Z 7260-305 : 2000
(1)
まえがき
この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,通商産業大臣が制定した日
本工業規格である。
今回の制定に際しては,海外規格との整合性を図るため,OECD GUIDELINES FOR TESTING OF
CHEMICALS PROPOSAL FOR UPDATING GUIDELINE 305, Bioconcentration : Flow-through Fish Test
(1996
年 6 月 14 日採択)を基礎として用いた。
JIS Z 7260-305 : 2000
には,次に示す附属書がある。
附属書 1(規定) OECD GUIDELINES FOR TESTING OF CHEMICALS の引用文献
附属書 2(参考) ガイドラインに示される試験法の具体的内容例の提示
日本工業規格
JIS
Z
7260-305
: 2000
生物濃縮(水からの直接濃縮):
魚類を用いる連続流水式試験方法
Bioconcentration : Flow-through fish test
序文 この規格は 1996 年 6 月 14 日に採択さ れた OECD 化 学品テストガイドラ イン No.305 ,
Bioconcentration : Flow-through fish test
(以下,
“OECD 規格”という。
)を翻訳し,技術的内容を変更する
ことなく作成した日本工業規格である。
参考 1996 年 6 月 14 日に採択された OECD 化学品テストガイドライン No.305 は,それまでの OECD
化学テストガイドライン(文献 1)に挙げられていた No.305A∼No.305E を一つに統合したもの
である。特に,欧州経済共同体 (EEC) のリングテスト(文献 2)の結果に基づき,修正された
No.305E
の内容が大幅に取り入れられている。
1.
適用範囲 魚介類のうち特に魚類の体内における化学物質の濃縮の度合いを知る方法について記述す
る。ここでは試験を実施するに十分な細目が述べられているが,各試験施設固有の状況を考慮して試験設
計を変更し,また,被験物質の特性に応じてその内容を変更してもよい。なお,試験系には連続流水式が
推奨されるが,試験の有効性の基準を満たせば半止水式を採用してもよい。
なお,この規格で点線の下線を施してある箇所は,OECD 規格にはない事項である。
参考 各試験施設固有の状況及び被験物質の性質,更には試験の目的に応じて試験設計が変更される
ことがある。例えば以下の項目が試験設計の変更に関係することになる。
附属書 2(参考)に
各項目の具体的な内容を示した。
1)
濃縮平衡,定常状態の確認[3.4)参照]
2)
適用化合物(4.2 参照)
3)
放射性同位元素(4.2 及び 9.4.4 参照)
4)
排出試験(4.2, 9.2.2 及び 9.4.1 参照)
5)
希釈水の水質の限界濃度(8.2 参照)
6)
供試魚(8.4 参照)
7)
魚の分析点数(9.2.3 及び 9.4.4 参照)
8)
給じ(餌)率(9.2.5 参照)
9)
設定濃度(5.及び 9.2.7 参照)
10)
供試魚の採取計画(9.4.1 参照)
11)
脂質含有量(4.2 及び 9.4.4 参照)
2
Z 7260-305 : 2000
2.
引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す
る。これらの規格は,その最新版を適用する。
OECD GUIDELINES FOR TESTING OF CHEMICALS, No.104
“Vapour Pressure” (Updated Guideline,
Adopted by the Council on 27 July, 1995).
OECD GUIDELINES FOR TESTING OF CHEMICALS, No.105
“Water Solubility” (Updated
Guideline, Adopted by the Council on 27 July, 1995).
OECD GUIDELINES FOR TESTING OF CHEMICALS, No.107
“ Partition Coefficient (n −
Octanol/Water)
” : Shake Flask Method (Updated Guideline, Adopted by the Council on 27 July, 1995).
OECD GUIDELINES FOR TESTING OF CHEMICALS, No.111
“Hydrolysis as a Function of pH”
(Original Guideline, Adopted by the Council on 12 May, 1981).
OECD GUIDELINES FOR TESTING OF CHEMICALS, No.115
“ Surface Tension of Aqueous
Solutions
” (Updated Guideline, Adopted by the Council on 27 July, 1995).
OECD GUIDELINES FOR TESTING OF CHEMICALS, No.117
“ Partition Coefficient (n −
Octanol/Water), HPLC Method
” (Original Guideline, Adopted by the Council on 30 March, 1989).
OECD GUIDELINES FOR TESTING OF CHEMICALS, No.301A-301F
“Ready Biodegradability”
(Updated Guideline, Adopted by the Council on 17 July, 1992).
3.
定義・記号 この規格で用いる用語,記号の定義は,次による。また,その他の用語は日本工業規格
において使用する用語の例による。
1)
生物濃縮(Bioconcentration/bioaccumulation)とは生物中又はその体表面(又は特定組織)の被験物質
濃度が環境媒体中のそれに比して増大することである。
2)
生物濃縮係数(Bioconcentration factor. BCF 又は K
B
)は,濃縮度試験の取込期間における魚体中,体表
面,又は特定組織における被験物質濃度 [C
f
mg/kg (ppm)]
を環境媒体中のそれ [C
w
mg/l (ppm)]
で除
したものである(BCF=C
f
/C
w
)
。
3)
定常状態 (Steady state) とは,環境媒体中の被験物質濃度が一定の場合,暴露期間を延長しても魚体中
濃度,したがって生物濃縮係数が著しい変化を示さないことをいう。このときの生物濃縮係数を定常
状態生物濃縮係数(Steady state bioconcentration factor. BCF
ss
又は K
B
)という。
4)
平衡 (plateau) 又は定常状態 (steady state) とは,時間に対する魚体中の被験物質濃度 (C
f
)
のプロット
が時間軸に対して平行になり,少なくとも 2 日以上の間隔で採取した試験魚の C
f
の連続する 3 時点の
分析結果が互いに±20%以内で,かつ,相互に有意差がない状態をいう。採取時に魚を一括して分析
する場合は少なくとも 4 時点の連続する分析でこれを評価することが望ましい。取込みが遅い被験物
質については,間隔を 7 日にすることがより適切である。
なお,これらの規定は特に BCF
ss
を測定する場合に重要である。
5)
速度論的濃縮係数 (Kinetic concentration factor, BCF
k
)
は,速度論的な解析で得られる速度定数(k
1
及び
k
2
,下記参照)から直接計算される生物濃縮係数である。
6)
1
−オクタノール/水の分配係数(Octanol-water partition coefficient P
ow
又は K
ow
)は平衡状態でのオク
タノール及び水に対する化学物質の溶解度の比である(OECD
化学品テストガイドライン No.107 及
び No.117)
。
7)
暴露 (Exposure) 又は取込期間 (uptake phase) とは試験魚が被験物質に暴露されている期間をいう。
8)
取込速度定数(Uptake rate constant k
1
,日
−
1
)とは試験魚が被験物質に暴露されている間の魚体中,体
3
Z 7260-305 : 2000
表面,又は特定組織における被験物質濃度の増加速度を規定する数値である。
9)
暴露後期間 (Post exposure) 又は排出(消失)期間 [Depuration (loss) phase] とは被験物質を含む媒体か
らこれを含まない媒体に魚を移した後に,魚体から,又は特定の組織から被験物質が排出される程度
(又は正味の消失)を調べる期間である。
10)
排出(消失)速度定数 [Depuration (loss) rate constant k
2
,日
−
1
]
とは被験物質を含む媒体から含まない
媒体に試験魚を移した後に,魚体中又は特定の組織中における被験物質濃度の減少速度を規定する数
値である。
4.
試験の原理
4.1
試験の準備 試験の実施に先立ち,被験物質に関する下記情報を入手することが望ましい。
a)
水溶解度[OECD
化学品テストガイドライン No.105]
b) 1
−オクタノール/水の分配係数,P
ow
[OECD
化学品テストガイドライン No.107,117]
c)
加水分解[OECD
化学品テストガイドライン No.111]
d)
太陽光又は人工光下,そして濃縮度試験の照射条件下での水中光分解性[水中における化学物質の直
接光分解に関する手引き書]
(文献 3)
e)
表面張力(分配係数が測定できない化学物質に対して)
[OECD
化学品テストガイドライン No.115]
f)
蒸気圧[OECD
化学品テストガイドライン No・104]
g)
易分解性(適切な場合)
[OECD
化学品テストガイドライン No.301A∼301F]
4.2
試験方法の概要 この方法は logP
ow
が 1.5∼6.0 の間の安定な有機化合物に最も有効に適用されるが
(文献 4)
,logP
ow
が 6.0 を上回る超親油性の物質に適用してもよい。実験に先立ってはあらかじめ logP
ow
を記述子に用いる一次相関式などから生物濃縮係数(BCF 又は K
B
)を予測することが望ましいが,超親油
性物質ではこのような予測値は,実験室で測定される定常状態生物濃縮係数 (BCF
ss
)
より恐らく高い値を
示すことになろう。これら超親油性の化学物質を含む logP
ow
が 9.0 までの有機化学物質の生物濃縮係数の
予測値は,ビンテイン (Bintein) ら(文献 5)の式を用いて得ることができる。生物濃縮ポテンシャルを特
徴付けるパラメータには取込速度定数 (k
1
)
,排出速度定数 (k
2
)
,そして BCF
ss
又は BCF
k
が含まれる。
放射性同位元素で標識化した被験物質は試験水及び試験魚の分析を容易にでき,また,代謝物の同定及
び定量の必要性を判断するために用いることができる。仮に総放射能残さが測定される場合(例えば,魚
については燃焼処理又は組織の可溶化処理が行われる。
)
,その測定値から計算される BCF は親化合物に加
えて体内に残留する代謝物,更には体内に同化された放射性炭素に基づくものになる。したがって,総放
射能残さに基づく BCF は親化合物だけに特異性をもつ化学分析で得られる BCF と直接は比較できないか
もしれない。このため(放射性同位元素で標識化した被験物質を用いる研究では)
,親化合物に基づく BCF
を測定するためには分離操作が必要になることがあり,このときは主要代謝物の特性も必要に応じて確認
できる。親化合物の BCF の決定は,総放射能残さではなく,魚体中の親化合物の濃度に基づくのが望まし
い。総放射能残さに基づく BCF は代謝物の同定及び定量が必要か否かを判断する材料の一つになり得る。
また,組織中の残さの分析と同定により,魚体での化学物質の代謝研究と生物濃縮性の研究を合わせて行
うこともできる。
試験は基本的に暴露(取込み)と暴露後(排出)の二つの期間から成る。取込期間中,供試魚の個々の
群は少なくとも二つの異なる被験物質濃度に暴露される。暴露期間終了後,これらの群は排出期間の間,
被験物質を含まない媒体に移される。排出期間は被験物質の取込みが顕著でない場合(例えば BCF が 10
未満)を除いては常に必要である。ただし,試験の目的によっては[たとえば,BCF
ss
だけの測定を行い,
4
Z 7260-305 : 2000
また,3.4)に示す濃縮平衡に関する基準を満たす場合などは]この限りではない。魚体中若しくは魚体表
面(又は特定の組織)の被験物質濃度は試験の取込みと排出の両方の期間を通して測定される。二つの試
験濃度の暴露区に加えて,被験物質が存在しないことを除いては同等の条件に保たれた対照区が設けられ
る。これは対照区との比較において生物濃縮度試験で起こり得る有害影響を明らかにしたり,又は被験物
質のバックグラウンドとなる濃度を把握するためである。
取込期間は速やかに平衡に達することが示されなければ 28 日間とする[3.4)参照]
。取込期間の長さと
定常状態までの時間は,4.3 に示す一次速度論を仮定した式を用いて予測できる。BCF
k
を求める際に不可
欠となる排出期間は,取込期間と同じ条件下で,ただし,被験物質が除かれた別の清浄な水槽に魚を移し
て開始する。可能であれば,生物濃縮係数は明りょうな定常状態における魚体中濃度 (C
f
)
と水槽中濃度
(C
w
)
の比 (BCF
ss
)
と,一次速度論を仮定して取込速度定数 (k
1
)
と排出速度定数 (k
2
)
の比で計算される速
度論的生物濃縮係数 (BCF
k
)
の両方について計算するのが望ましい。
もし 28 日間で定常状態に達しなければ,特に BCF
ss
だけを求める場合には取込期間は定常状態に達する
までか 60 日間かのどちらか早いほうまで延長するのが望ましい。
排出期間が必要な場合はそれから開始す
る。
BCF
k
を求める場合は,実測された魚体中と水槽水中の被験物質濃度を最もよく記述するモデルを用いて,
取込速度定数及び排出速度定数(より複雑なモデルが必要とされる場合はそれに係る定数)と生物濃縮係
数,更に可能な場合にはそれぞれのパラメータの信頼限界を計算評価することになる。
BCF
は魚の全湿重量の関数として表される。しかしながら,魚が十分大きな場合には,特別な目的のた
めに,特定の組織又は臓器(例えば筋肉と肝臓)ごとに表してもよいし,可食部(魚肉)と非食部(内臓)
に分けてもよい。多くの有機化学物質の生物濃縮のポテンシャルと親油性の間には明確な相関関係が成立
することから,そのような相関関係の認められる化学物質では,供試魚の脂質含有量と BCF の間にもそれ
に対応する相関関係が成立することになる。このことは親油性の高い物質の試験結果の変動要因となるた
め,高親油性物質(例えば logP
ow
>3
)については全体重のみならず脂質含有量と関係付けて生物濃縮を表
すのが望ましい。脂質含有量は,可能であれば被験物質濃度の測定に用いたものと同一の生物材料につい
て測定するのが望ましい。
4.3
取込期間と排出期間の予測
4.3.1
取込期間の長さの予測 試験を開始する前に k
2
の見積りと,そしてそれに基づき定常状態に到達
するに要する時間のある一定の割合値の見積りを,k
2
と 1−オクタノール/水の分配係数 (P
ow
)
の間の経
験的な相関式に基づき,又は k
2
と水溶解度の間のそれに基づいて行ってもよい。
例えば以下の経験式に基づいて k
2
(日
−
1
)を見積もってもよい(文献 6)
。
log
10
k
2
=−0.414log
10
(P
ow
)
+1.47 (r
2
=0.95) (1)
他の相関式については文献 7 を参照。
もし分配係数 (P
ow
)
が既知でなければ,被験物質の水溶解度から見積もることができる(文献 8)
。
log
10
(P
ow
)
=−0.862log
10
(S)
+0.710 (r
2
=0.994) (2)
ここに,
S
= 水溶解度 (mol/l) (n=36)
これらの相関式は logP
ow
値が 2∼6.5 の化学物質に対してだけ適用できる(文献 9)
。
定常状態の一定の割合に到達するまでの時間は,この k
2
の見積値を用いて,取込みと排出を記述する一
般的な速度論(1 次速度論に従う場合)の式に基づいて評価してもよい。
dC
f
/dt
=k
1
・C
w
−k
2
・C
f
すなわち,もし C
w
が一定であれば,
5
Z 7260-305 : 2000
C
f
= (k
1
/k
2
)
・C
w
(1
−e
-k2t
) (3)
定常状態に近づくと (t→∞) ,式(3)は以下のように近似できる(文献 10,11)
。
C
f
= (k
1
/k
2
)
・C
w
すなわち C
f
/C
w
=k
1
/k
2
=BCF
ここに, (k
1
/k
2
)
・C
w
は定常状態における魚体中濃度 (C
f, s
)
の近似値である。
式(3)は次のように変換できる。
C
f
=C
f, s
・ (1−e
-k2t
)
すなわち C
f
/C
f, s
=1−e
-k2t
(4)
式(1)又は式(2)を用いて k
2
を見積もっておくと,式(4)から定常状態の一定の割合に到達するまでの時間
を予測することができよう。
指針としては,統計的に満足できるデータ (BCF
k
)
を得るための取込時間の最適値は,時間軸に対して
プロットされた魚体中の被験物質濃度の対数曲線が定常状態に到達するまでの中間点,すなわち 1.6/k
2
で
計算される定常状態の 80%に到達するまでの時間であり,3.0/k
2
,すなわち定常状態の 95%を超えない時間
である(文献 12)
。
参考 このことは,すなわち,暴露時間をこの BCF
k
の最適時間とし,かつ BCFss の基準をできるだ
け満たす結果を得るためには,
1.6/k
2
と 3.0/k
2
の間で,
2
日以上の間隔を空けて 3 時点以上の BCF
を測定できることが望ましい。この期間中の BCF は規定の±20%の範囲に入るはずである(た
だし,相互の有意差は認められるかもしれないが。
)
。もし,1.6/k
2
と 3.0/k
2
の間隔が狭い場合(例
えば下記 logP
OW
=4 の例)は,3.0/k
2
までに切り上げて BCF
k
だけを求めるか,又は,3 時点以
上の BCF を求めるために 3.0/k
2
を超えた暴露を行い,BCF
k
と BCF
ss
の両方を求めることになる
[この場合,BCF
k
はグラフにより評価する(10.2.2 及び 10.2.3 参照)か,又は,精度は若干落
ちるかもしれないがコンピュータによる評価(10.2.4 参照)で求めることになる。
]
定常状態の 80%に到達するまでの時間は[式(4)]
,
0.80
=1−e
−
k2t80
すなわち,
t
80
=1.6/k
2
(5)
同様に定常状態の 95%に到達するまでの時間は,
t
95
=3.0/k
2
(6)
例えば,logP
ow
=4.0 の被験物質の取込時間は以下のようになる。
log
10
k
2
=−0.414・ (4) +1.47
k
2
=0.652 日
-1
up (80pct)
=1.6/0.652,すなわち,2.45 日(59 時間)
又は up (95pct) =3.0/0.652,すなわち,4.60 日(110 時間)
同様に,S=10
−
5
mol/l (logS
=−5.0) の被験物質では,取込時間の長さは[式(1),(2)及び式 (5),(6)から]
logP
OW
=−0.862・ (−5.0) +0.710=5.02
log
10
k
2
=−0.414・ (5.02) +1.47
k
2
=0.246 日
-1
up (80pct)
=1.6/0.246,すなわち,6.5 日(156 時間)
又は up (95pct) =3.0/0.246,すなわち,12.2 日(293 時間)
これとは別に,
t
eq
=6.54×10
−
3
P
ow
+55.31(時間)を実質的な定常状態に到達するまでの時間の計算に用いることができ
る(文献 9)
。
6
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4.3.2
排出期間の長さの予測 体内蓄積量を初期濃度の一定の割合に減じるために要する時間の予測も
取込みと排出を記述する一般式(1 次速度式)から求めることができよう(文献 6,13)
。
排出期間においては C
w
はゼロと仮定できる。式は次のように変形できる。
dC
f
/dt
=−k
2
・C
f
すなわち,C
f
=C
f, o
・e
−
k2t
ここに, C
f, o
は排出期間開始時の濃度である。
50%
排出は以下の式で表される時間 (t
50
)
に達成される。
C
f
/C
f, o
=1/2=e
−
k2. t50
すなわち,t
50
=0.693/k
2
同様に 95%排出は
t
95
=3.0/k
2
もし取込期間で 80%の取込み (1.6/k
2
)
そして排出期間で 95%の消失 (3.0/k
2
)
を設定すると,排出期間は
取込期間の約 2 倍になる。
しかしながら留意しなければならないのは,ここでの評価はあくまでも取込みと排出のパターンが一次
速度式に従うとの前提に立っていることである。もし一次速度式に従わないことが明らかであれば,より
複雑なモデルを用いるのが望ましい(例えば文献 6)
。
参考 上記の計算予測の他にも,例えば予備試験を行い,BCF
ss
の基準を満たす暴露期間や,定常状
態の 80%付近に到達するまでの暴露期間,さらには,初期濃度の 95%が排出される期間などを
見積もることもできる(9.1 参照)
。
5.
被験物質に関する情報 4.の試験の原理に挙げた被験物質の性質に加えて他に要求される情報は,試
験に用いる魚種に対する毒性であり,これは漸近的 LC50(すなわち暴露時間に依存しない半数致死濃度)
であるのが望ましい。正確さ,精度,及び感度が分かっている適切な分析方法を試験溶液及び生物材料中
の被験物質の定量のために確立する必要もある。これには試料の調製方法及び保存方法の詳細も含めるの
がよい。水槽水中と魚体組織中の被験物質の定量下限も確認しておくことが望ましい。
14
C
で標識した被
験物質を用いるときは,不純物由来の放射能の割合を把握しておくことが望ましい。
6.
試験の有効性 試験を有効なものにするため次の条件を適用する。
1)
温度変化は±2℃以内であること,
2)
溶存酸素は飽和濃度の 60%未満にならないこと,
3)
取込期間の水槽中の被験物質濃度は測定値の平均の±20%の範囲内に保たれること,
4)
試験終了時の死亡率と有害影響又は病気の発生は,対照区と暴露区の魚の両方において,10%未満で
あることなど,
が条件になる。
試験が数週間又は数か月にわたって延長された場合は,致死とその他の有害影響の発生は,
両方の区の魚において 1 か月当たり 5%未満で,全期間においては 30%を超えないことが望ましい。
7.
基準物質 必要に応じて,生物濃縮ポテンシャルが既知の基準物質を用いて実験手順を検証すること
が望ましい。しかし具体的に推奨できる化合物はまだない。
8.
試験方法
7
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8.1
装置 装置のすべての部分に対して,溶出したり吸着又は溶出したり,また,魚に対して有害影響
をもつような材料の使用は極力避けるのが望ましい。化学的に不活性な材料の,また,魚と水の負荷に応
じた適切な容量の長方形又は円筒形の水槽を用いることができる。軟質プラスチックのチューブの使用は
最小限にするのが望ましい。四ふっ化エチレン,ステンレス鋼,又はガラス配管を使用する。経験からい
うと,合成ピレスロイドのように高い吸着係数をもつ物質にはシリル化したガラスの使用が必要かもしれ
ない。このような場合の装置は使用後に廃棄すべきである。
8.2
水 試験では一般に天然水を使用する。汚染されておらず,また,水質に変化のない水源から得る
のが望ましい。希釈水は試験のために選択された魚種がじゅん(馴)化と試験の期間中に異常な外観及び
挙動を示さずに生存できる水質でなければならない。理想的には,希釈水中でその魚種が生存し,また,
成長して繁殖できることを実証したほうがよい(例えば実験室での飼育及びライフサイクルの毒性試験に
よって)
。希釈水は少なくとも pH,硬度,浮遊物質,全有機炭素,更に好ましくは,アンモニウム,亜硝
酸,そしてアルカリ度の測定が行われているのが望ましい。また,海産種に対しては塩分濃度を測定する。
魚の健康状態を最適に保つうえで重要になる因子の詳細は分かっていないが,試験で用いる淡水と海水に
ついていくつかの因子の推奨される最大濃度を
表 1 に示す。
表 1 使用に適した希釈水の化学的特性
物質
限界濃度
浮遊物質 5mg/l
全有機炭素 2mg/l
非イオン性アンモニア 1
ug/l
残留塩素 10ug/l
全有機りん農薬 50ng/l
全有機塩素農薬及びポリ塩化ビフェニル
50ng/l
全有機塩素 25ng/l
アルミニウム 1ug/l
ひ素 1ug/l
クロム 1ug/l
コバルト 1ug/l
銅 1ug/l
鉄 1ug/l
鉛 1ug/l
ニッケル 1ug/l
亜鉛 1ug/l
カドミウム 100ng/l
水銀 100ng/l
銀 100ng/l
水質は試験期間中一定であることが望ましい。pH は 6.0∼8.5 の範囲に保たれるのが望ましい。ただし,
試験実施中は±0.5pH の範囲であることが望ましい。希釈水が試験結果に不当な影響(例えば被験物質の
錯体形成)を与えないことを確実にするため,また,魚の群の状態に有害な影響を与えないことを確実に
するため,採水を時々行い,水質を分析するのが望ましい。重金属(例えば,Cu,Pb,Zn,Hg,Cd,Ni)
及び主要な陰イオンと陽イオン(例えば,Ca,Mg,Na,K,Cl,SO
4
)
,農薬(例えば全有機りん及び全有
機塩素農薬)
,
全有機炭素,
そして浮遊物質を,
水質が比較的安定している希釈水では例えば 3 か月おきに,
測定することが望ましい。もし,少なくとも 1 年以上にわたって水質が一定であることが確認されている
なら,測定の頻度を減らし,間隔を延ばしてもよい(例えば 6 か月おき)
。
8
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被験物質が水槽水中の有機成分に吸着し,生物学的に取り込まれ得る画分の割合が低下することを防ぐ
ために,希釈水中の天然由来の粒子含量を全有機炭素 (TOC) と同様にできるだけ低く抑えたほうがよい。
推奨される最大濃度は,浮遊物質で 5mg/l(乾燥重量濃度,0.45um のフィルタを通過しない画分)
,また,
全有機炭素で 2mg/l である(
表 1 参照)。もし必要ならば使用前に希釈水をろ過するのが望ましい。供試魚
[すなわち排せつ(泄)物]並びにえさ(餌)の食べ残しに由来する有機炭素含量は可能な限り低くした
ほうがよい。試験期間を通じて,被験物質と分散助剤(使用した場合)に由来する有機炭素濃度に加えて,
さらに水槽中の有機炭素濃度が 10mg/l (±20%) 以上高くならないように,これらに由来する有機炭素濃度
を適切に管理することが望ましい。
8.3
試験溶液 適切な濃度の被験物質の原液を調製する。原液は被験物質と希釈水を単純に混合するこ
とによって,又はかくはん(攪拌)することによって調製するのが望ましい。溶媒及び分散剤(分散助剤)
を使用することは推奨できないが,適切な濃度の原液を調製するような場合には使用することになる。使
用できる溶媒は,エタノール,メタノール,エチレングリコールモノメチルエーテル,エチレングリコー
ルジメチルエーテル,ジメチルホルムアミド,そしてトリエチレングリコール等である。使用できる分散
剤は,硬化ひまし油,メチルセルロース(0.01%溶液)その他の市販品がある。易分解性の試薬を用いる
場合,これらは連続流水試験において微生物の増殖の問題を生じるかもしれないので注意が必要である。
被験物質は放射能で標識化したものでもよく,最高純度(例えば好ましくは 98%以上)のものが望ましい。
参考 市販品には,Cremophor®RH40, Tween®80, HCO-40 などがある。
連続流水試験では,試験水槽に試験濃度を達成するために,被験物質の原液を連続的に供給し希釈する
システムが必要である(例えば計量ポンプ,相対希釈器,飽和システム)
。少なくとも 1 日当たり各試験水
槽容量の 5 倍の換水率とするのが望ましい。連続流水式が好ましいが,これが適用できない場合(例えば
試験生物に有害な影響を与えるとき)には,6.の有効性の基準を満たすならば半止水式を採用してもよい。
試験原液と希釈水の流量は試験前 48 時間と試験期間中の毎日確認したほうがよい。
この確認には各試験水
槽ごとの流速の測定を含める。そして流速については水槽内及び水槽間で 20%以上の変動がないことを確
かめる。
8.4
魚種の選択 魚種の選択で重要な基準は,すぐに入手でき,また,手ごろなサイズが得られ,実験
室で管理できることである。魚種を選択するための他の基準には,娯楽的,商業的,生態学的重要性に加
えて,他魚種との相対的な感受性及び過去の成功した使用例などが含まれる。推奨される魚種を
表 2 に示
す。他の魚種を使用してもよいが,試験手順はその魚種に適した試験条件になるよう改めなければならな
い。この場合,魚種の選択と実験方法の合理性を報告するのが望ましい。
9
Z 7260-305 : 2000
表 2 試験に推奨される魚種
推奨される魚種
試験温度の推
奨範囲 (℃)
試 験 生 物 の 推 奨
される全長 (cm)
Danio rerio
(1)
(真骨類,コイ科) (Hamilton−Buchanan) ゼブラフィッシュ
20
∼25 3.0±0.5
Pimephales promelas
(真骨類,コイ科) (Rafinesque) ファットヘッドミノウ
20
∼25 5.0±2.0
Cyprinus carpio
(真骨類,コイ科) (Linnaeus) コイ 20∼25 5.0±3.0
Oryzias latipes
(真骨類,メダカ科) (Temminck & Schlegel) メダカ 20∼25 4.0±1.0
Poecilia reticulata
(真骨類,カダヤシ科) (Peters) グッピー 20∼25 3.0±1.0
Lepomis macrochirus
(真骨類,バス科) ブルーギル 20∼25 5.0±2.0
Oncorhynchus mykiss
(真骨類,サケ科)ニジマス 13∼17 8.0±4.0
Gasterosteus aculeatus
(真骨類,トゲウオ科) イトヨ,ハリヨ 18∼20 3.0±1.0
出典: (1) Meyer A. & Orti G. (1993) Proc. Royal Society of London, Series B, Vol.252, p.231.
様々な汽水域並びに海水域の魚種が各国で用いられている。例えば,以下のものである。
スポット (Leiostomus xanthurus)
シープスヘツドミノウ (Cyprinodon variegatus)
シルバーサイド (Menidia beryllina)
シャイナーパーチ (Cymatogaster aggregata)
アメリカナメタガレイ (Parophrys vetulus)
カジカ (Leptocottus armatus)
イトヨ,ハリヨ (Gasterosteus aculeatus)
シーバス (Dicentracus labrax)
ブリーク (Alburnus alburnus)
上記の表に掲載されている淡水魚は飼育が容易で,かつ,一部を除いては,年間を通じて広く入手でき
る。一方,海産魚と汽水魚は一部の国に限定される。これらの魚種は,病気及び寄生虫の予防された養殖
場又は実験室において,繁殖及び飼育が可能であり,このような条件下でだけ健康に保ち,系統種を得る
ことができる。これらの魚種は世界の多くの地域で入手可能である。
8.5
供試魚の飼育・管理 少なくとも 2 週間の間,供試魚の一群を試験温度に保たれた水中でじゅん(馴)
化する。その間試験で用いるものと同じ種類のえさ(餌)を十分与える必要がある。
48
時間の静置期間の後,死亡率を記録し,次の基準を適用する。
1)
7
日間で群の 10%以上の死亡率:その群すべてを不採用とする
2)
7
日間で群の 5%∼10%の死亡率:更に 7 日間じゅん化する
3)
7
日間で群の 5%未満の死亡率:その群を採用する。もし次の 7 日間で 5%以上の死亡率が認められた
ときは,その群を不採用とする。
外観上,病気及び奇形がない魚を試験に用いる。病気の魚は除く。試験前 2 週間,又は試験中には
病気に対する処置は行わないほうがよい。
9.
試験の実施
9.1
予備試験 予備試験を行うことは,試験の試験条件を最適化するうえで有用かもしれない。例えば
被験物質濃度の選択及び取込みと排出期間の見積りなどを行うことになる。
9.2
暴露条件
10
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9.2.1
取込期間 取込期間の長さは,実際の経験(例えば,以前に行われた構造的に類似した化学物質の
濃縮度試験など)に基づき,又は,既知の経験則の関係式に被験物質の水溶解度又は 1−オクタノール/
水の分配係数を代入して予測することができる(4.3 参照)
。
取込期間は平衡が早期に達成されたことが証明されなければ 28 日間とするのが望ましい(3.4 参照)
。も
し,28 日間で平衡に達しなければ,平衡に到達するまでか,又は 60 日間かのどちらか短いほうまで取込
期間を延長し,測定を行うのが望ましい。
参考 この規定は特に BCF
ss
を求める場合に重要である。BCF
k
を求める場合は,さらに/又は,統計
的に有意な評価が行える期間にするのが望ましく,例えば 1.6/k
2
に到達し,ただし,3.0/k
2
を超
えない期間が一つの目安になるかもしれない(4.3 参照)
。
9.2.2
排出期間 通常,取込期間の半分の期間が魚体に取り込まれた被験物質を適切な程度(例えば 95%)
排出するのに十分な期間である(4.3 の排出に関する説明を参照)
。もし,95%排出されるまでの時間が非
現実的に長い場合は,例えば標準的な取込期間の 2 倍を超える(すなわち 56 日を超える)ときは,より短
い期間を採用してもよい(例えば,排出試験開始時の初期濃度の 10%未満に被験物質濃度がなるまで)
。
しかしながら,魚を 1 コンパートメントで記述するモデル,これは一次速度論の式を与えるが,これで
は記述しきれないより複雑な取込みと排出のパターンを示す被験物質では,消失速度定数を決定するため
により長期の排出期間を設ける必要があるかもしれない。しかしながら,その期間は魚体中の被験物質濃
度が分析の定量下限を上回る期間によっても支配されることになる。
参考 9.2.1 と 9.2.2 の規定を BCF
ss
と BCF
k
との関係で整理すると以下のようになる。
1) BCF
ss
の取込/排出期間の設計:取込期間については原則として 28 日(又はそれより早い時
点)∼60 日までに定常状態の基準を満たせば終終了してもよい。60 日で定常状態が確認でき
なければ,排出試験も行うことが望ましい(最大 56 日間)
。このときは 60 日間の暴露では取
込が 80%に到達していない(すなわち 1.6/k
2
>60 日)可能性もあるが,これらの取込/排出
データに基づき,
有害性評価のためには十分な精度をもつ BCF
k
が評価できると考えられる。
2) BCF
k
の取込/排出期間の設計:原則として 1.6/k
2
∼3.0/k
2
を目安とし,又は,予備試験で見積
もった期間を取込期間とし,排出期間は 95%が排出される期間 (3.0/k
2
)
か予備試験で見積も
った期間,又は 56 日までとする。
なお,取込期間の 1.6/k
2
以降で(できれば 3.0/k
2
を超えない期間で)
,2 日以上の間隔を空
けて 3 時点の測定ができれば,
(そしてそれが定常状態の基準を満たせば)BCF
ss
も求めるこ
とができる。
9.2.3
供試魚の数 各試験濃度区当たりの供試魚の数は,各サンプリング時に最低 4 尾が採取できる尾数
とすべきである。より高い統計的精度が要求されるなら,各サンプリング時の尾数はより多くなる。
もし,成魚を使用するなら,実験において雄又は雌,又は両方を使用するのか,報告しなければならな
い。もし,両方の性を使用する場合は,暴露開始前に脂質含有量の性差は統計的に有意ではないことを実
証しておくことが望ましい。そのために雄だけ,又は雌だけを一まとめにしておくことが(そして脂質含
有量を測定することが)必要になるかもしれない。
どのような試験においても,体重がおおよそ そろった魚を試験に供するべきである。例えば,最も小
さな魚の体重は最も大きなもののそれに比べて 2/3 より小さくならないようにする。全個体は同じ年齢で
同じ供給源のものが望ましい。魚の体重又は年齢は時として BCF の値に顕著な影響を及ぼすようであるの
で(文献 4)
,これら詳細を正確に報告すべきである。試験の開始前に供試魚の群から副次標本を採取し,
平均体重を推定することが望ましい。
11
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9.2.4
流水量と魚体重の割合(水 1l 当たりの魚体重) 試験開始時に魚を入れることによる C
w
の低下を
最小限に押さえるために,また,溶存酸素濃度の低下を避けるために,尾数に対する水(容積/流速)の
比を大きくすべきである。使用する供試魚に適した割合を採用することが重要である。どのような場合に
も,1 日当たりに水槽に流れ込む水 1l 当たりの魚の湿重量が 0.1∼1.0g になるようにこの割合を設定する
ことが標準的に推奨される。もし設定濃度が±20%の範囲内に維持でき,また,溶存酸素濃度が 60%未満
に低下しなければ,水 1l 当りの魚体重を大きくしてもよい。
適切な割合を選択するために,供試魚の通常の生息環境を考慮すべきである。例えば,底生魚では遊泳
性の魚種に比べて同じ水容積でも水槽の底面積をより大きくする必要があるかもしれない。
9.2.5
給じ(餌) じゅん(馴)化と試験期間中,魚を健康に保ち,また,体重を維持するために,脂質
とたんぱく質の含有量が既知の適切なえさ(餌)の十分な量を魚に与えるべきである。1 日当たり,魚体
重の 1%∼2%程度の量のえさ(餌)をじゅん(馴)化と試験期間をとおして与えるべきである。この給じ
(餌)割合はほとんどの魚種の脂質濃度を比較的一定に保つことができる。必要な給じ(餌)量は,例え
ば週に 1 回,体重と脂質濃度を一定に維持するために再計算するのが望ましい。この再計算には水槽中の
魚体重の評価が必要となるが,被験物質濃度測定のために採取した魚体の体重からこれを推定できる。水
槽に残っている魚の体重を量ってはいけない。
食べ残しのえさ(餌)及び排せつ(泄)物は適宜(30 分∼1 時間後)水槽からサイホンで取り除く。試
験期間中は,水槽中の有機物濃度をできるだけ低く保つため,水槽をできるだけきれいにする。このよう
な有機物の存在は被験物質の生物学的に取り込まれ得る画分の割合を低下させるかもしれないためである。
多くのえさ(餌)は魚肉から作られているので,えさ(餌)中の被験物質濃度を測定しておいたほうが
よい。えさ(餌)中の農薬及び重金属の測定も行うことが望ましい。
9.2.6
照明と温度 光周期は通常 12 時間∼16 時間とし,温度 (±2℃) は試験生物に適したものにするこ
とが望ましい(
表 2 参照)。照明の種類と特徴は把握しておいたほうがよい。試験の照明条件下で被験物質
が光分解するかもしれないので注意する。環境中に存在し得ない光分解物への魚の暴露を防ぐために適切
な照明を使用することが望ましい。290nm より短い波長の紫外線照射を遮へいするフィルタの使用が必要
になる場合もある。
9.2.7
試験濃度 連続流水下で,魚を少なくとも 2 濃度の被験物質に暴露する。通常は,高いほうの濃度
区(又は最高濃度区)は,急性毒性試験の漸近的 LC50 の約 1%又はそれ以下で,また,採用する分析方法
の水における定量下限より少なくとも 10 倍以上高くなるように設定すべきである。最高濃度区は,また,
急性の LC50 を適切な急性毒性/長期毒性の比(例えば,ある化学物質群についての適切な比はおおよそ
3
であり,しかし,化学物質によっては 100 以上になる。
)で割って決定することもできる。もし可能なら
この高濃度区から 10%以下異なるもう一つ(又は複数)の濃度区を選択する。LC50 の 1%という基準又は
分析の定量下限からこれが不可能な場合は,10 より小さい比率を用いてもよい。又は
14
C
で標識化した被
験物質の使用を検討したほうがよい。試験濃度は被験物質の水溶解度を上回らないことが望ましい。
分散助剤を使用する場合,その濃度は 0.1ml/l を超えないことが望ましい。そしてすべての試験水槽にお
いて同じ濃度であることが望ましい。試験水における有機炭素の全含有量に対する分散助剤の寄与を(被
験物質の寄与と併せて)把握しておくことが望ましい。しかしながら,そのような分散助剤の使用を避け
るあらゆる努力を行うことが望ましい。
9.2.8
対照区 希釈水だけか,又は,分散助剤が供試魚に影響を与えないことが立証されていれば,分散
助剤を使用する場合は,これを含む対照区を試験区のほかに設定する。もし立証されていなければ両方の
対照区を設けたほうがよい。
12
Z 7260-305 : 2000
9.3
水質測定の頻度 試験期間中,溶存酸素濃度と TOC,pH,温度をすべての水槽に対して測定するの
が望ましい。全硬度と塩分濃度(海水の場合)は対照区と高濃度区のどちらか一つ(又は最高濃度区)に
ついて測定するのが望ましい。少なくとも,溶存酸素濃度と塩分濃度(海水を用いる場合)は取込期間の
開始時,中頃,及び終了時の 3 回と,排出期間においては週 1 回測定するのが望ましい。TOC は試験開始
時の供試魚を入れる前(取込期間開始の 24 時間と 48 時間前)と取込期間及び排出期間においては,少な
くとも週 1 回測定するのが望ましい。温度は毎日測定するのが望ましい。pH は取込みと排出の期間のそれ
ぞれの開始と終了時,そして硬度は各試験で 1 回測定するのが望ましい。温度はできれば少なくとも一つ
の水槽について連続的に測定するのが望ましい。
9.4
供試魚と試験水の採取と分析
9.4.1
供試魚と試験水の採取計画 供試魚を入れる前に,また,取込期間と排出期間(ただし,BCF
k
を
求める場合)中に,被験物質濃度の測定のために試験水槽から水を採取する。給じ(餌)前に少なくとも
魚の採取と同じ頻度で水を採取する。取込期間中では,被験物質の濃度が基準を満たしていることを確認
するために測定することになる。
取込期間中に少なくとも 5 時点,そして特に BCF
k
を求める場合には排出期間中に少なくとも 4 時点,
供試魚を採取する。この採取回数では場合によっては BCF 値の正確な評価を行うことが困難であるので
(特に単純な 1 次の排出速度式が適用できない場合)
,取込みと排出の両期間において,より多くの頻度で
採取することが望ましい(
表 3 参照)。9.4.2 に記すように余分な試料を採取しておき,最初の分析結果が
望ましい精度で BCF を評価するに不十分であるときにだけ,それを分析する。
表 3 に望ましい採取計画の例を示す。他にも計画は,P
ow
を種々想定して,定常状態の 95%に到達する
までの期間を計算することで簡単に評価できる。
特に BCF
ss
を求める場合は,取込期間において定常状態が達成されるまで,又は 28 日間までのどちらか
短いほうまで,試料を採取し続ける。28 日までに定常状態が達成できない場合には,定常状態が達成でき
るまで,又は 60 日間までのどちらか短いほうまで,これを続ける。排出試験を行う場合は,魚を被験物質
が含まれていない清浄な水槽に移す。
13
Z 7260-305 : 2000
表 3 logP
ow
が 4 の物質の濃縮度試験における採取計画の
理論的な評価例(BCF
k
を求める場合)
採取時間の計画
魚の採取
最小要求頻度
(日)
追加試料
(日)
水試料の点数
採取 1 時点当たりの魚尾数
取込期間
−1
0
2(*)
2
45
∼80 尾の魚を暴露する。
1
st
0.3
0.4
2
(2)
4
(4)
2
nd
0.6
0.9
2
(2)
4
(4)
3
rd
1.2
1.7
2
(2)
4
(4)
4
th
2.4
3.3
2
(2)
4
(4)
5
th
4.7
2
6
排出期間
魚を被験物質を含まない水に移す。
6
th
5.0
5.3
4
(4)
7
th
5.9
7.0
4
(4)
8
th
9.3
11.2
4
(4)
9
th
14.0
17.5
6
(4)
注*
水槽容積の 3 倍以上の水が供給された後に水を採取する。
( )内の数値は追加の採取が行われる場合の水と魚の試料数である。
備考 logP
ow
が 4.0 の化合物の k
2
の予測値は 0.652 日
−
1
である。実験の全期間は“3×期間(す
なわち 3.0/k
2
)=3×4.6 日”であり,14 日間と計算できる。期間の評価については 4.3
を参照。
9.4.2
採取と試料の前処理 分析のための試験水は,例えば不活性チューブを用いて,水槽の中央部から
サイホンにより採取する。ろ過操作も遠心操作も生物に取り込まれ得ない被験物質の画分を,取り込まれ
得る分画からいつも取り除けるとは限らないので(特に超親油性物質,すなわち logP
ow
が 5 を超える化学
物質の場合)
(文献 4,15 参照)
,これらの前処理は行わないことが望ましい。その代わり,水槽をできる
だけきれいに保つ対策を講じるとともに,取込みと排出期間(特に BCF
k
を求める場合)の両方において,
水槽水中の全有機炭素の含有量を測定するのが望ましい。
採取の計画に従い,適切な数の試験魚と水槽から採取する(通常は最低 4 尾)
。採取した魚を水で手早く
洗い,水をふき取って直ちに致死させる(最も適切で人道的な方法による)
。そして体重を測定する。
分解又はその他の要因による被験物質濃度の低下を避けるため,そして試験を続行しながら取込みと排
出速度定数の概略値を計算するために,供試魚と試験水は採取後直ちに測定に供するのが望ましい。速や
かに分析することは,平衡到達の確認の遅れも防ぐことができる。
直ちに分析できない場合には,適切な方法で試料を保存する。試験の開始前に個々の被験物質の適切な
保存方法に関する情報を収集すべきである。例えば,超低温での冷凍,4℃での保存,保存期間,又は抽出
物の保存などの情報である。
14
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9.4.3
分析方法の特性 全体の手順は基本的に分析方法の正確さ,精度及び感度により決定されることか
ら,化学分析の精度と再現性,並びに水及び魚からの被験物質の回収率がそれぞれの方法で満足できるも
のであることを,実験的に確認すべきである。さらに,希釈水において被験物質が検出されないことも確
認する。もし必要であれば,試験で得られた C
w
と C
f
の値を回収率と対照区のバックグラウンドで補正す
る。供試魚と試験水の試料は,汚染及び損失(例えば採取器具への吸着による損失)を最小限にできる方
法で,初めから終わりまで取り扱うべきである。
9.4.4
供試魚試料の分析 試験において放射能で標識化された被験物質を用いる場合は,全標識化物(す
なわち親化合物と代謝物)の分析が可能である。又は,試料を精製して親化合物だけを分析することもで
きる。さらに,定常状態に到達した時点で,又は取込期間の終了時のいずれか早いほうで,主要代謝物の
定性分析を行うことができる。もし,総放射能に基づく BCF が 1 000 を超えるときは,定常時の魚体組織
の総放射能の 10%以上に相当する代謝物については,同定と定量を行うことが望ましい。これは特に農薬
のような特定の種類に属する化合物には強く推奨される。もし魚体中の総放射能の 10%以上に相当する代
謝物が同定,定量されたなら,試験水についても代謝物の同定,定量を行うことが望まれる。
被験物質の濃度の測定は体重が量られた個々の魚に対して行うのが通常は望ましい。これが不可能であ
れば,各採取時の魚を一まとめにして分析することができる。しかしながらこのような操作はデータに適
用される統計的手法を制限してしまう。もし,特定の統計手順及び要求される統計的な精度が重要である
場合,望ましい試料のまとめ方及び統計的な手順,精度に対応できる十分な数の魚を試験で用いることが
望ましい。関連する試料のまとめ方に関しては文献 16 と 17 を参照。
BCF
は,湿重量との関係と,そして親油性の高い物質では脂質含有量との関係で表すのが望ましい。も
し可能なら各々の採取時の魚について脂質含有量を測定する。脂質含有量の測定には適切な方法を採用す
るのが望ましい(文献 7 及び 18 を参照)
。クロロホルム/メタノールによる抽出法が標準的な方法として
推奨される(文献 19 を参照)
。採用した方法によって結果が異なることがあるため(文献 20)
,その方法
については詳細を報告することが重要である。被験物質をクロマトグラフ法で分析する場合には,脂質は
しばしば抽出物から精製除去されるので,可能な場合は,被験物質の分析のために調製された抽出物その
ものについて脂質の分析を行うのが望ましい。試験終了時の供試魚の脂質含有量(mg/kg 湿重量)は,試
験開始時のそれに比べて±25%以内であることが望ましい。脂質濃度の基準を湿重量から乾重量に変換す
る場合のために,試験魚の乾燥重量比率(乾燥重量/湿重量)も報告したほうがよい。
10.
データと報告
10.1
結果の取扱い 取込期間における魚体中又は魚体表面(又は特定の組織)の被験物質濃度を時間に
対してプロットすることで取込曲線を作成する。もし,曲線が平衡に達したならば,これはすなわち,時
間軸に対してほぼ漸近することになり(少なくとも 2 日以上の間隔を空けた分析値が±20%以内で,かつ,
統計的に有意差がなければ平衡とみなせる)
,次の式から BCF
ss
を計算する。
定常状態の C
f
(平均値)/定常状態の C
w
(平均値)
定常状態に到達しないときでも,排出試験を行っていれば速度式を適用して,定常の 80% (1.6/k
2
)
又は
95% (3.0/k
2
)
の時点の BCF を計算することで,有害性評価のためには十分な精度の BCF
ss
が評価できる。
又は,二つの 1 次速度定数 k
1
/k
2
の比をもって BCF
k
を評価する。排出速度定数 (k
2
)
は通常排出曲線(す
なわち,時間に依存した魚体中の被験物質濃度の減少プロット)から評価できる。取込速度定数 (k
1
)
は,
この k
2
と取込曲線から導き出される C
f
値によって計算される。これらの方法については 10.2 を参照。BCF
k
と速度定数 k
1
,k
2
を評価するより望ましい方法は,コンピュータを用いて非線形解析を行うことである(文
15
Z 7260-305 : 2000
献 2 を参照)
。そうでなければグラフから読み取る方法が k
1
と k
2
を計算するために使用できる。もし,排
出曲線が明らかに 1 次式に従わなければ,より複雑なモデルを使用するのが望ましく(4.3 を参照)
,また,
生物統計学の専門家の助言を求めるのが望ましい。
10.2
速度定数の評価法
10.2.1
モデルの識別 ほとんどの濃縮性データは,排出期間の魚体中濃度を片対数グラフにプロットした
ときにこれが直線関係で近似できることから,単純な 2 コンパートメント/2 パラメータモデルである程
度的確に記述できるとみなされてきた[なお,排出期間のこれらのプロットが直線で記述できない場合に
は,より複雑なモデルを使用するのが望ましい。スペイシーとヘイムリンク (Spacie and Hamelink),文献 6
を参照]
。
10.2.2
グラフによる排出(消失)速度定数 k
2
の評価方法 時間軸に対して,供試魚の各試料の被験物質
濃度を片対数グラフにプロットすべきである。その直線の傾きが k
2
である。
k
2
=ln (C
f1
/C
f2
) / (t
2
−t
1
)
図 1 グラフによる排出(消失)速度定数 k
2
決定のためのグラフ
直線関係からの逸脱は,1 次速度式より複雑な排出パターンを示しているのかもしれないので注意する。
グラフを用いる方法は 1 次速度式から逸脱する排出のタイプを決定するのに有用であるかもしれない。
10.2.3
グラフによる取込速度定数 k
1
の評価方法 k
2
が与えられたなら,次の式で k
1
を計算する。
k
1
=C
1
k
2
/ [C
w
× (1−e
−
k2t
)] (7)
C
f
の値は対数濃度を時間(算術軸)に対してプロットして得られる取込曲線の中間点(すなわち 1.6/k
2
に相当する時点)から読み取る。
10.2.4
コンピュータによる取込みと排出(消失)の速度定数の評価法 生物濃縮係数と k
1
,k
2
を得るため
のより望ましい方法はコンピュータで非線形パラメータ法を用いることである。これらのプログラムは,
一組の連続した時間−濃度データと次のモデルで k
1
と k
2
を求めることになる。
C
f
=C
w
× (k
1
/k
2
)
× (1−e
−
k2t
)
0< t < t
c
(8)
C
f
=C
w
× (k
1
/k
2
)
× (e
-k2(t-tc)
−e
-k2t
)
t>t
c
(9)
ここで t
c
は取込期間の終了時間である。
この方法は k
1
と k
2
の評価の標準偏差も与える。
k
2
は多くの場合,比較的高い精度で排出曲線から評価できるので,そして,もし同時に評価されるなら
k
1
と k
2
の 2 つのパラメータの間には強い相関関係が存在することから,最初に k
2
を排出データだけから計
算し,次に非線形解析を用いて取込みデータから k
1
を計算することが推奨される。
16
Z 7260-305 : 2000
10.3
結果の解釈 試験水の測定濃度が採用した分析方法の定量下限付近である場合は,結果の解釈を慎
重に行うのが望ましい。
明りょうに規定された取込みと消失曲線は,質の高い濃縮性データ(特に BCF
k
を評価する場合)の目
安になる。二つの試験濃度区の取込み/排出速度定数の違いは,20%未満であることが望ましい。取込み
/排出速度定数の間に顕著な差異が認められる場合は,これを記録し,また,考えられる説明を加えるの
が望ましい。一般的に,よく計画の練られた試験では,BCF の信頼限界は±20%に近づく。
10.4
試験報告書 試験報告書は次の情報を含まなければならない。
被験物質:
1)
物理的性質,また,関連する場合は物理化学的性質,
2)
化学的同定データ(妥当であれば有機炭素含量)
,
3)
もし,放射能で標識化されている場合は,標識化された原子の正確な位置,不純物に由来する放射能
の割合。
供試魚:
4)
学名,系統,入手源,すべての前処理,じゅん化,年齢,大きさの範囲など。
試験条件:
5)
採用された試験手順(連続流水又は半止水)
,
6)
照明の種類と特徴,及び光周期,
7)
試験設計(例えば,試験水槽の数と大きさ,水容量の交換率,繰返点数,繰返し 1 回当たりの魚の尾
数,試験濃度区の数,取込みと排出期間の長さ,供試魚と試験水の採取頻度など)
,
8)
試験原液の調製方法と調製頻度(分散助剤を使用した場合は,その名称,濃度,及び試験水の有機物
含有量に対する寄与の割合)
,
9)
試験濃度の設定値,試験水槽水中における実測値の平均値とその標準偏差,それが得られた方法,
10)
希釈水の入手源,行われたすべての処理,その水で供試魚が生存できることを示す結果,及び水質:
すなわち,pH,硬度,温度,溶存酸素濃度,残留塩素(もし測定されたならば)
,全有機炭素,浮遊
物質,水中の塩分濃度(もし適当ならば)
,そして測定されたその他の項目,
11)
試験水槽内の水質,pH,硬度,TOC,温度,溶存酸素濃度,
12)
えさ(餌)に関する詳細な情報[例えばえさ(餌)の種類,入手先,組成−可能であれば少なくとも
脂質とたんぱく質含有量,給じ(餌)された量とその頻度]
,
13)
供試魚と試験水の処理に関する情報,これには被験物質並びに脂質含有量(もし測定されたならば)
の前処理法,保存,抽出,及び分析手順(及び精度)の詳細が含まれる。
結果:
14)
試験結果の解釈に直接関係する予備試験の結果,
15)
対照区及び個々の暴露水槽の魚の死亡率と観察された異常な挙動のすべて,
16)
供試魚の脂質含有量(試験時の測定値があるとき)
,
17)
供試魚中の被験物質の取込みと排出を示す曲線(すべての測定データを含む)
,及び定常状態に達する
までの時間,
18)
すべての採取時間における C
f
と C
w
[適切であれば標準偏差と範囲,C
f
は全体重又は特定の組織,例
えば脂質の湿重量を分母にした mg/kg (ppm) で表し,C
w
は mg/l (ppm) で表す]
。
C
w
は対照区に対しても(また,バックグラウンド値も)報告する。
19)
定常状態の生物濃縮係数 (BCF
ss
)
及び/又は速度論的濃縮係数 (BCF
k
)
,また,評価されていれば取込
17
Z 7260-305 : 2000
みと排出(消失)速度定数の 95%信頼限界[魚又は特定の組織の全重量,又は全脂質含有量(もし測
定されていれば)との関係ですべてを表す]
,その信頼限界と標準偏差,及び各濃度の計算/解析の方
法,
20)
放射能で標識化した被験物質が用いられた場合は,そしてそれが必要である場合は,すべての検出さ
れた代謝物の濃縮性も記す,
21)
試験で観察された異常な事項,ここで規定した手順からの逸脱,及びその他すべての関連情報。
手法開発及び実験設計を予備試験でよく検討して,
“定量下限未満”のような報告はできるだけ避け
る。このような結果は速度定数の計算には用いられないからである。
18
Z 7260-305 : 2000
附属書 1(規定)
OECD GUIDELINES FOR TESTING OF CHEMICALS
の引用文献
ここに掲載した引用文献は,OECD GUIDELINES FOR TESTING OF CHEMICALS, PROPOSAL FOR
UPDATING GUIDELINE 305, Bioconcentration Flow-through Fish Test
で引用文献に挙げられているもので
ある。
本文中では引用文献を番号で識別したが,下記( )内の番号がこれに対応する。
(1) OECD, Paris (1993). OECD Guidelines for Testing of Chemicals.
(2) CEC, Bioaccumulation of chemical substances in fish : the flow-through method
−Ring Test Programme,
1984-1985 Final report, March 1987. Authors : P. Kristensen and N. Nyholm.
(3) OECD, Paris (1996). Direct Phototransformation of chemicals in water. Environmental Health and Safety
Guidance Document Series on Testing and Assessment of Chemicals No.3.
(4) Connell D. W. (1988). Bioaccumulation behavior of persistent chemicals with aquatic organisms. Rev. Environ.
Contam. Toxicol. Vol.102, pp.117-156.
(5) Bintein S., Devillers J. and Karcher W. (1993). Nonlinear dependence of fish bioconcentration on
noctanol/water partition coefficient. SAR and QSAR in Environmental Research 1 : 29-390, 1993.
(6) Spacie A. and Hamelink J. L. (1982). Alternative models for describing the bioconcentration of organics in fish.
Env. Toxicol. and Chemist. vol.1, pp.309-320.
(7) Kristensen P. (1991). Bioconcentration in fish : comparison of BCF’s derived from OECD and ASTM testing
methods ; influence of particulate matter to the bioavailability of chemicals. Danish Water Quality Institute.
(8) Chiou C. T. and Schmedding D. W. (1982). Partitioning of organic compounds in octanol-water systems.
Environ. Sci. Technol. Vol.16(1), pp.4-10
(9) Hawker D. W. and Connell D. W. (1988). Influence of partition coefficient of lipophilic compounds on
bioconcetration kinetics with fish. Wat. Res.22(6), 701-707.
(10) Branson D. R. , Blau G. E, Alexander H. C. and Neely W. B. (1975). Transactions of the American Fisheries
Society, 104(4), pp.785-792.
(11) Ernst W. (1985). Accumulation in Aquatic Organisms. In : Appraisal of tests to predict the environmental
behaviour of chemicals. Ed. by Sheehman P., Korte F., Klein W. and Bourdeau P. H. Part 4.4 pp.243-255 . 1985
SCOPE, John Wiley & Sons Ltd., New York.
(12) Reilly P. M., Bajramovic R., Blau G. E., Branson D. R. and Sauerhoff M. W. (1977). Guidelines for the optimal
design of experiments to estimate parameters in first order kinetic models, Can. J. Chem. Eng., 55, 614-622.
(13) Könemann H. and Van Leeuwen K. (1980). Toxicokinetics in Fish : Accumulation and Elimination of Six
Chlorobenzenes by Guppies. Chemosphere, 9, 3-19.
(14) Kristensen P. (1991). Bioconcentration in fish : Comparison of bioconcentration factors derived from OECD
and ASTM testing methods ; Influence of particulate organic matter to the bioavailability of chemicals. Water
Quality Institute, Denmark.
(15) US EPA 822-R-94-002 (1994). Great Lake Water Quality Initiative Technical Support Document for the
Procedure to Determine Bioaccumulation Factors.
19
Z 7260-305 : 2000
(16) US Food and Drug Administration. Revision. Pesticide analytical manual. Vol.1.5600 Fisher
’s Lane, Rockville,
MD 20852, July1975.
(17) US EPA (1974).Section 5, A(1) Analysis of Human or Animal Adipose Tissue, in Analysis of Pesticide Residues
in Human and Environmental Samples, Thompson J. F. (ed), Research Triangle Park, N. C; 27711.
(18) Compaan H. (1980) in”The determination of the possible effects of chemicals and waters on the aquatic
environment : degradation, toxicity, bioaccumulation. Ch.2.3 in Part II. Government Publishing Office, The
Hague, The Netherlands.
(19) Gardner et a1., (1995).Limnol. & Oceanogr., 30 : 1099-1105.
(20) Randall R.C., Lee H., Ozretich R. J., Lake J. L. and Pruell R. J. (1991).Evaluation of selected lipid methods for
normalizing pollutant bioaccumulation. Environ. Toxicol. Chem. Vol.10, pp.1431-1436.
(21) ASTM E-1022-84 (Reapproved 1988).Standard Practice for conducting Bioconcentration Tests with Fishes and
Saltwater Bivalve Molluscs.
20
Z 7260-305 : 2000
附属書 2(参考)
ガイドラインに示される試験方法の具体的内容例の提示
この附属書は本体 1.
適用範囲の参考に示した各項目の具体的内容を記すものである。以下の点に留意し
て,各試験施設固有の状況及び被験物質の性質,更には試験の目的に応じて試験設計を変更することがで
きる。
なお,ここで BCF は全湿重量を分母とする C
f
と C
w
の比として計算されるものを特に指す。
1)
濃縮平衡,定常状態の確認[本体 3.4)参照] BCF が 100 を超え 1 000 のレベルに到達する被験物質
では,3.4)に記された魚体中濃度 (C
f
)
の変動に関する基準の適用は,本来,脂質重量を分母とした
C
f
又は,脂質含有量補正後の C
f
に対して行うのが望ましい。 一方,BCF が 100 未満の被験物質,又
は代謝排せつ(泄)を受けやすい不安定な被験物質では,仮に濃縮平衡に達していても 3 時点の分析
結果は必ずしも±20%の変動範囲に入らないであろう。この場合は有意差検定で C
f
の経時的な増加傾
向がないことの確認をもって平衡とみなせよう。この検定には t 検定から一元配置分散分析法などの
様々なレベルのものを用いることができる。
さらに,有意差があっても試験の目的が例えば低濃縮か高濃縮かの判定を行うスクリーニングであ
る場合には,暴露終了時の BCF が 100 未満であれば,低濃縮とみなすことも可能であろう(ただし,
暴露期間は標準とされる 28 日間程度とし,適切な間隔で分析することが望ましいかもしれない。
)
。
なお,上記のいずれの場合も,魚を一括して分析する場合は,有意差がないことを統計的に確認で
きれば 3 時点の連続測定でもよい。
2)
適用化合物(4.2 参照) 1−オクタノール/水の分配係数 (logP
ow
)
が 1.5 を下回る被験物質にも本法
は良好に適用できる。ただし,濃縮平衡又は定常状態の確認については 1)に示したとおり±20%の C
f
の変動基準を満たさないかもしれない。また,BCF
k
の評価も統計的に有意な結果を与えないかもしれ
ない。しかしながら試験の目的が BCF のオーダーの評価(例えば 5 000 を超えるか否か)であれば,
このような細かい基準はあまり重要にならない。
3)
放射性同位元素(4.2 及び 9.4.4 参照) 放射性同位元素を用いる試験で,総放射能の測定に基づく BCF
が 1 000 未満であれば,親化合物の BCF も 1 000 未満であり,したがって,試験の目的が濃縮ポテン
シャルの把握である場合などでは,必ずしも親化合物と代謝物の分別定量を行う必要はない。
4)
排出試験(4.2, 9.2.2 及び 9.4.1 参照) 規定内容の一貫性を考えると,BCF が 100 を超え,かつ,BCF
ss
を求める場合でも,60 日間の暴露で 1)に記した濃縮平衡の基準を満たさないときに排出試験を行うこ
とが望ましい。また,仮に基準を満たす BCF
ss
が求められた場合でも,それが 1 000 を超えるときは,
速やかに魚体から排出されるか否かを示すために,排出試験を行うことが望ましい。
なお,連続流水系を採用した場合は,排出期間中の水槽水中の被験物質濃度は必ずしも分析する必
要はない。
5)
希釈水の水質の限界濃度(8.2 参照) 希釈水には水道水を活性炭処理したものか地下水が一般的に使
用されることになる。本体
表 1 に記した水質項目は必ずしもすべて測定する必要はなく,また,水質
の上限濃度が達成困難なときでも使用する希釈水で供試魚が飼育可能なことがあらかじめ確認できれ
ばよい。
6)
供試魚(8.4 参照) イトヨ,ハリヨは国内では供試魚に適さないかもしれない。コイ及びメダカはよ
21
Z 7260-305 : 2000
り取扱いやすいサイズ(例えばコイでは過去に成功事例のある体長約 10cm,体重 20∼40g 程度のもの)
を用いることもできる。
なお,脂質含有量の違いを考察することで,各魚種で得られた結果(少なくとも BCF のオーダー)
は相互に比較できるものになろう。
7)
魚の分析点数(9.2.3 及び 9.4.4 参照) 1 時点当たりの分析点数は用いる統計的手法により決定される
ことになる。例えば t 検定の場合は 3 点以上が,一元配置分散分析法では少なくとも 2 点以上が各試
験区の 1 時点当たりの分析点数になろう。
8)
給じ(餌)率(9.2.5 参照) 1∼2%の給じ(餌)率では,試験期間が長くなると脂質含有量が低下す
るかもしれない。用いる魚種に適した給じ(餌)率とするのが望ましい。
9)
設定濃度(5.及び 9.2.7 参照) 48 時間又は 96 時間 LC50 も設定濃度の根拠とすることができる。こ
の場合,濃縮度試験中の供試魚に毒性影響が認められないことを確認することになる。
なお,設定濃度は LC50 の 1/100 以下であり,また,試験中,魚の健康状態も観察することになる
ため,LC50 を求める魚種は,濃縮度試験に用いる魚種と必ずしも同一である必要はないであろう。
10)
供試魚の採取計画(9.4.1 参照) BCF
ss
だけの測定が目的であれば,1)に記したいずれかの条件を満
たせば,取込期間中の採取時点数は 3 時点でもよい。
11)
脂質含有量(4.2 及び 9.4.4 参照) BCF の測定に用いた個々の試料の脂質含有量を測定する場合は,
脂質含有量を分母にとった(又は脂質含有量で補正した)BCF が評価できるため,必ずしも脂質含有
量の変動推奨範囲±25%を満たす必要はない。また,BCF が 100 未満となる場合は,試験終了時の脂
質含有量は開始時の 75%以上あればよいであろう。
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OECD
化学品テストガイドライン JIS 原案作成委員会・分科会 構成表
氏名
所属
委員会
分科会
(委員長)
後 藤 幹 保
学習院大学理学部
◎
◎
塩 沢 文 朗
通商産業省基礎産業局化学品安全課
○
○
宮 崎 正 浩
通商産業省工業技術院標準部消費生活規格課
○
○
橋 本 進
財団法人日本規格協会技術部規格開発課
○
吉 岡 義 正
大分大学教育学部
○
米 沢 義 堯
資源環境技術総合研究所
○
○
若 林 明 子
東京都環境科学研究所基盤研究部
○
○
梅 崎 芳 美
社団法人産業環境管理協会名誉参与
○
○
高 月 峰 夫
財団法人化学品検査協会安全性評価技術研究所
○
○
茂 岡 忠 義
株式会社三菱化学安全科学研究所
○
○
中 村 進
富士写真フィルム株式会社環境安全推進部
○
○
奥 村 彰
住友化学工業株式会社環境・安全部
○
○
鳥 居 圭 市
財団法人日本化学工業協会
○
外 山 洋 一
環境庁環境保険部環境安全課
(
○)
齋 藤 昇 二
住友化学工業株式会社生物環境科学研究所
(
○) (○)
(事務局)
谷 口 捷 生
社団法人日本化学工業協会化学標準化センター
○
○
三 須 武
社団法人日本化学工業協会化学標準化センター
○
○
◎ 委員長,分科会主査を示す。
○ 委員会,分科会委員を示す。
(
○) 委員会,分科会オブザーバーを示す。