
注記1 不感帯は,変化の速さに依存することがある。
注記2 入力信号の小さな変化に対する出力の変化を防ぐために,不感帯は
故意に大きくされることもある。
dead band
(4.17)
38
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番号
用語
定義
対応英語(参考)
725
検出限界
ある与えられた測定手順によって検出できる最小の量の値。
注記1 ISO/IEC Guide 99:2007では,“誤って物質中にある成分が存在しな
いとする確率がβ,誤って存在するとする確率がαとなる,ある与
えられた測定手順によって得られる測定値”と定義されている。
注記2 IUPACは,注記1内のα及びβの通常の設定値(default value)を
0.05とするように勧告している。
注記3 LOD(limit of detection)という略語を用いることがある。
注記4 “検出限界”の代わりに,“感度”という用語を用いないほうがよい。
detection limit
(4.18)
726
(測定器の)
安定性
測定器の特性が時間的に一定であるという測定器の性質。
注記1 安定性は,幾つかの方法で定量化される。
例1 ある特性が表示された量だけ変化する場合の継続時間による
定量化
例2 記述された継続時間での特性の変化による定量化
注記2 長期の時間経過に伴って生じる特性の変化を“経年変化”という。
stability of a
measuring
instrument
(4.19)
727
機器のかたよ
り
測定器について複数回の指示値の平均から,参照値を引いたもの。
instrumental bias
(4.20)
728
機器のドリフ
ト
測定器の特性の変化による,指示値の連続的又は漸進的な経時的変化。
注記 機器のドリフトは,測定される量の変化にも,認識されたいかなる影
響量の変化にも関係しない。
instrumental drift
(4.21)
729
ヒステリシス
差
測定の履歴によって生じる同一の測定対象量に対する指示値の差。
hysteresis error
730
影響変動値
一つの影響量が連続的に異なる二つの値をとると想定するときの,ある与え
られた測定値に対する指示値の差,又は実量器が提示する量の値の差。
variation due to
an influence
quantity
(4.22)
731
機器による不
確かさ
測定器又は測定システムに起因する不確かさの成分。
注記1 機器による不確かさは,測定器又は測定システムの校正によって求
められるが,一次測定標準に関しては別の手段を用いる。
注記2 機器による不確かさは,不確かさのタイプB評価に用いる。
注記3 機器による不確かさに関する情報は,その機器の仕様に記載されて
いる場合がある。
instrumental
uncertainty
(4.24)
732
精度等級
指定された動作条件下で,測定誤差又は機器による不確かさを指定された限
界内に保つことを意図して指定された要求事項を満たす測定器又は測定シ
ステムの等級。
注記1 精度等級は,通常,取決めによって採択された数又は記号で表示す
る。
注記2 精度等級は,実量器にも適用できる。
accuracy class
(4.25)
733
許容差
基準にとった値と,それに対して許容される限界の値との差。
注記1 一般に,“公差”は“指定された最大値と最小値との差”の意味で用
いられる。
注記2 計量法では,検定公差,基準器公差のように,“許容差”の意味で“公
差(対応英語はtolerance)”が用いられている。
注記3 英語の用語“tolerance”は,日本語の用語“許容差”又は“公差”
の意味で用いられている。
注記4 “ばらつきが許容される限界の値”の意味で“許容差”が用いられ
ることがあるが,“最大許容誤差”又は“誤差限界(limit of error)”
を用いることが望ましい。
注記5 許容差は,基準にとった値に対する比又は百分率で表すこともある。
tolerance
39
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番号
用語
定義
対応英語(参考)
734
最大許容誤差 既知の参照値に関して,ある与えられた測定,測定器又は測定システムの仕
様又は規則によって許されている測定誤差の極限値。
注記1 “最大許容誤差”は,二つの極限値がある場合に用いられる。また,
同じ意味で“誤差限界(limit of error)”が用いられている。
注記2 “最大許容誤差(maximum permissible error)”を指すときは,“公差
(tolerance)”という用語を用いるべきではない。
注記3 電気分野では,“指定された条件における最大許容誤差で表した測
定器の精度”の意味で,“確度”が用いられている。
maximum
permissible
error
(4.26)
735
データム測定
誤差
指定された測定値における,測定器又は測定システムの測定誤差。
注記 データム測定誤差を“基値誤差”ともいう。
datum
measurement
error
(4.27)
736
ゼロ点誤差
指定された測定値がゼロである場合のデータム測定誤差。
注記 “ゼロ点誤差”を測定誤差がないことと混同すべきではない。
zero error
(4.28)
737
ヌル不確かさ 指定された測定値がゼロである場合の不確かさ。
注記1 ヌル不確かさは,ヌル又はゼロ近傍の指示値に関連し,測定対象量
が小さすぎて検出できないのか,又は測定器の指示値が単にノイズ
によるものなのか分からない場合の区間を含む。
注記2 “ヌル不確かさ”の概念は試料の測定とブランクの測定との間に差
がある場合にも適用できる。
null measurement
uncertainty
(4.29)
738
校正曲線
指示値と,それに対応する測定値との関係の表現。
注記1 校正曲線は1対1の関係を表すが,不確かさに関する情報を含んで
いないため,測定結果を提供するものではない。
注記2 化学分析では,“検量線”という。
calibration curve
(4.31)
739
校正ダイアグ
ラム
指示値と,それに対応する測定結果との関係の図式表現。
注記1 校正ダイアグラムは,指示値の軸及び測定結果の軸によって定義さ
れる帯状の平面であり,それは指示値と測定値の集合との関係を表
す。1対多数の関係が示され,任意の指示値に対する帯の幅は機器
による不確かさを与える。
注記2 この関係を表す別の方法として,校正曲線,及びそれに付随する不
確かさ,校正表又は関数の集合がある。
注記3 この概念は,機器による不確かさが測定標準の量の値に付随する不
確かさと比べて大きい場合の校正に当てはまる。
calibration
diagram
(4.30)
3.8
統計解析
番号
用語
定義
対応英語(参考)
801
測定値の母集
団
同一条件の下で求められるべき,全ての測定値(無限個)の集まり。
population of
measured
values
802
測定値の標本 同一条件の下でランダムに求められる有限個の測定値の一組。
注記1 測定値の母集団から各々の測定値を,同一の確率でランダムに抜き
取ったとき,その測定値の一組が,測定値の標本である。
注記2 “標本”は“試料”又は“サンプル”ともいう。
sample of
measured
values
803
有効数字
測定値などを表す数字のうちで,位取りを示すだけの0を除いた,意味があ
る数字。
注記 データ処理上で意味がある数字と,測定上で意味がある数字とは必ず
しも一致しない。
significant digits
40
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番号
用語
定義
対応英語(参考)
804
平均,
平均値
a) 測定値の標本については,測定値を全部加えて,その個数で除した値。
すなわち,測定値の算術平均。
b) 測定値の母集団では,確率密度関数をf(x) とするとき,次の式で表され
るμの値。
∫∞∞
−
=
x
x
xf
μ
d)
(
注記 測定値の母集団についての平均を母平均(population mean)といい,
測定値の標本についての平均を標本平均(sample mean)という。
mean,
mean value
805
重み付き平均 測定値x1, x2, …, xnについて,重みw1, w2, …, wnを与えた,次の式で表される
値。
∑
∑
=
=
n
i
i
n
i
i
i
w
x
w
1
1
ここに,重みw1, w2, …, wnは負でない実数。
weighted mean
806
中央値,
メディアン
a) 測定値の標本については,測定値を大きさの順に並べたとき,ちょうど
その中央の値(奇数個の場合)又は中央を挟む二つの値の算術平均(偶
数個の場合)。
b) 測定値の母集団では,確率密度関数をf(x) とすれば
2
1
d)
(
d)
(
=
=∫
∫
∞
∞
−
a
a
x
x
f
x
x
f
となるようなaの値。
median
807
分散
a) 測定値の標本(x1, x2, …, xn)については,次の式で表される値。
∑
=
−
−
n
i
i
x
x
n
1
2)
(
1
1
ここに,x:標本平均
b) 測定値の母集団では,確率密度関数をf(x)とするとき,次の式で表され
るσ2の値。
∫∞∞
−
−
=
x
x
f
μ
x
σ
d)
(
)
(
2
2
ここに,μ:母平均
注記 測定値の標本についての分散を不偏分散(mean square)ともいい,測
定値の母集団についての分散を母分散(population variance)ともいう。
variance
808
標準偏差
分散の正の平方根。
注記 不偏分散の正の平方根を標本標準偏差又は実験標準偏差(experimental
standard deviation)ともいう。
standard
deviation
809
回帰直線
変数xを固定したとき,確率変数yの期待値がxの一次関数で表される場合
の直線式。
注記 xに対するyの回帰線とyに対するxの回帰線とは一般に一致しない。
一般的には,変数x1, x2, …, xpを固定したとき,変数yの母平均μがこ
れらx1,x2,…,xpの関数で表されるとき,これをx1, x2, …, xpに対するy
の回帰関数(regression function)という。
特に,μがx1, x2, …, xpの一次式及び定数項で表される場合,これを
μ=β0+β1x1+β2x2+…+βpxp
とすると,βiをxiに対するyの回帰係数(regression coefficient),また,
β0を定数項という。
regression line
810
信頼限界
母数θに対して,測定値から定められる下と上の限界TL(x1, x2, …, xn), TU(x1,
x2, …, xn) であって,これらが真値θを挟む確率が,例えば,95 %(又はそ
れ以上)であることが保証されるような限界。
注記 上記の確率を信頼率(confidence level)という。
confidence limits
41
Z 8103:2019
番号
用語
定義
対応英語(参考)
811
信頼区間
信頼限界に挟まれる区間。
confidence
interval
812
変動係数
標準偏差を平均で除した値。
注記 普通,百分率で表す。変動係数は,ばらつきを相対的に表すもので,
通常,変数がとる値が決して負にならない場合に用いられる。
coefficient of
variation
813
外れ値
同一条件下で得られた一組の測定値のうち,なんらかの原因によって他と著
しく飛び離れた値。
注記 厳密には,一組の他の測定値と母集団とが異なるものと,統計的に判
断された値をいう。統計的に検定される以前の値は,疑わしい値であ
る。
outlier
814
共分散
a) 測定値の標本については,2変数x,yに関するn組の測定値 (x1, y1), (x2,
y2), …, (xn, yn) から,次の式によって表される値。
∑
=
−
−
−
n
i
i
i
y
y
x
x
n
1
)
)(
(
1
1
ここに,x:xの標本平均
y:yの標本平均
b) 測定値の母集団では,x, yの同時確率密度関数をh(x, y) とするとき,次
の式で表される値。
∫∫
∞
∞
−
∞
∞
−
−
−
y
x
y
x
h
ν
y
μ
x
d
d)
,
(
)
)(
(
ここに,μ:xの母平均
ν:yの母平均
covariance
815
相関係数
a) 測定値の標本については,2変数x, yに関するn組の測定値 (x1, y1), (x2,
y2), …, (xn, yn) から,次の式によって表される値。
∑
∑
∑
=
=
=
−
−
−
−
=
n
i
i
n
i
i
n
i
i
i
y
y
x
x
y
y
x
x
r
1
2
1
2
1
)
(
)
(
)
)(
(
b) 測定値の母集団では,xの周辺確率密度関数をf(x), yの周辺確率密度関
数をg(y) 及びx,yの同時確率密度関数をh(x, y) とするとき,次の式で
表される値。
∫
∫
∫∫
∞
∞
−
∞
∞
−
∞
∞
−
∞
∞
−
−
−
−
−
=
y
y
g
ν
y
x
x
f
μ
x
y
x
y
x
h
ν
y
μ
x
ρ
d)
(
)
(
d)
(
)
(
d
d)
,
(
)
)(
(
2
2
ここに,μ:xの母平均
ν:yの母平均
注記 測定値の標本についての相関係数を標本相関係数といい,測定値の母
集団についての相関係数を母相関係数という。
coefficient of
correlation
42
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参考文献
<全般>
[1] ISO/IEC Guide 99:2007,International vocabulary of metrology−Basic and general concepts and associated
terms (VIM)
注記 これはJCGM 200:2007と同じである。ただし,JCGM 200の最新版は以下である。
JCGM 200:2012 (JCGM 200:2008 with minor corrections),International vocabulary of metrology
−Basic and general concepts and associated terms (VIM 3rd edition)
[2] ISO/IEC Guide 98-3:2008 (GUM:1995),Uncertainty of measurement−Part 3: Guide to the expression of
uncertainty in measurement
注記 これは以下と同じである。
JCGM 100:2008 (GUM 1995 with minor corrections),Evaluation of measurement data−Guide to
the expression of uncertainty in measurement
[3] JIS Z 8101規格群[ISO 3534シリーズ]
JIS Z 8101-1 統計−用語及び記号−第1部:一般統計用語及び確率で用いられる用語
JIS Z 8101-2 統計−用語及び記号−第2部:統計の応用
JIS Z 8101-3 統計−用語と記号−第3部:実験計画法
<3.2量及び単位>
[4] JIS Z 8000規格群[ISO 80000シリーズ及びIEC 80000シリーズ]
JIS Z 8000-1 量及び単位−第1部:一般
JIS Z 8000-3 量及び単位−第3部:空間及び時間
JIS Z 8000-4 量及び単位−第4部:力学
JIS Z 8000-5 量及び単位−第5部:熱力学
JIS Z 8000-6 量及び単位−第6部:電磁気
JIS Z 8000-7 量及び単位−第7部:光
JIS Z 8000-8 量及び単位−第8部:音
JIS Z 8000-9 量及び単位−第9部:物理化学及び分子物理学
JIS Z 8000-10 量及び単位−第10部:原子物理学及び核物理学
JIS Z 8000-11 量及び単位−第11部:特性数
JIS Z 8000-12 量及び単位−第12部:固体物理学
[5] BIPM: The International System of Units (SI), 8th edition, 2006
<3.3測定方法>
[6] IEC 60050-300:2001,International Electrotechnical Vocabulary−Electrical and electronic measurements and
measuring instruments−Part 311: General terms relating to measurements−Part 312: General terms relating to
electrical measurements−Part 313: Types of electrical measuring instruments−Part 314: Specific terms
according to the type of instrument
<3.4トレーサビリティ及び測定標準>
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[8] ISO 5436-2:2012,Geometrical product specifications (GPS)−Surface texture: Profile method; Measurement
43
Z 8103:2019
standards−Part 2: Software measurement standards
[9] 世界保健機関(WHO)国際標準第4版1999,75/589/WHO 75/589,Chorionic gonadotrophin, human,
1999
[10] JIS Q 0031 標準物質−認証書,ラベル及び附属文書の内容[ISO Guide 31:2000]
[11] JIS Q 17034 標準物質生産者の能力に関する一般要求事項[ISO Guide 34:2000]
[12] JIS Q 0035 標準物質−認証のための一般的及び統計的な原則[ISO Guide 35:2006]
[13] EMONS, H., FAJGELJ, A., VAN DER VEEN, A.M.H. and WATTERS, R., New definitions on reference
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[14] ISO 15189:2007,Medical laboratories−Particular requirements for quality and competence
注記 この規格は改訂され2012年版が最新である。
[15] BIPM, Consultative Committee for Amount of Substance (CCQM)−5th Meeting (February 1999)
[16] ISO 17511:2003,In vitro diagnostic medical devices−Measurement of quantities in biological samples−
Metrological traceability of values assigned to calibrators and control materials
[17] P.J. MOHR, B.N. TAYLOR, D.B. NEWELL, Recommended Values of the Fundamental Physical Constants:
2002, Reviews of Modern Physics, 77, 2005, 107 pp.
http://physics.nist.gov/constants
<3.5誤差及び不確かさ>
[18] JIS C 1005 電気・電子計測器の性能表示[IEC 60359:2001]
[19] JIS Z 8402規格群[ISO 5725シリーズ]
JIS Z 8402-1 測定方法及び測定結果の精確さ(真度及び精度)−第1部:一般的な原理及び定義
JIS Z 8402-2 測定方法及び測定結果の精確さ(真度及び精度)−第2部:標準測定方法の併行精度及
び再現精度を求めるための基本的方法
JIS Z 8402-3 測定方法及び測定結果の精確さ(真度及び精度)−第3部:標準測定方法の中間精度
JIS Z 8402-4 測定方法及び測定結果の精確さ(真度及び精度)−第4部:標準測定方法の真度を求め
るための基本的方法
JIS Z 8402-5 測定方法及び測定結果の精確さ(真度及び精度)−第5部:標準測定方法の精度を求め
るための代替法
JIS Z 8402-6 測定方法及び測定結果の精確さ(真度及び精度)−第6部:精確さに関する値の実用的
な使い方
[20] JIS Z 8404-1 測定の不確かさ−第1部:測定の不確かさの評価における併行精度,再現精度及び真度
の推定値の利用の指針[ISO 21748]
[21] JIS Z 8404-2 測定の不確かさ−第2部:測定の不確かさの評価における繰返し測定及び枝分かれ実験
の利用の指針[ISO/TS 21749]
[22] JIS Z 8405 試験所間比較による技能試験のための統計的方法[ISO 13528]
[23] ISO/IEC Guide 98-3:2008/Suppl 1:2008 (JCGM/WG1/101),Propagation of distributions using a Monte Carlo
method
注記 これは以下と同じである。
JCGM 101:2008,Evaluation of measurement data−Supplement 1 to the “Guide to the expression of
uncertainty in measurement”−Propagation of distributions using a Monte Carlo method
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略語表
BIPM(International Bureau of Weights and Measures):国際度量衡局
CCQM(Consultative Committee for Amount of Substance−Metrology in Chemistry & Biology):国際度量衡委
員会物質量諮問委員会
CGPM(General Conference of Weights and Measures):国際度量衡総会
CIPM(International Committee of Weights and Measures):国際度量衡委員会
CODATA(Committee on Data for Science and Technology):科学技術データ委員会
IAEA(International Atomic Energy Agency):国際原子力機関
ICSU(International Council for Science):国際科学会
IEC(International Electrotechnical Commission):国際電気標準会議
IFCC(International Federation of Clinical Chemistry and Laboratory Medicine):国際臨床化学連合
ILAC(International Laboratory Accreditation Cooperation):国際試験所認定協力機構
ISO(International Standard Organization):国際標準化機構
ISO/REMCO(ISO Committee on Reference Materials):ISO標準物質委員会
IUPAC(International Union of Pure and Applied Chemistry):国際純正・応用化学連合
IUPAC-CIAAW(IUPAC Commission on Isotopic Abundances and Atomic Weights):IUPAC原子量および同位
体存在度委員会
OIML(International Organization of Legal Metrology):国際法定計量機関
VIML(International Vocabulary of Terms in Legal Metrology):国際法定計量用語集
WHO(World Health Organization):世界保健機関