Z 3320:2012
(1)
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目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 1
3 用語及び定義 ··················································································································· 2
4 種類及び記号の付け方 ······································································································· 2
5 品質······························································································································· 5
5.1 ワイヤの寸法及びその許容差並びに製品の状態 ···································································· 5
5.2 溶着金属又は溶接継手の機械的性質··················································································· 6
5.3 溶着金属の化学成分 ······································································································· 6
5.4 ワイヤの適用溶接姿勢 ···································································································· 6
5.5 溶着金属の水素量 ·········································································································· 7
6 試験方法························································································································· 7
6.1 ロットの決め方 ············································································································· 7
6.2 マルチパス溶接の溶着金属の引張試験及び衝撃試験 ······························································ 7
6.3 1パス溶接の溶接継手の引張試験 ······················································································ 8
6.4 溶着金属の分析試験 ······································································································· 8
6.5 すみ肉溶接試験 ············································································································· 9
6.6 溶着金属の水素量試験 ···································································································· 9
7 検査方法························································································································· 9
8 製品の呼び方 ··················································································································· 9
9 包装······························································································································ 10
10 表示 ···························································································································· 10
10.1 製品の表示 ················································································································· 10
10.2 包装の表示 ················································································································· 10
附属書JA(参考)JISと対応国際規格との対比表 ······································································ 11
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(2)
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まえがき
この規格は,工業標準化法第14条によって準用する第12条第1項の規定に基づき,社団法人日本溶接
協会(JWES)から,工業標準原案を具して日本工業規格を改正すべきとの申出があり,日本工業標準調査
会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本工業規格である。
これによって,JIS Z 3320:2007は改正され,この規格に置き換えられた。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
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日本工業規格
JIS
Z 3320:2012
耐候性鋼用アーク溶接フラックス入りワイヤ
Flux cored wires for gas shielded and self-shielded metal arc welding of
atmospheric corrosion resisting steel
序文
この規格は,2004年に第1版として発行されたISO 17632を基とし,技術的内容を変更して作成した日
本工業規格である。ISO 17632は,EN 758と環太平洋地域で使用されている規格との共存形であり,共存
する両方又はどちらかの規格を特定の市場に適用してもよいとしている。このため,環太平洋地域で使用
する規格に該当する部分(ISO 17632 System B)のうち,耐候性鋼用フラックス入りワイヤを本体で規定
した。
なお,この規格で側線又は点線の下線を施してある箇所は,対応国際規格を変更している事項である。
変更の一覧表にその説明を付けて,附属書JAに示す。
1
適用範囲
この規格は,耐候性鋼に用いるガスシールドアーク溶接及びセルフシールドアーク溶接用フラックス入
りワイヤ(以下,ワイヤという。)について規定する。
注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
ISO 17632:2004,Welding consumables−Tubular cored electrodes for gas shielded and non-gas
shielded metal arc welding of non-alloy and fine grain steels−Classification(MOD)
なお,対応の程度を表す記号“MOD”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“修正している”
ことを示す。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS G 0321 鋼材の製品分析方法及びその許容変動値
JIS G 3101 一般構造用圧延鋼材
JIS G 3106 溶接構造用圧延鋼材
JIS G 3114 溶接構造用耐候性熱間圧延鋼材
JIS G 3140 橋梁用高降伏点鋼板
JIS Z 3001-1 溶接用語−第1部:一般
JIS Z 3001-2 溶接用語−第2部:溶接方法
JIS Z 3011 溶接姿勢−傾斜角及び回転角による定義
注記 対応国際規格:ISO 6947:1990,Welds−Working positions−Definitions of angles of slope and
rotation (MOD)
2
Z 3320:2012
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JIS Z 3111 溶着金属の引張及び衝撃試験方法
注記 対応国際規格:ISO 15792-1:2000,Welding consumables−Test methods−Part 1: Test methods for
all-weld metal test specimens in steel, nickel and nickel alloys(MOD)
JIS Z 3118 鋼溶接部の水素量測定方法
注記 対応国際規格:ISO 3690,Welding and allied processes−Determination of hydrogen content in
ferritic steel arc weld metal(MOD)
JIS Z 3121 突合せ溶接継手の引張試験方法
JIS Z 3129 鋼の1ラン及び2ラン溶接継手の作製方法及び試験方法
注記 対応国際規格:ISO 15792-2:2000,Welding consumables−Test methods−Part 2: Preparation of
single-run and two-run technique test specimens in steel(MOD)
JIS Z 3181 溶接材料のすみ肉溶接試験方法
注記 対応国際規格:ISO 15792-3,Welding consumables−Test methods−Part 3: Classification testing of
positional capacity and root penetration of welding consumables in a fillet weld(MOD)
JIS Z 3184 化学分析用溶着金属の作製方法及び試料の採取方法
注記 対応国際規格:ISO 6847,Welding consumables−Deposition of a weld metal pad for chemical
analysis(MOD)
JIS Z 3200 溶接材料−寸法,許容差,製品の状態,表示及び包装
注記 対応国際規格:ISO 544,Welding consumables−Technical delivery conditions for welding filler
materials−Type of product, dimensions, tolerances and markings(MOD)
JIS Z 3253 溶接及び熱切断用シールドガス
注記 対応国際規格:ISO 14175:1997,Welding consumables−Shielding gases for arc welding and cutting
(MOD)
JIS Z 3423 溶接材料の調達指針
注記 対応国際規格:ISO 14344,Welding and allied processes−Flux and gas shielded electrical welding
processes−Procurement guidelines for consumables(MOD)
JIS Z 8401 数値の丸め方
注記 対応国際規格:ISO 31-0:1992,Quantities and units−Part 0: General principles(MOD)
3
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS Z 3001-1及びJIS Z 3001-2による。
4
種類及び記号の付け方
ワイヤの種類は,引張特性(マルチパス溶接の溶着金属又は1パス溶接の溶接継手),衝撃試験温度,使
用特性,適用溶接姿勢,シールドガス,溶接区分(1パス溶接とマルチパス溶接との区別及び溶接後熱処
理の有無),溶着金属の化学成分及びシャルピー吸収エネルギーレベルによって区分し,区分記号の組合せ
は,表1による。ワイヤの種類の記号の付け方は,図1による。
なお,溶着金属の水素量による区分を追加してもよい。また,一つのワイヤであっても,溶接後熱処理
の有無に応じて,溶着金属の機械的性質の異なる種類に区分してもよい。また,異なるシールドガスとの
組合せで異なる種類に区分してもよい。
3
Z 3320:2012
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表1−区分記号及びその組合せ
引張特性
の記号
衝撃試験温度
の記号
使用特性
の記号
適用溶
接姿勢
の記号
シールドガス
の記号
溶接区分
の記号
溶着金属の
化学成分の
記号
シャルピー
吸収エネル
ギーレベル
の記号
43,49,55,
57
Y,0,1,2,3,
4,5,6,7,8,
9,10
T1,T5,T15
0,1
C,M,G
A,P,AP
CC,NCC,
NCC1
記号なし,U
T7
0,1
N
T4,T6
0
N
TG
0,1
C,M,G,N
49J
0
T1,T5,T15,
TG
0,1
C,M,G
NCC,NCC1
U
57J
1
78J
2
NCC1J
43,49,55,
57
記号なし
T1,T5,T15
0,1
C,M,G
S
CC,NCC,
NCC1
記号なし,U
T7,T13,T14 0,1
N
T2
0
C,M,G
T3,T4,T6,
T10
0
N
TG
0,1
C,M,G,N
必須区分記号
アーク溶接用フラックス入りワイヤの記号
溶着金属の引張特性(表2による。)又は溶接継手の引張特性(表3によ
る。)の記号
衝撃試験温度の記号(表4による。)
使用特性の記号(表5による。)
適用溶接姿勢の記号
0:下向及び水平すみ肉
1:全姿勢(溶接姿勢の組合せは,表6による。)
シールドガスの記号
C:JIS Z 3253のC1(炭酸ガス)
M:JIS Z 3253のM21で,炭酸ガス20 %〜25 %(体積分率)と
アルゴンとの混合ガス
G:受渡当事者間の協定による上記以外のガス
N:シールドガスなし(セルフシールドアーク溶接)
溶接区分の記号
A:マルチパス溶接で溶接のまま
P:マルチパス溶接で溶接後熱処理あり
AP:マルチパス溶接で,溶接のまま及び溶接後熱処理あり
S:1パス溶接で溶接のまま
溶着金属の化学成分の記号
CC:Cu-Cr系, NCC及びNCC1:Cu-Cr-Ni系,NCC1J:Ni系
シャルピー吸収エネルギーレベルの記号
記号なし:27 J, U:47 J
T ○○ ○ T○-○ ○ ○-○○○-U H○
追加できる区分記号
溶着金属の水素量の記号(表7による。)
図1−ワイヤの種類の記号の付け方
4
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表2−溶着金属の引張特性
溶着金属の引張
特性の記号
引張強さ
MPa
0.2 %耐力
MPa
伸び
%
43
430〜600
330以上
20以上
49
490〜670
390以上
18以上
49J
490〜670
400以上
18以上
55
550〜740
460以上
17以上
57
570〜770
490以上
17以上
57J
570〜770
500以上
17以上
78J
780〜980
700以上
13以上
注記 1 MPa=1 N/mm2
表3−溶接継手の引張特性
単位 MPa
溶接継手の引張特性の記号
引張強さa)
43
430以上
49
490以上
55
550以上
57
570以上
注記 1 MPa=1 N/mm2
注a) 破断位置は,溶着金属,ボンド部,熱影響部又は母材のいずれでもよい。
表4−衝撃試験温度
単位 ℃
衝撃試験温度の記号
衝撃試験温度
Y
+20
0
0
1
−5
2
−20
3
−30
4
−40
5
−50
6
−60
7
−70
8
−80
9
−90
10
−100
5
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表5−使用特性
使用特性
の記号
電流の
種類a)
フラックス
タイプ
使用特性(参考)
T1
DC(+)
ルチール系
溶滴はスプレー移行となり,低スパッタ,高溶着速度,平滑又は若干凸
のビード形状。
T2
DC(+)
ルチール系
溶滴はスプレー移行となり,“T1”に近いが,Mn及び/又はSiの添加量
を高めている。
T3
DC(+)
規定なし
溶滴はスプレー移行となり,高速溶接に適している。
T4
DC(+)
又はAC
塩基性系
溶滴はグロビュール移行となり,高溶着速度で,耐高温割れ性に優れて
おり,溶込みは浅い。
T5
DC(+)
又はDC(−)
ライム系
溶滴はグロビュール移行となり,若干凸のビード形状でスラグは不均一
で薄いが,“T1”に比べて衝撃特性と耐高温割れ性に優れている。
T6
DC(+)
規定なし
溶滴はスプレー移行となり,衝撃特性に優れており,ルート部での溶込
み性能と開先内でのスラグ剝離性に優れている。
T7
DC(−)
規定なし
溶滴はスプレー移行となり,高溶着速度で耐高温割れ性に優れている。
T10
DC(−)
規定なし
溶滴はスプレー移行となり,板厚によらず,高速溶接に適している。
T13
DC(−)
規定なし
溶滴は短絡移行となり,裏当て材を用いない片面溶接に適している。
T14
DC(−)
規定なし
溶滴はスプレー移行となり,塗装又はめっき鋼板の単層溶接に適してい
る。
T15
DC(+)
メタル系
溶滴はスプレー移行となり,鉄粉と合金を主成分とするフラックスであ
って,スラグ発生量が少ない。
TG b)
受渡当事者間の協定による。
注a) 電流の種類に用いている記号の意味は,次による。
AC:交流,DC(+):ワイヤプラス,DC(−):ワイヤマイナス
b) T1〜T15に規定するもの以外に適用する。
表6−適用溶接姿勢
適用溶接姿勢の記号
適用溶接姿勢a)
0
PA及びPB
1
次のいずれかによる。
− PA,PB,PC,PD,PE,PF
− PA,PB,PC,PD,PE,PG
− PA,PB,PC,PD,PE,PG,PF
注a) 溶接姿勢の記号は,JIS Z 3011による。
PA=下向,PB=水平すみ肉,PC=横向,PD=上向水平すみ肉,
PE=上向,PF=立向上進,PG=立向下進
表7−溶着金属の水素量
単位 mL/溶着金属100 g
溶着金属の水素量の記号
水素量
H5
5以下
H10
10以下
H15
15以下
5
品質
5.1
ワイヤの寸法及びその許容差並びに製品の状態
ワイヤの寸法及びその許容差並びに製品の状態は,JIS Z 3200に適合しなければならない。
6
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5.2
溶着金属又は溶接継手の機械的性質
溶着金属又は溶接継手の機械的性質は,次による。
a) マルチパス溶接の溶着金属の引張特性は,6.2の方法によって引張試験を行ったとき,表2に適合しな
ければならない。
b) マルチパス溶接の溶着金属の衝撃特性は,6.2の方法によって衝撃試験を行ったとき,次による。
1) シャルピー吸収エネルギーレベルの記号が“記号なし”のときは,規定の試験温度以下で平均値が
27 J以上,かつ,最小値が20 J以上,かつ,少なくとも2個が27 J以上でなければならない。
2) シャルピー吸収エネルギーレベルの記号が“U”のときは,規定の試験温度以下で平均値が47 J以
上でなければならない。
c) 1パス溶接の溶接継手の引張特性は,6.3の方法によって引張試験を行ったとき,表3に適合しなけれ
ばならない。
なお,製造業者は,表3の引張特性の規定を満たすのに適した推奨溶接条件を提供しなければなら
ない。
5.3
溶着金属の化学成分
溶着金属の化学成分は,6.4の方法によって分析試験を行ったとき,表8に適合しなければならない。
表8−溶着金属の化学成分
単位 %(質量分率)
溶着金属の
化学成分a), b)
化学成分記号
C
Si
Mn
P
S
Cu
Ni
Cr
Mo
Al c)
CC
0.12
以下
0.20〜
0.80
0.60〜
1.40
0.030
以下
0.030
以下
0.20〜
0.50
−
0.30〜
0.60
−
1.8
以下
NCC
0.12
以下
0.20〜
0.80
0.60〜
1.40
0.030
以下
0.030
以下
0.30〜
0.75
0.10〜
0.45
0.45〜
0.75
−
1.8
以下
NCC1
0.12
以下
0.20〜
0.80
0.50〜
1.60
0.030
以下
0.030
以下
0.30〜
0.75
0.30〜
0.80
0.45〜
0.75
−
1.8
以下
NCC1J
0.12
以下
0.90
以下
0.60〜
2.20
0.030
以下
0.030
以下
1.50
以下
1.20〜
4.00
1.20
以下
1.20
以下
−
注a) 分析値は,JIS Z 8401によって,表中に規定する値と同じ有効数字に丸めなければならない。
b) “−”は,その化学成分を規定しないことを意味する。
c) セルフシールドアーク溶接の場合だけに適用する。
5.4
ワイヤの適用溶接姿勢
ワイヤの適用溶接姿勢は,ワイヤ径によって異なってもよいが,6.5の方法によってすみ肉溶接試験を行
ったとき,表9の合格判定基準に適合しなければならない。
表9−すみ肉溶接試験の合格判定基準
膨らみa)
mm
脚長差a)
mm
ルート部の不完全溶込部分の長さ
S<7の場合:2.0以下
S≧7の場合:2.5以下
(0.5S−0.5)以下
全溶接長の20 %以下
注a) S:すみ肉のサイズ(mm)
7
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5.5
溶着金属の水素量
溶着金属の水素量は,6.6の方法によって水素量試験を行ったとき,表7に適合しなければならない。
なお,製造業者は,表7の水素量の規定を満たすのに適した保管条件,溶接電流,アーク電圧,ワイヤ
突出し長さ,電流の種類及びシールドガスについての情報を提供しなければならない。
6
試験方法
6.1
ロットの決め方
ワイヤのロットの決め方は,JIS Z 3423による。
6.2
マルチパス溶接の溶着金属の引張試験及び衝撃試験
マルチパス溶接の溶着金属の引張試験及び衝撃試験は,次のa)〜i) を除き,JIS Z 3111による。
a) 試験を行うワイヤの径 試験を行うワイヤの径は,次による。
1) ガスシールドアーク溶接は,1.2 mmとする。ただし,この径のワイヤを製造していない場合には,
製造業者が推奨する径とする。
2) セルフシールドアーク溶接は,2.4 mmとする。ただし,この径のワイヤを製造していない場合には,
製造業者が推奨する径とする。
b) 溶接電流の種類 溶接電流の種類は,表5による。ただし,複数の種類が規定されている場合は,製
造業者が推奨する種類とする。
c) シールドガス 試験に使用するシールドガスは,ワイヤを区分したガスとする。
d) 試験板 試験板は,次による。
1) 形状 JIS Z 3111の記号1.3の試験板を使用する。
2) 材質 試験板の材質は,表10の鋼材又は試験ワイヤの溶着金属と同等の化学成分をもつ鋼材でなけ
ればならない。ただし,JIS Z 3111によってバタリングを行う場合は,表10以外の鋼材を試験板と
して用いてもよい。
表10−試験板の材質
引張特性の記号
溶着金属の
化学成分の記号
試験板の材質
43,49
CC
JIS G 3114のSMA490AP,SMA490BP又はSMA490CP
55,57
CC
JIS G 3114のSMA570P
43,49,49J
NCC,NCC1
JIS G 3114のSMA490AW,SMA490BW若しくはSMA490CW又は
JIS G 3140のSBHS400W
55,57,57J
NCC,NCC1
JIS G 3114のSMA570W又はJIS G 3140のSBHS500W
78J
NCC1J
JIS G 3140のSBHS700W
e) 予熱温度及びパス間温度 試験板の予熱温度及びパス間温度は,135 ℃〜165 ℃とする。ただし,最
初のパスは,100 ℃〜135 ℃としてもよい。この場合には,溶接開始後に規定の予熱温度及びパス間
温度に達するまでは,連続溶接とする。
f)
積層要領 積層要領は,表11による。
8
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表11−マルチパス溶接の積層要領
ワイヤ径
mm
平均入熱
kJ/cm
各層のパス数
層数
初層
2層目以降a)
0.8,0.9
8〜16
1又は2
2又は3
6〜9
1.0,1.2
12〜20
1又は2
2又は3
6〜9
1.4,1.6
14〜22
1又は2
2又は3
5〜8
2.0
18〜24
1又は2
2又は3
5〜8
2.4
20〜26
1又は2
2又は3
4〜8
2.8
20〜28
1又は2
2又は3
4〜7
3.2
22〜30
1又は2
2
4〜7
4.0
26〜33
1
2
4〜7
注a) 最終層は4パスでもよい。
g) 溶接後熱処理 溶接後熱処理の有無の記号が,Aの場合は,溶接のままで,Pの場合は,溶接後熱処
理を行って試験を行う。また,APの場合は,溶接のまま及び溶接後熱処理を行ったものの両方につ
いて試験を行う。溶接後熱処理の条件は,次による。
1) 熱処理温度は,605 ℃〜635 ℃とする。
2) 保持時間は,60 min〜75 minとする。
3) 315 ℃以上の温度域での加熱速度は,220 ℃/h以下とし,冷却速度は,195 ℃/h以下とする。
4) 315 ℃未満の温度域での冷却は,炉冷又は静止大気中での空冷とする。
h) 引張試験片 引張試験片は,JIS Z 3111のA0号試験片とする。また,引張試験用の試験材又は引張試
験片には,JIS Z 3111の6.(試験片の作製)の範囲内で,製造業者が推奨する条件で水素除去の加熱
を行う。
i)
衝撃試験片 衝撃試験片の採取個数及び評価する試験結果は,次による。
1) シャルピー吸収エネルギーレベルの記号が“記号なし”のときは,衝撃試験片の採取個数を5個と
し,5個の試験結果から最大値と最小値を除いた3個を評価する。
2) シャルピー吸収エネルギーレベルの記号が“U”のときは,衝撃試験片の採取個数を3個とし,3
個の試験結果を評価する。
6.3
1パス溶接の溶接継手の引張試験
1パス溶接の溶接継手の引張試験は,次のa)〜d) を除き,JIS Z 3129による。
a) 溶接条件 試験を行うワイヤの径,溶接電流の種類,シールドガス及び流量並びに試験板の予熱温度
の試験条件は,製造業者が推奨する条件による。また,これらの溶接条件は記録しなければならない。
b) 試験板 試験板は,次による。
1) 形状 形状は,JIS Z 3129の記号2.1又は2.3のうち,製造業者が推奨するものとする。
2) 材質 材質は,表10によるものとし,バタリングを行ってはならない。
c) 溶接後熱処理 溶接後熱処理は,行わない。
d) 引張試験片 引張試験片は,JIS Z 3121の1A号試験片とする。
6.4
溶着金属の分析試験
溶着金属の分析試験は,次による。
a) 試験は,全ての径のワイヤについて行う。
b) 溶着金属の分析試料の採取方法は,次のいずれかによる。
1) JIS Z 3184による。
9
Z 3320:2012
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
2) 6.2で作製する試験材の引張試験片平行部該当位置から採取する。
3) 6.2で試験によって破断した引張試験片残材の平行部該当位置から採取する。
c) 溶着金属の分析方法は,JIS G 0321の箇条5(分析方法)の方法又はそれに対応するISO規格の分析
方法による。
6.5
すみ肉溶接試験
すみ肉溶接試験は,次のa)〜d) を除き,JIS Z 3181による。
a) 溶接姿勢は,次による。
1) 適用溶接姿勢の記号が0の場合には,水平すみ肉(PB)とする。
2) 適用溶接姿勢の記号が1の場合には,上向(PE)及び製造業者が推奨する立向姿勢(PF又はPG)
とする。
b) 試験板の材質は,次の1)〜3) のいずれかとする。
1) JIS G 3101のSS400
2) JIS G 3106のSM400A〜SM400C又はSM490A〜SM490C
3) 炭素含有量が0.30 %(質量分率)以下の非合金鋼
c) 溶接条件及びワイヤ径は,製造業者の推奨条件及び径とする。
d) 溶接は,1パスで試験板の片側を行い,繰返し回数は,1回とする。
6.6
溶着金属の水素量試験
溶着金属の水素量試験は,JIS Z 3118による。ただし,ワイヤ径が1.2 mm以外の場合には,受渡当事者
間の協定による。
7
検査方法
検査方法は,次による。
a) ワイヤの検査項目は,JIS Z 3423の試験スケジュールによる。
b) 検査は,ワイヤのロットごとに,JIS Z 3423による試験スケジュールに従い,箇条6によって試験し,
該当する箇条5に適合しなければならない。
c) 試験スケジュールに従い,箇条6によって実施した引張試験,衝撃試験,分析試験,すみ肉溶接試験
及び水素量試験のいずれかの試験結果が,箇条5に適合しなかった場合には,適合しなかった全ての
試験について倍数の再試験を行い,そのいずれの試験結果も規定に適合しなければならない。この場
合の再試験のための試験片は,当初の試験材の残材から採取するか,又は新たな試験板を用いて作製
した試験材から採取する。また,分析試験において,当初の試験結果が規定に適合した成分は,再試
験を行わなくてもよい。
d) 試験片の作製から試験の実施を通して正規の手続きを行っていない試験を含み,試験結果が合否の判
定に供し得ないようなことが生じるおそれがある場合には,試験の進行状況又は結果のいかんにかか
わらず無効とする。無効となった試験は,正規の手続きに従って繰り返されなければならない。
なお,この場合は,c) の再試験の対象とはしない。
8
製品の呼び方
製品の呼び方は,ワイヤの種類,径及び質量による。
呼び方の例を,次に示す。
10
Z 3320:2012
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
例1 T490T1-1CA-NCC-UH10−1.2−20
ワイヤの種類 径 質量
49:溶着金属の引張特性(表2による。)
0 :シャルピー衝撃試験温度が0 ℃
T1:使用特性がシールドガスあり,ワイヤプラス,ルチール系
1 :適用溶接姿勢が全姿勢
C:シールドガスが炭酸ガス(JIS Z 3253のC1)
A:溶接区分がマルチパス溶接で溶接のまま
NCC:溶着金属の化学成分(表8による。)
U:シャルピー吸収エネルギーレベルが47 J
H10:溶着金属の水素量(単位:mL/溶着金属100 g)が10以下
例2 T43T13-0NS-CC−1.6−15
ワイヤの種類 径 質量
43:溶接継手の引張特性(表3による。)
なお,シャルピー衝撃試験は適用しない。
T13:使用特性がシールドガスなし,ワイヤマイナス,フラックスタイプは規定なし,
1パス溶接
0 :適用溶接姿勢が下向及び水平すみ肉
N:シールドガスなし(セルフシールドアーク溶接)
S:溶接区分が1パス溶接で溶接のまま
CC:溶着金属の化学成分(表8による。)
9
包装
包装は,JIS Z 3200による。
10 表示
10.1 製品の表示
製品の表示は,JIS Z 3200による。
10.2 包装の表示
包装の表示は,JIS Z 3200による。
附属書JA
(参考)
JISと対応国際規格との対比表
JIS Z 3320:2012 耐候性鋼用アーク溶接フラックス入りワイヤ
ISO 17632:2004 Welding consumables−Tubular cored electrodes for gas shielded and
non-gas shielded metal arc welding of non-alloy and fine grain steels−Classification
(I)JISの規定
(II)
国際規
格番号
(III)国際規格の規定
(IV)JISと国際規格との技術的差異の箇条ご
との評価及びその内容
(V)JISと国際規格との技術的差異
の理由及び今後の対策
箇条番号
及び題名
内容
箇条
番号
内容
箇条ごと
の評価
技術的差異の内容
1 適用範
囲
対応国際規格の
System Bのうち,耐
候性鋼用フラックス
入りワイヤを採用。
1
EN 758に該当する部分
(System A)とSystem Bと
を規定
削除
JISは,System Bの耐候性鋼用
フラックス入りワイヤを規定し
た。
対応国際規格のうち耐候性鋼用フ
ラックス入りワイヤ以外のもの
は,JIS Z 3313で対応した。
なお,System Aは,耐候性鋼用フ
ラックス入りワイヤを規定してい
ない。
2 引用規
格
3 用語及
び定義
JIS Z 3001-1及びJIS
Z 3001-2を引用
−
−
追加
JISでは,専門用語及び定義の
規格の引用を記載した。
4 種類及
び記号の
付け方
溶着金属又は溶接継
手の引張特性を規定
4.2
溶着金属又は溶接継手の引
張特性を規定
変更
追加
JISでは,溶着金属の場合で降
伏が発生したときには,下降伏
点ではなく0.2 %耐力とした。
JISでは,49J,57J及び78Jの3
種類を追加した。
技術的な差異はない。
国内で使用されている高降伏点耐
候性鋼材の引張特性の規定に整合
させた。
衝撃試験温度を規定
4.3B 衝撃試験温度の区分とし
て,合計12区分を規定
追加
JISでは,記号1として試験温
度が−5 ℃の区分を追加した。
日本で使用する鋼材の規定に合わ
せた。
使用特性の記号を12
種類規定
4.5B 15種類を規定
削除
JISでは,規定内容が同一とな
る種類について削除した。
2
Z
3
3
2
0
:
2
0
1
2
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き、本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
(I)JISの規定
(II)
国際規
格番号
(III)国際規格の規定
(IV)JISと国際規格との技術的差異の箇条ご
との評価及びその内容
(V)JISと国際規格との技術的差異
の理由及び今後の対策
箇条番号
及び題名
内容
箇条
番号
内容
箇条ごと
の評価
技術的差異の内容
4 種類及
び記号の
付け方(続
き)
電流の種類を規定
4.5B 使用特性の種類ごとに,一
つの電流の種類を規定
選択
JISでは,記号T4及びT5の場
合には,電流の種類を追加し,
選択できると規定
日本では,セルフシールドアーク
溶接に交流が使用される場合が多
いことなどの,使用実態に合わせ
た。
溶着金属の化学成分
の記号を規定
6
溶着金属の化学成分の区分
として16区分を規定
削除
変更
追加
JISでは,耐候性鋼用のCC,NCC
及びNCC1を規定し,NCC1の
Mn上限を1.30 %から1.60 %に
広げ,780 MPa級耐候性鋼用の
NCC1Jを追加した。
箇条1による。
日本で使用する鋼材の規定に対応
させた。
5 品質
5.1 ワイ
ヤの寸法
及びその
許容差並
びに製品
の状態
JIS Z 3200によって
スプール形状を規定
9
ISO 544によってスプール
形状を規定
追加
JISでは,国内で使用されてい
るスプール形状を追加した。
国内の使用実態に合わせた。
5.2 溶着
金属又は
溶接継手
の機械的
性質
溶着金属又は溶接継
手の引張特性を規定
4.2
溶着金属又は溶接継手の引
張特性を規定
変更
追加
JISでは,溶着金属の場合で降
伏が発生したときには,下降伏
点ではなく0.2 %耐力とした。
JISでは,49J,57J及び78Jの3
種類を追加した。
箇条4による。
箇条4による。
4.3B 衝撃試験温度の区分とし
て,合計12区分を規定
追加
JISでは,記号1として試験温
度が−5 ℃の区分を追加した。
箇条4による。
5.3 溶着
金属の化
学成分
4区分の溶着金属の
化学成分を規定
6
16区分の溶着金属の化学成
分を規定
削除
追加
JISでは,耐候性鋼用のCC,NCC
及びNCC1を規定し,NCC1Jを
追加した。
箇条1による。
箇条4による。
6 試験方
法
6.1 ロット
の決め方
JIS Z 3423によって,
ロットの決め方を規
定
9
ISO 14344によってロット
の決め方を規定
変更
JIS Z 3423では,クラスT4の定
義を変更している。
国内の使用実態に合わせた。
2
Z
3
3
2
0
:
2
0
1
2
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き、本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
(I)JISの規定
(II)
国際規
格番号
(III)国際規格の規定
(IV)JISと国際規格との技術的差異の箇条ご
との評価及びその内容
(V)JISと国際規格との技術的差異
の理由及び今後の対策
箇条番号
及び題名
内容
箇条
番号
内容
箇条ごと
の評価
技術的差異の内容
6.2 マル
チパス溶
接の溶着
金属の引
張試験及
試験を行うワイヤの
径を規定
5
試験を行うワイヤの標準径
を規定し,標準径を製造し
ていない場合には,標準径
よりも太い径と細い径との
優先順位も規定
変更
JISでは,標準径を製造してい
ない場合には,製造業者が推奨
する径とした。
技術的な差異はない。
び衝撃試
験
溶接電流の種類を規
定
4.5B 溶接電流の種類は,使用特
性の記号によって一つに規
定
変更
JISでは,箇条4で追加した電
流の種類がある場合には,製造
業者が推奨する種類とした。
国内の使用実態に合わせた。
溶着金属と異なる成
分の試験板の場合に
は,バタリングを規定
5
2層以上のバタリングを行
って使用してもよいと規定
変更
JISでは,JIS Z 3111を引用し,
2層以上,かつ,厚さ3 mm以上
とした。
技術的な差異はない。
引張試験片の水素除
去の加熱を規定
引張試験片の水素除去の加
熱は,任意項目として規定
変更
JISでは,製造業者が推奨する
場合には,必須とした。
水素が試験結果に影響を与える種
類があるため変更した。
6.4 溶着
金属の分
析試験
分析試料の採取方法
を規定
6
分析試料の採取は,適切な
方法であればよいが,疑義
ある場合はISO 6847 とす
ると規定
選択
JISでは,選択できる適切な方
法として,JIS Z 3184,マルチ
パス溶接の試験材,又はそれか
ら作製する引張試験片の残材を
規定した。
JISでは国内で使用されている方
法を規定した。
分析方法を規定
分析方法は,適切な方法で
あればよいが,疑義ある場
合は確立され公開されてい
る方法とすると規定
選択
JISでは,選択できる適切な方
法として,JIS G 0321 に規定さ
れている方法とした。
同上
6.5 すみ
肉溶接試
験
溶接条件を規定
7
溶接電流の種類は,使用特
性の記号によって一つに規
定
変更
JISでは,箇条4で追加した電
流の種類がある場合には,製造
業者が推奨する種類とした。
国内の使用実態に合わせた。
6.6 溶着
金属の水
素量試験
ワイヤ径が1.2 mm以
外の試験方法は,受渡
当事者間の協定によ
ると規定
4.8
試験方法は,ISO 3690によ
ると規定し,ワイヤ径の制
約は,ない。
変更
JISでは,JIS Z 3118 はワイヤ
径が1.2 mm以外の試験方法を
規定していないので,1.2 mm以
外の場合には,受渡当事者間の
協定によるとした。
同上
2
Z
3
3
2
0
:
2
0
1
2
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き、本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
(I)JISの規定
(II)
国際規
格番号
(III)国際規格の規定
(IV)JISと国際規格との技術的差異の箇条ご
との評価及びその内容
(V)JISと国際規格との技術的差異
の理由及び今後の対策
箇条番号
及び題名
内容
箇条
番号
内容
箇条ごと
の評価
技術的差異の内容
7 検査方
法
8
一致
−
8 製品の
呼び方
製品の呼び方を規定
−
−
追加
JISでは,ワイヤ径及び質量を
含む場合の呼び方も規定した。
国内での使用実態によって,旧規
格のとおりとした。
9 包装
9
一致
−
10 表示
3
一致
−
JISと国際規格との対応の程度の全体評価:ISO 17632:2004,MOD
注記1 箇条ごとの評価欄の用語の意味は,次による。
− 一致……………… 技術的差異がない。
− 削除……………… 国際規格の規定項目又は規定内容を削除している。
− 追加……………… 国際規格にない規定項目又は規定内容を追加している。
− 変更……………… 国際規格の規定内容を変更している。
− 選択……………… 国際規格の規定内容とは異なる規定内容を追加し,それらのいずれかを選択するとしている。
注記2 JISと国際規格との対応の程度の全体評価欄の記号の意味は,次による。
− MOD…………… 国際規格を修正している。
2
Z
3
3
2
0
:
2
0
1
2
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き、本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。