Z 4910:2015 (IEC 60627:2013)
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 1
3 用語及び定義 ··················································································································· 2
3.1 グリッドの定義 ············································································································· 2
3.2 幾何学的特性 ················································································································ 3
3.3 物理的特性 ··················································································································· 4
3.4 その他の用語解説 ·········································································································· 4
4 散乱線除去グリッドの構造 ································································································· 5
5 物理的特性の測定及び数値の決定 ························································································ 5
5.1 測定の方法及び配置 ······································································································· 5
5.2 物理的特性 ··················································································································· 8
6 散乱線除去グリッドの必要条件 ·························································································· 10
6.1 製造許容度 ·················································································································· 10
6.2 集束グリッド使用距離限界の決定····················································································· 10
6.3 特性の正確度 ··············································································································· 10
6.4 表示及び附属文書 ········································································································· 11
附属書A(規定)使用距離限界の計算 ····················································································· 18
附属書B(参考)散乱フラクション(散乱線含有率)が物理的特性に及ぼす影響 ····························· 20
参考文献 ···························································································································· 22
この個別規格で用いられている定義した用語の索引 ··································································· 23
附属書JA(参考)旧JISにおける散乱線除去グリッドの要求事項 ················································ 25
Z 4910:2015 (IEC 60627:2013)
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まえがき
この規格は,工業標準化法第14条によって準用する第12条第1項の規定に基づき,一般社団法人日本
画像医療システム工業会(JIRA)及び一般財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日
本工業規格を改正すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,厚生労働大臣及び経済産業
大臣が改正した日本工業規格である。
これによって,JIS Z 4910:2000は改正され,この規格に置き換えられた。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。厚生労働大臣,経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の
特許出願及び実用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
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日本工業規格 JIS
Z 4910:2015
(IEC 60627:2013)
診断用X線映像装置−
汎用及び乳房用散乱線除去グリッドの特性
Diagnostic X-ray imaging equipment-
Characteristics of general purpose and mammographic anti-scatter grids
序文
この規格は,2013年に第3版として発行されたIEC 60627を基に,技術的内容及び構成を変更すること
なく作成した日本工業規格である。
なお,この規格で点線の下線を施してある参考事項及び附属書JAは,対応国際規格にはない事項であ
る。
1
適用範囲
この規格は,患者の体内で発生する散乱放射線が受像面に入射する量を減少させることによって,X線
パターンのコントラストを改善する目的で診断X線装置に使用する散乱線除去グリッドについて適用する。
この規格は,散乱線除去グリッドの定義,特性の決定及び表示について規定する。
この規格は,直線グリッドについてだけ適用できる。
現在,乳房X線撮影では集束グリッドだけ使用しているため,この規格は,乳房用散乱線除去グリッド
に対しては,集束グリッドに限定している。
この規格は,受入試験のために適用するものではない。
この規格は,グリッドの全領域における性能の均一性は含まない。
この規格は,試験条件下での散乱線除去グリッドの特性の決定に適用するものである。これらの条件は,
必ずしも責任部門で得られるものではない。
なお,参考として旧規格における散乱線除去グリッドの要求事項を,附属書JAに示す。
注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
IEC 60627:2013,Diagnostic X-ray imaging equipment−Characteristics of general purpose and
mammographic anti-scatter grids(IDT)
なお,対応の程度を表す記号“IDT”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“一致している”こ
とを示す。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS T 0601-1 医用電気機器−第1部:基礎安全及び基本性能に関する一般要求事項
注記 対応国際規格:IEC 60601-1:2005,Medical electrical equipment−Part 1: General requirements for
2
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basic safety and essential performance及びAmendment 1:2012(MOD)
JIS T 0601-1-3 医用電気機器−第1-3部:基礎安全及び基本性能に関する一般要求事項−副通則:診
断用X線装置における放射線防護
注記 対応国際規格:IEC 60601-1-3:2008,Medical electrical equipment−Part 1-3: General requirements
for basic safety and essential performance−Collateral Standard: Radiation protection in diagnostic
X-ray equipment(IDT)
JIS T 61267 診断用X線装置−特性決定に用いる放射線条件
注記 対応国際規格:IEC 61267:2005,Medical diagnostic X-ray equipment−Radiation conditions for use
in the determination of characteristics(IDT)
JIS Z 4005 医用放射線機器−定義した用語
注記 対応国際規格:IEC/TR 60788:2004,Medical electrical equipment−Glossary of defined terms
(MOD)
3
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS Z 4005,JIS T 0601-1,及びJIS T 0601-1-3によるほか,次
による。
注記 定義した用語は太字で示す。また,上記の規格を参照した用語の索引を本体の末尾に示す。
3.1
グリッドの定義
3.1.1
散乱線除去グリッド(ANTI-SCATTER GRID)
受像面の前に置き,散乱放射線の入射を減らし,X線パターンのコントラストを高めるための器具。
3.1.2
直線グリッド(LINER GRID)
縦方向に平行な高吸収はく(箔)と,放射線が実質的に透過する間隙とから構成された散乱線除去グリ
ッド。
3.1.3
平行グリッド(PARALLEL GRID)
吸収はく(箔)の面が互いに平行で,かつ,入射面に垂直な直線グリッド。
3.1.4
集束グリッド(FOCUSED GRID)
吸収はく(箔)の面の延長が集束距離で,一つの直線に集束する直線グリッド。
3.1.5
テーパグリッド(TAPERED GRID)
吸収はく(箔)の高さが,実中心線から遠ざかるにつれて漸次減少する直線グリッド。この減少は,実
中心線に対して対称である。
3.1.6
クロスグリッド(CROSS-GRID)
二つの直線グリッドの吸収はく(箔)の方向が,ある角度をもって一体に形成されている散乱線除去グ
リッド。
3
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3.1.7
直交クロスグリッド(ORTHOGONAL CROSS-GRID)
吸収はく(箔)の方向が90度の角度をもつクロスグリッド。
3.1.8
斜交クロスグリッド(OBLIQUE CROSS-GRID)
吸収はく(箔)の方向が90度以外の角度をもつクロスグリッド。
3.1.9
静止グリッド(STATIONARY GRID)
放射線ビームに対して,相対的に,動かさずに使用する散乱線除去グリッド。
3.1.10
運動グリッド(MOVING GRID)
吸収はく(箔)の像による情報の損失を防ぐために,放射線ビームが透過している間,動かして使用す
る散乱線除去グリッド。
3.1.11
乳房用散乱線除去グリッド(MAMMOGRAPHIC ANTI-SCATTER GRID)
乳房撮影のために特別に設計された集束グリッド。
注記 この規格では,用語“汎用散乱線除去グリッド”は,特に乳房撮影用に設計されていない,あ
らゆる散乱線除去グリッドのために用いられている。
3.2
幾何学的特性
3.2.1
グリッド密度,N(STRIP FREQUENCY)
直線グリッドにおける,1 cm当たりの吸収はく(箔)の数(単位:cm−1)。
3.2.2
グリッド比,r(GRID RATIO)
直線グリッドの中心部における,吸収はく(箔)の間隙に対する吸収はく(箔)の高さの比。
3.2.3
集束距離,f0(FOCUSING DISTANCE)
グリッドの吸収はく(箔)の面が集束する線と集束グリッドの入射面との間の距離(単位:cm)。
注記 “集束距離”,“焦点−グリッド距離”,及び“焦点−フィルム距離”の違いに注意する。
3.2.4
使用距離限界,f1,f2(APPLICATION LIMITS)
放射線学の有効な情報を得られるような,焦点と集束グリッド又は平行グリッドの入射面との距離。そ
の下限をf1,上限をf2とする(単位:cm)。
注記 使用距離限界の計算方法詳細については,附属書Aを参照。
3.2.5
実中心線(TRUE CENTRAL LINE)
平行グリッドについては,吸収はく(箔)の方向でグリッド有効面積の中心を通る入射面上の線。
集束グリッドについては,吸収はく(箔)の面が集束する線を集束グリッドの入射面に垂直投影した線。
テーパグリッドについては,吸収はく(箔)の方向でグリッドの構造の左右対称の面に位置する入射面
上の線。
4
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注記 クロスグリッドは,入射面上に2本の実中心線をもつ。
3.2.6
中心線表示(CENTRAL-LINE INDICATION)
実中心線の位置及び方向を示すことを意図した,直線グリッドの入射面上の目印。
注記 ほとんどの場合,グリッド入射面の幾何学上の中心線と一致する。
3.3
物理的特性
3.3.1
一次放射線透過率,Tp(TRANSMISSION OF PRIMARY RADIATION)
散乱線除去グリッドにおいては,規定の測定条件下で,指定した放射線ビーム中に散乱線除去グリッド
を置いたときと,散乱線除去グリッドがないときとの一次放射線の線量又は線量率の測定値の比。
3.3.2
散乱放射線透過率,Ts(TRANSMISSION OF SCATTERED RADIATION)
散乱線除去グリッドにおいては,規定の測定条件下で,指定した放射線ビーム中に散乱線除去グリッド
を置いたときと,散乱線除去グリッドがないときとの散乱放射線の線量又は線量率の測定値の比。
3.3.3
全放射線透過率,Tt(TRANSMISSION OF TOTAL RADIATION)
散乱線除去グリッドにおいては,規定の測定条件下で,指定した放射線ビーム中に散乱線除去グリッド
を置いたときと,散乱線除去グリッドがないときとの全放射線の線量又は線量率の測定値の比。
3.3.4
選択度,Σ(GRID SELECTIVITY)
散乱線放射線透過率に対する一次放射線透過率の比として求めた散乱線除去グリッドの特性。
3.3.5
コントラスト改善比,K(CONTRAST IMPROVEMENT RATIO)
全放射線透過率に対する一次放射線透過率の比として求めた散乱線除去グリッドの特性。
3.3.6
グリッド露出係数,B(GRID EXPOSURE FACTOR)
全放射線透過率の逆数として求めた散乱線除去グリッドの特性。
3.3.7
イメージ改善係数,Q(IMAGE IMPROVEMENT FACTOR)
全放射線透過率に対する一次放射線透過率の自乗の比として求めた散乱線除去グリッドの特性。
3.4
その他の用語解説
3.4.1
中心ずれ(DECENTRING)
集束グリッドの実中心線と,グリッドの入射面に垂直に投影されたX線管の焦点との距離。
3.4.2
集束ずれ(DEFOCUSING)
X線管の焦点から集束グリッドの入射面までの距離と,そのグリッドの集束距離との差。
注記 中心ずれ及び集束ずれの説明については,A.1を参照。
3.4.3
製造番号(SERIAL NUMBER)
5
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ある形式の機器又は附属品の個々の製品を識別するために使用する,番号及び/又は他の表示。
4
散乱線除去グリッドの構造
通常,散乱線除去グリッドは,一定の間隔Dで交互に配列された,厚さd,高さhの,X線吸収の大き
い材料のはく(箔)で構成する(図1参照)。はく(箔)の高さhは,散乱線除去グリッドの面上にわた
って一定であり,又は,テーパグリッドにおいては,はく(箔)の最高値(高さh0)からその両端の方向
に漸次減少する。
注記 D及びdは,グリッドの入射面で計測される。
通常,はく(箔)の間の中間物質は,X線吸収の小さい材料で充塡される。散乱線除去グリッドは,機
械的損傷に対して保護し,かつ,必要な剛性を確保するため,枠及び被覆材を用いてもよい。
グリッド密度は,次の式に従って決定しなければならない。
)
(
1
D
d
N
+
=
グリッド比は,次の式のいずれかに従って決定しなければならない。
− 平行グリッド及び集束グリッドについては,
D
h
r=
− テーパグリッドについては,
0
0
0
D
h
r=
− クロスグリッドについては,
1
1
1
D
h
r=
2
2
2
D
h
r=
数字がつかない記号は,直線グリッドの一般的な性質を表す。数字“0”がついた記号は,実中心線で
の量を表し,数字“1”又は“2”は,クロスグリッドを構成する,直線グリッドに対する量を表す。
5
物理的特性の測定及び数値の決定
5.1
測定の方法及び配置
5.1.1
物理的特性の決定
この規格の目的のために,一次放射線透過率,散乱放射線透過率,及び全放射線透過率の値は,5.1.2に
規定する測定器具,5.1.3に規定するファントム,5.1.4に規定する配置,及び5.1.5に規定する放射線条件
によって得られる二つの測定値の比として決定しなければならない。
5.1.2
測定器具
5.1.2.1
全般
蛍光板及び光検出器を内蔵する放射線検出器を使用しなければならない(図2参照)。蛍光板は(望ま
しくは無染色の)テルビウム活性化ガドリニウム酸硫化物(GOS又はGd2O2S:Tbという。)で作られなけ
ればならない。
蛍光体の面積密度は,次のとおりとする。
a) 汎用散乱線除去グリッド
75 mg cm−2±10 mg cm−2
b) 乳房用散乱線除去グリッド
30 mg cm−2±3 mg cm−2
注記 蛍光体の材料として,従来規定していたタングステン酸カルシウムは,市場での入手が困難
6
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になった。現在の最先端は,タリウム活性化よう化セシウムと対照的に中毒性及び吸湿性の
ないGOSである。実験結果によると,タングステン酸カルシウムとGOS蛍光体とは同等で
ある。
測定面の直径は,6.0 mm±0.5 mmとする。
蛍光板で発生した光は,発生した光子のエネルギー範囲内に敏感な光検出器で測定する。
散乱線除去グリッドの支持板と蛍光板の蛍光層との間の付加ろ過は,使用する放射線条件に対して,次
を超えてはならない。
a) 汎用散乱線除去グリッド
0.5 mm Al
b) 乳房用散乱線除去グリッド
0.1 mm Al
光検出器の暗電流及び放射線の直接照射は,測定結果に重大な影響を及ぼしてはならない。
光検出器の応答は,放射線の強度に比例しなければならない。
5.1.2.2
暗電流及び直接照射の試験
暗電流及び光検出器の直接照射の影響を確認するために,次の手順で試験を行う。
a) 5.2.3に規定する配置で散乱線除去グリッドを取り除き,5.1.5に指定されている放射線条件を適用する。
b) グリッドの測定に使用する最大X線管電流で,蛍光板で発光した光を光検出器から遮蔽したとき及び
遮蔽しないときの検出器信号を測定する。
c) 放射線照射をせずに,検出器信号を測定する(これが放射線検出器の暗電流の値である。)。
d) 暗電流の値を減算した後,遮蔽したときと遮蔽しないときの測定値の比を計算する。
e) これらの値の比は,0.002を超えてはならない。
5.1.2.3
直線性の試験
光検出器の直線性を確認するために,次の手順で試験を行う。
a) 5.2.3に示す配置で散乱線除去グリッドを取り除き,5.1.5に規定されている放射線条件を適用する。
b) 同一の管電圧で,グリッドの測定に使用する最大X線管電流,その半分の電流,及び照射しないとき
の3種類の測定を行う。
c) 最大X線管電流の半分で測定した測定値は,他の二つの測定値の平均の±5 %以内でなければならな
い。
5.1.3
ファントム
a) 汎用散乱線除去グリッドにおいて,一次放射線透過率及び散乱放射線透過率の決定のために使用する
ファントムは水で満たされた容器でなければならない。その容器は,次による。
− 外形寸法300 mm×300 mm±1 mm,高さ200 mm±1 mm
− 上面,底面,側壁それぞれ厚さ10 mm±2 mmのポリメタクリル酸メチル(PMMA)を用いる。
− 内部が水で満たされている。
ナロービーム条件下で使用する場合,上記ファントムの代わりに,そのファントムと等価で,外形
寸法を縮小させた他のファントムに置き換えてもよい。この場合,それらが等価であることを確認す
る必要がある。
上記ファントムの代わりに,その容器と同じ全体寸法をもつ,水と等価の固体材料で構成されるフ
ァントムを使用してもよい。この場合,それらが等価であることを確認する必要がある。
b) 乳房用散乱線除去グリッドにおいて,一次放射線透過率及び散乱放射線透過率の決定のために使用す
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るファントムは,両辺が150 mm±1 mmの正方形断面で,厚さが50 mm±1 mmのPMMAブロックで
なければならない。
5.1.4
配置
a) 汎用散乱線除去グリッドにおいて,測定のための配置は,図3(ファントムを上部に配置したナロー
ビーム条件)及び図4(ファントムを下部に配置したブロードビーム条件)に示すものでなければな
らない。
焦点,汎用散乱線除去グリッド,及び測定面の位置は,いずれの条件でも同一である。特に記載の
ない限り,図中の全ての寸法の許容差は最大±10 mmである。
汎用散乱線除去グリッドのX線管焦点から支持板までの距離は,測定対象の集束グリッドの集束距
離が100 cmでない場合でも,100 cm(1 000 mm)でなければならない。測定の結果は,集束距離f0
に影響されない。
汎用散乱線除去グリッドは,中心線表示が測定面の中心の上にくるように固定する。グリッドの支
持面と,焦点及び中心線表示によって明示する中心線を含む平面の垂直度は,±0.2°以内でなければ
ならない。グリッドの支持面と放射線検出器の蛍光板の蛍光出力面との距離は,20 mmでなければな
らない。
図3及び図4に示す絞り,並びに図4に示す一次放射線遮蔽板は,厚さ5 mm±1 mmの鉛で作らな
ければならない。上部の絞りは,焦点から150 mm〜300 mmの間に配置しなければならない。下部の
絞りは,グリッドの支持面から220 mmの距離で配置しなければならない。ナロービーム条件(図3
参照)では,ファントムは,上面が上部絞りの底面に接するように配置しなければならない。ブロー
ドビーム条件(図4参照)では,ファントムは,上面が下部絞りの底面に接して,その底面がグリッ
ドの支持面から20 mmの距離になるように配置しなければならない。
b) 乳房用散乱線除去グリッドにおいて,測定のための配置は,図5(ファントムを上部に配置したナロ
ービーム条件)及び図6(ファントムを下部に配置したブロードビーム条件)に示すものでなければ
ならない。
焦点,乳房用散乱線除去グリッド,及び測定面の位置は,いずれの条件でも同一である。それらの
位置は,ファントムを下部に配置した条件によって示している(図6参照)。特に記載のない限り,図
中の全ての寸法の許容差は,±5 mmとする。
乳房用散乱線除去グリッドの焦点から支持板までの距離は,測定対象の集束グリッドの集束距離が
60 cmでない場合でも,60 cm(600 mm)でなければならない。測定の結果は,集束距離f0に影響さ
れない。ファントム下部位置でグリッドを設置した測定(図6参照)について,焦点,ファントム底
面の中心と測定面の中心とは,同一線上になければならない。焦点からファントム底面への垂線は,
ファントム側面のいずれかを二等分しなければならない。
乳房用散乱線除去グリッドの入射面は,ファントム底面と平行でなければならない。中心線表示に
よって定義されたグリッドの中心線は,ファントムの一辺と平行でなければならない。グリッドの胸
壁側は,焦点からファントム底面への垂線に二等分される胸壁側に向いていなければならない。
乳房用散乱線除去グリッドは,焦点からファントム底面への垂線が中心線表示によって定義された
中心線で,グリッドの入射面と交差するように配置する。グリッドの支持面と,焦点及び中心線表示
によって示す中心線を含む平面との垂直度は,±0.2°以内でなければならない。グリッドの支持面と
放射線検出器の蛍光板の蛍光出力面との距離は,10 mmでなければならない。
上記の測定構成は,次の特別な状況のいずれか又は両方において,修正することができる。
8
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
− グリッドがファントムより小さい場合
グリッドはその際,グリッドの中心である焦点と測定面に中心とが同一線上になるよう配置しな
ければならない。
− グリッドのはく(箔)の方向が胸壁面に対して平行である場合
グリッドは,中心ずれを補償するため傾斜させる。測定面上の吸収はく(箔)が焦点に向かうよ
うに,傾斜角度を選択する。傾斜角度は,中心線表示と遠位のグリッド側面との上下動によって決
定する。
注記 実際には,傾斜角度は7°で十分である。
図5及び図6に示す絞り,並びに図6に示す一次放射線遮蔽板は,1 mm〜2 mmの厚さの鉛でなけ
ればならない。上部絞りは,焦点から200 mm又はそれ以下の距離で配置しなければならない。下部
絞りは,乳房用グリッドの支持板から60 mmの距離で配置しなければならない。ブロードビーム条件
の測定(図6参照)においては,ファントムは,その下部表面がグリッドの支持板から10 mmの距離
となるように,上部表面が下部絞りに接した状態で配置しなければならない。
ナロービーム条件の測定(図5参照)においては,ファントム上部表面がX線管に近接する上部絞
りに接し,ファントムの下部表面は,中部絞りに接した状態で配置し,放射線ビームは,ファントム
の中心近くを通るようにする。それ以外は,上記と同様でなければならない。
5.1.5
放射線条件
a) 汎用散乱線除去グリッドにおいて,測定は,5.1.4 a)に規定するナロービーム又はブロードビーム条件
を適用し,JIS T 61267に規定する,放射線条件RQR6に従って行わなければならない。
汎用散乱線除去グリッドが低エネルギー使用向けと明示される場合,追加測定は,放射線条件
RQR4に従って行ってもよい。
汎用散乱線除去グリッドが高エネルギー使用向けと明示される場合,追加測定は,放射線条件
RQR9に従って行ってもよい。
b) 乳房用グリッドにおいて,測定は,5.1.4 b)に規定するナロービーム又はブロードビーム条件を適用し,
JIS T 61267に規定する,放射線条件RQR-M2に従って行わなければならない。
X線管は,焦点外X線をほとんど発生しないものを選択することが望ましい。
注記 多量の焦点外X線を発生するX線管の使用は,散乱放射線透過率の値を僅かだが増加させる可
能性がある。
5.1.6
線源の安定性
X線管負荷条件は,個々の精度測定において,エネルギーフルエンス率の変動が±0.5 %以下になるよう
に制御しなければならない。
5.2
物理的特性
5.2.1
一次放射線透過率(Tp)の測定
一次放射線透過率を決定するために,次の二つの測定をナロービーム条件の下で行わなければならない。
− 5.1.4に規定したファントム及び散乱線除去グリッドを,図3又は図5に示すような適切な配置で測定
する。
− 散乱線除去グリッドなしで,それ以外は同じ条件で測定する。
散乱線除去グリッドの支持板面における,一次放射線のビームの直径は,8 mm〜10 mmの間でなければ
9
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
ならない。
一次放射線透過率Tpは,散乱線除去グリッドありで記録された測定値と散乱線除去グリッドなしで記録
された測定値との比として計算しなければならない。
5.2.2
散乱放射線透過率(Ts)の測定
散乱放射線透過率を決定するために,次の二つの測定をブロードビーム条件の下で行わなければならな
い。
− 5.1.4に規定したファントム及び散乱線除去グリッドを,図4又は図6に示すような適切な配置で測定
する。
− 散乱線除去グリッドなしで,それ以外は同じ条件で測定する。
ファントムの出射面における放射線ビームの大きさは,グリッドがそれより小さい場合でも,次に合わ
せて調整しなければならない。
a) 汎用散乱線除去グリッド
300 mm×300 mm
b) 乳房用散乱線除去グリッド
150 mm×150 mm
一次放射線は,測定面方向への全ての一次放射線を遮蔽するためにファントムの入射面に設置する,
5.1.4に規定する一次放射線遮蔽板で遮蔽しなければならない。この一次放射線遮蔽板の直径は,次でなけ
ればならない。
a) 汎用散乱線除去グリッド
6.0 mm±0.2 mm
b) 乳房用散乱線除去グリッド
6.5 mm±0.1 mm
一次放射線遮蔽板は,検出器の信号が最小になるように,横方向に設定しなければならない。
散乱放射線透過率Tsは,散乱線除去グリッドありで記録された測定値と散乱線除去グリッドなしで記録
された測定値との比として計算しなければならない。
5.2.3
全放射線透過率(Tt)の測定
全放射線透過率を決定するために,二つの測定を5.2.2で規定したものと同じ条件で,ただし,一次放
射線遮蔽板を取り除いて行わなければならない。
全放射線透過率Ttは,散乱線除去グリッドありで記録された測定値と散乱線除去グリッドなしで記録さ
れた測定値との比として計算しなければならない。
5.2.4
選択度(Σ)の計算
選択度は,次の式に従って決定しなければならない。
s
p
T
T
Σ=
5.2.5
コントラスト改善比(K)の計算
コントラスト改善比は,次の式に従って決定しなければならない。
t
p
T
T
K=
5.2.6
グリッド露出係数(B)の計算
グリッド露出係数は,次の式に従って決定しなければならない。
t
1
T
B=
5.2.7
イメージ改善係数(Q)の計算
イメージ改善係数は,次の式に従って決定しなければならない。
10
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
t
2
p
T
T
Q=
5.2.8
測定の精度
a) 汎用散乱線除去グリッドについて,一次放射線透過率,散乱放射線透過率,及び全放射線透過率の決
定における全ての不確かさは,2.0 %を超えてはならない(95 %信頼限界)。
これらの要求が満たされているとき,汎用散乱線除去グリッドの選択度は±3.0 %以内,コントラス
ト改善比は±3.0 %以内,グリッド露出係数は±2.0 %以内,及びイメージ改善係数は±4.5 %以内であ
る。
b) 乳房用散乱線除去グリッドについて,一次放射線透過率,散乱放射線透過率,及び全放射線透過率の
決定における全ての不確かさは,1.0 %を超えてはならない(95 %信頼限界)。
これらの要求が満たされているとき,乳房用散乱線除去グリッドの選択度は±1.5 %以内,コントラ
スト改善比は±1.5 %以内,グリッド露出係数は±1.0 %以内,及びイメージ改善係数は±2.5 %以内で
ある。
6
散乱線除去グリッドの必要条件
6.1
製造許容度
グリッド密度は,6.4.2 c)に従った値の±10 %とする。
グリッド比は,6.4.2 d)に従った値の±10 %とする。
6.2
集束グリッド使用距離限界の決定
平行グリッド及び集束グリッドの使用距離限界は,実中心線から最も離れたグリッドの有効面積の境界
において,一次放射線透過率の値が次のようになる焦点からグリッドまでの距離として決定しなければな
らない。
a) 汎用散乱線除去グリッド
60 %
b) 乳房用散乱線除去グリッド
80 %
この値は,理想的なグリッド,すなわち,幾何学的に正確な散乱線除去グリッドであると仮定して計算
する。
注記 静止グリッド及び運動グリッド(グリッドの動きの大きさを考慮に入れた)に対する計算方法
は,附属書Aに記載する。
6.3
特性の正確度
6.3.1
選択度
6.4.4 d)に指定した選択度の値は,5.2.4によって決定した値に対して,次のとおりでなければならない。
a) 汎用散乱線除去グリッド
±10 %以内
b) 乳房用散乱線除去グリッド
±5 %以内
6.3.2
コントラスト改善比
6.4.4 e)に指定したコントラスト改善比は,5.2.5によって決定した値に対して,次のとおりでなければな
らない。
a) 汎用散乱線除去グリッド
±10 %以内
b) 乳房用散乱線除去グリッド
±5 %以内
6.3.3
グリッド露出係数
6.4.4 f)に指定したグリッド露出係数の値は5.2.6によって決定した値に対して,次のとおりでなければな
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
らない。
a) 汎用散乱線除去グリッド
±10 %以内
b) 乳房用散乱線除去グリッド
±5 %以内
6.3.4
イメージ改善係数
6.4.4 g)に指定したイメージ改善係数の値は,5.2.7によって決定した値に対して,次のとおりでなければ
ならない。
a) 汎用散乱線除去グリッド
±10 %以内
b) 乳房用散乱線除去グリッド
±5 %以内
6.4
表示及び附属文書
6.4.1
附属文書におけるデータ
グリッド,又はグリッドを保持している機器に関連する附属文書は,それが属するそれぞれの散乱線除
去グリッド,グリッド系列,又はグリッドの形式に関するデータを供給することとする。
附属文書は,それが属するそれぞれの散乱線除去グリッド,グリッド系列,又はグリッドの形式が保障
されるために表示しておかなければならない。
6.4.2
直線グリッドに関する必須表示及び指示
直線グリッドは,次の表示及び指示を保持する。
a) 製造業者又は供給業者の名称若しくは商標
b) 形名又は6.4.1による同定を可能にする,形名(形式番号)又は製造番号
c) グリッド密度(cm−1) 例 N 40
d) グリッド比(クロスグリッドは,両グリッド比とする) 例 r 12
注記 数値は,一例である。
e) 中心線表示(クロスグリッドは両中心線表示とする)
f)
汎用散乱線除去グリッドについて,グリッドの実中心と有効範囲の中心とが一致しない場合,有効範
囲の中心線
g) 乳房用散乱線除去グリッドについて,適切な場所にグリッドの胸壁側が確実に認識できる表示
6.4.3
集束グリッドに関する必須表示及び指示
集束グリッドは,6.4.2に加えて,次の表示及び指示を保持する。
a) 集束距離(cm) 例 f0 90
b) 散乱線除去グリッドの入射面が識別できるように表示
例 X線管については,IEC 60417-5337(2002-10)の図記号又はX線源装置についてはIEC
60417-5338(2002-10)[1]。
6.4.4
付加的必須表示及び指示
次の表示及び指示は,散乱線除去グリッド,グリッド又はグリッド保持機器に関連する附属文書に記載
しなければならない。
a) 使用距離限界(cm) 例 f1 76,f2 110
b) 吸収はく(箔)材料の化学記号 例 Pb
c) 一次放射線透過率 例 Tp 0.75
d) 選択度 例 Σ 7.1
e) コントラスト改善比 例 K 3.1
f)
グリッド露出係数 例 B 4.1
12
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g) イメージ改善係数 例 Q 2.3
h) 中心線表示と実中心線との最大誤差(mm) 例 Δ 2
注記 数値及び化学記号は,一例である。
i)
吸収はく(箔)間の材質の表示
j)
被覆材の性質表示
i)及びj)の表示は,一般的な有機材料又は金属の表示に制限してもよい。
汎用散乱線除去グリッドについて,Tp,Σ,K,B及びQの値は,次によって示す。
− 放射線条件RQR 4の場合,“U 60”を追記する。
− 放射線条件RQR 6の場合,“U 80”を追記する。
− 放射線条件RQR 9の場合,“U 120”を追記する。
値がRQR 6だけの場合は,“U 80”表示は,省略してもよい。
6.4.5
更なる必要条件
6.4.2及び6.4.3で要求する表示は,形名(形式番号)又は製造番号で,認識可能で,かつ,分かりやす
い書式で組み込まれる。また,散乱線除去グリッド上に繰返し表示する必要はない。しかし,グリッド,
グリッド保持機器などに関する附属文書には与えられるものとする。
散乱線除去グリッドの表示は,いずれも通常の使用下で,画像に干渉してはならない。
達成される許容差のいずれかがこの規格で要求する許容差より小さい場合,達成する許容差は,グリッ
ド,グリッド保持機器などに関連する附属文書に記載する。
図1−散乱線除去グリッドの構造
13
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図1−散乱線除去グリッドの構造(続き)
単位 mm
図2−放射線検出器
14
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単位 mm
図3−ナロービーム条件における汎用散乱線除去グリッドの測定配置(一次放射線透過率の決定)
15
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単位 mm
図4−ブロードビーム条件における汎用散乱線除去グリッドの測定配置(散乱放射線透過率の決定)
16
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
単位 mm
図5−ナロービーム条件における乳房用散乱線除去グリッドの測定配置(一次放射線透過率の決定)
2
Z
4
9
1
0
:
2
0
1
5
(I
E
C
6
0
6
2
7
:
2
0
1
3
)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き、本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
17
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単位 mm
図6−ブロードビーム条件における乳房用散乱線除去グリッドの測定配置(散乱放射線透過率の決定)
2
Z
4
9
1
0
:
2
0
1
5
(I
E
C
6
0
6
2
7
:
2
0
1
3
)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き、本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
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附属書A
(規定)
使用距離限界の計算
A.1 集束グリッドの集束ずれ及び中心ずれ
集束グリッドは,集束距離に対して一つの仮想直線に集束する,複数の吸収はく(箔)から構成される。
この直線上にX線管の焦点がある場合,受像面上での吸収はく(箔)の投影が最小となるため,一次放射
線透過率は,最大となる。
集束距離に対して焦点がこの仮想直線からずれている場合,受像面上の吸収はく(箔)の投影が大きく
なることによって,一次放射線透過率が減少する。このずれは,散乱線除去グリッドの面に垂直な場合及
び平行な場合がある。
垂直方向のずれは,焦点からグリッドまでの距離と集束グリッドの集束距離との間の差となる。この差
は集束ずれと呼ばれ,一次放射線透過率の不均一な減少をもたらす。一次放射線透過率は,実中心線から
グリッドの縁部へ向かって減少する。
散乱線除去グリッドの面に対して,平行方向のずれ[吸収はく(箔)に対して垂直方向のずれ]は,グ
リッド表面上への焦点からの垂直投影と集束グリッドの実中心線との間の差となる。この差は中心ずれと
呼ばれ,中心ずれによって一次放射線透過率は,グリッドの全領域にわたって均一な減少をもたらす。
運動グリッドがX線パターン中の吸収はく(箔)の影像を回避するために動作するとき,運動による中
心ずれが見られる。この中心ずれの最大値は,グリッド表面上への焦点からの垂直投影と,運動グリッド
の実中心線の位置との間の最大距離によって与えられ,使用距離限界の計算に使用する。動作が対称の場
合,この距離は運動グリッドの中心位置からの最大移動量と一致する。
集束グリッドの集束ずれ及び/又は中心ずれが原因となる一次放射線透過率の減少量は,6.2に規定さ
れた許容水準に制限される。
A.2 使用距離限界f1及びf2の計算
使用距離限界f1及びf2の決定方法を示す。散乱線除去グリッドは,正確な幾何学的形態であると仮定す
る。[2]及び[3]も参照する。次に示す式において,製造業者は,次のいずれかを選択できる。
− 吸収はく(箔)が一次放射線を全て吸収すると仮定した場合のグリッド比rを使用する,又は
− 吸収はく(箔)が一次放射線の一部分を吸収することを考慮した適応グリッド比r*を,上記グリッド
比の代わりに使用する。
適応グリッド比r*は,式(A.1)に従って決定しなければならない。
−
=
h
r
r
μ
2
1
*
········································································ (A.1)
ここに,
h: 吸収はく(箔)の高さ
μ: 放射線条件RQN 6における,はく(箔)の高吸収物質の平均
線減弱係数
注記1 この適応は,60 kVを超える管電圧条件に適用される,汎用散乱線除去グリッドだけにあて
はまる。
注記2 適応グリッド比r*を使用すると,使用距離限界は,より広く現実的な範囲となる。
注記3 放射線条件RQN 6での鉛の平均線減弱係数は,約μ=8 mm−1となる。この値を計算のために
19
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使用できる。
集束グリッドの中心ずれがない場合の使用距離限界は,次の式(A.2)で決定しなければならない。
rc
V
f
f
f
rc
V
f
f
f
2
0
0
2
1
0
0
1
1
1
−
=
+
=
···················································· (A.2)
集束グリッドの中心ずれがある場合の使用距離限界及び運動グリッドの使用距離限界は,次の式(A.3)で
決定しなければならない。
r
V
f
c
z
c
f
r
V
f
c
z
c
f
2
0
2
1
0
1
−
−
=
+
+
=
···················································· (A.3)
平行グリッドの使用距離限界の決定は,次の式(A.4)で決定しなければならない。
∞
=
=
2
1
1
f
V
rc
f
··································································· (A.4)
式(A.2)〜式(A.4)で,ここに,
c: 実中心線から有効面積の境界までの距離
f0: 集束距離
f1: 使用距離限界の下限
f2: 使用距離限界の上限
r: グリッド比又は式(A.1)による適応グリッド比r*
V1: 使用距離限界の下限での一次放射線透過率の損失
V2: 使用距離限界の上限での一次放射線透過率の損失
z: 集束グリッド又は運動グリッドの中心ずれの値
注記4 汎用散乱線除去グリッドに関して,6.2 a)の規定によってV1及びV2は,0.4とする。
注記5 乳房用散乱線除去グリッドに関して,6.2 b)の規定によってV1及びV2は,0.2とする。
注記6 中心ずれがない(z=0)場合,式(A.3)は,式(A.2)となる。
A.3 使用距離限界の表示
使用距離限界は,cmで表示しなければならない。
f1の小数点以下の値は,切上げなければならない。
f2の小数点以下の値は,切捨てなければならない。
式(A.2)又は式(A.3)によってf2の計算値が負の値となる場合,f2の値は,無限大としなければならない。
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附属書B
(参考)
散乱フラクション(散乱線含有率)が物理的特性に及ぼす影響
汎用散乱線除去グリッドの物理的特性を決定するのに必要な測定は,厚さ20 cmのファントムを使用す
る。5.1.3 a)を参照する。得られた物理的特性は,中間的又は平均的なサイズの患者を想定している。過去
数十年以上にわたって患者厚が増加している点を考慮し,散乱線含有率の増加に伴い,物理的特性がどの
ように変化するかといった,見通しを得ることが望ましい[4] [5]。
この見通しは,追加の測定又は計算によって得ることができる。
追加の測定を行う場合は,5.1と同じ方法及び配置で行うとともに,次の適応が推奨される。
− ファントムは,5.1.3 a)に従うが,高さは,300 mm±1 mmとすることが望ましい。
− ナロービーム条件(図3参照)での測定では,ファントム底面及び中部絞りが焦点から更に100 mm
離れるように,ファントム上面が上部絞りと接するように配置することが望ましい。
− ブロードビーム条件(図4参照)での測定では,ファントム底面からグリッドの支持面までの距離が
20 mmとなるように,ファントム上面及び下部絞りを焦点側へ100 mm近づけるように配置すること
が望ましい。
物理的特性は,5.2と同じ方法及び式よって決定する。
計算を用いる場合には,次の手法が推奨される。ある与えられた散乱線除去グリッドに関して,特別な
グリッド設計によって,一次放射線透過率(Tp)及び散乱放射線透過率(Ts)は,異なる値をもつ。結果
として,全放射線透過率(Tt)は,(グリッド入射面への)入射放射線の散乱線含有率に依存する。次の表
現は,ある放射線条件(例えば,RQR6)で,かつ,TpとTsとが散乱線含有率及び放射線ビームの線質と
は無関係だという仮説の下で導かれる。[4]及び[5]を参照する。
(グリッド入射面への)入射放射線中の散乱放射線の割合(散乱線含有率)をSFとすると,一次放射
線の割合は,1−SFで与えられ,全放射線透過率は,次の式(B.1)で計算できる。
Tt=Tp(1−SF)+Ts SF································································ (B.1)
(グリッド入射面への)入射放射線中の散乱線の総量は,(scatter-to-primary ratio)一次放射線と散乱線
との割合として,SPR=SF/(1−SF) で表すことがある。
散乱線含有率を関数とする散乱線除去グリッドの物理的特性は,5.2.4〜5.2.7で規定されている式に,式
(B.1)を代入することで導かれる。
結果は,次の式(B.2)〜式(B.5)で表す。
− 選択度
s
p
T
T
Σ=
················································································· (B.2)
− コントラスト改善比
SF
)
SF
1(
s
p
p
t
p
T
T
T
T
T
K
+
−
=
=
························································· (B.3)
− 露出係数
SF
)
SF
1(
1
1
s
p
t
T
T
T
B
+
−
=
=
·························································· (B.4)
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− イメージ改善係数
SF
)
SF
1(
s
p
2
p
t
2
p
T
T
T
T
T
Q
+
−
=
=
························································ (B.5)
一次放射線透過率Tp=0.65,及び散乱放射線透過率Ts=0.15で与えられる,汎用散乱線除去グリッドの
散乱線含有率を関数とするグリッドの物理的特性を,図B.1に示す。
代表的な散乱線含有率は,厚さ20 cmの密封水ファントムの場合は,約0.85となり,厚さ30 cmの密封
水ファントムの場合は,約0.92となる[4] [5]。
0
0.10
0.20
0.30
0.40
0.50
0.60
0.70
0.80
0.90
1.00
散乱線含有率SF
選択度 Σ
コントラスト改善比K
露出係数B
イメージ改善係数 Q
図B.1−散乱線含有率を関数とする物理的特性
B
K
Q
Σ
0
1.0
2.0
3.0
4.0
5.0
6.0
7.0
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参考文献
[1] IEC 60417,Graphical symbols for use on equipment. <http://www.graphical-symbols.info/equipment>
[2] HONDIUS BOLDINGH, W. Quality and choice of Potter-Bucky grids. Part IV, Focusgrid distance limits. Acta
Radiologica 55, 1961, pp 225-235
[3] International Commission on Radiation Units and Measurements, Methods of Evaluating Radiological
Equipment and Materials. ICRU Report 10F, 1963, Chapter III.C (National Bureau of Standards, handbook 89)
[4] FETTERLY, K.A., and SCHUELER, B.A., Experimental evaluation of fiber-interspaced antiscatter grids for
large patient imaging with digital x-ray systems. Physics in Medicine and Biology 52, 2007, pp 4863-4880
[5] KOK, C., Improving digital image quality for larger patient sizes without compromises.White paper, Smit
Röntgen, Best, The Netherlands, 2008 [cited 2013-03-13]. Available from:
http://www.dunlee.com/resources/content/1/0/8/0/documents/WhitePaper%20Hi-5%20Grid.pdf
23
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この個別規格で用いられている定義した用語の索引
定義した用語(日本語)
定義した用語(英語)
定義した箇所
一次放射線
PRIMARY RADIATION
JIS Z 4005:2012 10836
一次放射線透過率
TRANSMISSION OF PRIMARY RADIATION
3.3.1
イメージ改善係数
IMAGE IMPROVEMENT FACTOR
3.3.7
受入試験
ACCEPTANCE TEST
JIS Z 4005:2012 10008
運動グリッド
MOVING GRID
3.1.10
X線管
X-RAY TUBE
JIS T 0601-1-3:2015 3.83
[X線]管電圧
X-RAY TUBE VOLTAGE
JIS T 0601-1-3:2015 3.88
[X線]管電流
X-RAY TUBE CURRENT
JIS T 0601-1-3:2015 3.85
X線[管負荷]条件
LOADING FACTOR
JIS T 0601-1-3:2015 3.35
X線パターン
X-RAY PATTERN
JIS T 0601-1-3:2015 3.82
患者
PATIENT
JIS T 0601-1:2014 3.76
規定の,規定した
SPECIFIC
JIS Z 4005:2012 11094
クロスグリッド
CROSS-GRID
3.1.6
グリッド比
GRID RATIO
3.2.2
グリッド密度
STRIP FREQUENCY
3.2.1
グリッド露出係数
GRID EXPOSURE FACTOR
3.3.6
蛍光板
FLUORESCENT SCREEN
JIS Z 4005:2012 10409
減弱
ATTENUATION
JIS T 0601-1-3:2015 3.7
コントラスト改善比
CONTRAST IMPROVEMENT RATIO
3.3.5
散乱[放射]線
SCATTERED RADIATION
JIS T 0601-1-3:2015 3.73
散乱線除去グリッド
ANTI-SCATTER GRID
3.1.1
散乱放射線透過率
TRANSMISSION OF SCATTERED RADIATION
3.3.2
指定の,指定した
SPECIFIED
JIS Z 4005:2012 11096
絞り
DIAPHRAGM
JIS T 0601-1-3:2015 3.17
斜交クロスグリッド
OBLIQUE CROSS-GRID
3.1.8
集束距離
FOCUSING DISTANCE
3.2.3
集束グリッド
FOCUSED GRID
3.1.4
集束ずれ
DEFOCUSING
3.4.2
使用距離限界
APPLICATION LIMITS
3.2.4
焦点
FOCAL SPOT
JIS Z 4005:2012 10411
焦点外X線
EXTRA-FOCAL RADIATION
JIS T 0601-1-3:2015 3.22
照射
IRRADIATION
JIS T 0601-1-3:2015 3.30
実中心線
TRUE CENTRAL LINE
3.2.5
受像面
IMAGE RECEPTION AREA
JIS T 0601-1-3:2015 3.28
静止グリッド
STATIONARY GRID
3.1.9
製造業者
MANUFACTURER
JIS T 0601-1:2014 3.55
製造番号
SERIAL NUMBER
3.4.3
責任部門
RESPONSIBLE ORGANIZATION
JIS T 0601-1:2014 3.101
選択度
GRID SELECTIVITY
3.3.4
全放射線透過率
TRANSMISSION OF TOTAL RADIATION
3.3.3
測定値
MEASURED VALUE
JIS T 0601-1-3:2015 3.38
中心ずれ
DECENTRING
3.4.1
中心線表示
CENTRAL-LINE INDICATION
3.2.6
直交クロスグリッド
ORTHOGONAL CROSS-GRID
3.1.7
直線グリッド
LINER GRID
3.1.2
24
Z 4910:2015 (IEC 60627:2013)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
定義した用語(日本語)
定義した用語(英語)
定義した箇所
手順
PROCEDURE
JIS T 0601-1:2014 3.88
テーパグリッド
TAPERED GRID
3.1.5
投影
PROJECTION
JIS Z 4005:2012 10847
ナロービーム条件
NARROWBEAM CONDITION
JIS Z 4005:2012 10694
乳房用散乱線除去グリッド
MAMMOGRAPHIC ANTI-SCATTER GRID
3.1.11
ファントム
PHANTOM
JIS T 0601-1-3:2015 3.46
付加ろ過
ADDITIONAL FILTRATION
JIS T 0601-1-3:2015 3.3
附属品
ACCESSORY
JIS T 0601-1:2014 3.3
附属文書
ACCOMPANYING DOCUMENT
JIS T 0601-1:2014 3.4
ブロードビーム条件
BROAD BEAM CONDITION
JIS Z 4005:2012 10136
平行グリッド
PARALLEL GRID
3.1.3
放射線
RADIATION
JIS T 0601-1-3:2015 3.53
放射線検出器
RADIATION DETECTOR
JIS T 0601-1-3:2015 3.57
放射線条件
RADIATION CONDITION
JIS T 0601-1-3:2015 3.56
放射線ビーム
RADIATION BEAM
JIS T 0601-1-3:2015 3.55
25
Z 4910:2015 (IEC 60627:2013)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書JA
(参考)
旧JISにおける散乱線除去グリッドの要求事項
JA.1 幾何学的特性
散乱線除去グリッドは,次の幾何学的特性をもつ。
a) 平面度 グリッド透過面の平面精度。
b) 平行度 グリッドの外形上の厚さの精度。
c) 直角度 グリッドの外形上の直角精度。
d) 均一性 グリッドに添付されるX線撮影フィルムにおける,はく(箔)材料の厚さ精度,はく(箔)
の平行及び集束の配列精度。
JA.2 幾何学的特性の試験方法
JA.2.1 平面度
JIS B 7513に規定する精密定盤上にグリッドを置き,定盤面を基準面にしてJIS B 7503に規定するダイ
ヤルゲージで測定し,JA.3.1 a)の規定を満足するか調べる。
JA.2.2 平行度
測定方法は,JA.2.1に従って測定し,JA.3.1 b)の規定を満足するか調べる。
JA.2.3 直角度
JIS B 7516に規定する金属製直尺で対角線を測定し,その値を計算して求めたJA.3.1 c)のa及びbの値
と比較し,JA.3.1 c)の規定を満足するかどうかを調べる。
JA.2.4 均一性
グリッドの有効面積以上の有効面積をもつ,JIS Z 4905に規定するカセッテに,増感紙を除いた状態で
フィルムを装備し,カセッテ上面にグリッドを密着させておく。焦点は,集束グリッドの場合は規定の距
離に,平行グリッドの場合は,グリッドの入射面から200 cmの距離に置き,X線を照射する。照射するX
線の線質は,5.1.5の規定によるものとし,線量は,現像したフィルム全面の平均濃度が1.0±0.2になるよ
うに設定する。また,現像は,使用したフィルムの指定現像方法に従う。
JA.3 散乱線除去グリッドに関する要求事項
JA.3.1 製造許容差
製造許容差は,次のとおりとする。
a) 平面度 グリッドの透過面には,長さ100 mmの範囲内に0.2 mmを超える曲がり及び凹凸がない。
b) 平行度 グリッドの厚さには,長さ100 mmの範囲内に0.3 mmを超える変化がない。
c) 直角度 グリッドの対角線の長さdは,次の範囲内とする。
a≦d≦b
ここに,
a: 各辺とも規定の寸法より1 mm短い長方形の対角線の長さ
b: 各辺とも規定の寸法に等しい長方形の対角線の長さ
d) 均一性 グリッドの試験フィルムには,JA.2.4の規定によって撮影したフィルムに,濃度のむら及び
はく(箔)によるしま(縞)目のむらがない。
26
Z 4910:2015 (IEC 60627:2013)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
JA.4 添付写真
グリッドには,JA.2.4の測定に使用したフィルムを添付する。
参考文献 JIS B 7503 ダイヤルゲージ
JIS B 7513 精密定盤
JIS B 7516 金属製直尺
JIS Z 4905 写真−医用撮影用カセッテ・増感紙・フィルム−寸法及び仕様