Z 4752-2-11:2005 (IEC 61223-2-11:1999)
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法第12条第1項の規定に基づき,社団法人日本放射線技術学会 (JSRT)/財団
法人日本規格協会 (JSA) から,工業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があり,日本工
業標準調査会の審議を経て,厚生労働大臣及び経済産業大臣が制定した日本工業規格である。
制定に当たっては,日本工業規格と国際規格との対比,国際規格に一致した日本工業規格の作成及び日
本工業規格を基礎にした国際規格原案の提案を容易にするために,IEC 61223-2-11 : 1999,Evaluation and
routine testing in medical imaging departments−Part 2-11 : Constancy tests−Equipment for general direct
radiographyを基礎として用いた。
この規格の一部が,技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の
実用新案登録出願に抵触する可能性があることに注意を喚起する。厚生労働大臣,経済産業大臣及び日本
工業標準調査会は,このような技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願
公開後の実用新案登録出願にかかわる確認について,責任はもたない。
JIS Z 4752-2-11には,次に示す附属書がある。
附属書A(規定) 用語−用語の索引
附属書B(参考) 標準的な試験報告書の様式例
附属書C(参考) 取るべき処置に関する指針
附属書D(規定) ファントム及び試験器具
Z 4752-2-11:2005 (IEC 61223-2-11:1999)
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目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1. 適用範囲及び目的 ············································································································ 1
1.1 適用範囲 ······················································································································ 1
1.2 目的 ···························································································································· 1
2. 引用規格 ························································································································ 2
3. 定義 ······························································································································ 2
3.1 要求度 ························································································································· 2
3.2 用語の用い方 ················································································································ 3
4. 不変性試験の概要 ············································································································ 3
4.1 試験手順に影響する一般的条件························································································· 3
4.2 基礎値の設定 ················································································································ 3
4.3 不変性試験の頻度 ·········································································································· 4
4.4 X線装置,試験機器及び試験条件の同一性 ·········································································· 4
4.5 測定される機能パラメータ······························································································· 5
5. 性能試験 ························································································································ 5
5.1 X線源装置からのX線出力 ······························································································ 5
5.2 受像面へのX線入力 ······································································································· 6
5.3 幾何学的特性 ················································································································ 8
5.4 高コントラスト解像度 ··································································································· 11
5.5 X線像全域の光学的濃度変化 ··························································································· 12
6. 適合に関する報告 ··········································································································· 14
附属書A(規定) 用語−用語の索引 ······················································································· 22
附属書B(参考) 標準的な試験報告書の様式例 ········································································ 24
附属書C(参考) 取るべき処置に関する指針 ··········································································· 26
附属書D(規定) ファントム及び試験器具 ·············································································· 27
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
Z 4752-2-11:2005
(IEC 61223-2-11:1999)
医用画像部門における品質維持の評価及び
日常試験方法−
第2-11部:不変性試験−直接撮影用X線装置
Evaluation and routine testing in medical imaging departments-
Part 2-11 : Constancy tests-Equipment for general direct radiography
序文 この規格は,1999年に第1版として発行されたIEC 61223-2-11,Evaluation and routine testing in
medical imaging departments−Part 2-11 : Constancy tests−Equipment for general direct radiographyを翻訳し,技
術的内容を変更することなく作成した日本工業規格である。
なお,この規格で点線の下線を施してある箇所は,原国際規格にはない事項である。
1. 適用範囲及び目的
1.1
適用範囲 この規格は,JIS Z 4752シリーズの一つで,次のX線装置の構成品について規定する。
− X線の発生,伝達及び検出するもの。
− 撮影用フィルムを用いて直接撮影を行う診断用X線装置システムを備えた放射線設備における放射線
情報を処理,記録及び表示するもの。
この規格は,一連のJIS Z 4752シリーズの一部であり,診断用X線装置の様々な構成品の作動について
の不変性試験の方法を規定する。ただし,この規格は,乳房用X線装置,歯科用X線装置のような特殊な
用途の機器には適用しない。
この規格は,JIS Z 4752-1に規定する診断用X線装置の特性を維持するための試験方法を規定する(2. 参
照)。
この規格は,ディジタル画像装置を構成しない直接撮影用X線装置に適用する。
備考 この規格の対応国際規格を,次に示す。
なお,対応の程度を表す記号は,ISO/IEC Guide 21に基づき,IDT(一致している),MOD
(修正している),NEQ(同等でない)とする。
IEC 61223-2-11 : 1999,Evaluation and routine testing in medical imaging departments−Part 2-11 :
Constancy tests−Equipment for general direct radiography (IDT)
1.2
目的 この規格は,次のことについて規定する。
− X線装置の構成品の性能又は性能に影響を与える基本的なパラメータ。
− 患者への不要照射をさけながら,適切な画質基準を維持するために,これらのパラメータの変化量が
許容限度内にあることを確認する方法。
この方法は適切な試験器具によるX線像の評価を基本にしている。
目的は,次のとおりである。
2
Z 4752-2-11:2005 (IEC 61223-2-11:1999)
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− 装置が受け入れられた後に性能の基準レベルを定める。
− 是正が必要かもしれない性能の有意な変化を見つけ,確かめる。
放射線設備は著しく個々に異なるため,この規格では,受け入れられる基準として一般的に適用できる
性能パラメータの目標値及び許容差は規定しない。しかし,適切な改善行為が必要となるような性能パラ
メータの変動の範囲を示すための指針を規定する。
この規格は,次の内容は規定しない。
− 機械的及び電気的安全に関する事項。
− X線に対する直接的な防護手段の効果に関する確認。
− 画質の最適化。
測定に関しては,関連規格で規定する方法を実施した上で,この規格で規定する方法を行わなくてはな
らない(2. 参照)。
2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す
る。これらの引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS Z 4005 医用放射線用語
備考 IEC 60788 : 1984 Medical Radiology−Terminologyからの引用事項は,この規格の該当事項と
同等である。
JIS Z 4701 医用X線装置通則
備考 IEC 60601-1-3 : 1994 Medical electrical equipment−Part 1 : General requirements for safety 3.
Collateral standard : General requirements for protection in diagnostic X-ray equipmentからの引用
事項は,この規格の該当事項と同等である。
JIS Z 4752-1 医用画像部門における品質維持の評価及び日常試験方法−第1部:総則
備考 IEC 61223-1 : 1993 Evaluation and routine testing in medical imaging department−Part 1 :
Generalaspectsが,この規格と一致している。
JIS Z 4752-2-1 医用画像部門における品質維持の評価及び日常試験方法−第2-1部:不変性試験−フ
ィルム現像機
備考 IEC 61223-2-1 : 1993 Evaluation and routine testing in medical imaging department−Part 2-1 :
Constancy tests−Film processorsからの引用事項は,この規格の該当事項と同等である。
JIS Z 4752-2-3 医用画像部門における品質維持の評価及び日常試験方法−第2-3部:不変性試験−暗
室安全光条件
備考 IEC 61223-2-3 : 1993 Evaluation and routine testing in medical imaging department−Part 2-3 :
Constancy tests−Darkroom Safelight conditionが,この規格と一致している。
3. 定義
3.1
要求度 この規格では,特定の語について,要求事項の記述を次のように明確にしている。
− ・・・(し)なければならない。(“shall”)
適合が必す(須)である要求事項を示す文章の末尾。
− ・・・することが望ましい。 ・・・するのがよい。(“should”)
適合が必す(須)でない強い勧告を示す文章の末尾。
− ・・・(し)てもよい。 ・・・差し支えない。(“may”)
3
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要求事項に適合する方法又はその代わりの方法を述べる文章の末尾。
− 規定の,規定した (“specific”)
この規格だけに記載された情報又は他の規格における,通常特定の作動条件,試験配置又は適合値
の参照を示す値。
− 指定の,指定した (“specified”)
通常,期待する目的,パラメータ又はその使用若しくは適合試験条件に関して,機器の附属文書又
は他の文書に製造業者によって明記された限定的な情報を示す語。
3.2
用語の用い方 この規格では,太字にした用語は,JIS Z 4005及び附属書Aで定義する用語である。
4. 不変性試験の概要 この規格で規定する不変性試験の試験方法は,X線装置から得られる画像の画質
の変化を操作者が見いだすことを目的とする。
この規格で規定する不変性試験の結果を有効にするためには,その結果が試験パラメータの変化以外の
何ものによっても重大な影響を受けないことを保証することが必要である。
特に,JIS Z 4752-2-3に従った暗室内での安全光条件及びJIS Z 4752-2-1に従った適切なフィルム現像処
理に注意する(2. 参照)。シャウカステンを用いるとき,照明条件に特に注意することが望ましい。
被試験装置を確認する作動条件及び試験条件は,環境変化の影響を含め,注意深く検討しなければなら
ない。
試験におけるすべての被試験装置及び試験に使用するすべての試験機器には,最初の不変性試験で用い
たものと,それ以降で同じものが用いられることを保証するために,最初の不変性試験で同一性が確認で
きるように記録しなければならない。
5. に規定する試験に用いる試験器具は,附属書Dによる。実際には,個別の試験器具の特性を複合した
試験器具を用いてもよい。さらに,5. で個別に規定している試験を同時に行ってもよい。
備考 製造業者が附属文書で不変性試験の方法及び頻度を提示している場合は,この限りでない。
4.1
試験手順に影響する一般的条件 不変性試験の項目は,その結果が対象となるパラメータの変化以
外に影響を受けない安定なものを選定する。テストツール及び試験機器は,必要最小限の数で,簡便で安
定したものを用いる。
条件は,次による。
− 不変性試験は,臨床でもっとも頻繁に用いるX線条件で行う。
− 試験を行うごとに,X線装置及び附属品を再現性よく配置し記録する。また,使用される試験機器,構
成品及び附属品が同じであることを確認する。
− 結果に影響を与える電源電圧の変動を考慮する。
− 2. の引用規格に適合する撮影用フィルムを用いて,現像,観察する。
− 試験機器の性能は,定期的に点検する。特に,X線装置に重大な変化が疑われるときは,試験機器を
随時点検しなければならない。
備考 適切な日本工業規格がある場合,測定機器は日本工業規格によることが望ましい。
不変性試験を始める前に,撮影用カセッテ,撮影用フィルム,フィルム現像処理及びフィルム観察状態
を確認しなければならない。
4.2
基礎値の設定 新しいX線装置を使用し始めるとき,又はX線装置の構成品,附属機器若しくは試
験装置を変更したことで,試験結果に影響を及ぼしそうなときは,受入試験又は現状試験によって性能が
満足することを確認した後,直ちに最初の不変性試験を行わなければならない。最初の不変性試験の目的
4
Z 4752-2-11:2005 (IEC 61223-2-11:1999)
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は,試験しているパラメータの新たな基礎値を設定することである。
4.3
不変性試験の頻度 不変性試験は,個々の箇条で示した頻度で行わなければならない。それに加え
て,次の場合にも繰り返す。
− 誤動作が疑われるとき。
− X線装置の試験の対象になる性能パラメータに影響すると考えられる保守を行った直後。
− 試験の結果が基準から外れたとき。
基礎値の記録は,新たな基礎値が設定される不変性試験が実施されるまで保存しなければならない。
不変性試験の結果は,少なくとも2年間保存しなければならない。
4.4
X線装置,試験機器及び試験条件の同一性 試験するX線装置,及び試験に使用するすべての試験
機器は,明確に同一性を確認できなければならない。
X線装置の交換可能な構成品は,次による。
− 付加フィルタ
− 照射野限定器
− X線(放射線)ビーム内にある患者支持器又は他の減弱物
− 自動制御システムの放射線検出器
− 散乱線除去グリッド
使用する試験機器は,次による。
− 増感紙付き撮影用カセッテ
− 試験器具
− 撮影用フィルムの形名と乳剤番号
− フィルム現像機
− 感光計
− 濃度計
設定の変動は,次による。
− 焦点受像器間距離
− 自動制御システムの濃度制御及び検出器の位置
− X線条件
− 該当する場合,公称焦点寸法
以上の事柄は,表示又は記録しなければならない。これは最初の不変性試験で用いられる試験機器及び
器具並びに設定を,X線装置の試験に用いるようにするためである。
備考1. 試験の多くは,最初の不変性試験と同じ撮影用カセッテを用いて行うことが望ましい。以後,
このカセッテを“試験カセッテ”という。この試験カセッテは,試験専用として臨床で用い
るカセッテと区別して保管するほうがよい。最初は装置の変化を示すのに安定した器具であ
るが,次第にカセッテ自体の劣化による変化を含め,システム全体の変化を提示することに
なる。
2. 試験に用いるすべての撮影用フィルムは,フィルム現像機の不変性試験に用いるフィルムと
同じ形名のものが基本である。
試験器具のX線像は,同じ増感紙とフィルムの形名の試験カセッテで撮影しなければならない。撮影フ
ィルムは,既定条件で現像処理し,JIS Z 4752-2-1で規定した試験でフィルムの乳剤番号間の変化につい
て,適切に考慮しなければならない。フィルム又は現像条件を変えた場合は,再設定のために最初の不変
5
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性試験を行わなければならない。
4.5
測定される機能パラメータ 直接撮影システムの画像性能は,次の機能パラメータの変化が適用判
定基準に合致していれば,不変であると考えられる。
− X線源装置からのX線出力(5.1参照)
− 受像面へのX線入力(5.2参照)
− 幾何学的な特性(5.3参照)
− 高コントラストの分解能(5.4参照)
− X線像全域の光学的濃度変化(5.5参照)
不変性要因は,次の装置性能パラメータの一つ又は一つ以上の変動の影響を受ける。
− 電源電圧の値及び波形
− 管電圧の値及び波形
− 管電流
− 負荷時間
− 自動露出制御時の照射時間
− X線ビーム内のろ過及び減弱
− X線管装置の陽極のターゲットの荒れ
− 焦点から関心領域までの距離
− X線ビームの制限
− X線ビームの方向
− 受像面とX線ビームの配列
− 光照射野表示器による照射野表示とX線(放射線)照射野の一致
− 運動グリッドの動き
− 散乱線除去グリッドの位置
− 焦点の画像特性
− 機械的安定性
5. 性能試験
5.1
X線源装置からのX線出力
5.1.1
概要 X線源装置からのX線出力は放射線測定器で測定する。測定は,X線装置の形式と用途に
応じて,マニュアル制御及び/又は自動露出制御で行う。
5.1.2
試験機器 測定は,総合的な再現性が±5 %以内(長時間の安定性,計器ノイズ,読み取り限界を
含む。)の積算形の放射線測定器を使用する。自動露出制御で試験するときには,患者の代わりとして減弱
ファントムを使用しなければならない。これは,X線ビームの適度な減弱と線質硬化のためである。減弱
ファントムの詳細は,附属書Dを参照する。
5.1.3
試験手順 放射線測定器の放射線検出器は,X線源装置から出て来るX線ビーム内に置く。
測定の位置関係について
− 放射線検出器の焦点からの距離
− 放射線検出器のX線照射野内における位置
は,最初の不変性試験で使用した焦点−放射線検出器間距離の±1 %以内に再配置し,同じ大きさのX線
照射野を使用しなければならない。
6
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可能であれば,この試験はマニュアル制御と自動露出制御の両方で実施する。5.2.3に従った測定が実施
された場合,5.1.3.2に従った測定は,実施しなくてもよい。
5.1.3.1
マニュアル制御試験 最初の不変性試験で使用したものと同一の負荷条件を手動操作で設定しX
線装置を操作する。
放射線測定器の読みを記録する。
5.1.3.2
自動露出制御試験 通常の臨床で使用するように,X線源装置及びX線受像器を一列に配置する。
減弱ファントムをX線ビーム内で,放射線測定器の放射線検出器と自動制御システムの放射線検出器と
の間に配置する。
放射線測定器の放射線検出器は,自動制御システムの動作に影響しない位置に置く。
備考 すべての放射線検出器に自動露出制御に対する影響が最小になる配置ができるような規定の指
示が与えられなければならない。減弱ファントム(A2又はA3:附属書D参照)が使用される
場合,X線源装置に取り付けるため,ファントムの後方(もし放射線検出器の感度が許すなら
ば)で測定がされるよう考慮しなければならない。
空の撮影用カセッテをカセッテチェンジャに置いて,最初の不変性試験で使用したのと同じ管電圧設定
で,X線装置の自動制御システムを作動する。同じ撮影用カセッテを使用する。
放射線測定器の読みを記録する。それぞれの照射が行われた後に,照射時間,管電流時間積などが表示
される場合は,それらも記録する。
5.1.4
データの評価 X線出力の測定値を,確立した基礎値と比較する。
5.1.5
適用基準
5.1.5.1
マニュアル制御試験 X線出力は,基礎値の±20 %以内であることが望ましい。
5.1.5.2
自動露出制御試験 適用基準は,減弱ファントムに使用される物質による。
低い原子番号(最大14)の物質[例えば,水,ポリメチルメタクリレイト (PMMA),アルミニウム]が
使用される場合,X線出力は基礎値の−20〜+25 %以内であることが望ましい。
高い原子番号の物質(例えば,銅又は鉛)の場合,X線出力は基礎値の±25 %以内が望ましい。
鉛が使われて管電圧が90 kVを超える時は,上記の低い原子番号の物質の値を適用する(基礎値の−20
〜+25 %以内)。
5.1.6
取るべき処置 被試験システムが基準を満たさない場合,附属書Cで参照された指針に従うこと
が望ましい。
備考 X線管の劣化によってX線出力が徐々に減ることが予想される。このため,時々新しい基礎値
を決めることが必要である。自動露出制御では,X線出力の減少が補償され検知できないため,
マニュアル制御による試験に適用する。
5.1.7
不変性試験の頻度 最初,出力測定値の平均の値を計算して基礎値を確定するために,少なくとも
1週間は,毎日不変性試験を実施することが望ましい。
続いて,X線源装置,高電圧装置及び自動制御システムの信頼性に関するデータを得るために,6か月
間は2週間ごとに不変性試験を繰り返すことが望ましい。その後,不変性試験は製造業者が提供した取扱
説明書に従って実施しなければならない。試験頻度に関する情報がない場合は,不変性試験は少なくとも,
3か月ごとに実施しなければならない。
5.2
受像面へのX線入力
5.2.1
概要 受像面へのX線入力は,X線像の規定の点に記録された光学的濃度を測定することによっ
て決定される。代わる手段として,X線入力は放射線測定器で直接測定してもよい。
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備考 しかしながら放射線測定器は,X線ビームの線質を考慮していない。したがって,フィルム法
が望ましい。
測定は,X線装置の形式と用途に応じてマニュアル制御及び/又は自動露出制御のもとで実施される。
5.2.2
試験機器 試験は,常に同じ散乱線除去グリッドと,被試験X線装置で通常使用される形式の増
感紙・フィルムを組合せた同じ撮影用カセッテで実施されなければならない。光学的濃度計のシステム誤
差は±0.02以内でなければならない。
放射線測定器が使用される場合は,計器は積算型で,総合的な再現性が±5 %以内でなければならない。
(長時間の安定性,計器ノイズ,読み取り限度を含む。)
患者の代わりとして減弱ファントムを使用しなければならない。これはX線ビームの適度な減弱と線質
硬化のためである。さらに,X線像の光学的濃度を測定する場所が識別できるようにフィルムマーカ試験
器具を使用しなければならない(付図1参照)。
減弱ファントムの適切な選択方法及びフィルムマーカ試験器具の詳細は,附属書Dを参照する。
5.2.3
試験手順 被試験X線装置が自動露出制御を備えている場合は,不変性試験は自動モードで実施
する。可能であるなら,さらに不変性試験は,マニュアル制御でも実施する。
通常の臨床で使用するようにX線源装置とX線受像器を配置する。
撮影用カセッテが使用される場合は,X線受像器内に配置する。放射線測定器が使用される場合は,そ
の放射線検出器は受像面の中に配置される。減弱ファントムとフィルムマーカ試験器具は,X線ビームの
中で焦点とX線受像器との間に配置する。
いかなる試験機器も,焦点からの距離とX線照射野内の位置が最初の不変性試験で使われた焦点からの
距離の1 %以内で,同じ大きさのX線照射野を使用しなければならない。
最初の不変性試験で設定されたのと同一の,少なくとも二つの管電圧を選択する。
a) マニュアル制御試験 最初の不変性試験で使用したものと同一の負荷条件を手動操作で設定しX線装
置を操作する。
照射されたフィルムは,4.4を参照して手順に従って現像する。
X線像の規定の点の光学的濃度を測定するか,又は放射線測定器に表示された値を記録する。
必要ならば,フィルムのロットや現像条件の変化を許容するため,4.4を参照して手順に従って測定
した濃度を調整する。
b) 自動露出制御試験 X線装置は自動制御システムと関連して操作し,管電圧及びその他の条件は,最
初の不変性試験と同一の条件を使用する。
上記a) マニュアル制御試験の項で示したのと同じ手順に従う。
5.2.4
データの評価 光学的濃度又はX線入力の測定値は,確立されている基礎値と比較する。
5.2.5
適用基準
a) マニュアル制御試験の場合:光学的濃度は,基礎値の±0.3以内であることが望ましい。放射線測定器
が使用される場合は,X線入力は基礎値の±30 %以内であることが望ましい。
b) 自動露出制御試験の場合:光学的濃度は,基礎値の±0.15以内であることが望ましい。放射線測定器
が使用される場合は,X線入力は基礎値の±15 %以内であることが望ましい。
上記許容値は,平均階調度Gが2〜3の撮影用フィルムに適用する。
5.2.6
取るべき処置 被試験システムが基準を満たさない場合,附属書Cで参照された指針に従うこと
が望ましい。
5.2.7
不変性試験の頻度 最初,光学的濃度又はX線入力の測定値の平均の値を計算して基礎値を確定
8
Z 4752-2-11:2005 (IEC 61223-2-11:1999)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
するために,少なくとも1週間は毎日不変性試験を実施することが望ましい。
その後は,不変性試験は製造業者が提供した取扱説明書に従って実施しなければならない。試験頻度に
関する情報がない場合は,不変性試験は少なくとも,3か月ごとに実施されなければならない。
5.3
幾何学的特性
5.3.1
概要 これらの試験は,次に示すX線装置の幾何学的特性の不変性を確認するために行わなけれ
ばならない。
− 表示された焦点受像器間距離
− X線ビーム軸と受像器面との垂直度
備考 X線源装置の基準方向の試験は,一般的に患者支持器の表面又はX線受像器の入射面で十分で
ある。これらの表面と受像器面との平行度の変化は,通常では起こらない。
− X線照射野と光照射野との一致:JIS Z 4701 付図2参照
− X線照射野とX線受像器との一致:JIS Z 4701 付図3参照
− 適用される場合,X線照射野の大きさの読み値
5.3.2
試験機器 次の試験機器が必要である。
− 巻尺
− 異なった大きさの2組の増感紙付カセッテ(例えば,24 cm×30 cmと35 cm×43 cm)
− 撮影用フィルム
− 定規
− 水準器
− 垂直度試験器具
− アライメント試験器具
放射線ビーム軸と受像器面との垂直度を試験するために,試験器具を使用しなければならない。
アライメント試験器具は,光照射野のエッジ及び中心,並びにこの試験器具の位置をX線像で確認する
ために用いる。
照射が自動露出制御で行われるなら,X線ビームの適切な減弱と線質硬化のため,患者に代わるものと
して減弱ファントムを使用しなければならない。
減弱ファントムと垂直度試験器具及びアライメント試験器具の詳細な説明は,附属書Dを参照する。
5.3.3
試験手順
5.3.3.1
表示された焦点受像器間距離
ステップ1:X線装置に附属した表示器を使用して,焦点受像器間距離を,最初の不変性試験で用いた値
に設定する。
ステップ2:焦点受像器間距離を,巻尺を使用して測定する。焦点の位置が,X線源装置の表面に明白に
表示されていない場合には,最初の不変性試験の時に使用したのと同じX線源装置上の点か
ら測定する。例えば,X線受像器に最も近いX線源装置上の点。
5.3.3.2
手動,固定又は自動の照射野限定システムをもつオーバテーブルX線管形装置での他の幾何学的
特性 次の試験手順は,5.3.1に記載されているすべての特性を同時に確認する方法を示す。
ステップ1:水準器を用いて,患者支持器の水平度を確認する。内蔵の角度表示器を使用する場合は,水
準器と比較し,必要があれば調整する。内蔵の角度表示器が調整できなければ,偏差を記録
する。患者支持器が水平位置にできなければ,偏差を記録する。
ステップ2:X線源装置を,患者支持器又は受像面の中心に配置し,そのX線管装置の軸を,(X線)装置
9
Z 4752-2-11:2005 (IEC 61223-2-11:1999)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
に附属の表示器を用いて,患者支持器の長軸に平行になるように合せる。最初の不変性試験の
時に使用したのと同じ焦点受像器間距離を選択する。
ステップ3:装てんされた24 cm×30 cmの撮影用カセッテ(カセッテ “P” は付図5a,付図5b及び付図
5c参照)をカセッテチェンジャの中央に挟む。カセッテチェンジャの中心をX線管装置の中
心に合わせて固定する。
ステップ4:手動調整又は固定の照射野限定システムの場合は,ステップ5に進む。
装てんされた24 cm×30 cmの撮影用カセッテ(カセッテ “Q” 付図5b参照)を,患者支持器
又はX線受像器に平行な面に保持する。ただし患者支持器及びX線受像器よりも20〜30 cm
の間でX線管装置に近い距離にする。カセッテの通常の入射面をX線管装置に対し逆向きと
し,すべてのX線ビームを通過させる。光照射野表示器を用い,焦点から光照射野の中心で
のカセッテ “Q” までの距離を測定,記録し,カセッテのエッジと光照射野のエッジとが平行
になるよう合わせる。
備考 焦点から二つの撮影用カセッテまでの距離は異なり,カセッテ“P”の前面には,患者支持器,
散乱線除去グリッド及びカセッテ “Q” のような吸収物質がある。したがって,二つのカセッ
テへの空気カーマは,かなり異なる。両方のカセッテ内のフィルムに対し,適切な照射線量を
与えるための1つのX線条件を容易に選ぶ試みとして,カセッテ “Q” を通常使用されるのと
逆向きに置いてみる。1回の照射で満足する試験ができなければ,異なったX線条件での2回
の照射を行う必要がある。
ステップ5:手動調整又は固定の照射野限定システムの場合,アライメント試験器具を 患者支持器又はX
線受像器の入射面に置く。患者支持器が曲面の場合,薄くて,低い減弱の物質(例えば,木
材)の平らで固い物を患者支持器上に渡して,X線受像器に対し試験器具面が平行になるよ
うにする。自動調整の照射野限定システムの場合,アライメント試験器具を,X線管装置に
最も近いカセッテ “Q” の表面に置く。アライメント試験器具には,X線照射野の大きさの評
価で必要な放射線不透過性マーカが付いている。
ステップ6:光照射野表示器を用いて,アライメント試験器具を光照射野の中心に置き,試験器具のエッ
ジが,光照射野のエッジと平行になるように合わせる。
− 自動照射野限定システムでは,試験器具の外表面上の印をもとに,光照射野の大きさと位
置を記録する。
− 手動又は固定の照射野限定システムでは,光照射野の大きさをアライメント試験器具上の
小さい照射野サイズ(例えば15 cm×20 cm)に合わせる。照射野限定器の照射野サイズ表
示器の表示値を記録する。光照射野の一つ又はそれ以上のエッジが,アライメント試験器
具によって決められた照射野のエッジに一致させることができないときは,非対称の程度
を記録する。
ステップ7:垂直度試験器具をアライメント試験器具の上に置く。垂直度試験器具下側底面のリングの中
心を,アライメント試験器具の表面に示された光照射野の中心に一致させるようにする。試
験の配置を付図5a及び付図5bに示す。
ステップ8:撮影は,最初の不変性試験と同じ,現像された撮影用フィルム上で,光学的濃度が0.5〜1.5
の範囲に入るようなX線条件で行う。
備考 照射が自動露出制御下でしか行えないときは,患者に代わるものとして,自動露出制御システ
ムに対してX線ビームの適切な減弱及び線質硬化のための減弱ファントム(5.1.2参照)を使用
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Z 4752-2-11:2005 (IEC 61223-2-11:1999)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
する必要がある。減弱ファントムの位置は,付図5a及び付図5bを参照する。
− 自動調整の照射野限定システムの場合,両方のカセッテ中のフィルムを現像する。
− 手動調整又は固定の照射野限定システムの場合,光照射野を最大のカセッテサイズに再調
整する。カセッテ中のフィルムを現像する。
ステップ9:垂直度試験器具を取り除き,上記手順(ステップ1〜8)を繰り返す。ただし,カセッテ “P” と
カセッテ “Q” として35 cm×43 cmの撮影用カセッテを使用する。
備考 “Q” の位置では,より小さな撮影用カセッテでもよい。
さらに,固定/手動調整照射野限定システムの場合には,ステップ6で,アライメント試験
器具に表示された,より大きい照射野の設定を使用する(例えば,30 cm×40 cm)。
5.3.3.3
X線ビームが水平方向だけ可能なX線装置 上記5.3.3.1及び5.3.3.2の手順は,オーバテーブル
X線管形装置に適用される。X線ビームが水平方向に設定可能なX線装置にも,同じ手順が適用される。
ただし,次のような手順の変更が必要であろう。
− 患者支持器又はX線受像器が水平位置でなく垂直位置であることを,内蔵の角度表示器又は内蔵の角
度表示器がない場合は,水準器を用いて確認する。
− 患者皮膚面又はX線受像器の入力面の垂直面に対して,試験器具を保持する手段を設ける。
5.3.3.4
アンダーテーブルX線管形装置 アンダーテーブルX線管形装置では,光照射野表示ができな
いため,5.3.1に示したすべての幾何学的特性の確認は不可能である。複雑な方法を用いることなく確認で
きるただ一つの特性は,X線照射野とX線受像器との一致である。
ステップ1:内蔵の角度表示器又は内蔵の角度表示器がない場合は水準器を用いて,患者支持器の水平度
を確認する。患者支持器が水平でないか,水平位置にできない場合は,偏差を記録する。
ステップ2:アンダーテーブルX線管形装置のX線源装置は,通常,X線受像器が作動時には,自動的に
受像面の中心に合わされる。最初の不変性試験で使用したのと同じ焦点受像器間距離を選択
する。簡便のために,これは,X線受像器が患者支持器上で設定しうる最大の高さでもよい。
患者と受像面間のすべての二次的な照射野限定器は,取り除く。
ステップ3:装てんされた24 cm×30 cmの撮影用カセッテ(カセッテ “P”)を,カセッテチェンジャの中
央に挟む。カセッテチェンジャを,X線受像器として正しい位置に挿入する。試験配置を付
図5cに示す。
ステップ4:5.3.3.2のステップ4,5,8,及び9にある自動調整の照射野限定システム用に規定する方法に
よって試験を行う。
5.3.4
データの評価
5.3.4.1
手動又は固定の照射野限定システム
ステップ1:カセッテ “P” でのX線像上のやや暗い露光領域で決められるX線照射野のエッジと,放射
線不透過性マーカの画像で示される光照射野のエッジ間との距離を測定する。不整合の程度
を計算するのに,それぞれの対となる対向するエッジにおけるこれらの測定値を加算する。
付図6のA参照。
ステップ2:カセッテ “P” でのX線像上のやや暗い露光領域で決められるX線照射野のエッジの長さを
測定し,記録する。測定された寸法から表示された照射野の寸法を減じる。
5.3.4.2
アンダーテーブルX線管形装置を除く自動照射野限定システム
ステップ1:カセッテ “Q” でのX線像上のやや暗い露光領域で決められるX線照射野のエッジと,光照
射の位置と大きさを表す放射線不透過性マーカの画像で示される光照射野のエッジ間の距離
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Z 4752-2-11:2005 (IEC 61223-2-11:1999)
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を測定する。5.3.3.2のステップ4参照。不整合の程度を計算するのに,それぞれの対となる
対向するエッジにおけるこれらの測定値を加算する。
ステップ2:カセッテ “P” とカセッテ “Q” 両方のX線像上の二つの放射線不透過性マーカ間の距離dP
とdQを測定する。拡大率 “m” は,dP/dQで計算される。カセッテ “Q” でのX線像上のや
や暗い露光領域で決められるX線照射野のエッジの長さを測定する。カセッテ “P” の位置
でのX線照射野のエッジ間の距離を決めるため,これらの測定値に “m” を乗じる。X線照
射野のエッジ間距離の見積もり値と,対応する受像面のエッジ間距離の差が決まる。不整合
の程度を計算するのに,それぞれの対となる対向するエッジにおけるこれらの測定値を加算
する。付図6のB参照。
5.3.4.3
アンダーテーブルX線管形装置 5.3.4.2のステップ2によって測定を行う。
備考 この試験は,X線照射野のどのエッジでもX線受像器の境界を外れる場合は行えない。
5.3.5
適用基準
5.3.5.1
表示された焦点受像器間距離 焦点受像器間距離は,表示値の±1 %以内であり,最初の不変性
試験時の測定値の±1 %以内でなければならない。
5.3.5.2
X線(放射線)ビーム軸とX線受像器との垂直度(5.3.1の備考参照) X線ビーム軸は,受像
面の垂直軸の1.5°以内でなければならない。これを確認するためには,交差軸の中心の画像は垂直度試験
器具内側の円の画像内になければならない。
5.3.5.3
X線照射野と光照射野の一致 付図6のAにて測定された不一致は,一方の軸上でa1とa2,他
の軸上でb1及びb2で表す。焦点からの距離をSとすれば,次の関係による。
| a1 | + | a2 | ≦ 0.02 × S
| b1 | + | b2 | ≦ 0.02 × S
5.3.5.4
X線照射野とX線受像器との一致 付図6のBにて,測定された不一致は,一方の軸上でc1と
c2,他の軸上でd1及びd2で表す。焦点からの距離をSとすれば,次の関係による。
| c1 | + | c2 | ≦ 0.03 × S
| d1 | + | d2 | ≦ 0.03 × S
| c1 | + | c2 | + | d1 | + | d2 | ≦ 0.04 × S
自動の照射野限定のほかに,二次的な照射野限定器が,患者とX線受像器との間にいつも配置される場
合は,不整合の基準は,二次的な照射野限定器が存在しないと仮定したときのX線照射野の投影に,適用
されなければならない。
5.3.5.5 X線照射野サイズの数値表示の正確さ 表示されたX線照射野の大きさと測定された寸法の差は,
焦点受像器間距離の±2 %以内でなければならない。
5.3.6
取るべき処置 被試験システムが基準を満たさない場合,附属書Cで参照された指針に従うこと
が望ましい。
5.3.7
不変性試験の頻度 試験は,製造業者が提供した取扱説明書に従って実施しなければならない。試
験頻度に関する情報がない場合は,不変性試験を少なくとも3か月ごとに実施しなければならない。
5.4
高コントラスト解像度
5.4.1
概要 使用期間中に焦点寸法の変化を除外できない場合は,次の試験を実施しなければならない。
この試験は,X線装置の解像度の不変性の確認を,高コントラスト試験器具の撮影像を作成することで
行う。
5.4.2
試験機器 次の試験機器が必要である。
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Z 4752-2-11:2005 (IEC 61223-2-11:1999)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
− 拡大鏡 通常2.5倍の倍率が適している。
− X線吸収体の周期的なパターンをもつ高コントラスト試験器具(高コントラスト試験器具の詳細は附
属書Dに記載)。
参考 空間周波数範囲の公比1.25の線対群であるJIS Z 4916(X線用解像力テストチャート)を用い
てもよい。
− 専用の撮影用カセッテ及びそのX線装置で通常の臨床に使用している形式の増感紙フィルムの組合せ。
5.4.3
試験手順 フィルムを入れた専用のカセッテをX線受像器面に設置する。焦点受像器間距離は臨
床で通常使用する距離とする。
高コントラスト試験器具の線パターンが,表面から200 mm離れるように患者支持器又はスポットフィ
ルム装置の入力面に置く(附属書D)。X線管装置をX線受像器の中心に合わせ,テストパターンをX線
管装置の中心に合わせる。
テストパターンの線対の主方向はX線管軸と約45°の角度に合わせる。どの試験器具においても,測定
配置は焦点からの距離及びX線照射野内での位置が,最初の不変性試験で使用した距離及び位置と±1 %
以内の再現性が可能であるように選択する。
管電圧は約70 kVに設定し,X線条件は現像したフィルムの減弱のなかった領域のベース込みかぶり濃
度が0.7〜1.3の間で得られるように選択する。最初の不変性試験で使用したものと同じX線条件を常に使
用する。
備考 自動露出制御でだけ照射が可能な場合は,自動露出制御装置に作用するX線ビームの適度な減
弱と線質硬化のため,患者の代わりとして減弱ファントム(5.1.2参照)を用いる必要性がある。
これらの状況下で減弱ファントムは,X線源装置が許す限り焦点に近づけて配置することが望
ましい。
X線像は患者支持器面で測定して100 mm×100 mmのX線ビーム寸法になるよう撮影する。選択可能な
それぞれの焦点寸法で上記手順を繰り返す。
各試験ごとにX線条件を記録する。
照射されたフィルムは4.4で規定した手順に従って現像処理する。
5.4.4
データの評価 X線像は拡大鏡を用いて検査を行い,目視可能な最大空間周波数を記録する。これ
らは,この試験条件下での限界周波数である。
この試験を実施するときは,比較を行うために最初の不変性試験でのX線像と同じ手順で実施する。
5.4.5
適用基準 最初の不変性試験の限界周波数と比較して測定した限界周波数は,次を超えて低下して
はならない。
− 連続変化の解像度テストパターンの20 %,又は
− 1 LP群
5.4.6
取るべき処置 被試験システムが基準を満たさない場合,附属書Cで参照された指針に従うこと
が望ましい。
5.4.7 不変性試験の頻度 試験は,製造業者から提供された取扱説明書に従って実施しなければならない。
試験頻度に関する情報がない場合は,不変性試験は少なくとも,3か月ごとに実施しなければならない。
5.5
X線像全域の光学的濃度変化
5.5.1
概要 この試験は,X線像の規定の点で測定された光学的濃度の相対変化の不変性を確認する。こ
の試験は5.2の試験と同時に行ってよい。すなわち,1枚のX線像で両方の試験に必要な情報をもってい
る。
13
Z 4752-2-11:2005 (IEC 61223-2-11:1999)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
5.5.2
試験機器 測定は,専用の撮影用カセッテ及び被試験X線装置で通常使用している形式の増感紙
とフィルムの組合せを使用して行う。濃度計は,常に±0.02以内で読めるものとする。
患者の代わりに減弱ファントムを使用する。これはX線ビームの適度な減弱と線質硬化を得るためであ
る。加えて,X線像の光学的濃度を測定する規定の点を明確にするためにフィルムマーカ試験器具を使用
しなければならない(付図1参照)。減弱ファントム及びフィルムマーカ試験器具の詳細は,附属書Dよ
る。
5.5.3
試験手順 X線源装置は通常の臨床で使用するように,X線受像器と中心が一直線上に並ぶように
調整する。
フィルムの入った撮影用カセッテを受像面に配置して,フィルムマーカ試験器具を焦点とX線受像器間
のX線ビーム内に配置する。
照射が自動露出制御でだけ可能な場合は,X線ビームの適度な減弱と線質硬化のために患者の代わりと
して減弱ファントムを使用する。
被試験装置のどの項目においても,測定の配置は最初の不変性試験で使用したものと±1 %以内で一致
しなければならない。同じ照射野寸法を使用する。
最初の不変性試験で設定する少なくとも2点以上の管電圧は,そのX線装置を使用する撮影手法の代表
値を選択する。以降の不変性試験では最初の不変性試験と同一の設定を行う。
5.5.3.1
マニュアル制御試験 X線装置は,最初の不変性試験で使用したX線条件と同一設定に手動で設
定して使用する。
照射されたフィルムを4.4で規定の手順に従って現像処理する。
光学的濃度はX線像上にX線を吸収するマーカで識別した規定の点で測定する(付図1参照)。
必要なら濃度の測定値は,フィルムの固有差および処理条件の変化に対応するために4.4で規定の手順
に従って調整する。
5.5.3.2
自動露出制御試験 X線装置は,自動制御システムを使用して,かつ,最初の不変性試験で使用
したものと同一の管電圧の設定及びその他適切な設定,例えば濃度制御を行って作動させる。
照射されたフィルムを,4.4で規定の手順に従って現像処理する。
光学的濃度は,X線像上にX線を吸収するマーカで識別した規定の点で測定する(付図1参照)。
必要なら濃度の測定値は,フィルムの固有差及び処理条件の変化に対応するために4.4で規定の手順に
従って調整する。
5.5.4
データの評価 X線像を検査して,最初の不変性試験で作成したものと比較する。この検査でX
線像全域の光学的濃度分布の全体的な変化が分かる。
X線像上のX線マーカ像で識別してある規定の点と参照点で測定した光学的濃度の差を,最初の不変性
試験のものと比較して差を確定する。X線像の目視検査で顕著な光学的濃度変化が生じた場合は,その点
について追加測定を行い光学的濃度の差を確定する。
5.5.5
適用基準 光学的濃度差が基礎値の±0.1以内であることが望ましい。
5.5.6
取るべき処置 被試験システムが基準を満たさない場合,附属書Cで参照された指針に従うこと
が望ましい。
5.5.7
光学的濃度変化の不変性試験の頻度 試験は製造業者から提供された取扱説明書に従って実施し
なければならない。試験頻度に関する情報がない場合は,不変性試験を少なくとも3か月ごとに実施しな
ければならない。
14
Z 4752-2-11:2005 (IEC 61223-2-11:1999)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
6. 適合に関する報告 試験報告書の表題は,次のようにしなければならない。
報告書
直接撮影用X線装置の不変性試験
(JIS Z 4752-2-11 : 2005)
この規格との適合性を述べる場合は,次のようにする。
直接撮影用X線装置(形名)はJIS Z 4752-2-11 : 2005に適合する。
15
Z 4752-2-11:2005 (IEC 61223-2-11:1999)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
単位 mm
L
R
Polystyrene
5
480
360
1
2
IEC 1099/99
ポリスチレン
①放射線吸収体によるワイヤマーカ
②放射線吸収体による文字
付図 1 フィルムマーカ試験器具(例)(附属書D.6参照)
16
Z 4752-2-11:2005 (IEC 61223-2-11:1999)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
単位 mm
L
R
0,1 h
0,05 h
h
1
2
IEC 1100/99
①放射線吸収体によるワイヤマーカ
②放射線吸収体による文字
付図 2 垂直度試験器具(例)(附属書D.7参照)
17
Z 4752-2-11:2005 (IEC 61223-2-11:1999)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
単位 mm
L
R
Polystyrene
5
480
360
1
2
IEC 1101/99
ポリスチレン
①放射線吸収体によるワイヤマーカ
②放射線吸収体による文字
付図 3 アライメント試験器具(例)(附属書D.8参照)
18
Z 4752-2-11:2005 (IEC 61223-2-11:1999)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
A
B
IEC 1102/99
付図 4 高コントラスト試験器具(例)(附属書D.9参照)
19
Z 4752-2-11:2005 (IEC 61223-2-11:1999)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
1
3
6
7
8
9
10
11
1
2
3
4
5
8
9
10
11
IEC 1104/99
IEC 1103/99
付図5a 付図5b
付図5a,5b オーバテーブルX線管形装置の配置
① X線源装置
② 減弱ファントム
③ 垂直度試験器具
④ アライメント試験器具
⑤ カセッテQ
⑥ アライメント試験器具
⑦ 減弱ファントム
⑧ 患者支持器
⑨ カセッテP
⑩ X線受像器
⑪ 受像面
付図 5 幾何学的条件を試験するための配置
20
Z 4752-2-11:2005 (IEC 61223-2-11:1999)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
1
2
3
4
5
6
7
8
IEC 1105/99
付図5c アンダーテーブルX線管形装置の配置
① 受像面
② カセッテP
③ X線受像器
④ カセッテQ
⑤ アライメント試験器具
⑥ 減弱ファントム
⑦ 患者支持器
⑧ X線源装置
付図 5 幾何学的条件を試験するための配置(続き)
21
Z 4752-2-11:2005 (IEC 61223-2-11:1999)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
a1
b2
b1
a2
1
2
c1
1
3
d1
d2
c2
A
B
IEC 1106/99
① X線照射野
② 光照射野
③ 受像面
付図 6 幾何学的な一致
22
Z 4752-2-11:2005 (IEC 61223-2-11:1999)
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附属書A(規定) 用語−用語の索引
JIS Z 4005 医用放射線用語
IEC 60788 : 1984 Medical Radiology−Terminology
rm-..-..
国際単位系SIにおける単位名
Name of unit International System SI
rm-..-..*
定義のない派生語
Derived term without definition
rm-..-..+
定義のない用語
Term without definition
rm-..-..-
以前の単位名
Name of earlier unit
rm-..-...
短縮語
Shortened term
rm-..-..s
IEC 61223-1の3.
Clause 3 of IEC 61223-1
AG-3…
IEC 61223-2シリーズの3.
Clause 3 of IEC 61223-2-XY
XY-3…
一次放射線
PRIMARY RADIATION
rm-11-06
受入試験
ACCEPTANCE TEST
AG-3.2.4
運動グリッド
MOVING GIRD
rm-32-15
X線
X-RADIATION
rm-11-01-
X線管
X-RAY TUBE
rm-22-03
[X線]管装置
X-RAY TUBE ASSEMBLY
rm-22-01
[X線]管電圧
X-RAY TUBE VOLTAGE
rm-36-02
[X線]管電流
X-RAY TUBE CURRENT
rm-36-07
X線[管負荷]条件
LOADING FACTOR
rm-36-01
X線源装置
X-RAY SOURCE ASSEMBLY
rm-20-05+
[X線]高電圧装置
HIGH-VOLTAGE GENERATOR
rm-21-01
X線受像器
X-RAY IMAGE RECEPTOR
rm-32-29
X線スペクトル
X-RAY SPECTRUM
rm-13-34+
X線像
RADIOGRAM
rm-32-02
X線装置
X-RAY EQUIPMENT
rm-20-20
X線ビーム
X-RAY BEAM
rm-37-05+
カセッテチェンジャ
CASSETTE CANGER
rm-31-06
患者
PATIENT
rm-62-03
患者支持器
PATIENT SUPPORT
rm-30-02
[患者]皮膚面
PATIENT SURFACE
rm-37-18
管電流時間積
CURRENT TIME PRODUCT
rm-36-13
基準方向
REFERENCE DIRECTION
rm-37-02
基礎値
BASELINE VALUE
AG-3.2.7
規定の/規定した
Specific
rm-74-01
空気カーマ
AIR KERMA
rm-13-11
減弱
ATTENUATION
rm-12-08
現状試験
STATUS TEST
AG-3.2.5
撮影用カセッテ
RADIOGRAPHIC CASSETTE
rm-35-14
撮影用フィルム
[散乱線除去]グリッド
RADIOGRAPHIC FILM
ANTI-SCATTER GRID
Rm-3232
rm-32-06
散乱放射線
SCATTERED RADIATION
rm-11-13
試験器具
TEST DEVICE
rm-71-04
指定の/指定した
Specified
rm-74-02
自動制御システム
AUTOMATIC CONTROL SYSTEM
rm-36-45
自動露出制御
AUTOMATIC EXPOSURE CONTROL (AEC)
rm-36-46
シャウカステン
FILM ILLUMINATOR
2-3.2.1
受像器面
IMAGE RECEPTOR PLANE
rm-37-15
23
Z 4752-2-11:2005 (IEC 61223-2-11:1999)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
受像面
IMAGE RECEPTION AREA
rm-37-16
照射
IRRADIATION
rm-12-09
使用者
USER
rm-85-01
照射時間
IRRADIATION TIME
rm-36-11
照射野限定器
BEAM LIMITING DEVICE
rm-37-28
照射野限定システム
BEAM LIMITING SYSTEM
rm-37-27
焦点
FOCAL SPOT
rm-20-13s
焦点受像器間距離
FOCAL SPOT TO IMAGE RECEPTOR DISTANCE
rm-37-13
スポットフィルム装置
SPOTFILM DEVICE
rm-31-05
製造業者
MANUFACTURER
rm-85-03-
設定基準
ESTABLISHED CRITERIA
AG-3.2.8
増感紙
INTENSIFYING SCREEN
rm-32-38
操作者
OPERATOR
rm-85-02
総ろ過
TOTAL FILTRATION
rm-13-48
組織等価物質
TISSUE EQUIVALENT MATERIAL
rm-35-16
ターゲット
TARGET
rm-20-08
直接[X線]撮影[法]
DIRECT RADIOGRAPHY
rm-41-07
電離箱
IONIZATION CHAMBER
rm-51-03
取扱説明書/使用説明書
INSTRUCTIONS FOR USE
rm-82-02
入射表面
ENTRANCE SURFACE
rm-37-17
入射面
ENTRANCE PLANE
rm-32-42
光照射野
LIGHT FIELD
rm-37-09
光照射野表示器
LIGHT FIELD INDICATOR
rm-37-31
品質保証計画
QUALITY ASSURANCE PROGRAMME
AG-3.2.2
ファントム
PHANTOM
rm-54-01
フィルム現像機
FILM PROCESSOR
1-3.2.1
負荷時間
LOADING TIME
rm-36-10
付加フィルタ
ADDED FILTER
rm-35-02
附属品
ACCESSORY
rm-83-06
附属文書
ACCOMPANYING DOCUMENTS
rm-82-01
不変性試験
CONSTANCY TEST
AG-3.2.6
ベース込みかぶり濃度
FILM BASE PLUS FOG DENSITY
1-3.2.2
放射線
RADIATION
rm-11-01
放射線検出器
RADIATION DETECTOR
rm-51-01
放射線(X線)照射野
RADIATION FIELD
rm-37-07
放射線設備
RADIOLOGICAL INSTALLATION
rm-20-24
放射線測定器
RADIATION METER
rm-50-01
放射線(X線)ビーム
RADIATION BEAM
rm-37-05
放射線(X線)ビーム軸
RADIATION BEAM AXIS
rm-37-06
陽極
ANODE
rm-22-06
ろ過
FILTRATION
rm-12-11
24
Z 4752-2-11:2005 (IEC 61223-2-11:1999)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書B(参考) 標準的な試験報告書の様式例
この附属書Bは,本文に関連した事項を補足するもので,規定の一部ではない。
JIS Z 4752-2-11 : 2005による直接撮影用X線装置の不変性試験報告書
識別
試験者名
試験の履歴
実 施 日
暗室の安全光の前回の試験
年 月 日
フィルム現像機の前回の試験日
年 月 日
最初の不変性試験の実施日
年 月 日
前回の不変性試験日
年 月 日
試験装置とサブシステム
形 名
試験装置
X線源装置
X線高電圧装置
X線管装置
照射野限定器
構造品及び附属品
付加フィルタ
患者支持器
電離箱(自動制御システム)
散乱線除去グリッド
撮影用フィルム
撮影用フィルム:乳剤番号
撮影用フィルム:使用開始日
年 月 日
撮影用カセッテ
増感紙
暗室 室の名前,番号など
フィルム現像機
試験装置
形 名
減弱ファントム
フィルムマーカ試験器具
垂直度試験器具
アライメント試験器具
高コントラスト試験器具
放射線測定器
濃度計
鉛板
試験の配置
焦点と放射線検出器間の距離
cm
照射野限定器の位置
以下の位置
25
Z 4752-2-11:2005 (IEC 61223-2-11:1999)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
試験者名
・撮影用カセッテ
・放射線測定器
・散乱線除去グリッド
・垂直度試験器具
試験条件
選択したX線管装置
選択した焦点
X線源装置の総ろ過
設定した光照射野
設定したX線照射野
選択した管電圧
選択/測定した管電流
自動制御システムの測定領域
自動制御システムの設定
マニュアルで選択した照射時間
備考 X線条件のマニュアル設定は,目盛の範囲の一方向から,かつ,同じ方向から近づけることが望ましい。
試験結果
マニュアル制御での試験結果
放射線出力の値(放射線測定器)
放射線入力の値
・光学的濃度
・放射線測定器
幾何学的特性
・焦点受像器間距離
・X線照射野エッジのアライメント
光照射野とX線照射野の中心の
一致
高コントラスト解像度
・X線管軸に対し,水平方向の最大空
間周波数
・X線管軸に対し,垂直方向の最大空
間周波数
X線像の光学的濃度の変化
・光学的濃度差
自動露出制御での試験結果
放射線出力の値(放射線測定器)
放射線入力の値
・光学的濃度
・放射線測定器
26
Z 4752-2-11:2005 (IEC 61223-2-11:1999)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書C(参考) 取るべき処置に関する指針
この附属書Cは,本体に関連した事項を補足するもので,規定の一部ではない。
C.1 試験結果が,規定の要求事項又は設定基準を満たさない場合は,次の処置を始める前に,試験器具の
性能を点検し,試験を繰り返して結果を確認すべきである。
C.2 繰り返された試験結果によって,被試験装置が指定された要求事項を又は設定基準を満たしていない
場合は,次の一つ以上の処置をとればよい。
a) 被試験装置の品質保証計画に指示されたとおりに処置を始める。
b) 品質保証計画の管理責任者に通知する。
c) 被試験装置の日常の管理責任者に通知する。
C.3 試験結果が,そのX線装置の規定の要求事項又は設定基準をぎりぎり満たしていない場合,例えば,
X線装置がまだ臨床上検査に使用できる場合は,次の処置を取る。
a) 次の不変性試験の結果を待ち,その間に臨床画像の画質を注意して観察する。
b) 不変性試験の頻度を増やす。
c) 不変性試験が不合格であることを,次の定期修理実施時での要注意事項として記録する。
C.4 X線装置が不変性試験の設定基準を満たさなかった履歴がある場合は,C.2のb) 及びc) に記載され
た管理責任者は,次の項目を考慮する。
a) 現状試験の実施
b) 適用する基準の緩和
c) X線の使用範囲についての被試験装置の使用制限
d) 修理資格者による被試験装置の臨時修理とオーバホール
e) 取り替えを必要とする被試験装置のリストにその装置を載せる。
C.5 試験結果が,規定の要求事項又は設定基準を全く満たさない場合は,次の処置を取る。
a) 現状試験を実施し,その結果をC.2のb) 及びc) に記載された管理責任者に通知する,
b) 装置の修理の範囲を検討する。
− どこまでが適切か。
− すぐ修理すべきか。
c) 次に示す処置を検討する。
− X線装置の臨床使用を今後停止するか否か。
− C.4に従い処置するか否か。
C.6 使用者によって決定されるその他の処置の決定
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Z 4752-2-11:2005 (IEC 61223-2-11:1999)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書D(規定) ファントム及び試験器具
D.1 一般 X線装置の性能の不変性を確認するため,ファントム及び試験器具が必要である。これらは,
次の二つの目的を満たすものである。
− X線ビームの減弱と線質硬化とを考慮し患者を模擬するため。
− 詳細に規定した試験用の構成要素を含むことによって,画像の幾何学情報及び画質に関する情報を提
供するため。
本体5. で規定の性能試験に関しては,一つのファントム及び四つの試験器具が必要である。これらの主
要な特性を,次に示す。
ファントムと試験器具はそれぞれ個々に製作及び使用してもよいが,より適切で便利なように,これら
の幾つか又はすべての特性を統合して一つの試験器具にしてもよい。
D.2 減弱ファントム 減弱ファントムとして,次に記された器具A1,A2又はA3のいずれを採用しても
よい。減弱ファントムA1をできるだけ日常的に使用し,特に臨床に則した透過一次X線スペクトル,及
び臨床と同等な一次X線による散乱線の存在が必要な不変性試験を行うときに強く推奨する。しかし,減
弱ファントムA1はある試験では許容できないほどの大きな寸法で大きな質量の試験体となる。減弱ファ
ントムA2の使用は,減弱ファントムA1の使用が実用的でなく,透過一次放射線のスペクトル分布は重要
であるが,一次X線による散乱線の不足が不変性試験の性能に悪影響を及ぼさないときに推奨する。減弱
ファントムA3の使用は,減弱ファントムA1の使用が極めて困難で,透過一次X線の臨床に則したスペ
クトル分布,及び一次X線による散乱線の存在が重要ではない不変性試験に限って推奨する。
減弱ファントムA1,A2及びA3の材質及び使用方法に関して限定した推奨はしない。いかなる材料を
使用してもよいが,材料の選択によって発生する特性の変化には,注意しなければならない。
D.3 減弱ファントムA1 減弱ファントムA1は,X線ビームの適度な減弱と線質硬化を与えることで,患
者の代わりを目的としている。減弱ファントムA1の長さと幅は,X線ビーム内に置かれたときの焦点か
らの距離に依存する。減弱ファントムA1は,焦点から受像面へのファントムエッジの投影像が,不変性
試験で用いられる最大の受像面(例えば撮影用カセッテ35 cm×43 cm)の公称寸法の15 %以上外側にな
るような大きさでなければならない。
2値以上の管電圧で不変性試験を実施するときは,減弱ファントムA1は2枚以上で構成する。
材料,厚さ及び減弱ファントムA1を使用する条件の選定は,臨床上で用いる放射線学的手順を実行可
能な限り模擬することが望ましい。ファントムは,入射X線を患者と同程度に減弱し,線質硬化させ,散
乱するように組織等価物質[例えば,水,ポリメチルメタクリレート (PMMA),ポリテトラフルオロエチ
レン (PTFE) 又は骨の代用としてのアルミニウム]で作られ,X線受像器にできる限り近づけて配置しな
ければならない。
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Z 4752-2-11:2005 (IEC 61223-2-11:1999)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
D.4 減弱ファントムA2 減弱ファントムA2は,理想的には組織等価物質で作られ,減弱ファントムA1
と同じ目的をもつが,光照射野表示器に取り付けることを意図しているため面積が小さく軽くできる。透
過一次X線スペクトルの分布は減弱ファントムA1のスペクトル分布と等しいが,X線受像器に到達する
散乱X線の総量は減弱ファントムA2とX線受像器間の距離によって大幅に減少する。しかし,減弱ファ
ントムA2を使用することで,重金属で作られている減弱ファントムA3(後述)に関連する多くの問題が
避けられる。アンダーテーブルX線管形装置を検査するときは,X線源装置に対して減弱ファントムA2
と放射線検出器とを適切に配置することが困難であるため付加的な問題が発生する可能性もある。
D.5 減弱ファントムA3 減弱ファントムA3は,重金属物質(組織よりもかなり原子番号が大きい,例え
ば,銅,鉛)で作られ,減弱ファントムAで必要な厚さが薄くなりファントムの大きさが減少する。
しかし,これら重金属物質によって発生する散乱X線の量は組織等価物質による量よりかなり少ない。
さらに,減弱ファントムA3の等価厚は,減弱又はX線ビームの線質硬化のいずれかで組織等価物質の
ファントムと同じに合わせることは可能でも両方同時にはできない。その結果,X線量,照射時間及び光
学的濃度の値は,通常の臨床作業での値からかなり異なる可能性がある。管電圧変化の結果として測定さ
れる値の幾つかは,その変動が装置の他のパラメータ値が変化して生じる変動よりかなり大きく拡大され
てしまう。
散乱X線の発生は,多くの場合には,比較的重要ではない。それは受像面へ入射する散乱X線の影響を
受ける構成要素の性能の変化が通常は無視できるためである。よって,不変性試験用ファントムは,実用
性面から適切なファントムを選択してもよい。
D.6 フィルムマーカ試験器具(付図1) フィルムマーカ試験器具は,光学的濃度を測定しなければなら
ないX線像内の規定の測定点を明確にするために使用する。
フィルムマーカ試験器具は,薄いX線半透過性の板で,光学的濃度の差を比較する点を示すための放射
線不透過性ワイヤでできた少なくとも二つの輪をもつ。
マーカは,フィルムマーカ試験器具の方向がX線像上で確実に確認できる方法で配列されていなければ
ならない。
フィルムマーカ試験器具は,二つの規定のX線照射野サイズ(例えば,15 cm×20 cmと30 cm×40 cm)
で不変性試験を実施できることが望ましい。
フィルムマーカ試験器具の入射面には,光照射野の中心に置けるように,及び光照射野を不変性試験で
選択した寸法に制限できるように表示されていなければならない。
D.7 垂直度試験器具(付図2) 垂直度試験器具は,受像器面へのX線ビーム軸の位置を確認するために
用いる。
試験器具は,少なくとも200 mmの長さの中空で垂直な側面をもつ構造体(例えば,円筒)からなる。
その上底と下底とを2枚のX線半透過性で透明な物質(例えば,ポリカーボネイト,アクリル)の薄い平
行な板で構成する。そして直径約1 mmの放射線不透過性ワイヤマーカを両方の面に,マーカの中心が両
方の面に垂直な同一線上にくるように取り付ける。代表的なマーカは,次からなる。
− 上底に,長さ約15 mmの十字線
− 下底に,上底と下底間距離の5 %と10 %の内径をもつ二つの同一円心上の輪
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Z 4752-2-11:2005 (IEC 61223-2-11:1999)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
D.8 アライメント試験器具(付図3) アライメント試験器具は,垂直度以外の幾何学的特性を試験する
ために用いる。
アライメント試験器具は,X線像にて光照射野のエッジと中心及びアライメント試験器具の方向が明確
に確認できるように,垂直度試験器具で使用されたのと同様の放射線不透過性ワイヤマーカをもつX線半
透過性の薄くて堅い板からなる。
アライメント試験器具は,二つの規定のX線照射野サイズ(例えば,15 cm×20 cmと30 cm×40 cm)
で不変性試験を実施できることが望ましい。入射面には,アライメント試験器具を光照射野の中心に適切
に置けて光照射野を不変性試験で選択した寸法に制限できる表示がなければならない。
D.9 高コントラスト試験器具(付図4) 高コントラスト試験器具は,高コントラスト解像度によってX
線装置の性能の不変性を試験するものである。
高コントラスト試験器具は,互いに直角な2方向の周期的なパターンをもつことが望ましい。そのパタ
ーンは原子番号の大きい物質の薄いはく(箔)(例えば,0.05 mmの鉛)から切り出した線対で構成されて
いる。周期的なパターンは,方形波応答で,連続的又は少なくとも3本を一組として隣り合った組の空間
周波数の増加が20 %を超えない線対群で,少なくとも0.5〜10 LP/mmの空間周波数の範囲を備えることが
望ましい。
線パターンは,最大2 mm厚のプラスチック製の支持板(例えば,PMMA)に固定するとよい。線対は,
少なくとも二つの直交する方向をもつとよい。全体のパターンは,70 mm×70 mmの範囲を超えないこと
が望ましい。器具は,試験の目的に応じて光照射野を中心に合わせたり,制限できる表示を外面にもたな
ければならない。
線パターンはスペーサに取り付けることが望ましい。パターンは,スペーサによってスペーサを置いた
表面と平行,かつ,200 mmの距離に保持される。この方法で,配置は臨床条件と関連して,X線管の焦
点に関係したいかなる変化も試験できる。