Z 3231 : 1999
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,通商産業大臣が改正した日
本工業規格である。これによってJIS Z 3231 : 1989は改正され,この規格に置き換えられる。
この規格の一部が,技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の
実用新案登録出願に抵触する可能性があることに注意を喚起する。通商産業大臣及び日本工業標準調査会
は,このような技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の実用新
案登録出願にかかわる確認について,責任はもたない。
今回の改正では,寸法,許容差,製品の状態,表示及び包装について規定したJIS Z 3200の制定に伴い,
これを引用規格として用いた。
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
Z 3231 : 1999
銅及び銅合金被覆アーク溶接棒
Copper and copper alloy covered electrodes
1. 適用範囲 この規格は,銅及び銅合金の溶着金属を得る被覆アーク溶接棒(以下,溶接棒という。)に
ついて規定する。
2. 引用規格 付表1に示す規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成
する。これらの引用規格は,その最新版を適用する。
3. 溶接棒の種類及び種別 溶接棒の種類及び種別は,表1のとおりとする。
表1 溶接棒の種類
溶接棒
電流の種類
溶接棒の種類
成分系
種別
DCu
銅
DC
DC (+)
AC
AC又はDC (+)
DCuSiA
けい素青銅
DC
DC (+)
DCuSiB
AC
AC又はDC (+)
DCuSnA
りん青銅
DC
DC (+)
DCuSnB
AC
AC又はDC (+)
DCuAl
アルミニウム青銅
DC
DC (+)
AC
AC又はDC (+)
DCuAlNi
特殊アルミニウム青銅
DC
DC (+)
AC
AC又はDC (+)
DCuNi-1
白銅
DC
DC (+)
DCuNi-3
AC
AC又はDC (+)
備考1. 電流の種類に用いた記号は,次のことを意味する。
AC:交流,DC (+) :直流(棒プラス)
4. 品質
4.1
被覆 被覆は,JIS Z 3200の3.(製品の状態)による。
4.2
化学成分 溶着金属の化学成分は,6.2の方法によって試験を行ったとき,表2に適合しなければな
らない。
2
Z 3231 : 1999
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表2 溶着金属の化学成分
単位%
溶接棒の種
類
化学成分
Cu
(含Ag)
Sn
Si
Mn
P
Pb
Al
Fe
Ni
Zn
*の成分の合計(2)
DCu
95.0
以上
−
0.5
以下
3.0
以下
0.30
以下
*0.02
以下
*
*
*
*
0.50
以下
DCuSiA
93.0
以上
−
1.0〜
2.0
3.0
以下
0.30
以下
*0.02
以下
*
−
*
*
0.50
以下
DCuSiB
92.0
以上
−
2.5〜
4.0
3.0
以下
0.30
以下
*0.02
以下
*
−
*
*
0.50
以下
DCuSnA
残部
5.0〜
7.0
*
*
0.30
以下
*0.02
以下
*
*
*
*
0.50
以下
DCuSnB
残部
7.0〜
9.0
*
*
0.30
以下
*0.02
以下
*
*
*
*
0.50
以下
DCuAl
残部
−
1.0
以下
2.0
以下
−
*0.02
以下
7.0〜
10.0
1.5
以下
0.5
以下
*
0.50
以下
DCuAlNi
残部
−
1.0
以下
2.0
以下
−
*0.02
以下
7.0〜
10.0
2.0〜
6.0
2.0
以下
*
0.50
以下
DCuNi-1
(1)
残部
−
0.5
以下
2.5
以下
0.020
以下
*0.02
以下
Ti0.5
以下
2.5
以下
9.0〜
11.0
*
0.50
以下
DCuNi-3
(1)
残部
−
0.5
以下
2.5
以下
0.020
以下
*0.02
以下
Ti0.5
以下
2.5
以下
29.0〜
33.0
*
0.50
以下
注(1) DCuNi-1及びDCuNi-3のSは,0.015 %以下。
(2) *の成分の存在が微量であることが予知される場合は,分析を省略することができる。
4.3
硬さ DCuAl及びDCuAlNiの溶着金属の硬さは,6.2の方法によって試験を行ったとき,表3に適
合しなければならない。
表3 溶着金属の硬さ
溶接棒の種類
HB
DCuAl
100以上
DCuAlNi
120以上
4.4
機械的性質 溶着金属の引張強さ及び伸びは,6.3の方法によって試験を行ったとき,表4に適合し
なければならない。
表4 溶着金属の機械的性質
溶接棒の種類
引張試験
引張強さ
伸び
N/mm2
%
DCu
180以上
20以上
DCuSiA
250以上
22以上
DCuSiB
270以上
20以上
DCuSnA
250以上
15以上
DCuSnB
270以上
12以上
DCuAl
390以上
15以上
DCuAlNi
490以上
13以上
DCuNi-1
270以上
20以上
DCuNi-3
350以上
20以上
3
Z 3231 : 1999
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4.5
曲げ性能 溶接継手の曲げ性能は,6.4の方法によって試験を行ったとき,曲げられた外面において,
いかなる方向にも長さ3.0 mmを超える割れ又は有害と認められる欠陥があってはならない。
5. 寸法及び許容差 溶接棒の寸法及び許容差は,JIS Z 3200の2.(寸法及び許容差)による。代表的な
寸法は表5に示す。
表5 代表的な溶接棒の寸法
単位mm
径
長さ
2.6
300
350
3.2
300
350
4.0
350
400
450
5.0
350
400
450
6.0
400
450
6. 試験
6.1
試験一般
6.1.1
試験板 試験板は,次による。
a) 溶着金属の分析試験,硬さ試験及び引張試験に使用する試験板は,JIS G 3101のSS400又はJIS G 3106
のSM400A〜Cのいずれかに適合するものでなければならない。
b) 型曲げ試験に使用する試験板は,板厚6mmで,DCuについては,JIS H 3100に規定するりん脱酸銅
板(C 1201又はC 1220),DCuSnA及びDCuSnBについてはJIS H 3110に規定するりん青銅板 (C 5101) ,
DCuNi-1についてはJIS H 3100に規定する白銅板 (C 7060),また,DCuNi-3についてはJIS H 3100
に規定する白銅板(C 7060又はC 7150)に適合するものでなければならない。
6.1.2
溶接姿勢 溶接姿勢は,試験溶接棒によって表6のとおりとする。径2.6 mmについては,分析試
験だけを行い,その他の径については代表径として3.2 mm又は4.0 mmで全項目の試験を行うものとする。
表6 各種試験における溶接姿勢
溶接棒
試験電流
の種類
溶接姿勢
種類
種別
分析試験
硬さ試験
引張試験
型曲げ試験
DCu
DC
DC (+)
F
−
F
F
AC
AC
F
−
F
F
DCuSiA
DC
DC (+)
F
−
F
−
DCuSiB
AC
AC
F
−
F
−
DCuSnA
DC
DC (+)
F
−
F
F
DCuSnB
AC
AC
F
−
F
F
DCuAl
DC
DC (+)
F
F
F
−
AC
AC
F
F
F
−
DCuAlNi
DC
DC (+)
F
F
F
−
AC
AC
F
F
F
−
DCuNi-1
DC
DC (+)
F
−
F
F
AC
AC
F
−
F
F
DCuNi-3
DC
DC (+)
F
−
F
F
AC
AC
F
−
F
F
備考 記号Fは,下向姿勢を示す。
6.2
分析試験及び硬さ試験 分析試験及び硬さ試験は,次による。
4
Z 3231 : 1999
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
a) 試験板の寸法は,長さ約80 mm,幅約50 mm,厚さ約12 mmとする。
b) 溶着金属は,各パスとも径の1.5〜2.5倍の幅で積層する。
c) 4層以上の各パスの溶接は,表7の温度範囲で始めなければならない。
なお,3層以下の各パスの溶接は,母材の希釈を考慮して,できるだけ低電流で行うものとする。
表7 予熱及びパス間温度
単位℃
溶接棒の種類
予熱及びパス間温度
DCu
400〜600
DCuSiA
15〜70
DCuSiB
DCuSnA
200〜300
DCuSnB
DCuAl
95〜200
DCuAlNi
DCuNi-1
15〜150
DCuNi-3
d) 硬さの測定は,JIS Z 3114に従って行うか,図1に示すように6層以上で長さ約70 mm,幅約40 mm,
高さ約15 mmに積層した試験片について行わなければならない。
なお,その場合,硬さの測定は溶着金属の表面を仕上げた後とし,測定位置は図1に示すとおりと
する。
図1 硬さ測定位置
e) 試験片の硬さ試験方法は,JIS Z 2243による。
f)
分析試料は,硬さ試験を終わった試験片から採取し,硬さ測定を行わない場合には,同じ要領で積層
した試験片から採取する。
なお,その場合,母材面から10 mm以内を避けて旋盤,ドリルなどで採取する。この際,切削油は
使用してはならない。また,6.3の試験を行った試験片の平行部から採取してもよい。
g) 溶着金属の分析方法は,次のいずれかによる。
JIS G 1223, JIS G 1257, JIS H 1101, JIS H 1291
6.3
溶着金属の引張試験 溶着金属の引張試験は,次による。
a) 試験片は,図2及び表8に示すように4層以上の溶着金属から図3に示す寸法で1個採取する。
5
Z 3231 : 1999
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図2 試験材の寸法及び試験片の採取位置
表8 試験材及び試験片の寸法
単位mm
径
試験材
試験片
T
H
J
K
L
A
B
C
D
E
R
G
3.2
12
約 90
約50
約20
約15
6.0±0.1
24
約 9
約 70
約15
6
32
4.0
19
約150
約75
約30
約25
12.5±0.1
50
約19
約130
約25
10
58
図3 試験片の形状
b) 4層以上の各パスの溶接は,表7の温度範囲で始めなければならない。
なお,3層以下の各パスの溶接は,母材の希釈を考慮して,できるだけ低電流で行うものとする。
c) 試験板は,溶接中にひずまないように十分に拘束しなければならない。
d) 試験片の引張試験方法は,JIS Z 2241による。
なお,試験温度は室温とする。
6.4
溶接継手の型曲げ試験 溶接継手の型曲げ試験は,次による。
a) 試験は,表曲げ及び裏曲げを行う。この場合,図4に示す試験材から1個の表曲げと1個の裏曲げ試
験片を切り取り,図5に示すように仕上げる。
b) 試験材の角変形が5度以上とならないように,試験板をあらかじめ拘束するか,逆ひずみを与えてお
かなければならない。
c) 各パスの溶接は,表7の温度範囲で始めなければならない。積層は,2層以上行うものとする。
d) 試験片の型曲げ試験方法は,JIS Z 3122による。
6
Z 3231 : 1999
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図4 試験材の寸法及び試験片の採取位置
図5 試験片の形状及び寸法
7. 検査 検査は,次による。
a) 溶接棒は,被覆,寸法,分析試験,硬さ試験,引張試験及び型曲げ試験の成績が,4.及び5.の規定に
合格しなければならない。
b) 硬さ試験,引張試験及び型曲げ試験のうち,いずれか一つの試験が不合格であった場合は,その試験
について1回だけ再試験を行うことができ,その成績が規定に適合しなければならない。
7
Z 3231 : 1999
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8. 包装 包装は,JIS Z 3200の5.(包装)による。
9. 製品の呼び方 製品の呼び方は,溶接棒の種類,種別,径及び長さによる。
例
10. 表示 表示は,JIS Z 3200の4.(表示)による。溶接棒の種類の表示は,溶接棒の端面に表9の彩色
を行い,図6の位置に施す。
図6 彩色位置
表9 溶接棒の彩色表示
溶接棒の種類
端面彩色
DCu
白
DCuSiA
黄
DCuSiB
桃
DCuSnA
青
DCuSnB
茶
DCuAl
赤
DCuAlNi
黒
DCuNi-1
緑
DCuNi-3
銀
付表1 引用規格
JIS G 1223 鉄及び鋼−チタン定量方法
JIS G 1257 鉄及び鋼−原子吸光分析方法
JIS G 3101 一般構造用圧延鋼材
JIS G 3106 溶接構造用圧延鋼材
JIS H 1101 電気銅地金分析方法
JIS H 1291 銅及び銅合金の原子吸光分析方法
JIS H 3100 銅及び銅合金の板及び条
JIS H 3110 りん青銅及び洋白の板及び条
JIS Z 2241 金属材料引張試験方法
JIS Z 2243 ブリネル硬さ試験−試験方法
JIS Z 3114 溶着金属の硬さ試験方法
JIS Z 3122 突合せ溶接継手の曲げ試験方法
JIS Z 3200 溶接材料−寸法,許容差,製品の状態,表示及び包装
8
Z 3231 : 1999
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原案作成委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
桑 名 武
東北大学名誉教授
(幹事)
和 田 豊
日鐵溶接工業株式会社技術本部
(委員)
林 明 夫
通商産業省基礎産業局
大 嶋 清 治
通商産業省工業技術院標準部
中 原 征 治
通商産業省工業技術院機械研究所技術交流推進センター
山 村 修 蔵
財団法人日本規格協会技術部
中 川 昌 俊
財団法人日本規格協会技術部
堀 田 東 男
社団法人軽金属溶接構造協会
池 原 康 允
ステンレス協会開発事業部技術専門部
鈴 木 宏
千代田プロテック株式会社川崎工場
二 村 幸 作
株式会社巴コーポレーション技術開発部
小見山 輝 彦
日本鋼管工事株式会社技術開発センター
森 三 郎
日本鋼管工事株式会社
中 村 稔
日本油脂株式会社技術部
佐 藤 千 年
日本ウェルディング・ロッド株式会社浜北製造所品質保証部
中 井 洋 二
株式会社神戸製鋼所溶接事業部技術部
松 本 剛 郎
川崎製鉄株式会社溶接棒営業部
松 本 茂
住金溶接工業株式会社技術部
宮 尾 信 昭
四国溶材株式会社
(事務局)
池 原 平 晋
社団法人日本溶接協会