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Z 4831 : 2000

(1) 

まえがき

この規格は,工業標準化法第 12 条第 1 項の規定に基づき,社団法人日本放射線技術学会 (JSRT) /財団

法人日本規格協会 (JSA) から工業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があり,日本工業

標準調査会の審議を経て,通商産業大臣,労働大臣及び厚生大臣が制定した日本工業規格である。

これによって,JIS Z 4802 : 1991,JIS Z 4803 : 1991 及び JIS Z 4830 : 1992 は廃止統合され,この規格に

置き換えられる。


日本工業規格

JIS

 Z

4831

 : 2000

診断用 X 線防護用具

Protective devices against diagnostic medical X-radiation

序文  この規格は,1998 年に発行された IEC 61331-3, Protective devices against diagnostic medical X-radiation

−Part 3 : Protective clothing and protective devices for gonads を元に作成した日本工業規格であるが,日本人

の体型の差異などのため,一部技術的内容を変更して作成している。

なお,この規格で点線の下線を施してある箇所は,対応国際規格にはない事項である。

1.

適用範囲  この規格は,管電圧 150kV 以下の X 線で診療を行う場合に,個人が体外から受ける迷 X

線の量を低減させるために着用する診断用 X 線防護用具(以下,防護用具という。

)について規定する。

なお,この規格は,あくまでも防護用具を標準化するためだけのものであって,この規格があることが,

X

線診療を行う場合に防護用具を着用することが必要であることを意味するものではない。

備考  この規格の対応国際規格を,次に示す。

IEC 61331-3 : 1998

  Protective devices against diagnostic medical X-radiation−Part 3 : Protective

clothing and protective devices for gonads

2.

引用規格  次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す

る。これらの引用規格は,その最新版を適用する。

JIS B 7514

  直定規

JIS Z 4005

  医用放射線用語

JIS Z 4501

  X 線防護用品類の鉛当量試験方法

3.

定義  この規格で用いる主な用語の定義は,JIS Z 4005 によるほか,次による。

a)

防護エプロン (Protective Aprons)   身体の前面からの迷 X 線を防護できる形をした防護衣。

b)

防護コート  (Protective Coats)    身体の全方位からの迷 X 線を防護できる形をした防護衣。

c)

甲状せん(腺)防護具 (Thyroid Protective Collars)   迷 X 線から甲状せんを防護できる形をした防護

具。

d)

防護手袋 (Protective Gloves)   全方位からの迷 X 線から手を防護できる形をした防護具。

e)

生殖せん(腺)防護スカート  (Protective Gonad Skirts)    下腹部以外の X 線検査時に,患者の生殖せん

を防護するために,骨盤部を完全に覆うスカート形をした防護衣。

f)

生殖せん防護エプロン (Protective Gonad Aprons) 下腹部以外の X 線検査時に,患者の生殖せんを防護

するために,骨盤部の前又は後ろを覆う前掛け形をした防護衣。

4.

種類


2

Z 4831 : 2000

4.1

防護衣

a)

防護エプロン

b)

防護コート

4.2

甲状せん防護具

4.3

防護手袋

4.4

生殖せん防護衣

a)

生殖せん防護スカート

b)

生殖せん防護エプロン

5.

性能  性能は,10.によって試験したとき,鉛当量が表 の値以上でなければならない。

表 1  鉛当量

単位 mmPb

種類

鉛当量

防護エプロン 0.25

0.35

0.50

防護コート 0.25

0.35

0.50

甲状せん防護具 0.25

0.35

防護手袋 0.25

0.35 0.50

生殖せん防護スカート

− 0.35

0.50

生殖せん防護エプロン

− 0.35 0.50

備考  防護エプロン,防護コート後面の鉛当量は,0.25mmPb 以上と

する。

6.

構造

6.1

防護衣

a)

8.a)

及び 8.b)に規定する材料を一層又は二層以上に重ね合わせたもので,均一な鉛当量をもたなければ

ならない。

b)

表面は,薄い布,ゴム又は合成樹脂のシートで覆い,防水性をもち,かつ,容易に破れたり,引裂き

が生じてはならない。

c)

縁は,丈夫な縁取り材で覆い,柔軟でなければならない。

d)

着脱のための重ね合せ部分の鉛当量は,

表 の防護エプロン及び防護コートの値を満足する。

e)

ベルトなどの装着具は,丈夫なものを使用し,一人で容易に着脱できる。

6.2

甲状せん防護具

a)

8.a)

及び 8.b)に規定する材料を一層又は二層以上に重ね合わせたもので,均一な鉛当量をもたなければ

ならない。

b)

表面は,薄い布,ゴム又は合成樹脂のシートで覆い,防水性をもち,かつ,容易に破れたり,引裂き

が生じないような強度をもつものとする。

c)

縁は,丈夫な縁取り材で覆い,柔軟でなければならない。

d)

着脱のための重ね合せ部分の鉛当量は,

表 の甲状せん防護具の値を満足しなければならない。

6.3

防護手袋

a)

8.a)

及び 8.b)に規定する材料を用い,均一な鉛当量をもたなければならない。

b)

丈夫で,ピンホール,異物,皮膚刺激性など,手袋としての機能を損なうような欠点がなく,柔軟性


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Z 4831 : 2000

に優れていなければならない。

c)

外面は,防水性をもち,破れ,ひび割れ,引裂きに強く,また汚れを落としやすいものとする。

d)

洗濯可能な内手袋を備えなければならない。

6.4

生殖せん防護衣

a)

8.a)

及び 8.b)に規定する材料を一層又は二層以上に重ね合わせたもので,均一な鉛当量をもたなければ

ならない。

b)

表面は,薄い布,ゴム又は合成樹脂のシートで覆い,防水性をもち,かつ,容易に破れたり,引裂き

が生じないような強度をもつものとする。

c)

縁は,丈夫な縁取り材で覆い,柔軟でなければならない。

d)

患者の所定の位置に固定するベルト,面ファスナなどを備えていなければならない。

7.

外観  外観は,10.によって試験したとき,使用上有害な,ほつれ,きずなどがあってはならない。

8.

材料  材料は,次の各項に適合しなければならない。

a)

X

線防護材料は,均一に分布されている高原子番号の元素を含有しなければならない。

b)

減弱特性は,通常の使用条件下で変化してはならない。

c)

接触する防護用具の表面と裏面とは,洗浄と消毒とに適していなければならない。

d)

容易に破れたり,引裂きが生じないような強度をもつものとする。

9.

形状及び寸法

9.1

防護衣  形状及び寸法は,次の各項に適合しなければならない。

a)

防護エプロンは,身体の前面については首からひざ(膝)下まで,両肩及び体幹全体を防護できる形

であり,肩幅は 11cm 以上とし,肩から後ろに 15cm 以上で肩関節が防護できる形状でなければならな

い。

b)

防護コートは,身体の前面については首からひざ下まで,身体の後面については肩関節からでん(臀)

部まで,体幹全体を防護できる形状でなければならない。

c)

防護衣の重ね合せ位置及び形状は,任意とする。

d)

防護衣は,十分な重なり合っている部分をもつ,ベスト及びスカートから構成していてもよい。

e)

寸法は,

表 の標準寸法以上とする。


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Z 4831 : 2000

表 2  防護衣

単位 cm

大きさ

A

A

B

C

小 (S)

88

73

53

98

中 (M)

98

83

58

108

大 (L)

108

93

58

118

特大(LL) 113 98 63 118

備考  括弧内の記号は,大きさを表す記号であ

る。

A

:防護エプロン,防護コート前面の肩上端から下端までの着丈寸法である。

A’

:防護コート後面の肩上端から下端までの着丈寸法である。

B

:防護エプロンの着幅寸法である。

C

:防護コートの胴回りの寸法である。

9.2

甲状せん防護具  甲状せん防護具の形状は長方形を基準とし,甲状せん防護具の寸法は長さは 50cm

以上,高さは 4cm 以上とし,つばの形状及び大きさについては,特に規定しない(

図 参照)。

図 1  甲状せん防護具

9.3

防護手袋  防護手袋の形状及び寸法は,表 の標準寸法以上とする。


5

Z 4831 : 2000

表 3  防護手袋

単位 cm

大きさ

A

B

C

D

E

小    (S) 34

10

7

14

11

中    (M) 34

11

8

17

12

備考  括弧内の記号は,大きさを表す記号である。

9.4

生殖せん防護衣  生殖せん防護衣の形状は,長方形を基準とし,生殖せん防護衣の寸法は,生殖せ

ん防護スカートは

表 4,生殖せん防護エプロンは表 の標準寸法以上とする。

表 4  生殖せん防護スカート

単位 cm

大きさ

腰回り

たけ

腰回りの測定位置

(

丈)

(上端から)

小 (S)

85

30

15

中 (M)

100

40

20

大 (L)

110

50

20

特大 (LL)

120

55

20

備考  括弧内の記号は,大きさを表す記号であ

る。

表 5  生殖せん防護エプロン

単位 cm

大きさ

たけ(丈)

特小(SS) 23 18

小 (S)

28

28

中 (M)

38

33

大 (L)

43

38

特大(LL) 48 43

備考  括弧内の記号は,大きさを表す記号で

ある。

10.

試験

10.1

試験項目  試験項目は,次による。

a)

鉛当量試験

b)

外観試験

c)

寸法試験

10.2

試験方法

10.2.1

鉛当量試験  鉛当量試験は,次による。

a)

試験に用いる X 線は,管電圧 100kV,第一半価層が 3.7mmAl,リプル百分率 10%以下の X 線とし,

また JIS Z 4501 の 6.(試験方法)の狭いビームの試験方法による。

b)

周辺の加工部分は,測定しない。

10.2.2

外観試験  目視によって調べる。

10.2.3

寸法試験  JIS B 7514 に規定する直定規などの寸法測定用具を用いて行う。


6

Z 4831 : 2000

11.

検査  検査は,次の項目について 10.によって試験し,5.7.及び 9.の規定に適合したものを合格とす

る。

a)

鉛当量

b)

外観

c)

形状及び寸法

12.

表示

12.1

製品  防護用具には,見やすいところに,容易に消えない方法で次の事項を表示しなければならな

い。

なお,着用時に,確認しやすいところに,鉛当量を表示しなければならない。

a)

鉛当量(防護コートの場合,前面,後面の鉛当量が異なる場合には,後面にも鉛当量を表示する。

b)

防護シートの防護材料名

c)

大きさ又は大きさを表す記号

d)

製造年月又はその略号

e)

製造番号

f)

製造業者名又はその略号及び製造業者の所在地

12.2

包装  包装には,次の事項を表示しなければならない。

a)

名称及び種類

b)

鉛当量(防護コートの場合,前面,後面の鉛当量が異なる場合には,後面の鉛当量も表示する。

c)

防護シートの防護材料名

d)

大きさ又は大きさを表す記号

e)

製造年月又はその略号

f)

製造番号

g)

製造業者名又はその略号及び製造業者の所在地

13.

取扱説明書  防護用具には,少なくとも次の事項を記載した取扱説明書を添付しなければならない。

a)

防護用具の使用上の注意事項

b)

防護用具の清掃,消毒の方法及び注意事項

c)

防護用具の保管上の注意事項

d)

防護用具の性能維持のために使用者が行う定期検査方法及び頻度


7

Z 4831 : 2000

JIS Z 4831

診断用 X 線防護用具  原案作成委員会  構成表

氏名

所属

(委員長)

平  松  慶  博

東邦大学医学部放射線医学第二講座

(主査) 

平  林  久  枝

社団法人日本放射線技術学会(東京女子医科大学病院放射

線部)

宗  近  宏  次

昭和大学医学部放射線医学教室

松  本  満  臣

東京都立保健科学大学放射線学科

川  原      章

厚生省医薬安全局審査管理課

鶴  田  憲  一

労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課

荒  木  由季子

通商産業省機械情報産業局医療・福祉機器産業室

宮  崎  正  浩

通商産業省工業技術院標準部消費生活規格課

幾  瀬  純  一

東芝メディカル株式会社技術本部

村  上  文  男

株式会社日立メディコ柏事業本部情報センター室

矢  野      太 GE 田中メディカルシステム株式会社品質保証部門

馬  場  功  夫

東芝医用システムエンジニアリング株式会社

椎  名  光  男

社団法人日本画像医療システム工業会

鹿  沼  成  美

社団法人日本放射線技術学会(日本大学医学部付属板橋病

院放射線部)

山  田  和  美

社団法人日本放射線技術学会(東京日立病院放射線科)

◎○

橋  本      進

財団法人日本規格協会技術部規格開発課

◎○

前  田  幸  一

株式会社マエダ

◎○

伊  藤  敏  夫

社団法人日本放射線技術学会(駿河台日本大学病院放射線

部)

  ○

宗  像  保  男

通商産業省工業技術院標準部消費生活規格課

  ○

青  木  雄  二

化成オプトニクス株式会社メディカルサプライ部

  ○

岩  泉  公  平

西本産業株式会社イメージングシステム事業本部製品開発

  ○

菅  原      隆

ユフ精器株式会社

  ○

保  科  浩  明

株式会社保科製作所製造部

  ○

粟  井  一  夫

社団法人日本放射線技術学会(国立循環器病センター放射

線診断部)

  ○

加  藤      洋

社団法人日本放射線技術学会(東京都立保健科学大学放射

線学科)

  ○

丸  橋  一  夫

社団法人日本放射線技術学会(日本大学歯科病院放射線科)

(事務局)

◎○

北  村  善  明

社団法人日本放射線技術学会(厚生中央病院放射線科)

備考  ◎印は本委員会委員,○印は,分科会委員を示す。