2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
Z 4321-1995
放射線測定用タリウム活性化
よう化ナトリウムシンチレータ
Thallium-activated sodium lodide scintillator for radiation detection
1. 適用範囲 この規格は,γ線及びX線の測定に使用する,直径及び高さが127mm (5in) 以下の大きさ
のタリウム活性化よう化ナトリウム結晶を密封容器に入れたシンチレータ[以下,NaI (Tl) シンチレータ
という。]について規定する。
備考1. この規格の引用規格を,次に示す。
JIS B 7507 ノギス
JIS C 0911 小形電気機器の振動試験方法
JIS G 4303 ステンレス鋼棒
JIS H 3100 銅及び銅合金の板及び条
JIS H 3300 銅及び銅合金継目無管
JIS H 4040 アルミニウム及びアルミニウム合金の棒及び線
JIS H 4080 アルミニウム及びアルミニウム合金継目無管
JIS H 4170 高純度アルミニウムはく
JIS Z 4001 原子力用語
2. この規格の中で { } を付けて示してある単位及び数値は,従来単位によるもので,参考と
して併記したものである。
2. 用語の定義 この規格で用いる主な用語の定義は,JIS Z 4001によるほか,次のとおりとする。
(1) シンチレータ 放射線に対して能率のよい蛍光体。蛍光の減衰時間が比較的短く,放射線計測用とし
て適当なものをいう。
(2) 最大蛍光量波長 NaI (Tl) シンチレータ特有の波長分布のうち,蛍光量最大に対応する波長。
(3) 蛍光量温度係数 単位温度変化に対する蛍光量の変化。%/℃で表す。
(4) 全吸収ピーク NaI (Tl) シンチレータ内でγ線と物質との相互作用により波高分布が得られるが,その
中でγ線の全エネルギーが吸収されたことに対応するピーク。このピークを光電ピーク又はフォトピー
クともいう。
(5) 蛍光量減衰時間 NaI (Tl) シンチレータは,放射線によって励起されると,その後蛍光を放出するが,
その時間的変化は,
τ
τ
t
N
−
exp
で表される。ここに,τを減衰時間といい,光量がe1になるまでの時間を
表す。なお,Nは総蛍光量とする。
(6) エネルギー分解能とNaI (Tl) シンチレータの固有分解能 単一エネルギーの放射線の全吸収ピーク
のパルス波高分布は,統計誤差が問題にならない程度まで十分に計数された場合,一般に正規分布に
2
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近い形になる。この波高分布において計数が最大計数の21になる幅を最大計数のパルス波高値で割っ
たもので全吸収ピークの鋭さを表し,これをエネルギー分解能という。これから光電子増倍管などの
測定系によるエネルギー分解能の広がりの影響を除いた残りの分解能をNaI (Tl) シンチレータの固有
分解能という。
(7) 自然計数率 遮へい内においてNaI (Tl) シンチレータ及び光電子増倍管自身に含まれている放射性物
質や,宇宙線などからの放射線による単位時間当たりの計数。
(8) 光学窓 NaI (Tl) シンチレータにおいて,放射線によりシンチレータ内で発生した蛍光をNaI (Tl) シ
ンチレータ外に取り出すための窓(図1参照)。
(9) 入射窓 NaI (Tl) シンチレータ外部から入射する放射線を,シンチレータ内に透過させるために設け
られた気密容器の一部(図1参照)。
(10) 密封容器 タリウム活性化よう化ナトリウム結晶を封入する光学窓と入射窓をもつ気密な容器(図1
参照)。
3. 種類及び等級
3.1
用途,形状,大きさ及びフランジによる種類 NaI (Tl) シンチレータは,用途,形状,大きさ及び
フランジによって,表1のとおり分類する。
表1
種類
記号
用途
形状
大きさ フランジ
備考
A形
A
γ線用
円柱形
小形
A式
原則として直径76.2mm以下のものに使用する。
B形
B
B式
−
C形
C
大形
C式
−
D形
D
D式
取付穴つき
WA形
WA
井戸形
小形
A式
直径44.5mm (43
1in) 及び50.8mm (2in)
WB形
WB
B式
直径44.5mm (43
1in) 及び50.8mm (2im)
WIA形
WIA
A式
直径76.2mm (3in) 井戸寸法I(井戸内径19.1mm)
WIIA形
WIIA
A式
直径76.2mm (3in) 井戸寸法II(井戸内径28.6mm)
WC形
WC
大形
C式
−
X形
X
X線用
平板形
−
−
−
3.2
容器材料及び入射窓材料による種類 NaI (Tl) シンチレータは,容器材料及び入射窓材料によって,
表2のとおり分類する。
表2
種類
記号
アルミニウム
−
ステンレス鋼
S
銅
C
ベリリウム
(入射窓材料)
B
3.3
光学窓材料による種類 NaI (Tl) シンチレータは,光学窓材料により,表3のとおり分類する。
3
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表3
種類
記号
光学ガラス
−
ほうけい酸ガラス
P
石英
Q
3.4
固有分解能による等級 NaI (Tl) シンチレ−夕は,固有分解能により,表4のとおり分類する。
表4
等級
記号
A級
A
B級
−
3.5
自然計数率による種類 NaI (Tl) シンチレータは,自然計数率により,表5のとおり分類する。
表5
種類
記号
一般用
−
低自然計数率
L
4. 形名 形名は,3.の記号及びNaI (Tl) シンチレータの結晶の大きさを表す数字を4項目の組合せで構
成し,その配列及び表し方は次の各項による。
(1) 形名の配列 形名の配列は,次による。
1項
2項
3項
4項
(数字) (文字) (数字) (文字)
(2) 形名の表し方 (1)の各項の内容は,次による。
(a) 1項の数字 NaI (Tl) シンチレータの結晶の直径を6.35mm
in
4
1
を単位とした倍数で表し,その値を
記す。
例 50.8mm (2in) であれば 8
76.2mm (3in) であれば 12
(b) 2項の文字 3.1の記号を記す。
(c) 3項の数字 NaI (Tl) シンチレータの結晶の高さを6.35mm
in
4
1
を単位とした倍数で表し,その値を
記す。
ただし,X形の結晶の場合は,1mmを10とする。
(d) 4項の文字 3.2〜3.4の種類又は等級の記号を列記する。ただし,標準形(1)の場合及び記号が規定さ
れていない種類又は等級については,特に記さないものとする。
なお,列記の順序は,容器材料(X形の場合は入射窓材料),光学窓材料,固有分解能,自然計数
率の順とする。
注(1) 標準形とは,容器材料及び入射窓材料がアルミニウム,光学窓材料が光学ガラス,固有分
解能がB級,自然計数率が一般用の組合せをいう。
例 D形直径127.0mm (5in),高さ127.0mm (5in) で容器に銅を用い,石英の光学窓をもち,分解
能がA級で,低自然計数率用の場合,20 D 20 CQALと表す。
5. 性能
5.1
耐振動性 10.4の方法により試験を行ったとき,器体に損傷があってはならない。
4
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5.2
温度変化に対する耐久性 10.5の方法により試験を行ったとき,器体に損傷があってはならない。
5.3
耐圧性 10.6の方法により試験を行ったとき,器体に損傷があってはならない。
5.4
気密性 10.7の方法により試験を行ったとき,器体に損傷があってはならない。
5.5
エネルギー分解能 エネルギー分解能は,次の各項に適合しなければならない。
(1) γ線用NaI (Tl) シンチレータ 10.8(1)の方法により試験を行ったとき,662keVの全吸収ピークの固有
分解能は,表6及び表7を満足すること。
表6 直径が76.2mm (3in) 以下の場合
単位%
等級
形状
A
B
円柱形
6.5以下
9.0以下
井戸形
9.0以下
11.0以下
表7 直径が76.2mm (3in) を超え127mm (5in) 以下の場合
単位%
等級
形状
A
B
円柱形
8.0以下
10.0以下
(2) X線用平板形NaI (Tl) シンチレータ 10.8(2)の方法により試験を行ったとき,5.9keVの全吸収ピーク
の固有分解能は,表8を満足すること。
表8
単位%
等級
A
B
分解能
70以下
80以下
5.6
自然計数率 10.9の方法により試験を行ったとき,結晶1cm3当たりの毎分計数率は表9を満足し,
更に,40Kなどの天然放射性物質以外の顕著なピークが認められてはならない。ただし,X形(平板形)
は,この限りでない。
表9
種類
計数率
低自然計数率 (L)
1 以下
一般用
2.5以下
5.7
温度特性 10.10の方法により試験を行ったとき,蛍光量温度係数は+0.1〜−0.2%/℃の範囲内でな
ければならない。
6. 特性
6.1
結晶の成分及び物理的性質 NaI (Tl) シンチレータに用いる結晶は,Tlを含むNaI結晶で,その成
分及び物理的性質は,表10の値を満足しなければならない。
表10
平均密度
g/cm3
Tl含有量
%(質量百分率)
最大蛍光量波長
nm
蛍光量減衰時間
μs
屈折率
(410nmにおいて)
約3.67
約0.1
約410
約0.25
1.8
6.2
使用エネルギー範囲 NaI (Tl) シンチレータの使用エネルギー範囲は,表11を満足しなければなら
ない。
5
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表11
単位keV
形状
入射窓
ベリリウ
ム
アルミニウム
ステンレス鋼
銅
150μm
30μm
0.8mm
2.0mm
0.8mm
2.0mm
0.8mm
2.0mm
円柱形
−
−
25以上
35以上
80以上
150以上
100以上
150以上
井戸形
−
−
25以上
35以上
80以上
150以上
100以上
150以上
平板形
5以上
10以上
−
−
−
−
−
−
備考 表11の数値は,入射窓に対し垂直に入射する平均光子数の減衰率がe1以下である限界を示す。
7. 構造 NaI (Tl) シンチレータは,光学窓とNaI (Tl) を光学接続し,その形状及び放射線の入射方向に
より,各々次の構造をもつものでなければならない。
(1) 円柱形 円柱形NaI (Tl) シンチレータは,図1(a)に示すように,光学窓以外の全密封容器が入射窓と
なり,シンチレータ内に放射線が入射しやすい構造であること。
(2) 平板形 平板形NaI (Tl) シンチレ−夕は,図1(b)に示すように,密封容器の特定部分だけを入射窓と
し,入射窓を直視する方向からだけシンチレータ内に入射する構造であること。
(3) 井戸形 井戸形NaI (Tl) シンチレ−夕は,図1(c)に示すように,シンチレータの一部分をくり抜き,
くり抜き部に沿って入射窓を設けた構造であること。
図1
8. 形状,寸法及び材質
8.1
結晶寸法 結晶寸法の範囲は,表12のとおりとする。
6
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表12
単位mm
形名
結晶寸法範囲
直径D
ステップ
高さH
ステップ
井戸内径W
井戸深さd
A
12.7〜76.2
±0.5
6.35
12.7〜76.2
±0.5
6.35
−
−
B
C
88.9〜127.0
±1.0
12.7
25.4〜127.0
±1.0
12.7
−
−
D
7WA8
44.5±0.5
−
50.8±0.5
−
19.1±0.5
38.1±0.5
7WB8
8WA8
50.8±0.5
50.8±0.5
28.6+0.5
38.1±0.5
8WB8
12WIA12
76.2±0.5
76.2±0.5
19.1±0.5
28.6±0.5
50.8±0.5
50.8±0.5
12WIIA12
WC
88.9〜127.0
±0.1
12.7
88.9〜127.0
±0.2
12.7
−(2)
−(2)
X
12.7〜38.1
±0.1
6.35
0.5〜6.0
±0.2
0.5
−
−
注(2) 井戸内径 (W) 及び井戸深さ (d) は,特に規定しない。ただし,寸法表示は,1mmを10として内径,深さの
順に形名の後に−で分けて表示する。
例 結晶寸法 直径88.9mm,高さ88.9mm,井戸内径28.6mm,井戸深さ50.8mmのとき
表示例 14WC14−286・508
8.2
光学窓 光学窓の厚さ及び材質は,表13のとおりとする。
表13
形名
光学窓
厚さmm
材質
A
3.0±0.2
光学ガラス,ほうけい酸ガラス又は石英
B
C
8.0±0.2
D
7WA8
3.0±0.2
7WB8
8WA8
8WB8
12WIA12
12WIIA12
WC
8.0±0.2
X
3.0±0.2
8.3
容器 容器の形状,寸法,入射窓厚及び材質は,表14のとおりとする。
なお,Oリングみぞの形状は,参考とする。
7
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表14
形名
容器
形状,寸法
入射窓厚mm
材質
A
付図1
0.8±0.1
アルミニウムの場合:
JIS H 4040
JIS H 4080
JIS H 4170
B
付図2
C
付図3
2.0±0.1
D
付図4
7WA8
付図5
0.8±0.1
又はこれらと同等以上の品質のもの。
ステンレス鋼の場合:
JIS G 4303
又はこれと同等以上の品質のもの。
銅の場合:
JIS H 3100
JIS H 3300
又はこれらと同等以上の品質のもの。
7WB8
8WA8
付図6
8WB8
12WIA12
付図7
12WIIA12
WC
付図8
−
X
付図9
標準のものとしては,厚さ30μmのアルミニウムを用いるが,厚さ150μmのベリ
リウムでもよい。
8.4
反射材 反射材の材質は,X形においてアルミニウム,それ以外のものは,すべてマグネシア粉末
又はアルミナ粉末を用いる。
9. 外観 NaI (Tl) シンチレータの外観は,10.3の方法により試験を行ったとき,次の各項に適合しなけ
ればならない。
(1) ケース 機械的きず及び変形,接着箇所のはく離がないこと。
(2) 光学窓 ガラス中に気泡及びきずがなく,また,接着面に気泡及び異物の混入がないこと。
(3) 結晶 結晶中に不透明混入物がなく,また,加工時のきず,ひび割れ,着色,吸湿による表面変化が
ないこと。
(4) 反射材 円柱形及び井戸形については,反射材の充てん状態に異常がないこと。
10. 試験方法
10.1 試験条件
10.1.1 周囲条件 この試験方法の各試験は,特に指定のない限り,常温 (20±15℃),常湿 [(65±20) %]
で室内の自然光(電灯照明を含む。)又はそれ以下の照度で,測定用放射線源以外の放射線及び電磁気的誘
導のなるべく少ない場所で行う。
10.1.2 線源 NaI (Tl) シンチレータ試験用放射線源は,円柱形用,井戸形用,平板形用の3種類とし,そ
の構造及び強度は表15による。
表15
線源の用途
構造
線源の強度kBq {μCi}
円柱形用
図2(1)
137Cs : 18.5〜185 {0.5〜5}
井戸形用
図2(2)
137Cs : 0.37〜3.7 {0.01〜0.1}
平板形用
図2(3)
55Fe : 3.7〜370 {0.1〜10}
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図2
10.1.3 電気的試験用結線及び一般的条件 電気的試験用結線及び一般的条件は,次の各項による。
(1) 電気的試験装置を図3のように結線して使用し,図3の点線の部分は遮光のため,図5のような測定
台を用いる。
(2) 供試NaI (Tl) シンチレータと光電子増倍管の接合及び取扱いについては,次による。
(a) 供試NaI (Tl) シンチレータと光電子増倍管は,シリコーン油により光学的に接合する。
(b) NaI (Tl) シンチレータ及び光電子増倍管は,できるだけ暗所で取り扱うことが望ましく,また,試
験前は,24 時間以上暗所に保管されているのが望ましい。
(c) NaI (Tl) シンチレータの光学窓と光電面が大きさにおいて一致することが望ましいが,もし,NaI
(Tl) シンチレータの光学窓が光電面より大きい場合,残りの面積はアルミニウムはくなどの適当な
反射材を用いて光を有効に光電面に入射させる必要がある。
(3) 回路は,すべて図3及び図4に準ずるが,パルス波高その他を調整後,適当なオシロスコープにより
波高分折器への入力信号を観測し,誘導,ひずみ,飽和現象などがないことを確認する。
(4) 使用線源及び幾何学的条件については,次の各項による。
(a) 円柱形NaI (Tl) シンチレータ 使用線源は,10.1.2に定めた円柱形用137Csを用い,線源はNaI (Tl)
シンチレータの中心軸上でNaI (Tl) シンチレータ結晶前面から約150mm離して固定する。
(b) 井戸形NaI (Tl) シンチレータ 使用線源は,10.1.2に定めた井戸形用137Csを用い,線源の先端をシ
ンチレータ中央に固定する。
(c) 平板形NaI (Tl) シンチレータ 使用線源は,10.1.2に定めた平板形用55Feを用い,(a)と同様の条件
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で使用する。ただし,線源と結晶前面との距離は,約30mmとする。
なお,ふたは外して使用する。
10.1.4 光学的接合用シリコーン油 25℃における粘度10 000cSt,屈折率1.5程度のものを使用する。
図3 電気的試験用結線図
図4 印加電圧分配器回路図
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図5 測定台
10.2 外形寸法試験 JIS B 7507に規定された1級以上の精度をもつノギスを使用し,外形寸法が,8.1の
規定に適合するかどうかを調べる。
10.3 外観試験 外観試験は,次の各項による。
(1) ケース 機械的きず及び変形,接着箇所のはく離の有無を調べる。
(2) 光学窓 ガラス中の気泡及びきず,接着面の気泡及び異物の混入の有無を調べる。
(3) 結晶 結晶中の不透明混入物,加工時のきず,ひび割れ,着色,吸湿による表面変化の有無を調べる。
(4) 反射材 円柱形及び井戸形について,反射材の充てん状態を調べる。
10.4 振動試験 供試NaI (Tl) シンチレータを光学窓を下にして振動台に確実に固定する。更に装置を水
平にして複振幅2±0.1mm,周波数20±2Hzで5時間正弦波振動をさせ,常温常湿において3か月放置し
た後,10.2,10.3及び10.8の試験を行い,供試NaI (Tl) シンチレータの損傷の有無を調べる。
なお,振動試験装置は,複振幅2mm,振動数20〜30Hzが得られ,具備すべき条件としてはJIS C 0911
の3.2(定振動数耐久試験装置)に定めるものに合致することが望ましい。
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10.5 温度サイクル試験 供試NaI (Tl) シンチレータを設定温度範囲が0〜40℃で,空そう時,すべての
温度範囲において1時間に20℃以上の温度変化速度をもち,温度を自動制御できる可変恒温槽内に適当な
防振ゴムを敷き,その上に配置する。
温度範囲を0〜40℃とし,温度変化は20℃/hとして24時間中サイクルを3回繰り返し,常温常湿にお
いて3か月放置した後,10.2,10.3及び10.8の試験を行い,供試NaI (Tl) シンチレータの損傷の有無を調
べる。
10.6 加圧試験 加圧装置に供試NaI (Tl) シンチレータを入れ,槽内の圧力を0.2MPa{2kgf/cm2}に加圧
し,そのまま30分間保ち,常温常湿において3か月放置した後,10.2,10.3及び10.8の試験を行い,NaI (Tl)
シンチレータの損傷の有無を調べる。ただし,平板形は行わない。
10.7 損傷漏れ試験
10.7.1 減圧損傷試験 減圧装置に供試NaI (Tl) シンチレータを入れ,1.3mPa {10−5Torr} まで減圧して30
分間保ち,供試NaI (Tl) シンチレータの損傷の有無を調べる。ただし,平板形は行わない。
なお,この試験は,10.7.2耐湿漏れ試験の前に行う。
10.7.2 耐湿漏れ試験 40±3℃に固定された恒温槽内に,表面積300mm×300mm以上のほうろう引きバ
ットに水を満たし,その上に金網状の台を置き,供試NaI (Tl) シンチレータを配置する。この状態で1週
間保ち,常温常湿において3か月放置した後10.2,10.3及び10.8の試験を行い,供試NaI (Tl) シンチレー
タの損傷の有無を調べる。
なお,試験中バットの水がなくならないよう,また,恒温槽内に結露した水滴が直接供試NaI (Tl) シン
チレータに接触しないように注意する。
10.8 分解能試験 図4において指定された回路で,次の各項によりエネルギー分解能を試験する。
(1) γ線用NaI (Tl) シンチレータ まず10.1の条件によりパルス波高値Aがパルス波高分析器のフルスケ
ールの約80%になるように増幅器の増幅度(又は波高分析器の入力変換器)を調整する。図6及び(1)
式により総分解能 (%) を求め,その値から1(3)を引いて固有分解能とする。
(%)
100
×
=AB
R
·········································································· (1)
ここに, R: 総分解能
A: γ線による全吸収ピークの最大計数のパルス波高値(図6参照)
B: 計数が最大計数の21になる幅(図6参照)
注(3) “1”は,光電子増倍管などの測定系によるエネルギー分解能の広がりの影響に相当する。
(2) X線用NaI (Tl) シンチレータ 55Feによる全吸収分布が広いため,全吸収ピークのパルス波高が波高
分析器のフルスケールのほぼ中央になるように増幅度(又は波高分析器の入力変換器)を調整し,図
6及び(1)式により総分解能 (%) を求め,その値から7(4)を引いて固有分解能とする。
なお,光電子増倍管は,光電面スペクトル特性がS-11又はこれと同等以上のもので,光電面は試験
されるNaI (Tl) シンチレータの光学窓全面を覆えるものが望ましい。
注(4) “7”は,光電子増倍管などの測定系によるエネルギー分解能の広がりの影響に相当する。
12
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
図6
10.9 自然計数率試験 10.1において指定された回路で自然計数率を試験する。ただし,この場合は,図5
の測定台を鉛等量8cm以上の材料で遮へいする。
まず,供試NaI (Tl) シンチレータを指定の光電子増倍管にシリコーン油を用いて光学的に接合し,20keV
に相当する波高値以上の自然計数を統計誤差が問題にならないくらい十分な時間計数し,計数値の総和か
ら算出された単位容積当たりの毎分計数率を求める。
10.10 温度特性試験 NaI (Tl) シンチレータ及び光電子増倍管それぞれを設定温度に対し±0.5℃の精度で
温度制御可能な恒温槽に入れ,150mm長のアクリル樹脂製ライトパイプを介して光電子増倍管とシリコー
ン油で接続する。その際,恒温槽の断熱壁の中心とライトパイプの先端から75mmの点を一致させて設定
し,両端のライトパイプの恒温槽内への突出長は40mm以上が望ましい。
次に,光電子増倍管は20℃近辺の一定点に,NaI (Tl) シンチレータは0℃及び40℃に設定し,十分恒温
に達したことを確認の上,各温度における光電子増倍管の電流出力から,蛍光量温度係数を算出する。た
だし,パルス出力によって波高値を測定する場合の時定数は,2μs以上とする。
11. 検査方法 形式検査及び受渡検査の各項目について,10.の方法により試験を行い,5.,8.及び9.の規
定に適合するかどうかを判定する。
(1) 形式検査(5)
(a) 外形寸法
(b) 外観
(c) 耐振動性
(d) 温度変化に対する耐久性
(e) 耐圧性
(f) 気密性
(g) エネルギー分解能
(h) 自然計数率(低自然計数率のものに限る。)
(i) 温度特性
(2) 受渡検査(6)
(a) 外形寸法
(b) 外観
(c) エネルギー分解能
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Z 4321-1995
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(d) 自然計数率(低自然計数率のものに限る。)
注(5) 形式検査とは,製品の品質が設計で示されたすべての特性を満足するかどうかを判定するため
の検査をいう。
(6) 受渡検査とは,既に形式検査に合格したものと同じ設計・製造に係る製品の受渡しに際して,
必要と認められる特性が満足するものであるかどうかを判定するための検査をいう。
12. 表示 NaI (Tl) シンチレータ及びその包装には,見やすいところに容易に消えない方法で,次の事項
を表示しなければならない。ただし,高さ12.7mm以下のもの及びX線用平板形は,(3)を省略することが
できる。
(1) 形名
(2) 製造業者名又は略号
(3) 製造年月又は略号
(4) 製造番号又は略号
13. 取扱い上の注意
(1) 急激な温度変化を与えると,シンチレータ結晶が破壊されたり,光学接続の分離等が起こることがあ
るので注意すること。
(2) 衝突,落下等の機械的ショックを与えると,シンチレータが破壊したり,光や湿気の浸入の原因とな
るので慎重に扱うこと。
(3) 日光等の強い光にさらされると,シンチレーションノイズが増加するので,暗所保存が望ましい。
付図1
付図2
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付図3
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付図4
付図5
付図6
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付図7
付図8
付図9
備考 容器の高さ寸法及び形状は、参
考とする。
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原子力部会 シンチレータ通則専門委員会 構成表(昭和52年4月1日改正のとき)
氏名
所属
(委員会長)
西 野 治
工学院大学
岡 野 真 治
特殊法人理化学研究所
富 増 多喜夫
工業技術院電子技術総合研究所
田 中 栄 一
放射線医学総合研究所
鈴 木 健
通商産業省機械情報産業局
西 田 誠 次
工業技術院標準部
中 村 弘
応用光研工業株式会社製造部
柴 田 昭 和
株式会社堀場製作所製造部
中 西 重 昌
株式会社島津製作所医用電子機器工場
槇 田 敏 夫
社団法人日本電気計測器工業会
牧 野 純 夫
東京芝浦電気株式会社医用機器事業部
真 島 鉄 柱
アロカ株式会社
河 野 悦 雄
富士電機製造株式会社
川 口 千代二
日本原子力研究所ラジオアイソトープ原子炉研究所
石 崎 可 秀
東京大学原子核研究所
山 根 巌
株式会社日立メディコサービス事業部
林 達 郎
浜松テレビ株式会社技術部
(事務局)
村 田 照 夫
工業技術院標準部電気規格課
平 野 由紀夫
工業技術院標準部電気規格課
(事務局)
平 野 由紀夫
工業技術院標準部電気規格課(平成7年3月1日改正のとき)
稲 垣 勝 地
工業技術院標準部電気規格課(平成7年3月1日改正のとき)