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Z 2294:2004  

(1) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

まえがき 

この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日

本工業規格である。 

この規格の一部が,技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の

実用新案登録出願に抵触する可能性があることに注意を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会

は,このような技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の実用新

案登録出願にかかわる確認について,責任はもたない。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

目 次 

ページ 

1. 適用範囲 ························································································································ 1 

2. 引用規格 ························································································································ 1 

3. 試験装置 ························································································································ 1 

4. 試験浴 ··························································································································· 3 

5. 雰囲気ガス ····················································································································· 3 

6. 試験片 ··························································································································· 4 

7. 電極 ······························································································································ 4 

8. 試験 ······························································································································ 5 

9. 腐食の判定方法 ··············································································································· 5 

10. 記録及び報告 ················································································································ 6 

10.1 記載事項 ····················································································································· 6 

10.2 付記事項 ····················································································································· 6 

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日本工業規格          JIS 

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金属材料の電気化学的高温腐食試験方法 

Method for high-temperature electrochemical corrosion test of 

metallic materials in molten salts 

1. 適用範囲 この規格は,高温溶融塩による金属材料の腐食をアノード分極曲線の測定及び交流インピ

ーダンス測定によって定量的に評価する試験方法について規定する。 

2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の一部を構成する。こ

れらの引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。 

JIS Z 2290 金属材料の高温腐食試験方法通則 

JIS Z 2291 金属材料の高温ガス腐食試験方法 

3. 試験装置 試験装置は,加熱装置,雰囲気ガス供給装置,電気化学セル及び電気化学計測装置によっ

て構成する(図1参照)。 

a) 加熱装置 試験浴及び試験片の加熱のために温度調節装置を備えた加熱炉を用い,試験中は常に,試

験浴の全範囲にわたり,JIS Z 2290の5.3(試験片温度の許容範囲)に規定する試験温度の許容範囲内

で,一様,かつ,一定に加熱することのできるものとする。 

b) 雰囲気ガス供給装置 JIS Z 2291の4.2.4(雰囲気ガス供給装置)に規定する雰囲気ガス供給装置を用

いる。 

c) 電気化学セル 電気化学セルは,次による。電気化学セルの例を,図2に示す。 

1) 模擬ガスを連続して流せるように,外気から遮へいされた構造とする。 

2) 試験浴を溶かするつぼは,塩と反応しないものを用いる(例えば,塩化物浴,硫酸塩浴では高純度

アルミナ製など)。 

3) アノード分極曲線測定用の電極は,試験片,対極及び参照電極からなる3電極式とする[図2 a)参

照]。対極での反応が影響する場合には,試料室と対極室との試験浴の混合を防止した構造とする。 

4) 交流インピーダンス測定用の電極は,2枚の同一試験片からなる2電極式とする[図2 b)参照]。た

だし,3)の3電極式を用いてもよい。 

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図 1 電気化学的高温腐食試験装置の基本構成の例 

図 2 電気化学的高温腐食試験用の電気化学セルの例 

d) 電気化学計測装置 電気化学計測装置は次による。電気化学計測装置の例を,図3に示す。 

ガス出口

シリカ管

ガス入口

高純度 

アルミナタンマン管

溶融塩

試験片

熱電対

Oリング

対極

参照電極

加熱炉

リード線

ステンレス鋼製フランジ

ガス出口

ガス入口

リード線

(a) アノード分極曲線 

測定用3電極式セル 

(b) 交流インピーダンス 

測定用2電極式セル 

図1 電気化学的高温腐食試験用の電気化学セルの例 

加熱装置

電気化学セル

雰囲気ガス

供給装置

温度調節装置

電気化学
計測装置

排ガス処理

熱電対

加熱装置

電気化学セル

雰囲気ガス

供給装置

温度調節装置

電気化学
計測装置

排ガス処理

熱電対

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1) アノード分極曲線測定装置は,通常,ポテンショスタット,電位スイープ装置及び記録計からなる

[図3 a)参照]。 

2) 交流インピーダンス測定装置は,通常,ポテンショスタット,周波数応答解析器及びそれらを制御

するためのパーソナルコンピュータからなる[図3 b)参照]。 

ポテンンショスタット

電位スイープ装置

記録計

ポテンンショスタット

周波数応答解析器

コンピュータ

GPIB

(a) アノード分極曲線測定用 

(b) 交流インピーダンス測定用 

図 3 電気化学的高温腐食試験用の装置図の例 

4. 試験浴 試験浴は,溶融塩を用い,次による。 

a) 塩化物,硫酸塩若しくはそれらの混合塩,又は炭酸塩の溶融塩を用いる。 

それらの組成及び試験温度の例を表1に示す。試験に使用する塩は,試験対象となる環境に応じて

選定する。 

b) 塩化物,硫酸塩及び炭酸塩以外が関与する腐食環境を対象とする場合は,これら以外の溶融塩を用い

ることができる。 

c) 1回の腐食試験に用いる溶融塩量は,試料表面積100 mm2に対して20 ml以上とし,測定ごとに溶融

塩を交換する。 

d) 塩は,十分に乾燥してから用いる。 

表 1 試験浴の一例 

種類 

組成 (単位:mol%) 

試験温度(K) 

塩化物浴 

33.3NaCl-33.3KCl-33.3LiCl  

723以上 

50NaCl-50KCl 

973以上 

NaCl 

1 173以上 

硫酸塩浴 

33.3Na2SO4-33.3K2SO4-33.3ZnSO4  

723以上 

50Na2SO4-50Li2SO4   

973以上 

Na2SO4 

1 173以上 

塩化物/硫酸
塩混合塩浴 

25NaCl-25KCl-16.6Na2SO4 

-16.6K2SO4-16.6ZnSO4  

723以上 

25NaCl-25KCl-25Na2SO4-25K2SO4  

973以上 

50NaCl-50Na2SO4  

1 173以上 

炭酸塩浴 

62Li2CO3-38K2CO3 

823以上 

52Li2CO3-48Na2CO3 

823以上 

5. 雰囲気ガス 雰囲気ガスは,塩に応じたものを使用する。一般に使用する雰囲気ガスを,次に示す。

ただし,これらの混合比は受渡当事者間で協議し,決定する。 

a) 塩化物浴では,塩化水素(HCl),水蒸気(H2O),酸素(O2)及び窒素(N2)の混合ガス[窒素の代

わりにアルゴン(Ar)を用いてもよい。] 

b) 硫酸塩浴では,二酸化硫黄(SO2),酸素(O2)及び窒素(N2)の混合ガス[窒素の代わりにアルゴン

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(Ar)を用いてもよい。] 

c) 塩化物/硫酸塩混合塩浴では,a)又はb)いずれかの混合ガス 

d) 炭酸塩浴では,二酸化炭素(CO2)及び酸素(O2)の混合ガス 

e) 大気 

6. 試験片 試験片は,次による。 

a) 試験片の形状は,旗形状が望ましい。その代表的な寸法は,厚さ0.5〜2 mm,旗の部分10×10 mm,柄

の部分の幅1 mm,長さ90 mm程度とする。旗形状の試験片の模式図を図4 a)に示す。 

b) 電極表面積を限定するための試験片に対する特別な被覆は,通常,施さない。電気化学セル[3.c)]の溶

融塩と気相との界面以下に浸せきされた部分の試験片の表面積を電極表面積とみなす(1)。 

c) 旗形状以外の試験片を用いる場合は,試験面以外を絶縁被覆する必要がある。この場合には,被覆材

に対する溶融塩の反応性について十分考慮する必要がある。 

d) 試験片の表面は,全面をJIS Z 2290 の6.d)に規定する研磨布又は研磨紙で,順次P500番まで研磨を

行う。研磨終了後,適切な溶剤で洗浄して脱脂する。 

e) 旗形状試験片の柄の部分にニッケル線などをスポット溶接し,リード線とする。リード線部は,セラ

ミックス管で保護する。 

注(1) 試験結果に及ぼす溶融塩と気相との界面の影響を最小にするため,旗形形状の試験片が望まし

い。 

図 4 電極の例(ただし,参照電極は塩化物,及び塩化物・硫酸塩混合塩浴用) 

7. 電極 電極は,次による。 

a) アノード分極曲線測定の場合  

1) 試験片,対極及び参照電極の3電極を用いる[図2 a)参照]。 

2) 対極は,白金板又は金板とする。 

3) 参照電極は,次による。参照電極の一例を,図4 b)に示す。 

3.1) 肉厚1 mm以下のムライト製 (2) 一端閉管(例:内径4 mm,外径6 mm,長さ150 mm)を隔壁と

参照電極用 
溶融塩(含Ag+)

1 mm

10 mm

1

0

 m

m

溶融塩/気相 

界面

溶融塩

気相

1

5

 m

m

1

0

0

 m

m

銀板

銀線

ムライト管 

3-6mmφ

1mm

(a) 試験片 

(b) 参照電極 

図3 電極の例 (ただし、参照電極は塩化物、 

硫酸塩及び塩化物・硫酸塩混合塩浴用) 

1

0

0

電解液 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

する。 

3.2) 塩化物浴,硫酸塩浴及び混合塩浴では,電極を銀板とし,炭酸塩浴では白金板又は金板とする。 

3.3) 参照電極用電解液は,塩化物浴では試験浴に10 mol%のAgClを加えたもの,硫酸塩浴では試験浴

に10 mol%のAg2SO4 を加えたもの,混合塩浴では試験浴に10 mol%のAgCl又はAg2SO4を加え

たものを用い,また,炭酸塩浴では,試験浴に混合ガス[(66.7 %CO2−33.3 %O2)(体積%)]を吹き込

んだガス電極を用いる。 

注(2) ムライトはNa+伝導固体電解質のため,Na+を含む溶融塩を試験浴として用いる場合だけ使用

できる。Li2CO3-K2CO3系試験浴を使用する場合には,ムライト管の底に小孔をあけて液絡とす

る。 

b) 交流インピーダンス測定の場合 

1) 2枚の同種,同寸法の試験片の2電極式を用いる[図2 b)参照]。 

2) 2電極間の距離は,10〜15 mmとし,平行に対向させる。 

8. 試験 試験は,次による。 

a) 電気化学セルを加熱炉中にセットし,不活性ガスを流しながら昇温する。昇温中は,試験片をできる

だけ上部(低温部)に保持する。塩が融解する直前に,試験用の雰囲気ガスに切り換える。ガス流量

は,測定に影響を及ぼさない範囲とする。 

b) 試験温度に達して塩が完全に融解した後,電極を溶融塩中に浸せきする。このとき,試験片電極の浸

せき深さは旗底部から約15 mmとする(図4参照)。所定時間浸せきした後,測定を開始する。 

c) 測定は,次による。 

1) アノード分極曲線の測定 腐食電位Ecorrから貴方向に電位走査速度0.3〜1 mV/sで電位を変化させ

て,電流−電位曲線を記録する。 

2) 交流インピーダンスの測定 腐食電位において,高周波数(10 kHz)のインピーダンスZHと低周波

数(10 mHz)のインピーダンスZLとを連続的に計測する。2電極間に印加する交流電圧の振幅は

10 mVとする。測定は,15〜30分間隔で,インピーダンスの値が定常値に達するまで行い,その間,

インピーダンスの経時変化を記録する。10時間経過後も定常値が得られない場合には,測定を終了

する。 

9. 腐食の判定方法 腐食の程度の判定方法は,次による。 

a) アノード分極曲線による判定 一定電位における電流密度を比較することによって,試料表面に形成

される皮膜の保護性の優劣を判定する。この値が小さいものほど皮膜の保護性に優れる。 

b) 交流インピーダンスによる判定 

1) 腐食の程度を判定するパラメータZcorr(Ωm2)を次の式によって決定する。 

2

/

)

(

H(Final)

L(Final)

corr

S

Z

Z

Z

×

=

ここで,ZL(Final)(Ω)は,低周波数インピーダンスの定常値,ZH(Final) (Ω)は,高周波数インピーダン

スの定常値である。ただし,定常値が得られない場合には10時間後の値を使う。Sは,試験片電極

の有効電極表面積(m2),すなわち溶融塩に浸せきされた部分の試験片の表面積である。また,右辺

の2は,2電極式セルでは2組の試験片電極と電解液界面との直列結合となるため,1組当たりの値

に換算する係数である。ただし,3電極式セルを使ってインピーダンスを測定する場合は,試験片

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電極が一つだけなので2で除す必要はない。 

2) Zcorrの値が大きい試料ほど腐食しにくいと判定する。ただし,インピーダンスの値が定常値を示さ

ない試験片は,腐食試験後の表面観察や腐食減量を考慮して優劣を判断する必要がある。 

10. 記録及び報告  

10.1 記載事項 試験結果報告書には,次の項目を記載する。 

a) アノード分極曲線測定の場合  

1) 試験材料 材料の名称,規格及び化学組成 

2) 試験片 数,寸法,有効電極表面積(S),表面仕上げ状態及び脱脂方法 

3) 試験条件  

3.1) 腐食条件 試験温度(最高温度及び最低温度),測定開始までの浸せき時間,溶融塩の種類及び組

成,雰囲気ガス組成及びその流量 

3.2) 分極測定条件 測定装置の名称,電位走査速度及び参照電極の種類 

4) 試験結果 電流密度−電位曲線及び腐食電位 

b) 交流インピーダンス測定の場合  

1) 試験材料 a) 1)に同じ。 

2) 試験片 a) 2)に同じ。 

3) 試験条件  

3.1) 腐食条件 試験温度(最高温度及び最低温度),試験時間,溶融塩の種類及び組成,雰囲気ガスの

組成及びその流量 

3.2) インピーダンス測定条件 測定装置の名称,交流電圧の振幅,高周波及び低周波の周波数並びに

測定間隔 

4) 試験結果 高周波インピーダンス(ZH)及び低周波インピーダンス(ZL)の経時変化並びにこれら

の特徴,ZH(Final),ZL(Final) ,Zcorr 

10.2 付記事項 試験結果報告には,次の項目についての記録を付記することが望ましい。これらの項目

は,アノード分極曲線測定及び交流インピーダンス測定に共通である。 

a) 試験材料 素材の形態(板,管など),熱処理の有無(ありの場合はその条件) 

b) 素材の機械的強度  

c) 試験装置の概要  

d) 試験条件 昇温条件及び冷却(降温)条件 

e) 試験結果 試験後の試験片の外観写真