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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格          JIS 

Z 6009-1994 

銀-ゼラチンマイクロフィルムの 

処理及び保存方法 

Silver-gelatin type microfilms−Processing and storage 

1. 適用範囲 この規格は,保存を目的とする銀-ゼラチンマイクロフィルムの処理及び保存方法について

規定する。 

備考1. この規格は,JIS K 7558に規定した安全性をもつ,セルロースエステル,ポリエステルなど

を支持体としたフィルム(以下,フィルムという。)に適用する。 

2. この規格の引用規格を,次に示す。 

JIS B 9908 換気用エアフィルタユニット 

JIS K 7558 安全写真フィルム 

JIS K 7616 現像処理済み一般写真用フィルム・印画紙中の残留処理薬品量の試験方法(メチレンブ

ルー法及び硫化銀法) 

JIS K 7617 現像処理済み写真フィルム・印画紙保存用材料の写真画像安定度試験方法 

JIS P 8133 紙及び板紙のpH試験方法 

JIS Z 6000 マイクログラフィックス用語 

3. この規格の対応国際規格を,次に示す。 

ISO 5466-1992 Photography−Processed safety photographic films−Storage practices 

ISO 10214-1991 Photography−Processed photographic materials−Filing enclosures for storage 

ISO 10602-1993 Photography−Processed silver-gelatin type black-and-white films−Specifications 

for stability 

2. 用語の定義 この規格で用いる主な用語の定義は,JIS Z 6000によるほか,次による。 

(1) マイクロフォーム マイクロ像を収めた情報媒体の総称。 

通常,フィルム形態のものが多い。 

例 ロール状又はストリップ状のマイクロフィルム,シート状のマイクロフィッシュ,アパーチュア

カード,ジャケット。 

(2) 保存 マイクロフォームを,定められた条件の下で意図する期間,原状のままに維持すること。 

(3) 中期保存マイクロフォーム 中期保存条件の下で,最低10年間の保存に適したマイクロフォーム。た

だし,元のマイクロ像が良好な品質であるものとする。 

(4) 永久保存マイクロフォーム 永久保存条件の下で,永久的価値をもつ記録の保存に適したマイクロフ

ォーム。ただし,元のマイクロ像が良好な品質であるものとする。 

備考 永久保存条件の下で,最低100年間の保存に適したマイクロフォームを,長期保存マイクロフ

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Z 6009-1994  

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ォームという。 

(5) 中期保存条件 中期保存マイクロフォームを,最低10年間保存できるように定めた保存条件。 

(6) 永久保存条件 永久保存マイクロフォームを,永久的に保存できるように定めた保存条件。 

(7) 保持具 フィルムを物理的損傷から保護するための開放状の器具。 

通常,保持具はフィルムと接した状態で用いる。例えば,巻心,リール,ジャケット,アパ

ーチュアカード,袋など。 

3. 保存区分 マイクロフォームの保存区分は,表1による。 

表1 保存区分 

保存区分 

保存期間 

マイクロフォームの呼称 

保存条件 

主な用途 

中期保存 

最低10年間 中期保存マイクロフォーム 中期保存条件 

一般文書・商業帳簿などのマ
イクロフォームによる保存 

永久保存 

永久的 

永久保存マイクロフォーム 永久保存条件 

文化的価値,歴史的価値をも
つ記録などのマイクロフォ
ームによる保存 

備考 表に示した保存期間を達成するには,使用するフィルム,現像処理条件,保持具・容器の材料,

保存期間中の環境条件などが,表記に該当する要件を満たしていなければならない。 

4. 処理 フィルムの処理は,製造業者が指定した条件によるほか,次による。 

(1) 現像 現像液は,新鮮なものを使用する。 

また,現像機の清掃は,定期的に行う。 

(2) 定着 フィルムの定着は,次による。 

(a) 定着液は,新鮮なものを使用する。その度合いとして,定着液中に溶け込んだ銀量は,チオ硫酸ナ

トリウムを主剤とした定着液では,主剤に対してモル比0.5%以下,チオ硫酸アンモニウムを主剤と

した定着液では,主剤に対してモル比0.8%以下とするのがよい。 

(b) マイクロスコピックブレミッシュ(褐色微小はん点)を抑制するため定着液中のよう化物の含有量

は,0.1〜0.5g/l (KI) とするのがよい。 

(3) 水洗 フィルムの水洗は,次による。 

(a) 水洗に用いる水(1)は,無色で浮遊物のないものを使用する。 

水洗水の温度は,15〜25℃が適当であり,一般的には20℃の流水中で常にフィルムの表面に新し

い水が行き渡るようにし,15分間(2)水洗する。 

注(1) 通常,水道水は,水洗に使用できる。 

(2) 自動現像機の場合には,高い温度の水洗水(約30℃),水洗効率の高い方式,又はpH値が高い

定着液を使用し,水洗時間を短縮できる。 

(b) 水洗時間の短縮には,イオン交換式の水洗促進がよく,酸化剤を含むハイポ駆除剤による水洗促進

は行ってはならない。 

(4) 乾燥 フィルムの乾燥は,ほこり及びフィルムに有害な不純物がない清浄な所で行う。極端に高い温

度での乾燥及び較燥不足は,避けなければならない。 

5. 処理済フィルムの特性 

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5.1 

残留チオ硫酸塩 永久保存のフィルムの残留チオ硫酸塩の許容量は,JIS K 7616によって試験し,

0.014g-S2O32−/m2以下とする。 

また,中期保存のフィルムの場合は,0.030g-S2O32−/m2以下とするのがよい。 

備考 長期保存のフィルムの場合は,0.030g-S2O32−/m2以下とする。 

5.2 

残留銀化合物 処理後のフィルムの残留銀化合物は,5.3によって試験し,ほとんど知覚し得ない程

度の着色(極薄い黄色)又はそれ以下とする。もしも,知覚し得ない程度を超えた着色を示した場合でも,

着色の程度が標準片(3)と同等以下であれば,合格とする。 

注(3) 標準片とは,試験片と同じ種類の生フィルムを新しい定着液で処理し,十分に水洗した後,5.3 

(1)〜(5)と同じ手順によって得られるもの。 

5.3 

残留銀化合物試験 残留銀化合物試験は,次による。 

(1) 試験するフィルムの最小濃度部分から小片を2枚切り取って試験片とし,フィルムの両画について試

験する。 

(2) フィルムは,吸取紙などで水分を取り,乾かす。 

(3) 新たに調製した0.2%硫化ナトリウム溶液を滴下する。 

(4) 滴下して3分後に水洗又は吸い取る。 

(5) 滴下部分の着色が知覚し得るか否かを肉眼で判断する。知覚し得る程度の着色を示した場合は,(6)に

示す確認のための試験を行う。 

(6) 試験片の着色の程度を標準片の着色と比較する。 

5.4 

外観 フィルムには,マイクロ像を損なうような指紋,きず,汚れ,変形,処理液の付着などがあ

ってはならない。 

5.5 

フィルムの接合 フィルムの接合は,できるだけ行わない。やむを得ず接合する場合は,次のいず

れかによる。 

(1) 超音波,高周波などによる機械的接合。 

(2) 接着剤による場合は,不安定な溶剤,硝酸セルロース及び酢酸を含まない化学的に安定な高品質のセ

メントによる。 

6. 環境条件 

6.1 

湿度及び温度 湿度及び温度は,次による。 

(1) フィルムの保存に適した相対湿度及び温度の条件は,表2による。 

(2) 湿度又は温度は,短時間に変動反復しないようにする。 

表2 相対湿度及び温度の条件 

保存条件 

相対湿度 % 

温度 ℃ 

最高 

最低 

最高 

セルロースエステル 

ポリエステル 

中期保存条件 

60 

15 

30 

25(4) 

永久保存条件 

40 

15 

30 

21 

注(4) 理想的には,温度は長期間にわたって25℃を超えてはならず,20℃よ

り低い温度が望ましい。短期的なピーク温度は32℃を超えてはならな
い。 

備考1. この湿度及び温度の条件は,1日24時間維持しなければならない。 

2. セルロースエステル及びポリエステルのフィルムを同一の場所で保

存する場合,永久保存での推奨される相対湿度は30%である。 

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6.2 

空気中の不純物 空気中の不純物については,次による。 

(1) フィルムは,ほこり・ガス状不純物(5)が少ない所で保存する。 

注(5) 亜硫酸ガス,硫化水素,オゾン,酸化窒素,アンモニア,その他過酸化物や空気中に浮遊して

いる酸性有害物質など。 

(2) 空気中にガス状不純物がある場合は,その不純物を洗浄機又は吸着剤によって除去するか,9.1の密封

容器を使用しなければならない。 

(3) 空気中のほこりを除去しなければならない場合に用いるフィルタは,JIS B 9908の表1(フィルタユ

ニットの種類)の形式2で,乾式のろ材で,粒子捕集率90%以上のものとする。 

(4) 保存場所に新たに油性塗料を塗った場合,少なくとも3か月間は使用してはならない。 

6.3 

光 通常,フィルムは暗い条件下で保存するのがよい。 

7. 保存室 

7.1 

中期保存条件 中期保存条件は,次による。 

(1) 中期保存には,特別の部屋は必要としないが,保存場所は,6.の環境条件を満たすこと。 

(2) 保存場所には,フィルムを検査する場所を近くに設けるのがよい。 

(3) 部屋の壁などは,湿気が凝集するのを防ぐように設計しなければならない。 

7.2 

永久保存条件 永久保存の部屋は,7.1の条件を満たし,一時的なフィルムの保管施設,事務所,作

業場所などとは区分しなければならない。 

参考 フィルムの火災・水害からの保護は,参考1(耐火保存)に示す。 

8. 棚,キャビネット フィルムを保存する棚,キャビネットなどは,密閉できるものを使用する。ただ

し,密封容器又は密閉容器に入れた場合は,解放した棚を用いてもよい。 

(1) 棚,キャビネットなどの材料は,10.4による。木製材料は使用しないこと。 

(2) 棚,キャビネットなどに油性塗料を塗った場合,少なくとも3か月間は使用してはならない。 

(3) 塩素化樹脂・可塑剤の多い樹脂によって仕上げたものは,使用しないほうがよい。 

(4) キャビネット内部を個別に湿度調節を必要とする場合は,気密性をもつキャビネットを使用し,収納

してある保持具及び容器の周囲には,調節した空気が行き渡るようにする。湿度調節には,シリカゲ

ルなどを使用してもよい。 

9. 保持具及び容器 

9.1 

容器の種類及び使い方 フィルムは,ガス状不純物,ほこり,汚れ及び物理的損傷から保護するた

め,密封容器又は密閉容器に入れるのがよい。ただし,密封容器又は密閉容器に入れるフィルムは,事前

に9.4によってならしを行わなければならない。容器の種類及び主な使い方は,表3による。 

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表3 容器の種類及び用途 

容器の種類 

主な使い方 

形状及び機能 

開放容器 

湿度が定められた条件を超えない場
合 

紙箱,紙袋などの通気性をもつ容器 

フィルムから生じる酢酸臭を放散さ
せる場合 

密閉容器 

湿度が定められた条件を超えない場
合 

プラスチック缶,金属缶などわずか
に通気性をもつ容器 

密封容器 

湿度が定められた条件を超える場合
及びガス状不純物から保護する場合 

デープで密封した缶など,気密で遮
光性をもつ容器 

低温での保存の場合 
高湿度の下での保存の場合 

テープで密封した缶を,さらにアル
ミニウムはく(箔)をしん(芯)に
した袋(6)に入れること 

注(6) アルミニウムはくをしんにした袋とは,ポリエチレンで内張りされ,外側を紙で補

強し,熱溶着で封をする通気性,透湿性のない袋。 

備考1. セルロースエステルを支持体としたフィルムで,処理後おおよそ25年を経過した

フィルム,又は25年以内に処理されたフィルムでも,湿度及び温度が定められた
条件を大きく超える環境下に保存されたフィルムは,密封容器又は密封容器で保
存せず,紙箱・紙袋などの通気性をもつ開放容器で保存するのがよい(参考2参
照)。 

なお,11.の定期検査において,酢酸臭が認められたフィルムは,隔離して保存

しなければならない。 

2. ベシキュラフィルムは,本来酸性ガスを発生する懸念があるため,ポリスチレン

又はポリエチレン製の容器に入れ,銀-ゼラチンフィルムとは隔離して保存する
のがよい。 

3. 永久保存の場合,種類が異なるフィルムは,同一の保持具,容器内に保存しては

ならない。 

例1. 銀-ゼラチンフィルムとジアゾフィルム 
例2. 銀-ゼラチンフィルムとカラーフィルム 

4. 保存寿命を最大限にするためには,フィルムは,保存場所に入れるまで,6.の環

境条件の下に置かなければならない。 

9.2 

ロールフィルムの場合 

9.2.1 

中期保存条件 ロールフィルムは,リール,コアなどの保持具に巻き,密封容器又は密閉容器に入

れるのがよい。この場合の条件は,次による。 

(1) 保持具及び容器の材料は,10.2,10.3又は10.4に準じる。 

(2) 保持具及び容器は清浄でなければならない。 

(3) 16mmフィルムは,リール又はコアに極端な張力をかけずに堅く巻く。35mmフィルムを巻く場合の

張力は,0.3Nがよい。 

(4) リール又はコアにフィルムを巻く場合の巻き終わりの止め方は,次のいずれかに準じる。 

(a) 紙製の帯などを巻いて止める。この帯の材料は,10.2又は10.3による。 

また,ゴムバンド及び粘着テープは使用してはならない。 

(b) リールに巻いた場合は,フィルムの先端を折り曲げ,その先端をフィルムとフランジの間に差し込

んで止める。 

(5) コアに巻いたフィルムは,コア軸を縦(鉛直)の方向にして保存する。直径が20cm以下のフィルム

をコア軸を横(水平)の方向に保存する必要がある場合は,下部にその荷重がかからないよう保持す

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る。 

(6) 密封容器を使用する場合は,10.3又は10.4に準じる通気性のない材料を使用し,そのふたとのはめ合

い部分に,通気性の少ない不活性な粘着テープを数回巻いて封かんする。このテープは,2年に一度

定期的に取り替えるのがよい。 

(7) 特に,高湿度の場所で保存する場合は,フィルムを密封容器に入れ,さらにアルミニウムはくをしん

にした袋に入れて熱溶着するのがよい。 

9.2.2 

永久保存条件 ロールフィルムの永久保存には,9.2.1の条件を満たし,保持具及び容器の材料は,

10.2,10.3又は10.4による。 

9.3 

シート状フィルムの場合 

9.3.1 

中期保存条件 シート状のフィルムは,紙製又はプラスチック製の袋,ジャケット,アパーチュア

カードなどに収納又は保持する。この場合の条件は,次による。 

(1) 保持具及び容器の材料は,10.2,10.3又は10.4に準じる。ただし,フィルムの表面に接する材料は,

10.2又は10.3による。 

(2) 袋状の保持具は,その張合わせ目がフィルムの表面に当たらないよう,袋の端にくるようにし,張合

わせに使用する接着剤は,10.5による。 

(3) 保持具及び容器は,清浄でなければならない。 

(4) シートフィルムの積み重ねには,下部のフィルムに過度の荷重がかからないようにする。 

(5) シートフィルムを密封して保存するには,9.2.1(6)及び(7)に準じる。 

9.3.2 

永久保存条件 シートフィルムの永久保存には,9.3.1の条件を満たし,保持具及び容器の材料は,

10.2,10.3又は10.4による。 

9.4 

容器を用いる場合のフィルムの慣らし 密封容器を用いる場合のフィルムの慣らしは,次による。

密封容器に入れる場合もフィルムの慣らしを行う。この場合の慣らしは,次に準じる。 

(1) 容器に入れる場合 フィルムと密封容器は,表2に示す永久保存条件の下限の相対湿度の空気にあら

かじめなじませ,十分に慣らしてからフィルムを密封容器に入れ,封かんしなければならない。この

場合,フィルムの湿度と周囲の湿度とが平衡するのに要する時間は,表4による。 

なお,密封容器内の空気の量は,できるだけ少なくするのがよい。 

表4 フィルムの慣らし時間 

フィルムの形態 

慣らしの所要時間 

マイクロフィッシュ又はストリップの単体(7) 

20分間 

16mmロール 

 3日間 

35mmロール 

 1週間 

注(7) ジャケット,袋方式アパーチュアカードなどに挿入したフィ

ルムにはあてはまらない。 

備考1. 粘着テープ方式アパーチュアカードの場合,単体での慣ら

し時間は,おおよそ2時間である。 

2. 例えば,少量のロールフィルムをデシケータで慣らす場合

は,デシケータに適当な量のシリカゲル又は調湿剤を入れ,
2〜3週間乾燥した後,速やかに容器に移して封かんする。 

(2) 容器を開封する場合 低温で保存した容器を開封する場合は,容器内のフィルムの温度と容器の周囲

の温度とが平衡するまで,容器を開いてはならない。 

参考 この平衡をとるのに要する時間は,容器の形態及びその時の温度差によって異なるが,おおよ

そ2〜4時間である。 

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10. 材料 

10.1 一般 フィルムの保存用材料は,一般に次による。 

(1) 材料は,化学的に安定で,物理的に十分な強度をもつものでなければならない。 

(2) 材料は,画像及び支持体を劣化させるような成分を含有しているもの,又は保存中に分解して酸及び

過酸化物を発生するものであってはならない。 

(3) ゴムを主成分とする材料は,使用してはならない。 

(4) フィルムの画像面に接触する材料の表面は,わずかにきめが粗いマット面のものがよい。 

(5) フィルムの保存に用いる保持具,容器,接着剤,印刷インキなどの材料は,JIS K 7617の5.(写真活

性度試験方法A)及び6.(写真活性度試験方法B)によって,写真活性度が認められるものであって

はならない。 

10.2 紙 保持具及び容器に用いる紙は,次による。 

(1) 紙は,金属粒子を含まず,フィルムに付着するような表面繊維がないこと。 

また,フィルムに転移するようなワックス,可塑剤,その他の成分を含有してはならない。 

備考 グラシン紙は,使用してはならない。 

(2) フィルムに接しない紙のpH値は,JIS P 8133の4.1(冷水抽出法)によって測定し,pH7.2〜9.5の範

囲になければならない。 

また,アルカリ保持量は,JIS K 7617の7.(アルカリ保持量試験方法)によって測定し,2%以上で

なければならない。 

備考1. フィルムに接しない紙には,化学パルプ100%で,リグニンの含有量の少ない上質紙などで,

(2)の条件を満たすものを使用するのがよい。 

2. フィルムに接しない紙を用いる容器には,保存箱(外箱),ファイル,密封した缶を入れる袋

などがある。 

(3) フィルムに接する紙は,アルカリ不溶解分が87%以上の,さらし亜硫酸パルプ又はさらしクラフトパ

ルプからなり,砕木パルプ(グランドパルプ)を含まない原料で作られた上質紙でなければならない。

この場合,pH値及びアルカリ保持量は,10.2(2)によるものとし,サイズ剤の量は,必要最小限とし,

中性又はアルカリ性のものを用いる。 

備考 フィルムに接する紙を用いるものには,フォルダ,シートフィルムの紙袋,ロールフィルムの

紙箱などがある。 

10.3 プラスチック 保持具及び容器に用いるプラスチックは塗工せず,可塑化度が高くなく,残留溶剤

がない,不活性で過酸化物を含まないもの(8)でなければならない。 

注(8) 塗工しないポリエステル,ポリエチレン,ポリプロピレンなど。 

備考 使用に適さないプラスチックには,塩化ビニル,硝酸セルロース,発泡ポリウレタンなどがあ

る。 

10.4 金属 保持具,容器,棚,キャビネットなどに用いる金属は,耐腐食性のもの,又は腐食防止加工

を施したもの(9)を使用する。 

注(9) 陽極酸化皮膜アルミニウム,ステンレス鋼など。 

備考 保存中に活性なガス及び過酸化物を放出する油性塗料・ラッカーは,使用してはならない。 

10.5 接着剤 保持具及び容器に用いる接着剤は,次による。 

(1) 画像,保持具及び容器を侵す溶剤,並びに硫黄,鉄,銅などの不純物を含んでいてはならない。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

(2) 紙の接着には,熱溶着又は機械的接着がよい。接着剤を用いる場合は,写真用高品質ゼラチン,ポリ

酢酸ビニル,セルロースエステルなどを用いた接着剤が適する。 

備考 使用に適さない接着剤には,吸湿性のにかわ,感圧形接着剤,ゴムセメント,エポキシ系接着

剤のようにエーテル結合によって接着するものなどがある。 

10.6 印刷インキ 容器内には,印刷物を入れてはならない。容器の外側に印字するためのインキは,不

活性で,にじみ,広がり,転写などがあってはならない。 

11. 定期検査 

11.1 中期保存 中期保存マイクロフォームの定期検査は,11.2に準じる。 

11.2 永久保存 永久保存マイクロフォームの定期検査は,次による。 

(1) 検査項目 検査は,次の項目について行う。 

(a) フィルムに生じるかび,くっつき,変形,きず,膜面のはく離,変色,マイクロスコピックブレミ

ッシュ,濃度の低下,べとつき,酢酸臭など。 

(b) 保持具及び容器の劣化 

(2) 検査の頻度 抜取検査は,日本工業規格による抜取検査方式によって抽出計画を立て,2年に一度行

うのがよい。ただし,相対湿度及び温度が,表2の条件を超えたとき,又は検査で異常が発見された

ときは,検査の頻度及び数量を増やさなければならない。 

備考 セルロースエステルを支持体としたフィルムは,処理後おおよそ25年を経過したら,参考2

に示す方法で酢酸の放散処置を行うのがよい。 

なお,ポリエステルを支持体としたフィルムは,この必要はない。 

(3) 検査の場所 検査の場所は,フィルムの保存場所の近くで,ちり・ほこりの少ない環境がよい。 

また,作業場所の相対湿度及び温度の条件は,次のとおりとすることが望ましい。 

(a) 相対湿度:40〜50% 

(b) 温度:21℃以下 

(4) 検査の方法 フィルムの検査は,次による。 

(a) 低温で保存した密封容器の開封は,9.4の(2)(容器を開封する場合)による。 

(b) フィルムの観察には,検査ステーション,5〜15倍のルーペ,25〜50倍の顕微鏡などを用いるとよ

い。 

(c) フィルムの取扱いは,フィルムのほこり,すりきず,指紋などを付けないように行う。例えば,清

潔な手袋を着用し,フィルムの両エッジを挟むようにして保持するのがよい。 

(5) 判定基準 検査結果の判定は,次による。 

(a) フィルムに生じるかび,くっつき,膜面のはく離,変色,マイクロスコピックブレミッシュ,濃度

の低下,酢酸臭などがあってはならない。 

(b) 保持具及び容器のぜい化,変色などの劣化があってはならない。 

Z 6009-1994  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

参考1 耐火保存 

この参考は,耐火保存について記述するものであり,規格の一部ではない。 

1. フィルムの火災からの保護 フィルムを火災から保護する場合は,耐熱性の容器に入れ,3.の耐火庫

又は4.の耐火貯蔵室に保存しなければならない。 

火災のほか,水害及び震災にも十分に留意し,散水処置,消火剤,水漏れなどによってフィルムに損傷

が生じないようにしなければならない。 

また,フィルムを火災及び水害から保護するには,複数のフィルムを作成し,他の場所に分散して保存

するのが最もよい。 

2. 耐熱性の保持具及び容器 耐熱性の保持具及び容器は,次による。 

(1) コア,リールなどの材料は,フィルムよりも燃えやすい又は分解しやすいものであってはならない。 

(2) 保持具及び容器は,保存する包装形態で,150℃において4時間の加熱によって発火せず,放出するガ

スは,フィルムへの影響の少ないものでなくてはならない。 

(3) 保持具及び容器の材料は,(2)の条件で溶けたり変形したりしてもフィルムを傷めず,フィルムが容器

から取り出せなければならない。 

3. 耐火庫 耐火庫は,JIS S 1037(耐火庫)の2.(1)(収容物及び構造による区分)に規定する磁気テー

プ用耐火庫と同等以上の性能をもつ耐火庫とする。この場合,耐火建築でない建物では地面に支えられた

床上に設置するのがよい。 

熱の絶縁に蒸気を発生させる構造の耐火庫の場合は,庫内が密封形のものを使用しなければならない。 

4. 耐火貯蔵室 耐火貯蔵室は,建設省告示(昭和39年1675号)による耐火構造とする。 

10 

Z 6009-1994  

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参考2 古いフィルムの酢酸の放散処置 

この参考は,古いフィルムの酢酸の放散処置について記述するものであり,規格の一部ではない。 

1. 酢酸の影響 セルロースエステルを支持体としたフィルムで,処理後おおよそ30年を経過したもの,

又は30年以内に処理されたものでも,湿度及び温度が定められた条件を大きく超える環境の下に保存され

た場合は,酢酸臭を生じる懸念がある。酢酸臭の生じたフィルムを,密封容器などを用い密閉した状態で

保存していると,フィルムが急速に劣化する懸念がある。したがって,処理後おおよそ25年を経過したと

きは,2.の放散の手順に示すように,フィルムを空気にさらし,発生する酢酸が放散するよう,開放系で

保存しなければならない。 

この酢酸の放散処置は,フィルムから酢酸臭が生じる前に行うのがよいが,酢酸臭が生じてからでも同

様の方法で行うとよい。この処置は,3〜5年ごとに全数について行う。 

なお,ポリエステルを支持体としたフィルムは,この必要はない。 

2. 放散の手順 フィルムの酢酸の放散手順は,次による。 

(1) 容器から取り出した直後に,支持体のにおいをかぐ。 

(2) ロールフィルムの場合は,フィルムの巻返しをゆっくり行う。 

(3) シートフィルムの場合は,容器から取り出し,各フィルムの支持体が空気に触れるようにばらしてお

く。 

(4) 放散後のフィルムは,開放容器に入れ,通気性を保たせて保存する。 

なお,酢酸臭の認められたフィルムは,他の正常なフィルムとは別の,空気の流れがよい保存場所

に移し替える。 

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Z 6009-1994  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

銀-ゼラチンマイクロフィルムの処理及び保存方法改正原案作成委員会 構成表 

氏名 

所属 

(委員長) 

鳥 海 史 郎 

社団法人日本マイクロ写真協会(ミノルタカメラ株式会社) 

安 達 俊 雄 

通商産業省機械情報産業局 

岩 野 治 彦 

写真感光材料工業会(富士写真フイルム株式会社) 

岡 田 俊 郎 

社団法人日本マイクロ写真協会 

加 山 英 男 

財団法人日本規格協会 

木 村 政 夫 

東京工芸大学 

若 松 茂 三 

通商産業省工業技術院標準部 

三 位 信 夫 

千葉大学工学部 

大 月   肇 

ミノルタカメラ株式会社 

片 山 照 雄 

株式会社コダック情報システムズ 

鹿 野 正 美 

ケイアイピー・イメージインテグレーション株式会社 

設 楽 真 一 

富士写真フイルム株式会社 

柳   正 明 

キヤノン株式会社 

渡 辺 喜 一 

キヤノン販売株式会社 

島 野 元 弥 

日本マイクロ写真株式会社 

千 徳 憲 夫 

明治生命保険相互会社 

西 田 英 司 

中央光学出版株式会社 

橋 本 康 正 

横浜市総務局 

羽 原   正 

日本原子力研究所 

丸 山 祐 作 

国立国会図書館 

小 林 秀 行 

株式会社ジェイ・アイ・エム 

(事務局) 

徳 井 郁 朗 

社団法人日本マイクロ写真協会