Z 0232:2020
(1)
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 1
3 用語及び定義 ··················································································································· 2
4 前処置···························································································································· 2
5 供試品···························································································································· 2
6 装置······························································································································· 3
7 試験方法························································································································· 4
8 試験報告························································································································· 5
附属書A(規定)一般的な輸送における加速度パワースペクトル密度 ············································· 7
附属書JA(参考)ランダム振動試験の特徴 ··············································································· 8
附属書JB(参考)JISと対応国際規格との対比表 ······································································ 12
Z 0232:2020
(2)
まえがき
この規格は,産業標準化法第16条において準用する同法第12条第1項の規定に基づき,公益社団法人
日本包装技術協会(JPI)及び一般財団法人日本規格協会(JSA)から,産業標準原案を添えて日本産業規
格を改正すべきとの申出があり,日本産業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本産業規
格である。これによって,JIS Z 0232:2004は改正され,この規格に置き換えられた。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本産業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
日本産業規格 JIS
Z 0232:2020
包装貨物−振動試験方法
Packaging-Complete, filled transport packages and unit loads-
Method of vibration test
序文
この規格は,2000年に第2版として発行されたISO 8318,及び2016年に第2版として発行されたISO
13355を基とし,日本の試験方法の実情を反映させるため,技術的内容を変更して作成した日本産業規格
である。
なお,この規格で点線の下線を施してある箇所は,対応国際規格を変更している事項である。変更の一
覧表にその説明を付けて,附属書JBに示す。
1
適用範囲
この規格は,包装貨物が輸送過程で受ける垂直振動に対する内容品又は包装の耐振性を評価する試験方
法について規定する。
注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
ISO 8318:2000,Packaging−Complete, filled transport packages and unit loads−Sinusoidal vibration
tests using a variable frequency
ISO 13355:2016,Packaging−Complete, filled transport packages and unit loads−Vertical random
vibration test(全体評価:MOD)
なお,対応の程度を表す記号“MOD”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“修正している”
ことを示す。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS Z 0108 包装−用語
JIS Z 0200 包装貨物−性能試験方法一般通則
JIS Z 0201 試験容器の記号表示方法
注記 対応国際規格:ISO 2206,Packaging−Complete, filled transport packages−Identification of parts
when testing(MOD)
JIS Z 0203 包装貨物−試験の前処置
注記 対応国際規格:ISO 2233,Packaging−Complete, filled transport packages and unit loads−
Conditioning for testing(MOD)
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3
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS Z 0108によるほか,次による。
3.1
加速度パワースペクトル密度(acceleration power spectral density)
ある中心振動数の狭帯域フィルタを通過した加速度信号のその部分の2乗平均値で,単位帯域幅当たり
で表し,帯域幅をゼロに近づけ,かつ,平均化時間を無限大に近づけたときの極限値。
3.2
実効値(root mean square value)
ランダム振動試験の場合に,加速度,速度又は変位の振幅量を表すときに使われるその関数の2乗平均
値の平方根の値。
3.3
統計的自由度(statistical degrees of freedom)
ある量を推定するときの独立変数の数,時間平均によってランダムデータの加速度パワースペクトル密
度を推定する場合,統計的自由度は振動数分解能及び有効平均化時間から求める。
a
e
d
2T
B
N=
ここに,
Nd: 統計的自由度
Be: 振動数分解能
Ta: 有効平均化時間
3.4
振動数分解能(frequency resolution)
加速度パワースペクトル密度の振動数間隔をヘルツ(Hz)で表した幅。
3.5
駆動信号クリッピング(drive signal clipping)
時刻歴波形の,実効値に対するピーク値の比である波高率による,駆動信号の最大値の制限。
4
前処置
供試品は,JIS Z 0203によって前処置を行う。この場合,前処置の温湿度条件は,試験の目的によって
定める。また,必要に応じて浸水,散水などを施す。ただし,これらの条件以外の特別な試験条件を必要
とする場合には,受渡当事者間の協定によって実施することができる。
5
供試品
供試品は,次による。
a) 供試品には,実際の内容品が収められていなければならない。しかし,寸法と物理的特性とが許容で
きる範囲で実際の内容品に近いならば,模擬内容品(又は代替内容品)を用いることができる。供試
品は実際の輸送と同様に封かん(緘),結束又は密封がされていなければならない。
b) 供試品の記号表示は,JIS Z 0201による。
3
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6
装置
6.1
振動試験機及び振動台
6.1.1
振動試験機
この規格で規定するランダム振動試験及び正弦波振動試験を実施する試験装置は,次の機能及び性能を
備えていなければならない。
a) 供試品に垂直方向の振動を与えることができる。
b) 供試品を振動台に積載した状態で,あらかじめ定めた試験条件を満たす装置である。
c) 振動数範囲はランダム振動の場合は2 Hz〜200 Hz,正弦波振動の場合は3 Hz〜100 Hzとする。試験振
動数範囲は,受渡当事者間の協定によって試験振動数の範囲を変更することができる。
6.1.2
振動台
振動台は,次による。
a) 振動台は,供試品を搭載できる十分な大きさ及び剛性をもち,振動台の最低共振振動数は,あらかじ
め定めた試験振動数より高くなければならない。
b) 試験中に振動台表面を水平状態に維持できる。
c) 振動台には必要に応じて,次の構成部品を装備することができる。
1) 試験中に供試品の前後左右への移動を制限するための低い囲い。
2) 積重ね負荷試験の試験中に,供試品の上に載せた荷重の前後左右への移動を制限するための高い囲
い。
3) 実際の輸送を模擬するための供試品の拘束手段。
6.2
振動測定及び制御器
振動測定及び制御器は,振動台の加速度を制御するための加速度ピックアップ,シグナルコンディショ
ナ,データ表示装置及びデータ記録装置を備え,次の機能及び性能をもつ。
a) 振動台の加速度を測定する制御用加速度ピックアップからの信号をフィードバックすることによっ
て,振動台の振動を制御できる。
b) 測定系の加速度の応答は,試験振動数範囲内で加速度ピックアップの特性を含めて±5 %の精度であ
る。
c) 振動台を制御するための制御入力チャネルに加えて,供試品に取り付けた加速度ピックアッアップか
らの信号を測定するための入力チャネルを備えていることが望ましい。
d) ケーブルの断線によるフィードバック信号の停止など不測の事態が発生した場合には,直ちに出力を
停止し,試験作業の安全が図られる機能を備えている。
e) ランダム振動制御器は,振動台の加速度パワースペクトル密度をあらかじめ定めたように制御し維持
できる,また,あらかじめ定めたレベルまで段階的に立上げができ,滑らかに停止できる。
1) 駆動信号クリッピングは,2.5以上とする。
2) 統計的自由度120以上で,フィードバック信号を分析できる。
3) 振動数分解能は,1 Hz以下とする。
f)
正弦波振動制御器は,振動数対数掃引正弦波信号を出力でき,かつ,振動台の振動数及び加速度,又
は変位をあらかじめ定めたように制御し維持できる。また,あらかじめ定めた加速度又は変位への立
上げ及び停止が滑らかにできる。
g) ランダム振動試験の加速度パワースペクトル密度又は正弦波振動試験の加速度を記録する機能をも
つ。
4
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7
試験方法
7.1
試験の種類
試験の種類は,次の2種類とする。
a) ランダム振動試験
b) 正弦波振動試験
1) 試験方法1 正弦波対数掃引振動試験
2) 試験方法2 正弦波共振試験
この中でランダム振動試験(附属書JA参照)が,実際の輸送振動環境を最も適確に再現する方法であ
る。したがって,試験装置が利用できる場合には,ランダム振動試験を優先して適用することが望ましい。
7.2
共通事項
7.2.1
試験時の環境
試験を実施する環境が供試品の特性にとって重要であるならば,前処置と同じ環境で試験を行う。それ
以外の状況でも前処置と同じ環境で試験を行うことが望ましい
7.2.2
供試品の搭載
供試品は輸送中の拘束方法,積載方法を模擬した方法で試験台に搭載する。供試品の重心ができる限り
振動台の中心に近くなるように,かつ,負荷状態で加速度の水平成分が垂直成分の値の20 %を超えないよ
うに振動台上に載せることが望ましい。供試品を振動台に固定しない場合は,6.1.2に規定する囲いを用い
てもよい。
7.2.3
印加加速度の測定
供試品に印加された加速度は,できる限り供試品の近くで測定する。また,加速度ピックアップの損傷
を防ぐために適切な保護を行う。
7.2.4
試験の中断
試験は供試品を目視検査するため,又は他の目的のために,いつでも中断することができる。
7.2.5
積重ね荷重
必要ならば,積み重ねられた貨物の底部の状態をシミュレートするため,実際の荷重又は実際の荷重を
模擬した代用品を積載してもよい。
7.3
振動試験の手順
7.3.1
ランダム振動試験
ランダム振動試験は,次による。
a) 試験に使用する加速度パワースペクトル密度及び試験時間は,附属書Aに基づき行う。ただし加速度
パワースペクトル密度は,路面状況,使用する車両の種類など,輸送条件に大きく依存するため,測
定されたデータに基づく加速度パワースペクトル密度及び試験時間が利用できる場合には,このデー
タを用いて試験するのがよい。
b) システムが加速度パワースペクトル密度を均一化できるように,試験レベルよりも6 dB低いレベルで
試験を開始し,あらかじめ定めた試験レベルに達するまで注意深く調整しながら,あらかじめ定めた
時間にわたって試験を継続する。
c) 加速度実効値の許容差は,供試品を搭載した状態で,規定値の±15 %を超えてはならない。
d) 振動台の加速度パワースペクトル密度は,供試品を搭載した状態で,試験振動数範囲全域で規定値の
±3 dBを超えてはならない。ただし,供試品の跳ね上げによる振動台との衝突現象によって±3 dBを
超えた場合には,受渡当事者間の協定によって試験振動数の一部の適用を除外することができる。
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7.3.2
正弦波振動試験
7.3.2.1
試験方法1
振動数を対数掃引させる。試験はあらかじめ定めた垂直振動レベルで,振動数3 Hz〜100 Hzの間,毎分
1/2オクターブの速度で往復掃引して,あらかじめ定めた時間を継続する。
7.3.2.2
試験方法2
供試品の共振振動数で加振する。適切な低いレベルの加速度(通常は,2 m/s2〜5 m/s2の範囲)で振動数
3 Hz〜100 Hzの間,毎分1/2オクターブの速度で掃引し共振探査試験を行い,供試品上及び振動台上で測
定された加速度又は目視によって最も過酷かつ重大な共振振動数を特定する。特定された共振振動数の一
つで,その振動数の±10 %の範囲を毎分1/2オクターブの速度で掃引を所定の時間にわたって印加する。
なお,共振振動数が複数ある場合には,上記の手順を繰り返すことができる。
注記1 試験時間を変えて,様々な共振を試験することができる。また,供試品の疲労などによる共
振点の変化に,自動的に同調する試験装置を用いてもよい。
注記2 試験方法1及び試験方法2の振動数範囲は,受渡当事者間の協定によって変更することがで
きる。
8
試験報告
試験報告書には,次の事項を記載する。ただし,受渡当事者間の協議によって記載事項を選定してもよ
い。
a) 適用した試験規格
b) 試験所名及び所在地並びに依頼者名及び所在地
c) 試験報告書の識別番号
d) 供試品の受領日及び試験年月日
e) 試験報告書に対して責任を負う者の氏名,役職及び署名
f)
試験結果は,試験された供試品だけに関係する趣旨の記述
g) 全文の複製以外,試験所の許可を文書で受ける場合を除き,試験報告書を複製してはならない旨の記
述
h) 試験した供試品の個数
i)
供試品の質量,体積,寸法,材料及びその仕様,固定法,緩衝法,保護法などの包装の構造及び包装
の閉じ方,並びに補強調整などの包装方法
j)
内容品の明細(品名,種類,質量など)。模擬内容品又は代替内容品が用いられた場合には,その詳細
k) 供試品の総質量
l)
前処置の温度,相対湿度及び時間並びに試験時の試験エリアの温度及び相対湿度
m) 試験条件
− ランダム振動試験の場合:適用した振動数範囲,加速度パワースペクトル密度及び試験時間,並
びに得られた加速度実効値及び加速度パワースペクトル密度の記録。
− 正弦波振動試験の場合:適用した掃引振動数範囲,掃引速度又は往復掃引時間,往復掃引回数,
振動レベル及び試験時間。共振がある場合は,その共振振動数。
n) 積重ね荷重の有無,使用した場合には,荷重を適用するために用いた供試品及び/又はおもりの区別,
並びにその質量及び荷重を加えた時間
o) 供試品の拘束の有無。拘束した場合には,その方法及び低い囲い又は高い囲いの使用の有無
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Z 0232:2020
p) この規格の試験方法からの逸脱事項,又は受渡当事者間の協定内容
q) 記録された加速度パワースペクトル密度に対する所見
r) 試験中の供試品の姿勢(JIS Z 0201による記載)
s)
使用した装置及び製造番号の一覧
t)
試験結果の記録(変形,損傷などの有無及びその状況)
u) 試験結果に対する総合所見
7
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附属書A
(規定)
一般的な輸送における加速度パワースペクトル密度
この附属書は,振動数範囲と加速度パワースペクトル密度との関係の利用できるデータがない場合に,
一般的な輸送(主として道路)環境を模擬するために使用できる加速度パワースペクトル密度を,表A.1
及び図A.1に示す。
表A.1−加速度パワースペクトル密度
振動数,f
(Hz)
レベル
(m/s2)2/Hz
レベル
g2/Hz
傾斜
dB/oct
f=2
0.048
0.000 5
−
2<f<4
−
−
+13.75
4≦f≦18
1.154
0.012
−
18<f<40
−
−
−9.34
f=40
0.096
0.001
−
40<f<200
−
−
−1.29
f=200
0.048
0.000 5
−
図A.1−加速度パワースペクトル密度プロファイル
この振動数範囲の加速度の実効値は,5.926 m/s2 rms(0.604 g rms)である。
注記 g=9.806 65 m/s2である。
この供試品の,一姿勢当たりの推奨最低試験時間は30分間である。この規格では,輸送距離及び試験時
間の相関は扱わない。
なお,輸送距離及び試験時間が必要な場合は,JIS Z 0200の規定に従う。
加
速
度
パ
ワ
ー
ス
ペ
ク
ト
ル
密
度
振動数 Hz
(m/s2)2/Hz
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附属書JA
(参考)
ランダム振動試験の特徴
JA.1 概要
走行中のトラックのタイヤには,路面の凹凸が振動として伝わり,その振動がタイヤ,サスペンション
などを経由して,荷台に伝わる。路面の凹凸は不規則(ランダム)であるから,荷台の振動は典型的なラ
ンダム振動である。典型的なランダム振動の例を,図JA.1のa) に示す。図から分かるように,ランダム
波は一見でたらめな波形で,正弦波のように同じ波形が繰り返されることはない。ランダム振動は確率的
性質をもっているので,統計的平均に基づいて表現する必要がある。ランダム振動試験では,振動数に関
する側面を加速度パワースペクトル密度で,振幅に関する側面を振幅確率密度で表現する。
JA.2 加速度パワースペクトル密度
振動数に関して加速度がどのように分布しているかを表すために,この関数が用いられる。
図JA.1の例を用いて説明する。a) の加速度信号を中心振動数5 Hzの狭帯域フィルタを通過させると,
その信号はb) のように元の信号の5 Hz付近の信号が抽出される。この信号は一見5 Hzの正弦波のように
見えるが5 Hzだけが存在しているのではなく,抽出される振動数幅は狭帯域フィルタの帯域幅(以下,振
動数分解能という。)に依存し,振動数分解能が広ければ抽出される信号の振幅は大きくなり,狭ければ小
さくなる。さらに,b) の信号の振幅は正弦波のように一定ではなく,不規則に変動している。d) はb) の
信号を2乗したものであり,全ての値がプラスになっている。この振幅も不規則に変動している。c) は同
様に中心振動数15 Hzの狭帯域フィルタを通過させた信号であり,e) はこれを2乗したものである。
振動数分解能によって抽出される信号の振幅が影響されるので,分解能1 Hz当たりに正規化する必要が
ある。加速度パワースペクトル密度の“密度”がこれに当たる。次に2乗した信号も振幅が変動している
から,時間に関して平均化処理をする必要がある。
以上の処理を,測定振動数全域にわたって実施して加速度パワースペクトル密度曲線を得ることができ
る。その例を,図JA.2に示す。a) は振動数分解能1 Hz,平均化時間10秒間の場合の例で,b) は同じ振
動数分解能で,平均化時間60秒間の場合の例である。 統計的自由度はそれぞれ20及び120に相当する。
統計的自由度と加速度パワースペクトル密度推定確度との関係は,JIS C 60068-2-64に記載されている。
JA.3 振幅確率密度
ランダム振動試験で用いる信号の瞬時値の分布は,正規分布(ガウス分布ともいう。)に従うものを用い
る(図JA.3参照)が,通常は,駆動信号クリッピングによって実効値の3倍を超える信号が出ないように
制限して試験を実施する。したがって,例えば,加速度実効値5.926 m/s2の試験では振動台の加速度の最
大瞬時値は,17.778 m/s2となる。このことは必要な試験機の選択に当たって注意する必要がある(箇条JA.4
参照)。
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a) 加速度信号(広帯域ランダム)
b) 中心振動数5 Hzの狭帯域フィルタを通過した
加速度信号
c) 中心振動数15 Hzの狭帯域フィルタを通過し
た加速度信号
d) b) を2乗した信号
0
2000
e) c) を2乗した信号
図JA.1−加速度パワースペクトル密度の推定1
a) 統計的自由度20
b) 統計的自由度120
図JA.2−加速度パワースペクトル密度の推定2
(m/s2)2/Hz
(m/s2)2/Hz
Hz
Hz
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図JA.3−ランダム振動試験で用いる信号の瞬時値の分布
JA.4 加速度実効値
加速度実効値は,加速度の時刻歴から,式(JA.1)によって計算することができる。
∫
=
2
1
)
(
1
2
rms
t
t
dt
t
a
T
a
······························································· (JA.1)
ここに,
arms: 加速度実効値
a(t): 加速度の時刻歴関数
t1: 計算対象データの始点
t2: 計算対象データの終点
T: t1からt2までの時間
加速度実効値は,また,加速度パワースペクトル密度からも,式(JA.2)のように計算できる。
∫
=
2
1
)
(
rms
f
f
df
f
a
φ
································································· (JA.2)
ここに,
ϕ(f): 振動数fの関数としての加速度パワースペクトル密度
f1: 下限振動数
f2: 上限振動数
ランダム振動試験では,加速度パワースペクトル密度が与えられるので,式(JA.2)を用いて,試験で必
要な加速度実効値を計算することができる。具体的な計算式は,JIS E 4031の附属書JD(ランダム振動試
験の理解及び試験機選択のための参考情報)に示されている。 また,通常のランダム振動制御器では,自
動的に計算できる。
JA.5 速度実効値
動電式及びサーボ油圧式振動試験機には,速度の限界もあるので,加速度パワースペクトル密度から速
度実効値を計算して,用いる試験機を選択するための参考とするとよい。速度実効値は,加速度パワース
ペクトル密度から速度パワースペクトル密度を求め,これを式(JA.2)の,ϕ(f) の箇所に代入して同様の計算
を行って求めることができる。具体的な計算式は,JIS E 4031の附属書JDに示されている。また,通常
のランダム振動制御器では,自動的に計算できる。加速度の場合と同様に試験では駆動信号クリッピング
を3にした場合,速度実効値の3倍の瞬時値が必要である。
0
120000
-30-25-20-15-10 -5
0
5
10
15
20
25
30m/s2
振
幅
確
率
密
度
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附属書Aの加速度パワースペクトル密度を用いる場合は,0.09 m/sの速度実効値(最大瞬時値で0.27 m/s
の片振幅値)が必要である。
JA.6 変位実効値
動電式及びサーボ油圧式振動試験機には,変位の限界もあるので,加速度パワースペクトル密度から変
位実効値を計算して,用いる試験機を選択するための参考にするとよい。変位実効値は,加速度パワース
ペクトル密度から変位パワースペクトル密度を求め,これを式(JA.2)の,ϕ(f) の箇所に代入して同様の計算
を行って求めることができる。具体的な計算式は,JIS E 4031の附属書JDに示されている。また,通常
のランダム振動制御器では,自動的に計算できる。加速度,速度と同様に駆動信号クリッピングを3にし
た場合,試験では変位実効値の3倍の瞬時値が必要であるが,変位の場合は振動発生機の過変位機能が動
作すると試験が中断することがあるので,通常は変位実効値の3.5倍の瞬時値が得られる試験機を選択す
るとよい。
附属書Aの加速度パワースペクトル密度を用いる場合は3.0 mmの変位実効値(最大瞬時値で10.5 mm
の片振幅値)が必要である。
参考文献 JIS C 60068-2-64 環境試験方法−電気・電子−第2-64部:広帯域ランダム振動試験方法及び
指針(試験記号:Fh)
JIS E 4031 鉄道車両用品−振動及び衝撃試験方法
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附属書JB
(参考)
JISと対応国際規格との対比表
JIS Z 0232:2020 包装貨物−振動試験方法
ISO 8318:2000,Packaging−Complete, filled transport packages and unit loads−
Sinusoidal vibration tests using a variable frequency
ISO 13355:2016,Packaging−Complete, filled transport packages and unit loads−Vertical
random vibration test
(I)JISの規定
(II)国際
規格番号
(III)国際規格の規定
(IV)JISと国際規格との技術的差異の箇条ごと
の評価及びその内容
(V)JISと国際規格との技術的差
異の理由及び今後の対策
箇条番号
及び題名
内容
箇条
番号
内容
箇条ごと
の評価
技術的差異の内容
3 用語及び
定義
用語を定義
ISO 8318
ISO 13355
3
test itemだけ規定
追加
JISでは,この規格で用いられる技
術用語を追加。
次回ISO規格見直しのときに提案
する。
4 前処置
前処理について規
定
ISO 8318
ISO 13355
7
5.2
JISとほぼ同じ。
追加
JISでは,受渡当事者間の協定条件
を追加。
次回ISO規格見直しのときに提案
する。
6 装置
6.1 振動試験機及び
振動台
6.2 振動測定及び制
御器
ISO 8318
ISO 13355
5
4
JISとほぼ同じ。
追加
JISでは,ランダム振動試験の振動
範囲数は,試験者と受渡当事者間の
協定がある場合には変更すること
ができるとした。
試験者と受渡当事者間の間で,必
要な事項のため,追加している。
次回ISO規格見直しのときに提案
する。
追加
JISでは,振動測定に当たり,加速
度の信号に対する応答測定用の入
力チャネルを備えていることが望
ましいとした。
ISO規格には規定されていない
が,試験の精度を高めるために必
要な装置に対する要求事項のた
め,次回ISO規格見直しのときに
提案する。
追加
JISでは,振動測定及び制御器の安
全対策として,試験作業の安全性が
図られる機能を備えていることが
必要であるとした。
追加
JISでは,ランダム振動制御器の振
動制御のために必要な駆動信号ク
リッピング及び周波数分解能につ
いて言及している。
2
Z
0
2
3
2
:
2
0
2
0
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Z 0232:2020
(I)JISの規定
(II)国際
規格番号
(III)国際規格の規定
(IV)JISと国際規格との技術的差異の箇条ごと
の評価及びその内容
(V)JISと国際規格との技術的差
異の理由及び今後の対策
箇条番号
及び題名
内容
箇条
番号
内容
箇条ごと
の評価
技術的差異の内容
7 試験方法 7.1 試験の種類
7.2 共通事項
7.3 振動試験の手順
ISO 8318
ISO 13355
8
6
JISとほぼ同じ。
追加
JISでは,振動台の加速度パワース
ペクトル密度が±3 dBを超えた場
合には,受渡当事者間の協定がある
場合には試験振動数の一部の適用
を除外することができるとした。
試験者と受渡当事者間の間で必要
な事項のため,追加している。
次回ISO規格見直しのときに提案
する。
追加
JISでは,共振探査試験の試験条件
を追加している。
試験の精度を高めるために必要な
装置に対する要求事項のため,次
回ISO規格見直しのときに提案す
る。
8 試験報告 試験結果報告事項
ISO 8318
ISO 13355
9
7
JISとほぼ同じ。
追加
JISでは試験結果の総合所見事項を
追加。
試験者と受渡当事者間の間で必要
な事項ため,追加している。次回
ISO規格見直しのときに提案す
る。
附属書A
(規定)
一般的な輸送にお
ける加速度パワー
スペクトル密度
ISO 13355 Annex
A,
追加
重力加速度の値を注記として追記
した。
JISの利用者だけに対する便宜の
ためISOには提案しない。
追加
輸送距離及び試験時間が必要な場
合は,JIS Z 0200の規定に従うこと
を追記した。
JISの利用者だけに対する便宜の
ためISOには提案しない。
Annex
B
削除
ISO規格のAnnex Bの内容は,デー
タ研究の一例のためJISでは削除
した。
JISに関する対応判断のためISO
には提案しない。
附属書JA
(参考)
JISと国際規格との対応の程度の全体評価:(ISO 8318:2000,ISO 13355:2016,MOD)
注記1 箇条ごとの評価欄の用語の意味は,次による。
− 削除 ················ 国際規格の規定項目又は規定内容を削除している。
− 追加 ················ 国際規格にない規定項目又は規定内容を追加している。
注記2 JISと国際規格との対応の程度の全体評価欄の記号の意味は,次による。
− MOD ··············· 国際規格を修正している。
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Z
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2
3
2
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2
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