X 7109:2009 (ISO 19109:2005)
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲 ························································································································· 1
2 適合性···························································································································· 2
3 引用規格 ························································································································· 2
4 用語及び定義 ··················································································································· 3
5 表現及び略語 ··················································································································· 4
5.1 表現 ···························································································································· 4
5.2 略語 ···························································································································· 5
6 背景······························································································································· 5
6.1 応用スキーマの目的 ······································································································· 5
6.2 応用スキーマのための規則······························································································· 5
6.3 データ交換を支援する応用スキーマ ··················································································· 6
7 地物を定義するための原理 ································································································· 8
7.1 地物 ···························································································································· 8
7.2 地物及び応用スキーマ ···································································································· 9
7.3 一般地物モデル ············································································································ 10
7.4 地物型の属性 ··············································································································· 16
7.5 地物型間の関係 ············································································································ 18
7.6 地物型の振る舞い ········································································································· 20
7.7 制約 ··························································································································· 21
8 応用スキーマのための規則 ································································································ 21
8.1 応用システムのモデル化過程··························································································· 21
8.2 応用スキーマ ··············································································································· 21
8.3 UMLによる応用スキーマの規則 ······················································································ 24
8.4 UMLによる標準スキーマの定義域プロファイル ································································· 27
8.5 メタデータスキーマの使用のための規則 ············································································ 29
8.6 時間規則 ····················································································································· 33
8.7 空間規則 ····················································································································· 38
8.8 カタログ化規則 ············································································································ 49
8.9 地理識別子を用いた空間参照··························································································· 50
附属書A(規定)抽象試験項目群 ··························································································· 52
附属書B(規定)モデリング手法及び一般地物モデル ································································· 56
附属書C(参考)EXPRESSにおける応用スキーマ ···································································· 59
附属書D(参考)応用スキーマの事例 ····················································································· 62
附属書E(参考)参考文献 ···································································································· 69
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(2)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法第12条第1項の規定に基づき,財団法人日本測量調査技術協会(APA)から,
工業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経
済産業大臣及び国土交通大臣が制定した日本工業規格である。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実用新案登録出願に
抵触する可能性があることに注意を喚起する。経済産業大臣,国土交通大臣及び日本工業標準調査会は,
このような特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権及び出願公開後の実用新案登録出願にかかわる確
認について,責任はもたない。
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
X 7109:2009
(ISO 19109:2005)
地理情報−応用スキーマのための規則
Geographic information−Rules for application schema
序文
この規格は,2005年に第1版として発行されたISO 19109を基に,技術的内容及び対応国際規格の構成
を変更することなく作成した日本工業規格である。この規格は,ISO/TC 211が関与する種々の地理情報規
格を基とした日本工業規格(以下,地理情報規格シリーズという。)の一つである。
地理情報規格シリーズは,地球上の位置と直接的若しくは間接的に関連付けられたオブジェクト又は現
象に関する情報処理技術のための規格であり,河川,道路などに関する様々なデータを電子化し,各種情
報処理の高度化,効率化に適用される。
なお,この規格で点線の下線を施してある参考事項は,対応国際規格にはない事項である。
現実のいかなる記述も,常に抽象概念であり,常に部分的であり,常に多くの可能性のある“見方”の
中の一つに過ぎず,応用分野に依存している。
コンピュータ及び地理情報システム (GIS) の広範囲にわたる応用は,多様な分野で地理データの利用の
増大をもたらしている。そして,これを可能にする現在の科学技術とともに,これらのデータへの社会の
依存度は大きくなっている。地理データ集合は,ますます共有され交換される。それらはまた,作成され
たのとは異なった目的でも使用される。
データがコンピュータシステム及び使用者の両方によって理解されることを保証するためには,データ
アクセス及び交換のためのデータ構造を十分に文書化しなければならない。したがって,システム間のイ
ンタフェースは,この規格において標準化した方法を使用してデータ及び操作について定義しなければな
らない。専用システムにおける内部ソフトウェア及びデータ記憶の構築においては,標準インタフェース
の実現を可能にするいかなる方式を使用してもよい。
応用スキーマは,一つ以上の応用システムが必要とするデータ構造及びデータ内容についての形式記述
を提供する。応用スキーマは,地理データ及び他の関係するデータの両方の記述を含む。その地理データ
の基本的概念が地物である。
1
適用範囲
この規格は,地物を定義するための原理を含め,応用スキーマを作成し文書化するための規則を定義す
る。
この規格の適用範囲は,次のものを含む。
− 論議領域からの地物及びその特性の概念モデル化
− 応用スキーマの定義
− 応用スキーマにおける概念スキーマ言語の使用
2
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− 概念モデルの諸概念から応用スキーマのデータ型への移行
− 他の地理情報規格シリーズの規格によって標準化されたスキーマの応用スキーマへの統合
次の項目は,適用範囲外とする。
− 応用スキーマにおける特定の概念スキーマ言語の選択
− 特定の応用スキーマの定義
− 地物カタログにおける地物型及びその特性の表現
− メタデータの表現
− 応用スキーマを他に写像するための規則
− コンピュータ環境における応用スキーマの実装
− コンピュータシステム及び応用ソフトウェアの設計
− プログラミング
注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
ISO 19109:2005,Geographic information−Rules for application schema (IDT)
なお,対応の程度を表す記号 (IDT) は,ISO/IEC Guide 21に基づき,一致していることを示
す。
2
適合性
この規格に適合するためには,応用スキーマは,附属書Aの抽象試験項目群に規定するすべての要件を
満たさなければならない。
3
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格のうちで,西暦年を付記してあるものは,記載の年の版だけを適用し,その後の改正版(追補を
含む。)は適用しない。西暦年を付記していない引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS X 7107:2005 地理情報−空間スキーマ
注記 対応国際規格:ISO 19107:2003,Geographic information−Spatial schema (IDT)
JIS X 7108:2004 地理情報−時間スキーマ
注記 対応国際規格:ISO 19108:2002,Geographic information−Temporal schema (IDT)
JIS X 7112:2006 地理情報−地理識別子による空間参照
注記 対応国際規格:ISO 19112:2003,Geographic information−Spatial referencing by geographic
identifiers (IDT)
JIS X 7113:2004 地理情報−品質原理
注記 対応国際規格:ISO 19113:2002,Geographic information−Quality principles (IDT)
JIS X 7115:2005 地理情報−メタデータ
注記 対応国際規格:ISO 19115:2003,Geographic information−Metadata (MOD)
ISO/TS 19103:2005,Geographic information−Conceptual schema language
ISO/IEC 19501,Information technology−Open Distributed Processing−Unified Modeling Language
(UML) Version 1.4.2
3
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4
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,次による。
4.1
応用(システム)(application)
利用者の要求にこたえるために行われるデータの操作及び処理(ISO 19101参照)
4.2
応用スキーマ (application schema)
一つ以上の応用システムによって要求されるデータのための概念スキーマ(ISO 19101参照)
4.3
複合地物 (complex feature)
他の諸々の地物から構成される地物
4.4
概念モデル (conceptual model)
論議領域の概念を定義するモデル(ISO 19101参照)
4.5
概念スキーマ (conceptual schema)
概念モデルの形式記述(ISO 19101参照)
4.6
データ集合 (dataset)
他と識別可能なデータの集まり(JIS X 7115参照)
4.7
定義域 (domain)
明確に定義された集合(JIS X 7107参照)
注記 “明確に定義された”集合とは,定義を満足するものはすべて集合の中にあり,定義を満足し
ないものはすべて集合の外にあることを示す,必要十分な条件を与える定義であることを意味
する。
4.8
地物 (feature)
実世界の現象の抽象概念(ISO 19101参照)
注記1 地物は,型又はインスタンスとして現れる。地物型又は地物インスタンスという用語は,い
ずれか一方だけを意味するときに使うことが望ましい。
注記2 地物は元来地上の自然物及び人工物を指す用語であるが,この規格では,それ以外の実世界
に現れる物事を抽象化した概念も指す。
4.9
地物関連 (feature association)
ある地物型のインスタンスを,地物型が同じ又は異なるインスタンスに関連付ける関係(JIS X 7110参
照)
4.10
地物属性 (feature attribute)
地物の特性(ISO 19101参照)
4
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注記1 地物属性は,型又はインスタンスとして現れる。地物属性型又は地物属性インスタンスとい
う用語は,いずれかを意味するときに使うことが望ましい。
注記2 地物属性型は名前,データ型及び地物属性に関連する値の定義域をもつ。地物インスタンス
の地物属性は,加えてその定義域から選ばれた属性値をもつ。
4.11
地物操作 (feature operation)
ある地物型のすべてのインスタンスが実行できる操作(JIS X 7110参照)
例1 地物型“せき(堰)”の地物操作は“せき(堰)のかさ(嵩)を上げる”である。この操作によ
って,“せき(堰)”の高さが上がり,“貯水池”の水位が上がる。
例2 地物型“せき(堰)”による地物操作が“水路を航行する船を遮る”であってもよい。
4.12
地理データ (geographic data)
地球に関係した場所への暗示的又は明示的な参照をもったデータ
注記 地球に関係した場所に暗示的又は明示的に関連する現象に関する情報を意味する用語として,
“地理情報”も使用する。
4.13
メタデータ (metadata)
データに関するデータ(JIS X 7115参照)
4.14
モデル (model)
現実の幾つかの側面の抽象概念
4.15
描画法 (portrayal)
人間に対する情報の表示(ISO 19117参照)
4.16
品質 (quality)
明示的又は暗示的に述べられた要求を満たす能力に関する製品特性の総体(ISO 19101参照)
4.17
論議領域 (universe of discourse)
関心あるものすべてを含んだ,実世界又は仮想世界の範囲(ISO 19101参照)
5
表現及び略語
5.1
表現
この規格は,地理情報についての地理情報規格シリーズの規格において定義した概念スキーマを統合す
る応用スキーマの作成方法を規定する。この規格は,応用スキーマを作成するための規則を規定するだけ
でなく,事例を通じて指針を提供する。この規格では,表現形式として次の仕様を採用する。
a) 規則:
すべての規則は規定であり,次のとおり記述する。
規則:
1) <規則1>
5
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2) <規則2>
b) 表:
規則から参照されない表は参考である。
c) 概念スキーマ:
この規格の規定扱い部分の概念スキーマは,ISO/TS 19103に適合する統一モデリング言語 (UML)
で表現する。UML図はISO/IEC 19501に従って表現する。
5.2
略語
CSL
概念スキーマ言語 (Conceptual schema language)
GFM 一般地物モデル (General feature model)
OCL
オブジェクト制約言語 (Object constraint language)
UML 統一モデリング言語 (Unified modelling language)
6
背景
6.1
応用スキーマの目的
一つ以上の応用システムが要求するデータのための概念スキーマを応用スキーマとする。応用スキーマ
は,次の二つを定義する。
− データの内容及び構造
− 応用システムによるデータ操作の仕様
応用スキーマの目的は,次の二つである。
− コンピュータ可読なデータ形式でデータ構造を記述し,自動的なデータ管理を可能とする。
− 特定の応用システム分野のデータ内容を文書化し,データに対する共通,かつ,正しい理解を確立し
て,あいまいさのない情報検索を可能とする。
6.2
応用スキーマのための規則
この規格は,異なる使用者,システム,場所の間において地理データの取得,処理,解析,アクセス,
表現及び転送を促進することを目的とした,一貫した方法(地物の一貫した定義を含む。)で応用スキーマ
を作成するための規則を定義するものであり,応用スキーマを標準化するのではない。この規格で定義す
る規則は,データを転送又は交換する場合に,地理データの供給者及び使用者が次の目的で使用する。
− データ交換における応用スキーマの転送の実施
− 使用者のローカルデータ,内容及びデータ構造に関して,転送されたデータ集合の意味の解釈
− 二つのデータ集合間の必要な変換の決定
この規格で定義する規則は,同様なデータ要求をもつ応用システムの使用者が,システム及びデータの
間のインタフェースのための共通の応用スキーマを作成することを手助けする。これは,論議領域におけ
る要素についての合意も含む。これは6.3において詳細に示す。
一つの応用スキーマから他の応用スキーマへの写像は,データ交換を対象とする場合であっても困難な
ことがあり,二つのスキーマが大きく異なる場合には,不可能なこともある。あるシステムにおいて使用
する応用スキーマがデータ交換についての要求も考慮して設計されている場合は,写像は容易になる。こ
の規格で定義する規則は,あるシステム内で使用する応用スキーマを構築するためにも使用することはで
きるが,そのような応用スキーマはこの規格の範囲ではない。
応用スキーマの作成は一つの過程である。応用スキーマの内容は,論議領域の現実的な見方によって決
6
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定しなければならない。また,これは,地物及びその特性の型に関してモデル化したものである。箇条7
において,矛盾なく地物を定義するための原理を示す。
応用スキーマはデータの構造及び内容を定義する。それは概念スキーマ言語 (CSL) で表現する。箇条7
には,地物の型を記述するために必要となる概念を定義したモデル(UMLで表現する。)も含まれる。地
物型定義は地物カタログで文書化するが,このような定義を応用スキーマで使用してもよい。地理情報規
格シリーズの他の規格は,応用スキーマが統合する概念スキーマの再使用可能なモジュールを定義する。
箇条8は,これらの事前定義されたモジュールをUMLにおいて概念スキーマに統合するための主規則を
示す。
注記 ISO 19118は,UMLで記述した応用スキーマが定義するデータ集合を,符号化する方法につい
て規定する。
6.3
データ交換を支援する応用スキーマ
6.3.1
一般
情報システムの間のデータ交換には,次の二つの方式を用いてもよい。
− 従来のデータ転送モデルにおいて,データ供給者は,使用者に転送するデータ集合を作成する。デー
タの構造及び内容は,データ集合の応用スキーマの中に記述する。データ集合は転送形式で送る。
− 相互運用性モデルにおいて,使用者応用システムは共通の通信プロトコルを通して供給者応用システ
ムと通信する。この方式では,使用者がサービスを呼び出すと,その結果,サービス供給者から使用
者応用システムにデータが渡る。応用スキーマには,交換データの構造及び内容を記述するだけでは
なく,そのトランザクションが伴うインタフェースの構造も記述する。
データ転送方式とデータトランザクション方式との間には根本的な相違がある。データ転送方式におい
て,データ集合は応用スキーマに基づいて事前に定義する。空間範囲及び地物インスタンスの包含規則も
また事前に定義する。使用者は,データ集合のコピーを要求し,受け取る(データ集合の配布に関する長
期契約に基づいてコピーを自動的に受け取ることがある。)。データトランザクション方式では,要求者は
まず,空間範囲,製作者のデータ記憶からデータ取得するための地物インスタンス包含規則,などの選択
基準を指定する。そうすると,選択基準に合致したデータをデータ記憶から検索し,使用者に提供する。
注記 この規格において各規則に適合することが,与えられた任意の応用スキーマに適合したデータ
を,あらゆる他の応用スキーマに適合するよう意味のある方法で変換できることを保証しては
いない。せいぜい,どの要素が二つのスキーマで共通であるか,また,どの要素が一つのスキ
ーマから別のものに変換でき,どの要素が変換できないかを使用者が決定することができるだ
けである。完全な相互運用性は,使用者及び供給者が同一の応用スキーマをもっている場合に
だけ可能である。
6.3.2
転送によるデータ交換
図1は,データ供給者及びデータ使用者のための従来のデータ転送モデルを示す。供給者から提供され
使用者によって受け取られるデータの構造及び内容は,応用スキーマの中で記述する。データ転送を可能
にするためには,次の三つの条件が満たされなければならない。
7
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図1−転送によるデータ交換
第一に,使用者及び供給者は,この規格に従って交換するデータの応用スキーマを作成することについ
て合意しなければならない。データの転送を容易にするために,この応用スキーマは,使用者及び供給者
の応用スキーマを使用して開発しなければならない。最初の写像は,供給者の応用スキーマから交換デー
タに対する応用スキーマに行われ,第二の写像はこの交換データに対する応用スキーマから使用者の応用
スキーマに行われる。
注記 不特定多数の使用者を対象としたデータ供給の場合には,交換するデータの応用スキーマ作成
に関する使用者と供給者との事前合意はない。しかし,この場合でも,個々の使用者は,供給
者が既存の使用者又は仮想の利用者の応用スキーマを用いて作成した交換データの応用スキー
マについて合意して,データの供給を受けるのであるから,上記のモデルと等価なものと考え
ることができる。
第二に,供給者は,供給者の応用スキーマに従って定義した応用システムデータを,交換データに対す
る応用スキーマに従って定義した転送データ集合に変換できなければならない。
第三に,使用者は,その交換データに対する応用スキーマに従って定義した転送データ集合を,使用者
の応用スキーマに従って定義した応用システムデータに変換できなければならない。
6.3.3
トランザクションによるデータ交換
図2は,相互運用性モデルで記述するトランザクションによるデータ交換を示す。使用者応用システム
はデータの要求を行い,供給者応用システムがそれを受け取る。その応答として供給者応用システムは結
果のデータ集合を送り返す。要求及び結果のデータ集合は共通の応用スキーマに従って定義する。供給者
応用システムは,システムAのデータを,交換データ集合のデータに変換することについて責任をもつ。
供給者
応用スキーマ
応用スキーマ
使用者
応用スキーマ
応用スキーマの
ための規則に
適合した定義
供給者
応用システム
データ
交換
データ集合
使用者
応用システム
データ
変換
変換
写像
写像
8
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受信後,使用者応用システムは,交換データをシステムBのデータに変換することについて責任をもつ。
トランザクションによるデータ交換は,ISO 19119で定義した地理空間サービスによって提供される。特
に,地物アクセスサービスは地理モデル/情報管理サービスで定義している。
注記 実線はデータの流れを示す。破線はデータ交換における応用スキーマの役割を表す。
図2−トランザクションによるデータ交換
7
地物を定義するための原理
7.1
地物
地理情報の基本単位を地物と呼ぶ。JIS X 7110は,地物の分類を構造化し伝えることを目的とした標準
の枠組みを示す。それはまた,地物のいろいろの側面についての,より幅広い考察を提供している。
この規格は,地物の定義の原理を含む,応用スキーマを作成するための規則を規定する。用語“地物”
は,4層構造で定義されたそれぞれの状況の中で使用している。附属書Bは,用語“地物”の,4層構造
における使用について示す。
この規格は,地物の定義を四つの側面に区分する。四つの側面とは,地物を型にグループ化するために
用いる定義又は記述,各々の型に関連する属性,地物の型の間の関係,及び地物の振る舞いである。
この規格において用語“地物型”及び“地物インスタンス”は,“地物”の全体集合を記述する概念と,
あるインスタンスの存在を記述する概念とを分離するために用いる。
例 “タワーブリッジ”は,ロンドンにある実世界の橋の抽象である。用語“橋”は,用語“橋”が
担う概念に分類されるすべての実世界の現象の集合の抽象である。
図3は,地理データの定義及び構築についての最も抽象的な段階を示す。実世界の現象の地物としての
クラス化は,特定の論議領域におけるそれぞれの意味づけによる。
応用スキーマの
ための規則に
適合した定義
供給者
応用スキーマ
使用者
応用スキーマ
応用スキーマ
システムAの
供給者
応用システム
システムBの
使用者
応用システム
供給者
データ
使用者
データ
要求
結果
9
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図3−論議領域からデータまでの過程
7.2
地物及び応用スキーマ
この規格は,応用スキーマが定義するデータ構造での地物の表現という観点から,地物の定義方法につ
いて規定する。
図4は,論議領域から地理データ集合へのデータ構築の過程を示す。地物型及びそれらの特性の定義は,
応用システム領域の状況の中で理解されるものであり,その論議領域から導き出される。地物カタログは
地物型を文書化する。
応用スキーマは,データの論理的な構造を定義し,また,データ上で又はデータを用いて実行可能な操
作を定義する。応用スキーマは物理的な構造ではなく論理的な構造を扱う。
応用スキーマの開発者は,既に地物カタログに存在する地物の定義を用いてもよい。これは,開発者に
既存データの使用を認めることによって,データ収集のコストを低減し,応用スキーマを開発する工程を
簡素化する。
応用スキーマは,概念スキーマ言語 (CSL) で表現しなければならない。個々の概念スキーマ言語は,独
自の用語及び概念をもつ。応用スキーマを作成するときには,一般地物モデル(GFM; 7.3参照)中の諸概
現実:現象
論議領域
地理応用システム
地物型
地物インスタンス
データ取得
その状況から理解する。
クラス化する。
定義する。 0:n
10
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念が選択された概念スキーマ言語中の諸概念に写像される。UMLについてのこれらの規則を8.3に示す。
注記 附属書CはGFM中の諸概念を概念スキーマ言語 EXPRESS (JIS B 3700-11:1996) 中の諸概念へ
写像するための規則の例を示す。
図4−実世界から地理データへの構築の過程
7.3
一般地物モデル
7.3.1
一般
この箇条は,地物を定義するために用いられる諸概念,及びこれらの概念がどのように関連するかを明
らかにし記述する。その記述は概念モデルとして表現し,それを一般地物モデル (GFM) と呼ぶ。
GFMの目的及び設計に関係する考察は,附属書Bによる。
論議領域
地物型のモデル
地物
カタログ
応用スキーマ
データ
一般地物モデルの概念による
論議領域のモデル
概念スキーマ言語 (CSL) に
よるデータの構造及び内容の
モデル
応用スキーマに従った論理的
な構造をもったデータ
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X 7109:2009 (ISO 19109:2005)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
注記 GFMの完全な核は,附属書B.3に示す。
GFM中の諸概念は,JIS X 7110に示す地物カタログ構造の中でも使用する。ISO 19117もまた,地理情
報の描画法を規定するためにこれらの概念を使用する。GFM中の諸概念は,ISO 19119の地理情報処理サ
ービス分類法のカテゴリを確立するためにも使用する。
7.4〜7.7は,地物の特性の異なった各側面について管理する方法を記述している。7.4は属性の側面を示
し,7.5は関係の側面を示す。7.6はより詳細な地物の振る舞いを示す。7.7は制約の概念を示す。
7.3.2
一般地物モデルの目的
GFMは,実世界の見方を分類することが求められた概念モデルである。それはCSLで表現しており,
どのようなCSLでも可能ではあるが,ここではUMLクラス図を使用する。UMLはそれ自身の概念モデ
ルをもつ(メタモデル)。GFM及びUMLメタモデルは共にクラス化について取り扱うものであり,概念
は非常に類似している。しかし,そこには一つの大きな違いがある。それは,UMLメタモデルがあらゆる
種類のクラス化のための基盤を提供するのに対して,GFM中の諸概念は地物のクラス化のための基盤を確
立する,という点である。
ここでクラス化しようとしている事物を地物と呼ぶ。地物型間の関係には,地物関連型と継承とがある。
地物型は,地物属性,地物操作及び地物関連役割という特性をもっている。GFMにおいて,すべてのこれ
らの概念はUMLメタクラスとして表現する。GFMは地物型のメタモデルである。
地物型は地物カタログに記述してもよい。GFMは,地物カタログ構造の概念モデルとして役立つが,地
物カタログは,地物型を記述するための付加的な概念をもつ。GFM概念を実現し,幾つかの概念を追加し
た地物カタログモデル (FCM) がある(JIS X 7110を参照)。その新しい概念は,例えば個々の地物型の地
物属性のリスト,地物型名の別名及び地物型名のためのコードなどである。これらの付加された概念は,
GFMにおける諸概念と矛盾はない。
応用スキーマはCSLで表現しなければならない。それは議論領域を表現するデータ集合の構造及び内容
を記述しなければならない。GFMは地物のクラス化のための要求を規定するが,CSLではない。このこと
は応用スキーマを定義するために,既存のCSLを使用しなければならないことを意味する。地理情報規格
シリーズ内ではUMLを使用する。地理情報規格シリーズの標準スキーマを応用スキーマに統合する必要
があるので,UMLで応用スキーマを表現することは都合がよい。この規格では,UML言語にGFM概念
を写像するための主要な規則を定義している。同様のことは他のCSLに対しても行うことができ,附属書
Cでは,GFMからJIS B 3700-11 EXPRESSへの写像を例示している。
GFMは,地物をクラス化するための構造を定義しており,UMLで応用スキーマを作成するときはそれ
に留意しなければならない。GFMからUMLへの写像は一方向の写像である。それは逆方向に写像するこ
とはできない。例えば,応用スキーマはUMLクラスをもっている。これらのクラスのうち幾つかが地物
型であり,幾つかが地物属性のためのデータ型である。これらを別々に扱うことはできない。GFMでは地
物属性値を定義することはしない。GFMは地物定義の構造及び内容を規定するだけである。
すなわち,GFMは,地物定義のためのメタモデルであり,地物カタログの構造を定義するためにも使用
される。選択されたCSLメタモデル(例えば,ISO/TS 19103で限定されるようなUMLメタモデル)は,
応用スキーマのためのメタモデルである。応用スキーマが,地物を表現しているデータを扱うので,GFM
の構造は応用スキーマを作成する間,留意しておく必要がある。
7.3.3
一般地物モデルの主要構造
図5は,地物型を定義するために用いる諸概念を示す。図5は全体モデルからの抜粋である。附属書B.3
には,GFMのすべての概念とそれらの相互関係とを表した図(図B.2)を示す。
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
名前及び記述に加えて,地物型 (GF̲FeatureType) は次の特性によって定義する。
− 地物属性 (GF̲AttributeType)
− 地物型を特徴付ける地物関連役割 (GF̲AssociationRole)
− 地物型の振る舞いの定義 (GF̲Operation)
付加的な諸概念は,次のとおりとする。
− 地物型と,それ自身又は他の地物型との間の地物関連 (GF̲AssociationType)
− 他の地物型とのはん(汎)化及び特化関係 (GF̲InheritanceRelation)
− 地物型上の制約 (GF̲Constraint)
図5−一般地物モデルからの抜粋
注記 図8には,GF̲OperationからGF̲AttributeType及びGF̲AssociationTypeへの更なる関係を示し
ている。
7.3.4
GF̲FeatureType
地物は実世界の現象の抽象概念である。GF̲FeatureType(地物型)は,個々の地物型を表現するクラス
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X 7109:2009 (ISO 19109:2005)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
としてインスタンス化するメタクラスとする。ある地物型は,その地物型のすべてのインスタンスのため
のクラスである。個々の地物型を表現するクラスのインスタンスは,地物インスタンスである。
注記1 オブジェクト指向モデリングにおいて,地物型はクラスと等価であり,地物インスタンスは
オブジェクトと等価である。
注記2 附属書Bは,用語“地物”の使用方法の表を示す。
注記3 一般地物モデルでのクラス(地物型),属性,関連などと,UMLでのクラス,属性,関連な
どとを区別することが必要であるため, UMLでのそれらを意味する箇所では,文脈に応じ
て“(UMLでの)”と付記している。
− typeName
地物型の名前。名前は応用スキーマ内で一意でなければならない。typeNameは,GF̲FeatureType
を継承したGF̲AssociationType(関連型)についてだけ任意選択とする。
− LocalName
ローカルなオブジェクトのための名前空間内の識別子。ISO/TS 19103における型定義によ
って,LocalNameは,NameSpace記述の構成要素GenericNameの下位型である。これは,
GenericNameの目標オブジェクトであるか,そうでない場合には,その目標識別子に一段階
近づいた(新しいGenericNameとしての)別のNameSpaceを示す。
− definition
地物型を記述する定義。
− isAbstract
ブール属性。真ならばこの地物型は抽象上位型として振る舞う。
− Generalization
この地物型が別の地物型と継承関係にあり,その地物の上位型の役割をもつことを指定する
(UMLでの)関連。
− Specialization
この地物型が別の地物型と継承関係にあり,その地物の下位型の役割をもつことを指定する
(UMLでの)関連。
− carrierOfCharacteristics
地物型のインスタンスがもつ,地物操作,地物属性及び地物関連役割を指定するための(UML
での)関連役割。
− linkBetween
地物型のあるインスタンスと,地物型の同一の又は別のインスタンスとを連結する地物関連を
指定するための(UMLでの)関連役割。
− constrainedBy
地物型及びその下位型のインスタンスがもつ制約を指定するための(UMLでの)関連役割。
7.3.5
GF̲PropertyType
GF̲PropertyType(特性型)は,地物の特徴,地物の振る舞い又は地物の関連役割を記述する,すべての
地物型の特性のクラスのためのメタクラスとする。
GF̲PropertyTypeは,GF̲Operation(操作型),GF̲AttributeType(属性型)及びGF̲AssociationRole(関
連役割型)の上位型とする。
− memberName
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振る舞い,属性又は役割の名前。役割の名前だけ任意選択とする。
− LocalName
ローカルなオブジェクトのための名前空間内の識別子。ISO/TS 19103における型定義に
よって,LocalNameは,NameSpace記述の構成要素GenericNameの下位型である。これは,
GenericNameの目標オブジェクトであるか,そうでない場合には,その目標識別子に一段
階近づいた(新しいGenericNameとしての)別のNameSpaceを示す。
− definition
地物型の振る舞い,属性又は役割の記述。
− constrainedBy
特性型及びその下位型のインスタンスがもつ制約を指定するための(UMLでの)関連役割。
7.3.6
GF̲AttributeType
GF̲AttributeType(属性型)は地物型の属性定義のためのメタクラスとする(7.4参照)。
− valueType
属性値のデータ型。
注記 ISO/TS 19103は,地物属性のvalueType属性に用いてもよいデータ型を定義している。
例1 整数,文字列又はGM̲Object。
− TypeName
ローカルなオブジェクトのための型空間内の識別子。ISO/TS 19103で定義した基本型に
おいて,TypeNameはLocalNameの下位型である(7.3.4参照)。
− domainOfValues
値の集合の記述。
例2 正の数,3〜7,GM̲Object及びJIS X 7107で定義しているすべての下位型。
− cardinality
地物型の単一インスタンスと関連付けてもよい,この属性型のインスタンスの数(基数:
cardinality)。
− Multiplicity
集合が受入れ可能なインスタンスの数の許容範囲の指定。このデータ型は,ISO/TS 19103
で定義している。
7.3.7
GF̲AssociationRole
GF̲AssociationRole(関連役割型)は,地物型に関係する関連(GF̲AssociationType,7.3.9参照)の中で
その地物型が演じる役割を示すためのメタクラスとする。
注記 GF̲AssociationRoleは,地物間の関連においてその地物が演じる役割を示す。
GF̲AssociationRoleのインスタンスは,ある地物にとっての役割を与えるものであり,
GF̲Operation, GF̲Attributeのインスタンスと同様,地物型のインスタンスの一部である。
例 道路Aと道路Bとの立体交差は,地物:道路Aの一部として関連役割:Axx(地物:道路A,関
連:立体交差001,役割:上側)をもたせ,地物:道路Bの一部として関連役割:Bxx(地物:
道路B,関連=立体交差001,役割=下側)をもたせ,関連:立体交差001の一部として Axx, Bxx
をもたせることによって表現される。
− cardinality
GF̲AssociationTypeによって表現された関連の,他方の端にある地物型の単一インスタンスと
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関係し,この役割において振る舞うことができる地物型のインスタンスの数(基数:cardinality)。
− Multiplicity
集合が受入れ可能なインスタンスの数の許容範囲の指定。
− Role
GF̲AssociationTypeに関連付けられる役割を指定する(UMLでの)関連。
7.3.8
GF̲Operation
GF̲Operation(操作型)は,地物型の振る舞いを操作として記述するためのメタクラスとする(7.6参照)。
注記1 GF̲Operationは相互運用性モデルにだけ適用され,6.3.1に示したようなデータ転送モデルに
は適用されない。
注記2 GF̲Operationのインスタンスは,オブザーバ操作,変更操作及びコンストラクタ操作の3種
類ある。オブザーバ操作は,属性の現在の値を返す。変更操作はそれらの値を変更する動作
を含む。コンストラクタ操作は,それが定義されたクラスのインスタンスを生成するときに,
インスタンスの初期設定を行う。例えば,オブザーバ操作は,せき(堰)の高さを見出すた
めに用いる。せき(堰)をかさ上げすることは変更操作であり,せき(堰)の高さを変更し,
せき(堰)と関連した水流及び貯水池の属性に影響を与える。値は,他の地物インスタンス
から,観測されることもあれば変更されることもある。
− signature
操作の名前,引数及び戻り値を示すための記述。
注記3 UMLでは,signature属性は次の形式で表現する。
操作名 ( 入力パラメタ1, 入力パラメタ2, ... ) : 出力値
例えば,get̲height() : real である。
7.3.9
GF̲AssociationType
GF̲AssociationType(関連型)は,地物型間の関連を示すためのメタクラスとする(7.5参照)。一つの地
物関連が複数の属性をもってもよい。GF̲AssociationTypeがGF̲FeatureTypeの下位型であるため許される。
注記 GF̲AssociationTypeは,複数の理由によってGF̲FeatureTypeの下位型化としている。第一に,
理論的な視点から見て,地物インスタンス間の関連インスタンスは,“実世界の現象の抽象概
念”という,地物定義における要求に応じたものである。ある関連型の一つのインスタンスと
いう枠の中に,二つの地物の相互関係である“現象”が存在するのである。第二に,実際的な
視点から見て,関連は地物としての理論的なテストを満足するものであることから,より実際
的な要求の幾つかを満足するものだからである。関連はしばしば地物相互関係の場所などの空
間属性をもつ。関連は相互関係を示すために,他の属性を保持する必要があるかもしれない。
例えば二次元で描かれた道路と鉄道との交差は,“道路が上をまたぐ”,“道路が下をくぐる”,
“鉄道が上をまたぐ”,“鉄道が下をくぐる”又は“平面交差する”に分類される必要があり,
更に,例えば“クリアランス(橋のけた下空間の高さ)”といった他の属性を保持する必要があ
るかもしれない。多くの場合,相互関係の地点の基盤となっている構造物は,そのありのまま
の姿に基づいて(例えば,鉄道橋のように)一つの地物として自然に取り扱われる。典型的な
地物属性だけでなく,関連インスタンスもまたメタデータ情報を保持することができる。実際
に,関連インスタンスが地物インスタンスと同様に属性をもち,それを成し遂げるために,意
味づけ及びプログラム・コードを継承することによって,地理情報ソフトウェアが簡素化され
る。
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− includes
地物関連を表す関連型インスタンスが,関連先の地物を指定するための(UMLでの)関連役割。
− roleName
関連型インスタンスが,関連先である関連役割を指定するための(UMLでの)関連役割。
7.3.10 GF̲InheritanceRelation
GF̲InheritanceRelation(継承関係型)は,はん(汎)化した(より一般化した)ある地物型(上位型)
と一つの特化した地物型(下位型)との間のはん(汎)化関係を示すためのクラスとする。
特化した地物型のどのインスタンスも,はん(汎)化した地物型のインスタンスでもある。
例 地物型“橋”が,道路地物群におけるあるはん(汎)化クラスである“交通路地物”と,航路地
物群におけるあるはん(汎)化クラスである“障害物”との両方に属してもよい。“橋”の特定の
インスタンスもまた,“交通路地物”のインスタンスであり,かつ,“障害物”のインスタンスで
ある。
個々の特化は,それぞれ一つの目的を表現する。地物型は,それぞれが異なった目的をもつ複数のはん
(汎)化関係の中で,上位型として振る舞うことができる。
− name
はん(汎)化/特化の名前(任意選択)。
− description
はん(汎)化/特化の説明。
− uniqueInstance
uniqueInstance属性はブール変数であり,真ならば,上位型のインスタンスが下位型の二つ以上
のインスタンスになり得ないことを意味し,偽ならば,上位型のインスタンスが下位型の二つ以
上のインスタンスになる可能性があることを意味する。
− supertype
相手の地物型に対する,より一般的な地物型を指定するための(UMLでの)関連役割。
− subtype
相手の地物型に対する,より特定の地物型を指定するための(UMLでの)関連役割。
7.3.11 GF̲Constraint
GF̲Constraint(制約型)は,地物型及び地物型の特性と関連した制約を示すクラスとする(7.7参照)。
− description
自然言語及び/又は形式的表記で記述される制約。
7.4
地物型の属性
7.4.1
一般
この箇条は,地物属性の役割をより詳細に示す。属性型 (GF̲AttributeType) は,名前 (memberName),
記述 (definition),型,定義域及び多重度をもつ。
属性は,地物がもつ静的な情報をすべて保持する。これは空間及び非空間の特性を扱う。地理情報規格
シリーズの規格では,その幾つかの属性型に特別な関心を払っている。これらの型を,図6において
GF̲AttributeTypeの下位型として示す。属性は,地理情報規格シリーズの他の規格のスキーマを使用する
ことによって,その規格に対するインタフェースを提供する。属性型は,それらのスキーマから値型定義
及び値定義域を得る。例えば,空間属性型 (GF̲SpatialAttributeType) は,JIS X 7107で示すGM̲Object又
はTP̲Objectの定義に従った値型及び値定義域をもつ。
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7.4.2
attributeOfAttribute
attributeOfAttributeは,属性をその属性の幾つかの特性を記述する別の属性と連携する。
例 地物の位置をもつ属性は,この位置の位置精度(GF̲QualityAttributeTypeのデータ値)を保持す
る別の属性をもつことがある。
図6−地物型の属性
7.4.3
GF̲SpatialAttributeType
GF̲SpatialAttributeType(空間属性型)は,空間的な属性を示し,地物型の空間的な特性を表現するため
に用いなければならない。地物空間属性型は値型としてGM̲Object又はTP̲Objectをもたなければならな
い。GM̲Object及びTP̲Objectの構造は,JIS X 7107に示す空間スキーマで定義する。
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7.4.4
GF̲TemporalAttributeType
GF̲TemporalAttributeType(時間属性型)は,時間的な属性を示し,地物の時間参照特性として用いなけ
ればならない。地物時間属性型は,値型としてTM̲Objectをもたなければならない。TM̲Objectの構造は,
JIS X 7108に示す時間スキーマで定義する。
7.4.5
GF̲QualityAttributeType
GF̲QualityAttributeType(品質属性型)は,品質情報を保持する属性を示す。これらの属性は,データ集
合のデータにおいて,地物又は地物の属性が品質特性を含むときに用いなければならない。品質属性は,
JIS X 7115で定義したDQ̲Elementの定義に従った値型をもたなければならない。
7.4.6
GF̲LocationAttributeType
GF̲LocationAttributeType(場所属性型)は,地理識別子による地物の空間参照をもつ属性を示す。
例 郵便領域はコードによって識別されるかもしれないが,その場所は地名辞典で見出される。
これらの属性型は,JIS X 7112で定義するSI̲LocationInstanceによって定義された値型をもたなければ
ならない。
7.4.7
GF̲MetadataAttributeType
GF̲MetadataAttributeType(メタデータ属性型)は,データ集合のデータがメタデータ情報を含むときに,
メタデータ情報を表す属性を示す。これらの属性型は,値型として,JIS X 7115のメタデータスキーマで
定義したメタデータ要素クラスを用いなければならない。
7.4.8
GF̲ThematicAttributeType
GF̲ThematicAttributeType(主題属性型)は,7.4.3〜7.4.7で規定されたものを除いた地物の他の記述的な
特徴をもつ属性を示す。それらの値型及び値定義域は,普通,使用者又は応用システム領域によって定義
される。基本型(ISO/TS 19103参照)及び使用者定義データ型のいずれを使用してもよい。
注記 主題属性についての情報は,地物カタログに記述してもよい。
7.5
地物型間の関係
7.5.1
一般
この箇条は,地物型間の関係を更に詳細に示す。図7は,次のように分類される関係を示す。
− 地物型のはん(汎)化・特化関係
− 地物間の関連
注記 関連は,関係の一つであり,地物型間に関連があってもよいし,地物型のインスタンス間に関
連があってもよい。はん(汎)化・特化関係は,地物型間だけに存在する。
7.5.2
GF̲InheritanceRelation
GF̲InheritanceRelation(継承関係型)は,地物型の上位型と下位型とを明示してはん(汎)化・特化関
係を表す。この関係は地物型間だけに存在し,地物インスタンス間にはない。この関係には,下位型が上
位型のすべての特性を継承するという,代表的な,そして強力な特性がある。
例 地物型“湖”と“水域”との間のはん(汎)化・特化関係は,地物型“湖”のインスタンスが地
物型“水域”のインスタンスでもあることを示している。この関係には二つの型がからんでいる
が,インスタンスはただ一つである。
7.5.3
GF̲AssociationType
GF̲AssociationType(関連型)は,GF̲InheritanceRelation以外のすべての地物型間の関係を表現する。こ
れらの関係は,それが定義されるときの関連型と,データ集合のインスタンスとの両方に現れる。
GF̲AssociationTypeは,GF̲FeatureTypeの下位型としてモデル化する。したがって,GFMの地物型の定
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義によって,地物関連型が,例えば属性をもつなど,それ自身の特性を保持してよい。
図7−地物型間の関係
地理情報の領域では複数種類の関連が存在し,それらをこの規格で定義した規則によって取り扱わなけ
ればならない。それらの三つを,図7でGF̲AssociationTypeの下位型として示す。
− GF̲AggregationType
GF̲AggregationType(集成型)は,ある種類の“全体−部分”関係である地物型間の関連を示す。
GFMでの集成 (aggregation) の概念は,たとえ集成が破棄されても部分が存在できる集成(UMLでの
集成に対応)と,部分が集成の中に存在し集成とともに破棄される集成(UMLでの合成に対応)との,
両方の集成を含む。GFMでの集成は,複合地物型を形成する地物型を規定するために用いられなけれ
ばならない。
− GF̲SpatialAssociationType
GF̲SpatialAssociationType(空間関連型)は,地物間で存在する空間の関係又は位相の関係を示す。
これらの関係は,地物の相対的空間位置に依存する(8.7.4参照)。
例1 下水道とマンホールとからなる下水道ネットワーク。
例2 交差点は二つ以上の道路間の関係であり,道路は二つの交差点間の関係である。
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− GF̲TemporalAssociationType
GF̲TemporalAssociationType(時間関連型)は,地物間で存在する時間関連を示す(8.6.3参照)。
例3 “アムステルダム中央駅は東京駅より前に建った”という文章で,“より前に建った”という記
述は時間関連を表している。
7.6
地物型の振る舞い
7.6.1
一般
地物の振る舞いは,地物型のすべてのインスタンス上で実行される,又は地物型のすべてのインスタン
スによって実行される操作として記述する。GF̲Operation(操作型)は,関数又はメソッドとして地物型
の振る舞いを表現する。JIS X 7110は地物型の振る舞いについて,より幅広い内容を示す。
図8は,地物の振る舞いに影響を及ぼす依存関係を示す。
図8−地物型の振る舞い
注記 7.6.2〜7.6.5は,図8に示したGF̲Operation(7.3.8参照)にとっての関連役割について,更に
詳細に記述している。
7.6.2
observesValuesOf
observesValuesOfは,操作を実行するために入力として用いる属性を指定する。
7.6.3
affectsValuesOf
affectsValuesOfは,操作によって影響を及ぼす属性を指定する。
7.6.4
triggeredByValuesOf
triggeredByValuesOfは,操作を引き起こす属性を指定する。
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7.6.5
dependsOn
dependsOnは,操作を実行するために使用する関連を指定する。
7.7
制約
応用スキーマは,データの完全性を保証するために制約を記載してもよい。GF̲Constraint(制約型)は,
地物型及び地物型の特性と関連して応用スキーマに記載される制約を表す。制約は,認めるデータの組合
せ又は認めないデータの組合せを明示することによって,誤ったデータの作成を防止するために,応用シ
ステムにおける自由度を限定する。応用スキーマは,明白な方法で制約を識別しなければならない。地物
及びその特性のいずれに制約を記載してもよい。
例 制約の例として,次のようなものがある。
− (異なる型に属する)一つ以上の地物インスタンスにおいて,属性値の取り得る組合せを明示
する。
− 地物インスタンス間の関連の多重度を限定する。
− 制約は,実世界の現象がある大きさのものである場合には,地物インスタンスはGM̲Objectの
特定の下位型で表現されることを要求する。
− 地物操作に定義される地物の振る舞いを,制約によって限定する。
応用スキーマ開発者は,実装環境に特有の制約言語で制約を示してもよい。
8
応用スキーマのための規則
8.1
応用システムのモデル化過程
応用スキーマは二つの目的をもつ。第一に,特定の応用システム分野におけるデータの内容及び構造に
ついて,共通でかつ正しい理解を実現する。第二に,データ管理の自動的な仕組みを適用するためにコン
ピュータ可読のスキーマを提供する。
この二つの役割から,応用スキーマ作成のための段階的過程が必要となる。その段階を図4に示す。そ
の段階は,次のように簡潔にまとめることができる。
a) 応用システムの意図された領域(論議領域)からの要求を調査する。
b) 一般地物モデルで定義されている概念に基づき,応用システムの概念モデルを作成する。この作業は,
地物型と,それらの特性及び制約とを識別することからなる。
c) この規格で定義する規則に従い,形式モデリング言語[例えば,UML(OCLを含む)]で応用スキー
マを記述する。
d) 形式応用スキーマを他の標準化されたスキーマ(空間スキーマ,品質スキーマなど)と統合し,完全
な応用スキーマにする。
この過程は2組の規則を必要とする。
− 一般地物モデルの概念で表現される地物型を応用スキーマで使用した形式に写像する方法。
− 他の地理情報規格シリーズの規格の中で定義したスキーマを使う方法。
8.2
応用スキーマ
8.2.1
応用スキーマのための概念スキーマ言語
形式言語の使用は,あいまいさのない一貫したモデル表現を提供し,応用システムの実装を促進する。
この規格の規定部分は,応用スキーマの記述のための形式言語としてUMLを使用する。箇条8の中で定
義した規則は,UMLの形式に依存する。箇条8の例はUMLで示す。ISO/IEC 19501はUML言語の使用
方法を説明している。ISO/TS 19103では,地理情報規格シリーズの規格,及びこれらの規格に従って開発
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する応用スキーマにおいて,ステレオタイプ及び基本データタイプをいかに使用しなければならないかを
説明している。
注記 同等な規則の例として,概念スキーマ言語であるEXPRESS(JIS B 3700-11:1996で定義)を附
属書Cに示す。
8.2.2
主規則
規則:
1) 応用システムのデータ構造は,応用スキーマの中でモデル化しなければならない。
2) 応用スキーマの中で,データ交換のために使用されるすべてのクラスは,インスタンス化可能でな
ければならず,ステレオタイプ<<interface>>の対象であってはならない。
注記 抽象上位型は,その下位型が交換されるデータに対応するものであるため,使用してよい。
8.2.3
応用スキーマの識別
規則:
1) 個々の応用スキーマの識別情報は,名前及び版を含まなければならない。版を含むことは,供給者
と使用者とが,特定のデータ集合の内容を記述する応用スキーマの版について合意することを意味
する。
2) UMLにおいて,一つの応用スキーマは一つのパッケージの中に記述しなければならない。そして,
応用スキーマの名前と版とがパッケージの文書化の中で記述され,保持されなければならない。
8.2.4
応用スキーマの文書化
規則:
1) 応用スキーマは,文書化しなければならない。
2) UMLで記述された応用スキーマの文書化は,この情報を外部出力できるのであれば,応用スキーマ
を作成したソフトウェアツールの文書化機能を利用してもよい。
3) クラス又は他のUML構成要素が地物カタログ情報に対応する場合,カタログへの参照は文書化し
なければならない。
4) 応用スキーマの中の地物型に関する文書は,GFMから導出された構造を備えるカタログ(例えば,
JIS X 7110に従うカタログ)になければならない。
8.2.5
応用スキーマと標準スキーマとの統合
大規模な情報モデルを開発するとき,その作業は,しばしば,定義されたインタフェースによって統合
可能な独立した部分に分解される。応用スキーマは一つの部分であり,地理情報規格シリーズの規格にお
いて標準化された他のスキーマは別の部分である。
応用システムのデータ構造の完全な定義は,直接的又は間接的に参照する他の標準スキーマを統合した
応用スキーマから構成される。
例 図9は,地理情報規格シリーズの他の規格で定義されたスキーマの要素を使用する応用スキーマ
の例を示す。図9におけるこの依存関係は,応用スキーマは他のパッケージから構造及び定義を
使用する (“uses”) ことを意味している。
なお,図のステレオタイプ<<Application Schema>>は,このパッケージが応用スキーマを含んだ
ものであることを示している。これは,以降の図にも当てはまる。
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
図9−応用スキーマ統合の例
規則:
1) UMLにおける依存の仕組みは,データ構造の完全な定義を作りあげるために必要となる応用スキー
マと標準スキーマとの統合を記述するために使用しなければならない。
注記 データ構造の完全な定義を作りあげるために示したUMLによる依存関係の表現を“応用
スキーマ統合”又は“モデル統合”と呼ぶ。
8.2.6
新しい応用スキーマを構築するための応用スキーマの利用
応用スキーマは,複数の他の応用スキーマから構築することができる。これらのスキーマは,標準化さ
れたスキーマを参照することができる。この構成は大きくて複雑なスキーマの作成を避けるために用いる。
例 図10は,道路,河川及び橋りょう(梁)を含んだ応用システムを,次の三つのUMLパッケージ
によって記述できることを示す。
− 橋りょう(梁)情報を記述した主スキーマ
− “道路”データ型を定義したスキーマ
− “河川”データ型を定義したスキーマ
応用スキーマのすべては,JIS X 7107に規定されている空間プリミティブを使用する。
応用スキーマ名
メタデータ・スキーマ
JIS X 7115
地名辞典スキーマ
JIS X 7112
品質スキーマ
JIS X 7115
時間スキーマ
JIS X 7108
空間スキーマ
JIS X 7107
座標による空間参照
JIS X 7111
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図10−他の応用スキーマを基礎とした応用スキーマの例
8.3
UMLによる応用スキーマの規則
8.3.1
応用スキーマの規則
UMLによる応用スキーマ作成のための規則を,次に示す。
注記 一般地物モデルでのクラス(地物型),属性,関連などと,UMLでのクラス,属性,関連など
とを区別することが必要であるため,UMLでのそれらを意味する箇所では,文脈に応じて
“(UMLの)”と付記している。
規則:
1) GF̲FeatureType:GF̲FeatureTypeのインスタンスは,規則2) 場合1(GF̲AssociationType参照)を
除き,(UMLの)クラスとして実装しなければならない。
2) GF̲AssociationType:GF̲AssociationTypeのインスタンスは,次の場合のいずれかのように実装しな
ければならない。
− 場合1:任意のGF̲PropertyTypeのインスタンスと関係しないGF̲AssociationTypeのインスタンス。
この場合,(UMLの)クラスとして実装されるGF̲FeatureTypeのインスタンスに関連する
linkBetween役割をもつ。これらは(UMLの)クラス間の関連として実装しなければならない。
− 場合2:一つ以上のGF̲PropertyTypeのインスタンスと関連したGF̲AssociationTypeのインスタン
ス。それは(UMLの)関連クラスとして実装しなければならない。関連したGF̲PropertyTypeの
空間スキーマ
JIS X 7107
河川情報
道路情報
河川
道路
橋りょう(梁)情報
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インスタンスは,(UMLの)関連クラスの属性として実装しなければならない。
3) GF̲AggregationType:GF̲AggregationTypeのインスタンスは,(UMLの)集成(塗りつぶされてい
ないひし形),又は,(UMLの)合成(塗りつぶされたひし形)として実装しなければならない。集
成体のメンバはその集成とは独立して存在でき,別の集成体に属してもよい。合成体のメンバは独
立して存在することはできず,一つの合成体にだけ属することができる。
4) GF̲AttributeType:GF̲AttributeTypeのインスタンスは,属性の属性[attributeOfAttribute,8.3.1規則
5)参照]でない場合には,(UMLの)属性として実装しなければならない。
5) attributeOfAttribute:attributeOfAttribute関連のcharacterizedBy役割の中で振る舞うGF̲AttributeType
型のインスタンスは,クラスとしてインスタンス化しなければならない。このクラスは
GF̲AttributeTypeデータ型として使用するか,又は,GF̲AttributeType型を含んだクラスとの関連の
中で使用しなければならない。characterizes役割の中で振る舞う属性は,characterizedBy役割の中で
振る舞う属性を表現するクラスの属性として,インスタンス化しなければならない。
− 段階1:他の属性によって特徴付けられる属性を表現するために新しい(UMLの)クラスを作成
する。(UMLの)クラス名として属性名を使用する。
− 段階2:適切であれば,(UMLの)クラスによって表現された属性の値を表現するために,この
(UMLの)クラスの中に一つの(UMLの)属性を挿入する。その名前には,元の属性名と同じ
名前を使用する。
− 段階3:元の(UMLの)属性を特徴付ける属性を表現するため,この(UMLの)クラスに追加
の(UMLの)属性を挿入する。
− 段階4:新しい(UMLの)クラスを元の属性のデータ型として使用するか,又は元の属性をそれ
を含んでいた(UMLの)クラスから削除し,代わりに,その(UMLの)クラスから新しい(UML
の)クラスへの関連を追加する。
6) GF̲Operation:GF̲Operationのインスタンスは,それを特徴付けする地物型を表現するクラスの
(UMLの)操作として実装しなければならない。(UMLの)操作は,使用する必要がある(UML
の)属性値を提供する(UMLの)クラスへの参照を含まなければならない。
7) GF̲AssociationRole:GF̲AssociationRoleのインスタンスは,GF̲AssociationTypeを表現している
(UMLの)関連の適切な終端で,(UMLの)役割名として実装しなければならない。
8) GF̲InheritanceRelation:GF̲InheritanceRelationのインスタンスは,次の二つの状態に応じた追加の
特性をもつ,UMLのはん(汎)化関係によって表現しなければならない。
− 場合1:uniqueInstance属性が真ならば,{disjoint}制約をはん(汎)化関係に付加しなければなら
ない。
− 場合2:uniqueInstance属性が偽ならば,{overlapping}制約をはん(汎)化関係に付加してもよい。
9) GF̲Constraint:制約はOCL又は平易な言葉で記述し,制約を受けている(UMLの)クラス,(UML
の)操作,(UMLの)関係に付加してもよい。
8.3.2
応用スキーマの例
図11は,表1に主要部を示した実世界の概念に基づき,UMLで表現された応用スキーマの例を示す。
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表1−一般地物モデルの見地からみた実世界の概念の例
地物型
属性
GF̲Attributeの下位型の種類
土地区画
識別
名前
範囲
主題属性型
主題属性型
空間属性型
建物
番号
中心位置
形状
住所
種別
水平正確度
高さ正確度
所有者
主題属性型
空間属性型
空間属性型
場所属性型
主題属性型
品質属性型
品質属性型
主題属性型
貸付け
金額
期間
分類
主題属性型
時間属性型
メタデータ属性型
水平正確度属性及び高さ正確度属性は,中心位置属性の品質を記述する。ここには,二つの関連があり,
土地区画は,0以上の建物を含む。建物には,0以上の貸付けが設定される。
図11−地物型のUML実装の例
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8.4
UMLによる標準スキーマの定義域プロファイル
8.4.1
一般
標準スキーマの中で定義されたクラスを直接使用する代わりに,実際の定義域の応用システムに適用す
るように標準スキーマを調整することができる。調整は,二つの方法のうちのいずれかで行うことができ
る。
− 標準スキーマで定義されたクラスに属性を加える。
− 標準スキーマを規定している規格の適合性の箇条に従って,その標準スキーマの要素を限定する。
8.4.2
標準スキーマへ情報を付加するための規則
多くの目的のために,追加情報で標準スキーマの定義を拡張することは便利であり必要である。
規則:
1) 標準スキーマで規定された(UMLの)クラスを拡張又は限定する必要がある場合,標準スキーマの
中の(UMLの)クラスの下位型として,新しい(UMLの)クラスを定義しなければならない。そ
して追加情報をもつために,(UMLの)属性をこのクラスに追加しなければならない。
注記 実用上の理由によって,新しいクラスは別のパッケージに集めてもよい。
例 図12は,空間スキーマ規格の定義 (GM̲Point) を直接使用し,更に,定義域内空間パッケージ
と呼ばれるパッケージの中の定義(品質属性付き面要素)を使用した応用スキーマを示す。定
義域内空間パッケージは,空間定義 (GM̲Surface) に合わせた内容であると同時に,品質スキ
ーマ (DQ̲AbsoulteExternalPositionalAccuracy) の定義を使用している。“品質属性付き面要素”
クラスは,建物の平面形状を表現する幾何属性に付加して取り扱うことが適切であるためこの
応用システムの定義域において追加された二つの属性情報を含む。
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図12−標準スキーマへの追加情報の例
8.4.3
標準スキーマの使用制限
JIS X 7107のような幾つかの標準スキーマについては,スキーマの選択した部分だけを使用したり,ク
ラス及び関係の定義の幾つかだけを使用したりする方法で,スキーマを再定義することができる。
規則:
1) 標準スキーマの制限されたプロファイルの仕様は,標準スキーマの実際の定義(クラス定義及び関
連定義)を新しいUMLパッケージに複写して記述しなければならない。各クラスの属性及び操作
は省略してもよい。
2) 標準スキーマの削減は,実際の標準で与えられた適合性の箇条に従わなければならない。
例 空間スキーマ (JIS X 7107) の制限されたプロファイルとして,GM̲Object及びその下位型の定義
例示
応用スキーマ
品質スキーマ
JIS X 7115
定義域内
空間パッケージ
品質属性付き面要素
モデル統合
定義域内空間パッケージ
空間スキーマ
JIS X 7107
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だけを使用し,また,これらのクラスに関連した操作は使用しない,と規定することができる。
8.5
メタデータスキーマの使用のための規則
8.5.1
一般
メタデータスキーマ(JIS X 7115参照)は,メタデータのデータ集合のための応用スキーマである。メ
タデータは,データを記述及び文書化するデータである。一般に,地理データのためのメタデータは,そ
の識別,範囲,品質,空間的及び時間的側面,空間参照並びに配布についての情報を提供する。
8.5.2
地物,地物属性及び地物関連のためのメタデータの提供
JIS X 7115において定義された幾つかの応用スキーマを使用してもよい。この規格は,この使用につい
ての制限を設けない。
規則:
1) メタデータ要素は,地物型,地物属性又は地物間関連のインスタンスについてのメタデータをもつ
ため,GF̲MetadataAttributeType(GF̲AttributeTypeの下位型)として使用してもよい[8.3.1規則2),
4)及び5)参照]。
2) メタデータをもつ地物属性のデータ型は,メタデータスキーマでクラスとして規定されたメタデー
タ要素の一つでなければならない。
3) 地物属性は,メタデータ情報をもたずにJIS X 7115のパッケージにおける定義を再使用してもよい。
4) メタデータ属性は,それが報告するデータインスタンスを表現する(UMLの)クラスの属性として
応用スキーマの中で表現しなければならない[8.3.1規則4)参照]。
5) メタデータ属性は属性の属性として使用してもよい。この場合,attributeOfAttribute(8.3.1参照)の
主規則を適用しなければならない。
例 図13は,メタデータスキーマから二つの定義を使用した応用スキーマをUMLで示す。
MD̲LegalConstraintは,データの使用上の制限を特定するために使用する[8.5.2規則2)]。
EX̲GeographicBoundingBoxは,地理的範囲の特定のために使用する[8.5.2規則3)]。
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図13−応用システムのデータとして包含されたメタデータの例
8.5.3
データ品質規則
8.5.3.1
データインスタンスに関する品質情報報告のための規則
ここでは,応用スキーマの中における標準品質スキーマの要素の使用について示す。幾つかのデータ品
質副要素及びデータ品質副要素の記述子は,データの個々のインスタンスに適用することができる。
注記1 データ品質要素の概念は,JIS X 7113で規定されている。また,JIS X 7115のDQ̲Element に
おいて,機能的に等価なものとしてモデル化されている。
データ集合又はデータ集合の部分のための品質情報は,応用スキーマに影響しない。JIS X 7115で規定
した仕様に合致するためには,データ集合のためのメタデータの中で報告することが望ましい。
規則:
1) 地物又は属性の個々のインスタンスで,あるインスタンスの品質が,データ集合又はデータ集合の
部分がもつ暗黙の品質とは異なると思われるときはいつでも,その品質情報をインスタンスに帰属
する情報として報告しなければならない。
2) 品質属性(GF̲QualityAttributeTypeのインスタンス)は,応用スキーマの中で定義し,データ品質
情報を所持するために使用しなければならない。
3) 品質属性は,それが報告するデータインスタンスを表現する(UMLの)クラスの属性として応用ス
キーマの中で表現されなければならない[8.3.1規則4)参照]。
4) 品質属性は,値のためのデータ型としてJIS X 7115のデータ品質情報パッケージで定義されている
クラスDQ̲Elementの下位型(表2参照)のうちの一つをもたなければならない。
土地区画
応用スキーマ
メタデータ・
スキーマ
JIS X 7115
モデル統合
空間スキーマ
JIS X 7107
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表2−JIS X 7115で定義しているDQ̲Elementの下位型
品質要素
品質副要素
DQ̲Element型の下位型
位置正確度
絶対正確度又は外部正確度
相対正確度又は内部正確度
グリッドデータ位置正確度
DQ̲AbsoluteExternalPositionalAccuracy
DQ̲RelativeInternalPositionalAccuracy
DQ̲GriddedDataPositionalAcuracy
時間正確度
時間測定正確度
時間一貫性
時間妥当性
DQ̲AccuracyOfATimeMeasurement
DQ̲TemporalConsistency
DQ̲TemporalValidity
主題正確度
分類の正しさ
非定量的属性の正しさ
定量的属性の正確度
DQ̲ThematicClassificationCorrectness
DQ̲NonQuantitativeAttributeAccuracy
DQ̲QuantitativeAttributeAccuracy
論理一貫性
書式一貫性
位相一貫性
DQ̲FormatConsistency
DQ̲TopologicalConsistency
5) 品質属性は属性の属性として使用してもよい。この場合,attributeOfAttribute(8.3.1参照)の主規則
を適用しなければならない。
注記2 (UMLの)属性がデータ型としてDQ̲Element又はその下位型の一つを使用する場合には,
この属性はそれを定義しているクラスについての品質情報をもつ。
例1 図14は,“地域”地物の下位型への分類についての品質情報をもつ“地物分類の正しさ”属性
を示す。
図14−地物インスタンスの品質の例
例2 図15は,“地域”地物が“外形”属性をもち,更に“外形”属性が“正確度”品質属性をもつ
ときの,UML実装の二つの選択肢を示す。
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図15−地物の属性の品質の例
8.5.3.2
追加品質情報の報告のための規則
JIS X 7115のデータ品質情報パッケージの中で定義しているように,追加品質副要素と呼ばれる追加記
述によってデータ品質情報を拡張することは,多くの目的のために便利で必要となる。
規則:
1) 使用者が定義した品質副要素は,DQ̲Elementの下位型又は標準スキーマ(8.4.2参照)の定義域プ
ロファイルのための規則による下位型(表2参照)の一つとして,クラスとして定義しなければな
らない。
例 図16は,使用者が定義した品質副要素を示す。
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図16−使用者が定義した品質の例
8.5.3.3
地物インスタンスの属性のための品質情報報告
規則:
1) 地物属性の品質特性は,8.3.1規則5):attributeOfAttributeに従い実装しなければならない。
8.6
時間規則
8.6.1
一般時間規則
規則:
1) 地理データに適用される時間的側面で,ISO/TS 19103で規定するDate,DateTime及びTimeで表現
しないものは,すべてJIS X 7108に規定する仕様に合致していなければならない。
注記 属性では,ISO/TS 19103 で規定するDate,DateTime及びTimeを使用することができるが,こ
うすると,この属性は,TM̲Object をもたないことになり,これらに接続された参照系がない
ため,一般地物モデルでいうところの時間属性型ではなく,主題属性型に属することになる
(7.4.4及び7.4.8参照)。
8.6.2
時間属性
規則:
1) 地物型の時間的特性で,ISO/TS 19103で規定するDate,DateTime及びTimeで表現しないものは,
すべて地物属性の下位型である時間属性として定義しなければならない。
2) UMLによる時間属性の実装は,標準化されたスキーマに参照付けするための規則(8.2.5参照)に
従わなければならない。
3) 時間属性は,地物を表現するUMLクラスの属性として応用スキーマの中で表現してもよい(8.3.1
参照)。その場合には,属性はその値のためのデータ型として時間スキーマ(JIS X 7108参照)の中
で定義された時間オブジェクトの一つをもっていなければならない。
4) 次の場合のいずれかが当てはまる場合,時間属性はUMLクラス(すなわち,時間オブジェクトの
下位型)として実装しなければならない[8.3.1規則5)参照]。
− 場合1:属性が複数の構成要素をもつ。
応用スキーマ
建物
使用者定義品質記述
(from品質スキーマ)
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− 場合2:時間オブジェクトの属性のデータ型を制限する必要がある。
− 場合3:JIS X 7108で定義しているインタフェースの操作を明示的に参照する必要がある。
5) 時間属性は,属性の属性(attributeOfAttribute,8.3.1参照)として使用することができる。この場合,
JIS X 7108で定義している時間オブジェクトのうちの一つのオブジェクトの下位型にならなければ
ならない。
6) 適用しなければならない有効な時間オブジェクトを表3に示す。
表3−応用スキーマの時間属性のための有効な時間オブジェクト一覧
時間幾何プリミティブ
時間位相プリミティブ
時間複体
TM̲Instant
TM̲Period
TM̲Node
TM̲Edge
TM̲TopologicalComplex
例1 図17は,野外に設置され,決められた頻度で計測値を記録する機器の,計測活動についての応
用スキーマを示す。時間幾何プリミティブは,地物型“計測装置”及び“計測事象”において
使用された時間属性型のデータ型であることが分かる。
図17−時間属性の例
例2 図18は,時間地物属性としてTM̲TopologicalComplexの使用を示す。“建物履歴”は“建物”
地物型の一つの属性型であり,UMLクラスとしてスキーマの中で表現されている。また,それ
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は,TM̲TopologicalComplexの下位型であり,建物の履歴の中の事象と状態とを記述する
TM̲TopologicalPrimitiveの集成である。すなわち,“建物履歴”は,出来事の順序をもつという
点でTM̲TopologicalComplexを継承する。それぞれの出来事は,線形グラフのノード又はエッ
ジに対応する。“建物履歴”は線形グラフを形成するので,{TM̲Node.previousEdge->size ≦ 1}
である。
なお,開始ノードの手前エッジのsize値(コレクションの要素数)は0である。また,
{TM̲Node.nextEdge->size ≦1}である。ただし,終端ノードにおいてだけ次エッジのsize値は0
である。
図18−時間地物属性として使用されるTM̲TopologicalComplexの例
8.6.3
地物間の時間関連
8.6.3.1
関係の型
一般地物モデルによると,時間関連 (GF̲TemporalAssociation) は地物間の関連 (GF̲AssociationType) の
下位型である(図7参照)。時間関連の型には,単純時間関連及び地物継起の二つがある。
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8.6.3.2
単純時間関連
単純時間関連は,時間属性のためのデータ型として使用される時間幾何プリミティブに,JIS X 7108の
TM̲Primitivesのインタフェースのために定義される操作を適用することによって導くことができる。
例1 ある応用スキーマで,データ型としてTM̲Instantをとる属性“建築年”をもつ地物型“建物”
を表すUMLクラスを定義したとする。そして,建物Aは1950年に建築され,建物Bは1970
年に建築されたとする。建物Aの“建築年”属性に対応するTM̲Instantのインスタンスに付随
するTM̲Order.relativePosition操作が,建物Bの“建築年”属性に対応するTM̲Instantのイン
スタンスを入力パラメタとして起動された場合,それは“before”を返す。TM̲Separation.distance
操作が,同様に起動された場合は,“20年”を返す。
規則:
1) 単純時間関連は二つの方法の一つによって,応用スキーマの中で実装しなければならない。
− 場合1:属性のデータ型として使用された時間プリミティブは,JIS X 7108で定義されたTM̲Order
インタフェースから,TM̲RelativePosition操作を実装しなければならない。そうすることで,単
純時間関連をデータから導くことができる。
− 場合2:地物間の単純時間関連は,UML内の関連を使用した応用スキーマの中で実装しなければ
ならない[8.3.1規則2)参照]。
例2 図19は,関連として実装された単純時間関連を示す。このスキーマは,ガソリンスタンドがで
きる以前に道路が存在することを示す。
図19−単純時間関連の明示的な表現の例
8.6.3.3
地物継起
地物継起は,一つ以上のインスタンスが他の一つ以上の地物インスタンスによって置換されることを含
む時間の変化の順序である。地物継起の型には地物置換,地物分裂及び地物融合の三つがある。地物置換
は別の地物インスタンスによる,一つの地物インスタンスの置換である。二つの地物インスタンス間では
1対1の関係が成り立つ。地物分裂は,一つの地物インスタンスが二つ以上の地物に分割したときに発生
する。地物インスタンス間で1対多の関係が成り立つ。地物融合は,二つ以上の地物インスタンスが一つ
の地物インスタンスに統合するときに発生する。地物インスタンス間に多対1関係が成り立つ。これらの
型は,組み合わせてもよい。
異なった時間に,かつ,特定の順序で,同じ空間的位置を占めるという関係にある地物間において,地
物継起には空間及び時間の両方の側面がある。
地物継起関係は,地物の空間属性及び時間属性から導き出すことができる。しかし,これは地物の存在
期間を識別する時間属性をもつことを,すべての地物型に要求する。地物継起は,空間プリミティブを共
有するこれらの地物を識別し,これらの存在期間からTM̲RelativePositionを決定することによって導き出
すことができる。
地物継起は,必ずしも型依存ではない。これは地物インスタンスの型が,必ずしもそれと置き換わる地
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物インスタンスの型を予測するものではないということである。地物継起は一般的な地物レベルでモデル
化されることもできるが,必ずしも地物型レベルにおいてではない。
規則:
1) 地物継起型の地物関連は,地物型クラス間のUML関連として応用スキーマ内でインスタンス化し
てもよい。
2) 地物継起型の地物関連は,一般的な地物クラスの自己参照関連として応用スキーマ内でインスタン
ス化してもよい。
3) 名前,役割及び多重度は,地物継起の型に合致させなければならない。
例1 図20は,地物型クラス間の関連としてモデル化された地物継起を示す。アメリカ東部でよくみ
られ,“放棄農地遷移”として知られている生態遷移の一つの型の例である。ある場所が乱され
ないようにしておいた場合,種は,その場所で図に示すように変化する。
図20−地物型間での地物継起の例
例2 図21は,継起関係をもつ可能性のある様々な地物型に対して,その上位型となるUMLク
ラスの自己参照する関連によってモデル化した地物継起を示す。これらの地物型のインス
タンスは,続いて起こる互いの順序を予測できないため,この方法でモデル化することが
必要となる。
牧草地
オーク及びヒッコリの森
低木林
マツの林
38
X 7109:2009 (ISO 19109:2005)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
図21−はん(汎)化した地物のレベルでの地物継起の例
8.7
空間規則
8.7.1
一般空間規則
規則:
1) 空間属性型の値の定義域は,地物の空間特性を記述するための概念スキーマ及びこれらのスキーマ
に整合する空間演算子の集合を定義するJIS X 7107の仕様に合致しなければならない。
JIS X 7107は,ベクトルデータを取り扱う。そのベクトルデータは,地物の空間特性を表現するための
オブジェクトを構成する幾何プリミティブ及び位相プリミティブ(空間オブジェクト)からなる。
幾何属性は,座標及び数学的関数によって,次元,位置,大きさ,形及び向きを含む地物の空間特性を
定量的に記述するための手段を提供する。オブジェクトの幾何属性を記述するために使用する数学的関数
は,空間的位置を定義するために使用する座標系に依存する。幾何属性は,一つの座標系から他の座標系
へ情報が変換される場合に,唯一変化する地理情報の特性である。
位相属性は,空間が弾性的,かつ,連続的に変形させられる場合,例えば,地理データが一つの座標系
から他へ変換されるときに不変のままであるような幾何形状の特性を扱う。地理情報の状況下において,
位相属性は,一般的に,n次元のグラフの連結性,すなわち,そのグラフの連続的な変換の下で不変であ
るような特性を記述するために使う。
計算位相幾何は,基礎となる幾何属性から導出することのできる幾何プリミティブの連結性についての
情報を提供する。位相属性は,計算幾何学における計算を加速することに最も生産的に利用できる。内包
(ポリゴン内点判定),隣接判定,境界生成及びネットワーク追跡のような幾何演算は計算量が多い。その
ため,位相複体,ネットワーク構造又はグラフとして知られている組合せ構造は,しばしば計算幾何学の
アルゴリズムを最大限に利用する目的のために構成される。これらのデータ構造及び処理構造によって,
計算幾何学アルゴリズムを組合せアルゴリズムに変換する。
8.7.2
空間属性
規則:
1) 地物の空間特性は,一つ以上の空間属性によって記述しなければならない。応用スキーマの中では,
空間属性は地物属性の下位型であり(7.4参照),その値の分類法は空間スキーマJIS X 7107で定義
はん(汎)化地物
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している。
2) 応用スキーマにおいて,空間属性は二つの方法のいずれかで表現しなければならない。
− 場合1:地物を表すUMLクラスの属性として定義する方法。このとき属性は,空間スキーマ
JIS X 7107に定義している空間オブジェクトの一つをその値のデータ型として使用しなければ
ならない。
− 場合2:地物を表すクラスと,空間スキーマJIS X 7107に定義している空間オブジェクトの一
つとの間のUML関連として定義する方法。
3) 空間属性は,その値として空間オブジェクトを使用しなければならない。空間オブジェクトは幾何
オブジェクト及び位相オブジェクトに分類され,その両方について,プリミティブ,複体又は集成
として下位型化される(ただし,集成は幾何オブジェクトだけ)。表4は,応用スキーマにおいて空
間属性の値として使用しなければならない空間オブジェクトの一覧表である。
表4−応用スキーマにおいて空間属性として有効な空間オブジェクト一覧
幾何オブジェクト
位相オブジェクト
幾何プリミティブ
幾何複体
幾何集成
位相プリミティブ
位相複体
GM̲Point
GM̲Curve
GM̲Surface
GM̲Solid
GM̲CompositePoint
GM̲CompositeCurve
GM̲CompositeSurface
GM̲CompositeSolid
GM̲Complex
GM̲Aggregate
GM̲MultiPoint
GM̲MultiCurve
GM̲MultiSurface
GM̲MultiSolid
TP̲Node
TP̲Edge
TP̲Face
TP̲Solid
TP̲DirectedNode
TP̲DirectedEdge
TP̲DirectedFace
TP̲DirectedSolid
TP̲Complex
注記 この表は,空間オブジェクトの最上位レベルクラスについてだけ記載している。これらの下位型を使用
してもよい。
例 図22は,土地区画という名の応用スキーマを示す。この応用スキーマは,空間スキーマで定義さ
れたUMLクラスGM̲Surfaceを使用しているために,空間スキーマに依存している。“区画”地
物は空間属性(“範囲”)をもち,その値はデータ型GM̲Surfaceのインスタンスである。
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図22−UMLにおける空間属性の例
8.7.3
地物の空間属性の値を表現するための幾何集成及び空間複体の使用
8.7.3.1
一般
多くの地物からなる空間的構成体は,一つの幾何プリミティブで表現することはできない。
GM̲Aggregate及びGM̲Complexは,このような地物を,幾何オブジェクトの集まりとして表現すること
を可能にする。
8.7.3.2
幾何集成
GM̲Aggregateは,GM̲Objectの任意の集まりであってよく,更なる幾何的構造体を必要とはしない。
GM̲Aggregateは,他の集成を含むことができる。GM̲MultiPrimitiveは,GM̲Primitiveの任意の集まりで
あってよいが,他の集成を含むことはできない。特別な型GM̲MultiPoint,GM̲MultiCurve,GM̲MultiSurface
及びGM̲MultiSolidは,それぞれGM̲Point,GM̲Curve,GM̲Surface及びGM̲Solidの下位型のインスタ
ンスだけを含む,型を特定した集成である。GM̲Aggregateの直接のインスタンスはこの制約をもたない。
規則:
1) GM̲Aggregateは,構造化していないGM̲Objectの集まりであるような地物を表現する空間属性の
値として使用してよい。
− 場合1:GM̲Objectは含まれるオブジェクトの型に制限がないことから,そのGM̲Objectの異な
った型の構造化されていない集まりとして地物を表現する空間属性の値には,GM̲Aggregateを用
いなければならない。
例1 電力線は,電線と電線を支える個々の電柱との2種類の幾何オブジェクトから成り立っ
ているとみなすことができる。このスキーマでは,GM̲Aggregateを使うことができる。
− 場合2:同じ型の幾何プリミティブの集合であるような地物を表現する空間属性の値には,
GM̲MultiPoint,GM̲MultiCurve,GM̲MultiSurface又はGM̲MultiSolidを使用しなければならな
い。
例2 果樹園は,応用システムの目的によっては木の集まりとして見ることができる。その
応用スキーマ
モデル統合
土地区画
空間スキーマ
JIS X 7107
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場合,地物“果樹園”の空間属性はGM̲MultiPointでならなければならず,各GM̲Point
が個々の木を表現する。果樹園を複合地物とし,木を単純地物として扱うこともでき
るが,果樹園をGM̲Pointの集まりとして表現された単純地物とすることもできる。
2) 空間属性の定義における特定の構成及び制約は,GM̲MultiPrimitiveの下位型としてすべての制約を
含み,使用者定義の空間構成をもった新しい(UMLの)クラスを応用スキーマに導入することによ
って実装しなければならない。
例3 図23は,名称“3点及び線”として使用者定義した空間集成を示す。それを応用スキ
ーマにおける空間属性のデータ型としている。
図23−応用スキーマで定義された空間集成の例
8.7.3.3
幾何複体
幾何複体は,ある地物の空間特性が,連結な幾何プリミティブの集合であることを表すために使用する。
さらに,GM̲Complexのインスタンスでは,異なる地物の空間属性が幾何プリミティブを共有してもよい。
GM̲ComplexにおけるそれぞれのGM̲Primitiveの間には明示的な連結はない。すなわち,GM̲Primitive
の間の連結性は,座標値によって導かれることになる。
規則:
1) GM̲Complexは,それぞれの境界だけで接合し境界以外では接合しないGM̲Objectの集まりとして
地物を表現する場合の空間属性の値として使用しなければならない。GM̲Complexの下位型は,特
定の空間構成を表現する目的でGM̲Complexの構造を制限するために用いてよい。
一つの複体を構成する同一次元のプリミティブは,共通の境界を共有する場合を除いて接合してはなら
ない。ある複体のプリミティブがその複体の一次元低い別のプリミティブと交差するのは,前者がその境
界に後者を含むときに限られる。ある複体のプリミティブがその複体の二次元以上低いプリミティブと交
差するのは,前者が後者を内包し,両者の間にInterior To(内部にある)関連が明示されているときに限
る。
例1 排水管網は,連結グラフを構成するように制限されたGM̲Curveの集合体であるGM̲Complex
として表現することができる。
2) 幾何要素を共有する複数の地物は,より大きな一つのGM̲Complexに含まれた部分複体である
(from空間スキーマ)
地物1
3点及び線
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GM̲Complexとして表現しなければならない。
例2 地籍データの中の各筆は,複数のGM̲Curveからなる境界をもつ。各GM̲Curveは,二つの筆
界によって共有される。このそれぞれの筆界は一つのGM̲Complexである。そしてすべての筆
界の集合は,より大きな一つのGM̲Complexである(図24参照)。
注記 GM̲CompositeCurveは,GM̲Complexの下位型である。
図24−応用スキーマで定義された空間複体の例
8.7.3.4
幾何合成体
幾何合成体は,ある幾何プリミティブのすべての特性をもつ幾何複体であるが,同じ種類のより小さな
幾何プリミティブによって構成されるという点だけが異なっている。幾何合成体は,同じ種類の幾何属性
をもつより小さな幾何オブジェクトによって構成された複合地物を表現するために使用する。
規則:
1) GM̲Compositeは,ある幾何プリミティブの幾何特性をもつような複合地物を表現するために使用
しなければならない。
注記 道路網は道路で構成され,それぞれの道路は異なった種類の道路要素を表す単純地物で構成さ
れる(図25参照)。道路要素の空間属性はGM̲Curveであるとする。そのとき,各道路の空間
属性は,その道路の各道路要素を表すGM̲Curveで構成されたGM̲CompositeCurveによって表
現できる。道路網の空間属性は,各道路を表現するGM̲CompositeCurveの集合を含んだ
GM̲Complexによって表現できる。
筆
筆界
未確定の筆界
算定による筆界
境界標を伴う筆界
(from空間スキーマ)
(from空間スキーマ)
境界標
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図25−応用スキーマで定義された幾何合成体の例
8.7.3.5
グローバル幾何複体
プリミティブは,複数の複体の中に同時に存在してよい。これはすなわち,幾何属性が幾何合成体を構
成するような地物の上に更に上位の構造体を設定してよいことを意味する。この構造体を使って,地物間
の位相の関係を明示的に保存することができる。この方法は,テーマ (theme),レイヤ (layer) 又はマップ
(map) と呼ばれる大きな(時として明示されない)地物群を作成するときなどに使用する。
注記 “テーマ”を“主題”と呼ぶこともある。特定のテーマを強調して表現した地図を,一般に,
主題図と呼ぶ。
規則:
1) 一つ以上の地物クラスの一つ以上の属性の値を表現している幾何オブジェクトを構成要素とするグ
ローバル地物では,表現されている各属性がこのグローバル地物の部分複体となるような
GM̲Complexインスタンスでなければならない。この包含関係は,応用スキーマにおいて定義しな
ければならない。このようなグローバル地物は,それぞれのデータ集合において一意の名称が割り
当てられなければならない。グローバル地物の部分複体でなければならない各地物の属性には,そ
れが属するグローバル地物の名称を指定しなければならない。
他の地物と同様に,これらのグローバルテーマの一つを,より大きなテーマに属するものとして定義し
てよい。この場合,その基本となる地物は,より大きなテーマにも論理的に属する。例えば,“河川テーマ”
及び“水路テーマ”が“水系テーマ”に包含されてよい。ある地物が複数の属性を介して複数のグローバ
ル地物又はテーマに属することについては何ら妨げるものはないが,ここで述べている以外の方法では,
通常,個々の属性は最大でも一つのテーマにしか加わることができない。
注記 データ集合内のすべての道路が,ネットワークを構成するような道路中心線をもつ場合(位相
構造が追加されているか否かにかかわらず),地物“道路テーマ”を,応用スキーマとして定義
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してよい。ただし,その場合次の制約をもつ。 1) そのような地物はただ一つだけである。 2)
すべての道路中心線はプリミティブの合成体であり,かつ,“道路テーマ”に含まれるものとし
て定義しなければならない。
8.7.3.6
位相複体
位相複体は,それらを構成する位相プリミティブ間の接続関係を明示する。位相複体の一つの利用方法
として,計算位相幾何の手法を幾何複体に適用することができることが挙げられる。この場合,TP̲Complex
(位相複体)とGM̲Complex(幾何複体)との間にRealization(実現)関連を必要とする。位相複体のも
う一つの利用方法として,幾何的構成とは独立して地物間の連結性の記述を可能にすることが挙げられる。
規則:
1) 応用システムが,地物を表現する幾何プリミティブの間の連結性を明確に表現することを必要とす
るときは必ず,TP̲Complexを地物の空間属性として使用しなければならない。TP̲Complexは,地
物の幾何的構成を表現するGM̲Complexとの間にRealization(幾何的実現)関連を結んでいること
が必要である。このTP̲Complexは,複数の地物を表現するより大きいTP̲Complexの部分複体で
あってもよい。
2) TP̲Complexは,地物の幾何的構成から独立して連結性を表現するための地物属性として使用する
ことができる。この場合,TP̲ComplexはRealization関連をもたない。
例 電力の配電ネットワークをTP̲Complexを用いて表現する場合,TP̲Nodesを発電所,変圧器,開
閉器などの接続点に,TP̲Edgesを電力線に適用することになる。
注記 幾何的実現関係にあるTPクラスとGMクラスとの有効な組合せによって(型の多重継承によ
って)一つのクラスを定義した場合,TP̲ObjectとGM̲Objectとの関係は“自己参照”となる。
8.7.4
地物間の空間関連
一般地物モデル(7.3参照)によると,地物間の空間関連は地物間関連の下位型である。例えば,内部に
ある,交差する,接合するなどの空間関連は地物間の位相的な関係であり,その位相属性によって暗示的
に記述することができる。他の,例えば,東側にある,上方にある,などの空間関係は位相属性によって
記述することができず,地物間の明示的な関連によってだけ記述することができる。
注記 JIS X 7107は幾何複体及び位相複体を定義しており,幾何プリミティブと位相プリミティブと
の間の互いの関係を示している。これらは,一つの地物において空間属性を構成する要素間の
関係であっても,異なる地物の空間属性間の関係であってよい。そこでは,一つの地物の幾何
属性と他の地物の幾何属性とをいかに関係付けるかについて説明しているが,複数の地物間で
いかに他の地物と関係付けるかということについては記述していない。インスタンスの段階で
あれば,地物間の関係は,幾何属性からの計算によって導き出すことができる。
規則:
1) 地物間の空間関連は,幾何複体又は位相複体にそれぞれ関係付けされた幾何オブジェクト又は位相
オブジェクトとして地物を表現することによって暗示的に記述することができる。
2) 幾何プリミティブ又は位相プリミティブ間に既に定義された関連によって記述することができない
空間関連は,(UMLの)地物間の関連として応用スキーマの中で定義しなければならない。
例1 図26は,空間スキーマの仕組みによって実装されている空間関連を示す。地物と地物との間の
位相関係は,位相プリミティブであるTP̲Node及びTP̲Edgeによって記述され,道路ネット
ワークを表現するTP̲Complexに属している。これらの空間オブジェクトは暗示的に空間関連
をもつ(附属書D.1の例参照)。道路のTP̲Edgeは道路の中心線を表し,幾何実現としての
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GM̲Curveによって応用スキーマの中で関連付けられている。応用スキーマでは,幾つかの地
物は,例えば,この中の道路の表面の表現に見られる“幾何形状”属性のように,その地物の
二番目の幾何記述をもつもう一つの属性を定義している。地物の幾何オブジェクト及び位相オ
ブジェクトは,異なる次元をもつことがあるが,その場合,この幾何オブジェクトは位相オブ
ジェクトの幾何実現ではない。例えば,道路及び交差点は,幾何的にはまず面として記述され,
更にそれぞれ曲線及び点として記述されている。また,これらはエッジとノードとによって位
相的に記述されるが,ここではエッジの幾何実現が曲線(面ではない)であり,ノードの幾何
実現が点(面ではない)である。
図26−空間オブジェクトを使用することによって空間関連を実装した例
例2 図27は,道路と交差点との間の空間関連を,それら二つのクラス間の関連として記述した例を
示す。
図27−応用スキーマで関連付けることによって空間関連を実装した例
8.7.5
幾何を共有する地物
異なる地物が同じ位置を占めて出現するとき,部分的に又は完全に同じ幾何を共有することができる。
共通幾何を共有するためには,空間地物属性は一つ以上のGM̲Objectを共有しなければならない。
幾何を共有するためには二つの方法がある。完全共有は,二つの地物インスタンスが空間属性の値とし
て同じGM̲Objectインスタンスを使用した場合に起こる。これは,応用スキーマの中の制約を記述するこ
とで要求したり,排除したりすることができる。このような制約の記述がない場合には,必要に応じてい
つでも共有することができる。
規則:
1) 応用スキーマにおいて,二つ以上の地物型のインスタンスに対して,それぞれの地物を表現する
GM̲Objectが等しいという制約を含むことによって,幾何を完全共有することを要求してもよい。
2) 応用スキーマにおいて,二つ以上の地物型のインスタンスに対して,それぞれの地物を表現する
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GM̲Objectが等しくないという制約を含むことによって,幾何を完全共有することを排除してもよ
い。
例1 図28は,電柱の上に設置されている変圧器が,電柱を表現するGM̲Pointによって表現される
ことを示す。この応用スキーマでは,すべての変圧器に電柱の幾何属性を共有するように要求
しているが,電柱は必ずしも変圧器の幾何属性を共有する必要がないことに留意する必要があ
る。
図28−幾何属性を共有する地物の例
地物インスタンス間での幾何属性の部分共有では,各地物の空間特性を表現する幾何オブジェクトが,
一つの幾何複体の要素としてモデル化されることが必要である。8.7.3.3及び8.7.3.4の規則及び例を参照す
る必要がある。
例2 図29は地物間での幾何属性の部分的共有を示しており,一つのGM̲Curveが橋と道路とを同
時に表してもよい。
図29−地物間での幾何属性の部分的共有の例
8.7.6
点地物,線地物及び面地物
従来の地理データの構造化法では,地物と幾何プリミティブとの間の識別を行わず,地物型の定義の中
に幾何情報を含む。この場合,地物は幾何属性の性質から,点地物,線地物及び面地物に分類する。大量
にある既存の地理データ及び実用標準は,この地理データの構造化法に基づいている。
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この規格では,地理的特性をもった地物を地理情報の基本的構成単位として使用する。幾何属性は,地
物を記述する幾つかの方法の一つにすぎない。地物型は,幾何属性に基づいて定義するのではないため,
複数の幾何的な記述を一つの地物に関連付けることができる。点地物,線地物及び面地物を,地理的特性
をもった地物として一般化された形式で再定義することを推奨する。
規則:
1) 点地物は,その空間属性の値としてGM̲Pointをもたなければならない。
2) 線地物は,その空間属性の値としてGM̲Curve又はGM̲CompositeCurveをもたなければならない。
3) 面地物は,その空間属性の値としてGM̲Surface又はGM̲CompositeSurfaceをもたなければならな
い。
8.7.7
内挿法の定義
JIS X 7107において,一つのGM̲Curveはセグメントを幾つでも含むことができ,そのセグメントはす
べてGM̲CurveSegmentの下位型の一つである。ある曲線を構成するセグメントは,すべてが同じ型であ
る必要はない。一つのGM̲Surfaceはパッチ(面の断片)を幾つでも含むことができ,そのパッチはすべ
てGM̲SurfacePatchの下位型の一つである。ある曲面を構成するパッチは,すべてが同じ型である必要は
ない。空間スキーマの中で定義されたGM̲CurveSegment及びGM̲SurfacePatchの下位型の既存の集合が,
応用スキーマの要求を満たさないとき,またそのときに限り,下位型を導入することとなる。このとき,
GM̲CurveSegment又はGM̲SurfacePatch,若しくはこれらのクラスの下位型の一つに対して下位型を定義
することになる。
規則:
1) GM̲CurveSegment又はGM̲SurfacePatchの既存の下位型が内挿要件を満たす場合,この下位型を応
用スキーマにおいて使わなければならない。
2) 空間スキーマ中の既存のクラスが応用スキーマの要件を満たさないとき,またそのときに限り,応
用スキーマにおいて,特別な内挿法のための適切なデータと振る舞いとをカプセル化した(UML
の)クラスを,GM̲CurveSegment又はGM̲SurfacePatch(若しくはその下位型の一つ)の下位型と
して定義しなければならない。
8.7.8
独立空間複体
同じ応用スキーマにおいて,位相的に独立した地物及び空間オブジェクトの集合を二つ以上含むことが
できる。
規則:
1) 同じ地物の異なる空間表現は認められるが,それらは異なる複体に属していなければならない。
2) 位相的に独立した空間オブジェクトの集合は,異なるTP̲Complexに属していなければならない。
例1 地下鉄道システムのある都市地域を考えそれを表現したものを図30に示す。図中,網掛けされ
た四角形であり,GM̲Objectによって表現された面地物は,地下鉄道システムの駅を表してい
る。GM̲Objectは,地物の実際の形状及び位置情報を含んでいる。これらは,都市地域として
表現されるGM̲Complexに属している。同時に,駅がTP̲Nodeで表され,相互の接続(実際
の経路ではない)がTP̲Edgeで表されたTP̲Complexによって,鉄道網の接続性が表現されて
いる。TP̲Complexは,幾何実現をもっていない。この例では示していないが,鉄道線の実際
の経路は,GM̲Complexに含まれるGM̲Curveとして表現してもよい。ただし,これらの
GM̲Curveは,駅間の接続を示すTP̲Edgeの幾何実現ではない。
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シンボル
■ GM̲Surfaceとしての駅
о TP̲Nodeとしての駅
━ TP̲Edgeによる駅間接続
図30−応用スキーマにおける独立空間複体の例
例2 図31に,独立した幾何複体を使用して単一の道路網を表現した応用スキーマを示す。一方の
GM̲Complexは経路を表し,道路セグメントの中心線を表現するGM̲Curveで構成されている。
他方のGM̲ComplexはGM̲Surfaceの集約によって舗装面を表している。
図31−独立空間複体の例
都市地域
建物
駅
鉄道網
道路網
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8.8
カタログ化規則
8.8.1
一般
地物カタログは,特定の論議領域に着目して実世界の現象の記述を蓄える貯蔵庫である。地物カタログ
化法は,カタログの中の情報ができるだけ明確で,理解しやすく役に立つものとなるように,これらの現
象を表現するデータの構成についての詳細を示す。
注記 地物カタログは,地物の定義を型のレベルで記述するものであり,各々の型の個々のインスタ
ンスを記録し表現するものではない。このため,空間参照,時間参照及び描画パラメタを含ま
ない(JIS X 7107,JIS X 7108及びISO 19117参照)。また,地物インスタンスに対するデータ
取得基準も含まない。
8.8.2
地物カタログに基づく応用スキーマ
応用スキーマは,例えばJIS X 7110に従った地物カタログに示した定義に基づいて,部分又はすべてを
構成してよい。
地物カタログの概念モデルはこの規格に基づいており(JIS X 7110参照),GFMの実装であるため,8.3.1
の規則を使用して地物カタログの情報から応用スキーマを構築することができる。
規則:
1) JIS X 7110に適合する地物カタログの情報を用いて,8.3.1の規則に従って応用スキーマを構築して
もよい。
例 図32は,地物カタログに基づいて応用スキーマを構築する過程を示す。ここでは,スキーマは空
間属性 道路中心線によって拡張されている。
地物カタログ
地物型
名称
道路
定義
自動車が通行するための公開の土地
コード
1594
属性
道路名,車線数,道路種別
関連
接続相手道路,共用道路
など
図32−地物カタログに基づく応用スキーマの例
注記 この地物カタログは応用スキーマの一部ではないが,応用スキーマの文書の一部である。
道路
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8.9
地理識別子を用いた空間参照
地理識別子を用いた空間参照 (JIS X 7112) を使用すれば,場所への参照から位置が見つかる。地理識別
子は,場所を識別するラベル又はコードである。地理識別子によって空間参照されるデータ集合は,明示
的には座標を含まない。地名辞典は地理識別子を含み,対応する座標を提供しデータを地理的に表示又は
操作することができる。図33は,座標情報を提供する地理識別子を用いた空間参照の概念を示す。
一つの空間参照系に対して,場所の座標表現が異なった複数の地名辞典が存在してよい。使用すべき地
名辞典の選択は応用システムに依存する。例えば,国勢調査システムを対象としたとき,ある場合には国
勢調査地域の重心位置をもつ地名辞典で十分であるかもしれないが,別の場合においてはエリア境界のす
べての座標の記述が必要となる。
地物の属性 (GF̲LocationAttributeType) は,場所の識別子,及び座標によって記述した対応位置をもつ
地名辞典へのリンクを示す。
図33−地理識別子による空間参照
地 物
空間参照
地理識別子
地名辞典
位 置
もつ
識別する
含まれる
示す
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規則:
1) 地理識別子によって空間参照される属性の値領域は,JIS X 7112に規定する仕様に従わなければな
らない。
2) 地理識別子は,空間参照の値をもつ属性(GF̲LocationAttributeTypeのインスタンス)によって,応
用スキーマから参照しなければならない。
3) GF̲LocationAttributeTypeのインスタンスは応用スキーマにおいて,地物を表現するUMLクラスの
属性として表現されなければならない。その場合には,属性はその値に対するデータ型として地名
辞典スキーマ(JIS X 7112参照)の中で定義されるSI̲LocationInstanceを使用しなければならない。
例 図34は“郵便区域名”属性によって位置付けられた地物型“顧客”を示す。
図34−地理識別子による空間参照の例
モデル統合
顧客
応用スキーマ
顧客情報
地名辞典スキーマ
JIS X 7112
52
X 7109:2009 (ISO 19109:2005)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書A
(規定)
抽象試験項目群
A.1 応用スキーマにおける地物型
地物型に関する試験は,次による。
a) 試験目的 応用スキーマにおいて使用されるすべての地物型が,この規格の規則に従って定義及び実
装されていることを確認する。
b) 試験方法 応用スキーマにおける各地物型がA.2及びA.3で規定するように定義されていることを確
認するために,すべての地物型を検査する。
c) 参照 箇条7及び箇条8
d) 試験種類 機能
A.2 地物の定義
A.2.1 一般
地物の定義に関する一般試験は,次による。
a) 試験目的 応用スキーマにおける地物の要素が一般地物モデルに従って定義されていることを確認す
る。
b) 試験方法 地物型が,地物型 (A.2.2),地物属性型 (A.2.3),地物関連型 (A.2.4) 及び地物操作 (A.2.5)
の定義規則に従っていることを確認するために,応用スキーマを検査する。
c) 参照 7.3
d) 試験種類 機能
A.2.2 地物型の定義
地物型に関する試験は,次による。
a) 試験目的 地物型が一般地物モデルに従って定義されていることを確認する。
b) 試験方法 地物型がA.2.2 c)に規定する要素及び規則に従って定義されていることを確認するために,
応用スキーマを検査する。
c) 参照 7.3.4
d) 試験種類 機能
A.2.3 地物属性型の定義
地物属性に関する試験は,次による。
a) 試験目的 地物属性型が一般地物モデルに従って定義されていることを確認する。
b) 試験方法 地物属性型がA.2.3 c)に規定する要素及び規則に従って定義されていることを確認するた
めに,応用スキーマを検査する。
c) 参照 7.3.6及び7.4
d) 試験種類 機能
A.2.4 地物関連型の定義
地物関連に関する試験は,次による。
a) 試験目的 地物関連型が一般地物モデルに従って定義されていることを確認する。
53
X 7109:2009 (ISO 19109:2005)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
b) 試験方法 地物関連型がA.2.4 c)に規定する要素及び規則に従って定義されていることを確認するた
めに,応用スキーマを検査する。
c) 参照 7.3.9及び7.5
d) 試験種類 機能
A.2.5 地物操作の定義
地物操作に関する試験は,次による。
a) 試験目的 地物操作が一般地物モデルに従って定義されていることを確認する。
b) 試験方法 地物操作型がA.2.5 c)に規定する要素及び規則に従って定義されていることを確認するた
めに,応用スキーマを検査する。
c) 参照 7.3.8及び7.6
d) 試験種類 機能
A.3 UMLによる応用スキーマの作成
A.3.1 一般
UMLによる応用スキーマに関する一般試験は,次による。
a) 試験目的 応用スキーマがこの規格に規定する規則に従って作成されていることを確認する。
b) 試験方法 応用スキーマの識別及び統合 (A.3.2),応用スキーマにおける地物の実装 (A.3.3) 並びに応
用スキーマにおいてメタデータ (A.3.4),品質 (A.3.5),時間 (A.3.6),空間 (A.3.7),カタログ (A.3.8) 及
び地理識別子 (A.3.9) が使用されている場合には,その概念スキーマの使用が規則に従っていること
を確認するために応用スキーマを検査する。
c) 参照 箇条8
d) 試験種類 機能
A.3.2 応用スキーマの識別及び統合
応用スキーマの識別及び統合に関する試験は,次による。
a) 試験目的 応用スキーマがこの規格に規定した規則に従って識別され,地理情報規格シリーズの他の
規格の適切な概念スキーマと統合されていることを確認する。
b) 試験方法 応用スキーマの識別及び統合がA.3.2 c) に規定する規則に従っていることを確認するため
に,応用スキーマを検査する。
c) 参照 8.2
d) 試験種類 機能
A.3.3 応用スキーマにおける地物の実装
応用スキーマにおける地物の実装に関する試験は,次による。
a) 試験目的 地物が応用スキーマにおいてこの規格で規定する規則に従って実装されていることを確認
する。
b) 試験方法 地物の実装がA.3.3 c) の一般規則に従っていること,及び適用可能な場合にはA.3.3 c) の
特化,はん(汎)化及び集約の規則に従っていることを確認するために応用スキーマを検査する。
c) 参照 8.3.1
d) 試験種類 機能
A.3.4 応用スキーマにおけるメタデータ概念スキーマの使用
応用スキーマにおけるメタデータ概念スキーマの使用に関する試験は,次による。
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X 7109:2009 (ISO 19109:2005)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
a) 試験目的 メタデータ概念スキーマを応用システムに実装する場合には,この規格に規定した規則に
従って実装されていることを確認する。
b) 試験方法 メタデータスキーマの実装がA.3.4 c) の規則に従っていることを確認するために,応用ス
キーマを検査する。
c) 参照 8.5
d) 試験種類 機能
A.3.5 応用スキーマにおける品質概念スキーマの使用
応用スキーマにおける品質概念スキーマの使用に関する試験は,次による。
a) 試験目的 品質概念スキーマが応用システムに実装される場合には,この規格に規定した規則に従っ
て実装されていることを確認する。
b) 試験方法 品質スキーマの実装がA.3.5 c) の規則に従っていることを確認するために,応用スキーマ
を検査する。
c) 参照 8.5.3
d) 試験種類 機能
A.3.6 応用スキーマにおける時間概念スキーマの使用
応用スキーマにおける時間概念スキーマの使用に関する試験は,次による。
a) 試験目的 時間概念スキーマが応用システムに実装される場合には,この規格に規定した規則に従っ
て実装されていることを確認する。
b) 試験方法 時間スキーマの実装がA.3.6 c) の規則に従っていることを確認するために,応用スキーマ
を検査する。
c) 参照 8.6
d) 試験種類 機能
A.3.7 応用スキーマにおける空間概念スキーマの使用
応用スキーマにおける空間概念スキーマの使用に関する試験は,次による。
a) 試験目的 空間概念スキーマが応用システムに実装される場合には,この規格に規定した規則に従っ
て実装されていることを確認する。
b) 試験方法 空間スキーマの実装がA.3.7 c) の規則に従っていることを確認するために,応用スキーマ
を検査する。
c) 参照 8.7
d) 試験種類 機能
A.3.8 応用スキーマにおける地物カタログ概念スキーマの使用
応用スキーマにおける地物カタログ概念スキーマの使用に関する試験は,次による。
a) 試験目的 地物カタログからの情報が応用スキーマに実装される場合,この規格に規定した規則に従
って実装されていることを確認する。
b) 試験方法 地物カタログで定義された地物型の実装がA.3.8 c) の規則に従っていることを確認するた
めに,応用スキーマを検査する。
c) 参照 8.8
d) 試験種類 機能
A.3.9 応用スキーマにおける地名辞典概念スキーマの地理識別子の使用
応用スキーマにおける地名辞典概念スキーマの地理識別子の使用に関する試験は,次による。
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X 7109:2009 (ISO 19109:2005)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
a) 試験目的 地理識別子による参照が応用スキーマで使用される場合,この規格に規定した規則に従っ
て実装されていることを確認する。
b) 試験方法 地名辞典スキーマの実装がA.3.9 c) の規則に従っていることを確認するために,応用スキ
ーマを検査する。
c) 参照 8.9
d) 試験種類 機能
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X 7109:2009 (ISO 19109:2005)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書B
(規定)
モデリング手法及び一般地物モデル
B.1
4層構造
B.1.1 一般
地理情報をモデリングするための形式手法は,4層構造に適合しなければならない。
図B.1は一般地物モデル,応用スキーマ及び4層構造の間の関係を示す。
図B.1−4層構造
B.1.2 メタ メタレベル及びメタレベル
4層構造において,メタ メタレベルは概念,用語及び形式論を明示する。それは通常,自然言語で表現
する。
メタレベルは,メタ メタレベルにおける定義を使用する。メタレベルでは,メタ メタレベルで定義さ
れた概念の意味づけに,構文(自然言語の構文とは異なる)が追加される。
地物及びその
属性の概念
一般地物モデル
地物型定義
概念スキーマ言語
における概念
概念スキーマ言語
のモデル
応用スキーマ
地理情報
データ集合
JIS X 71xx
(ISO 191xx)によって
標準化された
概念スキーマ
選択の要件
利用
統合
メタメタレベル
メタレベル
応用レベル
データレベル
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X 7109:2009 (ISO 19109:2005)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
メタ メタレベルには,地物を定義する概念がある。この概念は,メタレベルにおける概念モデルである
一般地物モデルで使用し,それを構築する。
また,メタ メタレベルには,概念スキーマ言語を定義する概念もある。この概念は,メタレベルにおけ
る概念モデルである概念言語のモデルで使用し,それを構築する。このモデルは,独自の用語で表現され,
例えばUMLにはUMLで表現されたUMLメタモデルがある。
一般地物モデルと概念スキーマ言語のモデルとの間には相違がある。一般地物モデルは,独自の用語で
表現するモデルではなく,概念スキーマ言語で表現する。概念スキーマ言語にはUMLを選択する。
注記1 この点では,一般地物モデルを応用レベルに置くこともできる。しかし,それでは一般地物
モデルの目的とは異なってしまう(B.1.4参照)。
注記2 一般地物モデルの目的は,ISO 19101に示す。
B.1.3 メタレベル及び応用レベル
メタレベルには一般地物モデルがある。一般地物モデルは,応用レベルにある異なる地物型を記述する
ために使用する。
メタレベルで定義される概念スキーマ言語は,応用レベルでスキーマを表現するために使用する。応用
レベルには,応用スキーマ及び地理情報規格シリーズで標準化されたその他の概念スキーマがあり,応用
スキーマを構築するときに素材として使用できる。標準化されたスキーマは,必要な時点で応用スキーマ
に統合される。地理情報規格シリーズで標準化された概念スキーマは,概念スキーマ言語であるUMLで
表現する。このため,応用スキーマの言語としてUMLを選択することは適切である。ただし,これは標
準化した規則ではない。
B.1.4 応用レベル及びデータレベル
応用スキーマは応用レベルにある。これによって,構造,内容及びデータレベルでのデータの取り得る
振る舞いを表現する。
B.1.5 一般地物モデル及び応用スキーマの概念スキーマ言語
地物型の定義は,応用レベルの応用スキーマに実装する。地物型は,一般地物モデルに従わなければな
らない。このことは概念スキーマ言語に対する新たな要件をもたらす。一般地物モデルから選定した概念
スキーマ言語への対応付けが存在する必要がある。地理情報規格シリーズの規格において,選定した概念
スキーマ言語はUMLである。一般地物モデルの諸概念からUMLの概念への対応付けについては,箇条8
の主規則に示す。
一般地物モデルの目的は,次の二つである。
− 概念スキーマ言語の選択における要求を提供する。
− JIS X 7110に従った地物カタログの地物型を定義する分類用の概念モデルとして提供する。
一般地物モデルは地理情報の定義域内で必要となる概念を定義する。これらの特定の要求に厳密に対応
する概念スキーマ言語は存在しない。一般地物モデルの諸概念と選定した概念スキーマ言語の諸概念との
間には対応付けが必要である。
注記1 この対応付けが1対1でなされる場合,地物型は一般地物モデルではなく概念スキーマ言語
で表現することができる。
JIS X 7110に従って開発した地物カタログは,一般地物モデルの諸概念を使用している。これは,地物
カタログを使用した地物型の定義は,選定した概念スキーマ言語の諸概念に対応付けしなければならない
ことを意味する。一方で,カタログはどの特定の概念スキーマ言語にも依存しない。
注記2 応用スキーマの一部は,地物カタログで文書化してもよい。
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X 7109:2009 (ISO 19109:2005)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
B.2
用語“地物”
地理情報規格シリーズの規格の地物という用語は,4層構造のすべてのレベルの説明で使用する。これ
を表B.1に示す。
表B.1−異なるレベルで使用される地物
構造のレベル
地物という用語の用途
メタ メタレベル
一般的な概念としての地物であり,型又はインスタンスとして明示されない。
メタレベル
UMLで表現された一般地物モデルのクラス。クラス名はGF̲FeatureTypeとなる。
応用レベル
例えば道路のような,実世界のある現象のクラスを表現する特定の地物型。
応用スキーマにおいて表現された,一般地物モデルのGF̲FeatureTypeクラスのインス
タンス。UMLによる応用スキーマの結果は,例えば“道路”と呼ばれるクラスとなる。
データレベル
地物型の一つの具体例であるデータの集合を表現する地物インスタンス。
例 道路の“ルート66”,“国道1号”
注記 通常,使用者は,“地物”という用語を使用しているレベルを文脈から理解する。“型”及び“イ
ンスタンス”という用語は,“地物”が一つのレベルの意味だけで使用される場合に“地物”に
付加して使用する。
B.3
一般地物モデルの核
図B.2は,一般地物モデルのすべての概念,及び概念間の関係を示す。
図B.2−一般地物モデルの核
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X 7109:2009 (ISO 19109:2005)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書C
(参考)
EXPRESSにおける応用スキーマ
C.1 序文
この附属書は,本体の規定を補足するものであって,規定の一部ではない。
この附属書は,応用スキーマを概念スキーマ言語EXPRESS (JIS B 3700-11:1996) で表現するとき,適用
しなければならない規則を例として定義する。
C.2 EXPRESSにおける応用スキーマの識別及び文書
次の規則の目的は,UMLが概念スキーマ言語である場合の8.2.3及び8.2.4に示した規則の目的と同等で
ある。
規則:
1) EXPRESSでは,応用スキーマは題名,範囲及び適合性記述を提供する文書を含まなければならない。
2) 題名は,正規の言語で提供し,かつ,EXPRESS応用スキーマ識別子としても提供しなければならな
い。
3) 個々の応用スキーマの識別子は,名前と版とを含まなければならない。
注記 版を含むことは,供給者及び使用者が特定のデータ集合の内容を記述する応用スキーマの版に
ついて同意することを保証する。
4) 範囲は,意図された応用システムの分野で,容易に専門家及び使用者が理解することができる方法
で提供しなければならない。
例 範囲:不動産分譲区画の表現
5) 関係する地理情報規格シリーズの規格への適合性を記述しなければならない。
6) ENTITY又は他のEXPRESSの部品がJIS X 7110に従って地物カタログの情報に一致している場合,
カタログへの参照を文書化しなければならない。
C.3 応用スキーマと標準スキーマとの統合
次の規則の目的は,8.3.1においてUMLが概念スキーマ言語である場合の目的と同等である。
規則:
1) 応用システムのデータ構造は,応用スキーマにおいてモデル化しなければならない。
2) 応用スキーマは,地理情報規格シリーズによって標準化したスキーマを使用しなければならない。
注記 EXPRESSの応用スキーマから参照され,地理情報規格シリーズによって標準化したスキーマは,
EXPRESSで表現する必要がある。地理情報規格シリーズの規格の最新版では,EXPRESSスキ
ーマは定義しない。
3) EXPRESS (JIS B 3700-11) のREFERENCE FROM及びUSE FROMの仕組みは,標準化されたスキー
マ及び他の既存のスキーマを統合して応用スキーマを形成するために使用しなければならない。
C.4 EXPRESSによって示された応用スキーマのための規則
注記 次の規則の目的は,UMLが概念スキーマ言語である場合の8.3.1に示した主要な規則と同等で
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X 7109:2009 (ISO 19109:2005)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
ある。
規則:
1) GF̲FeatureType:GF̲FeatureTypeのインスタンスは,一つの例外(GF̲AssociationType参照)を除い
てエンティティデータ型 (ENTITY) として実装しなければならない。
2) GF̲AssociationType:GF̲AssociationType(GF̲FeatureTypeの下位型)のインスタンスは,次の二つ
のケースのいずれに当てはまるかに応じて実装しなければならない。
− 場合1:GF̲AssociationTypeのインスタンスがGF̲PropertyTypeの任意のインスタンスの集成でな
い場合,それはエンティティデータ型 (ENTITY) として実装してはならない。それはエンティテ
ィデータ型 (ENTITY) として実装したGF̲FeatureTypeのインスタンスと関連するlinkBetweenの
役割をもっており,そのエンティティデータ型 (ENTITY) の属性として実装しなければならない。
− 場合2:GF̲AssociationTypeのインスタンスがGF̲PropertyTypeのインスタンスの集成である場合,
他の地物型のようにエンティティデータ型 (ENTITY) として実装しなければならない。関連付け
されたGF̲FeatureTypeの各インスタンスについて,このエンティティデータ型 (ENTITY) は,
GF̲AssociationTypeの前の規則で記述したのと同じ方法で関連付けしたエンティティデータ型
(ENTITY) を参照している一つの属性をもたなければならない。
3) GF̲AggregationType:GF̲AggregationType(GF̲AssociationTypeの下位型)のインスタンスは,属性
の役割が“contains”及び“is part of”の類でなければならないという付加的な規則をもつ
GF̲AssociationTypeとして実装しなければならない。
4) GF̲TemporalAssociationType:GF̲TemporalAssociationType(GF̲AssociationTypeの下位型)のインス
タンスは,時間スキーマ (JIS X 7108) で定義される時間プリミティブを参照する属性として実装す
るか,上で記述したと同じ方法でGF̲AssociationTypeのインスタンスとして実装しなければならな
い。
5) GF̲SpatialAssociationType:GF̲SpatialAssociationType(GF̲AssociationTypeの下位型)のインスタン
スは,空間スキーマ (JIS X 7107) で定義される空間オブジェクトを参照する属性として実装するか,
上で記述したと同じ方法でGF̲AssociationTypeのインスタンスとして実装しなければならない。
6) GF̲AttributeType:GF̲AttributeType(GF̲PropertyTypeの下位型)のインスタンスは,属性として実
装しなければならない。
7) attributeOfAttribute:GF̲AttributeTypeの別のインスタンスに対してattributeOfAttributeの関連をもっ
ているGF̲AttributeTypeのインスタンスは,属性としてGF̲AttributeType及びその関連GF̲Attribute
を含む新しいエンティティデータ型 (ENTITY) を参照する地物 (GF̲FeatureType) を表現するエン
ティティデータ型 (ENTITY) の属性として実装しなければならない。
8) GF̲Operation:GF̲Operation(GF̲PropertyTypeの下位型)のインスタンスは,属性及びキーワード
RULE,UNIQUE及びWHEREを使用したEXPRESS制約句として実装しなければならない。
注記 JIS B 3700-11は,概念操作を含まない。サービスを目的とした応用スキーマは,EXPRESSで
表現してはならない。
9) GF̲AssociationRole:GF̲AssociationRole(GF̲PropertyTypeの下位型)のインスタンスは,
GF̲AssociationTypeを表現する属性に関する情報として実装しなければならない。
10) 特化・はん(汎)化及びGF̲InheritanceRelation:GF̲InheritanceRelationのインスタンス及びそのは
ん(汎)化/特化関連は, uniqueInstance属性値に応じてSUBTYPE及び/又は (ABSTRACT)
SUPERTYPE演算子で実装しなければならない。
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X 7109:2009 (ISO 19109:2005)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
uniqueInstance値
EXPRESSによる実装
真
SUPERTYPE OF(ONEOF())
偽
SUPERTYPE OF ()
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X 7109:2009 (ISO 19109:2005)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書D
(参考)
応用スキーマの事例
序文
この附属書は,本体の規定を補足するものであって,規定の一部ではない。
D.1 電力設備網
D.1.1 一般
次の高圧線網システムの事例は,電力設備システムにおけるデータモデルを単純化した記述である。こ
の事例は,位相及び幾何の扱い方を示すために特別に設計されている。
記号
a1-b1,b2-C,C-a2及びC-d
四つの送電線
A及びB
二つの変電所
C
送電施設,実際は鉄塔
図D.1−施設網の事例
三つの送電線が鉄塔に接続している。この場合幾何的に接続関係を示している。二つの送電線は各変電
所に接続している。しかし,ここでは幾何的には接続関係を示していない。送電線C-dとa1-b1との間は
交点なしに交差している。二つの送電線が同じ水平面上にないのでこういうことが起こり得る。
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X 7109:2009 (ISO 19109:2005)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
D.1.2 応用スキーマ
この電力設備応用システムのデータモデルをUMLで記述すると,図D.2のようになる。
図D.2−電力設備網に関する応用スキーマの例
モデル統合
空間スキーマ
JIS X 7107
電力設備
応用スキーマ
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X 7109:2009 (ISO 19109:2005)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
D.1.3 電力設備網の文書の事例
D.1.3.1 送電施設
送電施設は,次のように示す。
地物型
名称
送電施設
定義
電気を送るための補助施設
属性名称
名称,位相関係
地物属性
名称
名称
定義
送電施設の一意な名称
データ型
CharacterString
地物属性
名称
位相関係
定義
送電施設は送電線網の一つのノードである。
制約:
このノードは,TP̲Edgeによって表された送電線が一つ以上接続して
いなければならない。これは孤立ノードではあり得ない。
データ型
TP̲Node
D.1.3.2 変電所
変電所は,次のように示す。
地物型
名称
変電所
定義
電圧を変化させる機能をもつ施設
属性名称
住所,幾何記述
上位型
送電施設
地物属性
名称
住所
定義
変電所の場所を表すための地理識別子
データ型
CharacterString
地物属性
名称
幾何記述
定義
面として表現した変電所の幾何的な範囲
データ型
GM̲Surface
D.1.3.3 鉄塔
鉄塔は,次のように示す。
地物型
名称
鉄塔
定義
電力供給を支える送電塔
属性名称
高さ,幾何記述
上位型
送電施設
地物属性
名称
高さ
定義
地上から塔上まで測定された鉄塔の高さ。高さの単位はメートル。
データ型
Integer
測定単位
メートル
定義域型
1
値の定義域
高さ > 0
地物属性
名称
幾何記述
定義
点によって表示された鉄塔の位置
データ型
GM̲Point
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X 7109:2009 (ISO 19109:2005)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
D.1.3.4 送電線
送電線は,次のように示す。
地物型
名称
送電線
定義
送電施設間の電力の通路
属性名称
名称,位相記述,幾何記述
地物属性
名称
名称
定義
送電線の一意な識別子
データ型
CharacterString
地物属性
名称
位相記述
定義
送電施設間の位相的な関係。TP̲Edgeがこの関係を表現する。
データ型
TP̲Edge
地物属性
名称
幾何記述
定義
送電線の幾何的な形状。GM̲Curveが形状を表現する。
制約:
1. これは,対応するエッジの幾何実現でなければならない。
2. この曲線の両側の境界は,鉄塔の位置又は変電所の境界と接する。
データ型
GM̲Curve
D.1.3.5 電力設備網
電力設備網は,次のように示す。
地物型
名称
電力設備網
定義
電気を地域に供給する網
属性名称
位相
地物属性
名称
位相
定義
ノードとしての送電施設及びエッジとしての送電線からなる網の位
相
データ型
TP̲Complex
D.2 行政単位
D.2.1 一般
次の事例は,ヨーロッパ諸国の行政単位 (Administrative Unit) に関するデータを格納するSABEデータ
集合に基づく。データ集合の内容を,次に示す。
− 行政地域 (Administrative Area) 地物によって表される下位レベルの行政単位及び境界群。
− 行政単位の階層構造。これは,個々の行政単位についての情報と,ある上位レベルの行政単位が一つ
以上の下位レベルの行政単位で構成されるという階層構造の情報とを保有した複合地物型である。最
下位レベルの行政単位だけが空間特性(境界・面)と関連をもつ。
66
X 7109:2009 (ISO 19109:2005)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
D.2.2 UMLによる応用スキーマ
図D.3は,SABEデータ集合のUML応用スキーマを示す。
図D.3−UML応用スキーマ
注記 図D.3の応用スキーマは,クラス及び属性の英語表記名そのものに意味があるため翻訳してい
ない。そこで,その内容の理解を助けるために,同じ応用スキーマについてクラス名称及び属
性名称を意訳し日本語名称にしたものを図D.3Aとして添付する。
モデル統合
応用スキーマ
空間スキーマ
JIS X 7107
品質スキーマ
JIS X 7115
67
X 7109:2009 (ISO 19109:2005)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
図D.3A−UML応用スキーマ(日本語訳)
D.2.3 EXPRESSによる応用スキーマ
SCHEMA
SABE̲simplified;
(* Version 1.0 *)
REFERENCE FROM
Spatial̲Schema
(GM̲Surface);
REFERENCE FROM
Quality̲Schema
(DQ̲AccuracyOfTimeMeasurement);
ENTITY
Administrative̲area
(* feature type *)
ABSTRACT SUPERTYPE OF
(ONEOF(
Mainland,
Exclave̲or̲island));
landarea
:GM̲Surface;
(* spatial attribute describing a
landarea *)
END̲ENTITY;
行政単位(最小レベル)
行政単位(上位レベル)
飛び地・島
中心地域
行政地域
住民
行政単位
応用スキーマ
68
X 7109:2009 (ISO 19109:2005)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
ENTITY
Administrative̲unit
ABSTRACT SUPERTYPE OF
(ONEOF(
Administrative̲unit̲lowest̲level,
Administrative̲unit̲higher̲level));
(* a complex feature type *)
structure
:STRING;
(* thematic attribute *)
level̲EB
:STRING;
(* thematic attribute *)
level̲N
:STRING;
(* thematic attribute *)
owner
:STRING;
(* thematic attribute *)
nat̲code
:STRING;
(* thematic attribute *)
name
:STRING;
(* thematic attribute *)
designation
:STRING;
(* thematic attribute *)
END̲ENTITY;
ENTITY
Administrative̲unit̲higher̲level
Administrative̲unit);
SUBTYPE OF(
(* specialization *)
consistsOF
:SET[1:?] OF Administrative̲unit;
END̲ENTITY;
ENTITY
Administrative̲unit̲lowest̲level
SUBTYPE OF(
Administrative̲unit);
(* specialization *)
has
:Mainland;
(* association *)
consistsOf
:SET[0:?] OF Exclave̲or̲island;
(* association *)
has̲inhabitants
:Inhabitants;
has̲residence
:Administrative̲unit̲higher̲level;
END̲ENTITY;
ENTITY
Exclave̲or̲island
Administrative̲area);
SUBTYPE OF(
(* specialization *)
END̲ENTITY;
ENTITY
Mainland
Administrative̲area);
SUBTYPE OF(
(* specialization *)
END̲ENTITY;
ENTITY
Inhabitants;
(* thematic attribute *)
number̲of̲inhabitants
:INTEGER
(* value of thematic attribute *)
up̲to̲dateness
:DQ̲AccuracyOfTimeMeasurement;
(* data quality attribute *)
END̲ENTITY;
END̲SCHEMA;
69
X 7109:2009 (ISO 19109:2005)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書E
(参考)
参考文献
この附属書は,参考文献について記載するものであって,規定の一部ではない。
[1]
JIS B 3700-11:1996 産業オートメーションシステム及びその統合−製品データの表現及び交換−
第11部:記述法:EXPRESS言語
注記 対応国際規格:ISO 10303-11:1994,Industrial automation systems and integration−Product
data representation and exchange−Part 11:Description methods: The EXPRESS language
reference manual (IDT)
[2]
JIS X 7105:2001 地理情報−適合性及び試験
注記 対応国際規格:ISO 19105:2000,Geographic information−Conformance and testing (IDT)
[3]
JIS X 7110:2009 地理情報−地物カタログ化法
注記 対応国際規格:ISO 19110:2005,Geographic information−Methodology for feature
cataloguing (MOD)
[4]
JIS X 7111:2004 地理情報−座標による空間参照
注記 対応国際規格:ISO 19111:2003,Geographic information−Spatial referencing by coordinates
(IDT)
[5]
ISO 19101:2002,Geographic information−Reference model
[6]
ISO 19114:2003,Geographic information−Quality evaluation procedures
[7]
ISO 19117:2005,Geographic information−Portrayal
[8]
ISO 19118:2005,Geographic information−Encoding
[9]
ISO 19119:2005,Geographic information−Services
[10] BOOCH G, JACOBSSON I, and RUMBAUGH J, UML User Guide, 1999, Addison-Wesley ISBN
0-201-57168-4
[11] RUMBAUGH J, BOOCH G, and JACOBSSON I, UML Reference Manual, 1999, Addison-Wesley ISBN
0-201-57168-X
[12] OpenGIS Simple Features Specification for SQL, Revision 0, OpenGIS* Consortium, Inc., 1997, available
from <http://www.opengis.org/public/rfp1r0.html>
[13] UML Notation Guide, version 1.1