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(1)
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 1
3 用語及び定義 ··················································································································· 2
4 標準線源のトレーサビリティ ······························································································ 3
5 標準線源の仕様 ················································································································ 3
5.1 一般 ···························································································································· 3
5.2 クラス1標準線源 ·········································································································· 4
5.3 クラス2標準線源 ·········································································································· 7
5.4 実用標準線源 ················································································································ 8
6 仲介標準測定器 ················································································································ 8
6.1 α線源用及びβ線源用仲介標準測定器 ················································································ 8
6.2 X・γ線源用仲介標準測定器 ····························································································· 8
6.3 校正 ···························································································································· 9
附属書A(参考)0.15 MeV以下のエネルギーの電子及び
1.5 MeV以下のエネルギーのX・γ線を放出する標準線源に関する注意点 ································· 10
附属書JA(参考)JISと対応国際規格との対比表 ······································································ 12
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まえがき
この規格は,工業標準化法第14条によって準用する第12条第1項の規定に基づき,一般社団法人日本
電気計測器工業会(JEMIMA)及び一般財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工
業規格を改正すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本工
業規格である。
これによって,JIS Z 4334:2005は改正され,この規格に置き換えられた。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
日本工業規格 JIS
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放射性表面汚染モニタ校正用標準線源−
α線,β線及びX・γ線放出核種
Reference sources-Calibration of surface contamination monitors-
Alpha-, beta- and photon emitters
序文
この規格は,2016年に第3版として発行されたISO 8769を基に作成した日本工業規格であるが,我が
国の使用状況及びその後の技術進歩に伴い,技術的内容を変更して作成した日本工業規格である。
なお,この規格で点線の下線を施してある箇所は,対応国際規格を変更している事項である。変更の一
覧表にその説明を付けて,附属書JAに示す。
1
適用範囲
この規格は,放射性表面汚染モニタ(以下,表面汚染モニタという。)の校正に用いる,国家計量標準へ
のトレーサビリティが確保された放射性表面汚染モニタ校正用標準線源(以下,標準線源という。)につい
て規定する。この規格は,表面汚染モニタの校正に用いる基準放射線についても規定する。校正に用いる
基準放射線は,国家計量標準へトレーサビリティが明確な表面放出率について校正された面線源から放出
されるα線,β線,及び1.5 MeV以下のX・γ線に適用する。ただし,表面汚染モニタの校正のための標
準線源の使用方法については,規定しない。
注記1 表面汚染モニタの校正に関する規格には,IEC 60325,IEC 62363などがある[1][2]。
注記2 この規格が定めるX・γ線源は,フィルタを含むため,特定の放射性核種ではなく,特定の
エネルギー範囲のX・γ線の標準線源とみなされる。例えば,この規格が規定するフィルタ
をもつ241Am γ線源は,放射性壊変に伴い放出されるα線及び低エネルギー特性XL線を線源
表面から放出しない。このような241Am γ線源は,平均エネルギー約60 keVのγ線を放出す
る線源として設計されている。
注記3 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
ISO 8769:2016,Reference sources−Calibration of surface contamination monitors−Alpha-,
beta-and photon emitters(MOD)
なお,対応の程度を表す記号“MOD”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“修正している”
ことを示す。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS Q 17025 試験所及び校正機関の能力に関する一般要求事項
2
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注記 対応国際規格:ISO/IEC 17025,General requirements for the competence of testing and calibration
laboratories
JIS Z 4001 原子力用語
JIS Z 8103 計測用語
3
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS Z 4001及びJIS Z 8103によるほか,次による。
3.1
表面放出率(surface emission rate of a source)
線源面から単位時間当たりに放出される,あるエネルギー以上の特定の粒子放射線又はX・γ線の数。
3.2
線源面(face of a source)
線源の放射能面から鉛直前面方向の線源最上面(図1参照)。
1
フィルタ
2
バッキング
3
線源面
4
放射能面
図1−標準線源の断面図
3.3
飽和層厚さ(saturation layer thickness)
放射性物質が均一に分布する線源において,特定の粒子の放射線の最大飛程と等しい媒体の厚さ。
3.4
機器効率(instrument efficiency)
線源に対して,決められた幾何学的条件で測定したときの測定器の正味計数率(バックグラウンドを差
し引いた計数率。)と線源の表面放出率との比。
注記 機器効率は,線源から放出される放射線のエネルギー,線源面の面積,検出器入射窓面積など
に依存する。
3.5
自己吸収(self-absorption)
線源の材質による放射線の吸収。
3.6
不確かさ(uncertainty)
特に明記しない限り標準不確かさ(包含係数k=1)。
3
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注記 不確かさの取扱いは,ISO/IEC Guide 98-3に従う。
3.7
均一性(uniformity)
線源面の全面にわたって表面放出率のばらつきの程度を表す指標。
4
標準線源のトレーサビリティ
表面汚染モニタの日常の校正には,通常,実用標準線源が用いられる。実用標準線源の国家計量標準へ
のトレーサビリティは,標準線源及び仲介標準測定器による,次に示す校正体系によって確保することが
望ましい。
標準線源は,次の2種類とする。
・ クラス1標準線源 国家計量標準機関によって,放射能及び表面放出率について校正された標準線源。
・ クラス2標準線源 JIS Q 17025によって認定された校正機関において,校正する線源と同じ放射性核
種及び同じ構造のクラス1標準線源を用いて,決められた線源と検出器との幾何学的条件によって校
正された仲介標準測定器によって,放射能及び表面放出率を校正した標準線源。
クラス1標準線源は,国家計量標準機関による校正を受けなければならない。海外の国家計量標準機関
で発行された量,範囲及び測定の不確かさを含む校正証明書も有効である[3]。
クラス1標準線源の放射能及び表面放出率は,例えば,窓なしガスフロー比例計数管,絶対測定された
線源を用いて校正した測定器などを用いて校正する[4]〜[7]。
表面汚染モニタの形式検査及び校正を行う機関は,適切なクラス1又はクラス2の標準線源を利用でき
ることが望ましい。実用標準線源は,作業現場で日常的に使用する表面汚染モニタを校正するためのもの
であり,表面汚染モニタの動作の確認に用いるチェック線源とは異なる。
実用標準線源の供給機関は,クラス1又はクラス2の標準線源との比較によって校正した仲介標準測定
器を用いて,実用標準線源の表面放出率を校正する。実用標準線源がジグを用いるか又は特定の幾何学的
条件下で用いられる場合,仲介標準測定器は,実用標準線源が用いられるのと同じ測定条件及び幾何学的
条件で校正しなければならない。ただし,実用標準線源は,通常の方法で校正できるようにジグから取外
し可能でなければならない。校正する表面汚染モニタの数がそれほど多くない場合,又は高い精度が要求
される場合には,クラス1又はクラス2の標準線源を実用標準線源として用いてもよい。ただし,このよ
うな場合の再校正の頻度は,実用標準線源を用いる場合と同じ頻度でなければならない。
5
標準線源の仕様
5.1
一般
標準線源は,一般的に次の事項を満足する。
a) 標準線源は,放射性核種を片面に剝離しないように吸着又は結合させた導電性バッキング材からなる。
バッキング材は,β線が線源の後方に放出されない十分な厚さとする。
b) 標準線源の放射能層は,放射性核種が均一に分布し,かつ,その厚さは飽和層厚さを超えてはならな
い。X・γ線源は,表1に規定するフィルタを装備しなければならない。
表面放出率を直接測定するためには,エネルギーしきい値を設定する必要がある。β線測定では,590 eV
のX線エネルギー(55Feの壊変に伴うMnの特性XK線の0.1倍のエネルギー。)に相当するしきい値を設
定しなければならない。α線測定では,計測システムの電気的雑音レベルの少し高いエネルギーにしきい
値を設定することが望ましい。X・γ線の測定は,光電ピーク及び全てのコンプトン連続スペクトルを含む
4
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ようにしきい値を設定しなければならない。
α線放出核種及び低エネルギーβ線放出核種については,自己吸収が無視できない。このことは,スペ
クトルの変化の原因となる。また,窓付きの仲介標準測定器を用いた場合,測定に影響を及ぼすことがあ
る。
標準線源は,使用の目的に合致したものでなければならない。また,放射性不純物核種の影響によって
不正確な結果とならないために,製造業者は,放射性不純物核種の分析を行い,線源核種の放射能の1 %
以上の放射能を含む全ての放射性不純物核種を明らかにし,結果を明記しなければならない。放射性不純
物核種を含む線源は,時間とともに不純物の含有率が変化し,表面放出率に影響を及ぼすことを考慮する。
表1−X・γ線源の特性及びフィルタ
X・γ線の平均エネルギーa)
keV
放射性核種
半減期
日
フィルタ材質b)
フィルタ厚さ
5.9
55Fe
1.00×103
該当なし
16
238Pu
3.20×104
ジルコニウム
0.05 mm
32.5 mg·cm−2
32
129I
5.88×109
アルミニウム
0.3 mm
81 mg·cm−2
60
241Am
1.58×105
ステンレス鋼
0.25 mm
200 mg·cm−2
124
57Co
272
ステンレス鋼
0.25 mm
200 mg·cm−2
660
137Cs
1.10×104
ステンレス鋼
1 mm
800 mg·cm−2
1250
60Co
1.93×103
アルミニウム
0.3 mm
81 mg·cm−2
通常,60Coは,角度相関のある2本のγ線を同時に放出するため,60Coによる校正結果を
異なるエネルギー又はその他の放射性核種に移行するときは,注意しなければならない。
注記 これらは,特定のエネルギーのX・γ線源であり,特定の放射性核種としての線源では
ない。
注a) X・γ線の平均エネルギーは,エネルギーEiで線源から放出されるX・γ線の数をniと
した場合,Σ(ni×Ei)/Σniと等しい。
b) ステンレス鋼とは,Fe 72 %,Cr 18 %,Ni 10 %の組成のものである。
5.2
クラス1標準線源
5.2.1
一般要求事項
クラス1標準線源は,放射性核種を片面に剝離しないように吸着又は結合させた導電性のバッキング材
からなる平板な線源で,自己吸収を可能な限り小さく,かつ,線源面の全体にわたって導電性が確保され
なければならない。放射能面の面積は,少なくとも104 mm2でなければならず,推奨する寸法は,100 mm
×100 mm,100 mm×150 mm及び150 mm×200 mmである。
クラス1標準線源は,放射性核種が分布する層が実現可能な範囲で,薄い線源(IEC 60325を参照)と
する。しかしながら,α線放出核種及び低エネルギーβ線放出核種については,自己吸収は,無視できな
い。窓なしの比例計数管が正しく動作するように,線源は,導電性を保持することが必要である。バッキ
ング材の厚さは,後方散乱線の寄与を最小にするものであることが望ましい。一方で線源の後方からのα
線及びβ線の放出を遮蔽する必要があり,推奨するバッキング材は,3 mm厚のアルミニウムとする。こ
れは,4.6 mm厚を必要とする106Ru/106Rh線源を除き,線源の後方からの粒子放射線の放出を遮蔽するのに
5
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十分な厚さである。バッキング材の厚さは,校正証明書に記載された値に対して±10 %でなければならな
い。バッキング材は,放射能面の全体にわたって後方散乱線の寄与が均一になることが望ましい。そのた
め,バッキング材は,線源の放射能面の周りに,少なくとも10 mmまで広がっているものが望ましい。
X・γ線源は,表1に示すフィルタを装備しなければならない。フィルタは,通常,線源と一体のもので
あり,取外しできないことが望ましい。フィルタの使用目的は,附属書Aに記載する。フィルタの領域は,
線源の放射能面よりも少なくとも10 mmまで広がっているものが望ましい。フィルタの厚さは,表1に示
す値に対して±10 %でなければならない。
標準線源には,次の事項を記載した校正証明書を添付しなければならない。
a) 放射性核種
注記 半減期,その他の核データの値[8]。
b) 線源番号
c) 表面放出率及びその不確かさ
d) 放射能及びその不確かさ
e) 放射性不純物核種
f)
基準日:c)及びd)と共通
g) 放射能面:位置及び大きさ
h) バッキングなどの線源基板の材質,厚さ,密度及び寸法
i)
フィルタがある場合,その材質,厚さ,密度及び寸法
j)
均一性及びその不確かさ(例えば,分割された各区画の位置及び相対表面放出率の表)
k) 標準線源のクラス
製造業者は,放射性核種が分布する放射能層の深さなど,有用な情報を校正証明書に記載してもよい。
線源に,放射性核種及び線源番号を表示しなければならない。
5.2.2
放射能及び表面放出率
推奨する大きさのクラス1標準線源は,バックグラウンド,統計的不確かさ及び不感時間の影響を最適
化するため,約2 000 s−1〜10 000 s−1の表面放出率が得られる放射能であることが望ましい。放射能は,
相対不確かさ10 %以下で校正しなければならない。表面放出率の相対不確かさは,次による。
a) α線源
3 %以下
b) 最大エネルギー150 keV以上のβ線源
3 %以下
c) 最大エネルギー150 keV未満のβ線源
5 %以下
d) X・γ線源
10 %以下
クラス1標準線源は,少なくとも4年に1度の頻度で放射能,表面放出率及び均一性に関して再校正す
ることが望ましい。
注記 異なる大きさの検出器を校正する場合,標準線源の放射能は,線源の大きさによって異なる。
例えば,有効面積6.4 cm2の検出器の校正に適切な放射能面密度をもった標準線源は,有効面積
が200 cm2の検出器に対しては放射能面密度が高すぎる。
5.2.3
均一性
標準線源の均一性は,線源全体を区分した各区分の表面放出率の標準偏差を表面放出率の平均値で除し,
その値を1から差し引き,得られた値を百分率で表す。
クラス1標準線源の均一性から,均一性の相対不確かさを減じた値は,90 %以上でなければならない。
単位面積当たりの表面放出率に関する線源の均一性を評価するために,線源は,等しい面積及び形状をも
6
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つ幾つかの部分からなるとみなす。四角形の線源については,各区分の形は,線源の放射能面の形状と同
じでなければならない。
各区分の面積は,10 cm2以下でなければならない。推奨される大きさの標準線源(5.2.1参照)について
は,100 mm×100 mm標準線源の場合,放射能面積を16の正方形の区分に分け,100 mm×150 mm標準線
源の場合,16の長方形の区分に分け,150 mm×200 mm標準線源の場合,36の長方形の区分に分ける。
各区分の表面放出率は,5.2.2及び5.3.2で規定した線源全体の不確かさと同様に,相対不確かさととも
に求めなければならない。各区分の不確かさは,結果的に均一性そのものの不確かさとなる[4]。
均一性は,イメージングプレート,位置有感形測定器システムによる方法又はマスキングプレートを線
源と検出器との間に挿入して測定する方法によって測定できる。マスキングプレートは,適切な大きさの
開口部をもち,十分な遮蔽効果がなければならない。マスキングプレートを用いる方法では,検出器の有
効面積のレスポンスの非均一性による影響を最小限にするため,常に検出器の同じ部分を用いることが望
ましい。その他の方法を用いる場合でも,検出器の有効面積中の検出効率の非均一性による影響を最小限
にすることが望ましい。
検出器の入射窓面積が線源の放射能面積より小さい場合,検出器への入射は,線源の検出器入射窓面積
に当たる部分からの表面放出率となる。そのため,線源の均一性に関する詳細な情報を考慮しなくてもよ
い。
5.2.4
放射性核種
クラス1標準線源は,表1〜表3の放射性核種が望ましい。これらの表に記載する壊変データは,例示
であり,実際に校正及び校正証明書に用いるデータは,[8]がある。
表2及び表3には,“推奨核種”及び“代替可能な核種”のカテゴリがある。推奨核種は,汎用性,適切
な半減期,比放射能及びエネルギー範囲によって選択する。代替可能な核種は,比較的半減期が短い,比
放射能が低い,薄い放射能層では十分な放射能が困難である,校正の妨げとなる放射線の放出を伴う,高
い放射能純度の供給が困難である,などの理由によって,定期的な交換が必要となる場合がある。
表2−α線源
放射性核種
半減期
日
最大エネルギー
keV
備考
推奨核種
241Am
1.58×105
5 544
−
230Th
2.75×107
4 688
−
代替可能な核種
238Pu
3.20×104
5 499
−
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表3−β線源
放射性核種
半減期
日
最大エネルギー
keV
備考
推奨核種
14C
2.08×106
156
大気中のCとの同位体交換のため,製造
方法によっては,頻繁に再校正が必要に
なる可能性がある。
99Tc
7.72×107
294
−
36Cl
1.10×108
710
−
90Sr/90Y
1.05×104 (90Sr)
2.67 (90Y)
546 (90Sr)
2280 (90Y)
90Yからの高エネルギーβ線だけを用い
る場合には,130 mg・cm−2厚のフィルタ
が必要だが,これは,結果的に90Yの顕
著なスペクトル形状の変化を招く。
106Ru/106Rh
372 (106Ru)
0.000 35 (106Rh)
39 (106Ru)
3546 (106Rh)
半減期が比較的短い。
代替可能な核種
147Pm
958
224
半減期が比較的短い。
204Tl
1.38×103
764
放射性壊変の約3 %は電子捕獲によって
壊変し,それに伴う約70 keV〜90 keV
のX線を放出する。
60Co
1.93×103
317
純粋なβ線放出核種ではなく,1.173
MeV及び1.332 MeVのγ線を放出する。
3H
4.50×103
19
大気中のHとの同位体交換のため,製造
方法によっては,より頻繁に再校正が必
要になる可能性がある。
63Ni
3.61×104
67
−
注記1 通常用いられる表面汚染モニタでは,実務的に有効な効率で3H及び63Niを検出することはできない。これ
らの核種に関するモニタリングには,一般的に,特殊な検出器が必要で,これらの核種は,通常の日常校
正には含まれない。
注記2 多くの校正施設は,モニタリング対象として実務上必要なエネルギー範囲のβ線源のセットを用いる。一
般に,この線源のセットは,14C,36Cl及び90Sr/90Yで構成される。
5.3
クラス2標準線源
5.3.1
一般要求事項
クラス2標準線源は,クラス1標準線源の一般要求事項に適合しなければならない。クラス2標準線源
には,クラス1標準線源と同じ事項を表示し,5.2.1に規定する校正証明書を添付しなければならない。
5.3.2
放射能及び表面放出率
クラス2標準線源の表面放出率は,使用者が校正する測定器の種類及び実施する試験の内容によるため,
使用者によって決められるのが望ましい。放射能は,国家計量標準へのトレーサビリティのある方法によ
って,相対不確かさ10 %以下で校正しなければならない。表面放出率は,仲介標準測定器(箇条6を参照)
を用いて校正し,相対不確かさは,次による。
a) α線源
5 %以下
b) 最大ネルギー150 keV以上のβ線源
5 %以下
c) 最大ネルギー150 keV未満のβ線源
10 %以下
d) X・γ線源
15 %以下
クラス2標準線源は,少なくとも4年に1度の頻度で放射能,表面放出率及び均一性に関して再校正す
る(5.2.2の注記を参照)。
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5.3.3
均一性
クラス2標準線源の均一性から,相対不確かさを減じた値は,90 %以上でなければならない。
5.3.4
放射性核種
クラス2標準線源は,5.2.4に規定するクラス1標準線源と同じ放射性核種の線源とする。
5.4
実用標準線源
5.4.1
一般要求事項
実用標準線源に対する詳細な要求事項は,受渡当事者間の協定による。実用標準線源の仕様決定に当た
っては,次の事項について考慮する。
a) 実用標準線源は,表面汚染モニタの日常校正に必要な核種,数量及び形状のものを提供しなければな
らない。
b) 実用標準線源には,基準日における放射能,表面放出率,放射性核種及び線源番号を表示しなければ
ならない。また,実用標準線源の校正時の幾何学的条件に関する詳細な情報を添付しなければならな
い。線源に表示することが困難な場合,線源には,例えば,線源番号のような固有の識別名を表示し,
放射性核種,放射能,表面放出率及び基準日を記載した校正証明書を添付しなければならない。
c) 実用標準線源は,日常の取扱いに耐えられるよう,十分堅牢でなければならない。
d) 特別の要求事項がない限り,実用標準線源は,5.3に規定する標準線源の要求事項を可能な範囲で満足
することが望ましい。
5.4.2
放射能及び表面放出率
実用標準線源の表面放出率は,受渡当事者間の協定によるものであることが望ましい。実用標準線源の
放射能は,製造業者が明示し,国家計量標準へのトレーサビリティが確保されていなければならない。表
面放出率は,同じ構造のクラス1標準線源又はクラス2標準線源を用いて校正した仲介標準測定器を用い
て測定したものでなければならない。実用標準線源の表面放出率は,不確かさとともに示さなければなら
ない。
実用標準線源は,少なくとも2年に1度の頻度で再校正する。
5.4.3
均一性
実用標準線源の均一性は,クラス2標準線源の規定を満足することが望ましい。
5.4.4
放射性核種
実用標準線源の核種は,α線放出核種,β線放出核種又はX・γ線放出核種とし,受渡当事者間の協定に
よる。
6
仲介標準測定器
6.1
α線源用及びβ線源用仲介標準測定器
α線用及びβ線用の仲介標準測定器は,この規格が規定するエネルギー範囲において,35 %以上の機器
効率がなければならない。仲介標準測定器は,100 mm×150 mmの大きさの線源を測定する場合に,線源
の位置が多少ずれても,その影響を無視することができる十分な大きさであることが望ましい。α線放出
核種及びβ線放出核種に関して推奨される仲介標準測定器は,ガス供給制御システムをもつ大面積の入射
窓なしガスフロー比例計数管である。
6.2
X・γ線源用仲介標準測定器
この規格が適用範囲とするX・γ線の全エネルギー範囲を一つの仲介標準測定器の測定範囲とすること
は,一般的に難しい。仲介標準測定器は,使用するエネルギー範囲に対して,次の特性をもつことが望ま
9
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しい。
a) 高い検出効率
b) 検出器表面におけるレスポンスの均一性
c) 安定性
d) 低バックグラウンドノイズ
なお,適切なガスを充塡した大面積比例計数管は,低エネルギーX・γ線の測定に適している。NaI (Tl) な
どのシンチレーション検出器は,高エネルギーX・γ線に適している。
6.3
校正
仲介標準測定器は,使用開始前及び使用期間中においては定期的に校正しなければならない。仲介標準
測定器は,少なくとも年1回の頻度で再校正することが望ましい。ただし,仲介標準測定器を用いて校正
する頻度が非常に少ない場合には,定期的な校正ではなく,仲介標準測定器として使用する都度,使用前
に校正することでもよい。
仲介標準測定器の校正は,使用者の責任で実施しなければならない。β線放出核種の実用標準線源を校
正する場合,その核種のクラス2標準線源を入手できないときは,仲介標準測定器の機器効率のエネルギ
ー特性を内挿法によって求めてもよい。しかしながら,最大エネルギー0.5 MeV未満のβ線放出核種に関
しては,ガスフロー式比例計数管のエネルギーレスポンスが急激な変化を示すため,内挿法は,大きな誤
差を招く可能性がある。このような場合には,適切な核種の標準線源を選択することが望ましい。
10
Z 4334:2019
附属書A
(参考)
0.15 MeV以下のエネルギーの電子及び
1.5 MeV以下のエネルギーのX・γ線を放出する標準線源に関する注意点
A.1 一般事項
電子捕獲及び核異性体転移による放射性壊変は,特性X線及びγ線だけではなく,内部転換電子,オー
ジェ電子など,多種の放射線を放出する。これらの大部分は,弱透過性の低エネルギー放射線のため,表
面放出率と放射能との関係は,線源構造,汚染表面の状況などによって大きく異なる。また,放出される
電子線のスペクトル形状は,エネルギー損失によって大きく変化する。このことは,ある検出器の校正定
数を入射窓の異なるほかの検出器に移行する場合に,このような線源を用いた移行が難しいことを示して
いる。スペクトル変化の影響は,無視しないことが望ましい。
X・γ線放出線源のフィルタは,線源面の垂直方向に放出されるX・γ線の数の方が,斜めに放出される
数よりも大きくなるため,ある程度の角度コリメーションを引き起こす。すなわち,標準線源からの放出
されるX・γ線の角度分布は,実際の汚染物表面からの放出とは異なることがある。同様の理由で,汚染
表面から放出される放射線は,非等方的に分布することがある。
α線,β線,電子線などのX・γ線以外の不要な放射線をある程度除去するためにフィルタを用いる。こ
のフィルタは,X・γ線も減弱させ,その過程から二次電子が発生することに注意する。このような二次電
子は,通常,エネルギーが低く,放出割合も低いが,その存在の有無を考慮することが望ましい。
X・γ線のほかに,多数の電子を放出する標準線源は,次の事項に注意する。
a) 表面放出率の決定には,電子及びX・γ線の両方の測定が必要である。
b) 低エネルギー電子の表面放出率及びエネルギー分布は,線源構造に依存する。
c) 電子及びX・γ線の両方の放射線を放出するが,X・γ線だけの表面放出率が校正された標準線源を用
いて,電子及びX・γ線の両方の放射線に感度をもつ表面汚染モニタを校正する場合,その表面汚染
モニタのX・γ線及び電子の両方のレスポンスに関する情報を得ておくことが必要である。
d) 低エネルギー電子を検出する薄い入射窓の表面汚染モニタの校正に,c)に記載した標準線源を用いる
場合,得られた校正定数は,線源構造に起因するエネルギー分布及び線源面と表面汚染モニタの入射
窓との距離に依存する。
X・γ線に対する校正の精度を高めるためには,エネルギーの異なるX・γ線を放出する複数の標準線源
を用いるのが望ましい。
多くの放射性核種が利用されているが,半減期,価格,入手の可能性のほか,単一エネルギーβ線放出
か,単一エネルギーX・γ線放出か,などを考慮すると,利用できる標準線源の種類は,制限される。表1
に記載したX・γ線放出核種は,一般的な表面汚染モニタの校正に適切なX・γ線エネルギーを考慮し,提
供可能な標準線源が選択されている。これらのエネルギー範囲外の校正を実施する場合には,蛍光X線を
用いてもよい[9]〜[12]。55Fe以外のX・γ線放出率標準線源には,フィルタがあることに注意する。55Feは,
低エネルギーオージェ電子を放出することに注意する。低エネルギーオージェ電子は,通常,検出器の入
射窓で完全に吸収されるが,窓なしの検出器の場合には,低エネルギーオージェ電子の影響に注意するこ
とが望ましい。
フィルタの目的は,対象とするX・γ線だけが放出されるように,不要の放射線を除去するためである。
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Z 4334:2019
除去される放射線の例を次に示す。
129I
β線及びその他の低エネルギー放射線
241Am
α線及び特性XL線
57Co
特性XK線,低エネルギーX・γ線及び電子
238Pu
ジルコニウムのK吸収端を超える特性XL線の減弱
137Cs
β線,電子及び特性XK線
60Co
β線
この規格が規定する標準線源を用いて,特定の放射性核種を対象として表面汚染モニタを校正する場合
には,フィルタ効果に関する明確な説明及び実際に用いられているフィルタの詳細について記載のある文
書に基づいて実施することが望ましい。
60Coは,角度相関を伴って2本のγ線を同時に放出するため,校正結果を異なるジオメトリにおける校
正又はその他の放射性核種へ移行する場合には,十分に注意しなければならない。
X・γ線放出線源に関しては,線源周囲の環境が表面放出率に大きな影響を与えることに注意しなければ
ならない。例えば,線源を密度の高い支持台に置いた場合,表面放出率は,後方散乱によって増加する。
参考文献
[1] IEC 60325:2002,Radiation protection instrumentation−Alpha, beta and alpha/beta (beta energy > 60 keV)
contamination meters and monitors
[2] IEC 62363:2008,Radiation protection instrumentation−Portable photon contamination meters and monitors
[3] Comité international des poids et mesures, Mutual recognition of national measurement standards and of
calibration and measurement certificates issued by national metrology.
[4] Nähle O., & Kossert K. Appl. Radiat. Isot. 2012, 70 pp. 2018-2024
[5] Janssen H., & Klein R. Nucl. Instrum. Methods. 1994, A339 pp. 318-321
[6] Janssen H., & Klein R. Nucl. Instrum. Methods. 1996, A369 pp. 552-556
[7] Burgess P.H., & Iles W.J. Radiat. Prot. Dosimetry. 1983, 5 (2) pp. 125-130
[8] DDEP, Decay Data Evaluation Project, http://www.nucleide.org/DDEP̲WG/DDEPdata.htm.
[9] ISO/IEC Guide 98-3,Uncertainty of measurement−Part 3: Guide to the expression of uncertainty in
measurement (GUM:1995)
[10] ISO 4037-1:1996,X and gamma reference radiation for calibrating dosemeters and doserate meters and for
determining their response as a function of photon energy−Part 1: Radiation characteristics and production
methods
[11] ISO 4037-2:1997,X and gamma reference radiation for calibrating dosemeters and doserate meters and for
determining their response as a function of photon energy−Part 2: Dosimetry for radiation protection over
the energy ranges from 8 keV to 1,3 MeV and 4 MeV to 9 MeV
[12] ISO 4037-3:1999,X and gamma reference radiation for calibrating dosemeters and doserate meters and for
determining their response as a function of photon energy−Part 3: Calibration of area and personal
dosemeters and the measurement of their response as a function of energy and angle of incidence
[13] ISO 4037-4:2004,X and gamma reference radiation for calibrating dosemeters and doserate meters and for
determining their response as a function of photon energy−Part 4: Calibration of area and personal
dosemeters in low energy X reference radiation fields
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Z 4334:2019
附属書JA
(参考)
JISと対応国際規格との対比表
JIS Z 4334:2019 放射性表面汚染モニタ校正用標準線源−α線,β線及びX・γ
線放出核種
ISO 8769:2016,Reference sources−Calibration of surface contamination monitors−
Alpha-, beta- and photon emitters
(I)JISの規定
(II)
国際
規格
番号
(III)国際規格の規定
(IV)JISと国際規格との技術的差異の箇条ごと
の評価及びその内容
(V)JISと国際規格との技術的
差異の理由及び今後の対策
箇条番号
及び題名
内容
箇条
番号
内容
箇条ごと
の評価
技術的差異の内容
2 引用規格
5 標準線源
の仕様
5.1 一般
・放射能層の厚さ
5.1
“放射能層の厚さは,少なく
とも飽和層厚さと等しくな
ければならない。”
変更
放射能厚さのISO規格の要求は明
らかな誤りであり,変更した。
ISOに修正を申し入れた。
5.2.1 一般要求事項
・校正証明書
5.2.1
・項目なし。
追加
校正証明書の項目に放射性不純物
核種を追加した。
ISOに追加を申し入れた。
5.2.3 均一性
・線源の均一性
5.2.3
“表面放出率の標準偏差を,
表面放出率の平均値で除し
た値を百分率で表す。”
変更
ISO規格の均一性の記載は,明らか
な誤りであり,変更した。
ISOに修正を申し入れた。
5.2.3 均一性
・表面放出率の均一性
の区分
5.2.3
・規定なし。
追加
大きさが150 mm×200 mmの線源
の均一性評価の区分がISO規格に
は欠落していたため追加した。
ISOに追加を申し入れた。
JISと国際規格との対応の程度の全体評価:ISO 8769:2016,MOD
注記1 箇条ごとの評価欄の用語の意味は,次による。
− 追加 ················ 国際規格にない規定項目又は規定内容を追加している。
− 変更 ················ 国際規格の規定内容を変更している。
注記2 JISと国際規格との対応の程度の全体評価欄の記号の意味は,次による。
− MOD ··············· 国際規格を修正している。
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