2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
Z 4812-1995
放射性エアロゾル用高性能エアフィルタ
HEPA Filters for radioactive aerosols
1. 適用範囲 この規格は,放射性エアロゾルを除去する目的で,原子力施設などの排気系,換気空調系
統などで使用する高性能エアフィルタ(以下,高性能エアフィルタという。)のうち,火災防護上難燃性を
要求されるものについて規定する。
備考1. 放射性エアロゾル用高性能エアフィルタ現場試験方法は,附属書に規定する。
2. この規格の引用規格を次に示す。
JIS B 7512 鋼製巻尺
JIS B 7516 金属製直尺
JIS B 8330 送風機の試験及び検査方法
JIS B 9921 光散乱式自動粒子計数器
JIS Z 4001 原子力用語
JIS Z 8122 コンタミネーションコントロール用語
2. 用語の定義 この規格で用いる主な用語の定義は,JIS Z 8122及びJIS Z 4001によるほか,次による。
(1) 高性能エアフィルタ ろ材を深いひだ状に折りたたみ,その中間にセパレータなどを組み込み,外枠
又は外箱に収納したエアフィルタであって,放射性エアロゾルを除去する目的で使用するエアフィル
タ。ろ材とセパレータの収納形状とによって,図1のように,枠形,箱形などがある。
図1 高性能エアフィルタ
(2) 放射性エアロゾル 空気中に浮遊する固体又は液体の微粒子で放射性核種を含むもの。
(3) 粒子捕集率 高性能エアフィルタのろ材を通過する気体中の粒子を捕集する効率。
2
Z 4812-1995
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
(4) 定格流量 一定の条件下でろ過できる処理流量。
(5) 難燃性 火災によって著しい燃焼をせず,また,加熱源を除去した場合はその燃焼部が広がらない性
質。
(6) 多段エアフィルタ装置 高性能エアフィルタを1系列に直列に2段以上設置してある装置。
(7) 密封交換形エアフィルタ装置 エアフィルタケーシングが全溶接構造で気密性が保持され,高性能エ
アフィルタの交換も気密状態で行うことができ,必要な排気量に見合う数の高性能エアフィルタが並
列に接続される形式。
(8) 箱形エアフィルタ装置 箱形高性能エアフィルタを排気ダクトに直結する構造で,高性能エアフィル
タ交換時に上下流が完全に分離される形式。
(9) バンク形エアフィルタ装置 エアフィルタケーシング内に数枚から数十枚の高性能エアフィルタを設
置し,エアフィルタケーシング内で高性能エアフィルタを交換する形式。
(10)光散乱形測定装置 試料に光を照射し微粒子によって散乱された光の強度などから濃度を求める装置。
光散乱式粒子計数器と光散乱式濃度計がある。
(11) 加圧噴霧法 試験用粒子の発生方法で,試験用粒子の原液を加圧空気によって噴霧する方法。ラスキ
ン (Laskin) ノズルが一般的に使用される。
(12) 加熱凝縮法 試験用粒子の発生方法で,試験用粒子の原液を加熱して蒸発した蒸気を冷却し,凝縮す
る方法。
(13) 同時計数損失 光散乱式粒子計数器の光の照射領域を複数の微粒子が同時に通過することによって生
じる微粒子の数え落とし。
(14) 単孔ノズル 試料採取ノズルで,試料を吸引する穴が1個のノズル。
(15) 多孔ノズル 試料採取ノズルで,試料を吸引する穴が3個以上あるノズル。
(16) 多点採取法 試料採取点のダクトの断面で,単孔ノズルを移動して複数の点から試料を採取し,平均
値を試料濃度とする方法。
(17) バイパスリーク 高性能エアフィルタのガスケット,その他の取付部を通過してエアロゾルが漏れる
こと。
(18) 総合捕集率 フィルタの現場試験によって得られた捕集率で,バイパスリークを含めた装置としての
捕集率。
3. 種類,寸法及び定格流量 高性能エアフィルタの種類,寸法及び定格流量は,表1のとおりとする。
表1 種類,寸法及び定格流量
種類
形式
寸法(1)
mm
定格流量
m3/min
高さ
幅
深さ
枠形
標準風量
W-101-1
101
101
150
0.4
W-203-1
203
203
80
0.8
W-203-2
203
203
150
1.5
W-305-1
305
305
150
3.9
W-305-2
305
305
292
6.4
W-610-1
610
610
150
18.0
W-610-2
610
610
292
32.0
枠形
多風量
WG-610-1
610
610
150
28.0
WG-610-2-1
610
610
292
42.5
3
Z 4812-1995
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
種類
形式
寸法(1)
mm
定格流量
m3/min
高さ
幅
深さ
WG-610-2-2
610
610
292
50.0
WG-610-2-3
610
610
292
56.6
箱形
標準風量
H-203-1
203
203
228
0.8
H-203-2
203
203
254
1.5
H-305-1
203
203
305
3.9
H-610-1
610
610
356
18.0
H-610-2
610
610
508
32.0
箱形
多風量
HG-610-1
610
610
508
28.0
HG-610-2-1
610
610
508
42.5
HG-610-2-2
610
610
508
50.0
HG-610-2-3
610
610
508
56.6
注(1) 枠形の寸法許容差は,高さ及び幅03
−mm,深さ±1mmとする。
深さは,ガスケットの厚さを除いた寸法とする。
箱形の寸法許容差は,高さ及び幅03
−mm,深さ±3mmとす
る。
4. 性能
4.1 粒子捕集率 7.3によって試験したとき,試験に供したすべての高性能エアフィルタの粒子捕集率は,
表2のとおりでなければならない。
4.2
圧力損失 7.4によって試験したとき,定格流量での圧力損失は,表2のとおりでなければならない。
4.3
圧力変形抵抗 7.5によって試験したとき,破損及び(又は)変形せず,かつ,4.1を満足しなけれ
ばならない。
4.4
箱形高性能エアフィルタの気密性 7.6によって試験したとき,圧力の戻りは,毎分試験圧の5%以
下でなければならない。
表2 性能
圧力損失
粒子捕集率
圧力損失(2)
Pa
流量
m3/min
粒子捕集率
%
基準粒子径
μm
250以下
(標準風量)
定格
99.97以上
0.15
300以下
(多風量)
注(2) 箱形の圧力損失は,両面開放時とする。
5. 部品及び材料
5.1
ろ材 ろ材は空気中に浮遊するエアロゾルを除去するものであって,空気を通しやすく,通常の空
気条件において,容易に変質及び(又は)腐食しないもので,かつ,難燃性のものとする。
5.2
外枠 枠には,合板,金属などを用いる。合板製の外枠の厚さは15
0.15.1
+−mm,18
0.15.1
+−mm又は19 0.15.1
+−mm
とする。合板は難燃合板を用いる。金属製の外枠の厚さは,1.2〜2.3mmとする。
4
Z 4812-1995
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
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5.3
ガスケット ガスケットの幅は15±1.0mm,18±1.0mm又は19±1mm,厚さ6±1mmとする。ガス
ケットは難燃性のものを用いる。
5.4
セパレータ セパレータは難燃加工した紙,プラスチックなどを用いるほか,金属なども用いる。
5.5
密封材 密封材は,接着材のほか,ガラスマットなども用いる。
6. 構造 高性能エアフィルタの構造は,次の条件に適合しなければならない。
(1) 堅固に仕上げてあること。
(2) 輸送,取付けなどの取扱い中に,損傷しない程度の強度をもつこと。
(3) 外枠(又は箱)の継ぎ目,及び外枠(又は箱)とろ材との接合部は,空気の漏れがないように緊密に
仕上げること。
7. 試験
7.1
寸法試験 試験品の寸法が,表1の許容差以内であることを,JIS B 7512に規定する1級巻尺又は
JIS B 7516に規定する1級直尺を用いて調べる。
7.2
構造試験 試験品の構造が,6.に示す規定のとおりであるかどうかを調べる。
7.3
粒子捕集率試験
7.3.1
試験装置 試験装置は,次による。
(1) 試験用粒子 試験用粒子はDOP(フタル酸ジオクチル)又はこれと同等のものとし,0.15μm付近の
粒子を多く含むものを使用する。
(2) 試験に用いる装置及び機器
(2.1) 粒子捕集率試験用装置 粒子捕集率試験用装置は,図2に例示するような構造で,各部の条件は次
による。
(2.1.1) ダクト部 ダクト部は,正圧であること。
(2.1.2) 清浄用フィルタ 清浄用フィルタは,0.15μmの粒子に対して99.97%以上の捕集率をもつものを使
用すること。
(2.1.3) ベルマウス,漸拡大管及び高性能エアフィルタ整流格子 ベルマウス,漸拡大管及び整流格子は,
いずれも空気の流れを円滑にし,試験用粒子を均一に混合・拡散する目的で使用するので,(2.1.5)
の規定を満足していれば一部又は全部を必要としない。
(2.1.4) 上流側試験用粒子採取管 上流側試験用粒子採取管は,採取管取付位置のダクト中央の1点から採
取する単孔採取管,又は3点以上から採取する多孔採取管を使用する。
(2.1.5) 上流側試験用粒子採取管取付位置 上流側試験用粒子採取管は,試験用粒子が均一に混合されてい
る位置に取り付けること。試験用粒子の混合状態は,試験装置の流量範囲の上限と下限で,次の手
順によって測定すること。
(a) 上流側試験用粒子採取管の取付位置のダクト断面を,9分割以上のほぼ同面積に分割する。
(b) 各分割部分の中心で試験用粒子濃度を測定する。
(c) 濃度の相加平均を算出する。
(d) 全測定点の試験用粒子濃度が,平均値の±10%であること。
(2.1.6) 下流側試験用粒子採取管 下流側試験用粒子採取管は,採取管取付位置のダクト中央の1点から採
取する単孔採取管,又は3点以上から採取する多孔採取管を使用する。
(2.1.7) 下流側試験用粒子採取管取付位置 下流側試験用粒子採取管は,試験用粒子が均一に混合されてい
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Z 4812-1995
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
る位置に取り付けること。試験用粒子の混合状態は,高性能エアフィルタの中央付近に模擬的な漏
れ状態をつくって,試験装置の流量範囲の上限と下限で試験用粒子の混合状態を(2.1.5)と同様な操
作を行うこと。さらに,ダクト壁近くに模擬的な漏れ状態をつくって同様な測定を行うこと。
(2.1.8) 高性能エアフィルタ固定部 高性能エアフィルタ固定部の流路寸法 (B) は,高性能エアフィルタの
通風部分の寸法(枠の厚さを引いた寸法)と等しいことが理想であるが,次の条件が満たされると
きはこれと異なっていてもよい。
(a) 高性能エアフィルタ前面で試験用粒子濃度が均一であることが確認されている場合。
(b) 高性能エアフィルタを取り付けていないときの圧力損失(装置圧損)を測定し,高性能エアフィル
タを取り付けたときの圧力損失から装置圧損を差し引いて正しい圧力損失が求められる場合。
(2.1.9) 流量測定部 流量の測定は,JIS B 8330の規定による。
(2.1.10) 試験用粒子サンプリング配管 上流側,下流側の採取位置から測定装置までのサンプリング配管
は,同一材質,同一内径,同一長とし,かつ,できるだけ短くすること。
また,曲管部を少なくし,配管の幾何学的形状もできるだけ等しくすること。
図2 高性能エアフィルタ試験装置の一例
(2.2) 試験用粒子発生器 試験用粒子発生器は,使用条件を適切な条件に調節し,試験条件に適合する粒
径分布と発生量を確保できること。
また,試験用粒子濃度は(2.1.5)が達成できる安定性をもつこと。
(2.3) 光散乱式粒子計数器 JIS B 9921の0.15μmを含む粒径区分をもつもので,基準粒子径±0.05μmの
粒径区分をもつものを用いる。
(2.4) 希釈装置 希釈装置を用いる場合は,希釈損失の少ない装置を用いること。
7.3.2
試験方法 試験は,次によって行う。
(1) 高性能エアフィルタを,試験装置の高性能エアフィルタ固定部に漏れがないように装着する。
(2) 送風機を作動させ,定格流量になるように調整する。
(3) 下流側の粒子数が,規定された捕集率を有効に測定するのに必要な十分低いバックグラウンド値を示
すこと。
(4) 上流側の試験用粒子濃度測定は,光散乱式粒子計数器の同時計数誤差が5%を超えることなく,かつ,
下流側の計数値がバックグラウンドに比べ十分に大きくなるような範囲で行い,上流側の試験用粒子
濃度が安定したのを確認した後,上流側及び下流側の試験用粒子濃度を交互又は同時に測定する。交
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Z 4812-1995
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
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互に測定する場合は,上流側濃度の変動に留意し,同時に測定する場合は各々の光散乱式粒子計数器
の各粒径区分ごとに相関計数を求め,差がある場合は補正すること。
高性能エアフィルタの捕集率は,0.15μmで評価し,次の式によって算出する。
100
1
1
2×
C
C
−
=
η
ここに,
η: 粒子捕集率 (%)
C1: 0.15μmが粒径区分の中央に位置するチャネルにおける高性
能エアフィルタ上流側の計数値(個/l)
C2: 0.15μmが粒径区分の中央に位置するチャネルにおける高性
能エアフィルタ下流側の計数値(個/l)
(5) 上流側濃度が光散乱式粒子計数器がもつ最大濃度範囲を超える場合は,希釈装置を用いてもよい。そ
の場合希釈率は,次による。
一定濃度の試験用粒子を含む試験空気を通じ,希釈前,希釈後の試験用粒子濃度を光散乱式粒子計
数器で測定し,その希釈率を求め,設定希釈率の±20%であること。(4)のC1算出に使用する希釈率は,
測定によって求めた値を使用する。
7.4
圧力損失試験
7.4.1
試験装置 試験装置は,図2に例示するような構成とし,各部の条件は次による。
(1) 静圧測定部 高性能エアフィルタを,挟んだ直管部の高性能エアフィルタ固定点から2Bだけ離れた上
流側及び下流側の管壁に,垂直に左右2か所静圧孔を設置する。左右2か所の静圧孔で各々別々に測
り,これの平均値をとる。左右の差が甚だしく相違する場合は,原因を確かめ修正すること。
また,静圧孔の詳細については,JIS B 8330の規定に準じること。
(2) 高性能エアフィルタ固定部 7.3の規定による。
(3) 流量測定部 7.3の規定による。
(4) ダクト部 7.3の規定による。
(5) 送風機 7.3の規定による。
7.4.2 試験方法 試験は,次によって行う。
(1) 圧力損失を測定する高性能エアフィルタを,試験装置の高性能エアフィルタ固定部に保持する。
(2) 送風機を運転し,定格流量になるように調整する。
(3) 静圧孔に接続された傾斜液柱計などで,上流側,下流側の静圧を測定し,各々の平均値から差圧を計
算する。
(4) 箱形高性能エアフィルタは,両端のノズルを取り付ける前に測定する。
7.5
圧力変形抵抗試験 高性能エアフィルタの圧力損失が24.5hPaになるまで流量を上げ,1時間保持し,
高性能エアフィルタに破損及び変形がないかどうかを調べる。この試験に引き続き,粒子捕集率試験を実
施し,所定の性能が維持されているかどうかを調べる。
7.6
気密性試験 箱形高性能エアフィルタのダクト両端を気密に閉じ,内部を−10hPaに減圧し,所定の
時間保持し,圧力の戻りが毎分試験圧力の5%以下であるかどうかを調べる。
8. 検査
8.1
形式検査 形式検査は,次の項目について,7.に従って試験を行い,4.の規定に適合したものを合格
とする。検査結果は,品質保証記録としていつでも提示できるようにする。
また,形式検査後,材料及び製法の一部でも変更した場合には,改めて形式検査を実施する。
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(1) 寸法
(2) 構造
(3) 粒子捕集率
(4) 圧力損失
(5) 圧力変形抵抗
(6) 箱形高性能エアフィルタの気密性
8.2
受渡検査 受渡検査は,次の項目について,7.に従って試験を行い,4.の規定に適合したものを合格
とする。
(1) 寸法
(2) 構造
(3) 粒子捕集率
(4) 圧力損失
(5) 気密性(箱形高性能エアフィルタについてだけ行う。)
9. 製品の呼び方 製品の呼び方は,種類又は形式による。
例 W-610-2
10. 表示
10.1 製品表示 高性能エアフィルタには,次の事項を表示する。
(1) 名称又はその略号
(2) 種類(記号で表す。)
(3) 製造業者名又はその略号
(4) 製造年月又は製造番号
(5) 気流の方向(矢印)
(6) 定格流量
(7) 粒子捕集率
(8) 圧力損失
10.2 包装表示 包装には,次の事項を表示する。
(1) 名称又はその略号
(2) 種類(記号で表す。)
(3) 製造業者名又はその略号
(4) 輸送上及び開包までの取扱い上の注意事項
11. 取扱説明書 高性能エアフィルタに添付する取扱説明書には,次の事項を記載しなければならない。
(1) 形式検査の成績
(2) 受渡検査の成績
(3) 取扱い上の注意
(4) 設置上の注意
(5) 安全な取扱方法
(6) 保管の方法
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附属書 放射性エアロゾル用高性能エアフィルタの現場試験方法
1. 適用範囲 この附属書は,放射性エアロゾルの捕集率を測定することが必要とされる施設における,
本体に規定された高性能エアフィルタを用いるエアフィルタ装置の捕集率を,設置現場で総合的に評価す
るための現場試験方法について規定する。
なお,試験対象エアフィルタ装置及び試験の時期は,次のとおりとする。
(1) 試験対象エアフィルタ装置 この附属書は,次の形式のエアフィルタ装置及びこれらの多段エアフィ
ルタ装置に適用する。
(a) 密封交換形エアフィルタ装置
(b) 箱形エアフィルタ装置
(c) バンク形エアフィルタ装置
(2) 試験の時期 この附属書は,次の時期に実施する総合捕集率試験について適用する。
(a) 高性能エアフィルタが据え付けられ,関連する作業が完了し,使用を開始する前
(b) 高性能エアフィルタを交換したとき
(c) その他,エアフィルタ装置の総合捕集率を確認する必要が生じたとき
また,施設の実態に則した確認方法や現場試験が既に確立されて実施されている場合には,その適用を
否定するものではない。
2. 測定原理 エアフィルタ装置の上流側に,規定の粒径の試験用粒子を一定濃度で導入し,フィルタ上
流側と下流側の試験用粒子濃度を,光散乱形測定装置で測定することによって,フィルタ装置の総合捕集
率を算出する。
3. 試験用粒子の発生 試験用粒子の発生方法は,次による。
(1) 試験用粒子の種類 試験用粒子の材質は,DOP又はこれと同等のものを用いる。
(2) 試験用粒子の粒径 試験用粒子は,個数で90%以上が1.0μm以下となるようにする。
(3) 試験用粒子発生装置 加圧噴霧法を用いる装置,又は加熱凝縮法を用いる装置を使用する。
(4) 発生条件 加圧噴霧法の場合は噴霧圧,噴霧流量を適切な条件に調整し,加熱凝縮法の場合は供給ガ
ス流量,ヒーター温度などを適切な条件に調整して,粒径,発生量を試験条件に適合させる。
(5) 濃度 要求される総合捕集率を測定可能な適切な濃度とする。
4. 試験用粒子濃度測定装置 試験用粒子濃度測定装置は,原則としてJIS B 9921に規定する光散乱式粒
子計数器若しくは,これと同等の粒子計数器を使用するか,又は光散乱式濃度計を使用する。
99.99%を超えると予測される総合捕集率を測定する場合,及び十分な粒子濃度が上流側で得られない場
合には,光散乱式粒子計数器又はそれと同等以上の性能をもつ測定装置を用いる。
光散乱式粒子計数器の場合は,上流側濃度の計測に当たっては,同時計数損失を5%以内に保つものと
する。必要に応じて希釈装置を用いてもよい。
光散乱式濃度計の場合は,測定可能な相対濃度範囲が1 : 10 000以上あるものを用いる。
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5. 測定準備
5.1
試験用粒子の供給 試験用粒子の採取点で十分な混合が期待できる位置から供給するか,多孔ノズ
ルを使用する。
5.2
試験用粒子の採取 試験用粒子の採取方法は,次による。
(1) 採取位置及び採取口 採取位置は,高性能エアフィルタの上流側及び下流側,それぞれの代表的試料
を採取できる位置とする。
採取位置のダクトには採取口を設ける。
(2) 採取ノズルの形状 試験用粒子が十分混合されている場合は,採取ノズルは単孔ノズルでよいが,混
合が不十分な場合は多孔ノズルを使用する。ただし,多孔ノズルの代わりに単孔ノズルによる多点採
取法を採用してもよい。
(3) 採取流量 測定に必要な適量とする。
5.3
試験用粒子の混合 代表的試料を採取するために,試験用粒子の供給点から採取点まで,及び,高
性能エアフィルタの下流側における試験用粒子採取点まで,距離を十分にとるか,又は混合手段を用いる。
6. 測定 測定は,次による。
(1) 測定装置の配置 試験用粒子濃度測定装置は,試験用粒子採取位置にできるだけ近づけて配置する。
その場合,測定する高性能エアフィルタの上流側及び下流側の採取位置から,試験用粒子濃度測定装
置までのサンプリング配管は,同一材質,同一内径及び同一長さとし,かつ,できるだけ短くする。
さらに,曲管部を少なくし,配管の幾何学的形状もできるだけ等しくする。
(2) エアフィルタ装置の運転 エアフィルタ装置のファンの運転が,定常状態であることを確認する。
(3) バックグラウンドの測定 試験用粒子の供給前に,高性能エアフィルタの上流側及び下流側のバック
グラウンド濃度を測定する。バックグラウンド濃度が測定結果の精度に影響を与えるほど高い場合,
又は変動がある場合は,バックグラウンド濃度を低下させる。
(4) 試験用粒子の発生 試験用粒子を発生させる。
(5) 試験用粒子の濃度の測定 高性能エアフィルタの上流側の濃度が安定した後,試験用粒子濃度の測定
を行う。測定は,要求される精度の濃度評価ができる時間継続して行う。
また,測定は,高性能エアフィルタの上流側及び下流側について各3回行う。濃度の測定終了後,
試験用粒子の発生を停止する。
(6) 総合捕集率(総合透過率)の計算 7.によって行う。
7. 試験結果の評価 エアフィルタ装置の総合捕集率(総合透過率)は,次式から求める。
(1) 1段設置の場合における総合捕集率の算出 1段設置の場合における総合捕集率の算出方法は,次の式
による。
η= (1−P) ×100
u
d
C
C
P=
ここに,
η: エアフィルタ装置の総合捕集率 (%)
P: エアフィルタ装置の総合透過率
Cu: エアフィルタ装置の上流側濃度
Cd: エアフィルタ装置の下流側濃度
10
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ただし,濃度はバックグラウンド濃度を差し引いたものとする。
濃度の単位は,光散乱式濃度計では質量濃度,光散乱式粒子計数器では個数濃度を使用する。
上流側濃度測定時に希釈装置を用いた場合は,補正後の値とする。
(2) 2段又は3段設置の場合における総合捕集率の算出 2段又は3段設置の場合における総合捕集率の
算出方法は,次による。
(a) 2段又は3段一括して総合捕集率を求める方法は,次による。
ηn= (1−Pn) ×100
1
C
C
P
n
n=
ここに,
ηn: n段エアフィルタ装置の総合捕集率 (%)
Pn: n段エアフィルタ装置の総合透過率
C1: 1段目エアフィルタの上流側濃度
Cn: n段目エアフィルタの下流側濃度
n: フィルタの設置段数2,2又は3
ただし,濃度については(1)の場合と同様とする。
(b) 2段又は3段設置フィルタに対し,各段の上流側に個々に試験用粒子を投入し,1段ずつ測定して得
られた総合透過率の積から求める方法は,次の式による。
η2= [1−P1・ (K2・P2)] ×100
η3= [1−P1・ (K2・P2) ・ (K3・P3)] ×100
u
d
C
C
P
1
1
1=
u
d
C
C
P
2
2
2=
u
d
C
C
P
3
3
3=
ここに,
η2: 2段エアフィルタ装置の総合捕集率 (%)
η3: 3段エアフィルタ装置の総合捕集率 (%)
P1: 1段目エアフィルタ装置の総合透過率
P2: 2段目エアフィルタ装置の総合透過率
P3: 3段目エアフィルタ装置の総合透過率
C1u: 1段目エアフィルタの上流側濃度
C1d: 1段目エアフィルタの下流側濃度
C2u: 2段目エアフィルタの上流側濃度
C2d: 2段目エアフィルタの下流側濃度
C3u: 3段目エアフィルタの上流側濃度
C3d: 3段目エアフィルタの下流側濃度
K2: 2段目エアフィルタの総合透過率補正係数
K3: 3段目エアフィルタの総合透過率補正係数
ただし,濃度については(1)の場合と同様とする。
総合透過率補正係数K2,K3の数値は,附属書表1のとおりとする。
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Z 4812-1995
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書表1 2段目及び3段目エアフィルタの総合透過率補正係数
計測器の種類
測定対象粒径範囲
μm
総合透過率補正係数*
2段目高性能エアフィルタ
(K2)
3段目高性能エアフィルタ
(K3)
光散乱式濃度計
−
10
20
光散乱式粒子計数器
0.1〜0.2
2
2
0.2〜0.3
5
5
0.3以上
注*
ラスキンノズル形発生器を用いて発生させたDOP粒子を試験粒子とした場合。
8. 報告 試験結果の報告書には,次の事項を記載しなければならない。
(1) 施設名(事業所名)
(2) 試験エアフィルタ装置名及びフィルタその他の構成
(3) 試験期日,時間及び室内温湿度
(4) 試験装置及び試験方法
(5) 濃度測定値,圧力損失を含む試験データ
(6) 測定者の氏名
関連規格 JIS B 9908 換気用エアフィルタユニット
JIS B 9927 クリーンルーム用エアフィルター性能試験方法
JIS Z 8813 浮遊粉じん濃度測定方法通則
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Z 4812-1995
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
JIS Z 4812 放射性エアロゾル用高性能エアフィルタ原案作成委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
横 地 明
東海大学
本 間 清
科学技術庁原子力安全局
安 達 俊 雄
通商産業省機械情報産業局
藤 冨 正 晴
資源エネルギー庁公益事業部
倉 重 有 幸
工業技術院標準部
加 山 英 男
財団法人日本規格協会
○ 吉 田 芳 和
財団法人放射線計測協会
(幹事)
○ 池 沢 芳 夫
特殊法人日本原子力研究所
◎ 小 泉 彰
放射線医学総合研究所
○ 三 浦 正 俊
特殊法人動力炉核燃料開発事業団
○ 白 川 勇
日本原子力発電株式会社
◎ 佐 藤 和 彦
株式会社日立製作所
◎ 森 田 純 一
株式会社東芝
◎ 石 田 清 治
新日本空調株式会社
○ 安 野 忠 彦
新菱冷熱工業株式会社
○ 椎 名 義 臣
日立プラント建設株式会社
◎ 大 竹 信 義
日本無機株式会社
(幹事)
◎ 武 田 隼 人
進和テック株式会社
○ 尾 登 泉
近藤工業株式会社
◎ 吉 田 典 生
ニッタ株式会社
○ 織 田 利 英
株式会社忍足研究所
○ 杉 田 直 記
ミドリ安全工業株式会社
(事務局)
三 上 壯 介
社団法人日本空気清浄協会
備考 ○◎印が付けてある者は分科会委員も兼ねる。
◎:放射線エアロゾル用高性能エアフィルタ分科会
○:放射線エアロゾル用高性能エアフィルタ現場試験方法分科会