Z 2285:2003
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法第12条第1項の規定に基づき,財団法人大阪科学技術センター(OSTEC)/
財団法人日本規格協会(JSA)から工業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があり,日
本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本工業規格である。
この規格の一部が,技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の
実用新案登録出願に抵触することがあることに注意を喚起する。 経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,
このような技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の実用新案登
録出願にかかわる確認について,責任はもたない。
この規格は,安全問題のすべてを包含しているわけではない。適切な安全性と健康管理の確保,及び適
用限界の適否の決定は,この規格の利用者の責任である。
JIS Z 2285には,次に示す附属書がある。
附属書(参考) 装置の構成例,融点による温度の校正方法及び標準物質の熱膨張並びに線膨張係数の
推奨値
Z 2285:2003
(2)
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目 次
ページ
1. 適用範囲 ························································································································ 1
2. 引用規格 ························································································································ 1
3. 定義 ······························································································································ 1
4. 測定装置 ························································································································ 1
5. 試料及び標準物質 ············································································································ 2
5.1 試料 ···························································································································· 2
5.2 標準物質 ······················································································································ 2
6. 装置の校正 ····················································································································· 2
6.1 長さ変化量の校正 ·········································································································· 2
6.2 温度の校正 ··················································································································· 2
7. 操作 ······························································································································ 2
8. 熱膨張,平均線膨張係数及び線膨張係数の求め方 ·································································· 3
9. 再測定 ··························································································································· 4
10. 有効数字の取扱い ·········································································································· 5
11. 報告 ···························································································································· 5
附属書(参考)装置の構成例,融点による温度の校正方法及び標準物質の熱膨張並びに線膨張係数の
推奨値 ··········································································································· 6
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日本工業規格 JIS
Z 2285:2003
金属材料の線膨張係数の測定方法
Measuring method of coefficient of linear thermal expansion
of metallic materials
1. 適用範囲 この規格は,熱機械分析装置及び光走査式測定装置を用いた室温から1 500 ℃の温度域に
おける金属材料の線膨張係数の連続昇温測定方法及び高温保持測定方法について規定する。
2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによってこの規格の規定の一部を構成する。
これらの引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS B 0621 幾何偏差の定義及び表示
JIS B 7502 マイクロメータ
JIS C 1602 熱電対
JIS Z 8401 数値の丸め方
JIS Z 8704 温度測定方法−電気的方法
3. 定義 この規格で用いる主な用語の定義は,次による。
a) 熱膨張 試料の温度 (T) をT1からT2 (T1<T2) まで変化させることによって,試料の長さ (L) がL1
からL2まで変化したとき,長さの変化量 (∆L=L2−L1) の室温 (T0) における試料の長さ (L0) に対す
る比を温度T1と温度T2との間の熱膨張 (εth) という。T1=T0の場合もこの定義範囲とする。熱膨張は
式(1)で算出する。
εth=∆L/L0 ················································································· (1)
b) 平均線膨張係数 a) で熱膨張th
εを温度差 (∆T=T2−T1) で除した値を,温度T1と温度T2との間の平
均線膨張係数 (α) という。T1=T0の場合もこの定義範囲とする。平均線膨張係数は式 (2) で算出す
る。
α=εth/∆T······································································································· (2)
c) 線膨張係数 b) の平均線膨張係数αにおいて,温度T2を温度T1に限りなく近づけた値を温度T1にお
ける線膨張係数 (α) という。線膨張係数は式 (3) で算出する。
1
0
th
0
1
2
th
1
2
)
/
(
)
/
(
lim
])
/(
[
lim
T
T
L
dT
dL
T
Δ
ε
T
T
ε
α
T
Δ
T
T
=
=
=
−
=
→
→
············· (3)
4. 測定装置 測定装置は,長さ又はその変化量測定系,炉体,温度制御系,温度測定系及び雰囲気制御
系で構成し,次の性能を満たしていなければならない。熱機械分析装置及び光走査式測定装置の構成につ
いては,附属書に例を示す。
a) 長さの変化量の検出感度 試料の0.1 μmの長さの変化を検出できるものとする。
2
Z 2285:2003
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b) 昇温速度及び降温速度 試料を5 K/min以上の一定の速度で加熱昇温させる能力をもつものとする。
また,試料の温度を一定の速度で降温させることができることが望ましい。
c) 恒温保持 所定の温度において,試料を一定の温度に保持することができることが望ましい。
d) 温度の測定 試料温度の測定は,JIS C 1602に規定する熱電対を使用し,JIS Z 8704に規定する温度
の電気的測定方法によることが望ましい。
e) 測定雰囲気 試料が著しく酸化しないよう,試料周辺に不活性気体を一定流量で流すことができるも
のとする。
5. 試料及び標準物質
5.1
試料 試料は,次による。
a) 形状及び寸法 熱機械分析装置の場合の試料の標準的な形状及び寸法は,長さ10〜20 mm,断面が一
辺5 mmの角柱又は直径5 mmの円柱とし,両端はJIS B 0621に規定する平行度公差25 μmとする。
ただし,受渡当事者間で合意すればこれ以外の形状及び寸法であってもよい。光走査式測定置の場合
には,熱機械分析装置の場合と同じであってもよいが,必ずしもこの形状及び寸法とする必要はない。
附属書に例を示す。
b) 前処理 試料は,加工による残留ひずみを内包していることが想定される場合,適切な温度で熱処理
し,ひずみを除去することが望ましい。
c) 個数 試料は,複数個準備することが望ましい。
5.2
標準物質 標準物質は,次による。
a) 形状及び寸法 試料と同一形状,同一寸法とすることが望ましい。
b) 材質 測定温度範囲での熱膨張が既知のものとする。熱機械分析装置の場合に使用する材質は,検出
棒と同材質とすることが望ましい。一般的な検出棒の材質は,石英ガラス及び高純度アルミナで,こ
れらの線膨張係数の奨励値を附属書に示す。
6. 装置の校正
6.1
長さ変化量の校正 熱機械分析装置の場合には,JIS B 7502に規定する外側マイクロメータ又は装
置に附属のマイクロメータによって,変位計の出力を校正する。標準物質と同一材質及び同一形状の試料
を用い,実際の測定と同じ条件で測定を行いベースラインの変化を測定する。
6.2
温度の校正 連続昇温測定法では,実際の測定と同じ条件で加熱し,複数の温度校正用物質の融解
に伴う変位を検出し,熱電対指示温度を補正する。個々の温度校正用物質の融点間は,線形補間又は多項
式補間を行う。融点の決定方法については,附属書に示す。恒温保持測定方法では,試料温度は熱電対の
指示温度とし,融点補正は行わない。
7. 操作 連続昇温測定方法及び恒温保持測定方法における操作は,次による。
a) 連続昇温測定方法における操作 試料を5 K/min以下の一定昇温速度で加熱しながら十分に短い時間
間隔で,長さ又はその変化量及び温度を測定する。
b) 恒温保持測定方法における操作 試料を5 K/min以下の一定昇温速度で加熱し,所定の恒温保持温度
に達した後その温度に保持する。昇温時及び恒温保持時に十分に短い時間間隔で,長さ又はその変化
量及び温度を測定する。恒温保持状態を15分以上継続し,更に指示温度 (T2) の変化が,指示温度と
室温との温度差の±1 %又は±3 Kのうち,どちらか小さい方の値以下となるように,指示温度を保持
3
Z 2285:2003
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
する。この状態において長さ又はその変化量及び平均線膨張係数を測定する。恒温保持温度を低温側
から高温側に高めながら,数段階の温度で測定する。
c) 両測定方法に共通する操作 両測定方法に共通する操作は,次による。
1) 試料表面を清浄にして試料ホルダ又は試料台に設置する。熱機械分析装置の場合は,試料に検出棒
を静かに当て,0.1 N以下の荷重を加える。
2) 熱電対を試料の中央部で,できるだけ表面に近接させて設置する。
3) 試料周辺の雰囲気を不活性気体で置換し,更に一定流量で不活性気体を流す。その後,加熱を開始
する。
4) 最高測定温度における測定をした後の冷却時における測定は,受渡当事者間の協議による。
5) 測定した後,試料表面の状態変化を観察し,顕著な変色,表面粗さの変化などが認められる場合に
は,その原因を究明し再測定を行う。
6) 測定は,1試料について1回行うものとし,複数個の試料で測定を行うことが望ましい。
7) 温度校正用融点測定,ベースライン測定及び試料の測定の間で熱電対位置を変更してはならない。
8. 熱膨張,平均線膨張係数及び線膨張係数の求め方 熱膨張,平均線膨張係数及び線膨張係数の求め方
は,次による。
a) 試料の長さを直接測定できる装置の場合 試料の長さを直接測定できる装置(例えば,光走査式測定
装置)の場合,測定値を3.で定義した式に直接代入して求める。
1) 熱膨張を,式 (4) によって算出する。
2) 平均線膨張係数を,式 (5) によって算出する。
3) 線膨張係数を,式 (6) によって算出するか又は温度T1近傍において適切な温度間隔と試料長さ変化
を用いた差分法で算出する。
εth=∆Lsp/L0 ··············································································· (4)
α=εth/∆T ················································································· (5)
0
1
2
th
1
2
]
/)
(
[
])
/(
[
lim
L
dT
T
dL
T
T
ε
α
T
T
=
−
=
→
T=T1 ······································· (6)
ここに,
εth: 温度T1と温度T2との間の熱膨張(無次元又は%)
∆Lsp: 温度T1と温度T2との間の試料の長さの変化量 (m)
L0: 室温における試料の長さ (m)
∆T: 温度T1と温度T2との間の温度差 (T2−T1) (K)
α: 温度T1と温度T2との間の平均線膨張係数 (K−1)
L: 試料の長さ (m)
L(T): 温度Tの関数として,次の式のように多項式回帰で表した温度
Tにおける試料の長さ (m)
L≡L (T) =a0+a1 T+a2 T 2+……+an T n
(a0,a1,a2,……,an,nは,温度に関係のない定数)
dL(T)/dT: dL(T)を温度で微分した式。
b) 試料の長さを直接測定できない装置の場合 試料の長さを直接測定できない装置(例えば,熱機械分
析装置)の場合,測定値を次に示す式に代入して求める。
4
Z 2285:2003
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1) 熱膨張を,式 (7) で算出する。
2) 平均線膨張係数を,式 (8) で算出する。
3) 線膨張係数を,式 (9) で算出する。又は温度T1近傍において適切な温度間隔と試料長さ変化とを用
いた差分法で算出する。
εth=∆Lsp/L0= (∆Lsp, m−∆Lref, m+∆Lref) /L0 ········································· (7)
α= (∆Lsp, m−∆Lref, m) / (L0×∆T) +
ref
α ··········································· (8)
0
1
2
th
1
2
]
/)
(
[
])
/(
[
lim
L
dT
T
dL
T
T
ε
α
T
T
=
−
=
→
T=T1 ······································· (9)
ここに,
εth: 温度T1と温度T2との間の熱膨張(無次元又は%)
∆Lsp: 温度T1と温度T2との間の試料の長さの変化量 (m)
L0: 室温における試料の長さ (m)
∆Lsp, m: 試料を測定したときの温度T1と温度T2とにおける変位計の指示
値の差 (m)
∆Lref, m: 全膨張式熱機械分析装置の場合には,試料ホルダと同じ材質で作
られ,温度T1で長さL1となる試料を用いてベースライン測定し
たときの,温度T1と温度T2における変位計の指示値の差 (m)。
示差膨張式熱機械分析装置の場合には,試料と同じ寸法で作られ
た標準物質の試料を用いてベースライン測定したときの,温度
T1と温度T2における変位計の指示値の差 (m)。
∆Lref: 全膨張式熱機械分析装置の場合には,温度T1で長さL1の試料ホ
ルダの温度T1と温度T2との間の長さの変化量 (m)。示差膨張式
熱機械分析装置の場合には,温度T1と温度T2との間の標準物質
の長さの変化量 (m)
α: 温度T1と温度T2との間の試料の平均線膨張係数 (K−1)
∆T: 温度T1と温度T2との間の温度差 (T2−T1) (K)
ref
α
: 温度T1と温度T2との間の標準物質の平均線膨張係数 (K−1)
L0 (ref): 室温での標準物質の長さ (m)
α: 温度T1における試料の線膨張係数 (K−1)
L: 試料の長さ (m)
L (T): 温度Tの関数として,次の式のように多項式回帰で表した温度T
における試料の長さ (m)
L=L (T) =a0+a1 T+a2 T2+……+an Tn
(a0,a1,a2,……,an,nは,温度に関係のない定数)
dL (T) /dT : L (T) を温度Tで微分した式
9. 再測定 複数回測定した測定結果の平均値と標準偏差を計算し,各測定値の平均値からの偏差が各測
定値の標準偏差に対して有意に大きい値がある場合,再測定することが望ましい。測定データに相変態な
どの特異点があった場合は再測定することが望ましい。
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10. 有効数字の取扱い 算出した値は,JIS Z 8401によって必要とされるけた数に丸める。
11. 報告 報告書には,必要に応じて次の事項を記載する。
a) 試料名,試料の材質,その他試料についての知見
b) 装置の測定方式
c) 測定装置の製造業者名及び型式
d) 熱膨張の測定方法
e) 線膨張係数を差分法で求めた場合の算出方法
f)
温度と熱膨張及び温度と平均線膨張係数のリスト
g) 温度に対する熱膨張及び温度に対する平均線膨張係数のグラフ
h) 長さ及び線膨張係数を示す多項次回帰式
i)
測定前後での試料形状,寸法及び質量
j)
熱機械分析装置の場合,検出棒から試料へ加わる荷重
k) 測定に用いた雰囲気気体及びその流量
l)
測温熱電対の種類及び線径
m) 温度の校正に用いた純物質及び熱電対温度の補正量
n) 標準物質及び補正に使用したデータ並びに検出棒及び支持管の材質
o) 測定年月日
p) この規格に合致しない事項又は受渡当事者間で協定した事項
q) その他必要とする事項
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附属書(参考) 装置の構成例,融点による温度の校正方法及び
標準物質の熱膨張並びに線膨張係数の推奨値
この附属書(参考)は,装置の構成例,融点による温度の校正方法及び標準物質の熱膨張並びに線膨張
係数の推奨値について記述するものであり,規定の一部ではない。
1. 装置の構成例
1.1
熱機械分析装置
1.1.1
全膨張式熱機械分析装置
a) 装置の構成 全膨張式熱機械分析装置の構成例を,附属書図1に示す。
附属書図 1 全膨張式熱機械分析装置の構成例
b) 全膨張式熱機械分析装置による測定原理 附属書図1に示す検出棒の最下部に試料を設置し,加熱炉
で所定の昇温速度で加熱する。試料ホルダと検出棒とからなる全系の熱膨張特性及び試料の熱膨張特
性を比較,相殺し,試料の熱膨張量を求める。熱膨張量は,試料に温度変化 (∆T) を与えたときの変
位計の指示値の差 (∆Lsp, m) に,同一条件の標準物質の指示値の差 (∆Lref, m) 及び試料ホルダの長さの
変化量 (∆Lref) の補正を加えて算出する。
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c) 熱膨張の求め方 試料を設置し,温度変化∆Tを与えたときの変位計の指示値の差∆Lrp, mは,式(1)で表
すことができる。
∆Lsp, m=∆Lsp−∆Lrod+∆Lbl ····························································· (1)
ここに,∆Lspは試料の長さの変化量,∆Lrodはこの温度変化による試料ホルダの長さの変化量,∆Lb1
はベースラインの変動量である。
試料ホルダの長さ変化量とベースラインの変動量を求めるために,標準物質(試料ホルダと同一材
質で試料と同一寸法が望ましい。)を,通常試料を設置する位置に設置し,試料の測定と同一測定条件
下で,温度変化∆Tに対する変位計の指示値を測定する。このときの指示値の差∆Lref, mは,式(2)で示す
ことができる。
∆Lref, m=∆Lref−∆Lrod+∆Lbl·························································· (2)
したがって,
∆Lref, m−∆Lref=−∆Lrod+∆Lbl······················································· (3)
となる。式 (1) 及び式 (3) から,熱膨張は,
εth=∆Lsp/L0= (∆Lsp, m−∆Lref, m+∆Lref) /L0 ········································· (4)
で表される。
これを,平均線膨張係数の形で表すと,
)
(/
0
sp
sp
T
L
L
∆
∆
・
=
α
ref
0
m
ref,
m
sp,
)
(/)
(
α
+
・
−
=
T
L
L
L
∆
∆
∆
······································ (5)
となる。ここで,
)
(/
)
ref
(0
ref
ref
T
L
L
∆
∆
・
=
α
··························································· (6)
ref
α
は,標準物質の平均線膨張係数,L0 (ref)は,室温での標準物質の長さである。
1.1.2
示差膨張式熱機械分析装置
a) 装置の構成 示差膨張式熱機械分析装置の構成例を,附属書図2に示す。
8
Z 2285:2003
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附属書図 1 示差膨張式熱機械分析装置の構成例
b) 示差膨張式熱機械分析装置による測定原理,測定試料及び標準物質は試料ホルダに設置され,それぞ
れの上端に検出棒が接触する。試料側の検出棒は差動トランスのコアに,標準物質側の検出棒はコイ
ルに接続され,加熱中の試料と標準物質の寸法変化の差が差動トランスの信号として検出される。温
度T1と温度T2との間の試料の長さ変化量は,温度T1と温度T2との間で得られた信号に温度T1と温度
T2との間における標準物質の長さ変化量を加算して求める。
なお,測定中の試料には,荷重コントロール部で発生した荷重が負荷される。
熱膨張は,式 (7) で算出する。また平均線膨張係数は,式 (8) で算出する。
∫
∆
∆
∆
2
1
0
ref)
(
0
m
ref,
m
sp,
0
sp
th
/]
)
(
[
/
T
T
L
dT
T
G
L
L
L
L
L
・
+
−
=
=
ε
······························· (7)
)
(/
/]
)
(
[
0
0
)
ref
(
0
m
ref,
m
sp,
2
1
T
L
L
dT
T
G
L
L
L
T
T
∆
×
∆
∆
∫
・
+
−
=
α
······························ (8)
ここに,
∆Lsp: 温度T1,温度T2間の試料の長さの変化 (m)
L0: 室温での試料の長さ (m)
∆Lsp, m: 試料を測定したときの,温度T1,温度T2における変位計の指示
値の差 (m)
∆Lref, m: 標準物質と同一材質,同一寸法の試料でベースライン測定した
ときの温度T1,温度T2における変位計の指示値の差 (m)
G (T): 温度Tにおける微小範囲の線膨張係数を表す近似式で標準物質
の線膨張係数の温度関数 (K−1)
9
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c) 熱膨張の求め方 試料を設置し,温度変化∆Tを与えたときの変位計の指示値の差∆Lsp, mは,式 (9) で
表すことができる。
∆Lsp, m=∆Lsp−∆Lref+∆Lbl ····························································· (9)
ここに,∆Lspは試料の長さの変化,∆Lrefはこの温度変化による標準物質試料の長さの変化,∆Lblは
ベースラインの変動である。
ベースラインの変動を求めるために,標準物質で作られた測定用試料と同一形状,同一寸法の試料
を,通常測定用試料を設置する位置に設置し,測定用試料と同一測定条件下で,温度変化∆Tに対する
変位計の指示値を測定する。この指示値の差∆Lref,mは,式 (10) で表すことができる。
∆Lref, m=∆Lref−∆Lref+∆Lbl=∆Lbl ·················································· (10)
したがって,この値がベースラインの変動を表すことになる。
式 (9) 及び式 (10) から,熱膨張は式 (11) で表される。
εth=∆Lsp/L0= (∆Lsp, m−∆Lref, m+∆Lref) /L0 ······································· (11)
この式は1.1.1の式 (4) と同じ形である。
これを,平均線膨張係数の形で表すと,式 (12) となる。
)
(/
0
sp
sp
T
L
L
∆
∆
・
=
α
ref
0
m
ref,
m
sp,
)
(/)
(
α
+
・
−
=
T
L
L
L
∆
∆
∆
···································· (12)
1.2
光走査式測定装置
a) 装置の構成 光走査式測定装置の構成例を,附属書図3に示す。
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附属書図 3 光走査式測定装置の構成例
b) 光走査式測定装置による測定原理 長さ測定用プロープとしてHe-Neレーザ光を使用する。レーザ光
を試料の長さ測定方向に対して直角に照射し,長さ測定方向に走査させる。レーザ光は受光素子に入
射するが,エッジ検出①によって入射光の明暗が明確に検出され,モード選択②によって入射光が明
→暗→明と変化するときの暗となる時間,すなわち,試料によってレーザ光が遮られる時間を求める
ことができる。この時間を走査速度から長さに換算して試料長さを求める。
2. 融点による温度の校正方法
2.1 示差膨張式熱機械分析装置 示差膨張式熱機械分析装置による融点測定の場合の試料部の配置例を,
附属書図4に示す。
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Z 2285:2003
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書図 4 示差膨張式熱機械分析装置による融点測定方法
2.2
光走査式測定装置 光走査式測定装置による融点測定の場合の試料部の配置例を,附属書図5に示
す。
附属書図 5 光走査式測定装置による融点測定方法
2.3
融点の決定 校正用物質の測定結果から,融点を決定する方法を示す。附属書図6に示すように,
校正用物質の測定では,試料の溶解に伴い,変位の指示値が急激に変化する。横軸は温度計(熱電対)の
指示温度である。図に示す2本の補助線の交点を融点の温度とする。温度校正用物質とその融点を附属書
表1に示す。
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Z 2285:2003
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
(µm)
附属書図 6 融点測定結果から融点を決定する方法(金の融点の測定例)
附属書表 1 温度校正用物質及び融点
物質名
融点
t90 (℃)
T90 (K)
インジウム
156.6
429.7
すず
231.9
505.1
亜鉛
419.5
692.7
アルミニウム
660.3
933.5
銀
961.8
1 234.9
金
1 064.2
1 337.3
備考 ITS-90では,上記の値は凝固点を示しているが,0.1 Kのけた
までの範囲においては,凝固点と融点は一致すると考えてよ
い。
2.4
熱電対による測定温度の校正方法 温度の校正は,附属書図7に従い次のように行う。校正用物質i
の融点の値(附属書表1参照)をTRefi,融点における熱電対の示す出力電圧を,JIS C 1602に規定する規準
熱起電力表に基づき換算した温度値をTTCiとすると,式 (13) が,その温度での補正値となる。
∆TCi=TRefi−TTCi ······································································· (13)
各校正用物質の測定から求められる∆TCi (i=1, 2, ・・・, n) を用いると,附属書図7に示すような関係
が得られる。ここで,室温TRef0では測定誤差はないと仮定している。二つの校正温度(TRefj-1及びTRefj)
間の任意の温度Tにおける校正後の温度は,熱電対が示す温度TTcに対して,式 (14) によって求められる。
)
(
)
(
)
(
1
Ref
Ref
1
Ref
Tc
1
C
C
1
C
Tc
−
−
−
−
−
−
−
+
+
=
j
j
j
j
j
j
T
T
T
T
T
Δ
T
Δ
T
Δ
T
T
×
························ (14)
なお,測定温度範囲が校正の最高温度を超える場合には,その温度に近い2点の補正値 (∆TCn-1,∆TCn) を
用いて外挿によって計算する。
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Z 2285:2003
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附属書図 7 融点測定結果から測定温度を補正する方法
3. 標準物質の熱膨張及び線膨張係数の推奨値
3.1
標準物質 熱機械分析装置に用いる石英ガラス製及びアルミナ製標準物質としては,それぞれ石英
ガラス及びアルミナを用いることが望ましい。
3.2
石英ガラスの熱膨張及び線膨張係数の推奨値 附属書表2に石英ガラスの熱膨張及び線膨張係数の
推奨値を示す。
附属書表 2 石英ガラスの熱膨張及び線膨張係数の推奨値
温度T
K
熱膨張∆L/L0
線膨張係数α
K−1
温度T
K
熱膨張∆L/L0
線膨張係数α
K−1
80 − 1×10−6
−0.70×10−6
320 13.5 ×10−6
0.53×10−6
90 − 7.5 ×10−6
−0.61×10−6
340 24.5 ×10−6
0.56×10−6
100 −13 ×10−6
−0.53×10−6
360 36
×10−6
0.58×10−6
110 −18 ×10−6
−0.46×10−6
380 47.5 ×10−6
0.60×10−6
120 −22.5 ×10−6
−0.38×10−6
400 59.5 ×10−6
0.61×10−6
130 −26 ×10−6
−0.31×10−6
420 72
×10−6
0.62×10−6
140 −28.5 ×10−6
−0.24×10−6
440 85
×10−6
0.63×10−6
150 −30.5 ×10−6
−0.17×10−6
460 97
×10−6
0.63×10−6
160 −32 ×10−6
−0.10×10−6
480 110
×10−6
0.63×10−6
170 −32.5 ×10−6
−0.04×10−6
500 122
×10−6
0.63×10−6
180 −32.5 ×10−6
0.02×10−6
520 135
×10−6
0.62×10−6
190 −32 ×10−6
0.08×10−6
560 159
×10−6
0.61×10−6
200 −31 ×10−6
0.13×10−6
600 183
×10−6
0.59×10−6
210 −29.5 ×10−6
0.19×10−6
640 206
×10−6
0.56×10−6
220 −27.5 ×10−6
0.23×10−6
680 228
×10−6
0.54×10−6
230 −25 ×10−6
0.28×10−6
720 249
×10−6
0.51×10−6
240 −22 ×10−6
0.32×10−6
760 269
×10−6
0.49×10−6
250 −18.5 ×10−6
0.36×10−6
800 288
×10−6
0.47×10−6
260 −14.5 ×10−6
0.39×10−6
840 307
×10−6
0.44×10−6
273 −9 ×10−6
0.43×10−6
880 324
×10−6
0.42×10−6
280 −6 ×10−6
0.45×10−6
920 340
×10−6
0.40×10−6
293 0
0.48×10−6
960 356
×10−6
0.38×10−6
298 2.5 ×10−6
0.49×10−6
1000 371
×10−6
0.37×10−6
3.3
アルミナの熱膨張及び線膨張係数の推奨値 附属書表3にアルミナの熱膨張及び線膨張係数の推奨
値を示す。
なお,α−アルミナは,三方晶系綱玉型であり単結晶の場合には,線膨張係数に異方性をもつが,多結
晶体又は通常の焼結体においては異方性はないと考えてよい。附属書表3の値も,各結晶方向について平
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
均した値である。
附属書表 3 アルミナの熱膨張及び線膨張係数の推奨値
温度T
K
熱膨張∆L/L0
線膨張係数α
K−1
温度T
K
熱膨張∆L/L0
線膨張係数α
K−1
20 −635×10−6
0.004×10−6
450
986×10−6
7.10×10−6
30 −635×10−6
0.016×10−6
500 1 350×10−6
7.46×10−6
40 −635×10−6
0.044×10−6
550 1 730×10−6
7.75×10−6
50 −634×10−6
0.095×10−6
600 2 125×10−6
7.99×10−6
60 −633×10−6
0.18 ×10−6
650 2 530×10−6
8.18×10−6
70 −631×10−6
0.29 ×10−6
700 2 940×10−6
8.35×10−6
80 −627×10−6
0.44 ×10−6
800 3 790×10−6
8.62×10−6
90 −622×10−6
0.61 ×10−6
900 4 665×10−6
8.86×10−6
100 −615×10−6
0.81 ×10−6
1 000 5 560×10−6
9.09×10−6
120 −595×10−6
1.28 ×10−6
1 100 6 485×10−6
9.34×10−6
140 −565×10−6
1.80 ×10−6
1 200 7 430×10−6
9.59×10−6
160 −524×10−6
2.34 ×10−6
1 300 8 400×10−6
9.85×10−6
180 −473×10−6
2.90 ×10−6
1 400 9 400×10−6
10.09×10−6
200 −410×10−6
3.42 ×10−6
1 500 10 420×10−6
10.31×10−6
250 −212×10−6
4.52 ×10−6
1 600 11 460×10−6
10.51×10−6
293 0
5.30 ×10−6
1 700 12 520×10−6
10.67×10−6
300 37×10−6
5.40 ×10−6
1 800 13 600×10−6
10.84×10−6
350 324×10−6
6.08×10−6
1 900 14 690×10−6
11.05×10−6
400 642×10−6
6.64×10−6
2 000 15 810×10−6
11.37×10−6
関連規格 JIS K 0129 熱分析通則
JIS R 1618 ファインセラミックスの熱機械分析による熱膨張の測定方法
JIS R 3251 低膨張ガラスのレーザ干渉法による線膨張率の測定方法
JIS Z 8103 計測用語
ISO 7991 Glass−Determination of coefficient of mean linear thermal expansion
ASTM E 831 Linear thermal expansion of solid materials by thermodilatometry
BS EN 821-1 : 1995 Advanced technical ceramics−Monolithic ceramics−Thermo-physical
properties−Part 1.Determination of thermal expansion