X 6302-2:2016
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
目 次
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序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 1
2 適合性···························································································································· 2
3 引用規格························································································································· 2
4 用語及び定義 ··················································································································· 2
5 IDカードの物理的特性 ······································································································ 4
5.1 磁気ストライプ領域の反り ······························································································ 4
5.2 表面のわい(歪)曲 ······································································································· 4
6 磁気ストライプの物理的特性 ······························································································ 5
6.1 磁気ストライプ領域の盛上がり高さ及び断面形状 ································································· 5
6.2 表面粗さ ······················································································································ 6
6.3 磁気ストライプとカードとの接着性··················································································· 7
6.4 読取り及び書込みヘッドに対する磁気ストライプの耐磨耗性 ·················································· 7
6.5 耐化学薬品性 ················································································································ 7
7 磁性材料の特性 ················································································································ 7
7.1 一般 ···························································································································· 7
7.2 試験及び試験環境 ·········································································································· 7
7.3 磁気媒体に対する信号振幅の要求仕様················································································ 7
8 記録方式························································································································· 8
9 一般記録仕様 ··················································································································· 9
9.1 記録角度 ······················································································································ 9
9.2 公称記録密度 ··············································································································· 10
9.3 トラック1,2及び3に対する信号振幅 ············································································· 10
9.4 ビット構成 ·················································································································· 11
9.5 記録方向 ····················································································································· 11
9.6 前端部及び後端部の同期ビット“0” ················································································ 11
10 記録仕様 ······················································································································ 11
10.1 トラック1 ·················································································································· 11
10.2 トラック2 ·················································································································· 14
10.3 トラック3 ·················································································································· 15
11 誤り検出 ······················································································································ 15
11.1 パリティ ···················································································································· 15
11.2 水平冗長検査文字(LRC文字) ····················································································· 16
12 記録トラックの位置 ······································································································· 16
附属書A(参考)磁気ストライプの読取り互換性−この規格及びJIS X 6302-6 ································ 17
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附属書B(参考)磁気ストライプの磨耗研磨特性 ······································································· 18
附属書JA(規定)おもて面磁気ストライプ付き識別カード ························································· 19
附属書JB(参考)JISと対応する国際規格との対比表 ································································ 25
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まえがき
この規格は,工業標準化法第14条によって準用する第12条第1項の規定に基づき,一般社団法人ビジ
ネス機械・情報システム産業協会(JBMIA)及び一般財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案
を具して日本工業規格を改正すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が
改正した日本工業規格である。
これによって,JIS X 6302-2:2005は改正され,この規格に置き換えられた。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
JIS X 6302の規格群には,次に示す部編成がある。
JIS X 6302-1 第1部:エンボス
JIS X 6302-2 第2部:磁気ストライプ−低保磁力
JIS X 6302-6 第6部:磁気ストライプ−高保磁力
JIS X 6302-9 第9部:触ってカードを区別するための凸記号
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日本工業規格 JIS
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識別カード−記録技術−
第2部:磁気ストライプ−低保磁力
Identification cards-Recording technique-
Part 2: Magnetic stripe-Low coercivity
序文
この規格は,2014年に第4版として発行されたISO/IEC 7811-2を基とし,我が国で普及しているおも
て面に磁気ストライプがある識別カードの磁気ストライプの特性,符号化技術などの規定を追加し,技術
的内容を変更して作成した日本工業規格である。
なお,この規格で点線の下線を施してある箇所は,対応国際規格を変更している事項である。変更の一
覧表をその説明を付けて,附属書JBに示す。また,附属書JAは対応国際規格にはない事項である。
1
適用範囲
この規格は,ここで定義する識別カード(以下,IDカード又は単にカードという。)の国際的な互換性
のためのカードの用法について規定する。
この規格は,カードに設けられている低保磁力の磁気ストライプ(あらゆる保護層を含む。)が満たすべ
き要件,記録方式及び文字集合について規定する。それは,人的要素及び機器的要素の双方を勘案した上
での最低限の要件である。
保磁力は,この規格で規定する多くの項目に強い影響を与えるものであるが,それ自体は規定していな
い。附属書JAのタイプだけは,保磁力を規定している。
カードを磁界にばく(曝)露すると,記録データの破壊につながるおそれがある。
カードが満たすべき基準を規定することが,この一連の規格の目的である。返却カードの場合でも,試
験に先立ってカードがどの程度使われた後であるかについては,この規格では考慮しない。規格の基準に
不適合の場合は,関係する組織と協議する。
この規格で規定するパラメータに対する供試カードなどの試験方法は,JIS X 6305-2で規定している。
注記1 この規格において,SI単位及び/又はヤード・ポンド法の数値は四捨五入しているため,数
値自体は一致しているが,相互では正確に等しくない場合がある。いずれの単位も使用可能
だが,両単位を混在又は再変換することは意図していない。対応国際規格は,ヤード・ポン
ド法を用いて作成されている。
注記2 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
ISO/IEC 7811-2:2014,Identification cards−Recording technique−Part 2: Magnetic stripe−Low
coercivity(MOD)
なお,対応の程度を表す記号“MOD”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“修正している”
ことを示す。
2
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2
適合性
この規格に適合するためには,JIS X 6301の規定を満足している必要がある。IDカードは,この規格で
規定する全ての要件を満足するときに,この規格に適合する。もし,規定されていない値がある場合には,
既定値を適用する。
3
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS B 0601 製品の幾何特性仕様(GPS)−表面性状:輪郭曲線方式−用語,定義及び表面性状パラメ
ータ
注記 対応国際規格:ISO 4287,Geometrical Product Specifications (GPS)−Surface texture: Profile
method−Terms, definitions and surface texture parameters(IDT)
JIS X 0201 7ビット及び8ビットの情報交換用符号化文字集合
JIS X 0211 符号化文字集合用制御機能
JIS X 6301 識別カード−物理的特性
注記 対応国際規格:ISO/IEC 7810,Identification cards−Physical characteristics(IDT)
JIS X 6302-1 識別カード−記録技術−第1部:エンボス
JIS X 6302-6 識別カード−記録技術−第6部:磁気ストライプ−高保磁力
注記 対応国際規格:ISO/IEC 7811-6,Identification cards−Recording technique−Part 6: Magnetic
stripe−High coercivity(IDT)
JIS X 6305-1 識別カードの試験方法−第1部:一般的特性
注記 対応国際規格:ISO/IEC 10373-1,Identification cards−Test methods−Part 1: General
characteristics tests(IDT)
JIS X 6305-2 識別カードの試験方法−第2部:磁気ストライプ付きカード
注記 対応国際規格:ISO/IEC 10373-2,Identification cards−Test methods−Part 2: Cards with magnetic
stripes(IDT)
4
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS X 6301によるほか,次による。
4.1
一次標準(primary standard)
UR及びIRの値を示すためにドイツ連邦国立度量衡研究所[Physikalisch-Technische Bundesanstalt (PTB)]
によって制定され,PTB,Q-Card及びISO/IEC JTC 1 SC 17/WG 1事務局で管理しているRM7811-2と称
する基準カードのセット。
4.2
二次標準(secondary standard)
1枚ごとに一次標準との関係を校正証明されている,RM7811-2と称する基準カード。
注記 二次標準は,Q-Card, 301 Reagan Street Sunbury PA 17801,USAに注文可能である。二次標準の
在庫は,最低2018年まで管理される。
3
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4.3
未使用未記録カード(unused un-encoded card)
使用目的のための全ての機能を備え,磁気記録も試験操作も行われていないカード。カードは,48時間
以上日光に露出せず,急激な温度変化のない5 ℃〜30 ℃の温度及び10 %〜90 %の湿度の中で,かつ,清
浄な環境で保管したもの。
4.4
未使用記録済みカード(unused encoded card)
未使用未記録カードに,使用目的のためのデータが記録(例えば,磁気記録,エンボス加工,電気的記
録)されただけのカード。
4.5
返却カード(returned card)
未使用記録済みカードで,カード保有者に発行した後に試験のために返却されたカード。
4.6
磁束反転(flux transition)
距離とともに磁化の変化率が最大の位置。
注記 磁気ストライプ面の法線方向の磁束が最大となる位置。
4.7
基準電流,IR(reference current, IR)
基準カードに8磁束反転/mmの密度で記録して再生したときに,基準ピーク電圧(UR)の80 %(図6
参照)と等しい出力電圧が得られる最小記録電流。
4.8
基準磁束レベル,FR(reference flux level, FR)
基準電流(IR)に相当した試験ヘッドでの磁束の強さ。
4.9
試験記録電流(test recording currents)
3.5FRに対応する記録電流Imin及び5.0FRに対応する記録電流Imaxで定義される2種類の記録電流。
4.10
個別信号振幅,Ui(individual signal amplitude,Ui)
一つの出力信号の基準値からピーク値までの信号振幅。
4.11
平均信号振幅,UA(average signal amplitude,UA)
対象とするトラックにおいて,磁気ストライプ領域全長にわたる個々の信号振幅のピーク(Ui)の絶対
値の総和をピーク信号の数(n)で除したもの。
4.12
基準信号振幅,UR(reference signal amplitude,UR)
一次標準によって補正した基準カードの平均信号振幅の最大値。
4.13
磁束反転密度(physical recording density)
一つのトラックに記録された単位長さ当たりの磁束反転の数。
4
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4.14
記録密度(bit density)
単位長さ当たりのデータビットの数[ビット/mm又はbpi(ビット/inch)]。
4.15
ビットセル(bit cell)
隣接するクロック信号の磁束反転間の距離(図10参照)。
4.16
サブインターバル(subinterval)
ビット“1”のときの隣接する磁束反転間の距離(図10参照)。
5
IDカードの物理的特性
IDカードは,JIS X 6301に適合していなければならない。
警告 カード発行者は,次の事項に注意しなければならない。
− カードが汚れた物と接触した場合及び可塑剤を含む一般的な化学薬品で汚れた場合,磁気
ストライプに保持されている情報が読めなくなることがある。
− 磁気ストライプ上に印刷などを施すと,磁気ストライプの機能を弱めることがある。
注記 磁気ストライプの読取り互換性及び磁気ストライプの磨耗特性については,附属書A及び附属
書Bを参照。
5.1
磁気ストライプ領域の反り
測定するカードの磁気ストライプ面を下にして定盤に置き,その磁気ストライプと反対側の面に均一に
2.2 Nの力をかけたとき,その磁気ストライプ全面が定盤から0.08 mm以内になければならない。
5.2
表面のわい(歪)曲
図1に示す非わい(歪)曲領域では,カード両面に磁気ヘッドと磁気ストライプとの接触を妨げるわい
(歪)曲,凹凸又は隆起があってはならない。
単位 mm
図1−磁気ストライプ付きカードの非わい(歪)曲領域
隆起した署名部領域がカードのおもて面又は裏面に位置する場合,署名部領域は,カードの上端基準辺
5
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から19.05 mm以内にあってはならない。
注記 上記(カード上端基準辺から19.05 mm以内)以外の領域に隆起領域及びわい(歪)曲がある
カードは,磁気ストライプ処理装置において,カード搬送に問題を生じ,その結果,読取り不
良又は書込み不良を起こす可能性がある。
6
磁気ストライプの物理的特性
6.1
磁気ストライプ領域の盛上がり高さ及び断面形状
磁気ストライプ領域は,この規格の附属書JAのおもて面磁気ストライプ付き識別カードを除き,図2
に示すようにカード裏面に位置する。おもて面磁気ストライプの特性については,附属書JAによる。
単位 mm
トラック1及び2を用いる場合,aは最小11.89
トラック1,2及び3を用いる場合,aは最小15.95
注記 トラック1及び2を用いる磁気ストライプ領域の場合,この図に示すaの値は,図11に示すトラック2のbの
最大値以下となることがあるが,磁気ストライプ領域は,トラックの範囲を超えていることが望ましい。
図2−ID-1カードの磁気ストライプ配置
6.1.1
磁気ストライプ領域の断面形状
磁気ストライプ領域の断面形状の垂直偏差(a)を,図3,図4及び図5に示す。断面形状曲線の勾配は,
次の範囲になければならない。
−4a/W<勾配<4a/W
カードの静的曲げ強さ(JIS X 6301参照)の変形量の値が20 mm以上である場合の断面形状は,次の値
を限度とする。
最小ストライプ幅
図3A
図3B
W=6.35 mm
a≦9.5 μm
a≦5.8 μm
W=10.41 mm
a≦15.4 μm a≦9.3 μm
カードの静的曲げ強さ(JIS X 6301参照)の変形量の値が20 mm未満である場合の断面形状は,次の値
を限度とする。
最小ストライプ幅
図3A
図3B
6
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W=6.35 mm
a≦7.3 μm
a≦4.5 μm
W=10.41 mm
a≦11.7 μm a≦7.3 μm
図3−磁気ストライプの断面形状
図4−磁気ストライプの断面形状の例
注記 例に示すような不規則断面においては,記録再生品質低下の原因となる可能性がある。
図5−磁気ストライプの不規則断面形状の例
6.1.2
磁気ストライプ領域の高さ
磁気ストライプ領域の垂直変位量(h)は,近傍のカードの表面から次の値でなければならない。
−0.005 mm≦h≦0.038 mm
磁気ストライプを熱転写するときに生じる,磁気ストライプからスパイク状に“はみ出した”部分は,
ストライプに含めない。スパイク状にはみ出した部分は,磁気ストライプ領域の高さ(h)に含めてはなら
ない。
6.2
表面粗さ
磁気ストライプ領域の平均表面粗さ(Ra)は,JIS B 0601によって測った長さ及び幅の両方向共に0.40 μm
7
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を超えてはならない。
6.3
磁気ストライプとカードとの接着性
磁気ストライプは,通常の使用においてカードから剝がれてはならない。
6.4
読取り及び書込みヘッドに対する磁気ストライプの耐磨耗性
平均信号振幅(UA)及び個別信号振幅(Ui)は,2 000往復の耐磨耗試験の前後で測定したとき,次の
結果でなければならない(JIS X 6305-2参照)。
UA(試験後の測定)≧0.60 UA(試験前の測定),及びUi(試験後の測定)≧0.80 UA(試験後の測定)
注記 上記の式は,“試験後の平均信号振幅(UA)は,試験前の平均信号振幅の60 %以上,及び試験
後の個別信号振幅(Ui)は,試験後の平均信号振幅の80 %以上でなければならない。”を意味
している。つまり,Uiの方が平均より悪いことを容認している。
6.5
耐化学薬品性
平均信号振幅(UA)及び個別信号振幅(Ui)は,JIS X 6305-1に定義されている短時間(1分間)の浸
せきの前後で測定したとき,次の結果でなければならない。
UA(浸せき後の測定)≧0.90 UA(浸せき前の測定),及び
Ui(浸せき後の測定)≧0.90 UA(浸せき後の測定)
平均信号振幅(UA)及び個別信号振幅(Ui)は,JIS X 6305-1に定義されている長時間(24時間)の酸
及びアルカリ人工汗液への浸せきの前後で測定したとき,次の結果でなければならない。
UA(浸せき後の測定)≧0.90 UA(浸せき前の測定),及び
Ui(浸せき後の測定)≧0.90 UA(浸せき後の測定)
7
磁性材料の特性
7.1
一般
この箇条では,カードとカードリーダライタとの間の磁気的な互換性を確保するのを目的とする。保磁
力の値は規定しない。磁性材料の特性は,保磁力によらず7.3で規定する。
ここでは,一次標準との関係をトレース可能な標準カードを用いる(箇条4参照)。二次標準を使って得
られた全ての信号振幅の結果は,二次標準に附属する係数によって補正しなければならない。試験方法は,
JIS X 6305-2による。
7.2
試験及び試験環境
信号振幅特性の試験環境は,温度が23 ℃±3 ℃で,相対湿度が40 %〜60 %とする。この環境条件以外
で試験する場合は,次に示す環境に5分間置いた後に8磁束反転/mmで測定した出力の平均値と,上記
の環境条件で試験した値との差が,その15 %を超えてはならない。
温度 :−35 ℃〜50 ℃
相対湿度 :5 %〜95 %RH
7.3
磁気媒体に対する信号振幅の要求仕様
カードの記録特性に対する要求仕様を,表1及び図6に示す。
8
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表1−未使用未記録カードに対する信号振幅の要求仕様
特性
磁束反転密度
(磁束反転/mm)
試験記録電流
信号振幅の結果
要求仕様
信号振幅
8
Imin
UA1
0.8 UR≦UA1≦1.3 UR
信号振幅
8
Imin
Ui1
Ui1≦1.36 UR
信号振幅
8
Imax
UA2
UA1≧UA2≧0.8 UR
信号振幅
20
Imax
Ui2
Ui2≧0.65 UR
分解能
20
Imax
UA3
UA3≧0.7 UA2
消去
0
Imin,DC
UA4
UA4≦0.03 UR
余剰パルス
0
Imin,DC
Ui4
Ui4≦0.05 UR
飽和曲線の傾きは,IminとImaxとの間では右肩上がりであってはならない。
注記1 要求仕様は,それぞれ独立して測定するものとし,これらを相互に計算するものではない。また,
これら要求仕様の数値は,未使用未記録カードに対して適用するものであり,既に記録されたカ
ードに対しては適用されない。
注記2 表1によって測定した分解能が低いことと,表2によって測定した磁束の反転距離変動が大きい
こととは相関付けができる。
注記 基準飽和曲線は,一次標準の応答結果を示す。ウィンドウパラメータは,機械読取り
に対応したカードの規定である。
図6−8磁束反転/mmにおける許容範囲を示す飽和曲線の例
8
記録方式
各トラックの記録方式は,F2F(two-frequency)記録として知られている。この方式は,自己同期データ
の連続記録を可能にする。この方式は,データとクロック遷移とが組み合わさって成る。クロック信号間
に磁束反転があれば,ビットが“1”であり,クロック信号間に磁束反転がなければ“0”である(図7参
照)。
9
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t
自己同期信号の間隔(タイミング)
注記 Imin未満の電流で書き込むと,記録品質が低下することがある。
図7−F2F記録の例
データは,隙間のない文字の同期シーケンスとして記録しなければならない。
9
一般記録仕様
9.1
記録角度
記録角度は,磁気ストライプと平行なカードの上端基準辺に対して,90°±20′でなければならない。
記録角度(α)は,読取り出力が最大のときのヘッドギャップの角度の測定から求める(図8参照)。
10
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図8−記録角度
9.2
公称記録密度
各トラックの公称記録密度は,次による。
トラック1: 8.27ビット/mm(210 bpi)
トラック2: 2.95ビット/mm(75 bpi)
トラック3: 8.27ビット/mm(210 bpi)
9.3
トラック1,2及び3に対する信号振幅
トラック1,2及び3に対する信号振幅の要求仕様は,次による。
未使用記録済みカード
: 0.64 UR≦Ui≦1.36 UR
返却カード
: 0.52 UR≦Ui≦1.36 UR
信号振幅の下限要求値(未使用記録済みカードの0.64 UR又は返却カードの0.52 UR)と0.07 URとの間
にはノイズのピーク信号があってはならない(図9参照)。
注記 この項目は,指定された記録密度におけるトラック1,2及び3について実際に用いる条件での
信号振幅の制限を規定している。このノイズと,未記録磁気媒体の特性を表している表1の要
求仕様にある余剰パルスとを混同してはいけない。
11
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図9−信号波形におけるノイズ
9.4
ビット構成
磁気ストライプ領域の各文字のビット構成は,最下位ビット(20)を最初に,パリティビットを最後に
記録しなければならない。
9.5
記録方向
カードの裏面から見て磁気ストライプを上側にした状態で右端から記録しなければならない。
9.6
前端部及び後端部の同期ビット“0”
最初のデータビットの前及び最後のビットの後の全てに,“0”を記録しなければならない。カードの裏
面から見て磁気ストライプを上側にした状態で,カードの右端辺から3.30 mmより前,及び82.17 mmよ
り後の部分での“0”は,この規格の仕様を満足する必要はない。
10 記録仕様
10.1 トラック1
10.1.1 平均記録密度
平均記録密度(Ba)は,上端基準辺に平行に測定して8.27ビット/mm(210 bpi)とし,その許容差を
±8 %とする。
10.1.2 磁束反転距離の許容差
未使用記録済みカード及び返却カードの磁束反転距離(図10参照)の許容差を,それぞれ,表2及び表
3に示す。
12
X 6302-2:2016
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
表2−未使用記録済みカードの磁束反転距離−トラック1及びトラック3
記号
項目
要求仕様
許容差
Ba
クロック信号間の平均距離
111 μm≦Ba≦131 μm
±8 %
Bin
クロック信号間の個別距離
109 μm≦Bin≦133 μm
±10 %
Bin+1
隣接するビットの許容差
0.90 Bin≦Bin+1≦1.10 Bin
±10 %
Sin
サブインターバルの距離
53 μm≦Sin≦68 μm
±12 %
Sin+1
隣接するサブインターバルの距離
0.88 Bin/2≦Sin+1≦1.12 Bin/2
±12 %
Bin+1又はSin+1は,Binの直後に隣接する磁束の反転距離。
注記1 この表は,カードが正常に機能する範囲を示しているだけであり,発行された
カードの有効期間内における磁束反転距離を保証するものではない。
注記2 表1によって測定した分解能が低いことと,表2によって測定した磁束の反転
距離変動が大きいこととは相関付けができる。
表3−返却カードの磁束反転距離−トラック1及びトラック3
記号
項目
要求仕様
許容差
Ba
クロック信号間の平均距離
111 μm≦Ba≦131 μm
±8 %
Bin
クロック信号間の個別距離
103 μm≦Bin≦139 μm
±15 %
Bin+1
隣接するビットの許容差
0.85 Bin≦Bin+1≦1.15 Bin
±15 %
Sin
サブインターバルの距離
48.4 μm≦Sin≦72.6 μm
±20 %
Sin+1
隣接するサブインターバルの距離
0.70 Bin/2≦Sin+1≦1.30 Bin/2
±30 %
Bin+1又はSin+1は,Binの直後に隣接する磁束の反転距離。
注記 この表は,カードが正常に機能する範囲を示しているだけであり,発行されたカ
ードの有効期間内における磁束反転距離を保証するものではない。
図10−ビットセルとサブインターバルとの関係
10.1.3 文字集合
トラック1に用いる文字集合は,表4に示す7ビット英数字符号とする。次の表の文字は,特殊な意味
をもち,その使用方法を記載のように制限する。
13
X 6302-2:2016
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
文字
意味又は使用方法
! “ & ʻ * +, : ; < = > @ ̲
制御用として使用し,データ内容として使用してはならない。
[╲]
国別の追加文字が必要なときのために留保して,国際的には使用しない。
#
追加用図形文字として留保する。
%
始め符号
^
分離符号
?
終わり符号
表4−7ビット英数字符号の文字集合
文字
2進符号
文字
2進符号
P
25
24
23
22
21
20
P
25
24
23
22
21
20
スペース
1
0
0
0
0
0
0
@
0
1
0
0
0
0
0
!
0
0
0
0
0
0
1
A
1
1
0
0
0
0
1
“
0
0
0
0
0
1
0
B
1
1
0
0
0
1
0
#
1
0
0
0
0
1
1
C
0
1
0
0
0
1
1
$
0
0
0
0
1
0
0
D
1
1
0
0
1
0
0
%
1
0
0
0
1
0
1
E
0
1
0
0
1
0
1
&
1
0
0
0
1
1
0
F
0
1
0
0
1
1
0
ʻ
0
0
0
0
1
1
1
G
1
1
0
0
1
1
1
(
0
0
0
1
0
0
0
H
1
1
0
1
0
0
0
)
1
0
0
1
0
0
1
I
0
1
0
1
0
0
1
*
1
0
0
1
0
1
0
J
0
1
0
1
0
1
0
+
0
0
0
1
0
1
1
K
1
1
0
1
0
1
1
,
1
0
0
1
1
0
0
L
0
1
0
1
1
0
0
-
0
0
0
1
1
0
1
M
1
1
0
1
1
0
1
.
0
0
0
1
1
1
0
N
1
1
0
1
1
1
0
/
1
0
0
1
1
1
1
O
0
1
0
1
1
1
1
0
0
0
1
0
0
0
0
P
1
1
1
0
0
0
0
1
1
0
1
0
0
0
1
Q
0
1
1
0
0
0
1
2
1
0
1
0
0
1
0
R
0
1
1
0
0
1
0
3
0
0
1
0
0
1
1
S
1
1
1
0
0
1
1
4
1
0
1
0
1
0
0
T
0
1
1
0
1
0
0
5
0
0
1
0
1
0
1
U
1
1
1
0
1
0
1
6
0
0
1
0
1
1
0
V
1
1
1
0
1
1
0
7
1
0
1
0
1
1
1
W
0
1
1
0
1
1
1
8
1
0
1
1
0
0
0
X
0
1
1
1
0
0
0
9
0
0
1
1
0
0
1
Y
1
1
1
1
0
0
1
:
0
0
1
1
0
1
0
Z
1
1
1
1
0
1
0
;
1
0
1
1
0
1
1
[
0
1
1
1
0
1
1
<
0
0
1
1
1
0
0
╲
1
1
1
1
1
0
0
=
1
0
1
1
1
0
1
]
0
1
1
1
1
0
1
>
1
0
1
1
1
1
0
^
0
1
1
1
1
1
0
?
0
0
1
1
1
1
1
̲
1
1
1
1
1
1
1
注記 この文字集合は,JIS X 6302-6の文字集合と同一である(ASCIIから派生したもの)。
10.1.4 ID-1カードの最大文字数
データ用文字,制御用文字,始め符号,終わり符号及び水平冗長検査文字は,合計して79文字を超えて
はならない。
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X 6302-2:2016
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
10.2 トラック2
10.2.1 平均記録密度
平均記録密度は,上端基準辺に平行に測定して2.95ビット/mm(75 bpi)とし,その許容差を±5 %と
する。
10.2.2 磁束反転距離の許容差
未使用記録済みカード及び返却カードの磁束反転距離(図10参照)の許容差を,それぞれ,表5及び表
6に示す。
表5−未使用記録済みカードの磁束反転距離−トラック2
記号
項目
要求仕様
許容差
Ba
クロック信号間の平均距離
322 μm≦Ba≦356 μm
±5 %
Bin
クロック信号間の個別距離
315 μm≦Bin≦363 μm
±7 %
Bin+1
隣接するビットの許容差
0.90 Bin≦Bin+1≦1.10 Bin
±10 %
Sin
サブインターバルの距離
153 μm≦Sin≦186 μm
±10 %
Sin+1
隣接するサブインターバルの距離
0.88 Bin/2≦Sin+1≦1.12 Bin/2
±12 %
Bin+1又はSin+1は,Binの直後に隣接する磁束の反転距離。
表6−返却カードの磁束反転距離−トラック2
記号
項目
要求仕様
許容差
Ba
クロック信号間の平均距離
322 μm≦Ba≦356 μm
±5 %
Bin
クロック信号間の個別距離
288 μm≦Bin≦390 μm
±15 %
Bin+1
隣接するビットの許容差
0.85 Bin≦Bin+1≦1.15 Bin
±15 %
Sin
サブインターバルの距離
136 μm≦Sin≦203 μm
±20 %
Sin+1
隣接するサブインターバルの距離
0.70 Bin/2≦Sin+1≦1.30 Bin/2
±30 %
Bin+1又はSin+1は,Binの直後に隣接する磁束の反転距離。
注記 この表は,カードが正常に機能する範囲を示しているだけであり,発行されたカ
ードの有効期間内における磁束反転距離を保証するものではない。
10.2.3 文字集合
トラック2に用いる文字集合は,表7に示す5ビット数字符号とする。次の表の文字は,特殊な意味を
もち,その使用方法を記載のように制限する。
文字
意味又は使用方法
: < >
制御用として使用し,データ内容として使用してはならない。
;
始め符号
=
分離符号
?
終わり符号
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X 6302-2:2016
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
表7−5ビット数字符号の字集合
文字
2進符号
文字
2進符号
P
23
22
21
20
P
23
22
21
20
0
1
0
0
0
0
8
0
1
0
0
0
1
0
0
0
0
1
9
1
1
0
0
1
2
0
0
0
1
0
:
1
1
0
1
0
3
1
0
0
1
1
;
0
1
0
1
1
4
0
0
1
0
0
<
1
1
1
0
0
5
1
0
1
0
1
=
0
1
1
0
1
6
1
0
1
1
0
>
0
1
1
1
0
7
0
0
1
1
1
?
1
1
1
1
1
注記 この文字集合は,JIS X 6302-6の文字集合と同一である(ASCIIか
ら派生したもの)。
10.2.4 ID-1カードの最大文字数
データ用文字,制御用文字,始め符号,終わり符号及び水平冗長検査文字は,合計して40文字を超えて
はならない。
10.3 トラック3
10.3.1 平均記録密度
平均記録密度(Ba)は,上端基準辺に平行に測定して8.27ビット/mm(210 bpi)とし,その許容差を
±8 %とする。
10.3.2 磁束反転距離の許容差
未使用記録済みカード及び返却カードの磁束反転距離(図10参照)の許容差を,それぞれ,表2及び表
3に示す。
10.3.3 文字集合
トラック3に用いる文字集合は,表7に示す5ビット数字符号とする。次の表の文字は,特殊な意味を
もち,その使用方法を記載のように制限する。
文字
意味又は使用方法
: < >
制御用として使用し,データ内容として使用してはならない。
;
始め符号
=
分離符号
?
終わり符号
10.3.4 ID-1カードの最大文字数
データ用文字,制御用文字,始め符号,終わり符号及び水平冗長検査文字は,合計して107文字を超え
てはならない。
11 誤り検出
次に示す2種類の誤り検出方式を記録しなければならない。いずれの場合でも,前端部及び後端部の同
期ビット“0”は,誤り検出の対象として扱ってはならない。
11.1 パリティ
各符号化された文字のためのパリティビットを使用しなければならない。パリティビットは,文字ごと
に記録しなければならない。ここで,パリティビットの値は,パリティビットを含めた文字を構成する“1”
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X 6302-2:2016
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
のビットの個数とパリティビットとの合計は奇数でなければならない。
11.2 水平冗長検査文字(LRC文字)
LRC文字は,各データトラックに設定しなければならない。LRC文字は,始め符号,データ,終わり符
号の順で読むときの終わり符号の直後に記録しなければならない。LRC文字のビット構成は,データ用文
字のビット構成と同じでなければならない。
LRC文字は,次のように算出しなければならない。
パリティビットを除いたLRC文字の各ビットの値は,データトラック内の全ての文字(始め符号,デー
タ,終わり符号及びLRC文字)を構成する同じビット位置(表4及び表7で2進符号の2nで示す,べき
数の位置)にある“1”のビットの個数の合計は偶数でなければならない。
LRC文字のパリティビットは,データトラックの個々のパリティビットから得られるパリティビットで
はなく,11.1で示すようなLRC文字自体のパリティビットとする。
12 記録トラックの位置
それぞれの記録トラックは,図11に示す2線間にわたって位置しなければならない。記録の開始位置は,
始め符号の最初のビット“1”の中心線に位置する。記録の終わり位置は,LRC文字の最後のビット(最
後のビットはパリティビットである。)の中心線に位置する。
単位 mm
項目
トラック1
トラック2
トラック3
a
最大 5.79
最小 8.33
最大 9.09
最小 11.63
最大 12.65
b
最小 8.33
最大 9.09
最小 11.63
最大 12.65
最小 15.19
最大 15.82
c
7.44±1.00
7.44±0.50
7.44±1.00
d
最小 6.93
最小 6.93
要求事項なし
注記 全てのトラックの最小幅は,2.54 mmである。
図11−記録トラックの位置
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X 6302-2:2016
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附属書A
(参考)
磁気ストライプの読取り互換性−この規格及びJIS X 6302-6
この附属書は,この規格の適用範囲に記載している“読取り互換性”の限界を説明するものであり,こ
の規格及びJIS X 6302-6に対応する。
高保磁力磁気ストライプは耐消去性が向上しているが,再生出力信号特性において低保磁力磁気ストラ
イプ(例えば,この規格に適合する磁気ストライプ)と理想的には同等であるのが望ましい。しかし,実
際には,高保磁力磁気ストライプと低保磁力磁気ストライプの磁気特性との違いにより,測定器に依存す
る再生出力信号振幅の評価結果に大きな差が生じる。
一般的には,短い記録波長に対して感度が高い再生装置であればあるほど,高保磁力磁気ストライプの
再生出力信号振幅は,低保磁力磁気ストライプに比して大きくなると予想される。
JIS X 6302-6の利用者は,再生出力信号振幅を比較する場合,この規格に適合する磁気ストライプの再
生出力信号振幅がJIS X 6305-2に規定する正確な測定条件に依存することに注意するのがよい。
18
X 6302-2:2016
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附属書B
(参考)
磁気ストライプの磨耗研磨特性
この附属書は,磁気ヘッド寿命と関連する磁気ストライプ磨耗研磨特性が,物理的な特性を定めたこの
規格の中に含まれない理由を説明することを目的とする。
磨耗研磨特性の要求仕様がないことは,磨耗のパラメータを定義し,磨耗研磨特性を測定するための正
確な耐久試験を規定することの難しさを反映している。耐久試験方法は,確立されていないが,磁気スト
ライプの寿命を延ばすために利用可能な技術(例えば,改良された磁気ヘッド材料,磁気ストライプの添
加物,又は磁気ストライプの保護膜)が知られている。
定量化された磁気ストライプの磨耗研磨特性は,磁気ヘッドの寿命を予測するために必須の前提条件で
あるようにも思える。しかし,異なる磁気ストライプの磨耗研磨特性に多様性があるように,磁気ストラ
イプリーダ及び磁気ストライプライタの環境は,多数存在する。影響の組合せの多様性,及び磨耗研磨特
性に対するそれらの影響の仕方の複雑さは,環境,機器及び磁気ストライプの状態が指定されたときでさ
え,磁気ヘッドの寿命を予測するのを非常に難しくしている。
JIS X 6305-2に示す現行の磨耗研磨特性試験は,ある磁気ストライプの磨耗の度合いが,他の特定の状
況での試験のものより多いか少ないかを単純に示すだけの単なる比較試験である。この方法で磁気ヘッド
の耐磨耗研磨特性を試験する場合には,多くの時間及びカードが必要となる上に,正確な絶対値がなく,
試験条件によって結果が変動する場合がある。
磁気ストライプの読み書きには,磁気ストライプと磁気ヘッドとが接触する必要がある。磁気ヘッドと
磁気ストライプとのしゅう(摺)動によって,両者とも磨耗する。磁気ストライプの磨耗研磨特性は,し
ゅう(摺)動回数とともに初めは急速に低下するが,回数の増加とともに変化率は減少する。したがって,
未使用の磁気ストライプの磨耗研磨特性は,一度書かれただけの磁気ストライプの磨耗研磨特性よりもは
るかに高い。
磁気ストライプの磨耗研磨特性に影響するものとして,温度,湿度,ヘッド材料(その形状及び仕上げ
の状態),磁気ヘッドの圧力,カード速度,磁気ヘッドと接触する磁気ストライプの表面上の物理的な特性,
磁気ストライプの表面粗さ,並びに汚れがある。実際の使用環境下では,ほこり及び油分は,磁気ヘッド
と磁気ストライプとの間に蓄積するため,実験室条件下で測定した磨耗研磨特性との間に違いが生じるこ
とがある。
したがって,この試験を誤差が許容できるまでに抑え込むのは困難な上,実験室環境下での試験から実
際の使用環境での磨耗を推定するのも困難である。このため,磨耗研磨特性試験のための測定の不確実性
を許容レベル以下とするのが困難なばかりか,実使用のときの予測に,実験室の状況下でのカードの磨耗
研磨特性試験結果を適用するのには重大な疑問すらある。これらの問題が解決されない限り,磨耗研磨特
性の実用的な規定及び試験方法を,規定することができない。
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X 6302-2:2016
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書JA
(規定)
おもて面磁気ストライプ付き識別カード
JA.1 一般
この附属書は,おもて面に磁気ストライプがある識別カード(以下,IDカード又は単にカードという。)
上の(保護層を含む)磁気ストライプの特性,符号化技術及び符号化文字集合について規定する。
磁気記録は,機械読取りを意図している。
JIS X 6305-1及びJIS X 6305-2は,この附属書で規定する項目について試験するための手順について規
定しているが,全ての項目を網羅していないことに注意が必要である。
この附属書は,IDカードが満たすべき要件を規定する。これらは,人的要素及び機器的要素を基礎とし
たときの最低限の要件とする。
この附属書の規定は,対応国際規格にはない事項である。
我が国では,JIS X 6301:1979及びJIS X 6302:1979によって,カードのおもて面に磁気ストライプがあ
るものをJIS II型カードとして規定していた経緯があり,現在も金融機関を始めとした多くの磁気カード
システムで利用されている。本来であれば関連する国際規格に準拠したカードに移行することが望ましい
が,おもて面磁気ストライプの仕様そのままでは国際規格準拠のカードに移行することができないため,
おもて面磁気ストライプの規格が存在しなくなることによる混乱を回避するために附属書とする。
JA.2 適合性
IDカードは,この附属書で規定する全ての条件を満足するときに,この附属書に適合する。この附属書
に適合するためには,JIS X 6301の規定を満足している必要がある。
JA.3 引用規格
ここで引用する規格は,箇条3による。
JA.4 定義
この附属書で用いる主な用語の定義は,JIS X 6301及び箇条4による。
JA.5 エンボス文字の位置・形状・寸法
JA.5.1 エンボス文字の位置
JIS X 6302-1の8.(エンボス領域の文字位置)による。
JA.5.2 エンボス文字の形状及び大きさ
カード上のエンボスの形状,寸法及び大きさは,特に定めない。ただし,一般的には,JIS X 6302-1の
6.1(文字集合及び字体)に示す字体のいずれかを用いる。
JA.6 IDカードの物理的特性
IDカードは,JIS X 6301の規定を満足していなければならない。
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JA.7 磁気ストライプの物理的特性
JA.7.1 磁気ストライプ領域の盛上がり高さ及び断面形状
JA.7.1.1 磁気ストライプの位置及び寸法
磁気ストライプは,カードのおもてに取り付けるものとし,その位置は,図JA.1に示すとおりとする。
磁気ストライプ部の近傍のカードの表面からの高さは,保護層も含めて,0 mm〜0.015 mmの範囲になけ
ればならない。ただし,断面測定には,半径0.38 mm〜2.54 mmの測針を用いる。
e=1 mm以下
f=1 mm以下
g=6.4 mm以下
h=11.6 mm以上
図JA.1−磁気ストライプの位置
JA.7.1.2 磁気ストライプ領域の盛上がり高さの許容値
磁気ストライプ断面の垂直変位量は,半径0.38 mm〜2.54 mmの測針でカードの幅方向に測定した場合,
6 μmを超えてはならない。
JA.7.2 表面粗さ
磁気ストライプの表面粗さは,長手方向,幅方向共にCLA(中心線平均粗さ)で1.3 μmを超えてはな
らない。測定値は,最小半径2.5 μmの測針を用いたとき,0.25 mm又は0.76 mmのカットオフ波長の場合
の値とする。
JA.7.3 磁気ストライプとカードとの接着性
この規格の6.3による。
JA.7.4 読取り及び書込みヘッドに対する磁気ストライプの耐磨耗性
この規格の6.4による。
JA.7.5 耐化学薬品性
この規格の6.5による。
JA.8 磁気材料の特性
ここでは,カードとカードリーダライタとの磁気的な互換性を可能にするのを目的とする。
警告 カード発行者は,次の事項に注意しなければならない。
− カードが汚れたヘッドに接触した場合,又は一般的に使われる可塑剤を含む化学物質に直接触れた場
合,磁気ストライプに保持されている情報が読めなくなる可能性がある。
− 強い磁界にカードをばく(曝)露することによって,記録データが破壊されることがある。
− 磁気ストライプの上に印刷を施して磁気ストライプの機能を弱めるおそれがある場合には,カードリ
ーダライタ製造業者及びカード製造業者と協議することが望ましい。
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JA.8.1 磁気ストライプの保磁力及び最大残留磁束密度
磁気ストライプの保磁力は,52 kA/m±4 kA/m(650 Oe±50 Oe)とする。最大残留磁束密度については
規定しないが,次の注記に参考値を示す。
注記 最大残留磁束密度:1.25×10−6 Wb/m±0.15×10−6 Wb/m(1.25 Mx/cm±0.15 Mx/cm)
この参考値は,磁気ストライプの磁性層の表面に保護層以外に何も加工されていない場合の値
である。
JA.8.2 試験及び試験環境
この規格の7.2による。
JA.8.3 磁気ストライプの電磁変換特性
JA.8.3.1 出力信号電圧
磁気ストライプの全トラック幅にわたり,8磁束反転/mmの密度で基準磁界の350 %〜500 %の磁界を
印加して方形波信号を記録する。これを再生したとき,その再生出力信号の平均信号振幅は,基準信号振
幅の80 %以上,かつ,130 %以下でなければならない(図JA.2参照)。
図JA.2−出力信号電圧
JA.8.3.2 消去効果
磁気ストライプに記録密度8磁束反転/mmで基準磁界の350 %の磁界で方形波信号を記録した後,こ
れを基準磁界の350 %の磁界で消去し,再生したとき,その残留再生信号出力の最大ピーク値は,消去前
の再生出力の5 %以下でなければならない。
JA.8.3.3 分解能
20磁束反転/mmの記録密度における再生ヘッド出力信号の平均信号振幅は,記録密度以外をJA.8.3.1
に示す条件と同一にして記録・再生を行ったとき,8磁束反転/mmの場合の70 %以上でなければならな
い。
JA.9 記録方式
記録方式は,F2F記録とする。データビットは,情報文字順に隙間なく記録する。記録は,トラックの
面と平行な方向への飽和状態での磁化で行う。その方向は,記録角度によって決定する(箇条8参照)。
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JA.10 一般記録仕様
JA.10.1 記録角度
データビット及び同期クロック信号の磁束反転の記録角度は,磁気ストライプと平行なカードの上端基
準辺に対して90°とし,その許容差は,±10′とする。
JA.10.2 記録密度
情報の平均記録密度は,8.27ビット/mmとし,その許容差を±4 %とする。隣接する磁束反転距離は,
2進符号“0”が記録された場合は,0.121 mm±0.012 mm,2進符号“1”が記録された場合は,0.060 mm
±0.006 mmとする。
JA.10.3 ビット構成
磁気ストライプ上の情報の各符号は,1文字内において,ビット1(b1)からビットn(bn)の順序に記
録し,パリティビットを最後に記録する。
JA.10.4 記録方向
情報は,カードのおもて面を見たとき,磁気ストライプの左端から順次右方向へ記録する。
JA.10.5 第1及び最終のデータビットの位置
始め符号である第1データビットの中心線は,カードの左端辺から測定して,5.0 mm以上とする。水平
冗長符号である最終データビットの中心線は,カードの右端辺から測定し,5.0 mm以上とする。
なお,磁気ストライプの始端から第1データビットまで,及び最終データビットから磁気ストライプの
終端までの余白には,連続した2進符号“0”を同期ビットとして記録する(図JA.3参照)。
図JA.3−第1及び最終のデータビットの位置
JA.11
文字集合
JA.11.1 用いる文字集合及び符号
記録する情報の文字及び符号は,表JA.1による。ただし,始め符号及び終わり符号は,位置7/15(DEL)
とする。始め符号及び終わり符号は,他の用途に用いてはならない。
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表JA.1−使用文字集合及び符号
0
0
0
0
1
1
1
1
0
0
1
1
0
0
1
1
0
1
0
1
0
1
0
1
列
行
0
1
2
3
4
5
6
7
b7
b6
b5
b4
b3
b2
b1
0
0
0
0
0
NUL
TC7 (DEL)
(SP) a)
0
P
`
p
0
0
0
1
1
TC1 (SOH)
DC1
!
1
A
Q
a
q
0
0
1
0
2
TC2 (STX)
DC2
"
2
B
R
b
r
0
0
1
1
3
TC3 (ETX)
DC3
#
3
C
S
c
s
0
1
0
0
4
TC4 (EOT)
DC4
$
4
D
T
d
t
0
1
0
1
5
TC5 (ENQ)
TC8 (NAK)
%
5
E
U
e
u
0
1
1
0
6
TC6 (ACK)
TC9 (SYN)
&
6
F
V
f
v
0
1
1
1
7
BEL
TC10 (ETB)
'
7
G
W
g
w
1
0
0
0
8
FE0 (BS)
CAN
(
8
H
X
h
x
1
0
0
1
9
FE1 (HT)
EM
)
9
I
Y
i
y
1
0
1
0
10
FE2 (LF)
SUB
*
:
J
Z
j
z
1
0
1
1
11
FE3 (VT)
ESC
+
;
K
[
k
{
1
1
0
0
12
FE4 (FF)
IS4 (FS)
,
<
L
¥
1
|
1
1
0
1
13
FE5 (CR)
IS3 (GS)
−
=
M
]
m
}
1
1
1
0
14
SO
IS2 (RS)
.
>
N
^
n
̅
1
1
1
1
15
SI
IS1 (US)
/
?
O
_
o
DEL
注記1 表中のb1〜b7は,7ビット符号のビット組合せを示す。
注記2 この表の図形文字は,JIS X 0201に規定するラテン文字用7ビット符号に,制御文字は,JIS X 0211に規定す
る制御文字用7ビット符号に整合する。
注記3 データに位置0/0(NUL)を用いる場合は,カードリーダライタ製造業者と協議する。
注a) (SP)は,印字されない。
JA.11.2 文字数
記録する文字数は,次による。
始め符号
1文字
データ
最大69文字
終わり符号
1文字
LRC文字
1文字
合計
最大72文字
JA.12 誤り検出
この規格の箇条11による。
JA.12.1 パリティ
各符号化された文字のためのパリティビットを使用しなければならない。パリティビットは,文字ごと
に記録しなければならない。ここで,パリティビットの値は,パリティビットを含めた文字を構成する“1”
のビットの個数とパリティビットとの合計は奇数でなければならない。
JA.12.2 水平冗長検査文字(LRC文字)
LRC文字は,各データトラックに設定しなければならない。LRC文字は,始め符号,データ,終わり符
号の順で読むときの終わり符号の直後に記録しなければならない。LRC文字のビット構成は,データ用文
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字のビット構成と同じでなければならない。
LRC文字は,次のように算出しなければならない。
パリティビットを除いたLRC文字の各ビットの値は,データトラック内の全ての文字(始め符号,デー
タ,終わり符号及びLRC文字)を構成する同じビット位置(表JA.1で2進符号のbnで示す,べき数の位
置)にある“1”のビットの個数の合計は偶数でなければならない。
LRC文字のパリティビットは,データトラックの個々のパリティビットから得られるパリティビットで
はなく,JA.12.1で示すようなLRC文字自体のパリティビットとする。
JA.13 トラックの位置
トラックは,カードの上端基準辺から測定して,6.3 mmと11.7 mmとで囲まれる2線にわたって存在す
る。ただし,このトラックに情報を記録する場合,記録トラックの幅は,6.0 mm以上とする(図JA.4参
照)。
図JA.4−データトラックの位置
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附属書JB
(参考)
JISと対応する国際規格との対比表
JIS X 6302-2:2016 識別カード−記録技術−第2部:磁気ストライプ−低保磁力 ISO/IEC 7811-2:2014,Identification cards−Recording technique−Part 2: Magnetic
stripe−Low coercivity
(I)JISの規定
(II)
国際
規格
番号
(III)国際規格の規定
(IV)JISと国際規格との技術的差異の
箇条ごとの評価及びその内容
(V)JISと国際規格との技術的差異の理由
及び今後の対策
箇条番号
及び題名
内容
箇条
番号
内容
箇条ごと
の評価
技術的差異の内容
1 適用範囲 保磁力は,この規格で規定する
多くの項目に強い影響を与え
るものであるが,それ自体は附
属書JAを除き規定していない。
カードを磁界にばく(曝)露す
ると,記録データの破壊につな
がるおそれがある。
保磁力の規定は
ない。
追加
日本で流通している“おも
て面磁気ストライプ付き識
別カード”について附属書
JAで規定。
現在日本で普及している磁気ストライプ
カードのほとんどが附属書JAの規定によ
って製造されている。
次回見直し時裏面の磁気ストライプが普
及した場合には,附属書JAを廃止し,左
記追記も廃止する。
低保磁力カードの問題点について注意喚
起の記載を追加した。
3 引用規格
6 磁気スト
ライプの物
理的特性
磁気ストライプ領域は,附属書
JAのカードを除き,図2に示す
ことを規定。おもて面磁気スト
ライプの特性については,附属
書JAによる。
6
磁気ストライプ
領域を図2に示す
ことを規定。
追加
日本で流通している“おも
て面磁気ストライプ付き識
別カード”について追加。
現在日本で普及している磁気ストライプ
カードのほとんどが附属書JAの規定によ
って製造されている。
次回見直し時裏面の磁気ストライプが普
及した場合には,附属書JAを廃止し,左
記追記も廃止する。
附属書JA
(規定)
おもて面磁気ストライプ付き
識別カード
ISO/IECになし
追加
JISに,おもて面に磁気スト
ライプがある識別カードの
磁気ストライプの特性,符
号化技術などの規定を追
加。
現在日本で普及している磁気ストライプ
カードのほとんどが附属書JAの規定によ
って製造されている。
次回見直し時裏面の磁気ストライプが普
及した場合には,附属書JAを廃止する。
JISと国際規格との対応の程度の全体評価:ISO/IEC 7811-2:2014,MOD
2
X
6
3
0
2
-2
:
2
0
1
6
26
X 6302-2:2016
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
注記1 箇条ごとの評価欄の用語の意味は,次による。
− 追加 ················ 国際規格にない規定項目又は規定内容を追加している。
注記2 JISと国際規格との対応の程度の全体評価欄の記号の意味は,次による。
− MOD ··············· 国際規格を修正している。
2
X
6
3
0
2
-2
:
2
0
1
6