X 6302-6
:2011 (ISO/IEC 7811-6:2008)
(1)
目 次
ページ
序文
1
1
適用範囲
1
2
適合性
1
3
引用規格
2
4
用語及び定義
2
5
ID カードの物理的特性
4
5.1
磁気ストライプ領域の反り
4
5.2
表面のわい(歪)曲
4
6
磁気ストライプの物理的特性
5
6.1
磁気ストライプ領域の盛上がり高さ及び断面形状
5
6.2
表面粗さ
6
6.3
磁気ストライプとカードとの接着性
6
6.4
磁気ヘッドに対する磁気ストライプの耐久性
6
6.5
耐化学薬品性
7
7
磁性材料の特性
7
7.1
一般
7
7.2
試験及び試験環境
7
7.3
磁性材料に対する信号振幅特性及び要求仕様
7
8
記録方式
9
9
一般記録仕様
10
9.1
記録角度
10
9.2
公称記録密度
11
9.3
トラック 1,2 及び 3 に対する信号振幅
11
9.4
ビット構成
12
9.5
記録方向
12
9.6
前端部及び後端部の同期ビット
0
12
10
記録仕様
12
10.1
トラック 1
12
10.2
トラック 2
14
10.3
トラック 3
16
11
誤り検出
16
11.1
奇偶検査
16
11.2
水平冗長検査文字(LRC 文字)
16
12
記録トラックの位置
16
附属書 A(参考)磁気ストライプ(JIS X 6302-2 及び JIS X 6302-6)の読取り互換性
18
X 6302-6
:2011 (ISO/IEC 7811-6:2008) 目次
(2)
ページ
附属書 B(規定)振幅測定
19
附属書 C(参考)磁気ストライプの摩耗研磨特性
20
附属書 D(参考)静的磁気特性
21
X 6302-6
:2011 (ISO/IEC 7811-6:2008)
(3)
まえがき
この規格は,工業標準化法第 14 条によって準用する第 12 条第 1 項の規定に基づき,社団法人ビジネス
機械・情報システム産業協会(JBMIA)及び財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して
日本工業規格を改正すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した
日本工業規格である。
これによって,JIS X 6302-6:2005 は改正され,この規格に置き換えられた。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
JIS X 6302
の規格群には,次に示す部編成がある。
JIS X 6302-1
第 1 部:エンボス
JIS X 6302-2
第 2 部:磁気ストライプ−低保磁力
JIS X 6302-6
第 6 部:磁気ストライプ−高保磁力
JIS X 6302-9
第 9 部:触覚識別記号(予定)
日本工業規格
JIS
X
6302-6
:2011
(ISO/IEC 7811-6
:2008
)
識別カード−記録技術−
第 6 部:磁気ストライプ−高保磁力
Identification cards-Recording technique-
Part 6: Magnetic stripe-High coercivity
序文
この規格は,2008 年に第 3 版として発行された ISO/IEC 7811-6 及び Corrigendum 1(2010)を基に,技
術的内容及び構成を変更することなく作成した日本工業規格である。
なお,この規格で点線の下線を施してある参考事項は,対応国際規格にはない事項である。
1
適用範囲
この規格は,ここで定義する識別カード(以下,ID カード又は単にカードという。
)の特性及びカード
の国際交換用の用法について規定する。この規格は,カードに設けられている(あらゆる保護層を含む。
)
高保磁力の磁気ストライプが満たすべき要件,記録方式,及び文字集合について規定する。それは,人的
要素及び機器的要素の双方を勘案した上での最低限の要件である。
保磁力は,この規格において規定される多くの項目に強い影響を与えるものであるが,それ自体は規定
されていない。高保磁力磁気ストライプ化の目的は,保磁力を高めて耐消去性を向上することであるが,
保磁力を高めすぎると,低保磁力磁気ストライプと接触させたとき,相手側のデータを破壊する可能性が
ある。そのためこの規格では,このことを可能な限り少なくすることを考慮している。この規格は,高保
磁力磁気ストライプを用いた ID カードが,JIS X 6302-2 に規定する磁気ストライプを用いた ID カードと
読取り互換性を保つことを目的とする(
附属書 A 参照)。
注記 1 この規格は,摩耗特性については規定しない(附属書 C 参照)。
カードが満たすべき基準を示すことが,この一連の規格の目的である。使用したことのあるカードの場
合でも,試験に先立ってカードがどの程度使用した後であるかについては,この規格では考慮しない。規
格の基準に不適合の場合は,関係する組織と協議することが望ましい。
この規格で規定するパラメータに対する供試カードなどの試験方法は,JIS X 6305-2 で規定している。
注記 2 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
ISO/IEC 7811-6:2008
,Identification cards−Recording technique−Part 6: Magnetic stripe−High
coercivity 及び Corrigendum 1:2010(IDT)
なお,対応の程度を表す記号
IDT は,ISO/IEC Guide 21-1 に基づき, 一致している
ことを示す。
2
適合性
この規格に適合するためには,JIS X 6301 の規定を満足している必要がある。ID カードは,この規格で
2
X 6302-6
:2011 (ISO/IEC 7811-6:2008)
規定する全ての要件を満足するときに,この規格に適合する。
3
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。
)を適用する。
JIS B 0601
製品の幾何特性仕様(GPS)−表面性状:輪郭曲線方式−用語,定義及び表面性状パラメ
ータ
注記 対応国際規格:ISO 4287,Geometrical Product Specifications (GPS)−Surface texture: Profile
method−Terms, definitions and surface texture parameters(IDT)
JIS X 6301
識別カード−物理的特性
注記 対応国際規格:ISO/IEC 7810,Identification cards−Physical characteristics(IDT)
JIS X 6305-1
識別カードの試験方法−第 1 部:一般的特性
注記 対 応 国 際 規 格 : ISO/IEC 10373-1 , Identification cards − Test methods − Part 1: General
characteristics(IDT)
JIS X 6305-2
識別カードの試験方法−第 2 部:磁気ストライプ付きカード
注記 対応国際規格:ISO/IEC 10373-2,Identification cards−Test methods−Part 2: Cards with magnetic
stripes(IDT)
4
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,次による。
4.1
一次標準(primary standard)
U
R
及び I
R
の値を示すためにドイツ連邦国立度量衡研究所[Physikalisch-Technische Bundesanstalt (PTB)]
が作成・管理している,RM7811-6 と称する基準カードの一組。
4.2
二次標準(secondary standard)
1 枚ごとに一次標準との関係を校正証明されている,RM7811-6 と称する基準カード。
注記 二次標準カードは,Q-CARD Laboratories(所在地:301 Reagan Street, Sunbury, PA 17801 USA.
Tel:570-286-7447 又は order reference cards from www.q-card.com)に注文可能である。二次標準の
在庫は,最低 2018 年まで管理される。
4.3
未使用未記録カード(unused un-encoded card)
使用目的のための全ての機能を備え,磁気記録も試験操作も行われていないカード。カードは,温度衝
撃なしで,温度が 5 ℃〜30 ℃で,湿度が 10 %〜90 %の清浄な環境で,48 時間以上日光にさらすことのな
いように保管する。
4.4
未使用記録済みカード(unused encoded card)
未使用未記録カードに,使用目的のためのデータが記録(例えば,磁気記録,エンボス加工,電気的記
録)されただけのカード。
3
X 6302-6
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4.5
返却カード(returned card)
未使用記録済みカードで,カード保有者に発行した後に,試験のために返却されたカード。
4.6
磁束反転位置(flux transition)
距離とともに磁化の変化率が最大の位置。
注記 磁気ストライプ面の法線方向の磁束が最大となる位置。
4.7
基準電流,I
R
(reference current, I
R
)
基準カードに 8 磁束反転/mm の密度で記録して再生したときに,基準ピーク電圧(U
R
)の 80 %(
図 6
参照)と等しい出力電圧が得られる最小記録電流。
4.8
基準磁束レベル,F
R
(reference flux level, F
R
)
基準電流(I
R
)に相当した試験ヘッドでの磁束の強さ。
4.9
試験記録電流(test recording currents)
次に定義する 2 種類の電流。
I
min
:2.8 F
R
に相当する記録電流。
I
max
:3.5 F
R
に相当する記録電流。
4.10
個別信号振幅,U
i
(individual signal amplitude, U
i
)
一つの出力信号の基準値(電圧 0 V)からピーク値までの信号振幅。
4.11
平均信号振幅,U
A
(average signal amplitude, U
A
)
それぞれのトラックの磁気ストライプ範囲の全長での,各々の個別信号振幅ピーク(U
i
)の絶対値の総
和を信号ピークの数(n)で除したもの。
4.12
基準信号振幅,U
R
(reference signal amplitude, U
R
)
基準カードの最大平均信号振幅を一次標準によって校正補正した値。
4.13
磁束反転密度(physical recording density)
一つのトラックに記録される単位長さ当たりの磁束反転の数。
4.14
記録密度(bit density)
単位長さ当たりに記録されるデータビットの数[ビット/mm 又は bpi(ビット/inch)
]
。
4.15
ビットセル(bit cell)
隣接する刻時信号の磁束反転の距離(
図 11 参照)。
4.16
サブインターバル(subinterval)
4
X 6302-6
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ビット
1 のときの磁束反転の距離(図 11 参照)。
4.17
減磁電流,I
d
(demagnetisation current, I
d
)
I
min
電流で 20 磁束反転/mm の密度で記録された二次標準カードにおいて平均信号振幅が基準信号振幅
(U
R
)の 80 %となる減磁が起きる直流電流。
5 ID
カードの物理的特性
ID カードは,JIS X 6301 に適合していなければならない。
警告 カード発行者は,次の事項に注意しなければならない。
a)
カードが汚れた物と接触した場合,又は可塑剤を含む一般的な化学薬品で汚れた場合,磁
気ストライプに保持されている情報が読めなくなることがある。
b)
磁気ストライプ上に印刷などを施すと,磁気ストライプの機能を弱めることがある。
5.1
磁気ストライプ領域の反り
測定するカードの磁気ストライプ面を下にして定盤に置き,その磁気ストライプと反対側の面に均一に
2.2 N の力をかけたとき,その磁気ストライプ全面が定盤から 0.08 mm 以内になければならない。
5.2
表面のわい(歪)曲
図 1 に示す非わい(歪)曲領域では,カード両面に磁気ヘッドと磁気ストライプとの接触を妨げるわい
(歪)曲,凹凸及び隆起があってはならない。
単位 mm
図 1−磁気ストライプ付きカードの非わい(歪)曲領域
隆起した署名部領域がカードのおもて面又は裏面に位置する場合,署名部領域は,カードの上端から
19.05 mm 以内にあってはならない。
注記 上記以外の領域に隆起領域及び/又はわい(歪)曲領域があるカードは,磁気ストライプ処理
装置において,カード搬送に問題を生じ,その結果,読取り不良又は書込み不良を起こす可能
性がある。
5
X 6302-6
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6
磁気ストライプの物理的特性
6.1
磁気ストライプ領域の盛上がり高さ及び断面形状
磁気ストライプ領域は,
図 2 に示すとおり,カード裏面に位置する。
単位 mm
トラック 1 及び 2 を用いる場合,a は最小 11.89
トラック 1,2 及び 3 を用いる場合,a は最小 15.95
注記 トラック 1 及び 2 を用いる磁気ストライプ領域の場合,この図に示す a の値は,図 12 で示すトラック 2 の b の
最大値以下となることがあるが,磁気ストライプ領域は,トラックの範囲を超えていることが望ましい。
図 2−ID-1 カードの磁気ストライプ配置
6.1.1
磁気ストライプ領域の断面形状
磁気ストライプ領域の断面形状の垂直偏差(a)を,
図 3,図 4 及び図 5 に示す。断面形状曲線の勾配は,
次の範囲になければならない。
−4a/W<勾配<4a/W
カードの静的曲げ強さ(JIS X 6301 参照)の変形量の値が 20 mm 以上である場合の断面形状は,次の値
を限度とする。
最小ストライプ幅
図 3 の A
図 3 の B
W=6.35 mm
a≦9.5 µm
a≦5.8 µm
W=10.28 mm
a≦15.4 µm
a≦9.3 µm
カードの静的曲げ強さ(JIS X 6301 参照)の変形量の値が 20 mm 未満である場合の断面形状は,次の値
を限度とする。
最小ストライプ幅
図 3 の A
図 3 の B
W=6.35 mm
a≦7.3 µm
a≦4.5 µm
W=10.28 mm
a≦11.7 µm
a≦7.3 µm
6
X 6302-6
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図 3−磁気ストライプの断面形状
図 4−磁気ストライプの断面形状の例
注記 図示のような不規則断面形状は,記録再生品質低下の原因となる可能性がある。
図 5−磁気ストライプの不規則性断面形状の例
6.1.2
磁気ストライプ領域の高さ
磁気ストライプ領域の近傍の,カードの表面からの垂直変位量(h)は,次の値でなければならない。
−0.005 mm≦h≦0.038 mm
熱転写における材料の突起が原因である断面形状のスパイク状の盛上がりは,ストライプに含めない。
スパイク状の盛上がりの高さは,磁気ストライプ領域の高さ(h)を超えてはならない。
6.2
表面粗さ
磁気ストライプ領域の平均表面粗さ(Ra)は,JIS B 0601 に従って測定したとき,長さ及び幅の両方向
で 0.40 μm を超えてはならない。
6.3
磁気ストライプとカードとの接着性
磁気ストライプは,通常の使い方でカードから
剝
がれてはならない。
6.4
磁気ヘッドに対する磁気ストライプの耐久性
平均信号振幅(U
A
)及び個別信号振幅(U
i
)は,2 000 回のヘッド耐久性サイクル試験の前及び後で測
7
X 6302-6
:2011 (ISO/IEC 7811-6:2008)
定したとき,次の条件を満たさなければならない。
U
A
(試験後の測定)≧0.60 U
A
(試験前の測定)
U
i
(試験後の測定)≧0.80 U
A
(試験後の測定)
6.5
耐化学薬品性
平均信号振幅(U
A
)及び個別信号振幅(U
i
)は,JIS X 6305-1 に規定している短期間の浸せきの前及び
後で測定したとき,次の条件を満たさなければならない。
U
A
(浸せき後の測定)≧0.90 U
A
(浸せき前の測定)
U
i
(浸せき後の測定)≧0.90 U
A
(浸せき後の測定)
平均信号振幅(U
A
)及び個別信号振幅(U
i
)は,JIS X 6305-1 に規定している長期間(24 時間)の酸性
及びアルカリ性人工汗液の浸せきの前及び後で測定したとき,次の条件を満たさなければならない。
U
A
(浸せき後の測定)≧0.90 U
A
(浸せき前の測定)
U
i
(浸せき後の測定)≧0.90 U
A
(浸せき後の測定)
7
磁性材料の特性
7.1
一般
ここでは,カードとカードリーダライタとの間の磁気的な互換性を確保することを目的とする。保磁力
の値については,規定しない。磁性材料の特性は,保磁力によらず 7.3 で規定する。この試験には,一次
標準との関係を校正証明された二次標準を使用する(箇条 4 参照)
。二次標準を使って得られた全ての信号
振幅の結果は,二次標準のカードに附属する係数によって補正しなければならない。試験方法は,JIS X
6305-2
による。
7.2
試験及び試験環境
信号振幅特性の試験環境は,温度が 23 ℃±3 ℃で,相対湿度が 40 %〜60 %とする。この環境条件以外
で試験する場合は,次に示す環境に 5 分間置いた後に 8 磁束反転/mm で測定した出力の平均値と,上記の
環境条件で試験した値との差が,その 15 %以内に入っていなければならない。
温度 :−35 ℃〜50 ℃
相対湿度 :5 %〜95 %
7.3
磁性材料に対する信号振幅特性及び要求仕様
カードの磁性材料に対する信号振幅特性及び要求仕様を,
表 1,図 6 及び図 7 に示す。磁気ストライプ
の耐消去性能を改善するため及びカードの磁気ストライプとカードリーダライタとの間の磁気的な互換性
を確保するために,ここで規定する磁性材料の要求仕様を満足しなければならない。
附属書 D に示す静的
磁気特性は,磁性材料の指標である。
附属書 D は参考であり,カードの性能基準として利用してはならな
い。
8
X 6302-6
:2011 (ISO/IEC 7811-6:2008)
表 1−未使用未記録カードに対する信号振幅の要求仕様
特性
磁束反転密度
(磁束反転/mm)
試験記録電流
信号振幅の結果
要求値
信号振幅 8
I
min
U
A1
0.8
U
R
≦U
A1
≦1.2 U
R
信号振幅 8
I
min
U
i1
U
i1
≦1.26 U
R
信号振幅 8
I
max
U
A2
U
A2
≧0.8 U
R
信号振幅 20
I
max
U
i2
U
i2
≧0.65 U
R
分解能 20
I
max
U
A3
U
A3
≧0.7 U
A2
消去 0
I
min
,DC
U
A4
U
A4
≦0.03 U
R
外部パルス 0
I
min
,DC
U
i4
U
i4
≦0.05 U
R
減磁 0
I
d
,DC
U
A5
U
A5
≧0.64 U
R
減磁 0
I
d
,DC
U
i5
U
i5
≧0.54 U
R
波形のひずみ部分 3
I
max
U
i6
,U
A6
U
i6
≦0.07 U
A6
U
i6
は,
図 7 に示す U
i6
の測定範囲における最大信号振幅の絶対値である。
飽和曲線の傾きは,I
min
と I
max
との間では右肩上がりであってはならない。
注記 要求値は,それぞれ独立して測定するものとし,これらを相互に計算して用いない。これらの値は未記
録カードの試験に対するものであり,記録済みカードには適用しない。
注記 基準飽和曲線は,一次標準の飽和曲線を示す。太線枠で示すウィンドウパラメータは,機械読取りに対応した
カードの規定である。
図 6−8 磁束反転/mm における飽和曲線の例及びそれに対する許容範囲
9
X 6302-6
:2011 (ISO/IEC 7811-6:2008)
U
i6
の測定は,次の手順で行う。
1. 二つの隣接したピークの中間点を決定する。
2. 中間点と隣接したピークとの間で信号出力が 0 となる点を決定する( 0 交差点)。
3. 測定範囲は,a(中間点と 0 交差点との距離)を 1.5 倍した範囲とする。
4. この測定範囲内の最大信号振幅値を決定する。
5. 測定範囲内の最大信号振幅値の絶対値が,この信号の U
i6
である。
図 7−信号の測定方法
8
記録方式
各トラックの記録方式は,F2F(two-frequency)記録として知られている方式とする。この記録方式は,
自己同期形の連続記録を可能にする。この記録方式は,データと刻時信号の反転とを同時に含む。刻時信
号間に磁束反転があれば,ビットが
1 であることを意味し,刻時信号間に磁束反転がなければ 0 を
意味する(
図 8 参照)。
10
X 6302-6
:2011 (ISO/IEC 7811-6:2008)
t は,自己同期刻時信号(タイミング)の間隔を示す。
図 8−F2F 記録の例
データは,隙間なく同期した連続の文字符号として記録されなければならない。
注記 I
min
未満の電流で書き込むと,記録品質が低下することがある。
9
一般記録仕様
9.1
記録角度
記録角度は,磁気ストライプと平行なカードの上端辺に対して,90°±20′以内でなければならない。
記録角度(α)は,読取り出力が最大のときのヘッドギャップの角度の測定から求める(
図 9 参照)。
11
X 6302-6
:2011 (ISO/IEC 7811-6:2008)
図 9−記録角度
9.2
公称記録密度
各トラックの公称記録密度は,次による。
トラック 1: 8.27 ビット/mm(210 bpi)
トラック 2: 2.95 ビット/mm(75 bpi)
トラック 3: 8.27 ビット/mm(210 bpi)
9.3
トラック 1,2 及び 3 に対する信号振幅
トラック 1,2 及び 3 に対する信号振幅の要求仕様は,次による。
未使用記録済みカード: 0.64 U
R
≦U
i
≦1.36 U
R
返却カード : 0.52 U
R
≦U
i
≦1.36 U
R
信号振幅の下限要求値(未使用記録済みカードは 0.64 U
R
,返却カードは 0.52 U
R
)と 0.07 U
R
との間にピ
ーク波形があってはならない(
図 10 参照)。
12
X 6302-6
:2011 (ISO/IEC 7811-6:2008)
図 10−信号波形におけるノイズ例
注記 この項目は,指定された記録密度におけるトラック 1,2 及び 3 について実際に使用する条件で
の信号振幅範囲を規定している。
表 1 に規定する信号振幅の要求仕様は,指定する記録周波数
及び記録試験電流における記録媒体の許容範囲を規定している。
9.4
ビット構成
磁気ストライプ領域の各文字のビット構成は,最下位ビット(2
0
)を最初に,奇偶検査ビットを最後に
記録しなければならない。
9.5
記録方向
カードの裏面から見て磁気ストライプを上側にした状態で右端から記録しなければならない。
9.6
前端部及び後端部の同期ビット
0
最初のデータビットの前及び最後のビットの後の全てに, 0
を記録しなければならない。カードの裏
面から見て磁気ストライプを上側にした状態で,カードの右端辺から 3.30 mm 以前,及び 82.17 mm 以後
の部分での
0 は,この規格内の仕様を満足する必要はない。
10
記録仕様
10.1
トラック 1
10.1.1
平均記録密度
平均記録密度は,カードの上端辺に平行に測定して 8.27 ビット/mm(210 bpi)とし,その許容誤差を±
8 %とする。
10.1.2
磁束反転間隔の許容誤差
未使用記録済みカード及び返却カードのビットセル及びそのサブインターバル(
図 11 参照)の許容範囲
及び許容誤差を,それぞれ
表 2 及び表 3 に示す。
13
X 6302-6
:2011 (ISO/IEC 7811-6:2008)
表 2−未使用記録済みカードのビットセルの許容誤差及びサブインターバルの許容誤差−
トラック 1 及びトラック 3
記号
項目
許容範囲
許容誤差
B
a
平均ビットセル 111
μm≦B
a
≦131 μm
±8 %
B
in
個別ビットセル 109
μm≦B
in
≦133 μm
±10 %
B
in+1
隣接ビットセル 0.90
B
in
≦B
in+1
≦1.10 B
in
±10 %
S
in
サブインターバル 53
μm≦S
in
≦68μm
±12 %
S
in+1
隣接サブインターバル 0.88
B
in
/2≦S
in+1
≦1.12 B
in
/2
±12 %
注記 B
in+1
及び S
in+1
は,B
in
の直後に隣接する磁束の反転間隔。
表 3−返却カードのビットセルの許容誤差及びサブインターバルの許容誤差−
トラック 1 及びトラック 3
記号
項目
許容範囲
許容誤差
B
a
平均ビットセル 111
μm≦B
a
≦131 μm
±8 %
B
in
個別ビットセル 103
μm≦B
in
≦139 μm
±15 %
B
in+1
隣接ビットセル 0.85
B
in
≦B
in+1
≦1.15 B
in
±15 %
S
in
サブインターバル 48.4
μm≦S
in
≦72.6 μm
±20 %
S
in+1
隣接サブインターバル 0.70
B
in
/2≦S
in+1
≦1.30 B
in
/2
±30 %
注記 1 B
in+1
及び S
in+1
は,B
in
の直後に隣接する磁束の反転間隔。
注記 2 この表は,カードが正常に機能する範囲を示しているだけであり,発行され
たカードの有効期間内におけるビットセルの長さを保証するものではない。
図 11−ビットとサブインターバルとの関係
10.1.3
文字集合
トラック 1 に使用する文字集合は,
表 4 に示す 7 ビット英数字符号とする。
! “ & ‘ * + , : ; < = > @ _ の 14 文字は,制御用として使用し,情報用(データ内容)として用いてはなら
ない。
[
\ ]の 3 文字は,必要に応じ国別の追加文字として保留され,国際間で用いてはならない。
# の文字は,追加用図形文字として留保される。
% ^ ? の 3 文字は,次に示す意味に限定する。
14
X 6302-6
:2011 (ISO/IEC 7811-6:2008)
% 始め符号
^ 分離符号
? 終わり符号
表 4−7 ビット英数字符号の文字集合
2 進符号
2 進符号
文字
P 2
5
2
4
2
3
2
2
2
1
2
0
文字
P 2
5
2
4
2
3
2
2
2
1
2
0
スペース
1 0 0 0 0 0 0
@
0 1 0 0 0 0 0
!
0 0 0 0 0 0 1
A
1 1 0 0 0 0 1
“
0 0 0 0 0 1 0
B
1 1 0 0 0 1 0
#
1 0 0 0 0 1 1
C
0 1 0 0 0 1 1
$
0 0 0 0 1 0 0
D
1 1 0 0 1 0 0
%
1 0 0 0 1 0 1
E
0 1 0 0 1 0 1
&
1 0 0 0 1 1 0
F
0 1 0 0 1 1 0
‘
0 0 0 0 1 1 1
G
1 1 0 0 1 1 1
(
0 0 0 1 0 0 0
H
1 1 0 1 0 0 0
)
1 0 0 1 0 0 1
I
0 1 0 1 0 0 1
*
1 0 0 1 0 1 0
J
0 1 0 1 0 1 0
+
0 0 0 1 0 1 1
K
1 1 0 1 0 1 1
,
1 0 0 1 1 0 0
L
0 1 0 1 1 0 0
-
0 0 0 1 1 0 1
M
1 1 0 1 1 0 1
.
0 0 0 1 1 1 0
N
1 1 0 1 1 1 0
/
1 0 0 1 1 1 1
O
0 1 0 1 1 1 1
0
0 0 1 0 0 0 0
P
1 1 1 0 0 0 0
1
1 0 1 0 0 0 1
Q
0 1 1 0 0 0 1
2
1 0 1 0 0 1 0
R
0 1 1 0 0 1 0
3
0 0 1 0 0 1 1
S
1 1 1 0 0 1 1
4
1 0 1 0 1 0 0
T
0 1 1 0 1 0 0
5
0 0 1 0 1 0 1
U
1 1 1 0 1 0 1
6
0 0 1 0 1 1 0
V
1 1 1 0 1 1 0
7
1 0 1 0 1 1 1
W
0 1 1 0 1 1 1
8
1 0 1 1 0 0 0
X
0 1 1 1 0 0 0
9
0 0 1 1 0 0 1
Y
1 1 1 1 0 0 1
:
0 0 1 1 0 1 0
Z
1 1 1 1 0 1 0
;
1 0 1 1 0 1 1
[
0 1 1 1 0 1 1
<
0 0 1 1 1 0 0
\
1 1 1 1 1 0 0
=
1 0 1 1 1 0 1
]
0 1 1 1 1 0 1
>
1 0 1 1 1 1 0
^
0 1 1 1 1 1 0
?
0 0 1 1 1 1 1
_
1 1 1 1 1 1 1
注記 この文字集合は,JIS X 6302-2 の文字集合と同一である(ASCII から派生したもの)。
10.1.4 ID-1
カードの最大文字数
情報用文字,制御文字,始め符号,終わり符号及び水平冗長検査文字は,合計して 79 文字を超えてはな
らない。
10.2
トラック 2
10.2.1
平均記録密度
平均記録密度は,カードの上端辺に平行に測定して 2.95 ビット/mm(75 bpi)とし,その許容誤差を±5 %
15
X 6302-6
:2011 (ISO/IEC 7811-6:2008)
とする。
10.2.2
磁束反転間隔の許容誤差
未使用記録済みカード及び返却カードのビットセル及びそのサブインターバル(
図 11 参照)の許容範囲
及び許容誤差を,それぞれ
表 5 及び表 6 に示す。
表 5−未使用記録済みカードのビットセルの許容誤差及びサブインターバルの許容誤差−トラック 2
記号
項目
許容範囲
許容誤差
B
a
平均ビットセル 322
µm≦B
a
≦356 µm
±5 %
B
in
個別ビットセル 315
µm≦B
in
≦363 µm
±7 %
B
in+1
隣接ビットセル 0.90
B
in
≦B
in+1
≦1.10 B
in
±10 %
S
in
サブインターバル 153
µm≦S
in
≦186 µm
±10 %
S
in+1
隣接サブインターバル 0.88
B
in
/2≦S
in+1
≦1.12 B
in
/2
±12 %
注記 B
in+1
及び S
in+1
は,B
in
の直後に隣接する磁束の反転間隔。
表 6−返却カードのビットセルの許容誤差及びサブインターバルの許容誤差−トラック 2
記号
項目
許容範囲
許容誤差
B
a
平均ビットセル 322
µm≦B
a
≦356 µm
±5 %
B
in
個別ビットセル 288
µm≦B
in
≦390 µm
±15 %
B
in+1
隣接ビットセル 0.85
B
in
≦B
in+1
≦1.15 B
in
±15 %
S
in
サブインターバル 136
µm≦S
in
≦203 µm
±20 %
S
in+1
隣接サブインターバル 0.70
B
in
/2≦S
in+1
≦1.30 B
in
/2
±30 %
注記 1 B
in+1
及び S
in+1
は,B
in
の直後に隣接する磁束の反転間隔。
注記 2 この表は,カードが正常に機能する範囲を示しているだけであり,カードが
発行されてから有効期間内のビットセルの長さを保証するものではない。
10.2.3
文字集合
トラック 2 に使用する文字集合は,
表 7 に示す 5 ビット数字符号とする。
: < > の 3 文字は,制御用として使用し,情報(データ内容)として用いてはならない。
; = ? の 3 文字は,次に示す意味に限定する。
; 始め符号
= 分離符号
? 終わり符号
表 7−5 ビット数字符号の字集合
2 進符号
2 進符号
文字
P 2
3
2
2
2
1
2
0
文字
P 2
3
2
2
2
1
2
0
0
1 0 0 0 0
8
0 1 0 0 0
1
0 0 0 0 1
9
1 1 0 0 1
2
0 0 0 1 0
:
1 1 0 1 0
3
1 0 0 1 1
;
0 1 0 1 1
4
0 0 1 0 0
<
1 1 1 0 0
5
1 0 1 0 1
=
0 1 1 0 1
6
1 0 1 1 0
>
0 1 1 1 0
7
0 0 1 1 1
?
1 1 1 1 1
注記 この文字集合は,JIS X 6302-2 の文字集合と同一である(ASCII から派生した
もの)
。
16
X 6302-6
:2011 (ISO/IEC 7811-6:2008)
10.2.4 ID-1
カードの最大文字数
情報用文字,制御文字,始め符号,終わり符号及び水平冗長検査文字は,合計して 40 文字を超えてはな
らない。
10.3
トラック 3
10.3.1
平均記録密度
平均記録密度は,カードの上端辺に平行に測定して 8.27 ビット/mm(210 bpi)とし,その許容誤差を±
8 %とする。
10.3.2
磁束反転間隔の許容誤差
未使用記録済みカード及び返却カードのビットセル及びそのサブインターバル(
図 11 参照)の許容範囲
及び許容誤差を,それぞれ
表 2 及び表 3 に示す。
10.3.3
文字集合
トラック 3 に使用する文字集合は,
表 7 に示す 5 ビット数字符号とする。
: < > の 3 文字は,制御用として使用し,情報(データ内容)として用いてはならない。
; = ? の 3 文字は,次に示す意味に限定する。
; 始め符号
= 分離符号
? 終わり符号
10.3.4 ID-1
カードの最大文字数
情報用文字,制御文字,始め符号,終わり符号及び水平冗長検査文字は,合計して 107 文字を超えては
ならない。
11
誤り検出
次に示す 2 種類の誤り検出方式を記録しなければならない。いずれの場合でも,前端部及び後端部の同
期ビット
0 は,誤り検出の対象として扱わない。
11.1
奇偶検査
奇偶検査ビットは,文字ごとに記録する。ここで,奇偶検査ビットの値は,文字を構成する 1 のビッ
トの個数と奇偶検査ビットとの合計が奇数になるように設定する。
11.2
水平冗長検査文字(LRC 文字)
LRC 文字は,データトラックごとに記録する。ここで,LRC 文字を付加する位置は,始め符号,データ
文字,終わり符号の順で読むときの終わり符号の直後とする。LRC 文字のビットの構成は,データ文字の
ビット構成と同じとする。
LRC 文字は,次のように算出する。奇偶検査ビットを除いた LRC 文字の各ビットの値は,データトラ
ックの全ての文字(始め符号,データ,終わり符号及び LRC 文字)を構成する同じビット位置にある 1
のビットの個数が偶数になるように設定する。LRC 文字の奇偶検査ビットは,個々のデータの奇偶検査ビ
ットから得られる奇偶検査ビットではなく,11.1 による LRC 文字自身の奇偶検査ビットとする。
12
記録トラックの位置
それぞれの記録トラックは,
図 12 に示す 2 線間にわたって位置する。図 12 の記録の開始位置は,始め
符号の最初のビット
1 の中心線を示す。図 12 の記録の終わり位置は,LRC 文字(最後のビットは,奇
偶検査ビットである。
)の最後のビットの中心線を示す。
17
X 6302-6
:2011 (ISO/IEC 7811-6:2008)
単位 mm
項目
トラック 1
トラック 2
トラック 3
a
最大 5.79
最小 8.33
最大 9.09
最小 11.63
最大 12.65
b
最小 8.33
最大 9.09
最小 11.63
最大 12.65
最小 15.19
最大 15.82
c
7.44±1.00 7.44±0.50 7.44±1.00
d
最小 6.93
最小 6.93
−
注記 全てのトラックの最小幅は,2.54 mm である。
図 12−記録トラックの位置
18
X 6302-6
:2011 (ISO/IEC 7811-6:2008)
附属書 A
(参考)
磁気ストライプ(JIS X 6302-2 及び JIS X 6302-6)の読取り互換性
この附属書は,この規格の適用範囲に記載している 読取り互換性 の限界を説明するものであり,JIS
X 6302-2
及び JIS X 6302-6 に対応する。
高保磁力磁気ストライプは耐消去性を向上しているが,再生出力信号特性において低保磁力磁気ストラ
イプ(例えば,JIS X 6302-2 に適合する磁気ストライプ)と理想的には同等であるのが望ましい。しかし,
実際には,高保磁力磁気ストライプ及び低保磁力磁気ストライプの磁気特性の違いが,測定器に依存する
再生出力信号振幅の評価結果に大きな差を生じる。
一般的には,短い記録波長に対して感度が高い再生装置であればあるほど,高保磁力磁気ストライプの
再生出力信号振幅は,低保磁力磁気ストライプに比して大きくなると予想される。
この規格の利用者は,再生出力信号振幅を比較する場合,JIS X 6302-2 に適合する磁気ストライプの再
生出力信号振幅が JIS X 6305-2 に規定する正確な測定条件に依存することに注意しなければならない。
19
X 6302-6
:2011 (ISO/IEC 7811-6:2008)
附属書 B
(規定)
振幅測定
(この附属書は,対応国際規格において本文での引用・参照がなく,技術的内容としては引用規格 JIS X
6305-2
に完全に含まれるので不採用とした。
)
20
X 6302-6
:2011 (ISO/IEC 7811-6:2008)
附属書 C
(参考)
磁気ストライプの摩耗研磨特性
この附属書は,磁気ヘッド寿命と関連する磁気ストライプ摩耗研磨特性が,物理的な特性を定めたこの
規格の中に含まれない理由を説明することを目的とする。
摩耗研磨特性の要求仕様がないことは,摩耗のパラメータを定義し,摩耗研磨特性を測定するための正
確な耐久試験を規定することの難しさを反映している。耐久試験方法は,確立されていないが,磁気スト
ライプの寿命を延ばすために利用可能な技術,磁気ヘッドの材料,磁気ストライプの材料,磁気ストライ
プの添加物,又は磁気ストライプの保護膜を改良するのに利用可能な技術は知られている。
定量化された磁気ストライプの摩耗研磨特性は,磁気ヘッドの寿命を予測するために必須の前提条件で
あるようにも思える。しかし,異なる磁気ストライプの摩耗研磨特性に多様性があるように,磁気ストラ
イプのリーダライタの環境は,多数存在する。影響の組合せの多様性,及び摩耗研磨特性に対するそれら
の影響の仕方の複雑さは,環境,機器及び磁気ストライプの状態が指定されたときでさえ,磁気ヘッドの
寿命を予測するのを非常に難しくしている。
JIS X 6305-2
に示す試験装置を用いた摩耗研磨特性試験は,ある磁気ストライプの摩耗の度合いが,他
の特定の状況での試験のものより多いか少ないかを単純に示すだけの単なる比較試験である。この方法で
磁気ヘッドの耐摩耗研磨特性を試験する場合には,多くの時間及びカードが必要となる上に,正確な絶対
値がなく,試験条件によって結果が変動する場合がある。
磁気ストライプの読み書きには,磁気ストライプと磁気ヘッドとが接触していなければならない。磁気
ヘッドと磁気ストライプとのしゅう(摺)動によって,両者とも摩耗する。磁気ストライプの摩耗研磨特
性は,しゅう(摺)動回数とともに初めは急速に低下するが,回数の増加とともに変化率は減少する。し
たがって,未使用の磁気ストライプの摩耗研磨特性は,一度書かれただけの磁気ストライプの摩耗研磨特
性よりもはるかに高い。
磁気ストライプの摩耗研磨特性に影響するものとして,温度,湿度,磁気ヘッドの材料(その形状及び
仕上げの状態)
,磁気ヘッドの圧力,カード速度,磁気ヘッドと接触する磁気ストライプの表面上の物理的
な特性,磁気ストライプの表面粗さ及び汚れがある。実際の使用環境下では,ほこり及び油分は,磁気ヘ
ッドと磁気ストライプとの間に蓄積するため,実験室条件下で測定した摩耗研磨特性との間に違いが生じ
ることがある。
したがって,この試験を誤差が許容できるまでに押さえ込むのは困難な上,実験室環境下での試験から
実際の使用環境での摩耗を推定することも困難である。
このため,摩耗研磨特性試験のための測定の不確実性を許容レベルまでに達成するのが困難なばかりか,
実使用のときの予測に,実験室の状況下でのカードの摩耗研磨特性試験結果を適用するのには重大な疑問
すらある。
これらの問題が解決されない限り,摩耗研磨特性の実用的な規定及び試験方法を,規定することができ
ない。
21
X 6302-6
:2011 (ISO/IEC 7811-6:2008)
附属書 D
(参考)
静的磁気特性
D.1
序文
この附属書は,
高保磁力磁気ストライプにおいて推奨する静的磁気特性及び定義を示す。これらの値は,
磁性材料の製造業者にとって有用であるが,
表 1 に示すカードに対する磁気特性の値に直接関係するもの
でない。この附属書の値をもつ磁気ストライプは,
表 1 に示す要求事項に合致することを保証するもので
はない。しかし,提示された静的磁気特性に適合しない磁気ストライプは,
表 1 の特性に適合しないこと
がある。
D.2
定義
D.2.1
最大印可磁界,H
max
(maximum field, H
max
)
試験方法に示す最大印加磁界。
D.2.2
磁化曲線 M(H)曲線[static M(H) loop]
磁化曲線が影響を受けない程度の低い掃引速度で,磁界強度を−H
max
から+H
max
までの間で周期的に変
化させて得られるヒステリシス曲線(IEC 60050-221 参照)
。
D.2.3
保磁力,H'
cM
=H'
cJ
(coercivity, H'
cM
=H'
cJ
)
飽和状態から,
飽和磁化状態とは反対方向に連続的に磁界を印加したとき磁化量が 0 になる磁界強度。
測定は,磁気ストライプの水平軸方向に行う(IEC 60050-221 参照)
。
D.2.4
残留磁化,M
r
(remanence, M
r
)
最大印加磁界(H
max
)を印加した後,印加磁界が 0 となるときの最大印加磁界と同一方向の磁化(M)
の値。
D.2.5
残留保磁力,H
r
(remanence coercivity, H
r
)
飽和状態から,飽和磁化状態とは反対方向に磁界を印加し,その後この磁界を
0 まで戻したときに,
残留磁化量が
0 になる磁界強度。測定は,磁気ストライプの水平軸方向に行う。
D.2.6
エルステッド,Oe(oersted, Oe)
磁界強度の CGS ガウス単位。磁気記録業界で一般的に用いる。
基準となる関連性はもはやないが,
1 Oe は,79.578 A/m に相当する(JIS Z 8202-5:2000 の附属書 A 参照)。
D.2.7
減磁,S
160
(static demagnetisation, S
160
)
反対方向磁界の影響による磁化の減少。[M
r
−M
+
(−160)]/M
r
で定義される。M(H)曲線の
減磁
部分の
象限において,磁界強度が H=0 と H=−160 kA/m との間の磁化曲線の平均的な傾きを示す。
22
X 6302-6
:2011 (ISO/IEC 7811-6:2008)
D.2.8
角形比,SQ=M
r
/M(H
max
)
[longitudinal squareness, SQ=M
r
/M(H
max
)]
磁化曲線 M(H)曲線において磁界強度が H
max
のときの磁化量[M(H
max
)]に対する,磁界強度が 0 (H
=0)のときの磁化量(M
r
)の比。M
r
/M(H
max
)から求める。
D.2.9
残留磁化比,R
M
=(M
rP
/M
rL
)
[remanence ratio, R
M
=(M
rP
/M
rL
)]
磁気ストライプの水平軸に対し水平方向に沿って測定した水平残留磁化(M
rL
)に対する,磁気ストライ
プ平面に垂直に測定した垂直残留磁化(M
rP
)の比。
D.2.10
傾きによるスイッチングフィールド,SF
S
(switching field by slope, SF
S
)
(|H
2
|−|H
1
|)/H'
cM
で求められる値。ここで|H
1
|及び|H
2
|は,M(−|H
1
|)=0.5M
r
及び M(−|H
2
|)=−0.5M
r
を満た
す磁界強度。M(H)曲線において M(H)=0.5M
r
及び M(H)=−0.5M
r
となる 2 種類の磁界強度の差を保磁力で
除することによって求められる。
D.2.11
派生によるスイッチングフィールド,SF
D
(switching field by derivative, SF
D
)
微分した M(H)曲線の半分の高さにおける幅を同一曲線上の保磁力で除したもの。
D.3
推奨特性
高保磁力磁気ストライプにおいて推奨する静的磁気特性を
表 D.1 に示す。
表 D.1−高保磁力磁性材料の静的磁気特性
番号
項目
符号
値
1
保磁力
H'
cM
最大 335 kA/m(4 200 Oe)
最小 200 kA/m(2 500 Oe)
2
減磁
S
160
最大 0.20
3
角形比
SQ
最小 0.80
4
残留磁化比
R
M
最大 0.35
5
傾斜によるスイッチングフィールド
SF
S
最大 0.30
6
派生によるスイッチングフィールド
SF
D
最大 0.50
参考文献 JIS X 6302-2 識別カード−記録技術−第 2 部:磁気ストライプ−低保磁力
注記 対応 国際規格: ISO/IEC 7811-2, Identification cards− Recording technique− Part 2:
Magnetic stripe−Low coercivity(MOD)
JIS Z 8202-5:2000
量及び単位−第 5 部:電気及び磁気
注記 対応国際規格:ISO 31-5:1992,Quantities and units−Part 5: Electricity and magnetism
(IDT)
IEC 60050-221:1990
,International Electrotechnical Vocabulary. Chapter 221: Magnetic materials and
components