X 6305-2:2010 (ISO/IEC 10373-2:2006)
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲 ························································································································· 1
2 引用規格 ························································································································· 1
3 用語及び定義 ··················································································································· 2
4 指定がない場合の試験環境及び条件 ····················································································· 5
4.1 試験環境 ······················································································································ 5
4.2 事前調整 ······················································································································ 5
4.3 試験方法の選択 ············································································································· 5
4.4 指定がない場合に適用される公差······················································································ 5
4.5 総合的な測定不確定性 ···································································································· 5
5 試験方法 ························································································································· 5
5.1 磁気ストライプ領域の反り······························································································· 5
5.2 磁気ストライプの盛上がり高さ及び断面形状 ······································································· 6
5.3 磁気ストライプの表面粗さ······························································································ 10
5.4 磁気ストライプの耐摩耗性······························································································ 10
5.5 振幅測定 ····················································································································· 12
5.6 ビットセルの変動 ········································································································· 19
5.7 磁気ストライプとカードとの接着性 ·················································································· 20
5.8 静的磁気特性 ··············································································································· 21
5.9 波形Ui6 ······················································································································· 23
5.10 高保磁力,高密度記録の重ね書き ··················································································· 23
附属書A(参考)試験ヘッドの摩耗現象及び耐摩耗性試験ヘッドの使用 ········································· 24
X 6305-2:2010 (ISO/IEC 10373-2:2006)
(2)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法第14条によって準用する第12条第1項の規定に基づき,社団法人ビジネス
機械・情報システム産業協会 (JBMIA) 及び財団法人日本規格協会 (JSA) から,工業標準原案を具して日
本工業規格を改正すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日
本工業規格である。
これによって,JIS X 6305-2:2003は改正され,この規格に置き換えられた。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実用新案登録出願に
抵触する可能性があることに注意を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許
権,出願公開後の特許出願,実用新案権及び出願公開後の実用新案登録出願にかかわる確認について,責
任はもたない。
JIS X 6305の規格群には,次に示す部編成がある。
JIS X 6305-1 第1部:一般的特性
JIS X 6305-2 第2部:磁気ストライプ付きカード
JIS X 6305-3 第3部:外部端子付きICカード及び接続装置
JIS X 6305-5 第5部:光メモリカード
JIS X 6305-6 第6部:外部端子なしICカード−近接型
JIS X 6305-7 第7部:外部端子なしICカード−近傍型
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日本工業規格 JIS
X 6305-2:2010
(ISO/IEC 10373-2:2006)
識別カードの試験方法−
第2部:磁気ストライプ付きカード
Identification cards−Test methods−Part 2: Cards with magnetic stripes
序文
この規格は,2006年に第2版として発行されたISO/IEC 10373-2を基に,技術的内容及び対応国際規格
の構成を変更することなく作成した日本工業規格である。
なお,この規格で点線の下線を施してある参考事項は,対応国際規格にはない事項である。
1
適用範囲
この規格を含むJIS X 6305(規格群)は,JIS X 6301に基づく識別カード(以下,IDカード又は単にカ
ードという。)の特性評価試験方法について規定する。各試験方法は,一つ以上の基本規格と相互に参照さ
れる。基本規格とは,例えば,JIS X 6301又はIDカードを使ったアプリケーションで利用する情報記憶技
術に関する追加の規格などである。
この規格では,磁気ストライプ技術に特有な試験方法を規定する。
この規格の基本規格の一つであるJIS X 6302-2では,国際規格では規定されていないおもて面磁気スト
ライプを附属書1として規定している。この規格では,JIS X 6302-2の附属書1に規定する磁気ストライ
プの試験方法は含まない。
注記1 適合基準はこの規格の中にはなく,基本規格の中に規定する。
注記2 この規格で規定する試験方法は,項目別に実施される。1枚の供試カードを用いて,すべて
の項目を順番に試験する必要はない。
注記3 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
ISO/IEC 10373-2:2006,Identification cards−Test methods−Part 2: Cards with magnetic stripes
(IDT)
なお,対応の程度を表す記号 (IDT) は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,一致していること
を示す。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格のうちで,西暦年を付記してあるものは,記載の年の版を適用し,その後の改正版(追補を含む。)
は適用しない。西暦年の付記がない引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS B 0031 製品の幾何特性仕様 (GPS)−表面性状の図示方法
注記 対応国際規格:ISO 1302,Geometrical Product Specifications (GPS)−Indication of surface texture
in technical product documentation (IDT)
2
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JIS B 0633 製品の幾何特性仕様 (GPS)−表面性状:輪郭曲線方式−表面性状評価の方式及び手順
注記 対応国際規格:ISO 4288,Geometrical Product Specifications (GPS)−Surface texture: Profile
method−Rules and procedures for the assessment of surface texture (IDT)
JIS B 0651 製品の幾何特性仕様 (GPS)−表面性状:輪郭曲線方式−触針式表面粗さ測定機の特性
注記 対応国際規格:ISO 3274,Geometrical Product Specifications (GPS)−Surface texture: Profile
method−Nominal characteristics of contact (stylus) instruments (IDT)
JIS K 5600-5-6:1999 塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第6節:付着性(クロスカッ
ト法)
注記 対応国際規格:ISO 2409:1992,Paints and varnishes−Cross-cut test (IDT)
JIS X 6301:2005 識別カード−物理的特性
JIS X 6302-2 識別カード−記録技術−第2部:磁気ストライプ−低保磁力
注記 対応国際規格:ISO/IEC 7811-2,Identification cards−Recording technique−Part 2: Magnetic
stripe−Low coercivity (MOD)
JIS X 6302-6 識別カード−記録技術−第6部:磁気ストライプ−高保磁力
注記 対応国際規格:ISO/IEC 7811-6,Identification cards−Recording technique−Part 6: Magnetic
stripe−High coercivity (IDT)
ISO/IEC 7811-7,Identification cards−Recording technique−Part 7: Magnetic stripe−High coercivity, high
density
3
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,次による。
注記1 カードの裏面及びおもて面は,JIS X 6302-2の図2及びJIS X 6302-6の図2に規定する磁気
ストライプがある面をカードの裏面,エンボス面又はICカード端子がある面をカードのおも
て面とする。
注記2 次に定義する磁気特性は,裏面の磁気ストライプに適用する。
3.1
試験方法 (test method)
規格に適合していることを確認するために,カードの特性を試験する方法。
3.2
機能残存 (testably functional)
破壊を招く危険性がある幾つかの試験に対して,試験後に残存すべき機能を次に示す。
a) 磁気ストライプでは,試験の前後に計測される信号振幅の関係が基本規格に従っている。
b) ICでは,初期応答が基本規格に従っている。
注記 この規定では,ICカードの完全な試験方法を網羅していない。この試験方法は,最低限の機
能確認をするにすぎない。仕様に応じて機能項目を加えて適用してもよい。
c) 外部端子では,電気抵抗及びインピーダンスが基本規格に従っている。
d) 光メモリでは,光学特性が基本規格に従っている。
3.3
反り (warpage)
カード平面性におけるゆが(歪)み。
3
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3.4
磁束反転密度,磁束反転/mm (flux transitions per millimetre)
磁気ストライプ上のトラックに記録された長さ1 mm当たりの磁束反転の数。
3.5
記録 (recording)
この規格の試験方法及び試験パラメタに従った,磁束反転をもつトラックの形成。
3.6
符号化 (encoding)
データを表現するためにF/2F符号形式に従って,間隔を変えた磁束反転をもつトラックの形成。
3.7
表面粗さ (surface roughness)
様々な決定因子及び計算方法を参照して,国際規格で認定された表面領域の表面トポロジー(形態)。
3.8
(磁気ストライプの)振幅測定 [amplitude measurements (of a magnetic stripe)]
この規格の試験方法及び試験パラメタに従った読取り信号振幅,分解能及び消去効果の測定。
3.9
ビットセルの変動 (flux transition spacing variation)
符号化されたトラックの中心線に沿って,トラック上に隣接する磁化反転間隔の公称値との偏差。
3.10
磁気ストライプとカードとの接着性 (magnetic stripe adhesion)
磁気ストライプとカードとの接着の程度。
3.11
通常の使用 (normal use)
カード技術及び個人情報の記憶媒体に適したカードリーダライタ側の処理を含むIDカード[JIS X 6301
の4.(定義)参照]としての使用。
3.12
静的飽和磁化M(H)曲線 [static saturation M(H) loop]
磁化曲線が影響を受けない程度の低い掃引速度で,磁界強度を−Hmaxから+Hmaxまでの間を周期的に変
化させて得られるヒステリシス曲線[IEC 60050 (221) 参照]。
注記 この用語は括弧をそのままの形で残して使うもので,“静的飽和磁化MH曲線”,“静的飽和磁
化M曲線”としては使われない。
3.13
保磁力,H'cM,H'cJ (coercivity)
飽和磁化状態から,飽和磁化状態とは反対方向に連続的に磁界を印加したとき,磁化量が“0”になる磁
界強度[IEC 60050 (221) 参照]。測定は,磁気ストライプの長辺方向に行う。
3.14
残留保磁力,Hr (remanent coercivity)
飽和磁化状態から,飽和磁化状態とは反対方向に連続的に磁界を印加し,その後この磁界を“0”まで戻
したときに,残留磁化量が“0”になる磁界強度。測定は,磁気ストライプの長辺方向に行う。
4
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3.15
エルステッド,Oe (oersted)
磁界強度のガウスcgs単位系。磁気記録業界で一般的に用いられてきた。1 Oeは,79.578 A/mに相当す
る(JIS Z 8202-5:2000参照)。
3.16
静的減磁,S160 (static demagnetisation)
反対方向磁界の影響による磁性の減少。[Mr−M+(−160)]÷Mrで表される。静的飽和磁化M(H) 曲線の“減
磁”部分の象限において,磁界強度がH=0とH=−160 kA/mとの間で得られる磁化曲線の平均な傾きを
示す。
3.17
角形比,SQ (squareness)
ゼロ磁界強度 (H=0) での磁性値 (Mr) と,静的飽和磁化M(H) 曲線から得られたHmaxでの磁性値[M
(Hmax)] との比率 [Mr/M (Hmax)]。
3.18
水平角形比,SQ‖ (longitudinal squareness)
磁気ストライプの長辺方向と平行に測定された媒体の角形比。
3.19
垂直角形比,SQ⊥ (perpendicular squareness)
磁気ストライプの平面と垂直に測定された媒体の角形比。
3.20
微分係数 (derivative) によるスイッチングフィールド,SFD (switching field by derivative)
微分 (differentiated) された静的飽和磁化M(H) 曲線を同じカーブの保磁力で除した半値幅。
3.21
スロープによるスイッチングフィールド,SFS (switching field by slope)
静的飽和磁化M(H) 曲線において,M(H)=+0.5Mr及びM(H)=−0.5Mrからなる2種類の磁界強度Hの
差を保磁力H'cMで除した値。次の式で表す。
(
)
M
H
H
H
SF
c
1
2
S
′
−
=
ここに, |H1|及び|H2|は,次の式を満たす磁界強度である。
(
)
r
1
5.0M
H
M
+
=
−
(
)
r
2
5.0M
H
M
−
=
−
3.22
最大角形比の角度,Θ (SQmax) (angle of maximum squareness)
角形比の最大値が見いだされた方向と,磁気ストライプの長辺方向軸との角度。
3.23
分解能 (resolution)
20磁束反転/mmの平均信号振幅を8磁束反転/mmの平均信号振幅で除した数に100を乗じた値(%)。
3.24
UFi
磁気ストライプのすべての波形のフーリエスペクトルの指定周波数における個々の要素の大きさ。
5
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4
指定がない場合の試験環境及び条件
4.1
試験環境
ほかに規定がない場合,試験は温度23 ℃±3 ℃,及び相対湿度40 %〜60 %の環境で行う。
4.2
事前調整
試験方法によって事前調整が必要な場合,試験するIDカードは,試験前に24時間,上記試験環境にな
じませる。
4.3
試験方法の選択
カードに追加する技術の種類に応じた関連する基本規格によって規定された試験を行わなければならな
い。
4.4
指定がない場合に適用される公差
ほかに規定がない場合,試験装置の特性,試験手順で試験装置の調整範囲などを表す量的な値(長さで
表される寸法など)に対して±5 %の公差を適用する。
4.5
総合的な測定不確定性
これらの試験方法によって決定される各数量の総合的な測定の不確かさは,試験報告書に記録する。
5
試験方法
5.1
磁気ストライプ領域の反り
この試験は,磁気ストライプ領域の供試カードの反りの程度を測定することを目的とする(JIS X 6302-2,
JIS X 6302-6及びISO/IEC 7811-7参照)。
この試験方法は,エンボスされたカード及びエンボスされていないカードの両方に適用できる。
5.1.1
試験装置
試験装置は,図1に示すとおり,次によって構成される。
a) 表面粗さがJIS B 0031で規定する3.2 μm以下の平たんな硬い盤(以下,定盤という。)を使用する。
定盤には,ダイヤルゲージの測定子が通る開口部を設ける。
b) 指示精度(狭範囲行き精度)の許容差が2.5 μm以内で,接触面が直径3 mm〜8 mmの半球の測定子を
もつダイヤルゲージを使用する。測定子の測定力は,f=0.6 N±0.3 Nとする。
c) 測定対象の磁気ストライプ領域とは反対側の面に対し,均一に分布する荷重F=2.2 Nを加える。
図1−測定の方法
6
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5.1.2
試験手順
供試カードを測定する磁気ストライプ領域とは反対側の面が上向きになるようにして,測定する磁気ス
トライプ領域が定盤の開口部にくるように置く。
2.2 Nの荷重を,その荷重と反対方向に働くダイヤルゲージの測定力を補正するために,fの荷重だけ増
加させる。
磁気ストライプ領域上の反対側の面に直接荷重F(+f ) を加え,1分間放置後測定する。
図2に示すように,磁気ストライプに沿って9か所の磁気ストライプ領域の反りを測定する。指定の9
か所よりも反りが大きいと思われる場所がある場合には,追加して測定する。
単位 mm
注記 xの値は,表1に示す。
図2−カード上の測定点
表1−測定点の位置
磁気ストライプ領域
寸法x
mm
トラック1,2
8.00
トラック1,2,3
10.70
5.1.3
試験報告書
試験報告書には,測定結果の最大値を記録する。
5.2
磁気ストライプの盛上がり高さ及び断面形状
この試験は,供試カードの磁気ストライプの盛上がり高さ及び平面度を測定することを目的とする(JIS
X 6302-2,JIS X 6302-6及びISO/IEC 7811-7参照)。
磁気ストライプの盛上がり高さは,カード及びストライプ断面形状によって決まる。
5.2.1
試験装置
試験装置の構成は,次による。
a) 触針式表面粗さ測定機(図3参照)
b) 図4に示すような切欠きが入った剛性のある金属板(カード保持板)。剛性がある任意の金属板が使用
可能であるが,その厚さは,材料密度に応じて2.2 N±0.1 Nの重量となるように調整する。板の寸法
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公差は,すべて±0.5 mm以内とする。
図3−磁気ストライプの盛上がり高さ及び断面形状を測定する装置
単位 mm
図4−カード保持板(接触面の形状)
5.2.2
試験手順
供試カードを,図4に示すような切欠きが入った剛性のある金属板で保持する。
磁気ストライプの盛上がり高さ及び断面形状を,その周辺のカード表面を含めて測定記録装置を用いて
測定する。
断面形状は,0.38 mm〜2.54 mmの半径をもった触針に0.5 mN〜6 mNの力を加え,最大1 mm/sの速度
で測定する。
各供試カードの磁気ストライプ幅を横切った3か所で測定を行う。3か所の測定位置V,X,Yは,カー
ドの両端から15 mm±2 mmの距離にあるV,Y線及びカードの中心線Xとする(図5参照)。
8
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指定の3か所よりも高さ又は断面形状変差が大きいと思われる場所がある場合には,追加して測定する。
単位 mm
図5−磁気ストライプの断面形状の測定位置
V,X,Y線に沿った各測定は,磁気ストライプの上端から少なくとも1 mm上から,下端から少なくと
も1 mm下まで行う。
注記 断面形状測定用の供試カードを準備するとき,断面形状記録結果から最小ストライプ幅Wを見
つけるために,鋭利なナイフを使ってカードの上端辺に平行に線を軽くけがくとよい。
5.2.3
結果の表現
5.2.3.1
磁気ストライプの断面形状
V,X,Y線(図5参照)に沿った測定では,基準測定線(図6及び図7参照)は,最小磁気ストライプ
幅 (W) の両端を定義する上端と下端とを結ぶことによって形成する。基準測定線の傾きは,10°以内とす
る。
ストライプ内最大垂直変位量 (a) は,基準測定線と磁気ストライプ上の基準測定線から最も離れた点と
の距離である。測定は,記録方向に対して直角方向で行う。
9
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a=ストライプ内最大垂直変位量
b=1 mm(最小)
W=関連する基本規格で規定する最小磁気ストライプ幅
図6−凹面ストライプ断面形状
a=ストライプ内最大垂直変位量
b=1 mm(最小)
W=関連する基本規格で規定する最小磁気ストライプ幅
図7−凸面ストライプ断面形状
5.2.3.2
磁気ストライプの盛上がり高さ
V,X,Y線に沿った3か所の測定では,始点と終点とを結ぶことによって基準測定線(図8及び図9
参照)を形成する。基準測定線の傾きは,記録方向の10°以内とする。
領域内最大垂直変位量(h)は,基準測定線と磁気ストライプ上との基準測定線から最も離れた点との距
離である。測定は,記録方向に対して直角方向で行う。
b=1 mm(最小)
h=関連する基本規格で規定する領域内最大垂直変位量
図8−凹面ストライプ断面形状
10
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b=1 mm(最小)
h=関連する基本規格で規定する領域内最大垂直変位量
図9−凸面ストライプ断面形状
5.2.4
試験報告書
5.2.4.1
磁気ストライプの断面形状
試験報告書には,V,X,Y線に沿った3か所の測定で,それぞれのストライプ内最大垂直変位量 (a) の
測定値を記録する。
5.2.4.2
磁気ストライプの盛上がり高さ
試験報告書には,V,X,Y線に沿った3か所の測定で,それぞれの領域内最大垂直変位量 (h) の測定
値を記録する。
5.3
磁気ストライプの表面粗さ
この試験は,供試カードの磁気ストライプの表面粗さの程度を測定することを目的とする(JIS X 6302-2
及びJIS X 6302-6参照)。
5.3.1
試験手順
磁気ストライプの表面粗さは,図3に示すような装置によって測定する。測定は,表面粗さが最も悪い
と思われる場所を横断して,各々の方向に対し少なくとも3か所行う。
すべての試験条件は,次の記載事項を除き,5.2で定めた試験条件を適用する。
− 触針先端の半径は,2 μm又は5 μm。
− カットオフ値及び評価長さは,JIS B 0633及びJIS B 0651に従って選択する。
− 磁気ストライプの長辺方向と短辺方向とで測定する。
5.3.2
試験報告書
試験報告書には,長辺方向及び短辺方向で測定した磁気ストライプ表面の平均粗さRa値を記録する。
5.4
磁気ストライプの耐摩耗性
この試験は,供試カードに対して一定の摩耗を行った後の,磁気ストライプの信号振幅を評価すること
を目的とする(JIS X 6302-2及びJIS X 6302-6参照)。
5.4.1
試験装置
金属ダミーヘッドは,硬度がビッカース硬さで110 HV〜130 HV又は同等のロックウェル硬さの材料で
作製する。所要寸法は,図10に示す。
カードを固定する台は,堅くて平たんとする。
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単位 mm
図10−ダミーヘッドの接触部の寸法
5.4.2
試験手順
基本規格で規定した試験記録電流Iminで,かつ,20磁束反転/mmで供試カードに磁気記録したものを読
み取り,その信号振幅を記録する。
磁気ストライプの長辺方向へダミーヘッドが移動できるように,平たんな台上に,磁気ストライプを上
向きにして供試カードを固定する。また,カードがダミーヘッドの下を移動できてもよい(図11参照)。
カードを固くて平たんな台に取り付ける場合,試験の間カードが平らな状態で保持されるように固定する。
ダミーヘッドに対して1.5 N±0.2 Nの力を加え,200 mm/s〜500 mm/sの速度でダミーヘッドを2 000回
往復させる(1往復を1回とする。)。同じ装置で信号振幅を読み取り,それを初期出力信号振幅と比較す
る。
書込みヘッド及び読取りヘッドの位置は,ダミーヘッドで摩耗させた領域の範囲内に完全に入っていな
ければならない。
12
X 6305-2:2010 (ISO/IEC 10373-2:2006)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
図11−ダミーヘッド及び磁気ストライプ
5.4.3
試験報告書
試験報告書には,摩耗の前後で測定した基本規格で規定する信号振幅の測定値を記録する。
5.5
振幅測定
この試験は,供試カードの磁気ストライプの信号振幅,分解能,消去,減磁及び波形のひず(歪)み部
分が該当する基本規格と一致するかを確認するために測定することを目的とする。すなわち,
− 約48 kA/m (600 Oe)までの保磁力をもつ磁気ストライプが,JIS X 6302-2に従っているかどうかの確
認。
− 80 kA/m (1 000 Oe)以上の保磁力をもつ磁気ストライプが,JIS X 6302-6に従っているかどうかの確認。
− 80 kA/m (1 000 Oe)以上の保磁力をもち,記録密度40磁束反転/mmの磁気ストライプが,ISO/IEC
7811-7に従っているかどうかの確認。
注記1 消去及び波形のひず(歪)み部分は,JIS X 6302-6だけで要求される。
注記2 この試験は,JIS X 6302-2の附属書1に規定するおもて面磁気ストライプ付き識別カードに
も利用してもよい。
5.5.1
校正基準
校正基準カードは,適合性の確認に対応する基本規格に従って選択する。
13
X 6305-2:2010 (ISO/IEC 10373-2:2006)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
JIS X 6302-2が基本規格の場合,RM 7811-2タイプの基準カードを使用する。
JIS X 6302-6が基本規格の場合,RM 7811-6タイプの基準カードを使用する。
ISO/IEC 7811-7が基本規格の場合,RM 7811-7タイプの基準カードを使用する。
注記1 基準カードは,Q-CARD Laboratories(所在地:301 Reagan Street, Sunbury, PA 17801 USA.
Tel:570-286-7447又はorder reference cards from www.q-card.com)で入手可能である。この情報
は規格で定めたものではないが,国際規格の使用者への便宜のために記載する。
注記2 クリーニング剤を使用すると,検査済みの特性が劣化する可能性がある。したがって,クリ
ーニング剤を使用した基準カードは,破棄する。
注記3 JIS X 6302-2の附属書1に規定するおもて面磁気ストライプ付き識別カードに該当する基準
カードはない。
5.5.2
試験装置
5.5.2.1〜5.5.2.4に示す項目及び特性を備えた機能からなる記録・読取り装置が必要である。
5.5.2.1
機械的駆動装置
測定中,カードは平らに保持しなければならない。
駆動装置は,平均移動速度の変動が±0.5 %以内で,ヘッド圧は安定していなければならない。
注記 速度及びヘッド圧の変化は,測定精度を低下させる。特に瞬間的な速度変動は,個々の信号振
幅の測定精度に影響する。
平均速度変動が要求の±0.5 %を超えるときは,実際の速度変動を試験結果に記録しなければならない。
5.5.2.2
試験ヘッド
試験ヘッドは,黄銅,アルミニウムなど非磁性材のケースに内蔵され,書込みヘッドと読取りヘッドと
が分離した構造となっていなければならない。
的確な周波数応答を保証するため,読取りヘッドは,最高厚さ0.18 mmの薄板状金属構造とする。
書込みヘッドの磁心は,図12のような金属薄板構造とする。正面のギャップ材は,強磁性の不純物がな
いベリリウム銅とする。耐摩耗コーティングは使用してはならない(附属書A参照)。
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X 6305-2:2010 (ISO/IEC 10373-2:2006)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
単位 mm
注a) 値については,表2参照。
図12−検査ヘッド磁心の形状
図13に示すように,書込みヘッドの磁心の別々の脚に2層以上にならないようにコイルを100回巻き,
全部で4本のリード線は,外部へのリード線として終端させる。
図13−検査ヘッドの巻線
ギャップ,磁心の幅などは,表2に示す。表の数値はすべて,光学的に測定する。
15
X 6305-2:2010 (ISO/IEC 10373-2:2006)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
表2−試験ヘッド仕様
ヘッド機能
読取り
書込み
基本規格
JIS X 6302-2及び
JIS X 6302-6
ISO/IEC 7811-7
JIS X 6302-2
JIS X 6302-6 ISO/IEC 7811-7
薄板厚さ
最大0.18 mm
図12参照
曲率半径
未使用のヘッドで19 mm±0.19 mm。ギャップの平たん部分は除く。
ストライプとの接触幅
2.8 mm〜3.5 mm
磁心の幅
1.4 mm±0.14 mm
0.5 mm±0.05 mm
最小2.79 mm
最小1.0 mm
ギャップ
12.7 µm±1.27 µm
6 µm±0.6 µm
0.025 mm
±0.002 5 mm
0.051 mm
±0.005 1 mm
0.025 mm
±0.002 5 mm
飽和誘導
最小0.8 T
最小2.3 T
注記 試験ヘッドの平たん部分の寸法は,磁気ストライプとの良好な接触の維持に影響する。試験ヘッドの摩耗
に応じて再校正を行う。
ヘッドは,アジマスずれが10′(分)以下となるように,相互に機械的に独立するように取り付けなけ
ればならない。読取りトラックの中心線は,書込みトラックの中心線の±0.15 mm以内になければならな
い。
ヘッドにかける力は,校正時に基準カードから最大出力を得るのに必要な最小値に設定し,7 Nを超え
てはならない。
注記 ヘッドにかける力は,おおよそ3 Nである。
5.5.2.3
書込みヘッド駆動
公称記録密度8磁束反転/mm〜20磁束反転/mmで測定される書込み電流Iの波形は,図14aに示す。た
だし,ISO/IEC 7811-7の規定に従う記録密度の波形は,図14bに示す。
注記1 電流波形は,破線で示す限度内になければならない。
注記2 波形の比は,T1=T2±5 %になければならない。
図14a−代表的な記録電流波形
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X 6305-2:2010 (ISO/IEC 10373-2:2006)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
注記1 電流波形は,破線で示す限度内になければならない。
注記2 波形の比は,T1=T2±5 %になければならない。
図14b−ISO/IEC 7811-7の規定に従う記録密度の波形
5.5.2.4
読取り装置
読取り装置に接続した場合の読取りヘッドの残留磁気による影響は,連続して5回読み取った後,使用
中の基準カードの平均信号振幅減少が5 %未満とする。
読取り装置の分解能は,試験記録電流Imax(5.5.3.3参照)で次に示す記録密度を用いて基準カードで試
験したとき,85 %〜100 %の間でなければならない。
− JIS X 6302-2及びJIS X 6302-6に従う試験の場合の記録密度は,8磁束反転/mm及び20磁束反転/mm
とする。
− ISO/IEC 7811-7に従う試験の場合の記録密度は,20磁束反転/mm及び40磁束反転/mmとする。
読取り装置の構成は,次による。
a) 線形増幅器 増幅器は,自動感度調整機能をもたず,ノイズがURの0.5 %未満(5.5.3.2参照)で,図
15の位置2から位置3までの範囲に対応する周波数において,周波数応答が±0.2 dB以内の平たんな
特性でなければならない。
この範囲は,次のc) に示すフィルタの帯域幅の特性に相当する。この帯域範囲の両外側で,出力が
あってはならない。
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X 6305-2:2010 (ISO/IEC 10373-2:2006)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
b) 表示及び測定手段 ストレージオシロスコープなどで,信号の振幅を測定する。
c) 帯域通過フィルタ このフィルタは,消去効果 (UA4) と余剰パルス (Ui4) とを除き,全測定に使用す
る。
フィルタの通過帯域の上下端は,二次応答(12 dB/オクターブの傾斜)を示す。通過帯域応答は,
0.25周期/mm(0.5磁束反転/mm)〜10.5周期/mm(21磁束反転/mm)に対応する周波数において,0.2 dB
以内の平たんな特性でなければならない。特性を図15に示す。
フィルタ応答性は,帯域端から少なくとも1ディケード(周波数が10倍又は1/10になるまでの周
波数変化)の間は,減衰を続けなければならない。また,この1ディケードの範囲では,−40 dBを
超えてはならない。1ディケードの範囲外では,他のフィルタ特性を使用してもよい。
位置
試験記録密度
試験磁束反転の密度
JIS X 6302-2及び
JIS X 6302-6
ISO/IEC 7811-7
JIS X 6302-2及び
JIS X 6302-6
ISO/IEC 7811-7
回/mm
磁束反転/mm
位置1
0.009
0.018
位置2
0.025
0.05
位置3
10.5
28
21
56
位置4
30
80
60
160
図15−フィルタの周波数特性
5.5.3
試験手順
すべての測定は,同じ装置を使用し,同じ条件の下で実行する。
すべての測定は,書込みと同一の方向で読取りを行い,同じ通過回数の後,測定する。
5.5.3.1
試験書込みヘッドの磁束及び電流特性の確認
磁束の出力と書込み電流との相関をとり,次の方法で書込みヘッドの特性を試験する。
各電流振幅 (I) については,図16に示す装置を使って,対応する磁束振幅 (F) を記録する。
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X 6305-2:2010 (ISO/IEC 10373-2:2006)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
注記1 電流源の電圧に対する電流の直線性は,±2 %以内とする。
注記2 積分器の損失=2 000π×RC=6 283×RCは,少なくとも200とする。
図16−ヘッド特性試験装置の例
5.5.3.2
基準カードからUmaxとIRとの測定
8磁束反転/mmの密度で書き込まれた基準カード(5.5.1参照)を使用し,飽和曲線を描き,最大出力信
号電圧 (Umax) 及び基準書込み電流 (IR) を求め,基本規格に適合した試験記録密度に校正する。基本規格
JIS X 6302-2及びJIS X 6302-6に対する試験記録密度校正は8磁束反転/mmであり,基本規格ISO/IEC
7811-7に対する試験記録密度校正は,20磁束反転/mmである。それぞれ電流値に対する,基準カードの平
均出力信号電圧を記録する。
各電流振幅での記録前に,カードは高周波の交流電流で消去する。消去は,平均残留信号が0.05 UR以
下を確実に保証する程度とする。
この校正工程(基準カードからURの値を求める。)は,基準カードに対して書込みを行った直後に読取
りを行う方法で実施する。
注記1 読取りを行う前に,書込みの後で書込みヘッド又は読取りヘッドが接触すると,URの値に影
響を及ぼすことがある。
校正工程は,少なくとも3回行う。出力変動が2 % (±1 %) 以上の場合,校正手順をやり直す。
注記2 検査済みの5枚の基準カードで信号出力を比較して,基準カードの精度を定期的に確認する
ことを推奨する。
5.5.3.3
基準値の算出
ヘッドの特性試験装置の校正のために必要な値は,次の式によって求める。
a
U
U
max
R=
19
X 6305-2:2010 (ISO/IEC 10373-2:2006)
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ここに, “a”は基準カードの校正係数であり,次のように定義する。
次標準の振幅
基準カードの振幅
1
=
a
次の基準値を算出する。
a) IR=基準電流(0.8 URのときの書込み電流)
b) FR=電流IRに相当する磁束値
c) JIS X 6302-2の要件に対して試験する場合,Imin=磁束が3.5×FRのときの電流
JIS X 6302-6の要件に対して試験する場合,Imin=磁束が2.8×FRのときの電流
ISO/IEC 7811-7の要件に対して試験する場合,Imin=磁束が2.2×FRのときの電流
d) JIS X 6302-2の要件に対して試験する場合,Imax=磁束が5.0×FRのときの電流
JIS X 6302-6の要件に対して試験する場合,Imax=磁束が3.5×FRのときの電流
ISO/IEC 7811-7の要件に対して試験する場合,Imax=磁束が2.5×FRのときの電流
JIS X 6302-2:1998にだけ従っているかどうかを確認する場合,次の基準を満たしているかどうかを確認
する。
・UA2≦0.95 UR
・0.9 Imax≦5.0 IR≦1.1 Imax
JIS X 6302-6:1999にだけ従っているかどうかを確認する場合,次の基準を満たしているかどうかを確認
する。
・UA2≦0.95 UR
・0.8 Imax≦3.5 IR≦1.2 Imax
5.5.3.4
供試カードの測定
基本規格で定義する様々な条件で供試カードに記録し,読み取る。
消去効果と余剰パルス試験とを除いて,試験前及び各試験を実施するごとに供試カードを高周波の交流
電流で消去する。消去は,平均残留信号が0.05 UR以下を確実に保証する程度とする。
書換え前後の振幅を比較する試験における2回の書込み間では,カードを消去してはならない。
消去効果と余剰パルス測定用に供試カードを消去する前に,次に示す試験記録密度及び記録電流Imaxで
カードに記録する。
基本規格がJIS X 6302-2又はJIS X 6302-6のときは8磁束反転/mmの密度,基本規格がISO/IEC 7811-7
のときは20磁束反転/mm及び基本規格に対する適切な書込み電流Iminでカードに記録する。
5.5.4
試験報告書
試験報告書には,基本規格で規定する値に関する測定値を記録する。
総合的な測定値に誤差を生じさせるような条件として,測定した駆動系の速度変動が±0.5 %を超える場
合はその値も,また,試験ヘッドに耐摩耗コーティングが施されているかどうかも記録する。
5.6
ビットセルの変動
この試験は,記録された供試カードのビットセルの変動を評価することを目的とする(JIS X 6302-2,JIS
X 6302-6及びISO/IEC 7811-7参照)。
5.6.1
試験装置
ビットセルの測定装置は,5.5.2.1及び5.5.2.4に従わなければならない。また,読取りヘッドについては,
5.5.2.2に従わなければならない。
特に,試験装置は,試験中のすべての速度に対して40磁束反転/mmにおける位置精度を0.5 %に保持し,
20
X 6305-2:2010 (ISO/IEC 10373-2:2006)
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また,カードのくず及び汚染に対する何らかの保護策が設けられている構造とする。
読取りヘッドは,読取りトラックの中心線が書込み試験で記録されたトラックの中心線の±0.15 mm以
内となるように設置する。
注記 ヘッド又はカードのいずれかの位置を,他方が静止した状態で測定する。
装置のブロック図を,図17に示す。
図17−測定装置の構成例
5.6.2
試験手順
供試カードを装置に入れる。
ヘッド荷重は,測定時に供試カードから最大出力を得るのに必要な最小値に設定し,7 Nを超えないよ
うにする。
装置を起動させ,隣接する信号ピーク間距離を測定する。
5.6.3
試験報告書
試験報告書には,基本規格で規定する値の測定値及び各値に関する総合的な測定不確定性も記録する。
5.7
磁気ストライプとカードとの接着性
この試験は,供試カードの磁気ストライプとカード基板との間の接着の程度を評価することを目的とす
る(JIS X 6302-2及びJIS X 6302-6参照)。
5.7.1
試験装置
次のものを準備する。
− 片刃の切込み工具(JIS K 5600-5-6参照)
− JIS K 5600-5-6で規定する,幅20 mm以下の透明感圧付着テープ
− 25 mm×50 mmの四角形の開口部が付いた,強固で方形の金属板でできたカード押さえ板
5.7.2
試験手順
長さ約20 mmの切れ目を,磁気ストライプの中心付近で約20°〜45°の角度をもって交わるように,2
本入れる。切れ目を入れるときは,カード押さえ板の側面を利用して,一気に磁気ストライプを貫通して
カード基板まで切り込む。
切れ目の交差部が開口部の中央に位置するように,カード押さえ板をカード上に置く。透明感圧付着テ
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ープを75 mmの長さに切り,カード押さえ板の開口部内の磁気ストライプ上にはる。指先で透明感圧付着
テープを押し,切れ目に透明感圧付着テープを確実にはり付ける。
透明感圧付着テープを正しくはり付け,カード押さえ板の下に正しく位置決めされているカードを,図
18に示す。
透明感圧付着テープをはってから5分以内に,自由端を保持して,カードの表面にはり付けられた残り
のテープとテープのは(剥)がれた場所との間の角度が60°となるように,0.5〜1秒間で透明感圧付着テ
ープを確実にはがす。透明感圧付着テープをはがすときにカードが動かないよう,カード押さえ板を確実
に保持する。
透明感圧付着テープ及び磁気ストライプの切れ目交差部を検査する。カードから磁性材がはがれた形跡
があれば記録する。
図18−磁気ストライプの接着試験
5.7.3
試験報告書
試験報告書には,最終検査時にカードから磁性材がはがれた形跡が見られたかどうかを記録する。はが
れた形跡が見られた場合は,試験報告書にその状態及び程度も記録する。
5.8
静的磁気特性
この試験は,JIS X 6302-6の附属書Dで示す磁気ストライプの静的磁気特性を評価することを目的とす
る。
注記 JIS X 6302-6の附属書Dは,参考である。この試験方法は,JIS X 6302-6の附属書Dを適用す
るとき得られた結果の整合性を評価するためにだけ使用する。
この試験方法で使用する値の定義については,箇条3参照。
5.8.1
試験装置
次に示す性能をもつ装置
1) 最大印加磁界±Hmax=±1 200 kA/m (±15 000 Oe)
2) 測定精度:Hc±2 %, SQ‖±2 %, SFD(又はSFS)±4 %, SQ⊥±6 %, S160±4 %
5.8.2
試験手順
5.8.2.1
試験条件
試験片の温度は,21 ℃〜23 ℃(又は室温)とする。
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X 6305-2:2010 (ISO/IEC 10373-2:2006)
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注記 試験中の試験片の温度は,HcMの測定値に影響する。
5.8.2.2
準備
試験装置を校正する。試験片を準備する。
5.8.2.3
測定
次に示す要求値を測定する。
5.8.2.4
長辺方向のヒステリシス曲線測定
長辺方向が磁界方向と平行となるように,試験片の向きを決定する。
±Hmaxの範囲で試験片の磁気モーメントMを測定する。
最大40 kA/m (500 Oe)ごと及びH'cMの近傍領域では,最大4 kA/m (50 Oe)ごとに得られたデータを使って,
ヒステリシス曲線をプロットする。ヒステリシス曲線の例を,図19に示す。
図19−ヒステリシス曲線の例
得られたヒステリシス曲線から,次の値を得る。
− 試験片の保磁力 H'cM
− Hmaxにおける飽和磁化 Mmax
− 残留磁化 Mr
− ±0.5 Mrに対応する磁界の値H1及びH2
これらの値から,基本規格で定義する水平方向の角形比SQ‖及びスイッチングフィールドディストリビ
ューションSFS又はSFD(プロットされたヒステリシス曲線の微分係数)を計算する。
5.8.2.5
垂直方向のヒステリシス曲線測定
長辺方向が磁界方向に対して90°±2°以内となるよう試験片の向きを決める。
±Hmaxの範囲で磁気モーメントMを測定する。
最大40 kA/m (500 Oe)ごと及びH'cMの近傍領域では,最大4 kA/m (50 Oe)ごとに得られたデータを使って,
ヒステリシス曲線をプロットする。結果は,図19に示す曲線に類似する。
得られたヒステリシス曲線から,次の値を得る。
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
− 飽和磁化 (Mmax)
− 残留磁化 (Mr)
基本規格で定義する垂直方向の角形比SQ⊥を計算する。
5.8.2.6
長辺方向の静的減磁S160の測定
長辺方向が磁界方向と±2°以内で平行となるように,試験片の向きを決定する。
磁界+Hmaxを与え,それを0に減少させ,試験片の残留磁化Mrを測定する。
次に,−160 kA/m (−2 000 Oe)の磁界を与え,それを0に減少させ,試験片の残留磁化M+(−160)を測定す
る。
基本規格で定義する静的減磁S160を計算する。
5.8.3
試験報告書
試験報告書には,求めた数値を記録し,また,各結果が基本規格の要件を満たしているかも記録する。
5.9
波形Ui6
この試験は,規定された条件で記録したときの読取り波形に含まれる波形のひず(歪)みの程度を評価
することを目的とする(JIS X 6302-6及びISO/IEC 15457-2参照)。
5.9.1
試験装置
試験は,基本規格JIS X 6302-6に代わり5.5の振幅測定に規定する装置を使用して行う。
5.9.2
試験手順
同じ装置及び同じ条件で一連の測定を行う。
測定するときの読取りは,書込みと同一方向で行わなければならない。読取り前にカードを移動するの
は,書込み後に開始位置まで戻す場合だけでなければならない。
基本規格で規定された条件及び次に示す方法でカードを書込み,及び読取りを行う。
1) カード全長にわたってトラック2に磁束反転を記録する。
2) 平均振幅UA6の値を測定結果から得る。
3) 基本規格の手順でカードのUi6の最大値を見つけ,Ui6値として記録する。
5.9.3
試験報告書
試験報告書には,求めた数値を記録し,また,各結果が基本規格の要件を満たしているかも記録する。
5.10 高保磁力,高密度記録の重ね書き
この試験は,磁気ストライプの磁気記録履歴によって生じる電流波形のひず(歪)みの程度を評価する
ことを目的とする(ISO/IEC 7811-7参照)。
5.10.1 試験装置
試験は,フィルタを含めて基本規格ISO/IEC 7811-7に代わり5.5の振幅測定に規定する装置を使用して
行う。
5.10.2 試験方法
電流Imaxで,かつ,20磁束反転/mmでストライプのカード全長に書き込む。ハニング窓(Hanning window
又はHann window)を使用し20磁束反転/mmのUF20Bを記録する。
電流Iminで,かつ,40磁束反転/mmでストライプのカード全長に書き込む。ハニング窓を使用し20磁
束反転/mmのUF20Aを記録する。
5.10.3 試験報告書
試験報告書には,UF20B及びUF20A値を記録し,また,各結果が基本規格の要件を満たしているかも記録
する。
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X 6305-2:2010 (ISO/IEC 10373-2:2006)
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附属書A
(参考)
試験ヘッドの摩耗現象及び耐摩耗性試験ヘッドの使用
序文
この附属書は,試験ヘッドの摩耗現象及び耐摩耗性試験ヘッドの使用について記載するものであって,
規定の一部ではない。
A.1 試験ヘッドの摩耗現象
試験に合った調整を行うためには,本体で定義される試験ヘッドの半径及び形状が重要である。使用回
数を超えた試験装置は,試験ヘッドに平たん部が生じる傾向がある。平たん部は,試験結果に影響を及ぼ
す。試験ヘッドは,使用頻度によって定期的な整備又は交換をしなければならない。平たん部が,ある段
階になると試験結果は信頼できない。使用者は平たん部の摩耗を測定して,寸法Wが試験装置の推奨値を
超えたときに取り替えることが望ましい。寸法Wの推奨値がない場合は,2 mmをWの推奨値とする(図
A.1参照)。
図A.1−平たん部の寸法 W
A.2 耐摩耗コーティング試験ヘッド
耐摩耗コーティングは,JIS X 6302-2及びJIS X 6302-6に従ってID-1カードを試験した場合の測定誤差
が7 %を超えることが知られている。高速大量試験装置では,耐摩耗コーティング及び/又はJIS X 6302-2
及びJIS X 6302-6の規定に適合しないものを使用していることが知られているが,その測定の結果はよく
知られている材料の場合でさえも,参考情報としてだけ扱うことが望ましい。