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Z 2287:2003 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

まえがき 

この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日

本工業規格である。 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格             JIS 

Z 2287:2003 

ボイラ管用金属材料の水蒸気酸化試験方法 

Method for steam oxidation test of boiler tube metallic materials 

序文  この規格は、市場の要請に応じて製造されるボイラ管用金属材料の水蒸気酸化特性を評価するため

に制定された日本工業規格である。 

1. 適用範囲 この規格は、高温におけるボイラ管用金属材料の水蒸気酸化試験方法について規定する。 

2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す

る。これらの引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。 

JIS B 7502 マイクロメータ 

JIS B 7507 ノギス 

JIS C 1602 熱電対 

JIS R 6251 研磨布 

JIS R 6252 研磨紙 

JIS Z 8401 数値の丸め方 

3. 定義 この規格で用いる主な用語の定義は,次による。 

a) スケール 酸化試験後に試験片表面に生じた酸化膜及び酸化生成物。 

b) 密着スケール 酸化試験後の試験片に密着しているスケール。 

c) はく(剥)離スケール 酸化試験後の試験片からはく離したスケール。 

d) 内層スケール 主に酸素の内向き拡散で成長したスケールの部分。 

e) 外層スケール 主に鉄の外向き拡散で成長したスケールの部分。 

4. 試験装置  

4.1 

試験装置の構成 試験装置は、試験片を一様、かつ、一定に加熱するための温度調節装置、試験片

を外気から隔離する試験室を備えた加熱装置、水蒸気発生装置、水又は水蒸気流量を制御する装置から構

成する。試験装置の基本構成例を図1に示す。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

図 1 試験装置の例 

4.2 

温度調節装置  

a) 温度制御器 温度制御器は、測定温度の全範囲にわたって、試験片温度が表1の許容範囲内にあるこ

とを保証するのに十分なものとする。 

表 1 試験片温度の許容範囲 

試験片温度 

873K以下 

873Kを超え1073K以下 

1073Kを超え1273K以下 

許容温度範囲 

±3K 

±4K 

±5K 

備考 試験片の設定温度及び規定外の試験温度の許容範囲は,受渡当事者間の協定による。 

b) 熱電対 熱電対は、JIS C 1602によるほか,次による。 

なお、熱電対以外の温度計を使用してもよい。その場合には,熱電対と同等以上の精度の温度計を用い

る。 

1) 熱電対の材料は、試験温度に十分に耐えられるものとする。 

 素線の径は、使用中に熱起電力の変化しない範囲で、なるべく小さくすることが望ましい。 

2) 熱電対は,JIS C 1602によって校正を行う。校正は,使用する熱電対と同一ロットの素線からなる

別の熱電対を用いて行ってもよい。 

4.3 

加熱装置 加熱装置は,次による。 

a) 加熱装置は,温度調節装置と加熱炉とで構成し、外気から遮へいされた試験室をもつ構造とする。 

b) 加熱装置は、試験中は常に,試験片の全範囲にわたり、表1の許容温度範囲内で、一様、かつ、一定

の温度に試験片を加熱することのできるものとする。 

4.4 

試験室 試験室は、次による。 

a) 試験室は、試験片単位表面積当たり一定量の水蒸気を連続して流せるように,外気から遮へいされた

構造とする。 

b) 試験室は、耐水蒸気酸化性の優れた材料で構成する。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

c) 試験室は,その中央に熱電対の測温接点を配置し、試験片の温度が表1の許容温度範囲内にあること

が確認できるようにする。 

4.5 

水蒸気発生装置 水蒸気発生装置は、次による。 

a) 水蒸気発生装置は,水蒸気の一定量を連続して4.4の試験室に供給できるものとする。 

b) 水蒸気発生に使用する水は,電気伝導率が100μS・m−1以下の純水とする。 

c) 水蒸気発生装置と試験室との間は,水蒸気が結露しないように保温する。 

5. 試験片 試験片は、次による。 

a) 試験片は,通常,平板とし,その寸法は,長さ10〜30mm,幅10〜30mm,厚さ1〜3mmとする。 

 なお,このような試験片を採取することができない場合は,試験片は,200mm2以上の表面積をも

つものが望ましい。 

b) 試験に用いる試験片の枚数は,通常,2枚以上とする。 

c) 試験片表面の最終仕上げは,JIS R 6251及び JIS R 6252に規定する研磨剤粒度の種類が320番以上の

研磨剤で行う。ただし,特に表面状況に敏感なオーステナイト系ステンレス鋼などにおいては,化学

研磨,電解研磨などを行い,機械加工の影響が残らないようにする。 

   なお,これら以外の表面仕上げを行った場合には,その表面仕上げの状態を記述する。 

d) 試験片は,適切な溶剤で脱脂洗浄した後,乾燥する。 

e) 酸化増量又は酸化減量を測定する場合は、試験片の寸法は,JIS B 7502及びJIS B 7507に規定する測

定器によって±0.02mmの精度で測り,試験片の質量は,感度0.1mg以上の天びんによってはかり,

JIS Z 8401によってミリグラム(mg)単位で小数点第1位のけたに丸める。 

6. 試験方法  

6.1 

加熱方法 加熱方法は、次による。 

a) 試験片の質量を0.1 mgのけたまではかった後,試験室に試験片をセットし(1)、アルゴン又は窒素で

置換した後、水蒸気を送入し,加熱を開始する。アルゴン又は窒素での置換に当たっては、減圧装置

又は真空装置を使用することが望ましい。 

b) 加熱は,試験片の温度が表1の許容温度範囲になるように行う。 

c) 昇温及び降温は,結露しない範囲で,水蒸気雰囲気中で行う。 

注(1) 複数の試験片を同時に試験し、酸化の程度を酸化増量で評価する場合は、試験片を独立した試

験片支持具に装着し、それぞれの試験片のはく離スケールがすべて回収できるようにする。 

6.2 

試験時間 試験時間は,加熱によって試験片温度が表1の許容温度範囲の下限を超えた時点から積

算し,通常500時間以上とする。 

6.3 

試験片の冷却 試験終了後,試験片の結露を防止しながら,室温まで降温する。 

6.4 

試験片の表面観察 試験片の表面観察は,受渡当事者間の協定による。 

6.5 

スケール厚さの測定 スケール厚さの測定は、次による。 

a) スケールの厚さは,試験片断面上の長さ10mmにわたり,代表的な個所5点以上を適当な倍率の顕微

鏡によって観察測定し,平均値,最大値及び最小値で示す。また特異な部分は別途報告する。複数の

試験片で試験したときは、それぞれの値を併記する。 

b) スケール厚さは,内層スケール又は全層(内層+外層)スケールの少なくともいずれかの厚さを指す

ものとし,測定結果にはそのいずれを用いたかを明記する。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

c) スケール厚さは、マイクロメータ(μm)単位で表示する。 

6.6 

酸化増量の測定 酸化増量の測定は、次による。 

a) 試験終了後の試験片及びすべてのはく離スケールの各々を回収し,試験片及びはく離スケールの質量

を0.1mgのけたまで測る。 

b) 酸化増量を、次の式によって有効数字3けたまで求める。 

Ao

Mo

Ms

Mt

a

+

=

          ここに、a:酸化増量(kg・m−2) 

              M o:6.1a)で得た試験前の試験片の質量(kg) 

              Mt:a)で得た試験後の試験片の質量(kg) 

              Ms:a)で得たはく離スケールの質量(kg) 

              Ao:試験前の試験片の表面積(㎡) 

6.7 

酸化減量の測定 酸化減量の測定は、次による。 

a) 試験終了後の試験片の密着スケールを取り除いた後,その試験片の質量を0.1mgのけたまで測る。 

   スケールは次の方法例の中から適当な方法によって除去する。 

・NaOH40%+Na2CO360%溶融塩中での電解 

・(NaOH18%+KMnO4 3%)水溶液で煮沸後,10%クエン酸二アンモニウム水溶液で煮沸(耐熱鋼,超合金

対象) 

・インヒビターを添加した333Kの5%HCl水溶液中に浸せき(炭素鋼及び低合金鋼対象) 

  いずれの場合も,脱スケール後は十分洗浄して乾燥する。 

b) 酸化減量を、次の式によって有効数字3けたまで求める。 

Ao

Md

Mo

b

=

       ここに、b:酸化減量(kg・m−2) 

            Mo:6.1a)で得た試験前の試験片の質量(kg) 

           Md:a)で得た脱スケール後の試験片の質量(kg) 

           Ao:試験前の試験片の表面積(㎡) 

7. 報告  

7.1 

記載事項 試験結果報告書には,通常,次の項目を記載する。 

a) 試験材料  

1) 材料の規格又は名称  

2) 種類又は記号 

3) 化学成分 

4) 加工条件 

5) 熱処理条件 

b) 試験片 

1) 試験片の数 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

2) 試験片の寸法、質量及び表面積 

3) 試験片表面仕上げ状態 

4) 試験片の脱脂方法 

c) 試験条件  

1) 試験温度、最高温度及び最低温度 

2) 試験時間 

3) 水蒸気発生用水の性状(電気伝導度、溶存酸素量、脱気方法、その他) 

4) 水蒸気流量又は平均流速及び圧力 

5) キャリアガスを用いる場合はそのガスの組成 

6) 脱スケール方法  

d) 試験結果 次の1)〜3)のうちの少なくとも一つの項目及び4)の項目 

1) 酸化増量 

2) 酸化減量 

3) 内層スケール厚さ又は全層スケール厚さ 

4) 最大侵食部などの特異部の性状 

7.2 

付記事項 試験結果報告書には、次の項目についての記録を付記することが望ましい。 

a) 試験材料  

1) 素材の結晶粒度番号 

2) 素材の室温における機械的性質 

3) 製造業者名 

b) 試験片  

1) 素材からの試験片採取方法 

c) 試験装置の概要  

d) 試験条件  

1) 昇温時間 

2) 冷却時間 

3) 試験中断の回数などの履歴 

e) 試験結果  

1) 試験後の外観写真 

2) 試験後の試験片中央表層のスケールを含む断面写真 

3) 試験後の試験片特異部の断面写真。